説明

姿勢に基づき健康度を判定する健康度判定装置

健康度判定方法は、第1側臥位(LDP)を含む第1姿勢をモニタリングするステップと、第1側臥位に基づき第1側臥位の履歴を記録するステップと、第1側臥位の履歴に基づき第1姿勢傾向を算出するステップと、第1姿勢傾向に基づき健康度指標の判定と提供を行うステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書は、姿勢測定システムに関する。より詳細には、限定されないが臥位姿勢に基づき、健康度の判定を行う方法と装置に関する。
【背景技術】
【0002】
人の健康状態は、限定されないが心拍数、呼吸パターン、血圧などの生理学的指標の解析を行うことによって判定できる。これらの生理学的指標のうちの1つ以上は、健康な人よりも、不健康な人について様々な傾向を示す。1つ以上の生理学的指標の測定と傾向化を行うことによって、人の健康度状態について有用な情報を提供できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】国際公開2007/061746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明者らは、他の姿勢に比べて、臥位姿勢をとった場合に患者の健康度に影響し得ることを認めた。どの臥位姿勢をとるか、あるいはその臥位姿勢が人体にどのように作用するかについての情報は、疾病または障害の診断または治療に用いることができる。本発明者らは、或る場合において、患者は別の姿勢よりも、臥位姿勢を好んでとることも認めた。患者がこのような行為を示す場合、患者の健康度指標を提供するために、この現象を記録して用いることができる。本発明者らは、このような技術を、生理的傾向の情報(たとえば血圧、心拍出量、肺水レベルなど)をモニタリングする技術と組合せて、疾病または障害についてより多くの情報を提供できることを認めた。本明細書に記載の装置と方法は、このような情報をモニタリングすると共に、このような情報に基づき患者を治療するためのツールを含む。以下に幾つかの実施例を記載する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
実施例1において、健康度判定方法は、第1側臥位(第1LDP。「側臥位」は、横向きに寝ている状態)を含む第1姿勢をモニタリングするステップと;第1側臥位に基づき第1側臥位の履歴(レコード)を記録するステップと;第1側臥位の履歴に基づき第1姿勢傾向を算出するステップと;第1姿勢傾向に基づき健康度指標の判定と提供を行うステップとを含む。
【0006】
実施例2において、実施例1の健康度判定方法は、姿勢以外の生理学的指標を検出するステップと;生理学的指標に基づき健康度指標を算出するステップとを含むように、任意に構成される。
【0007】
実施例3において、実施例1〜2のうちの1つ以上の健康度判定方法は、健康度指標が実際の心不全の指標または潜在的な心不全の指標を含むように、任意に構成される。
実施例4において、実施例1〜3のうちの1つ以上の健康度判定方法は、第1姿勢傾向が1つの24時間周期で記録されるように、任意に構成される。
【0008】
実施例5において、実施例1〜4のうちの1つ以上の健康度判定方法は、第1側臥位とは異なる第2姿勢を記録するステップと;第2姿勢に基づき第2姿勢傾向を算出するステップと;第1姿勢傾向と第2姿勢傾向に基づき健康度指標の判定と提供を行うステップとを任意に含むように構成される。
【0009】
実施例6において、実施例1〜5のうちの1つ以上の健康度判定方法は、第1姿勢傾向を第2姿勢傾向と比較するステップと;第1姿勢傾向と第2姿勢傾向の比較結果に基づき健康度指標の判定と提供を行うステップとを任意に含むように構成される。
【0010】
実施例7において、実施例1〜6のうちの1つ以上の健康度判定方法は、第1姿勢が右側臥位(RLDP。「右側臥位」は、右側を下にして横向きに寝ている状態)を含み、第2姿勢が左側臥位(LLDP。「左側臥位」は、左側を下にして横向きに寝ている状態)を含むように、任意に構成される。
【0011】
実施例8において、実施例1〜7の1つ以上の健康度判定方法は、第2姿勢が背臥位(背を下にして寝ている状態。仰向け)と腹臥位(腹を下にして寝ている状態。うつ伏せ)の少なくとも1つを含むように、任意に構成される。
【0012】
実施例9において、実施例1〜8のうちの1つ以上の健康度判定方法は、健康度指標が低下した場合に、警報を提供するステップを任意に含むように構成される。
実施例10において、実施例1〜9のうちの1つ以上の健康度判定方法は、第1側臥位とは異なる第2姿勢を記録するステップと;第1姿勢と第2姿勢に基づき健康度指標を算出するステップであって、健康度指標は、第1姿勢に基づき第1健康レベル、および第2姿勢に基づき第2健康レベルを含むことと;第1姿勢と第2姿勢よりも増加した健康度に関連付けられる第3姿勢を判定すべく、第1健康レベルを第2健康レベルと比較するステップと;第3姿勢指標を提供するステップとを任意に含むように構成される。
【0013】
実施例11において、実施例1〜10のうちの1つ以上の健康度判定方法は、第3姿勢が背臥位傾斜姿勢を含むように任意に構成される。
実施例12において、健康度判定装置は、第1側臥位(第1LDP)を含む第1姿勢指標を生成するように構成される姿勢センサと;姿勢センサに連結される姿勢メモリ回路であって、姿勢メモリ回路は、第1姿勢指標に基づき第1側臥位の履歴を保存するように構成されることと;姿勢メモリ回路に連結される姿勢傾向回路であって、姿勢傾向回路は、第1側臥位の履歴に基づき姿勢傾向を生成するように構成されることと;姿勢傾向回路に連結される健康度指標回路であって、健康度指標回路は、姿勢傾向に基づき健康度指標の算出と提供を行うように構成されることとを含むように構成される。
【0014】
実施例13において、実施例12の健康度判定装置は、第1側臥が左側臥位(LLDP)となるように任意に構成され、姿勢センサが第2姿勢指標(RLDP)を含む第2姿勢指標を生成するように構成され、姿勢メモリ回路が第2姿勢指標に基づき右側臥位の履歴を保存するように構成され、姿勢傾向回路が第1側臥位の履歴と右側臥位の履歴の比較結果に基づき姿勢傾向を生成するように構成されるべく、任意に構成される。
【0015】
実施例14において、実施例12〜13のうちの1つ以上の健康度判定装置は、姿勢センサが植込可能となるように、任意に構成される。
実施例15において、実施例12〜14のうちの1つ以上の健康度判定装置は、姿勢センサが背臥位と腹臥位のうちの少なくとも1つを含む第2姿勢指標を生産するように構成され、姿勢メモリ回路が第2姿勢指標に基づき背臥位の履歴と腹臥位の履歴を保存するように構成され、姿勢傾向回路が第1側臥位の履歴、背臥位の履歴、および腹臥位の履歴の比較結果に基づき姿勢傾向を生成するように構成されるべく、任意に構成される。
【0016】
実施例16において、実施例12〜15のうちの1つ以上の健康度判定装置は、健康度指標回路が姿勢傾向を特定姿勢傾向と比較するように構成されるべく、任意に構成される。
【0017】
実施例17において、実施例12〜16のうちの1つ以上の健康度判定装置は、健康度指標回路に通信を行うように連結される警報回路を任意に含み、警報回路は、健康度指標が低下した場合に警報をトリガするように構成されるべく、任意に構成される。
【0018】
実施例18において実施例12〜17のうちの1つ以上の健康度判定装置は、警報が電子メールメッセージ、電話呼出、点滅灯、マットレス傾斜調節信号、マットレス温度調節信号、マットレス硬度調節信号、および可聴音のうちの少なくとも1つを含むように、任意に構成される。
【0019】
実施例19において、実施例12〜18のうちの1つ以上の健康度判定装置は、警報回路に連結される電気パルス回路を任意に含み、電気パルス回路警報に基づき電気パルスを供給するように構成されるべく、任意に構成される。
【0020】
実施例20において、実施例12〜19のうちの1つ以上の健康度判定装置は、電気パルス回路が心室期外収縮複合体(PVC)、間欠的な隔膜刺激、および不快な電気ショックのうちの少なくとも1つを生成するように、任意に構成される。
【0021】
実施例21において、実施例12〜20のうちの1つ以上の健康度判定装置は、姿勢以外の生理学的指標を生成するように構成される生理学的センサと;生理学的センサに連結される生理学的指標メモリ回路であって、生理学的指標メモリ回路は、生理学的指標に基づき生理学的指標の履歴を保存するように構成されることと;生理学的指標メモリ回路に連結される生理学的指標傾向回路であって、生理学的指標傾向回路は、生理学的指標の履歴に基づき生理学的指標傾向を生成するように構成されることとを任意に含むように構成される。実施例21は、健康度指標回路が生理的記録に基づき健康度指標を算出するように構成されるべく、任意に構成される。
