説明

太陽電池一体型屋根材及びその製造方法

【課題】発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型屋根材及びその製造方法を提供する。
【解決手段】太陽電池一体型屋根材1は、鋼板からなる屋根板10と、球状シリコン太陽電池モジュール及びその表面に保護層を有し、かつ屋根板10に接着されたシリコン太陽電池パネル20とを備えている。屋根板10の端部には、はぜ締め部11・12が折曲して形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池一体型屋根材及びその製造方法に関するものであり、詳細には、発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型の鋼板屋根材及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、太陽電池モジュールを屋根材に取り付ける場合には、例えば、既設等の屋根材に太陽電池モジュールを搭載するいわゆる屋根置型の他、屋根材の一部を太陽電池モジュールに差し替えた太陽電池一体型屋根材が知られている。
【0003】
上記屋根材の一部を太陽電池モジュールに差し替えた太陽電池一体型屋根材として、本願出願人等は、特許文献1に屋根材一体型太陽電池モジュールの取付構造を提案している。
【0004】
上記特許文献1に開示した屋根材一体型太陽電池モジュールの取付構造は、図10及び図11に示すように、屋根面101に鋼板からなる瓦103…が葺かれていると共に、瓦103の一部が太陽電池モジュール102に差し替えられたものからなっている。
【0005】
上記太陽電池モジュール102は、図12に示すように、平板状に配列された複数の太陽電池セル102a…の周縁部を枠体102bにて囲んでなっている。各太陽電池セル102aは矩形状であって、図示しない太陽電池セル本体の表面には強化ガラス板、透明樹脂板又は耐候性フィルム板等が積層されている。太陽電池モジュール102は、建材一体型であって屋根機能を有しているので、前記図11に示すように、流れ方向上側の瓦103と流れ方向下側の瓦103との間に組み付け固定されている。
【0006】
しかしながら、太陽電池モジュール102の枠体102bは瓦103とは材質及び形状が異なっているので、太陽電池モジュール102に差し替える箇所については太陽電池モジュール102に対応した特別な取付構造を採用しなければならず、施工が煩雑になるという問題があった。すなわち、枠体102bは、太陽電池モジュール102を支持するためにアルミニウム等の材料からなっているので、鋼板からなる瓦103を一体にはぜ締めでは結合することができない。この問題は、例えば特許文献2に開示されたソーラーパネル付き屋根材においても同様であり、上記特許文献1と同様の取付構造を採用している。
【0007】
これに対して、図13に示すように、例えば特許文献3に開示された太陽電池モジュール200では、鋼板製のパネル210と、このパネル210に貼り付け固定された薄膜電池本体220とからなっている。これによって、パネル210の端部を折曲して、係止壁211を形成し、係止壁211のはぜ締めができるようになっている。したがって、この太陽電池モジュール200では、通常の鋼板からなる屋根材と同一の施工方法が可能となっている。
【0008】
ここで、薄膜電池本体220は、図14に示すように、プラスチック製のフィルム基板222の表面に例えばプラズマCVD法で太陽電池層223を形成したフィルム型のアモルファス太陽電池からなっており、パネル210の上において接着剤221にて接着されている。すなわち、薄膜電池本体220は、フィルム等の薄膜にてなっているので、フレキシブルであり、薄くて撓み易い鋼板からなるパネル210の上においても容易に接着可能であり、太陽電池層223が破損することはない。
【0009】
尚、上記薄膜電池本体220では、太陽電池層223の表面は透明又は半透明の外装フィルム224で覆われていると共に、この外装フィルム224は薄膜電池本体220だけでなく、薄膜電池本体220を取り付けたパネル210表面全体を覆っている。
【0010】
このように、薄膜電池本体220及びパネル210の外表面全体を外装フィルム224にて覆うことによって、耐食性及び耐久性を向上することができるので、長期にわたって安定した状態で発電できる太陽電池モジュール200とすることができるものとなっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2006−177001号公報(2006年7月6日公開)
