説明

女性のヘルスケアにおける使用のための置換型16,17−環紋型ステロイド化合物

本発明は、子宮内膜症の処置および予防における使用のため、避妊のため、閉経前後および閉経後の女性におけるホルモン療法のため、骨粗鬆症の処置のため、ならびに子宮筋腫および他の月経関連障害(機能不全性不正子宮出血など)の処置のための、式(I)(式中、Rは、Hまたはハロゲンであり;Rは、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシル、グルクロニルまたはスルファモイルであり;Rは、Hまたはハロゲンであり;Rは、H、(1C−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rは、メチルまたはエチルであり;Rは、Hまたはメチルであり;Rは、Hまたはメチルであり;Rは、Hまたはアシルである)を有する置換型ステロイド化合物に関する。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、16,17−環紋型(annellated)炭素環式環を有するステロイド化合物に関し、子宮内膜症の処置および予防のため、避妊のため、閉経前後および閉経後の女性におけるホルモン療法のため、骨粗鬆症の処置のため、ならびに子宮筋腫および他の月経関連障害(機能不全性不正子宮出血など)の処置のための新しい手段に関する。
【背景技術】
【0002】
エストロゲン受容体(ER)活性化、特に、ERα(ERアルファ)の選択的活性化に基づいた治療方法における使用のための、16,17−環紋型炭素環式環を有するステロイド化合物が、WO2002/00682およびEP869132に開示されている。このような化合物は、避妊薬または抗骨粗鬆症剤としての使用が意図されたものである。この分野の治療用化合物は、特に子宮内膜に対して、ならびに乳房圧痛、体重増加、不機嫌および座瘡に関して、副作用が最小限で安全な処置をもたらすものであることが非常に重要である。
【0003】
子宮内膜症の予防、逆転は、女性のヘルスケアの分野における重要な目標である。子宮内膜症は、子宮腔の外側の部位における子宮内膜組織の存在を特徴とする婦人科系の有痛性の病状である。有病率はほぼ10%であるが、疾患の存在を判定するためには腹腔鏡下での処置を行なう必要があるため、これは、少なく見積もられていると思われる。該疾患は、生殖年齢の女性が罹患し、最も一般的な症状は、生理痛(月経困難)、性交時の痛み(性交疼痛)、排便時の痛み(排便困難)、慢性骨盤痛、重い月経(月経過多)、および不妊である。子宮内膜症を未処置のまま放置した場合、または処置が不充分な場合、進行するか、または自然に後退するかのいずれかとなり得る。相当数の女性では、子宮内膜症は慢性進行性の疾患であり、難治性疼痛、生活の質の悪化および不妊として顕現する。病因は不明であり、このこともまた、該疾患の対症適応の理解の障害となっている。子宮内膜症では種々の重症度の数々の症状が生じ、疾患病期、疾患負荷および痛みの程度間に相関性がなく、それにより、臨床的分類が混乱し、診断が遅れることになる。既知の処置選択肢は薬物療法と保存外科である。
【0004】
薬物療法は、鎮痛薬、エストロゲンと黄体ホルモン物質(progestagen)の両方を含む(混合型経口避妊薬(Combined Oral Contraceptive)(COC))、もしくは黄体ホルモン物質のみを含む(黄体ホルモン物質単独避妊薬(Progestagen−Only Contraceptive)(POC))ホルモン性避妊薬、生殖腺刺激ホルモン放出ホルモン(GnRH)アゴニスト、または他のホルモン剤(例えば、ダナゾール)を使用するものである。エストロゲンと黄体ホルモン物質(COC)を併用する経口避妊レジメンは、ファーストライン治療薬として、月経周期のコントロールをもたらす性質、月経量を低減させる性質、および特に疾患の初期段階で最も一般的な症状である月経困難を消失させる性質のため、疑わしい、または診断された子宮内膜症において広く使用されている。しかしながら、伴う副作用のレベルが耐容性である充分な有効性がもたらされる単独の製品はない。COCでは、一部の症状は良好に処置され得るが、子宮内膜症の進行は有効に抑制されず、慢性骨盤痛は有効に処置されない。
【0005】
COCは、偽妊娠状態を作り出すことにより最初に子宮内膜の脱落膜化を起こし、その後、子宮内膜の萎縮と薄層化が起こり、それにより月経周期のコントロール、月経量の低減および月経困難の低減がもたらされる。したがって、COCにより月経関連症状は処置され得るが、子宮内膜病変の増殖および関連する慢性骨盤痛は完全に抑制されない。
【0006】
黄体ホルモン物質の作用機序は、最初に子宮内膜の脱落膜化、続いて、子宮内膜内のエストロゲン受容体に対する直接抑制効果の結果としての萎縮である。黄体ホルモン物質が分子レベルでマトリックスメタロプロテイナーゼを抑制し、それにより異所性子宮内膜の増殖が抑止されるという証拠がある。酢酸メドロキシプロゲステロンは、子宮内膜症の処置に最も広く使用されている黄体ホルモン物質である。経口投与には利用可能であるが、酢酸メドロキシプロゲステロンは、通常、デポー製剤として3ヶ月毎に投与される。POCの副作用は多様であり、最も一般的なものは、破綻出血、悪心、体液貯留および乳房圧痛である。
【0007】
GnRHアゴニストは視床下部−下垂体−卵巣軸を下方調節し、低エストロゲン閉経期状態、子宮内膜萎縮および無月経をもたらす。閉経期症状に関連する多様な副作用ならびに骨粗鬆症により、処置期間は6ヶ月間に制限される。
【0008】
既知の薬物処置および/または保存外科では、一時的な緩和がもたらされるにすぎず、再発率は50%にまで高くなる場合があり得、生殖能および生活の質に大きく影響する。さらに、年齢が40〜44歳の相当数の女性では、子宮摘出および両側卵管卵巣摘出が必要になる。
【0009】
現在利用可能な処置選択肢の上記の欠点を改善する早期治療的介入が強く必要とされている。この必要性は、特に、疾患の進行が抑制される早期治療的介入、および/または副作用プロフィール(すなわち、不正出血)が改善され、生殖成績が改善される早期治療的介入に対するものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】WO2002/00682
【特許文献2】EP869132
【発明の概要】
【発明の効果】
【0011】
ここに、式I
【化1】

【0012】
(式中、Rは、Hまたはハロゲンであり;Rは、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシル、グルクロニルまたはスルファモイルであり;Rは、Hまたはハロゲンであり;Rは、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rは、メチルまたはエチルであり;Rは、Hまたはメチルであり;Rは、Hまたはメチルであり、Rは、Hまたはアシルである)を有する化合物は、避妊薬または抗骨粗鬆症剤として、この分野における医療処置における使用のため、例えば、子宮内膜症を予防、逆転するために特に有利な複合的生物学的活性を有することがわかった。本発明による化合物は、特に子宮内膜に対して、ならびに骨粗鬆症、乳房圧痛、体重増加および/または体液貯留、不機嫌および座瘡、破綻出血および悪心に関して安全な処置と副作用を最小限にすることとのバランスの改善をもたらすものである。本発明による化合物は子宮内膜症の処置において使用され得、この場合、該化合物により、子宮内膜症の最も一般的な症状、例えば、生理痛(月経困難)、性交時の痛み(性交疼痛)、排便時の痛み(排便困難)、慢性骨盤痛、非月経性骨盤痛、骨盤の圧痛および硬化、重い月経(月経過多)、ならびに不妊が低減され得、罹患女性の生活の質に重要で有益な結果がもたらされる。
