説明

媒体保持装置およびこれを備えた記録装置

【課題】処理した記録媒体の数量に応じて保持容量の変更が可能な媒体保持装置等を提供する。
【解決手段】印刷部3に供給する用紙Pを重ねて保持する供給保持部51と、印刷部3から排出された用紙Pを重ねて保持すると共に、供給保持部51に対し侵入可能に重ねて配設された排出保持部6と、供給保持部51における用紙Pの保持量の減少に対応して、排出保持部6の保持容量が大きくなるように、排出保持部6を供給保持部51に侵入するように移動させる移動手段7と、を備えた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体処理部において所定の処理が行われ排出された記録媒体を重ねて保持する媒体保持装置およびこれを備えた記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、記録装置に装着され、媒体処理部に供給する記録媒体(記録用紙)を重ねて収容可能な供給保持部(メイントレイ)と、供給保持部の上側に重なるように配設され、記録済みの記録媒体を重ねて保持する排出保持部(排紙トレイ)と、を備えた媒体保持装置が知られている(特許文献1参照)。
この媒体保持装置では、媒体処理部において所定の処理が行われ排出された記録媒体が、積層方向に固定された排出保持部に重なって保持されるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−235311号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、従来の媒体保持装置では、処理する記録媒体の数量に関係なく、保持可能な最大枚数に応じたスペースを、排出保持部上に予め確保する必要があった。このため、媒体保持装置が装着される記録装置等を小型化することが困難であった。
【0005】
本発明は、処理した記録媒体の数量に応じて保持容量の変更が可能な媒体保持装置およびこれを備えた記録装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の媒体保持装置は、媒体処理部に供給する記録媒体を重ねて保持する供給保持部と、媒体処理部から排出された記録媒体を重ねて保持すると共に、供給保持部に対し侵入可能に重ねて配設された排出保持部と、供給保持部における記録媒体の保持量の減少に対応して、排出保持部の保持容量が大きくなるように、排出保持部を供給保持部に侵入するように移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、排出保持部は、供給保持部での記録媒体の保持量の減少に応じて、その保持容量(保持することができる枚数)が大きくなる方向に移動する。このように、処理した記録媒体の数量(保持量)に応じて保持容量の変更することができるため、最大容量に応じたスペースを、排出保持部上に予め確保しておく必要がない。これにより、媒体保持装置を小型化することができると共に、これが装着される記録装置等を小型化することができる。
また、排出保持部が供給保持部に侵入可能とすることで、供給保持部の保持量が減少した分だけ、排出保持部の保持容量が増加する。これにより、無駄なスペースを設けることなく媒体保持装置を最小化することができる。
【0008】
この場合、排出保持部は、横臥姿勢で配設され、移動手段は、排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、移動軸に沿って、排出保持部を供給保持部に向って付勢する付勢手段を、有していることが好ましい。
【0009】
また、この場合、排出保持部は、起立姿勢で配設され、移動手段は、排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、移動軸に沿って、排出保持部を供給保持部に向って付勢する付勢手段を、有していることが好ましい。
【0010】
これらの構成によれば、排出保持部は、その姿勢(横臥姿勢または起立姿勢)に関わらず、付勢手段(ばね等)により、移動軸に沿って保持容量が大きくなる方向に確実に移動する。なお、ばねの種類は、任意であり、圧縮ばねでもよいし、引張ばねでもよい。
【0011】
