説明

太陽電池のバックシート

【課題】水不透過性シートとの接着性に優れた太陽電池のバックシートを提供する。
【解決手段】水不透過性シートの少なくとも一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池セルの封止剤として用いられているエチレン/酢酸ビニル共重合体との接着性に優れた太陽電池のバックシート、および該バックシートを備えた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュールは、通常、図6に示すように、太陽電池セル1を封止剤層2で封止し、これをガラスや透明な樹脂などからなる表面層3とバックシート4で挟んで積層した構造となっている。そして封止剤としてはエチレン/酢酸ビニル共重合体(EVA)が用いられている。
【0003】
太陽電池モジュールにおけるバックシート4は、モジュールの機械的強度を高める目的のほか、水分(水蒸気)が封止剤層2に入らないように防止する役割もある。
【0004】
バックシート4は、図7に示すように、水蒸気バリヤー性をもたすための水不透過性シート5とその一方の面に樹脂シート8が貼り合わされた構成とされている。通常、水不透過性シート5の他方の面にも樹脂シート9が貼り合わされている。
【0005】
水不透過性シート5の材料としては、水不透過性に優れたSi蒸着ポリエステル(Si蒸着PET)や、アルミニウムやステンレススチールなどの金属が使用されており、通常は10〜20μmの膜厚とされている。
【0006】
樹脂シート8、9には、耐候性、電気絶縁性、難燃性、意匠性などといった特性が求められており、ポリフッ化ビニル重合体(PVF)のシートが使用されている。また、封止剤層2側の樹脂シート8として、ポリエチレンシートも使用されることがある。
【0007】
しかし、これらの樹脂シートは、要求される耐候性、電気絶縁性、光の遮蔽性といった特性を満たすために、通常は厚さ20〜100μmとする必要があり、重量面からさらなる軽量化が求められている。
【0008】
そこで、樹脂シートに代えて樹脂塗料を用いて同様の層を形成することが提案されている(特許文献1、特許文献2)。
【0009】
特許文献1では、樹脂塗料としてエポキシ樹脂塗料を使用している。しかしエポキシ樹脂では耐候性の点で不充分であり、実用化には至っていない。
【0010】
特許文献2では、官能基をもたないPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を特定量配合したPVdF系塗料で金属基材(水不透過性シート)を塗装する2層構造のバックシートが提案されている。このPVdF系塗料はPVdFが官能基をもたないので、単独では封止剤であるEVAとの接着性にも劣っている。この点を特許文献2ではテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を特定量配合し、EVAとの界面にテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配向させることで改善している。しかし、テトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物がEVAとの界面に偏在しているため、依然としてPVdF塗膜と金属基材との接着性は改善されていない。しかも、PVdFは結晶性でありかつ官能基をもたず、塗膜を形成するためには200〜300℃で20〜120秒間加熱焼成しなければならないため、金属以外の水不透過性シートへの提供は困難となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開平7−176775号公報
【特許文献2】特開2004−214342号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明は、水不透過性シートとの接着性に優れた太陽電池のバックシートを提供することを目的とする。
【0013】
その他の課題については、具体的な実施形態に応じて説明する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
すなわち本発明は、水不透過性シートの少なくとも一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシートに関する。
【0015】
本発明のバックシートは、水不透過性シートの片面のみに硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されている2層構造でも、水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる3層構造、または水不透過性シートの一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され、他方の面に、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシートまたはポリエステル塗料の塗膜(以下、「他のシートまたは塗膜」ということもある)が形成されてなる3層構造でもよい。
【0016】
なお、水不透過性シートと硬化塗膜および/または他のシートまたは塗膜の間に、接着性をさらに高めるためや隠蔽性を高めるため、水蒸気透過性を下げるために、従来公知の1または2以上の介在層が存在していてもよい。そうした介在層の代表例はプライマー層である。
【0017】
水不透過性シートとしては、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートといった従来公知の材料が好ましく使用できる。
【0018】
太陽電池モジュールの封止剤(通常、EVA)層側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を形成する場合は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーの官能基がEVAと共架橋を惹き起こし、さらに接着性が向上する。
【0019】
