説明

太陽光集光用ミラーの製造方法、太陽光集光用ミラー及びそれを有する太陽熱発電システム

【課題】高い集光効率を得ることができ、しかも、所望の曲率の反射面を大量に製造できる太陽光集光用ミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラー並びにそれを用いた太陽熱発電システムを提供する。
【解決手段】下面に回転放物面を形成した型MDをフィルムミラーFM側から接近させ、フィルムミラーFMを介して可塑性の材料HLを押圧して成形する。この状態を保持したまま、不図示のヒータで周囲から加熱し、可塑性の材料を硬化させて支持体HLとする。可塑性の材料を硬化させた後、型MDを退避させると、型MDの下面により押圧されたフィルムミラーFMが回転放物面に成形され、その形状が固定された支持体HLによって維持されるので、これにより太陽光集光用ミラーSLの製造することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光集光用ミラーの製造方法、太陽光集光用ミラー及びそれを用いた太陽熱発電システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、石油、天然ガス等の化石燃料エネルギーに代わるエネルギーとしては現在、バイオマスエネルギー、核エネルギー、風力エネルギー、太陽エネルギー等の自然エネルギーの検討がなされているが、化石燃料の代替エネルギーとして最も安定しており、且つ量の多い自然エネルギーとして、太陽エネルギーの利用が有望であると考えられている。しかしながら、太陽エネルギーは非常に有力な代替エネルギーであるものの、これを活用する観点からは、(1)太陽エネルギーのエネルギー密度が低いこと、(2)太陽エネルギーの貯蔵及び移送が困難であること等が問題となると考えられる。
【0003】
太陽エネルギーの上記課題に対し、太陽エネルギーのエネルギー密度が低いという問題は、巨大な反射装置で太陽エネルギーを集めることによって解決する方法が提案されている。そのような太陽熱発電システムの一つとして、例えば特許文献1に記載されているようなタワー式太陽熱発電システムが挙げられる。このシステムは、略円状や略扇状に並べられた複数の反射鏡と、中央部に設置されたタワーとを有し、反射鏡でタワーにある集熱部に太陽光を集中させることで集光し、その熱を利用して発電するものである。
【0004】
ここで、タワー式太陽熱発電システムのように、反射鏡から集熱部までの距離が数十メートルから数百メートルと長距離となる太陽熱発電システムにおいては、集光効率において未だ充分ではなく、更なる集光効率の改善が求められている。その点について以下に詳述する。
【0005】
太陽光線は完全な平行光ではなく、視野角0.52°〜0.54°に相当する角度範囲の傾きをもった光線である。反射鏡から集熱部までの距離が数メートルと短い場合、この太陽光の視野角はほとんど無視できる。しかしながら、タワー式太陽熱発電システムのように、反射鏡から集熱部までの距離が長くなる場合、反射鏡が平面鏡であると、太陽光線を反射した光線のうち視野角に相当する成分の光線が集光距離に比例して拡散するため、集熱部の限られた受光面積で反射光線全部を受け切れず、そのために集光効率が低下してしまうという問題があった。
【0006】
その問題を解消するため、特許文献1の図6に記載されるような複数の平面鏡を組み合わせて疑似凹面鏡を構成するという構成も考えられてはいるが、そのような疑似の凹面鏡では、集光効率の観点からまだ十分とは言えなかった。
【0007】
更に、平面の組み合わせではなく曲面からなる凹面鏡を得るためには複雑な製造工程を必要とし、簡便かつ安価に当該凹面鏡を得ることは困難であった。特に、タワー式太陽熱発電システムに凹面鏡を用いる場合は、集熱部から反射鏡までの距離に応じて凹面の曲率を変える必要があるため、そのような様々な曲率の凹面鏡を安価に製造することは更に困難であり、そのような様々な曲率の凹面鏡を複数有する太陽熱発電システムは必然的に高価なものとなる。
【0008】
そこで、タワー式太陽熱発電システムのように、反射鏡から集熱部までの距離が数十メートルから数百メートルと長距離となる太陽熱発電システムにおいても、高い集光効率を得ることができ、しかも、容易かつ安価に製造でき、加えて、様々な曲率の凹面鏡も容易に得ることができる太陽光集光用ミラーが求められていた。一方、反射鏡から集熱部までの距離が比較的近いトラフ型の太陽熱発電システムに用いる反射鏡でも、最適な曲率で曲げたものを大量生産するためには、何らかの工夫が必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2009−218383号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、タワー式太陽熱発電システムやトラフ型の太陽熱発電システムなど種類を問わず適用可能であって、高い集光効率を得ることができ、しかも、所望の曲率の反射面を大量に製造できる太陽光集光用ミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラー並びにそれを用いた太陽熱発電システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1に記載の本発明は、太陽光集光用ミラーの製造方法であって、
変形可能な反射部を、可塑性の材料上に敷設する工程と、
前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させる工程と、
前記可塑性の材料の形状を固定する工程とを有することを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、変形可能な反射部を、可塑性の材料上に敷設し、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させ、前記可塑性の材料の形状を固定することによって、簡素な工程で安価に、前記反射部を所望の形状に成形することができる。特に、反射部をフィルムミラーとした場合、ロールトゥロールで製造する際の滑り性を保つためにフィルムミラー表面に凹凸を設けたり、また塗布工程等から生じる凹凸により、通常のガラスミラーに比べてフィルムミラーの平面性は劣ることが多い。従って、フィルムミラーは平面性が悪いことから単体で用いると、ガラスミラーに比して集光効率を向上できない恐れがあるが、前記可塑性の材料を凹状に容易に固定することによって、フィルムミラーの集光効率を大幅に向上できる。また、このように容易に可塑性の材料を用いて凹形状、特に回転対称の凹形状を作ることができるのはフィルムミラー故である。
【0013】
請求項2に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項1に記載の発明において、成形用の型を、前記反射部を介して前記可塑性の材料に押し付けることにより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする。これにより、同じ形状の反射部を有するミラーを大量生産できる。また、成形用の型の種類を複数用意しておくことにより、異なる曲率を有する凹形状の反射部を有するミラーも容易に大量生産できる。
【0014】
請求項3に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項2に記載の発明において、前記可塑性の材料を硬化させることにより、前記可塑性の材料の形状を固定することを特徴とする。これにより、設置後にミラーの形状が変化することが抑制され、長期間にわたって安定した効率を発揮できる。
【0015】
請求項4に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記可塑性の材料を前記反射部と基板との間に配置して、前記反射部と前記基板の少なくとも一部を相対的に接近させることにより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする。これにより、単純な作業でミラーの集光位置を変更できるから、特に現場で実際に太陽光を用いて反射光を集熱部に集光させる場合のミラー調整作業が容易になる。
【0016】
請求項5に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項4に記載の発明において、前記反射部と前記基板とをネジ部材で連結し、前記ネジ部材を締め上げることもより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする。特に現場で実際に太陽光を用いて反射光を集熱部に集光させる場合のミラー調整作業が容易になる。