この場合、排出保持部は、起立姿勢で配設され、移動手段は、排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、供給保持部に保持された記録媒体の保持量を検出する保持量検出手段と、保持量検出手段の検出結果に基づいて、移動軸に沿って、排出保持部を移動させる移動機構と、を有していることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、保持量検出手段により、排出保持部または供給保持部における記録媒体の保持量を検出することで、排出保持部の保持容量が適切となるように、排出保持部の移動量を決定することができる。なお、保持量検出手段としては、フォトセンサーや距離センサーの他、媒体処理部から排出された記録媒体数をカウントするカウンターを用いることができる。
【0013】
この場合、排出保持部は、横臥姿勢で配設され、移動手段は、排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、移動軸に沿って、自重で移動する排出保持部自身と、から成ることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、供給保持部に積層された記録媒体が媒体処理部に供給されると、供給保持部において減少した積層量に応じて、排出保持部は、自らの重さによって下降する。このため、排出保持部を移動させる機構を省略することができ、媒体処理装置の構成を単純化することができる。これにより、省スペース化および低コスト化を図ることができる。
【0015】
また、この場合、排出保持部は、保持した記録媒体の上流端を支持する支持片を有し、排出保持部が最大保持状態で、支持片と移動方向にオーバーラップする固定支持部を、更に備えたことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、排出保持部における記録媒体の保持量が最大となった場合であっても、支持片と固定支持部とが、排出された記録媒体を確実に支持することができる。
【0017】
また、この場合、排出保持部は、供給保持部に保持されている記録媒体に転接するフリーローラーを、更に有していることが好ましい。
【0018】
この構成によれば、供給保持部における記録媒体の保持量の減少に対応して、排出保持部を供給保持部に侵入するように移動させる構成であっても、供給保持部に重ねて保持された記録媒体のうち最表層の記録媒体には、フリーローラーが転接することとなる。これにより、媒体処理部に供給される最表層の記録媒体に損傷を与えることがない。また、供給保持部に保持した記録媒体がばらけること防止し、媒体処理部への記録媒体の円滑な送り出しに影響を与えることがない。
【0019】
本発明の記録装置は、上記したいずれかの媒体保持装置と、媒体処理部として、記録媒体に記録を行う記録部と、を備えたことを特徴とする。
【0020】
この構成によれば、処理した記録媒体の数量(保持量)に応じて保持容量の変更することができるため、最大容量に応じたスペースを排出保持部に確保する必要がない。これにより、記録装置内の媒体保持装置が装着されるスペースを小さく構成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の第1実施形態に係る記録媒体カセット、排出保持部および移動手段の斜視図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係る記録媒体カセット、排出保持部および移動手段の側面図である。
【図3】図1のA−A線における記録媒体カセットおよび排出保持部の断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係る記録媒体カセット、排出保持部および移動手段の一部を拡大して示した側面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る排出保持部の表裏斜視図である。
【図6】記録媒体カセットを筐体に挿入する際に、排出保持部の前方が持ち上げられる様子を示した側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付の図面を参照しながら、本発明の第1実施形態に係る記録装置について説明する。この記録装置は、横臥姿勢で保持した用紙(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した記録済みの用紙を横臥姿勢で保持(ストック)する所謂横置き型のものである。なお、各図に示す通り、X軸(左右)方向、Y軸(前後)方向およびZ軸(上下)方向を規定して、以降説明する。
【0023】
