説明

太陽光発電システム

【課題】 太陽光発電システムの電圧上昇抑制による不公平をなくし、太陽電池で発電されるエネルギーを有効に活用できる太陽光発電システムを提供すること。
【解決手段】 太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを送信する送信部と、他の太陽光発電装置から、他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを受信する受信部と、をそれぞれ具備するとともに、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータ及び前記受信部にて受信した他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータに基づいて、当該前記電力変換装置が商用電力系統に出力する電力出力を制御することを特徴とする太陽光発電システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の直流電源から得られる直流電力を交流電力に変換し、前記太陽電池を商用電力系統及び負荷系統に電気的に接続して連系運転を行う電力変換装置を有する太陽光発電装置を複数個設置した太陽光発電システムに関するものである。特に前記複数個の太陽光発電装置を経済的かつ公平に利用できる太陽光発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来の太陽光発電システムについて、図面を基に説明する。
【0003】
図3は従来の太陽光発電システムにおける単一の太陽光発電装置の概略構成図、図4は従来の太陽光発電システムにおける概略システム構成図である。
【0004】
図3に示すように、近年、太陽電池101により光電変換された直流発電電力を電力変換装置102により交流電力に変換するとともに、変換された交流電力を接続された商用電力系統104に逆潮流して売電、あるいは同様に接続されている家庭用負荷105へ電力供給を行う太陽光発電装置100が実用化されている。
【0005】
また、図4に示すように、商用電力系統104に対しては変圧器103を介して複数の太陽光発電装置(たとえば太陽光発電装置100、110や120等)が接続される構成をとっている。変圧器103が設けられるのは通常100V前後もしくは200V前後の太陽光発電装置の出力電圧を商用電力系統の高圧6600Vに電圧変換する必要があるためである。
【0006】
太陽光発電装置100においては、家庭用負荷105で消費する電力以上の発電を行った場合、余剰電力を商用電力系統104に逆潮流させることになるが、その際変圧器103の内部インピーダンスおよび変圧器103から太陽光発電装置100の受電点10aまでの配線によるインピーダンスのために、逆潮流で流れる電流に応じて受電点10aの電圧が上昇することとなる。
【0007】
受電点10aの電圧が上昇すると、電気事業法で定められた100V系では101±6V、200V系では202±20Vの適正電圧範囲を逸脱する恐れがあるため、電力変換装置102の出力電力を抑制し、逆潮流で流れる電流を抑えることによって受電点の電圧の上昇を抑制させるように制御を行っている。
【0008】
しかし、従来の太陽光発電システムにおいては、図4に示すような、同一の変圧器103に接続された複数の太陽光発電装置100、110、120において、個々に電圧上昇の抑制制御を行っているため、太陽光発電装置間の機器の検出精度や応答速度等の個体差、または変圧器から受電点までの配線の距離等によって各々の太陽光発電装置の発電の出力電力が異なってしまい、各太陽光発電装置間では出力電力の抑制を行うものと行わないものが混在してしまい、太陽電池の有効利用という観点から、また経済的な面からも不公平が生じてしまうという課題が発生する。
【0009】
上記課題の解決策としては、変圧器でのタップ切替えによる電圧調整や配線の増強によりインピーダンスを低減させることが望ましいが、変圧器によるタップ切替えについては、絶えず変動する負荷状態の中で常に安定した電圧を供給するためには少し高めの電圧を給電する必要がある上に頻繁には変更が出来ないため現実的ではない。また、配線の増強については、既設の配線が容量不足なのか適正なのかの判断が困難であり、また増強には莫大な投資が必要となるため直ちに電力系統全体への対策は現実的に困難な状況である。
【0010】
そこで、従来は、個々の太陽光発電システムに信号を受発信可能な管理装置を設置し、全体の出力電力を抑制させたり、蓄電池に充電させる方式が提案されている。(例えば、特許文献1を参照)。