【特許文献2】特開2003−027674号公報(2003年1月29日公開)
【特許文献3】特開2009−002138号公報(2009年1月8日公開)
【特許文献4】特許第3490969号公報(2003年11月7日登録)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、上記従来の特許文献3に開示された太陽電池モジュール200で使用されている薄膜電池本体220は、フィルム型のアモルファスシリコン太陽電池からなっているが、このアモルファスシリコン太陽電池は発電効率が多結晶シリコンや単結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池に比べて劣っているという問題を有している。すなわち、薄膜アモルファスシリコン太陽電池の発電効率は6〜7%である一方、多結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池の発電効率は13〜16%であり、単結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池の発電効率は15〜19%である。
【0013】
このため、施工性能が優れていても発電効率が劣っているので、そのような太陽電池一体型屋根材の採用を希望するユーザーは多くは望めない。
【0014】
そこで、多結晶シリコンや単結晶シリコンを用いたシリコン太陽電池モジュールを屋根材に貼り付けることが考えられるが、一般的な多結晶シリコンや単結晶シリコンを用いた太陽電池モジュールはガラス系基板等を母体としているため、撓み易い薄板からなる鋼板に接着すべく押圧すると太陽電池モジュールが割れてしまう。このため、一般的な多結晶シリコンや単結晶シリコンを用いた太陽電池モジュールを薄板の鋼板からなる屋根材に貼り付けることはできない。尚、フィルム型の薄膜太陽電池モジュールでは、従来、アモルファスシリコンを使用するものしか採用されていない。
【0015】
本発明は、上記従来の問題点に鑑みなされたものであって、その目的は、発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型屋根材及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明の太陽電池一体型屋根材は、上記課題を解決するために、鋼板からなる屋根板と、球状シリコン太陽電池モジュール及び該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に保護層を有し、かつ上記屋根板に接着されたシリコン太陽電池パネルとを備えており、上記屋根板の端部には、はぜ締部が折曲して形成されていることを特徴としている。
【0017】
本発明の太陽電池一体型屋根材の製造方法は、上記課題を解決するために、鋼板からなる屋根板に球状シリコン太陽電池モジュールを接着した後、該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に保護層を固着することにより、上記球状シリコン太陽電池モジュール及び保護層を含むシリコン太陽電池パネルを屋根板に一体化する一体化工程と、上記屋根板の端部に、はぜ締部を折曲して形成するはぜ締部形成工程とを含むことを特徴としている。
【0018】
上記の発明によれば、鋼板からなる屋根板にはシリコン太陽電池パネルが接着されることにより、該シリコン太陽電池パネルが屋根板に一体化されている。このシリコン太陽電池パネルは、球状シリコン太陽電池モジュールと、該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に設けられた保護層とを有している。
【0019】
ここで、球状シリコン太陽電池モジュールは、一般に、無数の球状シリコン粒子(直径1mm程度)と、集光能力を上げる直径2〜3mmの凹面鏡(電極を兼ねる)を組み合わせた太陽電池である。このため、凹面鏡は電極を兼ねるので、ガラスではなく、金属等の導電体からなっている。この結果、球状シリコン太陽電池モジュールは、フレキシブル性を有し、曲面化が可能である。この結果、撓み易い又は撓んでいる薄板の鋼板からなる屋根板に球状シリコン太陽電池モジュールを接着すべく押圧しても球状シリコン太陽電池モジュールが割れることはない。
【0020】
したがって、フレキシブル性及び曲面化に優れた球状シリコン太陽電池モジュールを容易に薄板の鋼板からなる屋根板に接着剤を用いて貼ることができる。ここで、球状シリコン太陽電池の発電効率は10〜13%であり、薄膜アモルファスシリコン太陽電池の発電効率(6〜7%)よりも大きい。このため、屋根板に薄膜アモルファスシリコン太陽電池を貼るよりも発電効率の高い太陽電池モジュールを製造することができる。