【0022】
実施例22において、実施例12〜21のうちの1つ以上の健康度判定装置は、生理学的センサが自律平衡センサ、呼気センサ、肺水センサ、心拍出量センサ、プリロード回路、体重変化センサ、圧力センサ、心拍数センサ、心拍変動センサ、および心音センサのうちの少なくとも1つを含み、生理学的指標を形成するために使用されるように、任意に構成される。
【0023】
実施例23において、実施例12〜22のうちの1つ以上の健康度判定装置は、自律平衡センサが、高周波数の自律神経活動に対する、低周波数の自律神経活動の比を生成するように構成される心拍変動パワースペクトル比較を含むべく、任意に構成される。
【0024】
実施例24において、実施例12〜23のうちの1つ以上の健康度判定装置は、生理学的指標が、発作性夜間呼吸困難の指標と起座呼吸の指標のうちの少なくとも1つを含むように、任意に構成される。
【0025】
実施例25において、患者をモニタリングするためのシステムは、患者の姿勢をモニタリングするモニタリング手段と、側臥位(LDP)を記録する記録手段と;側臥位に基づき姿勢傾向を算出する算出手段と;姿勢傾向に基づき健康度指標の判定と提供を行う判定手段とを含む。
【0026】
実施例26において、実施例25のシステムは、モニタリング手段が、側臥位(LDP)を含む第1姿勢指標を生成するように構成される姿勢センサを含むべく、任意に構成される。
【0027】
実施例27において、実施例25〜26のうちの1つ以上のシステムは、記録手段が、姿勢センサに連結される姿勢メモリ回路を含み、姿勢メモリ回路は、第1姿勢指標に基づき側臥位の履歴を保存するように構成されるべく、任意に構成される。
【0028】
実施例28において、実施例25〜27のうちの1つ以上のシステムは、算出手段が、姿勢メモリ回路に連結される姿勢傾向回路を含み、姿勢傾向回路は、側臥位の履歴に基づき姿勢傾向を生成するように構成されるべく、任意に構成される。
【0029】
実施例29において、実施例25〜28のうちの1つ以上のシステムは、判定手段が、姿勢傾向回路に連結される健康度指標回路を含み、健康度指標回路は、姿勢傾向に基づき健康度指標の算出と提供を行うように構成されるべく、任意に構成される。
【0030】
上記は、本出願の開示の概要であり、本主題の排他的または包括的な処置を意図したものではない。本主題については、詳細な説明と添付の特許請求の範囲は、詳細に記載される。他の態様は、以下の詳細な説明を読み理解すること、およびそれらの一部を成す図面を参照すること(いずれも限定的ではない)によって当業者に明らかになるであろう。本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲とその同等物によって定義される。
【0031】
本明細書において、たとえば患者の健康状態の指標もしくは警報の判定、治療の開始もしくは調節、心不全に有益と思われる特定姿勢を患者が使用し易くすること、または心不全に有害と思われる特定姿勢を避けることを目的とした、側臥位をモニタリングするシステムと方法の実施例を記載する。
【0032】
患者は側臥位にあるとき、たとえば床面に対し、自身の側部を、垂直または略垂直にして横になる。理論にとらわれず、心不全の状態が悪化するため、心不全患者は右側臥位を選択する傾向が高くなっていると考えられている。同様に、理論にとらわれず、心不全の状態が悪化するため、心不全患者は、左側臥位を回避する傾向が高くなっていると考えられている。また理論にとらわれず、特に肺水腫(肺に体液が滞留するもの)が生じるなど心不全の後期には、心不全の状態が悪化するため、心不全患者は、上向きに傾く横臥位(すなわち側臥位)を選択する傾向が、高くなっていると考えられている。
【0033】
特定実施例において、本システムと本方法は、臥位姿勢の情報を用いて心不全の状態または別の健康度指標を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本実施例に係る、病気を診断するステップを含む方法の模式図。
【図2】本実施例に係る、病気を診断するステップを含む方法の模式図。
【図3】本実施例に係る、姿勢感知を行うシステム、および姿勢感知が発生する環境の部分を示す模式図。
【図4】本実施例に係る、姿勢感知を行うと共に生理学的情報のモニタリングを行う健康度判定装置400の模式図。
【図5】本実施例に係る、コンプライアンス(すなわち準拠)のモニタリング、および処方へのコンプライアンスの促進を行う方法の模式図。
【図6】本実施例に係る、コンプライアンスのモニタリング、および処方へのコンプライアンスの促進を示すフローチャート。
【図7】本実施例に係る、コンプライアンスのモニタリング、および処方へのコンプライアンスの促進を示すフローチャート。
【図8】本実施例に係る、警報と、警報に関連する様々な行為とを示す模式図。
【図9】本実施例に係る、病気を診断するステップを含む方法の模式図。
【図10】本実施例に係る、疾病の診断などを行うシステムの一例を示す模式図。
【図11】本実施例に係る、診断用に記録されるデータの模式図。
【図12】本実施例に係る、診断用に記録されるデータの模式図。
【図13】本実施例に係る、診断用に記録されるデータの模式図。
【図14】本実施例に係る、臥位姿勢の記録、およびその測定に基づく健康度指標の提供を示すフローチャート。
【図15】本実施例に係る、姿勢の比較、およびその比較結果に基づく治療の提供を示すフローチャート。
【発明を実施するための形態】
【0035】
図1は、幾つかの実施例に係る、病気を診断するステップを含む方法を示す。この方法は、患者が臥位姿勢または他の姿勢を選択するか否かをモニタリングできる。ステップS102において、右側臥位指標Wが記録される。右側臥位指標Wは、患者が右側臥位で過ごした時間を少なくとも示す。ステップS104において、左側臥位指標Xが記録される。左側臥位指標Xは、患者が左側臥位で過ごした時間を少なくとも示す。ステップS106において、側臥傾斜姿勢指標Yが記録される。側臥傾斜姿勢指標Yは、患者が側臥傾斜姿勢で過ごした時間を少なくとも示す。ステップS108において、別の姿勢指標Zが記録される。この別の姿勢指標Zは、患者が左側臥位と右側臥位以外の姿勢、並びに側臥傾斜姿勢以外の姿勢で過ごした時間を少なくとも示す。これらの指標によって、傾斜の程度についての情報を任意に集約できる。たとえば右側臥位指標の測定値Wは、床面に対してとられる角度に基づき、右側臥位で過ごした時間に重付けを行うことができる。意図した右側臥位がとられる場合、重付けを1とする。意図した右側臥位に近い姿勢については、僅かではあるが重付けを低くすることができる(たとえば患者は枕をして横になるため)。
【0036】
これらの指標は単独でまたは病気の指標と組合せて用いられ、ステップS110において病気の指標が提供される。各実施例において、病気の指標yは指標102〜108を収集し、それらの重付けを特定重付方法によって任意に行う。重付方法は、以下の式1で示す例を含んでもよい。
【0037】
y=aW+bX+cY+dZ …式1 。
重付方法が、左側臥位で過ごした時間に対する、右側臥位で過ごした時間をモニタリングする病気の指標を単に提供するものである場合、上記の例において、変数a,bの重付けを1とし、残りの変数の重付けを0とする。この例が指標の組合せに基づき診断を提供する場合、変数a,b,c,dの重付けを1としてもよい。上記例が側臥傾斜姿勢で過ごした時間に基づき病気の指標yを提供すると共に、左側臥位と右側臥位で過ごした時間に基づく指標提供を考慮するものである場合、変数cに対し、変数a,bよりも重付けを大きくしてもよい。幾つかの実施例において、変数cは変数bよりも大きく、変数bは変数aよりも大きい。このような方法の一例は、図2に関連して記載する。特定実施例においては、必要に応じて一次結合の重付方法を用いてもよい。
【0038】
病気の指標は、患者の健康度を診断するのに用いられてもよい。病気の指標は、医師、装置、または患者への介護に関連する別の器具に提供されてもよい。幾つかの実施例において、病気は、患者が特定姿勢でいる時間を測定し、測定した時間を特定時間値と比較することによって検出されてもよい。幾つかの実施例は、様々な姿勢で過ごした時間の長さを判定する。またたとえば特定傾向(患者が健康であるときの行為、または健康な群集のうちのある一人の行為など)と比較して、異常な姿勢が選択される傾向が見られる場合、病気の度合いを示すためにその姿勢の選択を用いてもよい。幾つかの実施例において、医師は健康度を改善する姿勢をとる治療を処方するために、病気の指標を用いてもよい。これは、右側臥位の姿勢をとることによって患者の健康が改善される場合に、その姿勢で過ごす時間を処方することを含んでもよい。幾つかの実施例において、医師または装置は、
