説明

好中球によって引き起こされる疾患の治療におけるアンレキサノクスの使用

アンレキサノクスである薬剤は、好中球増加を伴う疾患の治療に有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、好中球増加を伴う疾患の治療におけるアンレキサノクスの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
サルコイドーシス、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、嚢胞性線維症(CF)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、および喘息を含む慢性呼吸器疾患は、主要な健康問題を構成するものであるが、現行の治療法による治療は満足の行くものではない。そのような治療法としては、副腎皮質ステロイドの吸入が挙げられるが、その使用は、必ずしも効果的ではなく、全身性副作用を含む望ましくない副作用を引き起こす場合がある。多くの呼吸器の病状は、肺損傷の要素を含んでおり、そのような疾患を治療することができる単一の薬剤は存在しない。多くの場合、そのような疾患は、2もしくは3種類以上の薬物の共投与を必要とする。
【0003】
アンレキサノクスは、口腔潰瘍の治療に認可され、そして、点鼻薬としての抗アレルギー薬として認可されている化合物である。これは特許文献1に開示されており:提案されている治療法は、アレルギー性喘息、アレルギー性皮膚炎、花粉症、およびその他のアレルギー性疾患に対するものであり、提案されている投与経路は、経口、ならびに注射液、吸入、および軟膏によるものである。
【0004】
好酸球浸潤を特徴とする呼吸器の炎症、すなわち喘息は、組織の損傷を伴わない肺機能の可逆的な喪失を特徴とする。多くの場合、喘息は、肺結合組織におけるコラーゲン沈着の増加を特徴とし、好中球浸潤は関与しない。
【0005】
COPD、気管支拡張症、およびARDSなどの不可逆的閉塞性肺疾患は、破壊性肺炎症と強く関連している。これらは、喫煙および感染などの環境的な炎症の引き金を特徴とし、白血球浸潤、ならびにサイトカイン、ケモカイン、および多くの炎症性メディエータの放出をもたらす。これらのメディエータは、白血球、主として好中球による、スーパーオキシドアニオン、マトリックスメタロプロテアーゼ、およびカテプシンEなどの破壊性作用物質の放出を引き起こす。このような好中球由来分子は、肺のガス交換細胞層、およびその支持結合組織の破壊を引き起こし、進行性で不可逆的な肺の損傷、および不可逆的な肺機能の喪失をもたらす。
【0006】
喘息などの可逆的閉塞性肺疾患は、不可逆的閉塞性肺疾患とは異なり、主に好酸球浸潤および組織の破壊を伴わない肺機能の可逆的な喪失を特徴とする呼吸器の炎症を主たる特徴とする。喘息は、閉塞性気管支痙攣を引き起こす、引き金(寒さ、運動、およびアレルゲンなど)に対する気管支過敏症を特徴とする。そのような疾患は、一旦、引き金が取り除かれるか、または患者が気管支拡張薬で治療される場合、完全に回復可能(reversible)である。
【0007】
可逆的および不可逆的閉塞性肺疾患は、病理学的には非常に異なっている。これらには、免疫系の異なる部分が関与している。可逆的閉塞性肺疾患は、Th2免疫系の活性化によって引き起こされる一方、不可逆的閉塞性肺疾患は、自然免疫系の活性化を特徴とする。従って、不可逆的および可逆的閉塞性肺疾患は、非常に異なる治療手法が必要であると考えられている。例えば、副腎皮質ステロイドの吸入は、大多数の可逆的閉塞性肺疾患の患者にとって非常に効果的な治療であることが知られているが、これは、不可逆的閉塞性肺疾患にはほとんど治療効果がない。
【0008】
特許文献2は、炎症性障害の治療のための、マスト細胞阻害薬とPPARγアゴニストとの組み合わせを開示している。COPDは、数多くの炎症性障害の1つとして挙げられるものであり、アンレキサノクスは、数多くのマスト細胞阻害薬の1つとして挙げられるものである。マスト細胞阻害薬は、通常は、好中球を阻害しない。経口投与が、数多くの考えられる投与経路の1つとして挙げられている。
【0009】
例えば、非特許文献1および非特許文献2は、アンレキサノクスが好中球に対して影響を及ぼすと報告しており、これは、COPDの治療に有益である効果とは逆である。これは、主として、そのロイコトリエンB4およびS100A12に対する影響に基づく。具体的には、アンレキサノクスは、LTB4産生を増加させることが示されており、これは、COPDにとって好ましくない。
【0010】
好中球は、通常は血流中に見られる。しかし、特に細菌感染およびある種の癌の結果としての、炎症の急性期の過程では、好中球は、化学遊走と称されるプロセスにおいて、化学的シグナル(インターロイキン−8(IL−8)、インターフェロン−ガンマ(IFN−ガンマ)、およびC5aなど)に続いて、まずは血管を通って、次に間質を通って、炎症部位へ遊走する。
【0011】
非特許文献1は、アンレキサノクスが好中球の生物学に影響を及ぼすことを報告している。しかし、インビトロ実験で用いられたアンレキサノクスの濃度は、インビボで得られるいずれのものよりも高い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】米国特許第4143042号
【特許文献2】国際公開第2009/007673号
【非特許文献】
【0013】
【非特許文献1】Taniguchi et al., 1990
【非特許文献2】Kimishoto et al., 2006
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