【0021】
また、球状シリコン太陽電池モジュールはその表面に保護層を有しているので、球状シリコン太陽電池モジュールを熱、水分、光(紫外線)、衝突物から保護することができる。
【0022】
さらに、本発明では、屋根板の端部には、はぜ締部が折曲して形成されている。このため、太陽電池一体型屋根材を一般の屋根材と同様にはぜ締めして連結することが可能であり、施工の煩雑さを回避することができる。
【0023】
したがって、発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型屋根材及びその製造方法を提供することができる。
【0024】
また、本発明の太陽電池一体型屋根材及びその製造方法では、前記球状シリコン太陽電池モジュールは、単位電池が複数並べて接合配設されてなっており、上記単位電池は、底部に第1電極を有する球状の第1シリコン層、及び該第1シリコン層における第1電極以外の表面に形成された第2シリコン層を有する光発電シリコン球状セルと、上記光発電シリコン球状セルを搭載し、上記第2シリコン層に接合される第2電極として機能し、かつ底部に上記第1電極を露出させる開口を有する凹形状の反射鏡とからなっていることが好ましい。
【0025】
すなわち、この球状シリコン太陽電池モジュールは、特許公報である特許文献4に開示されているものである。
【0026】
この球状シリコン太陽電池モジュールでは、無数の球状シリコン粒子が、球状の第1シリコン層、及び該第1シリコン層における第1電極以外の表面に形成された第2シリコン層を有する光発電シリコン球状セルからなっていると共に、第2電極として機能する集光能力を上げる凹形状の反射鏡を備えている。
【0027】
したがって、確実に、薄膜アモルファスシリコン太陽電池よりも発電効率の高い太陽電池モジュールを提供することができる。
【0028】
また、本発明の太陽電池一体型屋根材及びその製造方法では、前記保護層は、ガラス板からなっていることが好ましい。
【0029】
これにより、廉価なガラス板を用いて、球状シリコン太陽電池パネルを熱、水分、光(紫外線)、衝突物から保護することができる。また、ガラス板は、硬質であるので、薄板の鋼板からなる屋根板と一体化することにより、屋根板の剛性が高まる。したがって、鋼板の板厚を薄くすることができ、屋根板のコストダウンを図ることができる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の太陽電池一体型屋根材は、以上のように、鋼板からなる屋根板と、球状シリコン太陽電池モジュール及び該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に保護層を有し、かつ上記屋根板に接着されたシリコン太陽電池パネルとを備えており、上記屋根板の端部には、はぜ締部が折曲して形成されているものである。
【0031】
本発明の太陽電池一体型屋根材の製造方法は、以上のように、鋼板からなる屋根板に球状シリコン太陽電池モジュールを接着した後、該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に保護層を固着することにより、上記球状シリコン太陽電池モジュール及び保護層を含むシリコン太陽電池パネルを屋根板に一体化する一体化工程と、上記屋根板の端部に、はぜ締部を折曲して形成するはぜ締部形成工程とを含む方法である。
【0032】
それゆえ、発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型屋根材及びその製造方法を提供するという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明における太陽電池一体型屋根材の実施の一形態を示すものであって、太陽電池一体型屋根材の構成を示す断面図である。
【図2】(a)は上記太陽電池一体型屋根材における1枚の球状シリコン太陽電池モジュールの構成を示す平面図であり、(b)は上記球状シリコン太陽電池モジュールの構成を示す側面図である。
【図3】上記1枚の球状シリコン太陽電池モジュールにおける湾曲時の構成を示す斜視図である。
【図4】複数枚連ねた球状シリコン太陽電池モジュールを示す平面図である。
【図5】(a)は球状シリコン太陽電池モジュールの要部を拡大して示す斜視図であり、(b)はその正面図であり、(c)は球状シリコン太陽電池モジュールにおける単位電池の構成を示す断面図である。
