説明

妊娠合併症の診断および処置に有用な核酸およびポリペプチド

以下から選択されるポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸の使用を含む妊娠関連高血圧障害を診断または処置するための方法が本明細書に開示されている:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
一般的に、本発明は妊娠関連高血圧障害に罹患している被験体の検出および処置に関する。
【0002】
連邦政府資金援助による研究に関する言明
本研究は、一部、NIH助成金R03 DK064255-02により資金供給された。米国政府は本発明に一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
子癇前症は、妊娠の5〜10%に発症し、結果として、相当な母親および胎児の罹患率ならびに死亡率を生じる、高血圧、浮腫およびタンパク尿の症候群である。子癇前症は、1年あたり世界中の少なくとも200,000人の妊産婦死亡を占める。子癇前症の症状は、典型的には、妊娠第20週目後に現れ、通常、女性の血圧および尿の日常的測定により検出される。しかしながら、これらのモニタリング方法は、効果的な処置が有効である場合には、被験体または発育中の胎児へのリスクを低減させうる、初期での症候群の診断について効果がない。
【0004】
現在、子癇前症についての公知の治療法はない。子癇前症は重症度において軽度から生命を脅かすまで変わりうる。子癇前症の軽度型は安静および頻繁なモニタリングで処置されうる。中等度から重度までの場合について、入院が勧められ、発作を予防するために血圧薬物療法または抗痙攣薬物療法が処方される。状態が母親または赤ん坊の生命を脅かすようになる場合には、妊娠を終わらせ、赤ん坊は出産予定日より早く分娩される。
【0005】
胎児および胎盤の適切な発育はいくつかの成長因子または血管形成因子により媒介される。血管形成および分裂促進シグナル伝達経路の慎重な制御は、発育中の胎盤において栄養芽細胞による適切な増殖、遊走、および血管形成を維持するために重要である。VEGFおよびPlGFのようなこれらの因子のいくつかは同定されているが、子癇前症または子癇の発症における役割がまだ同定されていない多くのタンパク質がなお存在する。
【0006】
子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害のリスクがある、または妊娠関連高血圧障害に罹患している被験体を、特に最も重篤な症状の発生の前に、正確に診断する方法の必要性がある。母親および胎児の生命を救い、早産を防ぐ処置もまた必要とされる。
【発明の開示】
【0007】
発明の概要
本発明者らは、子癇前症および子癇を含む妊娠関連高血圧障害を診断し、かつ効果的に処置するための手段を発見した。場合によっては、診断および処置の両方が症状の発生の前に起こりうる。そのような早期の診断および処置は母親および胎児の生命を救い、早産を防ぎうる。
【0008】
本発明者らは、以下の分泌性遺伝子産物をコードする遺伝子(括弧内に示されたGenBank番号を有する)の発現のレベルが正常な妊娠患者から得られた胎盤検体と比較して子癇前症を有する女性から採取された胎盤試料において有意に上方制御されていたことを発見した:ホリスタチン関連タンパク質(U76702)、インターロイキン8(M28130)、インヒビンA(M13981)、VEGF-C(U43142)、アンジオゲニン(M11567)、βファーティリン(U38805)、仮想タンパク質(hypothetical protein)(AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質(AF013250)、赤血球分化タンパク質(J03634)、脂肪生成抑制因子(X58377)、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質(X58022)、α-1抗キモトリプシン(X68733)、インスリン様成長因子結合タンパク質-5(L27559)、CD33L(D86368)、サイトカイン受容体様因子1(AF059293)、血小板由来内皮成長因子(NP_001953)、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2(U84573)、スタニオカルシン前駆体(U25997)、分泌性フリズルド(frizzled)関連タンパク質(AF056087)、およびガレクチン-3(NM_002306)。本発明者らはまた、以下の分泌性遺伝子産物についての遺伝子の発現レベルが子癇前症を有する女性から採取された胎盤試料において有意に減少していることを発見した:αデフェンシン(L12691)、ADAM-TS3(AB002364)、コレシストキニン前駆体(AW043690)、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体(AF030514)、およびアズロシジン(azurocidin)(M96326)。これらの遺伝子およびその遺伝子にコードされるポリペプチドは、妊娠関連高血圧障害を診断、処置、管理、および予防するために用いることができる。
【0009】
本発明者らはまた、子癇前症の胎盤に特異に発現され、新規な治療用化合物のスクリーニングについての適切な候補である細胞内標的を発見した。子癇前症の胎盤において増加している細胞内遺伝子産物は以下である:スペルミンオキシダーゼ(U01134)、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28(AF 091582)、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2(X 63759)、中性エンドペプチダーゼ(J03779)、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2(X54942)、およびβグルコシダーゼ(J03060)。子癇前症の胎盤において減少している細胞内遺伝子産物は以下である:ラノステロール合成酵素(U22526)、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ(AI688589)、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H(X86816)、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1(U27699)、チロシナーゼ関連タンパク質1(M20681)、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ(AL080151)、ジヒドロピラミジナーゼ様-4(J03634)、およびチトクロムP450ファミリー11(D84361)。
【0010】
下記の説明のために、上記のポリペプチドのすべてはまとめて「本発明のポリペプチド」と呼ばれる。ポリペプチドはさらに上記のように「分泌ポリペプチド」および「細胞内ポリペプチド」と分類される。本明細書に示された詳細な説明は具体的に特定のGenBankアクセッション番号を伴ったポリペプチドに言及しているが、詳細な説明は特定されたポリペプチドと実質的に同一であるファミリーメンバー、アイソフォーム、相同体、および/または変異体にも適用できることは当業者にとって明らかである。
【0011】
このデータに基づいて、本発明者らは、遺伝子が子癇前症において上方制御されている本発明のポリペプチドのレベルまたは生物活性を減少させる化合物が被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するために用いることができることを発見した。同様に、本発明者らは、遺伝子が子癇前症を有する女性由来の試料において下方制御されていた本発明のポリペプチドのレベルまたは生物活性を増加させる化合物を被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するために用いることができることを発見した。そのような作用物質は、限定されるわけではないが、タンパク質特異的抗体、タンパク質をターゲティングするアンチセンスまたはRNAiのための核酸塩基オリゴマー、精製タンパク質、精製された天然または合成化合物、化学化合物、および小分子を含む。
【0012】
従って、本発明は、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の早期診断および管理のための検出ツールとして、本発明のポリペプチド(分泌性または細胞内)の任意の1つもしくは複数のレベル、または本発明のポリペプチドをコードする核酸のレベルを測定するための方法を特徴とする。
【0013】
一つの局面において、本発明は、被験体由来の試料において以下の分泌または細胞内ポリペプチドの任意の1つまたは複数のレベルを測定する段階を含む、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法を特徴とする:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(GenBankアクセッション番号AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。この方法において、正常参照の試料、標準、またはレベルと比較した上記のポリペプチドまたはそれらの断片の任意の1つまたは複数のレベルの増加(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である。方法はまた、上記で列挙された分泌もしくは細胞内ポリペプチド、またはそれらの断片の2つ、3つ、4つ、または5つ、またはそれ以上を測定する段階を含みうる。好ましい態様において、ポリペプチドはホリスタチン関連タンパク質、インヒビン-A、βファーティリン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、または分泌性フリズルド関連タンパク質である。
【0014】
妊娠関連高血圧障害の非限定的例は、子癇前症、子癇、妊娠性高血圧、慢性高血圧、HELLP症候群、および不当軽量児(SGA)の妊娠を含む。
【0015】
関連局面において、本発明は、被験体由来の試料において以下の分泌または細胞内ポリペプチドの任意の1つまたは複数のレベルを測定する段階を含む、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法を特徴とする:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。この方法において、正常参照の試料、標準、またはレベルと比較した上記のポリペプチドまたはそれらの断片の任意の1つまたは複数のレベルの減少(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である。
【0016】
ポリペプチドまたはその断片のレベルを測定する段階を含む診断方法のいずれについても、測定段階は免疫学的アッセイ(例えば、ELISAまたはウェスタンブロット)を用いて行われうる。方法はまた、上記で列挙された、分泌もしくは細胞内ポリペプチド、またはポリペプチドをコードする核酸、またはそれらの断片の2つ、3つ、4つ、または5つ、またはそれ以上を測定する段階を含みうる。測定段階はまた、例えば、本発明のポリペプチドを検出するための結合分子のアレイ(例えば、抗体アレイとしても知られている、抗体のアレイ)として、または生体試料中のポリペプチドに対する抗体のレベルを検出するために用いることができる、タンパク質アレイとしても知られている、本発明のポリペプチドのアレイとして形式設定されうるマイクロアレイを用いて一度に1つより多いポリペプチドについて行うことができる。
【0017】
もう一つの局面において、本発明は、被験体由来の試料において以下の分泌もしくは細胞内ポリペプチド、またはそれらの断片の任意の1つをコードする核酸分子のレベルを測定する段階を含む、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法を特徴とする:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(GenBankアクセッション番号AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。この方法において、正常参照の試料、標準、またはレベルと比較した上記のポリペプチドまたはそれらの断片をコードする核酸分子の任意の1つまたは複数のレベルの増加(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である。好ましい態様において、核酸は、ホリスタチン関連タンパク質、インヒビン-A、βファーティリン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、または分泌性フリズルド関連タンパク質をコードする。
【0018】
関連局面において、本発明は、被験体由来の試料において以下の分泌もしくは細胞内ポリペプチド、またはそれらの断片の任意の1つをコードする核酸分子のレベルを測定する段階を含む、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法を特徴とする:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。この方法において、正常参照の試料、標準、またはレベルと比較した上記のポリペプチドまたはそれらの断片の任意の1つまたは複数をコードする核酸分子のレベルの減少(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である。
【0019】
上記方法はまた、上記で列挙された、分泌もしくは細胞内ポリペプチドをコードする核酸、またはそれらの断片の2つ、3つ、4つ、または5つ、またはそれ以上を測定する段階を含みうる。
【0020】
妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断は、正常参照試料と比較した本発明のポリペプチドの相対的レベルの変化(例えば、増加または減少)から、または正常参照レベルより上もしくは下である本発明のポリペプチドの絶対的レベルの検出からもたらされうる。診断はまた、同じ被験体から得られた前の試料のレベルと比較したポリペプチドのレベルの変化からもたらされうる。さらなる好ましい態様において、参照標準またはレベルは、そのような試料に由来するレベルまたは数である。さらなる好ましい態様において、参照試料は診断のためのレベルの測定の少なくとも1週間、2週間、3週間、4週間、5週間、6週間、9週間、12週間、15週間、18週間、またはそれ以上前に得られる。参照標準またはレベルはまた、以下の基準の少なくとも1つによって試料被験体と一致している正常被験体由来の値でありうる:胎児の在胎週数、母親の年齢、妊娠前の血圧、妊娠中の血圧、母親のBMI、胎児の体重、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の既往診断、および子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の家族歴。さらなる好ましい態様において、参照試料は、非妊娠被験体から採取された試料;子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の素因を有しない妊娠被験体から採取された試料;または公知の正常濃度もしくは上記の参照試料のいずれかを代表するレベルの精製タンパク質である。
【0021】
さらなる好ましい態様において、方法はさらに、米国特許出願公開第20040126828号、第20050025762号、および第20050170444号;PCT公開第WO 2004/008946号および第WO 2005/077007号;ならびに米国特許出願第11/235,577号に記載されているように、被験体由来の試料中の、sFlt-1、VEGF、PlGF、または可溶性エンドグリンポリペプチドの少なくとも1つのレベルを測定する段階を含む。方法はまた、被験体由来の試料中の、sFlt-1、VEGF、PlGF、または可溶性エンドグリンポリペプチドの少なくとも2つのレベルを測定する段階、およびsFlt-1、VEGF、PlGF、または可溶性エンドグリンのレベル間の関係を計量を用いて計算する段階であって、参照試料のレベル間の関係に対する被験体試料のレベル間の関係の変化が妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因を診断する段階を含みうる。好ましい態様において、方法はまた、体格指数(BMI)、胎児の在胎週数(GA)、または両方を測定する段階、およびBMIまたはGAまたは両方を計量に含める段階を含む。例えば、計量は、子癇前症抗血管形成指数(PAAI):[sFlt-1/VEGF+PlGF]、可溶性エンドグリン抗血管形成指数:(sFlt1+0.25(可溶性エンドグリンポリペプチド))/PlGF、SFlt1/PLGF、(sFlt-1+可溶性エンドグリン)/PlGF、(sFlt1+可溶性エンドグリン+ホリスタチン関連タンパク質)/PlGF、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。
【0022】
もう一つの局面において、本発明は、以下からなる群より選択されるポリペプチドをコードする遺伝子の核酸配列を決定する段階を含む、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法を提供する:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。被験体において遺伝子産物の発現レベルまたは生物活性を増加させる変化である被験体の核酸配列における変化により、被験体が子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因、またはそのような状態を発生する傾向を有すると診断される。
【0023】
もう一つの関連局面において、本発明は、以下からなる群より選択されるポリペプチドをコードする遺伝子の核酸配列を決定する段階を含む、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法を特徴とする:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。被験体において遺伝子産物の発現レベルまたは生物活性を減少させる変化である被験体の核酸配列における変化は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の素因と被験体を診断する。
【0024】
上記の局面のいずれかの好ましい態様において、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸は、ホリスタチン関連タンパク質、インヒビン-A、βファーティリン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、または分泌性フリズルド関連タンパク質である。
【0025】
上記の局面のいずれかのさらなる態様において、レベルは2回またはそれ以上測定され、測定間のレベルの変化が子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である。好ましい態様において、最初の測定から次の測定までの本発明のポリペプチド、または本発明のポリペプチドをコードする核酸のいずれかのレベルの変化(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上の増加または減少)が子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の診断指標である。望ましくは、診断方法は症状の発生の前に(例えば、少なくとも4、5、6、7、8、9、または10週間前に)妊娠関連高血圧障害を診断するために用いられる。
【0026】
上記の診断局面のいずれかの様々な態様において、妊娠関連高血圧障害は、子癇前症、子癇、妊娠性高血圧、慢性高血圧、HELLP症候群、またはSGA児の妊娠である。
【0027】
上記の局面の様々な態様において、試料は、本発明のポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸が一般に検出可能な被験体の体液(例えば、尿、血液、羊水、血清、唾液、血漿、または脳脊髄液)である。さらなる態様において、試料は組織または細胞(例えば、胎盤組織または胎盤細胞、内皮細胞、白血球、および単球)である。上記の局面の他の態様において、被験体は、妊娠したヒト、分娩後のヒト、または非妊娠のヒトである。上記の局面の他の態様において、被験体は非ヒト(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、またはネコ)である。一つの態様において、被験体は非妊娠のヒトであり、方法は、妊娠の前に子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を発症する傾向を診断するために用いられる。さらなる態様において、BMIまたはGAまたは両方もまた測定される。
【0028】
もう一つの局面において、本発明は、以下のポリペプチドの群をコードする核酸から選択される少なくとも1つの核酸配列、またはそれに相補的な配列を含む被験体における子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断のためのキットを提供する:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。キットはまた、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因に診断のための核酸配列またはそれに相補的な配列の使用説明書を含む。好ましい態様において、キットは核酸配列の少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ、またはそれ以上を含む。
【0029】
もう一つの局面において、本発明は、ポリペプチドの以下の群から選択されるポリペプチドを検出するために用いられる構成要素または試薬を含む、被験体における子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断のためのキットを提供する:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。キットはまた、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の診断のためにポリペプチドを検出しうる構成要素の使用説明書を含む。好ましい態様において、キットは本発明のポリペプチドの少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ、またはそれ以上を検出するために用いられる構成要素または試薬を含む。好ましいポリペプチドまたは核酸は、ホリスタチン関連タンパク質、インヒビン-A、βファーティリン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、または分泌性フリズルド関連タンパク質を含む。好ましい態様において、ポリペプチドを検出するために用いられる構成要素または試薬は、ポリペプチドに特異的である抗体または抗原結合断片のような結合分子を含み、ポリペプチドは以下のアッセイの任意の1つにより検出される:免疫学的アッセイ、酵素アッセイ、または比色アッセイ。構成要素または試薬はまた、そのポリペプチドに特異的に結合する抗体に結合することができるポリペプチド、またはその断片でありうる。そのようなキットは、被験体においてタンパク質のレベルを示している被験体由来の体液試料に存在する抗体を検出するために用いることができる。
【0030】
本発明の上記のキット局面のいずれかのさらなる好ましい態様において、キットはまた、参照用の試料、標準、またはレベルを含む。参照用の試料、標準、またはレベルは、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患していない被験体、または妊娠していない被験体から採取された正常参照の試料、標準、またはレベルでありうる。参照試料はまた、公知の正常濃度における精製ポリペプチドでありうる。
【0031】
好ましい態様において、診断キットは、被験体における子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断における使用について、使用説明書がラベルで貼られているか、または含まれている。さらにもう一つの態様において、診断キットは治療的モニタリングまたは治療的用量決定における使用について、使用説明書がラベルで貼られているか、または含まれている。望ましくは、診断キットは、被験体試料の本発明のポリペプチドのレベルを測定するための、およびそれらの被験体試料レベルを参照試料値または参照試料値の標準曲線と比較するためのキットの使用についてのラベルまたは使用説明書を含み、標準曲線が、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を示す値、および正常値を示している。参照試料値は、キットの意図された用途に依存することが理解されるであろう。例えば、診断目的のために用いられるキットにおいて、被験体試料は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患していない、または妊娠していない被験体から得られた本発明のポリペプチドについての参照値または参照試料と比較されうる。もう一つの例において、治療的モニタリングに用いられるキットは、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害を示す陽性参照である参照値または参照試料を有することができ、参照試料に対する被験体試料の値における変化(増加または減少)は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害における改善、または治療用化合物の有効量を示すために用いることができる。
【0032】
関連局面において、本発明は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断するための装置を特徴とする。装置は、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸のレベルを比較するために有用な構成要素を含み、本発明のポリペプチドのレベルの変化(増加または減少)が被験体における子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である。好ましい態様において、装置は、尿試料中のポリペプチドを測定および比較するために用いられる側方流動形式またはディップスティック形式における膜を含む。装置はまた、参照試料に対して、1つもしくは複数の本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸分子のレベル、ならびに被験体由来の試料における可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、およびPlGF核酸分子またはポリペプチドの少なくとも1つのレベルを比較するための構成要素を含むことができ、変化(増加または減少)が被験体において子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因を診断する。好ましい態様において、装置は、1つまたは複数の本発明のポリペプチドのレベル、ならびに可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、およびPlGFポリペプチドの少なくとも1つ、好ましくは2つのレベルを比較するための計量と共に用いる構成要素を含む。
