説明

媒体回収装置および媒体回収方法

【課題】本発明では、媒体の回収可能数を減少させることなく確実に媒体を回収できる媒体回収装置および媒体回収方法を提供する。
【解決手段】媒体を回収する回収部と、前記媒体との接触面に設けられた凸部と、前記凸部の前記接触面の回転方向に設けられた切り欠き部と、を有し、前記媒体と接触して回転することにより前記媒体を搬送するローラと、前記媒体が所定位置を通過したか否かを検出する媒体検出部と、前記媒体が、前記所定位置を通過したことが検出されると、前記媒体を前記ローラに押し付ける押圧部と、を有し、前記押圧部により前記媒体が前記ローラに押し付けられることにより、前記媒体の後端が前記凸部により押されて、前記媒体が前記回収部内部に回収されることを特徴とする媒体回収装置により上記課題の解決を図る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体回収装置および媒体回収方法に関する。
【背景技術】
【0002】
現金自動預払機(ATM:Automatic teller Machine)等には、通帳や帳票に印字を行うプリンタが搭載されている。このようなプリンタには、例えば帳票などの媒体を回収するための媒体回収部が設けられている。この媒体回収部は、通帳の取り忘れがあった際に通帳の一時退避を行うなど、媒体の一時退避のためにも用いられる。しかし、一時退避した媒体が外部に戻される際、媒体回収部に退避されていた媒体が共に連れ出され、エラーとなることがある。
【0003】
このため、媒体回収部に媒体を回収する際に、媒体の後端を蹴り爪で押すようにして、媒体が詰まらないようにした例がある(例えば、特許文献1参照)。また、媒体の後端を押さえレバにより送り込み、ローラに押し付けるようにして、次に送り出されてくる媒体の邪魔にならないようにした例もある(例えば、特許文献2参照)。2個配設された駆動ローラと、駆動ローラに圧接された圧接ローラと、圧接ローラと同軸に備えられた羽根車付きローラとで媒体を波状の凹凸に屈曲して搬送することにより、収納動作の性能を向上させるようにした例もある(例えば、特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−235058号公報
【特許文献2】特開2008−213988号公報
【特許文献3】特開平7−98777号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、媒体回収部に媒体を回収する場合、回収済みの媒体の量が増加すると、回収のために搬送される媒体が、回収済みの媒体との接触負荷によって途中で止まってしまい、回収不良が発生する。また、プリンタの性能を向上させるために、プリンタに多くの空間を割かなければならないような場合、媒体の量に対して媒体回収部の空間の余裕がなくなる。よって、媒体回収部への回収不良や、通帳の一時退避後の排出の際に、回収されたはずの媒体が共に連れ出されるような不良が発生する場合がある。
【0006】
上記課題に鑑み、本発明では、媒体の回収可能数を減少させることなく確実に回収部に収納することが可能な媒体回収装置及び媒体回収方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかる媒体回収装置は、媒体を回収する回収部と、前記媒体との接触面に設けられた凸部と、前記凸部の前記接触面の回転方向に設けられた切り欠き部と、を有し、前記媒体と接触して回転することにより前記媒体を搬送するローラと、前記媒体が所定位置を通過したか否かを検出する媒体検出部と、前記媒体が、前記所定位置を通過したことが検出されると、前記媒体を前記ローラに押し付ける押圧部と、を有し、前記押圧部により前記媒体が前記ローラに押し付けられることにより、前記媒体の後端が前記凸部により押されて、前記媒体が前記回収部内部に回収されることを特徴としている。
【0008】
本発明に係る媒体回収方法は、前記媒体が所定位置を通過したか否かを検出する処理と、前記媒体との接触面に設けられた凸部と、前記凸部の前記接触面の回転方向に設けられた切り欠き部と、を有し、前記媒体と接触して回転することにより前記媒体を搬送するローラにより前記媒体を移動させる処理と、前記媒体が、前記所定位置を通過したことが検出されると、前記媒体を押圧部により前記ローラに押し付ける処理と、前記押圧部により前記媒体が前記ローラに押し付けられることにより、前記後端が前記凸部により押されて、前記媒体が前記回収部内部に回収されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によるによれば、媒体の回収可能数を減少させることなく確実に回収部に収納することが可能な媒体回収装置及び媒体回収方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施の形態による自動取引装置の構成を示す概略図である。