【図6】上記太陽電池一体型屋根材における球状シリコン太陽電池モジュールの全体構成を示す断面図である。
【図7】上記太陽電池一体型屋根材におけるはぜ締め部を形成するはぜ締め部形成装置の構成を示す正面図である。
【図8】(a)〜(d)は、上記太陽電池一体型屋根材におけるはぜ締め工程を示す断面図である。
【図9】上記太陽電池一体型屋根材の施工完了状態を示す断面図である。
【図10】従来における太陽電池一体型屋根材の構成を示す斜視図である。
【図11】上記従来における太陽電池一体型屋根材の取付構造を示す断面図である。
【図12】上記従来における太陽電池一体型屋根材の太陽電池モジュールの構成を示す斜視図である。
【図13】従来における他の太陽電池一体型屋根材の構成を示す斜視図である。
【図14】上記従来における他の太陽電池一体型屋根材の取付構造を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
本発明の一実施形態について図1〜図9に基づいて説明すれば、以下のとおりである。
【0035】
本実施の形態の太陽電池一体型屋根材1は、図1に示すように、鋼板からなる屋根板10と、この屋根板10の表面にシリコン太陽電池パネル20とを備えたものからなっており、シリコン太陽電池パネル20が屋根板10に接着されていることにより、シリコン太陽電池パネル20が屋根板10に一体化されている。
【0036】
上記の屋根板10にはその両端にそれぞれはぜ締め部11・12が形成されており、後述するように、隣接する屋根板10・10同士をそれぞれはぜ締め部11・12にてはぜ締めすることによって、シリコン太陽電池パネル20を一体化した屋根板10・10を互いに連結して、通常の鋼板屋根板と同様に、葺くことが可能となっている。
【0037】
本実施の形態では、屋根板10は、例えば横葺きとなっており、図1において例えば右側が水上であり、左側が水下となっている。また、屋根板10の働き幅は例えば220mmであり、長さは例えば1820mmである。尚、これらの寸法は例示であり、必ずしもこれに限定されない。さらに、横葺きについても、これに限らず、縦葺きであってもよい。屋根板10における鋼板の板厚は、本実施の形態では、例えば0.3mm〜0.5mmとなっている。しかし、必ずしもこれに限らず、鋼板の板厚は、屋根板10として一般的に使用される0.2mm〜1.2mmとすることが可能である。
【0038】
本実施の形態では、上記シリコン太陽電池パネル20は、図1に示すように、球状シリコン太陽電池モジュール21と、この球状シリコン太陽電池モジュール21の表面に設けられた保護層22とを有している。保護層22は、本実施の形態では、例えば、ガラスを使用している。このガラスは強化ガラスであることが好ましい。尚、保護層22は、必ずしもこれに限らず、他の透光性を有する樹脂を使用することも可能である。
【0039】
上記球状シリコン太陽電池モジュール21は、一般的な、ガラス系基板等を母体とした多結晶シリコン若しくは単結晶シリコンのシリコン太陽電池、又はフィルム型のアモルファスシリコン太陽電池とは、全く構成の異なる太陽電池モジュールであり、特許文献4に開示されているものである。
【0040】
具体的には、球状シリコン太陽電池モジュール21は、図2(a)(b)に示すように、単位電池30が複数並べて接合配設されてなっており、1枚の寸法は、例えば、横長さ150mm、縦長さ56mm、厚さ1.2mmである。上記1枚の球状シリコン太陽電池モジュール21は、共通マイナス電極となるアルミニウム基板21aと共通プラス電極となるアルミニウム箔21bとを、複数の単位電池30における共通電極として備えている。この結果、1枚の球状シリコン太陽電池モジュール21は、アルミニウム基板21aが剛性を左右する主要構成部材となっているので、図3に示すように、フレキシブル性を有し、湾曲自在となっている。
【0041】
本実施の形態では、図4に示すように、上記球状シリコン太陽電池モジュール21が複数枚並べて連結されて使用されるものとなっており、連結された球状シリコン太陽電池モジュール21の端部には上記共通マイナス電極であるアルミニウム基板21aに接続されたマイナス側リード端子23と、上記共通プラス電極であるアルミニウム箔21bに接続されたプラス側リード端子24とがそれぞれ設けられている。
【0042】
