説明

太陽電池用バックシートおよび太陽電池モジュール

【課題】 安価で、水蒸気バリア性、封止材であるEVAとの接着性に優れた太陽電池用バックシートを提供することである。
【解決手段】 本発明の太陽電池用バックシートは、リチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)と、接着性フィルム(B)とを積層した、水蒸気透過度(40℃、90%RH)が、3g/m2・24hr未満の太陽電池用バックシートであって、リチウム交換粘土膜が、(1)粘土にシリル化剤を反応させた変性粘土と、添加物としてポリアミドまたはポリイミドのいずれか一方と、変性粘土の交換性イオンの少なくとも90mol%を置換してなるリチウムイオンと、を含有し、(2)リチウム交換粘土膜中の粘土の重量比が60〜90%である、ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水蒸気バリア性、接着性に優れた太陽電池用バックシート、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止などの観点から、太陽光を電気エネルギーに直接変換する太陽電池に関する注目が高まっており、さらなる研究が進められている。
【0003】
太陽電池には、種々の形態があり、代表的なものとして、アモルファスシリコン系太陽電池、結晶シリコン系太陽電池、さらには色素増感型太陽電池などがある。
【0004】
シリコン系太陽電池は、一般に、表面保護材、シリコン発電素子、裏面封止材、バックシート(裏面保護シート)などから構成される。
【0005】
アモルファスシリコン系太陽電池は、シリコンなどの使用量が少ないという利点を有するものの、湿度の影響を受けやすいため、高湿度下においては、水蒸気の浸入により、出力が低下するといった課題があった。この問題を解消するために、耐湿性に優れたバックシートが開発されている。
【0006】
バックシートには、耐湿性を付与し、シリコン発電素子とリード線などの内容物を保護することに加え、耐候性、耐熱性、耐水性、絶縁性、耐腐食性、さらには、裏面封止材として通常使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性などが求められる。
【0007】
このようなバックシートとしては、例えば、ポリフッ化ビニル(PVF)/アルミニウム箔/ポリフッ化ビニル(PVF)の3層構造のバックシートが知られ、長年に渡り用いられている(特許文献1)。アルミニウム箔により、水蒸気バリア性に極めて優れ、ポリフッ化ビニル(PVF)フィルムにより、耐候性、絶縁性に優れている。しかしながら、ポリフッ化ビニル(PVF)は、裏面封止材として使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性に乏しく、また、ポリフッ化ビニル(PVF)が高価であるため、低価格化しにくいという課題があった。また、各フィルムの接着には、接着剤が使用され、コーティング等の加工が必要になり、コストアップの要因の1つになっていた。
【0008】
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/金属酸化物を蒸着した樹脂フィルム/ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムが積層されたバックシートが提案されている(特許文献2)。しかしながら、PETフィルムは、裏面封止材として使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)との接着性に乏しいという課題があった。EVAとの接着性を改善するために、予めバックシートにプライマーを塗布する試みが検討されているが、バックシートのコストアップの要因の1つとなっている。
【0009】
変性粘土を主成分とし、樹脂などを添加剤として用いた粘土膜(フィルム)が開発されバックシートへの適用が検討されている(特許文献3)。しかしながら、耐熱性、水蒸気バリア性、フィルム強度について、改善の余地があった。また、封止材であるEVAとの接着性が充分でなく、改善の余地があった。さらに、PETなどの樹脂フィルムとの接着性が充分でなく、積層フィルム化には接着剤が必要であった。
【0010】
無水マレイン酸変性したポリオレフィン樹脂を接着層としたバックシートが提案されている(特許文献4)。ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂との接着性には優れているが、EVAやアルミニウム箔との接着性には、改善の余地があった。
【0011】
一方、接着性に優れた組成物として、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物が知られている(特許文献5)。しかし、無水マレイン酸変性ポリオレフィン系樹脂組成物(特許文献4)の水蒸気バリア性は低く、極性基の導入により、水蒸気バリア性は低下すると予想されることから、高い耐湿性が要求されるバックシートへの適用はいままで検討がなされていなかった。さらに、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物は、接着剤のように塗布して使用するには難易度が高く、バックシートの生産性の低下、コストアップを招くことが予測された。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2008−235882号公報
【特許文献2】特開2002−100788号公報
【特許文献3】特開2007−277078号公報
【特許文献4】特開2008−270685号公報
【特許文献5】特開2009−24136号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、安価で、水蒸気バリア性、封止材であるEVAとの接着性に優れた太陽電池用バックシートを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムと接着性フィルムを含有するバックシートが、水蒸気バリア性、封止材であるEVAとの接着性に優れ、さらに粘土膜の課題において課題であった柔軟性、機械強度をPETフィルムに塗工することで解決できることを見出し、本発明を完成させた。更に、接着性フィルムであるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムが、PETに塗工した粘土膜と良好に接着し、EVAとの接着性を解決できることを見出し、本発明を完成させた。
【0015】
本願発明は以下の構成を有するものである。
