説明

太陽電池モジュール

【課題】屋外建築物に取り付けられた太陽電池モジュールの温度上昇を低減し、発電電力量が多く、耐久性が高く、施工建築物の省エネルギー化が図れると共に、意匠性に優れた太陽電池モジュールを提供すること。
【解決手段】太陽電池モジュール100は、フィルム材で太陽電池セル103及び太陽電池サブモジュール104を内包したフィルムモジュール102と、フィルムモジュール102の一方の主面上に配設された表面保護材101と、フィルムモジュール102の他方の主面上に配設された背面保護材105とを有する。背面保護材105は、支持材105bと、この支持材105b上に形成され、フィルムモジュール102に入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含み、茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有する遮熱層105aとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池モジュールに関し、特に、発電電力量向上、高耐久性化、施工建築物の省エネルギー化に寄与する太陽電池モジュールに関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池モジュール及びこれを用いた太陽光発電システムは、太陽光を直接電気エネルギーに変換できることから、環境負荷の少ない、環境にやさしいエネルギー源として、近年脚光を浴びており、今後市場導入が加速されることが予想されている。
【0003】
この太陽電池モジュールは、例えば、太陽電池セルを一対のフィルム材で封止してなるフィルムモジュールを備え、このフィルムモジュールの両面にそれぞれ保護材を配設してなる構成を有する。これらの保護材、フィルム材には、例えば、ガラス、EVA(エチレンビニルアセテート)、フッ素樹脂、金属などが用いられる。
【0004】
太陽電池モジュールは、住宅などの屋外建築物の屋根や壁に取り付けられて使用されるため、太陽光を吸収して温度が上昇し、発電出力の低下、フィルム材料の劣化促進、建築物の室内温度の上昇などを招く。特に、建築物の室内温度の上昇などにより、空調消費エネルギーが増大するという問題もある。この問題に対して、例えば、特許文献1には、赤外線を反射する層を有する太陽電池モジュールが開示されている。
【特許文献1】特開平11−214736号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
一方で、屋外建築物の屋根などは、汚れを目立たなくするために、意匠性を考慮した濃彩色や黒色の太陽電池モジュールが望まれているが、濃彩色や黒色は太陽光を吸収し易い色であり、著しい温度上昇を伴うため、発電出力低下、フィルム材料の劣化、建築物の室内温度上昇に伴う空調消費エネルギーの増大の問題がある。
【0006】
本発明はかかる点に鑑みてなされたものであり、屋外建築物に取り付けられた太陽電池モジュールの温度上昇を低減し、発電電力量が多く、耐久性が高く、施工建築物の省エネルギー化が図れると共に、意匠性に優れた太陽電池モジュールを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の太陽電池モジュールは、フィルム材に少なくとも一つの太陽電池セルを内包してなるフィルムモジュールと、前記フィルムモジュールの両方の面に配置された一対の保護材と、前記一対の保護材間に配置され、濃彩色又は黒色を有し、前記フィルムモジュールに入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含む遮熱層と、を具備することを特徴とする。
【0008】
この構成によれば、発電に寄与しない赤外線を遮熱層により反射し、太陽電池モジュールの温度上昇、施工建築物の温度上昇を低減でき、実発電電力の向上とモジュールの長期耐久性の向上、施工建物の空調消費エネルギーを低減することができる。また、遮熱層が茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有するので、意匠性に優れた太陽電池モジュールを実現することができる。
【0009】
本発明の太陽電池モジュールにおいては、前記一方の保護材が金属で構成されていることが好ましい。
【0010】
本発明の太陽電池モジュールにおいては、前記フィルムモジュールが一対のフィルム材で構成されており、前記一対のフィルム材の一方のフィルム材が前記遮熱層を兼ねることが好ましい。
【0011】
本発明の太陽電池モジュールにおいては、前記遮熱層は、前記太陽電池セルの受光領域以外の領域に設けられていることが好ましい。
【0012】
本発明の太陽電池モジュールにおいては、前記遮熱材料は、金属錯体系材料、ぺリレンブラック顔料、アニリン系材料、ジアリルメタン系材料、トリアリルメタン系材料、ビニロン系材料、ローダミン系材料、アクリジン系材料、サフラニン系材料、オキサジン系材料、キノリン系材料、チアゾール系材料、アゾ系材料、アゾメチン系材料、ポリメチン系材料、アゾポリメチン系材料、アントラキノン系材料、キノフタロン系材料、及びフタロシアニン系材料からなる群より選ばれたものであることが好ましい。