【0013】
本明細書で用いる用語を、以下のとおりに明確にする。
【0014】
接頭辞(1C−4C)などは、表示した基の意味を、1〜4個などの炭素原子を有するものに限定することを意味を有する。
【0015】
用語(1C−4C)アルキルは、1〜4個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルキル基を表す。(1C−4C)アルキル基の例としては、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、およびターシャリーブチルが挙げられる。
【0016】
用語(2C−4C)アルケニルは、2〜4個の炭素原子を有する分枝または非分枝アルケニル基を表す。(2C−4C)アルケニル基の例としては、エテニル、1−プロペニル、および2−プロペニルが挙げられる。
【0017】
用語(1C−4C)アルキニルは、2〜4個の炭素原子を有するアルキニル基を表す。(2C−4C)アルキニル基の例としては、エチニルおよび1−プロピニルが挙げられる。
【0018】
用語(1C−4C)アシルおよびさらに特定する接頭辞がないアシルは、それぞれ1〜4個の炭素原子、またはそれぞれ不特定の数の炭素原子を有するカルボン酸から誘導されるアシル基を表す。(1C−4C)アシル基は、分枝、非分枝、飽和または不飽和であり得る炭化水素を含むものであり得る。(1C−4C)アシル基の例としては、ホルミル、アセチル、プロパノイル、プロペノイルおよびピバロイルが挙げられる。アシルの大きさが特定されていない場合、これは、どのような規定のアシル基であるかは、あまり重要でないことを意味する。これは、短鎖の範囲(例えば、1C−6C個)の炭素原子のものであり得るだけでなく、長鎖アシル基(例えば、6C−34C個の炭素原子もしくは8C−24Cを有する大きさのもの)、またはより小さい範囲の任意の基もしくはそれほど相当な大きさでない脂肪族部分を有する任意の基(その例は、8C−20Cもしくは10C−16Cである(デカノイルおよびウンデカノイルが挙げられる))も意味し得る。より相当な大きさのこのような(1C−34C)または(1C−24C)のアシル(任意選択でさらに置換されている)は、その活性な非エステル化化合物の長期放出のためのプロドラッグとして使用するのに非常に好適である。エステルプロドラッグは、一般式1の2つのヒドロキシル基の各々または両方のエステル化によって作製され得る。他のプロドラッグは、第3ヒドロキシル基に対して糖部分、例えば、本発明による化合物の第3ヒドロキシ基に対してグルクロニドを有するものであり得る。
【0019】
本発明は、いくつかの実施形態にて実現され得る。
【0020】
、R、R、R、R、RおよびRが上記に規定のとおりであり、RがHであるものは、このようなより具体的な実施形態の一例である。
【0021】
2つの他の実施形態では、化合物は、本発明で主に規定しているもの、または上記のより具体的な実施形態のものであって、各々、RがHまたはFであり、RがHまたはFであるものである。
【0022】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはα−メチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0023】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはα−メチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、RがHである。
【0024】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rがメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0025】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rがメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、RがHである。
【0026】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、(1C−4C)アルキルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0027】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、(1C−4C)アルキルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、RがHである。
【0028】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rがプロピルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0029】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rがプロピルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、RがHである。
【0030】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0031】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;RがH、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、RがHである。
【0032】
別の実施形態では、Rが、HまたはFであり;Rが、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、HまたはFであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0033】
別の実施形態では、Rが、HまたはFであり;Rが、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、HまたはFであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、RがHである。
【0034】
別の実施形態では、Rが、HまたはFであり;Rが、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、HまたはFであり;Rがプロピルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0035】
別の実施形態では、Rが、HまたはFであり;Rが、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシルまたはスルファモイルであり;Rが、HまたはFであり;Rがプロピルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、RがHである。
【0036】
