説明

太陽熱集熱器及び当該太陽熱集熱器を含む電気エネルギー生成設備

本発明は、太陽熱集熱器(26)において、一方の端が閉鎖されている円筒形断面の外管(64)と、太陽放射線(R3)を吸収するための、外管(64)の内側に配設されている層(52)と、外管(64)の内側に配設されている高温部分(58)、外管(64)の外側に配設されている冷温部分(60)、及びヒートパイプ流体(63)を収容していて高温部分(58)と冷温部分(60)に亘って延びる槽(62)を含むヒートパイプ(56)と、を含んでいる太陽熱集熱器(26)に関する。外管(64)は、他方の端が、ヒートパイプ(56)を囲んでシールされていて、前記外管(64)の内側に真空が形成されている。ヒートパイプ(56)の高温部分(58)に配慮して、槽(62)は少なくとも局所的に吸収層に寄せて宛がわれている。本発明は、ヒートパイプ(56)の高温部分(58)が半円筒形であることを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽熱集熱器において、
−一方の端が閉鎖されている円筒形断面の外管と、
−太陽放射線を吸収するための、外管の内側に配設されている吸収層と、
−外管の内側に敷設されている高温部、外管の外側に配設されている冷温部、及びヒートパイプ流体を収容していて高温部と冷温部に亘って延びる溜め、を含むヒートパイプと、を備え、
前記外管は、他方の端が、ヒートパイプを囲んで密封閉鎖されていて、前記外管の内側に真空が形成されている、型式の太陽熱集熱器に関する。
【0002】
本発明は、更に、太陽エネルギーから温水を発生させるためのシステムにおいて、
−伝熱流体を太陽エネルギーで加熱するのに適した複数の太陽熱集熱器と、
−伝熱流体を太陽熱集熱器と温水分流器の間で輸送するための回路と、を備えているシステムに関する。
【0003】
本発明は、更に、太陽エネルギーから電気エネルギーを生成するための設備において、
−温水発生システムと、
−熱シンクと、
−前記システム及び熱シンクによって発生させる温水を使用している発電用熱動力機械と、を備えている設備に関する。
【背景技術】
【0004】
同心で実質的に円筒形の外管と内管を備えた真空管を有する太陽熱集熱器が知られている。それぞれの管は、一方の端が閉鎖されていて、他方の端が互いにシールされている。太陽熱集熱器は、内管の外面に配設されていて、外管に向けて配置されている太陽放射線吸収層を備えている。太陽熱集熱器は、内管の内側に敷設されている高温部(蒸発器)、それらの管の外側に配設されている冷温部(凝縮器)、及びヒートパイプ流体を収容していて高温部と冷温部に亘って延びる溜め、を有するヒートパイプを含んでいる。ヒートパイプの高温部は、実質的に内管の軸に中心合わせされた円筒の形状をしている溜めを備えており、円筒形の溜めには対角線上に2枚のフィンが固定され、溜めを内管の内面に機械的及び熱的に連係している。溜めは、内管の直径より遥かに小さい直径を有している。
【0005】
吸収層への熱伝導は最適ではなく、甚大な熱損失をもたらしている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
故に、本発明の1つの目的は、熱損失を低減するために、ヒートパイプへの熱伝導を改善することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本太陽熱集熱器は、
−一方の端が閉鎖されている円筒形断面の外管と、
−太陽放射線を吸収するための、外管の内側に配設されている吸収層と、
−外管の内側に敷設されている高温部、外管の外側に配設されている冷温部、ヒートパイプ流体を収容していて高温部と冷温部に亘って延びる溜め、を含むヒートパイプと、を備えている。
【0008】
外管は、他方の端が、ヒートパイプを囲んで密封閉鎖されていて、前記外管の内側に真空が形成されている。
ヒートパイプの高温部を支援して、溜めは少なくとも局所的に吸収層に寄せて宛がわれている。
【0009】