図1ないし図3に示すように、記録装置1は、搬送路上に臨む用紙Pにインクジェット方式で印刷処理を行う印刷部3と、枚葉の用紙Pを搬送路に沿って送る搬送部4と、用紙Pを横臥姿勢で収容し、筐体2に対し着脱自在に装着される記録媒体カセット5と、印刷(記録)が行われ、排紙された用紙Pを保持(ストック)する排出保持部6と、排出保持部6を記録媒体カセット5内部に侵入するように移動させる移動手段7と、搬送部4や印刷部3などを支持する装置フレーム(図示省略)と、を備えている。なお、請求項に言う「媒体保持装置」とは、記録媒体カセット5、排出保持部6および移動手段7を指す。
【0024】
図2に示すように、印刷部3は、後述する一対の搬送ローラー42の下流側に配設されており、インクジェットヘッド32を搭載したキャリッジ31と、インクジェットヘッド32に対向位置に設けられた案内部材33と、を有している。
【0025】
キャリッジ31は、X軸方向に延びるキャリッジガイド軸34に沿って、図外のモーターにより往復移動可能に設けられている。本実施形態の記録装置1は、インクカートリッジ(図示省略)がキャリッジ31から独立して設けられ、キャリッジ31がX軸方向に移動しながら記録を行う、いわゆるオフキャリッジ型のシリアルプリンターである。また、案内部材33は、搬送経路の一部を構成すると共に、用紙Pの記録面とインクジェットヘッド32との間のギャップ(ワークギャップ)を規定する。
【0026】
なお、本実施形態は、オフキャリッジ型のシリアルプリンターであるが、インクカートリッジがキャリッジ31に搭載された、いわゆるオンキャリッジ型であってもよいし、また、用紙P幅をカバーする固定式のインクジェットヘッド32を用いてもよい。さらに、インクジェット方式に限らず、その他の記録方式であってもよい。
【0027】
図3に示すように、搬送部4は、上流側から、装着された記録媒体カセット5の先端に対向する位置に設けられ、記録媒体カセット5から供給された用紙Pを下流側へと送り出す給送ローラー41と、用紙Pを印刷部3へと搬送する一対の搬送ローラー42と、印刷部3の案内部材33から用紙Pの浮き上がりを防止する案内ローラー43と、記録の行われた用紙Pを印刷部3から排出する一対の排紙ローラー44と、を有している。
【0028】
記録媒体カセット5に積層収容された最上位の用紙Pは、図外のピックアップローラーにより持ち上げられる。そして、給送ローラー41は、持ち上げられた用紙Pの先端と接した状態で、図外のモーターにより回転することにより用紙Pを、図3において後方向へと送り出す。給送ローラー41の外周面に対向位置には、用紙Pが湾曲反転する略U字状の搬送経路を形成するガイド部材(図示省略)と、給送ローラー41による用紙Pの送り出しを補助する補助従動ローラー46と、が配設されている。
【0029】
後方向へと送り出された用紙Pは、給送ローラー41およびガイド部材によって前向きに反転させられ、一対の搬送ローラー42へと送られる(図2および図3の破線参照)。用紙Pは、一対の搬送ローラー42の間に挟まれて、印刷部3に送られる。印刷部3で記録の行われた用紙Pは、案内ローラー43および一対の排紙ローラー44を介して、排出保持部6に排紙される。
【0030】
なお、本実施形態では、給送ローラー41(と補助従動ローラー46)、搬送ローラー42および排紙ローラー44は、それぞれ、ニップローラーの形態を為し、用紙Pの幅方向(X軸方向)に適宜の間隔で複数配置されている。また、本実施形態では、案内部材33側に位置する搬送ローラー42および排紙ローラー44が、それぞれ図外のモーターにより回転駆動され、インクジェットヘッド側に位置する搬送ローラー42、案内ローラー43および排紙ローラー44が、それぞれ従動するようになっている。また、駆動側の排紙ローラー44は、ゴムローラーにより構成され、案内ローラー43および排紙ローラー44は、拍車状のローラー(スターホイール)により構成されている。
【0031】
図2および図3に示すように、記録媒体カセット5は、筐体2内に横臥姿勢で配設されると共に、筐体2に対して水平方向にスライドさせることで着脱(挿脱)できるようになっている。記録媒体カセット5は、印刷部3に供給する用紙Pを重ねて保持する供給保持部51と、排出保持部6のカムフォロア70(後述する。)に当接する左右一対のカム部52と、を有している。
【0032】
供給保持部51は、上面が開放されたトレイ状に形成されており、複数枚の用紙Pが積層された状態でセットされる。
【0033】
各カム部52は、供給保持部51の両側面において、後方端から前方端近傍までに亘って外側に向かって突設されている。各カム部52は、排出保持部6に設けられた各カムフォロア70が当接し、記録媒体カセット5を筐体2に対し挿脱する際のガイドとなる。また、各カム部52に各カムフォロア70が当接することで、排出保持部6は、裏面に設けられた各フリーローラー71(後述する。)が、供給保持部51にセットされた最上位の用紙Pに接触しないように、押し上げられる。これにより、記録媒体カセット5を筐体2に挿脱時に、用紙Pが各フリーローラー71に接触して汚れが付くことを防止することができる。
