説明

太陽電池モジュール

【課題】絶縁層等による発電に寄与する受光面積の減少を低減し、かつ、外部負荷によるイオンの移動を抑制し、優れた性能を示す色素増感太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】透光性基板と支持基板の間に、第1光電変換素子と第2光電変換素子を配置した太陽電池モジュールであって、前記第1光電変換素子は、前記透光性基板側から透光性導電層と、多孔性半導体層と、電解質層と、触媒層と導電層をこの順で積層して構成され、前記第2光電変換素子は、前記透光性基板側から透光性導電層と、触媒層と、電解質層と、多孔性半導体層と、導電層をこの順で積層して構成される。
前記第1光電変換素子と第2光電変換素子が並列され、前記電解質層から漏出するイオンの流れを防止する絶縁層が、その数をn、前記第1光電変換素子数をl、前記第2光電変換素子数をmとするとき、下記式(I)、式(II)を満たすように配置する。
l+m>3 ・・・・・・・(1)
1≦n≦l+m−2 ・・・(2)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高い光電変換効率を有する色素増感太陽電池に関する。
【背景技術】
【0002】
化石燃料に代るエネルギー源として太陽光を電力に変換できる太陽電池が注目されている。現在、一部実用化され始めた太陽電池としては、結晶系シリコン基板を用いた太陽電池及び薄膜シリコン太陽電池がある。しかし、前者はシリコン基板の作製コストが高いこと、後者は多種の半導体ガスや複雑な装置を用いる必要があり、依然として製造コストが高いことが問題となっている。そのため、いずれの太陽電池においても光電変換の高効率化による発電出力当たりのコストを低減する努力が続けられているが、上記問題を解決するには到っていない。
【0003】
新しいタイプの太陽電池としては、特許文献1に金属錯体の光誘起電子移動を応用した湿式太陽電池が示されている。この湿式太陽電池は、2枚のガラス基板にそれぞれ形成された電極間に、光電変換材料と電解質材料とを用いて光電変換層を構成したものである。この光電変換材料は、光増感色素を吸着させることで、可視光領域に吸収スペクトルをもつようになる。この湿式太陽電池において、光電変換層に光が照射されると電子が発生し、電子は外部電気回路を通って電極に移動する。電極に移動した電子は、電解質中のイオンによって運ばれて対向する電極を経由して光電変換層にもどる。このような電子の移動の繰り返しにより電気エネルギーが取り出される。
しかしながら、特許文献1に記載の色素増感型太陽電池の基本構造は、2枚のガラス基板の間に電解液を注入することで色素増感型太陽電池を作り込んだものである。従って、小面積の太陽電池の試作は可能であっても、1m角のような大面積の太陽電池への適用は困難となる。このような太陽電池について、一つの太陽電池(単位セル)の面積を大きくすると、発生電流は面積に比例して増加する。しかし、電極部分に用いる透明導電性膜の面内方向の抵抗成分が増大し、ひいては太陽電池としての内部直列電気抵抗が増大する。その結果、光電変換時の電流電圧特性における曲線因子(フィルファクタ、FF)、さらには短絡電流が低下し、光電変換効率が低くなるという問題がある。
これら問題を解決するために、アモルファスシリコン層を第一及び第二導電層で挟んだ構造のアモルファスシリコン太陽電池のモジュール等に使用されている長方形の単位セルの第一導電層と隣り合う単位セルの第二導電層を接触させる集積化構造が考えられる。
【0004】
特許文献2では、図7に示すように、この集積化構造を模した、複数の色素増感型太陽電池を直列接続した色素増感型太陽電池モジュールが示されている。具体的には、個々の色素増感型太陽電池は、短冊形にパターニングを行った透明導電膜(電極)を形成したガラス基板上に、酸化チタン層、絶縁性多孔質層及び対極を順次積層した構造を有している。また、1つの色素増感型太陽電池の導電層を、隣接する色素増感型太陽電池と対極を接触するように配置することで、両太陽電池が直列接続されている。なお、図7中、11は透明基板、12は透明導電膜、13は多孔性酸化チタン層、14は中間多孔性層、15は対向電極、16は絶縁層、17は電気絶縁性液体密閉用トップカバー、18と19は端子を表している。
しかし、この構造では、隣り合う光電変換層が接触しないように、ある一定の隙間をおいて形成させる必要がある。一般に、集積化した太陽電池のモジュールの光電変換効率とは、モジュール面積当たりの発電効率を意味する。そのため、隙間の面積が大きいと、隙間に当たった光は発電に寄与しないので、モジュールを構成する単位セルの光電変換効率が高くてもモジュール変換効率が悪くなる。したがって、隣り合う単位セル同士の隙間を小さくするため、モジュールの作製方法を工夫する必要がある。また、導電層を、隣接する色素増感型太陽電池の対極と接触するように配置する場合に、両者の接触性や形状の再現性を考慮すると、性能が安定したものを大量に生産することが難しい。
【0005】
特許文献3では、図8に示す構造の色素増感型太陽電池モジュールを示している。具体的には、個々の色素増感型太陽電池は、短冊にパターニングを行った透明電極を形成したガラス基板上に、酸化チタン層と白金層を交互に製膜したものを2つ作製し、それぞれの基板を酸化チタン層と白金層が相対するように向かい合わせた状態で重ね合わせ、重ね合わせた酸化チタン/白金層の各対の間に樹脂等の絶縁性接着剤を設置し、この絶縁性接着剤にて対向するガラス基板を接着させることにより、直列接続された色素増感太陽電池モジュールである。図8に示す太陽電池は、一枚の透明導電膜を形成したガラス基板の面方向に酸化チタン層と光透過性の対極を形成しているため、太陽電池モジュールの表裏に関係なく受光面とすることができ、また、導電層と隣接する色素増感太陽電池の対極とを接続するための工程が必要なく、工業的加工適正が優れている。
