説明

太陽電池モジュール

【課題】 透明性、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性等に優れ、架橋工程不要のエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを用い、モジュールの封止用シートの上部保護材やバックシートへの接着性に優れ、封止用シートの透明性、生産安定性にも優れた太陽電池モジュールの提供。
【解決手段】 カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、エポキシ基、水酸基及びアミノ基から選ばれる極性基を含有する極性モノマーを含有するエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に、アミノ基又はエポキシ基含有アルコキシシラン3重量部以下を配合した組成物からなる太陽電池素子封止用シートを、太陽電池素子に対して受光側と裏側に使用した太陽電池モジュールであって、受光側シートの共重合体の極性モノマー含有量が14重量%以上であり、裏側シートの共重合体の極性モノマー単位含有量が12重量%以下である太陽電池モジュール。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関し、さらに詳しくは、モジュールを構成する太陽電池素子封止用シートの耐熱性、柔軟性、成形性、耐久性などに優れると共に、封止用シートの上部保護材及び下部保護材(バックシート)に対する接着性及びシートの透明性にも優れた太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
無尽蔵な自然エネルギーを利用し、二酸化炭素の削減やその他の環境問題の改善が図れる水力発電、風力発電並びに太陽光発電などが脚光を浴びている。このうち太陽光発電は、太陽電池モジュールの発電効率等の性能向上が著しい一方、価格の低下が進んだこと、国や自治体が住宅用太陽光発電システム導入促進事業を進めてきたことから、近年その普及が著しく進んでいる。
【0003】
太陽光発電は、シリコンセル半導体(太陽電池素子)を用いて太陽光エネルギーを直接電気エネルギーに変換するが、ここで用いられている太陽電池素子は直接外気と接触するとその機能が低下するため、太陽電池素子を封止材で挟み、緩衝とともに、異物の混入や水分等の侵入を防いでいる。この封止材は、透明で光による発電を阻害しないこと、熱によって溶け出し、崩れるようなことはしないこと(耐熱性)、保護材であるガラスやバックシートとの接着が良好であること、太陽光によって著しい劣化や黄変を起こさないことなど、様々な性能が求められ、これを満たすために種々の配合処方が検討されている。例えば、透明性、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性などを勘案した代表的な処方として、エチレン・酢酸ビニル共重合体にパーオキサイド及びシランカップリング剤の配合したものを太陽電池封止材として使用することが知られている(例えば特許文献1参照)。
【0004】
このような太陽電池封止材は各種の添加剤を配合したエチレン・酢酸ビニル共重合体のシートを作成する工程と、得られたシートを用いて太陽電池素子を封止するという2段階の工程を採用する必要があった。このシートの製造段階では、有機過酸化物が分解しないような低温度での成形が必要であるため、押出成形速度を大きくすることができず、また太陽電池素子の封止段階では、ラミネーターにおいて数分乃至十数分かけて仮接着する工程と、オーブン内において有機過酸化物が分解する高温度で数十分ないし1時間かけて本接着する工程とからなる2段階の時間をかけての接着工程を経る必要があった。そのため太陽電池モジュールの製造には手間と時間がかかり、その製造コストを上昇させる要因の一つとなっていた。
【0005】
本出願人はこのような有機過酸化物の使用を必要とせず、したがって太陽電池モジュールの生産効率を顕著に改善することができ、しかも太陽電池用封止材料として優れた特性を有する代替材料につき検討を行い、不飽和カルボン酸含量が4重量%以上であって、融点が85℃以上のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体もしくはそのアイオノマーであることを特徴とするエチレン共重合体組成物およびその太陽電池封止用シートの提案を行った(特許文献2)。
【0006】
通常太陽電池素子に対し受光側と裏側に封止シートを使用するが裏側のシートはバックフィルム(バックシート)と接着するが、太陽電池では各種のバックフィルム(バックシート)が使用され、中には封止シートと接着しにくい素材もあり、接着強度が十分に発現するために、シランカップリング剤の添加量を増やすこともある。その場合シート生産時にシランカップリング剤同士のシラノール縮合が形成され、ゲル状のブツがシートに発生し生産性が失われる懸念があった。
【0007】
