姿勢キャリブレーション行列を構成するための方法
装置には、地球の重力場に対する装置の非平行となる第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供する多次元姿勢センサと、キャリブレーション回路及び姿勢回路が含まれるプロセッサと、を含み得る。キャリブレーション回路は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、装置の第2軸線の一方に関する第2センサ出力と、を測定し、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定し、1つ又は複数の座標変換を計算し、座標変換を用いて、変換後のセンサ出力を生成し、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって姿勢センサをキャリブレーションする。姿勢回路は、姿勢センサを用いて対象の後続の姿勢を判定する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、姿勢キャリブレーション行列を構成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器には、患者に埋め込むように構成された装置がある。これら埋込型医療機器(IMD)の幾つかの例としては、例えば、埋込型ペースメーカ、植え込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法装置(CRT)、及びそのような機能の組合せを含む装置等の心臓機能管理(CFM)装置が挙げられる。これらの装置は、電気的な若しくは他の療法を用いて患者若しくは被験者を処置するために、又は患者の状態の体内監視を通して患者の診断について医師若しくは介護者を支援するために用い得る。これらの装置には、患者内で心臓の電気的な活動を監視する1つ又は複数のセンス増幅器と通信を行う1つ又は複数の電極を含むことがあり、また、1つ又は複数の患者の他の内部パラメータを監視する1つ又は複数のセンサが含まれることが多い。IMDの他の例としては、埋込型診断装置、埋込型薬物送達システム、又は神経刺激機能を備えた埋込型装置が挙げられる。
【0003】
医療機器としては、更に、装着型除細動器(WCD)等の装着型医療機器(WMD)が挙げられる。WCDは、表面電極を含むモニタである。この表面電極は、表面心電図(ECG)の監視並びに電気除細動器及び除細動器ショック療法の送達の一方又は両方を提供するように構成される。
【0004】
IMDには、患者の様々の生理学的な態様を監視する1つ又は複数のセンサが含まれるものもある。患者の姿勢を感知すると、患者の状態又は疾患に関連する情報を提供することができる。例えば、うっ血性心不全(CHF)の患者は、状態が悪化すると、上向き位置で眠る傾向がある。患者の姿勢情報は、患者監視の他の態様においても有用なことがある。例えば、医療機器によって取得される測定値は、患者の姿勢と共に変わることがある。測定中の患者の姿勢の情報は、装置の測定値を解釈する際、介護者にとって有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この文書は、一般的に、患者又は被験者の姿勢を判定するためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、姿勢感知装置を搭載又は埋め込むことに起因する変動方位の姿勢感知装置をキャリブレーションするシステム、装置、及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
例1に含み得る装置には、地球の重力場に対する装置のそれぞれ非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供するように構成された多次元姿勢センサと、キャリブレーション回路及び姿勢回路を含むプロセッサと、が含まれる。キャリブレーション回路は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定し、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定し、第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算し、この座標変換を用いて第2姿勢に関するセンサ出力を変換し、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって、姿勢センサをキャリブレーションするように構成し得る。姿勢回路は、姿勢センサを用いて対象の後続の姿勢を判定するように構成し得
る。
【0007】
例2では、例1の内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、第1センサ出力を用いて第1方位角に関連する第1座標変換を計算し、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連する第2座標変換を計算し、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線それぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測定し、第1座標変換及び第2座標変換を用いて第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換するように構成される。
【0008】
例3では、例1又は2の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算し、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算し、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算してセンサ出力を変換するように構成される。
【0009】
例4では、例1乃至3の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、キャリブレーション行列の要素を計算することによってキャリブレーション変換を計算するように構成される。
【0010】
例5では、例1乃至4の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、第1センサ出力と、第2センサ出力及び第3センサ出力の内の一方とを用いて、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、変換後のセンサ出力を用いて第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算し、第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いてキャリブレーション行列の要素を計算するように構成される。
【0011】
例6では、例1乃至5の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、ピッチ角に対応する第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、ロール角に対応する第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、ヨー角に対応する第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算するように構成される。
【0012】
例7では、例1乃至6の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、ピッチ角に対応する第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、ロール角に対応する第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、ロール角に対応する第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算するように構成される。
【0013】
例8では、請求項1乃至7の何れか1つに記載の内容にオプションとして含み得る姿勢回路は、姿勢センサの3つの非平行な軸線の各々に関するセンサ出力を受信し、キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を変換し、変換後のセンサ出力を特定のしきい値と比較して、対象の姿勢を判定するように構成される。
【0014】
例9では、例1乃至8の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第2姿勢は、第1姿勢に対して非直交となる姿勢である。
例10では、例1乃至9の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1姿勢は、直立姿勢であり、また、オプションとして含み得る第2姿勢は、第1姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない。
【0015】
例11では、例1乃至10の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1姿勢は、仰臥姿勢であり、また、オプションとして含み得る第2姿勢は、第1姿勢より直立姿勢
であるが完全な直立姿勢でない。
【0016】
例12に含むか又はそれと組み合わせ得る例1乃至10の何れか1つの内容には、オプションとして次の内容を含み得る。即ち、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定する段階と、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階と、第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階と、この座標変換を用いてセンサ出力を変換する段階と、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いて、キャリブレーション変換を計算することによって姿勢センサのキャリブレーションを行う段階と、を含み得る。キャリブレーションは、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定するために用い得る。
【0017】
例13では、例1乃至12の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階には、オプションとして、第1センサ出力を用いて、第1方位角に関連する第1座標変換を計算する段階と、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2方位角に関連する第2座標変換を計算する段階と、を含むことができ、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階には、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線のそれぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測定する段階が含まれ、また、出力を変換する段階には、第1座標変換及び第2座標変換を用いて、第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階が含まれる。
【0018】
例14では、例1乃至13の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1座標変換を計算する段階には、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算する段階が含まれ、第2座標変換を計算する段階には、オプションとして、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2回転行列の要素を計算する段階が含まれ、また、第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階には、オプションとして、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算して、センサ出力を変換する段階が含まれる。
【0019】
例15では、例1乃至14の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション変換を計算する段階には、キャリブレーション行列の要素を計算する段階が含まれ、また、キャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、オプションとして、キャリブレーション行列を用いて、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定する段階が含まれる。
【0020】
例16では、例1乃至15の何れか1つの内容にオプションとして含み得るセンサ出力を用いて姿勢センサをキャリブレーションするために行列の要素を計算する段階には、第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階と、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階と、変換後のセンサ出力を用いて、第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階と、第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いて、キャリブレーション行列の要素を計算する段階と、が含まれる。
【0021】
例17では、例1乃至16の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、オプションとして、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、また
、第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、オプションとして、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれる。
【0022】
例18では、例1乃至17の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、オプションとして、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、また、第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれる。
【0023】
例19では、例1乃至18の何れか1つの内容にオプションとして含み得る対象が第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階には、オプションとして、対象が、第1の特定姿勢に対して非直交である第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階が含まれる。
【0024】
例20では、例1乃至19の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、オプションとして、多次元センサの3つの直交する軸線の各々に関するセンサ出力を受信する段階と、キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を身体の座標値に変換する段階と、センサ出力を特定のしきい値と比較して姿勢を判定する段階と、が含まれる。
【0025】
この節は、本特許出願の内容の概要を提供するものである。本発明の排他的又は網羅的な説明を提供しようとするものではない。詳細な説明は、本特許出願に関する更なる情報を提供するために含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】IMDを含むシステムの一部の例の説明図。
【図2】IMDを用いる別のシステムの一部の説明図。
【図3A】患者の身体の座標系を示す図。
【図3B】患者の身体の座標系を示す図。
【図4】身体座標に対して斜めに向いた装置座標を示す図。
【図5】テイト・ブライアン(Tait−Bryan)ヨー角、ピッチ角、及びロール角を示し、また、これらを如何に用いれば、身体座標回転に対して装置座標系を記述できるかを示す図。
【図6】多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定する方法のフロー図。
【図7】装置座標から身体座標への変換を視覚化するために(x’,y’)平面におけるg力の成分を示す図。
【図8】装置座標から身体座標への変換を視覚化するために、(y’,z’)平面におけるg力の成分を示す図。
【図9】多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定する他の方法のフロー図。
【図10】多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定することが可能な装置の一部の例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面では、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らないが、同様な数字は、異なる図において同様な構成要素を示す。異なる文字接尾辞を有する同様な数字は、同様な構成要素の異なる例を表す。図面は、一般に、制限するためではなく、一例として本文書で議論される様々な例を示す。
【0028】
医療機器(例えば、IMD又はWMD)には、本明細書に述べる特徴、構造、方法又はその組合せの1つ又は複数を含み得る。例えば、心臓モニタ又は心臓刺激器は、後述する有益な特徴又はプロセスの1つ又は複数を含むように実現し得る。そのようなモニタ、刺激器、又は他の埋込型の若しくは部分的埋込型の装置は、本明細書に記載される全ての特徴を含む必要はないが、独特の構造や機能を提供する選択された特徴を含むように実現できることが意図されている。そのような装置は、様々な治療又は診断機能を提供するように実現し得る。
【0029】
医療機器による姿勢感知によって、患者監視を改善できる。姿勢センサの例としては、多軸加速度計及び傾斜スイッチが挙げられる。姿勢センサを備えると、医療機器は、患者が直立姿勢、仰臥姿勢、腹臥姿勢、自分の左又は右側部を下にしているかどうか、あるいは、患者が傾斜姿勢かどうかを感知し得る。心不全の患者の場合に、姿勢感知によって、座位呼吸(例えば、胴部を直立した立位又は座位での直立姿勢における場合にのみ、患者が呼吸を容易にできる状態)を監視し得る。姿勢感知によって、発作性夜間呼吸困難(PND)(患者を眠りから目を覚まさせる息苦しい、即ち、困難な呼吸を含む状態)も監視し得る。
【0030】
姿勢感知は、更に、患者の心活動を監視するために用いられる他のセンサの用途を改善できる。例えば、心音は、患者の無意識な心活動と関連付けられる。心音の振幅は、心臓病だけでなく患者姿勢と共に変わり得る。患者姿勢の情報は、患者の心音の監視を改善できる。別の例において、肺動脈(PA)圧は、患者の心臓疾患を監視するのに有用であるが、患者姿勢と共に変化する。患者姿勢情報は、PA圧変動が姿勢によるものか又は疾患によるものか判断することによって、PA圧の監視を改善できる。
【0031】
医療機器の方位は、患者毎に変動し得る。これにより、医療機器による患者姿勢の自動的な判断が複雑になる。例えば、埋込型装置の場合に、身体におけるIMDの方位は、不明である。生理機能は患者間で変動することから、ペースメーカは、患者の胸部の角度差異により、患者毎に方位が異なり得る。更に、IMDは、装置の稼働期間中、なんらかの回転や他の移動を受ける可能性がある。姿勢センサのキャリブレーションによって、身体内におけるIMDの不明の角度やWMDの変化する角度を補償する。
【0032】
図1は、IMD110又は他の歩行用医療機器を用いるシステム100の一部の説明図である。IMD110の例としては、制限するものでは無いが、ペースメーカ、除細動器、心臓再同期療法(CRT)装置、又はそのような装置の組合せが挙げられる。システム100には、更に、通常、例えば、無線周波数(RF)又は他の遠隔計測信号を用いることによって、IMD110と無線信号190の通信を行うIMDプログラマ又は他の外部装置170が含まれる。
【0033】