別の実施形態では、Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、Hまたは(1C−4C)アシルであり;Rが、Hまたはハロゲンであり;Rが、H、(1−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;Rが、メチルまたはエチルであり;Rが、Hまたはメチルであり;Rが、Hまたはメチルであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0037】
別の実施形態では、RがHであり;Rが、Hまたは(1C−4C)アシルであり;RがHであり;Rがプロピルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0038】
別の実施形態では、RがHであり;RがHであり;RがHであり;Rがプロピルであり;Rがメチルであり;RがHであり;RがHであり、Rが、Hまたはアシルである。
【0039】
本発明のさらなる実施形態では、本発明による化合物は、子宮内膜に対する抗増殖効果ならびに子宮内膜組織に対する抗増殖効果および抗炎症効果に鑑みると、子宮内膜症を処置するために使用される。また、耐容性の改善に伴い、本発明による化合物により、避妊方法を熟知している患者集団において疾患の初期段階で、好ましくは経口投与経路によって、簡単で有効な処置が提供され得る。経口処置は、医薬用製剤での本発明による化合物の投与により利用可能である。本発明による化合物での処置中、定期的な出血が一部または完全に回避され得る(無月経の誘導)。これは、逆行性月経が軽減または抑制され、それにより、疾患の再発が最小限に抑えられるため、子宮内膜症の処置において特に有用である。
【0040】
また、本発明による化合物は避妊のために使用され得る。さらに、定期的な出血を軽減または抑制する本発明による化合物の性質に鑑みると、本発明による化合物はまた、閉経前後および閉経後の女性において、例えば、更年期愁訴の処置のためのホルモン療法における使用にも非常に有用である(この場合、無月経の誘導は非常に望ましい効果である)。本発明による化合物は、治療効果および避妊効果を有するとともに、ほとんどの場合で、萎縮性または不活性である子宮内膜を誘導し、一部の被検体は分泌性(P型)子宮内膜への変換を示す。したがって、この処置により、子宮内膜の増殖または過形成が回避される。また、本発明による化合物は、他の月経関連病状(類線維腫および機能不全性不正子宮出血など)の処置、ならびに骨粗鬆症の処置にも有用である。
【0041】
理論に拘束されることを意図しないが、本発明による化合物は、部分エストロゲン様活性により、閉経前後および閉経後の女性において、エストロゲン生成の進行性の低減を相殺することができ、それにより、このような女性が閉経期を順調に終えることを補助するようである。子宮内膜の安全性、血管新生の低減、ならびに子宮内膜組織内でのERαおよびERβの局所活性化と拮抗することによって該疾患を標的化し、緩和することにより症候性レベルと分子レベルの両方で子宮内膜症が処置される可能性として示されるように、本化合物の部分抗エストロゲン様活性は、子宮内膜に対する卓越した抗増殖効果を担っていると考えられる(概説については、Bulunら,N Engl J Med 2009;360:268−79を参照のこと)。最も驚くべき所見の1つは、部分エストロゲン様活性と部分黄体ホルモン物質様効果および部分抗黄体ホルモン物質様効果を兼ね備えた本発明による化合物の性質である。両活性は、ナノモル範囲の濃度で観察される。該化合物の部分(抗)エストロゲン様/(抗)黄体ホルモン物質様プロフィールは、既知のエストロゲン様/黄体ホルモン物質様の併用処置薬と比較すると、卵胞発育の停止および排卵抑制(部分黄体ホルモン物質様活性)、子宮内膜の安全性(部分黄体ホルモン物質様および部分抗エストロゲン様活性)、改善された出血プロフィール(部分抗黄体ホルモン物質様および部分抗エストロゲン様活性)、子宮内膜病変の退縮(部分黄体ホルモン物質様および部分抗エストロゲン様活性)、ならびにより良好な全般的副作用プロフィール(乳房圧痛、体重増加、不機嫌、座瘡などに関して)を担っていると考えられる。単一化合物でのエストロゲンおよび黄体ホルモン物質受容体に対する併用効果に鑑みると、本発明による化合物は、本明細書に記載の医療用途において、処置薬を黄体ホルモン物質様化合物または抗黄体ホルモン物質様化合物と併用する必要なく医薬の活性成分として使用され得るため、特に好都合である。本発明による化合物には抗黄体ホルモン物質様活性と黄体ホルモン物質様活性の両方が存在することにより、例えばCOCの場合のような薬物併用処置レジメンのみで関連する先行技術の化合物で得られ得る医療効果がもたらされる。
【0042】
本発明による化合物は、医療用途におけるその安全性を鑑みると、特別な利点を有する。
【0043】
先行技術の化合物、特に、WO2002/00682に開示されている一部のものと比較すると、本発明による化合物は、ずっと低いエストロゲン様アゴニスト活性を有する。むしろ、これは、本明細書において部分(抗)エストロゲン様効果と称する、ERαに対する残留部分アゴニスト効果を有するアンタゴニストである。これにより、不都合な過剰のエストロゲン様効果がさらにいっそう低減される。さらに、本発明による化合物は、改善されたバイオアベイラビリティを有する。一部のこのような先行技術の化合物と比べて代謝産物の影響が少なくなることは、非治療的で有害な他の副作用が誘導される機会が低減されるという利点を有する。
【0044】
本発明による化合物での子宮内膜症の処置により、エストロゲンと黄体ホルモン物質の併用での子宮内膜症の処置と比べ、病変の増殖の抑制に関して改善がもたらされる。部分黄体ホルモン物質受容体相互作用は、本発明による化合物の部分抗エストロゲン様相互作用プロフィールと組み合わされると、子宮内膜に対してだけでなく、子宮内膜病変に対しても抗増殖効果を有し、それにより、該疾患がより主体的に分子レベルで標的化され、より有利な処置効果が得られるとともに、子宮内膜の安全性プロフィールが保護される。
【0045】
本発明による化合物は、ステロイド骨格の16,17位に対して環紋型であるシクロヘキサノン環を含む。環を環紋型にするための方法は、例えば、Loozenら(EP 0.869.132)に既に概要が記載されている。該手順では、一般的に、適切に官能化されたC16α位の鎖(これは、有機金属中間体(例えば、アルカリ金属または希土類金属(サマリウムなど)から誘導)によってC17α位に閉環される)が利用される。請求項に記載の生成物(すなわち、環紋型環内にさらなるケトン官能性を有するもの)を得るためには、適切な官能性(例えば、二重結合、ケタールなど)を所定の位置に存在させなければならず、これにより、環閉鎖が行なわれた後、このようなケトンへの変換が可能になる。任意選択で、他の保護基(3−ベンジル、アルキル−またはシリル−エーテルなど)を除去するための1つ以上のさらなる工程を行なわなければならない。より詳しくは、ケタール保護16α−ブタノン断片の結合は、この目的に最も有効である。
【0046】
ケタール官能性を脱保護し、この物質をアルドール型条件に供すると、環紋型シクロヘキサノン構造が効率的に得られる。この一例をスキーム1に示す(使用しているシントンについては、参考文献6a、6bおよび6cを参照のこと)。
【0047】
スキーム1
【化2】

【0048】
あるいはまた、周知のメタセシス反応を適用すると(Ru、MoおよびW由来の触媒系を使用)、好適に官能化された16α,17α−オレフィン鎖はシクロヘキセンに変換され得る(参考文献1)。これは、種々の常套的な官能基変換(エポキシ化、還元的開環および酸化など)を受けると、式に記載のケトンが生成される。
