説明

太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム

【課題】高温高湿度下での耐久性、接着性に優れた太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを提供する。
【解決手段】平均粒径が0.1〜3μmの微粒子を3〜50質量%含有した白色ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に非晶性ポリエステル樹脂を主成分とした厚さ1.0〜40μmの熱接着層を有し、酸価が1〜40eq/ton,白色度が50以上,厚さ38〜1000μmである太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムに関する。特にEVA樹脂との接着性に優れた太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
石油燃料に由来しないエネルギーを利用して電力を得ることのできる太陽電池は、環境保護の面からその要求が高まっている。太陽電池モジュールは、一般的には、受光側のガラス基板と、裏面保護膜との間に、複数の板状太陽電池素子を挟み、内部の隙間にエチレン−酢酸ビニル共重合体(以下、EVA樹脂という)などの封止樹脂を充填した構造をとる。
【0003】
太陽電池裏面保護膜の基材としては、優れた機械的性質、耐熱性、耐湿性を有するプラスチックフィルムが用いられる。例えば、ポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた裏面保護膜が提案されている(特許文献1、2)。そして、太陽電池の発電効率を高める目的で、白色フィルムを裏面保護膜に用いることも提案されている(特許文献3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−26354号公報
【特許文献2】特開2003−60218号公報
【特許文献3】特開2009−147063号公報
【特許文献4】特開2008−4839号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
太陽電池裏面保護膜の基材に白色ポリエステルフィルムを用いることにより、太陽光を反射させ、発電効率を上げることが可能である。白色ポリエステルフィルムはポリエステル樹脂に対し微粒子を多量に添加する必要がある。そのため、それら微粒子の樹脂への分散性や混合状態を良好にするため、二種類以上の材料を予備混合した原料を作製することや、通常の押出工程でも溶融時間を長くとることなどが行われるため樹脂が劣化しやすくなりやすい。よって、高温高湿度下において太陽電池として使用する場合に、耐久性に乏しいことが問題であった。そのため、従来、特許文献4のように白色層と耐久性を有する層とは別々の機能層として積層シートを作成することが一般的であり、これらを両立させることは困難であった。さらに、それらを太陽電池モジュールとする場合には、EVA樹脂との接着性を併せてもつことが必要となる。
【0006】
本発明は、高温高湿度下における耐久性及びEVA樹脂との接着性に優れた太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記のような状況に鑑みなされたものであって、上記の課題を解決することができた太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムとは、以下の構成よりなる。
1.平均粒径が0.1〜3μmの微粒子を3〜50質量%含有し、酸価が1〜40eq/tonであり、白色度が50以上である厚さ38〜1000μmの白色ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に非晶性ポリエステル樹脂を主成分とする厚さ1.0〜40μmの熱接着層を有することを特徴とする太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
2.白色ポリエステルフィルム基材が、内部に微細な空洞を多数有し、見かけ比重が0.7〜1.3であることを特徴とする前記太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
3.白色ポリエステルフィルム基材が、非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞を多数含有することを特徴とする前記太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
4.酸価が0.1〜30eq/tonであるポリエステル樹脂を白色ポリエステルフィルム基材の原料として使用することを特徴とする前記太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
5. 酸価が1〜40eq/tonである白色顔料マスターバッチを白色ポリエステルフィルム基材の原料として使用することを特徴とする前記太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
【発明の効果】
【0008】