【0016】
本発明は、リチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)と、接着性フィルム(B)とを積層した、水蒸気透過度(40℃、90%RH)が、3g/m2・24hr未満の太陽電池用バックシートであって、
リチウム交換粘土膜が、
(1)粘土にシリル化剤を反応させた変性粘土と、添加物としてポリアミドまたはポリイミドのいずれか一方と、変性粘土の交換性イオンの少なくとも90mol%を置換してなるリチウムイオンと、を含有し、
(2)リチウム交換粘土膜中の粘土の重量比が60〜90%である、
ことを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0017】
好ましい実施態様としては、前記水蒸気透過度(40℃、90%RH)が0.000001〜3g/(m・day)とすることである。
【0018】
好ましい実施態様としては、変性粘土のシリル化剤の重量が、粘土とシリル化剤の総重量に対して1〜30重量%であることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0019】
好ましい実施態様としては、粘土膜の添加物の重量が、変性粘土と添加物の総重量に対して5〜20重量%であることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0020】
好ましい実施態様としては、変性粘土に用いられる粘土が、精製ベントナイト、合成スメクタイト、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトからなる群より選ばれる少なくとも1種の粘土であることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0021】
好ましい実施態様としては、粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)が、マンドレル型屈曲試験で直径1mmに曲げてもクラックを生じない屈曲性、柔軟性、及び機械的強度を有することを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。このように本発明の太陽電池用バックシートは、柔軟性、機械強度を有するため、ハンドリング性に優れるという利点を有する。
【0022】
好ましい実施態様としては、粘土膜の厚みが、1〜100μmであって、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚みが5〜300μmであることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0023】
好ましい実施態様としては、接着性フィルム(B)が、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0024】
好ましい実施態様としては、接着性フィルム(B)が、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0025】
好ましい実施態様としては、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体および芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0026】
好ましい実施態様としては、さらに、耐候性フィルム(C)が積層されてなることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0027】
好ましい実施態様としては、耐候性フィルム(C)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフルオライド、ポリエチレンジフルオライド、ポリメタクリル酸メチル、アクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【0028】
さらに本発明は、上記記載の太陽電池用バックシートを用いた太陽電池モジュールに関する。
【0029】
また、さらに本発明は、前記太陽電池用バックシートの製造方法であって、順に、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにリチウム交換粘土膜を塗工する工程、及びリチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、100℃以上、PETフィルム軟化点以下の温度で、1時間以上、200時間以下の時間加熱処理する、耐水化熱処理工程を含む太陽電池用バックシートの製造方法に関する。
【0030】
好ましい実施態様としては、リチウム交換粘土膜の耐水化熱処理温度が、100〜200℃であることを特徴とする太陽電池用バックシートに関する。
【発明の効果】
【0031】
本発明のバックシートは、リチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであって、当該リチウムイオンを粘土八面体層内に移動せしめる耐水化熱処理工程を経たフィルムと接着性フィルムからなるため、水蒸気バリア性、封止材であるEVAとの接着性に優れた太陽電池用バックシートを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例3に係るバックシートの図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下に本発明を詳細に説明する。
【0034】
本発明の太陽電池用バックシートは、リチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)と、接着性フィルム(B)とを積層した、水蒸気透過度(40℃、90%RH)が、3g/m2・24hr未満の太陽電池用バックシートであって、
リチウム交換粘土膜が、
(1)粘土にシリル化剤を反応させた変性粘土と、添加物としてポリアミドまたはポリイミドのいずれか一方と、変性粘土の交換性イオンの少なくとも90mol%を置換してなるリチウムイオンと、を含有し、
(2)リチウム交換粘土膜中の粘土の重量比が60〜90%である、ことを特徴とする。
【0035】
本発明のリチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)について以下に詳細に説明する。
【0036】
