説明

姿勢制御スラスタを使用してミサイルの飛行を制御する方法

ミサイルの飛行を制御する方法は、ミサイルの角度の変化率に基づく係数が閾値を超えたときを感知するために、ピッチレートジャイロスコープのようなジャイロスコープを使用することを含む。閾値を超えると、1つ以上の補償スラスタを使用して、角度の変化率を下げることが決定され得る。補償スラスタを使用すると、残留角運動速度が修正され得る。残留角運動速度は、意図した針路にミサイルを置くために使用される軌道修正操縦に起因する。更に、軌道修正操縦後にもたらされる、例えば、ミサイルのメインロケットモータによって与えられるスラストの調整不良によってもたらされる、ミサイルの機首方位における誤差を補償するために、補償スラスタが使用され得る。ピッチとヨーの方向における角度の変化を補償するために、複数の補償スラスタが使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ミサイルの飛行を制御する方法とデバイスの分野に含まれる。
【背景技術】
【0002】
360度の能力があるロケット(360 degree capable rocket)のミサイルの飛行を制御する方法は、ミサイルを操縦するために垂直安定板を使用することに重点を置いていることが多い。特に、飛行時間が短く且つ飛行中に軌道が激しく変化する状況では、垂直安定板は使い難い場合がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の態様によると、ミサイルの飛行を制御する方法は、角速度を超えたときに姿勢スラスタに点火することを含む。
【0004】
本発明の別の態様によると、ミサイルの飛行を制御する方法は、ミサイルの角度方位の変化率を感知するステップと、ミサイルの角度方位の変化率が、閾値の角速度の変化値を超えた場合に、ミサイルの角度方位の変化率を変化させるために、ミサイルの1つ以上の補償スラスタに点火することに関して決定するステップと、を含む。
【0005】
本発明の更に別の態様によると、ミサイルの飛行を制御する方法は、ミサイルの角度方位の変化率を感知するステップと、ミサイルの角度方位の変化率に基づく係数(factor)が、閾値の係数の値を超えた場合に、ミサイルの角度方位の変化率を変化させるために、ミサイルの1つ以上の補償スラスタに点火することに関して決定するステップと、を含む。
【0006】
上述の目的と関連する目的とを達成するために、本発明は、以下で十分に説明されている特徴であって、特に、請求項に示されている特徴を含んでいる。以下の説明と添付の図面は、本発明のある特定の例示的な実施形態を詳しく記載している。しかしながら、これらの実施形態は、本発明の原理が用いられ得る様々なやり方のうちのほんの幾つかだけを示している。本発明の他の目的と、長所と、新しい特徴は、本発明の以下の詳細な説明から、図面と併せて検討したときに明らかになるであろう。
【0007】
添付の図面は、必ずしも縮尺に従っているとは限らない。添付の図面は、本発明の様々な態様を示している。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明の実施形態に従って、ミサイルの側面図を示している。
【図2】図1のミサイルの飛行を示す図である。
【図3】ヘリコプタからの打ち上げを表した、図1のミサイルの別のタイプの飛行を示す図である。
【図4】本発明の実施形態の方法に従って制御されるミサイルの飛行について、角速度対時間の例を示すプロットである。
【図5】本発明の別の実施形態の方法に従って制御されるミサイルの飛行について、角速度対時間の別の例を示すプロットである。
【図6】本発明の実施形態である方法のステップを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
