説明

太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイ

【課題】 屋根等の構造物上への配置の自由度が高く、正圧荷重に対する強度に優れた太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイを提供すること。
【解決手段】 互いに平行な第1側面および第2側面を有する太陽電池パネルと、前記第1側面を保護する第1フレーム部材と、前記第2側面を保護する第2フレーム部材と、前記太陽電池パネルの裏面側において、前記第1フレーム部材側から前記第2フレーム部材側へ該第2フレーム部材を越えて延びている長尺の1個以上の固定用部材とを備えており、該固定用部材は、前記太陽電池パネルの裏面側から平面視したときに、長手方向が前記第1側面および前記第2側面に対して直交する直線に対して非平行になるように配置されている太陽電池モジュールとする。また、このような太陽電池モジュールの複数を瓦重ねしている太陽電池アレイとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールと、複数の太陽電池モジュールを例えば建物の屋根等の構造物の上に設置して、これら太陽電池モジュール同士を瓦重ねして成る太陽電池アレイとに関する。
【背景技術】
【0002】
省資源の観点から、また、建物上部の重量低減による耐震性向上の観点から、屋根材一体型の太陽電池モジュールを用いた太陽電池アレイの普及が望まれている。また、このような太陽電池アレイには、特にメンテナンス性の向上および発電効率の向上が求められている。
【0003】
そこで、屋根瓦1枚分の傾斜方向長さと、屋根瓦複数枚分の水平方向長さの太陽電池モジュールであって、その裏面側に傾斜方向へ伸びる固定用部材を有したものを屋根瓦と入れ替えて屋根上に葺くことができる技術が提案されている(例えば、下記の特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−308409号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、これまで例えば屋根上において、太陽電池モジュール同士が互いに干渉することなく、簡便に密に配置できるものがなく、屋根等の構造物への配置の自由度の高い太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイが要望されている。
【0006】
また、太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイは、温暖な地域に加えて、例えば積雪量が多い降雪地域などにも設置できることが求められており、設置可能地域を広げることができて、正圧荷重に対する強度の高い太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイが要望されている。
【0007】
そこで、本発明の目的の一つは、設置可能地域を広げることができて、屋根等の構造物上への配置の自由度が高く、しかも正圧荷重に対する強度に優れた、太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の一形態に係る太陽電池モジュールは、互いに平行な第1側面および第2側面を有する太陽電池パネルと、前記第1側面を保護する第1フレーム部材と、前記第2側面を保護する第2フレーム部材と、前記太陽電池パネルの裏面側において、前記第1フレーム部材側から前記第2フレーム部材側へ該第2フレーム部材を越えて延びている長尺の1個以上の固定用部材とを備えており、該固定用部材は、前記太陽電池パネルの裏面側から平面視したときに、長手方向が前記第1側面および前記第2側面に対して直交する直線に対して非平行になるように配置されている。
【0009】
また、本発明の一形態に係る太陽電池アレイは、上記太陽電池モジュールの複数を瓦重ねしてなるものである。なお、ここで瓦重ねとは、瓦同士が重なり合うように、例えば一端部と他端部とが同一方向にある2枚の太陽電池モジュールを考えた場合、一の太陽電池
