説明

太陽電池裏面封止用シート

【課題】太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、良好なラミネート強度を有し、ディラミネーションに伴う外観不良を防止するだけでなく、太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な耐候性(耐加水分解性)に優れる太陽電池裏面封止用シートを提供する。
【解決手段】少なくとも1層以上のフッ素系樹脂フィルム基材aをポリウレタン系接着剤bにて貼り合わせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートBにおいて、このフッ素系樹脂フィルム基材のポリウレタン系接着剤と接する面側に、水酸基、アミド基、アミノ基の少なくとも1種以上の官能基を有するアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂コート層cを設けたことを特徴とする太陽電池裏面封止用シート。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は太陽電池裏面封止用シートに関し、さらに詳細には、少なくとも1層以上のフッ素系樹脂フィルム基材をポリウレタン系接着剤にて貼り合わせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートの高温多湿環境における促進評価において、積層体のラミネート強度低下に伴うディラミネーションを防止することで、外観不良だけでなく、裏面封止用シートとしてのバリア特性や太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な太陽電池裏面封止用シートに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化問題に対する内外各方面の関心が高まる中、二酸化炭素の排出抑制のために、種々努力が続けられている。化石燃料の消費量の増大は大気中の二酸化炭素の増加をもたらし、その温室効果により地球の気温が上昇し、地球環境に重大な影響を及ぼす。この地球規模の問題を解決するために様々な検討が行われており、特に太陽光発電については、そのクリーン性や無公害性という点から期待が高まっている。太陽電池は太陽光のエネルギーを直接電気に換える太陽光発電システムの心臓部を構成するものであり、単結晶、多結晶、あるいはアモルファスシリコン系の半導体からできている。その構造としては、太陽電池素子単体(セル)をそのままの状態で使用することはなく、一般的に数枚〜数十枚の太陽電池素子を直列、並列に配線し、長期間(約20年)にわたってセルを保護するために種々パッケージングが行われ、ユニット化されている。このパッケージに組み込まれたユニットを太陽電池モジュールと呼び、一般的に太陽光が当たる面をガラス面で覆い、熱可塑性プラスチック(特にエチレン−酢酸ビニル共重合体)からなる充填材で間隙を埋め、裏面を封止用シートで保護された構成になっている(図1参照)。
【0003】
これらの太陽電池モジュールは主に屋外で使用されるため、その構成や材質構造などにおいて、十分な耐久性、耐候性が要求される。特に、裏面封止用シートは耐候性と共に水蒸気透過率の小さい(水分バリア性に優れる)ことが要求される。これは水分の透過により充填材が剥離、変色し、配線の腐蝕を起こした場合、モジュールの出力そのものに影響を与える恐れがあるためである。
【0004】
従来、この太陽電池裏面封止用シートとしては、耐候性、難燃性、そして太陽電池モジュールの充填材として良く使用されるエチレン−酢酸ビニル共重合体と良好な接着性を有する「フッ素系樹脂」が用いられている(例えば特許文献1、2参照)。また、電気絶縁性に優れるポリエチレンテレフタレートなどのポリエステルフィルムを用いた太陽電池裏面封止用シートも開発されるようになり、ポリエステルフィルムを用いる上で懸念される耐候性を向上させるべく、ポリエステル中の環状オリゴマー量の規定をする(例えば特許文献3、4参照)、ポリエステルの分子量を規定する(例えば特許文献5参照)といった開示が多く見受けられるようになった。
【0005】
上述したように太陽電池は約20年間その性能を維持する必要があり、その耐久性や耐候性を評価するために高温多湿下(85℃−85%相対湿度)での促進試験を行う。この耐久性や耐候性を満たすという点で「フッ素系樹脂」を用いた太陽電池用裏面シートが使われるケースが多い。しかしながら「フッ素系樹脂」はラミネートで用いられるポリウレタン系接着剤との密着に課題があり、上記高温多湿下における促進評価を行うと経時でラミネート強度が低下し、最終的にディラミネーションによる浮きが発生する。結果として、太陽電池用裏面シートの外観不良だけでなく、太陽電池を保護するために求められるバリア性も低下し、太陽電池としての電気出力特性に影響を与える可能性がある。
【0006】
以上の点から、フィルム基材としてのフッ素系樹脂フィルムを用いた場合のラミネート強度の向上が求められているが、まだ解決に至っていないのが現状である。
【0007】
下記に特許文献を記す。
【特許文献1】特表平8−500214号公報
【特許文献2】特表2002−520820号公報
【特許文献3】特開2002−100788号公報
【特許文献4】特開2002−134771号公報
【特許文献5】特開2002−26354号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記の技術的背景を考慮してなされたものであって、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、良好なラミネート強度を有し、ディラミネーションに伴う外観不良を防止するだけでなく、太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な耐候性(耐加水分解性)に優れる太陽電池裏面封止用シートを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を達成する解決手段として、
請求項1の発明では、少なくとも1層以上のフッ素系樹脂フィルム基材をポリウレタン系接着剤にて貼り合わせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、
このフッ素系樹脂フィルム基材のポリウレタン系接着剤と接する面側に、水酸基、アミド基、アミノ基の少なくとも1種以上の官能基を有するアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂コート層を設けたことを特徴とする太陽電池裏面封止用シートとしたものである。
【0010】
また請求項2の発明では、前記アクリル系樹脂コート層は、水酸基、アミド基、アミノ基の少なくとも1種以上の官能基を有するアクリル樹脂、あるいはこれらの官能基に2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたアクリル樹脂、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池裏面封止用シートとしたものである。
【0011】
