説明

太陽電池モジュール製造装置

【課題】球状シリコンセルで構成された光起電力素子を用いた太陽電池モジュールを、封止材における皺の発生等を生じることなく連続して製造することができるようにする。
【解決手段】表面側部材合成部11、裏面側部材合成部12、複数の加熱ローラ対15A〜15K、第1の予備加熱部13、第2の予備加熱部14、第3の予備加熱部16A〜16Jを備えた。表面側部材合成部11は、受光面シート121に表面封止材シート122を加熱接着して表面側部材120を形成する。裏面側部材合成部12は、バックシート131に裏面封止材シート132を加熱接着して裏面側部材130を形成する。複数の加熱ローラ対15A〜15Kは、光起電力素子110を表面封止材シート122と裏面封止材シート132との間に挟んで加熱する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、可撓性を有する太陽電池セルを用いた太陽電池モジュールの製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
スーパーストレートモジュールの太陽電池は、受光面側の強化ガラス基板上に光起電力素子を形成するため軽量化が困難であるだけでなく、枚葉製造となるため製造効率を容易に向上することができない。そこで、特許第3490969号に開示されている球状シリコンセル等の可撓性を有する太陽電池セルによって光起電力素子を構成し、その受光面を透光性フィルムで被覆した太陽電池モジュールが用いられている。光起電力素子を球状シリコンセルで構成することにより、シリコンの使用量を減らす効果もある。
【0003】
受光面を透光性フィルムで構成した太陽電池モジュールの製造方法として、フィルム状の表面側保護部材と裏面側保護部材との間に表面側封止材及び裏面側封止材とともに光起電力素子を封止する方法が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
保護部材は、フィルム状の樹脂である。封止材は、フィルム状の熱可塑性接着樹脂である。表面側保護部材及び表面側封止材と裏面側封止材及び裏面側保護部材とをそれぞれ光起電力素子の上下に供給し、これらを複数の熱ローラ対の間に通過させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−273374号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、封止材に用いられるエチレンビニルアセテート(EVA)等の樹脂は、弾性係数が小さく伸縮性が大きいため、張力を一定に維持して搬送することが難しい。特許文献1に記載された太陽電池モジュールの製造方法では、表面側及び裏面側の保護部材、表面側及び裏面側の封止材、並びに光起電力素子の計5層を1度にラミネートするため、封止材単独での搬送距離が長くなる。封止材の搬送中の取り扱いが困難になるだけでなく、封止材の張力が不均一になり、皺の発生等により製品に不良を生じ易い。
【0007】
この発明の目的は、可撓性を有する太陽電池セルで構成された光起電力素子を用いた太陽電池モジュールを、封止材における皺の発生等を生じることなく連続して製造することができる太陽電池モジュール製造装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は、表面側部材合成部、裏面側部材合成部、加熱部、第1の予備加熱部、第2の予備加熱部を備えている。表面側部材合成部は、受光面シートに表面封止材シートを加熱接着して表面側部材を形成する。裏面側部材合成部は、バックシートに裏面封止シートを加熱接着して裏面側部材を形成する。加熱部は、光起電力素子を光表面側部材の表面封止材シート側と裏面側部材の裏面封止材シート側との間に挟んで加熱する。
【0009】
この構成では、受光面シート及びバックシートのそれぞれに封止材シートを加熱接着して表面側部材及び裏面側部材を形成した後に、加熱部によって互いの間に光起電力素子を挟んで両者を加熱する。弾性係数が小さく伸縮性が大きい封止材は、受光面シート及びバックシートのそれぞれに接着した状態で加熱部に搬送される。封止材は、搬送中における伸縮を受光面シート及びバックシートによって規制され、張力の変動を生じることがない。
【0010】
この構成において、表面側部材合成部と加熱部との間で表面側部材を加熱する第1の予備加熱部と、裏面側部材合成部と加熱部との間で裏面側部材を加熱する第2の予備加熱部材と、を備えることが好ましい。表面側部材及び裏面側部材の温度を加熱部に達する前に上昇させておくことで急激な温度上昇を防止し、加熱部の加熱によって表面封止材及び裏面封止材に発生した気泡を抜き易くすることができる。
【0011】
また、第2の予備加熱部は、裏面側部材上に光起電力素子が載置される載置位置と加熱部との間に配置することが好ましい。表面側部材と裏面側部材との間に封止すべき光起電力素子の温度をも加熱部による加熱前に上昇させておくことができる。
【0012】
なお、加熱部は、光起電力素子の搬送方向に沿って配置された複数の加熱ローラ対と、各加熱ローラ対の間に配置された第3の予備加熱部と、で構成することができる。表面封止材と裏面封止材との架橋反応に必要な温度を一定時間にわたって維持することができる。
【0013】