【0017】
請求項6に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項5に記載の発明において、前記反射部と前記基板の少なくとも一部の距離を、前記ネジ部材を用いて固定することにより、前記可塑性の材料の形状を固定することを特徴とする。これにより、調整後にミラーの形状が変化することが抑制され、長期間にわたって安定した効率を発揮できる。
【0018】
請求項7に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項1に記載の発明において、前記可塑性の材料は容器内に収容された流体であって、前記可塑性の材料の一部を前記容器外に排出することにより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする。これにより、単純な作業でミラーの集光位置を変更できるから、特に現場で実際に太陽光を用いて反射光を集熱部に集光させる場合のミラー調整作業が容易になる。
【0019】
請求項8に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項7に記載の発明において、前記可塑性の材料を容器内に密封することにより、前記可塑性の材料の形状を固定することを特徴とする。これにより、調整後にミラーの形状が変化することが抑制され、長期間にわたって安定した効率を発揮できる。
【0020】
請求項9に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、変形後の前記反射部は回転放物面を有することを特徴とする。かかる製造方法により製造された太陽光集光用ミラーは、集熱部までの距離が比較的長い太陽熱発電システムに用いると好適である。
【0021】
請求項10に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項1〜8のいずれかに記載の発明において、変形後の前記反射部は樋状の反射面を有することを特徴とする。かかる製造方法により製造された太陽光集光用ミラーは、集熱部までの距離が比較的短い太陽熱発電システムに用いると好適である。
【0022】
請求項11に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法は、請求項1〜10のいずれかに記載の発明において、前記反射部は弾性変形可能であることを特徴とする。これにより、前記可塑性の材料の変形に追従することが可能になる。
【0023】
請求項12に記載の太陽光集光用ミラーは、少なくとも一面を所定の形状に固定可能な可塑性の材料からなる支持体と、前記一面に敷設された反射部とを有することを特徴とする。
【0024】
本発明によれば、前記反射部を、前記可塑性の材料の固定可能な一面に形成することによって、簡素な工程で安価に、前記反射部を所望の形状に成形することができる。
【0025】
請求項13に記載の太陽光集光用ミラーは、請求項12に記載の発明において、前記可塑性の材料を捕捉する捕捉部と、前記反射部が敷設された状態で前記捕捉部に捕捉された前記可塑性の材料を移動もしくは除去することにより、前記反射部の形状を変更する変更手段とを有することを特徴とする。これにより、ミラー反射光の集光位置を任意に変更できる。
【0026】
請求項14に記載の太陽熱発電システムは、少なくとも1つの集熱部と、請求項13に記載の太陽光集光用ミラーとを有し、前記太陽光集光用ミラーは、太陽光を反射して前記集熱部に照射することを特徴とする。
【0027】
ここで、「反射部」とは、太陽光を反射可能であって、好ましくは可塑性の材料より厚みが薄く弾性変形可能な部材である。但し、反射部そのものが塑性変形可能な可塑性部材であってもよい。厚いガラスミラー、薄板ガラスミラー、フィルムミラー等が、反射部の例として挙げられる。反射部が厚いガラスミラーの場合は、ガラスが変形可能となっていることが好ましい。反射部は可塑性の材料に敷設される。「敷設」とは、反射部を可塑性の材料に直接設けること、及び別の部材を挟んで間接的に設けることを含む。反射部は、1枚でもよいし、複数枚に分割されていてもよい。更に、円状、楕円状、正方形や長方形等の四角形状、正六角形状等の形状であることが好ましい。反射部の中心部とは、円状の場合はその中心近辺、四角形状の場合は対角線の交点近辺、正六角形状の場合も対角線の交点近辺であることが好ましい。
【0028】
「フィルムミラー」とは、フィルム状の樹脂基材に反射層を設けたフィルム状のミラーをいう。フィルムの厚さは、50〜400μmであり、好ましくは70〜250μmであり、特に好ましいのは100〜220μmである。厚さを50μm以上にすることにより、フィルムミラーを構造体に貼り付けた時に、ミラーがたわむことなく、良好な正反射率を得やすくなるため好ましい。また400μm以下にすることにより、取り扱い性が良好になるため好ましい。
【0029】
尚、フィルムミラーの表面から反射層までの厚さが、0.2mm以下であることが、タワー式太陽光発電システムに用いる太陽光集光用ミラーの反射部としては好ましい。その理由を以下に詳述する。
【0030】
タワー式太陽光発電システムのような反射部から集熱部までの距離が長いシステムにおいては、朝や夕方に、フィルムミラーに入射する太陽光の入射角が大きくなることがある。(例えば、45度以上)そのような場合、図8(b)に示すように表面層(フィルムミラーの表面から反射層の間にある層。1層でもよいし、複数層まとめて表面層と称してもよい。)が厚いと、以下のような問題が起きる。フィルムミラー表面に埃や砂100が付着していた場合、埃や砂100の部分に入射する光Bは当然反射層102に到達せず、反射されないまたは散乱してしまい、集光効率には寄与しない。それに加えて、埃や砂100のない部分に入射する光Aも、表面層101内を透過し、反射層102で反射はされるのだが、入射角が大きいが故に、反射光が埃や砂100でブロックされてしまい、集光効率に寄与しなくなってしまうという問題が発生する。それに対して、図8(a)に示すように表面層を0.2mm以下と薄くすると、集光効率の低下に寄与するのは埃や砂100の部分に入射する光B´のみであり、図8(b)におけるAのような反射層で反射された光が集光効率の低下に寄与することを防止できる。従って、埃や砂が付着した際の集光効率の低下を押さえることができるため好ましい。即ち、フィルムミラーの表面層を0.2mm以下と薄くすることにより、埃や砂が表面に付着した際に、入射角が大きくても、光Aのような反射光の問題が発生せず、集光効率の低下を防止できるため好ましいのである。尚、表面層の厚さを0.2mm以下にすることが好ましいことは、フィルムミラーに限られる話ではなく、薄板ガラスミラー等、他の反射部においても表面層の厚さが0.2mm以下であると、上記と同様の理由で好ましい。以下、フィルムミラーについて具体的に説明する。
【0031】
フィルムミラーの一例を図1に示す。図1に示す例において、フィルムミラーEは太陽光側から順番に、高分子フィルム層1、金属酸化物からなるガスバリア層2、金属からなる反射層(Ag層)3、粘着層4が積層されてなる。粘着層4の下側の表面には剥離フィルム5をつけて、粘着させたい時に適宜剥離フィルム5を剥がして構造体である金属板、樹脂板又は積層板に固着させることができる。
【0032】
なお、フィルムミラーは、図1に示す構成に限らず、様々な機能層を更に付加したり、逆に図1の例からガスバリア層等を除去してもよい。また、上記構成であってもそれぞれの層に機能性を付与することができる。以下に、様々な機能層を付加した、別のフィルムミラーの態様を説明する。しかし、本発明に用いることができるフィルムミラーはこれらの態様のみに限定されない。尚、以下の説明で「上」は太陽光が入射する側を意味し、「下」はその反対側を意味する。
【0033】
例えば、図1において、高分子フィルム層1に紫外線吸収剤を添加し、その下のガスバリア層2を水蒸気バリア層として機能させ、更にその下の反射層3は銀蒸着層からなり、該銀蒸着層の下に、粘着層4と剥離フィルム5を積層した構成を有するフィルムミラーとしてもよい。高分子フィルム層に紫外線吸収剤を添加することにより、耐久性が増加する。
【0034】
また、上記フィルムミラーにおいて、反射層3と粘着層4との間に腐食防止剤層(腐食防止剤入り高分子層)を設けたフィルムミラーとしてもよい。腐食防止剤層を付加することで、フィルムミラーの酸素、硫化水素ガス(硫化物イオン)、塩分に対する劣化防止及び平滑な光学面を長期間提供することができる。
【0035】