患者に治療112を提供するために病気の指標を用いる。たとえば患者は他の姿勢よりも右側臥位をとる確立が高いことを病気の指標が示す場合、植込装置は患者が心不全であると推測でき、患者に心不全の治療を行える。このような治療は自動的に行える。またこのような治療は、病気の指標yとのフィードバック関係において可能である。あるいは、病気の指標yとの開ループの関係において(たとえば病気の指標yに基づくトリガ信号を用いて)可能である。
【0039】
図2は、幾つかの実施例に係る、疾病を診断するステップを含む方法を示す。この例によると、ステップS202において、たとえば患者は右側臥位を選択するか否か、およびかなりの時間を右側臥位で過ごしているか否かを判定するために、姿勢データが記録される。この方法はステップS204において、患者が左側臥位を回避したいか否か、およびかなりの時間を左側臥位で過ごしているか否かをモニタリングするステップを更に含んでもよい。この方法はステップS206において、患者が傾いた側臥位を選択するか否か、およびかなりの時間をそのような姿勢で過ごしているか否かを判定するステップを含んでもよい。有意な時間の長さは、各実施例によって互いに異なる。幾つかの実施例において、特定姿勢で過ごした時間を、1つ以上の他の姿勢で過ごした時間と比較してもよい。他の実施例において、特定姿勢で過ごした時間を、特定値と比較してもよい。特定値は予めプログラムされたもの、または疾病もしくは障害に関する現象についての知識に基づくものを含んでもよい。このような特定値は、個人を治療するために医師が処方したものであってもよい。あるいは任意で、特定統計的有意性を示す値であってもよい。他の特定値、数値、または利点が用いられてもよい。
【0040】
幾つかの実施例は、ステップS206において、姿勢の選択を示さない状態から、傾いた側臥位の選択を示す状態まで、患者の進行具合についての指標を提供する。或る実施例において、指標には、患者が示す選択202,204,206のうちの2つ以上の時間シーケンスの情報が、含まれても用いられてもよい。或る実施例において、特定選択202,204,または206は、心不全または別の状態の確信性の増加を示すシーケンスを提供する。心不全は、姿勢選択情報を用いて診断できる疾病または障害のうちの1つである。他の指標を用いて心不全の診断(呼吸困難、鬱血レベルなど)を行ってもよい。
【0041】
介護者が更なる検査を行えるように、収集した情報に基づき潜在的な疾病または障害を示すために、病気の指標、健康度指標、または確信性指標を用いてもよい。幾つかの実施例は、介護者による更なる検査が必要ない場合、疾病または障害を示す十分な情報を収集する。上記のように幾つかの実施例は、確信をもって自動的に治療を開始するために、十分な情報を収集する。
【0042】
健康度は患者の健康に関する。また健康度は、患者が有し得る疾病または障害についての情報を含んでもよい。各実施例は、健康度について短期間(通院時など)の診断を行う。あるいは長期間(たとえば外来患者の測定では対応されない期間)、データを収集する。幾つかの実施例は、少なくとも1つの24時間周期で記録される1つ以上の姿勢を含む。このように各実施例は、不健康な状態から改善した状態まで(またはその逆)、患者をモニタリングしてもよい。
【0043】
本明細書に記載の実施例は、様々な技術を用いて健康度を判定できる。或る実施例において、モニタリングした1つ以上の生理学的指標(たとえば自律平衡、呼気、肺水、心拍出量、プリロード、体重変化、血管圧、心拍数、心拍変動、および心音)を、特定値(或る姿勢をとっている健康な人を示す値)と比較することによって、健康度を判定してもよい。幾つかの実施例において、第1姿勢で検出した1つ以上の生理学的指標を、第2姿勢で検出した1つ以上の生理学的指標と比較することによって、健康度を診断してもよい。これらの実施例は、実際の結果を、特定期待結果と比較する。
【0044】
図3は、システム300およびシステム300が使用される環境の部分の一例を示す。この例においては、3つのサブシステム、すなわち、植込サブシステム305、外部装着サブシステム307、および外部サブシステム385を示す。植込サブシステム305と外部装着サブシステム307は、別個に、または互いに組合せて使用されてもよい。外部サブシステム385は、たとえば植込サブシステム305と外部装着サブシステム307の一方または両方によって収集される情報を使用するために、植込サブシステム305と外部装着サブシステム307のうちの一方または両方とセットにされる。
【0045】
植込サブシステム305は複数の要素を含んでもよい。或る実施例において、これらの要素の1つ以上が植込まれる。或る実施例は、植込ケース(たとえば生体適合性を有する密封ケース)を使用する。
【0046】
幾つかの実施例は、植込サブシステム305と、外部サブシステム385と、植込サブシステム305と外部サブシステム385の間に通信を提供する遠隔測定リンク380とを用いる。幾つかの実施例は、外部装着サブシステム307と、外部装着サブシステム307と外部サブシステム385の間に通信を提供する遠隔測定リンク382とを含む。幾つかの実施例において、植込サブシステム305と外部装着サブシステム307は、遠隔測定通信311によって互いに繋がっている。
【0047】
各実施例において、植込サブシステム305は、特に植込医療装置310とリードシステム308とを含んでもよい。或る実施例において、植込医療装置310は、ペースメーカ、心臓除細動器/除細動器、心臓再同期療法(CRT)装置、心臓リモデリング制御治療(RCT)装置、神経刺激装置、薬物送達装置もしくは薬物送達コントローラ、または生物学的治療装置のうちの1つ以上を備える心調律管理装置(CRM装置)を含む。
【0048】
図3の例において、植込医療装置310は人体302に植込まれる。各実施例において、電極またはリードシステム308は、たとえば心臓内部、心臓付近、または心臓から離れた部分のうちの1つ以上の場所からの生理学的信号(たとえば心拍)を感知する1つ以上の植込電極または植込センサを含む。リードシステム308は、ペーシングパルス、電気除細動/除細動ショック、神経刺激パルス、または他のパルスを、たとえば心臓内部、心臓付近、または心臓から離れた部分のうちの1つ以上の場所に伝達する1つ以上の植込電極を含んでもよい。幾つかの実施例において、リードシステム308は、製薬または他の物質を送達する装置を更に含む。幾つかの実施例において、リードシステム308は1つ以上のペーシング感知リードを含む。このペーシング感知リードは、心電信号を感知するために、またはペーシングもしくは心臓再同期パルスを伝達するために、心臓301内または心臓301上に置かれるように構成される少なくとも1つの電極を含んでもよい。別の実施例において、リードシステム308は1つ以上の神経刺激感知リードを含む。この神経刺激感知リードは、たとえば1つ以上の神経信号を感知するために、または1つ以上の神経刺激パルスを伝達するために、自律神経系の神経に置かれるように構成される少なくとも1つの電極を含んでもよい。別の実施例において、リードシステム308は、たとえば心臓301のペーシングもしくは内因作用による神経刺激と同期をとる(または、このような神経刺激を用いる)1つ以上のペーシング感知リードと1つ以上の神経刺激感知リードを含む。各実施例において、植込医療装置310は姿勢の測定が可能である。これは重力場または床面に対する人体302の向きを測定することを含んでもよい。
【0049】
外部装着装置306も同様に、たとえば重力場または床面に対する患者の姿勢をモニタリングするように構成されてもよい。幾つかの実施例において、外部装着サブシステム307は、生理学的情報(心拍数など)をモニタリングできる。幾つかの実施例は、バンド309を用いて生理学的情報(たとえば自律平衡、呼気、肺水、心拍出量、プリロード、
体重変更、血管圧、心拍数、心拍変動、および心音)を測定する。或る実施例において、外部装着サブシステム307は電源を内蔵しているが、幾つかの実施例においては、有線の電気的接続から電力を受信する。図3に示す外部装着サブシステム307の場所は適切な場所の一例であり、他の場所も可能である。
【0050】
幾つかの実施例において、外部サブシステム385は、ローカル外部装置390と、ネットワーク392と、遠隔外部装置394とを含む患者管理システムである。各実施形態において、ローカル外部装置390は、一般に植込医療装置310と外部装着装置306のうちの一方または両方の付近にあり、遠隔測定リンク380,382によって互いに双方向に通信を行う。幾つかの実施例において、遠隔外部装置394は遠隔位置にあり、ネットワーク392によってローカル外部装置390と双方向に通信を行う。このため、たとえば家庭用コンピュータ、携帯情報端末、携帯電話機などを用いてネットワーク392上の遠隔外部装置394に接続することによって、ユーザは遠隔地から患者のモニタリングまたは治療を行える。別の実施例において、外部サブシステム385は、遠隔測定リンク380,382によって植込医療装置310と外部装着装置306のうちの一方または両方と双方向に通信を行うように構成されるローカル外部プログラマを含む。
