説明

媒体供給装置および画像形成装置

【課題】媒体の湾曲され易さに応じて、供給される媒体の湾曲を精度良く解消すること。
【解決手段】積載部材(11)と、積載部材(11)に積載された媒体(S)を取り出して媒体幅方向に湾曲させながら下流側に搬送する取出部材(21)と、取出部材(21)の下流側に配置された媒体幅方向一対の搬送部材(61)と、各搬送部材(61)の少なくとも一方の回転中心(67,87)を媒体幅方向に傾斜可能に支持する支持機構(121)であって第1の搬送位置(P1)と前記第1の搬送位置(P1)に比べて傾斜角(θ)が大きな第2の搬送位置(P2)との間で移動可能に支持する支持機構(121)と、を備え、予め設定された媒体が搬送される場合に搬送部材(61)が第1の搬送位置(P1)に移動し、湾曲し易い媒体が搬送される場合に搬送部材(61)が第2の搬送位置(P2)に移動する媒体供給装置(U2)。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体供給装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
媒体収容部から媒体を供給する技術として、以下の特許文献1〜3に記載の技術が知られている。
【0003】
特許文献1としての特開2002−19978号公報には、用紙の供給方向に移動可能に支持され且つスタック(56)上に積載された用紙を負圧状態を作り出して吸着する用紙給送装置プレナム(58)と、前記用紙給送装置プレナム(58)の用紙供給方向下流側に配置され且つ前記給送装置プレナム(58)から用紙を受け取って下流側に搬送する給送ローラ(55)とを有する用紙給送装置が記載されている。
特許文献1の用紙給送装置プレナム(58)では、スタック(56)上の用紙に対向する真空用紙接触面(122)に、前記面(122)に対して突出するリブを設け、用紙を吸着する際に波形に湾曲させて、複数吸着された場合の用紙どうしを分離させ易くしている。このとき、特許文献1の用紙給送装置プレナム(58)では、用紙が吸着されると、給送ロール(55)側に移動して、吸着されて波形のままの用紙を給送ローラ(55)に供給している。
【0004】
特許文献2としての特開平4−89729号公報には、記録紙(P1)が載置され昇降する載置板(149)と、前記載置板(149)上に対向して配置され且つローラ(160a〜160d,161a〜161d)間に回転可能に支持されて複数の貫通孔が形成された4つの無端状の給送用張架ベルト(157a〜157d)と、前記給送用張架ベルト(157a〜157d)内部に配置され且つ負圧を形成してベルト(157a〜157d)の貫通孔から載置板(149)上の記録紙(P1)を吸着する真空装置吸引箱(162)と、を有する給紙装置(38)が記載されている。
特許文献2の給紙装置(38)では、隣り合うベルト(157a〜157d)の間に搬送方向に沿って延び且つ下方に突出する突起(167a〜167c)が設けられ、且つ、給送用張架ベルト(157a〜157d)の内側に、前記ベルト(157a〜157d)を下方に押してベルト(157a〜157d)の下面を傾斜させる隆起体(265,267)が設けられており、記録紙(P1)が給送用張架ベルト(157a〜157d)に吸着されると、突起(167a,167b,167c)などで変形して、複数吸着された場合に記録紙(P1)どうしが分離し易くなる。このとき、給送用張架ベルト(157a〜157d)は、変形したままの記録紙(P1)を下流側に搬送している。
【0005】
特許文献3としての特開2000−219335号公報には、用紙幅方向中央部に配置され且つ用紙が収容されたカセット(2)から用紙を給紙する断面D形状で半円柱状の給紙ローラ(6)と、前記給紙ローラ(6)の搬送方向下流側に配置され且つ前記給紙ローラ(6)よりも軸方向外側に配置された軸方向一対の搬送ローラ(7)とを有する画像形成装置が記載されている。
特許文献3では、給紙ローラ(6A)に給紙される際に、紙に押し当てられる給紙ローラ(6A)に押されて生じる用紙幅方向中央部の撓みを、搬送ローラ(7A)の間に配置されたガイド(17)で案内して押さえ込んで搬送したり、搬送ローラ(7D)をハの字型に配置して用紙を軸方向外側に伸ばしながら搬送するなどして、用紙の種類に関わらず同一の構成で低減し、搬送時の異音や紙シワの発生を低減している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−19978号公報(図12、図16〜図18)
【特許文献2】特開平4−89729号公報(第5頁左上欄第6行目から第5頁左下欄第5行目、第5頁左上欄第6行目から第5頁左下欄第5行目、第9頁左上欄第4行目から第9頁左上欄第11行目、第1図、第3図)
【特許文献3】特開2000−219335号公報(「0027」〜「0029」、「0035」〜「0037」、「0042」〜「0044」、図1、図3、図4)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、媒体の湾曲され易さに応じて、供給される媒体の湾曲を精度良く解消することを技術的課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記技術的課題を解決するために、請求項1に記載の発明の媒体供給装置は、
表面に媒体が積載される積載部材と、
前記積載部材に積載された媒体を取り出して、媒体搬送方向に対して交差する媒体幅方向に湾曲させながら下流側に搬送する取出部材と、
前記取出部材に対して媒体搬送方向の下流側に配置され、媒体幅方向に間隔を空けて配置された一対の搬送部材と、
前記各搬送部材の少なくとも一方の回転中心を、媒体幅方向に対して傾斜可能に支持して媒体幅方向の外端に進むに連れて媒体搬送方向の上流側に傾斜可能に支持する支持機構であって、予め設定された第1の搬送位置と、前記第1の搬送位置に比べて、前記回転中心の媒体幅方向に対する傾斜角が大きな第2の搬送位置と、の間で、前記搬送部材の回転中心を移動可能に支持する前記支持機構と、
を備え、
予め設定された種類の媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第1の搬送位置に移動し、且つ、前記予め設定された種類の媒体よりも湾曲し易い媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第2の搬送位置に移動する
ことを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の媒体供給装置において、
予め設定された湾曲し難い種類の媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第1の搬送位置に移動し、且つ、予め設定された湾曲し易い種類の媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第2の搬送位置に移動する
ことを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の媒体供給装置において、
媒体を挟んで対向する一対の回転体を有する前記搬送部材と、
一方の回転体の軸の一端を、他方の回転体に対して接近離間する方向に移動可能に支持する一端支持部と、前記一方の回転体の軸の他端を、前記他方の回転体に対して接近離間する方向に対して傾斜する方向に支持し且つ前記他方の回転体から離間するに連れて、前記一端支持部に支持された前記一方の回転体の軸の他端を、前記第2の搬送位置側から前記第1の搬送位置側に移動可能に支持する他端支持部と、を有する前記支持機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0011】
前記技術的課題を解決するために、請求項4に記載の発明の媒体供給装置は、
表面に媒体が積載される積載部材と、
前記積載部材に積載された媒体を取り出して、媒体搬送方向に対して交差する媒体幅方向に湾曲させながら下流側に搬送する取出部材と、
前記取出部材に対して媒体搬送方向の下流側に配置され、媒体幅方向に間隔を空けて配置された一対の搬送部材と、
前記各搬送部材の少なくとも一方の回転中心を、媒体幅方向に対して傾斜可能に支持して媒体幅方向の外端に進むに連れて媒体搬送方向の上流側に傾斜可能に支持する支持機構であって、予め設定された第1の搬送位置と、前記第1の搬送位置に比べて、前記回転中心の媒体幅方向に対する傾斜角が大きな第2の搬送位置と、の間で、前記搬送部材の回転中心を移動可能に支持すると共に、前記搬送部材に接触した媒体から受ける湾曲した媒体の復元力に応じて前記第1の搬送位置と前記第2の搬送位置との間で前記搬送部材が移動される前記支持機構と、
を備えたことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載の媒体供給装置において、
媒体幅方向に沿った基準の搬送位置と、前記基準の搬送位置に比べて、前記回転中心の媒体幅方向に対する傾斜角が大きな前記第1の搬送位置と、前記第2の搬送位置と、の間で、前記搬送部材の回転中心を移動可能に支持する前記支持機構であって、前記搬送部材の回転中心と共に前記基準の搬送位置と前記第1の搬送位置と前記第2の搬送位置との間を移動する可動部と、前記可動部を前記基準位置に向けて付勢する弾性部材と、を有する前記支持機構、
を備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載の媒体供給装置において、
前記積載部材に対向して配置され且つ媒体搬送方向に沿って移動可能に支持された取出部材本体と、前記取出部材本体に設けられ且つ前記積載部材に対向して配置される対向面と、前記対向面に形成された気体吸引用の開口と、前記取出部材本体に設けられ且つ前記対向面に対して前記積載部材側に突出する突出部材と、前記気体吸引用の開口に接続されて前記気体吸引用の開口から気体を吸引する吸引装置と、を有し、前記吸引装置の吸引に伴って前記積載部材上から媒体を取り出して吸着し且つ前記突出部材に接触させて媒体を媒体幅方向に湾曲させて保持する前記取出部材、
を備えたことを特徴とする。
【0014】
前記技術的課題を解決するために、請求項7に記載の発明の画像形成装置は、
請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体供給装置、
を備えたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
請求項1,4,7に記載の発明によれば、搬送部材が第1の搬送位置と第2の搬送位置との間で移動しない場合に比べて、媒体の湾曲され易さに応じて、供給される媒体の湾曲を精度良く解消することができる。
請求項2に記載の発明によれば、搬送部材が、湾曲し難い種類の媒体が搬送される場合に第1の搬送位置に移動し、且つ、湾曲し易い種類の媒体が搬送される場合に第2の搬送位置に移動しない場合に比べて、供給される媒体の湾曲を精度良く解消することができる。
請求項3に記載の発明によれば、搬送部材が媒体の厚さに応じた搬送位置に移動しない場合に比べて、簡素な構成で媒体の湾曲を精度良く解消することができる。
請求項5に記載の発明によれば、可動部が基準の搬送位置に向けて弾性部材で付勢されていない場合に比べて、媒体通過後に、搬送部材を基準の搬送位置に戻すことができる。