IMD110は、1つ又は複数のリード108A乃至Cによって心臓110に結合される。心臓リード108A乃至Cには、IMD110に結合される基端部と、先端部と、が含まれ、電気接点又は「電極」によって心臓105の1つ又は複数の部位に結合される。電極は、通常、電気的除細動、除細動、ペーシング、又は再同期療法、又はその組合せを心臓105の少なくとも1つの室(又は房)に送達する。電極は、電気的な心臓の信号を感知するセンス増幅器に電気的に結合し得る。
【0034】
心臓105には、右心房100A、左心房100B、右心室105A、左心室105B、及び右心房100Aから延在する冠状静脈洞120が含まれる。右心房(RA)リード108Aには、心房100Aへの信号を感知するために、又は心房100Aにペーシング療法を送達するために、又はその双方のために、心臓105の心房100Aに配置された
電極(環状電極125及び先端電極130等の電気接点)が含まれる。
【0035】
右心室(RV)リード108Bには、信号を感知するための、ペーシング療法を送達するための、又は信号を感知しペーシング療法を送達する双方のための1つ又は複数の電極、例えば、先端電極135及び環状電極140が含まれる。リード108Bには、オプションとして、追加の電極、例えば、心房電気的除細動、心房除細動、心室電気的除細動、心室除細動、又はそれらの組合せを心臓105に送達するためのものも含まれる。そのような電極は、通常、除細動に関与する大きなエネルギを取り扱うために、ペーシング電極より大きな表面積を有する。リード108Bは、オプションとして、心臓105に再同期療法を提供する。再同期療法は、通常、心室間の脱分極のタイミングの同期化を改善するために心室に送達される。
【0036】
IMD110には、ヘッダ155を介してIMD110に取り付けられた第3心臓リード108Cを含み得る。第3心臓リード108Cには、冠状静脈内に置かれ、その冠状静脈を介して心外膜上で左心室(LV)105Bに接して位置する環状電極160及び165が含まれる。第3心臓リード108Cには、冠状静脈洞(CS)120付近に置かれた環状電極185を含み得る。
【0037】
リード108Bには、先端及び環状電極135、140に対して基端側に位置し右心室内に配置された第1除細動コイル電極175と、第1除細動コイル175、先端電極135、及び環状電極140に対して基端側に位置し上大静脈(SVC)内に配置された第2除細動コイル電極180と、を含み得る。幾つかの例では、高エネルギ・ショック療法が、第1又はRVコイル175から第2又はSVCコイル180に送達される。幾つかの例では、SVCコイル180は、気密封止されたIMD筐体又は缶150上に形成された電極に電気的に結合される。これにより、RVコイル175から心室心筋層を介して送達する電流を均一化することによって除細動が改善される。幾つかの例では、この療法は、RVコイル175からIMD缶150上に形成された電極のみに送達される。
【0038】
尚、特定の構成のリードや電極を図に示すが、本方法及びシステムは、様々な構成及び様々な電極で機能する。他の形態の電極には、心臓105の部位に貼り付け可能な、又は、身体の他の領域に埋め込んで、IMD110によって生成された電流の「誘導」を支援できるメッシュやパッチが含まれる。
【0039】
IMDは、経静脈、心内膜、及び心外膜電極(即ち、胸腔内電極)、及び/又は缶、ヘッダ、及び基準電極等の皮下非胸腔内電極、及び皮下アレイ又はリード電極(即ち、非胸腔内電極)といった様々な電極配列として構成することができる。
【0040】
図2は、IMD210を用いて、患者202に療法を提供する別のシステム200の一部の説明図である。システム200には、通常、ネットワーク294を介してリモートシステム296と通信を行う外部装置270が含まれる。ネットワーク294は、電話ネットワーク又はコンピュータネットワーク(例えば、インターネット)等の通信ネットワークであってよい。幾つかの例では、外部装置には、中継器が含まれ、有線又は無線のいずれでも良いリンク292を用いてネットワークを介して通信を行う。幾つかの例では、リモートシステム296は、患者管理機能を提供し、その機能を実施する1つ又は複数のサーバ298を含み得る。
【0041】
図3は、患者の身体の座標系を示す。身体座標系は、x軸、y軸、及びz軸を用いて、前後方向、左右方向、及び上下方向をそれぞれ記述する。図3は、更に、図示するように、u軸、v軸、及びw軸を用いて装置座標系を示す。装置300の望ましい方位は、装置軸線が身体軸線(例えば、u←→x、v←→y、w←→z)に一致するように冠状面内に
あってよい。しかしながら、装置方位は、通常、理想的な方位にはない。
【0042】
図4は、装置座標が身体座標に対して斜めに向いた更に典型的な場合を示す。上述したように、このことは、患者の解剖学的構造による又は埋め込まれた若しくは装着された医療機器400の移動によるものである可能性がある。姿勢感知を用いる医療機器によって実行されるアルゴリズムが装置方位を修正し得るように、キャリブレーション手順を用いて装置方位を判定するか又は装置座標を身体座標に変換する。
【0043】
キャリブレーション手順は、キャリブレーション行列の要素を決定する段階を伴う。一旦、キャリブレーション行列が決定されると、医療機器のアルゴリズムは、患者の姿勢を、例えば、姿勢センサの出力又は複数の出力にキャリブレーション行列を乗算して、身体座標に合わせてキャリブレーションされた出力を生成することによって決定し得る。キャリブレーションされた出力は、特定のしきい値と比較して姿勢を判定する。
【0044】
幾つかの例では、三次元DC加速度計を姿勢センサに用いる。加速度計は、3つの互いに直交する軸線の各々に関するDC応答出力を提供する。キャリブレーション行列の要素を決定するために、座標回転を行う。テイト・ブライアン(Tait−Bryan)角度を用いて、任意の座標回転を定義することができる。
【0045】
座標変換
図5は、テイト・ブライアンのヨー角度、ピッチ角度、及びロール角度を示し、また、それらの角度を用いて、例えば、胸部に埋め込んだCFM装置の場合に、如何にして装置座標系から身体座標への回転又は変換を記述できるかを示す。身体上での装置の任意の座標回転は、3回の連続した回転によって決定できる。第1の回転は、患者が直立している場合に、上下方向(z)の身体軸線又は垂直の軸線を中心に可能である。図5において、この角度は、θyとして示されるヨー角であってよいことが分かる。
【0046】
装置が身体にヨー角θyで搭載される場合に、元々身体座標で表わした任意のベクトルaは、回転座標系で下式のように表わすことができる
【0047】
【数1】
上式において、a’は、z軸を中心にして角度θyだけ回転座標系で表わしたベクトルを示す。
この第1の回転により、新しい回転したy軸であるy’が生じる。第2の回転は、このy’軸線を中心とし、ピッチ角と称し得る角度θpだけ回転する。即ち、
【0048】
【数2】
上式において、a’’は、z軸を中心にして角度θyだけ回転し、そして、y’軸を中心にしてθpだけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。
これら2回の回転によって、新しい回転したx軸であるx’’が生じる。第3の回転は
、このx’’軸を中心にして、ロール角と称し得る角度θrだけ回転する。即ち、
【0049】
【数3】
上式において、a’’’は、z軸を中心にして角度θyだけ回転し、y’軸を中心にしてθpだけ回転し、そして、x’’軸を中心にして角度θrだけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。等号の右辺の行列は、掛け合わせると下式のようになる。
【0050】
【数4】
又は、
【0051】
【数5】
上式において、aT=[auavaw]Tは、装置の回転された座標系で表わしたベクトルaである。
【0052】
式(4)は、医療機器の姿勢センサに関するキャリブレーション行列Mの要素を計算するために用いることができる。キャリブレーション行列を決定するには、二つの姿勢キャリブレーションを手動で実施する。追加の姿勢(例えば、3つ目の姿勢)を用い得るが、2つの姿勢で充分である。対象は、第1の既知の姿勢を取り、センサデータ(例えば、加速度データ)が、身体に搭載した(例えば、埋め込まれた又は装着した)装置から収集される。そして、対象は、第2姿勢を取り、対象がこの第2姿勢にある状態のときに、センサデータが収集される。2つの姿勢から収集されたセンサデータについて医療機器によって実施された計算は、身体内又は身体上における方位を特定する及び修正するために用い得る。これらの計算は、三角関数の計算を伴う必要がない。非三角関数の計算は、演算を実行するプロセッサ能力に限界がある装置やプロセッサ演算を実行するエネルギに限界がある装置(例えば、バッテリ駆動式の装置)にとっては、有用であり得る。
【0053】
キャリブレーション行列を構成するために、センサデータの直接的な挿入とキャリブレーション回転行列の形式に関する情報との組合せを用いる。対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力が測定される。幾つかの例では、直立姿勢が用いられ、データ[auavaw]Tが、搭載された装置から収集される。直立姿勢の場合に、身体座標における重力ベクトルは、[auavaw]T=[001]Tである。この場合の行列式は、下式の通りである。
【0054】
【数6】
又は
【0055】
【数7】
回転行列Mの成分を次のように示した場合に、
【0056】
【数8】
検証によって、m13=au,Upright、m23=av,Upright、m33=aw,Uprightであり、ここで、au,Uprightは、患者が直立姿勢にある時の装置の「u」軸線からのセンサ出力を意味する。
【0057】
ピッチ角(P)係数
ピッチ角に対応するキャリブレーション行列要素を計算する場合に、m13=au,Upright=sin(θp)であることが行列の形式から分かる。項「au,Upright」は、患者が直立姿勢の状態で、センサによって直接測定することができる。sin(θp)=au,Uprightならば、
【0058】
【数9】
で表わす三角関数の公式を用いて、cos(θp)は、測定量
【0059】
【数10】
から算出することができる。
ロール角(R)係数
このcos(θp)の式は、ロール角に関連するキャリブレーション行列要素を計算するために用い得る。2つの別個の式、即ち、
【0060】
【数11】
、及び
【0061】
【数12】
を用いて、ロール回転を特徴付けることができる。何れかの式を用いて、ロール回転行列成分を計算できる。しかしながら、患者操作の不正確さや操作中の測定値のノイズの一方又は双方によって、その結果は、実際には、同じでないことがある。これらの何れかの式を用いて又はこれらの両方の式を用いて、ロール回転行列成分を計算して、結果の精度を改善することができる。
【0062】
説明を簡単にするために、上記行列中のcos及びsinの表記を次のように変更することができる。
【0063】
【数13】
上式において、例えば、cos(θp)は、cpに等しい。行列の9つの成分は、6つの係数sr,cr,sp,cp及びsy,cyから構成されていることが分かる。また、「s」及び「c」係数又は行列成分は、上述したように互いに関係付けられる。
必要とされる三角関数の関係は、
【0064】
【数14】
のみであり、これによって、行列の成分が代数方程式によって関係付けられる。従って、代数方程式を用いると、「c」項が分かると常に、(符号のあいまいさはあるが)対応する「s」項が分かり、また、逆の場合も同様であり、三角関数で行列の成分を計算する必要はない。具体的には、これらの式は、以下の通りである。
【0065】
【数15】
上式において、下付き文字における追加の「a」及び「b」は、これらが、上述したように、実際には異なる結果を与え得る択一的な2組の計算結果であることを示す。組「a」又は組「b」式の何れかを用いることができる。尚、sr及びcrが余角から計算されるように、sr、crは、同じ組の式から計算すべきである。これによって、回転行列が、ユニタリ行列である(即ち、その逆行列は、その転置行列に等しい)ことが保証される。従って、au,Upright及びav,Uprightを知ることによって、又はau,Upright及びaw,Uprightを知ることによって、6つの係数の内の4つを計算することができる。
【0066】
ヨー角(Y)係数
残りの演算対象は、ヨー回転に関連した2つの係数sy及びcyである。幾つかの例では、この回転を決定するために、患者は、第1姿勢に直交する第2姿勢を取る。例えば、第1位置は、直立姿勢であってよく、第2姿勢は、患者が自分の背中を下にして横たわる仰臥姿勢である。直立姿勢と同様に、仰臥姿勢に関する身体座標での重力ベクトルは[auavaw]T=[100]Tである。これによって下式に至る。即ち、
【0067】
【数16】
又は
【0068】
【数17】
ヨー回転係数の計算の最も単純な組は、
【0069】
【数18】
であり、これもまた、三角関数を用いて計算する必要がない。従って、6つの係数は全て、姿勢センサの出力を用いて計算することができ、従って、キャリブレーション行列Mの9つの要素全てを計算できる。従って、キャリブレーション行列は、回転角度、例えば、
ヨー角、ピッチ角、及びロール角の1つ又は複数を実際に計算することなく計算でき、また、三角関数を計算することなく計算できる。
【0070】
キャリブレーション行列Mを計算する場合に、キャリブレーション行列の逆行列M−1を用いて、装置座標の姿勢センサ出力を身体座標の姿勢センサ出力に、例えば、
【0071】
【数19】
によって変換することができる。上式において、[auavaw]は、装置座標での姿勢センサの出力であり、[axayaz]は、身体座標での姿勢センサの出力である。
他の座標変換
身体内又は身体上における方位に関する装置をキャリブレーションする例では、まず直立姿勢を取り、次に仰臥姿勢を取る患者について述べた。仰臥姿勢で又は患者が自分の側部を下にして横たわって開始するなど、他のキャリブレーション操作も有用であり得る。時として、仰臥姿勢からキャリブレーション操作を始めて、直立姿勢でキャリブレーションを終了することが望ましい場合がある。これは、完全な直立姿勢から開始するキャリブレーション操作を繰り返すことが困難な場合があり得る。操作は、いずれの順番で実施してもよい。それは、どちらの操作が重力と完全に整合する必要があるか(即ち、完全な直立姿勢か又は完全な仰臥姿勢か)を選択させる2つの操作の処理の順番の選択である。
【0072】
仰臥姿勢から開始する場合に、キャリブレーション行列を計算するために用いる回転の順番を逆にする。回転の順番が異なるため、回転は、テイト・ブライアン式の順番ではない。これにより、回転は、ロール角、ピッチ角、及びヨー角に直接対応しないが、ロール角、ピッチ角、及びヨー角は、キャリブレーション行列の要素の計算を記述するのに依然として有用である。
【0073】
前と同様に、身体上での装置の任意の座標回転は、3回の連続した回転によって決定し得る。第1の回転は、身体の前後(x)軸線を中心にしてよい。図4では、この角度は、ロール角と同様であり、θr’と示されることが分かる。
【0074】
装置が、身体に角度θr’で搭載される場合に、元々身体座標で表わした任意のベクトルaは、回転座標系、即ち、
【0075】
【数20】
で表わせる。上式において、a’は、x軸を中心にして角度θr’だけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。
この第1回転は、新しい回転したy軸であるy’が生じる。第2回転は、このy’軸を中心に、角度θp’だけ行われ、これは、ロール角が小さい場合に、ピッチ角と同様な角度である。即ち、
【0076】
【数21】
上式において、a’’は、x軸を中心にして角度θr’だけ回転し、そして、y’軸を中心にしてθp’だけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。
これら2回の回転によって、新しい回転したz軸であるz’’が生じる。第3回転は、このz’’軸を中心にして、角度θy’だけ回転され、これは、ロール角が小さい場合に、ヨー角と同様な角度である。
【0077】
【数22】
上式において、a’’’=[ax’’’ay’’’az’’’]は、x軸を中心にして角度θ’r’だけ回転し、y’軸を中心にしてθp’だけ回転し、そして、z’’軸を中心にして角度θy’だけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。等号の右辺の行列は、掛け合わせると下式のようになる。即ち、
【0078】
【数23】
又は
【0079】
【数24】
上式において、aT=[auavaw]Tは、装置座標で表わしたベクトルaである。
2姿勢手動キャリブレーションを再度実施して、キャリブレーション行列を判定する。対象は、最初に、仰臥姿勢を取り、センサデータ[auavaw]Tが、搭載された装置から収集される。そして、対象は、第2姿勢を取り、対象が第2姿勢にある状態のときに、センサデータが収集される。仰臥姿勢の場合に、身体座標の重力ベクトルは、[auavaw]T=[100]Tである。この場合の行列式は、以下の通りである。
【0080】
【数25】
又は
【0081】
【数26】
回転行列Mの成分は、次のように示される。
【0082】
【数27】
【0083】
そして、検証によって、m11=au,Supine、m21=av,Supine,m31=aw,Supineであり、ここで、au,Supineは、患者が仰臥姿勢である時の装置の「u」軸線からのセンサ出力を意味する。
【0084】
P’角度係数
θp’に関連するキャリブレーション行列要素を計算する場合に、m31=−sin(θp’)であって、sin(θp’)=−aw,Supineであることが行列の形式から分かる。項「aw,Supine」は、患者が仰臥姿勢の状態で、センサによって直接測定することができる。sin(θp’)=−aw,Supineであれば、
【0085】
【数28】
で表わす三角関数の公式を用いて、cos(θp’)は、測定量
【0086】
【数29】
から算出することができる。
Y’角度係数
このcos(θp’)の式は、θy’に関連するキャリブレーション行列要素を計算するために用い得る。ロール回転を特徴付けるために用い得る2つの別個の式は、
【0087】
【数30】
及び、
【0088】
【数31】
である。前と同様に、何れかの式を用いて、ロール回転行列成分を計算できるが、その結果は、実際には、同じでないことがある。これらの両方の式を用いて、θy’回転行列成分を計算して、結果の精度を改善できる。
また、表記を簡素化すると、下式になる。
【0089】
【数32】
簡略化した表記では、非三角関数の式は以下の通りである。
【0090】
【数33】
上式において、下付き文字における追加の「a」及び「b」は、これらが、実際には異なる結果を与え得る択一的な2組の計算結果であることを示す。組「a」又は組「b」式の何れかを用いるべきであり、また、sy、cyを同じ組の式から計算すべきである。従って、aw,Supine及びav,Supineを知ることによって又はaw,Supine及びau,Supineを知ることによって、6つの係数の内の4つを計算できる。
【0091】
R’角度係数
残りの演算対象は、θr’に関連した2つの係数、即ち、sr及びcrである。幾つかの例では、この回転を決定するために、患者は、直立姿勢(例えば、立位)を取る。直立姿勢に関する身体座標における重力ベクトルは、[auavaw]T=[001]Tであ
る。これによって、下式に至る。即ち、
【0092】
【数34】
【0093】
【数35】
θr’係数の計算の最も単純な組は、
【0094】
【数36】
【0095】
である。6つの全係数を計算することができ、従って、キャリブレーション行列Mの9つの全要素を計算できる。対象が、最初に直立姿勢で次に仰臥姿勢である第1例のように、キャリブレーション行列の要素は、三角関数を用いることなく、また、方位角を特別に計算することなく計算される。
【0096】
図6は、多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定する方法600のフロー図である。ブロック605では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力が測定される。装置の第1軸線は、u軸線、v軸線、又はw軸線であってよい。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、直立姿勢であり、第1センサ出力は、au,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、仰臥姿勢であり、第1センサ出力は、aw,Supineであってよい。他の(例えば、自分の側部を下にして横たわる)姿勢を第1姿勢に用いてもよい。
【0097】