【0051】
システム300内の様々なシステム機能の場所は、互いに異なってもよい。幾つかの実施例において、図3に示すように、植込医療装置310は、すべてのセンサと、姿勢の測定と生理学的指標に基づく健康度指標を提供するのに必要な関連要素とを含む。幾つかの構成において、図に示すように、外部装着サブシステム307は、健康度指標を提供するのに必要なすべてのセンサおよび関連する要素を含んでもよい。他の構成において、サブシステム305,307,385のうちの2つ以上の間で、1つ以上の操作機能が共有される。たとえば幾つかの実施例おいて、生理学的センサは情報を収集する。また健康度指標を処理するために、その情報を外部サブシステム385に直接送信する。これらの構成は包括的または排他的ではなく、他の構成も可能である。
【0052】
図4は、姿勢の感知と生理学的情報のモニタリングを行うシステムとしての健康度判定装置400の一例を示す。この例において、健康度判定装置400は、1つ以上の姿勢(第1側臥位(第1LDP)など)を示すように構成される第1姿勢センサ402を含む。第1側臥位は、患者が右向きに横になる右側臥位(RLDP)、または左向きに横になる左側臥位(LLDP)を含んでもよい。或る実施例において、第1姿勢センサ402は、右側臥位と左側臥位の識別を行ってもよい。或る実施例において、第1側臥位は、右側臥位または左側臥位のうちの1つのみを示す。或る実施例において、第1側臥位は、右側臥位または左側臥位のいずれかの発生を示す。幾つかの実施例において、第1姿勢センサ402は、1つ以上の他の姿勢(たとえば腹臥位または背臥位)を示すように構成される。或る実施例は、患者が横向きになる角度を測定してもよい。或る実施例は、側臥位の角度の程度(たとえば患者が横向きに横たわっている場合、横になった床面に対してどれほど垂直であるか)を測定してもよい。
【0053】
各実施例において、第1姿勢センサ402は、床面または重力場に対する第1姿勢センサ402の向きを示す電気信号を生成する。第1姿勢センサ402は、これらに限定されないが、たとえば傾斜スイッチ、単軸加速度計、または多軸加速度計のうちの1つ以上である。各実施例は、加速度をモニタリングする1つ以上の加速度計を含んでもよい。この加速度計は、加速度から姿勢を推測できるように構成されてもよい。幾つかの実施例において、第1姿勢センサ402は、センサのキャリブレーションが可能となるように、既知の向きを向いている患者に連結される。植込の向きは、患者ごとで互いに異なる場合があるため、キャリブレーションは特定センサを用いると有用である。また特定センサは、このようなキャリブレーションがなくてもよく、重力場に対する基準の向きを識別できなくてもよい。
【0054】
幾つかの実施例は、第1姿勢メモリ回路404に連結される第1姿勢センサ402を含む。或る実施例において、第1姿勢メモリ回路404は、姿勢センサ情報を履歴に保存するように構成される。この履歴は、姿勢測定時またはその前後に(たとえば1つ以上の他の生理学的センサから)得られる他の情報を更に含んでもよい。このセンサ情報は、第1姿勢センサ402から第1姿勢メモリ回路404に直接送られてもよく、あるいは第1姿勢メモリ回路404に保存されるように条件付けられてもよい。各実施例において、制御回路406は、感知信号を第1姿勢メモリ回路404に保存可能なデータに変換するように構成される。
【0055】
制御回路406は様々な要素を含んでもよい。幾つかの実施例において、制御回路406は1つの回路を含み、図に示す機能を実行する。他の実施例においては、他の構成が用いられる。本実施例の回路は、ハードウェアとソフトウェアの適切な組合せによって実装されてもよい。たとえば1つ以上の構成要素は、1つ以上の特定機能を実行するために構築されたアプリケーション特有の回路を用いて実装されてもよい。各実施例において、構成要素はファームウェアで実装される。幾つかの実施例は、プログラムされた汎用の回路を用いてこのような機能を実行する。汎用の回路は、これらに限定されないが、マイクロコントローラもしくはその部分、またはプログラム可能なロジック回路もしくはその部分を含んでもよい。制御回路は、デジタル信号プロセッサまたは他の処理要素を含んでもよい。また制御回路は、1つの要素として統合されてもよく、あるいは1つ以上の要素へ分割されてもよい。制御回路406は、姿勢データと生理学的データに論理演算を適用するのに適切な制御演算装置を含んでもよい。各実施例において、制御回路406は、1つ以上の論理演算を実行しつつ、受信した情報と処理済みデータのプログラミングと保存を行うメモリ回路408を用いてもよい。
【0056】
たとえば傾斜スイッチは、二進法のon/off信号を供給してもよい。各実施例において、制御回路406は、このような信号を受信して姿勢に関連付けるように構成されてもよい。このように、第1姿勢メモリ回路404は、二進法のスイッチ情報の代わりに姿勢情報を保存してもよい。種々の実施例は二進法の情報を保存し、第1姿勢メモリ回路404から情報が抽出されると、転換を行なってもよい。このような傾斜スイッチを使用すると共に複数の姿勢を記録する場合、複数の傾斜スイッチが使用されてもよい。加速度計については、姿勢を示す様々な信号が、第1姿勢メモリ回路404へ保存される前に、前提条件を調整するために第1姿勢メモリ回路404または制御回路406のいずれかに供給されてもよい。各実施例において、加速度計信号は、(たとえば患者の姿勢の程度を一層正確に判定するために粒状性が十分となるように)保存前に増幅またはフィルタリングされてもよい。
【0057】
幾つかの構成において、第1姿勢センサ402と第1姿勢メモリ回路404は、1つのプリント回路基板またはハイブリッド回路に搭載される。他の実施例において、第1姿勢センサ402は患者に植込まれ、第1姿勢メモリ回路404と無線通信を行う。第1姿勢メモリ回路404が植込まれる、または第1姿勢センサ402が患者の外側にあるなど、他の変形例も可能である。
【0058】
各実施例において、第1姿勢メモリ回路404は、1つ以上の姿勢を示す履歴を保存する。側臥位、背臥位、腹臥位、および別の姿勢のうちの1つ以上が電子的に保存されてもよく、あるいは履歴に保存されてもよい。
【0059】
各実施例において、姿勢データは、第1クロック回路410によって生成される時間データと共に保存される。第1クロック回路410から供給される時間情報によって、患者が特定姿勢でいる時間の長さを、他の回路が判定できる。第1クロック回路410は、1
つのタイマ回路(たとえば1つ以上の回路の動作を駆動するのに用いられるクロック)を含んでもよい。あるいは一日の実時間を維持するクロックなど、一層精巧な計時装置であってもよい。幾つかの実施例において、第1クロック回路410は、制御回路406にタイミングデータまたはパルスを供給する。制御回路406は、これらのパルスを用いて時間間隔を判定する。
【0060】
各実施例は、第1姿勢傾向回路412を含む。各実施例において、姿勢傾向回路は、第1姿勢メモリ回路404の履歴に保存された情報の解析を行える。各実施例において、第1姿勢傾向回路412は、第1姿勢メモリ回路404に保存された情報についての姿勢傾向を作成する。各実施例において、第1姿勢傾向回路412は、比率、ヒストグラム、近似曲線、および傾向についての他の指標のうちの少なくとも1つを含む傾向を提供する。幾つかの実施例において、第1姿勢傾向回路412は、左側臥位で過ごした時間に対する、右臥位で過ごした時間の比率を提供する。
【0061】
或る実施例において、左側臥位で過ごした時間に対する、右側臥位で過ごした時間の比率を含む健康度指標が提供される。或る実施例において、比率または他の数学的関係の算出には、制御回路406に連結される(または組込まれる)比較回路414を用いてもよい。これは、たとえば第2姿勢の生理学的信号に対する、第1姿勢の生理学的信号の比率を算出することを含んでもよい。この比率は健康な人について算出されてもよく、メモリ回路408または外部装置に保存されてもよい。健康度判定装置400は、たとえば第1生理学的センサ416と第1姿勢センサ402から受信した情報を用いて、装置が植込まれた特定患者について同様に比率を算出する。これらの比率は、たとえば特定患者の健康状態(特に心不全などの健康状態の改善または悪化についての情報を含んでもよい)を判定するために、特定時間またはある期間において、互いに比較されてもよい。
【0062】