【特許文献1】特開2004−135454号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら、上述した従来の太陽光発電システムにおいては、各変圧器の単位内で管理装置が別途必要であり、一般の住宅用途においては、設置コストが増加するとともに、管理者をもって管理装置自体を管理していく必要があり、システムの高コスト化、複雑化につながり今後の集中連系の増加に対応することができないという問題がある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題を解決するため、本発明の太陽光発電システムは、太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに商用電力系統への出力電力を制御しえる電力変換装置とを備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、前記各太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを送信する送信部と、他の太陽光発電装置から、他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを受信する受信部と、をそれぞれ具備するとともに、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータ及び前記受信部にて受信した他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータに基づいて、当該前記電力変換装置が商用電力系統に出力する電力出力を制御することを特徴とする。
【0013】
また、本発明の他の太陽光発電システムは、前記出力状態を示す情報は、電力変換装置の出力電力を抑制するための制御をしているかどうかを示す抑制状態データであり、この抑制状態データから他の電力変換装置の出力電力が抑制制御されていることが示されていれば、前記電力変換装置は、当該太陽光発電装置の電力変換装置から商用電力系統への出力電力を抑制制御するようにしたことを特徴とする。
【0014】
さらに、本発明の他の太陽光発電システムは、前記電力変換装置の出力電力が制御された時間を積算し、前記時間が所定値を越えた場合には警告表示を行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明の太陽光発電システムによれば、太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに商用電力系統への出力電力を制御しえる電力変換装置とを備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、前記各太陽光発電装置は他の太陽光発電装置に、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを送信する送信部と、他の太陽光発電装置から、他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを受信する受信部と、をそれぞれ具備するとともに、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータ及び前記受信部にて受信した他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータに基づいて、当該前記電力変換装置が商用電力系統に出力する出力電力を制御するようにしたことにより、個々の太陽光発電装置が独自に近隣の他の太陽光発電装置の出力状態を把握し、発電の出力電力の制御を行うため、自動で且つシステムの複雑化を招くことなく、各太陽光発電装置の出力電力を必要に応じて制御することが可能である。
【0016】
また、本発明の他の太陽光発電システムによれば、前記出力状態を示す情報は、電力変換装置の出力電力を抑制するための制御をしているかどうかを示す抑制状態データであり、この抑制状態データから他の電力変換装置の出力電力が抑制制御されていることが示されていれば、前記電力変換装置は、当該太陽光発電装置の電力変換装置から商用電力系統への出力電力を抑制制御するようにしたことにより、個々の太陽光発電装置が独自に近隣の他の太陽光発電装置の状況を把握し、発電の出力電力の制御を行うため、受電点の電圧を適正範囲内から大きく逸脱させることのないようにできるとともに、自動で且つシステムの複雑化を招くことなく、各太陽光発電装置間に大きな差がなく公平に抑制を行うことが可能となるものである。
【0017】
さらに、本発明の太陽光発電システムによれば、前記電力変換装置の出力電力が制御された時間を積算し、前記時間が所定値を越えた場合には警告表示を行うようにしたことにより、連系接続される配電系統の配線が適正かの判定を容易に行うことが可能となるものであり、ひいては太陽エネルギーの有効利用につながるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下に、本発明の太陽光発電システムの実施形態について、模式的に図示した図面に基づき詳細に説明する。
【0019】
(実施例1)
図1は本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための単一の太陽光発電装置の概略装置構成図、図2は本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための概略システム構成図である。
【0020】