ブロック610では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力が、測定される。幾つかの例では、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第2センサ出力は、av,Upright又はaw,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第2センサ出力は、av,Supine又はau,Supineであってよい。或る例では、センサ出力が、装置の第2軸線及び第3軸線の双方とも測定される。
【0098】
ブロック615では、少なくとも第3センサ出力は、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関して測定される。第2の特定姿勢は、第1の特定姿勢に直交し得る。一例として、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第3セ
ンサ出力は、au,Supineであってよい。別の例では、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第3センサ出力は、aw,Uprightであってよい。
【0099】
ブロック620では、姿勢センサは、装置の方位角を判定することなく、第1センサ出力、第2センサ出力、及び第3センサ出力を用いて、キャリブレーション変換を計算することによってキャリブレーションされる。幾つかの例では、姿勢センサをキャリブレーションする行列の要素が、第1センサ出力、第2センサ出力、及び第3センサ出力を用いて計算される。例えば、要素の成分は、方位角θp、θr、又はθyのいずれも特別に計算することなく、代数の(且つ非三角関数の)式を用いて計算し得る。即ち、
【0100】
【数37】
第1組の行列成分sp、cpは、第1方位角θpに関係し、第1センサ出力au,Uprightを用いて計算される。第2組の行列成分sr、cr、は、第2方位角θrに関係し、第1センサ出力au,Upright(sp、cpから)及び第2センサ出力、即ち、av,Upright又はaw,Uprightの何れかを用いて計算される。第3組の行列成分sy、cyは、第3方位角θyに関係し、第3センサ出力au,Supineを用いて計算される。そして、行列成分sp、cp、sr、cr、sy、及びcyは、キャリブレーション行列Mの行列要素を計算するために用いられる。
【0101】
別の例では、行列要素は、方位角θp’、θr’、又はθy’のいずれも特別に計算することなく、代数方程式、即ち、
【0102】
【数38】
を用いて計算できる。
ブロック625では、キャリブレーションは、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定するために用い得る。幾つかの例では、キャリブレーション行列が、姿勢を判定
するために用いられる。幾つかの例では、姿勢センサの出力は、1つ又は複数のしきい値と比較され、対象の姿勢又は概略の姿勢を判定する。
【0103】
姿勢センサが、軸線が身体軸線と整合(配置)している多次元姿勢センサである場合に、姿勢センサの出力は、対象が直立姿勢である時に、身体座標において[auavaw]=[100]であり、また、対象が仰臥姿勢である時に、[auavaw]=[001]である。しかしながら、装置座標が身体座標と異なる場合に、出力は、これらの値と異なる。
【0104】
多次元姿勢センサの出力は、ベクトル(例えば、gベクトル)としてとらえることができる。装置座標から身体座標にセンサ出力を変換するには、センサ出力、即ち、gベクトルにキャリブレーション行列を乗算する。例えば、au、av、awが、装置座標での多次元センサの3つの直交する軸線の各々に関するセンサ出力であり、Mがキャリブレーション行列である場合に、
【0105】
【数39】
上式において、ax、ay、azは、対応するセンサ測定値、即ち、身体座標系におけるgベクトルである。転換後の又は変換後のセンサ出力ax、ay、azは、特定の(例えば、医療機器にプログラム設定された)しきい値と比較され、姿勢が判定される。
【0106】
幾つかの例では、1つ又は複数の角度が、変換後のセンサ出力から計算される。計算された角度は、特定のしきい値角度と比較され、患者姿勢が判定される。キャリブレーションされた多次元姿勢センサから患者姿勢を判定するための方法は、2005年11月18日に出願された、米国特許公開第US2007/0118056号、「姿勢感知器キャリブレーション及び使用方法」、ワン(Wang)らによるに見出すことができ、これは、その全体を本明細書に参照することによって本願に組み込む。
非直交キャリブレーション操作
時として、互いに直交する姿勢を用いなければならないことが、望ましくないことがある。幾つかの状況では、例えば、患者が座位呼吸をしており、横になることが困難な場合に、完全な横臥又は仰臥姿勢に患者を置くことは勧められないことがある。このことは、センサのキャリブレーションの実施を難しくすることがある。幾つかの状況では、患者が、完全に直立した状態で、完全に静止したままでいることは難しいことがある。このことは、キャリブレーションの不正確さに至ることがある。従って、キャリブレーションのために2つの互いに直交する姿勢を必要としないキャリブレーション行列の要素の成分に対する式があることが望ましい。
【0107】
ヨー角(Y)係数の他の計算
キャリブレーション操作に、患者が最初に直立姿勢であり、次に仰臥姿勢であることが含まれる例の場合に、同じ式が、ピッチ及びロール成分sp、cp、sy、及びcrに用いられ、異なる式が、ヨー成分sy及びcyに用いられるが、これによって、患者は、直立姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない第2姿勢とすることができる。
簡略化した表記で式(3)を書き直すと、下式になる。即ち、
【0108】
【数40】
行列Mの逆行列(M−1)は、装置座標から身体座標に回転して戻すために計算される。行列の積の逆行列は、逆の順番での(左から右への)それらの行列の逆行列の積である。更に、「s」及び「c」値の使用は、一致していることから、個々の回転行列は、ユニタリ行列であり、回転行列の逆行列は、それらの行列の転置行列に等しい。従って、身体座標から装置座標への完全な回転には、以下を伴う。
【0109】
【数41】
[auavaw]Tにおける最初の2回(最右端)の回転又は変換によって、次のようになる。
【0110】
【数42】
この座標系では、z’軸は、身体の上下(z)軸と整合され、次になすべきことは、z’軸を中心にして回転して、それぞれx’及びy’軸をx及びy軸と整合させることだけである。患者が、まっすぐに後ろにもたれる(例えば、どちら側にも傾斜しないが、必ずしも完全な仰臥姿勢とは限らない)場合に、z’軸に対し垂直な重力ベクトルの投影が生じ、これは、(x’,y’)平面内にある。
【0111】
図7は、(x’,y’)平面内にあるg力の成分を半径rとして図示する。ヨー成分sy及びcyは、次のように、x’及びy’成分から算出できることが、図の三角形から分かる。即ち、
【0112】
【数43】
sy及びcyを計算するために、仰臥姿勢に関する姿勢センサの出力au,Supine、av,Supine、aw,Supineには、上記式の回転行列が乗算されて、a
x’、ay’、及びaz’が得られる。そして、変換後の出力ax’、ay’、及びaz’は、sy及びcyを計算するために用いられる。前のキャリブレーション方法では、au,Supineは、既に測定されていることに留意されたい。従って、このキャリブレーション方法では、av,Supine及びaw,Supineの2つだけの追加の測定値が必要である。
【0113】
R’角度係数の他の計算
患者をまず仰臥姿勢に置き、次に直立姿勢に置くことによってキャリブレーションすることが望まれる場合に、同じ式が、ヨー及びピッチ成分sy、cy、sp、及びcpに用いられ、異なる式が、ロール成分sr及びcrに用いられるが、これによって、患者は、仰臥姿勢より直立姿勢であるが、完全な直立姿勢でない第2姿勢となることができる。
簡略化した表記で式(16)を書き直すと、下式になる。即ち、
【0114】
【数44】
逆行列M−1は、装置座標から身体座標に回転して戻すために計算される。前と同様に、行列の積の逆行列は、逆の順番での(左から右への)それらの行列の逆行列の積であることから、また、回転行列の逆行列は、それらの行列の転置行列に等しいことから、身体座標から装置座標への回転には、以下を伴う。
【0115】
【数45】
[auavaw]Tにおける最初の2回(最右端)の回転によって、次のようになる。
【0116】
【数46】
今回は、x’軸は、身体の前後(x)軸と整合され、次になすべきことは、x’軸を中心にして回転して、それぞれy’及びz’軸をy及びz軸と整合させることだけである。患者がほぼ直立姿勢である(例えば、どちら側にも傾斜しないが、必ずしも完全に直立姿勢とは限らない)場合に、x’(x)軸に対し垂直な重力ベクトルの投影が生じ、これは、(y’,z’)平面内にある。
【0117】
図8は、(y’,z’)平面内にあるg力の成分を半径rとして図示する。ヨー成分sr及びcrは、次のように、x’及びz’成分から算出できることが、図の三角形から分かる。即ち、
【0118】
【数47】
sr及びcrを計算するために、仰臥姿勢に関する姿勢センサの出力au,Upright、av,Upright、aw,Uprightには、上記式の回転行列が乗算されて、ax’、ay’、及びaz’が得られる。そして、変換後の出力ax’、ay’、及びaz’は、sr及びcrを計算するために用いられる。他のヨー角の例では、このキャリブレーション方法では、av,Upright及びaw,Uprightの2つの追加の測定値が必要である。
【0119】
図9は、多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を判定する他の方法900のフロー図である。図6の方法600と同様に、ブロック905では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力が測定される。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、直立姿勢であり、第1センサ出力は、au,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、仰臥姿勢であり、第1センサ出力は、aw,Supineであってよい。他の(例えば、自分の側部を下にして横たわる)姿勢を第1姿勢に用いることができる。
【0120】
ブロック910では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力が、測定される。幾つかの例では、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第2センサ出力は、av,Upright又はaw,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第2センサ出力は、av,Supine又はau,Supineであってよい。或る例では、センサ出力が、装置の第2軸線及び第3軸線の双方とも測定される。
【0121】
ブロック915では、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、第3センサ出力が、装置の第1軸線に関して測定される。第2の特定姿勢は、第1の特定姿勢と非直交である。一例として、第1姿勢は、直立姿勢であってよく、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第2の特定姿勢は、第1姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でなく、第3センサ出力は、au,lessthanSupine(仰臥姿勢未満)であってよい。別の例では、第1の特定姿勢は、仰臥姿勢であってよく、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第2姿勢は、第1姿勢より直立姿勢であるが完全な直立姿勢でなく、第3センサ出力は、aw,lessthanUpright(直立姿勢未満)であってよい。
【0122】
ブロック920では、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線に関する第4センサ出力が測定される。幾つかの例では、第4センサ出力は、av,lessthanSupine(仰臥姿勢未満)であってよい。幾つかの例では、第4センサ出力は、av,lessthanUpright(直立姿勢未満)であってよい。
【0123】
ブロック925では、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第3軸線に関する第5センサ出力が測定される。幾つかの例では、第5センサ出力は、aw,lessthanSupine(仰臥姿勢未満)であってよい。幾つかの例では、第5センサ出力
は、au,lessthanUpright(直立姿勢未満)であってよい。
【0124】
ブロック930では、第1方位角に関連する第1座標変換が計算され、ブロック935では、第2方位角に関連する第2座標変換が、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて計算される。幾つかの例では、第1座標変換及び第2座標変換には、式(30)又は(34)の[auavaw]Tにおける2つの(最右端の)回転が含まれる。
【0125】
ブロック940では、変換後の第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力が、第1座標変換及び第2座標変換を用いて生成される。幾つかの例では、変換後のセンサ出力ax’、ay’、及びaz’が、式(31)又は式(35)の回転を用いて、センサ出力au,av,awから生成される。
【0126】
ブロック945では、キャリブレーション行列の要素が、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いて計算される。幾つかの例では、第1姿勢操作は、直立姿勢であり、第2操作は、完全な仰臥姿勢でなく、キャリブレーション行列の要素は、式(26)を用いてsp、cp、sr、及びcrを用いて計算され、また、式(32)を用いてsy、cyを用いて計算される。幾つかの例では、第1姿勢操作は、仰臥姿勢であり、第2操作は、完全な直立姿勢でなく、キャリブレーション行列の要素が、式(27)を用いてsp、cp、sr、及びcrを用いて計算され、また、式(36)を用いてsy、cyを用いて計算される。ブロック950では、キャリブレーション行列は、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定するために用い得る。
【0127】
図10は、多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定できる装置1000の一部の例のブロック図である。幾つかの例では、装置は、埋込型医療機器であってよく、また、幾つかの例では、装置1000は、装着型医療機器であってよい。多次元姿勢センサ1005は、地球の重力場に対する装置1000のそれぞれ非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供する。幾つかの例において、姿勢センサ1005は、装置1000の非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の各々に関する出力を提供する。装置1000には、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又は他の種類のプロセッサ等のプロセッサ1010が含まれる。或る例では、プロセッサ1010は、特定用途向け集積回路(ASIC)であってよい。
【0128】
プロセッサ1010は、姿勢センサ1005に通信可能に結合し得る。この通信結合によって、プロセッサ1010は、回路が介在し得るが、姿勢センサ1005との間で信号を送信及び/又は受信できる。プロセッサ1010には、本明細書に述べた機能を実施する回路が含まれる。回路は、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェア、又はハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアの任意の組合せであってよい。或る例において、プロセッサ1010は、ソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアにおいて具現化された命令を実行する。或る例において、プロセッサ1010には、ハードウェアによって実装される論理機能を順次処理するシーケンサが含まれる。1つの回路が、1つ又は複数の機能を実行してよい。
【0129】
プロセッサ1010には、キャリブレーション回路1015及び姿勢回路1020が含まれる。幾つかの例によれば、キャリブレーション回路1015及び姿勢回路1020は、図6に関して述べた何れかの方法を実行するように構成される。幾つかの例では、キャリブレーション回路1015は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力を測定し、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力を測定し、また、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第3センサ出力を測定する。
【0130】
或る例において、第1姿勢は、直立姿勢であってよく、第2姿勢は、仰臥姿勢であってよい。装置の第1軸線は、図4の装置の「u」軸線であってよく、装置の第2軸線及び第3軸線は、装置の「v」及び「w」軸線であってよい。或る例において、第1姿勢は、仰臥姿勢であり、第2姿勢は、直立姿勢である。装置の第1軸線は、図4の装置の「w」軸線であってよく、装置の第2軸線及び第3軸線は、装置の「u」及び「v」軸線であってよい。
【0131】
キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いて、キャリブレーション変換を計算することによって、姿勢センサ1005を計算する。幾つかの例では、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力、第2センサ出力、及び第3センサ出力を用いて、姿勢センサ1005をキャリブレーションするために用いられる行列の要素を計算する。式(26)及び(27)に関連して前述したように、キャリブレーション回路1015は、装置の方位角を判定することなく、また、三角関数を用いることなく、要素を計算することが可能である。キャリブレーション後、姿勢回路1020は、姿勢センサ1005を用いて、対象の後続の姿勢を判定する。
【0132】
幾つかの例によれば、キャリブレーション回路1015及び姿勢回路1020は、図9に関して述べた何れかの方法を実施するように構成される。前と同様に、キャリブレーション回路1015は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力を測定し、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力を測定し、また、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第3センサ出力を測定する。
【0133】
2つの特定姿勢は、非直交であってよい。或る例では、第1姿勢は、直立姿勢であってよく、第2姿勢は、直立姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない姿勢であってよい。或る例において、第1姿勢は、仰臥姿勢であってよく、第2姿勢は、仰臥姿勢より直立姿勢であるが完全な直立姿勢でない姿勢であってよい。
【0134】
最初の3つの測定値に加えて、キャリブレーション回路は、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線に関する第4センサ出力を測定し、また、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第3軸線に関する第5センサ出力を測定する。そして、キャリブレーション回路1015は、座標変換を実施して、第2の特定姿勢に関する変換後のセンサ出力を生成する。
【0135】