しかしながら、図8に示す太陽電池においても、絶縁層が存在するため、図7の太陽電池と同様に、発電に寄与する受光面積が減少しており、光電変換効率の損失が存在する。また、WO2002/052654号では、絶縁層が存在しないモジュールも示されているが、この場合、外部負荷で生じる電場により電解質層中に存在するイオンの基板面内方向の移動が起こり、セル特性の低下の原因となっていた。なお、図8中、31と32は透明基板、301、302、303は透明導電膜、311、312、313は電解液、321、322、323は多孔性酸化チタン層、331、332、333は触媒層、341,342、343は絶縁層である。
【特許文献1】特許第2664194号公報
【特許文献2】国際公開第WO97/16838号パンフレット
【特許文献3】再公表特許WO2002/052654号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記の問題点を鑑みたものであり、絶縁層等による発電に寄与する受光面積の減少を低減し、かつ、外部負荷によるイオンの移動を抑制し、優れた性能を示す色素増感太陽電池モジュールを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池モジュールは、透光性基板と支持基板の間に、第1光電変換素子と第2光電変換素子を配置した太陽電池モジュールであって、前記第1光電変換素子は、前記透光性基板側から透光性導電層と、多孔性半導体層と、電解質層と、触媒層と導電層をこの順で積層して構成され、前記第2光電変換素子は、前記透光性基板側から透光性導電層と、触媒層と、電解質層と、多孔性半導体層と、導電層をこの順で積層して構成され、前記第1光電変換素子と第2光電変換素子が並列され、前記電解質層から漏出するイオンの流れを防止する絶縁層が、その数をn、第1光電変換素子数をl、第2光電変換素子数をmとするとき、下記式(I)、(II)を満たすことにより前記課題を解決する。
l+m>3 …(I)
1≦n≦l+m−2 …(II)
【0008】
また本発明の太陽電池モジュールは、前記絶縁層が前記第1光電変換素子と第2光電変換素子との間に配置されることがより好ましい。
また本発明の太陽電池モジュールは、両端に配置される前記第1光電変換素子または第2光電変換素子と、それに隣接する第2光電変換素子または第1光電変換素子との間の少なくとも一方に絶縁層を配置するとよい。
また本発明の太陽電池モジュールは、太陽電池モジュールの負極側の外部端子が接続されている光電変換素子と、それに隣接する光電変換素子との間に絶縁層が配置するとよい。
また本発明の太陽電池モジュールは、両端に配置される前記第1光電変換素子または第2光電変換素子と、それに隣接する第2光電変換素子または第1光電変換素子との間の両方に絶縁層を配置するとよい。
また本発明の太陽電池モジュールは、l+m−1個存在する第1光電変換素子及び第2光電変換素子の間に1つおきに絶縁層を配置される。
【発明の効果】
【0009】
前述のような太陽電池モジュールにおいて、絶縁層がなければ、発電に寄与する受光面積のロスをなくすことができるが、外部負荷で生じる電場による電解質層中に存在するイオンの好ましくない移動が起こり、セル特性が低下する。そこで、すべての光電変換素子間に絶縁層を配置するのではなく、電荷の移動が起こらないよう適当数絶縁層を入れることにより、絶縁層による受光面積ロスと電荷輸送層中の好ましくないイオンの移動を抑制でき、太陽電池の変換効率が向上する。
特に、電解質層にヨウ素、臭素の酸化還元種などの負イオンを用いる場合、太陽電池モジュールの負極側の外部端子が接続される第2光電変換素子は負の電場がかかり、太陽電池モジュールの正極側の外部端子が接続される第1光電変換素子は正の電場がかかるため、絶縁層がなければ電子の輸送を担う酸化還元種は、第2光電変換素子から第1光電変換素子の方向正極側へ移動し、負極側の導電層付近の酸化還元種の濃度が減少する。そこで、これらの外部電場によるイオンの好ましくない移動を抑えるためには、太陽電池モジュールの負極側の外部端子が接続されている第2光電変換素子と、それに隣接する第1光電変換素子との間に絶縁層が配置して、イオンの移動を阻止することにより、太陽電池の光電変換効率を向上するものである。さらに、電解質層中には正イオンも含まれているため、太陽電池モジュールの正極側及び負極側の両外部端子付近の電解質層中のイオン濃度を一定に保つように、太陽電池モジュールの両端の第1光電変換素子または第2光電変換素子と、それに隣接する第2光電変換素子または第1光電変換素子との間に絶縁層を配置することは、外部負荷により生じる電場の影響を最も受けやすい電荷輸送層中のイオンの移動を制限できるため、最も効果的である。
【0010】
また、l+m−1存在する光電変換素子の間に、1つおきで絶縁層を配置することにより、絶縁層による受光面積ロスの減少と電荷輸送層中の好ましくないイオンの移動の抑制を最も効率良く達成することができる。さらに、前記と同様の理由により、2つの両端の光電変換素子と隣接する光電変換素子との間に絶縁層を配置し、該絶縁層から1つおきに絶縁層を配置することがより好ましい。