図1に示すように、太陽電池11とこの太陽電池11の発電した直流電力を交流電力に変換し、太陽電池11を商用電力系統及び負荷系統に電気的に接続して連系運転を行うための電力変換装置12が商用電力系統14や家庭用負荷15に接続されて系統連系運転を行う太陽光発電装置10においては、上記太陽電池11と電力変換装置12のほかに、商用電力系統14に接続される受電点1aの電圧を検出する検出部16と、電力変換装置12で出力する発電の出力電力データ及び受電点の電圧が所定の電圧より高い場合に出力電力の抑制を行うときの状態を示す抑制状態データを他の電力変換装置に送信する送信部17と、他の電力変換装置から送信される他の電力変換装置の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データを受信する受信部18とから構成されている。
【0021】
商用電力系統14に接続される受電点1aの電圧を検出する検出部16と、電力変換装置12で出力する発電の電力データ及び出力電力の抑制状態データを他の電力変換装置に送信する送信部17と、他の電力変換装置から送信される他の電力変換装置の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データを受信する受信部18とは電力変換装置12内に設置されてもよいが、電力変換装置12とは違うところに設置してもかまわない。
【0022】
また、図2に示すように、商用電力系統14に対しては、上記太陽光発電装置10と同様な複数の太陽光発電装置(例えば太陽光発電装置20、太陽光発電装置30)が並列に変圧器13を介して接続される構成となっている。
【0023】
ここで、太陽電池11は太陽電池モジュールもしくは太陽電池モジュールが複数集まった太陽電池アレイであり、太陽電池11で発電された直流電力は電力変換装置12に入力される。
【0024】
また、太陽電池11としては、多結晶シリコン太陽電池、単結晶シリコン太陽電池、アモルファスシリコン等の薄膜太陽電池などが好適に使用され、複数枚の太陽電池セルを集めた太陽電池モジュールをさらに直並列に並べて太陽電池アレイとしたものが一般的である。
【0025】
太陽電池11の出力は電力変換装置12に入力されており、この電力変換装置12では入力された直流電力をPWM制御技術等を用いて交流電力に直交変換し、商用電力系統14に逆潮流あるいは家庭用負荷15へ電力供給を行なっている。
【0026】
一方、検出部16においては受電点1aの電圧を検出するとともに、その検出した受電点1aの電圧データを電力変換装置12へ送信する。電力変換装置12においては、得られた受電点1aの電圧データに基づいて発電の出力電力の制御を行うものであり、商用電力系統の電圧が適性範囲(例えば、100V系の場合において101V±6V以内、200V系の場合において202±20V以内)であれば発電の出力電力を増加・維持させ、設定された適性範囲を越えている場合には発電の出力電力を減少させ、その結果として受電点1aの電圧の上昇を抑制させるように制御されている。
【0027】
電力変換装置12においては、電力変換装置12の出力される出力電力データ及び電力変換装置12の出力電力の抑制状態を示す抑制状態データを送信部17に送信し、送信部17から発電の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データaを近隣する他の太陽光発電装置にデータ通信が行われる。
【0028】
また、本例においては複数の太陽光発電装置が同一の変圧器13に接続されているものであり、太陽光発電装置10が他の太陽光発電装置(例えば、太陽光発電装置20または太陽光発電装置30)から送信されてきた発電の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データbについては、受信部18で受信し、電力変換装置12の制御用情報として電力変換装置12にフィードバックされる。
【0029】
なお、本例では送信部、受信部と呼称しているが、送信部側から一方的に送信を行なう単方向通信方式に限るものではなく、受信部側からも送信部側へ返信可能な双方向通信方式を用いる通信方式であってもよく、また通信手段も有線・無線方式のどちらによる通信であってもよい。
【0030】
また、検出部16においては、太陽光発電装置の受電点の電圧を検出するものであるが、一般住宅用の場合においては電力変換装置の出力部と受電点との間の距離が短いため、電力変換装置の出力部の電圧を検出するものであってもよい。
【0031】
ここで先述の、受信部18で受信した他の電力変換装置の発電の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データbについては、自身(太陽光発電装置10)または他の太陽光発電装置(例えば太陽光発電装置20)のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0032】
3つ以上の太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合に、自身(太陽光発電装置10)または他の太陽光発電装置(太陽光発電装置20)のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0033】