【図2】一実施の形態による媒体回収装置内部の構成を示す説明図である。
【図3】一実施の形態によるピンチローラの構成を示す図であり、(a)は、接触面の概観図、(b)は側面図である。
【図4】一実施の形態によるゲートの構成を示す図である。
【図5】一実施の形態による媒体回収装置における搬送路の切り換えを説明する図である。
【図6】一実施の形態による媒体回収装置における搬送路の切り換えを説明する図である。
【図7】一実施の形態による媒体回収装置における搬送路の切り換えを説明する図である。
【図8】一実施の形態による回収部に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置の媒体回収動作を説明する図である。
【図9】一実施の形態による回収部に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置の媒体回収動作を説明する図である。
【図10】一実施の形態による回収部に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置の媒体回収動作を説明する図である。
【図11】一実施の形態による回収部に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置の媒体回収動作を説明する図である。
【図12】一実施の形態による回収部に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置の媒体回収動作を説明する図である。
【図13】一実施の形態による回収部に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置の媒体回収動作を説明する図である。
【図14】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図15】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図16】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図17】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図18】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図19】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図20】一実施の形態による媒体回収装置の動作を詳細に説明する図である。
【図21】一実施の形態による媒体回収装置の動作を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、図面を参照しながら本発明の一実施の形態による媒体回収装置について、自動取引装置1における媒体回収装置5を例にして説明する。図1は、本実施の形態による自動取引装置1の構成を示す概略図である。図1に示すように、自動取引装置1は、前段部3、媒体回収装置5、発行部6、7を有している。
【0012】
前段部3は、主に帳票や通帳の印字を行い、媒体回収装置5は、主に帳票や通帳等(以下、まとめて媒体ともいう)を後述する回収部43に回収し、発行部6、7は、自動取引装置1における処理で用いる媒体を収納している。
【0013】
前段部3は、制御部8、MS(磁気ストライプ)部9、光学リード部11、印字部13、頁捲り部14、搬送路15を有している。制御部8は、自動取引装置1全体の処理を制御する。MS部9は、通帳やカードの磁気記録部に保持されている情報の読取り、および情報の書き込みを行う。光学リード部11は、例えば帳票や通帳に記載されている情報を光学的に読取る。印字部13は、帳票や通帳に印字を行う。頁捲り部14は、通帳の頁を必要に応じて捲る。
【0014】
搬送路15は、不図示のローラなどが配置され、処理に応じて帳票や通帳を自動的に搬送するように構成された通路である。説明のため、搬送路15に搬送路15a〜搬送路15gと符号を付加することにする。