目的を達成するために、本発明の或る態様は、上述の型式の太陽熱集熱器において、ヒートパイプの高温部を支援して、溜めは少なくとも局所的に吸収層に寄せて宛がわれている。
【0010】
シュテファン・ボルツマンの法則によれば、黒体によって放射されるエネルギー束は、黒体放射量とも呼ばれるが、これは、ケルビンで表記された黒体の絶対温度を表すTの4乗に比例して増加する。ガラス製外管によって引き起こされる温室効果を逃れる黒体放射に関しては、これは4よりも更に大きいTの冪数に基づいて増加する。
【0011】
本発明による太陽熱集熱器は、黒体と見なすことのできる吸収層とヒートパイプとの間の熱伝導を向上させ、これによって、吸収層の温度の上昇を従来型の太陽熱集熱器に比較して著しく低減する。こうして、本発明による太陽熱集熱器は、温室効果を逃れる黒体放射による熱損失を低減し、ひいては集熱器の効率を改善する。
【0012】
他の実施形態によれば、太陽熱集熱器は、以下の特徴、即ち、
−太陽熱集熱器は、追加的に、外管の内側に配設されている円形断面の内管を備え、それぞれの管は一方の端が閉鎖され、管同士は他方の端が互いにシールされており、管同士は真空によって分離されている、
−内管は、外管に向けて配置されている外面と、内面と、を含んでおり、吸収層は前記外面に寄せて配設されており、ヒートパイプの高温部を支援して、溜めは少なくとも局所的に前記内面に寄せて宛がわれている、
−集熱器は、吸収層とヒートパイプの高温部の間に配設されている熱伝導性界面を含んでいる、
−ヒートパイプの高温部は、半円筒の形状をしている、
−高温部の断面は、180°から220°の間の角度の円弧の形状をしている、
−ヒートパイプの冷温部は、円筒形の管に接触して配設するのに適しており、冷温部は、少なくとも1つの半円筒の形状をしている、
−高温部の半円筒の軸は、冷温部の半円筒の軸と異なっており、ヒートパイプは、高温部と冷温部の間の周方向及び/又は長手方向の広がりが、高温部及び冷温部の正形部分の広がりに対して狭くなっている部分を含んでおり、狭くなっている部分は高温部と冷温部の間の接続継手を形成している、
−溜めは、ヒートパイプ流体を循環させるための、概ね並列に延びている少なくとも3つの流路を含んでいる、
−当該又はそれぞれの流路は、高温部の半円筒の軸に実質的に従う向きに配置されている、
−ヒートパイプは、アルミニウムから作製されている、
−ヒートパイプは、溜めを形成する区域の外側の2枚の一体に結合されている金属シートによって形成されており、溜めは当該2枚のシートの間の隙間によって形成されている、
−ヒートパイプは、よう面を有するシート構造を呈しており、シートは、溜めを形成する流路の網目を含んでおり、流路はウェブ部分によって連係されている、
という特徴の1つ又はそれ以上の、単独か又は技術的に実施可能な任意の組合せとして採用されている特徴を備えている。
【0013】
本発明の別の態様は、上述の型式の温水発生システムにおいて、太陽熱集熱器が以上に定義されている通りの温水発生システムである。
別の実施形態によれば、温水発生システムは、以下の特徴、即ち、
−輸送回路は、伝熱流体用の輸送管を備えており、システムは、それぞれの太陽熱集熱器につき、集熱器を管に締結するための部品を備え、前記締結部品は、熱伝導性であり、管に接触して配設されている、という特徴を備えている。
【0014】
本発明の別の態様は、上述の型式の電気エネルギー生成設備において、温水発生システムが以上に定義されている通りの電気エネルギー生成設備である。
本発明及びその利点は、純粋に一例として与えられている以下の説明を読み、添付図面を参照することでより明解になるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による電気エネルギー生成設備の回路図である。
【図2】本発明の第1の実施形態による、ヒートパイプ流体を輸送するための回路に連係されている太陽熱集熱器の側面概略図である。
【図3】図2の集熱器及び回路を上から見た概略図である。
【図4】図3のIV面で切断された断面図である。