また、加熱部は、3個以上の加熱ローラを備え、1番目の加熱ローラと2番目の加熱ローラとの間、2番目の加熱ローラと3番目の加熱ローラの間、・・・の順に光起電力素子を表面側部材と裏面側部材との間に挟んで通過させることもできる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、可撓性を有する太陽電池セルで構成された光起電力素子を用いた太陽電池モジュールを、封止材における皺の発生等を生じることなく連続して製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】この発明の実施形態に係る製造装置が製造する太陽電池モジュールの断面図である。
【図2】この発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュール製造装置の概略図である。
【図3】この発明の第2の実施形態に係る太陽電池モジュール製造装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
図1に示すように、太陽電池モジュール100は、光起電力素子である球状シリコンセルユニット110を表面側部材120と裏面側部材130との間に封止して構成されている。表面側部材120は、受光面シート121の内側に表面封止材122を備えている。裏面側部材130は、バックシート131の内側に裏面封止材132を備えている。
【0017】
球状シリコンセルユニット110の厚さは、2mm程度である。受光面シート121及びバックシート131の厚さは、50μm程度である。表面封止材122及び裏面封止材132の厚さは、500μm程度である。
【0018】
表面封止材122及び裏面封止材132は、一例としてEVAであり、90℃程度で溶融して受光面シート121及びバックシート131に接着する。また、一例として15分間にわたって150℃に維持することで、架橋反応を生じる。
【0019】
図2に示すように、この発明の第1の実施形態に係る太陽電池モジュール製造装置1は、表面部材合成部11、裏面部材合成部12、第1の予備加熱部13、第2の予備加熱部14、加熱ローラ対15A〜15K、第3の予備加熱部16A〜16Jを備えている。
【0020】
表面部材合成部11は、供給ローラ21及び22、加熱ローラ対23を備えている。供給ローラ21及び22のそれぞれは、受光面シート121及びシート状の表面封止材122を巻回している。加熱ローラ対23は、供給ローラ21及び22のそれぞれから繰り出された受光面シート121及び表面封止材122を一例として90℃で加熱し、受光面シート121の内側面に表面封止材122を仮接着して表面側部材120を形成する。
【0021】
裏面部材合成部12は、供給ローラ31及び32、加熱ローラ対33を備えている。供給ローラ31及び32のそれぞれは、バックシート131及びシート状の裏面封止材132を巻回している。加熱ローラ対33は、供給ローラ31及び32のそれぞれから繰り出されたバックシート131及び裏面封止材132を一例として90℃で加熱し、受光面シート131の内側面に表面封止材132を仮接着して裏面側部材130を形成する。
【0022】
表面封止材122及び裏面封止材132であるEVA等の接着性樹脂は、弾性係数が小さく伸縮性が大きいため、搬送中に張力を一定に維持することが難しく、皺等の変形を生じる可能性が高い。太陽電池モジュール製造装置1では、表面部材合成部11及び裏面部材合成部12で、供給ローラ22及び32から繰り出された直後の表面封止材122及び裏面封止材132を比較的伸縮性の小さい受光面シート121及びバックシート131に仮接着する。表面封止材122及び裏面封止材132は、受光面シート121及びバックシート131によって搬送中の張力の変動や変形を規制され、搬送時の取り扱いが容易になり、加熱ローラ対15Aに向けて正確に搬送することができる。
【0023】
予備加熱部13は、例えば赤外線ヒータで構成され、表面側部材合成部11と加熱ローラ対15Aとの間に配置され、表面側部材120を一例として130℃程度に加熱する。予備加熱部14は、例えば赤外線ヒータで構成され、裏面側部材合成部12と加熱ローラ対15Aとの間で載置位置17の下流側に配置され、球状シリコンセルユニット110が載置された裏面側部材130を一例として130℃程度に加熱する。
【0024】
表面封止材122及び裏面封止材132であるEVA等の接着性樹脂は、架橋反応温度まで急峻に加熱すると急激に流動化し、架橋反応時に生じる気泡が抜け難くなる。太陽電池モジュール製造装置1では、表面側部材120及び裏面側部材130を加熱ローラ対15Aに達する前に予備加熱部13及び14によって130℃程度まで昇温し、表面封止材122及び裏面封止材132を徐々に軟化させる。加熱ローラ対15A〜15Kの加熱による表面封止材122及び裏面封止材132の架橋反応時に生じる気泡を外部に容易に排出することができる。
【0025】
加熱ローラ対15A〜15Kのそれぞれは、表面側部材120と裏面側部材130との間に球状シリコンセルユニット110を上下のローラ間に挟んだ状態で、これらを加熱及び加圧しつつ矢印X方向に搬送する。加熱ローラ対15A〜15Kのそれぞれは、表面温度が一例として150℃にされている。
【0026】
予備加熱部16A〜16Jのそれぞれは、加熱ローラ対15A〜15Kのそれぞれの間に配置されている。予備加熱部16A〜16Jのそれぞれは、加熱ローラ対15A〜15Kのそれぞれを通過した球状シリコンセルユニット110を挟んだ状態の表面側部材120及び裏面側部材130を一例として150℃程度に加熱する。
【0027】
加熱ローラ対15A〜15K及び予備加熱部16A〜16Jは、この発明の加熱部を構成している。
【0028】