【0049】
この目的のための出発物質は、好ましくは、容易に入手可能な16α,17α−ジアリルステロイド、例えば、化合物5である(スキーム2参照)。
【0050】
スキーム2
【化3】

【0051】
ステロイド誘導体の合成は、一般に、文献に充分に記載されている(例えば、参考文献2)。
【0052】
具体的には、効率的な手順が、芳香族環のC1位またはC4位へのハロゲンの導入について公開されている(参考文献3a〜l)。
【0053】
フッ素を導入するためには、典型的には、N−フルオロピリジニウムトリフラートまたはN−フルオロビス(トリフルオロメチル)スルホニルイミドなどの強力なフッ素化試薬が使用され得る。通常生じる2−Fおよび4−F異性体は、クロマトグラフィーによって分離され得る。このような操作は、合成の非常に初期段階で優先的に行なわれる。より位置選択的なアプローチは、例えば、適切な4−エン−3−オンのそのエナミンへの反応後、フッ化ペルクロリルとの反応、続いて芳香族化により、4−フルオロエストラジオールを直接得ることを含む。
【0054】
フッ素を選択的に導入するための別のアプローチは、まず、2−および4−ニトロ誘導体を単離し、これらを適切なアニリンに還元し、典型的なジアゾニウム化学反応を適用すること(NaNO−HBF)によるシーマン型反応を適用することからなるものである。塩素化は塩化スルフリルなどの塩素化試薬を用いて行なわれ得、主に、4−クロロ−エストロンまたは4−クロロエストラジオールが生じるが、2−クロロ誘導体を選択的に得るためには、4−ニトロ誘導体を出発物質とした、より遠回りの経路が利用される。これは、まず、C2位が塩素化され得、その後、ニトロ基の2工程での還元的除去;すなわち、アニリンへの還元、ジアゾニウム塩への変換および次リン酸での除去が行なわれる。クロロ−またはブロモ−原子の位置選択的導入のための直接的な択一的方法は、塩化銅または臭化銅でのエストロンの2−タリウム(III)−複合体の変換を伴う。
【0055】
位置異性体の合成のための代替的な方法は、2,4−ジブロモエストラジオールへの二臭素化、続いて、パラジウム担持活性炭またはKI、ギ酸もしくはアスコルビン酸などの薬剤の適用のいずれかを用いた位置選択的還元からなるものである。
【0056】
C7α位へのアルキル置換基の導入は、一般的に、4,6−ジエン−3−オンと有機銅塩との反応によって7α−アルキル−4−エン−3−オンを得、これを芳香族化して7α−アルキルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3−オールを得ることにより行なわれる。このような手順によって生じる7β−異性体(条件および置換基に応じて異なる量)は、適切な段階で、クロマトグラフィーまたは晶出のいずれかによって除去する(参考文献1、7)。
【0057】
C15β置換基は、15−エン−17−オンと有機銅塩との反応によって立体選択的に導入される。必要な15α−異性体を得るためには、再度、二重結合を導入し(例えば、17−シリルエノラートの三枝酸化によって)、これを触媒により還元すると、C15置換基は強制的に15α位に配置される(参考文献4)。
【0058】
あるいはまた、15α置換エストロンは、最初に15βシアノ基を導入し、これを塩基触媒性異性化によって15α−シアノ基に変換し、そのままで所望の15α−誘導体への官能基相互変換に適したものにすることによって得られる(参考文献5)。15α−アルキルステロイドを合成するための直接的アプローチは、15α−メチルエストロンの構築に例示される生体模倣全合成からなるものである。
【0059】
13−エチル誘導体が必要とされる場合、13−エチルエストロンまたは13−エチルノルジオン(ともに、全合成方法(避妊用ステロイドの化学反応において充分に記載)によって入手可能)が、スキーム1および2に概要を示したシーケンスにおいて出発物質として使用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、卵巣摘出雌ラットの子宮重量に対するEEおよび化合物10での4週間の毎日経口投与の効果である。
【発明を実施するための形態】
【0061】
参考文献:
1a)Bulunら,N Engl J Med 2009;360:268−79
1b)H.J.J.Loozen et al,EPO 869 132 A1
2)例えば、J.Fried and J.Edwards,Organic Reactions in Steroid Chemistry,Vol I/II;Nostrand Reinhold Company,New York,1972;and C.Djerassi,Steroid Reactions;Holden−Day Inc.,San Francisco 1960参照
3a)A.J.Tomson,J.P.Horwitz,J.Org.Chem.,24,2056(1959)
3b)W.T.Pennington,G.Resnati,D.D.Dessmarteau,J.Org.Chem.,57,1536(1992)
3c)T.Utne,R.B.Jobson,R.B.Babson,J.Org.Chem.,33,2469(1969)
3d)H.Ali,J.Rousseau,T.G.Gantchev,J.E.van Lier,J.Med.Chem.,36,4255(1993)
3e)H.Ali,J.Rousseau,J.E.van Lier,J.Med.Chem.,36,3061(1993)
3f)V.C.O.Njar,T.Arunachalam,E.Caspi,J.Org.Chem.,48,1007(1983)
3g)Y.Seimbille,H.Ali,J.van Lier,J.Chem.Soc.,Perkin Trans 1,657(2002)
3h)P.C.Bulman Page,F.Hussain,J.Maggs,P.Morgan,B.K.Park,Tetrahedron,46,2059(1990)
3i)D.S.Wilbur,H.A.O’Brien Jr.,J.Org.Chem.,47(2),359(1982)
3j)E.Schwenk,C.G.Castle,E.Joachim,J.Org.Chem.,28,136(1963)
3k)P.C.Bullman Page,F.Hussain,N.M.Bonham,P.Morgan,J.L.Maggs,B.Kevin Park,Tetrahedron,47,2871(1991)
3l)M.Numazawa,K.Kimura,M.Ogata,M.Nagaoka,J.Org Chem,50(25),5421(1985)
4)J.R.Bull,M.Loedolff,J.CHem.Soc,Perkin Trans.l,1269(1996)
5)M.B Groen,F.J.Zeelen,Rec.Trav.Chim.Pays Bas 98(4),239(1979)
6a)E.Keinan,S.C.Sinha,A.Sinha−Baghi,J.Chem.Soc,Perkin Trans 1,3333(1991)
6b)Q.Zhang,Y.Wu,Tetrahedron,63,10407(2007).
6c)B.M.Trost,R.A.Kunz,J.Amer.Chem.Soc,97,7152(1975).
7)H.J.J.Loozen,A.G.H.Ederveen,F.A.Dijcks,WO2006/027347 A1.
