説明

太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜及びその製造方法、並びにこれを用いた太陽電池及びその製造方法

【課題】太陽電池用裏面側保護部材と一体となったエチレン−極性モノマー共重合体を主成分とする封止膜であって、接着性能の低下が生じるおそれのない太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜、及びそれを用いた太陽電池を提供する。
【解決手段】太陽電池の太陽電池用素子の裏面側に配置し、太陽電池用素子を保護するための裏面側保護部材、及び太陽電池用素子を封止するための封止膜が一体となった、太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜10であって、エチレン−極性モノマー共重合体を含む封止膜シート13、及びその表面に塗工により形成された樹脂組成物からなる裏面側保護部材層12を有し、且つ裏面側保護部材層12の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠)が、2.1g/(m・day)以下であることを特徴とする太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜及びそれを用いた太陽電池。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池の太陽電池用素子の裏面側に配置する裏面側保護部材(バックカバー材ともいう)と太陽電池用封止膜とが一体となった太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜、及びその製造方法、並びにこの封止膜を用いた太陽電池、及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源の有効利用や環境汚染の防止等の面から、太陽光を電気エネルギーに直接変換する太陽電池が広く使用され、更に、発電効率や耐候性等の性能面、及び製造時間の短縮等の生産効率の面から開発が進められている。
【0003】
太陽電池は、一般に、図4に示すように、ガラス基板などからなる表面側透明保護部材41、表面側封止膜43A、シリコン結晶系発電素子などの太陽電池用セル44、裏面側封止膜43B、及び裏面側保護部材(バックカバー材)42をこの順で積層し、減圧で脱気した後、加熱加圧して表面側封止膜43A及び裏面側封止膜43Bを架橋硬化させて接着一体化することにより製造される。
【0004】
このような太陽電池では、高い電気出力を得るために、複数の太陽電池用セル44を接続して用いられている。したがって、太陽電池用セル44の絶縁性を確保するために、絶縁性のある封止膜43A、43Bを用いて太陽電池用セルを封止している。
【0005】
また、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等の薄膜太陽電池の開発も進められており、この場合は、例えば、ガラスやポリイミド基板等の透明基板の表面に化学気相蒸着法等により半導体層等の発電素子層が形成され、その上に封止膜及びバックカバー材を積層し、接着一体化することで製造される。
【0006】
従来から、これらの太陽電池に用いられる封止膜としては、エチレン酢酸ビニル共重合体(以下、EVAとも言う)、エチレンエチルアクリレート共重合体(EEA)等のエチレン−極性モノマー共重合体からなるフィルムが用いられている。特に、安価であり高い透明性を有することからEVAフィルムが好ましく用いられている。また、バックカバー材は、軽量で十分な耐久性を備え、且つ太陽電池内部の導線や電極の発錆を防止するために高い防湿性が要求される。一般に、バックカバー材にはポリエチレンテレフタレート(PET)等のプラスチックフィルムが好ましく用いられる。
【0007】
ところで、このような太陽電池の製造において、各部材を積層する工程は、位置決め等が煩雑であり、製造時間を短縮するために重要な工程である。
【0008】
特許文献1及び2は、防湿フィルム等のバックカバー材とEVAフィルム等の接着剤層とを貼り合わせた、太陽電池用の裏面側保護部材を兼ねた封止膜が開示されている。この場合、太陽電池の製造現場においては、積層工程を削減することができ、製造時間を短縮することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2002−26346号公報
【特許文献2】特開2000−294820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1及び2のようなバックカバー材とEVAフィルムを貼り合わせた積層体を形成する場合、一般に、仮圧着するために加熱加圧を行うことになるため、封止膜として使用する際に、本来設計された性能を発揮できない、例えば、接着力が低下してしまう等の恐れがある。
【0011】
従って、本発明の目的は、太陽電池の製造時間を短縮できる、太陽電池用裏面側保護部材と一体となったエチレン−極性モノマー共重合体を主成分とする封止膜であって、上述のような問題が生じる恐れのない太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を提供することにある。
【0012】
また、本発明の目的は、その太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法を提供することにある。
【0013】
更に、本発明の目的は、その太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を用いた太陽電池を提供することにある。
【0014】
また、本発明の目的は、その太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を用いた太陽電池の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的は、太陽電池の太陽電池用素子の裏面側に配置し、太陽電池用素子を保護するための裏面側保護部材、及び太陽電池用素子を封止するための封止膜が一体となった、太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜であって、エチレン−極性モノマー共重合体を含む封止膜シート、及びその表面に塗工により形成された樹脂組成物からなる裏面側保護部材層を有し、且つ当該裏面側保護部材層の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠)が、2.1g/(m・day)以下であることを特徴とする太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜によって達成される。
【0016】
本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜は、封止膜シートの表面に、塗工により形成された裏面側保護部材層を有するので、特許文献1及び2で開示された裏面側保護部材兼用封止膜のように、封止膜シートが、裏面側保護部材と貼り合わせる際の加熱加圧を受けることがない。これにより、接着力等の封止膜として本来設計された性能が低下してしまう恐れを回避することができる。更に、裏面側保護部材層を上記の水蒸気透過率とすることで、太陽電池用裏面側保護部材として十分な湿熱耐久性を備えた太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜とすることができる。
【0017】
本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の好適態様は以下の通りである。
(1)前記裏面側保護部材層が、前記封止膜シートの表面に直接形成されている。これにより裏面側保護部材一体型封止膜の層構成を簡素化することができる。
(2)前記裏面側保護部材層の樹脂組成物が、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含む。これらの樹脂材料は防湿性、耐候性に優れるので、本発明における裏面側保護部材層を形成する樹脂材料として好ましい。
(3)前記フッ素樹脂が、ポリビニルフルオライド又はテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体である。これらのフッ素樹脂は、特に耐候性、機械的強度に優れるので、本発明における裏面側保護部材層を形成する樹脂材料として更に好ましい。
【0018】
また、上記目的は、太陽電池の太陽電池用素子の裏面側に配置し、太陽電池用素子を保護するための裏面側保護部材、及び太陽電池用素子を封止するための封止膜が一体となった、太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法であって、エチレン−極性モノマー共重合体を含む封止膜シートの表面に、樹脂組成物を含む塗工液を塗工することにより、樹脂組成物からなる裏面側保護部材層を形成する工程を含み、且つ当該裏面側保護部材層の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠)が、2.1g/(m・day)以下であることを特徴とする太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法によって達成される。
【0019】
本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法は、封止膜シートの表面に、樹脂組成物を含む塗工液を塗工することで樹脂組成物からなる裏面側保護部材層を形成するので、特許文献1及び2で開示された裏面側保護部材兼用封止膜のように、封止膜シートが、裏面側保護部材と貼り合わせる際の加熱加圧を受けることがない製造方法である。これにより、得られる太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜において、接着力等の封止膜として本来設計された性能が低下してしまう恐れを回避することができる。更に、裏面側保護部材層を上記の水蒸気透過率とすることで、太陽電池用裏面側保護部材として十分な湿熱耐久性を備えた太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を製造することができる。
【0020】
本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法の好適態様は以下の通りである。
(1)前記樹脂組成物を含む塗工液を、前記封止膜シートの表面に直接塗工する。これにより裏面側保護部材一体型封止膜の層構成を簡素化した裏面側保護部材一体型封止膜を製造することができる。
(2)前記塗工液に含まれる樹脂組成物が、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含む。これらの樹脂材料は防湿性、耐候性に優れるので、本発明において、裏面側保護部材層の形成に用いる樹脂材料として好ましい。
(3)前記フッ素樹脂が、ポリビニルフルオライド又はテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体である。これらのフッ素樹脂は、特に耐候性、機械的強度に優れるので、本発明において、裏面側保護部材層の形成に用いる樹脂材料として更に好ましい。
【0021】
更に、上記目的は、本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を、太陽電池用素子の裏面側に用いたことを特徴とする太陽電池によって達成される。
【0022】
本発明の太陽電池は、本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜が、太陽電池用素子の裏面側に用いられているので、製造時間の短縮により、生産コストが低減され、且つ十分な湿熱耐久性を有する太陽電池である。
【0023】
また、上記目的は、太陽電池用素子、及びその裏面側に積層された本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を層構成に含む積層体を、加熱及び加圧することにより接着一体化する工程を含む太陽電池の製造方法によって達成される。
【0024】