ミサイルの飛行を制御する方法は、ミサイルの角度の変化率又はより一般的にミサイルの角度の変化率に基づく係数が、閾値を超えたときを感知するために、ピッチレートジャイロスコープのようなジャイロスコープを使用することを含む。閾値を超えると、1つ以上の補償スラスタを使用して、角度の変化率を下げることが決定され得る。補償スラスタを使用すると、残留角運動速度が修正され得る。残留角運動速度は、意図した針路にミサイルを置くために使用される軌道修正操縦に起因する。更に、軌道修正操縦後にもたらされる、例えば、ミサイルのメインロケットモータによって与えられるスラストの調整不良によってもたらされる、ミサイルの機首方位における誤差を補償するために、補償スラスタが使用され得る。ピッチとヨーの方向における角度の変化を補償して、軌道修正ミサイルによって設定された針路からミサイルが遠く外れ過ぎないようにするために、複数の補償スラスタが使用され得る。
【0010】
図1は、目標に誘導され得るミサイル10を示している。ミサイル10は、動いている目標に近付く又は衝突する要撃機として使用され得る。ミサイルは、胴体12を有しており、ミサイル10の長手方向軸22に沿ってスラストを与えるために、胴体12は、メインロケットモータ20を収容している。ミサイル10の機首には、ペイロードがあり得る。ペイロードは、例えば、弾頭部14と、弾頭部14の近くの断片16とであり得る。
【0011】
要撃機ミサイル10の方位と針路とを変更するために、ミサイル10は、一連の軌道修正モータ30を含んでいる。例示的な実施形態では、要撃機ミサイル10は、4つの軌道修正モータ30を有している。4つの軌道修正モータ30には、胴体(ボディ)12の後部又は機尾部の周囲の後部又は機尾端部の周りに軸対称に間隔が置かれている。
【0012】
飛行中にミサイル10の方位を変えるために、軌道修正モータ30を使用する。各軌道修正モータ30は、実質的に同じ推進力を有し得る。各々は、実質的に同一であり得る。軌道修正モータ30の点火のタイミングを制御することによって、ミサイル10の方位が制御され得る。例えば、1つの軌道修正モータの点火と、その軌道修正モータに直径方向に向かい合っている対応物の点火とに、短い時間間隔に置くことによって、定められた軸における小さな回転を得ることができる。直径方向に向かい合っているモータに点火する時間間隔を延ばすことによって、軸を中心とするミサイルのより大きな回転を得ることができる。直径方向に向かい合っているモータは、実質的に同じ推進力を有しているので、両者の軌道修正モータ30が燃焼し終わった後に、ミサイルの残留回転が実質的にないことが理想的である。上述のような軌道修正モータ30を使用すると、都合の良いことに、軌道修正モータ30の着火のタイミングを制御すること以外に(例えば、可変ノズルによって)加圧ガスを更に制御する必要がないことが分かるであろう。
【0013】
ミサイル10は、一連の補償スラスタ40を更に有している。例えば、軌道修正操縦後に残っているピッチ又はヨーの方向における残留回転によって、ミサイル10の角運動速度におけるずれが生じ、このずれを補償するために、一連の補償スラスタ40を使用する。角運動速度が閾値を越えたときに、補償スラスタ40のうちの1つ以上が点火され得る。閾値は、定数であってもよく、又は多数の係数によって決めてもよい。補償スラスタ40は、ミサイル10の胴体(ボディ)12の機尾部の周囲に沿って配置され得る。
【0014】
より一般的に、角度の変化率(角運動速度)に基づく係数が閾値を超えたときに、補償スラスタ40のうちの1つ以上が点火され得る。前の段落で概略的に述べた1つの可能性では、係数は角速度自体であり(又は、角速度に比例し)、閾値は角速度の閾値である。その代わりに、補償スラスタの点火を引き起こす係数として使用するために、感知された(測定された)角速度を統合(integrate)して、角変位を生成し、補償スラスタの点火を引き起こす閾値として角変位の閾値を使用してもよい。感知された角度の変化率に、変化率を感知する時間ステップを掛けることによって、このような統合を容易に行なうことができ、このような統合の和は、全体的な角変位に近似することが分かるであろう。スラスタがもたらす角度修正量を計算して、スラスタに点火する閾値として使用することもできるであろう。
【0015】