上記単位電池30は、図5(a)(b)(c)に示すように、断面放物線形状等の凹形状の反射鏡33と、この反射鏡33の内部に搭載された光発電シリコン球状セル32とからなっている。上記光発電シリコン球状セル32は、底部に第1電極としてのプラス電極31を有する球状のp型シリコンからなる第1シリコン層32a、及び該第1シリコン層32aにおけるプラス電極31以外の表面に形成されたn型シリコンからなる第2シリコン層32bを有している。
【0043】
上記反射鏡33は、鏡面仕上げされた金属からなると共に、上記光発電シリコン球状セル32を搭載し、第2シリコン層32bに接合される第2電極として機能し、かつ底部にプラス電極31を露出させる開口33aを有している。また、反射鏡33は、それぞれが平面6角形となっており、複数がハニカム形状に組み合わされているので、デッドスペースがないものとなっている。
【0044】
上記光発電シリコン球状セル32は、例えば、直径1mmの大きさであり、プラス電極31は前記共通プラス電極であるアルミニウム箔21bに接続されている。また、反射鏡33は、直径2.2〜2.7mmであり、前記共通マイナス電極であるアルミニウム基板21aに接続されている。尚、アルミニウム基板21aとアルミニウム箔21bとの間には、図示しない絶縁膜が設けられている。
【0045】
上記単位電池30では、図5(c)に示すように、光が矢印方向に入射すると、反射鏡33によって集光されて光発電シリコン球状セル32に入射する。このため、光発電シリコン球状セル32への入射効率が高いので、第1シリコン層32aと第2シリコン層32bとの間の発電電圧及び発電電流が増大する。
【0046】
この結果、第1シリコン層32a及び第2シリコン層32bは、多結晶シリコン、単結晶シリコン又はアモルファスシリコンのいずれを用いてもよいことが理解できる。例えば、アモルファスシリコンを使用したとしても、発電効率約10〜13%を得ることができ、従来の薄膜アモルファスシリコン太陽電池の発電効率6〜7%よりも優れている。
【0047】
次に、上記構成を有する太陽電池一体型屋根材1の製造方法について、図6に基づいて説明する。図6は太陽電池一体型屋根材1を示す構造図である。
【0048】
図6に示すように、まず、鋼板からなる屋根板10に、連結された複数枚の球状シリコン太陽電池モジュール21…を、例えばEVA(Ethylene Vinyl Acetate)樹脂25にて接着する。次いで、球状シリコン太陽電池モジュール21…の表面にEVA樹脂26を塗布し、ガラス等の保護層22を接着する。これにより、シリコン太陽電池パネル20が、屋根板10に一体化される。尚、屋根板10の裏面には、上記マイナス側リード端子23及びプラス側リード端子24に接続される図示しない配線の端子ボックス2が設けられる。
【0049】
次に、図7に示すように、はぜ締め部形成装置40を用いて、はぜ締め部11・12を形成する。
【0050】
このはぜ締め部形成装置40では、シリコン太陽電池パネル20が搭載された屋根板10の両端部をそれぞれ下側成形ローラ41・42に載せる。これら下側成形ローラ41・42は、シャフト43に回転自在に軸支されている共に、はぜ締め部11・12の下側部分の形を成形するためのはぜ締め部成形部41a・42aを有している。次いで、シリコン太陽電池パネル20が搭載された屋根板10の両端部をそれぞれ上側成形ローラ44・45にて、押圧する。これら上側成形ローラ44・45は、シャフト46に回転自在に軸支されている共に、はぜ締め部11・12の上側部分の形を成形するためのはぜ締め部成形部44a・45aを有している。
【0051】
これにより、屋根板10の両端を下側成形ローラ41・42及び上側成形ローラ44・45にて挟持した状態で、下側成形ローラ41・42及び上側成形ローラ44・45をそれぞれ回転させることにより、屋根板10が押し出し流れによって自動的に屋根板10の両端部にはぜ締め部11・12が形成される。この結果、前記図1に示す太陽電池一体型屋根材1が完成する。
【0052】
尚、上側成形ローラ44・45は、屋根板10に一体化されたシリコン太陽電池パネル20には、押圧しないようになっているので、ガラス等からなる保護層22が割れることがない。
【0053】
上記の太陽電池一体型屋根材1を用いて、施工する場合には、図8(a)(b)(c)(d)に示すように、水下側に位置する太陽電池一体型屋根材1におけるはぜ締め部11に、隣接する水上側に位置する太陽電池一体型屋根材1におけるはぜ締め部12を引っ掛けるようにして係合させる。これにより、図9に示すように、一般の屋根材と同じ施工方法にて、シリコン太陽電池パネル20を一体化した太陽電池一体型屋根材1を葺くことができる。
【0054】