従って、文献の報告から考えると、経口投与された場合に、アンレキサノクスがLPS誘導性肺好中球増加症の治療に効果的であることが見出されたことは驚くべきことであった。アンレキサノクスは、これまで、アレルギー性鼻炎および喘息(Th2疾患)などのアトピー性疾患に用いられてきた。従って、そのような分子が好中球増加症(Th1/自然型の炎症)を阻害することは非常に予期されないことである。これは、本発明の基礎となる原理である。
【0015】
本発明は、例えば感染または炎症の証拠を伴う、慢性呼吸器疾患を有する患者への投与において特に有用であり得る。本発明の利点は、この活性薬剤に関連する全身性副作用の低減であり得る。アンレキサノクスは、気管支拡張薬としての効果はほとんどまたはまったくないことが見出されており;従って、アレルギー性喘息の治療には有用ではないであろう。
【0016】
先行技術から考えると、吸入されたアンレキサノクスが、COPDおよびARDSを例とする破壊性肺炎症を含む病状の治療に有用であることは驚くべきことである。これらはいずれも、白血球浸潤、サイトカイン、ケモカイン、および多くの炎症性メディエータの
放出をもたらす炎症の引き金を特徴とする。これらのメディエータは、白血球、主として好中球による、スーパーオキシドアニオン、マトリックスメタロプロテアーゼ、およびカテプシンEなどの破壊性作用物質の放出を引き起こす。このような好中球由来分子は、肺のガス交換細胞層、およびその支持結合組織の破壊を引き起こし、進行性で不可逆的な肺の損傷、および不可逆的な肺機能の喪失をもたらす。喘息とは異なり、COPDは、自然免疫系の活性化を特徴とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
第一の局面によると、本発明は従って、好中球増加を伴う病状の治療のための、経口送達される活性薬剤としてのアンレキサノクスである。
【0018】
アンレキサノクスはまた、喘息の治療にも有用であり得る。しかし、アンレキサノクスは気管支拡張薬でないため、治療される被験者は、気管支拡張薬による治療も受ける必要がある。
【0019】
第二の局面によると、本発明は従って、呼吸器疾患の治療のための、吸入経路で送達される活性薬剤としてのアンレキサノクスであるが、ただし、治療に気管支拡張が必要である場合は、投与される被験者は、気管支拡張薬も与えられる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、賦形薬、アンレキサノクス、またはデキサメタゾンのいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の細胞総数を表す棒グラフである。アンレキサノクスは経口投与である。
【図2】図2は、賦形薬、アンレキサノクス、またはフルチカゾンのいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の細胞総数を表す棒グラフである。アンレキサノクスは吸入経路による投与である。
【図3】図3は、賦形薬、アンレキサノクス、フルチカゾン、サルブタモール、またはデキサメタゾンのいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の細胞総数を表す棒グラフである。各棒グラフは平均を表し、各縦線はn=8の平均値の標準誤差を表す。ANOVA、続いてダネット検定を用いて、変化を賦形薬コントロール(*)動物と比較した。*P<0.05および**P<0.01。独立t検定を用いて、アンレキサノクスとサルブタモールとの併用処理(#)をアンレキサノクス単独のものとその有意差について比較した。# P<0.05.
【図4】図4は、A)賦形薬、アンレキサノクス、サルブタモール、またはRV1088のいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の好中球総数、およびB)賦形薬、アンレキサノクス、フルチカゾン、サルブタモール、またはデキサメタゾンのいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の細胞総数に対する好中球の占める割合、を表す棒グラフである。各棒グラフは平均を表し、各縦線はn=8の平均値の標準誤差を表す。ANOVA、続いてダネット検定を用いて、変化を賦形薬コントロール(*)動物と比較した。*P<0.05および**P<0.01。独立t検定を用いて、アンレキサノクスとサルブタモールとの併用処理(#)をアンレキサノクス単独のものとその有意差について比較した。# P<0.05.
【図5】図5は、賦形薬、アンレキサノクス、フルチカゾン、サルブタモール、またはデキサメタゾンのいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の細胞総数を示す散布図である。各記号は、1つのグループあたりの個々の動物についての細胞総数を表す。グループあたりn=8。
【図6】図6は、賦形薬、アンレキサノクス、フルチカゾン、サルブタモール、またはデキサメタゾンのいずれかで前処理したLPS曝露マウスの気管支肺胞洗浄液中の好中球総数を示す散布図である。各記号は、1つのグループあたりの個々の動物についての好中球総数を表す。グループあたりn=8。
【発明を実施するための形態】
【0021】
活性薬剤の任意の適切な形態が選択され得る。これには、塩、プロドラッグ、および活性代謝物が含まれる。
【0022】
上述のように、本発明は治療における有用性を有する。1つの局面は、破壊性肺炎症、慢性呼吸器疾患、または不可逆的閉塞性肺疾患を含む病状の治療のため(予防または治療のため)の医薬の製造である。治療することができる病状としては、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、または小気道疾患が挙げられる。治療することができるさらなる病状としては、サルコイドーシス、CF、石綿肺、農夫肺、および珪肺症が挙げられる。喘息は、アンレキサノクスを気管支拡張薬と組み合わせて用いることで治療することができる。別の局面は、好中球増加を伴う全身性疾患の治療のための医薬の製造である。