l+mが奇数の場合、2つの両端の光電変換素子と、それに隣接する光電変換素子との間に、絶縁層を配置し、該絶縁層から1つおきで絶縁層を配置すると、中央に配置された光電変換素子の両端に絶縁層が配置されるか、中央とその両側の3つの光電変換素子の間に、絶縁層が配置されないが、どちらでも良い。後者の場合、中央に配置された光電変換素子の両端に絶縁層を配置しても良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明の太陽電池モジュールは、図1に示すように、透光性基板20と支持基板40の間に、第1光電変換素子3aと第2光電変換素子3bを配置した構造である。前記第1光電変換素子3aは、前記透光性基板20の側から透光性導電層31と、多孔性半導体層32と、電解質層34と、触媒層33と導電層35をこの順で積層して構成される。前記第2光電変換素子3bは、前記透光性基板20の側から透光性導電層31と、触媒層33と、電解質層34と、多孔性半導体層32と、導電層35をこの順で積層して構成される。第1光電変換素子3aと、第2光電変換素子3bの多孔性半導体層32と、電解質層34と、触媒層33は互いに逆方向に積層されている。
前記第1光電変換素子3aと第2光電変換素子3bは、交互に並列され、第1光電変換素子と第2光電変換素子の間に絶縁層が配置される。前記第1光電変換素子数をl、前記第2光電変換素子数をm、前記第1光電変換素子と第2光電変換素子の間に配置される絶縁層数をnとするとき、下記式(I)、式(II)を満たすように配置する。
l+m>3 ・・・・・・・(I)
1≦n≦l+m−2 ・・・(II)
【0012】
前記第1光電変換素子3aと第2光電変換素子3bは、透光性導電層31と導電層35を同一材質で構成する場合、1つの大型基板上に順次積層して同時に作られ、小さく切断して第1光電変換素子3aと第2光電変換素子3bに分けられる。即ち第1光電変換素子3aは順方向に向けられ、第2光電変換素子3bは逆方向に向けられる。前記大型基板は三角形、四角形、六角形、八角形に切断して、第1光電変換素子と第2光電変換素子が作成され、稠密配置され、式(I)、式(II)のように絶縁層を配置する。
【0013】
以下に、本発明の太陽電池モジュールを構成する各要素を説明する。
(透光性基板)
最も一般的には、ソーダ石灰フロートガラス、石英ガラスなどのガラスを使用する。また透明ポリマーシートとしては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂等がある。これら樹脂はコスト面、フレキシブル面で有利である。
(支持基板)
本発明の支持基板としては、銅、アルミニウム、ステンレス、鉄などが普通に用いられ、白金、銀、インジウム、ニッケル等の金属、チタン、タンタル、タングステン、モリブデン等の高融点金属材料、導電性カーボンも使用できる。のこ他にN型またはP型の元素半導体(例えば、シリコン、ゲルマニウム等)、化合物半導体(例えば、GaAs、InP、ZnSe、CsS等)やITO、SnO2、CuI、ZnO等の透明導電材料も使用できる。導電材料の膜は、常法によって形成され、その膜厚は0.1〜5μmが適当である。またガラス、プラスチックのように導電性のない材質も支持基板として使用できる。プラスチック材料としては、テトラアセチルセルロース(TAC)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリカーボネート(PC)、ポリアリレート(PA)、ポリエーテルイミド(PEI)、フェノキシ樹脂等がある。
支持基板としてのみ構成するの場合は、透明性は必要なく、更に使用可能の樹脂は多くある。
【0014】
(透光性導電層)
本発明に使用される透光性導電層は、インジウム錫複合酸化物、酸化錫にフッ素をドープしたもの、酸化亜鉛がある。これらは前記透光性基板の上に常法によって作成する。これらの導電層の膜厚は0.02〜5μm程度が好ましい。導電層の膜抵抗は低いほど良く、40Ω/sq以下であることが好ましい。特に酸化錫にフッ素をドープした導電層をソーダ石灰フロートガラスに積層した透光性導電基板は好適である。
透光性導電層の抵抗を下げるために金属リード線を加えてもよい。金属リード線の材質としては、白金、金、銀、銅、アルミニウム、ニッケル、チタン等が好ましい。金属リード線は支持基板上にスパッタ法、蒸着法等で形成し、その上に酸化錫、ITO等の透光性導電層を形成するとよい。また、酸化錫、ITO等の透光性導電層を形成した後、金属リード線をスパッタ法、蒸着法等で形成してもよい。ただし、金属リード線を設けることにより、入射光量の低下を招くので、金属リード線の太さに注意が必要である。好ましくは0.1mmから数mmである。
前記透光性基板上に透光性導電層を形成する場合は、透光性基板上に透光性導電層を一面に形成し、第1光電変換素子及び第2光電変換素子の大きさに合わせ、かつ第1光電変換素子及び第2光電変換素子を直列または並列に接続するように切断する。このように透光性導電層を透光性基板に形成する場合は、第1光電変換素子及び第2光電変換素子の透光性導電層を形成しなくてもよい。
(導電層)
銅、アルミニウムのような金属材料が使用できる。その外にステンレス、鉄、白金、銀、インジウム、ニッケル、チタン、タンタル、タングステン、モリブデンのような金属材料であってもよい。勿論透光性であってもよく、したがって上記透光性導電層を使用してもよい。導電層は第1光電変換素子または第2光電変換素子に形成してもよいが、上記支持基板の上に形成して、導電性基板を構成してもよい。
【0015】
(多孔性半導体層)