【0034】
また、カム部52の前方部分には、記録媒体カセット5を筐体2にセットした際に、カムフォロア70が非接触となるように、下方に向かって傾斜部53が形成されている(図2参照)。つまり、カム部52には段差が設けられている。なお、傾斜部53は、排出保持部6が下限位置に移動した状態において、カムフォロア70が接触しない位置に設けられている。
【0035】
図2および図3に示すように、排出保持部6は、記録媒体カセット5上に横臥姿勢で配設され、印刷部3から排出された用紙Pを重ねて保持する。排出保持部6は、移動手段7に対し昇降自在に係合する排出本体部61と、排出本体部61に対し前後(Y軸)方向にスライド自在に設けられた第2排出部62と、第2排出部62に対し前後方向にスライド自在に設けられた第3排出部63と、第3排出部63の下流端部に回動自在に設けられた第4排出部64と、を有している。なお、第2排出部62および第3排出部63は、用紙Pのサイズに応じて適宜引き出すことで、排紙された用紙Pを保持する保持面を形成する。また、第4排出部64も適宜回動させることで用紙Pの保持面を形成する。
【0036】
図4および図5に示すように、排出本体部61は、排紙された用紙Pを保持する本体保持面Fと、後端部において左右両側面に突設された一対の第1ボス部65と、前後方向中央よりやや前寄りにおいて左右両側面に突設された一対の第2ボス部66と、第1ボス部65と第2ボス部66との間で前後方向略中央に設けられた左右一対のばね係合部67と、保持した用紙Pの上流端を支持する支持片68と、を有している。また、排出本体部61は、各ばね係合部67の下方において左右両側面から下方に突設された左右一対のカムフォロア70と、裏面において各カムフォロア70の内側に配設された左右一対のフリーローラー71と、を有している。
【0037】
排出本体部61は、記録媒体カセット5が筐体2にセットされた状態で、供給保持部51の前方に上方から侵入可能に重ねて配設されている。排出本体部61は、左右一対の第1ボス部65および第2ボス部66を介して、移動手段7によって昇降自在に支持されている。
【0038】
各ばね係合部67は、後述する捻りばね74の一方の線材端部が係合するように、上向きの鉤状に形成されている。各ばね係合部67は、後述する移動フレーム73を貫通して外側に露出している。
【0039】
支持片68は、本体保持面Fの後端において、上方に向かって本体保持面Fから略垂直に突設されている。また、支持片68は、装置フレームから下方に突設された固定支持部69の後方に位置していると共に、固定支持部69に対しZ軸方向にオーバーラップ(係合)している(図3参照)。なお、支持片68は、排出保持部6(排出本体部61)が下限位置に移動した状態(最大保持状態)において、固定支持部69に対し僅かにオーバーラップ(係合)するように形成されている(図3(b)参照)。したがって、排出本体部61が上限位置に移動した状態におけるオーバーラップ量(距離)は、排出保持部6(排出本体部61)の移動量(距離)と略同一となる。
【0040】
各カムフォロア70は、三角形の1の頂点を下方に向けて排出本体部61の各側面に一体形成されている。そして、三角形の1の頂点部分が、上記したカム部52に当接する。
【0041】
各フリーローラー71は、排出本体部61の裏面において、斜め後方に延びた一対のローラーアーム72に自由回転自在に軸支されている。各フリーローラー71は、供給保持部51内に上方から入り込み、供給保持部51にセットされた用紙Pの束の最上位の用紙Pに接触する(図3参照)。最上位の用紙Pが搬送部4の駆動により送られると、各フリーローラー71は、用紙Pの送りに伴い従動回転する。これにより、最上位(最表層)の用紙Pに損傷を与えることなく、用紙Pの供給搬送を円滑に行うことができる。
【0042】
図2および図4に示すように、移動手段7は、排紙ローラー44の下流側において装置フレームに支持された左右一対の移動フレーム73と、排出保持部6を供給保持部51に向かって付勢する左右一対の捻りばね74と、を有している。
【0043】
各移動フレーム73は、第1ボス部65が係合する第1係合孔75と、第2ボス部66が係合する第2係合孔76と、捻りばね74が嵌合して固定される固定ボス部77と、捻りばね74の他方の線材端部が係合して固定される固定フック部78と、を有している。
【0044】