【0015】
前段部3において、搬送路15は、搬送路15a、搬送路15bを有している。搬送路15aは、自動取引装置1の不図示の挿入口から、媒体回収装置5に至る通路である。搬送路15aは、不図示の挿入口から自動取引装置1に挿入された通帳、帳票などを、前段部3の内部を通って媒体回収装置5側へと搬送するとともに、返却する媒体を媒体回収装置5側から前段部3を通って挿入口に搬送するための通路である。搬送路15bは、発行部6から搬送路15aに至る通路であり、発行部6に収納されている帳票または通帳を、必要に応じて前段部3に導入する。
【0016】
発行部6は、図1の例では、2つのカセット6a、6bを有しており、それぞれ必要に応じて媒体を収納している。カセット6a、6bは、互いに異なる大きさの媒体を収納するようにしてもよいし、同じ大きさの媒体を収納するようにしてもよい。また、発行部6に収納されている媒体は、上述のように、必要に応じて搬送路15bを経由して前段部3内部の搬送路15aに導入される。
【0017】
発行部7も同様に、図1の例では、2つのカセット7a、7bを有しており、それぞれ必要に応じて媒体を収納している。カセット7a、7bは、互いに異なる大きさの媒体を収納するようにしてもよいし、同じ大きさの媒体を収納するようにしてもよい。また、発行部7に収納されている媒体は、必要に応じて後述の搬送路15fを経由して媒体回収装置5内部の搬送路15cに導入される。
【0018】
媒体回収装置5は、天地ターン部17、回収部43、搬送路15を有している。天地ターン部17は、通帳や帳票の天地を逆転させる。回収部43は、帳票や通帳を内部に収納する。
【0019】
媒体回収装置5においては、搬送路15は、搬送路15c、搬送路15d、搬送路15e、搬送路15f、および搬送路15gを有している。搬送路15cは、前段部3側から、回収部43への分岐点までの通路である。搬送路15gは、回収部43への分岐点から天地ターン部17へと続く通路である。搬送路15c、15gは、前段部3から搬送されてきた媒体を、天地ターン部17側へ搬送するとともに、発行部7から送出された媒体や、天地ターン部17、または回収部43側から搬送された媒体を前段部3側へ搬送する通路である。
【0020】
搬送路15dは、搬送路15cから回収部43側へ続く通路であり、媒体を必要に応じて回収部43側または一時退避側へ搬送するとともに、一時退避させていた通帳等を搬送路15cに搬送するための通路である。搬送路15eは、回収部43の入り口で搬送路15dから分岐してさらに延伸された通路であり、通帳等を一時退避する際に、回収部43の入り口に設けられた不図示のローラなどで保持した状態で一時保管するための通路である。搬送路15fは、発行部7から搬送路15gに至る通路であり、発行部7に収納されている帳票または通帳を、必要に応じて媒体回収装置5側に導入する。
【0021】
次に、図2から図4を参照しながら本実施の形態による媒体回収装置5の構成についてさらに説明する。図2は、媒体回収装置5内部の構成を示す説明図、図3は、ピンチローラ31の構成を示す図、図4は、ゲート37の構成を示す図である。なお、図2から図19においては、搬送路15fおよび天地ターン部17は、図示を省略している。
【0022】
図2に示すように、自動取引装置1において、前段部3の媒体回収装置5側の端部には、ローラ21とピンチローラ23とが互いに対向して配置されている。媒体回収装置5の搬送路15gには、ピンチローラ33とローラ35とが互いに対向して配置されている。搬送路15dには、媒体の通過を検知するセンサ27が設けられている。センサ27は、例えばフォトセンサである。搬送路15dと搬送路15eとの境界部には、ピンチローラ31とローラ29とが互いに対向して配置されている。また、ピンチローラ31とローラ29のさらに回収部43側に、ゲート37が設けられている。
【0023】
ローラ21、ピンチローラ23は、搬送路15aまたは搬送路15cを搬送されてくる媒体を、互いの間に挟んだ状態で回転することにより、媒体回収装置5側または前段部3内部側に搬送する。例えば、ローラ21は、媒体回収装置5に対して軸21aを介して固定され、媒体を搬送する方向に応じて駆動力を印加されて回転する。ピンチローラ23は、ローラ21に対して加圧されるとともに、媒体の通過に伴い適宜移動可能に構成されている。ローラ21、ピンチローラ23の回転方向は、媒体を搬送する方向に応じて可変である。