多孔性半導体層に用いられる半導体は、一般に光電変換材料に使用されるものであればどのようなものでも使用することができ、例えば、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化スズ、酸化鉄、酸化ニオブ、酸化ジルコニウム、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化シリコン、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、チタン酸バリウム、チタン酸ストロンチウム、硫化カドミウム、硫化鉛、硫化亜鉛、リン化インジウム、銅−インジウム硫化物(CuInS2)、CuAlO2、SrCu22等の単独、化合物又は組み合わせが挙げられる。その中でも、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化錫、酸化ニオブが好ましく、安定性及び安全性の点から、酸化チタンが好ましい。この酸化チタンは、アナタース型酸化チタン、ルチル型酸化チタン、無定形酸化チタン、メタチタン酸、オルソチタン酸などの各種の狭義の酸化チタン及び水酸化チタン、含水酸化チタン等を包含する。アナターゼ型とルチル型の2種類の結晶は、その製法や熱履歴によりいずれの形もとりうるが、アナターゼ型が一般的である。特に本発明の有機色素の増感に関しては、アナターゼ型の含有率の高いものが好ましくその割合は80%以上が好ましい。なおアナターゼ型はルチル型より光吸収の長波端波長が短く、紫外光による光電変換の低下を起こす度合いが小さい。
本発明において、これらの半導体から1種またはそれ以上を選択することができる。
【0016】
これら半導体は、単結晶、多結晶のいずれでも良いが、安定性、結晶成長の困難さ、製造コスト等より、多結晶の方がより好ましい。特に微粉末(ナノからマイクロスケール)の多結晶半導体が好ましい。また、2種類以上の粒子サイズの異なる粒子を混合して用いてもよい。この場合各粒子の材料は同一でも異なっていてもよい。異なる粒子サイズの平均粒径の比率は10倍以上の差がある方が良く、粒径の大きいもの(100〜500nm)は、入射光を散乱させ光捕捉率をあげる目的で、粒径の小さいもの(5nm〜50nm)は、吸着点をより多くし色素吸着を良くする目的で混合して用いてもよい。特に半導体化合物の異なる場合、吸着作用の強い半導体の方を小粒径にした方が効果的である。
最も好ましい半導体微粒子の形態である酸化チタンの作製については、各種文献等に記載されている方法に準じて行うことが出来る。例えば「新合成法:ゾルーゲル法による単分散粒子の合成とサイズ形態制御」第35巻、第9号1012〜1018頁(1995)等が代表的なものとしてあげることができる。またDegussa社が開発した塩化物を高温加水分解により、得る方法も適している。
【0017】
(多孔性半導体層の作製方法)
多孔性半導体層の形成は、例えば、透明導電膜上に半導体粒子を含有する懸濁液を塗布し、乾燥及び/又は焼成する方法が挙げられる。
上記の方法は、まず、半導体微粒子を適当な溶媒に懸濁する。そのような溶媒としては、エチレングリコールモノメチルエーテル等のグライム系溶媒、イソプロピルアルコール等のアルコール類、イソプロピルアルコール/トルエン等のアルコール系混合溶媒、水等が挙げられる。また、これらの懸濁液にの代わりに市販の酸化チタンペースト(Ti−nanoxide、D、T/SP、D/SP、Solaronix社製)を用いても良い。半導体層形成のための半導体微粒子懸濁液の基板への塗布は、ドクターブレード法、スキージ法、スピンコート法、スクリーン印刷法など公知の方法が挙げられる。その後、塗布液を乾燥及び焼成する。乾燥及び焼成に必要な温度、時間、雰囲気等は、使用される基板及び半導体粒子の種類に応じて、適宜調整することができ、例えば、大気下又は不活性ガス雰囲気下、50〜800℃程度の範囲で10秒〜12時間程度が挙げられる。乾燥及び焼成は、単一の温度で1回のみ行ってもよいし、温度を変化させて2回以上行ってもよい。半導体層が複数層の場合には、平均粒径の異なる半導体微粒子懸濁液を準備し、塗布、乾燥及び焼成の工程を2回以上行ってもよい。
半導体各層の厚みは、特に限定されるものではなく、例えば、0.1〜100μm程度が挙げられる。
また、別の観点から、半導体層の表面積が大きいものが好ましく、例えば、10〜200m2/g程度が挙げられる。
導電性基板上に多孔性半導体層を形成した後、半導体微粒子同士の電気的接続の向上、多孔性半導体層の表面積の向上、半導体微粒子上の欠陥準位の低減を目的として、例えば、多孔性半導体層が酸化チタン膜の場合、四塩化チタン水溶液で半導体層を処理しても良い。
【0018】
(増感色素)
該光電極の半導体層には増感色素を吸着させる。本発明において、増感色素としては、種々の可視光領域および/または赤外光領域に吸収を持つ有機色素、金属錯体色素などを吸着させることができる。有機色素は、例えば、アゾ系色素、キノン系色素、キノンイミン系色素、キナクリドン系色素、スクアリリウム系色素、シアニン系色素、メロシアニン系色素、トリフェニルメタン系色素、キサンテン系色素、ポルフィリン系色素、ペリレン系色素、インジゴ系色素、ナフタロシアニン系色素などに代表される色素であり、一般に、吸光係数が、遷移金属に分子が配位結合した形態をとる金属錯体色素に比べて大きい。
前記した有機色素に加え、金属錯体色素を用いることができる。金属錯体色素の場合においては、Cu、Ni、Fe、Co、V、Sn、Si、Ti、Ge、Cr、Zn、Ru、Mg、Al、Pb、Mn、In、Mo、Y、Zr、Nb、Sb、La、W、Pt、Ta、Ir、Pd、Os、Ga、Tb、Eu、Rb、Bi、Se、As、Sc、Ag、Cd、Hf、Re、Au、Ac、Tc、Te、Rhなどの金属が用いられ、フタロシアニン系色素、ルテニウム系色素などが好ましく用いられる。
【0019】
