説明

太陽電池用のシリコン供給原料

本発明はPV太陽電池用の珪素(シリコン)ウェファを製造するために指向的に凝固した珪素インゴット、薄板及びリボン状物を製造する珪素供給原料に関し、該珪素供給原料はこれに分布した0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有する。本発明は更にインゴットに分布した0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有する、太陽電池用ウェファを形成するための指向的に凝固した珪素インゴット又は珪素薄板又はリボンに関し、該珪素インゴットはインゴット高さ又はシート又はリボンの厚さの40〜99%の地点でp−型からn−型へ又はn−型からp−型への型式変化を有し且つ0.4〜10 ohm cmの開始値を有する指数曲線によって表わした抵抗率分布を有し、その際抵抗率値は型式の変化点に向かって増大する。最後に、本発明はPV太陽電池用の珪素ウェファ生産用の指向的に凝固した珪素インゴット、薄板及びリボン状物を製造するための珪素供給原料の製造方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池用のウェファ用シリコン(珪素)供給原料(feedstock)、太陽電池用のウェファ、太陽電池及び太陽電池用ウェファ生産用シリコン供給原料の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、光電池(photovoltaic)の太陽電池は、電子チップ産業からの適当なスクラップ、切削屑及び不良品によって補充された超純粋バージン電子品位のポリシリコン(EG−Si)から製造されている。エレクトロニクス産業が出会う近年の景気下降の結果として、当てにならない(idle)ポリシリコン生産能力はPV太陽電池を製造するのに適当な低経費の品位品を利用できるように適合されてきている。これによって太陽電池品位のシリコン供給原料(SoG−Si)品質に対してさもなくば無理を強いる市場に一次的な救済を生起する。電子装置が正常のレベルに戻る要件と共に、ポリシリコン生産能力の主要な役割はPV産業に供給不足としながらエレクトロニクス産業に供給するのを割当てるように期待される。SoG−Siの専念した低経費供給源の欠如及び得られる供給ギャップの発現は今日ではPV産業の更なる成長に対する最も深刻な障壁の1つであると考えられている。
【0003】
近年、エレクトロニクス産業の価格連鎖とは別個にSoG−Si用の新たな供給源を開発する幾つかの試みが成されている。種々の努力が成されたことで、有意な程に経費を低減するのに現在のポリシリコン処理方式への新規なテクノロジーの導入並びに豊富に利用できる冶金品位のシリコン(MG−Si)を必要な程度の純度にまで精製する冶金精練プロセスの開発が成就される。今日慣用のシリコン供給原料の品質(qualities)から製造したPV太陽電池の性能に整合するのに要求されると予期したシリコン供給原料の純度を提供しながら製造経費を有意な程に低減するのにこれまでは誰も成功しなかった。
【0004】
PV太陽電池を製造する時は、SoG−Si供給原料の装入分(charge)を調製し、溶融し且つ特別な鋳造炉で四角のインゴットに指向的に(directionally)凝固する。溶融前に、SoG−Si供給原料を含有する装入分をホウ素又はリンのいずれかでドープしてそれぞれp−型又はn−型のインゴットを製造する。幾つかの例外はあるが、今日製造される工業用太陽電池はp−型のシリコンインゴット材料に基づく。単一のドープ剤(例えばホウ素又はリン)の添加を加減して該材料に好ましい電気抵抗率例えば0.5〜1.5 ohm(オーム)cmの範囲の抵抗率を得る。これは、p−型のインゴットが望ましい時且つ固有の品質(無視し得る程の小さい含量のドープ剤を有する実際上純粋なシリコン)のSoG−Si供給原料を用いる時には0.02〜0.2ppmaのホウ素の添加に相当する。ドーピング手法によって他のドープ剤(この例の場合にはリン)の含量は無視し得る(p<1/10 B)と思われる。
【0005】
所与の抵抗率の単一ドープしたSoG−Si供給原料を装入分への種々の添加濃度で用いるならば、前もってドープした供給原料の材料中に既に含有されるドープ剤の量を考慮してドープ剤の添加を調節する。
【0006】
n−型及びp−型の単一ドープした供給原料の品質分を装入分に混入して言わゆる「相殺型の」インゴットを得ることができる。装入分混合物の各成分の型式及び抵抗率は所望のインゴット特性を得るのに知られてなければならない。
【0007】
