説明

太陽電池モジュール

【課題】単純な構造で太陽光の有効利用を図り、且つ、屋内に射し込む太陽光の調光が可能な太陽電池モジュールを提供する。
【解決手段】両面型太陽電池セル3を有する太陽電池モジュール1であって、太陽光9の受光面側に設けた第1の光透過性基板2と、第1の光透過性基板2上に受光面からの入射光を透過させる採光部4を形成するように所定の間隔を隔てて平面状に配置された複数の両面型太陽電池セル3と、受光面側から見て両面型太陽電池セル3の後方に配置され入射光に対し凹部5を有する調光層7と、を備え、調光層7の凹部5は、調光層7からの反射光が両面型太陽電池セル3に集光するように所定の曲面を有する太陽電池モジュール1。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関し、より詳しくは、調光可能な太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽光発電は、太陽電池を用いて太陽光のエネルギーを直接的に電力に変換する発電方式を採用することから、再生可能エネルギーの1種であるといえる。そのため、二酸化炭素等の温室効果ガスの排出量削減に貢献し、運転用燃料の調達リスクが無いことから近年需要が拡大している。
また、省エネルギーや環境対策の一環から、建物の窓ガラス等を利用した太陽光発電が開発されている。例えば、特許文献1には、両面発電型の太陽電池素子を透光部となる間隔を隔てて平面的に配置し、太陽電池素子の一面側に複数の光反射板を太陽電池素子に対する傾斜角が調節可能なよろい戸状に取り付けることにより発電量を向上させ、調光可能な透光機能を備える太陽電池モジュールが記載されている。
【0003】
【特許文献1】特開2002−158367号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、建物の窓ガラス等を利用する太陽光発電の場合、太陽電池による発電量の確保と窓ガラス等の採光面積とのバランスが重要である。即ち、太陽電池による発電を優先すると屋内に射し込む太陽光の採光量が減少する傾向があり、一方、屋内の採光を優先すると太陽電池による発電量が減少する傾向がある。このため、両面発電型の太陽電池セルと角度調整が可能な光反射板とを組み合わせ、光反射板に反射した光を利用することにより、トータルの発電量をある程度調整することができる。
【0005】
しかし、平面形状の光反射板を用いる場合、光反射板に所定の角度で入射する太陽光のみの利用に制限されるため、効率の良い太陽光の利用には限界がある。また、光反射板を回転させる機構系及び制御系が必要となり、さらに、光反射板を回転させるためのスペースも必要となるため、装置が大型化するという問題がある。
【0006】
また、所定の間隔を隔てて配置された太陽電池セルの間から透過する太陽光は、調光されることなく殆ど遮断されずに屋内の採光に用いられる。このため、屋内に射し込む太陽光が強いと、屋内の温度調節のためにブラインド等が必要となり、省エネルギー効果が低下するという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、単純な構造で太陽光の有効利用を図り、且つ、屋内に射し込む太陽光の調光が可能な太陽電池モジュールを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、両面型太陽電池セルを有する太陽電池モジュールであって、太陽光の受光面側に設けた光透過性基板と、光透過性基板上に受光面からの入射光を透過させる採光部を形成するように所定の間隔を隔てて平面状に配置された複数の両面型太陽電池セルと、受光面側から見て両面型太陽電池セルの後方に配置され入射光に対し凹部を有する調光層と、を備え、調光層の凹部は、調光層からの反射光が両面型太陽電池セルに集光するように所定の曲面を有することを特徴とする太陽電池モジュールが提供される。
【0009】
ここで、本発明が適用される太陽電池モジュールにおいて、調光層は、採光部を透過した入射光を透過又は反射するように調光材料から形成された調光ミラー層であることが好ましい。
この場合、調光材料が、入射光の透過率が印加される電圧により変化するエレクトロクロミック材料からなることが好ましい。
また、調光材料として、入射光の透過率が導入されるガスにより変化するガスクロミック材料からなることが好ましい。
【0010】
次に、本発明が適用される太陽電池モジュールにおいて、調光層の凹部の断面形状が、半円状に形成されることが好ましい。