【0013】
本発明の太陽電池モジュールにおいては、太陽電池セルが非晶質シリコン又は微結晶シリコンで構成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、フィルム材に太陽電池セルを内包してなるフィルムモジュールと、前記フィルムモジュールの両方の面に配置された一対の保護材と、前記一対の保護材間に配置され、濃彩色又は黒色を有し、前記フィルムモジュールに入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含む遮熱層と、を具備するので、屋外建築物に取り付けられた太陽電池モジュールの温度上昇を低減し、発電電力量が多く、耐久性が高く、施工建築物の省エネルギー化が図れると共に、意匠性に優れた太陽電池モジュールを実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
(実施の形態1)
本実施の形態においては、背面保護材側に遮熱層を配設した場合について説明する。図1は、本発明の実施の形態1に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。図1に示す太陽電池モジュール100は、フィルム材で太陽電池セル103及び/又は太陽電池サブモジュール104を内包したフィルムモジュール102と、フィルムモジュール102の一方の主面上に配設された表面保護材101と、フィルムモジュール102の他方の主面上に配設された背面保護材105と、背面保護材105の外側に取り付けられた端子ボックス106と、端子ボックス106にその一端が接続され、その他端にコネクタ108を有する電力ケーブル107とから主に構成されている。
【0016】
背面保護材105は、支持材105bと、この支持材105b上に形成され、フィルムモジュール102に入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含む遮熱層105aとを含む。この遮熱層105aは、表面保護材101と背面保護材105との間、すなわち、背面保護材105の内側に配置されており、茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有する。
【0017】
表面保護材101の材料としては、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリ3フッ化エチレン、ポリフッ化ビニルなどのフッ素樹脂、ガラスなどを用いることができる。この表面保護材101は、フィルム、シート、板状体などで構成することができる。なお、この表面保護材101は、後述するフィルムモジュール102に対して接着などにより配設するので、フィルムモジュール接着面にはコロナ放電処理などの表面処理を施して接着強度を向上させるようにしても良い。
【0018】
フィルムモジュール102におけるフィルム材の材料としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(EVA)樹脂、ブチラール樹脂、シリコン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素化ポリイミド樹脂などの透明な樹脂を使用することができる。また、フィルム材を構成する材料に架橋剤を添加して架橋処理を行って架橋させても良い。また、フィルム材を構成する材料に紫外線吸収剤、安定剤を加えて光劣化を抑制するようにしても良い。
【0019】
太陽電池セル103や太陽電池サブモジュール104の受光側に配設されるフィルム材については、予め太陽電池セル103や太陽電池サブモジュール104にラミネートされたフィルム、シート、板状体を用いても良い。また、太陽電池セル103や太陽電池サブモジュール104の非受光側に配設されるフィルム材については、予め背面保護材105にラミネートされたフィルム、シート、板状体を用いても良い。また、非受光側に配設されるフィルム材については、必ずしも透明である必要はなく、着色しても良い。
【0020】
太陽電池セル103としては特に限定はなく、非晶質シリコン又は微結晶シリコンで構成されていることが好ましい。例えば、単結晶材料の半導体PN接合、非単結晶材料のPIN接合、あるいはショットキー接合などの半導体接合などで構成されたものを用いることができる。半導体材料としては、シリコン系、化合物系が用いられる。この中で、長波長感度が低く、柔軟性を有する非晶質シリコンが望ましい。
【0021】
太陽電池サブモジュール104は複数の発電領域を直列接続してなるものであり、太陽電池セル103同様の材料が用いられる。好ましくは、ガラス基板、ステンレス基板、フィルム基板などの支持基板上に非晶質シリコン半導体や化合物半導体で構成することが好ましい。
【0022】
背面保護材105を構成する材料としては、鋼材、アルミニウム、ステンレス(SUS)などの金属や、繊維強化樹脂、フッ素樹脂のようなプラスチックなどを挙げることができる。背面保護材105は、フィルム、シート、板状体、積層板などで構成することができる。なお、背面保護材105が主として導電性材料で構成されている場合は、背面保護材105の表面を絶縁性材料で被覆することが好ましい。