モジュールの一端部で他の太陽電池モジュールの他端部を覆う状態で重なり合う状態をいうものとする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成の太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイは、前記太陽電池パネルの裏面側から平面視したときに、固定用部材は、その長手方向が第1側面および第2側面に対して直交する直線に対して非平行である。
【0011】
これにより、例えば屋根等の傾斜した構造物の傾斜面に、この傾斜方向へ複数の太陽電池モジュールを少なくとも一列に配置した太陽電池アレイを設置しようとする際に、傾斜面における上下方向に位置する太陽電池モジュールの固定用部材同士が干渉することがない。
【0012】
そして、上記構成の太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイによれば、簡便な構成および簡便な方法によって、屋根等の上で複数の太陽電池モジュールを傾斜方向へ少なくとも一列に且つ密に整列した太陽電池アレイを設置することができる。
【0013】
さらに、太陽電池アレイの発電量を増大させることが可能となり、屋根等の構造物上への配置の自由度の高い太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイを提供できる。
【0014】
また、上記構成の太陽電池アレイにおいて、瓦重ね状となった太陽電池モジュール同士の重なり部分では、下側の太陽電池モジュールの例えば棟側に配置される第2フレーム部材上に、上側の太陽電池モジュールの例えば軒側に配置される第1フレーム部材が位置する。そして、第2フレーム部材(例えば棟側)は例えば一対の固定用部材の場合、これら固定用部材によって2点で支持されるとともに、第1フレーム部材(例えば軒側)は例えば2個の固定用金具を介して第2フレーム部材上に支持される。
【0015】
これにより、下側に位置する第2フレーム部材(例えば棟側)の2つの支点の間隔よりも、上側に位置する第1フレーム部材(例えば軒側)の2つの支点の間隔が広いことから、太陽電池パネルの撓みを低減して、太陽電子素子にクラック等の発生を抑制することができて、太陽電池アレイの設置可能地域を広げることができて、正圧荷重に対する強度の高い太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一形態に係る太陽電池アレイの一実施形態を説明する図であり、(a)は斜視図、(b)は(a)のA−A’線で切断した様子を示す断面図であり、(c)は(a)のB−B’線で切断した様子を示す断面図である。
【図2】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールを構成する太陽電池パネルの一実施形態を説明する図であり、(a)は受光面側からみた平面図であり、(b)は(a)のC−C’線で切断した様子を示す断面図である。
【図3】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの一実施形態を説明する図であり、(a)は受光面側からみた平面図、(b)は背面図、(c)は側面図である。
【図4】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールを構成する固定用部材の一実施形態を説明する図であり、(a)は受光面側からみた平面図、(b)は側面図、(c)は背面図である。
【図5】本発明の一形態に係る太陽電池アレイの一実施形態を説明する図であり、(a)は図1(b)におけるD部の拡大図、(b)は図1(c)におけるE部の拡大図である。
【図6】本発明の一形態に係る太陽電池アレイの一実施形態を説明する図であり、(a)は図1(a)の太陽電池アレイを受光面側からみたときの固定用部材の位置を示す模式図、(b)は図1(a)の太陽電池モジュールの裏面へ導入された空気の流れを説明する模式図である。
【図7】本発明の一形態に係る太陽電池アレイの一実施形態を説明する図であり、(a)は図6(a)におけるF−F’線で切断した様子を示す断面模式図、(b)は(a)で示す構造に対して正圧荷重が加わったときの様子を説明する断面模式図、(c)は本実施形態の効果を説明するための比較用の断面模式図、(d)は(c)で示す構造に対して正圧荷重が加わったときの断面模式図である。
【図8】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの変形例を説明する図であり、(a)は受光面側からみた平面図、(b)は背面図である。