また請求項3の発明では、前記フッ素系樹脂フィルム基材は、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂組成物であることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池裏面封止用シートとしたものである。
【0012】
また請求項4の発明では、前記フッ素系樹脂フィルム基材は、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との配合比が異なる複数の樹脂組成物を積層した多層構成からなり、アクリル系樹脂コート層を設ける側の層をなす樹脂組成物は、フッ素系樹脂が1〜50wt%に対し、アクリル系樹脂が99〜50wt%の配合比であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の太陽電池裏面封止用シートとしたものである。
【0013】
また請求項5の発明では、前記フッ素系樹脂フィルム基材が含有するフッ素系樹脂は、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の太陽電池裏面封止用シートとしたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明は、フッ素系樹脂フィルム基材のポリウレタン系接着剤と接する面側に、水酸基、アミド基、アミノ基の少なくとも1種以上の官能基を有するアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂コート層を設けたので、フッ素系樹脂フィルム基材とポリウレタン系接着剤との密着性が向上し、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、良好なラミネート強度を有し、ディラミネーションに伴う外観不良を防止するだけでなく、太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な耐候性(耐加水分解性)に優れる太陽電池裏面封止用シートを提供できるという効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の最良の一実施形態について詳細に説明する。本発明の太陽電池裏面封止用シートの特徴は、太陽電池裏面封止用シートを構成するフッ素系樹脂フィルム基材のポリウレタン系接着剤を設ける面にアクリル系樹脂コート層を設けたことを特徴とする。
【0016】
このアクリル系樹脂コート層は、フッ素系樹脂フィルム基材と後述するドライラミネート用のポリウレタン系接着剤との密着性を向上させるために設けるものである。このアクリル系樹脂コート層は、フッ素系樹脂フィルムとポリウレタン系接着剤との双方と「反応させる」あるいは「分子間相互作用を形成させる」基を有していることが挙げられる。フッ素系樹脂フィルムへの密着性を向上させるアクリル系樹脂コート層の構造としては、フッ素系樹脂の分子構造にも依存するが、アクリル主骨格として(メタ)アクリル酸エステルの構造を有するアクリル成分を有することが挙げられる。この時、フッ素系樹脂フィルム基材とアクリル系樹脂コート層間では、フッ素原子とエステル結合間で電荷−双極子相互作用からなる分子間相互作用が作用し、密着性を向上させることが可能である。しかしながら(メタ)アクリル酸エステルの繰り返し構造からなるアクリル系樹脂コート層のみでは、アクリル酸エステルのエステル結合部とポリウレタン系接着剤とのウレタン結合による弱い水素結合性による分子間相互作用を主とした密着性の付与しか期待できない。さらには水素結合性を主とした分子間相互作用では、上述した高温多湿における促進評価において不利に働く恐れがある。以上の内容から、アクリル系樹脂コート層とポリウレタン系接着剤の密着性を向上させるため、アクリルウレタンあるいは1級あるいは2級アミンをグラフトさせたアクリル樹脂のような構造を形成させた方が好ましい。
【0017】
上記内容からアクリル系樹脂コート層として、まずフッ素系樹脂との密着性を向上させるための骨格として、(メタ)アクリル酸、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレートなどのモノマーが選択される。
【0018】
次にポリウレタン系接着剤と作用させるという点で、2−ヒドキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートなどの水酸基含有(メタ)アクリルモノマーが選択される。また、(メタ)アクリルアミド、N−アルキル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルキル(メタ)アクリルアミド(アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基等)、N−アルコキシ(メタ)アクリルアミド、N,N−ジアルコキシ(メタ)アクリルアミド、(アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基等)、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−フェニル(メタ)アクリルアミドなどのアミド基含有アクリルモノマーが選択可能である。
【0019】
上記、水酸基あるいはアミド基を有するアクリルモノマーの、その他の共重合成分とし
て、グリシジル(メタ)アクリレート、アリルグリシジルエーテル等のグリシジル基含有モノマーなどを共重合させたものを用いることが可能であり、さらにはイソプロペニル−オキサゾリン、ビニルイソシアネート、アリルイソシアネート、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、マレイン酸、アルキルマレイン酸モノエステル、フマル酸、アルキルフマル酸モノエステル、イタコン酸、アルキルイタコン酸モノエステル、(メタ)アクリロニトリル、塩化ビニリデン、エチレン、プロピレン、塩化ビニル、酢酸ビニル、ブタジエン等のモノマーを共重合した物を用いることが可能である。
【0020】
上述したアクリル系樹脂コート層に用いるアクリル樹脂は、フッ素系樹脂との密着に有効なモノマーとポリウレタン系接着剤との密着に有効なモノマーとの共重合体からなるタイプに相当する。また、例えば(メタ)アクリル酸、アルキル基としてメチル基、エチル基、n−プロピル基、i−プロピル基、n−ブチル基、i−ブチル基、t−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基であるアルキル(メタ)アクリレートなどのモノマーから得られたアクリル樹脂に、ポリウレタン系接着剤との密着に有効な剤として、ポリエチレンイミン、ポリアリルアミン、あるいはこれらの誘導体から選ばれるアミンあるいはイミン系材料を配合した組成物としても用いることは可能である。この時、より好ましくは、アクリル樹脂とアミンあるいはイミン系材料との相溶性を考慮して、両者と反応性を有する化合物を配合しても構わない。