【図5】図4の枠で囲まれたV区域の拡大である。
【図6】図3の太陽熱集熱器のヒートパイプの分解概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態による、図2のものと同様の図である。
【図8】本発明による温水発生システムの回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1では、太陽エネルギーから電気エネルギーを生成するための設備は、温水発生システム2と、熱シンク4と、発電用熱動力機械6を含んでいる。
温水発生システム2は、太陽エネルギーによって第1伝熱流体10を加熱するための手段8と、熱エネルギーを貯蔵するための手段12と、第1伝熱流体10を輸送するための第1閉回路14と、を備えている。第1回路14は、加熱手段8と貯蔵手段12と発電用熱動力機械6を連係している。
【0017】
温水発生システム2は、第1ヒートパイプ流体10を輸送するための第1回路14を補助するための貯蔵槽16を備えている。
温水発生システム2は、混合器20と第1ポンプ22とを含んでいるフィードバックループ18を備えている。設備は、ループ18を遠隔制御するための手段24を含んでいる。
【0018】
加熱手段8は、後で図2から図7に関連付けてより詳細に説明されている複数の太陽熱集熱器26を含んでいる。
第1伝熱流体10は、例えば、150℃の最大温度、6バールの最大圧力下に使用される水である。
【0019】
第1回路14は、複数の弁28、混合器20、第1ポンプ22、及び第2ポンプ30を含んでいる。第1流体10は、2つのポンプ22、30によって、第1回路14を循環している。
【0020】
貯蔵手段12と第1回路14は、図示されていない絶縁物によって保温されている。
熱シンク4は、第2伝熱流体34を輸送するための第2回路32を備えている。循環はポンプ36によってもたらされている。第2流体34は、例えば、水である。
【0021】
熱動力機械6は、作動流体40を輸送するための第3回路38と、ボイラー42と、発電機44に連結されているタービン43と、凝縮器45とを備えている。
ポンプ46は、作動流体40を第3回路38の中で循環させている。作動流体40は、例えば、ブタン又はプロパンの様な有機流体であり、好適にはブタンである。作動流体40の沸点は、かなり低く、9.6バールの圧力では80℃近くである。
【0022】
ボイラー42は、温水を使って作動流体40を液体状態から気体状態へ変化させることを目的としている。高温の溜めの第1回路14は、ボイラー42内部ではコイル形体をしていて、コイルは作動流体40に接触している。ボイラー42の出口では、作動流体40は、約95℃の温度、約11バールの圧力下で、気体状態にある。
【0023】
タービン43は、従来的に、羽根が取り付けられた車軸を備えている回転子と、固定された偏向板を支承する筺体を備えている固定子を含んでいる。タービン43の出口では、作動流体40は気体状態にあって、2バールから3バールの間の圧力下で約40℃の温度にある。タービン43は、作動流体40が気体状態へ膨張することから生じるエネルギーを機械エネルギーへ変換することを目的としている。凝縮器45は、凝縮器45内部で作動流体40の状態を変化させることを目的としており、前記コイルは作動流体40と接触している。凝縮器45の出口では、作動流体40は液体状態にある。
【0024】
図2では、第1回路14は、第1伝熱流体10を輸送するための管48と、管48の外側部に配設されている熱絶縁シース50を備えている。管48は、円筒の形状をしていて、軸は実質的に水平面H上に向きが合わされている。
【0025】