本発明の太陽電池の製造方法は、太陽電池用素子の裏面側に、本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を積層することで、積層工程を簡素化できるので、太陽電池の製造時間を短縮できる製造方法である。なお、本発明の太陽電池の製造方法において、積層体の層構成は、上記の構成を含んでいれば良い。例えば、表面側透明保護部材、表面側封止膜、太陽電池用素子(太陽電池用セル)、及び本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜をこの順で積層したものでも良く、透明基板の表面に形成された太陽電池用素子(薄膜太陽電池素子)、及び本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を積層したものでも良い。
【0025】
なお、本発明において、太陽電池用素子の光が照射される側(受光面側)を「表面側」と称し、太陽電池用素子の受光面とは反対面側を「裏面側」と称する。
【発明の効果】
【0026】
本発明によれば、接着力等の封止膜として本来設計された性能が低下してしまう恐れが回避された、封止性能及び湿熱耐久性に優れた太陽電池用裏面側保護材一体型封止膜が得られるので、太陽電池の製造において、太陽電池の湿熱耐久性を損なうことなく、積層工程を簡素化でき、製造時間の短縮を図ることができる。従って、本発明により、生産コストが低減され、且つ十分な湿熱耐久性を有する太陽電池を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図2】本発明の太陽電池の代表的な一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の太陽電池の別の一例を示す概略断面図である。
【図4】一般的な太陽電池の概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜について、図面を参照しながら説明する。図1は、本発明の裏面側保護部材一体型封止膜の代表的な一例を示す概略断面図である。図1に示す通り、本発明の裏面側保護部材一体型封止膜10は、エチレン−極性モノマー共重合体を含む封止膜シート13、及びその表面全域に、塗工により形成された樹脂組成物からなる裏面側保護部材層12で構成されている。一般に、塗工による樹脂組成物からなる層(塗工膜ともいう)の形成は、樹脂材料及び溶剤を含む樹脂組成物を含む塗工液を、グラビアコーター等により塗工し、乾燥して溶剤を蒸発させることで行う。従って、塗工膜である裏面側保護部材層12は、特許文献1又は2で開示された裏面側保護部材兼用封止膜のように、裏面側保護部材のフィルムを封止膜に貼りあわせる際に必要となる仮圧着における加熱加圧を受けることがない。このような加熱加圧履歴がないエチレン−極性モノマー共重合体フィルムであれば、接着力等の封止膜として本来設計された性能が低下してしまう恐れを回避することができる。
【0029】
そして、裏面側保護部材層12の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠、以下同じ)が、2.1g/(m・day)以下になっている。ここで、水蒸気透過率は、温度40℃、湿度90%RHの条件で、1mの膜が1日間で透過する水蒸気の質量を赤外線センサー法の水蒸気透過率測定装置(例えば、MOCON社製)により測定したものである。後述の実施例で示すとおり、上記の水蒸気透過率であれば、裏面側保護部材として十分な湿熱耐久性を備えた、裏面側保護部材層12とすることができる。裏面側保護部材層12の水蒸気透過率は、用いる樹脂材料や層厚によって異なるが、通常、0.1〜2.1g/(m・day)である。
【0030】
なお、裏面側保護部材層12と、封止膜シート13の間に、別の層があっても良いが、層構成の簡素化のために、裏面側保護部材層12が封止膜シート13の表面に直接形成されていることが好ましい。
【0031】
[裏面側保護部材層]
本発明において、裏面側保護部材層12の層厚Dは、裏面側保護部材層12を上記の水蒸気透過率にすることができれば、どのような層厚でも良く、樹脂材料によって適宜調整できる。層厚Dは、一般に、1mm以下であり、樹脂材料によっては、層厚Dが厚過ぎると、塗工膜の表面にうねり等の乱れが生じる場合があるため、850μm以下が好ましく、600μm以下が更に好ましい。
【0032】
裏面側保護部材層12の塗工膜を形成する塗工液の樹脂組成物に含まれる樹脂材料は、どのようなものでも良い。層厚Dを厚くし過ぎないために、防湿性が高い樹脂材料が好ましい。例えば、ポリビニルフルオライド(PVF)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレン−パーフルオロアルコキシエチレン共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTEF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)等のフッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル、ポリカーボネート(PC)、ポリメチルメアクリレート(PMMA)等の各種樹脂材料を単独、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの樹脂材料のなかでも、防湿性、耐候性に優れた、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドが好ましい。また、フッ素樹脂としては、特に耐候性、機械的強度に優れたポリビニルフルオライド(PVF)又はテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)が好ましい。
【0033】
塗工液に含まれる溶剤は、用いる樹脂材料を溶解し、均一な溶液とすることができれば、どのような溶剤でも良い。例えば、トルエン、n−ヘキサン、メチルエチルケトン(MEK)、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MCA)等の有機溶剤を用いることができる。
【0034】
[封止膜シート]
本発明において、封止膜シート13は、エチレン−極性モノマー共重合体を主成分として含んでいれば良い。封止膜シート13の厚さは、特に制限されないが、通常、50μm〜2mmの範囲である。
【0035】
[エチレン−極性モノマー共重合体]