本発明による化合物は、治療において、医薬として精製した化合物を添加剤なしで直接投与することによって使用され得るが、該化合物と1種類以上の医薬用賦形剤および/または添加剤との医薬用製剤を製造することが、より一般的であり、より簡便である。このような製剤は、経口、口腔内、非経口、経皮、経粘膜および経膣経路などの具体的な投与経路に適合され得る。各投与経路では、レシピエントの体循環への吸収を最適化するため、またはレシピエントの標的組織内での局所作用を最適化するために、特別な適合が必要とされる。本発明による化合物を含む医薬のさらなる投与経路は、静脈内、皮下または筋肉内注射用のものであり得る。また、該化合物は、レシピエントの体内への経皮または経粘膜吸収を得るための補助とともに投与され得る。「経粘膜」は、例えば、口腔内、鼻内、膣内または直腸組織経由の吸収を意味する。口腔内、肺経由または経鼻投与のための好適な投薬形態は、スプレー剤または坐剤を用いて調製され得る。レシピエントはヒトまたは動物であり得る。該化合物が使用され得る疾患は女性のヘルスケアの分野のものであるため、経膣投与経路も想定される。医薬は、経膣薬物送達用のデバイスの形態(例えば、除去可能な子宮内デバイスのために可撓性ポリマーとの混合状態)または除去可能な経膣デバイス(例えば、リング形態)で製剤化され得る。また、本発明による薬物の長期放出のためのポリマーまたは他の添加剤を、非経口埋入物(皮下埋入物など)に使用してもよい。したがって、長期放出製剤または特定の吸収プロフィールが意図された他の製剤もまた、本発明の範囲に含まれる。本発明による化合物、特に化合物10は、特にOrg 41621(WO2002/00682参照)と比べて、水に非常に良好に可溶性である。これにより、飲用または注射用製剤などの高い可溶性が望ましい医薬の製造における使用のための利点がもたらされる。
【0062】
本発明による化合物は、レシピエントに対し、意図される治療目的のために治療有効量で投与されるのがよい。レシピエントに対して選択される治療量は、レシピエントの体重、健康状態、疾患重症度、副作用のリスクおよび投与経路に依存し得る。一般に、日用量または毎日の投薬のための投薬単位内の量は、1000mg〜0.005mgの範囲内である。より好ましい範囲は10mg〜0.05mgである。長期放出の製剤およびデバイスでは、製剤中の量は、上記に示した毎日放出量よりも多い。
【0063】
また、本発明による化合物は、診断目的に使用され得る。例えば、病態を特定するため、または患者の体内の特定の位置において分子の存在を追跡するために、同位体標識した化合物が使用され得る。本発明は、同位体標識された式Iによる化合物も包含する。この式および本発明による化合物の規定様式は、例えば、化合物群のこの表示様式において一般的な重水素化化合物を含む。本発明の化合物に組み込まれ得る同位体の他の例としては、それぞれ、水素、炭素、ハロゲンまたは酸素の同位体、例えば、H、H、13C、14C、18O、17O、35S、18F、および36Clなどが挙げられる。
【0064】
重水素(すなわち、H)などのより重い同位体での置換により、代謝安定性が大きくなることに起因する特定の治療上の利点(例えば、インビボ半減期の増大または必要投薬量の低減)がもたらされることがあり得、したがって、一部の状況では好ましい場合があり得る。11Cおよび18Fは、PET(陽電子断層撮影法)トレーサーとしての使用のために本発明の化合物に組み込むのに好ましい同位体である。同位体標識された式1の化合物は、一般的に、非同位体標識試薬を適切な同位体標識試薬に置き換えることにより、本明細書に記載のスキームおよび/または実施例に開示したものと同様の手順に従って調製され得る。
【0065】
スキーム2による合成の例
(本明細書における化合物の命名によって化合物の化学構造に対して不明瞭性が生じ、名称におけるその不明瞭性が、本明細書の全内容に鑑みて明白な誤りを正すことによっても解消され得ない場合、意図される構造は、スキームに図示した構造によって決定的に判断される)。
【0066】
(7α,17β−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオール(化合物1)
7α,17β−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオール−(17−アセテート)(参考文献1参照)(360mg)のTHF(10ml)/メタノール(10ml)混合物溶液に、150mgのNaOHを添加した。この混合物を室温で2時間撹拌した。次いで、反応液を濃縮し、残渣を水で希釈し、1N HClで酸性化した。生成物を酢酸エチルで抽出した。抽出物を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、残渣をシリカゲルでクロマトグラフィー処理した(溶離液としてヘプタン/酢酸エチルの勾配を使用)。このようにして単離した精製物質をアセトン水で処理し、250mgの白色の結晶性物質を得た;Mp 104〜107℃。
【0067】
0.24(ヘプタン/酢酸エチル 7/3).NMR(CDCl)0.77(s,3,CH)、0.87(t,3,CH)、δ 2.76および2.85(dd,2,CH)、3.72(t,1,CHOH)、6.52(d,1,H−4)、6.62(dd,1,H−2)、7.12(d,1,H−1)。
【0068】
(7α,17β)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オール(化合物2)
(7α,17β)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17−ジオール(5g)のDMF(15ml)溶液に、13gのKCOおよび3.3mlの臭化ベンジルを添加した。反応液を3時間撹拌し、次いで、水に注入し、酢酸エチルで抽出、乾燥および濃縮することにより処理した。粗製物質をSiOでクロマトグラフィー処理し、6.1gの(7α,17β)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オールを得た。
【0069】
Rf 0.32(ヘプタン/酢酸エチル 7/3).