また、太陽電池モジュールの美観の観点から、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜中に顔料を分散させることが好ましい。この観点から、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、顔料分散性に優れたテトラフルオロエチレン(TFE)系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが好ましい。
【0020】
本発明はまた、上記のバックシートを備えた太陽電池モジュールにも関する。
【発明の効果】
【0021】
本発明のバックシートは、塗料の形態で塗装することができるので従来のシートの貼り合せに比べて厚さを薄くでき、薄膜化・軽量化を図ることができる。また塗膜の膜厚の減少による機械的強度の低下は、硬化性の官能基による硬化(架橋)によって補うことができる。
【0022】
また、たとえば水不透過性シートとの接着性が、含フッ素ポリマーに官能基を導入することにより、テトラアルコキシシランなどを添加せずとも、向上させることができる。
【0023】
その他の効果については、具体的な実施形態に応じて説明する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の太陽電池モジュールの第1の実施形態の概略断面図である。
【図2】本発明の太陽電池モジュールの第2の実施形態の概略断面図である。
【図3】本発明の太陽電池モジュールの第3の実施形態の概略断面図である。
【図4】本発明の太陽電池モジュールの第4の実施形態の概略断面図である。
【図5】本発明の太陽電池モジュールの第5の実施形態の概略断面図である。
【図6】従来の太陽電池モジュールの概略断面図である。
【図7】従来の太陽電池モジュールのバックシートの概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明のバックシートの特徴は、耐候性や隠蔽性、耐薬品性、耐湿性、耐塩性のために設けられるポリマー層に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜を採用している点にある。
【0026】
かかる硬化塗膜を形成する硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料としては、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを塗膜形成成分とする塗料組成物が用いられる。
【0027】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーとしては、含フッ素ポリマーに硬化性の官能基を導入したポリマーがあげられる。なお、含フッ素ポリマーには明確な融点を有する樹脂性のポリマー、ゴム弾性を示すエラストマー性のポリマー、その中間の熱可塑性エラストマー性のポリマーが含まれる。
【0028】
含フッ素ポリマーに硬化性を与える官能基としては、たとえば水酸基、カルボキシル基、アミノ基、グリシジル基、シリル基、シラネート基、イソシアネート基などがあげられ、ポリマーの製造の容易さや硬化系に併せて適宜選択される。なかでも、硬化反応性が良好な点から水酸基、シアノ基、シリル基が好ましく、特にポリマーの入手が容易な点や反応性が良好な点から水酸基が好ましい。これらの硬化性官能基は、通常、硬化性官能基含有単量体を共重合することにより含フッ素ポリマーに導入される。
【0029】
硬化性官能基含有単量体としては、たとえばつぎのものが例示できるが、これらのみに限定されるものではない。
【0030】
(1−1)水酸基含有単量体:
水酸基含有単量体としては、たとえば2−ヒドロキシエチルビニルエーテル、3−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシプロピルビニルエーテル、2−ヒドロキシ-2−メチルプロピルビニルエーテル、4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、4−ヒドロキシ−2−メチルブチルビニルエーテル、5−ヒドロキシペンチルビニルエーテル、6−ヒドロキシヘキシルビニルエーテルなどの水酸基含有ビニルエーテル類;2−ヒドロキシエチルアリルエーテル、4−ヒドロキシブチルアリルエーテル、グリセロールモノアリルエーテルなどの水酸基含有アリルエーテル類などがあげられる。これらのなかでも水酸基含有ビニルエーテル類、特に4−ヒドロキシブチルビニルエーテル、2−ヒドロキシエチルビニルエーテルが重合反応性、官能基の硬化性が優れる点で好ましい。
【0031】
他の水酸基含有モノマーとしては、たとえばアクリル酸2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸2−ヒドロキシエチルなどの(メタ)アクリル酸のヒドロキシアルキルエステルなどが例示できる。
【0032】
(1−2)カルボキシル基含有単量体:
カルボキシル基含有単量体としては、たとえば式(II):
【0033】
【化1】

【0034】
(式中、R3、R4およびR5は同じかまたは異なり、いずれも水素原子、アルキル基、カルボキシル基またはエステル基;nは0または1である)で表わされる不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、そのモノエステルまたは酸無水物などの不飽和カルボン酸類;または式(III):
【0035】
【化2】

【0036】
(式中、R6およびR7は同じかまたは異なり、いずれも飽和または不飽和の直鎖または環状アルキル基;nは0または1;mは0または1である)で表わされるカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体などがあげられる。
【0037】