鋳造後には、凝固したインゴットは例えば125mm×125mmの表面積を有する得られる太陽電池の足跡(footprint)を有するブロックに切断する。該ブロックは工業用のマルチワイアソー(multi-wire saw)装置を利用してウェファに切取る。
【0008】
PV太陽電池を多数の処理工程でウェファから製造しその工程のうち最も重要なのは表面の蝕刻、POCl3エミッターの拡散、PECVD SiNの沈着、エッジの単離及び前面と後面との接触部の形成である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明によると、今般見出された所によれば、工業的な効率目標に適合するPV太陽電池は、PV太陽電池の供給原料用途に特定的に意図した冶金精練処理法により冶金品位のシリコンから製造したSoG−Si供給原料(feedstock)から製造できる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
かくして第1の要旨によると、本発明はPV太陽電池用のシリコンウェファを製造するため指向的に凝固したチョクラルスキー(Czochralski)法による、浮動帯域(float zone)法による又は多結晶質のシリコンインゴット、シリコン薄板又はリボン状物を製造するシリコン供給原料に関し、シリコン供給原料が該材料に分布した0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有することを特徴とするシリコン供給原料に関する。
【0011】
好ましい具体例によると、シリコン供給原料は0.3〜5.0ppmaのホウ素と0.5〜3.5ppmaのリンとを含有する。
【0012】
別の好ましい具体例によると、シリコン供給原料(SoG−Si)は150ppma未満の金属成分、好ましくは50ppma未満の金属成分を含有する。
【0013】
尚好ましい具体例によると、シリコン供給原料は150ppma未満の炭素、より好ましくは100ppma未満の炭素を含有する。
【0014】
本発明のシリコン供給原料は、それが高濃度のホウ素とリンとの両方を含有する点で前記の如き種々のホウ素又はリン含有シリコン供給原料特性分からなる装入分混合物とは実質的に異なる。
【0015】
本発明のシリコン供給原料を用いて、エレクトロニック品位のシリコンから製造した工業用太陽電池程の良好な効率を有する太陽電池を製造できることが驚くべきことには見出された。
【0016】
本発明のシリコン供給原料を用いて、高効率を有する太陽電池用のウェファを生成するのに指向的に凝固したチョクラルスキー法、浮動帯域(フローティング ゾーン)法又は多結晶質のシリコンインゴット又はシリコン薄板又はリボン状物を製造できる。シリコン供給原料から製造したシリコンインゴット、薄板又はリボンは0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有し且つインゴット高さ又はシート又はリボン厚さの40〜99%の位置でp−型からn−型へ又はn−型からp−型への特有な型式変化を有するものである。本発明の供給原料から製造した指向的に凝固したインゴットの抵抗率分布は、抵抗率値が型式変化点に向かって増大し且つ0.4〜10 ohm cmの開始値を有する曲線によって示される。
【0017】
第2の要旨によると、本発明は太陽電池用のウェファを生成するための指向的に凝固したチョクラルスキー法、浮動帯域法又は多結晶質のシリコンインゴット又はシリコン薄板又はリボン状物に関し、その際シリコンインゴット、薄板又はリボンは0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有し、該シリコンインゴットはインゴットの高さ又はシート又はリボンの厚さの40〜99%の位置でp−型からn−型へ又はn−型からp−型への型式変化を有し且つ抵抗率値が型式変化点に向って増大し、0.4〜10 ohm cmの開始値を有する曲線によって表わされる抵抗率分布を有するものである。
【0018】
好ましい具体例によると、シリコンインゴット、薄板又はリボンは0.7〜3 ohm cmの抵抗率開始値を有する。
【0019】
第3の要旨によると、本発明は太陽電池のシリコンウェファを製造するため指向的に凝固したチョクラルスキー法、浮動帯域法又は多結晶質のシリコンインゴット、シリコン薄板又はリボン状物を製造するのにシリコン供給原料の製造方法に関し、該方法は炭熱(carbothermic)還元炉による電弧炉で製造した冶金品位のシリコンであって、300ppma以下のホウ素と100ppma以下のリンとを含有する冶金品位シリコンを次の精練工程にかけ;
a) 冶金品位のシリコンをケイ酸カルシウムスラグで処理してシリコンのホウ素含量を0.2〜10ppmaに低減する工程;