NMR(CDCl):0.77(s,3H,18−CH)、0.87(t,3H,CH−prop.)、5.02(s,2H,CHO−ベンジル(benzl))、3.76(m,1H,CHOH)、6.71(d,1H,H4)、6.78(dd,1H,H2)、7.20(d,1H,H1)、7.28−7.44(m,5H,ベンジル原子(arom))。
【0070】
(7α)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(化合物3)
15%NaOCl(30g)水/NaBr(0.15g)溶液を、(7α,17β)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オール(10g)及びTEMPO(200mg)の酢酸エチル(80ml)溶液に、0〜5℃で添加した。混合物を激しく撹拌し、反応をtlcによってモニタリングした。
【0071】
反応終了後、5〜10℃まで冷却しながら、Na(15g)の水(100ml)溶液を添加することにより、過剰の試薬を分解させた。1/2時間撹拌後、有機層を分離し、水相を酢酸エチルで1回抽出した。合わせた有機層を水で洗浄し、乾燥させ、濃縮し、生成物をシリカゲルでのクロマトグラフィーによって精製し、8.5gの化合物3を得た。
【0072】
0.50(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)
NMR(CDCl):0.89(t,3H,CH)、0.90(s,3H,18CH)、2.80(d,1H,6CH)、2.93(dd,1H,6CH)、5.02(s,2H,CHO−)。
【0073】
(7α,16α)−3−(フェニルメトキシ)−16−(2−プロペニル)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(化合物4)
10.3mlの1M LiHMDS溶液を15mlの乾燥THFに添加し、−40℃まで冷却した。続いて、(7α)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(4.65g)のTHF(15ml)溶液を滴下し、−40℃での撹拌を1時間継続した。臭化アリル(1.05ml)のTHF(5ml)溶液を滴下し、混合物を−20℃でさらに1時間撹拌し、次いで、飽和NHClに注入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を洗浄し、乾燥させ、濃縮し、生成物をクロマトグラフィーによって精製し、4.2gの4を得た。
【0074】
0.65(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)
NMR(CDCl):0.89(t,3H,プロピル CH)、0.94(s,3H,18CH)、2.77および2.92(d+dd,2H,H6)、5.04(s,2H,CHOPhe)、5.09(m,2H,アリルCH)、5.75(m,1H,アリルCH)。
【0075】
(7α,16α,17β)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピル−16,17−ビス(2−プロペニル)エストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オール(化合物5)
1Mアリルマグネシウムブロミド(29.2ml)のエーテル溶液に、80mlの乾燥THFを添加した。混合物を−60℃まで冷却し、(7α,16α)−3−(フェニルメトキシ)−16−(2−プロペニル)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(10g)のTHF(50ml)溶液を滴下した。混合物を−60℃でさらに1/2時間撹拌し、0℃まで昇温させ、その温度で1時間撹拌した。反応混合物を飽和NHClに注入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和NaClで1回洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残留物をSiOでクロマトグラフィー処理し(ヘプタン/酢酸エチル)、7.2gの化合物5を得た。
【0076】
(ヘプタン/酢酸エチル 9/1)0.26(出発物質 0.45).NMR(CDCl):0.89(t,3,プロピル)、0.95(s,3H,18−CH)、2.75−2.85(d+dd,2H,6−CH)、5.02(s,2H,CH−ベンジル)、4.98−5.20(m,4H,2×アリルCH)、5.79および6.07(2×m,2H,アリルCH)、6.70(d,1H,H−4)、6.87(dd,1H,H2)、7.18(d,1H,H1)、7.30−7.44(m,5H,ベンジル)。
【0077】
(7α,16β,17α)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10),22−テトラエン−17β−オール(化合物6)
化合物5(6.7g)のジクロロメタン(120ml)溶液に0.4gのグラブス触媒を添加し、混合物を室温で撹拌した。1時間後、さらに一部の触媒0.4gを添加し、さらに1時間撹拌し、反応を終了させた。
【0078】
溶媒を蒸発させ、150mlのトルエンおよび40gのAlを添加した。混合物を60℃で1時間撹拌し、次いでセライトで濾過した。濾液を濃縮し、6.17gの生成物を得た。
【0079】
NMR(CDCl):0.87(t,3H,プロピル)、0.98(s,3H,18−CH)、2.74および2.90(d+dd,2H,6−CH)、5.02(s,2H,CH−ベンジル)、5.96(m,2H,オレフィンシクロヘキサン)、6.70(d,1H,H−4)、6.87(dd,1H,H2)、7.21(d,1H,H1)、7.16−7.44(m,5H,フェニル)。
【0080】
(7α,16β,17α,22β,23β)−22,23−エポキシ−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オール(化合物7)
化合物6(6g)のジクロロメタン(150ml)溶液に、6gのNaHCOおよび3.9gの70%メタクロロ過安息香酸を、反応混合物を0℃に維持しながら添加した。反応液を0℃で2時間撹拌した。水を添加し、生成物をジクロロメタンで抽出した。有機層を100mlの5%Na溶液で1回洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣をシリカゲルでクロマトグラフィー処理し(ヘプタン/酢酸エチル勾配)、3.7gのβ−エポキシド7を得た。
【0081】
0.36(tol/酢酸エチル)(出発物質のR 0.40. NMR(CDCl):0.90(s,3H,CHO)、0.88(t,3H,CH)、2.55(m,1H,9−H)、2.92(dd,1H,6−CH)、2.75(d,1H,6−CH)、3.32(t,1H,CHO−エポキシド)、3.38(t,1H,−CHO−エポキシド)、5.02(s,2H,CHO)。
【0082】
(7α,16β,17α,22β)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−17,22−ジオール(化合物8)
エポキシド7(4.16g)の乾燥THF(20ml)溶液を、LiAlH(340mg)のTHF(30ml)懸濁液に滴下し、次いで1時間還流した。反応液を室温まで冷却し、0.35mlの水、0.35mlの18%NaOHおよび1.2mlの水を逐次添加することにより、試薬をクエンチした。混合物を10分間撹拌し、次いで、セライトで濾過し、濾液を濃縮し、残渣をクロマトグラフィーによって精製し、3.35gの化合物8を得た;
Mp:146〜147℃;R 0.20(tol./酢酸エチル 8/2)。
【0083】
NMR(CDCl):0.88(t,3H,CHプロピル)、0.90(s,3H,18−CH)、4.26(br.m,1H,CHOH)、5.02(s,2H,CH−ベンジル)、6.70(d,1H,H4)6.78(dd,1H,H2)7.18(d,1H,H1)、7.15−7.44(m,5H,フェニル)。
【0084】
(7α,16β,17α)−17−ヒドロキシ−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オン(化合物9)
N−メチルモルホリン−N−オキシド(7.4g)のジクロロメタン(150ml)溶液に、385mgの過ルテニウム酸テトラプロピルアンモニウムを添加し、混合物を5分間撹拌した。次いで、20gの化合物8を含むジクロロメタン(150ml)を添加した。4時間後、反応が終了した。混合物を100mlに濃縮し、150mlのジエチルエーテルおよび2gの活性炭を添加した。撹拌を一晩継続した。固形物をセライトで濾過し、濾液を濃縮し、残渣を短いシリカカラムに通すことにより精製し、14.5gの化合物9を得た。