一例としてはエポキシ化合物が挙げられ、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールのような脂肪族のジオールのジグリシジルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族、芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、レゾルシノール、ビス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンなどの多価フェノールのジグリシジルエーテルもしくはポリグリシジルエーテル、N,N’−ジグリシジルアニリン、N,N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス−(p−アミノフェニル)メタンのようにアミンのN−グリシジル誘導体、アミノフェールのトリグリシジル誘導体、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、オルソクレゾール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシが挙げられる。つまり、アミンあるいはイミンとの反応性を有し、かつアクリル系樹脂に含まれる官能基とも反応性を有するものであれば、両者と反応性を有する化合物の種類に制限はない。これらのタイプは、アクリル骨格にアミンあるいはイミン系材料がペンダント状にグラフトされた骨格を形成するものである。また、上記内容に類似した骨格を形成することになるが、アクリル樹脂とアミンあるいはイミン系材料との両者と反応性を有する化合物を配合しなくとも、その(メタ)アクリル酸部位をエチレンイミンによりアミノエチル化することにより、アクリル樹脂骨格にポリエチレンイミンをペンダント状にグラフトさせたアミノ基含有アクリル樹脂を用いることも可能である。
【0021】
これらの水酸基、アミド基、アミノ基を有するアクリル系樹脂コート層には、コーティング剤としての塗液安定性を有する範囲で適宜、2官能以上のイソシアネート化合物を配合して構わない。この時のイソシアネート化合物としては、2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシ
アネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどから選ばれるイソシアネート化合物の単体、あるいは少なくとも一種以上から選択される上記イソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いることが可能である。
【0022】
以上のようなアクリル系樹脂コート剤を用いることで、フッ素系樹脂フィルム基材とは電荷−双極子相互作用的な密着力の向上を付与することが可能であり、ドライラミネートで用いるポリウレタン系接着剤とは、ポリウレタン系接着剤中に配合する(ポリ)イソシアネート化合物と、アクリル系樹脂コート剤中の水酸基、アミド基、アミノ基、さらにはこれらの基がアクリル系樹脂コート剤中に配合する(ポリ)イソシアネート化合物との反応により形成された新たな官能基中に含まれる活性水素とで化学的に反応させることで密着力を向上させることが可能である。この時の太陽電池裏面封止シートの一例の模式断面図を図2に示す。
【0023】
さらに密着性を向上させたいというニーズがある場合には、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)などの各種フッ素系樹脂フィルムをアクリル系樹脂とのブレンドにすることも可能である。この場合、これらのフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンド比は、アクリル系樹脂がリッチの方が、アクリル系樹脂コート層との密着性という点からも好ましい。しかしながら、アクリル系樹脂をリッチにして密着性を向上させた場合には、フッ素系樹脂の特徴が低減する恐れがある。そこで、このフッ素系樹脂とアクリル系樹脂とのブレンドを行う場合には、図3に示すように、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との配合比が異なる樹脂組成物の多層構造からなるフッ素系樹脂フィルムを製膜することが好ましい。この時、多層構造からなるフッ素系樹脂フィルム基材のアクリル系樹脂コート層が設けられる面の配合比を、フッ素系樹脂1〜50wt%に対し、アクリル系樹脂を99〜50wt%にした方が好ましい。アクリル系樹脂が50wt%より少ないと、更なる密着性の向上は期待できない。99wt%より多いと多層のフッ素系樹脂フィルム基材の層間強度が得られなくなる。特に多層構造からなるフッ素系樹脂フィルム基材の反対側面は逆にフッ素系樹脂50〜99wt%に対し、アクリル系樹脂を50〜1wt%にすることで、フッ素系樹脂の特徴を生かしながらも、多層フィルムの層間の密着性を向上させることが好ましい。なお、この時に用いるアクリル系樹脂は上述したアクリル系樹脂コート剤で述べた材料設計と同様なものを用いることが可能である。
【0024】
上述した構成はフッ素系樹脂フィルム基材を用いる場合に限定される内容であるが、本発明の太陽電池裏面封止用シートは、少なくとも1層以上のフッ素系樹脂フィルム基材を用いていれば、他に用いる基材は種々求められる機能・用途に応じて選定することが可能である。例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)などから選ばれるポリエステル基材、ポリカーボネート系基材、あるいはアクリル系基材から選択されることが挙げられる。また、これらに限定されず、ポリオレフィン系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリアリレート系樹脂など、耐熱性、強度物性、電気絶縁性等を考慮して適宜選択することが可能である。ポリエステル基材を用いる場合は、多塩基酸またはそのエステル形成誘導体とポリオールまたはそのエステル形成誘導体を用いて得られたものであり、多塩基酸成分としてテレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、無水フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、アジピン酸、セバシン酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ダイマー酸、
マレイン酸、イタコン酸などの酸成分を2種以上、そして、ポリオール成分としてエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、トリメチロールプロパン、ペンタエリストール、キシレングリコール、ジメチロールプロパン、ポリ(エチレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、さらにはカルボン酸基やスルホン酸基やアミノ基あるいはこれらの塩を含有するポリオール成分を1種あるいは2種以上用いることで得られたポリエステルが挙げられるが、上述したポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリシクロヘキサンジメタノール−テレフタレート(PCT)が一般的である。
【0025】