【0024】
ゲート25は、不図示のマグネットAのオンオフにより軸25aを中心として矢印25bのように回動し、搬送路15cと接続される搬送経路を搬送路15dと搬送路15gとの間で切り換える。搬送路15cと搬送路15gとが接続されている場合には、搬送されてきた媒体は、天地を反転されて、搬送路15cに戻される。搬送路15cと搬送路15dとを接続することにより、搬送路15cから搬送されてきた媒体を搬送路15d側に搬送したり、搬送路15d側から搬送されてきた媒体を搬送路15c側に搬送したりすることができる。センサ27は、例えばフォトセンサであり、媒体が通過したか否かを検知する。
【0025】
ピンチローラ33、ローラ35は、搬送路15gを搬送されてくる媒体を、互いの間に挟んだ状態で回転することにより、天地ターン部17側または前段部3内部側に搬送する。例えば、ローラ35は、媒体回収装置5に対して軸35aを介して固定され、媒体を搬送する方向に応じて駆動力を印加されて回転する。ピンチローラ33は、ローラ35に対して加圧されるとともに、媒体の通過に伴い適宜移動可能に構成されている。ローラ35、ピンチローラ33の回転方向は、媒体を搬送する方向に応じて可変である。
【0026】
ローラ29、ピンチローラ31は、搬送路15dを搬送されてくる媒体を、互いの間に挟んだ状態で回転することにより、ゲート37の回動状態に応じて搬送路15e側または回収部43内部側に搬送する。例えば、ローラ29は、媒体回収装置5に対して軸29aを介して固定され、媒体を搬送する方向に応じて駆動力を印加されて回転する。ピンチローラ31は、ローラ29に対して加圧されるとともに、媒体の通過に伴い適宜移動可能に構成されている。ローラ29、ピンチローラ31の回転方向は、媒体を搬送する方向に応じて可変である。ピンチローラ31の構成の詳細は後述する。
【0027】
ゲート37は、押圧部38と遮蔽部39とを有し、不図示のマグネットBのオンオフにより、軸37aを中心として矢印37bのように回動する。ゲート37は、搬送路15dと搬送路15eまたは回収部43との接続を切り換えるとともに、媒体がピンチローラ31とローラ29との間を通過する際に、媒体をピンチローラ31に押し付ける。媒体が回収部43内に完全に収納されると、ゲート37により搬送路15dと搬送路15eとが接続されている状態となる。このとき、遮蔽部39がセンサ41内部に入り込み光を遮断する。センサ41は、例えばフォトセンサである。制御部8は、センサ41により、ゲート37が搬送路15dを搬送路15eに接続する側に完全に回動したことを検出することにより、媒体が回収部43に完全に収納されたことを検出する。ゲート37の構成の詳細は後述する。
【0028】
図3は、ピンチローラ31の構成を示す図であり、(a)は、接触面の概観図、(b)は側面図である。図3に示すように、ピンチローラ31は、媒体との接触面を見ると、図3(a)の例では図の右側に凸部31aが切欠き部31bを挟んで形成されている。図3(b)に示すように、ピンチローラ31は、側面から見ると、凸部31aが形成された部分の外周が一回り大きく(径r1)、切欠き部31bを、他の平坦部31cと同一の径r2にした凹凸のある形状である。切欠き部31bは、例えば4箇所形成される。
【0029】
図4は、ゲート37の詳細な構成と、ピンチローラ31との位置関係を示す図である。図4は、図2の紙面の上方からゲート37及びピンチローラ31を見た図である。図4に示すように、ゲート37は、軸37aで媒体回収装置5本体に固定され、矢印37bのように回動する。ゲート37のピンチローラ31側には、短歯38a、長歯38c、切り欠き38bを有する押圧部38が形成されている。
【0030】
短歯38aは、ピンチローラ31の平坦部31cに対向する部分に形成されている。切り欠き38bは、短歯38aの両側に形成される。特に、ピンチローラ31の凸部31aのある側は、凸部31aに対向する部分を避けるように形成され、押圧部38が凸部31aに接触しない形状となっている。長歯38cは、押圧部38の、短歯38a、切欠き38b以外の部分に形成される。
【0031】
なお、例えばローラ21、ピンチローラ23、ローラ35、ピンチローラ33、ローラ29の少なくとも媒体に接触する面は、ゴム、樹脂などで形成されることが好ましい。ピンチローラ31は、媒体の引っ掛かりを防止するため、媒体との接触面を樹脂で形成することが好ましい。
【0032】