リチウム交換粘土膜に用いられる粘土としては、精製ベントナイト、合成スメクタイト、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトからなる群より選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。天然物、合成物、及びこれらの混合物を用いることができる。
【0037】
粘土膜は、前記の粘土とシリル化剤との反応物であることが好ましい。シリル化剤としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシランなどが例示される。
【0038】
シリル化剤には、エポキシ基、アクリル基、アミノ基、ハロゲン基などの反応性官能基を持つものもあり、このようなシリル化剤を用いて調製されたシリル化粘土は、反応性末端を有する。この場合、製膜中あるいは製膜後の処理によって、付加反応、縮合反応、重合反応などの化学反応を行わせ、新たな化学反応を生じさせ、光透過性、ガスバリア性、水蒸気バリア性あるいは機械的強度を改善させることが可能である。特に、シリル化粘土がエポキシ基を有する場合、製膜中あるいは製膜後、エポキシ反応させ、粘土間に共有結合を形成させることが可能である。
【0039】
粘土とシリル化剤の総重量に対するシリル化剤の重量が1〜30重量%であることが好ましい。
【0040】
粘土へのシリル化剤の導入方法としては、例えば、粘土と、粘土に対して2重量%程度のシリル化剤を混合して、ボールミルで1時間ミルする方法が例示される。
【0041】
変性粘土は、通常は粘土層の層間に存在する交換性イオン100mol%の内、少なくとも90mol%がリチウム化されているリチウム交換粘土膜であることを要する。このようにして粘土層間に置換により導入されたリチウムイオンは、後述する耐水化熱処理工程化により、粘土八面体層内に移動することで、層間のイオン成分が減少することにより、耐水性が向上し、本発明の低い水蒸気透過度を有する水蒸気バリア性に優れたバックシートとなる。この耐水性の向上は、層間のイオン性物質のうち、リチウムイオンが90mol%以上であるときに顕著に現れる。
【0042】
リチウム化の方法としては、変性粘土を硝酸リチウム水溶液に加え、振とうして混合分散させた後、固液分離し、水/エタノール混合溶媒で洗浄し、不要な塩分を除去する方法がある。
【0043】
リチウムイオン濃度の測定方法としては、原子吸光分析などの元素分析でナトリウムイオンとリチウムイオンを定量し、リチウムイオンのmol%を算出する方法がある。
【0044】
添加物としては、ポリアミド、ポリイミド、ポリアミック酸(ポリアミド酸)、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリフェニレンエーテル(PPE)、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ABS樹脂、PETなどの汎用樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂、ユリア樹脂、エポキシ樹脂、ポリウレタン、不飽和ポリエステルなどの熱硬化性樹脂などが知られているが、ポリアミドまたはポリイミドが、水蒸気バリア性を向上させる点から本発明では使用される。
【0045】
変性粘土と添加物の混合方法としては、変性粘土を有機溶剤に分散させてから添加物を加える方法、添加物を含む溶液に変性粘土を分散させる方法、変性粘土と添加物をそれぞれ別に分散液とし、それらを混合する方法などが例示される。この中で、変性粘土を有機溶剤に分散させてから添加物を加える方法、変性粘土と添加物をそれぞれ別に分散液とし、それらを混合する方法が、分散の容易さという点で好ましい。
【0046】
変性粘土を有機溶剤に分散させてから添加物を加える方法を以下に説明する。まず、変性粘土を有機溶剤に加え、希薄で均一な変性粘土分散液を調整する。変性粘土濃度は、0.3〜15重量%であることが好ましく、1〜10重量%であることがより好ましい。変性粘土濃度が低すぎると乾燥に時間がかかり好ましくない。濃度が高すぎると変性粘土が良好に分散せずにダマが発生しやすく、均一な膜ができず、乾燥時に収縮によるクラックや表面荒れ、膜厚の不均一性などが起こり、好ましくない。また、製膜前の分散液の粘度は、1〜30Pa・sであることが好ましく、1〜20Pa・sであることがより好ましい。
【0047】
次に、添加物を変性粘土分散液に加え、均一な分散液を調製する。変性粘土および添加物は、ある種の有機溶剤に良好に分散する。また、変性粘土および添加物は、互いに親和性があるので、溶液中で両者を混合すると、容易に相互作用し、複合化する。
【0048】
添加物の全固体(変性粘土と添加物の総量)に対する重量割合は1〜30%wtであることが好ましく、5〜20wt%であることがより好ましい。添加物の割合が低すぎると、変性粘土膜に柔軟性、機械的強度が発現せず、好ましくない。添加物の割合が高すぎると、変性粘土膜の耐熱性が低下し、好ましくない。
【0049】
用いる有機溶剤としては、変性粘土が分散し、添加物が溶解するものが好ましく、例えば、エタノール、エーテル、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、テトラヒドロフラン、アセトン、トルエンなどが例示される。
【0050】
分散方法としては、攪拌翼を備えた攪拌装置、振とう攪拌装置、ホモジナイザーなどを用いる方法が例示される。小さなダマを低減させるために、分散の最終段階でホモジナイザーを用いることが好ましい。分散液にダマが存在していると、防湿フィルムの表面荒れや組成の不均一化に繋がるため、好ましくない。
【0051】
必要に応じて、分散液を脱気処理することが好ましい。脱気処理しない場合、気泡に由来する孔が生じる場合がある。脱気処理の方法としては、真空引き、加熱処理、遠心処理などの方法があり、真空引きを含む方法が好ましい。
【0052】
次に、変性粘土分散液をポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムに塗工する方法を以下に説明する。
【0053】
変性粘土分散液をPETフィルム表面に一定の厚みで塗工した後、溶剤を蒸発させ、残部を膜状に成形する。PETフィルムの厚みは、5〜300μmが好ましく、10〜200μmがより好ましい。5μm以下の場合、粘土膜塗工後にカールが発生しやすく好ましくない。300μmを超えるとコストが高くなるため好ましくない。また、表面に易接着処理されたPETフィルムを用いても良い。
【0054】
変性粘土分散液を塗工する方法は溶液流延法やスピンコート法によって、PETフィルムに塗工することができる。
【0055】
粘土膜の厚みは、1〜100μmが好ましく、1〜60μmがより好ましい。1μm以下の場合、水蒸気バリア性が不足する場合があり好ましくない。100μmを超えるとコストが高くなるため好ましくない。