【0023】
遮熱層105aを構成する材料としては、赤外線を反射し易い材料であれば良く、例えば、金属錯体系材料、ぺリレンブラック顔料、アニリン系材料、ジアリルメタン系材料、トリアリルメタン系材料、ビニロン系材料、ローダミン系材料、アクリジン系材料、サフラニン系材料、オキサジン系材料、キノリン系材料、チアゾール系材料、アゾ系材料、アゾメチン系材料、ポリメチン系材料、アゾポリメチン系材料、アントラキノン系材料、キノフタロン系材料、フタロシアニン系材料などの顔料、染料などが挙げられる。遮熱層105aは、塗膜、フィルム、塗膜とフィルムの積層体などで構成されていることが好ましい。
【0024】
支持材105bを構成する材料としては、鋼材、アルミニウム、ステンレス(SUS)などの金属や、繊維強化樹脂、フッ素樹脂のようなプラスチックなどを挙げることができる。背面保護材105は、フィルム、シート、板状体、積層板などで構成することができる。本実施の形態においては、遮熱層105aと支持材105bとで背面保護材105を構成する場合について説明しているが、遮熱層105aが支持材105bを兼ねて遮熱層105a自身を背面保護材105としても良い。
【0025】
端子ボックス106を構成する材料としては、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリアリレートなどのプラスチックを挙げることができる。この端子ボックス106には、太陽電池セル103で発生した直流電力を取り出すための電力ケーブル107が取り付けられており、電力ケーブル107の端子ボックス106と反対側には接続用のコネクタ108が取り付けられている。このコネクタ108により、他のデバイスやプリント配線板などに適宜接続することが可能となる。なお、端子ボックス106は、シリコーン樹脂などの弾性接着剤で背面保護材105に接着されていることが望ましい。
【0026】
このように、本実施の形態に係る太陽電池モジュールによれば、発電に寄与しない赤外線を遮熱層により反射し、太陽電池モジュールの温度上昇、施工建築物の温度上昇を低減でき、実発電電力の向上とモジュールの長期耐久性の向上、施工建物の空調消費エネルギーを低減することができる。また、遮熱層が茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有するので、意匠性に優れた太陽電池モジュールを実現することができる。
【0027】
(実施の形態2)
本実施の形態においては、フィルム材を遮熱層とした場合について説明する。図2は、本発明の実施の形態2に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。図2に示す太陽電池モジュール200は、フィルム材202a,202bで太陽電池セル203及び/又は太陽電池サブモジュール204を内包したフィルムモジュール202と、フィルムモジュール202の一方の主面上に配設された表面保護材201と、フィルムモジュール202の他方の主面上に配設された背面保護材205と、背面保護材205の外側に取り付けられた端子ボックス206と、端子ボックス206にその一端が接続され、その他端にコネクタ208を有する電力ケーブル207とから主に構成されている。なお、各部材の材料などについては実施の形態1と同じである。
【0028】
本実施の形態においては、一対のフィルム材202a,202bの少なくとも一方、がフィルムモジュール202に入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含む遮熱層を兼ねている。この遮熱層は、茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有する。一対のフィルム材202a,202bのうち受光面側のフィルム材については、遮熱機能を持たせてもよいが、濃彩色や黒色などの着色を施さない。一方、一対のフィルム材202a,202bのうち非受光面側のフィルム材については、濃彩色や黒色などの着色を施すことを前提に、遮熱機能を持たせても持たせなくても良い。
【0029】
このように、本実施の形態に係る太陽電池モジュールによれば、発電に寄与しない赤外線を遮熱層により反射し、太陽電池モジュールの温度上昇、施工建築物の温度上昇を低減でき、実発電電力の向上とモジュールの長期耐久性の向上、施工建物の空調消費エネルギーを低減することができる。また、遮熱層が茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有するので、意匠性に優れた太陽電池モジュールを実現することができる。
【0030】
(実施の形態3)
本実施の形態においては、表面保護材側に遮熱層を配設した場合について説明する。図3は、本発明の実施の形態3に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。図3に示す太陽電池モジュール300は、太陽電池セル303及び/又は太陽電池サブモジュール304を内包したフィルムモジュール302と、フィルムモジュール302の一方の主面上に配設された表面保護材301と、フィルムモジュール302の他方の主面上に配設された背面保護材305と、背面保護材305の外側に取り付けられた端子ボックス306と、端子ボックス306にその一端が接続され、その他端にコネクタ308を有する電力ケーブル307とから主に構成されている。なお、各部材の材料などについては実施の形態1と同じである。