前記増感色素の中で、ルテニウム系金属錯体色素がより好ましく、特にRuthenium535色素(化合物8、Solaronix社製)、Ruthenium535−bisTBA色素(化合物9、Solaronix社製)、Ruthenium620−1H3TBA色素(化合物10、Solaronix社製)であることが好ましい。
【化1】

【化2】

【化3】

本発明においては、色素と半導体と強固に吸着するため、色素分子中にカルボキシル基、アルコキシ基、ヒドロキシル基、スルホン酸基、エステル基、メルカプト基、ホスホニル基などのインターロック基を有するものが必要である。一般的に、色素は、前記インターロック基を介して半導体に固定され、励起状態の色素と半導体の伝導帯との間の電子の移動を容易にする電気的結合を提供する働きも持つ。
【0020】
(色素吸着)
本発明の有機色素を半導体に吸着さすことにより半導体を分光増感させることが必要である。色素の吸着は半導体微粒子に導電性支持体に塗布する前に行っても、塗布後に行ってもよい。通常は半導体微粒子を塗布した後に色素を吸着させた方が色素の吸着性の面からも好ましい。光増感色素を半導体に吸着させる工程において、光増感色素を含有した溶液中に、よく乾燥した多孔性半導体層を浸漬さすか、もしくは色素溶液を多孔性半導体層上に塗布して吸着させる方法が用いられるが、浸漬により多孔性半導体表面に該光増感色素を吸着させる方法が一般的である。前記の色素溶液の溶媒としては、使用する光増感色素を溶解するものであればよく、具体的には、アルコール、トルエン、アセトニトリル、THF、クロロホルム、ジメチルホルムアミド等の有機溶媒を用いることができる。通常は前記の溶媒は精製されたものを用いることが好ましい。色素の溶解性を向上させるために溶解温度をあげるか、2種類以上の異なる溶剤を混合することも必要となってくる。溶媒中の色素濃度は、使用する色素、溶媒の種類、色素吸着工程のための条件等に応じて調整することができる。色素の濃度は、1×10-5モル/リットル以上が好ましい。
光増感色素を含有した液体に半導体を浸漬する工程において、温度、圧力、浸漬時間は必要に応じて変えることができる。浸漬は、1回または複数回行ってもよい。また、浸漬の工程の後、適宜乾燥を行ってもよい。上述した方法により半導体に吸着された色素は、光エネルギーにより電子を半導体に送る光増感剤として機能する。
【0021】
本発明の増感色素の吸着については、色素量が少ないと増感効果が不十分になり、逆に色素量が多いと、半導体に吸着していない色素が浮遊して、これが増感効果を減じ、効率低下をもたらす原因ともなる。場合によっては、色素同志の会合を防止させ、色素に一定の方向性をもたらすために、共吸着性の比較的低分子の化合物をくわえてもよい。共吸着性の化合物としてはカルボキシル基、カルボン酸無水物基を有するコール酸等のステロイド化合物があげられる。
未吸着の有機色素の存在は、吸着後は速やかに洗浄により除去しても良い。洗浄溶剤は有機色素の比較的揮発性の高いものを用いるのがよい。これら溶剤としては、メタノール、エタノールなどのアルコール類、アセトニトリル、アセトン等の比較的乾燥しやすい溶剤を用いる。
また、余分な色素の除去後、吸着状態をより安定にするために半導体微粒子の表面を有機塩基性化合物で処理して、未反応色素の除去を促進させることも必要となってくる。これら化合物としては、ピリジン、キノリン等の誘導体があげられる。これら材料が液体の場合はそのまま用いてもよいが、固体の場合なんらかの(好ましくは色素溶解と同じ)溶剤に溶解して用いてもよい。
【0022】
(触媒層)
触媒層の材料は、白金、カーボンブラック、ケッチェンブラック、カーボンナノチューブ、フラーレンなどから選ぶことができる。白金の場合、スパッタ、塩化白金酸の熱分解、電着などの方法によって導電膜が被覆された支持基板上に膜を形成させたもの等が挙げられる。この場合の白金膜の膜厚は、0.5nm〜1000nm程度が挙げられる。触媒層の電気伝導性が高い場合には、導電層は必要ない。
【0023】
(電解質層)
電解質層は、電子、ホール、イオンを輸送できる導電性材料から構成される。例えば、ポリビニルカルバゾール、トリフェニルアミンなどのホール輸送材料;テトラニトロフロレノンなどの電子輸送材料;ポリチオフェン、ポリピロールなどの導電性ポリマー;液体電解質、高分子電解質などのイオン導電体;ヨウ化銅、チオシアン酸銅などの無機p型半導体が挙げられる。
上記の導電性材料の中でもイオン導電体が好ましく、酸化還元性電解質を含む液体電解質が特に好ましい。このような酸化還元性電解質としては、一般に、電池や太陽電池などにおいて使用することができるものであれば特に限定されない。具体的には、I-/I3-系、Br2-/Br3-系、Fe2+/Fe3+系、キノン/ハイドロキノン系等の酸化還元種を含有させる。
ヨウ化リチウム(LiI)、ヨウ化ナトリウム(NaI)、ヨウ化カリウム(KI)、ヨウ化カルシウム(CaI2)などの金属ヨウ化物とヨウ素(I2)の組み合わせ、テトラエチルアンモニウムアイオダイド(TEAI)、テトラプロピルアンモニウムアイオダイド(TPAI)、テトラブチルアンモニウムアイオダイド(TBAI)、テトラヘキシルアンモニウムアイオダイド(THAI)などのテトラアルキルアンモニウム塩とヨウ素の組み合わせ、および臭化リチウム(LiBr)、臭化ナトリウム(NaBr)、臭化カリウム(KBr)、臭化カルシウム(CaBr2)などの金属臭化物と臭素の組み合わせが好ましく、これらの中でも、LiIとI2の組み合わせが特に好ましい。
【0024】