各第1係合孔75は、移動フレーム73の後方端部において、X軸方向に貫通して、Z軸(上下)方向に長く形成された長孔である。同様に、各第2係合孔76は、移動フレーム73の前方端部において、Z軸(上下)方向に長く、X軸方向に貫通して形成された長孔である。各第1係合孔75には、各第1ボス部65が上下方向に移動自在に係合し、各第2係合孔76には、各第2ボス部66が上下方向に移動自在に係合する。したがって、排出保持部6(排出本体部61)は、左右一対の第1ボス部65および第2ボス部66が、左右一対の第1係合孔75および第2係合孔76にガイドされて昇降移動する。
【0045】
また、各第1係合孔75および各第2係合孔76のZ軸方向の長さは、排出保持部6の移動距離であり、排出本体部61が上限位置に移動した状態におけるオーバーラップ量(距離)と略同一である。したがって、排出本体部61の上限位置とは、各ボス部65,66が、各係合孔75,76の上端まで移動した位置であり(図3(a)および図4(a)参照)、一方、排出本体部61の下限位置とは、各ボス部65,66が、各係合孔75,76の下端まで移動した位置である(図3(b)および図4(b)参照)。なお、請求項に言う「移動軸」とは、各第1係合孔75および各第2係合孔76を指す。
【0046】
ここで、図6に示すように、記録媒体カセット5を筐体2に挿入する際、カム部52とカムフォロア70とが接触する前に、記録媒体カセット5の上部が、下降した状態の排出保持部6の下部に衝突する。このため、排出保持部6の前方が持ち上げられる。この際、各第2係合孔76において各第2ボス部66が上下方向にのみ移動可能な構成であると、各第2係合孔76と各第2ボス部66との間に「こじり」が生じ、排出保持部6を正常に上昇させることができない。
そこで、本実施形態の各第2係合孔76は、上部が前後方向に幅広となるように形成されている(図4参照)。これにより、排出保持部6が各第1ボス部65を中心として回動したときに、各第2係合孔76内において各第2ボス部66の移動が許容される。これにより、排出保持部6の前方を円滑に回動(揺動)させることができ、筐体2に対する記録媒体カセット5の装着を適切に行うことができる。
【0047】
なお、カム部52にカムフォロア70が接触することで排出保持部6は、左右一対の第1係合孔75および第2係合孔76にガイドされて上昇する。
本実施形態に係る各カムフォロア70は、第1ボス部65と第2ボス部66との間の略中央、すなわち、捻りばね74の付勢力を受けるばね係合部67の直下に設けられているため、各ボス部65,66と各係合孔75,76との間に「こじり」が生じることがなく排出保持部6を正常に昇降させることができる。
【0048】
また、図4に示すように、各移動フレーム73には、ばね係合部67が内側から挿通する係合開口部79が貫通形成されている。各固定フック部78は、係合開口部79の上部近傍に配設されている。各固定フック部78は、上向きの鉤状に形成されており、捻りばね74の他方の線材端部が係合している。各固定ボス部77は、固定フック部78の後方に配設されており、捻りばね74が巻回するようにして固定されている。各捻りばね74は、固定ボス部77に巻回部分が固定され、固定フック部78に他方の線材端部が固定されている。そして、各捻りばね74は、一方の線材端部をばね係合部67に係合させ、排出保持部6を供給保持部51側(下方)に付勢している。なお、本実施形態では、付勢手段として捻りコイルばね(圧縮ばね)を用いているが、コイルばねや引張ばねを用いてもよい。すなわち、排出保持部6が供給保持部51側(下方)に付勢されるような構成であればよい。
【0049】
続いて、移動手段7による排出保持部6の移動ついて簡単に説明する。ここでは、供給保持部51には、最大保持枚数の用紙Pがセットされており、記録媒体カセット5が筐体2に装着されているものとする(図3(a)参照)。また、排出保持部6は、用紙Pを保持しておらず、上限位置に移動した状態であるものとする。
【0050】
排出保持部6は、各捻りばね74の付勢力により下方に押し付けられており、排出本体部61に設けられた各フリーローラー71は、供給保持部51に積層された最上位の用紙Pに接触している。ユーザーの指示により印刷処理が実行されると、最上位の用紙Pは、搬送部4により送られる。この際、各フリーローラー71は、送られる用紙P上を転接する。
【0051】
各フリーローラー71に対して用紙Pの上流端が通過すると、排出保持部6は、各捻りばね74の付勢力により、送られた用紙Pの厚み分だけ下降する。そして、各フリーローラー71は、送られた用紙Pの下の用紙Pに接触する。以降、排出保持部6が下限位置(図3(b)参照)に達するまで印刷処理を継続することができる。