この中の説明において、望ましい角度の変化率がゼロである場合に、非ゼロの角度の変化率は、通常は誤差として見なされる。この中で説明されている概念の幾つかの応用において、これは真であり得るが、より一般的に、望ましい角度の変化率は必ずしもゼロであるとは限らず、誤差は、何らかの望ましい角度の変化率からのずれであり得ることが分かるであろう。ミサイル10は、前もってプログラムされた望ましい飛行経路か、又は、飛行中に決定された望ましい飛行経路を有し得る。これらは、角速度、角速度の統合、又は角度の変化率に基づく他の係数の何れかの点から、ずれを決定する名目上の基準として使用され得る。従って、角度の変化率に基づく係数は、角度の変化率(又は、例えば統合によって決定される、角変位)と、望ましい飛行経路の角度の変化率又は変位率との間における差であり得る。
【0016】
複数の方向の各々におけるスラストを与えるために、異なるサイズの補償スラスタ40があり得る。定められた方向に異なる量のスラストを与えるために、異なるサイズの補償スラスタ40が使用され得る。後述で更に説明されるように、最初に、スラストを大きく修正するために、補償スラスタ40のうちの最大のものに先ず点火して、その後に、飛行中により小さな修正をするために、より小さな補償スラスタ40を使用するように、ミサイル10は構成され得る。
【0017】
軌道修正操縦に基づく残留速度以外の係数からミサイル10にもたらされた角運動速度を修正するために、補償スラスタ40が使用され得ることが分かるであろう。例えば、メインモータ20のスラストが長手方向軸22と整列していない場合は、メインモータ20に点火することによって、何らかの角運動速度がもたらされ得る。
【0018】
メインモータ20と、軌道修正モータ30と、補償スラスタ40は全て、固体燃料ロケットモータであって、モータ又はスラスタの各々のための1本以上のノズルと共に適切な固体燃料を使用し得る。その代わりに、メインモータ20、軌道修正モータ30、及び/又はスラスタ40は、他のタイプの燃料を使用するか、又は他の構成を有していてもよい。軌道修正スラスタ又はモータ30は、個々の補償スラスタ40よりも、少なくとも1オーダ大きいスラストを与え得る。一例を挙げると、各軌道修正スラスタ30は、15ミリ秒に1300ポンドのスラストを与え得る一方で、各補償スラスタ40は、8ミリ秒に100ポンドのスラストを与え得る。これらは単に例示的な値であり、広範囲の他の値が可能であることが分かるであろう。
【0019】
ミサイル10は、他の適切な部分を有し得る。他の適切な部分は、垂直安定板52を含む。垂直安定板52は、胴体12と、ジャイロスコープ54、56と、制御装置60とにより展開され得る。ジャイロスコープ54、56は、ピッチとヨーの方向における角運動速度(角度の変化率)を決定するために使用されるピッチレートジャイロスコープであり得る。ピッチレートジャイロスコープは、ミサイルの誘導によく使用される慣性計測装置(inertial measurement unit, IMU)よりも、より単純で、より低廉で、より丈夫である。
【0020】
ジャイロスコープ54、56からの入力を使用して、補償スラスタ40の点火を制御するために、制御装置60を使用する。制御装置60は、補償スラスタ40のうちの1つ以上に点火するかどうかと、点火する時とを決定する論理を具現するマイクロコントローラであり得る。
【0021】
全方位軌道修正ミサイルをより正確にするために、ここに記載されているシステムを使用してもよく、低コストの制御システムを使用する広範囲の様々な他のミサイルに対して、このシステムを使用できることが分かるであろう。(例えば、大気圏外での制御の場合に)空中での制御が効果的でないか、費用がかかり過ぎるか、(例えば、飛行時間の短いミサイルの場合に)十分な制御の効果が得られないミサイルにおいて、この低コストの制御システムは最も有益であるだろう。
【0022】
図2は、ミサイル10を導くプロセスの例を示している。この例は、地上の乗り物100において発射された、到来する発射体又はミサイル(例えば、ロケット推進式のてき弾(rocket propelled grenade, RPG))120を要撃して使えなくするプロセスを示している。ミサイル10は、最初に、発射台に結合されて配置され、臍の緒90によって発射台80に結合され得る。発射体120が検出されると、参照番号122で示されている穏やかな打ち上げで、発射台80から要撃機ミサイル10が発射される。穏やかに打ち上げられたときの要撃機ミサイル10のスピードは、比較的に遅いかもしれない。十分に遅いスピードで、例えば18−37メートル/秒(60−120フィート/秒)で、ミサイル10が穏やかに打ち上げられた場合に、軌道修正モータ40は、希望の時間及び距離内で任意の角度を得るのに十分なスラストを与えることができる。