100×(RLDP/LLDP) …式2 。
上記の式において、RLDPは右側臥位に関し、LLDPは左側臥位に関する。
幾つかの実施例において、第1姿勢傾向回路412は、測定されて床面に対する姿勢を表す様々な角度で、ヒストグラムを作成する。このような情報は、医師が患者の健康レベルを判定する助けとなる。たとえば右側臥位から左側臥位に対して僅かに付勢している場合、見過ごされる可能性がある。しかし、患者が右側臥位でより多くの時間を過ごしたことを医師は知っているが、右側臥位から僅かにズレて傾いて横たわっていたために測定値には表れていなかった場合、角度を記録したヒストグラムはこのような情報を含み得る。幾つかの実施例において、このようなヒストグラムは、床面に対して、たとえば30度で人が横になって過ごした時間の長さを示す情報を含む。近似曲線は、曲線に一致するように使用されるすべての測定を保存するのに必要なメモリよりも小型のメモリに姿勢傾向についての情報を保存するために、用いられてもよい。一層小型のメモリを備える装置は、特に植込まれたとき一層快適に使用される。
【0063】
各実施例において、第1生理学的センサ416は、患者の第1生理学的指標(たとえば自律平衡、呼気、肺水、心拍出量、プリロード、体重変更、血管圧、心拍数、心拍変動、および心音)を検出し、その指標を示す信号を生成する。第1生理的状態のうちの1つ以上を示す信号は、第1生理学的指標メモリ回路418に伝達され、保存される。各実施例において、第1生理学的指標傾向回路420は、このような情報を傾向化する。姿勢の変更時に、生理的傾向が特定傾向から離れる場合、健康度指標はその変化に関連付けられてもよい。
【0064】
各実施例において、健康度指標回路422は、第1姿勢傾向回路412と第1生理学的指標傾向回路420に連結される。各実施例において、健康度指標回路422は、これらの要素から1つ以上の傾向に基づき、健康度指標の算出と提供を行うように構成される。
各実施例において、健康度指標は、第1姿勢センサ402と第1生理学的センサ416から収集される情報を、特定情報と比較することによって算出される。幾つかの実施例において、1つの値がセンサによって測定され、最終的に特定値と比較される。たとえば患者が右側の側臥位でのみ眠るように処方されている場合、健康度指標は、患者が右側臥位で眠っていないという警報を提供できる。他の実施例において、複数の値が複数の特定値と比較される。これらの実施例の幾つかにおいて、健康度指標回路422は、インデックス(時間インデックスなど)を用いて測定値と特定値とを相互参照する。幾つかの実施例において、健康度指標は特定傾向を含み、傾向回路によって生成される傾向を、特定傾向と比較する。
【0065】
或る実施例において、健康度指標回路422は、姿勢の変化によって生じる生理的状態の変化に基づく健康度を示す。たとえば通常の患者が背臥位から側臥位へ切替えるときの生理的状態を第1変化とすると、心不全患者は、第1変化とは異なる生理的状態の第2変化を経験する。この結果、或る実施例において、健康度指標回路422は、たとえば比較回路414を用いて姿勢の変化に対する患者の反応を比較し、患者の健康度が静的か、改善しているか、または悪化しているかについての指標を判定してもよい。各実施例において、この比較は、左側臥位で過ごした時間に対する、右側臥位で過ごした時間の比率を、日ごとに比較することを含んでもよい。
【0066】
各実施例はこのような健康度指標を取得し、その健康度指標を用いて任意の治療回路424を制御する。治療回路は、健康度の傾向に基づき、患者に治療を提供してもよい。治療回路424を含む実施例は、これらに限定されないが、電気パルス治療、薬物送達治療、および神経刺激治療のうちの1つ以上をフィードバックとして提供するように構成される。ペーシングと心臓再同期療法は、様々な方法で調節可能である。たとえば伝達されたパルスの比率の変更;伝達されたパルスの増幅の変更;伝達されたパルスのパルス幅の変更;患者の心臓における、ペーシングパルスが伝達された場所の調節;房室遅延(AV遅延)、心室間遅延、および心室内遅延の調節;抗頻脈性不整脈治療の調節などによって調節可能である。
【0067】
自律神経系(ANS)への1つ以上の刺激パルスの伝達は、姿勢の変化に応じて、または1つ以上の生理学的信号の変化に応じて制御されてもよい。たとえば心拍変動感知回路がサブシステム426の一部として提供されると共に、患者が姿勢を変更したときにこの心拍変動感知回路の感知する心拍変動(HRV)の変化がより少ない場合、自律平衡に影響を与えると共に姿勢に応じてより標準の心拍変動が得られるように、1つ以上の応答神経刺激パルスが自律神経系の1つ以上の場所に伝達される。
【0068】
薬物送達フィードバックも可能である。たとえば患者が姿勢を変更したときの心拍数の増加がより少ない場合、肺水の鬱血を取り除く利尿薬または1つ以上の製薬が患者に送達されてもよい。或る実施例において、直立姿勢になったときの心拍数の増加を促進または回復させるように、心臓再同期療法を付加的に開始または調節してもよい。
【0069】
図4に示す例において、健康度判定装置400は、制御回路406にローカルまたは遠隔インタフェース430への情報伝達を可能にする通信回路428を含む。各実施例において、ローカルまたは遠隔インタフェース430は、医師が患者をモニタリングするのに用いられる。幾つかの実施例において、サブシステム426は、装置プログラマと双方向に無線通信を行うために、通信回路428を用いる。装置プログラマは健康度判定装置400との通信を行って、たとえば本明細書に記載の1つ以上の論理演算を実行するために制御回路406によって使用されると共にメモリ回路408に保存された命令を更新することができる。
【0070】
各実施例は、健康度指標に基づき警報を提供する。各警報の実施例は、図5〜図8に関連して記載する。図5は、幾つかの実施例に係る、患者のモニタリング(側臥位のモニタリングを含む)、および側臥位に基づく患者の治療を示す模式図である。ステップS502において、患者のモニタリング(臥位のモニタリングなど)が行われる。ステップS504において、或る姿勢について、患者が好ましい行動パターンに従っていない場合、受動的治療が行われる(たとえば無視され易い1つ以上の警報が提供される)。ステップS506において、能動的治療が患者に行われる。能動的治療は、無視し易い警報または治療を提供することを含んでもよい。
【0071】
幾つかの実施例において、好ましい行動パターンは、たとえば複数の患者に関する統計的に有意な研究によって判定され、健康度を示すものであってもよい。他の実施例において、好ましい行動パターンは、医師によって処方されるものである。これは、個々の患者の健康度への個別のアプローチに基づいたものであってもよい。各実施例は、好ましい行動パターン(かなりの時間を右側臥位で過ごすなど)を含む。
【0072】
図6は、幾つかの実施例に係る、コンプライアンスのモニタリング、および処方へのコンプライアンスの促進を示すフローチャートである。図7は、幾つかの実施例に係る、コンプライアンスのモニタリング、および処方へのコンプライアンスの促進を示すフローチャートである。図6と図7に示すフローは、1つの装置内で実行されてもよく、あるいは装置同士を組合せて実行されてもよい。図6と図7に示すフローは、装置内で自動的に実行されてもよい。またリアルタイムで実行されてもよく、あるいは所定の時間周期で(たとえば毎日)実行されてもよい。
【0073】
図6と図7の各フローは、ステップS602において患者をモニタリングする行為を含む。患者のモニタリングは、内部装置または外部装置によるモニタリングと生理学的指標(たとえば自律平衡、呼気、肺水、心拍出量、プリロード、体重変更、血管圧、心拍数、心拍変動、および心音)のモニタリングなど、本明細書に記載の技術を含む。ステップS604において、医師が患者に対して姿勢の処方を行ったか否かが判定される。姿勢の処方において、たとえば患者が自身の健康度に有益な姿勢をとることが求められてもよい。患者がこのような処方を有するか否かは、装置に予めプログラムされてもよい。姿勢が処方されていない場合、ステップS610において治療は提供されない。姿勢が処方されている場合、ステップS606において、患者は処方された姿勢に準拠しているか否かがテストされる。姿勢に準拠している場合、ステップS610において治療は行われない。姿勢に準拠していない場合、図6のステップS608において、受動的警報が患者に与えられる。患者が準拠していない場合、図7のステップS708において、能動的警報が患者に与えられる。受動的警報と能動的警報については、図8に関連して詳細に説明する。
【0074】