式(II)の不飽和カルボン酸類の具体例としては、たとえばアクリル酸、メタクリル酸、ビニル酢酸、クロトン酸、桂皮酸、3−アリルオキシプロピオン酸、3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、イタコン酸、イタコン酸モノエステル、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、マレイン酸無水物、フマル酸、フマル酸モノエステル、フタル酸ビニル、ピロメリット酸ビニルなどがあげられる。それらのなかでも単独重合性の低いクロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、マレイン酸モノエステル、フマル酸、フマル酸モノエステル、3−アリルオキシプロピオン酸が、単独重合性が低く単独重合体ができにくいことから好ましい。
【0038】
式(III)のカルボキシル基含有ビニルエーテル単量体の具体例としては、たとえば3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−アリロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸、3−(2−ビニロキシブトキシカルボニル)プロピオン酸などの1種または2種以上があげられる。これらの中でも3−(2−アリロキシエトキシカルボニル)プロピオン酸などが、単量体の安定性や重合反応性がよい点で有利であり、好ましい。
【0039】
(1−3)アミノ基含有単量体:
アミノ基含有単量体としては、たとえばCH2=CH−O−(CH2x−NH2(x=0〜10)で示されるアミノビニルエーテル類;CH2=CH−O−CO(CH2x−NH2(x=1〜10)で示されるアリルアミン類;そのほかアミノメチルスチレン、ビニルアミン、アクリルアミド、ビニルアセトアミド、ビニルホルムアミドなどがあげられる。
【0040】
(1−4)シリコーン系ビニル単量体:
シリコーン系ビニル単量体としては、たとえばCH2=CHCO2(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=CHCO2(CH2)3Si(OC25)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OCH3)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(OC25)3、CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3(OC25)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC25(OCH3)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2(OC25)、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3Si(CH3)2OH、CH2=CH(CH2)3Si(OCOCH3)3、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC25(OCOCH3)2、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiCH3(N(CH3)COCH3)2、CH2=CHCO2(CH2)3SiCH3〔ON(CH3)C252、CH2=C(CH3)CO2(CH2)3SiC65〔ON(CH3)C252などの(メタ)アクリル酸エステル類;CH2=CHSi[ON=C(CH3)(C25)]3、CH2=CHSi(OCH3)3、CH2=CHSi(OC25)3、CH2=CHSiCH3(OCH3)2、CH2=CHSi(OCOCH3)3、CH2=CHSi(CH3)2(OC25)、CH2=CHSi(CH3)2SiCH3(OCH3)2、CH2=CHSiC25(OCOCH3)2、CH2=CHSiCH3〔ON(CH3)C252、ビニルトリクロロシランまたはこれらの部分加水分解物などのビニルシラン類;トリメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリエトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルブチルビニルエーテル、メチルジメトキシシリルエチルビニルエーテル、トリメトキシシリルプロピルビニルエーテル、トリエトキシシリルプロピルビニルエーテルなどのビニルエーテル類などが例示される。
【0041】
硬化性官能基が導入される含フッ素ポリマーとしては、構成単位の観点から、たとえば次のものが例示できる。
【0042】
(1)パーフルオロオレフィン単位を主体とするパーフルオロオレフィン系ポリマー:
具体例としては、テトラフルオロエチレン(TFE)の単独重合体、またはTFEとヘキサフルオロプロピレン(HFP)、パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)(PAVE)などとの共重合体、さらにはこれらと共重合可能な他の単量体との共重合体などがあげられる。
【0043】
共重合可能な他の単量体としては、たとえば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、イソ酪酸ビニル、ピバリン酸ビニル、カプロン酸ビニル、バーサチック酸ビニル、ラウリン酸ビニル、ステアリン酸ビニル、シクロヘキシルカルボン酸ビニル、安息香酸ビニル、パラ−t−ブチル安息香酸ビニルなどのカルボン酸ビニルエステル類;メチルビニルエーテル、エチルビニルエーテル、ブチルビニルエーテル、シクロヘキシルビニルエーテルなどのアルキルビニルエーテル類;エチレン、プロピレン、n−ブテン、イソブテンなど非フッ素系オレフィン類;ビニリデンフルオライド(VdF)、クロロトリフルオロエチレン(CTFE)、ビニルフルオライド(VF)、フルオロビニルエーテルなどのフッ素系単量体などがあげられるが、これらのみに限定されるものではない。
【0044】
これらのうち、TFEを主体とするTFE系ポリマーが、顔料分散性や耐候性、共重合性、耐薬品性に優れている点で好ましい。
【0045】