【0023】
穏やかな打ち上げの後に、垂直安定板52は、ステップ124に示されているように展開する。要撃機ミサイル10が発射台80から離れると、垂直安定板52が(存在する場合は)自動的に展開し得る。垂直安定板52は、ばねを利用して力を加えられてもよく、又はさもなければ、自動的に展開するように構成されていてもよい。
【0024】
ステップ128において、要撃機ミサイル10の針路変更が示されている。既に記載したように、発射体120を要撃するのに望ましい針路に要撃機ミサイル10を素早く効率的に移動させるために、軌道修正モータ30に選択的に点火することによって、針路変更が達成される。発射台80とミサイル10を最初に結合する臍の緒90を通じて、望ましい最終的な針路に関する情報、或いは他の命令又は情報が、要撃機ミサイル10に送られ得る。
【0025】
要撃機ミサイル10に対する望ましい方位に合わせた後で、要撃機ミサイル10の固体燃料ロケットモータ20(図1)に点火する。その結果、130に示されているブースト段階になる。この段階において、要撃機ミサイル10と、到来する発射体又はミサイル120との交点に向かって、要撃機ミサイル10は大幅に加速して、スピードを上げる。モータの燃焼完了(固体燃料ロケットモータ30の、即ち要撃機ミサイル10に対するメインブースト推進システムの、燃焼完了)のときの速度は、約150m/秒であり得る。
【0026】
最終的に、到来する発射体又はミサイル120の予め決められた距離内に、要撃機ミサイル10が存在するときに、134に示されているように、ミサイルの弾頭部14(図1)が爆発する。これにより、弾頭部の断片16(図1)が、到来する発射体120に向かって激しく進んでいく。弾頭部の断片16からの損傷によって、到来する発射体120は使えないものになり、発射体又はミサイル120が、その目標、即ち地上の乗り物100に到達するのを防ぐ。断片16は、鋼又はタングステンのような重い材料で作られ得る。
【0027】
既に記載したように、ステップ128の軌道修正操縦と、ステップ134における弾頭部の爆発との間の任意の時間に、補償スラスタ40(図1)が点火され得る。ピッチ及び/又はヨーの方向において角速度が変化し過ぎたことが検出されたときはいつでも、制御装置60(図1)を使用して、補償スラスタ40のうちの1つ以上に点火し得る。これは、角速度の変化を小さくして、角速度の変化をゼロに近付けて、意図した目的地(目標)に向かう針路上にミサイル10が存在しているときの望ましい変化率をもたらす。
【0028】
図3は、飛行しているプラットフォーム、即ちヘリコプタ150からの、ミサイル10の打ち上げを示している。ミサイル10の目的は、予測飛行経路154に沿って移動すると予測されているRPG120を要撃することであり得る。飛行中にミサイル10の針路を修正するために、補償スラスタ40(図1)に点火することが必要であり得る。ミサイル10の飛行中の様々な点160において、このような姿勢制御の調整(補償)が補償スラスタ40によって行われる。これにより、ミサイル10は、RPG120の予測飛行経路154に近い状態を維持した飛行経路164を進むことができる。その目的は、ミサイル10が爆発時にRPG120に十分に近付いていて、ミサイルの弾頭部の爆発の衝撃による断片16の散布によって、RPG120を少なくとも使えないものにし、RPG120が、意図した目標、例えばヘリコプタ150に到達するのを妨げることである。
【0029】
ここで図4を参照すると、プロットは、補償スラスタ40(図1)の使用例を示している。図4のプロットは、図2のステップ128に示されているような軌道修正操縦中又はその後における、ミサイル10(図1)に対する角速度対時間を示している。プロットは、ピッチ又はヨーのうちの一方に関する。他方の方向では、時間と共に角速度が同様に変化し得ることが分かるであろう。軌道修正モータ30(図1)の点火は、スラストイベント200、202として表わされている。軌道修正操縦128の後で補償スラスタ40に点火する必要があるかどうかを決定する際に、予め決められた角速度の閾値204を使用する。閾値204を超えている場合は、補償スラスタ40のうちの1つ以上に点火して、角速度の閾値204によって境界を示された範囲208内の、ゼロに向けて、角速度を戻す。
