説明

太陽電池セル及びタブリードを保持する太陽電池セル保持体

【課題】太陽電池セルへのタブリードのハンダ付け時に、均一な溶着品質を得るために密着保持すると同時に、フラックスガスを逃がすことにより、ハンダ付け時の太陽電池セルの反りを防ぐこと。
【解決手段】太陽電池セルの上面及び下面にタブリードをハンダ付けするための、太陽電池セル及びタブリードを保持する太陽電池セル保持体であって、前記保持体は、上側保持体と、下側保持体と、からなり、前記上側保持体は、前記太陽電池セルの上面に対して前記タブリードを押し付ける上側押さえ具を有し、前記上側押さえ具は、弾性を有する複数のスティック状部材と、前記スティック状部材の端部に板体を設け、前記下側保持体は、前記太陽電池セルの下面に対して前記タブリードを支承する下側支承具を有し、前記下側支承具は前記タブリードと平行な棒状体であり、前記下側支承具の、前記タブリードとの接触面に溝又は孔を設けたことを特徴とする、太陽電池セル保持体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池パネルの製造において、当該パネルを形成する太陽電池セル(以下、単に「セル」ということもある)にタブリードをハンダ付けする際に太陽電池セル及びタブリードを保持する、太陽電池セル保持体に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1と2には、太陽電池セルにタブリードを位置決めしてハンダ付けする際に、セル上にタブリードを棒状或いはロッド状の剛性押さえ部材で押し付け支持した状態で加熱してタブリードのハンダを溶解し、その後セルを冷却することにより、タブリードのハンダ付けを行う技術が開示されている。
【特許文献1】特開平11−87756号公報
【特許文献2】特開2003−168811号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかし、従来の押さえ部材によるタブリードのハンダ付けには、次のような問題点があった。
(1)ロッド状の剛性押え部材でセルの上下面に取り付けるタブリードを押し付け支持した場合、加熱冷却時のセルの反り・歪みにより、タブリードが部分的にセルから浮いた状態が生じ、その結果、溶着力が均一にならない。また、セルが変形しない程度に強固に保持した場合には、セル破損を招くことがある。
(2)ハンダ付け時に、タブリードが押え部材に溶着してしまい、太陽電池セルが押え部材から取り外せなくなることがある。
(3)複数の棒体によってタブリードの複数箇所を押し付け支持した場合、タブリードの押し付け部と開放部とで熱条件が変化するため、溶着ムラが生じることがある。
特許文献1及び2には、上記問題点の解決手段は、一切開示されていない。
【0004】
そこで、本発明は太陽電池セルへのタブリードのハンダ付け時に、タブリードの略全域を密着保持すると同時に、フラックスガスを逃がすことにより、タブリードと押え部材が溶着することなく、太陽電池セルとタブルリードとの均一な溶着品質を得ることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために本願の第1発明は、太陽電池セルの上面及び下面にタブリードをハンダ付けするための、太陽電池セル及びタブリードを保持する太陽電池セル保持体であって、前記保持体は、上側保持体と、下側保持体と、からなり、前記上側保持体は、前記太陽電池セルの上面に対して前記タブリードを押し付ける上側押さえ具を有し、前記上側押さえ具は、弾性を有する複数のスティック状部材と、前記スティック状部材の端部に板体を設け、前記下側保持体は、前記太陽電池セルの下面に対して前記タブリードを支承する下側支承具を有し、前記下側支承具は前記タブリードと平行な棒状体であり、前記下側支承具の、前記タブリードとの接触面に溝又は孔を設けたことを特徴とする、太陽電池セル保持体を提供する。
また、本願の第2発明は、第1発明の太陽電池セル保持体において、前記上側押え具の板体のタブリードの長さ方向の端部にテーパ部を形成したことを特徴とする、太陽電池セル保持体を提供する。
また、本願の第3発明は、第1発明または第2発明の太陽電池セル保持体において、前記上側押さえ具の板体を、複数の前記スティック状部材に渡設して配置し、前記板体には溝又は孔を設けたことを特徴とする、太陽電池セル保持体を提供する。
また、本願の第4発明は、第1発明乃至第3発明のいずれかに記載の太陽電池セル保持体において、上側押え具及び/又は下側支承具の、タブリードとの接触部に、剥離層を設けたことを特徴とする、太陽電池セル保持体を提供する。