本願発明は、光反射効率及び高温高湿度下での優れた耐久性、EVA樹脂との良好な接着性を有する。よって、太陽電池、特に薄膜シリコン太陽電池において有用である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムは、平均粒径が0.1〜3μmの微粒子を3〜50質量%含有し、酸価が1〜40eq/tonであり、白色度が50以上である厚さ38〜1000μmの白色ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に非晶性ポリエステル樹脂を主成分とする厚さ1.0〜40μmの熱接着層を有する。
本発明における白色ポリエステルフィルム基材は、上記構成によって反射効率及び高温高湿度下での耐湿性が優れている。また、熱接着層は上記構成によってEVA樹脂との接着性が優れている。
【0010】
(白色ポリエステルフィルム基材)
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材におけるポリエステルとは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸のごとき芳香族ジカルボン酸又はそのエステルとエチレングリコール、ジエチレングリコール、1、4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコールのごときグリコールとを重縮合させて製造されるポリエステルである。これらのポリエステルは芳香族ジカルボン酸とグリコールとを直接反応させる方法のほか、芳香族ジカルボン酸のアルキルエステルとグリコールとをエステル交換反応させた後重縮合させるか、あるいは芳香族ジカルボン酸のジグリコールエステルを重縮合させるなどの方法によって製造することができる。かかるポリエステルの代表例としてはポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンブチレンテレフタレートあるいはポリエチレン−2、6−ナフタレートなどが挙げられる。このポリエステルはホモポリマーであってもよく、第三成分を共重合したものであっても良い。いずれにしても本発明においては、エチレンテレフタレート単位、ブチレンテレフタレート単位あるいはエチレン−2、6−ナフタレート単位が60モル%以上、好ましくは70モル%以上、更に好ましくは90モル%以上であるポリエステルが好ましい。
【0011】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材は、白色度が50以上の白色ポリエステルフィルムである。この白色度が高いほど太陽光線の反射率が高いため、太陽電池モジュールとして用いた際の発電効率のために白色度は50以上であることが必要であり、60以上が好ましく,80以上がより好ましい。
【0012】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材は、厚さ38〜1000μmの白色ポリエステルフィルムであることが必要であり、50〜250μmであることが好ましく、75〜188μmであることがより好ましい。基材の厚さが38μmに満たない場合には支持体としての剛性が不十分となり、また1000μmを超える場合には断裁などの加工が難しくなるため好ましくない。
【0013】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材は、白色度を50以上にするために上記ポリエステルを主成分として平均粒径が0.1〜3μmの微粒子をフィルム全質量に対して、3〜50質量%、好ましくは4〜25質量%を含む。微粒子の平均粒径が0.1〜3μmの範囲でないと、添加量を上げていってもフィルムの白色度を50以上とすることが困難となる。また、微粒子の含有量が3質量%未満では、白色度を50以上とすることが困難となる。50質量%を超えるとフィルム重量が大きくなり、加工などでの取り扱いが困難になる。
【0014】
また本発明では白色度を向上させるため、熱接着層に上記の微粒子を含有させることも可能である。但し、熱接着層に微粒子を添加する場合には白色度の向上効果と熱接着性を両立させることが肝要であり、熱接着層に添加する微粒子は当該層の1〜50質量%にすることが好ましく、5〜30質量%に止めることがより好ましい。
【0015】
なお、本発明おいて微粒子の平均粒径は電子顕微鏡法により求める。具体的には、以下の方法による。微粒子を走査型電子顕微鏡で観察し、粒子の大きさに応じて適宜倍率を変え、写真撮影したものを拡大コピーする。次いで、ランダムに選んだ少なくとも100個以上の微粒子について、各粒子の外周をトレースする。画像解析装置にてこれらのトレース像から粒子の円相当径を測定し、それらの平均値を平均粒径とする。
【0016】
本発明で白色ポリエステルフィルム基材に含有させる微粒子としては、無機又は有機の微粒子を用いることができる。これら微粒子としては、シリカ、カオリナイト、タルク、炭酸カルシウム、ゼオライト、アルミナ、硫酸バリウム、カーボンブラック、酸化亜鉛、酸化チタン、硫化亜鉛、有機白色顔料等が例示されるが特に限定されるものではない。白色度の向上の点と生産性の点からは、白色顔料すなわち酸化チタン又は硫酸バリウムが好ましく、酸化チタンがより好ましい。なお、酸化チタンはアナターゼ型、ルチル型の何れでもよいが、耐候性向上の観点からルチル型がより好ましい。また、微粒子表面にアルミナやシリカ等の無機表面処理を施してもよいし、シリコーン系あるいはアルコール系等の有機表面処理を施してもよい。
【0017】