【0030】
閾値から外れる2つのイベント210、212によって、補償スラスタ40の点火が引き起こされて、その結果、それぞれの補償スラストイベント214、216が生じる。閾値から外れるイベント210は、軌道修正操縦後に残った残留角速度が原因で発生する。イベント210は、ジャイロスコープ54、56(図1)によって感知される。ジャイロスコープ54、56は、角速度情報を制御装置60(図1)に提供する。補償スラスタ40のうちの1つ以上に点火することによって生じる補償スラストイベント214は、上述の閾値の角運動速度を補償して、角運動速度を、望ましい角運動速度の範囲208に戻す。図4に示されているように、実際には、これは、角運動速度がゼロを越えて、他方の方向(例示されているケースでは、正から負に)動かす場合がある。
【0031】
補償スラストイベント214後の残留角速度は、ドリフトし続けて、今度は、閾値から外れるイベント210と反対方向における、別の閾値から外れるイベント212を生じ得る。これは、補償スラストイベント216を引き起こして、補償スラストイベント214に使用された補償スラスタ40と反対側の、ミサイル10(図1)の補償スラスタ40(図1)に点火する。これは、望ましい角運動速度の範囲208内に角速度を再び戻す。
【0032】
図4は、簡単な補償方法を示しており、固定された予め決められた閾値レベルを用いて、これを超えると、補償スラスタ40(図1)のうちの1つの点火が自動的に引き起こされる。様々なより複雑な補償方法が可能であることが分かるであろう。例えば、考えられる補償スラスタの点火を引き起こす閾値レベルは、可変であって、異なる時間に異なる閾値レベルを有しているか、又は異なるイベントによって引き起こされてもよい。補償スラスタ及び/又は他のスラスタの点火は、閾値204の一方又は両方における変化を引き起こし得る。変化は一時的であって、閾値204は、一時的に下がって、次に、古い値に(例えば、直線的に)再び減衰し得る。別の例として、飛行中、例えば、ミサイル10(図1)が目標点に近付いているときに、この点において角運動速度の誤差があっても、意図した飛行経路からミサイル10が外れる時間がより短いという理由で、このような誤差はより許容できることが分かると、閾値204を上げてもよい。
【0033】
別の考えられるバリエーションでは、閾値204を超えている場合であっても、1つ以上の係数に対して補償スラスタ40(図1)の点火を調節する。補償スラスタ40のうちの1つ以上に点火するかどうかの決定は、図4に示されている補償スラスタ40の点火を自動的に決定することよりも、複雑であり得る。補償スラスタ40に点火するかどうかを決定する際に、例えば、意図した目標点に到達するための距離(又は、時間)と角速度のレベルのような、様々な係数が使用され得る。補償スラストが必要であると決定すると、幾つの補償スラスタ40に点火するか、及び/又は異なるサイズの補償スラスタ40のうちのどれに点火するかについて、更に決定し得る。
【0034】
別の考えられるバリエーションでは、補償スラスタ40(図1)の点火のタイミングを制御する。タイミングは、上述の様々な係数のうちの何れか又は全てによって制御又は影響される。使われ得る更に別の変数は、メインロケットモータ20(図1)が現在点火されているかどうかである。メインモータ20が点火されている場合は、(用いられる補償スラスタ40の数及び/又はタイプを選択することによって)補償スラストを適用するタイミング及び/又は使用される補償スラスト量について、制御装置60(図1)において行われる決定に、これが影響を及ぼし得る。
【0035】
図5は、閾値を設定するより複雑なやり方の一例を示しており、時間に対してプロットされた、ある特定の方向(ピッチ又はヨー)におけるミサイルの角速度240の時間に対するプロットを示している。正の角速度の閾値242と負の角速度の閾値244は、時間と共に、様々なイベントに応答して変化する。図5に示されている履歴における軌道修正操縦250は、図4に示されているものに似ている。軌道修正操縦250は、残留角運動速度252を伴って終了している。残留角運動速度252は、最初の正の閾値254の2倍よりも大きい。このため、システムは、正の閾値254をより低い閾値258に低減する。例示的な数値を与えると、これは、40度/秒から10度/秒への低減であり得る。これは、将来に許容され得る正の角速度のずれの量を低減することによって、正の方向における大きな角速度の補償を助けるために行われ得る。