次に例えば太陽光発電装置10と太陽光発電装置30との間のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0034】
すなわち、3つ以上の太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合に、2つずつのどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0035】
すなわち、上記のように出力電力の制御を行うことにより複数個の太陽光発電装置が自動的にバランス点に向かい出力電力を自動調整するようにはたらき、系統電圧を適正な状態に保ちつつ、各太陽光発電装置間に不公平感のない動作を実現することが可能となるものである。
【0036】
上記の実施例において、電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータは発電の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データからなるものであるが、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータは出力電力の抑制状態データからなるようにしてもよい。
【0037】
このとき、受信部18で受信した他の電力変換装置の出力電力の抑制状態データについては、自身が出力電力の抑制状態にないが、他の太陽光発電装置が出力電力の抑制状態にある場合においては例えば、自身の太陽光発電装置の出力電力を一定の比率で下げるように出力電力を制御するとよい。
【0038】
また、自身が出力電力の抑制状態にあるが、他の太陽光発電装置が出力電力の抑制状態にない場合とある場合の両方においてはこれまでの制御方法を変えないようにするとよい。
【0039】
(実施例2)
図1に示す太陽光発電システムにおいて、例えば、検出部16においては受電点1aの電圧を検出するとともに、その検出した受電点1aの電圧データを電力変換装置12および送信部17へ送信する。電力変換装置12においては、得られた受電点1aの電圧データに基づいて発電の出力電力の制御を行うものであり、商用電力系統の電圧が適性範囲(例えば、100V系の場合において101V±6V以内、200V系の場合において202±20V以内)であれば発電の出力電力を増加・維持させ、設定された適性範囲を越えている場合には発電の出力電力を減少させ、その結果として受電点1aの電圧の上昇を抑制させるように制御されている。
【0040】
電力変換装置12においては、得られた受電点1aの電圧データ、電力変換装置12の出力される出力電力データ及び電力変換装置12の出力電力の抑制状態を示す抑制状態データを送信部17に送信し、送信部17から発電の出力電力データ、受電点1aの電圧データ及び出力電力の抑制状態データaとして近隣する他の太陽光発電装置にデータ通信が行われる。
【0041】
また、本例においては複数の太陽光発電装置が同一の変圧器13に接続されているものであり、太陽光発電装置10が他の太陽光発電装置(例えば、太陽光発電装置20または太陽光発電装置30)から送信されてきた受電点の電圧データ、発電の出力電力データ及び出力電力の抑制状態データbについては、受信部18で受信し、電力変換装置12の制御用情報として電力変換装置12にフィードバックされる。
【0042】
なお、本例では送信部、受信部と呼称しているが、送信部側から一方的に送信を行なう単方向通信方式に限るものではなく、受信部側からも送信部側へ返信可能な双方向通信方式を用いる通信方式であってもよく、また通信手段も有線・無線方式のどちらによる通信であってもよい。
【0043】
また、検出部16においては、太陽光発電装置の受電点の電圧を検出するものであるが、一般住宅用の場合においては電力変換装置の出力部と受電点との間の距離が短いため、電力変換装置の出力部の電圧を検出するものであってもよい。
【0044】
ここで先述の、受信部18で受信した他の電力変換装置の発電の出力電力データ、受電点の電圧データ及び出力電力の抑制状態データbについては、電力変換装置12内にて発電の出力電力データ及び受電点の電圧データaとの比較が行われ、両者の受電点の電圧データの差異が所定値以上であれば明らかに同一の変圧器の下にはないものと判断でき、出力制御には変動要素をあたえず現状の状態を維持するものとする。一方、受電点の電圧データの差異が所定値以下であり、且つ自身(太陽光発電装置10)または他の太陽光発電装置(例えば太陽光発電装置20)のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0045】
3つ以上の太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合に、自身(例えば太陽光発電装置10)と次の太陽光発電装置(例えば太陽光発電装置20)との間の受電点の電圧データの比較を行い、受電点の電圧データの差異が所定値以下であり、且つ自身(太陽光発電装置10)または他の太陽光発電装置(太陽光発電装置20)のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0046】