フィルム中への微粒子の添加は公知の方法を用いることで可能であるが、事前にポリエステル樹脂と微粒子を押出機で混合しておくマスターバッチ法(MB法)が好ましい。MBを製造するにあたっては製造時の加水分解を抑制するため、事前に乾燥させていないポリエステル樹脂と微粒子を押出機に投入し、水分や空気などを脱気しながらMBを作製する方法を採用することができる。さらに好ましくは、事前に乾燥したポリエステル樹脂を用いてMBを作製することにより、ポリエステル樹脂の酸価上昇を抑えることができる。ポリエステル樹脂を乾燥して用いる場合には、その水分率を1000ppm以下にすることが好ましく、100ppm以下にすることがより好ましい。
【0018】
例えば、MBを作製する場合は投入するポリエステル樹脂はあらかじめ乾燥により水分率を低減させることが好ましい。乾燥条件としては、好ましくは100〜200℃、より好ましくは120〜180℃において、1時間以上、より好ましくは3時間以上、さらに好ましくは6時間以上乾燥する。これにより、ポリエステル樹脂の水分量を好ましくは50ppm以下、より好ましくは30ppm以下になるように十分乾燥する。予備混合を方法は特に限定せず、バッチによる方法でもよいし、単軸もしくは二軸以上の混練押出機によっても良い。脱気しながらMBを作製する場合は、250℃〜300℃、好ましくは270℃〜280℃の温度でポリエステル樹脂を融解し、予備混練機に一つ、好ましくは2以上の脱気口を設け、0.05MPa以上、より好ましくは0.1MPa以上の連続吸引脱気を行い、混合機内の減圧を維持すること等の方法を採用することが好ましい。
【0019】
何れの方法において製造するマスターバッチにおいても、本発明の白色ポリエステルフィルム基材に用いるにおいては、その酸価が1〜40eq/tonであることが好ましく、3〜35eq/tonであることがより好ましく、5〜30eq/tonであることが更に好ましい。酸価が1eq/ton未満のMBは工業生産が困難であり、酸価が40eq/tonを超えるものを用いることは、ポリエステルフィルム基材の酸価を上昇させる要因となるため好ましくない。
【0020】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材は、内部に微細な空洞を多数含有してもよい。これにより、より高い白色度を好適に得ることができる。その場合の見かけ比重は0.7以上1.3以下、好ましくは0.9以上1.3以下、より好ましくは1.05以上1.2以下である。0.7未満では、フィルムに腰がなく太陽電池モジュール作製時の加工が困難になる。1.3を越えるフィルムであってもよいが、1.3を越えた場合にはフィルム重量が大きいため太陽電池の軽量化を検討する場合の障害となる可能性がある。
【0021】
上記の微細な空洞は、前記微粒子及び/もしくは後述のポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂に由来して形成することができる。なお、微粒子もしくはポリエステルに非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞とは前記微粒子もしくは前記熱可塑性樹脂のまわりに空洞が存在することを言い、例えばフィルムの電子顕微鏡による断面写真などで確認することができる。
【0022】
上記の非相溶の熱可塑性樹脂としては、ポリエステルに非相溶性のものであれば特に制限されるものではない。具体的には、ポリスチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリアクリル系樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリスルホン系樹脂、セルロース系樹脂などがあげられる。特にポリスチレン系樹脂あるいはポリメチルペンテン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系樹脂が好んで用いられる。
【0023】
これらの空洞形成剤、すなわちポリエステル樹脂に非相溶な熱可塑性樹脂のポリエステルに対する混合量は、目的とする空洞の量によって異なってくるが、フィルム全体に対して3〜20質量%の範囲とすることが好ましく、更には5〜18質量%が好ましい。そして、3質量%未満では、空洞の生成量を多くすることに限界がある。逆に、20質量%以上では、フィルムの延伸性が著しく損なわれ、また耐熱性や強度、腰の強さが損なわれるため好ましくない。
【0024】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材の酸価は、1〜40eq/tonである。好ましくは5〜30eq/ton、より好ましくは5〜20eq/tonである。40(eq/ton)を超えると、耐加水分解性の良好なフィルムが得られない。1(eq/ton)未満のフィルムは、工業的には作製が難しい。本発明では、従来困難であった白色度と耐久性との両立を図るものである。よって、本発明では高濃度の粒子を含有しながら、上記酸価を達成しうることが特徴である。
【0025】
上記の範囲の酸価の白色ポリエステルフィルム基材を得るため、原料のポリエステル樹脂の酸価は、0.1〜30eq/tonであることが好ましく、より好ましくは1〜20eq/ton、さらに好ましくは3〜10eq/tonである。30eq/tonを超えると、耐加水分解性の良好なフィルムが得るのが難しくなる。0.1(eq/ton)未満のポリエステル樹脂は、工業的には作製が難しい。