【0036】
読み出し遅延260の後で、補償スラスタ40(図1)のうちの1つ以上が点火されて、補償スラストイベント262が生じる。これは、角速度240を負に動かす。負の補償スラストイベント262は、負の閾値264の変化を引き起こし得る。この変化は、部分的な変更であって、例えば、負の閾値を−40度/秒から−160度/秒に変化させて、許容角速度の範囲を拡張し得る。この変化は、減衰し、即ち、1つの例示的な値を与えると、200度/秒において負の閾値の上向き傾斜を有する。これは、対向方向の補償スラスタ40(図1)を素早く連続的に点火することによって前後に振れる状況を回避するために行われ得る。このような効果は、ピンポン効果と称され、それが利用可能な補償スラスタを使い果たすのを過度に早め得るという点で、非常に望ましくないであろう。
【0037】
メインロケットモータ20(図1)が点火されるのと同時に、メインロケットモータのスラストイベント270が生じる。示されている例において、スラストイベント270は、その期間の全体を通じて、角速度240の正の変化を生じさせ、(負の補償イベントが行われていないときは)角速度240の上向き傾斜として表わされる。
【0038】
メインモータの調整不良に基づく上向き傾斜により、角速度は、点272において正の閾値242を超える。これは、別の補償スラスタ40(図1)の点火を引き起こして、第2の負のスラストイベント276が生じる。負の閾値244は、角速度に対する望ましいゼロの値から更に遠くに拡張され得る。同じ方向における複数の補償スラスタ40が点火されたときは必ずこのようになり得る。その代わりに、同じ方向における補償スラスタのうちのある特定数の補償スラスタ、例えば、定められた方向における補償スラスタの全て、又は他の目的のために取って置いている補償スラスタを除く補償スラスタの全てが点火されたときに、閾値が拡張され得る。後者のオプションに関して、例えば、動いている目標の動きに対して修正するといった、飛行経路の修正のために、各方向の補償スラスタ40のうちの1つを取って置いてもよい。その代わりに又は更に、最終的な照準を定めるために、各方向における補償スラスタ40のうちの1つを取って置いてもよい。従って、4方向以上のうちの各方向に5つの補償スラスタ40を備えたシステムでは、角速度の閾値を越えたことに応答して補償スラストイベントを行なう際に使用するために、5つの補償スラスタ40のうちの3つ又は4つのみが利用可能であり得る。より一般的に、角速度の閾値を越えたことに応答すること以外の目的のために、補償スラスタ40のうちの幾つかを取って置いてもよい。
【0039】
点278において負の角速度の閾値244を越えたことに応答して、次の補償スラスタ40(図1)が点火する。点278に到達する前に、角速度240は実質的に変化していないが、負の閾値244の減衰(時間と共に低減すること)が原因で、負の閾値244を超えると、補償スラスタ40のうちの1つに点火して、正の方向において角速度240を上げることによって角速度240に影響を及ぼす補償スラストイベント280を生じさせる。同時に、上述で参照したピンポン効果を回避するように、正の角速度の閾値242を上げる。
【0040】
図6は、補償スラスタ40(図1)を使用して、ミサイル10(図1)の飛行を制御する方法300のハイレベルのフローチャートを示している。方法300における様々なステップは、制御装置60(図1)において行なわれる。ステップ302において、制御装置60は、ジャイロスコープ54、56(図1)からデータを受信する。ステップ304において、このデータにおける角速度と、補償スラスタ40を使用して可能な補償を引き起こす閾値とを比較する。例えば、閾値のうちの1つ以上における減衰のために、閾値を超えていない場合は、プロセスは、恐らくはステップ308における閾値の調整後に、最初に戻る。
【0041】