以下、図5から図7を参照しながら、本実施の形態による媒体回収装置5におけるゲート25、ゲート37の切り換え状態について説明する。図5から図7は、媒体回収装置5における搬送路15の切り換えを説明する図である。なお、ゲート25、ゲート37は、それぞれ不図示のマグネットA、マグネットBによってそれぞれ切り換えができ、搬送ルートを以下のように変更できる。2つのマグネットの状態に応じて、使用可能な搬送路15は以下の3種類に切り換わる。
【0033】
1)マグネットA:オフ、マグネットB:オフ・・・搬送路15g(図5の状態)
2)マグネットA:オン、マグネットB:オフ・・・搬送路15c→搬送路15d→搬送路15e(図6の状態)
3)マグネットA:オン、マグネットB:オン・・・搬送路15c→搬送路15d→回収部43(図7の状態)
以下、ゲート25、ゲート37の上記1)の状態を第1の状態、2)の状態を第2の状態、3)の状態を第3の状態ということにする。
【0034】
図5は、媒体が搬送路15g内に搬送される場合を示している。図5に示すように、ゲート25は、搬送路15dを閉鎖する状態、ゲート37は、回収部43への入り口を閉鎖する状態となっている。このとき媒体50は、ローラ21とピンチローラ23とに送り出され、さらにピンチローラ33とローラ35とに挟まれて搬送される。
【0035】
図6は、媒体が搬送路15dおよび搬送路15e内に搬送される場合を示している。図6に示すように、ゲート25は、搬送路15dと搬送路15cとを接続する状態、ゲート37は、回収部43への入り口を閉鎖する状態となっている。このとき媒体50は、ローラ21とピンチローラ23とに送り出され、さらにピンチローラ31とローラ29とに挟まれて搬送路15eに一部が搬送された状態で一時退避される。
【0036】
図7は、媒体が回収部43に回収される場合を示している。図7に示すように、ゲート25は、搬送路15dと搬送路15cとを接続する状態、ゲート37は、搬送路15eを閉鎖する状態となっている。このとき媒体50は、ローラ21とピンチローラ23とに送り出され、さらにピンチローラ31とローラ29とに挟まれて回収部43に回収される。
【0037】
以下、図8から図13を参照しながら、本実施の形態による媒体回収装置5の媒体回収動作について説明する。図8から図13は、回収部43に回収された媒体が十分少ない場合の媒体回収装置5の媒体回収動作を説明する図である。図8から図13において、ゲート37の遮蔽部39は図示を省略している。
【0038】
図8に示すように、前段部3の搬送路15aを搬送されてきた媒体50が、ローラ21およびピンチローラ23にはさまれて媒体回収装置5の搬送路15cに搬送される。このとき、2つのマグネットA、Bはともにオフであり、ゲート25、ゲート37は第1の状態となっている。
【0039】
媒体50を回収部43に回収する場合には、図9に示すように、まず、2つのマグネットA、Bがオンされ、ゲート25、ゲート37は第3の状態となる。媒体50の先端がセンサ27の位置に到達すると、制御部8は、センサ27が遮蔽されたことを検知することにより、媒体50が搬送されてきたことを判別する。
【0040】
図10に示すように、媒体50は、搬送路15dを通って矢印56の方向に搬送され、ピンチローラ31およびローラ29の間に挟まれる。図11に示すように、ローラ29、ピンチローラ31の回転により媒体50は矢印60の方向へ搬送され、さらに回収部43の内部に搬送され、図12に示すように回収部43に完全に回収される。
【0041】
図13に示すように、制御部8は、センサ27により媒体50の後端が回収部43内に搬送されたことを検知すると、例えば、ピンチローラ31の回転が一定のステップ数を超えた場合に、マグネットBをオフにする。すなわち、媒体50がピンチローラ31を通過したと考えられるときに、マグネットBをオフする。これにより、制御部8は、ゲート37を切り換えて第2の状態とし、例えばローラ29への駆動力の印加を停止することにより、ピンチローラ31の回転を停止する。さらに、マグネットAをオフすることにより、ゲート25を回動させ、第1の状態とする。
【0042】
次に、図14から図20を参照しながら、回収部43に媒体が既に許容量に近い量回収されている場合を例にして、本実施の形態による媒体回収方法について説明する。図14から図20は、本実施の形態による媒体回収装置5の動作を詳細に説明する図である。図14に示すように、ゲート25、ゲート37は第3の状態であるとする。媒体回収装置5では、回収部43に媒体が既に回収されている場合に、例えば範囲51で示すような場所に接触負荷が発生して、媒体50が回収部43に完全に回収されない場合がある。