【0056】
さらに、粘土膜塗工後に溶剤を蒸発する方法としては、本発明の効果が損なわない方法であれば特に制限はなく、加熱蒸発法、遠心分離、ろ過、真空乾燥、凍結真空乾燥のいずれか、または、これらの方法を組合せて乾燥することが好ましい。加熱蒸発法の場合、温度は室温から90℃であることが好ましく、30〜60℃であることが好ましい。乾燥時間は10分から24時間程度であることが好ましい。温度が低すぎると、乾燥時間が長くなり、好ましくない。温度が高すぎると、分散液の対流が起こり、膜厚が不均一となり、また、変性粘土の配向度が低下し、好ましくない。
【0057】
さらに、本発明は、粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを耐水化熱処理することが必須である。通常、溶剤蒸発後に行い、温度条件は、通常、100〜200℃であることが好ましく、120〜180℃であることがより好ましい。200℃を超えると、PETフィルムが熱で変形したり、劣化するため好ましくない。温度が低すぎると、長時間の熱処理が必要になり、生産上好ましくない。
【0058】
本発明の粘土膜は、変性粘土粒子が高度に配向されている必要がある。高度な配向とは、変性粘土粒子の単位構造層(厚さ1〜1.5nm)を層面の向きを一にして、積み重ね、層面に垂直な方向に、高い周期性を持たせることを意味するものとして定義される。このような高度な配向を得るためには、変性粘土と添加物を含む希薄で均一な分散液を支持体に塗布し、分散媒である液体をゆっくりと蒸発させ、変性粘土粒子が緻密に積層した膜状に成形することが重要である。この製膜の好適な条件としては、分散液中の変性粘土の濃度は0.3〜15wt%であることが好ましく、1〜10wt%であることがより好ましい。また、加熱蒸発法による乾燥条件としては、室温から90℃であることが好ましく、30〜60℃であることが好ましい。
【0059】
粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)の水蒸気透過度(40℃、90%RH)は0.000001〜3g/(m・day)であることが好ましい。水分透過度が高いと、セルへの水分浸入を抑止できず、劣化を引き起こすため、好ましくない。水蒸気透過度(40℃、90%RH)の測定方法としては、JIS K 7129に記載の方法がある。
【0060】
粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)は、粘土膜単体フィルムよりも柔軟性と機械的強度を有し、曲げ、折り曲げに対してクラックが発生せずに、使用可能である。さらには、150℃の過熱水に1時間浸漬した後の膜形状に、視覚的に損傷が観察されないことが好ましい。
【0061】
接着性フィルム(B)としては、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)などが例示される。この中で、ポリエチレンテレフタレート(PET)および、または粘土膜との接着性、封止材であるEVAとの接着性の観点から、変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましく、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂であることが特に好ましい。エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂は、エポキシ基を有するため、(A)粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの粘土膜塗工面との接着性に特に優れている。
【0062】
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂としては、エポキシ基を含有する化合物により変性したものであれば特に制限はなく、メタクリル酸グリシジル変性ポリオレフィンなどがあげられる。
【0063】
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体および芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂であることが好ましい。
【0064】
ポリオレフィン系樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン、ポリイソブチレン、ポリメチルペンテン、プロピレン−エチレン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン共重合体、エチレン/ブテン−1共重合体、エチレン/オクテン共重合体、シクロペンタジエンとエチレンおよび/またはプロピレンとの共重合体などが挙げられる。この中で、ポリエチレン、ポリプロピレン、プロピレン−エチレン共重合体が、変性反応が容易であり、好ましい。
【0065】
エポキシ基含有ビニル単量体としては、メタクリル酸グリシジル(GMA)、アクリル酸グリシジル、マレイン酸モノグリシジル、マレイン酸ジグリシジル、アリルグリシジルエーテル、メタクリルグリシジルエーテル等が挙げられる。これらの中でも、メタクリル酸グリシジルが安価という点で好ましい。上記のエポキシ基含有ビニル単量体は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0066】
エポキシ基含有ビニル単量体の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、1〜30重量部であることがより好ましい。添加量が少なすぎると接着性が充分に発現せず、好ましくない。添加量が多すぎると得られるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物の耐熱性が低下したり、メルトフローレート(MFR)が低下しすぎてフィルム化が困難となるため、好ましくない。
【0067】
芳香族ビニル単量体としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレンp−クロロスチレン、p−ヒドロキシスチレン、ジビニルベンゼン、ジイソプロペニルベンゼンなどが挙げられる。これらの中でも、スチレンが安価であるという点で好ましい。上記の芳香族ビニル単量体は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0068】