請求項6に記載の発明によれば、吸着された複数の媒体を分離する際の湾曲を解消することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
【図2】図2は実施例1の給紙トレイの要部拡大図である。
【図3】図3は実施例1の給紙トレイの平面図である。
【図4】図4は実施例1の吸着ヘッドの説明図であり、図4Aは正面図、図4Bは平面図である。
【図5】図5は実施例1の吸着ヘッドを斜め下方から見た斜視図である。
【図6】図6は図4BのVI−VI線断面図である。
【図7】図7は実施例1の前軸支持機構の説明図であり、図7Aは前軸支持機構の全体図、図7Bは図7Aにおける矢印VIIB方向に見た説明図である。
【図8】図8は実施例1の軸支持機構の傾斜用の動力伝達機構の説明図である。
【図9】図9は従動コロの搬送位置の説明図であり、図9Aは緩傾斜位置に移動した状態の説明図、図9Bは急傾斜位置に移動した状態の説明図である。
【図10】図10は実施例1の記録シートが供給される場合の作用説明図であり、図10Aは画像形成動作が開始される前の積載プレートが下降位置に移動した状態の給紙トレイの説明図、図10Bは画像形成動作が開始されて積載プレートが上昇位置に移動した状態の説明図である。
【図11】図11は実施例1の記録シートが供給される場合の作用説明図であり、図11Aは図10Bに示す状態から媒体が吸着されると共に媒体分離用のエアが吹き付けられた状態の説明図、図11Bは図11Aに示す状態から吸着ヘッドが吸着位置から供給位置に移動した状態の説明図である。
【図12】図12は実施例1の記録シートが供給される場合の作用説明図であり、図12Aは図11Bに示す状態から吸着ヘッドが吸着位置に向けて移動を開始した状態の説明図、図12Bは図12Aに示す状態から吸着ヘッドがさらに移動して吸着位置に到達した状態の説明図である。
【図13】図13は図11Bの矢印XIII方向に見た場合の作用説明図であり、図13Aは受取ロールが緩傾斜位置に移動した状態の説明図、図13Bは受取ロールが急傾斜位置に移動した状態の説明図である。
【図14】図14は実施例2の前軸支持機構の説明図であり、図14Aは前軸支持機構の全体図であって実施例1の図7Aに対応する図、図14Bは図14Aにおける矢印XIVB方向に見た説明図であって実施例1の図7Bに対応する図である。
【図15】図15は実施例2の受取ロールの説明図であり、図15Aは受取ロールが基準位置に移動した状態の説明図、図15Bは受取ロールが緩傾斜位置に移動した状態の説明図、図15Cは受取ロールが急傾斜位置に移動した状態の説明図である。
【図16】図16は実施例3の前軸支持機構の説明図であり、図16Aは前軸支持機構の全体図であって実施例1の図7Aに対応する図、図16Bは図16Aにおける矢印XVIB方向に見た説明図であって実施例1の図7Bに対応する図、図16Cは図16Aにおける矢印XVIC方向に見た説明図である。
【図17】図17は実施例3の前側ロール対の作用説明図であり、図17Aは前側ロール対が薄紙を搬送する場合の説明図、図17Bは図17Aにおける矢印XVIIB方向に見た説明図、図17Cは図17Aにおける矢印XVIIC方向に見た説明図、図17Dは前側ロール対が厚紙を搬送する場合の説明図、図17Eは図17Dにおける矢印XVIIE方向に見た説明図、図17Fは図17Dにおける矢印XVIIF方向に見た説明図である。
【図18】図18は実施例3の受取ロールの作用説明図であり、図18Aは記録シートが無くて駆動コロと従動コロが接触している状態の説明図、図18Bは受取ロールが急傾斜位置に移動した状態の説明図、図18Cは受取ロールが緩傾斜位置に移動した状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
次に図面を参照しながら、本発明の実施の形態の具体例(以下、実施例と記載する)を説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
なお、以後の説明の理解を容易にするために、図面において、前後方向をX軸方向、左右方向をY軸方向、上下方向をZ軸方向とし、矢印X,−X,Y,−Y,Z,−Zで示す方向または示す側をそれぞれ、前方、後方、右方、左方、上方、下方、または、前側、後側、右側、左側、上側、下側とする。
また、図中、「○」の中に「・」が記載されたものは紙面の裏から表に向かう矢印を意味し、「○」の中に「×」が記載されたものは紙面の表から裏に向かう矢印を意味するものとする。
なお、以下の図面を使用した説明において、理解の容易のために説明に必要な部材以外の図示は適宜省略されている。
【実施例1】
【0018】
図1は本発明の実施例1の画像形成装置の全体説明図である。
図1において、画像形成装置Uは、操作部の一例としてのユーザインタフェースUI、画像情報の入力装置の一例としてのイメージスキャナU1、媒体供給装置の一例としての給紙装置U2、画像形成装置本体U3、および用紙処理装置U4を有している。
【0019】
前記ユーザインタフェースUIは、入力部の一例としてのコピースタートキー、コピー枚数設定キー、テンキー等の入力キーや表示部UI1を有している。
前記イメージスキャナU1は、原稿を自動的に搬送する自動原稿搬送装置および画像読取装置の一例としてのスキャナ本体等により構成されている。図1において、イメージスキャナU1では、図示しない原稿を読取って画像情報に変換し、画像形成装置本体U3に入力する。
給紙装置U2は、収容容器の一例であって、給紙部の一例としての複数の給紙トレイTR1、TR2と、前記各給紙トレイTR1、TR2から送り出された媒体の一例としての記録シートSを画像形成装置本体U3に搬送する搬送路の一例としての給紙路SH1等を有している。
【0020】
図1において、画像形成装置本体U3は、前記給紙装置U2から搬送された記録シートSに画像記録を行う画像記録部、現像剤の補給部の一例としてのトナーディスペンサー装置U3a、および用紙搬送路SH2、用紙排出路SH3、用紙反転路SH4、用紙循環路SH6等を有している。なお、前記画像記録部については後述する。
また、画像形成装置本体U3は、制御部C、および、前記制御部Cにより制御される潜像書込用の駆動回路の一例としてのレーザ駆動回路D、前記制御部Cにより制御される電源回路E等を有している。制御部Cにより作動を制御されるレーザ駆動回路Dは、前記イメージ入力装置U1から入力されたY:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の画像情報に応じたレーザ駆動信号を予め設定された時期に、各色の潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkに出力する。
【0021】
図1において、黒の像保持体ユニットUKは、像保持体の一例としての感光体ドラムPk、帯電器CCk、および像保持体用の清掃器の一例としての感光体クリーナCLkを有している。また、他の色Y,M,Cの像保持体ユニットUY,UM,UCも、感光体ドラムPy,Pm,Pc、放電器の一例としての帯電器CCy,CCm,CCc、感光体クリーナCLy,CLm,CLcを有している。なお、実施例1では、使用頻度の高く表面の磨耗が多いK色の感光体ドラムPkは、他の色の感光体ドラムPy,Pm,Pcに比べて大径に構成され、高速回転対応および長寿命化がされている。
前記各像保持体ユニットUY,UM,UC,UKと現像ロールR0を有する現像器GY,GM,GC,GKとによりトナー像形成部材UY+GY,UM+GM,UC+GC,UK+GKが構成されている。
【0022】
図1において、感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pkは、それぞれ帯電器CCy,CCm,CCc,CCkにより一様に帯電された後、前記潜像形成装置ROSy,ROSm,ROSc,ROSkの出力する潜像書込光の一例としてのレーザビームLy,Lm,Lc,Lkによりその表面に静電潜像が形成される。前記感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面の静電潜像は、現像器GY,GM,GC,GKにより、Y:イエロー、M:マゼンタ、C:シアン、K:黒の色の可視像の一例としてのトナー像に現像される。
【0023】
感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面上のトナー像は、一次転写器の一例としての1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kにより、中間転写体の一例としての中間転写ベルトB上に順次重ねて転写され、中間転写ベルトB上に多色画像、いわゆる、カラー画像が形成される。中間転写ベルトB上に形成されたカラー画像は、画像記録領域の一例としての2次転写領域Q4に搬送される。
なお、黒画像データのみの場合はK:黒の感光体ドラムPkおよび現像器GKのみが使用され、黒のトナー像のみが形成される。
1次転写後、感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk表面の残留トナーは感光体クリーナCLy,CLm,CLc,CLkによりクリーニングされる。
【0024】
像保持体ユニットUY〜UKの下方には、中間転写装置の一例としてのベルトモジュールBMが配置されている。前記ベルトモジュールBMは、中間転写体の一例としての中間転写ベルトBと、中間転写体の支持部材の一例としてのベルト支持ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aと、前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1kとを有している。ベルト支持ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aは、駆動部材の一例としてのベルト駆動ロールRd、張力付与部材の一例としてのテンションロールRt、蛇行防止部材の一例としてのウォーキングロールRw、従動部材の一例としての複数のアイドラロールRfおよび二次転写対向部材の一例としてのバックアップロールT2aを有する。そして、前記中間転写ベルトBは前記ベルト支持ロールRd,Rt,Rw,Rf,T2aにより矢印Ya方向に回転移動可能に支持されている。
【0025】
前記バックアップロールT2aの下方には2次転写ユニットUtが配置されている。2次転写ユニットUtの二次転写部材の一例としての2次転写ロールT2bは、前記中間転写ベルトBを挟んでバックアップロールT2aに離隔および接触可能に配置されており、前記2次転写ロールT2bが中間転写ベルトBと圧接する領域により2次転写領域Q4が形成されている。また、前記バックアップロールT2aには電圧印加用接触部材の一例としてのコンタクトロールT2cが当接しており、前記ロールT2a〜T2cにより2次転写器T2が構成されている。
前記コンタクトロールT2cには制御部Cにより制御される電源回路から、予め設定された時期に、トナーの帯電極性と同極性の2次転写電圧が印加される。
【0026】
前記ベルトモジュールBM下方には用紙搬送路SH2が配置されている。前記給紙装置U2の給紙路SH1から給紙された記録シートSは、複数の媒体搬送部材の一例としての搬送ロールRaにより、用紙搬送路SH2に搬送され、送出時期の調節部材の一例としてのレジロールRrにより、トナー像が2次転写領域Q4に搬送される時期に合わせて、媒体案内部材SGr、転写前の媒体案内部材SG1を通って2次転写領域Q4に送り出される。