【0033】
もう一つの局面において、本発明は、複数のポリヌクレオチドプローブと安定的に結合している1つまたは複数の基質支持体を含む核酸アレイであって、ポリヌクレオチドプローブは、本発明のポリペプチドのいずれかをコードする核酸のRNA転写産物またはその相補体と高度にストリンジェントな条件下でハイブリダイズする能力がある、核酸アレイを特徴とする。
【0034】
もう一つの局面において、本発明は、複数の本発明のポリペプチド;ポリペプチドの変異体;ポリペプチドもしくは変異体に特異的な抗体;または、ポリペプチド、変異体、もしくは抗体の任意の組み合わせと安定的に結合している1つまたは複数基質支持体を含むポリペプチドアレイを特徴とする。
【0035】
上記のアレイのそれぞれはまた、妊娠関連高血圧障害またはその素因の診断のためのアレイの使用についての使用説明書を含みうる。
【0036】
本明細書に記載された診断方法、キット、またはアレイのいずれもまた、被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害をモニターするために用いることができる。好ましい態様において、診断方法は、治療中被験体をモニターするために、または有効治療量を決定するために用いられる。本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸のレベルは、単独で、または可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、もしくはPlGFタンパク質または核酸またはそれらの任意の組み合わせのレベルと組み合わせて、測定される。好ましい態様において、レベルは2回またはそれ以上に測定され、レベルの変化(増加または減少)が子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の診断指標である。さらなる好ましい態様において、レベルは参照試料と比較され、参照試料に対するポリペプチドのいずれかのレベルの変化(増加または減少)は子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の診断指標である。一つの態様において、以下のポリペプチド、または以下の分泌もしくは細胞内ポリペプチドをコードする核酸、またはそれらの断片の少なくとも1つのレベルが治療を実施中または実施後に測定され、治療前の値と比較される:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。この態様において、治療前の値と比較した上記のポリペプチドまたはそれらの断片の任意の1つまたは複数のレベルの減少が、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害における改善を示す。
【0037】
もう一つの態様において、以下の分泌もしくは細胞内ポリペプチド、または分泌ポリペプチドをコードする核酸、またはそれらの断片の少なくとも1つのレベルが治療の実施中または後に測定され、治療前の値と比較される:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。この態様において、治療前の値と比較した上記のポリペプチドまたはそれらの断片の任意の1つまたは複数のレベルの増加が、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害における改善を示す。
【0038】
sFlt-1、VEGF、またはPlGFの測定を含む本発明の診断モニタリング方法の好ましい態様において、方法は計量を用いてsFlt-1、VEGF、またはPlGFのレベル間の関係を計算する段階を含み、参照試料と対する被験体試料における該レベル間の関係の変化は子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の診断指標である。そのような計量の1つの例はPAAIである。この例において、被験体のPAAI値における減少(例えば、20未満、好ましくは10未満)は子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害における改善を示す。PAAIにおける減少(例えば、20未満、好ましくは10未満)はまた治療用化合物の有効量を示しうる。診断または治療的処置のモニタリングに関する局面の好ましい態様において、ポリペプチドは、ELISAもしくはウェスタンブロットのような免疫学的アッセイ、または1つより多いポリペプチドの発現レベルの測定のためのタンパク質アレイもしくは抗体アレイを用いて測定される。モニタリング方法のいずれについても、レベルの測定は2回またはそれ以上に行われることができ、測定間のレベルの変化は子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の診断指標である。
【0039】
もう一つの局面において、本発明は、以下からなる分泌ポリペプチドの群より選択されるポリペプチド、もしくはポリペプチドをコードする核酸分子の生物活性または発現レベルを減少させる能力がある化合物を被験体に投与することにより、被験体において子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因を処置または予防する方法であって、投与が被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するのに十分な時間および量である、方法を提供する:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。好ましい態様において、化合物は、上記で列挙されたポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列の少なくとも一部に少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的である核酸塩基オリゴマーである。核酸塩基オリゴマーは、好ましくは所望の核酸配列の少なくとも8個〜30個のヌクレオチドと90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的なアンチセンス核酸塩基オリゴマーでありうる。核酸塩基オリゴマーはまた、所望の核酸配列の少なくとも18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、35個、45個、または50個と少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%または100%相補的である二本鎖RNA(dsRNA)、好ましくは低分子干渉RNA(siRNA)でありうる。
【0040】
この局面のさらなる好ましい態様において、化合物は、以下のポリペプチドまたはそれらの断片の任意の1つに特異的に結合する抗体または抗原結合断片、好ましくはモノクローナル抗体である:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。好ましい態様において、抗体またはその抗原結合断片はヒトまたはヒト化抗体である。
【0041】
もう一つの局面において、本発明は、以下からなる群より選択されるポリペプチドもしくは分泌ポリペプチドをコードする核酸分子の生物活性または発現レベルを増加させる能力がある化合物を被験体に投与することにより、被験体において子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の素因を処置または予防する方法であって、投与が被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するのに十分な時間および量である、方法を特徴とする:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジン。好ましい態様において、化合物は以下からなる群より選択される精製ポリペプチドである:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジン。上記局面のいずれかの様々な態様において、方法はさらに、抗高血圧性化合物(例えば、アデノシン、ニフェジピン、ミノキシジル、および硫酸マグネシウム)を被験体に投与する段階を含む。上記局面の他の態様において、被験体は妊娠したヒト、分娩後のヒト、非妊娠のヒト、または非ヒト(例えば、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、またはネコ)である。本発明の治療方法は、子癇前症、子癇、妊娠性高血圧、慢性高血圧、HELLP症候群、およびSGA児の妊娠を含む妊娠関連高血圧障害を処置または予防するために用いることができる。好ましい障害は子癇前症および子癇である。上記局面の様々な態様において、方法は、治療中に被験体をモニターするための、または有効治療量を決定するための下記の本発明の診断方法と組み合わせられうる。
【0042】
本発明の治療的局面のいずれもまた、精製sFlt-1抗体、sFlt-1抗原結合断片、ニコチン、テオフィリン、アデノシン、ニフェジピン、ミノキシジル、硫酸マグネシウム、VEGF189、VEGF121、もしくはVEGF165のようなすべてのアイソフォーム、またはそれらの断片を含む血管内皮成長因子(VEGF);すべてのアイソフォームおよびそれらの断片を含む胎盤成長因子(PlGF);精製可溶性エンドグリン抗体または可溶性エンドグリン抗原結合断片のような1つまたは複数の追加の化合物を投与する段階であって、投与段階が被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するのに十分な時間および量である段階を含みうる。そのような化合物の好ましい例は、米国特許出願公開第20040126828号、第20050025762号、および第20050170444号;PCT公開第WO 2004/008946号および第WO 2005/077007号;ならびに米国特許出願第11/235,577号に記載されている。望ましくは、化合物はsFlt-1に結合する、またはsFlt-1発現を減少させる能力がある化合物である。
【0043】
本発明の治療的局面のいずれも、単独で、または本発明の1つもしくは複数のさらなる方法(診断または処置)と組み合わせて用いることができる。
【0044】
もう一つの局面において、本発明は、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸分子を発現させる細胞を候補化合物と接触させる段階、および候補化合物により接触させられた細胞における本発明のポリペプチドもしくは本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の発現または生物活性のレベルを、候補化合物により接触させられていない対照細胞における発現または生物活性のレベルと比較する段階であって、本発明のポリペプチドもしくは本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の発現または生物活性における変化が候補化合物を、妊娠関連高血圧障害を寛解させる化合物であると同定する段階を含む、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を寛解させる化合物を同定する方法を提供する。
【0045】
一つの態様において、方法は、ポリペプチドの以下の群から選択されるポリペプチドもしくはその断片、またはポリペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片の発現を減少させる化合物を同定するために用いられる:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。もう一つの態様において、方法は、ポリペプチドの以下の群から選択されるポリペプチドもしくはその断片、またはポリペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片の発現における増加を促進する化合物を同定するために用いられる:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。変化は、例えば、転写、翻訳、タンパク質安定性、産生、または生物活性において存在しうる。
【0046】
本発明の目的のために、以下の略語および用語は下記に定義されている。
【0047】
「変化」とは、下記のもののような標準的技術分野公知の方法により検出されるような遺伝子またはポリペプチドの発現レベルの変化(増加または減少)を意味する。本明細書に用いられる場合、変化は、発現レベルの10%変化、好ましくは25%変化、より好ましくは40%変化、および最も好ましくは発現レベルの50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の変化を含む。「変化」とはまた、本発明のポリペプチドのいずれかの生物活性における変化(増加または減少)を示しうる。生物活性の例は、リガンド結合、酵素活性、細胞遊走、細胞増殖、内皮機能不全の誘導、または抗血管形成状態の誘導を含む。生物活性は、例えば、リガンド結合アッセイ;細胞遊走アッセイ;酵素活性(例えば、キナーゼ活性)についてのアッセイ;スキャッチャードプロット分析;イムノアッセイ;BrdU標識、細胞計数実験のような細胞増殖アッセイ、または3Hチミジン取り込みのようなDNA合成についての定量的アッセイ;および当技術分野において標準である、または本明細書に記載されている抗血管形成アッセイにより測定されうる。本明細書に用いられる場合、変化は、生物活性における10%変化、好ましくは25%変化、より好ましくは40%変化、および最も好ましくは生物活性における50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の変化を含む。
【0048】
「アンチセンス核酸塩基オリゴマー」とは、長さを問わず、本発明のポリペプチドをコードする核酸のコード鎖またはmRNAに相補的である核酸塩基オリゴマーを意味する。アンチセンス核酸塩基オリゴマーはまた、翻訳開始部位および終止部位へターゲットされうる。好ましくは、アンチセンス核酸塩基オリゴマーは約8個から30個までのヌクレオチドを含む。アンチセンス核酸塩基オリゴマーはまた、本発明のポリペプチドをコードするmRNAまたはDNAに相補的である少なくとも40個、60個、85個、120個、またはそれ以上の連続したヌクレオチドを含むことができ、長さは完全長mRNAまたは遺伝子でありうる。
【0049】
「体格指数」とは、体重が健康な範囲内にあるかどうかの一般的な指標を与える、身長および体重測定値を用いることにより導かれる数を意味する。体格指数を決定するために一般的に用いられる式は、キログラムでのヒトの体重を、メートルでのヒトの身長の2乗で除算する、すなわち、体重(kg)/(身長(m))2である。
【0050】
「化合物」とは、任意の小分子化学化合物、抗体、核酸分子、ポリペプチド、またはその断片を意味する。
【0051】
「キメラ抗体」とは、もう一つのタンパク質の少なくとも一部(典型的には、免疫グロブリン定常ドメイン)に連結された、抗体分子の少なくとも抗原結合部分を含むポリペプチドを意味する。
【0052】
「減少させる」とは、本明細書に記載されたアッセイにより検出されるポリペプチドもしくは核酸のレベル(「発現」参照)、または本明細書に記載されたアッセイにより検出されるポリペプチドの生物活性(「生物活性」参照)において、参照試料と比較して、好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的低下を引き起こす能力を意味する。
【0053】
「二本鎖RNA(dsRNA)」とは、センス鎖およびアンチセンス鎖の両方で構成されるリボ核酸分子を意味する。dsRNAはRNA干渉を媒介するために用いることができる。
【0054】
「発現」とは、標準技術分野公知の方法による遺伝子またはポリペプチドの検出を意味する。例えば、ポリペプチド発現はしばしばイムノアッセイ(例えば、ELISAまたはウェスタンブロッティング)により検出され、DNA発現はしばしばサザンブロッティングまたはポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により検出され、RNA発現はしばしば、ノーザンブロッティング、PCR、またはRNアーゼプロテクションアッセイにより検出される。
【0055】
「断片」とは、ポリペプチドまたは核酸分子の一部を意味する。この部分は、好ましくは、参照核酸分子もしくはポリペプチドの全長の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、または90%を含む。断片は、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、もしくは100個、200個、300個、400個、500個、600個、700個、800個、900個、1000個、もしくはそれ以上のアミノ酸またはヌクレオチドからポリペプチドまたは核酸の全長までを含みうる。
【0056】
「在胎週数」とは、通常、週で呼ばれる、母親の最後の月経期間の第1日目から数えた、胎児の齢への言及を意味する。
【0057】
「妊娠性高血圧」とは、妊娠20週間後、タンパク尿無しでの高血圧の発生を意味する。
【0058】
「子癇前症または子癇の病歴」とは、被験体自身における、または関係のある家族メンバーにおける、子癇前症または子癇または妊娠誘導性高血圧の既往診断を意味する。
【0059】
「相同的な」とは、比較配列の長さに対して公知の遺伝子またはポリペプチド配列と少なくとも30%相同性、より好ましくは40%、50%、60%、70%、80%、および最も好ましくは90%またはそれ以上の相同性を有する任意の遺伝子またはポリペプチド配列を意味する。「相同的な」ポリペプチドはまた比較ポリペプチドの少なくとも1つの生物活性を有しうる。ポリペプチドについて、比較配列の長さは一般的に、少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは、少なくとも10個または20個のアミノ酸、より好ましくは少なくとも25個のアミノ酸、および最も好ましくはポリペプチドの全長までの、50個、100個、150個、200個のアミノ酸またはそれ以上である。核酸について、比較配列の長さは、一般的に、少なくとも18個のヌクレオチド、好ましくは少なくとも25個または50個のヌクレオチド、より好ましくは少なくとも75個のヌクレオチド、および最も好ましくは少なくとも100個、150個、200個、250個、300個のヌクレオチド、またはそれ以上から核酸の全長までである。「相同性」はまた、抗体を産生するために用いられるエピトープと、抗体が向けられるポリペプチドまたはその断片との間の実質的な類似性を指しうる。この場合、相同性は、問題になっているポリペプチドを特異的に認識することができる抗体の産生を誘発するのに十分な類似性を指す。
【0060】
「ヒト化抗体」とは、あらかじめ決められた抗原に結合する能力がある免疫グロブリンアミノ酸配列変異体またはその断片を意味する。普通には、抗体は、軽鎖、加えて重鎖の少なくとも可変ドメインの両方を含む。抗体はまた、重鎖のCH1、ヒンジ、CH2、CH3、またはCH4領域を含みうる。ヒト化抗体は、実質的にヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列を有するフレームワーク領域(FR)、および実質的に非ヒト免疫グロブリンのアミノ酸配列(「インポート(import)」配列)を有する相補性決定領域(CDR)を含む。
【0061】
一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれへ導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。一般的に、ヒト化抗体は、CDR領域の全部または実質的全部が非ヒト免疫グロブリンのCDR領域と対応し、FR領域の全部または実質的全部がヒト免疫グロブリンコンセンサス配列のFR領域である、少なくとも1つの、典型的には2つの、可変ドメイン(Fab、Fab'、F(ab')2、Fabc、Fv)の実質的全部を含む。ヒト化抗体は、最適には、免疫グロブリンの定常領域(Fc)、典型的にはヒト免疫グロブリンの定常領域の少なくとも一部を含む。「相補性決定領域(CDR)」とは、免疫グロブリン軽鎖および重鎖のそれぞれの内の可変領域における3つの超可変配列を意味する。「フレームワーク領域(FR)」とは、免疫グロブリン軽鎖および重鎖の3つの超可変配列(CDR)の両側に位置しているアミノ酸の配列を意味する。
【0062】
ヒト化抗体のFRおよびCDR領域は、親の配列と正確に対応している必要はない、例えば、インポートCDRまたはコンセンサスFRは、その部位でのCDRまたはFR残基がコンセンサスまたはインポート抗体のいずれとも対応していないように、少なくとも1つの残基の置換、挿入、または欠失により突然変異を生じうる。そのような突然変異は、しかしながら、広範ではない。通常、ヒト化抗体残基の少なくとも75%、好ましくは90%、および最も好ましくは少なくとも95%、96%、97%、98%、99%、または100%が、親のFRおよびCDR配列のそれらと対応している。
【0063】
「ハイブリダイズする」とは、様々なストリンジェンシーの条件下で、相補的ポリヌクレオチド配列またはその部分の間で二本鎖分子を形成しうる対を意味する。(例えば、Wahl and Berger(1987) Methods Enzymol. 152:399; Kimmel, Methods Enzymol. 152:507, 1987参照。)例えば、ストリンジェントな塩濃度は、普通、約750mM NaClおよび75mM クエン酸三ナトリウム未満、好ましくは約500mM NaClおよび50mMクエン酸三ナトリウム未満、および最も好ましくは約250mM NaClおよび25mMクエン酸三ナトリウム未満である。低ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、有機溶媒、例えば、ホルムアミド、の非存在下で得ることができるが、一方、高ストリンジェンシーハイブリダイゼーションは、少なくとも約35%ホルムアミド、および最も好ましくは少なくとも約50%ホルムアミドの存在下で得られる。ストリンジェントな温度条件は、普通、少なくとも約30℃、より好ましくは少なくとも約37℃、および最も好ましくは少なくとも約42℃の温度を含む。ハイブリダイゼーション時間、界面活性剤、例えばドデシル硫酸ナトリウム(SDS)、の濃度、および担体DNAの包含または排除のような様々な追加のパラメーターは、当業者に周知である。ストリンジェンシーの様々なレベルは、必要に応じて、これらの様々な条件を組み合わせることにより達成される。好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、750mM NaCl、75mMクエン酸三ナトリウム、および1%SDSにおいて30℃で起こる。より好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、500mM NaCl、50mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、35%ホルムアミド、および100μg/ml変性サケ精子DNA(ssDNA)において37℃で起きる。最も好ましい態様において、ハイブリダイゼーションは、250mM NaCl、25mMクエン酸三ナトリウム、1%SDS、50%ホルムアミド、および200μg/ml ssDNAにおいて42℃で起きる。これらの条件における有用なバリエーションは、当業者にとって容易に明らかである。
【0064】
たいていの適用について、ハイブリダイゼーションに続く洗浄段階もまた、ストリンジェンシーによって異なる。洗浄ストリンジェンシー条件は、塩濃度により、および温度により定義されうる。上記のように、洗浄ストリンジェンシーは、塩濃度を減少させることにより、または温度を上昇させることにより、増加されうる。例えば、洗浄段階についてのストリンジェントな塩濃度は、好ましくは約30mM NaClおよび3mM クエン酸三ナトリウム未満、および最も好ましくは約15mM NaClおよび1.5mMクエン酸三ナトリウム未満である。洗浄段階についてのストリンジェントな温度条件は、普通、少なくとも約25℃、より好ましくは少なくとも約42℃、および最も好ましくは少なくとも約68℃の温度を含む。好ましい態様において、洗浄段階は、30mM NaCl、3mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDSにおいて25℃で起きる。より好ましい態様において、洗浄段階は、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDSにおいて42℃で起きる。最も好ましい態様において、洗浄段階は、15mM NaCl、1.5mMクエン酸三ナトリウム、および0.1%SDSにおいて68℃で起きる。これらの条件におけるさらなるバリエーションは、当業者にとって容易に明らかである。ハイブリダイゼーション技術は、当業者に周知であり、例えば、Benton and Davis (Science 196:180, 1977); Grunstein and Hogness (Proc. Natl. Acad. Sci., USA 72:3961, 1975); Ausubel et al. (Current Protocols in Molecular Biology, Wiley Interscience, New York, 2001); Berger and Kimmel (Guide to Molecular Cloning Techniques, 1987, Academic Press, New York);およびSambrook et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, New Yorkに記載されている。
【0065】
「増加させる」とは、前述のアッセイにより検出されるポリペプチドもしくは核酸のレベル(「発現」参照)、または前述のアッセイにより検出されるポリペプチドの生物活性(「生物活性」参照)において、参照試料と比較して、好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の全体的増加を引き起こす能力を意味する。
【0066】
「子宮内発育遅延(IUGR)」とは、胎児の在胎週数について予想される胎児体重のその10パーセント少ない出生時体重を結果として生じる症候群を意味する。低出生時体重についての最新のWorld Health Organization基準は、2,500gm(5Ibs. 8oz.)未満、または人種、経産回数、および産児性別による在胎週数についての出生時体重のU.S.表により在胎週数について第10パーセンタイルより下の体重である(Zhang and Bowes, Obstet. Gynecol. 86:200-208, 1995)。これらの低出生時体重の赤ん坊はまた、「不当軽量児(SGA)」とも呼ばれる。子癇前症は、IUGRまたはSGAに関連していることが知られている状態である。
【0067】