芳香族ビニル単量体の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.1〜50重量部であることが好ましく、1〜30重量部であることがより好ましい。添加量が少なすぎるとポリオレフィン系樹脂に対するエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト率が劣る傾向があり、好ましくない。添加量が多すぎるとエポキシ基含有ビニル単量体のグラフト効率が飽和域に達するので、50重量部を上限とすることが好ましい。
【0069】
ラジカル開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、メチルアセトアセテートパーオキサイドなどのケトンパーオキサイド、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(t−ブチルパーオキシ)ブタンなどのパーオキシケタール、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドなどのハイドロパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、α,α´−ビス(t−ブチルパーオキシ−m−イソプロピル)ベンゼン、t−ブチルクミルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド、ジ(3−メチル−3−メトキシブチル)パーオキシジカーボネート、ジ−2−メトキシブチルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート、t−ヘキシルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、などのパーオキシエステルなどが挙げられる。
【0070】
上記のラジカル開始剤は、単独または2種以上を混合して用いることができる。
【0071】
ラジカル重合開始剤の添加量は、ポリオレフィン系樹脂100重量部に対して、0.01〜10重量部であることが好ましく、0.2〜5重量部であることがより好ましい。0.01重量部未満では変性反応が充分に進行せず、好ましくない。10重量部を超えると、得られるエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂の流動性、機械的特性が低下するため、好ましくない。
【0072】
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂には、必要に応じて、熱可塑性樹脂、エラストマー、粘着付与剤(タッキファイヤー)、可塑剤、プロセスオイルなどを添加してもよい。
【0073】
さらに、必要に応じて、酸化防止剤、紫外線吸収剤、連鎖移動剤、核剤、滑剤、充填材、顔料、難燃剤、帯電防止剤などを添加してもよい。
【0074】
溶融混練時の添加方法については、ポリオレフィン系樹脂とラジカル重合開始剤を溶融混練した混合物に、エポキシ基含有ビニル単量体、芳香族ビニル単量体を加え溶融混練することが好ましい。この場合、グラフトに寄与しない低分子量体の生成を抑制することができる。
【0075】
溶融混練時の加工温度は、130〜300℃であることが好ましい。130℃〜300℃の場合、ポリオレフィン系樹脂が充分に溶融し、また、熱分解しにくい。
【0076】
また、混練時間、すなわち、ラジカル重合開始剤を混合してからの時間は、通常30秒間〜60分間であることが好ましい。
【0077】
溶融混練には、押出機、バンバリーミキサー、ニーダー、ミル、加熱ロールなどを使用することができる。生産性という観点から、単軸または2軸の押出機を用いることが好ましい。また、各種原料の混和性や分散性を高めるために、前記の溶融混練装置を併用してもよい。
【0078】
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂は、ポリオレフィン系樹脂から成る相中にエポキシ基含有ビニル単量体および芳香族ビニル単量体から成る相が微分散した多相構造を形成するため、(A)粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムとの接着性に特に優れている。
【0079】
(B)接着性フィルムの製造方法は、特に限定されるものではないが、例えば、接着性樹脂を各種の押出成形機、カレンダー成形機、インフレーション成形機、ロール成形機、あるいは加熱プレス成形機などを用いてフィルム状に成形加工することができる。
【0080】
(B)接着性フィルムの厚みは、10〜500μmであることが好ましく、50〜200μmであることがより好ましい。10μmよりも薄いと、十分な絶縁性が得られず、厚すぎると、コスト的に好ましくない。
【0081】
さらに本発明は、(C)耐候性フィルムを積層することが好ましい。(C)耐候性フィルムとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、ポリメタクリル酸メチル、アクリル系グラフト共重合体とメタクリル系重合体からなるアクリル系樹脂組成物、ポリイミド、ポリエチレンフルオライド、ポリエチレンジフルオライド、から選ばれる少なくとも1種の樹脂からなるフィルムが挙げられる。この中で、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフルオライド、ポリエチレンジフルオライド、ポリメタクリル酸メチル、アクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなるフィルムが好ましい。バックシートは、直接屋外に暴露されるため、耐候性(耐UV光、耐湿、耐熱、耐塩害等)が要求されるが、これらの耐候性フィルムを用いることで、バックシートに耐候性を付与することができる。
【0082】
本発明の太陽電池用バックシートの具体的形態としては、例えば、(A)粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/(B)接着性フィルム、(C)耐候性フィルム/(B)接着性フィルム/(A)粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム/(B)接着性フィルムなどがある。
【0083】
本発明の太陽電池用バックシートの製造方法は、公知の方法を用いることができ、ドライラミネート、ウエットラミネート、ノンソルベントラミネート、押出ラミネート等の公知の手法により貼り合わせることができる。
【0084】
本発明のバックシートは、いずれの太陽電池にも好適に使用できるが、特にアモルファスシリコン系太陽電池、結晶シリコン系太陽電池、ハイブリッド太陽電池などに好適に用いることができる。また、太陽電池の設置場所としては、屋根上、ビル・工場・学校・公共施設などの屋上、壁面、海岸、砂漠地帯などが例示される。