具体的な硬化性官能基含有パーフルオロオレフィン系ポリマーとしては、たとえばTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/VdF/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられ、特にTFE/イソブチレン/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体、TFE/バーサチック酸ビニル/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などが好ましい。
【0046】
TFE系の硬化性ポリマー塗料としては、たとえばダイキン工業(株)製のゼッフルGKシリーズなどが例示できる。
【0047】
(2)クロロトリフルオロエチレン(CTFE)単位を主体とするCTFE系ポリマー:
具体例としては、たとえばCTFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0048】
CTFE系の硬化性ポリマー塗料としては、たとえば旭硝子(株)製のルミフロン、大日本インキ製造(株)製のフルオネート、セントラル硝子(株)製のセフラルコート、東亜合成(株)製のザフロンなどが例示できる。
【0049】
(3)ビニリデンフルオライド(VdF)単位を主体とするVdF系ポリマー:
具体例としては、たとえばVdF/TFE/ヒドロキシブチルビニルエーテル/他の単量体の共重合体などがあげられる。
【0050】
(4)フルオロアルキル単位を主体とするフルオロアルキル基含有ポリマー:
具体例としては、たとえばCF3CF2(CF2CF2nCH2CH2OCOCH=CH2(n=3と4の混合物)/2−ヒドロキシエチルメタクリレート/ステアリルアクリレート共重合体などがあげられる。
【0051】
フルオロアルキル基含有ポリマーとしては、たとえばダイキン工業(株)製のユニダインやエフトーン、デュポン社製のゾニールなどが例示できる。
【0052】
これらのうち、耐候性、防湿性を考慮すると、パーフルオロオレフィン系ポリマーが好ましい。
【0053】
これらの硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを塗膜形成成分とする塗料組成物は、溶剤型塗料組成物、水性型塗料組成物、粉体型塗料組成物の形態に、常法により調製することができる。なかでも成膜の容易さ、硬化性、乾燥性の良好さなどの点からは溶剤型塗料組成物が好ましい。
【0054】
また、硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料組成物には、要求特性に応じて各種の添加剤を配合することができる。添加剤としては、硬化剤、硬化促進剤、顔料分散剤、消泡剤、レベリング剤、UV吸収剤、光安定剤、増粘剤、密着改良剤、つや消し剤などがあげられる。
【0055】
硬化剤としては、硬化性ポリマーの官能基に応じて選択され、たとえば水酸基含有含フッ素ポリマーに対しては、イソシアネート系硬化剤、メラミン樹脂、シリケート化合物、イソシアネート基含有シラン化合物などが好ましく例示できる。また、カルボキシル基含有含フッ素ポリマーに対してはアミノ系硬化剤やエポキシ系硬化剤が、アミノ基含有含フッ素ポリマーに対してはカルボニル基含有硬化剤やエポキシ系硬化剤、酸無水物系硬化剤が通常採用される。
【0056】
硬化促進剤としては、従来公知のスズ系、他の金属系、有機酸系、アミノ系の硬化促進剤が使用できる。
【0057】
また、顔料は太陽電池モジュールの外観を美麗にする点から添加することが強く望まれている。特に白色顔料である酸化チタン、炭酸カルシウムや、黒色顔料であるカーボンブラックのほかCu−Cr−Mn合金などの複合金属類などが通常配合される。
【0058】
水不透過性シートは、封止剤であるEVAや太陽電池セルに水分が透過しないように設けられる層であり、水が実質的に透過しない材料であれば使用できるが、重量や価格、可撓性などの点から、Si蒸着PETシート、アルミニウムやステンレススチールなどの金属薄シートなどが多用されている。なかでも特にSi蒸着PETシートがよく用いられている。厚さは通常10〜20μm程度である。
【0059】
また接着性を向上させるために、従来公知の表面処理を行ってもよい。表面処理としては、たとえばコロナ放電処理、プラズマ放電処理、化成処理、金属シートの場合はブラスト処理などが例示できる。
【0060】
水不透過性シートへの硬化塗膜の形成は、硬化性官能基含有含フッ素ポリマーを塗膜形成成分とする塗料組成物をその塗料形態に応じて、水不透過性シートに塗装することにより行う。
【0061】
塗装温度は塗装形態における通常の条件の範囲内で行えばよく、塗膜の硬化も溶剤型塗料組成物の場合、10〜300℃、通常は常温(20〜30℃)で行う。したがって、水不透過性シートとして、Si蒸着PETシートのような高温での処理を避けたい材料も問題なく使用できる。硬化は、通常、20〜300℃にて1分間〜3日間で完了する。
【0062】
水不透過性シートへの塗装は、水不透過性シートに直接行ってもよいし、またプライマー層などを介して塗装してもよい。
【0063】
プライマー層の形成は、従来公知のプライマー用塗料を用いて、常法により行う。プライマー用の塗料としては、たとえばエポキシ樹脂、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂などが代表例としてあげられる。
【0064】
硬化塗膜の膜厚は、5μm以上、さらには10μm以上、特に20μm以上とすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。上限は、余り厚くすると軽量化効果が得られなくなるので、1000μm程度、さらには100μmが好ましい。膜厚としては、特に30〜40μmが好ましい。
【0065】
つぎに本発明の太陽電池モジュールについて、好ましい実施形態を示した図1に従って説明する。また、本発明の別の好ましい実施形態の概略断面図を図2〜5に示す。
【0066】
図1において、1は太陽電池セルであり、EVAに代表される封止剤層2に封止されており、表面層3とバックシート4で挟まれている。バックシート4はさらに水不透過性シート5と硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜6とから構成されている。この第1の実施形態では硬化塗膜6は封止(EVA)層2側に設けられている。