【0031】
表面保護材301は、支持材301bと、この支持材301b上に形成され、フィルムモジュール302に入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含む遮熱層301aとを含む。この遮熱層301aは、表面保護材301と背面保護材305との間、すなわち、表面保護材301の内側に配置されており、茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有する。なお、遮熱層301aは、太陽電池セル303又は太陽電池サブモジュール304の受光領域以外の領域に設けられる。
【0032】
このように、本実施の形態に係る太陽電池モジュールによれば、発電に寄与しない赤外線を遮熱層により反射し、太陽電池モジュールの温度上昇、施工建築物の温度上昇を低減でき、実発電電力の向上とモジュールの長期耐久性の向上、施工建物の空調消費エネルギーを低減することができる。また、遮熱層が茶褐色、青色、緑色のような濃彩色や黒色を有するので、意匠性に優れた太陽電池モジュールを実現することができる。
【0033】
本発明は上記実施の形態1〜3に限定されず種々変更して実施することが可能である。例えば、上記実施の形態1〜3は適宜組み合わせて実施することが可能である。また、上記実施の形態1〜3で説明した部材の大きさ、材質については特に制限はない。その他、本発明の目的の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜変更することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本発明は、例えば建物の屋根に設置される太陽電池モジュールに適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の実施の形態1に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態2に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態3に係る太陽電池モジュールを示す断面図である。
【符号の説明】
【0036】
100,200,300…太陽電池モジュール、101,201,301…表面保護材、102,202,302…フィルムモジュール、103,203,303…太陽電池セル、104,204,304…太陽電池サブモジュール、105,205,305…背面保護材、105a,301a…遮熱層、105b,301b…支持材、106,206,306…端子ボックス、107,207,307…電力ケーブル、108,208,308…コネクタ、202a,202b…フィルム材。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フィルム材に少なくとも一つの太陽電池セルを内包してなるフィルムモジュールと、前記フィルムモジュールの両方の面に配置された一対の保護材と、前記一対の保護材間に配置され、濃彩色又は黒色を有し、前記フィルムモジュールに入射する赤外光を反射し得る遮熱材料を含む遮熱層と、を具備することを特徴とする太陽電池モジュール。
【請求項2】
前記一方の保護材が金属で構成されていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池モジュール。
【請求項3】
前記フィルムモジュールが一対のフィルム材で構成されており、前記一対のフィルム材の一方のフィルム材が前記遮熱層を兼ねることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の太陽電池モジュール。
【請求項4】
前記遮熱層は、前記太陽電池セルの受光領域以外の領域に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項5】
前記遮熱材料は、金属錯体系材料、ぺリレンブラック顔料、アニリン系材料、ジアリルメタン系材料、トリアリルメタン系材料、ビニロン系材料、ローダミン系材料、アクリジン系材料、サフラニン系材料、オキサジン系材料、キノリン系材料、チアゾール系材料、アゾ系材料、アゾメチン系材料、ポリメチン系材料、アゾポリメチン系材料、アントラキノン系材料、キノフタロン系材料、及びフタロシアニン系材料からなる群より選ばれたものであることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の太陽電池モジュール。
【請求項6】
太陽電池セルが非晶質シリコン又は微結晶シリコンで構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の太陽電池モジュール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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