【0052】
以上の構成によれば、排出保持部6が供給保持部51に侵入可能とすることで、供給保持部51の保持量が減少した分だけ、排出保持部6の保持容量(保持することができる枚数)が増加する。すなわち、処理した用紙Pの数量(保持量)に応じて、排出保持部6の保持容量の変更することができるため、最大容量に応じたスペースを、排出保持部6上に予め確保しておく必要がない。これにより、無駄なスペースを設けることなく供給保持部51、排出保持部6および移動手段7を最小化することができると共に、これが搭載される記録装置1を小型化することができる。
【0053】
(第2実施形態)
上述した第1実施形態では、記録媒体カセット5、排出保持部6および移動手段7を、所謂横置き型の記録装置1に適用しているが、これらを記録媒体カセット5(供給保持部51)および排出保持部6を起立姿勢で配設した所謂縦置き型の記録装置1に適用してもよい。図示は省略するが、第2実施形態にかかる記録装置1は、起立姿勢で保持した用紙P(記録媒体)を搬送しながら所望の記録を行い、排紙した記録済みの用紙Pを起立姿勢で保持(ストック)するものである。なお、所謂縦置き型の記録装置1であること以外は、第1実施形態に係るものと同様であるため、詳細な説明は省略する。
【0054】
この構成によれば、排出保持部6は、横臥姿勢か起立姿勢かに関わらず、各捻りばね74により、各第1係合孔75および各第2係合孔76に沿って保持容量が大きくなる方向(供給保持部51側)に確実に移動する。また、供給保持部51に収容された用紙Pは、各フリーローラー71により押えられるため、安定した起立姿勢を維持することができる。これにより、供給保持部51内の用紙Pがばらけることが防止され、印刷部3への用紙Pの円滑な送り出しに影響を与えることがない。さらに、縦置き型とすることにより、さらに記録装置1の小型化を図ることができる。
【0055】
(第3実施形態)
第3実施形態に係る移動手段7について説明する。なお、第1実施形態および第2実施形態に係るものと同様の説明および図示は省略する。第3実施形態に係る移動手段7は、所謂縦置き型の記録装置1に搭載されており、供給保持部51または排出保持部6に保持された用紙Pの保持量を検出する保持量検出手段と、保持量検出手段の検出結果に基づいて、各係合孔75,76に沿って、排出保持部6を移動させる移動機構と、を有している。
【0056】
保持量検出手段および移動機構は、図外の制御装置に接続されている。制御装置は、保持量検出手段が、予め設定した保持量を検出すると、移動機構を駆動して、予め設定した量(距離)だけ排出保持部6を移動させる。このように、保持量検出手段により、供給保持部51または排出保持部6における用紙Pの保持量を検出することで、排出保持部6の保持容量が適切となるように、排出保持部6を移動させることができる。なお、保持量検出手段としては、フォトセンサー距離センサー(超音波、赤外線、レーザー等を用いたもの)を用いることができる。また、保持量検出手段として、排紙された用紙Pまたは供給された用紙Pの数をカウントするカウンターを用いてもよい。なお、移動機構としては、モーター駆動のピニオンギヤおよびラックギヤ、モーター駆動のボールねじ機構またはピストン・シリンダー機構(油圧、空気圧等)等を用いることができる。
【0057】
(第4実施形態)
第4実施形態に係る移動手段7について説明する。なお、第1実施形態に係るものと同様の説明および図示は省略する。第4実施形態に係る移動手段7は、第1実施形態に係るものと同様に所謂横置き型の記録装置1に用いられるものである。この移動手段7は、捻りばね74が省略されており、各係合孔75,76に沿って、自重で下方に移動する排出保持部6自身で構成されている。
【0058】
この構成によれば、供給保持部51に積層された用紙Pが印刷部3に供給されると、供給保持部51において減少した積層量に応じて、排出保持部6は、自らの重さによって下降する。このため、排出保持部6を移動させる機構を省略することができ、移動手段7の構成を単純化することができる。これにより、移動手段7および記録装置1の省スペース化および低コスト化を図ることができる。
【0059】
(第5実施形態)
上述した各実施形態に係る排出保持部6は、供給保持部51の上部に重ねて(または隣接して)配設されていた。そして、供給保持部51に積層された用紙Pが、印刷処理に供され、減少して生じたスペースに、排出保持部6(排出本体部61)を侵入させるようにして、排出保持部6における用紙Pの保持容量を増加させていた。つまり、供給保持部51における用紙Pの減少と、排出保持部6における用紙Pの増加とが、反比例の関係にあるということを利用していた。