【発明の効果】
【0006】
本発明は、上記した課題を解決するための手段により、次のような効果の少なくとも一つを得ることができる。
<1>本発明の下側支承具及び上側押え具を使用することにより、タブリードを、板体や棒状体により均一に接触保持するために生ずる溶着ムラや溶着不良を防ぐことができる。
<2>本発明の下側支承具及び上側押え具が、フラックスガスが逃げる構成であるため、タブリードと下側支承具及び上側押さえ具との溶着不良を防ぐことができる。
<3>本発明の下側支承具や上側押え具に剥離層を設けることにより、下側支承具や上側押え具にタブリードが溶着するのを防ぐことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下、本発明について図面を参照し、実施の形態について詳細に説明する。
【0008】
<1>太陽電池セル
図1と図2は、タブリード20をハンダ付けする太陽電池セル10を示す。
図1に示すように、太陽電池セル10は表面に平行に2列の集電極11を設けている。
図2に示すように、太陽電池セル10は上面に正極の集電極、下面に負極の集電極11を設けてあり、複数の太陽電池セル10を並べ、隣接する太陽電池セル10の上面の集電極11と下面の集電極11とをタブリード20で直列に接続する。
【0009】
<2>ハンダ付け方法
図3は、本発明の太陽電池セル保持体30を用いたハンダ付け装置の概略の構成を示した断面図である。図1及び図2のように複数の太陽電池セル10とタブリード20をハンダ付けする場合は、本発明の保持体30の必要な個数を一定間隔に接続等して使用する。ここでは簡略化し、1個の保持体30を搬送コンベア60により加熱空間70に搬入してハンダ付けする場合で説明する。
ハンダ付け工程においては、太陽電池セル保持体30により太陽電池セル10とタブリード20を位置決めした状態で保持し、その太陽電池セル保持体30を搬送する搬送コンベア60と、搬送コンベア60の搬送面が内部を走行するように形成され、かつ、搬送コンベア60を上下から跨ぐ形で配置されたチャンバ状の空間であって、内部に複数の加熱手段71を備えた加熱空間70と、を使用して行う。
【0010】
<3>加熱・冷却
太陽電池セル10は、保持体30により、太陽電池セル10の集電極11に、タブリード20を押し付けた状態で保持され、搬送コンベア60により加熱空間70に搬入される。
加熱空間70には、搬送コンベア60を挟んで上、下にヒータ等の加熱手段71が複数個配置されている。
保持体30により加熱空間70に搬入された太陽電池セル10は、加熱手段71により上面及び下面が同時に昇温され、タブリードのハンダが溶解する。
加熱された太陽電池セル10は搬送コンベア60により、加熱空間70から搬出され、室温雰囲気下又は図示しないファン等の冷却手段により冷却され、ハンダが固化してハンダ付けが完了する。
以下、本発明に係る太陽電池セル保持体30について詳述する。
【0011】
<4>太陽電池セル保持体(実施形態1)
太陽電池セル保持体30は、太陽電池セル10の上面及び下面にタブリード20を位置決めした状態で、太陽電池セル10とタブリード20とを同時に保持するものである。
太陽電池セル保持体30は、図4に示すように、セル10の上面にハンダ付けするタブリード20を保持する上側保持体40と、セル10の下側にハンダ付けするタブリード20を保持する下側保持体50とにより構成する。
上側保持体40と下側保持体50とは、図示してはいないが、押え体51に設けられた2箇所の位置決めピンと、押え体41に設けられた2箇所の位置決め孔により、位置決めセットされる構造となっている。
下側保持体50の支承具上52にタブリード20をセットしその上に太陽電池セル10をセットし、その上にタブリード20をセットした後に、上方から上側保持体40を、位置決めピン及び孔にて位置決めして重ねる。このように太陽電池セル10とタブリード30が保持体30にセットされる。
【0012】
上側保持体40は、図4(a)に示すように、押え体41に、タブリードの上側押え具44が複数本配置されている。この上側押え具44は、弾性を有するスティック状の押えバー42の先端に板体43を取りつけた構成となっている。押えバー42は、押え体41にボルト締めなどで取り付けされている。また先端の板体43は、押えバー42と一体構造としても良いし、また板体を別部品として押えバーに固定する構造とすることもできる。