前記中間転写ベルトB上のトナー像は、前記2次転写領域Q4を通過する際に前記2次転写器T2により前記記録シートSに転写される。なお、フルカラー画像の場合は中間転写ベルトB表面に重ねて1次転写されたトナー像が一括して記録シートSに2次転写される。
【0027】
2次転写後の前記中間転写ベルトBは、中間転写体の清掃器の一例としてのベルトクリーナCLBにより清掃、すなわち、クリーニングされる。なお、前記2次転写ロールT2Bは、中間転写ベルトBに対して離隔および接触可能に支持されている。
前記1次転写ロールT1y,T1m,T1c,T1k、中間転写ベルトB、二次転写器T2、ベルトクリーナCLB等により、感光体ドラムPy〜Pk表面の画像を記録シートSに転写する転写装置T1+B+T2+CLBが構成されている。
前記感光体ドラムPy,Pm,Pc,Pk、前記現像器GY,GM,GC,GK、前記転写装置T1+B+T2+CLB等により、実施例1の画像記録装置の一例としてのプリンタ部U3bが構成されている。
【0028】
トナー像が2次転写された前記記録シートSは、転写後の媒体案内部材SG2、定着前の媒体搬送部材の一例としての用紙搬送ベルトBHを通って定着装置Fに搬送される。前記定着装置Fは、加熱定着部材の一例としての加熱ロールFhと、加圧定着部材の一例としての加圧ロールFpとを有し、加熱ロールFhと加圧ロールFpとが圧接する領域により定着領域Q5が形成されている。
前記記録シートS上のトナー像は定着領域Q5を通過する際に定着装置Fにより加熱定着される。前記定着装置Fの下流側には搬送路の切替部材の一例としての第1ゲートGT1が設けられている。前記第1ゲートGT1は用紙搬送路SH2を搬送されて定着領域Q5で加熱定着された記録シートSを、用紙処理装置U4の用紙排出路SH3または用紙反転路SH4に選択的に切り替える。前記用紙排出路SH3に搬送された用紙Sは、用紙処理装置U4の用紙搬送路SH5に搬送される。
【0029】
用紙搬送路SH5の途中には、湾曲補正装置の一例としてのカール補正装置U4aが配置されており、前記用紙搬送路SH5には搬送路の切替部材の一例としてのカール切替ゲートG4が配置されている。前記カール切替ゲートG4は、前記画像形成装置本体U3の用紙搬送路SH3から搬送された記録シートSを、湾曲、いわゆる、カールの方向に応じて、第1カール補正部材h1または第2カール補正部材h2の側に搬送する。前記第1カール補正部材h1または第2カール補正部材h2に搬送された記録シートSは、通過時にカールが補正される。カールが補正された記録シートSは、排出部材の一例としての排出ロールRhから用紙処理装置U4の排出部の一例としての排出トレイTH1に用紙の画像定着面が上向きの状態、いわゆる、フェイスアップ状態で排出される。
【0030】
前記第1ゲートGT1により画像形成装置本体U3の前記用紙反転路SH4側に搬送された用紙Sは、弾性薄膜状の部材により構成された搬送方向の規制部材の一例としての第2ゲートGT2を押しのける形で通過して、画像形成装置本体U3の前記用紙反転路SH4に搬送される。
前記画像形成装置本体U3の用紙反転路SH4の下流端には、用紙循環路SH6および用紙反転路SH7が接続されており、その接続部にも、搬送方向の規制部材の一例としての第3ゲートGT3が配置されている。前記第1ゲートGT1を通って用紙搬送路SH4に搬送された用紙は、前記第3ゲートGT3を通過して前記用紙処理装置U4の用紙反転路SH7側に搬送される。両面印刷を行う場合には、用紙反転路SH4を搬送されてきた記録シートSは、前記第3ゲートGT3をそのまま一旦通過して、用紙反転路SH7に搬送された後、逆方向に搬送、いわゆる、スイッチバックさせられると、第3ゲートGT3により搬送方向が規制され、スイッチバックした記録シートSが用紙循環路SH6側に搬送される。前記用紙循環路SH6に搬送された記録シートSは前記給紙路SH1を通って前記2次転写領域Q4に再送される。
【0031】
一方、用紙反転路SH4を搬送される記録シートSを、記録シートSの媒体搬送方向後端が第2ゲートGT2を通過後、第3ゲートGT3を通過する前に、スイッチバックすると、第2ゲートGT2により記録シートSの搬送方向が規制され、記録シートSは表裏が反転された状態で用紙搬送路SH5に搬送される。表裏が反転された記録シートSは、カール補正部材U4aによりカールが補正された後、前記用紙処理装置U4の用紙排出トレイTH1に、用紙Sの画像定着面が下向きの状態、いわゆる、フェイスダウン状態で排出することができる。
前記符号SH1〜SH7で示された要素により用紙搬送路SHが構成されている。また、前記符号SH,V,Ra,Rr,Rh,SGr,SG1,SG2,BH、GT1〜GT3等で示された要素により媒体搬送系SUが構成されている。
【0032】
(給紙トレイTR1,TR2の説明)
図2は実施例1の給紙トレイの要部拡大図である。
ここで、実施例1の前記各給紙トレイTR1、TR2については、第2給紙トレイTR2についてのみ詳細に説明し、その他の前記各給紙トレイTR1については、前記第2給紙トレイTR2と同様の構成であるため、詳細な説明を省略する。
【0033】
図2において、前記第2給紙トレイTR2の左右両端の外方には、前後方向、すなわち、X軸方向に延びる案内部材の一例としてのレール1がそれぞれ配置されている。前記レール1の下面下側には回転部材の一例としてのローラ2が回転可能に支持されている。前記ローラ2の上部は、レール1の下面に形成された孔からレール1の上方に突出している。
また、前記第2給紙トレイTR2の左右両側の下部には、外方に膨出する被案内部材の一例としての被ガイドレール3が前後にそれぞれ延びて設けられており、前記被ガイドレール3は前記レール1下面のローラ2上面に支持されている。したがって、前記第2給紙トレイTR2は、前記左右の各レール1に沿って前後方向に出入可能に構成されている。すなわち、前記第2給紙トレイTR2は、前記給紙装置U2から引出された引出位置と、前記給紙装置U2に挿入された挿入位置との間で移動可能に構成されている。
【0034】
図3は実施例1の給紙トレイの平面図である。
図2、図3において、第2給紙トレイTR2は、底板4と、底板4の前後左右を囲むように上方に延びる前壁6、後壁7、左壁8および右壁9と、を有する。図3において、前記第2給紙トレイTR2の底板4の左部には、第1の案内部の一例として、左右方向に延びる溝状のエンドガイド溝4aが形成されており、底板4の右部には、第2の案内部の一例として、前後方向に延びる溝状のサイドガイド溝4bが形成されている。図2、図3において、前記右壁9の上端部には、上方に行くほど右方に傾斜する傾斜部9aが形成されており、傾斜部9aは送り出される記録シートSをシート搬送方向の下流側の搬送部材に案内する。
【0035】
前記底板4の上面には、積載部材の一例として、表面に記録シートSが積載される平板状の積載プレート11が配置されている。前記積載プレート11には、前記エンドガイド溝4aに対応して、左方から中央部に向けて延びる左開口11aと、サイドガイド溝4bに対応して前後両端から中央部に向けて延びる前開口11bおよび後開口11cと、が形成されている。実施例1の積載プレート11は、図示しない線状部材の一例としてのワイヤを用いた昇降機構により、上昇および下降可能に構成されている。すなわち、積載プレート11は、下降して記録シートSを積載可能な下降位置と、記録シートSを送り出すために上昇させる上昇位置との間で昇降可能に構成されている。なお、ワイヤを利用した記録シートSの昇降機構は、例えば、特開2010−143658号公報や特開2010−149982号公報等に記載されているように従来公知であり、従来公知の種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
【0036】
前記エンドガイド溝4aには、第1の端揃え部材の一例としてのエンドガイド12がエンドガイド溝4aに沿って左右方向に移動可能に支持されている。前記エンドガイド12は、移動部の一例として、底板4に沿った平板状のスライド部12aと、揃え部本体の一例として、スライド部12aの左端から上方に延びるエンドガイド本体12bとを有し、前方から見た場合に略L字形状に形成されている。前記エンドガイド本体12bの右側面には、積載プレート11上に積載される記録シートSの端縁である左端に接触可能な接触面12cが形成されており、記録シートSの左端が接触すると、記録シートSの束の左端が揃えられる。
【0037】
前記サイドガイド溝4bには、第2の端揃え部材の一例として、前後一対のサイドガイド13が、サイドガイド溝4bに沿って前後方向に移動可能に支持されている。各サイドガイド13は、エンドガイド12と同様に、スライド部13aと、サイドガイド本体13bとを有し、サイドガイド本体13bの内側面には、記録シートSの前後の端縁に接触可能な接触面13cが形成されている。
なお、一対のサイドガイド13は、図示しない歯車の一例としてのピニオンギアと平板に歯車が形成されたラックとにより、互いに接近、離間する方向に連動して移動可能に構成されている。なお、ピニオンギアやラックギアにより互いに接近、離間する方向に連動して移動する構成は、例えば、特開2007−106567号公報や特開2010−24057号公報等に記載されており、従来公知の種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
したがって、サイドガイド13が互いに接近、離間する方向に移動して、記録シートSの端縁に接触すると、記録シートSの束の前後両端が揃えられる。
【0038】
図4は実施例1の吸着ヘッドの説明図であり、図4Aは正面図、図4Bは平面図である。
図5は実施例1の吸着ヘッドを斜め下方から見た斜視図である。
図6は図4BのVI−VI線断面図である。
図2、図4〜図6において、前記第2給紙トレイTR2の上方には、媒体の取出部材の一例としてのシート取出装置21が配置されている。前記シート取出装置21は、取出し部材本体の一例であって、保持部材の一例として、積載プレート11上の記録シートSを吸着して保持可能な吸着ヘッド22を有する。前記吸着ヘッド22は、保持部材本体の一例として箱形のヘッド本体23を有する。前記ヘッド本体23は、平板状の底板部24と、底板部24の前後左右から上下方向に延びる側壁26,27,28,29とを有する。
【0039】
前記底板部24の下面には、対向面の一例として、前記積載プレート11に対向して配置される吸着面24aが形成されている。前記吸着面24aには、気体吸引用の開口の一例として、前記底板部24を上下方向に貫通する吸気口31が複数形成されている。
前記吸着面24aの右部には、湾曲付与部の一例として、右方に行くほど下方に傾斜すると共に前後方向中央部に行くほど左方に傾斜する傾斜面32が形成されている。また、吸着面24aの前後両端部には、第1の突出部材の一例であり、湾曲付与部の一例として、下方に延びる板状のリブ33が間隔をあけて複数形成されている。
図4A、図6において、前記各側壁26〜29の外表面には、囲み支持部材の一例として、外方に突出する外側ピン34が複数支持されている。
【0040】
図4A、図5、図6において、ヘッド本体23の外表面には、第2の突出部材の一例であり、囲み部材の一例として、下方に延びる板状の封止スカート36が配置されている。実施例1の封止スカート36は、前記外側ピン34に支持されて、ヘッド本体23の外周を囲むように配置された前後左右の4つの外スカート36aにより構成されている。