調光層の凹部の断面形状が半円状の場合、両面型太陽電池セルの幅をWとし、調光層の曲面を有する凹部の底から両面型太陽電池セル方向に垂線を延ばし、両面型太陽電池セルの裏面側表面又は裏面側表面を延長した面との距離をrとする場合、W≧rであることが好ましい。
さらに、両面型太陽電池セルの平面形状が円形であり、調光層の曲面を有する凹部が球面状に形成され、且つ、両面型太陽電池セルの中心位置と凹部の中心位置とがほぼ同じ位置となるように配置されていることが好ましい。太陽光の集光効率を増大させることができる。
【0011】
また、本発明が適用される太陽電池モジュールにおいて、受光面側から見て調光層の後方に、温度によって光学特性が可逆的に変化するサーモクロミック層をさらに設けることが好ましい。
さらに、太陽光が入射する受光面に酸化チタンからなる機能層をさらに設けることが好ましい。
【発明の効果】
【0012】
本発明の太陽電池モジュールによれば、両面発電型太陽電池素子と鏡状態の曲面型調光層とを組み合わせることにより、太陽光の有効利用を図ると共に太陽電池の発電量を確保することができる。
また、曲面型反射層をエレクトロクロミック材料等からなる調光ミラー層を採用することにより、発電効果に加え調光効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。尚、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することが出来る。また、使用する図面は本実施の形態を説明するためのものであり、実際の大きさを表すものではない。
【0014】
(第1の実施の形態)
図1は、太陽電池モジュールの第1の実施の形態を説明する図である。図1(a)は、両面型太陽電池セルと凹部を有する調光層との配置を説明する断面図である。図1(b)は、両面型太陽電池セルの配置を説明する断面図である。
図1(a)に示すように、太陽電池モジュール1は、太陽光9の受光面側に設けた第1の光透過性基板2と、第1の光透過性基板2上に受光面からの入射光を透過させる採光部4を形成するように所定の間隔(ピッチP)を隔てて平面状に配置された複数の両面型太陽電池セル3と、受光面側から見て両面型太陽電池セル3の後方に配置され入射光に対し凹部5を有する調光層7と、調光層7が表面に形成された第2の光透過性基板6とから構成されている。
【0015】
また、両面型太陽電池セル3が配置された第1の光透過性基板2と調光層7が表面に形成された第2の光透過性基板6とは光透過性接着層8により貼り合わされている。
図1(a)に示すように、調光層7に設けられた凹部5は、後述するように、調光層7からの反射光が両面型太陽電池セル3の受光面側と反対側の面に集光するように所定の曲面を有している。
【0016】
調光層7は、採光部4を透過した入射光を透過又は反射するように調光材料から形成された調光ミラー層である。本実施の形態では、調光層7は、入射光の透過率が印加される電圧により変化するエレクトロクロミック材料から形成されたエレクトロクロミック調光ミラー層(EC調光ミラー層)を採用している。調光層7としてEC調光ミラー層を設けることにより、両面型太陽電池セル3は、第1の光透過性基板2側からの入射光と調光層7側からの入射光によりそれぞれ発電可能である。
【0017】
ここで、調光層7を構成するエレクトロクロミック材料として、例えば、MgNi合金が挙げられる。MgNi合金層は、電圧を印加する前の初期状態で、可視光及び赤外光の波長領域における透過率がほとんど0%である(「鏡状態」と呼ぶ)。次に、MgNi合金層と透明電極層(図示せず)との間に+5V程度の電圧を印加することにより、MgNi合金層が水素化物となり、約50%以上の透過率を有するようになる(「透明状態」と呼ぶ)。さらに、MgNi合金層と透明電極層との間に−5V程度の電圧を印加することにより、MgNi合金層が金属に戻り初期状態と同様に透過率がほとんど0%となる。透過率が変化した状態は、通電を切っても保たれる。
このような電圧の印加を繰り返し、EC調光ミラー層の鏡状態もしくは透明状態を選択することにより、調光層7の透過率が制御(調光)可能となる。その結果、目的に応じ、室内や車内への太陽光の採光量が調整可能となる。
【0018】