【0023】
アンレキサノクスで治療することができる好中球増加を伴う病状は、急性感染症(細菌、真菌、スピロヘータ、寄生虫、リケッチア、およびウイルスの感染)、膠原病(慢性関節リウマチ、ウェゲナー肉芽腫症、およびベーチェット病)、痛風、ゴーシェ病、クッシング症候群、骨髄線維症、腫瘍性好中球増加症(neoplastic neutrophilia)、真性多血
症、乾癬、炎症性腸疾患、虚血再灌流障害、血栓症、および糸球体腎炎である。虚血再灌流障害は、心臓由来(心筋梗塞など)、脳由来(脳卒中など)、または臓器移植後(腎臓移植後など)のものであってよい。
【0024】
特に好ましい態様では、治療される病状は痛風である。
【0025】
本発明に従う治療は、患者の性別、年齢、もしくは病状、および1もしくは2つ以上の並行療法が行われているかどうか、などの種々の因子に応じて、一般的に知られている方法で行うことができる。例えば肝臓疾患の患者を治療する場合は、患者の人種(population)が重要であり得る。
【0026】
投与は経口または吸入経路を介して行なってよい。1つの態様では、アンレキサノクスは、経口粘膜ペースト(oral mucosal paste)に製剤化される。
【0027】
1つの単位用量中の活性薬剤の量は、10mg〜1gであってよい。好ましくは、単位用量は、10mg〜100mgである。より好ましくは、単位用量は、40mg〜60mgである。
【0028】
本発明のための薬剤は、毎日、または週1回投与してよい。毎日投与される場合、投与は、単一の用量または分割した用量で行ってよい(1日の投与は4回以下、好ましくは1日あたり2または3回)。
【0029】
毎日投与(経口および吸入投与の両方)の場合の好ましい用量範囲は、1日あたり1〜500μg、または5〜100μgの活性薬剤である。
【0030】
週1回投与(経口および吸入投与の両方)の場合の好ましい単位用量範囲は、週あたり5〜3000μg、または25〜500μgの活性薬剤である。
【0031】
COPDおよびCFなどの病状の治療の場合、活性薬剤が肺深部へ到達することが好ましい。この目的のためには、薬剤は、0.5〜10μmの空気動力学的質量中位径を例とする10μmまでのサイズの粒子の形態で、吸入経路を介して送達されることが好ましい。
【0032】
好ましい態様は、吸入による投与である。吸入による送達に適する装置および製剤は、通常、活性薬剤の粒子を含み、一般的には当業者に公知である。1つの態様では、組成物は、液体噴霧剤中のエアロゾルとしての送達用に調製してよく、例えば、加圧式またはその他の定量吸入器(MDI)で用いられる。PMDIでの使用に適する噴霧剤は、当業者に公知であり、CFC−12、HFA−134a、HFA−227、HCFC−22(ジフルオロクロロメタン)、HFA−152(ジフルオロエタンおよびイソブタン)が挙げられる。さらなる別の選択肢は、ネブライザーおよびエアロゾル送達システムである。
【0033】
別の態様では、本発明の組成物は、乾燥粉末吸入器(DPI)を用いて送達するための乾燥粉末の形態である。乾燥粉末吸入器は公知である。この吸入器に用いるための乾燥粉末は、通常、空気動力学的質量中位径が30μm未満であり、好ましくは20μm未満、より好ましくは10μm未満である。空気動力学径が5〜0.5μmの範囲であるマイクロ粒子は、一般的に、呼吸器の細気管支に沈着し、一方、空気動力学径が2〜0.05μmの範囲であるより小さい粒子は、肺胞に沈着するものと考えられる。
【0034】
DPIは、受動乾燥粉末吸入器であってよく、これは、肺へ粒子を導入する患者の吸気に依存するものである。能動吸入器は、患者への粉末送達のためのメカニズムを必要とするものであり、これもまた用いてよい。
【0035】
粒子状組成物は、生理学的有効量で製剤化されることは理解されるであろう。すなわち、単位剤形で送達される場合、所望される反応を得るために十分な量の活性薬剤が存在する必要がある。この粒子は、主として乾燥粉末吸入器での送達を意図していることから、単位用量が、一回の吸入動作で患者に送達される所定量の粒子を含むことは理解されるであろう。単なる指針としてであるが、単一の単位用量は、およそ1mg〜15mg、好ましくは、5mg〜10mgの粒子である。
【0036】
投与の頻度は、当業者が選択してよい。それは、例えば、1日に1回もしくは2回、または連続であってよい。
【0037】
マイクロ粒子はまた、送達および放出を補助するための追加の賦形剤と共に製剤化してもよい。例えば、乾燥粉末製剤に関して、マイクロ粒子を、乾燥粉末吸入器から肺への流れを補助する追加の大型のキャリア粒子と共に製剤化してよい。大型のキャリア粒子は公知であり、90μm超の空気動力学的質量中位径を有するラクトース粒子が挙げられる。別の選択肢として、またはこれに加えて、マイクロ粒子をキャリア物質中に分散させてもよい。例えば、マイクロ粒子をポリサッカリドマトリックス中に分散させて、組成物全体を肺への直接送達用のマイクロ粒子として製剤化してもよい。ポリサッカリドは、活性成分の即時放出に対するさらなるバリアとして作用する。このことにより、放出制御プロセスをさらに補助することができる。適切なキャリア物質は、当業者にとって明らかであり、ポリサッカリドを含む、薬学的に許容される任意の不溶性または溶解性物質が挙げられる。適切なポリサッカリドの例は、キサンタンガム(xantham gum)である。
【0038】
組成物はまた、別々の成分として、すなわち別々のマイクロ粒子として、またはマイクロ粒子中の活性薬剤と組み合わせて、追加の治療薬を含んでもよい。
【0039】
本発明で用いるための組成物は、従来の製剤化技術を用いて作製することができる。特に、スプレードライを用いて、放出制御特性を与える物質中に分散または懸濁させた活性薬剤を含むマイクロ粒子を作製することができる。
