説明

太陽熱集熱装置

【課題】反射鏡の容易且つ高精度な成形を可能とし、高い集光性能を維持しつつ製造コストの低減及び大量生産を可能とすると共に、反射鏡の軽量化により支持回動機構等のコストを低減できる太陽熱集熱装置を提供することを課題とする。
【解決手段】従来のガラスより成る反射曲面鏡に代えて、リニアフレネル面1aを反射膜1bにより被覆し当該反射膜1bにより太陽光を反射させてその反射光Rを線状に集光させるリニアフレネル反射鏡1を用いることによって、樹脂による成形を可能とし、容易な成形を可能とすると共に、湾曲した曲面では無く樹脂成形が容易なリニアフレネル面を採用して、高精度な成形を可能とし、且つ、樹脂により反射鏡の軽量化を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽光を集熱部に集光し集熱するための太陽熱集熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、側面視U字状を成し樋状に延びる反射曲面鏡(反射凹面鏡)を多数並設すると共に、この曲面鏡より太陽側の位置に、当該曲面鏡の並設方向に沿って集熱管を延設し、当該曲面鏡により太陽光を集熱管に向けて反射させ線状に集光し集熱させることで、集熱管内を流れる熱媒を加熱し蒸気タービンを回転させるトラフ型の太陽熱発電システムが知られている(例えば、非特許文献1参照)。このような太陽熱発電システムにあっては、上記多数の曲面鏡を支持回動機構により支持させ太陽の移動に追尾させながら回動させ、反射光を集熱管に線状に集光させる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】「NEDO再生可能エネルギー技術白書」2010年7月、5太陽熱発電の技術の現状とロードマップ、P.253
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上記曲面鏡は、反射光を高精度に線状に集光するためガラス製曲面鏡であるのが一般的であり、製造コストが高くなると共に大量生産に不向きであり、且つ、重量が重くなる結果、支持回動機構のコストが高くなるという問題がある。一方、このような問題を解決すべく、曲面鏡をガラス以外の材質から成形することが考えられるが、高精度に湾曲した曲面を成形するのは難しく、集光性能が低下するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような課題を解決するために成されたものであり、反射鏡の容易且つ高精度な成形を可能とし、高い集光性能を維持しつつ製造コストの低減及び大量生産を可能とすると共に、反射鏡の軽量化により支持回動機構等のコストを低減できる太陽熱集熱装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明による太陽熱集熱装置は、太陽光を集光し集熱する太陽熱集熱装置であって、太陽光を線状に集光するためのリニアフレネル面及びリニアフレネル面を被覆し太陽光を反射するための反射膜を備えたリニアフレネル反射鏡と、反射膜により反射された太陽光の線状の集光位置に配置される集熱部と、を具備したことを特徴としている。
【0007】
このような太陽熱集熱装置によれば、従来のガラスより成る反射曲面鏡に代えて、リニアフレネル面を反射膜により被覆し当該反射膜により太陽光を反射させてその反射光を線状に集光させるリニアフレネル反射鏡が用いられる。このリニアフレネル反射鏡では、樹脂による成形(例えば射出成形)が可能とされるため、容易な成形が可能とされると共に、湾曲した曲面では無く樹脂成形が容易なリニアフレネル面が採用されるため、高精度な成形が可能とされる。従って、高い集光性能を維持しつつ製造コストの低減及び大量生産が可能とされる。また、樹脂により反射鏡の軽量化が図られ、支持回動機構等のコストが低減される。
【0008】
このように、リニアフレネル反射鏡を樹脂製とするのが特に好ましい。
【0009】
ここで、リニアフレネル面及び反射膜は、リニアフレネル反射鏡の入射光側に位置していると、反射鏡内を太陽光が透過しないため、耐候性が一層向上される。
【0010】
また、リニアフレネル面及び反射膜は、リニアフレネル反射鏡の入射光側とは反対側の裏面側に位置していると、汚れやすい入射光側が平面となり、汚れを取り除くための掃除箇所が平面であるため、掃除がより容易となる。
【発明の効果】
【0011】