しかしながら、これらのポリエステル基材は加水分解が懸念される材料である。そこで、特にポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル基材を用いる場合には、数平均分子量が18000〜40000の範囲で、環状オリゴマーコンテントが1.5wt%以下、固有粘度が0.5dl/g以上の耐加水分解性を有するポリエステル基材であることが好ましい。このようなポリエステル基材は分子末端がカルボン酸基の場合、熱、水、さらには酸触媒としての作用が働き、加水分解に最も影響を受けるため、この末端カルボン酸量を上昇させることなく数平均分子量を増加させることが可能な固相重合法を用いる、あるいは末端カルボン酸基をカルボジイミド系化合物、エポキシ系化合物、オキサゾリン系化合物により封止しても構わない。また、太陽電池モジュールを製造する際の熱で収縮の影響が懸念される場合には、アニール処理を施すことによって熱収縮率を1%以下、好ましくは0.5%以下にしたポリエステル基材を用いることが可能である。
【0026】
以上、上述してきた各種基材は必要に応じて各種添加剤を配合しても構わない。例えば、耐候性が要求される場合には、ベンゾフェノン、ベンゾトリアゾール、トリアジンなどの紫外線吸収剤、ヒンダードフェノール系、リン系、イオウ系、トコフェロール系の酸化防止剤、ヒンダードアミン系の光安定剤も適宜配合することが可能である。また、太陽電池裏面封止用シートに用いられるフィルム基材は透明でも構わないが、太陽電池素子の発電効率を向上させるという点から、白色フィルムを用いることが好ましい。特に太陽電池裏面封止用シートが多層構成から成る場合には、少なくとも充填材と貼り合わされる基材には白色フィルムを設けることも可能である。この時用いる白色フィルムは、酸化チタン、シリカ、アルミナ、炭酸カルシウム、硫酸バリウム等の白色添加物を添加する「顔料分散タイプ」を用いることが可能であるが、白色化に関する方法については制限を受けない。
【0027】
これらのフッ素系樹脂フィルム基材や各種基材をドライラミネートなどの公知の手法で貼りあわせることで太陽電池裏面封止用シートを得ることが可能である。この時用いる接着剤としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、アクリルポリオール、カーボネートポリオールなどの主剤に対し、2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたポリウレタン樹脂が挙げられる。ポリエステルポリオールは、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ブラシル酸などの脂肪族系、イソフタル酸、テレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸などの芳香族系の二塩基酸の一種以上、そしてエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなど脂肪族系、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリーコルなどの脂環式系、キシリレングリーコルなどの芳香族系ジオールの一種以上を用いて得ることが可能である。また、さらにこのポリエステルポリオールの両末端の水酸基を、例えば2,4−もしくは2,6−トリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、メチレンジイソシアネート、イソプロピレンジイソシアネート、リジ
ンジイソシアネート、2,2,4−もしくは2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、メチルシクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、イソプロピリデンジシクロヘキシル−4,4’−ジイソシアネートなどから選ばれるイソシアネート化合物の単体、あるいは少なくとも一種以上から選択される上記イソシアネート化合物からなるアダクト体、ビューレット体、イソシアヌレート体を用いて鎖伸長したポリエステルウレタンポリオールなどが挙げられる。ポリエーテルポリオールとしてはポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコールなどのエーテル系のポリオールや、鎖長伸長剤として上述したイソシアネート化合物を作用させたポリエーテルウレタンポリオールを用いることが可能である。アクリルポリオールは、上述したアクリル系モノマーを用いて重合したアクリル樹脂を用いることが可能である。カーボネートポリオールは、カーボネート化合物とジオールとを反応させて得る事ができる。カーボネート化合物としてはジメチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネートなどを用いることができる。ジオールとしてはエチレングリコール、プロピレングリコール、ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、メチルペンタンジオール、ヘキサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、ノナンジオール、デカンジオール、ドデカンジオールなどの脂肪族ジオール、シクロヘキサンジオール、水添キシリレングリール、などの脂環式ジオール、キシリレングリール、など芳香族ジオールなどの1種以上の混合物が用いられたカーボネートポリオール、あるいは上述したイソシアネート化合物により鎖伸長を施したポリカーボネートウレタンポリオールを用いることが可能である。これらの各種ポリオールは求められる機能や性能に応じて、これらの単独で、あるいは2種以上のブレンドの状態で用いても構わない。これらの主剤に上述したイソシアネート系化合物を硬化剤として用いることでポリウレタン系接着剤として用いることが可能である。
【0028】
上述したポリウレタン系接着剤も、耐候性や高温多湿下における促進環境下での劣化を伴う可能性があるため、劣化の促進を抑制する化合物としてカルボジイミド化合物、オキサゾリン化合物、エポキシ化合物、リン化合物などを配合することも可能である。カルボジイミド化合物としては、N,N’−ジ−o−トルイルカルボジイミド、N,N’−ジフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,6−ジメチルフェニルカルボジイミド、N,N’−ビス(2,6−ジイソプロピルフェニル)カルボジイミド、N,N’−ジオクチルデシルカルボジイミド、N−トリイル−N’−シクロヘキシルカルボジイミド、N,N’−ジ−2,2−ジ−t−ブチルフェニルカルボジイミド、N−トリイル−N’−フェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ニトロフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−アミノフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−p−ヒドロキシフェニルカルボジイミド、N,N’−ジ−シクロヘキシルカルボジイミド、およびN,N’−ジ−p−トルイルカルボジイミドなどが挙げられる。