幾つかの例では、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力を用いて、第1方位角に関連する第1座標変換を計算し、また、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2方位角に関連する第2座標変換を計算する。或る例では、変換は、第1回転行列及び第2回転行列を用いて実施される。変換後のセンサ出力は、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算することによって生成される。例は、式(31)及び(35)に関して前述した。或る例では、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算し、また、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算する。
【0136】
そして、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、また、変換後のセンサ出力を用いて、キャリブレーション行列の要素を計算する。幾つかの例では、キャリブレーション回路は、行列成分(又は係数)sp、cp、sr、cr、sy、及びcyを用いて行列要素を計算する。第1組の行列成分sp及びcpは、第1方位角(例えば、θp又はθp’)に関連付けられ、第1センサ出力を用いて、例えば、式(26)又は式(27)によって計算される。
【0137】
どの組の姿勢かに依存して、従って、どの組の式が用いられるかに依存して、第2組の行列成分は、第2方位角(例えば、それぞれθr又はθy’)に関連するsr及びcr、又はsy及びcyの何れかであり得る。第2組の行列成分は、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、例えば、式(26)又は(27)によって計算される。尚、式は、第2センサ出力としてどのセンサ測定値を用いるかについての選択肢があることを示す。理論的には、いずれの選択でも同じ結果を生成するはずであるが、実際には、患者操作の不正確さ又は操作時の測定値のノイズにより、一方の選択の方が望ましいことがある。
【0138】
第3組の行列成分は、第2方位角(例えば、それぞれθy又はθr’)に関連するsy及びcy又はsr及びcrの何れかであり得る。第3組の成分は、変換後のセンサ出力を用いて、例えば、式(32)又は(36)によって計算される。そして、第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分sp、cp、sr、cr、sy、及びcyは、キャリブレーション行列Mの行列要素、例えば、式(9)及び(11)又は式(22)及び(24)の行列要素を計算するために用いられる。尚、行列成分、従って、行列要素は、結果的に生じる代数方程式を用いて計算され、また、装置1000のいずれの方位角も判定することなく又は三角関数を用いることもなく計算される。これにより、プロセッサ1010が必要とする処理能力の量を低減できる。
【0139】
幾つかの例によれば、姿勢回路1020は、姿勢センサ1005の3つの非平行軸線の各々各に関するセンサ出力(例えば、DC応答性の電圧レベル)を受信し、センサ出力と特定のセンサ出力しきい値と比較して、対象の姿勢を判定する。キャリブレーション回路1015は、計算後のキャリブレーション行列の要素を用いて、特定のセンサ出力しきい値を調整する。
【0140】
幾つかの例では、姿勢回路1020は、下式を計算することによって、対象姿勢を判定する。即ち、
【0141】
【数48】
上式において、M−1は、キャリブレーション回路によって判定されたキャリブレーション行列の逆行列であり、au、av、awは、多次元センサの3つの直交する軸線の各々に関するセンサ出力であり、ax、ay、azは、身体座標系における対応する測定値又は値である。姿勢回路1020は、身体座標測定値と特定のしきい値とを比較して、対象の姿勢を判定する。
【0142】
幾つかの例によれば、プロセッサ1010には、対象の姿勢のトレンドを捉えるトレンド回路1025が含まれる。装置1000は、少なくとも部分的にトレンドに基づき、対象の心臓疾患の進行の兆候を提供する。例えば、患者は、心臓疾患の進行により、時間と共により直立の安静位置を取る可能性がある。プロセッサ1010は、疾患の進行についてユーザ又はプロセス(例えば、外部プログラマにおいて又はリモートシステムにおいて実行するプロセス)への兆候(例えば、警告又は警報)の送信を開始できる。
【0143】
幾つかの例では、装置1000には、プロセッサ1010に通信可能に結合された呼吸
センサ1030が含まれる。呼吸センサの例は、わずかな呼吸容量又は1回呼吸量を測定するために用いられる経胸腔インピーダンスセンサである。経胸腔インピーダンスを測定する方法が、1998年2月27日に出願された、米国特許第6,076,015号、「経胸腔インピーダンスを用いた拍数適応可能な心律動管理装置」、ハートトレイ(Hartley)らによるに記載されており、これは、その全体を本明細書に参照することによって本願に組み込む。呼吸センサは、対象の呼吸を表す信号を提供する。プロセッサ1010は、呼吸信号を用いて、対象の1回呼吸量を計算する。トレンド回路1025は、対象の判定された姿勢に基づき、対象の1回呼吸量のトレンドを捉える。
【0144】
幾つかの例では、装置1000には、プロセッサ1010に通信可能にに結合された動脈圧力センサ1035が含まれる。動脈圧力センサの例には、肺動脈(PA)圧力センサが含まれる。PA圧力には、右心室から流出し肺動脈弁を介して肺に向かう血液による肺動脈内の圧力が含まれる。幾つかの例では、動脈圧力センサは、対象のPA圧力を表す信号を提供する。トレンド回路1025は、対象の判定された姿勢に基づき、対象のPA圧力のトレンドを捉える。幾つかの例では、プロセッサ1010は、圧力信号を用いて、低血圧又は高血圧の症状を感知する。トレンド回路1025は、対象の判定された姿勢に基づき、低血圧又は高血圧の症状のトレンドを捉える。
【0145】
埋込型又は装着型医療機器における姿勢感知によって、心不全患者の監視を改善できる。姿勢センサを適切にキャリブレーションすると、患者の解剖学的構造や装置移動によるセンサの方位のバラツキが除去される。
【0146】
補足事項
上記詳細な説明には、詳細な説明の一部を構成する添付図面に対する参照が含まれる。図面は、例証として、本発明を実践し得る特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、本明細書では、「例」とも称する。本文書において参照する全ての公報、特許、及び特許文書は、あたかも個別に引用・参照するかのように、それら全体を本明細書に引用・参照する。本文書とそのように引用・参照されたそれらの文書との間で整合性のない用法が生じた場合に、引用した参照の用法は、本文書の用法に対する補足であると見なし、相入れない不一致が生じた場合に、本文書の用法が優先する。
【0147】
本文書では、用語「a」又は「an」(不定冠詞)は、特許文書において通例なように、何れか他の例又は「少なくとも1つの」若しくは「1つ又は複数の」の用法とは無関係に、1つ又は2つ以上を含むように用いる。本文書では、用語「or(又は/若しくは)」は、非排他を指すために用い、これにより、「A又はB」には、他に規定されない限り、「AだがBではない」、「BだがAではない」、並びに「A及びB」が含まれる。添付の請求項では、用語「including」及び「in_which」は、それぞれの用語「comprising」及び「wherein」の平易な英語の等価物として用いる。また、後続の請求項では、用語「含む(including)」及び「から構成される(comprising)」は、オープンエンドである。即ち、請求項において、そのような用語の後に列挙されたもの以外の要素を含むシステム、装置、物品、又はプロセスが、その請求項の範囲内に依然として入るものとみなす。更に、後続の請求項において、用語「第1の」、「第2の」、及び「第3の」等は、単に標識として用いるものであり、それらの目的語に数値的な要件を課すことを意図していない。
【0148】
本明細書に述べた方法例は、少なくとも部分的に機械又はコンピュータにより実行し得る。幾つかの例には、上記例で述べた如く方法を実行するように電子装置が構成されるように動作可能な命令で符号化されたコンピュータ判読可能媒体又は機械読み取り可能な媒体を含み得る。そのような方法の実施例には、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コード等のコードを含み得る。そのようなコードには、様々な方法を実施する
ためのコンピュータ判読可能命令を含み得る。コードは、コンピュータ・プログラム・プロダクトの一部を形成し得る。更に、コードは、実体のあるものとして、実行時又は他の時に、1つ又は複数の揮発性又は不揮発性コンピュータ判読可能媒体上に記憶することができる。これらのコンピュータ判読可能媒体としては、これらに限定するものではないが、ハードディスク、着脱可能な磁気ディスク、着脱可能な光ディスク(例えば、コンパクト・ディスク及びデジタル・ビデオ・ディスク)、磁気カセット、メモリカード又はスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)等が挙げられる。
【0149】
上記説明は、例示であることを意図しており、限定的であることを意図していない。例えば、上述した例(又はそれらの1つ又は複数の態様)は、互いに組み合わせて用いてもよい。他の実施形態は、上記説明を精査する際、例えば、当業者が用いてよい。要約書は、37C.F.R.§1.72(b)に準拠するために提供し、これにより、読者が技術的開示の性質を素早く確認できるようにするものである。それは、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために用いられないという理解の下で提出されている。更に、上記詳細な説明では、様々な特徴をグループ化して、本開示を簡素化していることがある。このことは、権利が主張されていない開示された特徴が、何れかの請求項に対して本質的であることを意図すると解釈すべきではない。むしろ、本発明の内容は、特定の開示された実施形態の全ての特徴より少ない特徴に見出される。従って、以下の請求項は、本明細書によって詳細な説明に引用されており、各請求項は別個の実施形態としてそれ自体に依拠している。本発明の範囲は、添付の請求項を参照して、そのような請求項が権利を与えられる等価物の全範囲と共に決定されるべきものである。
【技術分野】
【0001】
本願は、姿勢キャリブレーション行列を構成するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器には、患者に埋め込むように構成された装置がある。これら埋込型医療機器(IMD)の幾つかの例としては、例えば、埋込型ペースメーカ、植え込み型除細動器(ICD)、心臓再同期療法装置(CRT)、及びそのような機能の組合せを含む装置等の心臓機能管理(CFM)装置が挙げられる。これらの装置は、電気的な若しくは他の療法を用いて患者若しくは被験者を処置するために、又は患者の状態の体内監視を通して患者の診断について医師若しくは介護者を支援するために用い得る。これらの装置には、患者内で心臓の電気的な活動を監視する1つ又は複数のセンス増幅器と通信を行う1つ又は複数の電極を含むことがあり、また、1つ又は複数の患者の他の内部パラメータを監視する1つ又は複数のセンサが含まれることが多い。IMDの他の例としては、埋込型診断装置、埋込型薬物送達システム、又は神経刺激機能を備えた埋込型装置が挙げられる。
【0003】
医療機器としては、更に、装着型除細動器(WCD)等の装着型医療機器(WMD)が挙げられる。WCDは、表面電極を含むモニタである。この表面電極は、表面心電図(ECG)の監視並びに電気除細動器及び除細動器ショック療法の送達の一方又は両方を提供するように構成される。
【0004】
IMDには、患者の様々の生理学的な態様を監視する1つ又は複数のセンサが含まれるものもある。患者の姿勢を感知すると、患者の状態又は疾患に関連する情報を提供することができる。例えば、うっ血性心不全(CHF)の患者は、状態が悪化すると、上向き位置で眠る傾向がある。患者の姿勢情報は、患者監視の他の態様においても有用なことがある。例えば、医療機器によって取得される測定値は、患者の姿勢と共に変わることがある。測定中の患者の姿勢の情報は、装置の測定値を解釈する際、介護者にとって有用であり得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この文書は、一般的に、患者又は被験者の姿勢を判定するためのシステム、装置、及び方法に関する。特に、姿勢感知装置を搭載又は埋め込むことに起因する変動方位の姿勢感知装置をキャリブレーションするシステム、装置、及び方法に関する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
概要
例1に含み得る装置には、地球の重力場に対する装置のそれぞれ非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供するように構成された多次元姿勢センサと、キャリブレーション回路及び姿勢回路を含むプロセッサと、が含まれる。キャリブレーション回路は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定し、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定し、第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算し、この座標変換を用いて第2姿勢に関するセンサ出力を変換し、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって、姿勢センサをキャリブレーションするように構成し得る。姿勢回路は、姿勢センサを用いて対象の後続の姿勢を判定するように構成し得
る。
【0007】
例2では、例1の内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、第1センサ出力を用いて第1方位角に関連する第1座標変換を計算し、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連する第2座標変換を計算し、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線それぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測定し、第1座標変換及び第2座標変換を用いて第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換するように構成される。
【0008】
例3では、例1又は2の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算し、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算し、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算してセンサ出力を変換するように構成される。
【0009】
例4では、例1乃至3の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、キャリブレーション行列の要素を計算することによってキャリブレーション変換を計算するように構成される。
【0010】
例5では、例1乃至4の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、第1センサ出力と、第2センサ出力及び第3センサ出力の内の一方とを用いて、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、変換後のセンサ出力を用いて第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算し、第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いてキャリブレーション行列の要素を計算するように構成される。
【0011】
例6では、例1乃至5の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、ピッチ角に対応する第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、ロール角に対応する第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、ヨー角に対応する第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算するように構成される。
【0012】
例7では、例1乃至6の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション回路は、ピッチ角に対応する第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、ロール角に対応する第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、ロール角に対応する第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算するように構成される。
【0013】
例8では、請求項1乃至7の何れか1つに記載の内容にオプションとして含み得る姿勢回路は、姿勢センサの3つの非平行な軸線の各々に関するセンサ出力を受信し、キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を変換し、変換後のセンサ出力を特定のしきい値と比較して、対象の姿勢を判定するように構成される。
【0014】
例9では、例1乃至8の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第2姿勢は、第1姿勢に対して非直交となる姿勢である。
例10では、例1乃至9の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1姿勢は、直立姿勢であり、また、オプションとして含み得る第2姿勢は、第1姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない。
【0015】
例11では、例1乃至10の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1姿勢は、仰臥姿勢であり、また、オプションとして含み得る第2姿勢は、第1姿勢より直立姿勢
であるが完全な直立姿勢でない。
【0016】
例12に含むか又はそれと組み合わせ得る例1乃至10の何れか1つの内容には、オプションとして次の内容を含み得る。即ち、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定する段階と、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階と、第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階と、この座標変換を用いてセンサ出力を変換する段階と、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いて、キャリブレーション変換を計算することによって姿勢センサのキャリブレーションを行う段階と、を含み得る。キャリブレーションは、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定するために用い得る。
【0017】
例13では、例1乃至12の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階には、オプションとして、第1センサ出力を用いて、第1方位角に関連する第1座標変換を計算する段階と、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2方位角に関連する第2座標変換を計算する段階と、を含むことができ、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階には、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線のそれぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測定する段階が含まれ、また、出力を変換する段階には、第1座標変換及び第2座標変換を用いて、第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階が含まれる。
【0018】