【0026】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材は、耐加水分解性の指標である破断伸び保持率が30%以上、好ましくは50%以上、より好ましくは70%以上である。30%未満では太陽電池裏面保護膜としての耐久性が低くなるため使用できない。
【0027】
本発明に使用する白色ポリエステルフィルム基材は、単層又は二層以上の複層からなる積層構成のいずれであっても構わない。積層構成としては、平均粒径が0.1〜3μmの微粒子に由来する空洞を多数含有するポリエステル層からなるスキン層と、ポリエステルに粒子および/もしくは非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞を多数含有するポリエステル層からなるコア層とを有することも本発明の好ましい態様である。その製造方法は任意であり、特に制限されるものではないが、スキン層をフィルム表面に接合する方法としては、微粒子を含有するスキン層のポリエステル樹脂と、非相溶の熱可塑性樹脂を含有するコア層のポリエステル樹脂を別々の押出機に供給した後、溶融状態で積層して同一のダイから押し出す共押出法を採用する方法が好ましい方法として挙げられる。
【0028】
コア層およびスキン層に粒子を添加する場合、スキン層の粒子含有量を多くすることは、フィルム表面において高い光反射を奏する点からも好ましい。この場合、スキン層の粒子の濃度は好ましくは5〜50質量%であり、さらに好ましくは8〜30質量%である。また、スキン層の粒子の濃度は好ましくは1〜15質量%、より好ましくは3〜10質量%である。
【0029】
それぞれの原料を混合し押出機に投入し、溶融し、T−ダイより押し出しし、冷却ロールに密着することで未延伸シートが得られる。未延伸シートは、更に速度差をもったロール間での延伸(ロール延伸)やクリップに把持して拡げていくことによる延伸(テンター延伸)や空気圧によって拡げることによる延伸(インフレーション延伸)などによって二軸配向処理される。配向処理することにより、ポリエステル/非相溶性熱可塑性樹脂間及びポリエステル/微粒子間で界面剥離を生じ、微細空洞が多数発現する。従って、未延伸シートを延伸・配向処理する条件は、空洞の生成と密接に関係する。
【0030】
まず、第1段の縦延伸工程は、フィルム内部に微細な空洞を多数形成するために最も重要なプロセスである。縦延伸は、周速が異なる2本あるいは多数本のロール間で延伸する。このときの加熱手段としては、加熱ロールを用いる方法でも非接触の加熱方法を用いる方法でもよく、それらを併用してもよい。この中で最も好ましい延伸方法としては、ロール加熱と非接触加熱を併用する方法があげられる。この場合、まず加熱ロールを用いてフィルムを50℃〜ポリエステルのガラス転移点以下の温度に予備加熱した後、赤外線ヒータで加熱する。
【0031】
次いで、このようにして得られた1軸延伸フィルムをテンターに導入し、幅方向に2.5〜5倍に延伸する。このときの好ましい延伸温度は、100℃〜200℃である。このようにして得られた二軸延伸フィルムに対し、必要に応じて熱処理を施す。熱処理はテンター中で行うのが好ましく、ポリエステルの融点Tm−50℃〜Tmの範囲で行うのが好ましい。
【0032】
(熱接着層)
本発明においては、EVA樹脂との接着性を改良するために、白色ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に非晶性ポリエステル樹脂を主成分とする熱接着層を積層する。ここでいう「主成分」とは、非晶性ポリエステル樹脂が熱接着層全体の質量に対して50質量%以上であることである。また、ここでいう熱接着層とは、加熱条件下においてEVA樹脂と熱接着が可能な層である。この熱接着層を白色ポリエステルフィルム基材に積層することで、接着剤の層を設けずともEVA樹脂に接着することができる。この熱接着層の厚みは一層あたり1〜40μmとすることが重要である。熱接着層の厚みが1μm未満の場合、熱接着性や表面強度が不十分となる。一方、熱接着層の厚みが40μmを超える場合には、線膨張係数や熱収縮率が大きくなどして耐熱性が低下する。なお、熱接着層の厚みは上記の理由から、3〜30μmが好ましく、5〜25μmがより好ましく、10〜20μmが特に好ましい。
【0033】
熱接着層を白色ポリエステルフィルム基材の表面に設ける手段は特に限定されないが、溶融押出工程で二種類の樹脂を共押出しして積層させる方法、いわゆる共押出し法を用いて未延伸シートを製造することが好ましい。また、熱接着層に適度の耐熱性を付与する観点からも延伸工程以前において積層し、熱接着層と基材層を共に延伸加工することが好ましい。
【0034】
また、本発明においては、白色ポリエステルフィルム基材の両面に熱接着層を設けることが、フィルムのカールを抑制する点から好ましい。本発明における熱接着層は主として非晶性ポリエステル樹脂から構成され、結晶性ポリエステル樹脂を主体とする基材層とは熱膨張係数が大きく異なる。このため、基材の片面のみに熱接着層を設けた場合、加工条件や使用条件によってはバイメタルのようにカールする場合があり、平面性やハンドリング性の不良が懸念される。基材の両面に熱接着層を設ける場合、表裏の熱接着層の厚み比率は0.5〜2.0であることが好ましい。この範囲を外れる場合には、上記の理由によってカールが発生する場合がある。なお、カールが発生した場合においても、無荷重の状態で110℃、30分間の加熱処理をした後のカール値が5mm以下であればハンドリング性に実質的な支障は生じないが、カール値を3mm以下とすることが好ましく、1mm以下とすることがより好ましい。