閾値を越えている場合は、ステップ310において、補償スラスタ40(図1)の1つ以上に点火するかどうかに関する別の決定点に到達し得る。既に記載したように、角速度の閾値を超えたときに、補償スラスタ40のうちの1つ以上が自動的に点火され得る。その代わりに、閾値を超えている場合であっても、例えば、ミサイル10がその目標点に近い場合は、制御装置60(図1)において、補償スラスタに点火しないと決定される場合がある。
【0042】
補償スラスタ40(図1)の1つ以上に点火すると決定された場合は、ステップ314において、補償スラスタ40のうちの幾つに及び/又はどれに点火するかと、点火のタイミングとについて、可能な更なる決定を行なう。このような決定をするのに、多くの係数が使用され得る。補償スラスタ40の数及び/又はサイズを予め決めておいてもよく、このステップを省略してもよいことが分かるであろう。
【0043】
最後に、ステップ320において、補償スラスタ40(図1)のうちの1つ以上に点火するために、点火信号を送る。次に、ステップ308において、例えば、1つ以上の補償スラスタ40の点火を考慮に入れて、閾値が調整され得る。
【0044】
本発明は、ある特定の好ましい1つ又は複数の実施形態に関連して示されて説明されているが、他の当業者が、添付の図面と共にこの明細書を読んで理解したときに、同等の変更及び部分的な変更を思い付くのは明らかである。特に、上述の要素(コンポーネント、アセンブリ、デバイス、構成、等)によって行なわれる様々な機能に関して、このような要素を説明するために使用されている用語(「手段」に対する参照を含む)は、本発明のここに記載されている例示的な1つ又は複数の実施形態における、記載されている要素(即ち、機能的に同等の要素)の特定の機能を実行する開示された構造と構造的に同等でなくても、特に指定されていない限り、その特定の機能を実行する任意の要素に相当することが意図されている。更に、幾つかの例示的な実施形態の1つのみ又はそれ以上に関連して、本発明の特定の特徴が記載されているが、任意の定められた又は特定の応用にとって望ましく有益であり得るので、このような特徴を、他の実施形態の1つ以上の他の特徴と組み合わせてもよい。
【符号の説明】
【0045】
10・・・ミサイル、12・・・胴体、14・・・弾頭部、16・・・断片、20・・・メインモータ、22・・・長手方向軸、30・・・軌道修正モータ、40・・・補償スラスタ、52・・・垂直安定板、54,56・・・ジャイロスコープ、60・・・制御装置、80・・・発射台、90・・・臍の緒、100・・・地上の乗り物、120・・・ロケット推進式のてき弾、122・・・穏やかな打ち上げ、130・・・ブースト段階、150・・・ヘリコプタ、154・・・予測飛行経路、164・・・飛行経路、200,202,214,216,262,270,276,280・・・スラストイベント、204,242,244,254,258,264・・・閾値、208・・・範囲、210,212・・・閾値から外れるイベント、240・・・角速度、250・・・軌道修正操縦、252・・・残留角運動速度、260・・・読み出し遅延、272,278・・・点、300・・・ミサイルの飛行を制御する方法。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミサイルの飛行を制御する方法であって、
前記ミサイルの角度方位の変化率を感知するステップと、
前記ミサイルの前記角度方位の変化率に基づく係数が、閾値の係数の値を超えた場合に、前記ミサイルの前記角度方位の変化率を変化させるために、前記ミサイルの1つ以上の補償スラスタに点火することに関して決定するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
前記感知するステップの前に、前記ミサイルの方位を変化させるステップを更に含む、請求項1の方法。
【請求項3】
前記方位を変化させるステップは、軌道修正スラスタに点火することによって達成される、請求項2の方法。
【請求項4】
前記軌道修正スラスタは、前記補償スラスタよりも少なくとも1オーダ大きいスラストを与える、請求項3の方法。
【請求項5】
前記角度方位の変化率を感知するステップは、前記ミサイルの前記方位を変化させた後に残った角度方位の残留変化率を感知するサブステップを含む、請求項2乃至4の何れか1項の方法。