「計量」とは測度を意味する。計量は、例えば、本発明のポリペプチドまたは核酸分子のレベルを比較するために用いられる。例示的な計量は、限定されるわけではないが、比率のような、数式またはアルゴリズムを含む。用いられる計量に依存して、子癇または子癇前症の診断指標は、参照試料またはレベル(例えば、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧性障害に罹患していない対照被験体由来の)に関する同じ計量を用いての値より有意に上または下でありうる。用いられうる計量は、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧性障害に罹患している被験体における本発明のポリペプチドもしくは核酸分子、および/または可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、PlGF、もしくはそれらの任意の組み合わせのレベルと、参照試料またはレベルの間を最善に識別するものである。例えば、計量は、子癇前症抗血管形成指数(PAAI):[sFlt-1/(VEGF+PlGF)]、可溶性エンドグリン抗血管形成指数:(sFlt-1+0.25(可溶性エンドグリンポリペプチド))/PlGF、sFlt1/PLGF、(sFlt1+可溶性エンドグリン)/PlGF、(sFlt1+可溶性エンドグリン+ホリスタチン関連タンパク質)/PlGF、またはそれらの任意の組み合わせでありうる。計量のいくつかの例は米国特許出願公開第20040126828号、第20050025762号、および第20050170444号;PCT公開第WO 2004/008946号および第WO 2005/077007号;ならびに米国特許出願第11/235,577号に記載されている。
【0068】
「核酸塩基オリゴマー」とは、結合基により結合した、少なくとも8個の核酸塩基、好ましくは少なくとも12個の塩基、および最も好ましくは少なくとも16個の塩基の鎖を含む化合物を意味する。この定義には、修飾型および非修飾型の両方の天然ならびに非天然のオリゴヌクレオチド、加えて、タンパク質核酸、ロックド(locked)核酸、およびアラビノ核酸のようなオリゴヌクレオチド模倣体が含まれる。本発明の核酸塩基オリゴマーに用いることができる多数の核酸塩基および結合基の例は、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第20030114412号、パラグラフ[0030]〜[0046]、および第20030114407号、パラグラフ[0036]〜[0055]、および第20030190659号、パラグラフ[0083]〜[0106]に見出される。
【0069】
「機能的に連結される」とは、適切な分子(例えば、転写活性化タンパク質)が制御配列に結合している場合遺伝子発現を可能にするように、遺伝子および制御配列が接続されていることを意味する。
【0070】
「薬学的に許容される担体」とは、それが共に投与される化合物の治療的性質を保持すると同時に、処置される哺乳動物にとって生理学的に許容される担体を意味する。1つの例示的な薬学的に許容される担体物質は、生理食塩水である。他の生理学的に許容される担体およびそれらの製剤は、当業者に公知であり、例えば、Remington's Pharmaceutical Science, (第20版), ed. A. Gennaro, 2000, Lippincott, Williams & Wilkins, Philadelphia, PAに記載されている。
【0071】
「多型」とは、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を発症する素因を示す本発明のポリペプチドをコードする核酸分子における遺伝的差異、突然変異、欠失、または付加を意味する。多型は、遺伝子のプロモーター配列、オープンリーディングフレーム、イントロン配列、または非翻訳3'領域に存在しうる。
【0072】
「妊娠関連高血圧障害」とは、血圧における増加と関連している、または増加により特徴づけられる任意の妊娠の状態または疾患を意味する。これらの状態の中には、子癇前症(早発性子癇前症、重度子癇前症を含む)、子癇、妊娠性高血圧、HELLP症候群(溶血、肝臓酵素の上昇、血小板の低下)、胎盤早期剥離、慢性高血圧、子宮内発育制限を伴う妊娠、および不当軽量(SGA)児の妊娠が含まれる。SGA児の妊娠は高血圧とあまり関連していないが、この定義に含まれることは留意されるべきである。
【0073】
「子癇前症」とは、妊娠または最近の妊娠の影響による、タンパク尿もしくは浮腫もしくは両方を伴う高血圧、糸球体機能不全、脳浮腫、肝臓浮腫、または凝固異常により特徴づけられる多系障害を意味する。子癇前症は、一般的に、妊娠期間の第20週目後に起こる。子癇前症は一般的に以下の症状のいくつかの組み合わせとして定義される:(1)妊娠20週間後の収縮期血圧(BP)>140mmHgおよび拡張期BP>90mmHg(一般的に、4〜168時間離して、2回、測定される)、(2)新たに発生したタンパク尿(尿検査におけるディップスティックにより1+、24時間尿収集における>300mgのタンパク質、またはタンパク質/クレアチニン比率>0.3を有する単一ランダム尿試料)、ならびに(3)分娩後12週間目までの高血圧およびタンパク尿の消散。重度子癇前症は一般的に、(1)収縮期BP>110mmHg(一般的に、4〜168時間離して、2回、測定される)、または(2)24時間尿収集における3.5gもしくはそれ以上のタンパク質の測定値、またはディップスティックによる少なくとも3+タンパク質を有する2つのランダム尿検体により特徴づけられるタンパク尿として定義される。子癇前症において、高血圧およびタンパク尿は一般的にお互いの7日間以内に起こる。重度子癇前症において、重度高血圧、重度タンパク尿、およびHELLP症候群(溶血、肝臓酵素の上昇、血小板の低下)、または子癇が、同時に、または一度に一症状のみで、起きうる。時々、重度子癇前症は発作の発生まねく場合がある。この重度型症候群は「子癇」と呼ばれる。子癇はまた、肝臓(例えば、肝細胞損傷、門脈周囲壊死)および中枢神経系(例えば、脳浮腫および脳出血)のようないくつかの器官もしくは組織への機能不全または損傷を含みうる。発作の病因は、脳浮腫および腎臓における微小血管の焦点性痙攣の発生の二次的なものと考えられる。
【0074】
「子癇前症抗血管形成指数(PAAI)」とは、抗血管形成活性の指標として用いられるsFlt-1/VEGF+PlGFの比率を意味する。10より大きい、より好ましくは20より大きい、PAAIは子癇前症または子癇前症のリスクを示すとみなされる。
【0075】
「早発性子癇前症」とは、<37週間目または<34週間目の症状の発生を伴う子癇前症を意味する。
【0076】
「タンパク質」または「ポリペプチド」または「ポリペプチド断片」とは、天然のポリペプチドもしくはペプチドの全部もしくは一部を構成する、または非天然のポリペプチドもしくはペプチドを構成する、翻訳後修飾(例えば、グリコシル化またはリン酸化)に関わらず、2個より多いアミノ酸の任意の鎖を意味する。
【0077】
「本発明のポリペプチド」とは、以下の分泌ポリペプチドのいずれかを意味し、括弧内の数はポリペプチドについてのGenBankアクセッション番号を示す:ホリスタチン関連タンパク質(FLRG、U76702)、インターロイキン8(IL-8、M28130)、インヒビンA(M13981)、VEGF-C(U43142)、アンジオゲニン(M11567)、βファーティリン(U38805)、仮想タンパク質(AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質(LAIR-2、AF013250)、赤血球分化タンパク質(J03634)、脂肪生成抑制因子(X58377)、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質(CRF-BP、X58022)、α-1抗キモトリプシン(X68733)、インスリン様成長因子結合タンパク質-5(IGFBP-5、L27559)、CD33L(D86358)、サイトカイン受容体様因子1(CRLF1、AF059293)、血小板由来内皮成長因子(ECGF-1、NP_001953)、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2(PLOD2、U84573)、スタニオカルシン前駆体(U25997)、分泌性フリズルド関連タンパク質(AF056087)、ガレクチン-3(NM_002306)、αデフェンシン(L12691)、ADAM-TS3(AB002364)、コレシストキニン前駆体(AW043690)、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体(AF030514)、およびアズロシジン(M96326);または以下の細胞内ポリペプチドのいずれか:スペルミンオキシダーゼ(U01134)、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28(AF091582)、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2(X63759)、中性エンドペプチダーゼ(J03779)、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2(X54942)、およびβグルコシダーゼ(J03060)、ラノステロール合成酵素(U22526)、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ(AI688589)、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H(X86816)、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1(U27699)、チロシナーゼ関連タンパク質1(M20681)、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ(AL080151)、ジヒドロピラミジナーゼ様-4(J03634)、およびチトクロムP450ファミリー11(D84361)。この定義には、上記ポリペプチドのいずれかのスプライスバリアント、アイソフォーム、相同体、分解産物、および断片が含まれる。
【0078】
「参照試料」とは、比較目的のために用いられる、任意の試料、標準、またはレベルを意味する。「正常参照試料」は、同じ被験体から採取された以前の試料、子癇前症または子癇のようないずれの妊娠関連高血圧障害にも罹患していない妊娠した被験体由来の試料、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患していない妊娠した被験体由来の試料、妊娠している被験体であるが、試料が妊娠初期に(例えば、妊娠第1期もしくは第2期において、または子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の検出の前に)採取された、被験体、妊娠しており、かつ子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の病歴を有しない被験体、妊娠していない被験体、公知の正常な濃度での(すなわち、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を示していない)精製参照ポリペプチドの試料でありうる。「参照標準またはレベル」とは、参照試料から引き出された値または数を意味する。正常参照の標準またはレベルは、以下の基準の少なくとも1つにより試料被験体と一致している正常被験体から引き出された値または数でありうる:胎児の在胎週数、母親の年齢、母親の妊娠前の血圧、母親の妊娠中の血圧、母親のBMI、胎児の体重、子癇前症または子癇の既往診断、および子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の家族歴。「陽性参照」試料、標準、または値は、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患していることがわかっていて、以下の基準の少なくとも1つが試料被験体と一致している被験体から引き出された試料または値または数である:胎児の在胎週数、母親の年齢、母親の妊娠前の血圧、母親の妊娠中の血圧、母親のBMI、胎児の体重、妊娠関連高血圧障害の既往診断、および妊娠関連高血圧障害の家族歴。
【0079】
「低下させる、または抑制する」とは、参照試料、またはアンチセンス核酸塩基オリゴマー、dsRNA、もしくはRNA干渉に用いられるsiRNAで処理されていない試料と比較して、前述のアッセイにより検出されるポリペプチドもしくは核酸のレベル(「発現」参照)、または前述のアッセイにより検出される生物活性(「生物活性」参照)において、好ましくは10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の変化の全体的な減少を引き起こす能力を意味する。
【0080】
「試料」とは、被験体から得られる、組織生検、細胞、体液(例えば、血液、血清、血漿、尿、唾液、羊水、または脳脊髄液)、または他の検体を意味する。望ましくは、生体試料は本発明のポリペプチド、または本発明のポリペプチドをコードする核酸分子、または両方を含む。
【0081】
「低分子干渉RNA(siRNA)」とは、分解されるべき標的遺伝子またはmRNAを同定するために用いられる、好ましくはdsRNA分子であり、かつ好ましくは10ヌクレオチド(nt)長より長い、より好ましくは15ヌクレオチド長より長い、および最も好ましくは19ヌクレオチド長より長い、核酸塩基オリゴマーを意味する。望ましくは、siRNAは、所望の核酸配列の18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、25個、35個、45個、50個のヌクレオチドに少なくとも90%、95%、96%、97%、98%、99%、100%相補的である。19〜25ヌクレオチドの範囲がsiRNAについての最も好ましいサイズである。siRNAはまた、siRNA二重鎖の両方の鎖が単一のRNA分子内に含まれる短いヘアピンRNA(shRNA)を含みうる。siRNAは、dsRNAの任意の形態(より大きなdsRNAのタンパク分解性に切断された生成物、部分的に精製されたRNA、本質的に純粋なRNA、合成RNA、組換え技術によって産生されたRNA)、加えて、1つもしくは複数のヌクレオチドの付加、欠失、置換、および/または変化により天然のRNAと異なる、変化したRNAを含む。そのような変化は、21〜23 nt RNAの末端、または内部に(RNAの1個または複数のヌクレオチドで)非ヌクレオチド物質の付加を含みうる。好ましい態様において、RNA分子は、3'ヒドロキシル基を含む。本発明のRNA分子におけるヌクレオチドはまた、非天然のヌクレオチドまたはデオキシリボヌクレオチドを含む非標準ヌクレオチドを含みうる。まとめて、すべてのそのような変化したRNAはRNAの類似体と呼ばれる。本発明のsiRNAは、RNA干渉(RNAi)を媒介する能力を有するように天然RNAに十分類似していれさえすればよい。本明細書に用いられる場合、RNAiは、低分子干渉RNAまたはdsRNAの細胞または生物体への導入を通しての特定のmRNA分子のATP依存性ターゲット化切断および分解を指す。本明細書に用いられる場合、「RNAiを媒介する」とは、どのRNAが分解されることになっているかを識別または同定する能力を指す。
【0082】
「特異的に結合する」とは、自然に本発明のポリペプチドを含む試料、例えば生体試料、において、本発明のポリペプチドを認識かつ結合するが、実質的に他の分子を認識かつ結合しない化合物または抗体を意味する。
【0083】
「被験体」とは、限定されるわけではないが、ヒト、またはウシ、ウマ、イヌ、ヒツジ、もしくはネコのような非ヒト哺乳動物を含む、哺乳動物を意味する。この定義には、妊娠した、分娩後の、および非妊娠の哺乳動物が含まれる。
【0084】
「実質的に同一の」とは、例えば、下記の方法を用いて、最適に整列された場合、第二の核酸またはアミノ酸配列、例えば、エンドグリンまたは可溶性エンドグリン配列と少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%配列同一性を共有する核酸またはアミノ酸配列を意味する。「実質的同一性」は、完全長配列、エピトープまたは免疫原性ペプチド、機能性ドメイン、コード配列および/または制御配列、エクソン、イントロン、プロモーター、ならびにゲノム配列のような様々な種類および長さの配列に言及するために用いうる。2つのポリペプチドまたは核酸配列の間のパーセント同一性は、当技術分野における技術範囲内である様々な方法で、例えば、Smith Waterman Alignment(Smith, T.F. and M.S. Waterman (1981) J. Mol. Biol. 147:195-7); GeneMatcher Plus(商標)、Schwarz and Dayhof (1979) Atlas of Protein Sequence and Structure, Dayhof, M.O., Ed pp 353-358へ組み入れられているような「BestFit」(Smith and Waterman, Advances in Applied Mathematics, 482-489 (1981));BLASTプログラム(Basic Local Alignment Search Tool; (Altschul, S.F., W. Gish, et al. (1990) J. Mol. Biol. 215:403-10)、BLAST-2、BLAST-P、BLAST-N、BLAST-X、WU-BLAST-2、ALIGN、ALIGN-2、CLUSTAL、またはMegalign(DNASTAR)ソフトウェアのような公的に利用可能なコンピュータソフトウェアを用いて決定される。さらに、当業者は、比較されることになっている配列の長さに対して最高アラインメントを達成するために必要とされる任意のアルゴリズムを含む、アラインメントを測定するための適切なパラメーターを決定することができる。一般的に、タンパク質について、比較配列の長さは、少なくとも6個のアミノ酸、好ましくは、10個、20個、30個、40個、50個、60個、70個、80個、90個、100個、110個、120個、130個、140個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、または500個のアミノ酸、またはそれ以上でタンパク質の全長までである。核酸について、比較配列の長さは、一般的に、少なくとも18個、25個、50個、100個、125個、150個、200個、250個、300個、350個、400個、450個、500個、550個、600個、650個、700個、800個、900個、1000個、1100個、1200個、または少なくとも1500個のヌクレオチド、またはそれ以上で核酸分子の全長までである。DNA配列をRNA配列と比較する場合の配列同一性を決定する目的のために、チミンヌクレオチドは、ウラシルヌクレオチドと等価であることは理解されている。保存的置換は、典型的には、以下の群内での置換を含む:グリシン、アラニン;バリン、イソロイシン、ロイシン;アスパラギン酸、グルタミン酸、アスパラギン、グルタミン;セリン、トレオニン;リシン、アルギニン;およびフェニルアラニン、チロシン。
【0085】
「基質」または「固体支持体」とは、本発明の核酸プローブ、ポリペプチド、もしくはポリペプチド結合分子の付着または会合に適した離散的な個々の部位を含むように修飾することができ、かつ少なくとも1つの検出方法を適用できる任意の物質を意味する。当業者により認識されているように、可能な基質の数は非常に大きく、限定されるわけではないが、ガラスおよび改変または機能化ガラス、プラスチック(アクリル樹脂、ポリスチレンおよびスチレンと他の物質のコポリマー、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリブチレン、ポリウレタン、テフロン(Teflon)など)、多糖、ナイロンまたはニトロセルロース、樹脂、シリカまたはシリコンおよび改変シリコンを含むシリカに基づいた物質、炭素、金属などを含む。
【0086】
「子癇前症の症状」とは、以下のいずれかを意味する:(1)妊娠20週間後の収縮期血圧(BP)>140mmHgおよび拡張期BP>90mmHg、(2)新たに発生したタンパク尿(尿検査におけるディップスティックにより1+、24時間尿収集における>300mgのタンパク質、またはランダム尿のタンパク質/クレアチニン比率>0.3)、ならびに(3)分娩後12週間目までの高血圧およびタンパク尿の消散。子癇前症の症状はまた、腎臓機能障害および糸球体内皮症または肥大を含みうる。「子癇の症状」とは、妊娠または最近の妊娠の影響による以下の症状のいずれかの発生を意味する:発作、昏睡、血小板減少、肝臓浮腫、肺浮腫、および脳浮腫。
【0087】
「治療量」とは、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を患っている患者へ投与される場合、本明細書に記載されているような妊娠関連高血圧障害の症状において定性的または定量的低下を引き起こすのに十分である量を意味する。治療量はまた、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を患っている患者へ投与される場合、以下の任意の1つまたは複数の発現レベルの低下を引き起こすのに十分である量を意味しうる:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。治療量はまた、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を患っている患者へ投与される場合、以下の任意の1つまたは複数の発現レベルの増加を引き起こすのに十分である量を意味しうる:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。ポリペプチドまたは上記ポリペプチドをコードする核酸の発現レベルの測定のためのアッセイは当技術分野において公知であり、その一部は本明細書に記載されている。
【0088】
「処置すること」とは、予防的および/または治療的目的として、化合物または薬学的組成物を投与することを意味する。「疾患を処置する」こと、または「治療的処置」に用いることは、疾患をすでに患っている被験体に対して、被験体の状態を改善するように処置を施すことを指す。好ましくは、被験体は、下記の特徴的な症状のいずれかの同定または本明細書に記載された診断方法の使用に基づいて、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を患っていると診断されている。「疾患を予防する」ことは、まだ病気ではないが、特定の疾患を発症しやすい、または別なふうに、発症するリスクがある被験体の予防的処置を指す。好ましくは、被験体は、本明細書に記載された診断方法を用いて、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を発症するリスクがあると決定されている。このように、特許請求の範囲および態様において、処置することは、治療的目的または予防的目的のいずれかのための哺乳動物への施与である。
【0089】
「栄養芽層」とは子宮粘膜を浸食する胚盤胞を覆う外胚葉系中胚葉細胞層を意味し、それを通して胚芽が母親から栄養を受ける;細胞は胎盤の形成に寄与する。
【0090】
「ベクター」とは、DNAの断片が挿入またはクローニングされうる、通常プラスミドまたはバクテリオファージに由来するDNA分子を意味する。組換えベクターは1つまたは複数の固有の制限部位を含み、クローニングされた配列が再生可能であるように、確定した宿主または媒体生物体において自律複製の能力を有しうる。ベクターは、レシピエント細胞へのトランスフェクションでRNAが発現されるように、遺伝子またはコード領域へ機能的に連結されたプロモーターを含む。
【0091】
本発明の他の特徴および利点はそれらの好ましい態様の以下の説明から、および特許請求の範囲から明らかである。
【0092】
詳細な説明
子癇前症のような妊娠関連高血圧障害の発症機序に関与する分泌性因子を同定するために、本発明者らはAffymetrix U95Aマイクロアレイチップを用いて子癇前症を有する19人の女性および15人の正常血圧の妊婦由来の胎盤組織の遺伝子発現プロファイリングを行った。データは、実験条件に渡って異なって発現される遺伝子を同定するために、コンピュータプログラムBADGE(Bayesian Analysis of Differential Gene Expression version 1.0)(http://genomethods.org/badge)(Ramoni and Sebastiani, Berthold and Hand eds. Intelligent Data Analysis: An Introduction, Springer, New York, NY (1999)参照)および階層的クラスタリング分析(Eisen et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 95:14863-8 (1998))を用いて分析された。本発明者らは、以下の分泌ポリペプチドをコードする遺伝子が子癇前症を有する女性から採取された血液試料において発現の増加を示したことを発見した:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。本発明者らはまた、以下の分泌ポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルが子癇前症を有する女性から採取された血液試料において減少したことを発見した:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジン。さらに、本発明者らはまた、以下の細胞内ポリペプチドまたは酵素をコードする遺伝子が子癇前症を有する女性由来の胎盤において発現の増加を示したことを発見した:スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。以下の細胞内遺伝子ポリペプチドをコードする遺伝子は、子癇前症を有する女性由来の胎盤において発現の減少を示した:ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。
【0093】
下記の説明の目的として、上記のポリペプチドのすべてはまとめて「本発明のポリペプチド」と呼ばれる。本明細書に示された詳細な説明は特定のGenBankアクセッション番号を付随したポリペプチドに具体的に言及しているが、詳細な説明はまた、その特定されたポリペプチドのファミリーメンバー、アイソフォーム、相同体、断片、および/または変異体に適用できることは当業者にとって明らかである。
【0094】
本発明者らはまた、以下のポリペプチド:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3の任意の1つもしくは複数の発現もしくは生物活性を低下させる治療剤、または以下のポリペプチド:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、またはアズロシジンの任意の1つもしくは複数の発現レベルもしくは生物活性を増加させる作用物質が、被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するために用いることができることを発見した。そのような作用物質は、限定されるわけではないが、抗体、アンチセンスまたはRNAiについての核酸塩基オリゴマー、精製された天然または合成化合物、化学化合物、および小分子を含む。
【0095】