オキサゾリン化合物としては、2−オキサゾリン、2−メチル−2−オキサゾリン、2−フェニル−2−オキサゾリン、2,5−ジメチル−2−オキサゾリン、2,4−ジフェニル−2−オキサゾリンなどのモノオキサゾリン化合物、2,2’−(1,3−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,2−エチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−ブチレン)−ビス(2−オキサゾリン)、2,2’−(1,4−フェニレン)−ビス(2−オキサゾリン)などのジオキサゾリン化合物が挙げられる。同様にエポキシ化合物としては、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、ポリアルキレングリコールのような脂肪族のジオールのジグリシジルエーテル、ソルビトール、ソルビタン、ポリグリセロール、ペンタエリスリトール、ジグリセロール、グリセロール、トリメチロールプロパンなどの脂肪族ポリオールのポリグリシジルエーテル、シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式ポリオールのポリグリシジルエーテル、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、トリメリット酸、アジピン酸、セバシン酸などの脂肪族、芳香族の多価カルボン酸のジグリシジルエステルまたはポリグリシジルエステル、レゾルシノール、ビス−(p−ヒドロキシフェニル)メタン、2,2−ビス−(p−ヒドロキシフェニル)プロパン、トリス−
(p−ヒドロキシフェニル)メタン、1,1,2,2−テトラキス(p−ヒドロキシフェニル)エタンなどの多価フェノールのジグリシジルエーテルもしくはポリグリシジルエーテル、N,N’−ジグリシジルアニリン、N,N,N−ジグリシジルトルイジン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−ビス−(p−アミノフェニル)メタンのようにアミンのN−グリシジル誘導体、アミノフェールのトリグリシジル誘導体、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、オルソクレゾール型エポキシ、フェノールノボラック型エポキシが挙げられる。また、リン化合物としては、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、テトラキス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)4,4’−ビフェニレンホスフォナイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトール−ジ−ホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデン−ビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル−ジ−トリデシル)ホスファイト、1,1,3−トリス(2−メチル−4−ジトリデシルホスファイト−5−t−ブチル-フェニル)ブタン、トリス(ミックスドモノおよびジ−ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、4,4’−イソプロピリデンビス(フェニル−ジアルキルホスファイト)などが挙げられる。
【0029】
ところで、上述してきたフィルム基材は耐候性という点では優れる材料ではあるが、ガスバリア性、特に水蒸気バリア性や酸素バリア性という点では課題が残る。つまり水蒸気や酸素ガスバリア性がない場合は、太陽電池としての電気出力特性を維持することが困難である。このような問題を解決するために、ガスバリア性基材として金属箔基材や金属蒸着フィルム基材アルミニウム箔基材、無機化合物蒸着フィルム基材が用いられる。金属箔としてはアルミニウム箔、金属蒸着フィルムとしてはポリエステルやポリオレフィン系延伸フィルムにアルミニウムを蒸着させたアルミニウム蒸着フィルムが代表的である。無機化合物蒸着フィルム基材としては、酸化アルミニウム、酸化珪素、酸化錫、酸化マグネシウム、酸化インジウムあるいはこれらの複合酸化物などをポリエステル基材に蒸着したフィルム基材が挙げられ、透明で、かつ、酸素、水蒸気等のガスバリア性を有するものであればよい。その中では、特に酸化アルミニウム及び酸化珪素が好ましい。その厚さは、用いられる無機酸化物の種類・構成により最適条件は異なるが、一般的には5〜300nmの範囲内が望ましく、その値は適宜選択される。膜厚が5nmより薄いと均一な膜が得られず、かつ、バリア機能を発現させるための十分な膜厚でない。膜厚が300nmより厚い場合は薄膜の柔軟性にかけ、外的応力により用意に亀裂を生じるおそれがある。好ましくは、10〜150nmの範囲内である。これらの蒸着層を設ける方法としては、通常の真空蒸着法により形成することができるが、その他の薄膜形成方法であるスパッタリング法やイオンプレーティング法、プラズマ気相成長法(CVD)などを用いることも可能である。また、必要に応じては更なるガスバリア性の向上という点から、上記無機化合物の蒸着層上に、エチレン−酢酸ビニル共重合体の部分あるいは完全けん化物とシラン化合物からなるオーバーコート層を設けても構わない。以上のようなガスバリア性基材を用いることが可能であるが、電気絶縁性という点からもアルミニウム箔基材やアルミ蒸着フィルム基材よりは無機化合物蒸着フィルム基材を用いた方が好ましい。
【0030】
以下に上述してきた太陽電池裏面封止用シートの構成成分から組み合わせられる、代表的な構成例を示す。
構成例−1
(最外層)フッ素系樹脂フィルム基材(単層)/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層/アクリル系樹脂コート層/フッ素系樹脂フィルム基材(単層)(最内層)⇒図2参照
構成例−2
(最外層)フッ素系樹脂フィルム基材(多層)/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン
系接着剤層/アクリル系樹脂コート層/フッ素系樹脂フィルム基材(多層)(最内層)⇒図3参照
構成例−3
(最外層)フッ素系樹脂フィルム基材(単層or多層)/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層/ポリエステルフィルム基材(最内層)⇒図4参照(ただし図4はフッ素系樹脂フィルム基材が多層の例を図示する)
構成例−4
(最外層)フッ素系樹脂フィルム基材(単層or多層)/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層/ガスバリア性フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層/アクリル系樹脂コート層/フッ素系樹脂フィルム基材(単層or多層)(最内層)⇒図5参照(ただし図5はフッ素系樹脂フィルム基材が多層の例を図示する)
構成例−5