【0040】
ジェットミリングを例とするミリングプロセスも、本発明での使用に適する治療組成物
の製剤化に用いることができる。ミリングによる微細粒子の製造は、従来の技術を用いて実施することができる。本明細書で用いる「ミリング」という用語は、活性物質の粒子に十分な力を適用して粒子を微細粒子へと破壊または粉砕するいずれの機械的プロセスをも意味する。様々なミリング装置および条件が、本発明の組成物の作製における使用に適している。ミリングの強度および持続時間を例とする、必要とされる度合いの力を提供するのに適するミリング条件の選択は、当業者の能力の範囲内である。好ましい方法はボールミリングである。別の選択肢として、高圧ホモジナイザーを用いてもよく、この場合、粒子を含有する流体が高圧でバルブを押し通されることによって高せん断力および乱流の条件が作り出される。粒子へのせん断力、粒子と機械表面またはその他の粒子との衝突、および流体の加速によるキャビテーションのすべてが、粒子の破砕に寄与し得るものである。適切なホモジナイザーとしては、EmulsiFlex高圧ホモジナイザー、Niro
Soavi高圧ホモジナイザー、およびMicrofluidics Microfluidiserが挙げられる。ミリングプロセスを用いることで、上記で指定した空気動力学的質量中位径を有するマイクロ粒子を得ることができる。活性薬剤が吸湿性である場合、上述のように、ミリングは疎水性物質と共に行ってよい。
【0041】
必要とされる場合、ミリング工程で作製されたマイクロ粒子を、次に追加の賦形剤と共に製剤化してよい。これは、スプレードライプロセス、例えば共スプレードライによって実施することができる。本態様では、粒子は溶媒中に懸濁され、追加の賦形剤の溶液または懸濁液と共に共スプレードライされる。好ましい追加の賦形剤としては、ポリサッカリドが挙げられる。薬学的効果を有する追加の賦形剤も用いてよい。
【0042】
本発明に従う治療は、患者の性別、年齢、もしくは病状、および1もしくは2つ以上の並行療法が行われているかどうか、などの種々の因子に応じて、一般的に知られている方法で行うことができる。例えば肝臓疾患の患者を治療する場合は、患者の人種が重要であり得る。ここでも、単なる例として、サルコイドーシスの治療において、患者は症候性であっても無症候性であってもよく、急性、慢性、および/または生命を脅かすものを例とするその他の病状を示していても良い。
【0043】
必要に応じて気管支拡張薬と共に用いられる製剤は、長期間にわたって気管支拡張効果を有し、FEVレベルを上昇させることが所望される。最初の投与、およびこれに続く投与の後、FEV1レベルは、治療開始前よりも高いレベルで維持することができる。この
期間中に放出される活性薬剤の量は、所望される期間にわたって呼吸器疾患の効果的な緩和(気管支拡張)をもたらすのに十分であり得る。
【0044】
気管支拡張の度合いは、肺活量測定を含む当業者に公知の技術によって判定することができる。これを用いて、投与期間にわたるFEV1を測定することができる。FEV1の値は、投与期間全体にわたって、予測される正常値の10%超、好ましくは20%超、最も好ましくは30%超を達成することが望ましい。
【0045】
1つの単位用量中の活性成分の量は、例えば0.02〜5mg、好ましくは2mg未満、最も好ましくは約1mgもしくはそれ未満であってよい。100μg未満を例とする、これらよりも多いまたは少ない用量を与えてもよい。粒子中の活性薬剤は、例えば20重量%超、好ましくは40重量%超、より好ましくは60重量%超で存在してよい。
【0046】
本発明の化合物は、好ましくは、例えば、錠剤、トローチ、ロゼンジ、水性もしくは経口懸濁液、分散性粉末もしくは顆粒として経口投与されるものである。本発明の好ましい医薬組成物は、錠剤およびカプセル剤である。経口投与用の分散液は、シロップ、エマルジョン、および懸濁液であってよい。より好ましくは、医薬組成物は、従来の賦形剤を含む圧縮錠剤またはカプセル剤であり、これらの例を以下に示す。
【0047】
経口用途が意図される組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野で公知である任意の方法によって作製してもよく、そのような組成物は、薬学的に上品(elegant)であ
り口当たりがいい(palatable)の製剤を提供する目的で、甘味剤、香味剤、着色剤、およ
び保存剤から成る群より選択される1もしくは2つ以上の剤を含有していてよい。錠剤は、錠剤の製造に適する無毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物として活性成分を含有する。これらの賦形剤は、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム、もしくはリン酸ナトリウムなどの不活性希釈剤;コーンスターチもしくはアルギン酸を例とする造粒剤および崩壊剤;デンプンゼラチン、アラビアガム、微結晶セルロース、もしくはポリビニルピロリドンを例とする結合剤;および、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸、もしくはタルクを例とする滑沢剤であってよい。錠剤は、コーティングされていなくてよく、または消化管での崩壊および吸収を遅延させ、それによってより長い期間にわたって作用を持続させるために、公知の技術によってコーティングされていてもよい。例えば、モノステアリン酸グリセリルまたはジステアリン酸グリセリルなどの時間遅延物質(time delay material)を用いてよい。