前述したように、太陽電池モジュール1は、両面型太陽電池セル3が配置された第1の光透過性基板2と調光層7が表面に形成された第2の光透過性基板6とを光透過性接着層8を介して貼り合わすことにより調製される。これ以外に、太陽電池モジュール1を一方向から調製する方法として、例えば、第1の光透過性基板2に接して、複数の両面型太陽電池セル3を、採光部4となる間隔を隔てて平面的に配置し、次に、両面型太陽電池セル3の上に、光透過性接着層8に換え、光透過性樹脂を塗布しナノインプリント法により凸部を有する形状を形成し、さらに、その上にEC調光ミラー層を形成し、最後に、第2の光透過性基板6に換え、光透過性保護層を形成する方法が挙げられる。この場合、EC調光ミラー層はマグネトロンスパッタ装置を用いて室温プロセスでの成膜が可能なため、ロールツーロール方式で調製することができる。
【0019】
図1(a)に示すように、調光層7の凹部5は、EC調光ミラー層である調光層7が鏡状態の場合、採光部4を透過した入射光を調光層7で反射し、両面型太陽電池セル3の受光面側と反対側に効率良く集光し多くの電力を得るように、調光層7の凹部5の断面形状は半円状となっている。
【0020】
また、図1(b)に示すように、両面型太陽電池セル3の平面形状は、太陽光9の入射方向から見て横方向に長い四辺形である。さらに、調光層7の凹部5は、両面型太陽電池セル3の横方向に長い四辺形に対応するように、横方向に複数の溝部として形成されている。この場合、凹部5の形状は、円柱を長手方向に切断した、いわゆるかまぼこ型である。
【0021】
図2は、両面型太陽電池セル3と調光層7の凹部5との関係を説明する図である。図中、Wは、両面型太陽電池セル3の幅の長さである。Aは、凹部5の底の位置である。rは、調光層7の凹部5の底Aから第1の光透過性基板2に垂線を延ばし、両面型太陽電池セル3における調光層7側の表面(裏面側表面)または裏面側表面を延長した面に達した点Oとの距離(半円状に形成された凹部5の曲率半径)である。
図2(a)は、周期的に繰り返し形成されている両面型太陽電池セル3と採光部4(図1参照)とのピッチP(図1参照。隣接する2個の両面型太陽電池セル3間の距離)が2rの場合、両面型太陽電池セル3の幅Wが距離rより小さい(W<r)場合を示し、図2(b)は、W=rの場合を示し、図2(c)は、W>rの場合を示している。尚、両面型太陽電池セル3は、前述した点Oから片側に距離rだけ離れた位置である点Bから形成している。
【0022】
ここでは、第2の光透過性基板6の表面に形成した調光層7の凹部5における任意の点Cに注目し、入射光が、調光層7の半円状に形成された凹部5の表面から反射する様子について説明する。
図2(a)〜図2(c)に示すように、点Oと点Cとを結ぶ線は、調光層7に半円状に形成された凹部5に対して垂線となる。この場合、図2(a)〜図2(c)において点Oよりも下側からの入射光は、半円状に形成された凹部5の点Cで反射し、点Oよりも上側を通過する。また、点Oよりも上側からの入射光は両面型太陽電池セル3の表面(第1の透過性基板2(図1参照)側)を照射し発電が可能である。
【0023】
図2(a)に示すように、W<rの場合、入射光の角度や入射する位置により、調光層7の凹部5表面からの反射光が両面型太陽電池セル3の裏面側(調光層7側)に集光せずに、そのまま外気に放出されることがある。
一方、図2(b)と図2(c)に示すように、W=r及びW>rの場合、EC調光ミラー層である調光層7を鏡状態にしたときに、太陽光9(図1参照)をほぼ100%有効利用することが可能となる。また、調光層7を透明状態にすると、両面型太陽電池セル3の幅Wを適当に変化させることにより、採光量を調整することが可能(調光可能)となる。
本実施の形態では、W=rの場合が特に好ましく、EC調光ミラー層である調光層7が透明状態の場合に採光量を最大にすることができる。
尚、両面型太陽電池セル3が第1の光透過性基板2に埋め込まれている場合は、調光層7の凹部5の底Aから両面型太陽電池セル3の裏面側表面までの距離と前述した距離rとがほぼ等しくなる。
【0024】
図3は、隣接する2個の両面型太陽電池セル3間の距離(ピッチP)が2rより大きい(ピッチP>2r)場合を示す図である。図3(a)は、両面型太陽電池セル3と凹部5を有する調光層7との配置を説明する断面図である。図3(b)は、両面型太陽電池セル3の配置を説明する断面図である。図1と同様な構成については同じ符号を用い、その説明を省略する。この場合、両面型太陽電池セル3の幅Wが距離rに等しい(W=r)、または、距離rより大きい(W>r)関係が成り立てば良い。この場合、図2の場合(ピッチP=2r)と比較して採光量を多くすることができる。
【0025】
(両面型太陽電池セル)