(最外層)フッ素系樹脂フィルム基材(単層or多層)/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層/ガスバリア性フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層/ポリエステルフィルム基材(最内層)⇒図6参照(ただし図6はフッ素系フィルム基材が多層の例を図示する)
これらの構成はあくまで一例であり、求められる機能に応じて他の層を介在させても、さらに多層構成にしても構わない。またこれらの構成において、太陽電池裏面封止用シートとして太陽電池の充填材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体と貼り合わさる面は、上記最外層あるいは最内層どちらを貼り合わせ面に用いても構わない。
【0031】
上述した太陽電池裏面封止用シートの製造方法としては上述したフッ素系樹脂フィルム基材上にグラビアコート、ロールコート、バーコート、リバースコート等の手法を用いて、ドライ固形分として0.01〜10g/m2の範囲で上記アクリル系樹脂コート層を塗工し、そしてドライラミネートなどの公知手法を用いてポリウレタン系接着剤をドライ固形分として0.1〜10g/m2の範囲で積層させることが挙げられる。このとき、基材側は必要に応じて、コロナ処理、フレーム処理、プラズマ処理など接着性を向上させるための表面処理を施すことが可能である。また上述した太陽電池裏面封止用の太陽電池充填材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体に接着させる上記ドライプロセスに限らず、例えばポリエステル系、ポリウレタン系、アクリル系あるいはこれらの混合物からなる易接着コート層を基材側に設けても構わない。
【0032】
アクリル系樹脂コート層及びポリウレタン系接着剤層の膜厚は、それぞれ0.1〜10μmにするのが好ましい。これは、0.1μmより薄くすると、十分な接着強度が得られないこと、また、10μmより厚くしても、接着特性に変化が見られず、コスト、取り扱いの観点から意味がないことによる。
【0033】
このようにして得られた積層体を太陽電池裏面封止用シートとして用い、太陽電池モジュールが製造される。この工程は下記(1)〜(4)である。
(1)加熱された天板(およそ120〜160℃)上にガラス板、充填材、セル、充填材、裏面封止用シートをセットする(図7の(イ)参照)。
(2)チャンバー1、2を真空引きする。
(3)チャンバー1を大気開放し、耐熱性を有するゴムシートをモジュールに密着させる。
(4)その熱及び圧力で充填材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体を溶融、セルの包埋、ガラス板、セル、裏面封止シートと接着、充填材を架橋・固化させる(図7の(ロ)参照)。
【0034】
この時(4)の工程では、ラミネート後に別ラインに設けたオーブンにて架橋反応をさせるケースと、図7の(ロ)に示すようにラミネーター内部で架橋反応をさせるケースと
に分類される。前者はスタンダードキュアといわれるタイプで、後者はファストキュアといわれるタイプである。通常、太陽電池モジュールの充填材として用いられる材料は、酢酸ビニル含有量が10〜40重量%のエチレン−酢酸ビニル共重合体であり、太陽電池セルの耐熱性、物理的強度を確保するために、熱あるいは光などによりエチレン−酢酸ビニル共重合体を架橋している。
【0035】
熱架橋を行う場合は通常有機過酸化物が用いられ、70℃以上の温度で分解してラジカルを発生するものが使用されている。通常、半減期10時間の分解温度が50℃以上のものが用いられ、2,5−ジメチルヘキサン−2,5−ジハイドロキシパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキシン−3、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルパーオキシ)ヘキサン、ジクミルパーオキサイド、α,α’−ビス(t−ブチルパーオキシイソプロピル)ベンゼン、n−ブチル−4,4−ビス−(t−ブチルパーオキシ)バレレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、ベンゾイルパーオキサイドなどが用いられている。
【0036】
光硬化を行う場合には光増感剤が用いられ、水素引き抜き型(二分子反応型)である、ベンゾフェノン、オルソベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4’−メチルジフェニルサルファイド、イソプロピルチオキサントンなどが用いられており、内部開裂型開始剤としては、ベンゾインエーテル、ベンジルジメチルケタールなど、α−ヒドロキシアルキルフェノン型として、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アルキルフェニルグリオキシレート、ジエトキシアセトフェノンなどが使用できる。更に、α−アミノアルキルフェノン型として、2−メチル−1−[4(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン−1などが、またアシルフォスフィンオキサイドなども用いられている。
【0037】
また、太陽電池モジュールを構成するガラス板との接着を考慮してシランカップリング剤も配合されており、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルメトキシシラン、ビニルトリクロロシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−β(アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシランなどが配合されている。
【0038】
更に、接着性及び硬化を促進する目的でエポキシ基含有化合物を配合されている場合もあり、エポキシ基含有化合物としては、トリグリシジルトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、アクリルグリシジルエーテル、2−エチルヘキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、フェノールグリシジルエーテル、p−t−ブチルフェニルグリシジルエーテル、アジピン酸ジグリシジルエステル、o−フタル酸ジグリシジルエステル、グリシジルメタクリレート、ブチルグリシジルエーテル等の化合物や、エポキシ基を含有した分子量が数百から数千のオリゴマーや重量平均分子量が数千から数十万のポリマーを配合されているケースもある。
【0039】
そしてさらに、充填材の架橋、接着性、機械的強度、耐熱性、耐湿熱性、耐候性などを向上させる目的で、アクリロキシ基、メタクリロキシ基又はアリル基含有化合物を添加されており、(メタ)アクリル酸誘導体、例えばそのアルキルエステルやアミドが最も一般的である。この場合、アルキル基としては、メチル、エチル、ドデシル、ステアリル、ラ