押え体41は、太陽電池セル10の両側辺縁を保持するためのものである。
押えバー42及び押えバーに取りつけた板体43は、タブリード20を保持するためのものである。
【0013】
下側保持体50は、図4(b)に示すように、押え体51と、支承具52とにより構成されている。
押え体51は、太陽電池セル10の両側辺縁を保持するためのものであり、支承具52は、タブリード20を支承するためのものである。
支承具52は、同図に示すように棒状体であり、タブリード20と平行になるように配置する。支承具52のタブリード20との接触面53には、溝54を設けてある。またこの溝は、貫通の長孔や貫通の複数個の丸孔でも良い。
【0014】
次に上記の上側保持体40と下側保持体50がどのように機能するか図5により説明する。図5は、保持体30により太陽電池セル10の上下面にタブリード20を配置し、保持した状態を示す模式図である。
太陽電池セル10の両側辺縁は、押え体41、51により挟持し、平坦に保持されているため、セル10本体の加熱・冷却による反りを防ぐことができる。
【0015】
セル10の上面に取り付けるタブリード20は、複数本の弾性を有する上側押え具44により押し付け保持される。先に述べたように、この上側押え具は、押えバー42とその先端に設けた板体43から構成される。押えバー42はスティック状であり弾力を有するため、板体43により保持されたタブリード20は太陽電池セル10と密着保持された状態で加熱・冷却され、また、タブリード20の略全域を同一材質で接触保持することにより、タブリード20全域に熱が均一に伝わり、その結果均一な溶着品質を得ることができる。
図4(a)のように板体43は離隔しており、タブリード20の加熱時に発生するフラックスガスが板体43の下面から逃げやすく、タブリード20と板体43が溶着することを防止することができる。
【0016】
セル10の下面に取り付けるタブリード20は、支承具52により保持される。支承具52は棒状体であるため、支承具52により支承されたタブリード20は太陽電池セル10と密着保持された状態で加熱・冷却され、また、タブリード20の略全域を同一材質で接触保持することにより、タブリード20全域に熱が均一に伝わり、その結果均一な溶着品質を得ることができる。
図4(b)のように支承具52には溝54が設けられており、タブリード20から加熱時に発生するフラックスガスが接触面53から逃げやすく、タブリード20と支承具52が溶着することを防止することができる。
なお、この構成の保持体30によれば、図5の通り、セル10の上側及び下側にタブリード20が配置されたものでもよいし、また、セル10に対していずれか一方の面にタブリード20が配置されたものでもよい。
【0017】
[実施形態2]
上側押え具44と下側支承具52の第2の実施形態について図6及び図7により説明する。
上側押え具44は、図6の通り板体43においてタブリード20の長さ方向の両端部にテーパ部432を付与している。これによりタブリード20を加熱して溶融したハンダが板体43の端部に付着し、タブリード20と上側押え具44が溶着することを防止することができる。
更に板体43のタブリード20との接触面431にはフッ素樹脂等により剥離層433を設けることもできる。この剥離層433は、板体43のタブリード20と接触する側の表面にフッ素樹脂等からなる液を塗布したり、樹脂シートを接着剤等により貼り付けるなどの方法により設けることができる。これによりタブリード20と上側押え具44が溶着することを更に効果的に防止することができる。
【0018】
下側支承具52は、図7(a)の通り棒状部材に溝522が設けられている。さらにこの支承具52の接触面521にはフッ素樹脂等により剥離層523を設けることもできる。この剥離層523は、板体43に剥離層433を付与する手段と同じ手段で付与することができる。これによりタブリード20と下側支承具52が溶着することを効果的に防止することができる。
また下側支承具52は、棒状部材だけでなく、図7(b)のようにU型の金具を上下逆に取り付けし、その上面にフラックスガスを逃がすための貫通する長孔525又は図示しないが通常の貫通する丸孔を複数個設けたような構成とすることもできる。さらにこの下側支承具52の接触面521に図7(a)と同様の剥離層523を設けることも可能である。
【0019】
[実施形態3]
上側押え具44と下側支承具52の第3の実施形態について図8及び図9により説明する。