【0035】
本発明における熱接着層は、非晶性ポリエステル樹脂を当該層の50質量%以上を占める主たる構成成分とすることが重要である。ここでいう非晶性ポリエステル樹脂とは、融解熱量が20J/g以下のポリエステル樹脂である。この融解熱量とはJIS−K7122に記載の「プラスチックの転移熱測定方法」にしたがい、DSC装置を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の速度で加熱して測定される。本発明において、前記の融解熱量は10J/g以下が好ましく、5J/g以下がより好ましい。融解熱量が20J/gを超える場合には、熱接着性が十分に得られない。
【0036】
また、非晶性ポリエステル樹脂は、ガラス転移温度が50℃以上かつ100℃以下であることが好ましい。このガラス転移温度とはJIS−K7121に記載の「プラスチックの転移温度測定方法」にしたがい、DSC装置を用いて、窒素雰囲気下、10℃/分の速度で加熱し、得られたDSC曲線をもとに求められる中間点ガラス転移温度(Tmg)を意味する。非晶性ポリエステル樹脂Aのガラス転移温度は60〜90℃が好ましく、70〜85℃がより好ましい。ガラス転移温度が50℃未満の場合には、耐熱性が不足して変形したり、使用中の温度上昇によって熱接着層が再剥離したりする。一方、ガラス転移温度が100℃を超える場合には、太陽電池パネルを製造する際により高い温度で加熱する必要が生じるため、電気回路などへの負担が大きくなる。
【0037】
非晶性ポリエステル樹脂の種類は特に限定されないが、汎用性やコスト、耐久性あるいは熱接着性の観点から、芳香族ポリエステル樹脂の分子骨格に種々の共重合成分を導入したものが好ましい。導入する共重合成分のうち、グリコール成分としてはエチレングリコールやジエチレングリコール,ネオペンチルグリコール(NPG),シクロヘキサンジメタノール(CHDM),プロパンジオール、ブタンジオールなどが、酸成分としてはテレフタル酸やイソフタル酸,ナフタレンジカルボン酸などが好ましく用いられる。特にポリエチレンテレフタレート樹脂の分子骨格にイソフタル酸、CHDM及び/又はNPGを導入した共重合ポリエステル樹脂が加工性の観点から好ましく、NPGを導入したものがより好ましい。
【0038】
本発明における熱接着層には、非晶性ポリエステル樹脂と非相溶な熱可塑性樹脂を含有させることが好ましい。これにより非晶性ポリエステル樹脂と該熱可塑性樹脂は、熱接着層で相分離構造を形成し、この構造に起因して形成されるフィルム表面突起によってフィルムの滑り性を改善することができる。
【0039】
非晶性ポリエステル樹脂と非相溶な熱可塑性樹脂としては、特に限定されないが、汎用性の高い樹脂として、ポリスチレンやポリカーボネート、アクリル、環状ポリオレフィンやその共重合体,ポリプロピレンやポリエチレンなどの結晶性ポリオレフィンやその共重合体などが挙げられる。中でも加工適性と熱接着性に優れる点から、ポリスチレンやポリオレフィン又はその共重合体が好ましく、ポリスチレンやポリプロピレン,ポリエチレンがより好ましい。
【0040】
本発明において、熱接着層に含有させる上記の熱可塑性樹脂の量は、熱接着層を構成する材料に対して、1〜30質量%である。3〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。上記熱可塑性樹脂の含有量が1質量%未満の場合には、必要な滑り性が得られなくなる。30質量%を超える場合には、熱接着性が阻害される。
【0041】
本発明において、熱接着性を阻害しない範囲で熱接着層に前記の微粒子を含有させることは、好ましい実施形態の一つである。微粒子の中でも白色顔料すなわち酸化チタンまたは硫酸バリウム及びこれらの複合粒子が好ましく、隠蔽効果の観点からは酸化チタンを用いることがより好ましい。これらの白色顔料は、熱接着層において30質量%以下の範囲で含有させることが好ましく、15質量%以下とすることがより好ましい。上記の範囲を超えて添加した場合には、熱接着性が阻害される場合がある。
【0042】
(被覆層)
本発明においては、EVA樹脂との接着性を改良のために、熱接着層の表面に更に被覆層を積層することも好ましい。被覆層を構成する樹脂としては、ポリエステル樹脂、ポリウレタン樹脂及び/又はポリアクリル樹脂の少なくとも1種類を主成分とすることが好ましい。ここで、「主成分」とは被覆層を構成する固形成分のうち50質量%以上である成分をいう。被覆層の形成に用いる塗布液は、水溶性又は水分散性の共重合ポリエステル樹脂、アクリル樹脂及びポリウレタン樹脂の内、少なくとも1種を含む水性塗布液が好ましい。これらの塗布液としては、例えば、特許第3567927号公報、特許第3589232号公報、特許第3589233号公報等に開示された水溶性又は水分散性共重合ポリエステル樹脂溶液、アクリル樹脂溶液、ポリウレタン樹脂溶液等が挙げられる。
【0043】
被覆層は、前記塗布液を縦方向の1軸延伸フィルムの片面又は両面に塗布した後、100〜150℃で乾燥し、さらに横方向に延伸して得ることができる。最終的な被覆層の塗布量は、0.05〜0.20g/mに管理することが好ましい。塗布量が0.05g/m未満であると、得られるEVA樹脂との接着性が不十分となる場合がある。一方、塗布量が0.20g/mを超えると、耐ブロッキング性が低下する場合がある。ポリエステルフィルムの両面に被覆層を設ける場合は、両面の被覆層の塗布量は、同じであっても異なっていてもよく、それぞれ独立して上記範囲内で設定することができる。