本発明はまた、本発明のポリペプチドの任意の1つもしくは複数、または本発明のポリペプチドをコードする核酸のレベルを、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の早期診断および管理のための検出ツールとして測定するための方法を特徴とする。
【0096】
診断
本発明は、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向を診断するために本発明のポリペプチドの少なくとも1つの検出に基づいたアッセイを特徴とする。本発明はまた、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態の素因を診断するための少なくとも2つ、少なくとも3つ、少なくとも4つ、または少なくとも5つ、またはそれ以上の本発明のポリペプチドの検出に基づいた診断アッセイを特徴とする。本発明のポリペプチドの任意の1つまたは複数のレベル(遊離レベル、結合型レベル、または総レベルのいずれか)が被験体試料において測定され、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態の素因の指標として用いられる。診断方法はまた、可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、またはPlGFのような、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の任意のさらなるマーカーのレベルを検出するための方法と組み合わせることができる。一つの態様において、本発明のポリペプチドの任意の1つもしくは複数、可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、またはPlGF、またはそれらの任意の組み合わせのレベルを組み入れる計量は、ポリペプチドの少なくとも2つのレベル間の関係が子癇前症または子癇を示しているかどうかを決定するために用いられる。
【0097】
標準方法は、限定されるわけではないが、尿、血液、血清、血漿、唾液、羊水、または脳脊髄液を含む任意の体液において本発明のポリペプチドの任意の1つまたは複数のレベルを測定するために用いることができる。そのような方法は、イムノアッセイ、ELISA、本発明のポリペプチドに方向づけられた抗体を用いるウェスタンブロッティング、およびOng et al.(Obstet. Gynecol. 98:608-611, 2001)およびSu et al.(Obstet. Gynecol., 97:898-904, 2001)に記載されたもののような定量的酵素イムノアッセイ技術を含む。ELISAアッセイは本発明のポリペプチドのレベルを測定するための好ましい方法である。好ましい態様において、ホリスタチン関連タンパク質、インヒビンA、βファーティリン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5のレベルが測定される。さらなる好ましい態様において、体格指数(BMI)および胎児の在胎週数もまた測定され、診断計量に含められる。例えば、以下のポリペプチド:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3のいずれかのレベルが参照試料に対して増加している(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、またはそれ以上)場合には、これは子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の陽性指標とみなされる。もう一つの例において、以下のタンパク質:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジンの任意の1つのレベルが参照試料に対して減少している(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)場合には、これは子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の陽性指標とみなされる。
【0098】
sFlt-1、VEGF、PlGF、および/または可溶性エンドグリンのレベルを測定する計量もまた本発明の診断方法のいずれかと組み合わせて用いることができる。例えば、PAAI(sFlt-1/VEGF+PlGF)が、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向の診断となる抗血管形成指数として任意の1つまたは複数の本発明のポリペプチドの測定と組み合わせて用いられる。PAAI(sFlt-1/VEGF+PlGF)比率は単に、診断指標として用いることができる有用な計量の一つの例にすぎない。それは本発明を限定することを意図されない。もう一つの例は以下の可溶性エンドグリン抗血管形成指数である:(sFlt-1+0.25(可溶性エンドグリンポリペプチド)/PlGF。事実上、参照試料に対する被験体における任意の本発明のポリペプチド、可溶性エンドグリン、sFlt-1、PlGF、またはVEGF、またはそれらの任意の組み合わせのレベルの変化を検出する任意の計量を診断指標として用いうる。本発明の診断方法に用いうる計量の一つの例は、(sFlt1+可溶性エンドグリン+ホリスタチン関連タンパク質)/PlGFである。
【0099】
特定の核酸またはポリペプチドの発現レベルは特定の疾患状態(例えば、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害)と関連づけられる可能性があり、従って、診断において有用である。本発明のポリペプチドをコードする核酸配列に由来するオリゴヌクレオチドまたはより長い断片は、発現をモニターするためだけでなく、状態を発症する素因を示す、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子に遺伝的差異、突然変異、または多型を有する被験体を同定するためのプローブとして用いうる。これらの多型は核酸もしくはポリペプチドの発現レベルまたは生物活性に影響を及ぼしうる。正常参照試料に対する遺伝的差異、突然変異、または多型の検出は、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する素因の診断指標として用いうる。
【0100】
そのような遺伝的変化は、遺伝子のプロモーター配列、オープンリーディングフレーム、イントロン配列、または非翻訳3'領域に存在しうる。遺伝的変化に関する情報は、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する素因を有すると被験体を診断するために用いられうる。全体を通して述べられているように、任意の本発明のポリペプチドまたはそれらの任意の組み合わせの生物活性のレベルの特定の変化は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害を発症している可能性、または同じことの素因と関連づけられうる。結果として、所定の突然変異を検出した当業者はその後、突然変異が子癇前症または子癇の可能性をもたらす、または増加させるかどうかを決定するためにポリペプチドの生物活性の1つまたは複数をアッセイすることができる。
【0101】
一つの態様において、子癇前症、子癇、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体は、本発明のポリペプチドをコードする核酸の発現における変化を示す。核酸におけるそのような変化を検出するための方法は当技術分野において標準であり、Ausubel et al., 前記に記載されている。一つの例において、ノーザンブロッティングまたはリアルタイムPCRは任意の本発明のポリペプチドをコードする核酸についてのmRNAレベルを検出するために用いられる。
【0102】
もう一つの態様において、ゲノム配列を含む本発明のポリペプチドをコードする核酸分子、または密接に関連した分子を検出する能力があるPCRプローブを用いるハイブリダイゼーションは、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している、またはそのような状態を発症するリスクがある被験体由来の核酸配列にハイブリダイズするために用いうる。プローブの特異性、それが高度に特異的な領域、例えば5'制御領域から作製されるか、またはより低度に特異的な領域、例えば保存モチーフから作製されるか、およびハイブリダイゼーションまたは増幅のストリンジェンシー(最高、高、中、または低)が、プローブが天然の配列、対立遺伝子変異体、または他の関連した配列にハイブリダイズするかどうかを決定する。ハイブリダイゼーション技術は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害を示す突然変異を同定するために用いられうる、または本発明のポリペプチドをコードする遺伝子の発現レベルをモニターする(例えば、ノーザン分析により、Ausubel et al., 前記)ために用いられうる。
【0103】
子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体は、以下からなる群より選択される、分泌もしくは細胞内ポリペプチド、または分泌もしくは細胞内ポリペプチドをコードする核酸の発現において参照試料またはレベルに対して増加を示す(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上):ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。もう一つの例において、子癇前症、子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体は、以下からなる群より選択される、分泌もしくは細胞内ポリペプチド、または分泌もしくは細胞内ポリペプチドをコードする核酸の発現において参照試料またはレベルに対して減少を示す(例えば、10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上):αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。
【0104】
免疫学的方法(ELISAおよびRIAのような)を含むそのようなポリペプチドの発現における変化を測定するための様々なプロトコールは公知であり、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症するリスクを診断するための基盤を提供する。
【0105】
一つの態様において、本発明の少なくとも1つの、ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸のレベルは、可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、もしくはPlGFポリペプチドもしくは核酸、またはそれらの任意の組み合わせのレベルと組み合わせて測定される。sFlt-1、VEGF、PlGF、および可溶性エンドグリンの測定のための方法は、それぞれが全体として参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第20040126828号、第20050025762号、および第20050170444号;PCT公開第WO 2004/008946号および第WO 2005/077007号;ならびに米国特許出願第11/235,577号に記載されている。
【0106】
一つの例において、本明細書に記載された核酸またはポリペプチドのいずれかの測定は少なくとも別々に2回行い、時間が経ってのレベルの変化は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向の指標として用いられる。もう一つの例において、本明細書に記載された核酸またはポリペプチドのいずれかの測定は参照試料と比較され、正常参照レベルと比較した変化は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向の指標として用いられる。
【0107】
子癇前症、子癇、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体の体液における任意の本発明のポリペプチドのレベルは、参照試料における同じポリペプチドのレベルに対して少なくも10%、20%、30%、もしくは40%、または多くも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上変化しうる。子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体の体液における任意の本発明のポリペプチドのレベルは、一つの測定から次回まで時間が経って、少なくも10%、20%、30%、もしくは40%、または多くも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、もしくはそれ以上変化しうる。
【0108】
一つの態様において、体液(例えば、尿、血漿、血清、羊水、または脳脊髄液)の被験体試料は、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の症状の発生の前の妊娠初期に収集される。もう一つの例において、試料は妊娠関連高血圧障害の症状の発生の前の妊娠初期に収集された組織または細胞でありうる。非限定的例は、胎盤組織、胎盤細胞、内皮細胞、および単球のような白血球を含む。ヒトにおいて、例えば、母親の血清試料は妊娠第1期、第2期、または第3期中に妊婦の肘正中静脈から収集される。好ましくは、アッセイは、妊娠第1期中、例えば、4、6、8、10、もしくは12週目において、または妊娠第2期中、例えば、14、16、18、20、22、もしくは24週目において、行われる。そのようなアッセイはまた妊娠第2期の終わりまたは第3期に、例えば、26、28、30、32、34、36、38、または40週目に、行われうる。1つまたは複数の本発明のポリペプチドのレベルはこの期間中に2回測定されることが好ましい。分娩後の子癇前症または子癇の診断のために、アッセイは分娩後に行われる。子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の素因の診断のために、アッセイは妊娠の発生の前に行われうる。一つの例において、治療のモニタリングおよび管理のために、アッセイは、子癇前症の診断後であるが、妊娠中に行われる。
【0109】
一つの特定の例において、体液(例えば、血液、血清、血漿、尿、羊水、および脳脊髄液)の試料が妊娠中に収集され、少なくとも1つの本発明のポリペプチドのレベルがELISAにより測定される。もう一つの例において、試料は妊娠第2期中および妊娠第3期初期に収集され、最初の試料採取から次回までの本発明のポリペプチドのレベルの増加または減少は、子癇前症もしくは子癇、またはいずれかを発症する傾向を示している。もう一つの特定の例において、連続的血液試料を妊娠中に収集することができ、本発明のポリペプチドの任意の1つまたは複数のレベルがELISAにより測定される。もう一つの例において、試料は妊娠第2期中および妊娠第3期初期に収集され、最初の試料採取から次回までの本発明のポリペプチドの任意の1つまたは複数のレベルの変化は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはその素因を示している。
【0110】
獣医学診療において、アッセイは妊娠中のいかなる時点でも行われうるが、好ましくは、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の症状の発生の前の妊娠初期に行われる。妊娠期間が種間で幅広く異なることを考慮すれば、アッセイのタイミングは獣医により決定されるだろうが、一般的に、ヒト妊娠中のアッセイのタイミングに対応するものである。
【0111】
本明細書に記載された診断方法は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の発症の存在、重症度、または推定時期のより正確な診断のために、個々に、または本明細書に記載された任意の他の診断方法と組み合わせて用いることができる。例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸を用いる診断方法が最初に用いられることができ、その後、ポリペプチドの発現の増加が標準免疫学的方法(例えば、ウェスタンブロッティングまたはELISA)を用いて確認されうる。さらに、本明細書に記載された診断方法は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の発症の存在、重症度、または推定時期の正確な診断に有用であることが決定された任意の他の診断方法と組み合わせて用いることができる。本明細書に記載された診断方法はまた、被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害をモニターおよび管理するために用いることができる。
【0112】
本発明の各ポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸の発現レベルは個々に検討されうるが、分析の信頼を増加させるために本発明の方法および組成物に用いる2つもしくはそれ以上の、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸の組み合わせを提供することは本発明の範囲内である。パネルは、2個もしくはそれ以上の、本発明のポリペプチドもしくはそれらの断片、2個もしくはそれ以上、2〜5個、5〜10個、10〜15個、15〜20個、20〜25個、もしくは25個より多い、核酸分子もしくはその断片もしくは相補的核酸分子、または本発明のポリペプチドを認識する2個もしくはそれ以上の、抗体のような結合分子を含む。一つの態様において、本発明のポリペプチドのこれらのパネルは、任意の1つのパネル内の本発明のポリペプチドが子癇前症の女性由来の試料において増加していることが本明細書に示されているポリペプチドのような特定の特徴を共有するように選択される。同様に、本発明のポリペプチドの異なるパネルは、妊娠関連高血圧障害の異なる時期を表す本発明のポリペプチドで構成されうる、例えば、軽度子癇前症についての、重度子癇前症までの、子癇までの別個のパネル。本発明のポリペプチドのパネルはまた、sFlt-1、VEGF、PlGF、および可溶性エンドグリンに特異的に結合する結合分子(例えば、抗体)を含むことができ、下記に考察されているようにバイオチップ上にさらに供給されうる。
【0113】
診断キット
本発明はまた診断検査キットを提供する。診断検査キットは、上記の診断アッセイのいずれかを行うために必要とされる構成要素または試薬、および子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の素因を診断するための構成要素または試薬の使用についての使用説明書を含む。例えば、診断検査キットは、抗体と本発明のポリペプチドの間の結合を検出するために、およびより好ましくは評価するために必要とされる任意の本発明のポリペプチドに対する抗体および構成要素を含みうる。本発明の診断方法およびキットに有用な抗体の非限定的例は、ヒトFLRG抗体、カタログ番号AF1288、R&D systems, Minneapolis, MN、およびヒト分泌性フリズルド関連タンパク質抗体、カタログ番号AF1384、R&D systems, Minneapolis, MNを含む。検出のために、抗体または本発明のポリペプチドのいずれかが標識され、抗体または本発明のポリペプチドのいずれかが、本発明のポリペプチド-抗体相互作用が抗体と本発明のポリペプチドの間の結合後、基質に付着した標識の量を測定することにより確立されうるように、基質結合される。通常のELISAは抗体-基質相互作用を検出するための一般的な技術分野公知の方法であり、本発明のキットと共に提供されうる。本発明のポリペプチドは、限定されるわけではないが、尿、血清、血漿、唾液、羊水、または脳脊髄液を含む事実上任意の体液において検出されうる。本発明はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸のレベルを検出および測定するために用いられうる本発明のポリペプチドをコードする核酸を含む診断検査キットを提供する。正常な対照に存在するレベルのような参照に対して本発明のポリペプチドのレベルの変化を測定するキットは、本発明の方法における診断キットとして有用である。
【0114】
本発明の診断キットはまた、米国特許出願公開第20040126828号、第20050025762号、および第20050170444号;PCT公開第WO 2004/008946号および第WO 2005/077007号;ならびに米国特許出願第11/235,577号に記載されているような、可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、もしくはPlGFポリペプチドまたは核酸の検出のための抗体または核酸を含みうる。
【0115】
望ましくは、キットは、上記の診断方法のいずれかを行うために必要とされる構成要素のいずれかを含む。本発明の一つの態様において、そのようなキットは、一次作用物質(例えば、抗原を認識する抗体またはタンパク質)でコーティングされた固体支持体(例えば、膜またはマイクロタイタープレート)、標準曲線の調製のための精製タンパク質の標準溶液、分析ランの品質試験のための体液(例えば、血清または尿)対照、標識もしくは西洋ワサビペルオキシダーゼのような酵素に結合した、または別なふうに標識された二次作用物質(例えば、検出されうる抗原における第二エピトープと反応性の二次抗体、または一次抗体を認識する抗体もしくはタンパク質)、基質溶液、停止液、洗浄緩衝液、および指示マニュアルを含む。膜はディップスティック構造上に支持することができ、ディップスティック構造を試料へ置くことにより試料が膜上に沈着される、または膜は側方流動カセットに支持することができ、試料がカセットにおける開口部を通って膜上へ沈着される。キットはまたアレイ形式をとることができ、例えば、GeneChip(商標)のような、バイオチップ上に並べられた、本発明のポリペプチド、または本発明のポリペプチドに特異的に結合する結合分子のアレイを含むことができる。
【0116】
診断キットはまた、一般的に、キット構成要素の意図された使用についてのラベルまたは使用説明書、および標準曲線を確立するために用いられる参照試料または精製タンパク質を含む。一つの例において、キットは、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または子癇前症もしくは子癇を発症する傾向の診断のためのキットの使用についての使用説明書を含む。さらにもう一つの例において、キットは、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の処置のための治療的処置計画または投与計画をモニターするためのキットの使用についての使用説明書を含む。参照試料値がキットの意図された用途に依存するものであることは理解されるであろう。 例えば、試料は正常参照値と比較することができ、本発明のポリペプチドの1つもしくは複数のレベルの変化、または本発明のポリペプチドの1つもしくは複数のレベルを用いる計量が、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または子癇前症もしくは子癇の素因を示している。もう一つの例において、治療的モニタリングに用いられるキットは、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を示している参照値を有することができ、参照試料と比較した、本発明のポリペプチドの1つもしくは複数のレベルの変化、または本発明のポリペプチドの1つもしくは複数のレベルを用いる計量が、治療効力または治療用化合物の有効量を示すために用いられうる。
【0117】
アレイおよびバイオチップ
本発明はまた、本発明のポリペプチドのパネルを含むアレイを含む。アレイは、アレイにおける1つもしくは複数の遺伝子またはポリペプチドの発現をアッセイするために用いられうる。
【0118】
本発明のポリペプチドのパネルがバイオチップのような固体支持体上に供給されうることは当業者により当然認識される。例えば、ポリヌクレオチドは、アレイ(例えば、ハイブリダイゼーション分析のためのGeneChip(商標)を用いるバイオチップ)に、樹脂(例えば、カラムクロマトグラフィーのためのカラムへ充填されうる樹脂)またはマトリックス(例えば、ノーザンブロット分析のためのニトロセルロースマトリックス)に結合されうる。本発明のポリペプチドのいずれかをコードする核酸分子に相補的な核酸分子の、共有結合性かまたは非共有結合性のいずれかでの固定化は、試料における本発明のポリペプチドをコードする核酸分子のそれぞれの存在または活性の別々の分析を可能にする。アレイにおいて、例えば、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子のパネルの各メンバーに相補的なポリヌクレオチドは、アレイ上の異なる既知の位置へ個々に付着されうる。アレイは、例えば、被験体由来の体液、組織、または細胞試料から抽出されたポリヌクレオチドとハイブリダイズされうる。アレイ上の任意の位置におけるアレイとの試料由来のポリヌクレオチドのハイブリダイゼーションを検出することができ、それに従って、試料における本発明のポリペプチドをコードする核酸もしくは転写産物の存在または量が確認されうる。一つの態様において、バイオチップに基づいたアレイが用いられる。同様に、免疫学的分析が、本発明のポリペプチドに特異的な固定化抗体もしくは他の結合分子を含むタンパク質アレイまたは抗体アレイを用いて行われうる。そのようなタンパク質アレイは、被験体由来の、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドに対する抗体を含む体液、組織、または細胞試料とハイブリダイズされうる。アレイおよびバイオチップの例に関する追加の詳細は、例えば、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許出願公開第20050266409号に見出されうる。
【0119】
例示的な結合分子および抗体
本発明の診断方法およびキットに用いることができる抗体および結合タンパク質の例は下に記載されている。下記の抗体はまた、本発明の治療方法に用いられることができ、力価もしくは安定性を増加させるために、または抗体に対する反応性を低減するために改変されうる。これらの例は本発明を例証することを意図され、決して本発明を限定するものではない。
【0120】
ホリスタチン関連タンパク質
FLRG、FSRP、FRP、FLS-1、およびFSTL1としても知られているホリスタチン関連タンパク質は、ホリスタチンに関連したタンパク質である。ホリスタチンは、インビトロおよびインビボでアクチビンを結合して、アクチビンの生物学的機能を抑制する分泌性糖タンパク質である。ホリスタチン関連タンパク質もまた高親和性でアクチビンに結合し、真皮と表皮の間の基底膜および血管の周囲に発現される。ホリスタチン関連タンパク質、FLRGをコードする遺伝子は創傷治癒過程中に誘導された(Wankell et al., J. Endocrin. 171:385-395 (2001)およびTortoriello et al., Endocrinology 142:3426-3434 (2001))。
【0121】