上側保持体40のタブリード上側押え具44は、図8に示すように、板体43を複数本の弾性を有する押えバー42の先端に、ハンダよりも融点の高いロウ材によりロウ付けするなどして渡設するように構成してもよい。
押えバー42はスティック状であり弾力を有するため、板体43により保持されたタブリード20は太陽電池セル10と密着保持された状態で加熱・冷却されることにより、均一な溶着品質を得ることができる。
渡設された板体43には図8(a)のように貫通する長孔434を設けたり、図8(b)のように貫通する複数の孔435を設けることにより、またさらにタブリード20との接触面431に図4(b)・図7(a)のように部分的に溝を設けることにより、タブリード20の加熱時に発生するフラックスガスが接触面431から逃げやすく、タブリード20と板体43が溶着することを防止することができる。タブリード20との接触面431には、フッ素樹脂等により剥離層を設けるような構成とすることもできる。更にこの上側押え具44は、実施形態2の図6で説明したように板体43の両端にテーパ部432を設けることもできる。
【0020】
下側保持体50の支承具52には、図9のように貫通する複数の孔524を設けてもよい。
貫通する複数の孔524を設けることにより、タブリード20の加熱時に発生するフラックスガスが接触面521から逃げやすく、太陽電池セル10の反りを防ぐことができる。
更にこの下側支承具52は、実施形態2の図7で説明したように、支承具52のタブリード20との接触面521に剥離層を設けることも可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】タブリードをハンダ付けする太陽電池セルを示す平面図
【図2】図1に示す太陽電池セルの断面図
【図3】ハンダ付け方法を実施する工程を模式的に示した側断面図
【図4】本発明に係る太陽電池セル保持体の斜視図(実施形態1)
【図5】太陽電池セル及びタブリードを保持した太陽電池セル保持体の模式図
【図6】上側押え具である押えバー及び板体の斜視図(実施形態2)
【図7】下側支承具の斜視図(実施形態2)
【図8】その他実施例に係る上側押さえ具である押さえバー及び板体の斜視図(実施形態3)
【図9】その他実施例に係る下側支承具の斜視図(実施形態3)
【符号の説明】
【0022】
10 太陽電池セル
11 集電極
20 タブリード
30 保持体
40 上側保持体
41 押え体
42 押さえバー
43 板体
44 押え具
431 接触面
432 テーパ部
433 剥離層
434 長孔
435 孔
50 下側保持体
51 押え体
52 支承具
53 接触面
54 溝
521 接触面
522 溝
523 剥離層
524 孔
525 長孔
60 搬送コンベア
70 加熱空間
71 加熱手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池セルの上面及び下面にタブリードをハンダ付けするための、太陽電池セル及びタブリードを保持する太陽電池セル保持体であって、
前記保持体は、上側保持体と、下側保持体と、からなり、
前記上側保持体は、前記太陽電池セルの上面に対して前記タブリードを押し付ける上側押え具を有し、
前記上側押え具は、弾性を有する複数のスティック状部材と、前記スティック状部材の端部に板体を設け、
前記下側保持体は、前記太陽電池セルの下面に対して前記タブリードを支承する下側支承具を有し、
前記下側支承具は前記タブリードと平行な棒状体であり、
前記下側支承具の、前記タブリードとの接触面に溝又は孔を設けたことを特徴とする、
太陽電池セル保持体。
【請求項2】
請求項1に記載の太陽電池セル保持体において、前記上側押え具の板体のタブリードの長さ方向の端部にテーパ部を形成したことを特徴とする、太陽電池セル保持体。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池セル保持体において、前記上側押え具の板体を、複数の前記スティック状部材に渡設して配置し、前記板体には溝又は孔を設けたことを特徴とする、太陽電池セル保持体。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の太陽電池セル保持体において、上側押え具及び/又は下側支承具の、タブリードとの接触部に、剥離層を設けたことを特徴とする、太陽電池セル保持体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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