太陽熱集熱器26は、太陽放射線Rを吸収するための吸収層52と、熱絶縁手段54と、ヒートパイプ56とを備えている。ヒートパイプ56は、絶縁手段54と輸送管48の形状に密接に従うよう面を呈しているシートによって形成されている。それは、絶縁手段54の内側に敷設されている高温部58と、絶縁手段54の外側に配設されている冷温部60を含んでいる。それは、流路のセットによって形成されている溜め62を備えており、流路は、ヒートパイプ56にそのシート構造を与えているウェブ部分によって互いに連係されている。溜め62は、ヒートパイプ伝熱流体63を収容しており、高温部58及び冷温部60に亘って延びている。ヒートパイプの高温部58を支援して、溜め62は、少なくとも局所的に吸収層52に寄せて宛がわれている。
【0026】
吸収層52は、例えば、微粉化された窒化アルミニウムから作製されている。
絶縁手段54は、吸収層52を実質的に密封式に取り囲んでいて、太陽放射線Rを通すのに適している。絶縁手段54は、吸収層52とヒートパイプの高温部58を太陽熱集熱器26の外部の気象条件に対して熱的に絶縁するのに適している。
【0027】
図4に確認できる絶縁手段54は、外管64と、外管64の内側に配設されている内管66を備えている。管64、66は実質的に円筒形で、円形断面を呈しており、軸Iを中心に同心である。それぞれの管64、66は、一方の端が半球の形状に閉鎖されており、管同士は、他方の端が互いにシールされている。内管66は、他端が開口している。内管66は、外管64に向けて配置されている外面66Aと、内面66Bを含んでいる。2つの管64、66は、真空67によって分離されている。吸収層52は、真空67内で、内管66の外面66Aに寄せて配設されている。管64、66は、例えば、ガラスから作製されている。
【0028】
絶縁手段54は、内管66の開放端に差し込まれている絶縁ストッパ68を含んでいる。
太陽熱集熱器26は、図4及び図5で確認できる様に、ヒートパイプの高温部58と絶縁手段54の間に敷設されている熱伝導性界面69を含んでいる。より具体的には、内管66の内面とヒートパイプの高温部58の間に、伝導性界面69が配設されている。
【0029】
変型としては、絶縁手段54は一方の端が閉鎖された外管64しか備えておらず、吸収層52はヒートパイプの高温部58に直に配設され、前記外管64の内側に真空67が形成されている。
【0030】
ヒートパイプの高温部58は、図4に示されている様に、軸Iの半円筒の形状である。高温部58の断面は、180°から220°の間の角度Aの円弧の形状をしている。
ヒートパイプの高温部58、特に高温部58に含まれている溜め62の部分は、内管66の内面66Bに寄せて宛がわれている。
【0031】
変型として、絶縁手段54が外管64しか備えていない場合、ヒートパイプの高温部58、特にこの高温部に含まれている溜め62の部分は、直に吸収層52を支承している。
ヒートパイプの冷温部60は、図2に示されている様に、管48と絶縁シース50の間に、管48に巻き付けられた状態で敷設されている、軸Xの半円筒の形状をしている。
【0032】
高温部58の半円筒の軸Iは、冷温部60の半円筒の軸Xと異なる。
軸Iは、水平面Hに対して傾斜し、水平面Hとの間に第1傾斜角度B1を形成している。第1傾斜角度B1の値は、5°より大きく、好適には30°より大きい。
【0033】
それぞれの太陽熱集熱器26は、締結部品69を介して管48に固定されている。図2の例となる実施形態では、締結部品69は、円筒形の第1部分69Aと、平坦な第2部分69Bを含んでおり、第1部分69Aと第2部分69BはL型曲り69Cによって連係されている。締結部品69は、熱伝導性であり、例えば、アルミニウムから作製されている。第1部分69Aは、管48と熱絶縁シース50管48の間に、管48に対してヒートパイプの高温部60の対角線上になる様式で、管48に接触して敷設されている。第2部分69Bは、ヒートパイプ56と接触して配設されている。締結部品69は、締結部品69とヒートパイプ56の各孔に挿通されている第1締結手段69D及び第2締結手段69Eを介してヒートパイプ56に取り付けられている。
【0034】
溜め62は、例えば、ヒートパイプ流体63用の3つの循環流路70を含んでいる。3つの循環流路70は、連係されていて、冷温部60内の各々の延長部と一体で、ヒートパイプ流体63用の閉回路を形成している。流路70のそれぞれは、半円筒の形状をしている高温部58の軸Iと実質的に整列する向きに配置されている。「実質的に」という用語は、軸Iに対して±5°までの角度公差を意味するものと理解する。