アクチビンおよび他のTGFβスーパーファミリーメンバー、またはそれらの断片は、生体試料中のホリスタチン関連タンパク質を検出するための特異的結合分子として用いられうる。同様に生体試料中のホリスタチン関連タンパク質を検出するために用いられうるホリスタチン関連タンパク質に特異的に結合する例示的な抗体は、Tortorielle et al., 前記に記載されたポリクローナルFSRP抗体、およびAbnova Corporation(例えば、カタログ番号H00010468-A01)から入手できる抗体、およびヒトFLRG抗体、R&D systems(例えば、カタログ番号AF1288およびAF1694)を含む。
【0122】
インヒビンA
インヒビンは、α-サブユニット、および2つのβ-サブユニットのうちの1つで構成されるジスルフィド結合した二量体糖タンパク質である。インヒビンはTGFβスーパーファミリーのメンバーであり、副腎皮質に発現される。インヒビン作用に関する一つの仮説は、インヒビンが膜結合型セリン-トレオニンキナーゼActRIIサブユニットを結合し、シグナル発生サブユニット(ActRI)リン酸化を遮断し、それによりアクチビン活性化に拮抗することである。インヒビンAへ特異的に結合するタンパク質の一つの例はβグリカンである(Vale et al., Ann. N. Y. Acad. Sci. 1038:142-147 (2004))。βグリカンまたはその断片は、生体試料中のホリスタチン関連タンパク質を検出するための特異的結合分子として用いられうる。同様に生体試料中のインヒビンAを検出するために用いられうるインヒビンAに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合断片の例は、Abnova Corp.(例えば、カタログ番号H00003624-A01)、Abcam(例えば、カタログ番号Ab10599、Ab724)、およびGenetex(例えば、カタログ番号GTX10599およびGTX20724)から入手できる抗体、ならびにRishi et al., Am. J. Surg. Pathol. 21:583-589 (1997)に記載された抗体を含む。
【0123】
βファーティリン
ファーティリンβとしても知られているβファーティリンは、精子と卵子原形質膜の結合および融合を媒介することの候補分子である精子タンパク質である。ファーティリンは、インテグリンリガンドのディスインテグリンファミリーに相同的な領域を有するβサブユニット、およびウイルス融合ペプチドに相同的な領域を有するαサブユニットを有するヘテロダイマーである。ファーティリンαおよびβはまた、熱ショックタンパク質カルメジンと相互作用することが知られている(Ikawa et al., Dev. Biol. 240:254-261 (2001)およびEvans et al., Dev. Biol. 187:94-106 (1997))。
【0124】
カルメジンまたはその断片は生体試料中のβファーティリンを検出するための特異的結合分子として用いられうる。同様に生体試料中のβファーティリンを検出するために用いられうるβファーティリンに特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合断片は、Ikawa et al., 前記に記載された抗体、ならびにChemicon(例えば、カタログ番号MAB 19292および19030)およびUnited States Biological(例えば、カタログ番号A0858-070)から市販されている抗体を含む。
【0125】
インスリン様成長因子結合タンパク質-5
IGFBP-5またはILGFBP-5としても知られているインスリン様成長因子結合タンパク質-5は、分子のアミノ末端およびカルボキシ末端領域に群がった保存システイン残基を含むシステイン豊富なタンパク質である、インスリン様成長因子結合タンパク質のスーパーファミリーのメンバーである。IGFBP-5はIGF-Iと相互作用し、IGF-Iの生存効果を抑制し(Tonner et al., Development 129:4547-4557 (2002))、IGF-Iリガンド-受容体相互作用を調節する(Tonner et al., Adv. Exp. Med. Biol. 480:45-53 (2000))ように機能する。追加のIGFBP-5結合タンパク質は、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1(Tonner et al., J. Endocrinol. 167:265-73 (2000))およびαs2-カゼイン(Tonner et al., Adv. Exp. Med. Biol. 480:45-53 (2000))を含む。
【0126】
IGF、プラスミノーゲンアクチベーターインヒビター-1、αs2-カゼイン、またはそれらの任意の断片は、生体試料中のIGFBP-5を検出するための特異的結合分子として用いられうる。同様に生体試料中のIGFBP-5を検出するために用いられうるIGFBP-5に特異的に結合する抗体またはそれらの抗原結合断片の例は、Diagnostic Systems Laboratories Inc.(例えば、カタログ番号R00737)、Alpha Diagnostic International(例えば、カタログ番号IGFBP5-1s)、およびAbcam(例えば、カタログ番号Ab4257)からの抗体を含む。
【0127】
分泌性フリズルド関連タンパク質
分泌性フリズルド関連タンパク質は、ネトリンにいくらかの相同性を有する、N末端シグナルペプチド、フリズルド関連CRD、およびC末端親水性領域を含むが、いかなる膜貫通ドメインの証拠も欠く分泌タンパク質のファミリーである。
【0128】
分泌性フリズルド関連タンパク質は、おそらく分泌性Wntリガンドの結合について膜フリズルド受容体と競合することにより、Wntシグナル伝達の可溶性モジュレーターとして働くと考えられる。
【0129】
任意のWntファミリー膜タンパク質またはその任意の断片が、生体試料中の分泌性フリズルド関連タンパク質を検出するための特異的結合分子として用いられうる。分泌性フリズルド関連タンパク質に特異的に結合し、かつ生体試料中の分泌性フリズルド関連タンパク質を検出するために用いられうる抗体の一つの例は、R&D systemsからのヒト分泌性フリズルド関連タンパク質抗体(カタログ番号AF1384)である。
【0130】
スクリーニングアッセイ
上で考察されているように、1つもしくは複数の本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸の発現レベルは、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体において変化している。これらの発見に基づいて、本発明のポリペプチド(細胞内および分泌性の両方)は、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害に罹患している被験体において発現が変化している、本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の発現を調節するものを同定する候補化合物の高処理量低コストのスクリーニングに有用である。
【0131】
方法のいくつでも、本発明のポリペプチドをコードする核酸分子の発現を変化させる新しい候補化合物を同定するためのスクリーニングアッセイを行うために有効である。一つの実施例において、候補化合物は本発明のポリペプチドをコードする核酸配列を発現させる培養細胞の培地へ様々な濃度で加えられる。例示的な細胞培地は、任意の哺乳動物、酵母、昆虫、または細菌細胞培地を含む。好ましい細胞培地は栄養芽層(例えば、BEWO、JAR、およびJEG細胞)およびHUVECのような哺乳動物細胞培地を含む。これらの細胞はその後、新しい候補化合物についてスクリーニングするために用いられうる。遺伝子発現はその後、例えば、ハイブリダイゼーションプローブとして核酸分子から調製された任意の適切な断片を用いるマイクロアレイ分析、ノーザンブロット分析(Ausubel et al., 前記)、またはRT-PCRにより測定される。候補化合物の存在下における遺伝子発現のレベルは、候補化合物を欠く対照培地において測定されたレベルと比較される。本発明において有用であると考えられる化合物は、以下のポリペプチドの群から選択される、ポリペプチドもしくはその断片、またはポリペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片の発現において減少を促進するものである:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。さらなる有用な化合物は、以下のポリペプチドの群:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジンから選択されるポリペプチドもしくはその断片、またはポリペプチドをコードする核酸分子もしくはその断片の発現において、または被験体由来の試料における、以下の細胞内ポリペプチドもしくはそれらの断片:ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11のいずれか1つのレベルにおいて、増加を促進する化合物である。そのような化合物は、例えば、被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置するための治療用物質として用いられうる。
【0132】
もう一つの実施例において、候補化合物の効果は、同じ一般的なアプローチおよび本発明のポリペプチドに特異的な抗体でのウェスタンブロッティングまたは免疫沈降のような標準免疫学的技術を用いるポリペプチド産生のレベルにおいて測定されうる。例えば、イムノアッセイは生物体において本発明のポリペプチドの少なくとも1つの発現を検出またはモニターするために用いられうる。そのようなポリペプチドに結合する能力があるポリクローナルまたはモノクローナル抗体(上記のように産生される)は、ポリペプチドのレベルを測定する任意の標準イムノアッセイ形式(例えば、ELISA、ウェスタンブロット、またはRIAアッセイ)において用いられうる。いくつかの態様において、本発明のポリペプチドの発現または生物活性において減少を促進する化合物は特に有用と考えられる。この場合もやはり、そのような分子は、例えば、被験体において、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、または妊娠関連高血圧障害の症状を遅延させる、寛解させる、または処置するための治療用物質として用いられうる。
【0133】
さらにもう一つの実施例において、候補化合物は本発明のポリペプチドへ特異的に結合するものを同定するようにスクリーニングされうる。そのような候補化合物の効力はそのようなポリペプチドまたはその機能的等価物と相互作用するそれの能力に依存する。そのような相互作用は標準結合技術および機能アッセイ(例えば、Ausubel et al., 前記に記載されたもの)のいくつでも用いて容易にアッセイされうる。一つの態様において、候補化合物は本発明のポリペプチドに特異的に結合するそれの能力についてインビトロで試験されうる。
【0134】
もう一つの実施例において、本発明のポリペプチドをコードする核酸は、検出可能なレポーターとの転写または翻訳の融合タンパク質として発現され、かつ誘導性プロモーターのような異種性プロモーターの制御下で単離された細胞(例えば、哺乳動物または昆虫細胞)において発現される。融合タンパク質を発現させる細胞はその後、候補化合物と接触させられ、その細胞における検出可能なレポーターの発現が未処理の対照細胞における検出可能なレポーターの発現と比較される。検出可能なレポーターに融合した本発明のポリペプチドの発現を変化させる(例えば、増加させる、または減少させる)候補化合物は、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の処置に有用である化合物である。
【0135】
一つの特定の実施例において、本発明のポリペプチドに結合する候補化合物はクロマトグラフィーに基づいた技術を用いて同定されうる。例えば、本発明の組換えポリペプチドは、ポリペプチド(例えば、上で記載されたもの)を発現させるように操作された細胞から標準技術により精製することができ、カラムに固定化されうる。候補化合物の溶液はその後、カラムを通過させられ、固定化された本発明のポリペプチドに特異的な化合物が、ポリペプチドに結合して、カラム上に固定化されるそれの能力に基づいて同定される。化合物を単離するために、カラムは非特異的結合分子を除去するために洗浄され、対象となる化合物がその後、カラムから遊離されて、収集される。類似した方法はポリペプチドマイクロアレイに結合した化合物を単離するために用いられうる。この方法(または任意の他の適切な方法)により単離された化合物は、必要に応じて、さらに精製されうる(例えば、高速液体クロマトグラフィーにより)。さらに、これらの候補化合物は本発明のポリペプチドの活性を変化させる(例えば、増加させる、または減少させる)それらの能力について試験されうる。このアプローチにより単離された化合物はまた、例えば、ヒト被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置するための治療用物質として用いられうる。10 mM以下の親和定数で本発明のポリペプチドに結合すると同定される化合物は本発明において特に有用と考えられる。または、任意のインビボタンパク質相互作用検出系、例えば、任意の2ハイブリッドアッセイが、本発明のポリペプチドに結合する化合物またはタンパク質を同定するために利用されうる。
【0136】
可能性のあるアンタゴニストは、有機分子、ペプチド、ペプチド模倣体、ポリペプチド、核酸、および本発明のポリペプチドまたは本発明のポリペプチドをコードする核酸配列に結合する抗体を含む。
【0137】
本発明のポリペプチドをコードするDNA配列はまた、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害の処置のための治療用化合物の発見および開発において用いられうる。発現によるコードされたポリペプチドは薬物のスクリーニングのための標的として用いられうる。さらに、コードされたポリペプチドのアミノ末端領域またはシャイン・ダルガノもしくは他の翻訳促進配列をコードするDNA配列が標準技術(Ausubel et al., 前記)により単離されうる。
【0138】
任意で、上記アッセイのいずれかにおいて同定された化合物は、本明細書に記載されたもののような標準アッセイを用いて本発明のポリペプチドの生物活性を変化させる(例えば、増加させる、または減少させる)化合物についてのアッセイにおいて有用であると確認されうる。
【0139】
本発明の小分子は、好ましくは2,000ダルトンより低い、より好ましくは300ダルトンと1,000ダルトンの間、および最も好ましくは400ダルトンと700ダルトンの間の分子量を有する。これらの小分子は有機分子であることが好ましい。
【0140】
試験化合物および抽出物
一般的に、本発明のポリペプチドの活性を変化させる(例えば、増加させる、または減少させる)能力がある化合物は、天然産物もしくは合成(または半合成)抽出物の大きなライブラリーまたは化学物質ライブラリーから、またはポリペプチドもしくは核酸ライブラリーから、当技術分野において公知の方法に従って同定される。薬物発見および開発の分野の業者は、試験抽出物または化合物の正確な供給源が本発明のスクリーニング手順にとって重要ではないことは当然理解されるであろう。スクリーニングに用いられる化合物は公知の化合物(例えば、他の疾患または障害について用いられる公知の治療用物質)を含みうる。または、事実上、未知の化学的抽出物または化合物のいくつでも本明細書に記載された方法を用いてスクリーニングされうる。そのような抽出物または化合物の例は、限定されるわけではないが、植物に、真菌に、原核生物に、または動物に基づいた抽出物、発酵ブロス、および合成化合物、加えて既存化合物の改変を含む。多数の方法もまた、限定されるわけではないが、糖に、脂質に、ペプチドに、および核酸に基づいた化合物を含む化学化合物のいくつでもランダムまたは定方向性合成(例えば、半合成または全合成)を生じるために利用できる。合成化合物ライブラリーは、Brandon Associates(Merrimack, NH)およびAldrich Chemical(Milwaukee, WI)から市販されている。または、細菌、真菌、植物、および動物抽出物の形をおる天然化合物のライブラリーは、Biotics(Sussex, UK)、Xenova(Slough, UK)、Harbor Branch Oceangraphics Institute(Ft. Pierce, FL)、およびPharmaMar, U.S.A.(Cambridge, MA)を含むいくつかの供給元から市販されている。加えて、天然のおよび合成的に作製されたライブラリーは、必要に応じて、当技術分野において公知の方法により、例えば、標準抽出および分画方法により、作製される。さらに、必要に応じて、任意のライブラリーまたは化合物は標準の化学的、物理的、または生化学的方法を用いて容易に改変される。
【0141】
加えて、薬物発見および開発の分野の業者は、既知物質同定(例えば、分類学的既知物質同定、生物学的既知物質同定、および化学的既知物質同定、またはそれらの任意の組み合わせ)、または脱皮攪乱活性について既知の物質の反復試験もしくは繰り返しの排除のための方法が、可能ならいつでも用いられるべきであることを容易に理解するであろう。
【0142】
粗抽出物が本発明のポリペプチドの活性を少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、もしくはそれ以上変化させる(例えば、増加させる、または減少させる)こと、または本発明のポリペプチドに結合することを見出された場合、陽性リード抽出物のさらなる分画が、観察された効果の原因である化学的成分を単離するために必要である。従って、抽出、分画、および精製過程の目的は、本発明のポリペプチドの活性を変化させる(例えば、増加させる、または減少させる)粗抽出物内の化学的実体の注意深い特徴付けおよび同定である。そのような不均一な抽出物の分画および精製の方法は当技術分野において公知である。必要に応じて、ヒトにおける妊娠関連高血圧障害の処置のための治療用物質として有用であることが示された化合物は、当技術分野において公知の方法に従って化学修飾される。
【0143】
治療用物質
本発明は、被験体において子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するための方法および組成物を特徴とする。本発明者らは、ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3のレベルが、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそれらの素因を有する被験体において増加していることを発見した。それゆえに、本発明は、これらのポリペプチドもしくは核酸分子の任意の1つもしくは複数の発現レベルまたは生物活性を減少させる方法および作用物質を含む。そのような作用物質は、上記ポリペプチドの任意の1つまたは複数;上記ポリペプチドのいずれか1つに特異的に結合する精製抗体または抗原結合断片;アンチセンス核酸塩基オリゴマー;および上記ポリペプチドのいずれかをターゲットするdsRNAの生物活性を下方制御するまたは抑制する化合物を含む。これらの方法は下で詳細に記載されている。
【0144】
本発明者らはまた、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジンのレベルが子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する素因を有する被験体において減少していることを発見した。それゆえに、本発明はまた、これらのポリペプチドもしくは核酸分子の任意の1つもしくは複数の発現レベルまたは生物活性を増加させる任意の方法および作用物質を含む。そのような作用物質は、上記ポリペプチドまたはポリペプチド自身の精製型の任意の1つまたは複数の生物活性を下方制御するまたは増加させる化合物を含む。
【0145】
これらの方法および作用物質は、米国特許出願公開第20040126828号、第20050025762号、および第20050170444号;PCT公開第WO 2004/008946号および第WO 2005/077007号;ならびに米国特許出願第11/235,577号に記載されているようなsFlt-1もしくは可溶性エンドグリンレベルを減少させること、またはVEGFもしくはPlGFレベルを増加させることを目標とする治療用物質のような妊娠関連高血圧障害についての任意の追加の治療と組み合わせられうる。
【0146】
被験体試料における上記ポリペプチドのいずれかのレベルを増加させることができる化合物の使用に加えて、本発明は、本明細書に記載された治療方法のいずれかと組み合わせて用いられる任意の慢性高血圧薬物療法の使用を提供する。妊娠中の高血圧の処置に用いられる薬物療法は、メチルドーパ、塩酸ヒドララジン、またはラベタロールを含む。これらの薬物療法のそれぞれについて、投与および用量の様式は医師により、および製造会社の使用説明書により決定される。
【0147】
精製タンパク質
本発明の好ましい態様において、以下のポリペプチド:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジンの任意の1つまたは複数の精製型が子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害を処置または予防するために被験体に投与される。
【0148】
精製されたαデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジンポリペプチドは、血管形成を誘導できる、または血管内皮細胞もしくは臍血管内皮細胞の選択的増殖を促進する能力があるαデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジンのアミノ酸配列に相同的である、より望ましくは、実質的に同一であるアミノ酸配列を有する任意のポリペプチドを含む。
【0149】
治療用核酸
最近の研究により、VEGFのような内皮細胞分裂促進因子を発現させる能力がある核酸分子(例えば、DNAまたはRNA)の血管損傷の部位への送達が損傷血管の増殖および再内皮化を誘導することが示されている。本発明は血管損傷に関連していないが、核酸の内皮細胞への送達についてのこれらの一般的な技術はαデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、またはアズロシジンをコードする核酸の送達のために本発明に用いられうる。これらの一般的な技術は米国特許第5,830,879号および第6,258,787号に記載されており、参照により本明細書に組み入れられている。
【0150】
本発明において、核酸分子は以下のいずれかをコードするゲノムDNA、cDNA、およびmRNAを含む任意の核酸(例えば、DNAまたはRNA)でありうる:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、またはアズロシジン。所望のタンパク質をコードする核酸は、当技術分野における日常的な手順、例えば、組換えDNA、PCR増幅を用いて得られる。
【0151】
核酸を送達するための様式
本明細書に記載された核酸適用のいずれかについて、核酸を投与するための標準方法が用いられうる。例えば、以下のポリペプチド:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、またはアズロシジンのいずれかをコードする核酸の操作および取扱いを単純化するために、核酸は好ましくは、プロモーターへ機能的に連結されているカセットへ挿入される。プロモーターは所望の標的宿主細胞においてポリペプチドの発現を作動する能力がなければならない。適切なプロモーターの選択は容易に達成されうる。好ましくは、高発現プロモーターを用いる。適したプロモーターの例は763塩基対サイトメガロウイルス(CMV)プロモーターである。ラウス肉腫ウイルス(RSV)(Davis, et al., Hum. Gene Ther. 4:151-159, 1993)およびマウス乳癌ウイルス(MMTV)プロモーターもまた用いられうる。特定のタンパク質はそれらの本来のプロモーターを用いて発現されうる。発現を増強することができる他の要素もまた含まれうる(例えば、tat遺伝子およびtar要素のような発現の高レベルを結果として生じるエンハンサーまたは系)。組換えベクターは、例えば大腸菌(E. coli)複製起点を含む、pUC118、pBR322のようなプラスミドベクターまたは他の公知のプラスミドベクターでありうる(Sambrook, et al., Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory press, 1989参照)。プラスミドベクターはまた、マーカーポリペプチドが処置されることになっている生物体の代謝に悪影響を及ぼさないとの条件で、アンピシリン耐性についてのβラクタマーゼ遺伝子のような選択マーカーを含みうる。カセットはまた、PCT公開第WO 95/22618号に開示された系のように合成送達系において核酸結合部分に結合しうる。
【0152】
核酸は、用いられるベクターに適切な任意の手段により細胞へ導入されうる。多くのそのような方法は当技術分野において周知である(Sambrook et al., 前記、およびWatson et al., 「Recombinant DNA」, Chapter 12, 第2版, Scientific American Books, 1992)。組換えベクターは、リン酸カルシウム沈殿、エレクトロポレーション、リポソーム媒介トランスフェクション、遺伝子銃、マイクロインジェクション、ウイルスキャプシド媒介移入、ポリブレン媒介移入、またはプロトプラスト融合のような方法により移入されうる。リポソーム調製、内容物のターゲティングおよび送達についての手順の概説として、Mannino and Gould-Fogerite, (Bio Techniques, 6:682-690, 1988), Felgner and Holm, (Bethesda Res. Lab. Focus, 11:21, 1989)、およびMaurer(Bethesda Res. Lab. Focus, 11:25, 1989)を参照されたい。
【0153】
組換えベクター(プラスミドベクターかまたはウイルスベクターのいずれか)の移入は、羊水への直接的注射または静脈内送達を通して達成されうる。
【0154】
アデノウイルスベクターまたはアデノ随伴ベクター(AAV)を用いる遺伝子送達もまた用いられうる。アデノウイルスは多数の動物種に存在し、大して病原性ではなく、分裂中細胞および静止細胞において等しく十分複製できる。一般的ルールとして、遺伝子送達に用いられるアデノウイルスは、ウイルス複製に必要とされる1つまたは複数の遺伝子を欠損している。所望のタンパク質をコードする核酸の送達に用いられる複製欠損組換えアデノウイルスベクターは分野公知の技術に従って作製されうる(Quantin et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 89:2581-2584, 1992; Stratford-Perricadet et al., J. Clin. Invest., 90:626-630, 1992;およびRosenfeld et al., Cell, 68:143-155, 1992参照)。子宮内の遺伝子治療の使用の例について、米国特許第6,399,585号を参照されたい。
【0155】