【0043】
図15に示すように、制御部8は、センサ27で媒体50の通過を検知してから、例えば、ピンチローラ31の回転が一定のステップ数を超えた場合に、マグネットBをオフする。しかし、媒体50はまだピンチローラ31とローラ29との間に挟まれているため、遮蔽部39がセンサ41の内部に侵入せず、制御部8は、第2の状態に移行したことを検知できない。よって、ローラ29、ピンチローラ31は回転を継続する。また、ゲート37の押圧部38は、矢印62の方向に、媒体50をピンチローラ31に押し付けることになる。
【0044】
図16に示すように、媒体50が押し付けられた状態で、さらにピンチローラ31が回転すると、媒体50の搬送方向を前とする後端がピンチローラ31の切欠き部31bに配置され、嵌ることになる。そして、図17に示すように、ピンチローラ31の更なる回転によって、媒体50の後端は凸部31aにより、例えば、図14の範囲51で生ずる接触負荷を超える推進力を印加され、矢印64のように搬送方向に押される。
【0045】
さらに、図18、図19に示すように、ピンチローラ31の回転とともに媒体50は矢印64の方向に搬送される。この間、図19に示すように、長歯38cは媒体50を矢印62の方向に押し付ける。
【0046】
図20に示すように、媒体50が完全に回収部43に回収されると、ゲート37の押圧部38は媒体50に回動を阻止されなくなり、回収部43の入り口を塞ぐ方向にさらに回動する。押圧部38のピンチローラ31と対向する部分は、図4で説明したように短歯38aおよび切り欠き38bとなっているため、ゲート37は、ピンチローラ31に回動を阻止されることなく搬送路15dを搬送路15eに接続する位置まで回動する。このとき、ゲート37に備えられた遮蔽部39は、センサ41の内部に侵入する。制御部8は、センサ41が遮蔽されることによりゲート37が完全に回動して第2の状態に移行したことを検知する。制御部8は、ゲート37が完全に回動したことを検知することにより、媒体50が回収部43内部に完全に回収されたと判別する。さらに、制御部8は、マグネットAをオフし、ゲート25を切り換え、第1の状態とする。
【0047】
なお、制御部8がセンサ27により媒体50を検知した後、例えば、ピンチローラ31の回転が一定のステップ数を超えた場合に、センサ41によりゲート37の回動が検知されなかった場合には、マグネットBをオンオフすることにより、媒体50がピンチローラ31の切り欠き部31bで捉えやすくすることが好ましい。
【0048】
以上の動作を、さらに、図21を参照しながら説明する。図21は、媒体回収装置5の動作を示すフローチャートである。図21に示すように、まず制御部8は、マグネットA、Bをオンし、例えば図9のように、ゲート25、ゲート37を、媒体50を回収部43に回収するための第3の状態にする(S101)。媒体50は、例えば図9のように、ピンチローラ23およびローラ21に挟まれて移動を開始する(S102)。
【0049】
例えば図9に示すように、媒体50が媒体検知用のセンサ27の位置まで搬送されると、制御部8はセンサ27が遮蔽されたことを検知する(S103)。例えば図11のように、媒体50の後端がセンサ27を通過すると、制御部8は、センサ27が遮蔽されなくなったことにより媒体50の通過を検知する(S104)。
【0050】
制御部8は、媒体50の通過から、例えばローラ29を回転させる不図示のモータのステップ数が所定数計数されるまで、媒体50を搬送する(S105)。そして、制御部8は、マグネットBをオフし、ゲート37を回収部43を閉鎖する第2の状態に移行させる指示を行う(S106)。さらに、制御部8は、ローラ29を回転させる不図示のモータのステップ数が一定数計数されるまで、さらに媒体50を搬送させる(S107)。この間、図15から図19に示すように、ピンチローラ31の凸部31aが、媒体50の後端を押すことにより、媒体50を回収部43の内部に向けて搬送する。
【0051】
制御部8は、センサ41が遮蔽部39により遮蔽されたか否か判別し(S108)、遮蔽されたと判別すると、ローラ29およびピンチローラ31の回転を停止するとともに、マグネットAをオフして、第1の状態にし、処理を終了する(S109)。なお、S108では、センサ41が遮蔽されたことが検知されない間は、マグネットBをオンした後(S110)、オフする(S106)ことを繰り返す。