このように、本実施の形態の太陽電池一体型屋根材1は、鋼板からなる屋根板10と、球状シリコン太陽電池モジュール21及び該球状シリコン太陽電池モジュール21の表面に保護層22を有し、かつ屋根板10に接着されたシリコン太陽電池パネル20とを備えている。屋根板10の端部には、はぜ締め部11・12が折曲して形成されている。
【0055】
また、本実施の形態の太陽電池一体型屋根材1の製造方法は、鋼板からなる屋根板10に球状シリコン太陽電池モジュール21を接着した後、該球状シリコン太陽電池モジュール21の表面に保護層22を固着することにより、球状シリコン太陽電池モジュール21及び保護層22を含むシリコン太陽電池パネル20を屋根板10に一体化する一体化工程と、屋根板10の端部に、はぜ締め部11・12を折曲して形成するはぜ締部形成工程とを含む。
【0056】
また、本実施の形態の太陽電池一体型屋根材1の製造方法は、鋼板からなる屋根板10に球状シリコン太陽電池モジュール21を接着した後、該球状シリコン太陽電池モジュール21の表面に保護層22を固着することにより、球状シリコン太陽電池モジュール21及び保護層22を含むシリコン太陽電池パネル20を屋根板10に一体化する一体化工程と、屋根板10の端部に、はぜ締め部11・12を折曲して形成するはぜ締部形成工程とを含む。
【0057】
この結果、鋼板からなる屋根板10にはシリコン太陽電池パネル20が接着されることにより、該シリコン太陽電池パネル20が屋根板10に一体化されている。このシリコン太陽電池パネル20は、球状シリコン太陽電池モジュール21と、該球状シリコン太陽電池モジュール21の表面に設けられた保護層22とを有している。
【0058】
ここで、球状シリコン太陽電池モジュールは、一般に、無数の球状シリコン粒子(直径1mm程度)と、集光能力を上げる直径2〜3mmの凹面鏡(電極を兼ねる)を組み合わせた太陽電池である。このため、凹面鏡は電極を兼ねるので、ガラスではなく、金属等の導電体からなっている。この結果、球状シリコン太陽電池モジュール21は、フレキシブル性を有し、曲面化が可能である。この結果、撓み易い又は撓んでいる薄板の鋼板からなる屋根板10に球状シリコン太陽電池モジュール21を接着すべく押圧しても球状シリコン太陽電池モジュール21が割れることはない。
【0059】
したがって、フレキシブル性及び曲面化に優れた球状シリコン太陽電池モジュール21を容易に薄板の鋼板からなる屋根板10に接着剤を用いて貼ることができる。ここで、球状シリコン太陽電池モジュール21の発電効率は10〜13%であり、薄膜アモルファスシリコン太陽電池の発電効率(6〜7%)よりも大きい。このため、屋根板10に薄膜アモルファスシリコン太陽電池を貼るよりも発電効率の高い太陽電池モジュールを製造することができる。
【0060】
また、球状シリコン太陽電池モジュール21はその表面に保護層22を有しているので、球状シリコン太陽電池モジュール21を熱、水分、光(紫外線)、衝突物から保護することができる。
【0061】
さらに、本実施の形態では、屋根板10の端部には、はぜ締め部11・12が折曲して形成されている。このため、太陽電池一体型屋根材1を一般の屋根材と同様にはぜ締めして、連結することが可能であり、施工の煩雑さを回避することができる。
【0062】
したがって、発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型屋根材1及びその製造方法を提供することができる。
【0063】
また、本実施の形態の太陽電池一体型屋根材1及びその製造方法では、球状シリコン太陽電池モジュール21は、単位電池30が複数並べて接合配設されてなっている。単位電池30は、底部に第1電極としてのプラス電極31を有する球状の第1シリコン層32a、及び該第1シリコン層32aにおけるプラス電極31以外の表面に形成された第2シリコン層32bを有する光発電シリコン球状セル32と、この光発電シリコン球状セル32を搭載し、第2シリコン層32bに接合される第2電極として機能し、かつ底部にプラス電極31を露出させる開口33aを有する凹形状の反射鏡33とからなっており、特許公報である特許文献4に開示されているものである。
【0064】
この球状シリコン太陽電池モジュール21では、無数の球状シリコン粒子が、球状の第1シリコン層32a、及び該第1シリコン層32aにおけるプラス電極31以外の表面に形成された第2シリコン層32b層を有する光発電シリコン球状セル32からなっていると共に、第2電極として機能する集光能力を上げる凹形状の反射鏡33を備えている。
【0065】
したがって、確実に、薄膜アモルファスシリコン太陽電池よりも発電効率の高い太陽電池モジュールを提供することができる。