【0044】
被覆層には易滑性を付与するために粒子を添加することが好ましい。粒子の平均粒径は2μm以下の粒子を用いることが好ましい。粒子の平均粒径が2μmを超えると、粒子が被覆層から脱落しやすくなる。被覆層に含有させる粒子としては、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム、非晶性シリカ、結晶性のガラスフィラー、カオリン、タルク、酸化チタン、アルミナ、シリカ−アルミナ複合酸化物、硫酸バリウム、フッ化カルシウム、フッ化リチウム、ゼオライト、硫化モリブデン、マイカなどの無機粒子、架橋ポリスチレン粒子、架橋アクリル系樹脂粒子、架橋メタクリル酸メチル系樹脂粒子、ベンゾグアナミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、メラミン・ホルムアルデヒド縮合物粒子、ポリテトラフルオロエチレン粒子などの耐熱性高分子粒子が挙げられる。これらの粒子の中でも、被覆層の樹脂成分と屈折率が比較的近いシリカ粒子が好適である。
【0045】
また、塗布液を塗布する方法としては、公知の方法を用いることができる。例えば、リバースロール・コート法、グラビア・コート法、キス・コート法、ロールブラッシュ法、スプレーコート法、エアナイフコート法、ワイヤーバーコート法、パイプドクター法、などが挙げられ、これらの方法を単独であるいは組み合わせて行うことができる。
【実施例】
【0046】
次に本発明の実施例及び比較例を示す。本発明に用いる測定・評価方法を以下に示す。
【0047】
(1)ポリエステル樹脂の極限粘度
ポリエステル樹脂を粉砕して乾燥した後、フェノール/テトラクロロエタン=60/40(重量比)の混合溶媒に溶解した。この溶液に遠心分離処理を施して無機粒子を取り除いた後に、ウベローデ粘度計を用いて、30℃で0.4(g/dl)の濃度の溶液の流下時間及び溶媒のみの流下時間を測定し、それらの時間比率から、Hugginsの式を用い、Hugginsの定数が0.38であると仮定して極限粘度を算出した。
【0048】
(2)ポリエステル樹脂の融点及びガラス転移温度
JIS K 7121に記載の「プラスチックの転移温度測定方法」により、DSC測定を行った。サンプルには約10mgの樹脂辺またはフィルム片をアルミパンに密封して300℃で3分間溶融し、液体窒素で急冷固化したものを用いた。測定器には示差走査熱量計(セイコーインスツルメント社製、EXSTAR6200DSC)を用い、乾燥窒素雰囲気下で実施した。室温より10℃/分の速さで加熱して中間点ガラス転移温度を求めた後、融解ピーク温度(融点)を求めた。
【0049】
(3)ポリエステル樹脂の融解熱量
JIS K 7122に記載の「プラスチックの転移熱測定方法」により融解熱量を求めた。DSC測定の詳細は上記の融点の測定と同様にした。
【0050】
(4)ポリエステル樹脂の酸価
ポリエステル樹脂を重クロロホルム/トリエチルアミン溶液に溶解し、遠心分離処理により無機粒子を除去した。この溶液を用いて、H−NMRによりポリエステル分子鎖末端のカルボン酸基モル濃度を求めた。
【0051】
(5)見かけ比重
フィルムを10cm×10cmの正方形に正確に切り出し、その厚みを50点測定して平均厚みt(単位μm)を求める。次にサンプルの質量を0.01mgの精度で計量し、w(単位g)とする。そして、下式によって見かけ比重を計算した。
見かけ比重(g/cm)=(w/t)×100
【0052】
(6)白色度
白色度JIS L 1015−1981(B法)により、日本電色工業(株)Z−1001DPを用いて行った
【0053】
(7)耐加水分解性
JIS C 60068−2−66で規格化されているHAST(Highly Accelerated temperature and humidity Stress Test)を行った。機器はエスペック社製EHS−221を用い、105℃、100%Rh、0.03MPa下の条件で行った。フィルムを70mm×190mmにカットし、治具を用いてフィルムを設置した。各フィルムは各々が接触しない距離を保ち設置した。105℃、100%Rh、0.03MPaの条件下で200時間処理を行った。処理前、処理後の破断伸びをJIS K 7161−1994に準拠して測定し、下記式に従い破断伸び保持率を算出した。
破断伸び保持率(%)=(処理後の破断伸び/処理前の破断伸び)×100
【0054】
(8)EVA樹脂との接着性
フィルムを20mm幅×100mm長にカットしたものを2枚、EVA樹脂シート(ハイシート工業(株)製 SOLAR EVA(R)SC4)を20mm幅×50mm長にカットしたものを1枚、それぞれ準備した。EVA樹脂シートがフィルムのほぼ中央に位置するよう、またフィルムの易接性を評価したい面がEVA側になるよう、フィルム/EVA樹脂シート/フィルムの順に重ねて、ヒートシーラーにてプレスを行った。圧着条件は、120℃・0.02MPaにて5分圧着後、150℃に昇温し、プレス圧を0.1MPaに上げて25分圧着する。熱圧着した試料を、23℃、50%RH雰囲気下において、JIS−Z0237に準じて、上下のクリップに未接着部のフィルムを挟み、剥離角180°、引張速度100mm/分で接着力を測定した。なお、EVAは、エチレン−酢酸ビニル共重合体の略称である。
◎:20N/20mm以上 ・・・接着性非常に良好
○:10N/20mm以上、20N/20mm未満・・・接着性良好