例14では、例1乃至13の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1座標変換を計算する段階には、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算する段階が含まれ、第2座標変換を計算する段階には、オプションとして、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2回転行列の要素を計算する段階が含まれ、また、第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階には、オプションとして、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算して、センサ出力を変換する段階が含まれる。
【0019】
例15では、例1乃至14の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーション変換を計算する段階には、キャリブレーション行列の要素を計算する段階が含まれ、また、キャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、オプションとして、キャリブレーション行列を用いて、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定する段階が含まれる。
【0020】
例16では、例1乃至15の何れか1つの内容にオプションとして含み得るセンサ出力を用いて姿勢センサをキャリブレーションするために行列の要素を計算する段階には、第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階と、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階と、変換後のセンサ出力を用いて、第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階と、第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いて、キャリブレーション行列の要素を計算する段階と、が含まれる。
【0021】
例17では、例1乃至16の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、オプションとして、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、また
、第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、オプションとして、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれる。
【0022】
例18では、例1乃至17の何れか1つの内容にオプションとして含み得る第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、オプションとして、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、また、第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれる。
【0023】
例19では、例1乃至18の何れか1つの内容にオプションとして含み得る対象が第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階には、オプションとして、対象が、第1の特定姿勢に対して非直交である第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階が含まれる。
【0024】
例20では、例1乃至19の何れか1つの内容にオプションとして含み得るキャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、オプションとして、多次元センサの3つの直交する軸線の各々に関するセンサ出力を受信する段階と、キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を身体の座標値に変換する段階と、センサ出力を特定のしきい値と比較して姿勢を判定する段階と、が含まれる。
【0025】
この節は、本特許出願の内容の概要を提供するものである。本発明の排他的又は網羅的な説明を提供しようとするものではない。詳細な説明は、本特許出願に関する更なる情報を提供するために含まれている。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】IMDを含むシステムの一部の例の説明図。
【図2】IMDを用いる別のシステムの一部の説明図。
【図3A】患者の身体の座標系を示す図。
【図3B】患者の身体の座標系を示す図。
【図4】身体座標に対して斜めに向いた装置座標を示す図。
【図5】テイト・ブライアン(Tait−Bryan)ヨー角、ピッチ角、及びロール角を示し、また、これらを如何に用いれば、身体座標回転に対して装置座標系を記述できるかを示す図。
【図6】多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定する方法のフロー図。
【図7】装置座標から身体座標への変換を視覚化するために(x’,y’)平面におけるg力の成分を示す図。
【図8】装置座標から身体座標への変換を視覚化するために、(y’,z’)平面におけるg力の成分を示す図。
【図9】多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定する他の方法のフロー図。
【図10】多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定することが可能な装置の一部の例のブロック図。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図面では、必ずしも縮尺通りに描かれているとは限らないが、同様な数字は、異なる図において同様な構成要素を示す。異なる文字接尾辞を有する同様な数字は、同様な構成要素の異なる例を表す。図面は、一般に、制限するためではなく、一例として本文書で議論される様々な例を示す。
【0028】
医療機器(例えば、IMD又はWMD)には、本明細書に述べる特徴、構造、方法又はその組合せの1つ又は複数を含み得る。例えば、心臓モニタ又は心臓刺激器は、後述する有益な特徴又はプロセスの1つ又は複数を含むように実現し得る。そのようなモニタ、刺激器、又は他の埋込型の若しくは部分的埋込型の装置は、本明細書に記載される全ての特徴を含む必要はないが、独特の構造や機能を提供する選択された特徴を含むように実現できることが意図されている。そのような装置は、様々な治療又は診断機能を提供するように実現し得る。
【0029】
医療機器による姿勢感知によって、患者監視を改善できる。姿勢センサの例としては、多軸加速度計及び傾斜スイッチが挙げられる。姿勢センサを備えると、医療機器は、患者が直立姿勢、仰臥姿勢、腹臥姿勢、自分の左又は右側部を下にしているかどうか、あるいは、患者が傾斜姿勢かどうかを感知し得る。心不全の患者の場合に、姿勢感知によって、座位呼吸(例えば、胴部を直立した立位又は座位での直立姿勢における場合にのみ、患者が呼吸を容易にできる状態)を監視し得る。姿勢感知によって、発作性夜間呼吸困難(PND)(患者を眠りから目を覚まさせる息苦しい、即ち、困難な呼吸を含む状態)も監視し得る。
【0030】
姿勢感知は、更に、患者の心活動を監視するために用いられる他のセンサの用途を改善できる。例えば、心音は、患者の無意識な心活動と関連付けられる。心音の振幅は、心臓病だけでなく患者姿勢と共に変わり得る。患者姿勢の情報は、患者の心音の監視を改善できる。別の例において、肺動脈(PA)圧は、患者の心臓疾患を監視するのに有用であるが、患者姿勢と共に変化する。患者姿勢情報は、PA圧変動が姿勢によるものか又は疾患によるものか判断することによって、PA圧の監視を改善できる。
【0031】
医療機器の方位は、患者毎に変動し得る。これにより、医療機器による患者姿勢の自動的な判断が複雑になる。例えば、埋込型装置の場合に、身体におけるIMDの方位は、不明である。生理機能は患者間で変動することから、ペースメーカは、患者の胸部の角度差異により、患者毎に方位が異なり得る。更に、IMDは、装置の稼働期間中、なんらかの回転や他の移動を受ける可能性がある。姿勢センサのキャリブレーションによって、身体内におけるIMDの不明の角度やWMDの変化する角度を補償する。
【0032】
図1は、IMD110又は他の歩行用医療機器を用いるシステム100の一部の説明図である。IMD110の例としては、制限するものでは無いが、ペースメーカ、除細動器、心臓再同期療法(CRT)装置、又はそのような装置の組合せが挙げられる。システム100には、更に、通常、例えば、無線周波数(RF)又は他の遠隔計測信号を用いることによって、IMD110と無線信号190の通信を行うIMDプログラマ又は他の外部装置170が含まれる。
【0033】
IMD110は、1つ又は複数のリード108A乃至Cによって心臓110に結合される。心臓リード108A乃至Cには、IMD110に結合される基端部と、先端部と、が含まれ、電気接点又は「電極」によって心臓105の1つ又は複数の部位に結合される。電極は、通常、電気的除細動、除細動、ペーシング、又は再同期療法、又はその組合せを心臓105の少なくとも1つの室(又は房)に送達する。電極は、電気的な心臓の信号を感知するセンス増幅器に電気的に結合し得る。
【0034】
心臓105には、右心房100A、左心房100B、右心室105A、左心室105B、及び右心房100Aから延在する冠状静脈洞120が含まれる。右心房(RA)リード108Aには、心房100Aへの信号を感知するために、又は心房100Aにペーシング療法を送達するために、又はその双方のために、心臓105の心房100Aに配置された
電極(環状電極125及び先端電極130等の電気接点)が含まれる。
【0035】
右心室(RV)リード108Bには、信号を感知するための、ペーシング療法を送達するための、又は信号を感知しペーシング療法を送達する双方のための1つ又は複数の電極、例えば、先端電極135及び環状電極140が含まれる。リード108Bには、オプションとして、追加の電極、例えば、心房電気的除細動、心房除細動、心室電気的除細動、心室除細動、又はそれらの組合せを心臓105に送達するためのものも含まれる。そのような電極は、通常、除細動に関与する大きなエネルギを取り扱うために、ペーシング電極より大きな表面積を有する。リード108Bは、オプションとして、心臓105に再同期療法を提供する。再同期療法は、通常、心室間の脱分極のタイミングの同期化を改善するために心室に送達される。
【0036】
IMD110には、ヘッダ155を介してIMD110に取り付けられた第3心臓リード108Cを含み得る。第3心臓リード108Cには、冠状静脈内に置かれ、その冠状静脈を介して心外膜上で左心室(LV)105Bに接して位置する環状電極160及び165が含まれる。第3心臓リード108Cには、冠状静脈洞(CS)120付近に置かれた環状電極185を含み得る。
【0037】
リード108Bには、先端及び環状電極135、140に対して基端側に位置し右心室内に配置された第1除細動コイル電極175と、第1除細動コイル175、先端電極135、及び環状電極140に対して基端側に位置し上大静脈(SVC)内に配置された第2除細動コイル電極180と、を含み得る。幾つかの例では、高エネルギ・ショック療法が、第1又はRVコイル175から第2又はSVCコイル180に送達される。幾つかの例では、SVCコイル180は、気密封止されたIMD筐体又は缶150上に形成された電極に電気的に結合される。これにより、RVコイル175から心室心筋層を介して送達する電流を均一化することによって除細動が改善される。幾つかの例では、この療法は、RVコイル175からIMD缶150上に形成された電極のみに送達される。
【0038】
尚、特定の構成のリードや電極を図に示すが、本方法及びシステムは、様々な構成及び様々な電極で機能する。他の形態の電極には、心臓105の部位に貼り付け可能な、又は、身体の他の領域に埋め込んで、IMD110によって生成された電流の「誘導」を支援できるメッシュやパッチが含まれる。
【0039】
IMDは、経静脈、心内膜、及び心外膜電極(即ち、胸腔内電極)、及び/又は缶、ヘッダ、及び基準電極等の皮下非胸腔内電極、及び皮下アレイ又はリード電極(即ち、非胸腔内電極)といった様々な電極配列として構成することができる。
【0040】
図2は、IMD210を用いて、患者202に療法を提供する別のシステム200の一部の説明図である。システム200には、通常、ネットワーク294を介してリモートシステム296と通信を行う外部装置270が含まれる。ネットワーク294は、電話ネットワーク又はコンピュータネットワーク(例えば、インターネット)等の通信ネットワークであってよい。幾つかの例では、外部装置には、中継器が含まれ、有線又は無線のいずれでも良いリンク292を用いてネットワークを介して通信を行う。幾つかの例では、リモートシステム296は、患者管理機能を提供し、その機能を実施する1つ又は複数のサーバ298を含み得る。
【0041】
図3は、患者の身体の座標系を示す。身体座標系は、x軸、y軸、及びz軸を用いて、前後方向、左右方向、及び上下方向をそれぞれ記述する。図3は、更に、図示するように、u軸、v軸、及びw軸を用いて装置座標系を示す。装置300の望ましい方位は、装置軸線が身体軸線(例えば、u←→x、v←→y、w←→z)に一致するように冠状面内に
あってよい。しかしながら、装置方位は、通常、理想的な方位にはない。
【0042】
図4は、装置座標が身体座標に対して斜めに向いた更に典型的な場合を示す。上述したように、このことは、患者の解剖学的構造による又は埋め込まれた若しくは装着された医療機器400の移動によるものである可能性がある。姿勢感知を用いる医療機器によって実行されるアルゴリズムが装置方位を修正し得るように、キャリブレーション手順を用いて装置方位を判定するか又は装置座標を身体座標に変換する。
【0043】
キャリブレーション手順は、キャリブレーション行列の要素を決定する段階を伴う。一旦、キャリブレーション行列が決定されると、医療機器のアルゴリズムは、患者の姿勢を、例えば、姿勢センサの出力又は複数の出力にキャリブレーション行列を乗算して、身体座標に合わせてキャリブレーションされた出力を生成することによって決定し得る。キャリブレーションされた出力は、特定のしきい値と比較して姿勢を判定する。
【0044】
幾つかの例では、三次元DC加速度計を姿勢センサに用いる。加速度計は、3つの互いに直交する軸線の各々に関するDC応答出力を提供する。キャリブレーション行列の要素を決定するために、座標回転を行う。テイト・ブライアン(Tait−Bryan)角度を用いて、任意の座標回転を定義することができる。
【0045】
座標変換
図5は、テイト・ブライアンのヨー角度、ピッチ角度、及びロール角度を示し、また、それらの角度を用いて、例えば、胸部に埋め込んだCFM装置の場合に、如何にして装置座標系から身体座標への回転又は変換を記述できるかを示す。身体上での装置の任意の座標回転は、3回の連続した回転によって決定できる。第1の回転は、患者が直立している場合に、上下方向(z)の身体軸線又は垂直の軸線を中心に可能である。図5において、この角度は、θyとして示されるヨー角であってよいことが分かる。
【0046】
装置が身体にヨー角θyで搭載される場合に、元々身体座標で表わした任意のベクトルaは、回転座標系で下式のように表わすことができる
【0047】
【数1】
上式において、a’は、z軸を中心にして角度θyだけ回転座標系で表わしたベクトルを示す。
この第1の回転により、新しい回転したy軸であるy’が生じる。第2の回転は、このy’軸線を中心とし、ピッチ角と称し得る角度θpだけ回転する。即ち、
【0048】
【数2】
上式において、a’’は、z軸を中心にして角度θyだけ回転し、そして、y’軸を中心にしてθpだけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。
これら2回の回転によって、新しい回転したx軸であるx’’が生じる。第3の回転は
、このx’’軸を中心にして、ロール角と称し得る角度θrだけ回転する。即ち、
【0049】
【数3】
上式において、a’’’は、z軸を中心にして角度θyだけ回転し、y’軸を中心にしてθpだけ回転し、そして、x’’軸を中心にして角度θrだけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。等号の右辺の行列は、掛け合わせると下式のようになる。
【0050】
【数4】
又は、
【0051】
【数5】
上式において、aT=[auavaw]Tは、装置の回転された座標系で表わしたベクトルaである。
【0052】
式(4)は、医療機器の姿勢センサに関するキャリブレーション行列Mの要素を計算するために用いることができる。キャリブレーション行列を決定するには、二つの姿勢キャリブレーションを手動で実施する。追加の姿勢(例えば、3つ目の姿勢)を用い得るが、2つの姿勢で充分である。対象は、第1の既知の姿勢を取り、センサデータ(例えば、加速度データ)が、身体に搭載した(例えば、埋め込まれた又は装着した)装置から収集される。そして、対象は、第2姿勢を取り、対象がこの第2姿勢にある状態のときに、センサデータが収集される。2つの姿勢から収集されたセンサデータについて医療機器によって実施された計算は、身体内又は身体上における方位を特定する及び修正するために用い得る。これらの計算は、三角関数の計算を伴う必要がない。非三角関数の計算は、演算を実行するプロセッサ能力に限界がある装置やプロセッサ演算を実行するエネルギに限界がある装置(例えば、バッテリ駆動式の装置)にとっては、有用であり得る。
【0053】
キャリブレーション行列を構成するために、センサデータの直接的な挿入とキャリブレーション回転行列の形式に関する情報との組合せを用いる。対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力が測定される。幾つかの例では、直立姿勢が用いられ、データ[auavaw]Tが、搭載された装置から収集される。直立姿勢の場合に、身体座標における重力ベクトルは、[auavaw]T=[001]Tである。この場合の行列式は、下式の通りである。
【0054】
【数6】
又は
【0055】
【数7】
回転行列Mの成分を次のように示した場合に、
【0056】
【数8】
検証によって、m13=au,Upright、m23=av,Upright、m33=aw,Uprightであり、ここで、au,Uprightは、患者が直立姿勢にある時の装置の「u」軸線からのセンサ出力を意味する。
【0057】
ピッチ角(P)係数
ピッチ角に対応するキャリブレーション行列要素を計算する場合に、m13=au,Upright=sin(θp)であることが行列の形式から分かる。項「au,Upright」は、患者が直立姿勢の状態で、センサによって直接測定することができる。sin(θp)=au,Uprightならば、
【0058】
【数9】
で表わす三角関数の公式を用いて、cos(θp)は、測定量
【0059】
【数10】
から算出することができる。
ロール角(R)係数
このcos(θp)の式は、ロール角に関連するキャリブレーション行列要素を計算するために用い得る。2つの別個の式、即ち、
【0060】
【数11】
、及び
【0061】
【数12】
を用いて、ロール回転を特徴付けることができる。何れかの式を用いて、ロール回転行列成分を計算できる。しかしながら、患者操作の不正確さや操作中の測定値のノイズの一方又は双方によって、その結果は、実際には、同じでないことがある。これらの何れかの式を用いて又はこれらの両方の式を用いて、ロール回転行列成分を計算して、結果の精度を改善することができる。
【0062】
説明を簡単にするために、上記行列中のcos及びsinの表記を次のように変更することができる。
【0063】
【数13】
上式において、例えば、cos(θp)は、cpに等しい。行列の9つの成分は、6つの係数sr,cr,sp,cp及びsy,cyから構成されていることが分かる。また、「s」及び「c」係数又は行列成分は、上述したように互いに関係付けられる。
必要とされる三角関数の関係は、
【0064】
【数14】
のみであり、これによって、行列の成分が代数方程式によって関係付けられる。従って、代数方程式を用いると、「c」項が分かると常に、(符号のあいまいさはあるが)対応する「s」項が分かり、また、逆の場合も同様であり、三角関数で行列の成分を計算する必要はない。具体的には、これらの式は、以下の通りである。
【0065】
【数15】
上式において、下付き文字における追加の「a」及び「b」は、これらが、上述したように、実際には異なる結果を与え得る択一的な2組の計算結果であることを示す。組「a」又は組「b」式の何れかを用いることができる。尚、sr及びcrが余角から計算されるように、sr、crは、同じ組の式から計算すべきである。これによって、回転行列が、ユニタリ行列である(即ち、その逆行列は、その転置行列に等しい)ことが保証される。従って、au,Upright及びav,Uprightを知ることによって、又はau,Upright及びaw,Uprightを知ることによって、6つの係数の内の4つを計算することができる。
