説明

太陽電池パネルと緑化パネルとが併設されてなる緑化構造

【課題】太陽電池パネル1と緑化パネル2とバッテリー6やインバータ8を備えた緑化構造において、太陽電池パネル1とバッテリー6、インバータ8との間の配線作業を容易化し、かつ特別の手段を講じることなく高温低温等の自然環境からバッテリー6、インバータ8を保護できるようにする。
【解決手段】太陽電池を備えた太陽電池パネル1と植裁層を備えた緑化パネル2とを併設すると共に、太陽電池が発電する電気を蓄電するバッテリー6、インバータ8を、植裁層を構成する土壌中4に埋設された状態で緑化パネル2内に設置する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池パネルと緑化パネルとが併設されてなる緑化構造に関する。
【背景技術】
【0002】
地球の温暖化に対する対策として再生可能な自然エネルギーを積極的に利用することが求められており、その一環として、屋根等の上に太陽電池を備えた太陽電池パネルを設置して電気を得ることが広く行われている。また、都市環境の改善および省エネルギーの観点から、工場や学校などの建物の屋上や壁面を、植裁層を備えた緑化パネルを用いて緑化することも行われている。
【0003】
太陽電池による発電と緑化パネルによる緑化とを同時に行うことも提案されており、特許文献1には、建築物の屋根に植生を成して緑化を図り、さらに緑化に対する補給水を降水の循環利用によって行うとともに、その循環利用には屋根頂部に配置した太陽電池パネから得られる電力を利用するようにした屋上緑化と水循環システムが記載されている。また、特許文献2には、第1の枠内に太陽電池(太陽光発電モジュール)が設けられてなる太陽電池パネルと、第1の枠と平面形状が同寸法の第2の枠内に緑化植物が植栽された植栽層が設けられてなる植栽パネルとが、建物の屋根面に複数敷設されている屋根構造が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−293717号公報
【特許文献2】特開2005−282211号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池を用いた発電システムにおいて、発電したエネルギーを有効利用するために、通常、太陽電池が発電する電気を蓄電するバッテリーがシステムに組み込まれる。上記した太陽電池パネルと緑化パネルとが併設されてなる緑化構造においても、バッテリーを構造内に組み入れることが望まれるが、それに関しては、従来から特別の配慮はなされていない。もし、緑化構造から離れた位置に設置されたバッテリーを太陽電池が発電する電気を蓄電するバッテリーとして利用する場合には、長い距離にわたり電源ケーブルを配線することが必要となる。屋根上等の緑化構造に近接した位置にバッテリーを配置する場合には、電源ケーブルの長い取り回し等の不都合は回避できるが、屋外にあるバッテリーを冬季の低温状態や夏季の太陽光による過酷な高温状態から保護するために、バッテリーを断熱材等を用いて被覆するというような、環境からバッテリーを保全するための何らかの手段を別途に行う必要がある。
【0006】
また、バッテリーに蓄電された電力を家庭で使用する場合、直流を交流に変換するインバータを電力供給系に設置することが行われるが、インバータについても同じことがいえる。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、太陽電池パネルと緑化パネルとが併設されかつバッテリーやインバータを備えた緑化構造において、太陽電池パネルとバッテリーあるいはインバータとの間の配線作業を容易化することができ、かつ、特別の手段を講じることなく環境からバッテリーおよび/またはインバータを保全できるようにした緑化構造を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明による緑化構造は、太陽電池を備えた太陽電池パネルと植裁層を備えた緑化パネルとが併設されてなる緑化構造であって、太陽電池が発電する電気を蓄電するバッテリーと直流を交流に変換するインバータの双方またはいずれか一方がが植裁層を構成する土壌中に埋設されていることを特徴とする。
【0009】