封止膜シート13のエチレン−極性モノマー共重合体の極性モノマーは、不飽和カルボン酸、その塩、そのエステル、そのアミド、ビニルエステル、一酸化炭素等を例示することができる。より具体的には、アクリル酸、メタクリル酸、フマル酸、イタコン酸、マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、無水マレイン酸、無水イタコン酸等の不飽和カルボン酸、これら不飽和カルボン酸のリチウム、ナトリウム、カリウムなどの1価金属の塩やマグネシウム、カルシウム、亜鉛などの多価金属の塩、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソオクチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソブチル、マレイン酸ジメチル等の不飽和カルボン酸エステル、酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル、一酸化炭素、二酸化硫黄などの一種又は二種以上などを例示することができる。
【0036】
エチレン−極性モノマー共重合体として、より具体的には、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸共重合体、前記エチレン−不飽和カルボン酸共重合体のカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−アクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸エチル共重合体、エチレン−メタクリル酸メチル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル共重合体、エチレン−アクリル酸イソブチル−メタクリル酸共重合体、エチレン−アクリル酸n−ブチル−メタクリル酸共重合体のようなエチレン−不飽和カルボン酸エステル−不飽和カルボン酸共重合体及びそのカルボキシル基の一部又は全部が上記金属で中和されたアイオノマー、エチレン−酢酸ビニル共重合体のようなエチレン−ビニルエステル共重合体等を代表例として例示することができる。
【0037】
封止膜シート13のエチレン−極性モノマー共重合体としては、エチレン−酢酸ビニル共重合体(EVAとも言う)が特に好ましい。これにより、より安価であり、透明性、柔軟性に優れる封止膜シート13とすることができる。
【0038】
エチレン−酢酸ビニル共重合体における酢酸ビニルの含有量は、前記エチレン−酢酸ビニル共重合体に対して20〜35質量%、さらに22〜30質量%、特に24〜28質量%とするのが好ましい。酢酸ビニルの含有量が、20質量%未満であると、高温で架橋硬化させる場合に得られる封止膜の透明性、柔軟性が充分でない恐れがあり、35質量%を超えると、カルボン酸、アルコール、アミン等が発生し封止膜シート13と裏面側保護部材層12との界面で発泡が生じ易くなる恐れがある。
【0039】
本発明において、エチレン−極性モノマー共重合体に加えて、さらにポリビニルアセタール系樹脂(例えば、ポリビニルホルマール、ポリビニルブチラール(PVB樹脂)、変性PVB)、塩化ビニル樹脂を副次的に使用しても良い。その場合、特にPVBが好ましい。
【0040】
[架橋剤]
本発明において、封止膜シート13は、太陽電池の製造時に、通常、加熱及び加圧により、太陽電池用素子を封止するために、架橋剤を含んでいる。
【0041】
架橋剤は、エチレン−極性モノマー共重合体の架橋構造を形成することができるものである。本発明において、架橋剤は、接着力、透明性、耐湿性、耐貫通性の温度依存性が改善された封止膜が得られることから、有機過酸化物を用いるのが好ましい。
【0042】
前記有機過酸化物としては、100℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであれば、どのようなものでも使用することができる。有機過酸化物は、一般に、成膜温度、組成物の調整条件、硬化温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して選択される。特に、半減期10時間の分解温度が70℃以上のものが好ましい。
【0043】
前記有機過酸化物としては、樹脂の加工温度・貯蔵安定性の観点から例えば、ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤、tert−ヘキシルパーオキシピバレート、tert−ブチルパーオキシピバレート、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド、ジ−n−オクタノイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、スクシニックアシドパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(2−エチルヘキサノイルパーオキシ)ヘキサン、1−シクロヘキシル−1−メチルエチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、tert−ヘキシルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、4−メチルベンゾイルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、m−トルオイル+ベンゾイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−2−メチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサネート、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、2,2−ビス(4,4−ジ−tert−ブチルパーオキシシクロヘキシル)プロパン、1,1−ビス(tert−ブチルパーオキシ)シクロドデカン、tert−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシマレイックアシド、tert−ブチルパーオキシ−3,3,5−トリメチルヘキサン、tert−ブチルパーオキシラウレート、2,5−ジメチル−2,5−ジ(メチルベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、tert−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、tert−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキシルモノカーボネート、tert−ヘキシルパーオキシベンゾエート、2,5−ジ−メチル−2,5−ジ(ベンゾイルパーオキシ)ヘキサン、等が挙げられる。