b) 工程a) からのスラグ処理したシリコンを凝固する工程;
c) 工程b) からのシリコンを酸浸出液による少なくとも1回の浸出工程で浸出して不純物を除去する工程;
d) 工程c) からのシリコンを、溶融する工程;
e) 工程d) からの溶融シリコンを、方向性凝固によりインゴットの形に凝固する工程;
f) 工程e) からの凝固したインゴットの上部を取出して0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有するシリコンインゴットを生成する工程;
g) 工程f) からのシリコンを破砕及び/又は分粒する工程
にかけることを特徴とする。
【0020】
この方法により製造したシリコン供給原料は、工業用太陽電池に匹敵し得る効率を有する太陽電池のウェファを製造するために指向的に凝固したインゴット、薄板及びリボンの製造に十分適していることが見出された。
【0021】
添附図面を参照するに、図1は本発明による第1のシリコンインゴットについてインゴット高さの関数として抵抗率を示す図表である。図2は本発明による第2のシリコンインゴットについてインゴット高さの関数として抵抗率を示す図表である。
【0022】
本発明を次の実施例により例示する。
【0023】
実施例1
シリコン供給原料の製造
電弧炉中での炭熱還元により製造した工業用の冶金品位シリコンをケイ酸カルシウムスラグで処理して主にホウ素を除去する。ホウ素は溶融シリコンからスラグ相に抽出される。シリコンの大部分が凝固されるまで溶融物中に不純物を滞留させながらシリコンをきわめて純粋なシリコン結晶となるように凝固した。不純物は凝固したシリコン中の粒子境界上に至った。
【0024】
凝固したシリコンを酸浸出にかけ、これによって粒子間の相を攻撃し、不純物と共に溶解した。残留している未溶解の粒状シリコンを溶融し且つ更に精練して破砕及び篩分前に組成を調節して太陽電池品位シリコン用のシリコン供給原料を得る。
【0025】
前述の方法により、シリコン供給原料の2個の装入分を製造した。シリコン供給原料の2個の試料のホウ素及びリン含量を表1に示す。
【0026】
表1

実施例2
指向的に凝固したシリコンインゴット、ウェファ及び太陽電池の製造
実施例1に記載した方法により製造したシリコン供給原料を用いて本発明による2個の指向的に凝固したシリコンインゴットを製造した。工業用の多結晶質Si−ウェファを対照として用いた。シリコンインゴットを製造するのにクリスタロックス(Crystalox)DS250炉を用いた。25.5cmの内径と20cmの高さを有し且つ約12kgの供給原料を収容し得る円形の石英ルツボを用いた。成長したインゴットは100cm2と156cm2のブロックに方形とされ次いでのこぎりによりウェファに切取った。これらのブロックからは、300〜330μmの範囲の厚さを有する多数のウェファを電池加工用に製造した。
【0027】
2個のインゴットの20%高さでのホウ素及びリンの含量を表2に示す。
【0028】
表2 20%高さでのインゴットNo.1及びNo.2の化学分析

切断したてのウェファの本体抵抗率を、底部から頂部までの少なくとも各々5枚のウェファについて4点プローブにより全てのブロックに対して測定した。インゴットNo.1及びNo.2の本体抵抗率分布をそれぞれ図1及び図2に示す。図1及び図2は、該材料がp−型からn−型に変化する時抵抗率はインゴットの底部からインゴットの高さの約3/4まで実質的に一定であることを示す。
【0029】
シリコンブロック中の大多数のキャリア(carriers)の型式は定性的なゼーベック(Seebeck)係数の測定により決定する。バンデルポー(van der Paw)幾何学を用いてのホール(Hall)及び抵抗率測定値を応用して、各々のインゴットの頂部、中部及び底部からの選択したウェファについて抵抗率、キャリア濃度及び移動度を得る。
【0030】
全てのウェファはのこぎりによる損傷除去のため80°で9分間NaOHにより蝕刻し、続いて脱イオン水、HCl、脱イオン水及び2%HFでフラッシュ洗浄する。
【0031】
光捕捉の効果を研究するために、選択した切断したてのウェファについてNaOH蝕刻の代りに同等の組織調節(isotexturisation)を応用する。この方法は切断したてのウェファについて表面にあるのこぎり損傷の除去を組合せ、1工程で表面の肌理調節を応用する。
【0032】
太陽電池はPOCl3エミッターの拡散、PECVD、SiNの沈着及びプラズマ蝕刻による端部単離により成形する。前面及び後面の接触部はスクリーン印刷及び次いで焼付けにより生成する。
【0033】