前記封止スカート36aには、ピン34に対応する位置に、上下方向に延びる長孔36bが形成されており、長孔36bには、ピン34が貫通した状態で支持されている。したがって、実施例1の封止スカート36は、ヘッド本体23に対して、上下方向、すなわち、積載プレート11や積載された記録シートSに対して接近、離間する方向に移動可能に支持されている。
したがって、前記封止スカート36や側壁26〜29により囲まれた内側に、吸気口31が配置されており、前記封止スカート36や底板部24の吸着面24a、側壁26〜29により囲まれた空間によって、実施例1の吸気空間37が構成されている。
【0041】
ヘッド本体23の上部には、覆い部材の一例として、蓋状のカバー部39が支持されている。カバー部39は、底板部24および側壁26〜29で囲まれた空間の上方を塞ぐ板状の上板部39aと、上板部39aの前後左右から下方に延びる側板部39b,39c,39d,39eとを有する。図4B、図5において、前側の側板部39bの右部には、接続部の一例として、前方に延びる排気ダクト39fが形成されている。また、前記カバー部39の右側部39eには、前端支持部の一例として、右方に延びる板状のシート前端ガイド39gが支持されている。ここで、前記排気ダクト39fには、可撓性部材の一例としての蛇腹40の一端が接続されており、蛇腹40の他端には、吸引装置の一例としての排気ファンHFが接続されている。
したがって、前記前側の側壁26に形成された開口の一例としての排気口26aや排気ダクト39f、蛇腹40を介して、排気ファンHFが吸気口31に接続されており、排気ファンHFが作動すると、吸気口31から吸気空間37内の気体、空気が排気される。
前記符号23〜39を付した部材等により、実施例1の吸着ヘッド22が構成されている。
【0042】
前記カバー部39の上面には、被案内部の一例としてのシャフトガイド部41が支持されている。前記シャフトガイド部41は、案内部材の一例として、給紙装置U2の本体に支持され且つ媒体の搬送方向である左右方向に沿って延びるガイドシャフト42が貫通した状態で支持されている。実施例1のシャフトガイド部41は、軸受け部材の一例としてのリニアボールベアリング43を介して、ガイドシャフト42に沿って左右方向に移動可能且つ回転不能な状態で支持されている。
前記シャフトガイド部41の上面には、連結部材の一例としてのワイヤ固定部44が支持されている。前記ワイヤ固定部44には、線材の一例としてのワイヤ46が固定支持されている。前記ワイヤ46は、支持部材の一例として、ワイヤ固定部44の左右に配置された一対のプーリ47や駆動プーリ48、従動プーリ49に張架されており、駆動プーリ48には、駆動源の一例としての正逆回転可能なモータM1から回転が伝達される。したがって、モータM1の正逆回転に伴って、ワイヤ46が図4Bにおいて時計回りまたは反時計回りに回転し、吸着ヘッド22が、ガイドシャフト42に沿って左右方向に移動可能に構成されている。
【0043】
図2において、前記吸着ヘッド22の右下方部には、媒体分離装置の一例として、吸着ヘッド22に対して下方から媒体分離用のエアを吹き付けるエア吹き付け装置50が配置されている。なお、エアを吹き付けて媒体を分離する構成に関しては、例えば、特開平11−89625号公報や特開2008−94603号公報、特開2005−194027号公報等に記載されており、従来公知の種々の構成を採用可能であるため、詳細な説明は省略する。
前記ワイヤ46やプーリ47〜49、モータM1等により、取出部材本体の駆動装置の一例であって、保持部材の駆動装置の一例として、実施例1のヘッド駆動装置46〜49+M1が構成されている。また、前記吸着ヘッド22や、蛇腹40,排気ファンHF、ヘッド駆動装置46〜49+M1、エア吹き付け装置50等により実施例1のシート取出装置21が構成されている。
【0044】
図4において、実施例1の画像形成装置Uの制御部Cは、給紙装置U2を制御する給紙制御手段C1を有する。給紙制御手段C1は、搬送制御手段の一例としてのヘッド駆動手段C11と、吸着制御手段の一例としてのファン制御手段C12と、捌き制御手段の一例としての吹付制御手段C13とを有する。
前記ヘッド駆動手段C11は、供給制御手段C11Aを有し、モータM1の正逆回転を制御して、吸着ヘッド22の駆動、位置を制御する。
前記供給制御手段C11Aは、記録シートSの供給動作時に、記録シートSの供給時期に基づいて、モータM1を正回転または逆回転させて、吸着ヘッド22を吸着位置と供給位置との間で移動させる。
【0045】
ファン制御手段C12は、排気ファンHFを制御して、吸着ヘッド22に記録シートSを吸着させる。実施例1のファン制御手段C12は、給紙動作が開始されて、記録シートSを吸着する時期になると、排気ファンHFを作動させて、記録シートSの吸着を開始し、吸着ヘッド22が供給位置に移動したと判別されると、排気ファンHFの排気を停止する。
吹付制御手段C13は、エア吹き付け装置50を制御して、吸着ヘッド22に吸着され
た記録シートSにエアを吹き付けて、記録シートSを分離して、捌く。実施例1の吹付制御手段C13は、ファン制御手段C12が吸引を開始してから、予め設定された吹付開始時間t3が経過した後に、エア吹き付け装置50を作動させてエアの吹付を開始し、吹付開始後、予め設定された吹付時間t4が経過するとエアの吹付を終了する。なお、実施例1では、吹付開始時間t3は、排気ファンHFが作動してから封止スカート36が上端まで上昇するまでの時間が、実験等で予め測定され、設定されており、吹付時間t4は、エアの吹付で十分に記録シートSが分離可能な程度の時間が、実験等で予め測定され、設定されている。
【0046】
(受取ロール61の説明)
図2、図4、図6において、吸着ヘッド22のシート搬送方向の下流側には、搬送部材の一例としての受取ロール61が配置されており、吸着ヘッド22から供給される記録シートSを受け取って、搬送路の一例としての給紙路SH1に搬送する。
前記受取ロール61は、駆動側の支持軸の一例として、前後方向に延び且つ給紙路SH1の上方に配置されて、給紙装置U2の図示しない支持部に回転可能に支持される駆動軸62を有する。前記駆動軸62には、駆動側の回転体の一例として、前後方向に延びる円柱状に形成された前駆動コロ63と後駆動コロ64とが、媒体幅方向の一例としての前後方向に予め設定された間隔を空けて支持されている。
ここで、前記駆動軸62には、搬送用駆動源の一例としての搬送用モータM2から動力が伝達されて、前記各コロ63,64は駆動軸62を回転中心として前記駆動軸62と共に回転駆動する。
【0047】
図7は実施例1の前軸支持機構の説明図であり、図7Aは前軸支持機構の全体図、図7Bは図7Aにおける矢印VIIB方向に見た説明図である。
図2、図4、図6、図7において、前記前駆動コロ63の下方には、前方の従動側の回転体の一例として、前後方向に延びる円柱状に形成された前従動コロ66が配置されている。前記前従動コロ66は、前側の支持軸の一例として、前後方向に延びる前従動軸67を有する。前記前従動軸67は、前側の支持機構の一例としての前軸支持機構71により支持される。
図7において、前記前軸支持機構71は、固定部の一例として、給紙装置U2の本体U2aに固定支持されるフレーム72を有する。図7Aにおいて、前記フレーム72は、前後方向に延びる板状の支柱支持部72aと、前記支柱支持部72aの前後両端から下方に延び且つ給紙装置U2の本体U2a表面に沿って折り曲げられた形状の被固定部72bとを有する。前記支柱支持部72aには、シート搬送方向に交差し且つシート幅方向に交差する方向の一例としての上下方向に、貫通する貫通孔72a1が形成されている。前記貫通孔72a1には、上下方向に延びる回転支柱73が軸受の一例としてのベアリング74を介して回転可能に支持されており、回転支柱73はフレーム72を上下方向に貫通した状態で支持されている。
【0048】
図7Aにおいて、前記回転支柱73の上端には、前従動軸67の軸方向両側に向かって延びる板状の台部76が形成されている。前記台部76の軸方向両端には、上方に向かって延びる円筒部77が支持されている。前記円筒部77の上端には、外側から内側に向かって延びて且つ円筒部77の内径に比べて小径の孔78aが形成された円環部78が支持されている。前記円筒部77と円環部78とにより、実施例1の軸受案内部77+78が構成される。前記軸受案内部77+78には、前従動軸67を支持する軸受部材79が支持される。
図7において、前記軸受部材79は、従動軸67の外径に対応する溝79a1であって上下方向に延び且つ軸方向に貫通する溝79a1が形成されたU字状の軸受部本体79aと、前記軸受部本体79aの下端から下方に延び且つ円環部78の孔78aよりも小径の支持棒部79bと、前記支持棒部79bの下端に形成され且つ円筒部77の内径に対応する外径を有する円柱状の抜け止め部79cとを有する。
【0049】
前記軸受部材79は、支持棒部79bが小径の孔78aを貫通して配置され、且つ、抜け止め部79cが円筒部77の内部に配置されて、軸受案内部77+78に支持される。これにより、前記軸受部材79は、軸受案内部77+78に沿って上下方向に移動可能に支持されると共に、前記抜け止め部79cが円環部78aに抜け止めされて、軸受案内部77+78から離脱することが防止される。ここで、前記抜け止め部79cと軸受案内部77+78の下端との間には、付勢部材の一例としてのコイルバネ81が圧縮して配置されている。したがって、コイルバネ81により抜け止め部79cは上方に付勢される。
【0050】
前記軸受部材79の軸受部材本体79aには、前従動軸67を介して前従動コロ66が支持される。したがって、前記前従動コロ66は、軸支持部材79と共に上下方向に移動可能に支持されると共に、コイルバネ81により前駆動コロ63に向けて付勢されている。したがって、前記前従動コロ66は、記録シートSの厚さに応じて、前駆動コロ63との間隔が変わり、記録シートSは前従動コロ66と前駆動コロ63に挟まれた状態で前駆動コロ63の駆動に伴って搬送される。
前記軸受案内部77+78、軸受部材79、コイルバネ81により、実施例1の挟持力付与機構の一例としてのピンチ機構82が構成される。
前記フレーム72、回転支柱73、ベアリング74、台部76、ピンチ機構82により、実施例1の前軸支持機構71が構成される。
【0051】
図2、図3、図5において、後駆動コロ64の下方には、後側の従動側の回転体の一例としての後従動コロ86が配置される。前記後従動コロ86は、前従動コロ66と同様に構成されており、前従動軸67に対応する後従動軸87を有する。ここで、後従動軸87は、後側の支持機構の一例としての後軸支持機構91に支持されるが、前記後軸支持機構91は、前軸支持機構71と前後対称に構成される点以外は、前軸支持機構71と同様に構成されるため、詳細な説明は省略する。
前記駆動軸62と、前駆動コロ63と、前従動コロ66と、前従動軸67とにより、実施例1の前側の搬送部材の一例としての前側ロール対101が構成される。また、前記駆動軸62と、後駆動コロ64と、後従動コロ86と、後従動軸87とにより、実施例1の後側の搬送部材の一例としての後側ロール対102が構成される。また、前側ロール対101と後側ロール対102とにより、実施例1の受取ロール61が構成される。
【0052】