【0035】
流路70は、高温部58の中を延びる平行直線区間70Aを呈している。それらは、各々の自由端が接続管70Bによって連係されている。それぞれの直線区間は、冷温部60の中を延びるのに適した直線区間70Cによって延長されている。区間70Aと区間70Cは、ヒートパイプを形成しているシートの曲率が変化している領域に配設されている一群の収束後分岐区間70Dによって連係されている。
【0036】
ヒートパイプ流体63は、例えば、メタノール、エタノール、HFC冷媒、又はHCFC冷媒である。
ヒートパイプ56は、高温部58と冷温部60の間に、周方向の広がりが、高温部58と冷温部60の正形部分の広がりに対して狭くなっている部分71を含んでいる。図3及び図6に確認できる、狭くなっている部分71は、高温部58と冷温部60の間の接続継手を形成している。
【0037】
ヒートパイプ56は、図4及び図5に確認できる2枚のシート72Aと72Bによって形成されていて、シートは互いに固定されている。溜め62のそれぞれの流路70は、2枚のシート72Aと72Bの間の隙間によって形成されている。ヒートパイプのシート72A、72Bは、例えば、流路の境界を定める区域の外側に互いに結合された2枚の金属シートである。金属シート72A、72Bは、例えば、アルミニウムから作製されている。
【0038】
ヒートパイプの流路70を形成している隙間は、結合前に2枚のシート72A、72Bのうちの一方に特別なインクを付着させ、当該インクを付着させた区域では2枚の金属体が結合することが阻害されるようにすることによって作り出される。2枚のシート72A、72Bは、次いで、単一シートを形成するために熱間圧延される。そして、インクが付けられた区域に圧縮空気が吹きこまれることによって流路70が得られる。
【0039】
図6は、2枚の結合されたシート72A、72Bを所望の周囲に従って切断した後で、且つ軸I、Xの半円筒の形状に形成される前の、平坦な形態をしているヒートパイプ56を示している。高温部58と冷温部60は、例えば、ヒートパイプ56の延びている方向に直交して同一の第1幅L1を呈している。第1幅L1は、例えば、80mmに等しい。狭くなっている部分71は、延びている方向に直交して、第1幅L1より小さい値を有する第2幅L2を呈している。第2幅L2は、例えば、32mmに等しい。
【0040】
真空管太陽熱集熱器26の使用の温度は、80℃から150℃の間である。
電気エネルギー生成設備の作動、特に太陽熱集熱器の作動を、これより説明してゆく。
本電気エネルギー生成設備は、温水発生システムの最大温度が150℃に等しく、これは、高温の溜めの中を循環する伝熱流体の温度が400℃を超える円筒形−パラボラ集熱器発電設備、太陽塔発電設備、パラボラ集熱器発電設備の様な他の太陽熱発電設備で使用されている温度より著しく低いという点から見て、低温度設備と呼ばれている。
【0041】
加熱手段6の太陽熱集熱器26は、昼間、太陽放射線Rを収集すると、次いで太陽放射線Rに付随する熱エネルギーを第1伝熱流体に伝達する。
より具体的には、太陽放射線Rは、それぞれの太陽熱集熱器の吸収層52によって吸収されており、絶縁手段54は太陽放射線Rを通過させる。太陽放射線Rの吸収に付随する熱エネルギーは、次に、内管66と熱伝導性界面69を介してヒートパイプ56に伝達される。太陽熱集熱器26の外部への熱エネルギーの散逸は、熱絶縁手段54のおかげで、真空67が熱絶縁と温室効果を提供していることによって制限される。
【0042】
溜め62は少なくとも局所的に内管の内面66Bに寄せて宛がわれているため、黒体と見なすことのできる吸収層52とヒートパイプ56との間には良好な熱伝導がもたらされる。この良好な熱伝導は、従来の太陽熱集熱器に比べ、吸収層52の温度の上昇を著しく低減し、それによって、温室効果を逃れる黒体放射による熱損失を小さくすることができる。