【図9】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの変形例を説明する図であり、(a)は受光面側からみた平面図、(b)は背面図である。
【図10】本発明の一形態に係る太陽電池モジュールの変形例を説明する図であり、(a)は受光面側からみた平面図、(b)は背面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態に係る太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイについて、図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイを構成する同一名称の部材については同一符号を付すものとし、重複した説明を省略する。また、図面は模式的に示したものであり、各図における構成要素のサイズおよび位置関係等は必ずしも正確に示したものではない。
【0018】
<太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイの基本構成>
図1(a),(b),(c)に示すように、太陽電池アレイ1は、構造物の傾斜面2(例えば、野地板2aと、この野地板2a上に傾斜方向へ一定間隔で配置された桟木2bとで構成される面(本実施形態では例えば屋根面))上に、複数の太陽電池モジュール3を固定した構造を有する。
【0019】
また、図3(a),(b),(c)に示すように、各太陽電池モジュール3は、それを構成する太陽電池パネル11の外周部を複数のフレーム部材で構成されるフレーム12で補強して、太陽電池パネル11の裏面に例えば一対の固定用部材20を取り付けている。
【0020】
なお、以下の説明では、傾斜面2に平行でかつ水平線に垂直な方向を傾斜方向Xとし、屋根面と平行でかつ水平線に沿って延びる方向を水平方向Yとし、傾斜方向Xおよび水平方向Yの双方に対して鉛直な方向を鉛直方向Zとする。また、通常、光を受けて発電に寄与する側の面を受光面とし、受光面と反対側の面を裏面とする。また、太陽電池アレイ1が傾斜面2上へ設置された際に、傾斜方向Xにおける上方向側を棟側とし、傾斜方向Xにおける下方向側を軒側とする。
【0021】
<太陽電池モジュール>
まず、太陽電池モジュール3の具体的な構成例について説明する。
【0022】
図2(a),(b)および図3(a),(b),(c)に示すように、太陽電池モジュール3は、太陽電池パネル11を4個のフレーム部材(12a,12b,12c)で構成されるフレーム12で補強して、その裏面に例えば一対の固定用部材20を取り付けている。太陽電池パネル11は、主として光を受光する受光面11a(透光性基板14の一主面)と該受光面11aの反対側に位置する裏面11b(裏面保護部材13の一主面)とを有している。
【0023】
また、太陽電池パネル11は、受光面11a側から順に、太陽電池モジュール3の基板を兼ねる透光性基板14と、熱硬化性樹脂からなる一対の充填材15と、これら充填材1
5に周囲を保護されインナーリード16で互いに電気的に接続された複数の太陽電池素子17と、裏面保護部材13とを備えている。さらに、太陽電池パネル11は、太陽電池モジュール3の太陽電池素子17で得られた出力を外部に取り出すための端子ボックス18を備えている。
【0024】
太陽電池パネル11の外形は受光面側からみて矩形状である。以下、太陽電池アレイ1を設置した際に、軒側に位置する長辺を第1側面(例えば軒側)11cとし、棟側に位置する長辺を第2側面(例えば棟側)11dとし、一対の短辺を短辺11eとする。
【0025】
太陽電池パネルの非受光面11b側は全く受光(発電に寄与)しないわけではない。例えば、裏面保護部材13および太陽電池素子17と裏面保護部材13との間に位置する充填材15に、透光性を有するような材質を用いることによって、非受光面11b側から入射される光の一部を受けて発電に寄与させることができるので、このような形態を採用してもよい。
【0026】
太陽電池素子17は、例えば、単結晶シリコンまたは多結晶シリコン等からなる平板状の部材が用いられる。このようなシリコン基板を用いる場合は、上述したように、インナーリード16で隣接するシリコン基板同士を電気的に接続すればよい。
【0027】