次に例えば太陽光発電装置10と太陽光発電装置30との間の受電点の電圧データの比較を行い、受電点の電圧データの差異が所定値以下であり、且つ自身(太陽光発電装置10)または他の太陽光発電装置(太陽光発電装置30)のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0047】
すなわち、3つ以上の太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合に、2つずつの太陽光発電装置の受電点の電圧データを比較し、受電点の電圧データの差異が所定値以下であり、且つ自身または他の太陽光発電装置のどちらか一方が出力電力の抑制状態にある場合においては両者の発電の出力電力データを比較し、所定値以上の差異があれば太陽光発電装置間のバランスがとれていないものと判断し、補正を行う方向に太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものである。
【0048】
2つの太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合の太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものの具体例として、4kWの容量の太陽光発電装置10および4kWの容量の太陽光発電装置20が各々変圧器106に接続されており、太陽光発電装置10の発電の出力電力データ、受電点の電圧データ及び出力電力の抑制状態データaがそれぞれ3.0kW・107.5V・抑制なし、太陽光発電装置20の発電の出力電力データ、受電点の電圧データ及び出力電力の抑制状態データbがそれぞれ“0.5kW・108.0V・抑制あり”であったとする。この場合、太陽光発電装置10においては、受電点の電圧データの比較を行い、両者の電圧差が2〜3V以下と小さいため、発電の出力電力データ及び受電点の電圧データbの太陽光発電装置20が同一系統である可能性があると判断し、発電の出力電力データの比較を行う。発電の出力電力データbについては出力電力が抑制状態にあり、出力電力が少ないことから太陽光発電装置10の電力変換装置12にて出力電力を減少させる方向にて制御を行う。逆に太陽光発電装置20においては、出力電力を増加させる方向にて制御を行う。
【0049】
すなわち、上記のように出力電力の制御を行うことにより複数個の太陽光発電装置が自動的にバランス点に向かい出力電力を自動調整するようにはたらき、系統電圧を適正な状態に保ちつつ、各太陽光発電装置間に不公平感のない動作を実現することが可能となるものである。
【0050】
なお、本発明の太陽光発電システムにおいては同一変圧器13に接続されていることから各太陽光発電装置間で検出される受電点の電圧データには大きな差がないものとすることができるものであり、検出される受電点の電圧の差が大きい場合には、近くにあっても接続される変圧器が異なるものと推測でき、抑制制御を行わないため他の系統への影響(誤動作)を排除することが可能となる。
【0051】
2つの太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合の太陽光発電装置の出力電力の制御を行うものの具体例として、4kWの容量の太陽光発電装置10および4kWの容量の太陽光発電装置20が各々変圧器106に接続されており、太陽光発電装置10の発電の出力電力データ、受電点の電圧データ及び出力電力の抑制状態データaがそれぞれ“3.0kW・107.5V・抑制なし”、太陽光発電装置20の発電の出力電力データ、受電点の電圧データ及び出力電力の抑制状態データbがそれぞれ“0.5kW・108.0V・抑制あり”であったとする。この場合、太陽光発電装置10においては、受電点の電圧データの比較を行い、両者の電圧差が2〜3V以下と小さいため、発電の出力電力データ及び受電点の電圧データbの太陽光発電装置20が同一系統である可能性があると判断し、発電の出力電力データの比較を行う。発電の出力電力データbについては出力電力が抑制状態にあり、出力電力が少ないことから太陽光発電装置10の電力変換装置12にて出力電力を減少させる方向にて制御を行う。逆に太陽光発電装置20においては、出力電力を増加させる方向にて制御を行う。
【0052】
すなわち、上記のように出力電力の制御を行うことにより複数個の太陽光発電装置が自動的にバランス点に向かい出力電力を自動調整するようにはたらき、系統電圧を適正な状態に保ちつつ、各太陽光発電装置間に不公平感のない動作を実現することが可能となるものである。
【0053】
なお、本発明の太陽光発電システムにおいては同一変圧器13に接続されていることから各太陽光発電装置間で検出される受電点の電圧データには大きな差がないものとすることができるものであり、検出される受電点の電圧の差が大きい場合には、近くにあっても接続される変圧器が異なるものと推測でき、抑制制御を行わないため他の系統への影響(誤動作)を排除することが可能となる。
【0054】
次に、本発明に係る他の太陽光発電システムの実施形態について説明する。
【0055】