【0043】
変形として、絶縁手段54が外管64しか備えていない場合、吸収層52はヒートパイプの高温部58に直に宛がわれているため、同様に良好な熱伝導が吸収層52とヒートパイプ56の間にもたらされる。
【0044】
ヒートパイプの高温部58に伝達された熱エネルギーは、ヒートパイプ流体63の相の液体状態から気体状態への変化を徐々にもたらす。気体状態になったヒートパイプ流体は、次に、ヒートパイプの冷温部60に向かって、溜めの様々な流路70を通って上昇してゆく。溜め62は、少なくとも局所的にヒートパイプの高温部58の吸収層52に寄せて宛がわれているので、吸収層52とヒートパイプ流体63の間では熱伝導が改善され、その結果、熱損失が小さくなる。
【0045】
ヒートパイプ流体63によって高温部58から冷温部60へ輸送された熱は、次に、冷温部60に配設されている流路70と第1回路の管48の間の熱伝導によって、第1伝熱流体10に伝達される。この熱伝導は、ひいては、第1伝熱流体10の温度の上昇及びヒートパイプ流体63の温度の低下をもたらす。
【0046】
ヒートパイプ流体62の温度の低下に続き、ヒートパイプ流体63は、相を再び気体状態から液体状態へ徐々に変化させてゆく。ヒートパイプ流体は、液体状態になると、傾斜角度B1のせいで、重力によって下降し、太陽放射線から発生する熱エネルギーを再び輸送するために冷温部60から高温部58へ戻ってゆく。
【0047】
貯蔵手段12は、従って、加熱手段の太陽熱集熱器26によって発生する熱エネルギーと発電用熱動力機械6によって消費される熱エネルギーの間のバッファとして使用されている。貯蔵手段12は、従って、発電を太陽の利用可能度から切り離せられるようにしている。
【0048】
弁28と、混合器20と、ポンプ22、30を使用している温水発生システム2に関しては、熱エネルギーの貯蔵のみ、熱エネルギーの直接発生、熱エネルギーの貯蔵と発生、熱エネルギーの引き出しと熱エネルギーの直接発生、及び熱エネルギーの引き出しのみ、という幾つかの作動モードが考えられる。
【0049】
温水発生システム2によって発電用熱動力機械6に供給される熱エネルギーの量を適合させるために、フィードバックループ18が使用されている。
温水発生システム2によってもたらされる熱のおかげで、作動流体40は、ボイラー42の中で液体状態から気体状態へ変化する。作動流体40は、こうして、気体状態でタービン43の入口に到達する。気体状態の作動流体は、次に、タービン43の中で膨張し、機械的エネルギーを供給して、タービンの回転子を回転駆動する。この機械的エネルギーは、電気を発生させるために発電機44に伝達される。タービン43の出口では、作動流体40はなお気体状態にあり、著しく低い圧力下にある。
【0050】
作動流体40は、次いで、熱シンク4に接触している凝縮器45の中で変化して液体状態に戻る。凝縮器45の出口で、液体状態にある作動流体40は、次に、ボイラー42の入口に戻って温水発生システム2によって供給された熱をもう一度利用するために、ポンプ46によって駆動される。
【0051】
図7は別の実施形態を示しており、先に説明された実施形態と同様の品目は、同一の符号を使って標示されている。
この第2の実施形態によれば、絶縁手段54は、内管66の開放端の絶縁ストッパを含んでいない。内管66の開放端の絶縁は、管48の周りに配設されている絶縁シース50によって提供されており、管64、66の互いにシールされている端は、絶縁シース50に接触して配設されている。
【0052】
ヒートパイプの冷温部60は、2つの半円筒を管48に対して対角線上に配した形状をしている。冷温部60の半円筒は、管48と絶縁シース50の間に配設されている。
ヒートパイプ56は、58の高温部の上部と管48の下部の間に第2傾斜角度B2を呈している。ヒートパイプの高温部58の軸と水平面Hの間の第1傾斜角度B1を変化させると、第2傾斜角度B2に影響する。液体状態のヒートパイプ流体63を冷温部60から高温部58への重力落下を相対的に速くするためには、第2傾斜角度B2を、例えば、5°より大きくする。