本発明者等は本発明出願人が提案したエチレン共重合体組成物の優れた性能を維持しながら、モジュールを構成する太陽電池素子封止用シートの上部保護材及びバックシートに対する接着性が優れかつ受光側シートの透明性及び生産安定性にも優れた太陽電池モジュールの開発を行った結果、太陽電池素子に対して受光側シートと裏側のシート材料に特定の極性モノマー含量のエチレン共重合体の組成物を用いることにより、この課題が達成されることを見出し本発明に到達したものである。
【0008】
【特許文献1】特公昭62−14111号公報
【特許文献2】特開2000−186114号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、透明性、耐熱性、接着性、柔軟性、成形性、耐久性などに優れ、架橋工程の要らないエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを使用し、且つモジュールを構成する太陽電池素子封止用シートの上部保護材やバックシートに対する接着性に優れ且つ封止用シートの透明性及び生産安定性にも優れた(ゲル状のブツの発生が抑制された)太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
即ち、本発明はカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、エポキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる極性基を有する極性モノマーを含有するエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、アミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシラン3重量部以下を配合したエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを太陽電池素子に対して受光側と裏側に使用した太陽電池モジュールであって、太陽電池素子に対して受光側シートのポリマー材料であるエチレン共重合体として極性モノマー単位の含有量が14重量%以上のエチレン・極性モノマー共重合体を用い、太陽電池素子に対して裏側シートのポリマー材料であるエチレン共重合体として極性モノマー単位の含有量が12重量%以下のエチレン・極性モノマー共重合体を用いる太陽電池モジュールである。
【0011】
前記太陽電池モジュールにおいては、エチレン・極性モノマー共重合体が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーから選ばれる少なくとも1種から選択されたエチレン共重合体であることが好ましい。
【0012】
また前記太陽電池モジュールにおいては、アミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシランがアミノ基又はエポキシ基を含有するジアルコキシシランであることが好ましい。
【0013】
前記太陽電池モジュールにおいては、アミノ基又はエポキシ基を含有するジアルコキシシランが、3-アミノプロピルジアルコキシシラン、あるいはN-3-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジアルコキシシランから選ばれたアミノ基を含有するジアルコキシシランであることが好ましい。
【0014】
また前記太陽電池モジュールにおいては、エチレン共重合体組成物に紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤から選ばれる耐候安定剤添加剤が配合されてなることが好ましい。
【発明の効果】
【0015】
本発明の太陽電池モジュールは、モジュールを構成する太陽電池素子封止用シートの耐熱性、柔軟性、成形性、耐久性などに優れると共に封止用シート接着性、特にガラス基板やバックシートに対する接着力が優れ、かつ受光側封止シートの透明性に優れ、更に封止シートにゲル状のブツの発生がほとんど発生せず、生産安定性にも優れている。
また、本発明の太陽電池モジュールは太陽電池モジュールにおいては架橋工程の要らないエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを使用しているので、モジュールの製造過程で架橋が不要である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
本発明が提供する太陽電池モジュールは、カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、エポキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる極性基を有する極性モノマーを含有するエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、アミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシラン3重量部以下を配合したエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シート(以下、「太陽電池封止用シート」という場合がある)を太陽電池素子に対して受光側と裏側に使用した太陽電池モジュールであって、太陽電池素子に対して受光側シート(受光側太陽電池封止用シート)のポリマー材料であるエチレン共重合体として極性モノマー単位の含有量が14重量%以上のエチレン・極性モノマー共重合体を用い、太陽電池素子に対して裏側シート(裏側太陽電池封止用シート)のポリマー材料であるエチレン共重合体として極性モノマー単位の含有量が12重量%以下のエチレン・極性モノマー共重合体を用いる太陽電池モジュールである。