加熱ローラ対15A〜15Kが配置されている範囲の全域にわたって、球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130の温度を、表面封止材122及び裏面封止材132の架橋温度に維持することができる。
【0029】
球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130は、加熱ローラ対15Kを通過した時点で球状シリコンセルユニット110を確実に封止し、太陽電池モジュールとなる。太陽電池モジュールは、図示しない冷却部で冷風により、又は自然放熱により冷却された後、所定の長さに切断される。
【0030】
図3に示すように、この発明の第2の実施形態に係る太陽電池モジュール製造装置2は、この発明の加熱部として太陽電池モジュール製造装置1の加熱ローラ対15A〜15K及び予備加熱部16A〜16Jに代えて3個の加熱ローラ20A〜20Cを備えている。太陽電池モジュール製造装置2のその他の構成は、太陽電池モジュール製造装置1と同様である。
【0031】
3個の加熱ローラ20A〜20Cは、矢印X方向に沿って配置されており、何れも表面温度を150℃程度にされている。球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130は、略90度の角度範囲で加熱ローラ20Aの周面に沿って移動した後、加熱ローラ20Aと加熱ローラ20Bとの間を通過する。次いで、略180度の角度範囲で加熱ローラ120Bの周面に沿って移動した後、加熱ローラ20Bと加熱ローラ20Cとの間を通過し、略90度の角度範囲で加熱ローラ20Cの周面に沿って移動する。
【0032】
球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130は、3個の加熱ローラ20A〜20Cの周面を順次経由して移動する間に、3個の加熱ローラ20A〜20Cによって常時加熱される。3個の加熱ローラ20A〜20Cの周面を経由する移動範囲の全域にわたって、球状シリコンセルユニット110を挟んだ表面側部材120及び裏面側部材130の温度を、表面封止材122及び裏面封止材132の架橋温度に維持することができる。
【0033】
なお、太陽電池モジュール製造装置2では3個の加熱ローラ20A〜20Cを備えているが、これに限るものではない。
【0034】
また、上記の実施形態では、光起電力素子として球状シリコンセルを用いたが、これに限るものではなく、可撓性を有する他の光起電力素子を用いることができる。
【0035】
上述の実施形態の説明は、すべての点で例示であって、制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上述の実施形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。さらに、本発明の範囲には、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【符号の説明】
【0036】
1,2−太陽電池モジュール製造装置
11−表面側部材合成部
12−裏面側部材合成部
13−第1の予備加熱部
14−第2の予備加熱部
15A〜15K−加熱ローラ対(加熱部)
16A〜16J−第3の予備加熱部(加熱部)
20A〜20C−加熱ローラ(加熱部)
100−太陽電池モジュール
110−球状シリコンセル
120−表面側部材
121−受光面シート
122−表面封止材
130−裏面側部材
131−バックシート
132−裏面封止材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面シートに表面封止材シートを加熱接着して表面側部材を形成する表面側部材合成部と、
バックシートに裏面封止シートを加熱接着して裏面側部材を形成する裏面側部材合成部と、
光起電力素子を前記光表面側部材の前記表面封止材シート側と前記裏面側部材の前記裏面封止材シート側との間に挟んで加熱する加熱部と、
を備えた太陽電池モジュール製造装置。
【請求項2】
前記表面側部材合成部と前記加熱部との間で前記表面側部材を加熱する第1の予備加熱部と、
前記裏面側部材合成部と前記加熱部との間で前記裏面側部材を加熱する第2の予備加熱部材と、を備えた請求項1に記載の太陽電池モジュール製造装置。
【請求項3】
前記第2の予備加熱部は、前記裏面側部材上に前記光起電力素子が載置される載置位置と前記加熱部との間に配置した請求項2に記載の太陽電池モジュール製造装置。
【請求項4】
前記加熱部は、前記光起電力素子の搬送方向に沿って配置した複数の加熱ローラ対と、前記複数の加熱ローラ対のそれぞれの間に第3の予備加熱部と、を備えた請求項1〜3の何れかに記載の太陽電池モジュール製造装置。
【請求項5】
前記加熱部は、前記光起電力素子の搬送方向に沿って配置した3個以上の加熱ローラを備え、前記光起電力素子を挟んだ状態の前記表面側部材及び前記裏面側部材を前記3個以上の加熱ローラの周面の一部を順に経由して搬送する請求項1〜3の何れかに記載の太陽電池モジュール製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−253052(P2012−253052A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−122061(P2011−122061)
【出願日】平成23年5月31日(2011.5.31)
【出願人】(000108753)タツモ株式会社 (73)
【Fターム(参考)】