【0048】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適する賦形剤との混合物として活性物質を含有する。そのような賦形剤は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニルピロリドン、トラガカントガム、およびアラビアガムを例とする懸濁剤であり;分散剤または湿潤剤は、レシチンを例とする天然のホスファチドであってよく、またはステアリン酸ポリオキシエチレンを例とするアルキレンオキシドと脂肪酸との縮合生成物、もしくはヘプタデカエチレンオキシセタノールを例とするエチレンオキシドと長鎖脂肪アルコールとの縮合生成物、もしくはポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを例とするエチレンオキシドと脂肪酸由来の部分エステルとの縮合生成物であってよい。水性懸濁液もまた、エチルもしくはn−プロピル、p−ヒドロキシベンゾエートを例とする1もしくは2つ以上の保存剤、1もしくは2つ以上の着色剤、1もしくは2つ以上の香味剤、およびスクロースもしくはサッカリンなどの1もしくは2つ以上の甘味剤を含有してよい。
【0049】
油性懸濁液は、活性成分を、植物油中、例えばラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油、もしくはココナッツ油、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、オレイン酸などの脂肪酸、または液体パラフィンなどのミネラル油中、またはその他の界面活性剤もしくは清浄剤中に懸濁させることによって製剤化することができる。油性懸濁液は、ミツロウ、硬質パラフィン、またはセチルアルコールを例とする増粘剤を含有していてよい。口当たりがいい経口製剤を提供するために、上述のものなどの甘味剤、および香味剤を添加してよい。これらの組成物の保存は、アスコルビン酸などの抗酸化剤を添加することで行ってよい。
【0050】
水を添加することによる水性懸濁液の作製に適する分散性粉末および顆粒は、分散剤もしくは湿潤剤、懸濁剤、および1もしくは2つ以上の保存剤との混合物として活性成分を提供する。適切な甘味剤、香味剤、および着色剤も存在していてよい。
【0051】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形態であってもよい。油相は、オリーブ油もしくはラッカセイ油を例とする植物油、または液体パラフィンを例とする鉱物油、またはこれらの混合物であってよい。適切な乳化剤は、アラビアガムもしくはトラガカントガムを例とする天然ガム、ダイズレシチンを例とする天然ホスファチド、ならびにソルビタンモノオレエートを例とする脂肪酸とヘキシトール無水物とから誘導されるエステルもしくは部分エステル、およびポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートを例とする前記部分エステルとエチレンオキシドとの縮合生成物であってよい。エマルジョンはまた、甘味剤および香味剤を含有していてもよい。
【0052】
シロップおよびエリキシールを、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール、またはスクロースを例とする甘味剤と共に製剤化してよい。そのような製剤はまた、粘滑薬、保存剤、香味剤、および着色剤を含有していてもよい。
【0053】
懸濁液およびエマルジョンは、天然ガム、カンテン、アルギン酸ナトリウム、ペクチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、またはポリビニルアルコールを例とするキャリアを含有していてよい。
【0054】
呼吸器疾患の治療に用いられる任意の適切な薬学的に有効な薬物もまた、本発明の組成物と共に共投与してよい。例えば、サルブタモール、サルメテロール、およびホルモテロールを例とするβ2−アゴニストを共投与用に製剤化してよい。追加の抗ムスカリン化合
物もまた、共投与してよい。例えば、イプラトロピウム(例:臭化イプラトロピウム)またはチオトロピウムを投与してよい。
【0055】
ステロイドを含む追加の治療薬も共投与してよい。適切なステロイドの例としては、ベクロメタゾン、ジプロピオネート、およびフルチカゾンが挙げられる。共投与に適するその他の適切な治療薬としては、粘液溶解薬、マトリックスメタロプロテアーゼ阻害薬、ロイコトリエン、抗生物質、抗感染症薬、抗悪性腫瘍薬、ペプチド、鎮咳薬、ニコチン、PDE4阻害薬、エラスターゼ阻害薬、およびクロモグリク酸ナトリウムが挙げられる。
【0056】
アンレキサノクスを気管支拡張薬と組み合わせて用いることが特に好ましい。適切なそのような薬剤は、β−アゴニスト、抗ムスカリン薬、およびPDE阻害薬である。単独で用いられた場合、アンレキサノクスは、アレルギー性喘息の治療に対する適切性が低下することがある。
【0057】
アンレキサノクスは、発生する可能性のある全身性合併症の懸念がほとんどなく、広範囲に及ぶ種々の呼吸器薬との組み合わせ、または共投与によって用いることができる。アンレキサノクスは、抗炎症作用を必要とする病状に対する緊急の状態に用いることができる(例:ARDS)。この製品は、全身性副作用(例:頻拍)の懸念なしに、継続ベースで投与することができる。
【0058】
アンレキサノクスは、1日1回ベースで投与することができ、さらには追加の抗炎症活性を有する症状軽減薬として用いることもできる。抗炎症活性は、好中球の逆流(neutrophil reflux)を伴う肺における局所的な炎症であってよい。
【0059】
治療される病状に応じて、その他の薬剤をアンレキサノクスと組み合わせてよい。各々の好ましい徴候に対する好ましい薬剤を以下に挙げる。
【0060】
慢性関節リウマチ
鎮痛性小分子:COX−I阻害薬、COX−II阻害薬、非定型NSAID
【0061】