【0017】
本発明で太陽電池素子封止用シートの樹脂材料として使用されるエチレン・極性モノマー共重合体はエチレンとカルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、エポキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる極性基を有する極性モノマーとの共重合体である。これら共重合体は、ランダム共重合体であってもグラフト共重合体であってもよいが、透明性を考慮するとランダム共重合体を使用するのが好ましい。尚エチレン・極性モノマー共重合体は、上記の極性モノマー以外のコモノマー 例えば、例えば酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル等のビニルエステル、アクリル酸メチル,アクリル酸エチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸nブチル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸イソブチル等の(メタ)アクリル酸エステルなどの不飽和エステルを含有していてもよい。例えばビニルエステルや(メタ)アクリル酸エステルなどが共重合されたものを使用したとき柔軟性付与の効果が得られる。その含有量は、本発明の目的を損なわない範囲、例えば0〜30重量%の範囲とすることが必要である。
【0018】
エチレン・極性モノマー共重合体として具体的には、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸塩共重合体又、エチレン・不飽和カルボン酸無水物共重合体、エチレン・エポキシ基含有モノマー共重合体、エチレン・不飽和アルコール共重合体、エチレン・不飽和アミン共重合体などを挙げることができるが、本発明では特にエチレン・不飽和カルボン酸共重合体、エチレン・不飽和カルボン酸塩共重合体又、エチレン・不飽和カルボン酸無水物共重合体が好ましい。
【0019】
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体の不飽和カルボン酸成分として、より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、フマル酸などを例示することができるが、特にアクリル酸又はメタクリル酸が好ましい。エチレン・アクリル酸共重合体およびエチレン・メタクリル酸共重合体は、特に好ましいエチレン・極性モノマー共重合体の例である。
本発明におけるエチレン・不飽和カルボン酸塩共重合体の好適な例は、上記のエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーである。
上記エチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーとしては、その金属種として、リチウム、ナトリウムなどのアルカリ金属、カルシウム、マグネシウム、亜鉛、アルミニウムなどの多価金属などを例示することができる。このようなアイオノマーを使用する利点は透明性、高温における貯蔵弾性率が高いことであり、その中和度としては、例えば80%以下(0超〜80%)程度のものを使用することが望ましいが、接着性等を勘案するとあまり中和度の高いものを使用するのは得策ではなく、例えば中和度が60%以下、とくに30%以下(0超〜30%以下)程度のものを使用するのが好ましい。
【0020】
上記エチレン・不飽和カルボン酸無水物共重合体の不飽和カルボン酸無水物成分として具体的には、無水マレイン酸、無水イタコン酸などを例示することができる。より具体的には、エチレン・不飽和エステル・無水マレイン酸ランダム共重合体、エチレン・不飽和エステルランダム共重合体の無水マレイン酸グラフト共重合体などを例示することができる。
【0021】
また上記エチレン・エポキシ基含有モノマー共重合体は、好ましくはエチレンとエポキシ基含有モノマーのランダム共重合体であって、任意に他のコモノマー、好ましくは上記不飽和エステルがランダム共重合されたものである。エポキシ基含有モノマーの代表例として、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジルのような(メタ)アクリル酸グリシジルであり、共重合体としてはエチレン・アクリル酸メチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・アクリル酸エチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・アクリル酸ブチル・メタクリル酸グリシジル共重合体、エチレン・メタクリル酸グリシジル共重合体などを例示することができる。