【0044】
ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものであればいずれも使用可能であるが、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが好ましく、調製条件、成膜温度、硬化(貼り合わせ)温度、被着体の耐熱性、貯蔵安定性を考慮して適宜選択できる。使用可能なベンゾイルパーオキサイド系硬化剤としては、例えば、ベンゾイルパーオキサイド、2,5−ジメチルヘキシル−2,5−ビスパーオキシベンゾエート、p−クロロベンゾイルパーオキサイド、m−トルオイルパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等が挙げられる。ベンゾイルパーオキサイド系硬化剤は1種でも2種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0045】
有機過酸化物として、特に、2,5−ジメチル−2,5ジ(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン、1,1−ビス(tert−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサンが好ましい。これにより、優れた絶縁性を有する太陽電池用封止膜が得られる。
【0046】
前記有機過酸化物の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜2質量部、より好ましくは0.2〜1.5質量部であることが好ましい。前記有機過酸化物の含有量は、少ないと得られる封止膜の絶縁性が低下する恐れがあり、多くなると共重合体との相溶性が悪くなる恐れがある。
【0047】
[架橋助剤]
本発明において、封止膜シート13は、必要に応じて、さらに架橋助剤を含んでいてもよい。前記架橋助剤は、エチレン−極性モノマー共重合体のゲル分率を向上させ、封止膜の接着性及び耐久性を向上させることができる。
【0048】
前記架橋助剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して、一般に10質量部以下、好ましくは0.1〜5質量部、更に好ましくは0.1〜2.5質量部で使用される。これにより、接着性に優れる封止膜が得られる。
【0049】
前記架橋助剤(官能基としてラジカル重合性基を有する化合物)としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等の3官能の架橋助剤の他、(メタ)アクリルエステル(例、NKエステル等)の単官能又は2官能の架橋助剤等を挙げることができる。なかでも、トリアリルシアヌレートおよびトリアリルイソシアヌレートが好ましく、特にトリアリルイソシアヌレートが好ましい。
【0050】
[接着向上剤]
本発明において、封止膜シート13は、接着性能をより向上するために、接着向上剤をさらに含んでいても良い。接着向上剤としては、シランカップリング剤を用いることができる。これにより、封止膜シート13がより十分な封止性能を有することができる。前記シランカップリング剤としては、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β−(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランを挙げることができる。これらシランカップリング剤は、単独で使用しても、又は2種以上組み合わせて使用しても良い。なかでも、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランが特に好ましく挙げられる。
前記シランカップリング剤の含有量はエチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.1〜0.7質量部、特に0.15〜0.65質量部であることが好ましい。
【0051】
[その他]
本発明において、封止膜シート13は、封止膜の種々の物性(機械的強度、透明性等の光学的特性、耐熱性、耐光性、架橋速度等)の改良あるいは調整のため、必要に応じて、可塑剤、アクリロキシ基含有化合物、メタクリロキシ基含有化合物及び/又はエポキシ基含有化合物などの各種添加剤をさらに含んでいてもよい。
【0052】
可塑剤としては、特に限定されるものではないが、一般に多塩基酸のエステル、多価アルコールのエステルが使用される。その例としては、ジオクチルフタレート、ジヘキシルアジペート、トリエチレングリコール−ジ−2−エチルブチレート、ブチルセバケート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、トリエチレングリコールジペラルゴネートを挙げることができる。可塑剤は一種用いてもよく、二種以上組み合わせて使用しても良い。可塑剤の含有量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して5質量部以下の範囲が好ましい。
【0053】
アクリロキシ基含有化合物及びメタクリロキシ基含有化合物としては、一般にアクリル酸あるいはメタクリル酸誘導体であり、例えばアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルやアミドを挙げることができる。エステル残基の例としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラウリル等の直鎖状のアルキル基、シクロヘキシル基、テトラヒドルフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプオピル基を挙げることができる。アミドの例としては、ジアセトンアクリルアミドを挙げることができる。また、エチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多価アルコールとアクリル酸あるいはメタクリル酸のエステルも挙げることができる。