【請求項6】
前記1つ以上の補償スラスタは、固体燃料の補償スラスタを含み、
前記点火することは、前記固体燃料の補償スラスタのうちの1つ以上に点火することを含む、請求項1乃至5の何れか1項の方法。
【請求項7】
前記角度方位の変化率を感知するステップは、前記ミサイルの角加速度によってもたらされる前記角度方位の変化率に対する変化を感知するサブステップを含む、請求項1乃至6の何れか1項の方法。
【請求項8】
前記感知するステップは、ミサイルのロケットモータのスラストの調整不良によってもたらされる角度方位の変化を含む、請求項7の方法。
【請求項9】
前記閾値の角速度の変化は、予め決められた定数の閾値の角速度の変化である、請求項1乃至8の何れか1項の方法。
【請求項10】
前記閾値の係数の値を変化させるステップを更に含む、請求項1乃至8の何れか1項の方法。
【請求項11】
前記変化させるステップは、前記補償スラスタのうちの1つ以上の点火に応答して、前記閾値の係数の値を変化させるサブステップを含む、請求項10の方法。
【請求項12】
前記変化させるステップは、正の閾値と負の閾値とを別々に変化させるサブステップを含む、請求項10又は11の方法。
【請求項13】
前記変化させるステップは、前記係数が予め決められた値を超えたときに、前記閾値の係数の値を下げるサブステップを含む、請求項10乃至12の何れか1項の方法。
【請求項14】
前記変化させるステップは、前記閾値を一時的に上げるサブステップを含み、
前記閾値は、前記一時的に上げた後で、時間と共に減衰する、請求項10乃至13の何れか1項の方法。
【請求項15】
飛行を制御することは、前記ミサイルのピッチとヨーの方向において姿勢を制御することを含み、
前記感知するステップは、角度方位のピッチとヨーの変化率を感知するサブステップを含み、
前記補償スラスタは、前記ピッチとヨーの方向において姿勢を制御する姿勢制御モーメントを与える補償スラスタを含む、請求項1乃至14の何れか1項の方法。
【請求項16】
前記感知するステップは、1つ以上のジャイロスコープを使用して感知するサブステップを含む、請求項1乃至15の何れか1項の方法。
【請求項17】
前記1つ以上のジャイロスコープは、1つ以上のピッチレートジャイロスコープを含む、請求項16の方法。
【請求項18】
前記決定するステップは、前記点火のタイミングに関して決定するサブステップを含む、請求項1乃至17の何れか1項の方法。
【請求項19】
前記補償スラスタは、異なるサイズの補償スラスタを含み、
前記決定するステップは、前記異なるサイズの補償スラスタのうちのどれに点火するかを決定するサブステップを含む、請求項1乃至18の何れか1項の方法。
【請求項20】
前記決定するステップは、意図した目標点に対する前記ミサイルの近さに少なくとも部分的に基づいて決定するサブステップを含む、請求項1乃至19の何れか1項の方法。
【請求項21】
前記係数は、前記角度方位の変化率に比例する、請求項1乃至20の何れか1項の方法。
【請求項22】
前記係数は、前記角度方位の変化率と、前記ミサイルの望ましい飛行経路の角度方位の変化率との間における差である、請求項1乃至20の何れか1項の方法。
【請求項23】
前記係数は、前記感知された角度方位の変化率を統合することによって計算される角変位である、請求項1乃至20の何れか1項の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2013−503320(P2013−503320A)
【公表日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−526741(P2012−526741)
【出願日】平成22年4月20日(2010.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2010/031676
【国際公開番号】WO2011/028304
【国際公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【出願人】(503455363)レイセオン カンパニー (244)
【Fターム(参考)】