図4は、両面型太陽電池セル3の断面図(長手方向)の一例を説明する図である。本実施の形態では、CIS(カルコパイライト)系太陽電池セルを例としている。尚、太陽電池セルとしては、カルコパイライト系以外のその他の化合物系、または薄膜系シリコン(Si)太陽電池等、比較的厚さが薄い太陽電池セルを用いるのが好ましい。
図4に示す両面型太陽電池セル3は、第1の光透過性基板2上に表面側(受光面側)の太陽電池セル10を形成し、絶縁層11を挟んで裏面側の太陽電池セル12を形成した構成となっている。図4に示すように、太陽電池セル10,12は、両者共に、透明電極層13,13’、バッファー層14,14’、CIS系化合物層15,15’、金属電極16,16’を有し、それぞれの片側の領域に、透明電極13,13’と金属電極16,16’の一部分が表面に出るようにしている。そしてこの表面に出る部分から発電した電力を取り出し、必要に応じ、二次電池17に充電を行ったり電気に還元したりする。
【0026】
本実施の形態で示す太陽電池モジュール1において、EC調光ミラー層である調光層7を複数の領域に分割し、それぞれの領域において電圧のON・OFFが可能となるようにすることが好ましい。この場合、太陽電池モジュール1の発電量及び採光量を細かく制御することができる。
【0027】
また、EC調光ミラー層である調光層7による調光を自動的に行えるようにしても良い。この場合、太陽光9の強度が強い日中には採光量を減らして太陽発電を多くし、太陽光9の強さが低い朝や夕方には採光量を多くして太陽発電量を少なくする等、調光層7の制御により時間や季節に応じ自動的に調光が可能となる。
【0028】
さらに、調光層7に接してサーモクロミック層を形成することが好ましい。この場合、EC調光ミラー層である調光層7が透明状態において透過する赤外線を減少させることが可能となる。即ち、外気温が高い夏や日中において、採光となる可視光がそのままで熱になる赤外線を室内(車内)に入るのを防ぐことができ、冷房効果(エコ)が期待できる。具体的には、太陽光9の入射方向に対してEC調光ミラー層である調光層7の後ろ側にサーモクロミック層を形成することにより発電効果を大きくすることができる。
【0029】
また、太陽光9の入射する受光面の最も手前側に、例えば、酸化チタン層等の機能層を設けることにより、紫外線の遮断、光触媒作用による表面洗浄効果等が期待できる。
【0030】
本実施の形態で示す太陽電池モジュール1において、両面型太陽電池セル3で発電した電力を二次電池に充電することができ、その二次電池に充電した電力を用いて、EC調光ミラー層である調光層7のON・OFFを行うことも可能である。また、両面型太陽電池セル3で発電した電力をそのまま家庭用等の電気に戻すこともできる。
【0031】
本実施の形態が適用される調光可能な太陽電池モジュール1は、図1に示すようなシート状の形態としてそのまま使用可能である。さらに、必要に応じ、オフィスビルや住宅の窓ガラス、天窓用ガラスに組み込んでも効果は大きい。
また、シート状の場合、片面に接着シートや吸盤を付加し、ガラス等に追加的に貼着することも可能である。また、カーテン形状やブラインド形状にしても良い。さらに、電気自動車や燃料電池自動車のウィンドガラスやサンルーフにも適用可能である。この場合、太陽光9が照射される駐車場では、EC調光ミラー層である調光層7を鏡状態にし、両面型太陽電池セル3の裏面側の太陽電池セルによる大幅な充電が可能となる。また、調光層7を鏡状態にしている状態では、外からは中が見えないのでプライバシー保護にも役立つ。
【0032】
(第2の実施の形態)
図5は、太陽電池モジュールの第2の実施の形態を説明する図である。
図5(a)に示す太陽電池モジュール18は、太陽光26の受光面側に設けた平面を有する第1の光透過性基板19に接して、複数の両面型太陽電池セル20を採光部21となる間隔を隔てて平面的に形成し、次に、表面に凹部22を有する第2の光透過性基板23上に電圧の印加により透過率が変化するEC調光ミラー層(調光層)24を形成し、これらの両者を光透過性接着層25により貼り合わせて調製されている。両面型太陽電池セル20は、第1の光透過性基板19側より入射する太陽光26と、裏面側(EC調光ミラー層24側)から入射する反射光によりそれぞれ発電可能である。
【0033】
図5(a)に示すように、本実施の形態では、各両面型太陽電池セル20の後方に、それぞれEC調光ミラー層24の凹部22が形成され、EC調光ミラー層24の凹部22の底Aから第1の光透過性基板19に延ばした垂線上に両面型太陽電池セル20の中心点Oが存在するように配置されている。