なお、実施例1では、前側ロール対101と後側ロール対102とは、吸着ヘッド22のシート前端ガイド39gの前後方向の幅よりも間隔を空けて配置されており、吸着ヘッド22が右側に移動して供給位置に移動した場合に、前記シート前端ガイド39gが、前側ロール対101と後側ロール対102との間に進入可能に構成されている。また、各ロール101,102は、ヘッド本体23の前後方向の外端よりも内側に、少なくともロール101,102の幅方向の内側の一部が差し掛かるように配置されており、受取ロール61の内端どうしの間隔が、最小サイズの記録シートSの幅よりも狭い間隔に設定されている。したがって、最小サイズの記録シートSを供給する場合でも、受取ロール61が記録シートSを挟んで下流側に搬送可能となっている。
【0053】
(傾斜用の動力伝達機構118の説明)
図8は実施例1の軸支持機構の傾斜用の動力伝達機構の説明図である。
図7、図8において、前記前軸支持機構71の回転支柱73の下端には、歯車の一例としての前側ギア111が支持されている。前記前側ギア111の右方には、前側の直線伝達部材の一例として、前後方向に延び且つ前後方向に移動可能に支持された前ラック部材112が配置されている。前記前ラック部材112の前部左方には、板歯の一例として、前記前側ギア111と噛み合う第1の前ラック歯112aが形成されている。また、前記前ラック部材112の後部右方には、板歯の一例としての第2の前ラック歯112bが形成されている。前記第2の前ラック歯112bの右方には、駆動用の歯車の一例として、前記第2の前ラック歯112bと噛み合う駆動ギア113が配置されており、前記駆動ギア113は、駆動源の一例としての正逆回転可能な傾斜モータ114の駆動軸114aに支持されている。
【0054】
前記後軸支持機構91の回転支柱73の下端には、歯車の一例としての後側ギア116が支持されている。前記後側ギア116の右方には、後側の直線伝達部材の一例として、前後方向に延び且つ前後方向に移動可能に支持された後ラック部材117が配置されている。前記後ラック部材117の後部左方には、板歯の一例として、前記後側ギア116と噛み合う第1の後ラック歯117aが形成されている。また、前記後ラック部材117の前部左方には、板歯の一例として、駆動ギア113の右方で、駆動ギア113と噛み合う第2の後ラック歯117bが形成されている。
【0055】
図9は従動コロの搬送位置の説明図であり、図9Aは緩傾斜位置に移動した状態の説明図、図9Bは急傾斜位置に移動した状態の説明図である。
ここで、前記傾斜モータ114が正回転する場合には、駆動ギア113が図8上で反時計回り方向に回転して、前ラック部材112が前方に移動すると共に、後ラック部材117が後方に移動する。すなわち、前側では、前ラック部材112の前方への移動に伴って、前軸支持機構71の回転支柱73が図8上で時計回り方向に回転し、前従動コロ66は、前端側がシート搬送方向の上流側に傾斜して、図9に示すシート幅方向に対する傾斜角θが大きくなる方向に傾斜する。一方、後側では、後ラック部材117の後方への移動に伴って、後軸支持機構91の回転支柱73が図8上で反時計回り方向に回転し、後従動コロ86は、後端側がシート搬送方向の上流側に傾斜して、図9に示すシート幅方向に対する傾斜角θが大きくなる方向に傾斜する。
【0056】
また、前記傾斜モータ114が逆回転する場合には、駆動ギア113が図8上で時計回り方向に回転して、前ラック部材112が後方に移動すると共に、後ラック部材117が前方に移動する。すなわち、前ラック部材112の後方への移動に伴って、前軸支持機構71の回転支柱73が図8上で反時計回り方向に回転し、前従動コロ66は、前端側がシート搬送方向の下流側に傾斜して、図9に示す傾斜角θが小さくなる方向に傾斜する。一方、後側では、後ラック部材117の前方への移動に伴って、後軸支持機構91の回転支柱73が図8上で時計回り方向に回転し、後従動コロ86は、後端側がシート搬送方向の下流側に傾斜して、図9に示す傾斜角θが小さくなる方向に傾斜する。
【0057】
なお、従動コロ66,86がシート幅方向に対して傾斜しても、従動コロ66,86には、ピンチ機構82により駆動コロ63,64に向かう方向の付勢力が付されており、従動コロ66,86は、駆動コロ63,64の回転に伴って従動回転して、駆動コロ66,86の搬送方向に対してシート幅方向外側に傾斜する方向の搬送力を生じさせる。
前記前側ギア111、前ラック部材112、駆動ギア113、傾斜モータ114、後側ギア116、後ラック部材117により、実施例1の傾斜用の動力伝達機構118が構成される。また、前軸支持機構71、後軸支持機構91、動力伝達機構118により、実施例1の支持機構の一例としての軸支持機構121が構成される。
【0058】
図8において、実施例1の画像形成装置Uの制御部Cは、前記給紙手段C1に加えて、軸支持機構121の搬送位置を制御する位置制御手段C2を有する。前記位置制御手段C2は、シート種類の入力受付手段C21と、トレイシート記憶手段C22と、搬送位置設定手段C23と、傾斜モータ制御手段C24とを有する。
媒体の種類の入力受付手段の一例としてのシート種類の入力受付手段C21は、給紙トレイTR1,TR2に記録シートSが補給される際に、操作部UIから入力情報を受け付けて、給紙トレイTR1,TR2に補給される記録シートSの種類情報を取得する。実施例1では、記録シートSの種類として、厚紙、普通紙、薄紙の種類情報が入力される。
収容部媒体の種類記憶手段の一例としてのトレイシート記憶手段C22は、給紙トレイTR1,TR2毎に収容された記録シートSの種類を記憶する。
【0059】
搬送位置設定手段C23は、トレイシート記憶手段C22に記憶された記録シートSの種類に基づいて、従動コロ66,86が記録シートSを搬送する搬送位置の一例としての傾斜位置P1,P2を設定する。実施例1では、参照配列表の一例としての予め設定されたルックアップテーブルに基づいて、記録シートSの種類に対応する傾斜位置P1,P2が設定される。すなわち、実施例1のルックアップテーブルには、予め設定された傾斜角θ=θ1と、前記傾斜角θ1に比べて大きい予め設定された傾斜角θ=θ2とにおいて、厚紙に対応して、第1の搬送位置の一例として、図9Aに示す予め設定された傾斜角θ1の緩傾斜位置P1が設定されており、普通紙、薄紙に対応して、第2の搬送位置の一例として、図9Bに示すθ1よりも大きな傾斜角θ2の急傾斜位置P2が対応して設定されている。すなわち、実施例1では、湾曲し難い種類の媒体の一例として厚紙が予め設定され、湾曲し易い種類の媒体の一例として普通紙、薄紙が予め設定されており、予め設定された種類の媒体の一例としての厚紙よりも、湾曲し易い媒体の一例として、普通紙、薄紙が設定されている。
【0060】
傾斜用の駆動源の制御手段の一例としての傾斜モータ制御手段C24は、前記搬送位置設定手段C23により設定された傾斜位置P1,P2に基づいて、傾斜モータ114を正逆回転させることにより、従動コロ66,86を図9Aに示す緩傾斜位置P1と、図9Bに示す急傾斜位置P2との間で移動させる。
【0061】
(実施例1の作用)
図10は実施例1の記録シートが供給される場合の作用説明図であり、図10Aは画像形成動作が開始される前の積載プレートが下降位置に移動した状態の給紙トレイの説明図、図10Bは画像形成動作が開始されて積載プレートが上昇位置に移動した状態の説明図である。
前記構成を備えた実施例1の画像形成装置Uでは、画像形成動作としてのジョブが開始される前は、図10Aに示すように、給紙トレイTR1,TR2の積載プレート11が下降位置に移動し、吸着ヘッド22は吸着位置に移動している。ジョブが開始されると、積載プレート11が図10Bに示す上昇位置に上昇して、積載プレート11に積載された記録用紙Sの束の最上面の記録用紙Sが封止スカート36の下端に近接した状態となる。
【0062】
図11は実施例1の記録シートが供給される場合の作用説明図であり、図11Aは図10Bに示す状態から媒体が吸着されると共に媒体分離用のエアが吹き付けられた状態の説明図、図11Bは図11Aに示す状態から吸着ヘッドが吸着位置から供給位置に移動した状態の説明図である。
次に、排気ファンHFが作動して、吸気空間37の吸気が行われると、最上面の記録シートSが封止スカート36の下端に吸着され、吸気空間37がほぼ密閉された状態となる。すなわち、吸気空間37に対して、外部から気体の流入が制限された状態となる。
この状態から、さらに吸気空間37の排気が行われると、密閉された吸気空間37が低圧状態となって、封止スカート36と共に記録シートSが上昇し、図11Aに示す状態となる。
【0063】
このとき、最上面の記録シートSの下面に静電気等で1枚または複数の記録シートSが吸着されて、共に上昇する場合がある。実施例1の画像形成装置Uでは、吸気空間37の排気が開始されるとエア吹き付け装置50も作動して、記録シートSに対してエアが吹き付けられる。
封止スカート36と共に上昇した記録シートSは、封止スカート36が上端まで移動した状態で更に排気が行われると、記録シートSが撓み、傾斜面32やリブ33、あるいは、封止スカート36、ヘッド本体23の側壁26〜29など、吸気口31が形成された吸着面24aに対して積載プレート11側に突出する部分に接触して、シート幅方向に湾曲して波打った状態となる。前記記録シートSの波打つ湾曲は、最上面の記録シートSとその下の記録シートSとでは差が発生し、記録シートS間に隙間が発生する。したがって、記録シートS間の隙間にエアが吹き付けられて、最上面の記録シートSに対して、その他の記録シートSが分離され、落下して積載プレート11に積載される。
【0064】
なお、実施例1の吸着ヘッド22では、分離用のエアが記録シートSに吹き付けられても、記録シートSの前端部の上面がシート前端ガイド39gで支持され、記録シートSが上方に捲れたりすることが低減されている。なお、シート前端ガイド39gに沿って支持される際にも、記録シートSはシート幅方向に対して湾曲して波打つ場合がある。
そして、吸着ヘッド22に吸着された記録シートSは、吸着ヘッド22が図11Aに示す吸着位置から図11Bに示す供給位置への移動に伴って前進し、シート搬送方向の前端が、シート前端ガイド39gに案内されながら受取ロール61に到達し、シート幅方向に対して湾曲した状態で吸着ヘッド22から受取ロール61に受け渡され、受取ロール61の回転に伴って下流側に搬送される。
【0065】
図12は実施例1の記録シートが供給される場合の作用説明図であり、図12Aは図11Bに示す状態から吸着ヘッドが吸着位置に向けて移動を開始した状態の説明図、図12Bは図12Aに示す状態から吸着ヘッドがさらに移動して吸着位置に到達した状態の説明図である。
図11B、図12Aにおいて、記録シートSが受取ロール61に到達して搬送され始めると、排気ファンHFの作動が停止して、吸気空間37の排気が停止されると共に、吸着ヘッド22が吸着位置に向けて復帰を始める。
図12A、図12Bにおいて、記録シートSが搬送されて、後端が封止スカート36を通過すると、吸気空間37の密閉が解除されて、気圧が大気圧に戻り、封止スカート36が重力で下降する。したがって、図10Bに示す状態に戻り、図11A〜図12Bに示す工程が繰り返されて、記録シートSが供給される。
【0066】