疾患修飾性小分子:アザチオプリン、レフルノミド、ミノサイクリン、副腎皮質ステロイド、クロロキン、シクロスポリンA、ヒドロキシクロロキン、金塩、ペニシラミン、メトトレキサート、スルファサラジン
【0062】
疾患修飾性生物学的療法薬:インフリキシマブ、エタネルセプト、アダリムマブ、リツキシマブ、アナキンラ、トシリズマブ、ウステキヌマブ
【0063】
ウェゲナー肉芽腫症
疾患修飾性小分子:シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド、アザチオプリン、レフ
ルノミド、メトトレキサート
【0064】
疾患修飾性生物学的療法薬:インフリキシマブ
【0065】
ベーチェット病
疾患修飾性小分子:シクロホスファミド、副腎皮質ステロイド、アザチオプリン、クロラムブシル、サリドマイド
【0066】
痛風関節炎
鎮痛性小分子:COX−I阻害薬、COX−II阻害薬、非定型NSAID
疾患修飾性小分子:アロプリノールおよびコルヒチン、スルフィンピラゾン
【0067】
ゴーシェ病
疾患修飾性小分子:ミグルスタット、イソファゴミン
疾患修飾性生物学的療法薬:組換えグルコセレブロシダーゼ
【0068】
クッシング症候群
疾患修飾性小分子:ミフェプリストン
【0069】
真性多血症
疾患修飾性小分子:アスピリン、ヒドロキシカルバミド、アナグレリド
疾患修飾性生物学的療法薬:ベータ−インターフェロン、エルロチニブ
【0070】
乾癬
疾患修飾性小分子:副腎皮質ステロイド、ビタミンD類似体、ジトラノール、タザロテン、メトトレキサート、アシトレチン、シクロスポリンA、ヒドロキシカルバミド
疾患修飾性生物学的療法薬:エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、ウステキヌマブ
【0071】
炎症性腸疾患
疾患修飾性小分子:副腎皮質ステロイド、スルファサラジン、メサラミン、アザチオプリン、シクロスポリンA、メトロニダゾール、アンピシリン、スルホンアミド、セファロスポリン、テトラサイクリン
疾患修飾性生物学的療法薬:エタネルセプト、アダリムマブ、インフリキシマブ、ウステキヌマブ
【0072】
血栓症
ヘパリン、低分子量ヘパリン、ワルファリン、アスパリン(asparin)、イブプロフェ

【0073】
糸球体腎炎
フロセミド、ブメタニド、エタクリン酸、トルセミド、エナラプリル、ラミプリル、キナプリル、ペリンドプリル、リシノプリル、ベナゼプリル、バルサルタン、テルミサルタン、ロサルタン、イルベサルタン、オルメサルタン、副腎皮質ステロイド、シクロホスファミド、ジアゾキシド、ニトロプルシド
【0074】
「COX−I、COX−II、および非定型NSAID」のリスト
アセクロフェナク、アセメタシン、アルコフェナク(alcofenac)、アルミノプロフェ
ン、アロキシピリン(aloxipirin)、アンフェナク、アミノフェナゾン、アントラフェニン(antraphenine)、アスピリン、アザプロパゾン、ベノリラート、ベノキサプロフェン
、ベンジダミン、ブチブフェン、クロルテノキサシン(chlorthenoxacine)、サリチル酸コリン、クロメタシン(chlometacin)、デクスケトプロフェン、ジクロフェナク、ジフ
ルニサル、エモルファゾン、エピリゾール、エトドラク、フェクロブゾン(feclobuzone
)、フェルビナク、フェンブフェン、フェンクロフェナク、フルルビプロフェン、グラフェニン、サリチル酸ヒドロキシエチル、イブプロフェン、インドメタシン、インドプロフェン、ケトプロフェン、ケトロラック、ラクチルフェネチジン、ロキソプロフェン、メフェナム酸、メタミゾール、メチアジン酸、モフェブタゾン、モフェゾラク、ナブメトン、ナプロキセン、ニフェナゾン、ニフルミン酸、オキサメタシン、フェナセチン、ピペブゾン(pipebuzone)、プラノプロフェン、プロピフェナゾン、プロカゾン、プロトジン酸(protozininc acid)、サリチルアミド、サルサラート、スリンダク、スプロフェン、チアラミド、チノリジン、トルフェナム酸、およびゾメピラック
【0075】
副腎皮質ステロイドのリスト
ヒドロコルチゾン、酢酸ヒドロコルチゾン、コルチゾン、チキソコルトール、プレドニゾロン、メチルプレドニゾロン、プレドニゾン、トリアムシノロンアセトニド、トリアムシノロンアルコール、モメタゾン、アムシノニド、ブデソニド、デソニド、フルオシノニド、フルオシノロンアセトニド、ハルシノニド ベタメタゾン、リン酸ベタメタゾンナトリウム、デキサメサゾン、リン酸デキサメタゾンナトリウム、フルオコルトロン、ヒドロコルチゾン−17−ブチレート、ヒドロコルチゾン−17−バレレート、アクロメタゾンジプロピオネート(aclometasone dipropionate)、ベタメタゾンバレレート、ベタメタ
ゾンジプロピオネート、プレドニカルベート、クロベタゾン−17−ブチレート、クロベタゾール−17−プロピオネート、カプロン酸フルオコルトロン、ピバリン酸フルオコルトロン、酢酸フルプレドニデン
【実施例】
【0076】
以下の実施例は、本発明の基礎となる証拠を提供するものである。
【0077】
実施例1
本実施例の目的は、経口投与されたアンレキサノクス(1〜30mg/kg)のマウス気道中におけるLPS誘導性好中球増加症に対する効果をデキサメタゾン(1mg/ml、i.t.)と比較して評価すること、および試験化合物が気道の好中球増加症の阻害に効果を有するかどうかを判定することとした。
【0078】
実験計画:
グループサイズ
n=8
グループ1 − 偽薬(コントロール)
グループ2 − 賦形薬(10% DMSO、p.o.)
グループ3 − アンレキサノクス(1mg/kg、p.o.)
グループ4 − アンレキサノクス(3mg/kg、p.o.)
グループ5 − アンレキサノクス(10mg/kg、p.o.)
グループ6 − アンレキサノクス(30mg/kg、p.o.)