前記フィルムミラーにおいて、ガスバリア層2と反射層3との間に太陽光を入射する側から順に接着層と腐食防止剤層を積層し、更に、反射層3と粘着層4との間に高分子フィルム層を設けたフィルムミラーとしてもよい。
【0036】
前記フィルムミラーにおいて、紫外線吸収剤が添加された高分子フィルム層1の代わりに、太陽光を入射する側から順にハードコート層と高分子フィルム層を積層したフィルムミラーとしてもよい。ハードコート層は紫外線吸収剤等を含有することが好ましい。
【0037】
上記フィルムミラーにおいて、ハードコート層の代わりに高分子フィルム層の上に、紫外線反射層を設けたフィルムミラーとしてもよい。
【0038】
前記フィルムミラーにおいて、腐食防止剤層の代わりに、犠牲防食層を設けたフィルムミラーとしてもよい。
【0039】
続いて、フィルムミラーの各層及び各層に用いられる素材について説明する。
【0040】
(高分子フィルム層)
高分子フィルム層のフィルム材料としては、フレキシブル性や軽量化の点で、例えば、ポリエステル、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、アクリル、ポリカーボネート、ポリオレフィン、セルロース、ポリアミドのいずれかを含むことが好ましい。これらの中で耐候性に優れ、特に、少なくとも2種以上のアクリル系モノマーを共重合したアクリル系共重合体が好適である。
【0041】
好適なアクリル系共重合体としては、具体的には例えば、メチルアクリレート、エチルアクリレート、プロピルアクリレート、ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートのような側鎖中に官能性基を有しないモノマー(以下、非官能性モノマーという)から選ばれる1種または2種以上のモノマーを主成分とし、これに2−ヒドロキシエチルメタクリレート、グリシジルメタクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、等のモノマーから選ばれる1種または2種以上のモノマーの側鎖中にOHやCOOHなどの官能性基を有するモノマー(以下、官能性モノマーという)の1種または2種以上を組合せて、溶液重合法、懸濁重合法、乳化重合法、塊状重合法等の重合法により共重合させることにより得られる重量平均分子量が4万ないし100万、好ましくは10万ないし40万のアクリル系共重合体が挙げられ、中でも、エチルアクリレート、メチルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等の比較的Tgの低いポリマーを与える非官能性モノマーを50〜90質量%、メチルメタクリレート、イソブチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート等の比較的Tgの高いポリマーを与える非官能性モノマーを10〜50質量%、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、アクリル酸、イタコン酸等の官能性モノマーを0〜10質量%含有するようなアクリル系重合体が最も好適である。
【0042】
フィルムの形状は、平面、拡散面、凹面、凸面、台形等、各種のフィルムミラーの表面被覆材として求められる形状であればよい。
【0043】
高分子フィルム層の厚さは、10〜125μmが好ましい。10μmより薄いと引っ張り強度、引き裂き強度が弱くなる傾向にあり、125μmよりも厚いと1600nm〜2500nmの範囲の平均反射率が80%を下回る。
【0044】
高分子フィルム層表面は、金属酸化物層、ハードコート層、誘電体コーティング層等との密着性を向上させるために、コロナ放電処理、プラズマ処理等が施されていてもよい。
【0045】
また、高分子フィルム層は、ベンゾトリアゾール系、ベンゾフェノン系、トリアジン系、シアノアクリレート系、ポリマー型の紫外線吸収剤のうちいずれかを含むことが好ましい。
【0046】
(紫外線吸収剤)
高分子フィルム層に使用される紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れており、かつ太陽光利用の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましい。
【0047】
紫外線吸収剤としては、例えば、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物、トリアジン系化合物等を挙げることができるが、ベンゾフェノン系化合物や着色の少ないベンゾトリアゾール系化合物、トリアジン系化合物が好ましい。また、特開平10−182621号、同8−337574号公報記載の紫外線吸収剤、特開平6−148430号、特開2003−113317号公報記載の高分子紫外線吸収剤を用いてもよい。
【0048】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤の具体例として、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(3”,4”,5”,6”−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2,2−メチレンビス(4−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−6−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェノール)、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−(2−オクチルオキシカルボニルエチル)−フェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−(1−メチル−1−フェニルエチル)−5’−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)−フェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)−6−(直鎖及び側鎖ドデシル)−4−メチルフェノール、オクチル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートと2−エチルヘキシル−3−〔3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−(5−クロロ−2H−ベンゾトリアゾール−2−イル)フェニル〕プロピオネートの混合物等を挙げることができるが、これらに限定されない。
【0049】
また、市販品として、チヌビン(TINUVIN)171、チヌビン(TINUVIN)900、チヌビン(TINUVIN)928、チヌビン(TINUVIN)360(いずれもチバ・ジャパン社製)、LA31(ADEKA社製)、RUVA−100(大塚化学製)が挙げられる。
【0050】
ベンゾフェノン系化合物の具体例として、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−5−スルホベンゾフェノン、ビス(2−メトキシ−4−ヒドロキシ−5−ベンゾイルフェニルメタン)等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0051】
(金属酸化物からなるガスバリア層)
金属酸化物からなるガスバリア層は、酸化珪素、酸化アルミニウム、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料とした複合酸化物、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ニオブ、酸化クロム等が挙げられ、特に水蒸気バリア性の観点から酸化珪素、酸化アルミニウム、または珪素、アルミニウムを出発材料とした複合酸化物が好ましい。そのほか波長550nmにおける屈折率が1.35から1.8の低屈折率層と、波長550nmにおける屈折率が1.85から2.8である高屈折率膜を交互に積層した多層膜であっても良い。低屈折率膜材料としては、酸化ケイ素、酸化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化アルミニウムなどが挙げられる。高屈折率膜材料としては、酸化ニオブ、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化インジウム、酸化タンタル、酸化ジルコニウムなどが挙げられる。これらは真空蒸着法、スパッター法、イオンブレーティングなどのPVD法(物理蒸着法)、あるいは、CVD法(化学蒸着法)などの真空プロセスにより形成される。金属酸化物からなるガスバリア層の厚さは5〜800nmの範囲が好ましく、更に好ましくは10〜300nmの範囲である。