ここで、吸着ヘッド22で記録シートSに形成される波打つ湾曲の大きさは、記録シートSの剛性、いわゆる、コシの強さなど、記録シートSの湾曲され易さに応じて異なる。よって、吸着ヘッド22から受取ロール61に受け渡される際に生じている記録シートSの湾曲も、記録シートSの湾曲され易さに応じて異なる。ここで、実施例1では、湾曲し難い厚紙の場合には、吸着ヘッド22で形成される湾曲が小さくなり、湾曲し易い普通紙、薄紙の場合には、吸着ヘッド22で形成される湾曲が大きくなり易い。そして、これに応じて、実施例1では、厚紙の場合には、受取ロール61を緩傾斜位置P1に移動させ、普通紙、薄紙の場合には、受取ロール61を急傾斜位置P2に移動させる。
【0067】
図13は図11Bの矢印XIII方向に見た場合の作用説明図であり、図13Aは受取ロールが緩傾斜位置に移動した状態の説明図、図13Bは受取ロールが急傾斜位置に移動した状態の説明図である。
図9A、図13Aにおいて、給紙トレイTR1,TR2に収容される記録シートSが厚紙の場合には、受取ロール61が緩傾斜位置P1に移動して、吸着ヘッド22から記録シートSが受け渡される。よって、記録シートSが厚紙の場合には、前後の従動コロ66,86が緩傾斜位置P1に移動して傾斜角θ1の分だけシート幅方向に対して傾斜し、前側ロール対101と後側ロール対102とでシート幅方向の外側両方向に引っ張られながら下流側に搬送される。すなわち、記録シートSが厚紙の場合には、受取ロール61を通過する際に、記録シートSのシート幅方向の両端側が、傾斜角θ1に応じてシート幅方向に引き延ばされながら搬送され、厚紙に生じた小さな湾曲が解消される。
【0068】
また、図9B、図13Bにおいて、給紙トレイTR1,TR2に収容される記録シートSが普通紙や薄紙の場合には、受取ロール61が急傾斜位置P2に移動して、吸着ヘッド22から記録シートSが受け渡される。よって、記録シートSが普通紙や薄紙の場合には、前後の従動コロ66,86が急傾斜位置P2に移動して傾斜角θ2の分だけシート幅方向に対して傾斜し、前側ロール対101と後側ロール対102とでシート幅方向の外側両方向に引っ張られながら下流側に搬送される。このとき、急傾斜位置P2の傾斜角θ2は、緩傾斜位置P1の傾斜角θ1に比べて大きく、受取ロール61を通過する記録シートSは、シート幅方向の外側両方向に引っ張られ易い。したがって、記録シートSが普通紙や薄紙の場合には、厚紙と同じ緩傾斜位置P1の受取ロール61を通過する場合に比べて、記録シートSのシート幅方向の両端側が、シート幅方向に大きく引き延ばされ易い。よって、急傾斜位置P2の受取ロール61を通過する際に、普通紙や薄紙に生じた大きな湾曲が解消される。
【0069】
ここで、従来の構成では、受取ロールの傾斜角は固定であり、記録シートSの湾曲され易さに関わらず、同一の傾斜角で搬送されていた。したがって、記録シートSの湾曲の大きさが異なる場合であっても、受取ロールの通過時における記録シートSのシート幅方向に引き延ばされる量、すなわち、湾曲を解消する性能は変わらず、湾曲が大きな記録シートSでは、湾曲が残ったまま下流側に搬送される場合があった。湾曲が残ったまま記録シートSが下流側に搬送されると、記録シートSの湾曲した部分が搬送部材で押し潰されてしまい、記録シートSに紙シワが形成されてしまう場合がある。一方で、紙シワを防ごうとして、必要以上に受取ロールを傾斜させて記録シートSをシート幅方向に引き延ばそうとすると、湾曲が小さな記録シートSでは、湾曲が解消された後もシート幅方向に引っ張られ続けることとなる。したがって、この場合には、シート幅方向に必要以上に引っ張られ続けることになって、搬送部材の筋、いわゆる、ロール筋が生じたり、記録シートの姿勢傾斜、いわゆる、スキューが生じたりする場合があった。
【0070】
これに対して、実施例1では、湾曲が形成され難くて小さな湾曲が形成される厚紙の場合には、受取ロール61を緩傾斜位置P1に移動させて、小さな傾斜角θ1で搬送してシート幅方向に引き延ばす量が小さい状態で下流側に搬送すると共に、湾曲が形成され易くて大きな湾曲が形成される普通紙、薄紙の場合には、受取ロール61を急傾斜位置P2に移動させて、大きな傾斜角θ2で搬送してシート幅方向に引き延ばす量が大きい状態で下流側に搬送している。
よって、実施例1では、記録シートSに形成される湾曲の大きさに応じて記録シートSがシート幅方向に引き延ばされており、受取ロールが記録シートSを搬送する搬送位置が固定の構成に比べて、記録シートSの湾曲され易さに応じて吸着ヘッド22から供給される記録シートSの湾曲が精度良く解消される。すなわち、実施例1では、湾曲が残ったり、必要以上にシート幅方向に引っ張られることが低減されて、紙シワや、ロール筋、スキューなどの発生が低減されている。
【実施例2】
【0071】
次に本発明の実施例2の給紙装置U2の説明を行うが、この実施例2の説明において、前記実施例1の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例2は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
【0072】
図14は実施例2の前軸支持機構の説明図であり、図14Aは前軸支持機構の全体図であって実施例1の図7Aに対応する図、図14Bは図14Aにおける矢印XIVB方向に見た説明図であって実施例1の図7Bに対応する図である。
図15は実施例2の受取ロールの説明図であり、図15Aは受取ロールが基準位置に移動した状態の説明図、図15Bは受取ロールが緩傾斜位置に移動した状態の説明図、図15Cは受取ロールが急傾斜位置に移動した状態の説明図である。
図14、図15において、実施例2の軸支持機構121′では、実施例1の傾斜用の動力伝達機構118が省略されている。なお、実施例2の制御部Cでは、これに応じて、実施例1の制御部Cが有していた傾斜制御手段C2全体が省略される。
【0073】
図14、図15において、実施例2の前軸支持機構71′の回転支柱73には、フレーム72と台部76との間の部分に、弾性部材の一例としてのトーションバネ131が装着されている。前記トーションバネ131は、一端131aが、可動部の一例としての台部76に設けられた支持部76aに支持され、他端131bが、給紙装置U2の本体U2aに支持される。これにより、前記台部76が回転支柱73を中心としてフレーム71に対して回転すると、前記トーションバネ131が弾性変形して、前記台部76を、基準の搬送位置の一例として、台部76がシート幅方向に沿って延びた基準位置P0′に向けて付勢する弾性力が発生する。
【0074】
図14において、フレーム72の前方右部には、上方に延び且つ台部76の前端部右側に接触可能な板状の規制部材72cが支持されている。前記規制部材72cは、台部76の前端部右側に接触して、台部76の前端側が基準位置P0′よりもシート搬送方向の下流側に回転することを規制する。これにより、台部76が傾斜位置P1′,P2′に移動して、前記台部72が、トーションバネ131の弾性復元力により、傾斜位置P1′,P2′から基準位置P0′に向けて回転しても、台部76は基準位置P0′以上には回転しない。
前記フレーム72、回転支柱73、ベアリング74、台部76、ピンチ機構82、トーションバネ131により、実施例2の前軸支持機構71′が構成される。
【0075】
図14、図15において、実施例2の前従動コロ66は、前記前軸支持機構71′に支持される。したがって、実施例2の前従動コロ66は、台部76と共に、基準位置P0′と、緩傾斜位置P1′と、急傾斜位置P2′との間を移動可能に支持される。また、前従動コロ66が、傾斜位置P1′,P2′に移動する場合には、前記トーションバネ131が弾性変形して、前従動コロ66を基準位置P0′に向けて付勢する弾性力が発生する。
なお、実施例2では、前記トーションバネ131として、湾曲した記録シートSのコシで作用するシート幅方向外向きの記録シートSの復元力を、前従動コロ66が受けた場合に、前従動コロ66が傾斜位置P1′,P2′に移動可能な程度に弾性変形する小さいバネ定数のトーションバネが使用されている。
【0076】
なお、実施例2の後従動コロ86は、前軸支持機構71′と前後対称に構成された後軸支持機構91′に支持される。実施例2の前記後軸支持機構91′は、前後対称に構成される点以外は前記前軸支持機構71′と同様に構成されるため、詳細な説明は省略する。
前軸支持機構71′と後軸支持機構91′とにより、実施例2の支持機構の一例としての軸支持機構121′が構成される。
【0077】
(実施例2の作用)
前記構成を備えた実施例2の給紙装置U2では、吸着ヘッド22から記録シートSが受け渡されるまでは、受取ロール61は基準位置P0′に保持される。そして、記録シートSが吸着ヘッド22から供給されて、受取ロール61が湾曲の生じた記録シートSに接触する。
ここで、記録シートSが湾曲している場合、記録シートSには、記録シートSの剛性、コシで元の湾曲の少ない状態に戻ろうとする力である湾曲復元力が生じる。したがって、シート幅方向に湾曲した記録シートSでは、搬送部材で搬送される場合に、シート幅方向の外側部分が、搬送部材の搬送力で下流側に移動しようとすると共に、湾曲復元力でシート幅方向に自然に移動しようとする。
【0078】
ここで、実施例2の軸支持機構121′では、従動コロ66,86に湾曲した記録シートSが接触した場合に、湾曲復元力に応じて、従動コロ66,86が傾斜位置P1′,P2′に移動可能に構成されている。
すなわち、記録シートSの湾曲が小さい場合は、湾曲復元力が小さく、従動コロ66,86は前記小さな湾曲復元力を受けて緩傾斜位置P1′に移動する。よって、実施例2の従動コロ66,86は、小さな傾斜角θ1′で記録シートSを搬送してシート幅方向に引き延ばす量が小さい状態で下流側に搬送する。また、記録シートSの湾曲が大きい場合は、湾曲復元力が大きく、従動コロ66,86は前記大きな湾曲復元力を受けて急傾斜位置P2′に移動する。よって、実施例2の従動コロ66,86は、大きな傾斜角θ2′で記録シートSを搬送してシート幅方向に引き延ばす量が大きい状態で下流側に搬送する。
【0079】
したがって、実施例2では、記録シートSのコシに伴う湾曲復元力に応じて記録シートSがシート幅方向に引き延ばされており、実施例1と同様に、記録シートSの湾曲され易さに応じて記録シートSの湾曲が精度良く解消されている。
また、実施例2では、前記従動コロ66,86が、記録シートSの湾曲復元力に応じて傾斜角θ1′,θ2′に自動的に移動しており、必要以上にシート幅方向に引き延ばされることは少なく、記録シートSに負担がかかり難くなっている。
よって、実施例2では、記録シートSがシート幅方向に必要以上に引張られることが低減され、記録シートSが安定して搬送され易くなっており、ロール筋やスキューの発生が、さらに低減され易くなっている。
【0080】
なお、実施例2の受取ロール61では、記録シートSが通過して記録シートSから湾曲復元力を受けなくなると、トーションバネ131が弾性復元して従動コロ66,86が基準位置P0′に戻る。すなわち、実施例2では、記録シートSが通過する度に、受取ロール61が基準位置P0′に戻り、従動コロ66,86の傾斜角θが、いわば、初期化される。したがって、記録シートSが通過する度に、受取ロール61の傾斜角θが初期化されない場合に比べて、次の記録シートSが受け渡される際の受取ロール61の搬送位置が安定し易い。よって、実施例2では、次の記録シートSが受取ロール61を通過する際に、次の記録シートSの湾曲復元力に応じて安定して傾斜位置P1′,P2′に移動し易くなっている。
【実施例3】
【0081】