図8は、幾つかの実施例に係る、警報812と、警報812に関連する様々な行為とを示す。患者が処方された治療にどれだけ準拠しているかに依存して、様々な警報が提供されてもよい。図は通知を含む受動的警報を示す。通知とは、これらに限定されないが、電子メールもしくは電話呼出802、テレビ受信機804上のメッセージ、弱音806や無視し難いもの(強音808など)、または点滅灯810などである。警報として、能動的警報が提供されてもよい。これらは一層無視し難しい警報であると共に、患者が処方にあまり準拠していない場合に提供される警報である。またこれらに限定されないが、ベッド(たとえば温度または傾斜)814の調節、患者の装着物(カフの締め、挟み、もしくは振動、または振動する植込装置)816の調節、周囲温度の調節などを含んでもよい。幾つかの実施例は、非常に無視し難い能動的警報(たとえば植込医療装置から生じる弱い衝撃818、振動、または他のエネルギー)を提供する。このような衝撃、振動、または他のエネルギーの度合いは、患者が知覚できるが痛みを与えない程度に特定されてもよい。或る実施例において、衝撃または他のエネルギーは、心室性期外収縮(PVC)820、
断続的な隔膜刺激衝撃、または(たとえば筋収縮、うずき、もしくは灼熱感を生じる)神経刺激822を発生させる方法で伝達されてもよい。患者が或る姿勢(右側臥位など)をとるように徐々に促してく方法で、これらの警報812のうちの1つ以上が連続的に生じてもよい。あるいは、患者が処方に準拠するという確信性を高めるように、これらの警報812は同時に生じてもよい。
【0075】
警報812は、一定の強度レベルで提供されてもよい。あるいは時間の経過とともに強度または種類が異なってもよい。たとえば弱い刺激源として機能する警報812は、患者が無視し難いと感じるまで、強度が増加するように構成されてもよい。各実施例において、患者が或る姿勢(右側臥位など)をとるという処方に継続して準拠できない場合、それに並行してこのように強度が増加される。
【0076】
他の警報が提供されてもよい。幾つかの実施例において、健康度の変化を示すために、指標はメモリに保存される。幾つかの実施例において、警報812は、介護人または他の人が読むことができるディスプレイに表示される。幾つかの実施例は、患者が知覚可能な患者用ディスプレイに警報812を表示する。たとえば幾つかの実施例において、1つ以上の生理学的指標の現在状態を患者に示すことによって、患者に自身の健康状態を再認識させる。幾つかの実施例において、過去の生理学的指標または特定生理学的指標も、比較が行えるように患者に提供される。幾つかの実施例において、警報812は、医師が知覚できるように提供される。幾つかの実施例において、警報812は、植込医療装置のプログラマに対して表示されてもよい。
【0077】
幾つかの実施例において、警報812は他の装置によって使用されるように提供される。たとえば幾つかの実施例において、植込医療装置は、警報812の受信、および警報812に基づく治療の提供を行えるように構成される。たとえば患者が治療を必要としていることを示す警報812が提供されると、幾つかの実施例はその治療の変更または実施を行う。幾つかの実施例は、これを自動的に行う。各実施例は、任意の治療回路424を制御する。幾つかの実施例は、警報812に基づき心調率の管理治療の変更または実施を行う。
【0078】
図9は、幾つかの実施例に係る、病気を診断するステップを含む方法を示す。この方法は、患者の様々な生理学的指標をモニタリングできる。幾つかの実施例は1つの指標を測定し、幾つかの実施例は複数の指標を測定する。ステップS902において、心拍出量指標Tが記録される。ステップS904において、左房圧指標Uが記録される。ステップS906において、肺水指標Vが記録される。ステップS908において、呼吸困難指標Wが記録される。ステップS910において、起坐呼吸指標Xが記録される。ステップS912において、体重変更指標Yが記録される。ステップS914において、姿勢指標Pが記録される。ステップS916において、本明細書において特に示されない別の生理学的指標Zが記録される。
【0079】
これらの指標は、ステップS918において病気の指標yを提供するために、単独でまたはまとめて用いられてもよい。指標T〜Zの各々は、リアルタイムで測定されてもよい(たとえば圧力センサから読み取る圧力)。あるいは、複数の測定に基づく傾向情報であってもよい。各実施形態において、病気の指標は指標T〜Zを収集し、特定重付方法によってそれらに重付けを行う。重付方法は、式3に示す例を含んでもよい。
【0080】
y=aT+bU+cV+dW+eX+fY+gZ+hP …式3 。
重付方法が単に心拍出量Tをモニタリングする病気の指標を提供する場合、この例において、変数aの重付けを1とし、残りの変数の重付けを0としてもよい。この重付方法は、他の変数にも同様に適用できる。重付けは、心拍出量Tの絶対値が変数y、すなわち病
気の指標に直線的に作用しないように行ってもよい(たとえばTも使用可)。任意で、重付けは変数yに直線的に作用してもよい。
【0081】
幾つかのシステムは、たとえばステップS904において、左房圧における変化よりも、幾つかの生理学的指標(たとえばステップS910における起座呼吸の発生)を詳しくモニタリングするように調整される。幾つかの実施例において、病気の指標yは、生理学的指標として健康度判定装置400に提供されてもよい。
【0082】
各実施例において、病気の指標が、治療によって健康度を改善すべきことを示す場合、警報が提供されてもよい。任意で、ステップS920において治療が提供される。幾つかの実施例において、治療は自動的に提供される。治療は、処方する姿勢の治療を含んでもよい。治療は、病気の指標yとのフィードバック関係にあってもよい。あるいは、病気の指標yとの開ループ関係にあってもよく、病気の指標yに基づくトリガ信号を必要とする。
【0083】
幾つかの実施例において、様々な傾向が認識され、病気の指標を提供するのに用いられる。傾向は、様々な種類のイベントが生じる時間シーケンスに関する情報を含んでもよい。幾つかの実施例において、認識される傾向が多いほど、患者が疾病または障害(たとえば心不全)であるという確信性の度合いが増加する。幾つかの実施例は、逐次的に診断された疾病または障害を、特定傾向と比較する。順次、心拍出量の低下、左房圧の増加、交感神経活動の増加、肺水の増加、呼吸困難の兆候(たとえば呼吸が困難で苦しい)、起坐呼吸の兆候(たとえば直立座位、または定常位以外では呼吸が困難または痛みを伴う)、および体重増加を含むパターンがモニタリングされる。幾つかの実施例はこのようなシーケンスを測定し、心不全があるという確信性の増加した指標を含む。これらの障害または疾病の1つ以上を含む他のシーケンスも可能である。各実施例において、発作性夜間呼吸困難が更にモニタリングされる。更に、幾つかの実施例において、片側臥呼吸(trepopnea)がモニタリングされる。
【0084】
各実施例において、システム(たとえば健康度判定装置400)が病気の状態についてポーリングを行うと、病気の指標が提供される。他の実施例において、十分に弱まった病気がモニタリングされると、病気の指標が自動的に提供される。各実施例は、1つ以上の生理学的指標に関連付けられた時間の長さを記録する。幾つかの実施例は、更新した情報を提供する各指標を、病気の指標のシーケンスに提供する。幾つかの実施例において、持続的に増加する病気が見られない限り、連続的な病気の指標は提供されない。
【0085】
図10は、幾つかの実施例に係る、疾病の診断などを行うシステム1000の一例を示す。各実施例には、生理学的指標を検出可能な1つ以上の装置が含まれる。幾つかの実施例は、心音センサ1002を含む。幾つかの実施例において、このようなセンサは左房圧のモニタリングに用いられてもよい。各実施例において、心音センサ1002が生成したデータは、たとえば第1生理学的指標傾向回路420によって傾向化される。各実施例において、第1生理学的指標傾向回路420は、装置1004〜1014からの情報を傾向化するのに用いられてもよい。各実施例は、装置1004〜1014のうちの1つ以上を更に植込んでもよい。幾つかの実施例は、圧力センサ1004を含む。各実施例において、圧力センサは、左房圧のモニタリングに用いられてもよい。各実施例は、心拍変動回路1006を含む。このような回路は、心拍変動、自律平衡、および心拍数のうちの1つ以上を測定するのに用いられてもよい。幾つかの例において、胸部インピーダンスセンサ1008が提供される。幾つかの実施例において、胸部インピーダンスセンサ1008は、肺水を測定するのに用いられてもよい。呼吸速度センサ1010が含まれてもよい。このようなセンサは、肺水、呼吸速度(たとえば多呼吸(tachypnea))、呼吸困難、および起坐呼吸についての情報を提供するのに用いられてもよい。幾つかの実施例にお