また、太陽電池素子17の種類は特に制限されない。例えば、太陽電池素子17として、アモルファスシリコンからなる薄膜太陽電池、主に銅−インジウム−ガリウム−セレンの四元化合物からなるCIGS系太陽電池、CdTe系太陽電池、または結晶シリコン基板上に薄膜アモルファスを形成した太陽電池等を用いてもよい。例えば、アモルファスシリコン系太陽電池、CIGS系太陽電池またはCdTe系太陽電池を採用する場合、透光性基板上において、アモルファスシリコン層、CIGS層またはCdTe層を透明電極等と組み合わせて適宜積層するようにしたものが利用できる。
【0028】
また、端子ボックス18は、変性ポリフェニレンエーテル樹脂(変性PPE樹脂)またはポリフェニレンオキサイド樹脂(PPO樹脂)からなる箱体内にターミナル板を備えており、さらに端子ボックス18の外部へ電力を導出する出力ケーブルを備えるものでよい。
【0029】
フレーム12は、太陽電池パネル11を保護する機能を有する。フレーム12の部材としてアルミニウム材を用いた場合、押し出し成形等で製造することができるので好適である。フレーム12は例えば4個のフレーム部材を組み合わせて構成される。つまり、フレーム12は第1フレーム部材(例えば軒側に配置される)12aと第2フレーム部材(例えば棟側に配置される)12bと2個の第3フレーム部材(短辺)12cとからなる。第1フレーム部材(軒側)12aは太陽電池パネル11の第1側面(軒側)11cを保護し、第2フレーム部材(棟側)12bは太陽電池パネル11の第2側面(棟側)11dを保護し、さらに第3フレーム部材(短辺)12cは、太陽電池パネル11の短辺11eを保護する。
【0030】
なお、第2フレーム部材(棟側)12bは、後述するように太陽電池アレイ1を設置して、太陽電池モジュール3同士が瓦重ねとなったときに影になる位置であることから、通常、日光が当たる位置にある第1フレーム部材(軒側)12aよりも、断面積を大きくして断面係数を高くすることができる。一方、第1フレーム部材(軒側)12aは、第2フレーム部材12bに比べて断面積が小さいことから荷重が加わったときに撓みやすい。この点については後述する。
【0031】
固定用部材20は、図3(a),(b),(c)および図4(a),(b),(c)に
示すように、棟側端部の受光面側に第1鉤状部24を有しており、棟側端部の裏面側へ延びた脚部25をさらに有している。また、脚部25には貫通孔26が設けられている。この貫通孔26を用いて、図1(b)に示すように、木ねじ27で野地板2aに対して固定部材20を固定させることができる。
【0032】
また、固定用部材20は、軒側端部にタップ加工が施されたねじ孔28を有しており、締結ねじ29によって第1フレーム部材(軒側)12aと締結されて固定させることができる。
【0033】
さらに、固定用部材20は、軒側の裏面側に第2鉤状部30を備えている。第2鉤状部30は、太陽電池アレイ1を設置したときに、軒側に配置された他の太陽電池モジュール3の第2フレーム部材(棟側)12bに係合することができる。このような固定用部材20は耐食性の観点から、ステンレスまたは溶融亜鉛メッキを施した鉄鋼などを用いて、プレス加工等によって製造することができる。
【0034】
以下、太陽電池モジュール3を、裏面側から棟側を上にしてみたときに、左側に位置する固定用部材20を第1固定用部材20aといい、右側に位置する固定用部材20を第2固定用部材20bというものとする。
【0035】
固定用部材20は、図3(a),(b)に示すように、水平方向Yに互いに間隔を空けて配置されているとともに、固定用部材20の長手方向が第1側面11cと第2側面11dに直交する直線に対して非平行に配置されている。なお、固定用部材20の長手方向が第1側面11cと第2側面11dに直交する直線を、図3(b)において、第1側面11cおよび第2側面11dのそれぞれの中点を通る第1直線40として図示している。
【0036】
図3(b)に示すように、固定用部材20は、その長手方向が第1直線40に対して非平行である上に、第1直線40に対して線対称に配置されており、第1固定用部材20aと第2固定用部材20bとの間隔は棟側へ向かうにしたがって漸次狭くなっている。また、図3(b)の第1固定部材20aにおいて示すように、固定用部材20はその長手方向が第1直線40に対して平行である場合の、第1直線40に平行で且つ脚部25の両端を通る第2直線41,第3直線42に対して、非平行に配置されており且つ脚部25が第2直線41と第3直線42とで挟まれた領域に重ならない位置に配置されている。つまり、固定用部材20は、例えば第1直線40に平行な第3直線42に対する傾斜角θが15°〜45°であることが望ましい。本実施形態ではθを約25°にしている。なお、本実施形態では第2直線41と第3直線42との距離は脚部25の最大幅d1に等しい。