△:5N/20mm以上〜10N/20mm未満 ・・・接着性やや良好
×:5N/20mm未満 ・・・接着性不良
【0055】
〔実施例1〕
(微粒子含有マスターバッチの作製)
原料として事前に120℃、8時間ほど10Paの真空下で乾燥した極限粘度0.69、酸価8(eq/ton)のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−A)50質量%に、平均粒径0.3μm(電子顕微鏡法)のルチル型酸化チタン50質量%を混合したものをベント式二軸押出機に供給して、約20分間混練りして連続的に0.1MPaの吸引をおこない、脱気しながら275℃で押出し、微粒子含有マスターバッチペレットを調製した。さらにこのマスターバッチペレットを10Paの真空下で極限粘度が0.79となるまで固相重合処理を行い、微粒子含有マスターバッチ(MB−A)を作製した。このMB−Aの酸価は、23(eq/ton)であった。
【0056】
(非晶性ポリエステル樹脂の作製)
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行い、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸100モル%、グリコール成分としてエチレングリコール70モル%及びネオペンチルグリコール30モル%からなる非晶性ポリエステル樹脂(Co−PET)を調製した。この樹脂の極限粘度は0.72、酸価は19eq/tonであった。
【0057】
(熱接着層を積層した白色ポリエステルフィルムの作製)
次いで、水分率30ppmに乾燥した非晶性ポリエステル樹脂(Co−PET)とポリスチレン(日本ポリスチレン社製、G797N、メルトフローレート1.5)を各々85質量%と15質量%に混合したA層原料を押出機Aに、同様に乾燥したPET−AとMB−Aをそれぞれ60質量%と40質量%に混合したB層原料を押出機Bに投入し、280℃で混合、溶融し、続いてフィードブロックを用い、B層の両面にA層を溶融状態で接合した。このとき、A層とB層の吐出量比率は、ギアポンプを用いて制御した。次いでT−ダイを用いて30℃に調節された冷却ドラム上に押し出し、A/B/Aの層構成からなる未延伸シートを作製した。
【0058】
得られた未延伸シートを、加熱ロールを用いて70℃に均一加熱し、90℃で3.3倍ロール延伸を行い、一軸延伸ポリエステルフィルムを得た。これをテンターに導き、140℃に加熱して3.7倍に横延伸し、幅固定して230℃で5秒間の熱処理を施し、更に220℃で幅方向に4%緩和させることにより、厚み188μm(19/150/19)の熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0059】
〔実施例2〕
(塗布液の調製)
水分散共重合ポリエステル樹脂(東洋紡績(株)製、バイロナール)3質量%、水溶性ウレタン樹脂(第一工業製薬(株)製、エラストロン)6質量%、平均粒径0.05μmのシリカ粒子を固形分に対して1質量%含有する水/イソプロピルアルコール系塗布液を調整した。
【0060】
(熱接着層を積層した白色ポリエステルフィルムの作製)
押出機Bに投入する原料をPET−A/MB−A=85/15(質量%)の混合物に変更した。また、二軸延伸フィルムの作製工程において、得られた一軸延伸ポリエステルフィルムの両面に前記塗布液を最終被覆層膜厚が0.08g/mとなるように塗布した後、135℃で乾燥させてテンターに導入した。この他は実施例1と同様にして、熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0061】
〔実施例3〕
(空洞形成剤マスターバッチの調製)
原料として、メルトフローレート1.5のポリスチレン(日本ポリスチレン株式会社製、G797N)20質量%、メルトフローレート3.0の気相法重合ポリプロピレン(出光興産株式会社製、F300SP)20質量%、及びメルトフローレート180のポリメチルペンテン(三井化学製:TPX DX−820)60質量%をペレット混合し、二軸押出機に供給して十分に混練りし、空洞形成剤マスターバッチを調製した(MB−B)。
【0062】
(熱接着層を積層した白色ポリエステルフィルムの作製)
B層の原料として、PET−A/MB−A/MB−B=82/10/8(質量%)とした以外は、実施例1と同様の方法で熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0063】
〔実施例4〕
原料として用いるポリエチレンテレフタレート樹脂を極限粘度が0.69,酸価が19(eq/ton)のもの(PET−B)に変更した。また、微粒子含有マスターバッチの作製において固相重合処理を行わず、酸価39eq/tonのマスターバッチ(MB−A2)として用いた。これ以外は実施例3と同様の方法で熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0064】
〔比較例1〕
微粒子含有マスターバッチの作製において、乾燥処理を行わないPET−A(水分率3500ppm)を用い、固相重合処理を行わなかった。このペレット(MB−A3)の酸価は、57(eq/ton)であった。またPET−Aに代えて酸価が31(eq/ton)のポリエチレンテレフタレート樹脂(PET−C)を用いた。これ以外は実施例1と同様の方法で熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0065】