【0066】
ヨー角(Y)係数
残りの演算対象は、ヨー回転に関連した2つの係数sy及びcyである。幾つかの例では、この回転を決定するために、患者は、第1姿勢に直交する第2姿勢を取る。例えば、第1位置は、直立姿勢であってよく、第2姿勢は、患者が自分の背中を下にして横たわる仰臥姿勢である。直立姿勢と同様に、仰臥姿勢に関する身体座標での重力ベクトルは[auavaw]T=[100]Tである。これによって下式に至る。即ち、
【0067】
【数16】
又は
【0068】
【数17】
ヨー回転係数の計算の最も単純な組は、
【0069】
【数18】
であり、これもまた、三角関数を用いて計算する必要がない。従って、6つの係数は全て、姿勢センサの出力を用いて計算することができ、従って、キャリブレーション行列Mの9つの要素全てを計算できる。従って、キャリブレーション行列は、回転角度、例えば、
ヨー角、ピッチ角、及びロール角の1つ又は複数を実際に計算することなく計算でき、また、三角関数を計算することなく計算できる。
【0070】
キャリブレーション行列Mを計算する場合に、キャリブレーション行列の逆行列M−1を用いて、装置座標の姿勢センサ出力を身体座標の姿勢センサ出力に、例えば、
【0071】
【数19】
によって変換することができる。上式において、[auavaw]は、装置座標での姿勢センサの出力であり、[axayaz]は、身体座標での姿勢センサの出力である。
他の座標変換
身体内又は身体上における方位に関する装置をキャリブレーションする例では、まず直立姿勢を取り、次に仰臥姿勢を取る患者について述べた。仰臥姿勢で又は患者が自分の側部を下にして横たわって開始するなど、他のキャリブレーション操作も有用であり得る。時として、仰臥姿勢からキャリブレーション操作を始めて、直立姿勢でキャリブレーションを終了することが望ましい場合がある。これは、完全な直立姿勢から開始するキャリブレーション操作を繰り返すことが困難な場合があり得る。操作は、いずれの順番で実施してもよい。それは、どちらの操作が重力と完全に整合する必要があるか(即ち、完全な直立姿勢か又は完全な仰臥姿勢か)を選択させる2つの操作の処理の順番の選択である。
【0072】
仰臥姿勢から開始する場合に、キャリブレーション行列を計算するために用いる回転の順番を逆にする。回転の順番が異なるため、回転は、テイト・ブライアン式の順番ではない。これにより、回転は、ロール角、ピッチ角、及びヨー角に直接対応しないが、ロール角、ピッチ角、及びヨー角は、キャリブレーション行列の要素の計算を記述するのに依然として有用である。
【0073】
前と同様に、身体上での装置の任意の座標回転は、3回の連続した回転によって決定し得る。第1の回転は、身体の前後(x)軸線を中心にしてよい。図4では、この角度は、ロール角と同様であり、θr’と示されることが分かる。
【0074】
装置が、身体に角度θr’で搭載される場合に、元々身体座標で表わした任意のベクトルaは、回転座標系、即ち、
【0075】
【数20】
で表わせる。上式において、a’は、x軸を中心にして角度θr’だけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。
この第1回転は、新しい回転したy軸であるy’が生じる。第2回転は、このy’軸を中心に、角度θp’だけ行われ、これは、ロール角が小さい場合に、ピッチ角と同様な角度である。即ち、
【0076】
【数21】
上式において、a’’は、x軸を中心にして角度θr’だけ回転し、そして、y’軸を中心にしてθp’だけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。
これら2回の回転によって、新しい回転したz軸であるz’’が生じる。第3回転は、このz’’軸を中心にして、角度θy’だけ回転され、これは、ロール角が小さい場合に、ヨー角と同様な角度である。
【0077】
【数22】
上式において、a’’’=[ax’’’ay’’’az’’’]は、x軸を中心にして角度θ’r’だけ回転し、y’軸を中心にしてθp’だけ回転し、そして、z’’軸を中心にして角度θy’だけ回転した座標系で表わしたベクトルを示す。等号の右辺の行列は、掛け合わせると下式のようになる。即ち、
【0078】
【数23】
又は
【0079】
【数24】
上式において、aT=[auavaw]Tは、装置座標で表わしたベクトルaである。
2姿勢手動キャリブレーションを再度実施して、キャリブレーション行列を判定する。対象は、最初に、仰臥姿勢を取り、センサデータ[auavaw]Tが、搭載された装置から収集される。そして、対象は、第2姿勢を取り、対象が第2姿勢にある状態のときに、センサデータが収集される。仰臥姿勢の場合に、身体座標の重力ベクトルは、[auavaw]T=[100]Tである。この場合の行列式は、以下の通りである。
【0080】
【数25】
又は
【0081】
【数26】
回転行列Mの成分は、次のように示される。
【0082】
【数27】
【0083】
そして、検証によって、m11=au,Supine、m21=av,Supine,m31=aw,Supineであり、ここで、au,Supineは、患者が仰臥姿勢である時の装置の「u」軸線からのセンサ出力を意味する。
【0084】
P’角度係数
θp’に関連するキャリブレーション行列要素を計算する場合に、m31=−sin(θp’)であって、sin(θp’)=−aw,Supineであることが行列の形式から分かる。項「aw,Supine」は、患者が仰臥姿勢の状態で、センサによって直接測定することができる。sin(θp’)=−aw,Supineであれば、
【0085】
【数28】
で表わす三角関数の公式を用いて、cos(θp’)は、測定量
【0086】
【数29】
から算出することができる。
Y’角度係数
このcos(θp’)の式は、θy’に関連するキャリブレーション行列要素を計算するために用い得る。ロール回転を特徴付けるために用い得る2つの別個の式は、
【0087】
【数30】
及び、
【0088】
【数31】
である。前と同様に、何れかの式を用いて、ロール回転行列成分を計算できるが、その結果は、実際には、同じでないことがある。これらの両方の式を用いて、θy’回転行列成分を計算して、結果の精度を改善できる。
また、表記を簡素化すると、下式になる。
【0089】
【数32】
簡略化した表記では、非三角関数の式は以下の通りである。
【0090】
【数33】
上式において、下付き文字における追加の「a」及び「b」は、これらが、実際には異なる結果を与え得る択一的な2組の計算結果であることを示す。組「a」又は組「b」式の何れかを用いるべきであり、また、sy、cyを同じ組の式から計算すべきである。従って、aw,Supine及びav,Supineを知ることによって又はaw,Supine及びau,Supineを知ることによって、6つの係数の内の4つを計算できる。
【0091】
R’角度係数
残りの演算対象は、θr’に関連した2つの係数、即ち、sr及びcrである。幾つかの例では、この回転を決定するために、患者は、直立姿勢(例えば、立位)を取る。直立姿勢に関する身体座標における重力ベクトルは、[auavaw]T=[001]Tであ
る。これによって、下式に至る。即ち、
【0092】
【数34】
【0093】
【数35】
θr’係数の計算の最も単純な組は、
【0094】
【数36】
【0095】
である。6つの全係数を計算することができ、従って、キャリブレーション行列Mの9つの全要素を計算できる。対象が、最初に直立姿勢で次に仰臥姿勢である第1例のように、キャリブレーション行列の要素は、三角関数を用いることなく、また、方位角を特別に計算することなく計算される。
【0096】
図6は、多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定する方法600のフロー図である。ブロック605では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力が測定される。装置の第1軸線は、u軸線、v軸線、又はw軸線であってよい。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、直立姿勢であり、第1センサ出力は、au,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、仰臥姿勢であり、第1センサ出力は、aw,Supineであってよい。他の(例えば、自分の側部を下にして横たわる)姿勢を第1姿勢に用いてもよい。
【0097】
ブロック610では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力が、測定される。幾つかの例では、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第2センサ出力は、av,Upright又はaw,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第2センサ出力は、av,Supine又はau,Supineであってよい。或る例では、センサ出力が、装置の第2軸線及び第3軸線の双方とも測定される。
【0098】
ブロック615では、少なくとも第3センサ出力は、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関して測定される。第2の特定姿勢は、第1の特定姿勢に直交し得る。一例として、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第3セ
ンサ出力は、au,Supineであってよい。別の例では、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第3センサ出力は、aw,Uprightであってよい。
【0099】
ブロック620では、姿勢センサは、装置の方位角を判定することなく、第1センサ出力、第2センサ出力、及び第3センサ出力を用いて、キャリブレーション変換を計算することによってキャリブレーションされる。幾つかの例では、姿勢センサをキャリブレーションする行列の要素が、第1センサ出力、第2センサ出力、及び第3センサ出力を用いて計算される。例えば、要素の成分は、方位角θp、θr、又はθyのいずれも特別に計算することなく、代数の(且つ非三角関数の)式を用いて計算し得る。即ち、
【0100】
【数37】
第1組の行列成分sp、cpは、第1方位角θpに関係し、第1センサ出力au,Uprightを用いて計算される。第2組の行列成分sr、cr、は、第2方位角θrに関係し、第1センサ出力au,Upright(sp、cpから)及び第2センサ出力、即ち、av,Upright又はaw,Uprightの何れかを用いて計算される。第3組の行列成分sy、cyは、第3方位角θyに関係し、第3センサ出力au,Supineを用いて計算される。そして、行列成分sp、cp、sr、cr、sy、及びcyは、キャリブレーション行列Mの行列要素を計算するために用いられる。
【0101】
別の例では、行列要素は、方位角θp’、θr’、又はθy’のいずれも特別に計算することなく、代数方程式、即ち、
【0102】
【数38】
を用いて計算できる。
ブロック625では、キャリブレーションは、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定するために用い得る。幾つかの例では、キャリブレーション行列が、姿勢を判定
するために用いられる。幾つかの例では、姿勢センサの出力は、1つ又は複数のしきい値と比較され、対象の姿勢又は概略の姿勢を判定する。
【0103】
姿勢センサが、軸線が身体軸線と整合(配置)している多次元姿勢センサである場合に、姿勢センサの出力は、対象が直立姿勢である時に、身体座標において[auavaw]=[100]であり、また、対象が仰臥姿勢である時に、[auavaw]=[001]である。しかしながら、装置座標が身体座標と異なる場合に、出力は、これらの値と異なる。
【0104】
多次元姿勢センサの出力は、ベクトル(例えば、gベクトル)としてとらえることができる。装置座標から身体座標にセンサ出力を変換するには、センサ出力、即ち、gベクトルにキャリブレーション行列を乗算する。例えば、au、av、awが、装置座標での多次元センサの3つの直交する軸線の各々に関するセンサ出力であり、Mがキャリブレーション行列である場合に、
【0105】
【数39】
上式において、ax、ay、azは、対応するセンサ測定値、即ち、身体座標系におけるgベクトルである。転換後の又は変換後のセンサ出力ax、ay、azは、特定の(例えば、医療機器にプログラム設定された)しきい値と比較され、姿勢が判定される。
【0106】
幾つかの例では、1つ又は複数の角度が、変換後のセンサ出力から計算される。計算された角度は、特定のしきい値角度と比較され、患者姿勢が判定される。キャリブレーションされた多次元姿勢センサから患者姿勢を判定するための方法は、2005年11月18日に出願された、米国特許公開第US2007/0118056号、「姿勢感知器キャリブレーション及び使用方法」、ワン(Wang)らによるに見出すことができ、これは、その全体を本明細書に参照することによって本願に組み込む。
非直交キャリブレーション操作
時として、互いに直交する姿勢を用いなければならないことが、望ましくないことがある。幾つかの状況では、例えば、患者が座位呼吸をしており、横になることが困難な場合に、完全な横臥又は仰臥姿勢に患者を置くことは勧められないことがある。このことは、センサのキャリブレーションの実施を難しくすることがある。幾つかの状況では、患者が、完全に直立した状態で、完全に静止したままでいることは難しいことがある。このことは、キャリブレーションの不正確さに至ることがある。従って、キャリブレーションのために2つの互いに直交する姿勢を必要としないキャリブレーション行列の要素の成分に対する式があることが望ましい。
【0107】
ヨー角(Y)係数の他の計算
キャリブレーション操作に、患者が最初に直立姿勢であり、次に仰臥姿勢であることが含まれる例の場合に、同じ式が、ピッチ及びロール成分sp、cp、sy、及びcrに用いられ、異なる式が、ヨー成分sy及びcyに用いられるが、これによって、患者は、直立姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない第2姿勢とすることができる。
簡略化した表記で式(3)を書き直すと、下式になる。即ち、
【0108】
【数40】
行列Mの逆行列(M−1)は、装置座標から身体座標に回転して戻すために計算される。行列の積の逆行列は、逆の順番での(左から右への)それらの行列の逆行列の積である。更に、「s」及び「c」値の使用は、一致していることから、個々の回転行列は、ユニタリ行列であり、回転行列の逆行列は、それらの行列の転置行列に等しい。従って、身体座標から装置座標への完全な回転には、以下を伴う。
【0109】
【数41】
[auavaw]Tにおける最初の2回(最右端)の回転又は変換によって、次のようになる。
【0110】
【数42】
この座標系では、z’軸は、身体の上下(z)軸と整合され、次になすべきことは、z’軸を中心にして回転して、それぞれx’及びy’軸をx及びy軸と整合させることだけである。患者が、まっすぐに後ろにもたれる(例えば、どちら側にも傾斜しないが、必ずしも完全な仰臥姿勢とは限らない)場合に、z’軸に対し垂直な重力ベクトルの投影が生じ、これは、(x’,y’)平面内にある。
【0111】
図7は、(x’,y’)平面内にあるg力の成分を半径rとして図示する。ヨー成分sy及びcyは、次のように、x’及びy’成分から算出できることが、図の三角形から分かる。即ち、
【0112】
【数43】
sy及びcyを計算するために、仰臥姿勢に関する姿勢センサの出力au,Supine、av,Supine、aw,Supineには、上記式の回転行列が乗算されて、a
x’、ay’、及びaz’が得られる。そして、変換後の出力ax’、ay’、及びaz’は、sy及びcyを計算するために用いられる。前のキャリブレーション方法では、au,Supineは、既に測定されていることに留意されたい。従って、このキャリブレーション方法では、av,Supine及びaw,Supineの2つだけの追加の測定値が必要である。
【0113】
R’角度係数の他の計算
患者をまず仰臥姿勢に置き、次に直立姿勢に置くことによってキャリブレーションすることが望まれる場合に、同じ式が、ヨー及びピッチ成分sy、cy、sp、及びcpに用いられ、異なる式が、ロール成分sr及びcrに用いられるが、これによって、患者は、仰臥姿勢より直立姿勢であるが、完全な直立姿勢でない第2姿勢となることができる。
簡略化した表記で式(16)を書き直すと、下式になる。即ち、
【0114】
【数44】
逆行列M−1は、装置座標から身体座標に回転して戻すために計算される。前と同様に、行列の積の逆行列は、逆の順番での(左から右への)それらの行列の逆行列の積であることから、また、回転行列の逆行列は、それらの行列の転置行列に等しいことから、身体座標から装置座標への回転には、以下を伴う。
【0115】
【数45】
[auavaw]Tにおける最初の2回(最右端)の回転によって、次のようになる。
【0116】
【数46】
今回は、x’軸は、身体の前後(x)軸と整合され、次になすべきことは、x’軸を中心にして回転して、それぞれy’及びz’軸をy及びz軸と整合させることだけである。患者がほぼ直立姿勢である(例えば、どちら側にも傾斜しないが、必ずしも完全に直立姿勢とは限らない)場合に、x’(x)軸に対し垂直な重力ベクトルの投影が生じ、これは、(y’,z’)平面内にある。
【0117】
図8は、(y’,z’)平面内にあるg力の成分を半径rとして図示する。ヨー成分sr及びcrは、次のように、x’及びz’成分から算出できることが、図の三角形から分かる。即ち、
【0118】
【数47】
sr及びcrを計算するために、仰臥姿勢に関する姿勢センサの出力au,Upright、av,Upright、aw,Uprightには、上記式の回転行列が乗算されて、ax’、ay’、及びaz’が得られる。そして、変換後の出力ax’、ay’、及びaz’は、sr及びcrを計算するために用いられる。他のヨー角の例では、このキャリブレーション方法では、av,Upright及びaw,Uprightの2つの追加の測定値が必要である。
【0119】
図9は、多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を判定する他の方法900のフロー図である。図6の方法600と同様に、ブロック905では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力が測定される。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、直立姿勢であり、第1センサ出力は、au,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1の特定姿勢は、仰臥姿勢であり、第1センサ出力は、aw,Supineであってよい。他の(例えば、自分の側部を下にして横たわる)姿勢を第1姿勢に用いることができる。
【0120】
ブロック910では、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力が、測定される。幾つかの例では、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第2センサ出力は、av,Upright又はaw,Uprightであってよい。幾つかの例では、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第2センサ出力は、av,Supine又はau,Supineであってよい。或る例では、センサ出力が、装置の第2軸線及び第3軸線の双方とも測定される。
【0121】
ブロック915では、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、第3センサ出力が、装置の第1軸線に関して測定される。第2の特定姿勢は、第1の特定姿勢と非直交である。一例として、第1姿勢は、直立姿勢であってよく、第1センサ出力は、au,Uprightであってよく、第2の特定姿勢は、第1姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でなく、第3センサ出力は、au,lessthanSupine(仰臥姿勢未満)であってよい。別の例では、第1の特定姿勢は、仰臥姿勢であってよく、第1センサ出力は、aw,Supineであってよく、第2姿勢は、第1姿勢より直立姿勢であるが完全な直立姿勢でなく、第3センサ出力は、aw,lessthanUpright(直立姿勢未満)であってよい。