【0022】
上記エチレン・不飽和アルコール共重合体の不飽和アルコール成分としては、ビニルアルコールを代表例として挙げることができる。より具体的には、エチレン・酢酸ビニル共重合体を部分的にあるいは完全にけん化したものを挙げることができる。また上記エチレン・不飽和アミン共重合体としては、エチレン・ビニルアミン共重合体を例示することができる。
【0023】
本発明エチレン・極性モノマー共重合体の融点は55℃以上、好ましくは60℃以上、特に好ましくは70℃以上であることが望ましい。本発明においては、上記共重合体やアイオノマーの融点が低すぎると、耐熱性が充分でなく、太陽電池素子封止材料に用いた場合、太陽電池使用時における温度上昇により変形したり、太陽電池モジュールを加熱圧着法で製造するときに、これら封止材料が必要以上に流れ出してバリを生じたりする恐れがある。
【0024】
本発明のエチレン・極性モノマー共重合体としては、成形加工性、機械的強度などを考慮すると、JIS K7210−1999、190℃、2160g荷重におけるメルトフローレート(MFR、以下同じ)が1〜100g/10分、とくに5〜50g/10分のものを使用するのが好ましい。
【0025】
本発明のエチレン・極性モノマー共重合体は、高温、高圧下のラジカル共重合により得ることができる。またエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーは、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体と金属化合物を反応させることによって得ることができる。
【0026】
本発明においては上記のエチレン・極性モノマー共重合体を重合体成分とし、これにアミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシラン3重量部以下を配合したエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを太陽電池素子の両側(受光側と裏側)に設け、両側のシートで太陽電池素子を挟み込むようにして素子を封止するが、本発明では、太陽電池素子に対して受光側シートの材料である上記エチレン共重合体組成物のポリマー成分であるエチレン共重合体として、極性モノマー単位の含有量(エチレン共重合体が2種以上の極性モノマー単位を含む場合はその合計含有量)が14重量%以上、好ましくは14〜20重量%、特に好ましくは15〜20重量%のエチレン・極性モノマー共重合体を用い、太陽電池素子に対して裏側シートの材料であるエチレン共重合体組成物のポリマー成分であるエチレン共重合体として、極性モノマー単位の含有量(エチレン共重合体が2種以上の極性モノマー単位を含む場合はその合計含有量)が12重量%以下、好ましくは1〜12重量%、特に好ましくは5〜12重量%のエチレン・極性モノマー共重合体を用いる。この構成にすることによって封止用シートの上部保護材及び下部保護材(バックシート)の両方に対する接着性が優れ且つ受光側シートの透明性も優れた太陽電池モジュールが得られる。
【0027】
受光側シートのエチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマー含有量が14重量%未満であったり、裏側シートのエチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマー含有量が12重量%を超える場合は受光側シートの透明性、及び上部保護材との接着性と裏側シートのバックシートに対する接着性の両立が難しい。
【0028】
尚本発明で太陽電池素子に対して裏側シートが2層以上の構成となっている場合は
下部保護材(バックシート)に接する層のエチレン共重合体が、極性モノマー単位の含有量が12重量%以下のエチレン・極性モノマー共重合体であればよい。
【0029】
本発明では受光側シートの透明性、及び上部保護材との接着性と裏側シートのバックシートに対する接着性の両立という面から、太陽電池素子に対して受光側シートのエチレン・極性モノマー共重合体と裏側シートのエチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマーの含有量が3重量%以上、好ましくは5重量%以上異なること(即ち太陽電池素子に対して受光側シートのエチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマーの含有量が裏側シートのエチレン・極性モノマー共重合体の極性モノマーの含有量よりが3重量%以上、好ましくは5重量%以上大きいこと)が望ましい。
【0030】