上記の緑化構造では、バッテリーおよび/またはインバータは太陽電池パネルに併設する緑化パネル内に配置されており、太陽電池パネルとバッテリーおよび/またはインバータ間の距離はきわめて近い。そのために、太陽電池パネルとバッテリーおよび/またはインバータとの間の配線作業を容易かつ迅速に行うことができる。また、バッテリーおよび/またはインバータは緑化パネルの植裁層を構成する土壌中に埋設されており、植裁用の土壌水の気化熱で冷やされることと、土壌がバッテリーおよび/またはインバータに対する保護層(断熱層)として機能することで、周囲の自然環境からバッテリーおよび/またはインバータを保全するために特別の手段を講じることなく、バッテリーおよび/またはインバータにとって過酷な高温や低温状態となるのを、効果的に防止することができる。
【0010】
本発明による緑化構造は、太陽光が照射することを条件に任意の場所に設置することができる。公園等の人工地盤上に設置してもよく、家屋あるいは工場の屋根や屋上に設置してもよい。設置場所や設置面積に応じて、太陽電池パネルの個数および緑化パネルの個数を設定する。また、1つの緑化パネルの大きさも適宜設定する。また、太陽電池パネルに備えられる太陽電池の数、および設置する太陽電池パネル数に応じて、緑化構造で必要とされるバッテリーおよび/またはインバータの容量や個数を設定する。1つの緑化パネルに1つのバッテリーおよび/またはインバータを配置してもよく複数個のバッテリーおよび/またはインバータを配置してもよい。
【0011】
1つの緑化パネルに複数個のバッテリーおよび/またはインバータを配置する場合には、各バッテリーおよび/またはインバータは等間隔で植裁層を構成する土壌中に配置されることが好ましい。この態様では、バッテリーが埋設されていない領域、すなわち比較して土壌が厚くなっている領域が等間隔で分布するようになり、緑化パネル内での植物の分布を均一化することができる。それにより、意匠性を損なわない緑化構造が得られる。
【0012】
本発明による緑化構造において、緑化パネルには植裁層に水を供給することのできる給水管が配設されていることが望ましい。給水管から適量の水を植裁層に供給することにより、植物の育成を助けると共に、その気化熱により、夏季等においてバッテリーおよび/またはインバータが過酷な高温状態となるのを阻止することができる。
【0013】
本発明による緑化構造において、植裁層を構成する土壌中にバッテリーのみを埋設する場合には、直流電源としてそのまま使用するか、家庭内等に別途配置したインバータで交流に変換して使用する。植裁層を構成する土壌中にバッテリーとインバータの双方を埋設する場合には、インバータで交流に変換された電力をそのまま使用することができる。植裁層を構成する土壌中にインバータのみを埋設する場合にであっても、インバータで交流に変換された電力をそのまま使用することができる。また、インバータを設置することにより、太陽電池が発電した電気が余ったときに、売電することも可能となる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、太陽電池パネルと緑化パネルとが併設されかつバッテリーあるいはインバータを備えた緑化構造において、太陽電池パネルとバッテリーあるいはインバータとの間の配線作業を容易化することができ、かつ、特別の手段を講じることなく高温低温等の自然環境からバッテリーあるいはインバータを効果的に保全することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による緑化構造の一例を説明するための側面図。
【図2】図1に示す緑化構造の平面図。
【図3】本発明による緑化構造の他の例を説明するための側面図。
【図4】本発明による緑化構造のさらに他の例を説明するための側面図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る緑化構造のいくつかの実施の形態を図面を参照しながら説明する。図において、Rは本発明による緑化構造を構築する基盤の一例としての屋根面である。
【0017】
図1および図2に示す形態において、屋根面Rには、適数の太陽電池パネル1が配置され、太陽電池パネル1に併設するようにして適数の緑化パネル2が配置されている。太陽電池パネル1は従来知られたものであってよく、複数個の太陽電池を備えている。緑化パネル2は、この例では、矩形状をなす箱形ケース3とその中に充填された土壌4とを備え、土壌3に適宜の植物5が植生されている。土壌4と植生されている植物5とで本発明にいう「植裁層」が形成される。
【0018】
前記箱形ケース3の底板上には、適数(図示のものでは16個)のバッテリー6が、等間隔で配置されており、すべてのバッテリー6は土壌4中に埋設している。そして、各バッテリー6は、短い配線10を介して、前記した太陽電池パネル1と並列または直列に接続しており、また、各バッテリー6からは、図示しない直流負荷側あるいはインバータを介して交流負荷側に接続する配線11が延出している。なお、各バッテリー6には適宜の防水加工を施しておくことが望ましい。