【0054】
エポキシ含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノール(エチレンオキシ)5グリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテルを挙げることができる。
【0055】
前記アクリロキシ基含有化合物、前記メタクリロキシ基含有化合物、または前記エポキシ基含有化合物は、それぞれエチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対してそれぞれ一般に0.5〜5.0質量部、特に1.0〜4.0質量部含まれていることが好ましい。
【0056】
更に、本発明において、封止膜シート13Bbは、紫外線吸収剤、光安定剤および老化防止剤を含んでいてもよい。紫外線吸収剤を含むことにより、照射された光などの影響によってエチレン−極性モノマー共重合体が劣化し、太陽電池用封止膜が黄変するのを抑制することができる。紫外線吸収剤としては、特に制限されないが、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−ドデシロキシベンゾフェノン、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2'−ジヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤が好ましく挙げられる。なお、上記ベンゾフェノン系紫外線吸収剤の配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0057】
また、光安定剤を含むことによっても、照射された光などの影響によってエチレン−極性モノマー共重合体の劣化し、太陽電池用封止膜が黄変するのを抑制することができる。光安定剤としてはヒンダードアミン系と呼ばれる光安定剤を用いることが好ましく、例えば、LA−52、LA−57、LA−62、LA−63LA−63p、LA−67、LA−68(いずれも(株)ADEKA製)、Tinuvin744、Tinuvin 770、Tinuvin 765、Tinuvin144、Tinuvin 622LD、CHIMASSORB 944LD(いずれもチバ・スペシャリティ・ケミカルズ(株)社製)、UV−3034(B.F.グッドリッチ社製)等を挙げることができる。なお、上記光安定剤は、単独で使用しても、2種以上組み合わせて用いてもよく、その配合量は、エチレン−極性モノマー共重合体100質量部に対して0.01〜5質量部であることが好ましい。
【0058】
老化防止剤としては、例えばN,N’−ヘキサン−1,6−ジイルビス〔3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオナミド〕等のヒンダードフェノール系酸化防止剤、リン系熱安定剤、ラクトン系熱安定剤、ビタミンE系熱安定剤、イオウ系熱安定剤等が挙げられる。
【0059】
[裏面側保護材一体型封止膜の製造方法]
上述した本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を製造するには、公知の方法に準じて行えばよい。例えば、まず、封止膜シート13のエチレン−極性モノマーを主成分とする組成物の材料を、それぞれスーパーミキサー(高速流動混合機)、ロールミル等を用いて公知の方法で混合し、通常の押出成形、又はカレンダ成形(カレンダリング)等により成形してシート状物を得るか、又は、前記組成物を溶剤に溶解させ、この溶液をダイコーター等のコーターで適当な支持体上に塗工、乾燥して塗膜を形成することによりシート状物を得る。封止膜シート13を形成する際の温度は、架橋剤が反応しない或いはほとんど反応しない温度とすることが好ましい。例えば、40〜90℃、特に40〜80℃とするのが好ましい。
【0060】
次いで、裏面側保護部材層12の塗工膜を形成するため、公知の方法で、上述した樹脂材料を溶剤に溶解し、均一な溶液とした塗工液を調製する。これを、グラビアコーター、ダイコーター、リバースロールコーター、ロールナイフコーター(コンマコーターともいう)等のコーターを用いて、封止膜シート13表面に塗工する。この際、使用する樹脂材料の防湿性能を考慮し、形成される裏面側保護部材層12の塗工膜の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠)が、2.1g/(m・day)以下になるような、層厚Dの塗工膜が形成されるように塗工厚を調整する。塗工後、公知の方法で乾燥することで溶剤を蒸発させ、塗工膜を形成する。この際、乾燥時に封止膜シート13が加熱されることで、接着力等の封止膜として本来設計された性能が低下してしまうようなことがないように、低温で乾燥することが好ましい。従って、乾燥温度は、20〜80℃が好ましく、更に20〜60℃が好ましい。
【0061】
なお、裏面側保護部材層12と、封止膜シート13の間に、別の塗工膜を形成しても良いが、層構成の簡素化のために、裏面側保護部材層12は、封止膜シート13の表面に直接形成することが好ましい。
【0062】
裏面側保護部材一体型封止膜10の厚さは、裏面側保護部材層12に用いる樹脂材料によっても異なるが、通常、100μm〜3mmの範囲である。
【0063】
[太陽電池]
本発明の太陽電池の構造としては、少なくとも本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を、太陽電池用素子(単結晶又は多結晶のシリコン結晶系の太陽電池用セルや薄膜太陽電池用発電素子を含む)の裏面側に用いていれば、特に制限されない。例えば、表面側透明保護部材、表面側封止膜、太陽電池用素子(太陽電池用セル)、及び本発明の裏面側保護部材一体型封止膜をこの順で積層し、架橋一体化した構造や、透明基板、その表面に形成された太陽電池用素子(薄膜太陽電池素子)、及び本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を積層し、架橋一体化した薄膜太陽電池の構造等が挙げられる。
【0064】