【0052】
高分子フィルム上でガスバリア層を作製することによって、このようにして得られる酸化珪素層または酸化アルミニウム層、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料とした複合酸化物層は酸素、二酸化炭素、空気などのガスまたは水蒸気に対する高いバリア作用に優れる。
【0053】
また、酸化珪素層または酸化アルミニウム層、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料とした複合酸化物層と高分子フィルムの積層体は、40℃、90%RHにおける水蒸気透過度が1×10-2g/m2・24h以下であることが好ましい。水蒸気透過度はMOCON社製の水蒸気透過度測定装置PERMATRAN−W3−33にて測定できる。
【0054】
さらに、酸化珪素層または酸化アルミニウム層、または酸化珪素、酸化アルミニウムを出発材料とした複合酸化物層は、膜厚がそれぞれ1μm以下であり、それぞれの光線透過率の平均値は90%以上であることが好ましい。これによって、光損失がなく、太陽光を効率よく反射することができる。
【0055】
(高分子フィルム層と金属酸化物からなるガスバリア層の厚みの比率)
高分子フィルム層と金属酸化物からなるガスバリア層の厚みの比率は0.1%〜5%の範囲であることが好ましい。比率が0.1%よりも大きいと、すなわち高分子フィルムに対するガスバリア層の厚みが厚くなると、十分なガスバリア性が得られ、劣化進行を抑える機能が発揮されるため好ましい。比率が5%よりも小さい、すなわち高分子フィルムに対するガスバリア層の厚みが薄くなると、外部からの曲げの力が加わったときでも金属酸化物にクラックが入りにくく、結果ガスバリア性が得られ、劣化進行を抑える機能が発揮されるため好ましい。
【0056】
(金属からなる反射層)
金属からなる反射層としては、例えば、銀または銀合金、その他、金、銅、アルミニウム、これらの合金も用いることができる。特に、銀を使用することが好ましい。このような反射層は、光を反射させる反射膜としての役割を果たす。反射層を銀または銀合金からなる膜とすることにより、フィルムミラーの赤外域から可視光領域での反射率を高め、入射角による反射率の依存性を低減できる。赤外域から可視光領域とは、2500〜400nmの波長領域を意味する。入射角とは、膜面に対して垂直な線(法線)に対する角度を意味する。
【0057】
銀合金としては、反射層の耐久性が向上する点から、銀と、金、パラジウム、スズ、ガリウム、インジウム、銅、チタンおよびビスマスからなる群から選ばれる1種以上の他の金属とからなる合金が好ましい。他の金属としては、高温耐湿性、反射率の点から、金が特に好ましい。
【0058】
反射層が銀合金からなる膜である場合、銀は、反射層における銀と他の金属との合計(100原子%)中、90〜99.8原子%が好ましい。また、他の金属は、耐久性の点から0.2〜10原子%が好ましい。
【0059】
また、反射層の膜厚は、60〜300nmが好ましく、80〜200nmが特に好ましい。反射層の膜厚が60nmより大きいと、膜厚が充分であり、光を透過してしまうことがなく、フィルムミラーの可視光領域での反射率を十分確保できるため好ましい。200nm程度までは膜厚に比例して反射率も大きくなるが、200nm以上は膜厚に依存しない。むしろ反射層の膜厚が300nm未満であると、反射層の表面に凹凸が発生しにくく、これにより光の散乱が生じにくいため、可視光領域での反射率が低下せず、好ましい。
【0060】
フィルムミラーには光沢が求められるが、金属箔を作製して接着する方法では表面凹凸があるために光沢を失う。広い面積範囲で均一な表面粗さを求められるフィルムミラーでは金属箔ラミネートは製造方法として好ましくない。金属からなる反射層は、湿式めっきや、真空蒸着等の乾式めっきで形成することが好ましい。または、銀錯体化合物を含む塗布液を塗布し、焼成や還元剤によって還元して銀を発生させ、反射層を形成するようにしてもよい。
【0061】
(粘着層)
粘着層としては、特に制限されず、例えばドライラミネート剤、ウエットラミネート剤、ヒートシール剤、ホットメルト剤などのいずれもが用いられる。例えばポリエステル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリ酢酸ビニル系樹脂、アクリル系樹脂、ニトリルゴムなどが用いられる。ラミネート方法は特に制限されず、例えばロール式で連続的に行うのが経済性及び生産性の点から好ましい。粘着層の厚さは通常1〜50μm程度の範囲から選ばれる。厚さが1μmより大きいと充分な粘着効果が得られるため好ましく、一方50μm未満であると粘着剤層が厚すぎて乾燥速度が遅くなるということがなく、能率的である。しかも本来の粘着力が得られ、溶剤が残留するなどの弊害が生じることもない。
【0062】
(剥離フィルム)
剥離フィルムは、基材と、基材上に設けられた剥離剤層とを有していることが好ましい。
【0063】
剥離フィルムは、その外表面が高い平滑性を有している。剥離フィルムを構成する剥離剤としては、例えば、シリコーン系樹脂、長鎖アルキル系樹脂、フッ素系樹脂、フルオロシリコーン樹脂、長鎖アルキル変性アルキド樹脂、シリコーン変性アルキド樹脂等のアルキド系樹脂等が挙げられる。
【0064】
上述した中でも、シリコーン樹脂を剥離剤の材料として用いた場合、より優れた剥離性を発揮する。シリコーン樹脂としては、付加型、縮合型、無溶剤型等いずれのものでも用いることができる。
【0065】
剥離フィルムを構成する剥離剤の平均厚さは、特に限定されないが、0.01〜0.3μmであるのが好ましく、0.05〜0.2μmであるのがより好ましい。剥離剤層の平均厚さが前記下限値より大きいと、剥離剤層としての機能を十分に発揮できる。一方、剥離剤層の平均厚さが前記上限値より小さいと、剥離フィルムをロール状に巻き取った際に、ブロッキングが発生しにくく、繰り出しに不具合を生じることがないため好ましい。
【0066】
(腐食防止剤層)
腐食防止剤層は、金属からなる反射層(具体的にはAg層)の変色防止として機能し、例えばチオエーテル系、チオール系、Ni系有機化合物系、ベンゾトリアゾール系、イミダゾール系、オキサゾール系、テトラザインデン系、ピリミジン系、チアジアゾール系が挙げられる。
【0067】
腐食防止剤層は、大別して銀との吸着基を有する腐食防止剤と、酸化防止剤が好ましく用いられる。以下、これらの腐食防止剤と酸化防止剤について具体例を挙げる。
【0068】
《銀との吸着基を有する腐食防止剤》
銀との吸着基を有する腐食防止剤としては、アミン類およびその誘導体、ピロール環を有する物、トリアゾール環を有する物、ピラゾール環を有する物、チアゾール環を有する物、イミダゾール環を有する物、インダゾール環を有する物、銅キレート化合物類、チオ尿素類、メルカプト基を有する物、ナフタレン系の少なくとも一種またはこれらの混合物から選ばれることが望ましい。
【0069】
アミン類およびその誘導体としては、エチルアミン、ラウリルアミン、トリ−n−ブチルアミン、o−トルイジン、ジフェニルアミン、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、2N−ジメチルエタノールアミン、2−アミノ−2−メチル−1,3−プロパンジオール、アセトアミド、アクリルアミド、ベンズアミド、p−エトキシクリソイジン、ジシクロヘキシルアンモニウムナイトライト、ジシクロヘキシルアンモニウムサリシレート、モノエタノールアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムベンゾエート、ジイソプロピルアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンカーバメイト、ニトロナフタレンアンモニウムナイトライト、シクロヘキシルアミンベンゾエート、ジシクロヘキシルアンモニウムシクロヘキサンカルボキシレート、シクロヘキシルアミンシクロヘキサンカルボキシレート、ジシクロヘキシルアンモニウムアクリレート、シクロヘキシルアミンアクリレート等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0070】
ピロール環を有する物としては、N−ブチル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−2,5ジメチルピロール、N−フェニル−3−ホルミル−2,5−ジメチルピロール,N−フェニル−3,4−ジホルミル−2,5−ジメチルピロール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0071】