〔比較例2〕
押出機Bに供給する原料について、PET−Aに代えてPET−Cを、MB−A代えてMB−A3を用いた。これ以外は実施例3と同様の方法で熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0066】
〔実施例5〕
ルチル型酸化チタンの代わりに、平均粒径が0.2μmのアナターゼ型酸化チタンを用いて微粒子含有マスターバッチ(MB−A4)を作製した。これをB層の原料としてMB−A1の代わりに用いた以外は、実施例3と同様の方法で熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0067】
〔比較例3〕
押出機Aに供給する原料について、Co−PETに代えてPET−Aを用いた。これ以外は実施例3と同様の方法で熱接着層が無い太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0068】
【表1】

【0069】
【表2】

【0070】
〔実施例6〕
実施例1において、押出機Aに供給するポリスチレン樹脂に代えてポリエチレン樹脂(宇部興産製,ユメリット2040F,融点116℃,密度0.918g/cm3)を用いた。また、原料比率を表3に示したものに変更した。これにより熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0071】
〔実施例7〕
常法によりエステル交換反応及び重縮合反応を行い、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸80モル%及びイソフタル酸20モル%、グリコール成分としてエチレングリコール100モル%からなる非晶性ポリエステル樹脂を調製した。この樹脂の極限粘度は0.67、酸価は22eq/tonであった。この非晶性ポリエステル樹脂95質量%とポリエチレンワックス(三井化学製,NL500)5質量%を混合して二軸押出機に供給し、十分に混練りしてワックス剤マスターバッチを調製した(MB−C)を調整した。
押出機Aに供給する原料について、表3に示した比率に変更した他は実施例1と同様にして、熱接着層を積層した太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0072】
〔比較例4,5〕
押出機Aに供給する原料について、表3に示した比率でCo−PET、PET−Aとポリスチレンを混合したものを用いた。これ以外は実施例1と同様の方法で熱接着層が無い太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムを得た。
【0073】
【表3】

【0074】
表2、3に示したとおり、本願発明の範囲である実施例の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムは優れた耐湿性とEVA樹脂接着性を示した。一方、本願発明の範囲外である比較例1、2のフィルムは耐湿性が悪く、比較例3〜5のフィルムはEVA樹脂との接着性が劣り、太陽電池裏面保護膜用のフィルム基材としては不適であった。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルムは、高温高湿度下での耐久性、EVA樹脂との接着性、及び光反射効率に優れており、太陽電池裏面保護膜を構成する素材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平均粒径が0.1〜3μmの微粒子を3〜50質量%含有した白色ポリエステルフィルム基材の少なくとも片面に非晶性ポリエステル樹脂を主成分とした厚さ1.0〜40μmの熱接着層を有し、酸価が1〜40eq/ton,白色度が50以上,厚さ38〜1000μmであることを特徴とする太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
【請求項2】
白色ポリエステルフィルム基材が、内部に微細な空洞を多数有し、見かけ比重が0.7〜1.3であることを特徴とする請求項1に記載の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
【請求項3】
白色ポリエステルフィルム基材が、非相溶の熱可塑性樹脂に由来する空洞を多数含有することを特徴とする請求項1又は2に記載の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
【請求項4】
酸価が0.1〜30eq/tonであるポリエステル樹脂を白色ポリエステルフィルム基材の原料として使用することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。
【請求項5】
酸価が1〜40eq/tonである白色顔料マスターバッチを白色ポリエステルフィルム基材の原料として使用することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の太陽電池裏面保護膜用ポリエステルフィルム。

【公開番号】特開2011−97012(P2011−97012A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137315(P2010−137315)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】