本発明においてエチレン共重合体組成物に必須成分として配合されるアミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシランとしては、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルトリエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルトリメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルトリエトキシシラン、3−メチルトリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−メチルトリメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルメチルトリメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルメチルトリエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルトリエトキシシランなどを挙げることができる。
【0031】
またジアルコキシシランとしてはN−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−2(アミノエチル)3−アミノプロピルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルジメトキシシラン、N−フェニル−3−アミノプロプルメチルジエトキシシラン、3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、3−メチルジメトキシシリル−N−(1,3−ジメチル−ブチリデン)プロピルアミン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジメトキシシラン、2−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルメチルジエトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシランなどを挙げることができる。これらの中でも3-アミノプロピルジアルコキシシラン、あるいはN-3-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジアルコキシシランが特に好ましい。
【0032】
エチレン共重合体組成物にトリアルコキシシランを用いた場合には、接着性が比較的早く低下し始めるが、本発明のジアルコキシシランを用いた場合にはよりシート成形時の加工安定性を維持することができる。
【0033】
アミノ基あるいはエポキシ基を有するアルコキシシランは、接着性改良効果及びシート成形時の加工安定性の観点から、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、3重量部以下、好ましくは0.03〜3重量部、とくに0.05〜1.5重量部の割合で配合される。
【0034】
また太陽光線中の紫外線に基づく封止材の劣化を防ぐために、酸化防止剤、光安定剤、紫外線吸収剤などの耐候安定剤の少なくとも一種を配合するのが効果的である。酸化防止剤として、例えば各種ヒンダードフェノール系やホスファイト系のものが好適に使用することができる。また光安定剤としては、ヒンダードアミン系のものが好適に使用することができる。また紫外線吸収剤としては例えば2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシ−2−カルボキシベンゾフエノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフエノンなどのベンゾフエノン系、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ第3ブチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−メチルフエニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5−第3オクチルフエニル)ベンゾトリアゾールなどのベンゾトリアゾール系、フエニルサリチレート、p−オクチルフエニルサリチレートなどのサリチル酸エステル系のものなどが使用できる。これら、耐候安定剤は、エチレン共重合体100重量部に対し、5重量部以下、とくに0.1〜3重量部の割合で配合するのが効果的である。
【0035】
本発明のエチレン共重合体組成物には、その使用目的を損なわない範囲において、任意の他の添加剤を配合することができる。そのような他の添加剤としては、公知の各種添加剤を使用することができる。他の添加剤の例としては、顔料、染料、滑剤、ブロッキング防止剤、発泡剤、発泡助剤、架橋剤、架橋助剤、無機充填剤などを例示することができる。
【0036】