トリアゾール環を有する物としては、1,2,3−トリアゾール、1,2,4−トリアゾール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、3−ヒドロキシ−1,2,4−トリアゾール、3−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、4−メチル−1,2,3−トリアゾール、ベンゾトリアゾール、トリルトリアゾール、1−ヒドロキシベンゾトリアゾール、4,5,6,7−テトラハイドロトリアゾール、3−アミノ−1,2,4−トリアゾール、3−アミノ−5−メチル−1,2,4−トリアゾール、カルボキシベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ3’5’−ジ−tert−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−4−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0072】
ピラゾール環を有する物としては、ピラゾール、ピラゾリン、ピラゾロン、ピラゾリジン、ピラゾリドン、3,5−ジメチルピラゾール、3−メチル−5−ヒドロキシピラゾール、4−アミノピラゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0073】
チアゾール環を有する物としては、チアゾール、チアゾリン、チアゾロン、チアゾリジン、チアゾリドン、イソチアゾール、ベンゾチアゾール、2−N,N−ジエチルチオベンゾチアゾール、P−ジメチルアミノベンザルロダニン、2−メルカプトベンゾチアゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0074】
イミダゾール環を有する物としては、イミダゾール、ヒスチジン、2−ヘプタデシルイミダゾール、2−メチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−ウンデシルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−フェニルイミダゾール、1−シアノエチル−2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−シアノエチル−2−ウンデシルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロメチルイミダゾール、2−フェニル−4,5ジヒドロキシメチルイミダゾール、4−フォルミルイミダゾール、2−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−フォルミルイミダゾール、4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−エチル−4−メチル−5−フォルミルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−4−フォルミルイミダゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0075】
インダゾール環を有する物としては、4−クロロインダゾール、4−ニトロインダゾール、5−ニトロインダゾール、4−クロロ−5−ニトロインダゾール等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0076】
銅キレート化合物類としては、アセチルアセトン銅、エチレンジアミン銅、フタロシアニン銅、エチレンジアミンテトラアセテート銅、ヒドロキシキノリン銅等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0077】
チオ尿素類としては、チオ尿素、グアニルチオ尿素等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0078】
メルカプト基を有する物としては、すでに上記に記載した材料も加えれば、メルカプト酢酸、チオフェノール、1,2−エタンジオール、3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、1−メチル−3−メルカプト−1,2,4−トリアゾール、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−メルカプトベンゾイミダゾール、グリコールジメルカプトアセテート、3−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等、あるいはこれらの混合物が挙げられる。
【0079】
ナフタレン系としては、チオナリド等が挙げられる。
【0080】
《酸化防止剤》
本発明に係る腐食防止剤層に用いることの出来る酸化防止剤としては、フェノール系酸化防止剤、チオール系酸化防止剤およびホスファイト系酸化防止剤を使用することが好ましい。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェニル)ブタン、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、テトラキス−〔メチレン−3−(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,3,5−トリス(3’、5’−ジ−t−ブチル−4’−ヒドロキシベンジル)−S−トリアジン−2,4,6−(1H,3H,5H)トリオン、ステアリル−β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、トリエチレングリコールビス〔3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネー〕、3,9−ビス[1,1−ジ−メチル−2−〔β−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ〕エチル]−2,4,8,10−テトラオキオキサスピロ〔5,5〕ウンデカン、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン等が挙げられる。
【0081】
特に、フェノール系酸化防止剤としては、分子量が550以上のものが好ましい。チオール系酸化防止剤としては、例えば、ジステアリル−3,3’−チオジプロピオネート、ペンタエリスリトール−テトラキス−(β−ラウリル−チオプロピオネート)等を挙げられる。ホスファイト系酸化防止剤としては、例えば、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジ(2,6−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、ビス−(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)−ペンタエリスリトールジホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレン−ジホスホナイト、2,2’−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト等が挙げられる。
【0082】
フィルムミラーの製造方法の一例としては、高分子フィルム層の上の表面に、金属からなる反射層を形成し、更に、その上に腐食防止剤層を積層する例が挙げられる。高分子フィルム層の下の表面に粘着層と、剥離フィルムとを積層した後、高分子フィルム層の上の表面、すなわち腐食防止剤層の上に接着層を形成することができる。別の高分子フィルム層の下の表面に、ガスバリア層を成膜し、別の高分子フィルム層のガスバリア層と上記高分子フィルム層の接着層を対面させて張り合わせて作製するようにしてもよい。
【0083】
(接着層)
接着層としては、樹脂からなり、フィルムと上述の紫外線吸収剤入りの高分子フィルム層とを密着するものである。従って、接着層はフィルムと紫外線吸収剤含有高分子フィルム層とを密着する密着性、及びの金属からなる反射層が本来有する高い反射性能を引き出すための平滑性、透明性が必要である。
【0084】
接着層に使用する樹脂は、上記の密着性、耐熱性、及び平滑性の条件を満足するものであれば特に制限はなく、ポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリアミド系樹脂、塩化ビニル系樹脂、塩化ビニル酢酸ビニル共重合体系樹脂等の単独またはこれらの混合樹脂が使用でき、耐候性の点からポリエステル系樹脂とメラミン系樹脂の混合樹脂が好ましく、さらにイソシアネート等の硬化剤を混合した熱硬化型樹脂とすればより好ましい。