【0067】
この実施形態では、硬化塗膜6がEVAと接するので、特にEVAとの共架橋により界面接着性が向上する。
【0068】
図2は第2の実施形態であり、硬化塗膜6は封止(EVA)層2と反対側に設けられている。この実施形態の場合、硬化塗膜6を設けることにより耐候性の点で優れたものになる。また、水不透過性シート5の封止(EVA)層2側を表面処理しておくことが密着性の改善の点から好ましい。また、必要に応じて、ポリエステル系接着剤、アクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤などを使用してもよい。
【0069】
本発明のバックシートは、上記の水不透過性シート5の片面のみに硬化塗膜6が形成されている2層構造(図1、図2)でもよいし、以下に説明する3層構造であってもよい。
【0070】
3層構造のバックシートの実施形態(第3の実施形態)を図3に示す。この第3の実施形態は、水不透過性シート5の両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜6が形成されてなる3層構造のものである。
【0071】
この第3の実施形態は、バックシートの膜厚の観点からは多少後退するが、上記の第1の実施形態および第2の実施形態の利点を併せもつものである。
【0072】
3層構造のバックシートとしては、また、水不透過性シートの一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され、他方の面に、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシートまたはポリエステル塗料の塗膜(他のシートまたは塗膜)が形成されてなる3層構造(図4、図5)でもよい。
【0073】
第4の実施形態(図4)は、第1の実施形態の封止(EVA)層2と反対側に他の塗膜7が形成されている構造であり、第5の実施形態(図5)は、第2の実施形態の封止(EVA)層2側に他の塗膜7が形成されている構造である。
【0074】
第4および第5のいずれの実施形態においても、層7を構成する材料は、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜でも、含フッ素ポリマーシートでも、ポリエステルシートでも、ポリエステル塗料の塗膜でもよい。
【0075】
硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜としては、たとえば特許文献2に記載されているPVdFにテトラアルコキシシランまたはその部分加水分解物を配合した塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/CTFE共重合体とアルコキシシラン単位含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/TFE/HFP共重合体と水酸基含有アクリル樹脂との混合塗料の硬化塗膜、VdF/HFP共重合体にアミノシランカップリング剤を配合した塗料の硬化塗膜などがあげられる。膜厚は、通常、5〜300μm、さらには10〜100μm、特に10〜50μmとすることが、隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。この場合も、プライマー層などを介してもよい。
【0076】
含フッ素ポリマーシートとしては、PVdFシートやPVFシート、PCTFEシート、TFE/HFP/エチレン共重合体シート、TFE/HFP共重合体(FEP)シート、TFE/PAVE共重合体(PFA)シート、エチレン/TFE共重合体(ETFE)シート、エチレン/CTFE共重合体(ECTFE)シートなど、現在のバックシートに使用されている含フッ素ポリマーシートがあげられる。膜厚は、通常、5〜300μm、さらには10〜100μm、特に10〜50μmとすることが、耐候性が良好な点から好ましい。
【0077】
ポリエステルシートとしては、従来のバックシートで使用されているものがそのまま使用でき、その水不透過性シート5への接着はアクリル系接着剤、ウレタン系接着剤、エポキシ系接着剤、ポリエステル系接着剤などによって行うことができる。膜厚は、通常5〜300μm、さらには10〜100μm、特に10〜50μmとすることが、耐候性、コスト、透明性が良好な点から好ましい。
【0078】
ポリエステル塗料としては、多価カルボン酸と多価アルコールなどを用いた飽和ポリエステル樹脂を用いたもの、無水マレイン酸、フマル酸などのグリコール類を用いた不飽和ポリエステル樹脂を用いたものなどがあげられ、ロールコート、カーテンコート、スプレーコート、ダイコートなどの塗装方法により塗膜を形成できる。膜厚は、5〜300μm、さらには10〜100μm、特に10〜50μmとすることが隠蔽性、耐候性、耐薬品性、耐湿性が良好な点から好ましい。この場合も、プライマー層などを介してもよい。
【実施例】
【0079】
つぎに本発明を調製例および実施例に基づいて説明するが、本発明はかかる調製例および実施例のみに限定されるものではない。
【0080】
調製例1
硬化性TFE系共重合体(ダイキン工業(株)製のゼッフルGK570、固形分65質量%、水酸基価60mgKOH/g、溶剤:酢酸ブチル)223.2質量部、黒色顔料(大日精化(株)製のダイピロキサイド9510)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を269.2質量部加えて黒色塗料を調製した。
【0081】
この黒色塗料100質量部に硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO−C36−Si(OCH33)3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料1を調製した。
【0082】
調製例2
硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)223.2質量部、白色顔料として酸化チタン(デュポン社製のタイピュアR960)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液に硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)を269.2質量部加えて白色塗料を調製した。
【0083】
この白色塗料100質量部に硬化剤(コロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO−C36−Si(OCH33)3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料2を調製した。
【0084】
調製例3
硬化性TFE系共重合体(ゼッフルGK570)100質量部、酢酸ブチル100質量部、UV吸収剤(BASF社製のユビナール3035)6質量部を攪拌下に混合してクリア塗料を調製した。
【0085】
このクリア塗料100質量部に硬化剤(コロネートHX)7質量部、シランカップリング剤(NCO−C36−Si(OCH33)3質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、硬化性塗料3を調製した。
【0086】
調製例4
PVdF系共重合体の黒エナメル塗料であるディックフローC(日本NFC(株)製)100質量部に、シリケート化合物(コルコート社製のメチルシリケート51)を30質量部配合して、非硬化性の比較塗料1を調製した。
【0087】
調製例5
ポリエステル系共重合体(住化バイエルウレタン(株)製のデスモフェン650MPA、固形分65質量%、水酸基価5.3mgKOH/g、溶剤:メトキシプロピルアセテート)223.2質量部、黒色顔料(ダイピロキサイド9510)250質量部、酢酸ブチル126.8質量部を攪拌下に予備混合した後、直径1.2mmのガラスビーズを780質量部入れ、顔料分散機にて1500rpmで1時間分散させた。その後、#80メッシュのフルイでガラスビーズをろ過し、その溶液にポリエステル系共重合体(デスモフェン650MPA)を269.2質量部加えて比較用黒色塗料を調製した。
【0088】
この比較用黒色塗料100質量部に硬化剤(日本ポリウレタン(株)製のコロネートHX)13質量部、希釈溶剤として酢酸ブチル100質量部を配合して、非フッ素系で硬化性の比較塗料2を調製した。
【0089】
実施例1
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(三菱樹脂(株)製のバリアテックH、厚さ12μm。シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例1で調製した硬化性塗料1を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して2層構造のバックシートA1を作製した。
【0090】
このバックシートA1について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表1に示す。
【0091】
ついでこのバックシートA1の塗膜面上にEVA樹脂シート(三井化学ファブロ(株)製のソーラーエバ。厚さ400μm)を載せ、圧力100g/cm2にて150℃で圧着して3層構造のサンプルA1(図1に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルA1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0092】
試験方法および測定方法はつぎのとおりである。
【0093】
(密着性)
JIS K6900で規定する碁盤目試験(幅1mmにクロスカット)による。
【0094】
評価基準
○:剥離なし。
×:剥離有り。
【0095】
(耐候性試験)
JIS B7753に準拠し、サンシャインウェザオメーター(スガ試験機(株)製のWEL−300)を用い、サンプルの両面に太陽光を当てて5000時間の促進耐候性試験を行う。
【0096】
評価は、EVAと塗膜またはシートの界面と外観を目視で観察して行う。
【0097】
界面状態の評価基準
○:異常なし。
△:剥離、白化、膨れ等がある。
×:著しい剥離、白化、膨れ等がある。
【0098】
外観の評価基準
○:異常なし。
△:剥離、白化、膨れ等がある。
×:著しい剥離、白化、膨れ等がある。
【0099】
(折り曲げ性)
バックシートを50mm×50mmにカットして試験片とする。試験片の塗膜面を外側にして直径2mmの丸棒に巻きつけるようにして180度折り曲げ(所要時間1秒間)、折り曲げ部分の割れの有無を目視で観察する。割れが観察できた場合は、試験片を2枚重ねて同様にして180度折り曲げる。これを繰返し、割れが観察できなかったときの試験片の枚数を記録する。枚数が少ない方が折り曲げ性がよい。
【0100】
(膜厚)
電磁式膜厚計で測定する。
【0101】
比較例1
実施例1において、塗料として調製例4で調製した比較塗料1(PVdF系の非硬化性塗料)を用いたほかは実施例1と同様にして2層構造のバックシートA2および3層構造のEVA接着サンプルA2を作製し、実施例1と同様にして密着性、折り曲げ性、耐候性を調べた。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】

【0103】
実施例2
実施例1と同様にして作製した2層構造のバックシートA1のシートA側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD−76P1とCAT−10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm2にて150℃で圧着して3層構造のサンプルB1(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルB1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0104】
実施例3
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例2で調製した硬化性塗料2を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して2層構造のバックシートB2を作製した。