【0037】
太陽電池モジュール3が上記構成であることによって、太陽電池アレイ1を例えば屋根の上に設置した際に、第1固定部材20aと第2固定用部材20bとの間において、下(軒)側から入って、上(棟)側へ勢いよく抜けることができる。これにより、太陽電池モジュール3の冷却効果を高めることができて、太陽電池モジュール3の発電効率の低下を抑制することができる。
【0038】
また、太陽電池モジュール3の水平方向Yの長さは、太陽電池アレイ1を設置したときに、共に葺かれる屋根瓦5の外形寸法(または、瓦重ねした際には一つの瓦の表面に現れている面の幅)の略整数倍に合わせるのが好ましい。
【0039】
また、太陽電池モジュール3の固定用部材20は、1対の2個有するものに限定されず、3個以上有したものであってもよい。これにより、太陽電池パネル11をさらに安定的に且つ堅固に支持することが可能になる。
【0040】
以上説明したように、本実施形態の太陽電池モジュール3は、互いに平行な第1側面11cおよび第2側面11dを有する太陽電池パネル11と、第1側面11cを保護する第1フレーム部材12aと、第2側面11dを保護する第2フレーム部材12bと、太陽電池パネル11の裏面側において、第1フレーム部材12a側から第2フレーム部材12b側へ第2フレーム部材12bを越えて延びている長尺の固定用部材20とを備えており、固定用部材20は、太陽電池パネル11の裏面側から平面視したときに、長手方向が第1側面11cおよび第2側面11dに対して直交する直線に対して非平行になるように配置されている。
【0041】
また、固定用部材20を複数個備えており、これら複数個の固定用部材20は、第1フレーム部材12aの長さ方向に沿って間隔を空けて並んでいるとともに、これら複数個の固定用部材20の内、両端に位置する第1固定用部材と第2固定用部材との第1フレーム部材12a側の間隔は、前記第1固定用部材と前記第2固定用部材との前記第2フレーム部材側の間隔よりも広い。
【0042】
<太陽電池アレイ>
次に、上記構成の太陽電池モジュールの複数を瓦重ねした太陽電池アレイ1の構成例について説明する。以下、説明の便宜上、上下に隣接して設置された2枚の太陽電池モジュールのうち、下側に位置する太陽電池モジュールを第1太陽電池モジュール3aとして、上側に位置する太陽電池モジュールを第2太陽電池モジュール3bとする。
【0043】
図5(a)に示すように、第1太陽電池モジュール3aの第2フレーム部材(棟側)12bを第2太陽電池モジュール3bの第2鉤状部30で挟持することによって、第2太陽電池モジュール3bが第1太陽電池モジュール3a上に瓦重ね状に固定される。
【0044】
一方、固定用部材20がない位置では、図5(b)に示すように、上段の第2太陽電池モジュール3bは下段の第1太陽電池モジュール3aの第2フレーム部材(棟側)12bの上部に覆い被さるように配置されている。
【0045】
また、第2太陽電池モジュール3bの棟側は、木ねじ27を固定用部材20の貫通孔26に挿通して、野地板2aへ締めこむことで野地板2a上に固定される。
【0046】
また、図1(a)に示すように、太陽電池モジュール3は、例えば建物の野地板2a上に、セラミックスまたは金属製の屋根瓦5と混在して設置することが可能である。つまり、太陽電池モジュール3を複数の屋根瓦5によって囲まれるように設置することができるし、屋根瓦5を太陽電池モジュール3同士の間に配した設置にすることもできるし、または屋根の一面を全て太陽電池モジュール3とした設置にすることもできる。
【0047】
本実施形態では、屋根瓦5として例えば平坦な平板瓦を使用しているが、波型瓦を使用してもよい。また、屋根瓦5の施工方法として、棟側から軒側に向けて瓦材がジグザグ状に配置される施工方法を採用してもよく、または瓦材が棟から軒まで一列に並ぶように配置される施工方法を採用してもよい。なお、図1(b)に示すように、屋根瓦5は野地板2a上に配された桟木2bに屋根瓦5の棟側端部の凸部を係止させる態様で設置される。