いったん移入されたならば、核酸は、所望のタンパク質の血清中レベルを増加させるのに十分な時間、損傷の部位で細胞により発現される。核酸を含むベクターは通常細胞のゲノムへ組み込まれないため、対象となるタンパク質の発現は、限られた時間だけ起こる。典型的には、タンパク質は、約2日間〜数週間、好ましくは約1週間〜2週間、治療的レベルで発現される。DNAの再適用は、治療用タンパク質の発現の追加の期間を供給するために利用されうる。
【0156】
タンパク質発現を抑制する治療用核酸塩基オリゴマー
本発明はまた、以下のいずれかの発現を下方制御するための核酸塩基オリゴマーの使用を特徴とする:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。
【0157】
一つの例において、核酸塩基オリゴマーはアンチセンス核酸塩基オリゴマーである。相補的な核酸配列(センス鎖またはコード鎖)に結合することにより、アンチセンス核酸塩基オリゴマーは、おそらくRNアーゼHによりRNA鎖の酵素的切断を通して、タンパク質発現を抑制することができる。好ましくは、アンチセンス核酸塩基オリゴマーは、上記ポリペプチドの1つもしくは複数、または上記ポリペプチドの1つもしくは複数をコードする核酸の発現を、そのタンパク質の増加したレベルを発現させる細胞において低下させる能力がある。好ましくは、タンパク質発現における減少は、対照核酸塩基オリゴマーで処理された細胞に対して少なくとも10%、より好ましくは25%、および最も好ましくは50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上である。アンチセンス核酸塩基オリゴマーを選択および調製するための方法は当技術分野において周知である。VEGF発現を下方制御するためのアンチセンス核酸塩基オリゴマーの使用の例について、米国特許第6,410,322号を参照。タンパク質発現のレベルをアッセイするための方法もまた当技術分野において周知であり、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、およびELISAを含む。
【0158】
本発明はまた、以下の任意の1つまたは複数の発現を抑制するためのRNA干渉(RNAi)の使用を特徴とする:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。RNA干渉(RNAi)は、対象となる遺伝子またはmRNAに対応する二本鎖RNA(dsRNA)が生物体へ導入され、結果として、対応するmRNAの分解を生じる、転写後遺伝子サイレンシング(PTGS)の機構である。RNAi反応において、dsRNA分子のセンス鎖およびアンチセンス鎖の両方は、長さが18〜25ヌクレオチド、好ましくは21〜23ヌクレオチド(nt)の範囲で、かつ2ヌクレオチドの3'テールを有する小さなRNA断片またはセグメントへプロセシングされる。または、長さが21〜23ntであり、かつ2ヌクレオチドの3'テールを有する合成dsRNAが合成され、精製されて、反応に用いられうる。これらの21〜23nt dsRNAは「ガイドRNA」または「短い干渉RNA」(siRNA)として知られている。本発明に有用であるdsRNAまたはsiRNAは、以下のポリペプチドの任意の1つまたは複数をコードする遺伝子の少なくとも18個、19個、20個、21個、22個、23個、24個、または25個の連続したヌクレオチドに実質的に相補的(例えば、少なくとも85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)である:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。
【0159】
siRNA二重鎖はその後、複合体内にsiRNAとの相同性を有する内因性mRNAをターゲットし、かつ破壊するタンパク質で構成されるヌクレアーゼ複合体に結合する。複合体内のタンパク質のアイデンティティは明らかにされていないままであるが、複合体の機能は、siRNA鎖の1つと内因性mRNAの間の塩基対形成相互作用を通して相同的なmRNA分子をターゲットすることである。mRNAはその後、siRNAの3'末端から約12nt切断され、分解される。この様式において、特定の遺伝子がターゲットかつ分解され、それにより、結果として、ターゲットされた遺伝子からのタンパク質発現の損失を生じる。siRNAはまた、化学合成されうる、またはsiRNAを化学合成している会社(例えば、Dharmacon Research Inc., Pharmacia, またはABI)から入手されうる。
【0160】
dsRNAの特定の必要条件および修飾の一般的な説明はPCT公開第WO 01/75164号に記載されている。dsRNA分子は長さが様々でありうるが、典型的には(2'-デオキシ)チミジンまたはウラシルのいずれかの特徴的な2〜3ヌクレオチドの3'オーバーハング末端を有する21〜23ヌクレオチドのdsRNAであるsiRNA分子を用いることが最も好ましい。siRNAは、典型的には、3'ヒドロキシル基を含む。一本鎖siRNA、加えてdsRNAおよびshRNAの平滑末端型もまた用いられうる。RNAの安定性をさらに増強するために、3'オーバーハングが分解に対して安定化されうる。一つのそのような態様において、RNAは、アデノシンまたはグアノシンのようなプリンヌクレオチドを含むことにより安定化される。または、ピリミジンヌクレオチドの修飾類似体による置換、例えば、ウリジン2-ヌクレオチドオーバーハングの(2'-デオキシ)チミジンによる置換は耐容性を示し、RNAiの効率に影響を及ぼさない。2'ヒドロキシル基の非存在は、組織培地においてオーバーハングのヌクレアーゼ耐性を有意に増強する。
【0161】
または、siRNAは、PCT公開第WO 01/75164号に示された方法のいずれかを用いて、またはRNAのインビトロ転写についての標準手順およびElbashir et al.(Genes & Dev., 15:188-200, 2001)に記載されているようなdsRNAアニーリング手順を用いて、調製されうる。siRNAはまた、Elbashir et al.に記載されているように、dsRNAがプロセシングされて約21〜約23ヌクレオチドのsiRNAを生じる条件下でシンシチウム胚盤葉ショウジョウバエ胚由来の無細胞ショウジョウバエ可溶化液における標的遺伝子の配列に対応するdsRNAのインキュベーションにより得られ、その後、当業者に公知の技術を用いて単離される。例えば、ゲル電気泳動は21〜23nt RNAを分離するために用いられることができ、RNAはその後、ゲルスライスから溶出されうる。加えて、クロマトグラフィー(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー)、グリセロール勾配遠心分離、および抗体を用いるアフィニティー精製が21〜23nt RNAを単離するために用いられうる。
【0162】
様々な方法が、dsRNAまたはオリゴヌクレオチドの哺乳動物細胞へのトランスフェクションまたは導入に利用可能である。例えば、限定されるわけではないが、以下を含むいくつかの市販されているトランスフェクション試薬がある:TransIT-TKO(商標)(Mirus, カタログ# MIR 2150)、Transmessenger(商標)(Qiagen, カタログ# 301525)、およびOligofectamine(商標)(Invitrogen, カタログ# MIR 12252-011)。
【0163】
本発明において、dsRNAまたはsiRNAは、以下のタンパク質:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3のいずれか1つのmRNA配列の少なくとも一部と実質的に相補的(例えば、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上)であり、タンパク質の発現を低下させるまたは抑制することができる。好ましくは、タンパク質発現における減少は、対照dsRNAまたはsiRNAで処理された細胞に対して少なくとも10%、より好ましくは25%、および最も好ましくは少なくとも50%である。タンパク質発現のレベルをアッセイするための方法もまた当技術分野において周知であり、ウェスタンブロッティング、免疫沈降、およびELISAを含む。
【0164】
本発明において、用いられる核酸塩基オリゴマーは、多少なりとも核酸の安定性または機能を増強する任意の改変を含む。例は、リン酸バックボーン、ヌクレオチド間結合への、または糖部分への改変を含む。本発明の核酸塩基オリゴマーに用いられうる改変の例は、米国特許出願公開第20030114412号、パラグラフ[0030]〜[0046]、および第20030114407号、パラグラフ[0036]〜[0055]、および第20030190659号、パラグラフ[0083]〜[0106]に見出されうる。
【0165】
遺伝子およびタンパク質発現についてのアッセイ
以下の方法は、タンパク質または遺伝子発現を評価し、かつ任意の1つまたは複数の本発明のポリペプチドの発現を増加させるまたは減少させるための上述の方法のいずれかについての効力を測定するために用いられうる。
【0166】
被験体由来の試料(例えば、血液、血清、血漿、尿、羊水、および脳脊髄液のような体液、細胞、または組織)は、ELISA、ウェスタンブロッティング、または特異的抗体を用いるイムノアッセイのような方法を用いて所望のポリペプチドのレベルについて測定される。ポリペプチドの血清レベルを測定するために用いられる方法は、ELISA、ウェスタンブロッティング、または特異的抗体を用いるイムノアッセイを含む。陽性結果は、参照試料と比較して本発明のポリペプチドの血清レベルにおいて少なくとも20%、好ましくは30%、より好ましくは少なくとも50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の変化とみなされる。
【0167】
加えて、インビトロ血管形成アッセイは、被験体の血液が抗血管形成状態から血管形成促進状態へ変換しているかどうかを決定するために行われうる。そのような血管形成についてのインビトロアッセイの一つの例は内皮管アッセイである。このアッセイにおいて、成長因子低減マトリゲル(Matrigel)(7mg/mL, Collaborative Biomedical Products, Bedford, MA)が、あらかじめ冷却された48ウェル細胞培養プレートのウェル(100μl/ウェル)に置かれ、重合を可能にするように25〜30分間、37℃でインキュベートされる。3〜5継代におけるヒト臍静脈内皮細胞(300μlの無血清内皮基本培地, Clonetics, Walkersville, MDにおいて30,000+個)は、10%患者血清で処理され、マトリゲルコーティング化ウェル上へ蒔かれ、37℃で12〜16時間、インキュベートされる。管形成は、その後、4Xでの倒立位相差顕微鏡(Nikon Corporation, Tokyo, Japan)を通して評価され、Simple PCI画像化分析ソフトウェアを用いて分析される(管面積および全長)。陽性結果は、インビトロ血管形成アッセイを用いて抗血管形成状態から血管形成促進状態への変換とみなされうる。
【0168】
被験体由来の体液試料はまた、本発明のポリペプチドをコードする核酸のレベルについて測定されうる。遺伝子発現についてアッセイするためのいくつかの技術分野公知の方法がある。いくつかの例は、被験体の血液試料からのRNAの調製、およびノーザンブロッティング、PCRに基づいた増幅、またはRNアーゼプロテクションアッセイについてのRNAの使用を含む。
【0169】
治療的処置のための抗体の使用
以下のポリペプチド:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3の任意の1つまたは複数を結合して、活性を中和するための抗体のような化合物の使用は、子癇前症または子癇を予防または処置するために用いられうる。
【0170】
本発明は上記タンパク質のいずれかへ特異的に結合する抗体を提供する。抗体は上記タンパク質の任意の1つまたは複数の活性を中和するために用いられる。治療目的としての抗体の調製および使用についての方法は、米国特許第6,054,297号;第5,821,337号;第6,365,157号;および第6,165,464号を含むいくつかの特許に記載されており、参照により本明細書に組み入れられている。抗体は、ポリクローナルまたはモノクローナルでありうる;モノクローナル抗体が好ましい。本発明のポリペプチドの一部に対する抗体のいくつかの例は、上の「例示的な結合分子および抗体」の項目下で記載されている。
【0171】
モノクローナル抗体、特に、マウスを含む齧歯類由来のものは、様々な疾患の処置に用いられている;しかしながら、急速なクリアランスおよび処置の効力における低下を引き起こすヒト抗マウス免疫グロブリン応答の誘導を含め、それらの使用の限界がある。例えば、齧歯類モノクローナル抗体の臨床的使用における主要な限界は、治療中の抗グロブリン応答である(Miller et al., Blood, 62:988-995 1983; Schroff et al., Cancer Res., 45:879-885, 1985)。
【0172】
当技術分野は、動物抗原結合可変ドメインがヒト定常ドメインに結合している「キメラ」抗体を構築することによりこの問題を克服しようと試みた(米国特許第4,816,567号;Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 81:6851-6855, 1984; Boulianne et al., Nature, 312:643-646, 1984; Neuberger et al., Nature, 314:268-270, 1985)。そのようなキメラ抗体の産生および使用は下に記載されている。
【0173】
本発明のモノクローナル抗体のカクテルは、子癇前症または子癇のような妊娠関連高血圧障害についての効果的処置として用いられうる。カクテルは、少なくも2個、3個、もしくは4個の異なる抗体、または多くも6個、8個、もしくは10個の異なる抗体を含みうる。加えて、本発明の抗体は、抗高血圧性薬物(例えば、メチルドーパ、塩酸ヒドララジン、またはラベタロール)、または子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、もしくは妊娠関連高血圧障害に付随した症状を処置するために用いられる任意の他の薬物療法と組み合わせられうる。
【0174】
本発明の方法において有用である抗体の非限定的例は以下のとおりである:抗インターロイキン8(Leong et al. Cytokine 16:106-119, 2001およびMian et al., Clin. Cancer Res. 9:3167-3175, 2003参照);抗インヒビンA(Verotecカタログ番号MCA951S、Rishi et al. Am. J. Surg. Pathol. 21:582-589, 1997参照);および抗VEFG-C(例えば、Alitalo et al., 米国特許第6,361,946号)。
【0175】
抗体の調製
本発明のポリペプチドのいずれかへ特異的に結合するモノクローナル抗体は、当技術分野において公知の方法により産生されうる。これらの方法は、Kohler and Milstein (Nature, 256:495-497, 1975)およびCampbell (「Monoclonal Antibody Technology, The Production and Characterization of Rodent and Human Hybridomas」, Burdon et al., Eds., Laboratory Techniques in Biochemistry and Molecular Biology, Volume 13, Elsevier Science Publishers, Amsterdam, 1985)により、加えてHuse et al. (Science, 246, 1275-1281, 1989)により記載された組換えDNA方法により、記載された免疫学的方法を含む。
【0176】
モノクローナル抗体は、培養されたハイブリドーマ細胞の上清から、またはマウスへのハイブリドーマ細胞の腹腔内接種により誘導された腹水から調製されうる。Kohler and Milstein(Eur. J. Immunol., 6, 511-519, 1976)により最初に記載されたハイブリドーマ技術は、多くの特定の抗原に対する高レベルのモノクローナル抗体を分泌するハイブリッド細胞系を作製するために広く適用されている。
【0177】
宿主動物またはそれ由来の培養された抗体産生細胞の免疫の経路およびスケジュールは、一般的に、抗体刺激および産生についての確立された、通常の技術に沿っている。典型的には、マウスは試験モデルとして用いられるが、ヒト被験体を含む任意の哺乳動物被験体またはそれ由来抗体産生細胞が、ヒトを含む哺乳動物のハイブリッド細胞系の作製の基盤としての役割を果たすように本発明の過程に従って操作されうる。
【0178】
免疫後、免疫リンパ球は、骨髄腫細胞と融合されて、無期限に培養および継代培養されうるハイブリッド細胞系を生じ、大量のモノクローナル抗体を産生する。本発明の目的として、融合のために選択される免疫リンパ球は、免疫化動物由来のリンパ節組織または脾臓のいずれかから採取されたリンパ球およびそれらの正常な分化した子孫である。脾臓細胞の使用は、それらがマウス系に関して抗体産生細胞のより濃縮され、かつ便利な供給源を提供するため、好ましい。骨髄腫細胞は、融合したハイブリッドの連続的増殖のための基盤を与える。骨髄腫細胞は形質細胞由来の腫瘍細胞である。マウス骨髄腫細胞系は、例えば、American Type Culture Collection (ATCC; Manassas, VA)から入手されうる。ヒト骨髄腫およびマウス-ヒトヘテロ骨髄腫細胞系もまた記載されている(Kozbor et al., J. Immunol., 133:3001-3005, 1984; Brodeur et al., Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications, Marcel Dekker, Inc., New York, pp. 51-63, 1987)。
【0179】
ハイブリッド細胞系は、インビトロで細胞培地において維持されうる。いったんハイブリッド細胞系が確立されたならば、それはヒポキサンチン-アミノプテリン-チミジン(HAT)培地のような様々な栄養的に十分な培地において維持されうる。さらに、ハイブリッド細胞系は、液体窒素下での凍結および保存を含む、通常の方法のいくつにおいても保存および貯蔵されうる。凍結された細胞系は生き返らされ、無期限に培養されて、モノクローナル抗体の合成および分泌が再開されうる。分泌された抗体は、沈降、イオン交換クロマトグライフィー、アフィニティークロマトグライフィーなどのような通常の方法により組織培養上清から回収される。
【0180】
抗体は、マウス、ラット、ウサギ、ヤギ、およびヒトを含む任意の哺乳動物において調製されうる。抗体は、以下の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそれらのサブクラスの1つのメンバーでありえ、好ましくは、IgG抗体である。
【0181】
モノクローナル抗体を産生するための好ましい動物はマウスであるが、本発明はそのように限定されない;実際、ヒト抗体が用いられる場合があり、好ましいと証明される可能性がある。そのような抗体はヒトハイブリドーマを用いることにより得られる(Cole et al., 「Monoclonal Antibodies and Cancer Therapy」, Alan R. Liss Inc., p. 77-96, 1985)。本発明において、適切な抗原特異性のマウス抗体分子由来の遺伝子をヒト抗体分子由来の遺伝子と共にスプライスすることによる、キメラ抗体の作製のために開発された技術が用いられうる(Morrison et al., Proc. Natl. Acad. Sci. 81:6851-6855, 1984; Neuberger et al., Nature 312, 604-608, 1984; Takeda et al., Nature 314, 452-454, 1985);そのような抗体は本発明の範囲内であり、下に記載されている。
【0182】
細胞融合技術のもう一つの別の方法として、エプスタイン・バーウイルス(EBV)不死化B細胞が本発明のモノクローナル抗体を作製するために用いられる(Crawford D. et al., J. of Gen. Virol., 64:697-700, 1983; Kozbor and Roder, J. Immunol., 4:1275-1280, 1981; Kozbor et al., Methods in Enzymology, 121:120-140, 1986)。一般的に、手順は、適切な供給源、一般的には感染した細胞系からエプスタイン・バーウイルスを単離する段階、および標的抗体分泌細胞を、ウイルスを含む上清に曝す段階からなる。細胞は洗浄され、適切な細胞培地において培養される。その後、細胞培養物に存在するウイルス性に形質転換された細胞は、エプスタイン・バーウイルスの核抗原の存在により同定することができ、形質転換された抗体分泌細胞は、当技術分野において公知の標準的方法を用いて同定しうる。組換えDNAのようなモノクローナル抗体を作製するための他の方法もまた本発明の範囲内に含まれる。
【0183】
免疫原の調製
本発明のポリペプチドのいずれかは、免疫原として単独で用いられうる、または担体タンパク質に、もしくはセファロースビーズのような他の物体に付着しうる。本発明のタンパク質のいずれかは、ヒト臍静脈内皮細胞(栄養芽層またはHUVEC;Burrows et al., Clin. Cancer Res. 1:1623-1634, 1995; Fonsatti et al., Clin. Cancer Res. 6:2037-2043, 2000)のような内因性タンパク質を発現させることが知られている細胞から精製されうる。さらに、本発明のポリペプチドのいずれかをコードする核酸分子またはそれらの部分が、標準的組換えDNA技術を用いる宿主細胞における発現のために公知のベクターへ挿入されうる。タンパク質発現のための適切な宿主細胞は、バキュロウイルス細胞(例えば、Sf9細胞)、細菌細胞(例えば、大腸菌)、および哺乳動物細胞(例えば、NIH3T3細胞)を含む。
【0184】
加えて、本発明のポリペプチドのいずれか由来のペプチドが合成され、免疫原として用いられうる。ペプチドに対する抗体を作製するための方法は当技術分野において周知であり、一般的に、血清アルブミンのような適切な担体分子にペプチドを結合することを必要とする。ペプチドは任意の長さであることができ、好ましくは10アミノ酸またはそれ以上、より好ましくは25アミノ酸またはそれ以上、および最も好ましくは40、50、60、70、80、または100アミノ酸、またはそれ以上である。好ましくは、アミノ酸配列は、本発明のポリペプチドをコードする核酸配列のいずれかの配列と少なくとも60%、より好ましくは85%、および最も好ましくは90%、95%、96%、97%、98%、99%、または100%同一である。ペプチドは商業的に入手されうる、または、例えば、Merrifield固相方法(Science, 232:341-347, 1985)のような当技術分野において周知の技術を用いて作製されうる。手順は、Biosearth 9500自動化ペプチド装置のような市販されている合成機を用いることができ、ブロックされたアミノ酸の切断はフッ化水素で達成され、ペプチドは、15〜20μm Vydac C4 PrepPAKカラム上でのWaters Delta Prep 3000装置を用いる分取HPLCにより精製される。
【0185】
抗体の機能的等価物
本発明はまた、本明細書に記載された抗体の機能的等価物を含む。機能的等価物は、本発明の抗体の可変領域または超可変領域のアミノ酸配列と実質的に同一のアミノ酸配列を有するポリペプチドを含む。機能的等価物は、抗体に匹敵する結合特性を有し、例えば、キメラ化、ヒト化、および一本鎖抗体、加えてそれらの断片を含む。そのような機能的等価物を作製する方法は、例えば、PCT公開第WO 93/21319号;欧州特許出願第239,400号;PCT公開第WO 89/09622号;欧州特許出願第338,745号;欧州特許出願第332424号;および米国特許第4,816,567号に開示されている;それぞれは参照により本明細書に組み入れられている。
【0186】
キメラ化抗体は、好ましくは、ヒト抗体定常領域から実質的にまたは独占的に由来した定常領域、およびヒト以外の哺乳動物からの可変領域の配列から実質的にまたは独占的に由来した可変領域を有する。そのようなヒト化抗体は、非ヒト免疫グロブリン由来の最小配列を含む、キメラ免疫グロブリン、免疫グロブリン鎖、またはそれらの断片(抗体のFv、Fab、Fab'、F(ab')2、または他の抗原結合部分配列のような)である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は当技術分野において周知である(概説として、Vaswani and Hamilton, Ann Allergy Asthma Immunol., 81:105-119, 1998およびCarter, Nature Reviews Cancer, 1:118-129, 2001参照)。一般的に、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源からそれへ導入された1つまたは複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、しばしば、インポート残基と呼ばれ、典型的には、インポート可変ドメインから取られる。ヒト化は、本質的には、齧歯類CDRまたは他のCDR配列をヒト抗体の対応する配列の代わりに用いることにより、当技術分野において公知の方法に従って行われうる(Jones et al., Nature, 321:522-525, 1986; Riechmann et al., Nature, 332:323-329, 1988;およびVerhoeyen et al., Science, 239:1534-1536, 1988)。従って、そのようなヒト化抗体は、無傷ヒト可変ドメインより実質的に少ない部分が、非ヒト種由来の対応する配列により置換されている、キメラ抗体である(例えば、米国特許第4,816,567号参照)。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、いくつかのCDR残基、および場合により、いくつかのFR残基が、齧歯類抗体における類似の部位からの残基により置換されている、ヒト抗体である(Presta, Curr. Op. Struct. Biol., 2:593-596, 1992)。
【0187】
ヒト化抗体の調製のためのさらなる方法は、参照により本明細書にすべて組み入れられている、米国特許第5,821,337号、第6,054,297号、および第6,639,055号、ならびにCarter, (前記)に見出されうる。ヒト化抗体は、IgM、IgG、IgD、IgA、およびIgEを含む免疫グロブリンの任意のクラス、ならびにIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4を含む任意のアイソタイプから選択される。本発明においてのように、細胞障害活性が必要ではない場合、定常ドメインは、好ましくは、IgG2クラスである。ヒト化抗体は1つより多いクラスまたはアイソタイプからの配列を含むことができ、所望のエフェクター機能を最適化するように特定の定常ドメインを選択することは、当技術分野における普通の技術範囲内である。