また、液体電解質の溶剤としては、プロピレンカーボネートなどのカーボネート化合物、アセトニトリルなどのニトリル化合物、エタノールなどのアルコール類、その他、水や非プロトン極性物質などが挙げられるが、これらの中でも、カーボネート化合物やニトリル化合物が特に好ましい。
これらの溶剤は2種類以上を混合して用いることもできる。
従来から用いられている添加剤として、t-ブチルピリジン(TBP)などの含窒素芳香族化合物、あるいはジメチルプロピルイミダゾールアイオダイド(DMPII)、メチルプロピルイミダゾールアイオダイド(MPII)、エチルメチルイミダゾールアイオダイド(EMII)、エチルイミダゾールアイオダイド(EII)、ヘキシルメチルイミダゾールアイオダイド(HMII)などのイミダゾール塩を添加しても良い。
液体電解質中の電解質濃度は、0.1〜1.5モル/リットルの範囲が好ましく、0.1〜0.7モル/リットルの範囲が特に好ましい。
【0025】
(絶縁層)
また電解質層の漏れと好ましくない移動を防止するために、絶縁層を用いることも必要になってくる。これら絶縁層としては、一般に市販されている熱硬化型や光硬化型の樹脂やフィルムを用いることができる。例えば、エチレン系高分子フィルム(商品名 ハイミラン、デュポン社製)などが用いられる。絶縁層の膜厚は、酸化チタンの膜厚と電解質層のイオンの移動度を考慮すると、10〜50μmぐらいが適当である。
(絶縁層の挿入法)
絶縁層としてハイミランを用いる場合、適当な膜厚のハイミランを必要な形状に切った後、多孔性半導体層および触媒層が積層された透光性基板(または支持基板)上の第1光電変換層と第2光電変換層との間にあたる部位に設置する。その上から支持基板(または透光性基板)を張り合わせ、電気炉、または乾燥炉を用いて70℃から120℃で、30秒から30分加熱することにより透光性基板と支持基板に接着させることで絶縁層を形成する。
【0026】
図1は、5個のユニットセルを直列に接続した、すべての光電変換層間に絶縁層を配置した集積化された色素増感型太陽電池モジュールの断面図を示すが、絶縁層数の異なる色素増感太陽電池モジュールを作製し、性能の評価を行った。その製造工程を以下に示す。
(モジュール1)絶縁層1
・多孔性半導体層の作製
導電層が形成された支持体として45mm×65mmの日本板ガラス社製のSnO2付きガラス基板を2枚(X基板、Y基板)用いた。図2中、Aを14mm、Bを5mm、Cを9mm、Dを5mm、Eを12mm、Fを5mm、Gを5mm、Hを11mm、Iを5mm、Jを9mm、Kを5mm、Lを5mmとなるように、触媒層23として白金をスパッタにより約5nmの膜厚で成膜した。
次に、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)を、ドクターブレード法により、図2のA、C、E、H、Jの部分に塗布し、室温にて1時間レベリングを行った後、300℃で30分間予備乾燥し、次いで500℃で40分間焼成し、多孔性半導体層として、膜厚12μmの酸化チタン膜を得た。
次に、図2中、Mが12mm、Nが18mm、Pが20mm、Qが11mmとなるように、導電層であるSnO2にレーザー光(YAGレーザー・基本波長1.06μm)を照射しSnO2を蒸発させることにより、スクライブ(41、42、43、44)を行った。
【0027】
・増感色素の吸着
次に、半導体層に色素を以下のようにして光電極へ吸着させた。先ず、増感色素として Ruthenium535−bisTBA色素(Solaronix社製)を用い、これのエタノール溶液(増感色素の濃度;4×10-4モル/リットル)を調製した。次に、この溶液に半導体電極を浸漬し、80℃の温度条件のもとで20時間放置した。その後、該電極をエタノール(Aldrich Chemical Company製)で洗浄・乾燥を行い、光電極を得た。
・電解液の作製
電解液として、溶媒をアセトニトリルとし、その中にDMPIIを0.6モル/リットル、LiIを0.1モル/リットル、TBPを0.5モル/リットル、I2を0.02モル/リットル溶解させたものを作製した。
・太陽電池の作製
上述の工程で作製されたX基板、Y基板を、絶縁層としてデュポン社製ハイミラン1855を1mm×60mmで切り出したものを用いて、スクライブ部分41を覆うように設置し、X基板とY基板を張り合わせ、約100℃のオーブン中で10分間加熱することにより圧着した。
前記で作製した2枚の基板間にキャピラリー効果により電解液を注入し、周辺部分をエポキシ樹脂で封止することにより色素増感型太陽電池モジュールの作製を行った。作製した色素増感型太陽電池モジュールのX基板を受光面とした。
また、得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表1、図4に示す。
【表1】

【0028】
(モジュール2)絶縁層2
多孔性半導体層の作製と太陽電池の作製を以下の手順で行った以外は、モジュール1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
・多孔性半導体層の作製
導電層が形成された支持体として47mm×65mmの日本板ガラス社製のSnO2付きガラス基板を2枚(X基板、Y基板)用いた。図2中、Aを14mm、Bを5mm、Cを9mm、Dを5mm、Eを14mm、Fを5mm、Gを5mm、Hを11mm、Iを5mm、Jを11mm、Kを5mm、Lを5mmとなるように、触媒層23として白金をスパッタにより約5nmの膜厚で成膜した。
次に、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)を、ドクターブレード法により、図2のA、C、E、H、Jの部分に塗布し、室温にて1時間レベリングを行った後、300℃で30分間予備乾燥し、次いで500℃で40分間焼成し、多孔性半導体層として、膜厚13μmの酸化チタン膜を得た。