【0122】
ブロック920では、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線に関する第4センサ出力が測定される。幾つかの例では、第4センサ出力は、av,lessthanSupine(仰臥姿勢未満)であってよい。幾つかの例では、第4センサ出力は、av,lessthanUpright(直立姿勢未満)であってよい。
【0123】
ブロック925では、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第3軸線に関する第5センサ出力が測定される。幾つかの例では、第5センサ出力は、aw,lessthanSupine(仰臥姿勢未満)であってよい。幾つかの例では、第5センサ出力
は、au,lessthanUpright(直立姿勢未満)であってよい。
【0124】
ブロック930では、第1方位角に関連する第1座標変換が計算され、ブロック935では、第2方位角に関連する第2座標変換が、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて計算される。幾つかの例では、第1座標変換及び第2座標変換には、式(30)又は(34)の[auavaw]Tにおける2つの(最右端の)回転が含まれる。
【0125】
ブロック940では、変換後の第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力が、第1座標変換及び第2座標変換を用いて生成される。幾つかの例では、変換後のセンサ出力ax’、ay’、及びaz’が、式(31)又は式(35)の回転を用いて、センサ出力au,av,awから生成される。
【0126】
ブロック945では、キャリブレーション行列の要素が、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いて計算される。幾つかの例では、第1姿勢操作は、直立姿勢であり、第2操作は、完全な仰臥姿勢でなく、キャリブレーション行列の要素は、式(26)を用いてsp、cp、sr、及びcrを用いて計算され、また、式(32)を用いてsy、cyを用いて計算される。幾つかの例では、第1姿勢操作は、仰臥姿勢であり、第2操作は、完全な直立姿勢でなく、キャリブレーション行列の要素が、式(27)を用いてsp、cp、sr、及びcrを用いて計算され、また、式(36)を用いてsy、cyを用いて計算される。ブロック950では、キャリブレーション行列は、後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定するために用い得る。
【0127】
図10は、多次元姿勢センサに関するキャリブレーション行列を決定できる装置1000の一部の例のブロック図である。幾つかの例では、装置は、埋込型医療機器であってよく、また、幾つかの例では、装置1000は、装着型医療機器であってよい。多次元姿勢センサ1005は、地球の重力場に対する装置1000のそれぞれ非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供する。幾つかの例において、姿勢センサ1005は、装置1000の非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の各々に関する出力を提供する。装置1000には、マイクロプロセッサ、デジタル信号プロセッサ(DSP)、又は他の種類のプロセッサ等のプロセッサ1010が含まれる。或る例では、プロセッサ1010は、特定用途向け集積回路(ASIC)であってよい。
【0128】
プロセッサ1010は、姿勢センサ1005に通信可能に結合し得る。この通信結合によって、プロセッサ1010は、回路が介在し得るが、姿勢センサ1005との間で信号を送信及び/又は受信できる。プロセッサ1010には、本明細書に述べた機能を実施する回路が含まれる。回路は、ハードウェア、ファームウェア、若しくはソフトウェア、又はハードウェア、ファームウェア、及びソフトウェアの任意の組合せであってよい。或る例において、プロセッサ1010は、ソフトウェア、ファームウェア、又はハードウェアにおいて具現化された命令を実行する。或る例において、プロセッサ1010には、ハードウェアによって実装される論理機能を順次処理するシーケンサが含まれる。1つの回路が、1つ又は複数の機能を実行してよい。
【0129】
プロセッサ1010には、キャリブレーション回路1015及び姿勢回路1020が含まれる。幾つかの例によれば、キャリブレーション回路1015及び姿勢回路1020は、図6に関して述べた何れかの方法を実行するように構成される。幾つかの例では、キャリブレーション回路1015は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力を測定し、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力を測定し、また、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第3センサ出力を測定する。
【0130】
或る例において、第1姿勢は、直立姿勢であってよく、第2姿勢は、仰臥姿勢であってよい。装置の第1軸線は、図4の装置の「u」軸線であってよく、装置の第2軸線及び第3軸線は、装置の「v」及び「w」軸線であってよい。或る例において、第1姿勢は、仰臥姿勢であり、第2姿勢は、直立姿勢である。装置の第1軸線は、図4の装置の「w」軸線であってよく、装置の第2軸線及び第3軸線は、装置の「u」及び「v」軸線であってよい。
【0131】
キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いて、キャリブレーション変換を計算することによって、姿勢センサ1005を計算する。幾つかの例では、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力、第2センサ出力、及び第3センサ出力を用いて、姿勢センサ1005をキャリブレーションするために用いられる行列の要素を計算する。式(26)及び(27)に関連して前述したように、キャリブレーション回路1015は、装置の方位角を判定することなく、また、三角関数を用いることなく、要素を計算することが可能である。キャリブレーション後、姿勢回路1020は、姿勢センサ1005を用いて、対象の後続の姿勢を判定する。
【0132】
幾つかの例によれば、キャリブレーション回路1015及び姿勢回路1020は、図9に関して述べた何れかの方法を実施するように構成される。前と同様に、キャリブレーション回路1015は、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力を測定し、対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力を測定し、また、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第3センサ出力を測定する。
【0133】
2つの特定姿勢は、非直交であってよい。或る例では、第1姿勢は、直立姿勢であってよく、第2姿勢は、直立姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない姿勢であってよい。或る例において、第1姿勢は、仰臥姿勢であってよく、第2姿勢は、仰臥姿勢より直立姿勢であるが完全な直立姿勢でない姿勢であってよい。
【0134】
最初の3つの測定値に加えて、キャリブレーション回路は、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第2軸線に関する第4センサ出力を測定し、また、対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、装置の第3軸線に関する第5センサ出力を測定する。そして、キャリブレーション回路1015は、座標変換を実施して、第2の特定姿勢に関する変換後のセンサ出力を生成する。
【0135】
幾つかの例では、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力を用いて、第1方位角に関連する第1座標変換を計算し、また、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、第2方位角に関連する第2座標変換を計算する。或る例では、変換は、第1回転行列及び第2回転行列を用いて実施される。変換後のセンサ出力は、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算することによって生成される。例は、式(31)及び(35)に関して前述した。或る例では、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算し、また、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算する。
【0136】
そして、キャリブレーション回路1015は、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、また、変換後のセンサ出力を用いて、キャリブレーション行列の要素を計算する。幾つかの例では、キャリブレーション回路は、行列成分(又は係数)sp、cp、sr、cr、sy、及びcyを用いて行列要素を計算する。第1組の行列成分sp及びcpは、第1方位角(例えば、θp又はθp’)に関連付けられ、第1センサ出力を用いて、例えば、式(26)又は式(27)によって計算される。
【0137】
どの組の姿勢かに依存して、従って、どの組の式が用いられるかに依存して、第2組の行列成分は、第2方位角(例えば、それぞれθr又はθy’)に関連するsr及びcr、又はsy及びcyの何れかであり得る。第2組の行列成分は、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて、例えば、式(26)又は(27)によって計算される。尚、式は、第2センサ出力としてどのセンサ測定値を用いるかについての選択肢があることを示す。理論的には、いずれの選択でも同じ結果を生成するはずであるが、実際には、患者操作の不正確さ又は操作時の測定値のノイズにより、一方の選択の方が望ましいことがある。
【0138】
第3組の行列成分は、第2方位角(例えば、それぞれθy又はθr’)に関連するsy及びcy又はsr及びcrの何れかであり得る。第3組の成分は、変換後のセンサ出力を用いて、例えば、式(32)又は(36)によって計算される。そして、第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分sp、cp、sr、cr、sy、及びcyは、キャリブレーション行列Mの行列要素、例えば、式(9)及び(11)又は式(22)及び(24)の行列要素を計算するために用いられる。尚、行列成分、従って、行列要素は、結果的に生じる代数方程式を用いて計算され、また、装置1000のいずれの方位角も判定することなく又は三角関数を用いることもなく計算される。これにより、プロセッサ1010が必要とする処理能力の量を低減できる。
【0139】
幾つかの例によれば、姿勢回路1020は、姿勢センサ1005の3つの非平行軸線の各々各に関するセンサ出力(例えば、DC応答性の電圧レベル)を受信し、センサ出力と特定のセンサ出力しきい値と比較して、対象の姿勢を判定する。キャリブレーション回路1015は、計算後のキャリブレーション行列の要素を用いて、特定のセンサ出力しきい値を調整する。
【0140】
幾つかの例では、姿勢回路1020は、下式を計算することによって、対象姿勢を判定する。即ち、
【0141】
【数48】
上式において、M−1は、キャリブレーション回路によって判定されたキャリブレーション行列の逆行列であり、au、av、awは、多次元センサの3つの直交する軸線の各々に関するセンサ出力であり、ax、ay、azは、身体座標系における対応する測定値又は値である。姿勢回路1020は、身体座標測定値と特定のしきい値とを比較して、対象の姿勢を判定する。
【0142】
幾つかの例によれば、プロセッサ1010には、対象の姿勢のトレンドを捉えるトレンド回路1025が含まれる。装置1000は、少なくとも部分的にトレンドに基づき、対象の心臓疾患の進行の兆候を提供する。例えば、患者は、心臓疾患の進行により、時間と共により直立の安静位置を取る可能性がある。プロセッサ1010は、疾患の進行についてユーザ又はプロセス(例えば、外部プログラマにおいて又はリモートシステムにおいて実行するプロセス)への兆候(例えば、警告又は警報)の送信を開始できる。
【0143】
幾つかの例では、装置1000には、プロセッサ1010に通信可能に結合された呼吸
センサ1030が含まれる。呼吸センサの例は、わずかな呼吸容量又は1回呼吸量を測定するために用いられる経胸腔インピーダンスセンサである。経胸腔インピーダンスを測定する方法が、1998年2月27日に出願された、米国特許第6,076,015号、「経胸腔インピーダンスを用いた拍数適応可能な心律動管理装置」、ハートトレイ(Hartley)らによるに記載されており、これは、その全体を本明細書に参照することによって本願に組み込む。呼吸センサは、対象の呼吸を表す信号を提供する。プロセッサ1010は、呼吸信号を用いて、対象の1回呼吸量を計算する。トレンド回路1025は、対象の判定された姿勢に基づき、対象の1回呼吸量のトレンドを捉える。
【0144】
幾つかの例では、装置1000には、プロセッサ1010に通信可能にに結合された動脈圧力センサ1035が含まれる。動脈圧力センサの例には、肺動脈(PA)圧力センサが含まれる。PA圧力には、右心室から流出し肺動脈弁を介して肺に向かう血液による肺動脈内の圧力が含まれる。幾つかの例では、動脈圧力センサは、対象のPA圧力を表す信号を提供する。トレンド回路1025は、対象の判定された姿勢に基づき、対象のPA圧力のトレンドを捉える。幾つかの例では、プロセッサ1010は、圧力信号を用いて、低血圧又は高血圧の症状を感知する。トレンド回路1025は、対象の判定された姿勢に基づき、低血圧又は高血圧の症状のトレンドを捉える。
【0145】
埋込型又は装着型医療機器における姿勢感知によって、心不全患者の監視を改善できる。姿勢センサを適切にキャリブレーションすると、患者の解剖学的構造や装置移動によるセンサの方位のバラツキが除去される。
【0146】
補足事項
上記詳細な説明には、詳細な説明の一部を構成する添付図面に対する参照が含まれる。図面は、例証として、本発明を実践し得る特定の実施形態を示す。これらの実施形態は、本明細書では、「例」とも称する。本文書において参照する全ての公報、特許、及び特許文書は、あたかも個別に引用・参照するかのように、それら全体を本明細書に引用・参照する。本文書とそのように引用・参照されたそれらの文書との間で整合性のない用法が生じた場合に、引用した参照の用法は、本文書の用法に対する補足であると見なし、相入れない不一致が生じた場合に、本文書の用法が優先する。
【0147】
本文書では、用語「a」又は「an」(不定冠詞)は、特許文書において通例なように、何れか他の例又は「少なくとも1つの」若しくは「1つ又は複数の」の用法とは無関係に、1つ又は2つ以上を含むように用いる。本文書では、用語「or(又は/若しくは)」は、非排他を指すために用い、これにより、「A又はB」には、他に規定されない限り、「AだがBではない」、「BだがAではない」、並びに「A及びB」が含まれる。添付の請求項では、用語「including」及び「in_which」は、それぞれの用語「comprising」及び「wherein」の平易な英語の等価物として用いる。また、後続の請求項では、用語「含む(including)」及び「から構成される(comprising)」は、オープンエンドである。即ち、請求項において、そのような用語の後に列挙されたもの以外の要素を含むシステム、装置、物品、又はプロセスが、その請求項の範囲内に依然として入るものとみなす。更に、後続の請求項において、用語「第1の」、「第2の」、及び「第3の」等は、単に標識として用いるものであり、それらの目的語に数値的な要件を課すことを意図していない。
【0148】
本明細書に述べた方法例は、少なくとも部分的に機械又はコンピュータにより実行し得る。幾つかの例には、上記例で述べた如く方法を実行するように電子装置が構成されるように動作可能な命令で符号化されたコンピュータ判読可能媒体又は機械読み取り可能な媒体を含み得る。そのような方法の実施例には、マイクロコード、アセンブリ言語コード、高水準言語コード等のコードを含み得る。そのようなコードには、様々な方法を実施する
ためのコンピュータ判読可能命令を含み得る。コードは、コンピュータ・プログラム・プロダクトの一部を形成し得る。更に、コードは、実体のあるものとして、実行時又は他の時に、1つ又は複数の揮発性又は不揮発性コンピュータ判読可能媒体上に記憶することができる。これらのコンピュータ判読可能媒体としては、これらに限定するものではないが、ハードディスク、着脱可能な磁気ディスク、着脱可能な光ディスク(例えば、コンパクト・ディスク及びデジタル・ビデオ・ディスク)、磁気カセット、メモリカード又はスティック、ランダムアクセスメモリ(RAM)、読み出し専用メモリ(ROM)等が挙げられる。
【0149】
上記説明は、例示であることを意図しており、限定的であることを意図していない。例えば、上述した例(又はそれらの1つ又は複数の態様)は、互いに組み合わせて用いてもよい。他の実施形態は、上記説明を精査する際、例えば、当業者が用いてよい。要約書は、37C.F.R.§1.72(b)に準拠するために提供し、これにより、読者が技術的開示の性質を素早く確認できるようにするものである。それは、請求項の範囲又は意味を解釈又は限定するために用いられないという理解の下で提出されている。更に、上記詳細な説明では、様々な特徴をグループ化して、本開示を簡素化していることがある。このことは、権利が主張されていない開示された特徴が、何れかの請求項に対して本質的であることを意図すると解釈すべきではない。むしろ、本発明の内容は、特定の開示された実施形態の全ての特徴より少ない特徴に見出される。従って、以下の請求項は、本明細書によって詳細な説明に引用されており、各請求項は別個の実施形態としてそれ自体に依拠している。本発明の範囲は、添付の請求項を参照して、そのような請求項が権利を与えられる等価物の全範囲と共に決定されるべきものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
多次元姿勢センサと、
該姿勢センサに通信可能に結合されたプロセッサと、
を含む装置であって、
前記多次元姿勢センサは、地球の重力場に対する前記装置のそれぞれ非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供するように構成されており、
前記プロセッサは、キャリブレーション回路と姿勢回路とを含み、
前記キャリブレーション回路は、
対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、前記装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定し、
前記対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定し、
第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算し、
前記座標変換を用いて第2姿勢に関するセンサ出力を変換し、
第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって、前記姿勢センサのキャリブレーションを行うように構成され、
前記姿勢回路は、
前記姿勢センサを用いて前記対象の後続の姿勢を判定するように構成されている装置。
【請求項2】
前記キャリブレーション回路は、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連する第1座標変換を計算し、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連する第2座標変換を計算し、
対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線のそれぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測定し、
第1座標変換及び第2座標変換を用いて第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記キャリブレーション回路は、
第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算し、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算し、