【実施例】
【0085】
以下、実施例により本発明をさらに具体的に説明する。尚、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。
【0086】
(製造例1)粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムA1の製造方法を以下に示す。
【0087】
「リチウム交換粘土の作製」
天然の精製ベントナイト(クニピアF クニミネ工業株式会社製)を、オーブンで110℃以上の温度で十分乾燥させた。当該ベントナイト300gを、アルミナボールとともに、ボールミルポットに入れた。次に、これにシリル化剤(チッソ株式会社製 サイラエースS330)6gを加え、ポット内を窒素ガスに置換し、1時間のボールミル処理を行う事によりシリル化粘土を得た。シリル化剤には、端末にアミノ基をもつシリル化剤を用いた。
【0088】
シリル化粘土24gを、0.5規定の硝酸リチウム水溶液400mLに加え、振とうにより、混合分散させた。2時間振とう分散して、粘土の層間イオンをリチウムイオンに交換した。次に、上記分散液について、遠心分離により、固液分離し、得られた固体を、280gの蒸留水と120gのエタノールの混合溶液で洗浄し、過剰の塩分を除いた。この洗浄操作を、二回以上繰り返した。得られた生成物をオーブンで十分乾燥した後、解砕してリチウム交換粘土を得た。
【0089】
「粘土ペーストの作製」
上記リチウム交換粘土10gを容器に取り、90gの純水を加え、混練することにより、リチウム交換粘土プレゲルを調整した。得られたゲルを、ホモジナイザー(IKA社製 ULTORA TURRAX T50,シャフトは同社製 S50N−G45F)を使って、ジメチルアセトアミドに分散させた。
【0090】
適当な容器に、ジメチルアセトアミドをリチウム交換粘土の350g入れて、ホモジナイザーで撹拌しながら、ポリイミドワニス(宇部興産株式会社製 U−ワニスA)を、4.76g加えた。ミキサーで、混合モード、2000rpm×10分間の混合の後、脱泡モードで、2200rpm×10分間の脱泡をして粘土ペーストを得た。このときの粘度は、1.3〜2.0Pa・s、平均値で、1.4Pa・s(東機産業株式会社製 TVB−22L)であった。
【0091】
「PET上への粘土膜の塗工」
次に、上記粘土ペーストをPETフィルム上に、キャスティングナイフにより、均一厚みとなるように塗工した。ここでペーストの塗工厚みを0.25mmとした。また、PETフィルムは東洋紡績株式会社製の東洋紡エステル(登録商標)A4300、厚さ75μmのものを使用した。この塗工された粘土膜をPETフィルムごと強制送風式オーブン中において、60℃の温度条件下で一晩乾燥することにより、粘土膜厚み3.5μmを有する、均一な粘土PETフィルム塗工膜を得た。得られた、粘土膜塗工PETフィルムを、オーブン中にいれて、PETフィルム軟化点以下の、140℃で40時間から216時間までの耐水化熱処理を施し所定の、水蒸気バリア性フィルムを得た。
【0092】
得られた粘土膜塗工PETフィルムについて、マンドレル型屈曲試験機を用い、柔軟性を測定した結果、フィルムを直径1mmに曲げてもクラックなどの欠陥は生じなかった。
【0093】
「粘土膜の特性」
上記、140℃の加熱処理を施したPETフィルム単体および水蒸気バリア性フィルムの40℃、相対湿度90%における水蒸気透過度を、JIS Z0208−1976に規定する、カップ法により、試験評価時間140hrで比較測定した。測定に際し、水蒸気バリア性フィルムの粘土膜層が、カップの内側になるように取り付けた。測定された水蒸気透過度を表1に示す。
【0094】
【表1】

【0095】
上表において、(1)PETフィルム単体および(2)粘土膜塗工PETフィルムの水蒸気バリア性フィルムのいずれにおいても、140℃で40から112hrの加熱処理を施した場合、(加熱処理なし)と比較して、水蒸気透過度が低下し、更に、(1)PETフィルム単体の場合よりも、(2)(PET/ 粘土膜)の積層構造をとることで水蒸気透過度が、3g/m2・24hr未満となる水蒸気バリア性フィルムを実現できる。ただし、耐水化熱処理時間が長い場合、PETの劣化により水蒸気透過度は増加傾向を示す。
【0096】
(製造例2)エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1の製造方法
プロピレン−エチレン共重合体(バーシファイ3401、MFR8、ダウ・ケミカル製)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部を200℃に設定した2軸押出機(TEX30:L/D=28、日本製鋼所製)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練してエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂からなるペレットを得た。変性後のMFRは6であった。得られた樹脂をTダイに供給し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0097】
(製造例3)エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂のフィルムB2の製造方法
ホモポリプロピレン(S119、MFR60、株式会社プライムポリマー製)100重量部、1,3−ジ(t-ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン(日本油脂株式会社製:パーブチルP、1分間半減期175℃)0.5重量部を200℃に設定した2軸押出機(TEX30:L/D=28、日本製鋼所製)に供給して溶融混練した後、次いで、シリンダー途中よりメタクリル酸グリシジル5重量部、スチレン5重量部を加え溶融混練してエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂組成物からなるペレットを得た。変性後のMFRは88であった。得られた樹脂組成物をTダイに供給し、厚み100μmのフィルムを得た。
【0098】
(比較製造例1)変性粘土膜単体フィルムの製造方法
天然の精製ベントナイト、クニピアF(クニミネ工業株式会社製)を、110℃以上の温度に設定されたオーブンで乾燥した。前記のベントナイト300gをアルミナボールとともにボールミル用ポッドに入れた。更に、末端にアミノ基を持つシリル化剤、サイラエースS330(チッソ株式会社製)6gを加えた後、ポッド内を窒素ガスで置換し、ボールミル処理を1時間行うことにより、変性粘土を得た。