【0053】
この第2の実施形態の作動は、第1の実施形態と同じであり、従って繰り返し説明はしない。
図8は、別の実施形態を示しており、先に説明された実施形態と同様の品目は、同一の符号を使って標示されている。
【0054】
この第3の実施形態によれば、温水発生システム2は、温水分流器80を備えており、発電用熱動力機械に連係されていない。伝熱流体10を輸送するための回路14は、太陽熱集熱器26を温水分流器80に連係している。分流器80は、伝熱流体10によって輸送される熱を有効に活用することを目的とする、コイルの形態をしている交換器82を含んでいる。
【0055】
この第3の実施形態の作動は、第1の実施形態と同じであり、従って繰り返し説明はしない。
以上より、本発明による太陽熱集熱器は、吸収層とヒートパイプの高温部の溜めとの間の熱伝導を向上させ、それによって、熱損失を制限する効果を発揮することが理解される。
【符号の説明】
【0056】
2 温水発生システム
4 熱シンク
6 発電用熱動力機械
8 第1伝熱流体加熱手段
10 第1伝熱流体
12 熱エネルギー貯蔵手段
14 第1伝熱流体輸送用の第1閉回路
16 貯蔵槽
18 フィードバックループ
20 混合器
22 第1ポンプ
24 遠隔制御手段
26 太陽熱集熱器
28 弁
30 第2ポンプ
32 第2伝熱流体輸送用の第2回路
34 第2伝熱流体
36 ポンプ
38 作動流体輸送用の第3回路
40 作動流体
42 ボイラー
43 タービン
44 発電機
45 凝縮器
46 ポンプ
48 第1伝熱流体輸送用の管
50 熱絶縁シース
52 吸収層
54 熱絶縁手段
56 ヒートパイプ
58 高温部
60 冷温部
62 溜め
63 ヒートパイプ流体
64 外管
66 内管
66A 内管の外面
66B 内管の内面
67 真空
68 絶縁ストッパ
69 熱伝導性界面
69 締結部品
69A 締結部品の第1部分
69B 締結部品の第2部分
69C L型曲り
69D 第1締結手段
69E 第2締結手段
70 循環流路
70A 流路の平行直線区間
70B 接続管
70C 流路の直線区間
70D 収束後分岐区間
71 狭くなっている部分
72A、72B シート
80 温水分流器
82 交換器
A 円弧の角度
B1 軸Iと水平面Hの間の第1傾斜角度
B2 高温部の上部と管48の下部の間の第2傾斜角度
H 水平面
I 高温部の半円筒の軸
L1、L2 高温部及び冷温部のヒートパイプの延びる方向に直交する幅
太陽放射線
X 冷温部の半円筒の軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽熱集熱器において、
一方の端が閉鎖されている円筒形断面の外管と、
太陽放射線を吸収するための、前記外管の内側に配設されている吸収層と、
前記外管の内側に敷設されている高温部と、前記外管の外側に配設されている冷温部と、ヒートパイプ流体を収容していて、前記高温部と前記冷温部に亘って延びる溜めと、を含むヒートパイプと、を備え、
前記外管は、他方の端が前記ヒートパイプを囲んで密封閉鎖されていて、前記外管の内側に真空が形成されており、
前記ヒートパイプの前記高温部を支援して、前記溜めは少なくとも局所的に前記吸収層に寄せて宛がわれており、
前記ヒートパイプの前記高温部は、半円筒の形状をしている、型式の太陽熱集熱器。
【請求項2】
前記太陽熱集熱器は、追加的に、前記外管の内側に配設されている円形断面の内管を備え、それぞれの管は一方の端が閉鎖され、前記管同士は他方の端が互いにシールされており、前記管同士は真空によって分離されている、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項3】
前記内管は、前記外管に向けて配置されている外面と、内面と、を含んでおり、前記吸収層は前記外面に寄せて配設されており、前記ヒートパイプの前記高温部を支援して、前記溜めは少なくとも局所的に前記内面に寄せて宛がわれている、請求項2に記載の太陽熱集熱器。