エチレン共重合体組成物が太陽電池封止材として用いられる場合、例えば変色防止剤として、カドミウム、バリウム等の金属の脂肪酸塩を配合することができる。また下部保護材側の封止材においては、透明性は要求されないので、着色、発電効率向上などの目的で、顔料、染料、無機充填剤などを配合することができる。例えば酸化チタン、炭酸カルシウムなどの白色顔料、ウルトラマリンなどの青色顔料、カーボンブラックのような黒色顔料などのほか、ガラスビーズや光拡散剤などを例示することができる。とくに酸化チタンのような無機顔料を配合する系に本発明を適用すると、絶縁抵抗低下の防止効果が優れているので好ましい。無機顔料の好適な配合量は、エチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、100重量部以下、好ましくは0.5〜50重量部、特に好ましくは4〜50重量部である。
【0037】
本発明においては太陽電池封止用シートは、上記のエチレン共重合体組成物を一般にはシート状にして太陽電池素子に対して受光側と裏側に設けられる。封止材用シートの成形は、T−ダイ押出機、カレンダー成形機、インフレーション成形機などを使用する公知の方法によって行なうことができる。例えばエチレン・極性モノマー共重合体及びシランカップリング剤、必要に応じて添加される無機顔料、その他の添加剤を予めドライブレンドして、押出機のホッパーから供給し、110〜230℃でシート状に押し出し成形することによって得ることができる。勿論、その他の配合成分は、マスターバッチにより添加することができる。シート厚みは特に規定されないが、通常0.1〜2mm程度である。
【0038】
このような封止材用シートを用い、太陽電池素子を上下の保護材で固定することにより太陽電池モジュールを製作することができる。このような太陽電池モジュールとしては、種々のタイプのものを例示することができる。例えば上部透明保護材/封止用シート(即ち受光側シート)/太陽電池素子/封止用シート(即ち裏側シート)/下部保護材のように太陽電池素子の両側から封止材で挟む構成のものを挙げることができる。このような構成の太陽電池モジュールにおいては、上部透明保護材の封止材として無機顔料不含有の本発明の封止材を使用し、下部保護材側の封止材として無機顔料含有の本発明の封止材を使用することが好ましい。また別のタイプの太陽電池モジュールとして、下部基板保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子上に封止材用シートと上部透明保護材を形成させるような構成のもの、上部透明保護材の内周面上に形成させた太陽電池素子、例えばフッ素樹脂系シート上にアモルファス太陽電池素子をスパッタリング等で作成したものの上に封止材用シートと下部保護材を形成させるような構成のものなどを挙げることができる。尚上記モジュール構成においては封止用シートは単層であっても多層であってもよい。
【0039】
太陽電池素子としては、単結晶シリコン、多結晶シリコン、アモルファスシリコンなどのシリコン系、ガリウムー砒素、銅−インジウム−セレン、カドミウム−テルルなどのIII−V族やII−VI族化合物半導体系等の各種太陽電池素子を用いることができる。本発明の封止材は、とくにアモルファス太陽電池素子、例えばアモルファスシリコンの封止に有用である。
【0040】
太陽電池モジュールを構成する上部保護材としては、ガラス、アクリル樹脂、ポリカーボネート、ポリエステル、フッ素含有樹脂などを例示することができる。また下部保護材としては、金属や各種熱可塑性樹脂フイルムなどの単体もしくは多層のシートであり、例えば、錫、アルミ、ステンレススチールなどの金属、ガラス等の無機材料、ポリエステル、無機物蒸着ポリエステル、フッ素含有樹脂、ポリオレフィンなどの1層もしくは多層のシートを例示することができ、それぞれ表面に接着性を向上させるためにコロナ処理やフレーム処理などの表面処理やプライマーコーティングなどを行うことができる。本発明の封止材は、これらの上部又は下部保護材に対して良好な接着性を示す。
【0041】
太陽電池モジュールの製造は、本発明の封止材用シートが溶融するような温度で、必要な時間を掛けて、太陽電池素子や保護材に該封止材用シートを接着すればよい。
【0042】
本発明のエチレン共重合体組成物は太陽電池封止材として好適に用いられるものであるが、その特性を活かしたそれ以外の用途に用いることもできる。そのような他の用途として合わせガラスの中間膜としての用途などを挙げることができる。
【実施例】
【0043】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。本発明はこれらの例によって何ら制限されるものではない。
実施例及び比較例で用いた原料及び物性評価方法を以下に示す。
【0044】
1.原料
(1)樹脂
樹脂−A:エチレン・メタクリル酸共重合体
(メタクリル酸含量:20重量%、MFR:60g/10分)
樹脂−B:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量:15重量%)
のZnアイオノマー(中和度:23%、MFR:5g/10分)
樹脂−C:エチレン・メタクリル酸共重合体(メタクリル酸含量:9重量%)
のZnアイオノマー(中和度:18% MFR:5.5g/10分)
樹脂−D:エチレン・酢酸ビニル共重合体
(酢酸ビニル含有量:28重量%、MFR:15g/10分)
(2)シランカップリング剤
シランカップリング剤−A:
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルトリメトキシシラン
シランカップリング剤−B:
N-2(アミノエチル)3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン
シランカップリング剤−C:
γ-(メタクリロキシプロピル)トリメトキシシラン
(3)耐候安定剤
酸化防止剤:ペンタエリスリトールテトラキス[3-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェノル)]
紫外線吸収剤:2-ヒドロキシ-4−n-オクトキシベンゾフエノン
耐候安定剤:ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート
【0045】
2.基材
(1)上部保護材:青色ガラス:厚み3mm、サイズ7.5cm×12cm
(2)バックシート:PETフィルム(コロナ処理品)50um
【0046】
3.基材接着
(1)ガラス接着性
条件:150℃×10分(真空2分、加圧8分)で貼り合わせ
貼り合わせ装置:NPC製LM−50x50S
(比較例2のみラミネート後、さらに140℃で40分キュアを行った。)
試料構成:ガラス/受光側太陽電池封止用シート
測定条件:10mm幅に切り出し、引張速度50mm/minで、ガラス/シート間の接着強度を測定した。
(2)バックシート接着性
条件:150℃×10分(真空2分、加圧8分)で貼り合わせ
貼り合わせ装置:NPC製LM−50x50S
(比較例2のみラミネート後、さらに140℃で40分キュアを行った。)
試料構成:ガラス/裏側太陽電池封止用シート/バックシート
測定条件:10mm幅に切り出し、引張速度50mm/minで、シート/バックシート間の接着強度を測定した。
【0047】
4.受光側シートの光学性
条件:150℃×10分(真空2分、加圧8分)で貼り合わせ
貼り合わせ装置:NPC製LM−50x50S
(比較例2のみラミネート後、さらに140℃で40分キュアを行った。)
試料構成:ガラス/受光側太陽電池封止用シート/ガラス
測定項目:全光線透過率(JIS−K7105準拠)
【0048】
(実施例1)
受光側太陽電池封止用シートとして上記樹脂−A 5000g、シランカップリング剤−A 35g、酸化防止剤1g、紫外線吸収剤10g、耐候安定剤4gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度120℃にて混練して、均一な厚み0.6mmの太陽電池封止用シートを得た(封止材−1)。
次に裏側太陽電池封止用シートとして上記樹脂−C 5000g、シランカップリング剤−B 10g、酸化防止剤1g、紫外線吸収剤10g、耐候安定剤4gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度120℃にて混練して、均一な厚み0.4mmの太陽電池封止用シートを得た(封止材−3)。得られたシートを用いて、受光側太陽電池封止用シートと基材(ガラス)との接着強度、裏側太陽電池封止用シートとバックシートとの接着強度、受光側太陽電池封止用シートの光学性を測定した。結果を表1に示す。
【0049】
(実施例2)
受光側太陽電池封止用シートとして上記樹脂−B 5000g、シランカップリング剤−B 10g、酸化防止剤1g、紫外線吸収剤10g、耐候安定剤4gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度180℃にて混練して、均一な厚み0.4mmの太陽電池封止用シートを得た(封止材−2)。
次に裏側太陽電池封止用シートとして上記樹脂−C 5000g、シランカップリング剤−B 10g、酸化防止剤1g、紫外線吸収剤10g、耐候安定剤4gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度120℃にて混練して、均一な厚み0.4mmの太陽電池封止用シートシートを得た(封止材−3)。得られたシートを用いて、受光側太陽電池封止用シートと基材(ガラス)との接着強度、裏側太陽電池封止用シートとバックシートとの接着強度、受光側太陽電池封止用シートの光学性を測定した。結果を表1に示す。
【0050】
(実施例3)
受光側太陽電池封止用シートとして上記樹脂−B 5000g、シランカップリング剤−B 10g、酸化防止剤1g、紫外線吸収剤10g、耐候安定剤4gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度180℃にて混練して、均一な厚み0.4mmの太陽電池封止用シートを得た(封止材−2)。
次に裏側太陽電池封止用シートとして0.4mmの封止シート−2および0.2mmの封止シート−3の2種類のシートを重ねて用いた。得られたシートを用いて、受光側太陽電池封止用シートと基材(ガラス)との接着強度、裏側太陽電池封止用シートとバックシートとの接着強度、受光側太陽電池封止用シートの光学性を測定した。結果を表1に示す。
【0051】
(比較例1)