【0099】
前記変性粘土24gを0.5規定の硝酸リチウム水溶液400mlに加え、振とうにより、混合分散させた。交換性イオンがリチウムイオン95%になるまで振とう分散させて(原子吸光分析で確認)、粘土の層間イオンをリチウムイオンに交換した。遠心分離により、固液分離し、得られた固体を280gの蒸留水と120gのエタノールの混合溶剤で洗浄し、過剰の塩分を除去した。この洗浄操作を2回以上、繰り返した。得られた生成物をオーブンで充分乾燥した後、解砕して、リチウム交換変性粘土を得た。
【0100】
前記リチウム交換変性粘土の10gを容器に入れ、純水20mlを加え、10分ほど、放置し、純水になじませた。その後、ステンレス製スパチュラで軽く混練した。ミキサーで2000rpm、10分間、混合処理を行った。更に、純水20mlを加え、全体に純水が行き渡る様に混練し、全体が1つにまとまる程度まで練り込んだ。ミキサーで2000rpm、10分間、混合処理を行った。更に、純水50mlを加え、ステンレス製スパチュラでよく混練した。大きなダマ(ゲルの塊)があれば極力潰した。ミキサーで2000rpm、10分間、混合処理を行い、粘土プレゲルを得た。
【0101】
前記プレゲルをホモジナイザー、ULTRA TURRAX T50(IKA社製)を使用し、ジメチルアセトアミドに分散させた。適当な容器に、ジメチルアセトアミドを粘土の35倍等量(350g)を入れて、ホモジナイザーで攪拌しながら、前記粘土プレゲルを入れた。7000rpmで、30分間、攪拌した。ホモジナイザー処理後、分散液120gを別の容器に分取した。ポリイミドワニス、U−ワニスA(宇部興産株式会社製)4.76gを加えた。ミキサーで、2000rpm、10分間、脱泡モードで2200rpm、10分間、脱泡した。このとき、粘度は1.4Pa・sであった(東機産業株式会社製、TVB−22L)。その後、ポリテトラフルオロエチレン製シートにペーストを流し込み、均一の厚みになるようにキャスティングナイフでペーストを伸延した。ペーストの厚み1mmとした。
【0102】
次に、前記ペーストを、強制対流式オーブン内で60℃の温度条件で24時間乾燥し、ポリテトラフルオロエチレン製シートから剥離して、加熱炉内で加熱処理した。この加熱処理において、100℃/時間の速度で150℃まで昇温した後、150℃で2時間保持した。次に、100℃/時間の速度で230℃まで昇温した後、230℃で24時間保持した。この加熱処理により、厚み20μmの変性粘土膜を得た。
【0103】
得られた変性粘土膜の水蒸気透過度(40℃、90%RH)は、0.03g/(m・day)であった。
【0104】
マンドレル型屈曲試験機を用い、柔軟性を測定した結果、変性粘土膜単体フィルムを直径2mmに曲げてもクラックなどの欠陥は生じなかったが、直径1mmに曲げるとクラックが発生した。
【0105】
(実施例1)
粘土膜塗工PETフィルムA1の粘土膜塗工面がエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1に接触するように重ねた状態で、熱プレスし、積層フィルムを得た。対EVA接着性を調べるために、積層フィルムとEVA(厚み0.4mm)とを、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1とEVAとが接するように重ねた状態で、熱プレスし、積層フィルムを得た。尚、熱プレス条件は、170℃または200℃、圧力5MPa、プレス時間3分(無圧1分、加圧2分)とした。
【0106】
(実施例2)
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1をエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB2に替えた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0107】
(比較例1)
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1を厚み100μmのプロピレン−エチレン共重合体(バーシファイ3401、MFR=8、ダウ・ケミカル製)フィルムに替えた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0108】
(比較例2)
エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1を厚み100μmのホモポリプロピレン(S119、MFR60、株式会社プライムポリマー製)フィルムに替えた以外は実施例1と同様にして積層フィルムを得た。
【0109】
(1)接着性の評価方法
上記の方法により得られた積層フィルムの端部を手で掴み、手で剥がせるか否かを調べた。○手では剥がれない。×手で容易に剥がせる。
【0110】
【表2】

【0111】
実施例1および2は、接着性フィルムとしてエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムを使用しており、粘土膜塗工PETフィルムおよびEVAとの接着性に優れている。一方、比較例1および2は、接着性フィルムの代わりにポリオレフィン系樹脂を使用しており、粘土膜塗工PETフィルムおよびEVAとの接着性が不十分である。
【0112】
(製造例3)バックシートBS1の製造方法
PETフィルム(ルミラーS10、厚み75μm、東レ株式会社製)、1枚目のエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1、粘土膜塗工PETフィルムA1、2枚目のエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1を重ねた状態で、170℃に加熱された6インチロール(テストミキシングロール191−TM、株式会社安田精機製作所製)を用いて、ラミネートし、バックシートを得た。なお、粘土膜塗工PETフィルムA1は粘土膜塗工面が2枚目のエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムB1と接するように作製した。
【0113】
(実施例3)
前もって、配線接続した5インチサイズのアモルファスシリコン系太陽電池セルの裏面に厚み0.4mmのEVAシート、バックシートBS1を重ね、170℃、7分間、真空ラミネート成形した後、150℃のオーブンで、120分間、加熱することにより、太陽電池モジュール(5インチ)を作製した。
【0114】
(比較例3)