【0048】
次に、上記太陽電池アレイ1の効果の詳細について説明する。図3(b)に示すように、太陽電池モジュール3の第1固定用部材20aおよび第2固定用部材20bは、水平方向Yに間隔を空けて、太陽電池パネル11の第1側面11cと第2側面11dに対して直交する第1直線40に対して非平行に配置される。
【0049】
これにより、図6(a)に示すように、太陽電池アレイ1は上下に隣接した太陽電池モ
ジュール3の間で固定用部材20同士が干渉しないことから、太陽電池モジュール3を一列に整列して配置することができる。そして、太陽電池アレイを設置する際のレイアウトの自由度を高めることができる。また、太陽電池モジュール3を一列に整列すると、フレーム12または隣接した太陽電池素子17の間の目地が、傾斜方向Xに向けて一列になり統一感のある外観となって、太陽電池アレイ1の意匠性を高めることができる。
【0050】
以下、第1太陽電池モジュール3aを支持する固定用部材20を、固定用部材(下)20cといい、第2太陽電池モジュール3bを支持する固定用部材20を、固定用部材(上)20dというものとする。
【0051】
図7(a)に示すように、太陽電池アレイ1は、第1太陽電池モジュール3aと第2太陽電池モジュール3bとの瓦重ねとなっている部分において、第1太陽電池モジュール3aの第2フレーム部材(棟側)12bが下方を2箇所で固定用部材(下)20cによって支持されるとともに、第2フレーム部材(棟側)12b上に固定用部材(上)20dを介して第2太陽電池モジュール3bの第1フレーム部材(軒側)12aが支持される構成である。
【0052】
また、下側に位置する第2フレーム部材(棟側)12bを支持する固定用部材(下)20cの間隔は、上側に位置する第1フレーム部材(軒側)12aを支持する固定用部材(上)20dの間隔よりも小さい。
【0053】
図7(b)に示すように、太陽電池アレイ1に積雪等の正圧荷重が加わったときに、第1太陽電池モジュール3aと第2太陽電池モジュール3bとは下方に凸に撓みを生じて、それとともに第2フレーム部材(棟側)12bと第1フレーム部材(軒側)12aとも撓みが生じる。このとき、上方に位置する第1フレーム部材(軒側)12aの区間(支点間)Gは、下方に位置する第2フレーム部材(棟側)12bの区間(支点間)Hに当接して支持される。
【0054】
ここで、第2フレーム部材(棟側)12bの区間Hは、固定用部材(下)20cに小さい長さで支持されていることから撓みが低減されている。また、固定用部材(下)20cの配置位置は、鉛直方向Zでみて区間Gの内側に位置することから、第1フレーム部材12aは第2フレーム部材12bを介して固定用部材20cで支持される。これにより、上方に位置する第2太陽電池モジュール3bの第1フレーム部材(軒側)12aの撓みが低減され、太陽電池パネル11のひずみが低減される。
【0055】
上述したように、太陽電池素子17への受光面積を大きく確保する観点から、第1フレーム部材(軒側)12aの断面係数は、第2フレーム部材(棟側)12bの断面係数に比べて大きくすることが難しい。このため、太陽電池モジュール3の軒側が撓みやすくなっている。また、太陽電池パネル11のひずみを低減するので、第1フレーム部材(軒側)12aの撓みを低減することは効果が高い。これにより、太陽電池パネル11中の太陽電池素子17のクラック、および、太陽電池素子17とインナーリード16の電気的接続の破損等を抑制することができる。
【0056】
比較のために、図7(a),(b)に示すように、第2フレーム部材(棟側)12bの固定用部材(下)20cと、第1フレーム部材(軒側)12aの固定用部材(上)20dとの位置が、鉛直方向Zでみて同一直線上にある場合について説明する。太陽電池アレイ1に荷重が加わったとき、上側に位置する第1フレーム部材(軒側)12aと下側に位置する第2フレーム部材(棟側)12bは両方とも中央で最大の撓みを生じる。このため、上側に位置する第1フレーム部材(軒側)12aが、下側の第2フレーム部材(棟側)12bに当接するまでの撓みが大きくなる。このことから、本実施形態の太陽電池アレイよ
りも太陽電池素子のクラック等が生じる可能性が高まる。
【0057】