次に本発明の実施例3の給紙装置U2の説明を行うが、この実施例3の説明において、前記実施例1,2の構成要素に対応する構成要素には同一の符号を付して、その詳細な説明を省略する。この実施例3は、下記の点で前記実施例1と相違しているが、他の点では前記実施例1と同様に構成されている。
【0082】
図16は実施例3の前軸支持機構の説明図であり、図16Aは前軸支持機構の全体図であって実施例1の図7Aに対応する図、図16Bは図16Aにおける矢印XVIB方向に見た説明図であって実施例1の図7Bに対応する図、図16Cは図16Aにおける矢印XVIC方向に見た説明図である。
図16において、実施例3の軸支持機構121″では、実施例1の傾斜用の動力伝達機構118が省略されている。なお、実施例3の制御部Cでは、これに応じて、実施例1の制御部Cが有していた傾斜制御手段C2全体が省略される。
【0083】
図16において、実施例3の前軸支持機構71″のフレーム72の前後両端部には、前従動コロ66の前従動軸67を支持する前後一対の端ガイド141,142が支持されている。
図16A、図16Cにおいて、一端支持部の一例であり、一端案内部の一例としての前記後端ガイド141は、前従動軸67の後端を支持する後端ガイド本体部141aを有する。図16Cにおいて、前記後端ガイド本体部141aは、下端が開放された逆U字状に形成されており、前記後端ガイド本体部141aには、前従動軸67の径に対応して上下方向に延びる縦溝141a1が形成されている。前記縦溝141a1には、前従動軸67の後端が貫通した状態で縦溝141a1に沿って移動可能に支持されている。前記ガイド本体部141aの左側の下端には、下方のフレーム72に向かって延び且つ前記フレーム72に支持される棒状の被支持部141bが形成されている。
【0084】
図16A、図16Bにおいて、他端支持部の一例であり、他端案内部の一例としての前記前端ガイド142は、前従動軸67の前端を支持する前端ガイド本体部142aを有する。図16Bにおいて、前記前端ガイド本体部142aは、下端が開放された逆U字状に形成されており、前記前端ガイド本体部142aには、前従動軸67の径に対応して形成され且つ縦溝141a1の前方に対応する位置から上方に向かうに連れてシート搬送方向の上流側に傾斜する傾斜溝142a1が形成されている。すなわち、実施例3の傾斜溝142a1は、逆U字状の溝の下端が縦溝141a1の下端に対応して配置され、且つ、上端が上流側に傾斜した形状に構成されている。前記傾斜溝142a1には、前従動軸67の前端が貫通した状態で傾斜溝142a1に沿って移動可能に支持されている。前記前端ガイド本体部142aの左側の下端には、下方のフレーム72に向かって延び且つ前記フレーム72に支持される棒状の被支持部142bが形成されている。
【0085】
実施例3の前従動コロ66は、前従動軸67が、ピンチ機構81に支持されると共に、前記端ガイド141,142に支持される。したがって、前従動軸67の後端は、後端ガイド141の縦溝141a1に沿って上下方向に移動可能に支持されて、前駆動コロ63に対して接近離間する方向に移動可能に支持される。また、前従動軸67の前端は、前端ガイド142の傾斜溝142a1に沿って移動可能に支持されて、前駆動コロ63に対して接近離間する方向に対して傾斜する方向に移動可能に支持される。
【0086】
したがって、前駆動コロ63から前従動コロ66が離間する場合、シート搬送方向において、前従動コロ66の後端側は一定の位置で上下方向に移動するのに対して、前従動コロ66の前端側は上下方向の移動時に下流側に移動する。すなわち、実施例3では、記録シートSが無くて前従動コロ66が前駆動コロ63に接触している場合に、前従動軸67の傾斜角θが最大であり、前従動コロ66が前駆動コロ67から離間するに連れて、前従動軸67の傾斜角θが小さくなるように移動する。
ここで、実施例3の前端ガイド142における傾斜溝142a1は、縦溝141a1と共に支持する前従動軸67の傾斜角θが、前従動コロ66が前駆動コロ63から薄紙の厚さ分だけ離間する場合に、θ2″となり、且つ、前従動コロ66が前駆動コロ63から厚紙の厚さ分だけ離間する場合に、θ1″となる形状に形成されている。
【0087】
前記フレーム72、回転支柱73、ベアリング74、台部76、ピンチ機構82、後端ガイド141、前端ガイド142により、実施例3の前軸支持機構71″が構成される。
なお、実施例3の後従動コロ86は、前軸支持機構71″と前後対称に構成された後軸支持機構91″に支持される。実施例3の前記後軸支持機構91″は、前後対称に構成される点以外は前記前軸支持機構71″と同様に構成されるため、詳細な説明は省略する。
前軸支持機構71″と後軸支持機構91″とにより、実施例3の支持機構の一例としての軸支持機構121″が構成される。
【0088】
(実施例3の作用)
図17は実施例3の前側ロール対の作用説明図であり、図17Aは前側ロール対が薄紙を搬送する場合の説明図、図17Bは図17Aにおける矢印XVIIB方向に見た説明図、図17Cは図17Aにおける矢印XVIIC方向に見た説明図、図17Dは前側ロール対が厚紙を搬送する場合の説明図、図17Eは図17Dにおける矢印XVIIE方向に見た説明図、図17Fは図17Dにおける矢印XVIIF方向に見た説明図である。
図18は実施例3の受取ロールの作用説明図であり、図18Aは記録シートが無くて駆動コロと従動コロが接触している状態の説明図、図18Bは受取ロールが急傾斜位置に移動した状態の説明図、図18Cは受取ロールが緩傾斜位置に移動した状態の説明図である。
【0089】
前記構成を備えた実施例3の給紙装置U2では、吸着ヘッド22から記録シートSが受け渡されるまでは、受取ロール61の従動コロ66,87は、軸支持機構121″のピンチ機構82で付勢されて、図18Aに示す傾斜角θが最大の初期角θ0″で駆動コロ63,64に接触した状態で保持される。そして、記録シートSが吸着ヘッド22から供給されて、受取ロール61に記録シートSが受け渡されると、駆動コロ63,64と従動コロ66,86との間に記録シートSが進入し、図17に示すように、記録シートSの厚みL1,L2に応じて従動コロ66,86が駆動コロ63,64から離間し、従動コロ66,86との間に記録シートSが挟まれる。
【0090】
したがって、薄紙の記録シートSの場合では、従動コロ66,86は、薄紙の厚みL2の分だけ駆動コロ63,64から離間する。よって、図17A〜図17Cに示すように、前後の各従動軸67,87は、薄紙の厚みL2に応じて端ガイド141,142に案内されながら下方に移動する。よって、各従動軸67,87では、シート幅方向の内側が下方に移動すると共に、シート幅方向の外側が下方に移動し且つシート搬送方向の下流側に傾斜する。よって、傾斜角θが最大の初期角θ0″に対して小さくなった傾斜角θ2″の急傾斜位置P2″に従動コロ66,86が移動する。したがって、湾曲が大きな薄紙の記録シートSは、図18Bに示すように、大きな傾斜角θ2″で搬送されてシート幅方向に引き延ばす量が大きい状態で下流側に搬送される。
【0091】
また、厚紙の記録シートSの場合では、従動コロ66,86は、厚紙の厚みL1の分だけ駆動コロ63,64から離間する。このとき、図17D〜図17Fに示すように、前後の各従動軸67,87は、厚紙の厚みL1に応じて端ガイド141,142に案内される。よって、各従動軸67,87では、シート幅方向の内側が、薄紙の場合に比べて更に下方に移動すると共に、シート幅方向の外側が更にシート搬送方向の下流側に傾斜して傾斜角θが、急傾斜位置P2″の傾斜角θ2″よりも更に小さい傾斜角θ1″の緩傾斜位置P1″に移動する。よって、湾曲の小さい厚紙の記録シートSは、図18Cに示すように、小さな傾斜角θ1″で搬送されてシート幅方向に引き延ばす量が小さい状態で下流側に搬送される。
【0092】
したがって、実施例3でも、実施例1,2と同様に、受取ロール61が、記録シートSの厚みL1,L2に応じた傾斜位置P1″,P2″に移動して記録シートSを搬送しており、記録シートSの湾曲され易さに応じて記録シートSの湾曲が精度良く解消されている。
なお、実施例3では、従動コロ66,86が駆動コロ63,64から離間する移動距離を利用して、記録シートSの厚みL1,L2に対応する傾斜位置P1″,P2″に受取ロール61を移動させており、電気制御で受取ロール61を傾斜位置P1″,P2″に移動させる構成に比べて、簡素に構成されて費用が低減され易くなっている。
【0093】
(変更例)
以上、本発明の実施例を詳述したが、本発明は、前記実施例に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の要旨の範囲内で、種々の変更を行うことが可能である。本発明の変更例(H01)〜(H013)を下記に例示する。
(H01)前記実施例において、画像形成装置の一例としての複写機に限定されず、プリンタ、FAX等の画像形成装置にも適用可能である。また、カラーの画像形成装置に限定されず、モノクロの画像形成装置にも適用可能である。さらに、タンデム型の画像形成装置に限定されず、ロータリ型の画像形成装置にも適用可能である。また、電子写真方式の画像形成装置に限定されず、インクジェット記録方式や熱転写方式等の他の方式の画像形成装置にも適用可能である。
【0094】
(H02)前記各実施例において、吸着ヘッド22が、積載プレート11上から記録シートSを取り出して受取ロール21に供給する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、特許文献2のように、無端帯状の吸着ベルトが記録シートSを吸着して取出したり、特許文献3のように、円柱断面D形状のいわゆるピックアップロールが記録シートSを取り出したりして、湾曲した記録シートSが受取ロール61に受け渡される構成など、記録シートSにシート幅方向に対して湾曲が生じ得る構成に対し、下流側に、本願の軸支持機構121〜121″に支持された受取ロール61を配置する構成が可能である。
(H03)前記各実施例において、前側ロール対101と、後側ロール対102とがシート幅方向に対称に構成されて、記録シートSをシート幅方向両側の位置で搬送する構成が、湾曲した記録シートSがシート幅方向に対称に延ばされ易くて望ましいが、これに限定されない。例えば、前側ロール対101のみを傾斜可能に構成して、後側ロール対を傾斜不能に固定した構成が可能である。また、例えば、前側ロール対101と後側ロール対102とは、シート幅方向に対称に配置されていなくても良く、シート幅方向に予め設定された間隔を空けて一対配置されていれば、シート幅方向に偏って一対配置された構成も可能である。
【0095】
(H04)前記各実施例においては、予め設定された第1の搬送位置と、前記第1の搬送位置に比べて、傾斜角θが大きな第2の搬送位置と、の間で、前記受取ロール61が移動可能に構成されていれば良い。よって、前記各実施例においては、傾斜していない第1の搬送位置と、傾斜した第2の搬送位置との間で前記受取ロール61を移動させる構成も可能である。
したがって、例えば、前記実施例1,3において、厚紙の湾曲を実際上無視しても良い場合などに、緩傾斜位置P1,P1″に替えて傾斜角θが0の搬送位置を第1の搬送位置として設定し、傾斜角θが0の第1の搬送位置と、傾斜角θ2,θ2″の急傾斜位置P2,P2″との間で、受取ロール61を移動させる構成が可能である。