ウリルのようなアルキル基の他に、シクロヘキシル基、テトラヒドロフルフリル基、アミノエチル基、2−ヒドロキシエチル基、3−ヒドロキシプロピル基、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピル基などが挙げられる。また、(メタ)アクリル酸とエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等の多官能アルコールとのエステルも同様に用いられる。アミドとしては、アクリルアミドが代表的である。また、アリル基含有化合物としては、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、フタル酸ジアリル、イソフタル酸ジアリル、マレイン酸ジアリル等が配合されている。
【0040】
さらには、難燃性を付与するための無機化合物や、耐候性を付与するための紫外線吸収剤、酸化劣化防止のための酸化防止剤も種々に配合されている。つまり、太陽電池モジュールを構成するエチレン−酢酸ビニル共重合体は、太陽電池モジュールとして要求される機能を満たすべく、各種添加剤を配合した樹脂組成物であることが挙げられる。
【0041】
以上の内容の材料を用いることで太陽電池モジュールが製造され、上記記載の太陽電池裏面封止用シートは、太陽電池モジュールとして実際に利用される環境だけでなく、太陽電池モジュールを評価する際に検討される高温多湿下での促進評価においても、良好なラミネート強度を有し、ディラミネーションに伴う外観不良だけでなく、太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能な耐候性(耐加水分解性)を付与することが可能である。
【実施例】
【0042】
以下に本発明の実施例と比較例とを示すが、この実施例に限定されるわけではない。
【0043】
1.実施例1〜5及び比較例1〜5
まず、実施例1〜5及び比較例1〜5について説明する。
【0044】
[構成]
実施例1〜5及び比較例5の構成は、フッ素系樹脂フィルム基材/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層/ポリエステルフィルム基材、である。
【0045】
比較例1〜4の構成は、フッ素系樹脂フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層/ポリエステルフィルム基材、である。
【0046】
[フッ素系樹脂フィルム基材]
実施例1〜2、6及び比較例4〜5では以下の基材F−4を用い、実施例3及び比較例1では以下の基材F−1を用い、実施例4及び比較例2では以下の基材F−2を用い、実施例5及び比較例3では以下の基材F−3を用いた。
【0047】
<基材F−1>
フッ化ビニル(PVF)の厚さ25μm。
【0048】
<基材F−2>
ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTEE)の厚さ50μm。
【0049】
<基材F−3>
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)の厚さ25μm。
【0050】
<基材F−4>
ポリフッ化ビニリデン(PVDF)とポリメタクリル酸メチル系アクリル樹脂(PMM
A)とからなる厚さ40μmの2種2層フィルム。外層側は配合比がPVDF/PMMA=80/20であり、内層(アクリル系樹脂コート層への貼り合わせ面)側は配合比がPVDF/PMMA=20/80である。
【0051】
[ポリエステルフィルム基材]
各実施例及び各比較例で、アニール処理を施した厚さ50μmのポリエチレンテレフタレートフィルムを用いた。このポリエチレンテレフタレートは、オリゴマーコンテント0.5wt%、数平均分子量19500、固有粘度0.7dl/gである、耐候性に優れるポリエステルフィルムである。
【0052】
[ポリウレタン系接着剤]
各実施例及び各比較例で、上記基材をドライラミネート手法により貼り合わせる際に用いた接着剤は、ポリウレタン系接着剤であり、主剤としてポリエステルポリオールを用い、硬化剤としてイソホロンジイソシアネート(IPDIアダクト体)とキシリレンジイソシアネート(XDIアダクト体)との混合物を、主剤/硬化剤(固形分比)=3/1になるように配合したものを用いた。
【0053】
[アクリル系樹脂コート剤]
実施例1では以下のコートC−2を用い、実施例2〜5では以下のコートC−3を用い、実施例6では以下のコートC−4を用い、比較例5では以下のコートC−1を用いた。尚、比較例1〜4では一切アクリル系樹脂コート剤を用いなかった。
【0054】
<コートC−1>
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを成分とする共重合アクリル系樹脂コート剤において、官能基として水酸基、アミド基、アミノ基のいずれも持たないもの。
【0055】
<コートC−2>
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを成分とする共重合アクリル系樹脂コート剤であって、官能基として(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルを共重合させ、官能基として水酸基を導入したものに、さらに架橋剤としてイソホロンジソシアネート(IPDIアダクト体)とキシリレンジイソシアネート(XDIアダクト体)との混合物を、アクリル系樹脂コート剤/架橋剤(固形分比)=3/1で配合したもの。
【0056】
<コートC−3>
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステルを成分とする共重合アクリル系樹脂コート剤にエチレンイミンをアミノエチル化させることでポリエチレンイミンをペンダント状にグラフトさせたもの。
【0057】
<コートC−4>
(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸エステル、イソプロペニル−オキサゾリン、(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルを主成分とするアクリル樹脂に対し、ポリエチレンイミンを配合し、さらに両者と反応性を有するエポキシ化合物を、固形分で5/4/15になるように配合したもの。
【0058】
[サンプル作成方法]
実施例1〜6及び比較例5では、フッ素系樹脂フィルム基材にアクリル系樹脂コート剤をグラビアコーターにてドライ塗布量0.1〜1μmの範囲になるように塗布してアクリル系樹脂コート層を設けた。そして、アクリル系樹脂コート層の上にポリウレタン系接着剤を5g/m2になるように塗布後、ドライラミネート手法によりフッ素系樹脂フィルム基材とポリエステルフィルム基材とを貼り合わせた。得られた積層サンプルを60℃−5
days保管でエージング処理を行った。
【0059】
比較例1〜4では、フッ素系樹脂フィルム基材にポリウレタン系接着剤を5g/m2になるように塗布した後、ドライラミネート手法によりフッ素系樹脂フィルム基材とポリエステルフィルム基材とを貼り合わせた。得られた積層サンプルを60℃−5days保管でエージング処理を行った。
【0060】
[サンプル評価方法]
85℃−85%RH環境で保管し、経時におけるラミネート強度の推移をテンシロンにてT型剥離300mm/minの条件で測定した。また、剥離面については顕微赤外分光法(IR)により評価した。評価結果を、以下の表1に示す。