いて、姿勢センサ1012が提供される。このようなセンサは、本明細書に記載の他の機能を実行するだけでなく、幾つかの実施例において、呼吸困難と起坐呼吸についての情報を提供するのに用いられてもよい。幾つかの実施例は体重変更のモニタリングが可能であり、体重変更回路1014を含む。
【0086】
これらの装置は、指標T〜Zのうちの1つ以上を提供してもよい。これらの指標は、ステップS1018において病気の指標yを提供するために、単独でまたはまとめて用いられてもよい。指標T〜Zの各々は、リアルタイムで測定されてもよい(たとえば圧力センサから読み取る圧力)。あるいは、複数の測定に基づく傾向情報であってもよい。各実施形態において、病気の指標は指標T〜Zを収集し、特定重付方法によってそれらに重付けを行う。重付方法は、式4に示す例を含んでもよい。
【0087】
y=aT+bU+cV+dW+eX+fY+gZ …式4 。
重付方法が心拍出量Tをモニタリングする病気の指標を単に提供する場合、この例においては、変数aの重付けを1とし、残りの変数の重付けを0としてもよい。この重付方法は、他の変数にも同様に適用できる。重付けは、心拍出量Tの絶対値が変数y、すなわち病気の指標に直線的に作用しないように行ってもよい(たとえばTも使用可)。任意で、重付けは変数yに直線的に作用してもよい。病気の指標は、治療回路1020が生成する治療を提供するのに用いられてもよい。幾つかの実施例において、治療回路1020は、治療回路424に相当する。幾つかの実施例において、病気の指標yは、第1生理学的指標として健康度判定装置400に提供されてもよい。
【0088】
図11は、幾つかの実施例に係る、診断用に記録または表示されるデータを示す。この図は、記録される概念的な患者データを示す。測定によって、様々な姿勢で過ごした時間のパーセンテージを記録している。ステップS1102において、座位で過ごした時間のパーセンテージが記録される。ステップS1104において、腹臥位で過ごした時間のパーセンテージが記録される。ステップS1106において、背臥位で過ごした時間のパーセンテージが記録される。ステップS1108において、右側臥位で過ごした時間のパーセンテージが記録される。ステップS1110において、左側臥位で過ごした時間のパーセンテージで示される。健康度の指標または治療を提供すべく、収集された測定値は保存されるか、または本明細書に記載の装置と方法によって使用可能なヒストグラムとして表示される。幾つかの実施例において、ヒストグラムは、所望の健康度状態を反映する特定値と比較される。
【0089】
このようなヒストグラムは、患者の選択を表す生理学的行為を記録するために用いられてもよい。本技術は、患者が心不全であるという診断を提供するためにこれらの測定を用いる。これらの測定は、患者に治療を提供するために用いられてもよい。たとえばこれらの測定は、患者が所望しない時間を左側臥位で過ごし、所望の時間を右側臥位で過ごしていないことを表す。各実施例において、たとえば処方した姿勢への準拠を促すように、本明細書に記載の警報と他の治療が行われてもよい。これらのパーセンテージの記録に費やす時間は、複数の実施例において互いに異なる。幾つかの実施例においては24時間であり、他の実施例においては夜間帯(深夜零時〜午前6時など)である。また一睡眠周期であってもよく、他の時間周期も可能である。
【0090】
図12は、幾つかの実施例に係る、診断用に記録または表示されるデータを示す。この図は、心拍変動の概念的な記録を示す。この例において、低周波(LF)心拍変動(HRV)が示されるとともに、高周波(HF)心拍変動が示される。低周波心拍変動は、通常、約0.04Hz〜約0.15Hzの周波数をもつ心拍変動の要素を含む。高周波心拍変動は、通常、約0.15Hz〜約0.40Hzの周波数をもつ心拍変動の要素を含む。幾つかの実施例において、LF/HF比は、自律平衡の推移傾向を追跡するために用いられ
る。図4に示すように、LF/HF比は比較回路414によって提供されてもよい。LF/HF比の実質的な変化は、交感神経系が活性化される程度を表す、全身のストレスの変化を示す。各実施例において、図4に示すように、比較回路414はLF/HFの傾向を提供するために、第1生理学的指標傾向回路420にデータを供給してもよい。
【0091】
LF/HF出力比は、図に示すパワースペクトルから得られる。幾つかの実施例において、疾病または障害(心不全など)をもつ患者のLF/HF比は、これをもたない患者のLF/HF比よりも高い。幾つかの実施例において、疾病または障害をもつ患者のLF/HF比は、時間とともに大きく変化しない。各実施例において、このような指標は、病気の指標に加えられてもよい。この病気の指標は、患者の健康の診断と治療の提供に用いられてもよい。幾つかの実施例において、この比は所望の健康度状態を反映する特定値と比較される。
【0092】
図13は、幾つかの実施例に係る、診断用に記録または表示されるデータを示す。この概念的な分析において、5つの測定が行われる。測定1302は、直立の姿勢で過ごした時間を示す。測定1304は、背臥位で過ごした時間を示す。測定1306は、右側臥位で過ごした時間を示す。測定1308は、左側臥位で過ごした時間を示す。測定1310は、任意の姿勢で過ごした時間を示す。各測定において、X軸は呼吸数(たとえば毎分の呼吸)を追跡するのに用いられ、Y軸には特定呼吸数の発生回数が記録されている。5つの測定は組合せてまとめられるが、個々の測定も可能である。この例においては測定を同時にまとめるが、ズラすことも可能である。図に示す測定は、深夜零時〜午前6時に記録され、患者が右側臥位で時間を過ごす場合、呼吸数の減少の傾向があることを示す。
【0093】
これらの測定は、健康度指標を提供するのに用いられる。たとえば各実施例において、健康度指標は、測定値を特定期待値と比較することによって提供されてもよい。他の実施例は、様々な姿勢について測定値の比較を行い、健康度指標を提供する。たとえば測定1306の平均は測定1308の平均よりも低く、左側臥位と右側臥位とで患者の呼吸が互いに異なることを示す。各実施例において、この比較結果が特定パターンに一致する場合、実際に心不全であるという診断または潜在的に心不全であるという診断を含む健康度指標が提供されてもよい。
【0094】
図14は、感知した姿勢に基づき健康度指標を提供する一例としてフローチャート1400を示す。この例は、ステップS1402において姿勢のモニタリングを行う。ステップS1404において、第1(たとえば右または左)側臥位が記録される。幾つかの実施例において、装置はいずれの臥位も記録できない場合、その失敗を記録する。幾つかの実施例によると、ステップS1406において、第1側臥位に基づき、第1姿勢傾向が算出される。或る実施例によると、ステップS1408において、第1姿勢傾向と特定姿勢傾向の比較結果に基づき、健康度指標が判定される。
【0095】
図15は、姿勢の比較を行う、あるいは姿勢の比較結果に基づき最終的に治療の提供を行う一例としてフローチャート1500を示す。ステップS1502において、少なくとも2つの姿勢がモニタリングされる。或る実施例によると、ステップS1504において、第1側臥位と、第1側臥位とは異なる第2姿勢とが記録される。第1側臥位とは異なる姿勢は、別の臥位姿勢を含んでもよい。この場合、第1側臥位は右側臥位を示してもよく、第2側臥位は左側臥位を示してもよい。他の姿勢は第1側臥位とは異なってもよく、腹臥位と背臥位を含む。
【0096】
この例によると、ステップS1506において、第1側臥位に基づき第1姿勢傾向を算出し、第2姿勢に基づき第2姿勢傾向を算出する。ステップS1508において、第1姿勢傾向と第2姿勢傾向の比較を行う。更にステップS1510において、第1姿勢傾向と
第2姿勢傾向の比較結果に基づき、健康度指標の判定と提供を行う。この例はステップS1512において、健康度指標に基づき治療を提供するステップを更に含む。幾つかの実施例において、提供される治療は、患者が健康度の向上を感じられるようにとられる姿勢を推薦するステップを含む。たとえば幾つかの実施例において、第1姿勢と第2姿勢の比較結果は、患者の健康度が低いことを示し、背臥位傾斜姿勢をとるべきとする。
【0097】
[付記]
上記の詳細な説明においては、詳細な説明の一部を成す添付図面を参照する。図面は、本発明の実施を可能にする特定実施形態を例として示す。本明細書において、これらの実施形態も「実施例」(または「例」)と言う。本明細書に記載のすべての出版物、特許、および特許文献は、引用によって個々に援用されるべく、その全内容が引用によって本明細書に援用される。本明細書と引用によって援用されるこれらの文献との間で使用法が一致しない場合、引用した参照文献の使用法は、本明細書の使用法の補足とする。すなわち、一致しない矛盾については、本明細書の使用法を優先する。
【0098】