成形した太陽電池の効率を表3に示す。η=14.8%までの効率(インゴットNo.2)に達し、これは対照材料の効率値を越えている。工業用の単結晶質Siウェファを比較対照として用いる。
【0034】
表3

表3からの結果が示す処によれば、市販の太陽電池に匹敵するか又はそれより高くさえある効率を有する太陽電池は本発明によるシリコン供給原料及び指向的に凝固したシリコンインゴットによって得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の第1のシリコンインゴットについてインゴット高さ(横軸)の関数として抵抗率(縦軸)を示す図表
【図2】本発明の第2のシリコンインゴットについてインゴット高さ(横軸)の関数として抵抗率(縦軸)を示す図表

【特許請求の範囲】
【請求項1】
PV太陽電池用のシリコンウェファ生産用の指向的に凝固したチョクラルスキー法、浮動帯域法又は多結晶質のシリコンインゴット、薄板及びリボン状物を製造するためのシリコン供給原料において、該シリコン供給原料は該材料中に分布した0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有することを特徴とするシリコン供給原料。
【請求項2】
シリコン供給原料は0.3〜5.0ppmaのホウ素及び0.5〜3.5ppmaのリンを含有することを特徴とする請求項1記載のシリコン供給原料。
【請求項3】
シリコン供給原料は150ppma未満の金属元素を含有することを特徴とする請求項1又は2記載のシリコン供給原料。
【請求項4】
シリコン供給原料は50ppma未満の金属元素を含有することを特徴とする請求項3記載のシリコン供給原料。
【請求項5】
シリコン供給原料は150ppma未満の炭素を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシリコン供給原料。
【請求項6】
シリコン供給原料は100ppma未満の炭素を含有することを特徴とする請求項1〜3の何れかに記載のシリコン供給原料。
【請求項7】
太陽電池用のウェファ生成用の指向的に凝固したチョクラルスキー法、浮動帯域法又は多結晶質のシリコンインゴット又はシリコン薄板又はリボン状物においてシリコンインゴット、薄板又はリボン状物はインゴットに分布した0.2〜10ppmaのホウ素及び0.1〜10ppmaのリンを含有し、該シリコンインゴットはインゴット高さ又は薄板又はリボンの厚さの40〜99%の位置でp−型からn−型へ又はn−型からp−型への型式変化を有し且つ0.4〜10ohm cmの開始値を有する曲線によって示される抵抗率分布を有し、その際抵抗率値は型式変化点に向かって増大することを特徴とするシリコンインゴット又はシリコン薄板又はリボン状物。
【請求項8】
抵抗率の開始値は0.7〜3 ohm cmであることを特徴とする請求項7記載のシリコンインゴット、薄板又はリボン状物。
【請求項9】
PV太陽電池用のシリコンウェファ生産用の指向的に凝固したチョクラルスキー法、浮動帯域法又は多結晶質のシリコンインゴット、シリコン薄板又はリボン状物を製造するシリコン供給原料の製造方法において、炭素加熱還元炉による電弧炉で生じた冶金品位のシリコンであって300ppma以下のホウ素と100ppma以下のリンとを含有してなるシリコンを次の精練工程にかけ;即ち
a) 冶金品位のシリコンをケイ酸カルシウムスラグで処理してシリコンのホウ素含量を0.2〜10ppmaに低減する工程;
b) 工程a) からのスラグ処理したシリコンを凝固する工程;
c) 不純物を除去するのに酸浸出液により少なくとも1回の浸出工程で工程b) からのシリコンを浸出する工程;
d) 工程c) からのシリコンを溶融する工程;
e) 工程d) からの溶融シリコンを、指向的な凝固によりインゴットの形に凝固する工程;
f) 工程e) からの凝固したインゴットの上方部分を取出して0.2〜10ppmaのホウ素と0.1〜10ppmaのリンとを含有するシリコンインゴットを生成する工程;
g) 工程f) からのシリコンを破砕及び/又は分粒する工程;
にかけることを特徴とするシリコン供給原料の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2007−516928(P2007−516928A)
【公表日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546879(P2006−546879)
【出願日】平成16年1月12日(2004.1.12)
【国際出願番号】PCT/NO2004/000003
【国際公開番号】WO2005/063621
【国際公開日】平成17年7月14日(2005.7.14)
【出願人】(591203299)
【Fターム(参考)】