受光側、裏側両方の太陽電池封止用シートとして上記樹脂−B 5000g、シランカップリング剤−B 10g、酸化防止剤1g、紫外線吸収剤10g、耐候安定剤4gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度180℃にて混練して、均一な厚み0.4mmの太陽電池封止用シートを得た(封止材−2)。得られたシートを用いて、受光側太陽電池封止用シートと基材(ガラス)との接着強度、裏側太陽電池封止用シートとバックシートとの接着強度、受光側太陽電池封止用シートの光学性を測定した。結果を表1に示す。
【0052】
(比較例2)
受光側、裏側両方の太陽電池封止用シートとして上記樹脂−D 5000g、架橋剤2,5-ジメチル-2,5-ビス(t-ブチルパーオキシ)ヘキサン48g、および架橋剤t-ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルカーボネート12g、シランカップリング剤−B 25g、酸化防止剤1.5g、紫外線吸収剤15g、耐候安定剤5gをそれぞれ秤量し混合した。得られた含浸ペレットを、押出機(L/D=26、フルフライトスクリュー、圧縮比2.6)を用いて加工温度180℃にて混練して、均一な厚み0.6mmの太陽電池封止用シートを得た(封止材−4)。得られたシートを用いて、受光側太陽電池封止用シートと基材(ガラス)との接着強度、裏側太陽電池封止用シートとバックシートとの接着強度、受光側太陽電池封止用シートの光学性を測定した。結果を表1に示す。
【0053】
【表1】

*シート切れ **基材(バックシート)切れ
【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明により提供される太陽電池モジュールは、モジュールを構成する太陽電池素子封止用シートの耐熱性、柔軟性、成形性、耐久性などに優れると共に封止用シート接着性、特にガラス基板やバックシートに対する接着力が優れ、かつ受光側封止シートの透明性に優れ、更に封止シートにゲル状のブツの発生がほとんど発生せず、生産安定性にも優れている。
また、本発明の太陽電池モジュールは太陽電池モジュールにおいては架橋工程の要らないエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを使用しているので、モジュールの製造過程で架橋が不要であるので生産安定性にも優れた太陽電池モジュールが提供される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カルボン酸、カルボン酸塩、カルボン酸無水物、エポキシ基、水酸基及びアミノ基からなる群より選ばれる極性基を有する極性モノマーを含有するエチレン・極性モノマー共重合体100重量部に対し、アミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシラン3重量部以下を配合したエチレン共重合体組成物からなる太陽電池素子封止用シートを太陽電池素子に対して受光側と裏側に使用した太陽電池モジュールであって、太陽電池素子に対して受光側シートのポリマー材料であるエチレン共重合体として極性モノマー単位の含有量が14重量%以上のエチレン・極性モノマー共重合体を用い、太陽電池素子に対して裏側シートのポリマー材料であるエチレン共重合体として極性モノマー単位の含有量が12重量%以下のエチレン・極性モノマー共重合体を用いる太陽電池モジュール。
【請求項2】
エチレン・極性モノマー共重合体が、エチレン・不飽和カルボン酸共重合体及びエチレン・不飽和カルボン酸共重合体のアイオノマーから選ばれる少なくとも1種のエチレン共重合体である請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
アミノ基又はエポキシ基を含有するアルコキシシランが、アミノ基またはエポキシ基を含有するジアルコキシシランである請求項1または2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
アミノ基またはエポキシ基を含有するジアルコキシシランが、3-アミノプロピルジアルコキシシラン、あるいはN-3-(アミノエチル)-3-アミノプロピルジアルコキシシランから選ばれたアミノ基を含有するジアルコキシシランである請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
エチレン共重合体組成物に、さらに紫外線吸収剤、光安定剤および酸化防止剤から選ばれる耐候安定剤添加剤が配合されている請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。

【公開番号】特開2009−177089(P2009−177089A)
【公開日】平成21年8月6日(2009.8.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−16679(P2008−16679)
【出願日】平成20年1月28日(2008.1.28)
【出願人】(000174862)三井・デュポンポリケミカル株式会社 (174)
【Fターム(参考)】