【0085】
0.25(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)
NMR(CDCl):0.88(t,3H,CHプロピル)、0.97(s,3H,18−CH)、2.40および2.76(dd,2H,CHOH−CH−CO)、2.75および2.90(dd,2H,安息香酸C6)、5,00(s,2H,CHO)、6.70(d,1H,H4)、6.79(dd,1H,H2)、7.19(d,1H,H1)、7.30−7.44(m,5H,フェニル)。
【0086】
(7α,16β,17α)−3,17−ジヒドロキシ−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オン(化合物10)
化合物9(14g)のエタノール(280ml)溶液に、1.4gの5%Pd/Cおよび1mlのトリエチルアミンを仕込んだ。混合物を1.5気圧のHガスで水素化した。反応終了後、水素をポンプによって排出して窒素ガスで置き換え、混合物をセライトで濾過した。濾液を濃縮し、数回、同時蒸発してエタノールを除去し、次いで、20mlの酢酸エチル/トルエン(1/1/v/v)から晶出させ、8.05の化合物10を得た。
【0087】
(トルエン/酢酸エチル 1/1)0.45。
【0088】
NMR(DMSOd6):0.82(s,3H,18−CH)、0.86(t,3H,CHプロピル)、6.42(d,1H,H4)、6.50(dd,1H,H2)、7.05(d,1H,H1)、9.00(s,1H,3−OH)。
【0089】
化合物10を、アセトニトリルからの晶出によって以下のとおりにして精製した:
粗製化合物をアセトニトリルに溶解させ、10容量部(10ml中1g)濃縮した。種晶を添加すると、直ちに晶出が起こった。冷蔵庫内に一晩入れた後、結晶を濾別し、冷アセトニトリルで洗浄し、一定重量になるまで室温で真空乾燥させた。75%収率で得られた結晶には、3.7%m/mのアセトニトリルが含まれていた。このようにして得られた結晶形態は、化合物10のアセトニトリル溶媒和物である。
【0090】
化合物10の結晶性の精製非溶媒和物(ansolvate)を、化合物10の結晶性のアセトニトリル溶媒和物から以下のようにして得た。
【0091】
アセトニトリル溶媒和物を、真空にて24時間、80℃で加熱することにより非溶媒和物に変換させた。
【0092】
スキーム1による合成の例
(7α)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オンジメチルヒドラゾン(化合物11)
(7α)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(35g)のトルエン(150ml)溶液を、13mlのジメチル(metyl)ヒドラジンおよび0.7mlのTFAに添加した。反応混合物を110℃で3時間加熱した。次いで、反応混合物を室温まで冷却し、100mlの飽和NaHCO溶液に注入した。有機層を分離し、飽和NaHCOで1回洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残渣をSiOでクロマトグラフィー処理し、25gのジメチルヒドラゾンを得た。
【0093】
0.27(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)。
【0094】
NMR(CDCl):0.85−0.89(tr+s、6H,18−CH+プロピル−CH)、2.48(s,6H,ジメチルヒドラゾン)、6.71および6.79(d+dd,2H,H2およびH4)。
【0095】
(7α,16α)−16−[2−(2−メチル−1,3−ジオキソラン−2−イル)エチル]−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オンジメチルヒドラゾン(化合物12)
化合物11(8.2g)の乾燥THF(50ml)溶液に、12.5mlのBuLiの1.6Mヘキサン溶液を−60℃で滴下した。−60℃で15分間撹拌後、混合物を0℃で15分間維持し、次いで、再度−60℃に冷却した。次いで、3,3mlのDMPUを添加した後、6.6gの2−(2−ヨードエチル)−2−メチル−1,3−ジオキソランを含むTHF(10ml)を滴下した。反応液を−60℃で2時間撹拌し、次いで、300mlの10% NHClの添加によってクエンチし、酢酸エチルで2回抽出した。有機層を水で1回洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理し、5.2gの化合物12を得た。
【0096】
NMR(CDCl):0.87(s,3H,18CH)、0.89(t,3H,CHプロピル)、1.34(s,3H,CH−ジオキソラン)、2.42(s,6H,N−ジメチル)、3.95(m,4H,ジオキソランCH)、5.2(s,2H,OCHフェニル)。
【0097】
0.41(ヘプタン/酢酸エチル 6/4)。
【0098】
(7α,16α)−16−(3−オキソブチル)−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピルエストラ−1,3,5(10)−トリエン−17−オン(化合物13)
オキソン(5.0g)の水(15ml)溶液を、化合物12(2.27g)のアセトン(5ml)溶液に滴下した。反応液を室温で一晩撹拌し、次いで、水で希釈し、生成物を酢酸エチル中に抽出した。有機層を水で1回洗浄し、乾燥させ、濃縮した。残留物をシリカゲルでクロマトグラフィー処理し、1.3gの化合物13を得た。
【0099】
0.50(ヘプタン/アセトン 6/4)。
【0100】
NMR:(CDCl):0.90(t,3H,CHプロピル)、0.93(s,3H,18CH)、2.18(s,3H,CHCO)2,79,2.93(d,およびdd,2H,6CH)、5.02(s,2H,CHO)、6.72(d,1H,H4)、6.80(dd,1H,H2)、7.20(d,1H,H1)
【0101】
(7α,16β,17α)−17−ヒドロキシ−3−(フェニルメトキシ)−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オン(化合物9)
ヘキサン中1.6mのBuLi(4.8ml)を、ヘキサメチルジシラザン(1.8ml)の乾燥THF(10ml)溶液に−40℃で添加することにより、リチウムヘキサメチルジシラジドの溶液を調製した。この溶液を−40℃で15分間撹拌し、7.8ml量のこの溶液を、化合物13(1.34g)の乾燥THF(20ml)溶液に−70℃で滴下した。続いて、混合物を−70℃でさらに1時間撹拌し、次いで、50mlの飽和NHCl溶液に注入し、酢酸エチルで抽出した。有機層を洗浄し、乾燥させ、濃縮し、クロマトグラフィーによって精製し、0,76gの化合物9を得た。R(ヘプタン/酢酸エチル 7/3)0,25(出発物質にR 0.50).NMR(DMSOd6):0.82(s,3H,18−CH)、0.86(t,3H,CHプロピル)、6.42(d,1H,H4)6.50(dd,1H,H2)7.05(d,1H,H1)、9.00(s,1H,3−OH)。
【0102】
生物学的効果の例
薬理学的インビトロプロフィール
(7α,16β,17α)−3,17−ジヒドロキシ−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オン(化合物10)は、部分ER/部分PR(アンタ)アゴニスト様プロフィールを兼ね備えている点で、特殊であり、EC50は、ERαでは1.8nmol/Lであり、プロゲステロン受容体B(PR−B)では3.8nmol/Lである。(7α,16β,17α)−3,17−ジヒドロキシ−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オンは、アンドロゲン受容体(AR)のアンタゴニストであり、IC50は125nMである。
【0103】
(7α,16β,17α)−3,17−ジヒドロキシ−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オンの薬理学データを、既知のヒドロキシル類似体(7α,16β,17α,22β)−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−3,17,22−トリオール(Org 41621;WO2002/00682)と対比して表1にまとめる。
【表1】

【0104】