本明細書において「1つの」という語は、特許文献において一般に見られるものと同様に、「1つ以上の」の意を含むものとし、他の例または「少なくとも1つの」もしくは「1つまたは複数の」の使用とは独立したものである。本明細書において「または」(「あるいは」、「もしくは」も同様)という語は非排他的な意を表す。このため、特に示唆されない限り、「AまたはB」は「AであるがBではない」、「BであるがAではない」、並びに「AとB」の意を含む。添付の特許請求の範囲においては、法律的な用語・表現が標準的な言語表現と等しい意味で用いられる。また以下の特許請求の範囲において、「を含み」と「から成る」などの語は非制限的な意味をもつ。すなわち、特許請求の範囲においてこのような語の直前に記載される要素と他の要素を含むシステム、装置、物品、または処理は、特許請求の範囲に記載の範囲内に含まれる。また以下の特許請求の範囲において、「第1」、「第2」、および「第3」などの語は単に表示的に用いられており、それらの物の数量条件を意図するものではない。
【0099】
本明細書に記載の方法例は、少なくとも部分的には機械またはコンピュータによって実施されてもよい。幾つかの実施例は、上記の実施例に記載の方法を実行する電子装置を構成するために使用可能な命令で符号化された、コンピュータ可読媒体または機械可読媒体を含んでもよい。このような方法の実施は、コード(たとえばマイクロコード、アセンブリ言語のコード、より高次の言語によるコード)を含んでもよい。このようなコードは、様々な方法を実施するためのコンピュータ可読の指示を含んでもよい。コードは、コンピュータプログラム製品の部分を形成してもよい。コードはまた実行時または他の時間に、1つ以上の揮発性または不揮発性のコンピュータ可読媒体上に有形物として保存されてもよい。コンピュータ可読媒体は、これらに限定されないが、ハードディスク、リムーバルな磁気ディスク、リムーバブルな光学ディスク(たとえばコンパクトディスクとデジタルビデオディスク)、磁気カセット、メモリカードまたはメモリスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み取り専用メモリ(ROM)などを含んでもよい。
【0100】
上記の説明は例示であり、制限的ではない。たとえば上記の実施例(または実施例の1つ以上の態様)は、互いに組合せて使用できる。たとえば上記の説明を検討することによって、当業者は他の実施形態を使用できる。要約書は特許法に準拠したものであり、読み手は技術的な開示の性質を素早く確認できる。要約書は、特許請求の範囲またはその意味を解釈または制限するものではないことを理解されたい。上記の詳細な説明において、開示を合理的にするために、様々な特徴はまとめられてもよい。すなわち、請求項で明示しない特徴が各請求項に必要であることを意図していると解釈すべきではない。むしろ発明の主題は、開示された特定実施形態のすべての特徴よりも少ない場合がある。すなわち、以下の各請求項を詳細な説明に含み、各請求項はそれぞれ別の実施形態としてそれ自体成
立するものとする。
【0101】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲、および特許請求の範囲によって権利が付与される同等物のすべての範囲を基準として判定される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の姿勢をモニタリングするモニタリング手段と;
側臥位を記録する記録手段と;
前記側臥位に基づき姿勢傾向を算出する算出手段と;
前記姿勢傾向に基づき、健康度指標の判定と提供を行う判定手段と
を含むことを特徴とする、健康度判定装置。
【請求項2】
前記モニタリング手段は、前記側臥位を含む第1姿勢指標を生成するように構成される姿勢センサを含み、
前記記録手段は、前記姿勢センサに連結される姿勢メモリ回路を含み、前記姿勢メモリ回路は、前記第1姿勢指標に基づき前記側臥位の履歴を保存するように構成され、
前記算出手段は、前記姿勢メモリ回路に連結される姿勢傾向回路を含み、前記姿勢傾向回路は、前記履歴に基づき前記姿勢傾向を生成するように構成され、
前記判定手段は、前記姿勢傾向回路に連結される健康度指標回路を含み、前記健康度指標回路は、前記姿勢傾向に基づき、前記健康度指標の算出と提供を行うように構成される、請求項1記載の健康度判定装置。
【請求項3】
前記第1側臥位は左側臥位であり、
前記姿勢センサは、右側臥位を含む第2姿勢指標を生成するように構成され、
前記姿勢メモリ回路は、前記第2姿勢指標に基づき前記右側臥位の履歴を保存するように構成され、
前記姿勢傾向回路は、前記第1側臥位の履歴と、前記右側臥位の履歴との比較結果に基づき、前記姿勢傾向を生成するように構成される、請求項2記載の健康度判定装置。
【請求項4】
前記姿勢センサは、背臥位と腹臥位のうちの少なくとも1つを含む前記第2姿勢指標を生成するように構成され、
前記姿勢メモリ回路は、前記第2姿勢指標に基づき、前記背臥位の履歴と、前記腹臥位の履歴とを保存するように構成され、
前記姿勢傾向回路は、前記第1側臥位の履歴、前記背臥位の履歴、および前記腹臥位の履歴の比較結果に基づき、前記姿勢傾向を生成するように構成される、請求項2または3記載の健康度判定装置。
【請求項5】
前記健康度指標回路は、前記姿勢傾向を、特定姿勢傾向と比較するように構成される、請求項2〜4何れか一項記載の健康度判定装置。
【請求項6】
前記健康度判定装置は更に、前記健康度指標回路に通信するように連結される警報回路を備え、
前記警報回路は、前記健康度指標が低下した場合に、警報をトリガするように構成される、請求項2〜5何れか一項記載の健康度判定装置。
【請求項7】
前記健康度判定装置は更に、
姿勢以外の生理学的指標を生成するように構成される生理学的センサと;
前記生理学的センサに連結される生理学的指標メモリ回路であって、前記生理学的指標メモリ回路は、前記生理学的指標に基づき、前記生理学的指標の履歴を保存するように構成されることと;
前記生理学的指標メモリ回路に連結される生理学的指標傾向回路であって、前記生理学的指標傾向回路は、前記生理学的指標の履歴に基づき、生理学的指標傾向を生成するように構成されることと
を含み、
前記健康度指標回路は、前記生理学的指標の履歴に基づき、前記健康度指標を算出するように構成される、請求項2〜6何れか一項記載の健康度判定装置。
【請求項8】
前記生理学的センサは、自律平衡センサ、呼気センサ、肺水センサ、心拍出量センサ、プリロード回路、体重変化センサ、圧力センサ、心拍数センサ、心拍変動センサ、および心音センサのうちの少なくとも1つを含み、
前記生理学的指標を形成するために前記生理学的センサは使用される、請求項7記載の健康度判定装置。
【請求項9】
前記生理学的指標は、発作性夜間呼吸困難の指標と、起座呼吸の指標とのうちの少なくとも1つを含む、請求項7記載の健康度判定装置。
【請求項10】
第1側臥位を含む第1姿勢をモニタリングするステップと;
前記第1側臥位に基づき、前記第1側臥位の履歴を記録するステップと;
前記第1側臥位の履歴に基づき、第1姿勢傾向を算出するステップと;
前記第1姿勢傾向に基づき、健康度指標の判定と提供を行うステップと
を含むことを特徴とする、健康度判定方法。
【請求項11】
前記第1姿勢傾向は、24時間周期で記録される、請求項10記載の健康度判定方法。
【請求項12】
前記健康度判定方法は更に、
前記第1側臥位とは異なる第2姿勢を記録するステップと;
前記第2姿勢に基づき、第2姿勢傾向を算出するステップと;
前記第1姿勢傾向と前記第2姿勢傾向に基づき、前記健康度指標の判定と提供を行うステップと
を含む、請求項10または11記載の健康度判定方法。
【請求項13】
前記健康度判定方法は更に、
前記第1姿勢傾向を、前記第2姿勢傾向と比較するステップと;
前記比較の結果に基づき、前記健康度指標の判定と提供を行うステップと
を含む、請求項12記載の健康度判定方法。
【請求項14】
前記第1姿勢は右側臥位を含み、
前記第2姿勢は左側臥位を含む、請求項12記載の健康度判定方法。
【請求項15】
前記第2姿勢は、背臥位と腹臥位のうちの少なくとも1つを含む、請求項12記載の健康度判定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公表番号】特表2010−533546(P2010−533546A)
【公表日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−517016(P2010−517016)
【出願日】平成20年7月17日(2008.7.17)
【国際出願番号】PCT/US2008/008738
【国際公開番号】WO2009/011886
【国際公開日】平成21年1月22日(2009.1.22)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】