【0085】
接着層の厚さは、0.01〜3μmが好ましく、より好ましくは0.1〜1μmである。厚さが、0.01μmより薄いと、密着性が悪くなり接着層を形成した効果がなく、またフィルム基材表面の凹凸を覆い隠すことができ難くなり、平滑性が悪くなるので好ましくない。厚さが、3μmより厚くても、密着性の向上は望めず、かえって塗りムラの発生により平滑性が悪くなったり、接着層の硬化が不充分となる場合があるので好ましくない。
【0086】
接着層の形成方法は、グラビアコート法、リバースコート法、ダイコート法等、従来公知のコーティング方法が使用できる。
【0087】
(ハードコート層)
フィルムミラーの最外層として、ハードコート層を設けることができる。ハードコート層は、傷防止のために設けられる。
【0088】
ハードコート層は、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、メラミン系樹脂、エポキシ系樹脂、有機シリケート化合物、シリコーン系樹脂等で構成することができる。特に、硬度と耐久性等の点で、シリコーン系樹脂やアクリル系樹脂が好ましい。さらに、硬化性、可撓性及び生産性の点で、活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂、または熱硬化型のアクリル系樹脂からなるものが好ましい。
【0089】
活性エネルギー線硬化型のアクリル系樹脂または熱硬化型のアクリル系樹脂とは、重合硬化成分として多官能アクリレート、アクリルオリゴマーあるいは反応性希釈剤を含む組成物である。その他に必要に応じて光開始剤、光増感剤、熱重合開始剤あるいは改質剤等を含有しているものを用いてもよい。
【0090】
アクリルオリゴマーとは、アクリル系樹脂骨格に反応性のアクリル基が結合されたものを始めとして、ポリエステルアクリレート、ウレタンアクリレート、エポキシアクリレート、ポリエーテルアクリレート等であり、また、メラミンやイソシアヌール酸等の剛直な骨格にアクリル基を結合したもの等も用いられ得る。
【0091】
また、反応性希釈剤とは、塗工剤の媒体として塗工工程での溶剤の機能を担うと共に、それ自体が一官能性あるいは多官能性のアクリルオリゴマーと反応する基を有し、塗膜の共重合成分となるものである。
【0092】
市販されている多官能アクリル系硬化塗料としては、三菱レイヨン株式会社;(商品名“ダイヤビーム(登録商標)”シリーズ等)、長瀬産業株式会社;(商品名“デナコール(登録商標)”シリーズ等)、新中村株式会社;(商品名“NKエステル”シリーズ等)、大日本インキ化学工業株式会社;(商品名“UNIDIC(登録商標)”シリーズ等)、東亜合成化学工業株式会社;(商品名“アロニックス(登録商標)”シリーズ等)、日本油脂株式会社;(商品名“ブレンマー(登録商標)”シリーズ等)、日本化薬株式会社;(商品名“KAYARAD(登録商標)”シリーズ等)、共栄社化学株式会社;(商品名“ライトエステル”シリーズ、“ライトアクリレート”シリーズ等)等の製品を利用することができる。
【0093】
ハードコート層中には、さらに各種の添加剤を必要に応じて配合することができる。例えば、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤等の安定剤、界面活性剤、レベリング剤及び帯電防止剤等を用いることができる。
【0094】
レベリング剤は、特に機能層を塗工する際、表面凹凸低減に効果的である。レベリング剤としては、例えば、シリコーン系レベリング剤として、ジメチルポリシロキサン−ポリオキシアルキレン共重合体(例えば東レダウコーニング(株)製SH190)が好適である。
【0095】
(紫外反射層)
フィルムミラーに紫外反射層を設けてもよい。紫外反射層は、紫外線を反射し可視光及び赤外光を透過する層のことである。紫外反射層は、300nm〜400nmの電磁波(紫外線)に対する平均反射率が75%以上であることが好ましい。また、紫外反射層は、400nm〜2500nmの電磁波(可視光及び赤外光)に対する平均透過率が80%以上であることが好ましい。
【0096】
フィルムミラーは、金属反射層の太陽光を入射する側に高分子フィルム層を配置し、高分子フィルム層を通過した太陽光を金属反射層で反射するため、高分子フィルム層は常に太陽光に曝される。したがって、高分子フィルム層の太陽光を入射する側に紫外反射層を配置することにより、紫外線による高分子フィルム層の劣化、変色を防止でき、高分子フィルム層の光線透過率の低下を低減できるため、フィルムミラーの反射率低下を低減することが可能となる。また、高分子フィルム層の太陽光を入射する側に紫外反射層を設けることにより、太陽光の紫外線による高分子フィルム層の劣化に起因した、高分子フィルム層の防湿性の低下も低減できる。そのため、高分子フィルム層の防湿性の劣化に伴う金属反射層の劣化も防止できるため、フィルムミラーの反射率低下を低減することが可能となる。
【0097】
紫外反射層としては特に限定されないが、屈折率の異なる2種類以上の誘電体物質の交互層からなる誘電体多層膜を用いることができる。本発明に係る誘電体多層膜としては、高屈折率の誘電体層と低屈折率の誘電体層を交互に2層以上6層以下積み重ねて構成することが好ましい。このように、誘電体層を積み重ねた多層構造にすることにより、誘電体多層膜の耐傷性を高めることができる。高屈折率の誘電体層は、屈折率が2.0〜2.6であることが好ましい。また、低屈折率の誘電体層は、屈折率が1.8以下であることが好ましい。
【0098】
高屈折率の誘電体層としてはZrO2、TiO2低屈折率の誘電体層としてはSiO2、Al23を好ましく用いることができる。本発明で用いられる高屈折率の誘電体層としてはTiO2、低屈折率の誘電体層としてはSiO2をより好ましく用いることができる。TiO2を高屈折率の誘電体操として、紫外反射層の最表面つまりフィルムミラーの最表面で用いる場合、TiO2の光触媒効果によるミラー表面の防汚効果を得ることができるため、ミラー表面の汚れに起因したフィルムミラーの反射率の低下を低減することが可能となる。
【0099】
(犠牲防食層)
フィルムミラーは犠牲防食層を有していてもよい。犠牲防食層とは、金属反射層を犠牲防食により保護する層のことであり、犠牲防食層を金属反射層と保護層との間に配置することにより、金属反射層の耐食性を向上させることができる。犠牲防食層としては銀よりもイオン化傾向の高い銅が好ましく、銅の犠牲防食層は銀から成る反射層の下に設けることによって、銀の劣化を抑制することができる。
【0100】
フィルムミラーは、例えば以下のような工程にて製造することができる。
【0101】
[工程1]
高分子フィルム層(基材)として、2軸延伸ポリエステルフィルム(ポリエチレンテレフタレートフィルム、厚さ60μm)を準備し、蒸着機内部に配置し、蒸着機内部を真空ポンプによって真空にする。真空蒸着機内には、ロール状に巻いた高分子フィルムを繰り出す繰り出し装置と、高分子フィルムに蒸着処理を施して金属蒸着された高分子フィルムを巻き取る巻き取り装置とが配置されている。繰り出し装置と巻き取り装置との間には、フィルムをそれぞれ案内するように、ロールが多数配置され、駆動手段により高分子フィルム走行と同期して回転駆動されるようになっている。
【0102】
[工程2]
高分子フィルム層走行方向上流側部分と対向する位置には、金属酸化物の蒸着核蒸発源が配置されている。蒸着核蒸発源は、Si、Al、Ag、Cu、等の金属を高分子フィルムに蒸着するためのものであり、真空蒸着法等により金属蒸気を発生させ、フィルムの全幅に亘って均一に金属酸化物蒸着膜および金属蒸着膜を形成する。
【0103】
[工程3]
工程2で作製した金属蒸着膜の表面にポリエステル系の接着剤を5μm厚に塗布する。上記の作製順序に限らず、工程2の後に金属の劣化防止に効果のある腐食防止剤を塗布しても良いし、同じく金属の劣化防止に犠牲防食層、例えばCuを蒸着しても良い。
【0104】
また、強い紫外線から高分子フィルムを保護するために高分子フィルムやそのほか太陽光を入射する側に配置されるハードコート層に紫外線吸収剤を添加すれば、着色を防止し、反射効率を維持することができる。
【0105】
以上が、「フィルムミラー」についての説明となる。
【0106】
次に、「薄板ガラスミラー」とは、薄いガラスの基材に反射層を設けたミラーをいう。ガラスの厚さは25〜1500μmであると好ましい。薄板ガラスミラーは、構造体を設けることなく、直接基板に取り付けることが可能であるが、構造体に固着した上で、基板に取り付けてもよい。