また、図5(b)に示すように、太陽電池アレイ1には瓦重ねしている2つの太陽電池モジュールの間に空気が流れる隙間を設けている。すなわち、太陽電池モジュール3の第2フレーム部材(軒側)12bの下方に空気が流れる空隙31を有している。これにより、太陽電池モジュール3の裏面側へ向けて、矢印のような経路による通気が可能である。この空隙31を通じて、外気が吹き込み太陽電池モジュール3を冷却することができる。そして、太陽電池モジュール3の第1固定用部材20aおよび第2固定用部材20bは第1直線40に対して線対称であり、第1固定用部材20aと第2固定用部材20bで形成される空気の流路は、鉛直方向Zからみると、図6(b)に示すように空隙31の開口部側で広く、奥に向かうにしたがって間隔が狭くなっている。空隙31を通じて流入した空気の流速は、流体の連続の式に従うと考えられることから、奥へ向かうにしたがって流路の断面積が狭くなるため、流速が早くなる。これにより、太陽電池アレイ1のさらに奥側まで低温の外気が吹き込んで流入するので、効率的に太陽電池アレイ1を冷却することができて、太陽電池アレイ1の発電効率の低下を抑制することが可能となる。
【0058】
<変形例1>
次に、図8(a),(b)を用いて、他の実施形態(変形例)に係る太陽電池アレイについて説明する。
【0059】
図8(a),(b)に示すように、太陽電池アレイを構成する太陽電池モジュール3の第1固定用部材20aと第2固定用部材20bの間隔が、棟側へ向かうにしたがって広くなる点で第1実施形態と相違する。
【0060】
つまり、図8(a),(b)に示す太陽電池モジュール3は、互いに平行な第1側面11cおよび第2側面11dを有する太陽電池パネル11と、第1側面11cを保護する第1フレーム部材12aと、第2側面11dを保護する第2フレーム部材12bと、太陽電池パネル11の裏面側において、第1フレーム部材12a側から第2フレーム部材12b側へ第2フレーム部材12bを越えて延びている長尺の固定用部材20とを備えている点、固定用部材20は、太陽電池パネル11の裏面側から平面視したときに、長手方向が第1側面11cおよび第2側面11dに対して直交する直線に対して非平行になるように配置されている点、および、複数個の固定用部材が第1フレーム部材12aの長さ方向に沿って間隔を空けて並んでいる点で共通する。しかし、これら複数個の固定用部材20の内、両端に位置する第1固定用部材と第2固定用部材との第1フレーム部材12a(軒)側の間隔が、前記第1固定用部材と前記第2固定用部材との第2フレーム部材12b(棟)側の間隔よりも狭い点で相違する。
【0061】
より具体的には、図8に示すように、第1固定用部材20aと第2固定用部材20bは、水平方向Yに間隔をおいて第1直線40に対して線対称に配置されるとともに、第1直線40に対して非平行に配置されている。さらに第1固定用部材20aと第2固定用部材20bの間隔が、棟側に較べて軒側が狭くなるように配置されている。
【0062】
このように固定用部材20を配置したことによって、既に説明した実施形態の太陽電池アレイと同様にして、太陽電池モジュール3を例えば傾斜方向Xに向けて一列に配置した太陽電池アレイを設置することができる。
【0063】
<変形例2>
上述した太陽電池モジュール3は、固定用部材20として、第1固定用部材20aおよび第2固定用部材20bの2個を備えたものであったが、3個以上の固定用部材20を備えた太陽電池モジュール3を採用してもよい。
【0064】
例えば図9に示すように、固定用部材20として、第1固定用部材20a、第2固定用部材20bおよび第3固定用部材20cの3個を備えた太陽電池モジュール3を採用してもよい。この太陽電池モジュール3の第1固定用部材20aおよび第2固定用部材20bは、第1側面11cおよび第2側面11dのそれぞれの中点を通る第1直線40に対して、それぞれ非平行である上に、第1直線40に対して線対称に配置されている。また、図9の太陽電池モジュール3の例では、第1固定用部材20aと第2固定用部材20bの間に配置された第3固定用部材20cが第2固定用部材20bと略平行に配置されている。なお、この第3固定用部材20cは第1固定用部材20aと略平行に配置されていてもよいし、他の固定用部材に対して非平行に配置されていてもよい。
【0065】