【0188】
ヒト抗体はまた、ファージディスプレイライブラリー(Marks et al., J. Mol. Biol., 222:581-597, 1991およびWinter et al. Annu. Rev. Immunol., 12:433-455, 1994)を含む当技術分野において公知の様々な技術を用いて作製されうる。Cole et al.およびBoerner et al.の技術もまた、ヒトモノクローナル抗体の調製に有用である(Cole et al., 前記;Boerner et al., J. Immunol., 147:86-95, 1991)。
【0189】
ヒト以外の適切な哺乳動物は、モノクローナル抗体が作製されうる任意の哺乳動物を含む。ヒト以外の哺乳動物の例は、例えば、ウサギ、ラット、マウス、ウマ、ヤギ、または霊長類を含む;マウスが好ましい。
【0190】
抗体の機能的等価物はまた、一本鎖抗体(scFv)としても知られている、一本鎖抗体断片を含む。一本鎖抗体断片は、典型的には抗原または受容体を結合する組換えポリペプチドである;これらの断片は、1つもしくは複数の相互連結させるリンカー有りでまたは無しで、抗体可変軽鎖配列(VL)の少なくとも1つの断片に繋がれた、抗体可変重鎖アミノ酸配列(VH)の少なくとも1つの断片を含む。そのようなリンカーは、一本鎖抗体断片が由来している抗体全体の標的分子結合特異性を維持するように、いったんそれらが連結されたならば、VLおよびVHドメインの本来の3次元折り畳みが生じることを保証するように選択される、短く、柔軟なペプチドでありうる。一般的に、VLまたはVH配列のカルボキシル末端は、相補性VLおよびVH配列のアミノ酸末端へそのようなペプチドリンカーにより共有結合される。一本鎖抗体断片は、分子クローニング、抗体ファージディスプレイライブラリー、または類似した技術により作製されうる。これらのタンパク質は、真核細胞、または細菌を含む原核細胞のいずれかにおいて産生されうる。
【0191】
一本鎖抗体断片は、本明細書に記載された抗体全体の可変領域またはCDRの少なくとも1つを有するアミノ酸配列を含むが、それらの抗体の定常ドメインの一部または全部を欠損している。これらの定常ドメインは抗原結合に必要ではないが、抗体全体の構造の大部分を構成する。一本鎖抗体断片は、それゆえに、定常ドメインの一部または全部を含む抗体の使用に関連した問題の一部を克服しうる。例えば、一本鎖抗体断片は、生体分子と重鎖定常領域の間の望ましくない相互作用、または他の望ましくない生物活性が取り除かれる傾向にある。加えて、一本鎖抗体断片は、抗体全体よりかなり小さく、それゆえに、抗体全体より大きい毛細血管透過性を有し、一本鎖抗体断片が、抗原結合部位をより効率的にターゲットするように局在して結合するのを可能にする。また、抗体断片は、原核細胞において比較的大規模で製造することができ、それに従って、それらの製造を促進する。さらに、一本鎖抗体断片の相対的に小さいサイズは、レシピエントにおいて免疫応答を誘発する可能性を抗体全体より少なくさせる。
【0192】
機能的等価物はさらに、抗体全体のと同じまたは匹敵する結合特性を有する抗体の断片を含む。そのような断片は、1つもしくは両方のFab断片、またはF(ab')2断片を含みうる。好ましくは、抗体断片は抗体全体のすべての6つのCDRを含むが、そのような領域の全部より少ない、例えば、3つ、4つ、または5つのCDRを含む断片もまた機能しうる。
【0193】
さらに、機能的等価物は、以下の免疫グロブリンクラス:IgG、IgM、IgA、IgD、またはIgE、およびそれらのサブクラスのいずれか1つのメンバーを結合する場合もあるし、結合しない場合もある。
【0194】
抗体の機能的等価物の調製
抗体の等価物は当技術分野において公知の方法により調製される。例えば、抗体の断片は抗体全体から酵素的に調製されうる。好ましくは、抗体の等価物はそのような等価物をコードするDNAから調製される。抗体の断片をコードするDNAは、完全長抗体をコードするDNAの所望の部分を除く全部を除去することにより調製されうる。
【0195】
キメラ化抗体をコードするDNAは、ヒト定常領域を実質的にまたは独占的にコードするDNA、およびヒト以外の哺乳動物の可変領域の配列に実質的にまたは独占的に由来する可変領域をコードするDNAを再結合することにより調製されうる。ヒト化抗体をコードするDNAは、対応するヒト抗体領域に実質的にまたは独占的に由来する定常領域およびCDR以外の可変領域をコードするDNA、ならびにヒト以外の哺乳動物に実質的にまたは独占的に由来するCDRをコードするDNAを再結合することにより調製されうる。
【0196】
抗体の断片をコードするDNA分子の適切な供給源は、完全長抗体を発現させるハイブリドーマのような細胞を含む。断片は、それらだけで抗体等価物として用いられうる、または上記のように、等価物へ再結合されうる。
【0197】
このセクションに記載されたDNA欠失および再結合は、上で列挙された公開特許出願に記載されたもののような、公知の方法により行われうる。
【0198】
抗体スクリーニングおよび選択
モノクローナル抗体は、標準的な技術分野公知の方法を用いて単離および精製される。例えば、抗体は、ELISAまたはウェスタンブロット分析のような標準的な技術分野公知の方法を用いてスクリーニングされうる。そのような技術の非限定的例は、参照により本明細書に組み入れられている、米国特許第6,365,157号の実施例IIおよびIIIに記載されている。
【0199】
抗体の治療的使用
子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の処置または予防のためにインビボで用いられる場合、本発明の抗体は治療的有効量で被験体に投与される。好ましくは、抗体は、持続注入により、非経口でまたは静脈内に投与される。用量および投与計画は、疾患の重症度および被験体の全体的な健康状態に依存する。投与される抗体の量は、典型的には、約0.001〜約10mg/被験体体重のkg、好ましくは0.01〜約5mg/被験体体重のkgの範囲である。
【0200】
非経口投与について、抗体は、薬学的に許容される非経口媒体と付随した単位用量注射剤型(溶液、懸濁液、乳液)に製剤化される。そのような媒体は本質的に非毒性かつ非治療性である。そのような媒体の例は、水、生理食塩水、リンガー液、デキストロース溶液、および5%ヒト血清アルブミンである。固定油およびオレイン酸エチルのような非水性媒体もまた用いられうる。リポソームは担体として用いられうる。媒体は、等張性および化学的安定性を増強する物質、例えば、緩衝液および保存剤、のような添加物の微量を含みうる。抗体は、典型的には、約1mg/ml〜10mg/mlの濃度でそのような媒体中に製剤化される。
【0201】
併用療法
任意で、本発明の治療用物質は、任意の他の標準的な妊娠関連高血圧障害治療用物質と併用して投与されうる;そのような方法は当業者に公知である。
【0202】
投与の用量および様式
好ましくは、本発明の治療用化合物は、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害の処置もしくは予防のために妊娠中に、または分娩後の子癇前症もしくは子癇を処置するために妊娠後に、投与される。投与についての技術および用量は、化合物の種類(例えば、化学化合物、抗体、アンチセンス、または核酸ベクター)に依存して変わり、当業者に周知である、または容易に決定される。
【0203】
本発明の治療用化合物は、単位剤形で、薬学的に許容される希釈剤、担体、または賦形剤と共に投与されうる。投与は、非経口、静脈内、皮下、経口、または羊水への直接的注入による局所的でありうる。持続注入による静脈内送達は、本発明の治療用化合物を投与するための好ましい方法である。
【0204】
組成物は、経口投与について丸剤、錠剤、カプセル、液体、または徐放性錠剤;または静脈内、皮下、もしくは非経口投与について液体;または局所投与についてポリマー、もしくは他の徐放性媒体の形をとりうる。
【0205】
製剤を作製するための当技術分野において周知の方法は、例えば、「Remington: The Science and Practice of Pharmacy」(第20版, ed. A.R. Gennaro AR., 2000, Lippincott Williams & Wilkins, Philadelphia, PA)に見出される。非経口投与についての製剤は、例えば、賦形剤、滅菌水、生理食塩水、ポリエチレングリコールのようなポリアルキレングリコール、植物起源の油、または水素化ナフタレンを含みうる。生体適合性、生分解性ラクチドポリマー、ラクチド/グリコリドコポリマー、またはポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンコポリマーは、化合物の放出を制御するために用いられうる。ナノ粒子製剤(例えば、生分解性ナノ粒子、固体脂質ナノ粒子、リポソーム)は、化合物の体内分布を制御するために用いられうる。他の可能性のある有用な非経口送達系は、エチレン-ビニルアセテートコポリマー粒子、浸透圧ポンプ、埋め込み式注入システム、およびリポソームを含む。製剤における化合物の濃度は、投与されるべき薬物の用量および投与経路を含むいくつかの因子に依存して変わる。
【0206】
化合物は、製薬産業において一般的に用いられる非毒性酸付加塩または金属錯体のような薬学的に許容される塩として投与されてもよい。酸付加塩の例は、酢酸、乳酸、パモン酸、マレイン酸、クエン酸、リンゴ酸、アスコルビン酸、コハク酸、安息香酸、パルミチン酸、スベリン酸、サリチル酸、酒石酸、メタンスルホン酸、トルエンスルホン酸、またはトリフロオロ酢酸などのような有機酸;タンニン酸、カルボキシメチルセルロースなどのようなポリマーの酸;および塩化水素酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸などのような無機酸を含む。金属錯体は、亜鉛、鉄などを含む。
【0207】
経口使用についての製剤は、非毒性の薬学的に許容される賦形剤との混合物において活性成分を含む錠剤を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性希釈剤または増量剤(例えば、スクロースおよびソルビトール)、潤滑剤、流動促進剤、および抗接着剤でありうる(例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸、シリカ、硬化植物油、またはタルク)。
【0208】
経口使用についての製剤はまた、チャアブル錠として、または活性成分が不活性固体希釈剤と混合されている硬ゼラチンカプセルとして、または活性成分が水もしくは油媒体と混合されている軟ゼラチンカプセルとして、供給されうる。
【0209】
化合物を投与する用量およびタイミングは、被験体の全体的な健康状態、および子癇前症のような妊娠関連高血圧障害の症状の重症度を含む様々な臨床的因子に依存する。一般的に、いったん、子癇前症のような妊娠関連高血圧障害、または子癇前症を発症する傾向が検出されたならば、精製タンパク質の持続注入が、状態のさらなる進行を処置または予防するために用いられる。処置は、1日から100日まで、より好ましくは1日〜60日、および最も好ましくは1日〜20日の範囲である期間、または妊娠の終了まで、継続されうる。用量は、各化合物および状態の重症度に依存して変わり、定常状態血清濃度を達成するように漸増される。
【0210】
被験体モニタリング
本明細書に記載された診断方法はまた、子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害を治療中モニターするために、または治療用化合物の用量を決定するために用いられうる。一つの例において、治療用化合物が投与され、本発明のポリペプチドの発現のレベルが治療の過程中に測定される。
【0211】
本発明の任意の1つもしくは複数の核酸またはポリペプチドの発現を調節する治療用物質は、本発明において特に有用であると考えられる。
【0212】
一つの例において、以下のポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼのいずれかのレベルを治療の過程中に10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上、減少させる治療的作用物質または方法は、効果的な治療的作用物質、または治療的作用物質の有効量であるとみなされる。もう一つの例において、以下のポリペプチドまたはポリペプチドをコードする核酸:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11のいずれかのレベルを治療の過程中に10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上、増加させる治療的作用物質または方法は、効果的な治療的作用物質、または治療的作用物質の有効量であるとみなされる。
【0213】
子癇前症もしくは子癇のような妊娠関連高血圧障害、またはそのような状態を発症する傾向を有する被験体の疾患状態または処置は、本発明の方法および組成物を用いてモニターされうる。一つの態様において、尿、血漿、羊水、またはCSFのような体液に存在する本発明のポリペプチドの発現がモニターされる。そのようなモニタリングは、例えば、被験体において特定の薬物の効力を評価するにおいて、または疾患進行を評価するにおいて、有用でありうる。
【0214】
実施例
実施例1. 子癇前症の女性および正常血圧の女性由来の胎盤組織の遺伝子発現プロファイリング
子癇前症の発症機序に関与する新規な分泌性因子を同定するために、本発明者らは、子癇前症を有する19人の女性、および15人の正常血圧の妊婦由来の胎盤組織の遺伝子発現プロファイリングをAffymetrix U95Aマイクロアレイチップを用いて行った(表1参照)。
【0215】
(表1)調査対象患者の臨床的特徴

示されたデータは平均値である。p<0.05、**p<0.005
【0216】
データは、実験条件に渡って異なって発現される遺伝子を同定するために、コンピュータプログラムBADGE(Bayesian Analysis of Differential Gene Expression version 1.0)(http://genomethods.org/badge)(Ramoni and Sebastiani, Berthold and Hand eds. Intelligent Data Analysis: An Introduction, Springer, New York, NY (1999))および階層的クラスタリング分析(Eisen et al., Proc. Natl. Acad. Sci., 95:14863-8 (1998))を用いて分析された(図1)。ソフトウェアBADGE(Bayesian Analysis of Gene Expression) v1.0は、異なる実験条件に渡って異なって発現される遺伝子を同定するようにベイズ的アプローチを実行する。1.0より大きい発現比率についての累積分布関数(CDF)。遺伝子は、発現データを仮定した倍増加発現の条件付き確率の順にランク付けされる;零確率値は0.5である。
【0217】
正常対子癇前症の胎盤mRNA発現に示された予測遺伝子はBADGEプログラムを用いて発見された。予測遺伝子セットのカラーマップは図2に示されている。行は子癇前症についての予測遺伝子を表し、列は平均遺伝子発現に対する所定の患者についての発現レベルを表す。1.0%の予想偽陽性率は、127個の遺伝子の予測遺伝子セットを生じ、それぞれ、65個が上方制御され、62個が下方制御された(表2)。(本発明のポリペプチドについてのアミノ酸配列および核酸配列に関する図6A〜図44参照)。
【0218】
(表2)予測遺伝子の概要





遺伝子は、1.0%偽陽性エラー率を以て、合計127個の遺伝子として選択され、これらのうち65個が上方制御された。Locuslink分類を有しない遺伝子はGenbankアクセッション番号で標識されている。
【0219】
Affymetrix患者データの階層的クラスタリングは、Cluster and Treeview(Michael Eisen, Stanford Universityによる)を用いて行われた(図3)。Pと標識された試料は子癇前症の患者であり、Nと標識された試料は正常な妊娠した患者である。データセットを、存在および発現基準を用いて12625個の遺伝子から3564個の遺伝子へとフィルターにかけ、結果として生じたセットを中央値センタリングし、遺伝子およびアレイについて標準化した。本発明者らは、遺伝子において可能なクラスを解析するために階層的クラスタリングを用いた。上記クラスターは、文献で確認された他の遺伝子と共にsFlt1を含む。
【0220】
予測遺伝子セットから、本発明者らは、以下の分泌ポリペプチドについての遺伝子の発現が子癇前症を有する女性から採取された血液試料において上方制御されていることを見出した:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(#AL039458)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、およびガレクチン-3。本発明者らはまた、以下の分泌ポリペプチドについての遺伝子の発現レベルが子癇前症を有する女性から採取された血液試料において減少していることを発見した:αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、およびアズロシジン。加えて、本発明者らはまた、子癇前症の胎盤において増加している以下の細胞内ポリペプチドまたは酵素を見出した:スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼ。以下の細胞内遺伝子産物/酵素は子癇前症の胎盤において減少している:ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11。
【0221】
実施例2. 子癇前症におけるFlt-1およびsFlt-1のmRNA発現
上記クラスターが文献で確認された他の遺伝子と共にsFlt1を同定したため、本発明者らは、sFlt-1を用いて子癇前症の予測マーカーを同定するアレイの能力を確認することを選択した。これらの実験について、子癇前症を有する3人の患者(P1、P2、P3)および3人の正常血圧の満期妊娠(N1、N2、N3)からの胎盤sFlt-1のmRNA発現をノーザンブロット分析により測定した(図4)。高い方のバンド(7.5kb)は完全長Flt-1 mRNAであり、低い方のより豊富なバンド(3.4kb)は選択的にスプライスされたsFlt-1 mRNAである。アクチンは対照として含まれ、28Sは矢印で示されている。これらの結果は、子癇前症の患者におけるsFlt-1についての遺伝子の発現の増加を示し、子癇前症もしくは子癇、または子癇前症もしくは子癇を発症する傾向についてのマーカーとしてのアレイによる同定された予測遺伝子セットの使用を確認している。
【0222】
実施例3. 正常な患者および子癇前症の患者におけるFlt-1発現の免疫組織化学的分析
正常な患者および子癇前症の患者由来の胎盤試料におけるFlt-1発現を可視化するために、ヒトFlt-1に対するモノクローナル抗体を免疫組織化学分析に用いた。子癇前症の胎盤のシンシチウム栄養芽層によるFlt-1の増加した発現が検出され(図5)、子癇前症もしくは子癇、または子癇前症もしくは子癇を発症する傾向についてのマーカーとして用いられうる遺伝子を同定するアレイの能力をさらに確認した。
【0223】
他の態様
本発明の特定の態様の記載は例証を目的として提示されている。それは、網羅的であること、または本発明の範囲を本明細書に記載された特定の形に限定することを意図するものではない。本発明はいくつかの態様に関して記載されているが、様々な改変が、特許請求の範囲に示されているような本発明の精神および範囲から逸脱することなくなされうることは、当業者により当然理解されるであろう。本明細書に言及されたすべての特許、特許出願、および刊行物は参照により本明細書に組み入れられている。他の態様は特許請求の範囲にある。
【図面の簡単な説明】
【0224】
【図1】1.0より大きい発現比率についての累積分布関数(CDF)を示すグラフである。ソフトウェアBADGE(Bayesian Analysis of Gene Expression) v1.0は、異なる実験条件に渡って異なって発現される遺伝子を同定するようにベイズ的アプローチを実行する。遺伝子は、発現データを仮定した倍増加発現の条件付き確率の順にランク付けされている;零確率値は0.5である。理想CDFは零確率値近くにたいていの遺伝子を有し、高確率または低確率を有する遺伝子は少ししかない。0.5%の予想偽陽性率として、本発明者らは78個の遺伝子を選択し、42個が上方制御され、36個が下方制御されていた。
【図2】BADGEプログラムを用いてmRNA発現に基づいた正常対子癇前症の胎盤における予測遺伝子セットを示すカラーマップである。行は子癇前症についての予測遺伝子を表し、列は平均遺伝子発現に対する所定の患者についての発現レベルを表す。1.0%の予想偽陽性率は、127個の遺伝子の予測遺伝子セットを生じ、それぞれ、65個が上方制御され、62個が下方制御されていた。有意に上方制御された遺伝子は、可溶性fms様チロシンキナーゼ1およびホリスタチン関連タンパク質を含む。3つの出産予定日前の胎盤からのmRNA発現プロファイルもまたさらなる対照として示されている。
【図3】Cluster and Treeview(Michael Eisen, Stanford Universityによる)を用いてのAffymetrix患者データの階層的クラスタリングを示す。Pと標識された試料は子癇前症の患者であり、Nと標識された試料は正常な妊娠した患者である。データセットを、存在および発現基準を用いて12625個の遺伝子から3564個の遺伝子へとフィルターにかけ、結果として生じたセットを中央値センタリングし、遺伝子およびアレイについて標準化した。本発明者らは、遺伝子において可能なクラスを解析するために階層的クラスタリングを用いた。クラスターは、文献で確認された他の遺伝子と共にsFlt1を含む。
【図4】子癇前症におけるFlt-1およびsFlt-1のmRNA発現を示すオートラジオグラムである。子癇前症を有する3人の患者(P1、P2、P3)および3人の正常血圧の満期妊娠(N1、N2、N3)からの胎盤sFlt-1のmRNA発現をノーザンブロット分析により測定した。高い方のバンド(7.5kb)は完全長Flt-1 mRNAであり、低い方のより豊富なバンド(3.4kb)は選択的にスプライスされたsFlt-1 mRNAである。アクチンは対照として含まれ、28Sは矢印で示されている。
【図5】正常な胎盤および子癇前症の胎盤におけるFlt-1発現の免疫組織化学を示す1組の画像である。ヒトFlt-1に対するモノクローナル抗体がこれらの実験に用いられた。ここに示されたデータは、子癇前症の胎盤のシンシチウム栄養芽層によるFlt-1の増加した発現を実証している。
【図6A】ホリスタチン関連タンパク質(FLRG)のアミノ酸配列(SEQ ID NO:1)を示す。
【図6B】ホリスタチン関連タンパク質(FLRG)のDNA配列(SEQ ID NO:2)を示す。
【図7A】インターロイキン8のアミノ酸配列(SEQ ID NO:3)を示す。
【図7B】インターロイキン8のDNA配列(SEQ ID NO:4)を示す。
【図8A】インヒビンAのアミノ酸配列(SEQ ID NO:5)を示す。
【図8B】インヒビンAのDNA配列(SEQ ID NO:6)を示す。
【図9A】VEGF-Cのアミノ酸配列(SEQ ID NO:7)を示す。
【図9B】VEGF-CのDNA配列(SEQ ID NO:8)を示す。
【図10A】アンジオゲニンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:9)を示す。
【図10B】アンジオゲニンのDNA配列(SEQ ID NO:10)を示す。
【図11A】βファーティリンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:11)を示す。
【図11B】βファーティリンのDNA配列(SEQ ID NO:12)を示す。
【図12】仮想タンパク質のDNA配列(SEQ ID NO:13)を示す。
【図13A】白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:14)を示す。
【図13B】白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質のDNA配列(SEQ ID NO:15)を示す。
【図14A】赤血球分化タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:16)を示す。
【図14B】赤血球分化タンパク質のDNA配列(SEQ ID NO:17)を示す。
【図15A】脂肪生成抑制因子のアミノ酸配列(SEQ ID NO:18)を示す。
【図15B】脂肪生成抑制因子のDNA配列(SEQ ID NO:19)を示す。
【図16A】コルチコトロピン放出因子結合タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:20)を示す。
【図16B】コルチコトロピン放出因子結合タンパク質のDNA配列(SEQ ID NO:21)を示す。
【図17A】α-1抗キモトリプシンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:22)を示す。
【図17B】α-1抗キモトリプシンのDNA配列(SEQ ID NO:23)を示す。
【図18A】インスリン様成長因子結合タンパク質-5のアミノ酸配列(SEQ ID NO:24)を示す。
【図18B】インスリン様成長因子結合タンパク質-5のDNA配列(SEQ ID NO:25)を示す。
【図19】CD33Lのアミノ酸配列(SEQ ID NO:26)を示す。
【図20A】サイトカイン受容体様因子1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:27)を示す。
【図20B】サイトカイン受容体様因子1のDNA配列(SEQ ID NO:28)を示す。
【図21】血小板由来内皮成長因子のアミノ酸配列(SEQ ID NO:29)を示す。
【図22A】リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:30)を示す。
【図22B】リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2のDNA配列(SEQ ID NO:31)を示す。
【図23A】スタニオカルシン前駆体のアミノ酸配列(SEQ ID NO:32)を示す。
【図23B】スタニオカルシン前駆体のDNA配列(SEQ ID NO:33)を示す。
【図24A】分泌性フリズルド関連タンパク質のアミノ酸配列(SEQ ID NO:34)を示す。
【図24B】分泌性フリズルド関連タンパク質のDNA配列(SEQ ID NO:35)を示す。
【図25A】ガレクチン-3のアミノ酸配列(SEQ ID NO:36)を示す。
【図25B】ガレクチン-3のDNA配列(SEQ ID NO:37)を示す。
【図26A】αデフェンシンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:38)を示す。
【図26B】αデフェンシンのDNA配列(SEQ ID NO:39)を示す。
【図27A】ADAM-TS3のアミノ酸配列(SEQ ID NO:40)を示す。
【図27B】ADAM-TS3のDNA配列(SEQ ID NO:41)を示す。