第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算して、該センサ出力を変換するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記キャリブレーション回路は、キャリブレーション行列の要素を計算することによって、キャリブレーション変換を計算するように構成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記キャリブレーション回路は、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、
第1センサ出力と、第2センサ出力及び第3センサ出力の内の一方とを用いて第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、
変換後のセンサ出力を用いて第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算し、
第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いてキャリブレーション行列の要素を計算するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
第1方位角は、ピッチ角に対応し、第2方位角は、ロール角に対応し、第3方位角は、ヨー角に対応する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
第1方位角は、ピッチ角に対応し、第2方位角は、ヨー角に対応し、第3方位角は、ロール角に対応する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記姿勢回路は、
前記姿勢センサの非平行な3つの軸線の各々に関するセンサ出力を受信し、
キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を変換し、
変換後のセンサ出力を特定のしきい値と比較して、対象の姿勢を判定するように構成される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
第2姿勢は、第1姿勢と非直交となる姿勢である、請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
第1姿勢は、直立姿勢であり、また、第2姿勢は、第1姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない、請求項1乃至9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
第1姿勢は、仰臥姿勢であり、また、第2姿勢は、第1姿勢より直立姿勢であるが完全な直立姿勢でない、請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
プロセスによって多次元姿勢センサに関するキャリブレーション変換を判定する段階であって、前記プロセスには、
対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、前記装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定する段階と、
前記対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階と、
第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階と、
該座標変換を用いて第2の特定姿勢に関する前記センサ出力を変換する段階と、
第1センサ出力及び第2センサ出力と、変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって、姿勢センサのキャリブレーションを行う段階と、が含まれるキャリブレーション変換を判定する段階と、
キャリブレーションを用いて後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定する段階と、
が含まれる方法。
【請求項13】
第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階には、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連する第1座標変換を計算する段階と、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連する第2座標変換を計算する段階と、が含まれ、
前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階には、前記対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線のそれぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測
定する段階が含まれ、
出力を変換する段階には、第1座標変換及び第2座標変換を用いて第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階が含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1座標変換を計算する段階には、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算する段階が含まれ、
第2座標変換を計算する段階には、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算する段階が含まれ、
第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階には、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算して、該センサ出力を変換する段階が含まれる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
キャリブレーション変換を計算する段階には、キャリブレーション行列の要素を計算する段階が含まれ、また、キャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、キャリブレーション行列を用いて後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定する段階が含まれる、請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
センサ出力を用いて姿勢センサをキャリブレーションするために、行列の要素を計算する段階には、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階と、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階と、
変換後のセンサ出力を用いて第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階と、
第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いてキャリブレーション行列の要素を計算する段階と、
が含まれる、請求項12乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれる、請求項12乃至16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算するが含まれる、請求項12乃至17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象が第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階には、対象が、第1の特定姿勢と非直交となる第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階が含まれる、請求項12乃至18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、
多次元姿勢センサの3つの直交軸線の各々に関するセンサ出力を受信する段階と、
キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を身体座標値に変換する段階と、
センサ出力を特定のしきい値と比較して姿勢を判定する段階と、が含まれる、請求項12乃至19の何れか一項に記載の方法。
【請求項1】
多次元姿勢センサと、
該姿勢センサに通信可能に結合されたプロセッサと、
を含む装置であって、
前記多次元姿勢センサは、地球の重力場に対する前記装置のそれぞれ非平行な第1軸線、第2軸線、及び第3軸線の配置を表す電気的なセンサ出力を提供するように構成されており、
前記プロセッサは、キャリブレーション回路と姿勢回路とを含み、
前記キャリブレーション回路は、
対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、前記装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定し、
前記対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定し、
第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算し、
前記座標変換を用いて第2姿勢に関するセンサ出力を変換し、
第1センサ出力及び第2センサ出力と変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって、前記姿勢センサのキャリブレーションを行うように構成され、
前記姿勢回路は、
前記姿勢センサを用いて前記対象の後続の姿勢を判定するように構成されている装置。
【請求項2】
前記キャリブレーション回路は、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連する第1座標変換を計算し、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連する第2座標変換を計算し、
対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線のそれぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測定し、
第1座標変換及び第2座標変換を用いて第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換するように構成されている、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記キャリブレーション回路は、
第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算し、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算し、
第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算して、該センサ出力を変換するように構成される、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記キャリブレーション回路は、キャリブレーション行列の要素を計算することによって、キャリブレーション変換を計算するように構成される、請求項1乃至3の何れか一項に記載の装置。
【請求項5】
前記キャリブレーション回路は、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算し、
第1センサ出力と、第2センサ出力及び第3センサ出力の内の一方とを用いて第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算し、
変換後のセンサ出力を用いて第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算し、
第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いてキャリブレーション行列の要素を計算するように構成される、請求項1乃至4の何れか一項に記載の装置。
【請求項6】
第1方位角は、ピッチ角に対応し、第2方位角は、ロール角に対応し、第3方位角は、ヨー角に対応する、請求項1乃至5の何れか一項に記載の装置。
【請求項7】
第1方位角は、ピッチ角に対応し、第2方位角は、ヨー角に対応し、第3方位角は、ロール角に対応する、請求項1乃至6の何れか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記姿勢回路は、
前記姿勢センサの非平行な3つの軸線の各々に関するセンサ出力を受信し、
キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を変換し、
変換後のセンサ出力を特定のしきい値と比較して、対象の姿勢を判定するように構成される、請求項1乃至7の何れか一項に記載の装置。
【請求項9】
第2姿勢は、第1姿勢と非直交となる姿勢である、請求項1乃至8の何れか一項に記載の装置。
【請求項10】
第1姿勢は、直立姿勢であり、また、第2姿勢は、第1姿勢より仰臥姿勢であるが完全な仰臥姿勢でない、請求項1乃至9の何れか一項に記載の装置。
【請求項11】
第1姿勢は、仰臥姿勢であり、また、第2姿勢は、第1姿勢より直立姿勢であるが完全な直立姿勢でない、請求項1乃至10の何れか一項に記載の装置。
【請求項12】
プロセスによって多次元姿勢センサに関するキャリブレーション変換を判定する段階であって、前記プロセスには、
対象が第1の特定姿勢にある状態のときに、装置の第1軸線に関する第1センサ出力と、前記装置の第2軸線及び第3軸線の内の一方に関する第2センサ出力とを測定する段階と、
前記対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階と、
第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階と、
該座標変換を用いて第2の特定姿勢に関する前記センサ出力を変換する段階と、
第1センサ出力及び第2センサ出力と、変換後のセンサ出力とを用いてキャリブレーション変換を計算することによって、姿勢センサのキャリブレーションを行う段階と、が含まれるキャリブレーション変換を判定する段階と、
キャリブレーションを用いて後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定する段階と、
が含まれる方法。
【請求項13】
第1の特定姿勢からのセンサ出力を用いて1つ又は複数の座標変換を計算する段階には、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連する第1座標変換を計算する段階と、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連する第2座標変換を計算する段階と、が含まれ、
前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線に関するセンサ出力を測定する段階には、前記対象が第2の特定姿勢にある状態のときに、前記装置の第1軸線、第2軸線、及び第3軸線のそれぞれに関する第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を測
定する段階が含まれ、
出力を変換する段階には、第1座標変換及び第2座標変換を用いて第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階が含まれる、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
第1座標変換を計算する段階には、第1センサ出力を用いて第1回転行列の要素を計算する段階が含まれ、
第2座標変換を計算する段階には、第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2回転行列の要素を計算する段階が含まれ、
第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を変換する段階には、第1回転行列及び第2回転行列によって第3センサ出力、第4センサ出力、及び第5センサ出力を乗算して、該センサ出力を変換する段階が含まれる、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
キャリブレーション変換を計算する段階には、キャリブレーション行列の要素を計算する段階が含まれ、また、キャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、キャリブレーション行列を用いて後続のセンサ出力からの後続の対象の姿勢を判定する段階が含まれる、請求項12乃至14の何れか一項に記載の方法。
【請求項16】
センサ出力を用いて姿勢センサをキャリブレーションするために、行列の要素を計算する段階には、
第1センサ出力を用いて第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階と、
第1センサ出力及び第2センサ出力を用いて第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階と、
変換後のセンサ出力を用いて第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階と、
第1組の行列成分、第2組の行列成分、及び第3組の行列成分を用いてキャリブレーション行列の要素を計算する段階と、
が含まれる、請求項12乃至15の何れか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれる、請求項12乃至16の何れか一項に記載の方法。
【請求項18】
第1方位角に関連した第1組の行列成分を計算する段階には、ピッチ角に対応する第1組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第2方位角に関連した第2組の行列成分を計算する段階には、ヨー角に対応する第2組の行列成分を計算する段階が含まれ、
第3方位角に関連した第3組の行列成分を計算する段階には、ロール角に対応する第2組の行列成分を計算するが含まれる、請求項12乃至17の何れか一項に記載の方法。
【請求項19】
対象が第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階には、対象が、第1の特定姿勢と非直交となる第2の特定姿勢にある状態のときに測定する段階が含まれる、請求項12乃至18の何れか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記キャリブレーションを用いて後続の対象の姿勢を判定する段階には、
多次元姿勢センサの3つの直交軸線の各々に関するセンサ出力を受信する段階と、
キャリブレーション変換を用いてセンサ出力を身体座標値に変換する段階と、
センサ出力を特定のしきい値と比較して姿勢を判定する段階と、が含まれる、請求項12乃至19の何れか一項に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−519444(P2013−519444A)
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−552995(P2012−552995)
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/024339
【国際公開番号】WO2011/100422
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月30日(2013.5.30)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際出願番号】PCT/US2011/024339
【国際公開番号】WO2011/100422
【国際公開日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【出願人】(505003528)カーディアック ペースメイカーズ, インコーポレイテッド (466)
【Fターム(参考)】
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