【0107】
「可塑性の材料」は、固定前の状態が、好ましくは柔軟性のある変形可能な固体、ゲル状の固体もしくは、変形可能な容器に収容された液体又は気体であって、少なくとも一面の形状を固定可能なものをいう。可塑性の材料は、変形固定後、固化するものであってもよい。また、可塑性の材料が液体や気体である場合は、容器に収容された状態で液体や気体の量を変え、それに伴い周囲の容器(反射部が敷設されている)が変形し、一定の量になったところで封止することで、可塑性の材料の性質は変化させずに変形固定させてもよい。また、可塑性の材料は塑性変形可能な材料であってもよい。可塑性の材料を変形後固定することにより支持体になる。可塑性の材料としては、石膏、UV硬化樹脂(例えばスリーボンド社製の商品名3161,3164,3165)、熱硬化樹脂(例えばフェノール樹脂、エポキシ樹脂、シリコン樹脂、ユリア樹脂、メラミン樹脂)、様々な液体などがあげられる。可塑性の材料の固定は、UV硬化、可視光による硬化、熱硬化、封止などがある。可塑性の材料は固定前に成形されると好ましい。成形は、型押しやネジ止め、陰圧などの手法で行える。成形された面は、回転放物面形状(3次元凹面)や、円筒形状(2次元凹面)であると好ましい。好ましくは回転対称な凹面である。反射部は、固定される一面に設けられると好ましい。一面は反射部を敷設するため、表面が平滑な平面であることが好ましい。
【0108】
可塑性の材料を捕捉する捕捉部を設けても良い。捕捉部としては、ゲル状の固体を支持する板状の場合と、液体又は気体を支持する容器の場合とがある。捕捉部の形状としては、捕捉部表面直交方向から見た形状が、円状、楕円状、正方形や長方形等の四角形状、正六角形状等の形状であることが好ましい。板状の捕捉部は、一枚の板形状であってもよいし、異なる材料の複数の板を積層させた形状であってもよいし、軽量化のために板内部がハニカム構造や格子状枠を有し、表面を薄板で覆った形状であってもよい。捕捉部の素材としては、チタン、鉄、鋼、SUS、FRP、銅、黄銅又は青銅、アルミ、ガラス等を単体、又は複合材として用いることができる。複合材として用いる場合、これらの素材を板材としてハニカム構造など中空の構造を挟むようにすると軽量化が促進され好ましい。ハニカム構造は、アルミ、樹脂、紙などを加工することで形成できる。捕捉部のより具体的な例としては、2枚のアルミ合金板でハニカム構造を挟んだもの、2枚のアルミ合金板で発泡層を挟んだもの、2枚のFRPボードでハニカム構造を挟んだもの、アルミ合金板とFRPボードでハニカム構造を挟んだもの、SUS板でハニカム構造を挟んだものなどが挙げられる。
【0109】
可塑性の材料が収容される空間は、密閉されていない場合と、密閉されている場合とがある。可塑性の材料が密閉されていない場合、ゲル状の固体を反射部と基板との間に配置して、反射部側から押圧することにより反射部と可塑性の材料とを変形させることができる。このとき、押圧する部材としては、金型や、反射部から可塑性の材料を貫通して基板に至るネジ部材などがある。
【0110】
可塑性の材料が密閉されている場合、可塑性の材料は変形可能な密封容器(例えば捕捉部)内に収容され、反射部側から押圧することにより、密封容器内で可塑性の材料を移動させ、これにより反射部を変形させることができる。或いは、密封容器内に液体等を収容しておき、その一部を排出口から排出させた後に排出口を塞ぐことでも、反射部を変形させることができる。
【0111】
「太陽熱発電システム」は、少なくとも1つの集熱部と、太陽光を反射して集熱部に照射するための少なくとも1つの太陽光集光用ミラーとを有し、例えば集熱部に集められた熱を用いて液体を加熱しタービンを回して発電するものがある。尚、集熱部の周囲に、太陽光集光用ミラーが複数配置されていることが好ましい。好ましくは、図1に示すように同心円状や、同心の扇状に複数の太陽光集光用ミラーが配置されていることである。また、集熱部から、それぞれの太陽光集光用ミラーまでの距離に応じて、反射部又は構造体の中心部と、周辺部との、Z方向の相対位置が異なることが好ましい。
【0112】
集熱部と太陽光集光用ミラーまでの距離のうち最も短い距離が、10m以上であるようなシステムにおいて、軽量のフィルムミラーを使用可能としつつ、集光効率を低下させないという本発明の太陽光集光ミラーの効果が顕著となる。特に、タワー型(ビームダウン式、タワートップ式等)の太陽熱発電システムにおいてこの発明は好ましく用いられるが、トラフ型の太陽熱発電システムに用いても良い。
【0113】
四角形状や、六角形状の太陽光集光用ミラーを複数隣接させ組み合わせて、疑似凹状の大きなミラーとしてもよい。好ましくは正六角形状をハニカム構造のように組み合わせることである。それぞれの太陽光集光用ミラーを任意の曲率の凹面ミラーとできるため、集光効率を大幅に向上できる。
【発明の効果】
【0114】
本発明によれば、高い集光効率を得ることができ、しかも、所望の曲率の反射面を大量に製造できる太陽光集光用ミラーの製造方法及び太陽光集光用ミラー並びにそれを用いた太陽熱発電システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0115】
【図1】フィルムミラーEの構造を示す図である。
【図2】本発明にかかる太陽光集光用ミラーを用いた太陽熱発電システムの斜視図である。
【図3】太陽熱発電光システムを側方から見た図である。
【図4】太陽光集光用ミラーSLの斜視図である。
【図5】第1の実施の形態にかかる太陽光集光用ミラーSLの製造工程を示す図である。
【図6】第2の実施の形態にかかる太陽光集光用ミラーSLの製造工程を示す図である。
【図7】第3の実施の形態にかかる太陽光集光用ミラーSLの製造工程を示す図である。
【図8】フィルムミラーの表面層が厚い場合にゴミが付着した様子(a)、フィルムミラーの表面層が薄い場合にゴミが付着した様子(b)を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0116】
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態をさらに詳細に説明する。図2は、本発明にかかる太陽光集光用ミラーを用いた太陽熱発電システムの斜視図である。図3は、かかる太陽熱発電光システムを側方から見た図である。ここでは、ビームダウン式の太陽熱発電光システムを説明するが、タワートップ式の太陽熱発電光システムにも適用できる。
【0117】
図2において、比較的大径の集光鏡11は、複数枚のミラーを楕円形状に沿って組み合わせてなり、3本の支持タワー12により所定の高さ位置に、反射面を下向き状態にして保持されている。集光鏡11の下方には、太陽光Lを熱エネルギーに変換するための集熱部14を有する熱交換施設13が建設されている。そして、支持タワー12の周囲の地上には、支持タワー12を取り囲んだ状態で、多数のヘリオスタット15が設けられている。集光鏡11には、最大入射放射照度5kW/m2以上の光が入射するようになっている。
【0118】
図3において、各ヘリオスタット15は、地面に植設された柱部PLと、柱部PLの上端に取り付けられた太陽光集光用ミラーSLとからなる。柱部PLは、不図示のアクチュエータによって軸線回りに回動可能であり、且つ太陽光集光用ミラーSLは、柱部PLに対して不図示のアクチュエータにより仰角を変更可能となっている。尚、最も熱交換器に近い太陽光集光用ミラーSLの距離は、光路長で10m以上である。
【0119】
図4は、太陽光集光用ミラーSLの斜視図である。太陽光集光用ミラーSLは、柱部PL上に固定された矩形板状の基板(捕捉部ともいう)STと、基板ST上に保持された支持体HLと、支持体HL上に形成された反射部であるフィルムミラーFMとを有する。支持体HLは、固化された状態にあるが、その前は任意に変形可能な可塑性の状態である。尚、基板STは必ずしも設ける必要はなく、柱部PLを直接、固化した支持体HLに接合しても良い。
【0120】
支持体HLの上面は、ミラーの軸線Xを中心とした回転放物面形状に固定されているので、フィルムミラーFMの反射面も回転放物面形状に固定されている。よって、太陽光集光用ミラーSLに太陽光Lが入射したときに、フィルムミラーFMで反射させることにより、集熱部に対して太陽光Lを効率的に集光させることができる。
【0121】
図5は、本実施の形態にかかる太陽光集光用ミラーSLの製造工程を示す図である。図5(a)に示すように、基板ST上に可塑性の材料(ここでは熱硬化製樹脂)HLを載置し、更にその上にフィルムミラーFMを載置する。
【0122】