これらの太陽電池において、太陽電池用素子を十分に封止するには、例えば、図2に示すように、表面側透明保護部材21、表面側封止膜23、太陽電池用セル24、及び本発明の裏面側保護部材一体型封止膜10を積層し、加熱加圧など常法に従って、表面側封止膜23及び封止膜シート13を架橋硬化させればよい。表面側封止膜23としては、公知の太陽電池用封止膜を使用することができる。通常、エチレン−極性モノマー共重合体を主成分とする封止膜を用いる。
【0065】
前記加熱加圧するには、例えば、前記積層体を、真空ラミネーターで温度135〜180℃、さらに140〜180℃、特に155〜180℃、脱気時間0.1〜5分、プレス圧力0.1〜1.5kg/cm2、プレス時間5〜15分で加熱圧着すればよい。この加熱加圧時に、表面側封止膜23及び裏面側保護部材一体型封止膜10の封止膜シート13に含まれるエチレン−極性モノマー共重合体を架橋させることにより、表面側透明保護部材21、表面側封止膜23、太陽電池用セル24、及び裏面側保護部材一体型封止膜10を一体化させて、太陽電池用セル24を封止することができる。
【0066】
表面側透明保護部材11としては、通常珪酸塩ガラスなどのガラス基板であるのがよい。ガラス基板の厚さは、0.1〜10mmが一般的であり、0.3〜5mmが好ましい。ガラス基板は、一般に、化学的に、或いは熱的に強化させたものであってもよい。
【0067】
また、薄膜太陽電池としては、薄膜シリコン系、薄膜アモルファスシリコン系太陽電池、セレン化銅インジウム(CIS)系太陽電池等が挙げられる。その場合、図3に示すように、表面側透明保護部材31の表面に、化学気相蒸着法等により薄膜太陽電池素子層34を形成し、その表面に本発明の裏面側保護部材一体型封止膜10を積層し、上述と同様に加熱加圧など常法に従って、封止膜シート13を架橋硬化することで薄膜太陽電池素子層34を封止することができる。
【0068】
薄膜太陽電池の表面側透明保護部材31としては、ガラス基板、ポリイミド基板、フッ素樹脂系透明基板等が挙げられる。また、薄膜太陽電池において、薄膜太陽電池用素子は、表面側透明保護部材に直接形成されていなくても良く、表面側透明保護部材、表面側封止膜、薄膜太陽電池素子、本発明の裏面側保護部材一体型封止膜をこの順で積層し、接着一体化させた構造でも良い。
【0069】
本発明の太陽電池は、本発明の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を用いているので、従来の封止膜を用いた場合より、積層工程を簡素化することで製造時間が短縮されており、且つ接着力等の封止膜として本来設計された性能が低下してしまう恐れも回避されている。従って、生産コストが低減され、且つ十分な湿熱耐久性を有する太陽電池である。
【0070】
なお、本発明の太陽電池(薄膜太陽電池を含む)は、上述した通り、裏面側保護部材一体型封止膜を用いたことに特徴を有する。したがって、表面側透明保護部材、表面側封止膜及び太陽電池用素子などの裏面側保護部材一体型封止膜以外の部材については、従来公知の太陽電池と同様の構成を有していればよく、特に制限されない。
【実施例】
【0071】
以下、本発明を実施例により説明する。
【0072】
1.裏面側保護部材一体型封止膜の作製
(1)封止膜シートの作製
下記の配合の封止シート組成物の材料を、ロールミルに供給し、70℃で、混練して太陽電池用封止膜用組成物を調製した。前記太陽電池用封止膜用組成物を、70℃で、カレンダ成形し、放冷後、封止膜シート(厚さ0.6mm)を作製した。
(配合)
EVA(EVAにおける酢酸ビニル含有率26質量%):100質量部、
架橋剤(2,5−ジメチル−2,5−ビス(tert−ブチルパーオキシ)ヘキサン):1.0質量部、
架橋助剤(トリアリルイソシアヌネート):2.0質量部
接着向上剤(γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン):0.15質量部
【0073】
(2)裏面側保護部材層の形成
下記配合A〜Dの樹脂組成物の材料を、それぞれ良く混合し、裏面側保護部材層用の塗工液を調製した。これを上記の封止膜シート表面に、グラビアコーターを用いて乾燥後に形成される塗工膜が、表1に示した厚さになるように塗工厚を調整して塗工した。その後、25℃、6分間乾燥し、塗工膜からなる裏面側保護部材層を形成した。これにより、実施例1〜10及び比較例1〜2の裏面側保護部材一体型封止膜を作製した。
(配合A)
樹脂材料(ポリビニルフルオライド(PVF)):100質量部
溶剤(メチルエチルケトン(MEK)/エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MCA)の混合物):10質量部
(配合B)
樹脂材料(テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)):100質量部
溶剤(メチルエチルケトン(MEK)/エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MCA)の混合物):10質量部
(配合C)
樹脂材料(ポリ塩化ビニリデン(PVDC)):100質量部
溶剤(メチルエチルケトン(MEK)/エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MCA)の混合物):10質量部
(配合D)
樹脂材料(ポリエーテルイミド(PEI)):100質量部
溶剤(メチルエチルケトン(MEK)/エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート(MCA)の混合物):10質量部
【0074】
2.太陽電池サンプルの作製
上記1.(1)で作製した封止膜シートを表面側封止膜として用い、表面側透明保護部材(FLガラス板(厚さ;3mm))、表面側封止膜、太陽電池用セル、実施例1〜10及び比較例1〜2の裏面側保護部材一体型封止膜をこの順で積層し、真空ラミネーターにて90℃で仮圧着した後、オーブンで155℃、30分で加熱し、ゲル化分率90%以上まで架橋させた(図2参照)。
【0075】
また、比較例3では、上記1.(1)で作製した封止膜シートを表面側封止膜、及び裏面側封止膜として用い、表面側透明保護部材(FLガラス(厚さ3mm))、表面側封止膜、太陽電池用セル、裏面側封止膜、裏面側保護部材(PVF/PET/PVFの積層フィルム(厚さ350μm))をこの順で積層し、真空ラミネーターにて90℃で仮圧着した後、オーブンで155℃、30分で加熱し、ゲル化分率90%以上まで架橋させた(図4参照)。