バックシートBS1を粘土膜塗工PETフィルムA1に替えた以外は実施例3と同様にして太陽電池モジュール(5インチ)を作製した。なお、粘土膜塗工PETフィルムA1は粘土膜塗工面がEVAシートと接するように作製した。
【0115】
(2)モジュール外観の評価方法
成形後のモジュール外観を目視で判定した。気泡:○なし、×あり、割れ:○なし、×あり、着色:○なし、×あり。
【0116】
(3)接着性(対EVA)の評価方法
EVAとの接着性を簡易評価した。○手で容易に剥がれない、×手で容易に剥がれる。
【0117】
(4)Pmax(最大出力)の評価方法
Pmaxは二灯式ソーラーシミュレータを用いて測定した。
【0118】
【表3】

【0119】
実施例3は、粘土膜塗工PETフィルム、接着性フィルム、耐候性フィルムを含有するバックシートである。接着性フィルムとしてエポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルムを使用しており、EVAとの接着性は良好であった。また、モジュール外観、Pmax(初期値)は良好であった。
【符号の説明】
【0120】
a1.粘土膜塗工PETフィルム
b1.エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂フィルム
c1.PETフィルム

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)と、接着性フィルム(B)とを積層した、水蒸気透過度(40℃、90%RH)が、3g/m2・24hr未満の太陽電池用バックシートであって、
リチウム交換粘土膜が、
(1)粘土にシリル化剤を反応させた変性粘土と、添加物としてポリアミドまたはポリイミドのいずれか一方と、変性粘土の交換性イオンの少なくとも90mol%を置換してなるリチウムイオンと、を含有し、
(2)リチウム交換粘土膜中の粘土の重量比が60〜90%である、
ことを特徴とする太陽電池用バックシート。
【請求項2】
変性粘土のシリル化剤の重量が、粘土とシリル化剤の総重量に対して1〜30重量%であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項3】
粘土膜の添加物の重量が、変性粘土と添加物の総重量に対して5〜20重量%であることを特徴とする請求項1、又は2に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項4】
変性粘土に用いられる粘土が、精製ベントナイト、合成スメクタイト、雲母、バーミキュライト、モンモリロナイト、バイデライト、サポナイト、ヘクトライト、スチーブンサイト、マガディアイト、アイラライト、カネマイト、イライト、セリサイトからなる群より選ばれる少なくとも1種の粘土であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項5】
粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(A)が、マンドレル型屈曲試験で直径1mmに曲げてもクラックを生じない屈曲性、柔軟性、及び機械的強度を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項6】
粘土膜の厚みが、1〜100μmであって、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムの厚みが5〜300μmであることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項7】
接着性フィルム(B)が、変性ポリオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、シリコーン系樹脂、ポリイソブチレン系樹脂、エチレン−ビニルアルコール共重合体(EVOH)、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVA)からなる群より選ばれる少なくとも1種からなることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項8】
接着性フィルム(B)が、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂からなることを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項9】
変性ポリオレフィン系樹脂が、エポキシ変性ポリオレフィン系樹脂が、ポリオレフィン系樹脂に対して、ラジカル重合開始剤の存在下、エポキシ基含有ビニル単量体および芳香族ビニル単量体を溶融混練して得られることを特徴とする請求項8に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項10】
さらに、耐候性フィルム(C)が積層されてなることを特徴とする請求項1〜9のいずれかに記載の太陽電池用バックシート。
【請求項11】
耐候性フィルム(C)が、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエチレンフルオライド、ポリエチレンジフルオライド、ポリメタクリル酸メチル、アクリル系樹脂からなる群より選ばれる少なくとも1種の樹脂からなることを特徴とする請求項10に記載の太陽電池用バックシート。
【請求項12】
請求項1〜11のいずれか1項に記載の太陽電池用バックシートを用いた太陽電池モジュール。
【請求項13】
請求項1〜11のいずれかに記載の太陽電池用バックシートの製造方法であって、順に、
ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムにリチウム交換粘土膜を塗工する工程、及び
リチウム交換粘土膜が塗工されたポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムを、100℃以上、PETフィルム軟化点以下の温度で、1時間以上、200時間以下の時間加熱処理する、耐水化熱処理工程を含む太陽電池用バックシートの製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2011−254038(P2011−254038A)
【公開日】平成23年12月15日(2011.12.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−128587(P2010−128587)
【出願日】平成22年6月4日(2010.6.4)
【出願人】(000000941)株式会社カネカ (3,932)
【Fターム(参考)】