しかし、第5実施形態に係る記録装置1では、排出保持部6を、供給保持部51から離した位置に配設している(図示省略)。すなわち、排出保持部6は、供給保持部51における積層された用紙Pの減少とは無関係に、排出保持部6における用紙Pの保持量の増加に対応して、保持容量を増加させるようになっている。
【0060】
これを横置き型の記録装置1に適用した場合、移動手段7には、捻りばね74に代えて、排出保持部6(排出本体部61)を常に上方に向かって付勢するバネを設ける。なお、バネの種類は、任意であり、圧縮ばねでもよいし、引張ばねでもよい。排出保持部6上に用紙Pが排紙されると用紙Pの重みで、バネが伸びまたは縮み、排出保持部6が下方に移動する。すなわち、排出保持部6は、排紙される用紙Pが多くなるに従って下方に移動する。一方、縦置き型の記録装置1に適用した場合、移動手段7は、第3実施形態に係る移動手段7を用いることができる。
【符号の説明】
【0061】
1:記録装置、3:印刷部、6:排出保持部、7:移動手段、51:供給保持部、68:支持片、69:固定支持部、71:フリーローラー、74:捻りばね、75:第1係合孔、76:第2係合孔、P:用紙

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体処理部に供給する記録媒体を重ねて保持する供給保持部と、
前記媒体処理部から排出された記録媒体を重ねて保持すると共に、前記供給保持部に対し侵入可能に重ねて配設された排出保持部と、
前記供給保持部における前記記録媒体の保持量の減少に対応して、前記排出保持部の保持容量が大きくなるように、前記排出保持部を前記供給保持部に侵入するように移動させる移動手段と、を備えたことを特徴とする媒体保持装置。
【請求項2】
前記排出保持部は、横臥姿勢で配設され、
前記移動手段は、
前記排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、
前記移動軸に沿って、前記排出保持部を前記供給保持部に向って付勢する付勢手段を、有していることを特徴とする請求項1に記載の媒体保持装置。
【請求項3】
前記排出保持部は、起立姿勢で配設され、
前記移動手段は、
前記排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、
前記移動軸に沿って、前記排出保持部を前記供給保持部に向って付勢する付勢手段を、有していることを特徴とする請求項1に記載の媒体保持装置。
【請求項4】
前記排出保持部は、起立姿勢で配設され、
前記移動手段は、
前記排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、
前記供給保持部に保持された前記記録媒体の保持量を検出する保持量検出手段と、
前記保持量検出手段の検出結果に基づいて、前記移動軸に沿って、前記排出保持部を移動させる移動機構と、を有していることを特徴とする請求項1に記載の媒体保持装置。
【請求項5】
前記排出保持部は、横臥姿勢で配設され、
前記移動手段は、
前記排出保持部を移動自在に支持する移動軸と、
前記移動軸に沿って、自重で移動する前記排出保持部自身と、から成ることを特徴とする請求項1に記載の媒体保持装置。
【請求項6】
前記排出保持部は、保持した前記記録媒体の上流端を支持する支持片を有し、
前記排出保持部が最大保持状態で、前記支持片と移動方向にオーバーラップする固定支持部を、更に備えたことを特徴とする請求項1ないし5のいずれかに記載の媒体保持装置。
【請求項7】
前記排出保持部は、前記供給保持部に保持されている前記記録媒体に転接するフリーローラーを、更に有していることを特徴とする請求項1ないし6のいずれかに記載の媒体保持装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれかに記載の媒体保持装置と、
前記媒体処理部として、前記記録媒体に記録を行う記録部と、を備えたことを特徴とする記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−180207(P2012−180207A)
【公開日】平成24年9月20日(2012.9.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−45431(P2011−45431)
【出願日】平成23年3月2日(2011.3.2)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】