【0076】
3.評価方法
(1)水蒸気透過率
裏面側保護部材層の水蒸気透過率は、JIS−K7129B法準拠し、温度40℃、湿度90%RHの条件で、1mの膜が1日間で透過する水蒸気の質量を測定した。
(2)塗工性
裏面側保護部材一体型封止膜を作製する際、裏面側保護部材層の塗工膜の表面状態(うねり等表面の乱れの有無)を目視評価した。表面状態が平滑で問題が無いものを○、ややうねりが認められるが、使用上問題ないものを△、うねりが大きく、使用できないものを×とした。
(3)湿熱耐久性
各太陽電池サンプルを、温度85℃、湿度85%RH、2000時間放置した後、裏面側保護部材層の剥離が無いか確認した。剥離が無い場合を○、剥離が認められた場合を×とした。
(4)積層ハンドリング時間
裏面側保護部材一体型封止膜(比較例3は封止膜、裏面側保護部材)を取り出してから、裁断し、配置した太陽電池用セルに積層するまでの時間(秒)を測定した。
【0077】
4.評価結果
評価結果を表1に示す。
【0078】
【表1】

【0079】
表1に示したように、水蒸気透過率が2.1g/(m・day)以下の裏面側保護部材層を有する実施例1〜10の裏面側保護部材一体型封止膜を用いた太陽電池サンプルは、既存の構成の太陽電池である比較例3と同様に、十分な湿熱耐久性を示すことが認められた。そして、これらの裏面側保護部材一体型封止膜を用いることで、既存の構成の太陽電池より、積層ハンドリング時間を短縮することができることが認められた。
【0080】
なお、本発明は上記の実施の形態の構成及び実施例に限定されるものではなく、発明の要旨の範囲内で種々変形が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明により、生産コストが低減され、且つ十分な湿熱耐久性を有する太陽電池を提供することができる。
【符号の説明】
【0082】
10 裏面側保護部材一体型封止膜
12 裏面側保護部材層
13 封止膜シート
21、31、41 表面側透明保護部材
23、43A 表面側封止膜
24、44 太陽電池用セル
34 薄膜太陽電池素子
42 裏面側保護部材
43B 裏面側封止膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
太陽電池の太陽電池用素子の裏面側に配置し、太陽電池用素子を保護するための裏面側保護部材、及び太陽電池用素子を封止するための封止膜が一体となった、太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜であって、
エチレン−極性モノマー共重合体を含む封止膜シート、及びその表面に塗工により形成された樹脂組成物からなる裏面側保護部材層を有し、且つ
当該裏面側保護部材層の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠)が、2.1g/(m・day)以下であることを特徴とする太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜。
【請求項2】
前記裏面側保護部材層が、前記封止膜シートの表面に直接形成されている請求項1に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜。
【請求項3】
前記裏面側保護部材層の樹脂組成物が、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含む請求項1又は2に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜。
【請求項4】
前記フッ素樹脂が、ポリビニルフルオライド又はテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体である請求項3に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜。
【請求項5】
太陽電池の太陽電池用素子の裏面側に配置し、太陽電池用素子を保護するための裏面側保護部材、及び太陽電池用素子を封止するための封止膜が一体となった、太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法であって、
エチレン−極性モノマー共重合体を含む封止膜シートの表面に、樹脂組成物を含む塗工液を塗工することにより、樹脂組成物からなる裏面側保護部材層を形成する工程を含み、且つ
当該裏面側保護部材層の水蒸気透過率(JIS−K7129B法準拠)が、2.1g/(m・day)以下であることを特徴とする太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法。
【請求項6】
前記樹脂組成物を含む塗工液を、前記封止膜シートの表面に直接塗工する請求項5に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法。
【請求項7】
前記塗工液に含まれる樹脂組成物が、フッ素樹脂、ポリ塩化ビニリデン、及びポリエーテルイミドからなる群から選択される少なくとも1種の樹脂材料を含む請求項5又は6に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法。
【請求項8】
前記フッ素樹脂が、ポリビニルフルオライド又はテトラフルオロエチレン−エチレン共重合体である請求項7に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を、太陽電池用素子の裏面側に用いたことを特徴とする太陽電池。
【請求項10】
太陽電池用素子、及びその裏面側に積層された請求項1〜4のいずれか1項に記載の太陽電池用裏面側保護部材一体型封止膜を層構成に含む積層体を、加熱及び加圧することにより接着一体化する工程を含む太陽電池の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−151399(P2012−151399A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−10686(P2011−10686)
【出願日】平成23年1月21日(2011.1.21)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】