【図28】コレシストキニン前駆体のDNA配列(SEQ ID NO:42)を示す。
【図29A】インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体のアミノ酸配列(SEQ ID NO:43)を示す。
【図29B】インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体のDNA配列(SEQ ID NO:44)を示す。
【図30A】アズロシジンのアミノ酸配列(SEQ ID NO:45)を示す。
【図30B】アズロシジンのDNA配列(SEQ ID NO:46)を示す。
【図31A】スペルミンオキシダーゼのアミノ酸配列(SEQ ID NO:47)を示す。
【図31B】スペルミンオキシダーゼのDNA配列(SEQ ID NO:48)を示す。
【図32A】UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28のアミノ酸配列(SEQ ID NO:49)を示す。
【図32B】UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28のDNA配列(SEQ ID NO:50)を示す。
【図33A】神経栄養チロシンキナーゼ受容体2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:51)を示す。
【図33B】神経栄養チロシンキナーゼ受容体2のDNA配列(SEQ ID NO:52)を示す。
【図34A】中性エンドペプチダーゼのアミノ酸配列(SEQ ID NO:53)を示す。
【図34B】中性エンドペプチダーゼのDNA配列(SEQ ID NO:54)を示す。
【図35A】CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2のアミノ酸配列(SEQ ID NO:55)を示す。
【図35B】CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2のDNA配列(SEQ ID NO:56)を示す。
【図36】βグルコシダーゼのDNA配列(SEQ ID NO:57)を示す。
【図37A】ラノステロール合成酵素のアミノ酸配列(SEQ ID NO:58)を示す。
【図37B】ラノステロール合成酵素のDNA配列(SEQ ID NO:59)を示す。
【図38】カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼのDNA配列(SEQ ID NO:60)を示す。
【図39】エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物HのDNA配列(SEQ ID NO:61)を示す。
【図40A】ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:62)を示す。
【図40B】ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1のDNA配列(SEQ ID NO:63)を示す。
【図41A】チロシナーゼ関連タンパク質1のアミノ酸配列(SEQ ID NO:64)を示す。
【図41B】チロシナーゼ関連タンパク質1のDNA配列(SEQ ID NO:65)を示す。
【図42】ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼのDNA配列(SEQ ID NO:66)を示す。
【図43A】ジヒドロピラミジナーゼ様-4のアミノ酸配列(SEQ ID NO:67)を示す。
【図43B】ジヒドロピラミジナーゼ様-4のDNA配列(SEQ ID NO:68)を示す。
【図44】チトクロムP450ファミリー11のアミノ酸配列(SEQ ID NO:69)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法であって、被験体由来の試料中の少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片のレベルを測定する段階を含み、少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片が、ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質(hypothetical protein)、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド(frizzled)関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼからなる群より選択され、かつ正常参照のレベルと比較した該少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片のレベルの増加が、妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である、方法。
【請求項2】
増加が少なくとも20%である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
ポリペプチドが、ホリスタチン関連タンパク質、インヒビン-A、βファーティリン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、および分泌性フリズルド関連タンパク質からなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項4】
妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法であって、被験体由来の試料中の少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片のレベルを測定する段階を含み、ポリペプチドまたはその断片が、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン(azurocidin)、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11からなる群より選択され、かつ正常参照と比較した該ポリペプチドまたはその断片のレベルの減少が、妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である、方法。
【請求項5】
減少が少なくとも20%である、請求項4記載の方法。
【請求項6】
妊娠関連高血圧障害が、子癇前症、子癇、妊娠性高血圧、慢性高血圧、HELLP症候群、および不当軽量(SGA)児の妊娠からなる群より選択される、請求項1または4記載の方法。
【請求項7】
妊娠関連高血圧障害が子癇前症または子癇である、請求項6記載の方法。
【請求項8】
正常参照が被験体から以前に採取された試料である、請求項1または4記載の方法。
【請求項9】
被験体由来の試料中の可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、およびPlGFからなる群より選択される少なくとも1つのポリペプチドまたはその断片のレベルを測定する段階をさらに含む、請求項1または4記載の方法。
【請求項10】
可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、またはPlGFのレベル間の関係を計量を用いて計算する段階であって、参照試料中の該レベル間の関係に対する被験体試料中の該レベル間の関係の変化が、被験体において妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項11】
測定段階が免疫学的アッセイを用いて行われる、請求項1または4記載の方法。
【請求項12】
免疫学的アッセイがELISAである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
少なくとも2つのポリペプチドまたはそれらの断片のレベルを測定する段階を含む、請求項1記載の方法。
【請求項14】
妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法であって、被験体由来の試料中の核酸分子レベルを測定する段階を含み、核酸分子が、ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼをコードする核酸からなる群より選択され、正常参照のレベルと比較した該核酸分子のレベルの増加が、妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である、方法。
【請求項15】
妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法であって、被験体由来の試料中の核酸分子レベルを測定する段階を含み、核酸分子が、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11をコードする核酸からなる群より選択され、正常参照のレベルと比較した該核酸分子のレベルの減少が、妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断指標である、方法。
【請求項16】
正常参照が被験体から以前に採取された試料である、請求項14または15記載の方法。
【請求項17】
妊娠関連高血圧障害が、子癇前症、子癇、妊娠性高血圧、慢性高血圧、HELLP症候群、および不当軽量(SGA)児の妊娠からなる群より選択される、請求項14または15記載の方法。
【請求項18】
妊娠関連高血圧障害が子癇前症または子癇である、請求項17記載の方法。
【請求項19】
被験体由来の試料中の可溶性エンドグリン、sFlt-1、VEGF、またはPlGFからなる群より選択されるポリペプチドをコードする核酸分子のレベルを測定する段階をさらに含む、請求項14または15記載の方法。
【請求項20】
被験体が、非妊娠のヒト、妊娠したヒト、分娩後のヒト、または非ヒトである、請求項1、4、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項21】
非ヒトが、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、イヌ、またはネコからなる群より選択される、請求項20記載の方法。
【請求項22】
症状の発生の少なくとも4週間前に妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因を診断するために用いられる、請求項1、4、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項23】
試料が、ポリペプチドまたは核酸分子が一般に検出可能である体液、組織、または細胞である、請求項1、4、14、または15のいずれか一項記載の方法。
【請求項24】
体液が、血液、尿、羊水、唾液、血清、血漿、および脳脊髄液からなる群より選択される、請求項23記載の方法。
【請求項25】
妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法であって、ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、およびβグルコシダーゼからなる群より選択されるポリペプチドをコードする遺伝子の核酸配列を決定する段階であって、被験体において遺伝子産物の発現レベルまたは生物活性を増加させる変化である被験体の核酸配列における変化により、被験体が妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると診断される段階を含む、方法。
【請求項26】
妊娠関連高血圧障害に罹患している、または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると被験体を診断する方法であって、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11からなる群より選択されるポリペプチドをコードする遺伝子の核酸配列を決定する段階であって、被験体において遺伝子産物の発現レベルまたは生物活性を減少させる変化である被験体の核酸配列における変化により、被験体が妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因を有すると診断される段階を含む、方法。
【請求項27】
妊娠関連高血圧障害が、子癇前症、子癇、妊娠性高血圧、慢性高血圧、HELLP症候群、および不当軽量(SGA)児の妊娠からなる群より選択される、請求項25または26記載の方法。
【請求項28】
妊娠関連高血圧障害が子癇前症または子癇である、請求項27記載の方法。
【請求項29】
以下を含む、被験体における妊娠関連高血圧障害または妊娠関連高血圧障害の素因の診断のためのキット:
(a)以下のポリペプチドのいずれかをコードする核酸配列からなる群より選択される核酸配列またはそれに相補的な配列:ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11;ならびに
(b)被験体における妊娠関連高血圧障害の診断のための核酸配列またはそれに相補的な配列の使用についての使用説明書。
【請求項30】
参照用の試料、標準、またはレベルをさらに含む、請求項29記載のキット。
【請求項31】
参照試料が、妊娠関連高血圧障害に罹患していない被験体、または妊娠していない被験体由来の試料である、請求項30記載のキット。
【請求項32】
以下を含む、被験体における妊娠関連高血圧障害の診断のためのキット:
(a)ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11からなる群より選択されるポリペプチドを検出するために有用な構成要素;ならびに
(b)被験体における妊娠関連高血圧障害の診断のための該構成要素の使用についての使用説明書。
【請求項33】
構成要素が前記ポリペプチドに特異的に結合する結合分子である、請求項32記載のキット。
【請求項34】
結合分子が、前記ポリペプチドに特異的に結合する抗体、またはその抗原結合断片である、請求項33記載のキット。
【請求項35】
参照用の試料、標準、またはレベルをさらに含む、請求項32記載のキット。
【請求項36】
参照試料が、妊娠関連高血圧障害に罹患していない被験体、または妊娠していない被験体由来の試料である、請求項35記載のキット。
【請求項37】
前記ポリペプチドが、免疫学的アッセイ、酵素的アッセイ、および比色アッセイからなる群より選択されるアッセイにより検出される、請求項32記載のキット。
【請求項38】
複数のポリヌクレオチドプローブと安定的に会合している1つまたは複数の基質支持体を含む核酸アレイであって、ポリヌクレオチドプローブが、ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11からなる群より選択されるタンパク質をコードする遺伝子のRNA転写産物、またはそれらの相補体と高ストリンジェントな条件下でハイブリダイズする能力がある、核酸アレイ。
【請求項39】
ホリスタチン関連タンパク質、インターロイキン8、インヒビンA、VEGF-C、アンジオゲニン、βファーティリン、仮想タンパク質、白血球関連Ig様受容体分泌タンパク質、赤血球分化タンパク質、脂肪生成抑制因子、コルチコトロピン放出因子結合タンパク質、α-1抗キモトリプシン、インスリン様成長因子結合タンパク質-5、CD33L、サイトカイン受容体様因子1、血小板由来内皮成長因子、リシルヒドロキシラーゼアイソフォーム2、スタニオカルシン前駆体、分泌性フリズルド関連タンパク質、ガレクチン-3、スペルミンオキシダーゼ、UDPグリコシルトランスフェラーゼ2ファミリーポリペプチドB28、神経栄養チロシンキナーゼ受容体2、中性エンドペプチダーゼ、CDC28プロテインキナーゼ調節サブユニット2、βグルコシダーゼ、αデフェンシン、ADAM-TS3、コレシストキニン前駆体、インターフェロン誘導性T細胞α化学誘引物質前駆体、アズロシジン、ラノステロール合成酵素、カルシウム/カルモジュリン依存性セリンプロテインキナーゼ、エストロゲン受容体の選択的スプライスによる転写産物H、ケモカイン(CX3Cモチーフ)受容体1、チロシナーゼ関連タンパク質1、ヒドロキシ-δ-5-ステロイドデヒドロゲナーゼ、ジヒドロピラミジナーゼ様-4、およびチトクロムP450ファミリー11からなる群より選択される複数のポリペプチド;
該ポリペプチドの変異体;
該ポリペプチドもしくは変異体に特異的な抗体;または
該ポリペプチド、変異体、もしくは抗体の任意の組み合わせと安定的に会合している1つまたは複数の基質支持体を含むポリペプチドアレイ。
【請求項40】
被験体における妊娠関連高血圧障害の診断のためのアレイの使用についての使用説明書をさらに含む、請求項38または39記載のアレイ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図7A】
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【図7B−1】
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【図7B−2】
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【図8A】
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【図8B】
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【図9A】
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【図9B】
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【図10A】
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【図10B−1】
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【図10B−2】
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【図11A】
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【図11B】
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【図12】
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【図13A】
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【図13B】
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【図14A】
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【図14B】
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【図15A】
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【図15B】
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【図16A】
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【図16B】
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【図17A】
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【図17B】
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【図18A】
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【図18B】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図21】
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【図22A】
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【図22B】
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【図23A】
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【図23B−1】
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【図23B−2】
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【図24A】
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【図24B−1】
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【図24B−2】
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【図25A】
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【図25B】
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【図26A】
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【図26B】
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【図27A】
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【図27B−1】
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【図27B−2】
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【図28】
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【図29A】
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【図29B】
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【図30A】
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【図30B−1】
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【図30B−2】
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【図31A】
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【図31B】
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【図32A】
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【図32B−1】
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【図32B−2】
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【図33A】
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【図33B】
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【図34A】
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【図34B−1】
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【図34B−2】
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【図35A】
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【図35B】
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【図36−1】
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【図36−2】
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【図37A】
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【図37B】
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【図38】
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【図39】
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【図40A】
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【図40B】
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【図41A】
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【図41B−1】
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【図41B−2】
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【図42】
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【図43A】
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【図43B】
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【図44】
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【公表番号】特表2008−523816(P2008−523816A)
【公表日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−546973(P2007−546973)
【出願日】平成17年12月15日(2005.12.15)
【国際出願番号】PCT/US2005/045805
【国際公開番号】WO2007/053161
【国際公開日】平成19年5月10日(2007.5.10)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
2.TEFLON
【出願人】(599036059)ベス イスラエル ディーコネス メディカル センター (4)
【Fターム(参考)】