このように本発明による太陽熱集熱装置によれば、反射鏡の容易且つ高精度な成形が可能となり、高い集光性能を維持しつつ製造コストの低減及び大量生産が可能となると共に、反射鏡の軽量化により支持回動機構等のコストを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1実施形態に係る太陽熱集熱装置を示す概略構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係る太陽熱集熱装置を示す概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明による太陽熱集熱装置の好適な実施形態について図1、図2を参照しながら説明する。なお、各図において、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明は省略する。
【0014】
図1は、本発明の第1実施形態に係る太陽熱集熱装置を示す概略構成図であり、この太陽熱集熱装置は、主として前述した太陽熱発電システムに採用されるものであり、太陽光を集熱部に集光し集熱するためのものである。
【0015】
図1に示すように、太陽熱集熱装置100は、概略、リニアフレネル反射鏡1と、熱媒パイプ2と、支持回動機構3と、を備える。
【0016】
リニアフレネル反射鏡1は、太陽光を集光するための平板状のリニアフレネル反射鏡であり、多数枚が紙面垂直方向に並設されている。このリニアフレネル反射鏡1は、樹脂製であり、ここでは、例えばアクリル樹脂やポリカーボネート等を用い、例えば射出成形により成形されている。なお、高い耐候性を有するものを用いるのがより好ましい。
【0017】
このリニアフレネル反射鏡1にあっては、太陽光の入射光S側がリニアフレネル面1aとされている。このリニアフレネル面1aは、断面鋸刃状の溝を図示左右方向に並設したものであり、各溝は紙面垂直方向に延在し、各溝を形成する各傾斜面は、反射面の両端から中央に行くに従い(図示左右から中央に行くに従い)徐々にフラットになっている。そして、これらの傾斜面が、入射光Sを線状(紙面垂直方向に直線状)に集光させる役目を果たす。
【0018】
このリニアフレネル面1aは反射膜1bにより被覆されている。この反射膜1bは、入射光Sを反射し反射光Rとして出射するものであり、ここでは、蒸着によりリニアフレネル面1a上に設けられている。なお、反射膜1bは、二色成形によりリニアフレネル面1a側の部分(基材)と一体に成形されても良く、また、反射フィルム等をリニアフレネル面1aに貼着することで形成されても良い。
【0019】
そして、リニアフレネル面1aは、当該リニアフレネル面1a上の反射膜1bによる反射光Rが、リニアフレネル反射鏡1より太陽側に配設された熱媒パイプ2に線状に集光するように、その傾斜面(溝)等が設計されている。
【0020】
熱媒パイプ2は、反射光Rにより集熱されるパイプ(集熱部)であり、リニアフレネル反射鏡1の前を横切り、反射光Rが、線状に集光する集光位置(焦点位置)に位置するように設置される。この熱媒パイプ2内には、例えば水やオイル等の熱媒が流れる。
【0021】
支持回動機構3は、リニアフレネル反射鏡1を支持回動させるためのものであり、リニアフレネル反射鏡1を入射光S側とは反対側の裏面側から支持する支持フレーム3aと、この支持フレーム3aを紙面垂直方向に延びる一軸周りに回動させる回動機構3bと、を備える。そして、この回動機構3bは、その駆動によって、支持フレーム3aを太陽の動きに追尾するように回動させ、リニアフレネル反射鏡1による反射光Rを熱媒パイプ2に常時集光させる。
【0022】
なお、図1及び後述の図2においては、図が煩雑になるのを避けるために、太陽光の入射光S及び反射光Rは、図示左半分側のみに簡略化されて描かれている。
【0023】
次に、このように構成された太陽熱集熱装置100の作用について説明する。
【0024】
太陽光がリニアフレネル反射鏡1を照射すると、入射光Sは反射膜1bにより反射し、当該反射膜1bによる反射光Rは、紙面垂直方向に延びる熱媒パイプ2に線状(紙面垂直方向に延びる直線状)に集光し、当該熱媒パイプ2内の熱媒は集熱により加熱され、この加熱された熱媒によって例えば蒸気タービン等の熱機関が駆動される。そして、リニアフレネル反射鏡1は、支持回動機構3により太陽の動きに追尾し、当該リニアフレネル反射鏡1からの反射光Rは常時熱媒パイプ2に集光し効率良く熱機関が駆動される。
【0025】