【0066】
また、本実施の形態の太陽電池一体型屋根材1及びその製造方法では、保護層22は、ガラス板からなっている。
【0067】
これにより、廉価なガラス板を用いて、球状シリコン太陽電池モジュール21を熱、水分、光(紫外線)、衝突物から保護することができる。また、ガラス板は、硬質であるので、薄板の鋼板からなる屋根板10と一体化することにより、屋根板10の剛性が高まる。したがって、鋼板の板厚を薄くすることができ、屋根板10のコストダウンを図ることができる。
【0068】
尚、本発明は、上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明は、発電効率の高いシリコン太陽電池モジュールの鋼板屋根材への一体化を図り、施工の簡便化を図り得る太陽電池一体型屋根材及びその製造方法に適用できる。
【符号の説明】
【0070】
1 太陽電池一体型屋根材
2 端子ボックス
10 屋根板
11・12 はぜ締め部
20 シリコン太陽電池パネル
21 球状シリコン太陽電池モジュール
21a アルミニウム基板
21b アルミニウム箔
22 保護層
23 マイナス側リード端子
24 プラス側リード端子
25 EVA樹脂
26 EVA樹脂
30 単位電池
31 プラス電極(第1電極)
32 光発電シリコン球状セル
32a 第1シリコン層
32b 第2シリコン層
33 反射鏡(第2電極)
33a 開口
40 はぜ締め部形成装置
41・42 下側成形ローラ
41a はぜ締め部成形部
42a はぜ締め部成形部
43 シャフト
44・45 上側成形ローラ
46 シャフト
44a はぜ締め部成形部
45a はぜ締め部成形部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
鋼板からなる屋根板と、
球状シリコン太陽電池モジュール及び該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に保護層を有し、かつ上記屋根板に接着されたシリコン太陽電池パネルとを備えており、
上記屋根板の端部には、はぜ締部が折曲して形成されていることを特徴とする太陽電池一体型屋根材。
【請求項2】
前記球状シリコン太陽電池モジュールは、単位電池が複数並べて接合配設されてなっており、
上記単位電池は、
底部に第1電極を有する球状の第1シリコン層、及び該第1シリコン層における第1電極以外の表面に形成された第2シリコン層を有する光発電シリコン球状セルと、
上記光発電シリコン球状セルを搭載し、上記第2シリコン層に接合される第2電極として機能し、かつ底部に上記第1電極を露出させる開口を有する凹形状の反射鏡とからなっていることを特徴とする請求項1記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項3】
前記保護層は、ガラス板からなっていることを特徴とする請求項1又は2記載の太陽電池一体型屋根材。
【請求項4】
鋼板からなる屋根板に球状シリコン太陽電池モジュールを接着した後、該球状シリコン太陽電池モジュールの表面に保護層を固着することにより、上記球状シリコン太陽電池モジュール及び保護層を含むシリコン太陽電池パネルを屋根板に一体化する一体化工程と、
上記屋根板の端部に、はぜ締部を折曲して形成するはぜ締部形成工程とを含むことを特徴とする太陽電池一体型屋根材の製造方法。
【請求項5】
前記球状シリコン太陽電池モジュールは、単位電池が複数並べて接合配設されてなっており、
上記単位電池は、
底部に第1電極を有する球状の第1シリコン層、及び該第1シリコン層における第1電極以外の表面に形成された第2シリコン層を有する光発電シリコン球状セルと、
上記光発電シリコン球状セルを搭載し、上記第2シリコン層に接合される第2電極として機能し、かつ底部に上記第1電極を露出させる開口を有する凹形状の反射鏡とからなっていることを特徴とする請求項4記載の太陽電池一体型屋根材の製造方法。
【請求項6】
前記保護層は、ガラス板からなっていることを特徴とする請求項4又は5記載の太陽電池一体型屋根材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【公開番号】特開2012−46896(P2012−46896A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−187477(P2010−187477)
【出願日】平成22年8月24日(2010.8.24)
【出願人】(598042275)株式会社 セキノ興産 (15)
【Fターム(参考)】