【0019】
必須ではないが、図示の緑化構造では、緑化パネル2の土壌4に水を供給するための給水管7も設けられている。
【0020】
図3は、本発明による緑化構造の他の形態を示している。この形態では、複数個のバッテリー6の幾つかに替えて、直流を交流に変換するインバータ8が箱形ケース3の底板上に配置され、かつ土壌4中に埋設している。バッテリー6とインバータ8は配線12を介して接続しており、インバータ8で交流に変換した電力は、配線11を介して、図示しない交流負荷側に供給される。
【0021】
図4は、本発明による緑化構造のさらに他の形態を示しており、この形態では、直流を交流に変換するインバータ8のみが箱形ケース3の底板上に配置され、かつ土壌4中に埋設している。太陽電池パネル1の太陽電池が発電した直流電力は、配線10を介して、直接的にインバータ8に送り込まれ、インバータ8で交流に変換した電力は、配線11を介して、図示しない交流負荷側に供給される。
【0022】
上記したいずれの緑化構造でも、太陽電池パネル1と、バッテリー6あるいはインバータ8を埋設した緑化パネル2はごく近い位置にあり、太陽電池パネル1とバッテリー6あるいはインバータ8との配線10による電気的接続処理は容易に行うことができる。また、すべてのバッテリー6あるいはインバータ8は植裁層を構成する土壌4中に埋設しており、土壌4中の水が気化するときの気化熱の作用と、土壌がバッテリー6あるいはインバータ8に対して果たす断熱層としての作用から、バッテリー6あるいはインバータ8が過酷な高温や低温状態となるのを効果的に防止することができる。さらに、バッテリー6あるいはインバータ8が位置する場所以外の場所では、土壌4は十分な厚さを備えており、植物5の育成に支障が生じることもない。
【0023】
なお、上記した例では、いずれも、1個の太陽電池パネル1と1個の緑化パネル2のみが示されているが、前記したように、太陽電池パネル1および緑化パネル2の個数は任意であり、緑化を必要とする面積を考慮して適宜設定される。
【0024】
また、緑化パネル2として、箱形ケース3とその中に充填された土壌4とを備えたものを示したが、箱形ケース3に代えて、土壌4とバッテリー6あるいはインバータ8を支持できる適宜の遮水性を備えた基板材と、該基板材の周囲に取り付けた適宜高さの見切り材とからなる構成のものを用い、その中に土壌4とバッテリー6あるいはインバータ8とを配置するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0025】
R…屋根面、
1…太陽電池パネル、
2…緑化パネル、
3…矩形状をなす箱形ケース、
4…土壌、
5…植生されている植物、
6…バッテリー、
7…給水管、
8…インバータ
10…太陽電池パネルとバッテリーまたはインバータとを接続する配線、
12…バッテリーとインバータとを接続する配線。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池を備えた太陽電池パネルと植裁層を備えた緑化パネルとが併設されてなる緑化構造であって、太陽電池が発電する電気を蓄電するバッテリーと直流を交流に変換するインバータの双方またはいずれか一方が植裁層を構成する土壌中に埋設されていることを特徴とする緑化構造。
【請求項2】
バッテリーとインバータの双方またはいずれか一方の複数個が等間隔で植裁層を構成する土壌中に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の緑化構造。
【請求項3】
緑化パネルには植裁層に水を供給することのできる給水管が配設されていることを特徴とする請求項1または2に記載の緑化構造。
【請求項4】
屋根面に配置されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の緑化構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−117258(P2011−117258A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−292876(P2009−292876)
【出願日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【出願人】(000002440)積水化成品工業株式会社 (1,335)
【Fターム(参考)】