また、例えば、実施例2においては、緩傾斜位置P1′に替えて傾斜角θが0の搬送位置を第1の搬送位置として設定し、傾斜角θが0の第1の搬送位置と、傾斜角θ2′の急傾斜位置P2′との間で、受取ロール61を移動可能にして、湾曲が実際上無視できて復元力が小さい記録シートSについては、傾斜角θが0の第1の搬送位置に移動した受取ロール61で搬送する構成が可能である。
なお、これらの場合には、第2の搬送位置に移動した受取ロール61で、湾曲した記録シートSの湾曲を解消しつつ、傾斜角θが0の第1の搬送位置に移動した受取ロール61で、湾曲が実際上無視できる記録シートS等を安定的に搬送することができる。
【0096】
(H05)前記実施例1において、厚紙の場合には、緩傾斜位置P1に従動コロ66,86を移動させ、普通紙、薄紙の場合には、急傾斜位置P2に従動コロ66,86を移動させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、普通紙の場合には、急傾斜位置P2に替えて緩傾斜位置P1に移動させたり、あるいは、第3の搬送位置として、前記緩傾斜位置P1と前記急傾斜位置P2との間の搬送位置に移動させる構成が可能である。また、複数の位置で段階的に傾斜させる構成に限定されず、連続的に傾斜させる構成も可能である。すなわち、受取ロール61の搬送位置が変更可能に構成されていれば良く、移動可能な任意の搬送位置に受取ロール61を記録シートSの種類に応じて移動させる構成が可能である。
(H06)前記実施例1において、記録シートSの種類として、厚紙、普通紙、薄紙を例示したが、これに限定されない。例えば、シートの剛性や、重量、紙の材料、A4SEF、A4LEF等の送り出し方向などに基づいて吸着ヘッド22での湾曲のされ易さが異なる場合には、シートの剛性や、重量、紙の材料、A4SEF、A4LEF等の送り出し方向などを、記録シートSの種類情報として給紙トレイTR1,TR2毎に入力可能にし、記録シートSの種類毎に搬送位置を設定することが可能である。
【0097】
(H07)前記実施例1において、傾斜モータ114により電気制御で前後の軸支持機構71,91を駆動して受取ロール61を緩傾斜位置P1と急傾斜位置P2との間で移動させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、傾斜モータ114に替えて、手動で回転可能な操作部の一例としてのハンドル部と、前記ハンドル部に連動して回転する歯車機構とを用いて、手動で、前後の軸支持機構71,91を緩傾斜位置P1と急傾斜位置P2との間で移動させる構成が可能である。
(H08)前記実施例2において、軸支持機構121′には、トーションバネ131で台部76を付勢する構成を例示したが、これに限定されず、コイルバネや、ゴムなどのトーションバネ131以外の弾性部材で、台部76を付勢することが可能である。また、前記実施例2では、トーションバネ131などの弾性部材が設けられている構成が、傾斜位置P1′,P2′に移動した受取ロール61が、記録シートSの通過後に基準位置P0′に移動し易い点で望ましいが、これに限定されず、トーションバネ131などの弾性部材を省略する構成が可能である。
【0098】
(H09)前記実施例2において、記録シートSの復元力に応じて、基準位置P0′と、緩傾斜位置P1′と、急傾斜位置P2′との間で受取ロール61が移動する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、規制部材72cで台部76の可動範囲を規制して基準位置P0′に移動する構成を省略し、記録シートSの復元力に応じて、緩傾斜位置P1′と、急傾斜位置P2′との間でのみ、受取ロール61が移動する構成も可能である。
(H010)前記実施例3において、従動軸67,87を案内可能に支持する端ガイド141,142では、縦溝141a1を有するシート幅方向の内側の端ガイド142と、傾斜溝142a1を有するシート幅方向の外側の端ガイド142とにより、従動軸67,87を傾斜させる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、シート幅方向の外側の端ガイド142には傾斜溝142a1に替えて縦溝を設け、且つ、シート幅方向の内側の端ガイド141には縦溝141a1に替えて傾斜溝を設けて、従動軸67,87を傾斜させる構成が可能である。
【0099】
(H011)前記実施例3において、傾斜溝142a1が直線状に傾斜した構成で、従動軸67,87が案内されて傾斜する構成を例示したが、これに限定されない。例えば、曲線的に傾斜する傾斜溝の構成が可能である。また、記録シートSの厚さに応じて連続的に従動コロ66,86の搬送位置が変化する構成に限定されず、例えば、薄紙と普通紙の湾曲され易さが同程度である場合には、従動コロ66,86が、駆動コロ67,87から普通紙の厚さ分だけ離間するまで、縦に溝を形成し、且つ、前記縦の溝の下端から傾斜する溝を形成して、薄紙、普通紙の場合には、従動コロ66,86を急傾斜位置P2″に移動させ、厚紙の場合には、緩傾斜位置P1″に移動させる構成が可能である。
(H012)前記各実施例において、媒体の一例として、厚紙、普通紙、薄紙等の紙の記録シートSを例示したが、これに限定されず、OHPシート等のフィルム状、薄膜状の媒体を供給する構成にも適用可能である。
(H013)前記実施例3において、記録シートSが無くて従動コロ66,86が駆動コロ63,64に接触している場合に、傾斜角θが最大となる構成を例示したが、これに限定されない。例えば、様々な材質の記録シートSが使用され、厚さが厚い種類の記録シートSの方が湾曲され易い場合には、記録シートSが無くて従動コロ66,86が駆動コロ63,64に接触している場合に、傾斜角θが0となり、従動コロ66,86が駆動コロ63,64から離間するに連れて、従動コロ66,86の傾斜角θが大きくなるように端ガイド141,142で案内する構成も可能である。
【符号の説明】
【0100】
11…積載部材、21…取出部材、22…取出部材本体、24a…対向面、31…気体吸引用の開口、26,27,28,29,32,33,36…突出部材、61,101,102…搬送部材、63,64…他方の回転体、66,86…一方の回転体、67,87…回転中心、一方の回転体の軸、121,121′,121″…支持機構、131…弾性部材、141…一端支持部、142…他端支持部、HF…吸引装置、P0′…基準の搬送位置、P1,P1′,P1″…第1の搬送位置、P2,P2′,P2″…第2の搬送位置、S…媒体、U…画像形成装置、U2…媒体供給装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面に媒体が積載される積載部材と、
前記積載部材に積載された媒体を取り出して、媒体搬送方向に対して交差する媒体幅方向に湾曲させながら下流側に搬送する取出部材と、
前記取出部材に対して媒体搬送方向の下流側に配置され、媒体幅方向に間隔を空けて配置された一対の搬送部材と、
前記各搬送部材の少なくとも一方の回転中心を、媒体幅方向に対して傾斜可能に支持して媒体幅方向の外端に進むに連れて媒体搬送方向の上流側に傾斜可能に支持する支持機構であって、予め設定された第1の搬送位置と、前記第1の搬送位置に比べて、前記回転中心の媒体幅方向に対する傾斜角が大きな第2の搬送位置と、の間で、前記搬送部材の回転中心を移動可能に支持する前記支持機構と、
を備え、
予め設定された種類の媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第1の搬送位置に移動し、且つ、前記予め設定された種類の媒体よりも湾曲し易い媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第2の搬送位置に移動する
ことを特徴とする媒体供給装置。
【請求項2】
予め設定された湾曲し難い種類の媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第1の搬送位置に移動し、且つ、予め設定された湾曲し易い種類の媒体が搬送される場合には、前記搬送部材が前記第2の搬送位置に移動する
ことを特徴とする請求項1に記載の媒体供給装置。
【請求項3】
媒体を挟んで対向する一対の回転体を有する前記搬送部材と、
一方の回転体の軸の一端を、他方の回転体に対して接近離間する方向に移動可能に支持する一端支持部と、前記一方の回転体の軸の他端を、前記他方の回転体に対して接近離間する方向に対して傾斜する方向に支持し且つ前記他方の回転体から離間するに連れて、前記一端支持部に支持された前記一方の回転体の軸の他端を、前記第2の搬送位置側から前記第1の搬送位置側に移動可能に支持する他端支持部と、を有する前記支持機構と、
を備えたことを特徴とする請求項1または2に記載の媒体供給装置。
【請求項4】
表面に媒体が積載される積載部材と、
前記積載部材に積載された媒体を取り出して、媒体搬送方向に対して交差する媒体幅方向に湾曲させながら下流側に搬送する取出部材と、
前記取出部材に対して媒体搬送方向の下流側に配置され、媒体幅方向に間隔を空けて配置された一対の搬送部材と、
前記各搬送部材の少なくとも一方の回転中心を、媒体幅方向に対して傾斜可能に支持して媒体幅方向の外端に進むに連れて媒体搬送方向の上流側に傾斜可能に支持する支持機構であって、予め設定された第1の搬送位置と、前記第1の搬送位置に比べて、前記回転中心の媒体幅方向に対する傾斜角が大きな第2の搬送位置と、の間で、前記搬送部材の回転中心を移動可能に支持すると共に、前記搬送部材に接触した媒体から受ける湾曲した媒体の復元力に応じて前記第1の搬送位置と前記第2の搬送位置との間で前記搬送部材が移動される前記支持機構と、
を備えたことを特徴とする媒体供給装置。
【請求項5】
媒体幅方向に沿った基準の搬送位置と、前記基準の搬送位置に比べて、前記回転中心の媒体幅方向に対する傾斜角が大きな前記第1の搬送位置と、前記第2の搬送位置と、の間で、前記搬送部材の回転中心を移動可能に支持する前記支持機構であって、前記搬送部材の回転中心と共に前記基準の搬送位置と前記第1の搬送位置と前記第2の搬送位置との間を移動する可動部と、前記可動部を前記基準位置に向けて付勢する弾性部材と、を有する前記支持機構、
を備えたことを特徴とする請求項4に記載の媒体供給装置。
【請求項6】
前記積載部材に対向して配置され且つ媒体搬送方向に沿って移動可能に支持された取出部材本体と、前記取出部材本体に設けられ且つ前記積載部材に対向して配置される対向面と、前記対向面に形成された気体吸引用の開口と、前記取出部材本体に設けられ且つ前記対向面に対して前記積載部材側に突出する突出部材と、前記気体吸引用の開口に接続されて前記気体吸引用の開口から気体を吸引する吸引装置と、を有し、前記吸引装置の吸引に伴って前記積載部材上から媒体を取り出して吸着し且つ前記突出部材に接触させて媒体を媒体幅方向に湾曲させて保持する前記取出部材、
を備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の媒体供給装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体供給装置、
を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公開番号】特開2013−71790(P2013−71790A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210131(P2011−210131)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】