【0034】
図5(b)は、太陽電池モジュール18の平面構造を説明する図である。尚、前述した図5(a)は、図5(b)における直線X−Yの断面図である。
図5(b)に示すように、両面型太陽電池セル20の形状は、太陽光26(図5(a)参照)の入射方向から見て円形状である。さらに、EC調光ミラー層(調光層)24の凹部22の形状も円形状である。この場合、円形状の両面型太陽電池セル20と円形状の凹部22とは、それぞれの中心位置が略同じ位置になるように同心円状に配置されている。
【0035】
本実施の形態において、第2の光透過性基板23上に形成されたEC調光ミラー層(調光層)24の凹部22の形状は、所定の曲率半径を有する球面状であり、且つ、円形状の両面型太陽電池セル20の中心位置と球面状の凹部22の中心位置とがほぼ同じ位置となるように配置されている。また、図5(b)に示すように、EC調光ミラー層(調光層)24の凹部22は、略細密状態を形成するように配置され、発電効率を増大させている。
【0036】
本実施の形態では、このように、EC調光ミラー層(調光層)24の凹部22の形状を球面状に形成し、且つ、円形状の両面型太陽電池セル20の中心位置と球面状の凹部22の中心位置とがほぼ同じ位置となるように配置することにより、鏡状態のEC調光ミラー層24の凹部22からの反射光の略全部が両面型太陽電池セル20の裏面側(EC調光ミラー層24側)に集光され、その結果、太陽光26を有効に利用することができる。
また、EC調光ミラー層24が透明状態の場合、円形状の両面型太陽電池セル20の直径を調整することにより、採光量を調整することが可能(調光可能)となる。
【0037】
(第3の実施の形態)
図6は、太陽電池モジュールの第3の実施の形態を説明する図である。ここでは、調光層の透過率がガスの導入により変化するガスクロミック材料を用いた太陽電池モジュール27について説明する。図6(a)は、太陽電池モジュール27の断面構造を説明する図である。図6(b)は、太陽電池モジュール27の平面構造を説明する図である。
【0038】
図6(a)に示すように、太陽電池モジュール27は、平面を有する第1の光透過性基板28の太陽光37が入射する面側に、複数の両面型太陽電池セル29を採光部30となる間隔を隔てて平面的に形成し、その上から透明保護層31を形成する。次に、表面に凹部32を有する第2の光透過性基板33上に、ガスの導入により透過率が変化するガスクロミック(GC)調光ミラー層(調光層)34を形成する。そして、これらの両者の間にガスを導入するため空間35が形成されるように、第1の光透過性基板28と第2の光透過性基板33とを、スペーサー36を介して貼り合わせている。
【0039】
尚、本実施の形態では、両面型太陽電池セル29の幅をW、GC調光ミラー層(調光層)34の凹部32の底Aから第1の光透過性基板28の方向に垂線を延ばし、両面型太陽電池セル29における裏面側表面又はその表面を延長した面と接した点Oとの距離をrとすると、W≧rであることが好ましい。
両面型太陽電池セル29は、第1の光透過性基板28側より入射する太陽光37と、裏面側(GC調光ミラー層34側)から入射する反射光によりそれぞれ発電可能である。
【0040】
本実施の形態において、GC調光ミラー層(調光層)34は、例えば、第2の光透過性基板33上に形成された厚さ40nm程度のMgNi合金層と、さらに、MgNi合金層に接して厚さ4nm程度のPd層とから構成されている。
MgNi合金層を透明状態から鏡状態に変化させる場合、空間35にアルゴンガスと酸素ガス(20%)を導入すると、脱水素化反応によりMgNi合金層が金属に戻り、GC調光ミラー層(調光層)34は鏡状態となる。このとき、脱水素化反応により発生する水は、水抜き口38により系外に排出される。
また、GC調光ミラー層(調光層)34を鏡状態から透明状態に変化させる場合、空間35にアルゴンガスと水素ガス(1%)を導入すると、MgNi合金層の水素化反応によりGC調光ミラー層(調光層)34としては透明状態となる。なお、変化した状態は保たれる。尚、本実施の形態では、酸素ガスと水素ガスの供給には燃料電池39を用いている。
【0041】
このような脱水素化反応と水素化反応を繰り返し、GC調光ミラー層34の鏡状態もしくは透明状態を選択することにより、GC調光ミラー層34の透過率が制御(調光)可能となる。その結果、目的に応じ、室内や車内への太陽光の採光量が調整可能となる。