グループ7 − デキサメタゾン(1mg/ml)
p.o.=per orus(経口)
【0079】
注: 試験化合物の投与はすべて、ボールチップ型ステンレス製送達カニューレ(ball
tipped stainless steel delivery cannulae)を用いた強制経口投与により、または気
管内投与により(PennCenturyデバイスを用いて)行なった。いずれも場合も、投与はエンドトキシン曝露の1時間前に行った。
【0080】
プロトコル
非絶食マウスを体重測定し、それぞれを尾のパーマネントマーカーで識別し、賦形薬、アンレキサノクス、またはデキサメタゾンのいずれかの用量の投与を、LPS処理の開始に対してT=−1の時点にて、強制経口投与、または気管内投与により行った(グループの詳細は上記を参照)。T=0にて、マウスを曝露室へ入れ、LPSに曝露させた。リポポリサッカリド(LPS)は、0.5mg/mlの溶液として調製し、De Vibliss超音波ネブライザー2000を用いてエアロゾル化し、それによって30分間の曝露時間中に7mlの溶液をエアロゾル化した。
【0081】
LPS曝露の8時間後に、気管をカニューレ処置し、BALFを抽出した。このための手順には、気管カテーテルを介した肺へのPBS 1mLの注入および抜き取りが含まれていた。この手順を繰り返して、およそ2mLの洗浄液を得た。BALFを好中球増加症分析用に分注し、残りのBALFを、今後サイトカイン分析が必要となった場合のために−80℃で保存した。
【0082】
BAL液サンプル中の総白血球数を、ノイバウエル血球計数器を用いて測定した。
【0083】
室温にて2分間、1200rpmで遠心分離することによって、BAL液のサイトスピンスメア標本を調製し、DiffQuik染色システム(デイドベーリング(Dade Behring))を用いて染色し、これによって分画白血球計数を行った。いずれの場合も、細胞計数は、油浸顕微鏡を用いて盲検法によって行った。
【0084】
データは、BALF1mLあたりの細胞の総細胞数および分画細胞数を、平均±SEM(平均の標準誤差)として報告した。
【0085】
グループ間の偏差は、一元分散分析(ANOVA)により統計分析を行った。異なる処理レベル間での平均値に有意差がある場合、賦形薬グループとの比較を、ダネット検定を用いて行った。等分散の検定で等分散性なしと判定された場合、順位に対してのクラスカル−ウォリス一元分散分析、続いてダン検定を用いた。p<0.05を統計的に有意差があると見なす。
【0086】
化合物および溶液
強制経口投与によるアンレキサノクスは、ボールチップ型ステンレス製送達カニューレを用いて、投与量0.1mlで投与した。
【0087】
アンレキサノクスおよびデキサメタゾンの気管内投与は、PennCentury FMJ250マイクロスプレー送達デバイスを用いて行った。両製剤共に送達された。
【0088】
結果を図1に示す。この結果から、アンレキサノクスは、LPS誘導性好中球増加症の阻害に効果的であることが示される。
【0089】
実施例2
本実施例の目的は、吸入投与されたアンレキサノクス(0.3〜15mg/mL)およびサルブタモール(1.0mg/mL)のマウス気道中におけるLPS誘導性好中球増加症に対する効果を、デキサメタゾンおよびフルチカゾンと比較して評価すること、ならびに試験化合物およびサルブタモールが気道の好中球増加症の阻害に相乗効果を有するかどうかを判定することとした。
【0090】
実験計画:
グループサイズ
n=8
グループ1 − 偽薬
グループ2 − 賦形薬(10% DMSO)
グループ3 − アンレキサノクス(0.3mg/mL)
グループ4 − アンレキサノクス(3mg/mL)
グループ5 − アンレキサノクス(10mg/mL)
グループ6 − アンレキサノクス(15mg/mL)
グループ7 − サルブタモール(1mg/mL)
グループ8 − アンレキサノクス(0.3mg/mL)+サルブタモール(1mg/mL)
グループ9 − アンレキサノクス(3mg/mL)+サルブタモール(1mg/mL)
グループ10 − デキサメタゾン(1.0mg/mL)
グループ11 − フルチカゾン(1.0mg/mL)
【0091】
注: 試験化合物の投与はすべて、気管内投与により(PennCenturyデバイスを用いて)、エンドトキシン曝露の1時間前に行った。
【0092】
プロトコル
非絶食マウスを体重測定し、それぞれを尾のパーマネントマーカーで識別し、賦形薬、アンレキサノクス、フルチカゾン、デキサメタゾン、またはサルブタモールのいずれかの用量の投与を、LPS処理の開始に対してT=−1の時点にて、気管内投与により行った(グループの詳細は上記を参照)。T=0にて、マウスを曝露室へ入れ、LPSに曝露させた。LPSは、0.5mg/mlの溶液として調製し、De Vibliss超音波ネブライザー2000を用いてエアロゾル化し、それによって30分間の曝露時間中に7mlの溶液がエアロゾル化された。
【0093】
LPS曝露の8時間後に、気管をカニューレ処置し、BALFを抽出した。このための手順には、気管カテーテルを介した肺へのPBS 1mLの注入および抜き取りが含まれていた。この手順を繰り返して、およそ2mLの洗浄液を得た。BALFを好中球増加症分析用に分注し、残りのBALFを、今後サイトカイン分析が必要となった場合のために−80℃で保存した。
【0094】
BAL液サンプル中の総白血球数、および分画白血球数を、ノイバウエル血球計数器を用いて測定した。室温にて1分間、1200rpmで遠心分離することによって、BAL液のサイトスピンスメア標本を調製し、DiffQuik染色システム(デイドベーリング)を用いて染色した。
【0095】
細胞計数は、油浸顕微鏡を用いて盲検法によって行った。
【0096】
データは、BALF1mLあたりの細胞の総細胞数および分画細胞数を、平均±SEM(平均の標準誤差)として報告した。
【0097】
グループ間の偏差は、一元分散分析(ANOVA)により統計分析を行った。異なる処理レベル間での平均値に有意差がある場合、賦形薬グループとの比較を、ダネット検定を用いて行った。等分散の検定で等分散性なしと判定された場合、順位に対してのクラスカル−ウォリス一元分散分析、続いてダン検定を用いた。p<0.05を統計的に有意差があると見なす。
【0098】
化合物および溶液
試験化合物は、気管内投与のためのFMJ250 PennCenturyデバイスを用いて投与量20μLで投与した。
【0099】
動物はすべて、賦形薬、アンレキサノクス、サルブタモール、フルチカゾン、またはデキサメタゾンに対して良好な投与耐性を示した。
【0100】
LPSエアロゾル曝露の後、賦形薬、アンレキサノクス、サルブタモール、フルチカゾン、およびデキサメタゾンで処理した動物は、明らかな度合いの立毛が見られた。
【0101】