【0105】
このバックシートB2について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表2に示す。
【0106】
ついでこのバックシートB2のシートA側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD−76P1とCAT−10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm2にて150℃で圧着して3層構造のサンプルB2(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルB2について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表2に示す。
【0107】
【表2】

【0108】
実施例4
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの両面に調製例1で調製した硬化性塗料1をいずれも乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC1を作製した。
【0109】
このバックシートC1について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0110】
ついでこのバックシートC1の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC1(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0111】
実施例5
実施例4において、シートAに代えてアルミニウム板(シートB。0.5mm)を用いたほかは実施例4と同様にして3層構造のバックシートC2を作製し、実施例4と同様にして密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0112】
ついでこのバックシートC2の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC2(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC2について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0113】
実施例6
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの両面に調製例2で調製した硬化性塗料2をいずれも乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC3を作製した。
【0114】
このバックシートC3について、密着性(塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0115】
ついでこのバックシートC3の一方の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC3(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC3について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0116】
実施例7
水不透過性シートとして、Si蒸着PETフィルム(シートA)を使用し、このシートAの片面に調製例1で調製した硬化性塗料1を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、他方の面に調製例3で調製した硬化性塗料3を乾燥膜厚が20μmとなるようにエアスプレーにて塗装し、80℃で30分間乾燥して3層構造のバックシートC4を作製した。
【0117】
このバックシートC4について、密着性(硬化性塗料3の塗膜とシートの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0118】
ついでこのバックシートC4の硬化性塗料3の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC4(図3に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC4について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0119】
比較例2
実施例4において、塗料として調製例5で調製した硬化性の比較塗料2(非フッ素系の硬化性塗料)を用いたほかは実施例4と同様にして3層構造のバックシートC5(図7の態様)および4層構造のEVA接着サンプルC5を作製し、実施例1と同様にして密着性、折り曲げ性、耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0120】
比較例3
シートAの両面にポリエステル系接着剤を用いてポリビニルフルオライド(PVF)フィルム(三井デュポンケミカル(株)製のテドラー。黒色顔料入り。厚さ10μm)を貼り付け、3層構造のバックシートC6を作製した。
【0121】
このバックシートC6について、密着性(シートAとPVFフィルムの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表3に示す。
【0122】
ついでこのバックシートC6の一方のPVFフィルム側上にポリエステル系接着剤(東洋モートン(株)製のAD−76P1とCAT−10L(硬化剤))を用いてEVA樹脂シートを圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルC6(図2に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルC6について、密着性(EVAとPVFフィルム間)および耐候性を調べた。結果を表3に示す。
【0123】
【表3】

【0124】
実施例8