太陽光発電システムの構成および動作については前述とほぼ同等であるが、本発明においては発電の出力電力データの代わりに、発電の電力比率データ(発電の出力電力/発電可能な電力)を使用するものであり、本データを使用することにより、各太陽光発電装置間において太陽光発電装置の発電容量の差が大きい場合においても同等の比率にて発電の出力電力の制御が行えるようになり、各太陽光発電装置間に不公平感のない動作を実現することが可能となるものである。
【0056】
次に、本発明に係る更なる他の太陽光発電システムの実施形態について説明する。
【0057】
太陽光発電システムの構成および動作については前述した説明と同じであるが、本発明においては電力変換装置12において出力電力の抑制制御が動作している時間を積算し、積算時間が所定時間を経過した場合には警告表示を行うものである。警告表示を行うのに例えば、ランプもしくはLEDを点滅させる警告表示、サイレンを鳴らす警告表示、ディスプレに表示するなどの警告表示を行うことができる。
【0058】
本発明においては前述の通り、各太陽光発電装置が均等に出力電力の抑制状態として動作を行うのであるが、この状態が長期間継続されているのであれば、根本的に配電系統自身の容量不足であり、確実に配線の増強が必要な箇所であることが明白となる。また、ここで配線が増強されれば従来十分に利用できていなかった太陽エネルギーを有効に活用することが可能となるのである。
【0059】
なお、本発明は上述の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変更、改良等が可能である。例えば、3つ以上の太陽光発電装置が同一の変圧器に設置された場合に、2つずつの太陽光発電装置の受電点の電圧データを比較するのではなく、3つずつの太陽光発電装置の受電点の電圧データを比較するアルゴリズム、3つ以上の太陽光発電装置の受電点の電圧データを一度に比較するアルゴリズムなどを採用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための単一の太陽光発電装置の概略装置構成図である。
【図2】本発明に係る太陽光発電システムの実施形態を模式的に説明するための概略システム構成図である。
【図3】従来の太陽光発電システムにおける単一の太陽光発電装置の概略構成図である。
【図4】従来の太陽光発電システムにおける概略システム構成図である。
【符号の説明】
【0061】
10、20、30:太陽光発電装置
11:太陽電池
12:電力変換装置
13:変圧器
14:商用電力系統
15:家庭用負荷
16:検出部
17:送信部
18:受信部
20:太陽光発電表示装置
100、110、120:太陽光発電装置
101、111、121:太陽電池
102、112、122:電力変換装置
103:変圧器
104:商用電力系統
105、115、125:家庭用負荷

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池と、該太陽電池が発電した直流電力を交流電力に変換し、且つ商用電力系統と負荷電力系統に接続して系統運転するとともに商用電力系統への出力電力を制御しえる電力変換装置とを備えた太陽光発電装置を複数設置してなる太陽光発電システムであって、
前記各太陽光発電装置は
他の太陽光発電装置に、前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを送信する送信部と、
他の太陽光発電装置から、他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータを受信する受信部と、
をそれぞれ具備するとともに、
前記電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータ及び前記受信部にて受信した他の太陽光発電装置を構成する電力変換装置の商用電力系統への出力状態を示すデータに基づいて、当該前記電力変換装置が商用電力系統に出力する出力電力を制御することを特徴とする太陽光発電システム。
【請求項2】
前記出力状態を示す情報は、電力変換装置の出力電力を抑制するための制御をしているかどうかを示す抑制状態データであり、この抑制状態データから他の電力変換装置の出力電力が抑制制御されていることが示されていれば、前記電力変換装置は、当該太陽光発電装置の電力変換装置から商用電力系統への出力電力を抑制制御するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の太陽光発電システム。
【請求項3】
前記電力変換装置の出力電力が制御された時間を積算し、前記時間が所定値を越えた場合には警告表示を行うことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽光発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−180660(P2006−180660A)
【公開日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−373169(P2004−373169)
【出願日】平成16年12月24日(2004.12.24)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】