その後、図5(b)に示すように、下面に回転放物面を形成した型MDをフィルムミラーFM側から接近させ、フィルムミラーFMを介して可塑性の材料HLを押圧して成形する。この状態を保持したまま、不図示のヒータで周囲から加熱し、可塑性の材料を硬化させて支持体HLとする。
【0123】
可塑性の材料を硬化させた後、型MDを退避させると、型MDの下面により押圧されたフィルムミラーFMが回転放物面に成形され、その形状が固定された支持体HLによって維持されるので、これにより太陽光集光用ミラーSLの製造することができる。尚、型MDにより可塑性の材料HLを押圧した際に、フィルムミラーFMの周囲にはみ出る材料が生じるが、これは固定後にカットしても良いし、そのまま残しても良い。
【0124】
本実施の形態によれば、工場にて高精度な回転放物面を有する太陽光集光用ミラーSLを安価に製造でき、又ガラスミラーに比べると軽量であるから運搬が容易で、太陽熱発電システムのコストを低減できる。
【0125】
型MDの転写面を円筒状(2次元凸面)とすれば、いわゆるトラフ型の太陽熱集光システムにおいて、蓄熱媒体を流すチューブに太陽光を集光させるために用いる太陽光集光ミラーSLを形成できる。トラフ型の太陽熱集光システムについては、特開2008-232524号公報に開示されている。
【0126】
図6は、別の実施の形態にかかる太陽光集光用ミラーSLの製造工程を示す図である。上述の実施の形態と同様に、捕捉部としての基板ST上に可塑性の材料(ここでは可視光硬化性の樹脂)HLを載置し、更にその上にフィルムミラーFMを載置した後、不図示のドリルなどを用いて基板ST、可塑性の材料HL、フィルムミラーFMの中央に、貫通孔APを穿設する。
【0127】
その後、ネジ部材であるボルトBTをフィルムミラーFM側から貫通孔APに挿入し、図6(b)に示すように、基板ST側に配置したナットNTに螺合させて締め上げると、可塑性の材料HLが周囲に逃げ、フィルムミラーFM側の孔周辺の部分が基板STに向かって接近する。従って、ボルトBTの締め上げ量に応じて、フィルムミラーFMの周囲面の傾きを変えた、疑似放物面の反射面とできる。所望の形状になったら、図6(c)に示すように、この状態を維持したまま、可視光により可塑性の材料を硬化させて支持体HLとする。尚、ボルトBTの締め上げ時に、フィルムミラーFMの周囲にはみ出る材料が生じるが、これは硬化した後に除去しても良いし、そのまま固化して残しても良い。ボルトBTが変更手段を構成する。
【0128】
本実施の形態によれば、現場にて、実際に太陽光を太陽光集光用ミラーSLで反射させて集光位置を確認しながら、反射面形状を調整できるため、太陽熱発電システムのコストを低減できる。
【0129】
図7は、別の実施の形態にかかる太陽光集光用ミラーSLの製造工程を示す図である。本実施の形態では、捕捉部としての容器型の基板を用いる。まず、図7(a)に示すように、蓋CPにより閉止された孔APを中央に有する底板BPと、周囲壁PWとからなる、上部が開放した容器状の基板内STを準備する。この基板ST内に液体LQを入れて、フィルムミラーFMが液体LQの上面に接するようにしながら基板STの上部を密閉する。これにより基板ST内は密封された状態になる。
【0130】
その後、図7(b)に示すように、蓋CPを取り除いて孔APから液体LQを排出すると、内部の圧力が下がることで、剛性が高い周囲壁PWよりも中央側のフィルムミラーFMが底板BPに接近するように変形する。これにより、フィルムミラーFMの反射面を疑似放物面とできる。フィルムミラーFMが所望の形状になったら、図6(c)に示すように、孔APを蓋CPで封止する。蓋CPが変更手段を構成する。
【0131】
尚、図7(c)に点線で示すように、底板BP上に任意の厚さ・径のリング状の部材RGを配置して、流体LQの排出時に変形したフィルムミラーFMの下面に当接させることによって、それ以上のフィルムミラーFMの変形を抑制することで、所望の形状になるよう制御することもできる。
【0132】
本実施の形態によれば、現場にて、実際に太陽光を太陽光集光用ミラーSLで反射させて集光位置を確認しながら、反射面形状を調整できるため、太陽熱発電システムのコストを低減できる。
【符号の説明】
【0133】
AP 孔、貫通孔
BT ボルト
BP 底板
CP 蓋
FM フィルムミラー
HL 支持体
LQ 液体
MD 型
NT ナット
PL 柱部
PP 周囲壁
RG リング状の部材
SL 太陽光集光用ミラー
ST 基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光集光用ミラーの製造方法であって、
変形可能な反射部を、可塑性の材料上に敷設する工程と、
前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させる工程と、
前記可塑性の材料の形状を固定する工程とを有することを特徴とする太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項2】
成形用の型を、前記反射部を介して前記可塑性の材料に押し付けることにより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項3】
前記可塑性の材料を硬化させることにより、前記可塑性の材料の形状を固定することを特徴とする請求項2に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項4】
前記可塑性の材料を前記反射部と基板との間に配置して、前記反射部と前記基板の少なくとも一部を相対的に接近させることにより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項5】
前記反射部と前記基板とをネジ部材で連結し、前記ネジ部材を締め上げることもより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする請求項4に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項6】
前記反射部と前記基板の少なくとも一部の距離を、前記ネジ部材を用いて固定することにより、前記可塑性の材料の形状を固定することを特徴とする請求項5に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項7】
前記可塑性の材料は容器内に収容された流体であって、前記可塑性の材料の一部を前記容器外に排出することにより、前記反射部と前記可塑性の材料とを変形させることを特徴とする請求項1に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項8】
前記可塑性の材料を容器内に密封することにより、前記可塑性の材料の形状を固定することを特徴とする請求項7に記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項9】
変形後の前記反射部は回転放物面を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項10】
変形後の前記反射部は樋状の反射面を有することを特徴とする請求項1〜8のいずれかに記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項11】
前記反射部は弾性変形可能であることを特徴とする請求項1〜10のいずれかに記載の太陽光集光用ミラーの製造方法。
【請求項12】
少なくとも一面を所定の形状に固定可能な可塑性の材料からなる支持体と、前記一面に敷設された反射部とを有することを特徴とする太陽光集光用ミラー。
【請求項13】
前記可塑性の材料を捕捉する捕捉部と、前記反射部が敷設された状態で前記捕捉部に捕捉された前記可塑性の材料を移動もしくは除去することにより、前記反射部の形状を変更する変更手段とを有することを特徴とする請求項12に記載の太陽光集光用ミラー。
【請求項14】
太陽熱発電システムであって、
少なくとも1つの集熱部と、請求項13に記載の太陽光集光用ミラーとを有し、前記太陽光集光用ミラーは、太陽光を反射して前記集熱部に照射することを特徴とする太陽熱発電システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−15612(P2013−15612A)
【公開日】平成25年1月24日(2013.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−147121(P2011−147121)
【出願日】平成23年7月1日(2011.7.1)
【出願人】(303000408)コニカミノルタアドバンストレイヤー株式会社 (3,255)
【Fターム(参考)】