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1のシートA側にポリエステル系接着剤を用いてポリエステル(PET)フィルム(東レ(株)製のルミラー。白色顔料入り。厚さ75μm)を貼り付け、3層構造のバックシートD1を作製した。
【0125】
このバックシートD1について、密着性(シートAとPETフィルムの間)および折り曲げ性を調べた。結果を表4に示す。
【0126】
ついでこのバックシートD1の硬化性塗料1の塗膜上にEVA樹脂シートを載せ、圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルD1(図4に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルD1について、密着性(EVAと塗膜間)および耐候性を調べた。結果を表4に示す。
【0127】
実施例9
実施例8と同様にして作製した3層構造のバックシートD1のPETフィルム側上にEVA樹脂シートを圧力100g/cm2にて150℃で圧着して4層構造のサンプルD2(図5に示す態様)を作製した。このEVA接着サンプルD2について、密着性(EVAとPETフィルム間)および耐候性を調べた。結果を表4に示す。
【0128】
【表4】

【0129】
実施例10
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm2にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図1の態様)を作製した。
【0130】
実施例11
実施例1で作製した2層構造のバックシートA1のシートA面上にポリエステル系接着剤を介してEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm2にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図2の態様)を作製した。
【0131】
実施例12
実施例4で作製した3層構造のバックシートC1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm2にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図3の態様)を作製した。
【0132】
実施例13
実施例8で作製した3層構造のバックシートD1の塗膜面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm2にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図4の態様)を作製した。
【0133】
実施例14
実施例9で作製した3層構造のバックシートD2のPETフィルム面上にEVA樹脂シート、ついで太陽電池セル、EVA樹脂シート、ガラス板を載せ、真空下に圧力100g/cm2にて150℃で圧着して太陽電池モジュール(図5の態様)を作製した。
【符号の説明】
【0134】
1 太陽電池セル
2 封止剤層
3 表面層
4 バックシート
5 水不透過性シート
6 含フッ素硬化塗膜
7 シートまたは塗膜
8、9 樹脂シート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水不透過性シートの少なくとも一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項2】
水不透過性シートの両面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項3】
水不透過性シートの一方の面に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成され、他方の面に、硬化性官能基を有しない含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜、含フッ素ポリマーシート、ポリエステルシートまたはポリエステル塗料の塗膜が形成されてなる太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項4】
水不透過性シートが、Si蒸着ポリエステルシートまたは金属シートである請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項5】
太陽電池モジュールの封止剤層側の水不透過性シート上に硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜が形成されている請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュールのバックシート。
【請求項6】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマー塗料の硬化塗膜中に顔料が分散している請求項1〜5のいずれかに記載の太陽電池のバックシート。
【請求項7】
硬化性官能基含有含フッ素ポリマーが、テトラフルオロエチレン系の硬化性官能基含有含フッ素ポリマーである請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池のバックシート。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれかに記載のバックシートを備えた太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−45376(P2010−45376A)
【公開日】平成22年2月25日(2010.2.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−211885(P2009−211885)
【出願日】平成21年9月14日(2009.9.14)
【分割の表示】特願2005−212550(P2005−212550)の分割
【原出願日】平成17年7月22日(2005.7.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】