以上、詳述したように、本実施の形態が適用される太陽電池モジュールは、簡単な構造ながら太陽光の有効利用及び調光効果が得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】太陽電池モジュールの第1の実施の形態を説明する図である。
【図2】両面型太陽電池セルと調光層の凹部との関係を説明する図である。
【図3】隣接する2個の両面型太陽電池セル間の距離が2rより大きい場合を示す図である。
【図4】両面型太陽電池セルの断面図(長手方向)の一例を説明する図である。
【図5】太陽電池モジュールの第2の実施の形態を説明する図である。
【図6】太陽電池モジュールの第3の実施の形態を説明する図である。
【符号の説明】
【0043】
1,18,27…太陽電池モジュール、2,19,28…第1の光透過性基板、3,20,29…両面型太陽電池セル、4,21,30…採光部、5,22,32…凹部、6,23,33…第2の光透過性基板、7…調光層、8,25…光透過性接着層、9,26,37…太陽光、10…表面側の太陽電池セル、11…絶縁層、12…裏面側の太陽電池セル、13…透明電極層、14…バッファー層、15…CIS系化合物層、16…金属電極、17…二次電池、24…EC調光ミラー層、31…透明保護層、34…GC調光ミラー層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
両面型太陽電池セルを有する太陽電池モジュールであって、
太陽光の受光面側に設けた光透過性基板と、
前記光透過性基板上に前記受光面からの入射光を透過させる採光部を形成するように所定の間隔を隔てて平面状に配置された複数の両面型太陽電池セルと、
前記受光面側から見て前記両面型太陽電池セルの後方に配置され前記入射光に対し凹部を有する調光層と、を備え、
前記調光層の前記凹部は、当該調光層からの反射光が前記両面型太陽電池セルに集光するように所定の曲面を有する
ことを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記調光層は、前記採光部を透過した前記入射光を透過又は反射するように調光材料から形成された調光ミラー層であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記調光材料が、前記入射光の透過率が印加される電圧により変化するエレクトロクロミック材料からなることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記調光材料が、前記入射光の透過率が導入されるガスにより変化するガスクロミック材料からなることを特徴とする請求項2に記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記調光層の前記凹部の断面形状が、半円状に形成されることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
前記両面型太陽電池セルの幅をWとし、前記調光層の前記曲面を有する前記凹部の底から当該両面型太陽電池セル方向に垂線を延ばし、当該両面型太陽電池セルの裏面側表面又は当該裏面側表面を延長した面との距離をrとする場合、W≧rであることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項7】
前記両面型太陽電池セルの平面形状が円形であり、前記調光層の前記曲面を有する凹部が球面状に形成され、且つ、当該両面型太陽電池セルの中心位置と当該凹部の中心位置とがほぼ同じ位置となるように配置されていることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項8】
前記受光面側から見て前記調光層の後方に、温度によって光学特性が可逆的に変化するサーモクロミック層をさらに設けることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。
【請求項9】
前記受光面に酸化チタンからなる機能層をさらに設けることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−289832(P2009−289832A)
【公開日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−138583(P2008−138583)
【出願日】平成20年5月27日(2008.5.27)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】