【請求項4】
前記集熱器は、前記吸収層と前記ヒートパイプの前記高温部の間に敷設されている熱伝導性界面を含んでいる、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項5】
前記高温部の断面は、180°から220°の間の角度の円弧の形状をしている、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項6】
前記ヒートパイプの冷温部は、円筒形の管に接触して配設するのに適しており、前記冷温部は、少なくとも1つの半円筒の形状をしている、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項7】
前記高温部の前記半円筒の軸は、前記冷温部の前記半円筒の軸と異なっており、前記ヒートパイプは、前記高温部と前記冷温部の間の周方向及び/又は長手方向の広がりが、前記高温部及び前記冷温部の正形部分の広がりに対して狭くなっている部分を含んでおり、前記狭くなっている部分は前記高温部と前記冷温部の間の接続継手を形成している、請求項6に記載の太陽熱集熱器。
【請求項8】
前記溜めは、前記ヒートパイプを循環させるための、概ね並列に延びている少なくとも3つの流路を含んでいる、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項9】
前記又はそれぞれの流路は、前記高温部の前記半円筒の軸に実質的に整列する向きに配置されている、請求項8に記載の太陽熱集熱器。
【請求項10】
前記ヒートパイプは、アルミニウムから作製されている、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項11】
前記ヒートパイプは、前記溜めを形成する区域の外側の2枚の一体に結合されている金属シートによって形成されており、前記溜めは前記2枚のシートの間の隙間によって形成されている、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項12】
前記ヒートパイプは、よう面を有するシート構造を呈しており、前記シートは、前記溜めを形成する流路の網目を含んでおり、これらの流路はウェブ部分によって連係されている、請求項1に記載の太陽熱集熱器。
【請求項13】
太陽エネルギーから温水を発生させるためのシステムにおいて、
伝熱流体を太陽エネルギーで加熱するのに適した複数の太陽熱集熱器と、
前記伝熱流体を前記太陽熱集熱器と温水分流器の間で輸送するための回路と、を備え、
前記太陽熱集熱器(26)は請求項1に準拠している、システム。
【請求項14】
前記輸送回路(14)は、前記伝熱流体(10)用の輸送管(48)を備えており、前記システムは、それぞれの太陽熱集熱器(26)につき、前記集熱器(26)を前記管(48)に締結するための部品(69)を備え、前記締結部品(69)は、熱伝導性であり、前記管(48)に接触して配設されている、請求項13に記載のシステム。
【請求項15】
太陽エネルギーから電気エネルギーを生成するための設備において、
温水発生システム(2)と、
熱シンク(4)と、
前記システム(2)及び前記熱シンク(4)によって発生させる温水を使用している発電用熱動力機械(6)と、を備え、
前記温水発生システム(2)は、請求項13に準拠している、設備。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2012−517579(P2012−517579A)
【公表日】平成24年8月2日(2012.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−549641(P2011−549641)
【出願日】平成22年2月8日(2010.2.8)
【国際出願番号】PCT/FR2010/050196
【国際公開番号】WO2010/092283
【国際公開日】平成22年8月19日(2010.8.19)
【出願人】(591150395)
【Fターム(参考)】