【0061】
【表1】

表1よりアクリル系樹脂コート層が無いもの(比較例1〜4)については、経時で剥離界面がフッ素系樹脂フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層間に発生する傾向が見受けられ、その影響でラミネート強度が著しく低下する傾向がある。本保存環境では最低でも2000hはラミネート強度を維持していることが好ましいことことから、アクリル系樹脂コート層の必要性は明確である。しかしながら、このアクリル系樹脂コート層を用いても官能基としてポリウレタン系接着剤と相互作用を形成する基がない場合(比較例5)は、アクリル系樹脂コート層無しと同様に経時でラミネート強度低下傾向が見受けられ、剥離界面がアクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層間で発生していることから、上記界面での相互作用形成が重要であることが確認される。よって本発明で記載したアクリル系樹脂コート層を用いることで、実施例1〜6に示すように、高温多湿化の保存環境においても、経時でラミネート強度を低下することが無く、太陽電池裏面封止用シートとして用いることが可能である。
【0062】
2.実施例7及び比較例6〜7
次に、実施例7及び比較例6〜7について説明する。
【0063】
実施例7及び比較例6の構成は、フッ素系樹脂フィルム基材/アクリル系樹脂コート層/ポリウレタン系接着剤層/ガスバリア性フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層/ポリエステルフィルム基材、である。
【0064】
比較例7の構成は、フッ素系樹脂フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層/ガスバリア性フィルム基材/ポリウレタン系接着剤層/ポリエステルフィルム基材、である。
【0065】
フッ素系樹脂フィルム基材として、実施例7及び比較例6〜7では上記基材F−4を用いた。
【0066】
アクリル系樹脂コート剤として、実施例7では上記コートC−3を用い、比較例6では上記コートC−1を用いた。尚、比較例7では一切アクリル系樹脂コート剤を用いなかった。
【0067】
実施例7及び比較例6〜7の太陽電池裏面封止シートを用いて、上述の製造工程を経て太陽電池モジュールを作成し、作成した各太陽電池モジュールを、同様に85℃−85%RH環境下で保管した。その結果、比較例6〜7は、経時でラミネート強度低下に伴うディラミ(浮き)が発生し、外観不良を伴うだけでなく、そのディラミネーション部を起点に充填材であるエチレン−酢酸ビニル共重合体の変色が認められ、太陽電池の出力特性に対し懸念されるようなモジュール外観を示すようになった。一方、実施例7は外観不良や変色などの問題は確認されなかった。
【0068】
以上より、本発明の構成の太陽電池裏面封止用シートは、高温多湿下での促進評価においてもラミネート界面におけるディラミネーションを抑制し、外観不良だけでなく、裏面封止用シートとしてのバリア特性や太陽電池としての電気出力特性を維持することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0069】
【図1】太陽電池モジュールの一例を示す模式断面図である。
【図2】本発明の太陽電池裏面封止シートの一例を示す模式断面図である。
【図3】本発明の太陽電池裏面封止シートの一例を示す模式断面図である。
【図4】本発明の太陽電池裏面封止シートの一例を示す模式断面図である。
【図5】本発明の太陽電池裏面封止シートの一例を示す模式断面図である。
【図6】本発明の太陽電池裏面封止シートの一例を示す模式断面図である。
【図7】太陽電池モジュールの製造工程の一例において、(イ)は最初の工程でのラミネーター内部の様子を示し、(ロ)は最後の工程でのラミネーター内部の様子を示す模式説明図である。
【符号の説明】
【0070】
A…太陽電池モジュール
A−1…太陽電池セル
A−2…充填材
A−3…ガラス板
B…裏面封止シート
C…ラミネーター
C−1…天板
C−2…チャンバー1
C−3…チャンバー2
C−4…ゴムシート
a…フッ素系樹脂フィルム基材
a−1…フッ素系樹脂リッチ層
a−2…アクリル系樹脂リッチ層
b…ポリウレタン系接着剤
c…アクリル系樹脂コート層
d…ポリエステルフィルム基材
e…ガスバリア性フィルム基材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1層以上のフッ素系樹脂フィルム基材をポリウレタン系接着剤にて貼り合わせた積層体からなる太陽電池裏面封止用シートにおいて、
このフッ素系樹脂フィルム基材のポリウレタン系接着剤と接する面側に、水酸基、アミド基、アミノ基の少なくとも1種以上の官能基を有するアクリル系樹脂からなるアクリル系樹脂コート層を設けたことを特徴とする太陽電池裏面封止用シート。
【請求項2】
前記アクリル系樹脂コート層は、水酸基、アミド基、アミノ基の少なくとも1種以上の官能基を有するアクリル樹脂、あるいはこれらの官能基に2官能以上のイソシアネート化合物を作用させたアクリル樹脂、あるいはこれらの混合物であることを特徴とする請求項1記載の太陽電池裏面封止用シート。
【請求項3】
前記フッ素系樹脂フィルム基材は、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との樹脂組成物であることを特徴とする請求項1または2記載の太陽電池裏面封止用シート。
【請求項4】
前記フッ素系樹脂フィルム基材は、フッ素系樹脂とアクリル系樹脂との配合比が異なる複数の樹脂組成物を積層した多層構成からなり、アクリル系樹脂コート層を設ける側の層をなす樹脂組成物は、フッ素系樹脂が1〜50wt%に対し、アクリル系樹脂が99〜50wt%の配合比であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の太陽電池裏面封止用シート。
【請求項5】
前記フッ素系樹脂フィルム基材が含有するフッ素系樹脂は、ポリフッ化ビニル(PVF)、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、ポリエチレンテトラフルオロエチレン(ETFE)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、テトラフルオロエチレンパーフルオロアルキルビニルエーテル共重合体(PFA)、テトラフルオロエチレン−ヘキサフルオロプロピレン共重合体(FEP)から選ばれることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項記載の太陽電池裏面封止用シート。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−28294(P2008−28294A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−201694(P2006−201694)
【出願日】平成18年7月25日(2006.7.25)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】