次に、図2中、Mが12mm、Nが20mm、Pが20mm、Qが12mmとなるように、導電層であるSnO2にレーザー光(YAGレーザー・基本波長1.06μm)を照射しSnO2を蒸発させることにより、スクライブ(41、42、43、44)を行った。
【0029】
・太陽電池の作製
上述の工程で作製されたX基板、Y基板を、絶縁層としてデュポン社製ハイミラン1855を1mm×60mmで切り出したものを用いて、スクライブ部分41と44を覆うように設置し、X基板とY基板を張り合わせ、約100℃のオーブン中で10分間加熱することにより圧着した。
前記で作製した2枚の基板間にキャピラリー効果により電解液を注入し、周辺部分をエポキシ樹脂で封止することにより色素増感型太陽電池モジュールの作製を行った。作製した色素増感型太陽電池モジュールのX基板を受光面とした。
また、得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表1、図4に示す。
【0030】
(モジュール3:比較例1)全隔壁
多孔性半導体層の作製と太陽電池の作製を以下の手順で行った以外は、モジュール1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
・多孔性半導体層の作製
導電層が形成された支持体として51mm×65mmの日本板ガラス社製のSnO2付きガラス基板を2枚(X基板、Y基板)用いた。図2中、Aを14mm、Bを5mm、Cを13mm、Dを5mm、Eを14mm、Fを5mm、Gを5mm、Hを13mm、Iを5mm、Jを13mm、Kを5mm、Lを5mmとなるように、触媒層23として白金をスパッタにより約5nmの膜厚で成膜した。
次に、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)を、ドクターブレード法により、図2のA、C、E、H、Jの部分に塗布し、室温にて1時間レベリングを行った後、300℃で30分間予備乾燥し、次いで500℃で40分間焼成し、多孔性半導体層として、膜厚12μmの酸化チタン膜を得た。
次に、図2中、Mが12mm、Nが20mm、Pが20mm、Qが12mmとなるように、導電層であるSnO2にレーザー光(YAGレーザー・基本波長1.06μm)を照射しSnO2を蒸発させることにより、スクライブ(41、42、43、44)を行った。
【0031】
・太陽電池の作製
上述の工程で作製されたX基板、Y基板を、絶縁層としてデュポン社製ハイミラン1855を1mm×60mmで切り出したものを用いて、スクライブ部分41、42、43、44を覆うように設置し、X基板とY基板を張り合わせ、約100℃のオーブン中で10分間加熱することにより圧着した。
前記で作製した2枚の基板間にキャピラリー効果により電解液を注入し、周辺部分をエポキシ樹脂で封止することにより色素増感型太陽電池モジュールの作製を行った。作製した色素増感型太陽電池モジュールのX基板を受光面とした。
また、得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表1、図4に示す。
【0032】
(モジュール4:比較例2)全隔壁なし
多孔性半導体層の作製と太陽電池の作製を以下の手順で行った以外は、モジュール1と同様にして色素増感太陽電池モジュールを作製した。
・多孔性半導体層の作製
導電層が形成された支持体として43mm×65mmの日本板ガラス社製のSnO2付きガラス基板を2枚(X基板、Y基板)用いた。図2中、Aを12mm、Bを5mm、Cを9mm、Dを5mm、Eを12mm、Fを5mm、Gを5mm、Hを9mm、Iを5mm、Jを9mm、Kを5mm、Lを5mmとなるように、触媒層23として白金をスパッタにより約5nmの膜厚で成膜した。
次に、市販の酸化チタンペースト(Solaronix社製、商品名Ti−Nanoxide D/SP、平均粒径13nm)を、ドクターブレード法により、図2のA、C、E、H、Jの部分に塗布し、室温にて1時間レベリングを行った後、300℃で30分間予備乾燥し、次いで500℃で40分間焼成し、多孔性半導体層として、膜厚12μmの酸化チタン膜を得た。
次に、図2中、Mが11mm、Nが18mm、Pが18mm、Qが11mmとなるように、導電層であるSnO2にレーザー光(YAGレーザー・基本波長1.06μm)を照射しSnO2を蒸発させることにより、スクライブ(41、42、43、44)を行った。
【0033】
・太陽電池の作製
スペーサーとしてデュポン社製ハイミラン1855を1mm×60mmで切り出したものをF、Lの部分に配置し、X基板とY基板を張り合わせ、約100℃のオーブン中で10分間加熱することにより圧着した。
前記で作製した2枚の基板間にキャピラリー効果により電解液を注入し、周辺部分をエポキシ樹脂で封止することにより色素増感型太陽電池モジュールの作製を行った。作製した色素増感型太陽電池モジュールのX基板を受光面とした。
また、得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表1、図4に示す。
表1、図4より、絶縁層の数が少なくなるにつれフィルファクターが低下し、短絡電流密度が向上している。その結果、絶縁層数が1または2の場合に光電変換効率が高くなっている。特に、絶縁層がない場合に比べ、絶縁層が1または2ある場合で、フィルファクターが大きく改善している。
以下に、本発明を示す実施例によって具体的に説明する。
【実施例】
【0034】
実施例1〜4