結果を図に示す。図2から6は、吸入投与されたアンレキサノクスが好中球増加症を阻害することを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
好中球増加を伴う疾患の治療に用いるための、アンレキサノクスである薬剤。
【請求項2】
前記疾患が全身性疾患である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項3】
前記疾患が、急性感染症、膠原病、痛風、ゴーシェ病、クッシング症候群、骨髄線維症、腫瘍性好中球増加症(neoplastic neutrophilia)、真性多血症、乾癬、炎症性腸疾患
、虚血再灌流障害、血栓症、または糸球体腎炎である、請求項2に記載の薬剤。
【請求項4】
前記虚血再灌流障害が、心臓の再灌流障害、脳の再灌流障害、または臓器移植による再灌流障害である、請求項3に記載の薬剤。
【請求項5】
前記心臓の再灌流障害が、心筋梗塞である、請求項4に記載の薬剤。
【請求項6】
前記脳の再灌流障害が、脳梗塞または脳卒中である、請求項4に記載の薬剤。
【請求項7】
前記疾患が痛風である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項8】
不可逆的閉塞性肺疾患の治療のための、請求項1に記載の薬剤。
【請求項9】
前記肺疾患が、慢性閉塞性肺疾患(COPD)、気管支拡張症、急性呼吸促迫症候群(ARDS)、慢性気管支炎、肺気腫、小気道疾患、サルコイドーシス、または嚢胞性線維症である、請求項8に記載の薬剤。
【請求項10】
経口経路を介して投与される、前記いずれかの請求項に記載の薬剤。
【請求項11】
吸入経路を介して投与される、請求項1〜9のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項12】
前記治療が喘息の治療である、請求項1に記載の薬剤。
【請求項13】
呼吸器疾患の治療のための、吸入経路で送達されるアンレキサノクスである薬剤であって、治療に気管支拡張が必要である場合、投与の被験者は、気管支拡張薬も与えられる、薬剤。
【請求項14】
破壊性肺炎症を伴う呼吸器疾患の治療のための、吸入経路で送達されるアンレキサノクスである薬剤。
【請求項15】
前記疾患が喘息であり、前記被験者が気管支拡張薬も与えられる、請求項13に記載の薬剤。
【請求項16】
前記呼吸器疾患が、サルコイドーシス、COPD、嚢胞性線維症、ARDS、気管支拡張症、慢性気管支炎、肺気腫、または小気道疾患である、請求項13〜15のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項17】
前記呼吸器疾患が、炎症を伴うものである、請求項8〜16のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項18】
前記炎症が、呼気NOによって、またはエキソビボで末梢血液好中球における炎症関連遺伝子(IL1bなど)の発現によって示されるものである、請求項17に記載の薬剤。
【請求項19】
前記呼吸器疾患が、好中球増加を伴うものである、請求項13〜18のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項20】
副腎皮質ステロイドの吸入などの標準的な抗炎症療法を用いる既存のまたは並行で行われる治療が、不十分な効果を提供するとして、または全身性副作用を含む望ましくない副作用を生じると判断されるものである、請求項8〜19のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項21】
毎日または毎週投与される、前記いずれかの請求項に記載の薬剤。
【請求項22】
単位用量範囲が10mg〜1gである、請求項1〜21のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項23】
一日量が、単一の用量で、または分割された用量で(1日あたり4回以下の頻度で)投与される、請求項21または22に記載の薬剤。
【請求項24】
前記アンレキサノクスが、10μmまでの質量中位径を有する粒子の形態である、請求項11〜23のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項25】
送達が定量吸入器を用いて行われる、請求項11、13〜24のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項26】
送達が乾燥粉末送達装置を用いて行われる、請求項11、13〜24のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項27】
送達がネブライザーを用いて行われる、請求項11、13〜24のいずれか一項に記載の薬剤。
【請求項28】
乾燥粉末としての吸入に適するように製剤化されたアンレキサノクスの粒子を含む、組成物。
【請求項29】
少なくとも50%の微粒子画分(5mM未満)を有する、請求項28に記載の組成物。
【請求項30】
少なくとも80%の微粒子画分を有する、請求項29に記載の組成物。
【請求項31】
アンレキサノクス、噴霧剤、溶媒、および水を含む溶液製剤である、pMDIによる吸入に適する組成物。
【請求項32】
前記アンレキサノクスが、10μmまでの質量中位径を有する粒子の形態である、請求項28〜31のいずれか一項に記載の組成物。
【請求項33】
請求項28〜32のいずれか一項に記載の組成物を含有する吸入器。
【請求項34】
好中球増加を伴う病状の治療のための、前記いずれかの請求項に記載の薬剤、および薬学的に許容されるキャリアを含む医薬組成物。
【請求項35】
不可逆的閉塞性肺疾患の治療のための、前記いずれかの請求項に記載の活性薬剤、および薬学的に許容されるキャリアを含む、請求項34に記載の組成物。
【請求項36】
不可逆的閉塞性肺疾患の治療のための、PPARγアゴニストを含有しない、請求項35に記載の組成物。
【請求項37】
COPDの治療のための、請求項36に記載の組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2012−528844(P2012−528844A)
【公表日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−513682(P2012−513682)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【国際出願番号】PCT/GB2010/050905
【国際公開番号】WO2010/139985
【国際公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【出願人】(510179526)バイオコピア リミテッド (10)
【氏名又は名称原語表記】Biocopea Limited
【Fターム(参考)】