このような太陽熱集熱装置100によれば、従来のガラスより成る反射曲面鏡に代えて、リニアフレネル面1aを反射膜1bにより被覆し当該反射膜1bにより太陽光を反射させてその反射光Rを線状に集光させるリニアフレネル反射鏡1が用いられる。このリニアフレネル反射鏡1は、樹脂より成形(射出成形)されているため、容易に成形できると共に、湾曲した曲面では無く樹脂成形が容易なリニアフレネル面1aを採用しているため、高精度に成形できる。従って、高い集光性能を維持しつつ製造コストを低減できると共に大量生産できる。また、樹脂により反射鏡の軽量化が図られ、支持回動機構等のコストを低減できる。
【0026】
また、本実施形態の太陽熱集熱装置100によれば、リニアフレネル面1a及び反射膜1bは、リニアフレネル反射鏡1の入射光S側に位置しているため、反射鏡内(基材内)を太陽光が透過することが無く、耐候性を一層向上できる。
【0027】
図2は、本発明の第2実施形態に係る太陽熱集熱装置を示す概略構成図である。
【0028】
この第2実施形態の太陽熱集熱装置200が第1実施形態の太陽熱集熱装置100と違う点は、リニアフレネル反射鏡1に代えて、入射光S側とは反対側の裏面側にリニアフレネル面10a及びこれを被覆する反射膜10bを備えたリニアフレネル反射鏡10を用いた点である。
【0029】
ここで、リニアフレネル面10aは、当該リニアフレネル面10a上の反射膜10bによる反射光Rが、熱媒パイプ2に線状に集光するように、その傾斜面(溝)等が設計されている。
【0030】
このように構成された第2実施形態の太陽熱集熱装置200によれば、リニアフレネル面10aを被覆した反射膜10bにより太陽光が反射し、その反射光Rが熱媒パイプ2に線状に集光し集熱されるという第1実施形態とほぼ同様な作用・効果に加えて、リニアフレネル面10a及び反射膜10bが、リニアフレネル反射鏡10の入射光S側とは反対側の裏面側に位置しているため、汚れやすい入射光S側が平面となり、その結果、汚れを取り除くための掃除箇所が平面であるため、掃除がより容易となるという効果を得ることができる。
【0031】
以上、本発明をその実施形態に基づき具体的に説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、対称なハーフタイプのリニアフレネル反射鏡を、図1及び図2に示す左右方向に繋げ、これら一対のリニアフレネル反射鏡により太陽光を集熱部2に線状に集光させるようにしても良く、さらには、3枚以上のリニアフレネル反射鏡を図1及び図2に示す左右方向に繋げ、これら3枚以上のリニアフレネル反射鏡により太陽光を集熱部2に線状に集光させるようにしても良い。
【符号の説明】
【0032】
1,10…リニアフレネル反射鏡、1a,10a…リニアフレネル面、1b,10b…反射膜、2…熱媒パイプ(集熱部)、3…支持回動機構、100,200…太陽熱集熱装置、R…反射光、S…入射光。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽光を集光し集熱する太陽熱集熱装置であって、
前記太陽光を線状に集光するためのリニアフレネル面及び前記リニアフレネル面を被覆し前記太陽光を反射するための反射膜を備えたリニアフレネル反射鏡と、
前記反射膜により反射された前記太陽光の線状の集光位置に配置される集熱部と、を具備した太陽熱集熱装置。
【請求項2】
前記リニアフレネル反射鏡は、樹脂製であることを特徴とする請求項1記載の太陽熱集熱装置。
【請求項3】
前記リニアフレネル面及び前記反射膜は、前記リニアフレネル反射鏡の入射光側に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の太陽熱集熱装置。
【請求項4】
前記リニアフレネル面及び前記反射膜は、前記リニアフレネル反射鏡の入射光側とは反対側の裏面側に位置することを特徴とする請求項1又は2記載の太陽熱集熱装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−163286(P2012−163286A)
【公開日】平成24年8月30日(2012.8.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−25185(P2011−25185)
【出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002107)住友重機械工業株式会社 (2,241)
【Fターム(参考)】