このビトロ(vitro)核受容体データから、化合物10は、PR−BとPR−Aの部分(アンタ)アゴニストであり、ナノモルで活性を有すると結論付けることができる。PRにおけるその活性に加え、化合物10は、ERαにおいても低ナノモル範囲で部分(アンタ)アゴニスト活性を示し、ERβにおいては完全なアンタゴニストである。
【0105】
インビボデータ
4週間のフェーズI試験において、ヒト女性志願者を、Cmaxが16nMとなる血漿レベルで、化合物(7α,16β,17α)−3,17−ジヒドロキシ−7−プロピル−16,24−シクロ−19,21−ジノルコラ−1,3,5(10)−トリエン−22−オン(化合物10)に曝露し、29日目に子宮内膜生検材料を採取した。化合物10への曝露は、毎日の10mgのOrg 41621(代謝によって化合物10がもたらされる)の経口投与の投与によって行なった。組織病理学検査スコアにより、ほとんどの場合で萎縮性または不活性な子宮内膜が示され、一部の被検体では分泌性(P型)子宮内膜への変換が示された。過形成の徴候はみとめられなかった。
【0106】
無傷の月経周期が順調な雌ザルでは、化合物10により、1日1回の経口投与の21日目に、2つの異なる種(ベニガオザルおよびカニクイザル)において排卵が抑制されることが示された。ゼラチン/マンニトールでの経口投与の際の、排卵抑制のための最小活性用量(MAD)は、<=0.1mg/kg/日であると確立された。
【0107】
インビトロ薬理学的プロフィールに鑑みると、閉経後の女性で観察された子宮内膜組織応答および示された非ヒト霊長類における排卵抑制能は、化合物10によって、子宮内膜組織および子宮内膜組織の両方に対してエストロゲン様刺激が有効に低減され、ほぼ、無月経状態が誘導されることを示す。この薬力学的プロフィールは、子宮内膜症の処置における治療有効性を表す。
【0108】
無傷の月経周期が順調な雌ラットでは、化合物10により、最小活性用量(MAD)0.1mg/kg/日で排卵が抑制されることが示された。このことと整合して、化合物10は、4週間の反復投与試験で、ゼラチン/マンニトールでの経口適用後および皮下適用後のいずれにおいても、卵巣摘出雌ラットのLHおよびFSHの循環レベルを有効に抑制し得ることが示された。同じ一連の試験において、化合物10は、膣組織、コレステロール代謝および骨(後者は、骨塩量および循環オステオカルシンの減少の支持によって測定)に対してエストロゲン受容体アゴニストとしての挙動を示すことが示された。LH/FSHの調節に対する有効性に加え、脊柱前弯症モデルにおいて化合物10に対するほぼ完全なアゴニスト応答が示されたことにより、CNSにおけるエストロゲン受容体の活性化が示された(雌の性行動の促進)。17β−エストラジオール(E2)およびエチニル−エストラジオール(EE)などの非選択的な完全アゴニストエストロゲンとは異なり、化合物10は、ラット子宮組織を軽度に刺激したにすぎなかった(図1)。
【0109】
ラットでのインビボ試験のデータの概要を表2にまとめる。
【表2】

【0110】
胚/胎児安全性
ラットでの胚/胎児毒性試験において胚/胎児安全性が観察され、これにより、本発明による化合物は催奇活性がないことが示された。妊娠中の器官形成期に0.03、0.09および0.15mg/kg/日でOrg 41621を妊娠ラットに経口強制投与すると、母体の体重減少または低体重増加および食物摂取量の減少がもたらされた。0.09および0.15mg/kgでの処置は、1リットルあたりの早期吸収の平均数の明白な増加(埋め込み後、それぞれ、15%および24%の減少)ならびに主に四肢、上腕骨および肩甲骨が障害された胎児の主な異常の増加(それぞれ、胎児273匹のうち3匹、および胎児216匹のうち11匹)と関係していた。
【0111】
妊娠中の器官形成期に0.03、0.1、0.3、0.5、1、3および10mg/kg/日で化合物10を妊娠ラットに経口強制投与すると、母獣において、0.1mg/kg/日から10mg/kg/日まで(10mg/kg/日を含む)で、体重増加の有意な低減が引き起こされた。化合物10により、>0.3mg/kgの投薬量で、早期吸収が誘導された(埋め込み後、ほぼ80%の減少)。Org 44920処置群では、0.1mg/kgで少数において軽微な欠陥(胎児153匹中4匹の発生率で波状肋骨)がみられた以外、大きな欠陥は観察されなかった。0.3mg/kgでは影響は観察されなかった(合計13匹胎児において)。
【0112】
結論として、化合物10を用いたラットでの胚/胎児発生予備試験の結果に基づくと、用量0.3mg/kgまでは、ラットにおいて催奇性の徴候は示されなかった(胎児および同腹子の数は限定的ではあるが)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】

【化1】

(式中、
は、Hまたはハロゲンであり;
は、H、(1C−4C)アルキル、(1C−4C)アシル、グルクロニルまたはスルファモイルであり;
は、Hまたはハロゲンであり;
は、H、(1C−4C)アルキル、(2C−4C)アルケニルまたは(2C−4C)アルキニルであり;
は、メチルまたはエチルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、Hまたはメチルであり;
は、Hまたはアシルである)
を有する化合物。
【請求項2】
がHである、請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
がHまたはFであり、RがHまたはFである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項4】
がHまたはα−メチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項5】
がメチルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項6】
が(1C−4C)アルキルである、請求項1または2に記載の化合物。
【請求項7】
がプロピルである、請求項6に記載の化合物。
【請求項8】
がHであり、RがHである、請求項5に記載の化合物。
【請求項9】
がメチルであり;RがHであり、RがHである、請求項3に記載の化合物。
【請求項10】
がプロピルである、請求項9に記載の化合物。
【請求項11】
がHまたは(1C−4C)アシルである、請求項1に記載の化合物。
【請求項12】
がHであり;RがHであり;Rがプロピルであり;Rがメチルであり;RがHであり、RがHである、請求項11に記載の化合物。
【請求項13】
化合物10
【化2】

の構造を有する、請求項12に記載の化合物。
【請求項14】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物および1種類以上の医薬用賦形剤を含む医薬組成物。
【請求項15】
治療のための医療処置における使用のための請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項16】
子宮内膜症の処置における使用のための請求項15に記載の化合物。
【請求項17】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物での処置を必要とするヒトまたは動物の処置方法であって、該化合物を医薬用製剤にて治療有効用量で投与することによる方法。
【請求項18】
ヒトが女性であり、処置の必要は子宮内膜症の治療のためである、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
女性の子宮内膜症の処置のための医薬の製造のための請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物の使用。
【請求項20】
請求項1〜13のいずれか一項に記載の化合物を女性に投与することを含む避妊方法。

【図1】
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【公表番号】特表2012−529466(P2012−529466A)
【公表日】平成24年11月22日(2012.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−514456(P2012−514456)
【出願日】平成22年6月9日(2010.6.9)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058042
【国際公開番号】WO2010/142705
【国際公開日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(512059936)エム・エス・ディー・オス・ベー・フェー (24)
【Fターム(参考)】