また、例えば図10に示すように、固定用部材20として、第1固定用部材20a、第2固定用部材20b、第3固定用部材20cおよび第4固定用部材20dの4個を備えた太陽電池モジュール3を採用してもよい。この太陽電池モジュール3の第1固定用部材20a、第2固定用部材20b、第3固定用部材20cおよび第4固定用部材20dは、第1側面11cおよび第2側面11dのそれぞれの中点を通る第1直線40に対して、それぞれ非平行である上に、第1直線40に対して線対称に配置されている。また、図10の太陽電池モジュール3の例では、第1固定用部材20aと第2固定用部材20bの間に配置された第3固定用部材20cおよび第4固定用部材20dのそれぞれが第1固定用部材20aまたは第2固定用部材20bと略平行に配置されている。なお、この第3固定用部材20cおよび第4固定用部材20dは、第1固定用部材20aまたは第2固定用部材20bと非平行に配置されていてもよい。
【0066】
これら太陽電池モジュール3によれば、太陽電池モジュール3を積雪荷重または風荷重が大きくなる地域に設置する際に、太陽電池モジュール3が長尺状のものを採用しても、3個以上の固定用部材20を配置させることで、荷重がかかった場合の太陽電池モジュール3の撓みを極力低減できて、耐荷重性能を高めることができる。これにより、太陽電池モジュールおよび太陽電池アレイの屋根等の構造物上への配置の自由度を高めることができる。
【0067】
<その他>
本実施形態に適用できる太陽電池モジュール3としては、上述の実施形態で説明したスーパーストレート構造のものに限られるものではなく、ガラスパッケージ構造または、サブストレート構造などの種々の構造のものに適用可能である。
【符号の説明】
【0068】
1:太陽電池アレイ
2:傾斜面
2a:野地板
2b:桟木
3:太陽電池モジュール
3a:第1太陽電池モジュール
3b:第2太陽電池モジュール
4:固定用部材
5:屋根瓦
11:太陽電池パネル
11a:受光面
11b:非受光面
11c:第1側面
11d:第2側面
11e:短辺
12:フレーム
12a:第1フレーム部材(軒側)
12b:第2フレーム部材(棟側)
12c:第3フレーム部材(側面)
13:裏面保護部材
14:透光性基板
15:充填材
16:インナーリード
17:太陽電池素子
18:端子ボックス
20:固定用部材
20a:第1固定用部材
20b:第2固定用部材
20c:固定用部材(下)
20d:固定用部材(上)
24:第1鉤状部
25:脚部
26:貫通孔
27:木ねじ
28:ねじ孔
29:締結ねじ
30:第2鉤状部
31:空隙
40:第1直線
41:第2直線
42:第3直線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに平行な第1側面および第2側面を有する太陽電池パネルと、
前記第1側面を保護する第1フレーム部材と、
前記第2側面を保護する第2フレーム部材と、
前記太陽電池パネルの裏面側において、前記第1フレーム部材側から前記第2フレーム部材側へ該第2フレーム部材を越えて延びている長尺の1個以上の固定用部材とを備えており、
該固定用部材は、前記太陽電池パネルの裏面側から平面視したときに、長手方向が前記第1側面および前記第2側面に対して直交する直線に対して非平行になるように配置されている太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記固定用部材を複数個備えており、これら複数個の前記固定用部材は前記第1フレーム部材の長さ方向に沿って間隔を空けて並んでいるとともに、これら複数個の前記固定用部材の内、両端に位置する第1固定用部材と第2固定用部材との前記第1フレーム部材側の間隔は、前記第1固定用部材と前記第2固定用部材との前記第2フレーム部材側の間隔よりも広い請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
請求項1または2に記載の太陽電池モジュールの複数を瓦重ねしている太陽電池アレイ。
【請求項4】
瓦重ねしている2つの太陽電池モジュールの間に空気が流れる隙間を設けている請求項3に記載の太陽電池アレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2013−84948(P2013−84948A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−215656(P2012−215656)
【出願日】平成24年9月28日(2012.9.28)
【出願人】(000006633)京セラ株式会社 (13,660)
【Fターム(参考)】