9個のユニットセルを直列に接続した色素増感型太陽電池モジュールをモジュール1、2と同様にして作製した。実施例において絶縁層の配置した位置を図3の51〜58で表2に示した。得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表2、図5に示す。
比較例1〜2
9個のユニットセルを直列に接続した色素増感型太陽電池モジュールをモジュール3,4と同様にして作製した。得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表2、図5に示す。
【表2】

【0035】
実施例5〜8
8個のユニットセルを直列に接続した色素増感型太陽電池モジュールをモジュール1、2と同様にして作製した。実施例において絶縁層の配置した位置を図3の51〜57(58は除く)で表3に示した。得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表3、図6に示す。
【表3】

【0036】
比較例3〜4
8個のユニットセルを直列に接続した色素増感型太陽電池モジュールをモジュール3,4と同様にして作製した。得られた太陽電池に、1kW/m2 の強度の光(AM1.5ソーラーシミュレータ)を照射して、光電変換効率を測定した。その結果を表3、図6に示す。
表2、表3、図5、図6より、絶縁層の数が少なくなるにつれフィルファクターが低下するが、短絡電流密度が向上している。その結果、絶縁層数が0または(第1光電変換素子)+(第2光電変換素子)−1以外の場合に光電変換効率が高くなっている。特に、絶縁層がない場合に比べ、絶縁層が1から5ある場合で、フィルファクターが大きく改善している。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1】本発明の色素増感太陽電池モジュールの断面図である。
【図2】本発明の色素増感太陽電池モジュールの基板の平面図である。
【図3】本発明の実施例1〜8の色素増感太陽電池モジュールの断面図である。
【図4】本発明のモジュール1〜4の特性図である。
【図5】本発明の実施例1〜4の特性図である。
【図6】本発明の実施例5〜8と比較例3〜4の特性図である。
【図7】従来の色素増感太陽電池モジュールを示す模式図である。
【図8】従来の色素増感太陽電池モジュールを示す模式図である。
【符号の説明】
【0038】
11 透明基板
12 透明導電膜
13 多孔質酸化チタン膜
13 中間多孔質層
14 対向電極
16 絶縁層
17 電気絶縁性液体密閉用トップカバー
18、19 取り出し
20 透光性基板
40 支持基板
31 透光性導電層
32、321、322、323 多孔性光電変換層
33、331、332、333 触媒層
34 311、312、313 電解質層
35 341、342、343 絶縁層
3a 第1光電変換素子
3b 第2光電変換素子
X 透光性基板
Y 支持基板

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性基板と支持基板の間に、第1光電変換素子と第2光電変換素子を配置した太陽電池モジュールであって、
前記第1光電変換素子は、前記透光性基板側から透光性導電層と、多孔性半導体層と、電解質層と、触媒層と導電層をこの順で積層して構成され、
前記第2光電変換素子は、前記透光性基板側から透光性導電層と、触媒層と、電解質層と、多孔性半導体層と、導電層をこの順で積層して構成され、
前記第1光電変換素子と第2光電変換素子が並列され、前記電解質層から漏出するイオンの流れを防止する絶縁層が、その数をn、前記第1光電変換素子数をl、前記第2光電変換素子数をmとするとき、下記式(I)、式(II)を満たすように配置されることを特
徴とする太陽電池モジュール。
l+m>3 ・・・・・・・(1)
1≦n≦l+m−2 ・・・(2)
【請求項2】
前記絶縁層は前記第1光電変換素子と第2光電変換素子との間に配置されることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
両端に配置される前記第1光電変換素子または第2光電変換素子と、それに隣接する第2光電変換素子または第1光電変換素子との間の少なくとも一方に絶縁層を配置したことを特徴とする請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
太陽電池モジュールの負極側の外部端子が接続されている光電変換素子と、それに隣接する光電変換素子との間に絶縁層が配置されることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の色素増感太陽電池モジュール。
【請求項5】
両端に配置される前記第1光電変換素子または第2光電変換素子と、それに隣接する第2光電変換素子または第1光電変換素子との間の両方に絶縁層を配置したことを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
l+m−1個存在する第1光電変換素子及び第2光電変換素子の間に1つおきに絶縁層を配置したことを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2006−100025(P2006−100025A)
【公開日】平成18年4月13日(2006.4.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−282022(P2004−282022)
【出願日】平成16年9月28日(2004.9.28)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】