【0052】
上記実施の形態において、ピンチローラ31は本発明のローラの一例であり、ローラ29は、対向ローラの一例であり、センサ27は媒体検出部の一例であり、センサ41は、回収検出部の一例である。搬送路15eは、一時退避路の一例である。ゲート37は、本発明の経路切換部の一例である。
【0053】
以上詳細に説明したように、本実施の形態による自動取引装置1の媒体回収装置5においては、回収部43の入り口のピンチローラ31に、凸部31a、および切欠き部31bを設けた。凸部31aおよび切り欠き部31bは、ピンチローラ31の媒体の搬送方向と直交する方向の片側に設けられる。ピンチローラ31は、搬送方向と直交する方向に間隔を空けて2つ設けた。
【0054】
搬送路15dからの搬送先は、回収部43のみでなく、一時退避に利用できる搬送路15eを設けた。搬送路15dからの搬送先を回収部43と搬送路15eとの間で切り換えるゲート37に、押圧部38および遮蔽部39を設けた。さらに、搬送路15dには、媒体50の通過を検知するセンサ27を設け、遮蔽部39によりゲート37の動きを検知するセンサ41を設けた。
【0055】
このような構成により、回収部43への媒体50の回収時には、凸部31aで媒体50の後端を押すことができる。よって、回収部43に許容量に近い媒体が既に回収されている場合でも、既に収納されている媒体との間の接触負荷を超えた搬送力を印加することができ、確実に回収を行なうことができる。
【0056】
凸部31aおよび切り欠き部31bは、ピンチローラ31の媒体の搬送方向と直交する方向の片側に設けられる。よって、ピンチローラ31は、製造が簡易に行えるとともに、複数備える場合にも同一の形状のものを作成するだけでよい。また、ピンチローラ31は、媒体の搬送方向と直交する方向に2個設けられる。これにより、搬送する媒体を波状にして搬送することができ、搬送力を向上させることができる。
【0057】
ゲート37の押圧部38は櫛歯形状に形成されており、特にピンチローラ31と対向する部分は、短歯38aおよび切り欠き38bとなっている。よって、媒体50がピンチローラ31を離れて回収部43に確実に回収されるまで、短歯38aがピンチローラ31の平坦部31cを押し続ける。これにより、媒体50がピンチローラ31を離れるまで、ゲート37は、回収部43への入り口を確実に塞ぐ位置に回動することができない。よって、遮蔽部39がセンサ41を遮蔽することを検知することにより、媒体50が回収部43に確実に回収されたことを検知することが可能になる。
【0058】
以上より、回収部43において完全に回収されていない媒体を、例えば一時退避されている媒体の排出時に連れ出すことを防止することができる。このとき、一時退避用の搬送路15eが設けられているため、さらに、排出時の連れ出しを防止する効果がある。
【0059】
このように、回収部43に既に許容量に近い数の媒体が収納されている場合にも、確実に回収が可能であるため、通帳プリンタの性能を向上させるためなどの理由で、回収部43のスペース減少によって減少した回収可能数を、従来と同等以上のものにすることも可能になる。
【0060】
さらに、新たに一時退避用の搬送路15eと切り換え用のゲート37を加えたため、回収部43のスペースが従来のものに比べて小さくなっても、回収不良を低減できるので、回収可能数を従来と同等以上のものにすることができる。
【0061】
なお、本発明は、以上に述べた実施の形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々の構成または実施形態を採ることができる。例えば、ローラ21、ピンチローラ23は、両方が回転するようにしてもよいし、例えばピンチローラ23を媒体の搬送方向にあわせて駆動力を印加して回転させ、ローラ21には回転のための駆動力を印加しないようにしてもよい。切欠き部31bは、例えば4箇所形成されるが、他の個数でもよい。図4の例では、長歯38bも櫛歯状に形成されているが、例えば、2つのピンチローラ31の間は連続していてもよい。
【符号の説明】
【0062】
1 自動取引装置
3 前段部
5 媒体回収装置
6 発行部
7 発行部
8 制御部
9 MS部
11 光学リード部
13 印字部
14 頁捲り部
15 搬送路
17 天地ターン部
21 ローラ
23 ピンチローラ
25 ゲート
27 センサ
29 ローラ
31 ピンチローラ
31a 凸部
31b 切欠き部
31c 平坦部
33 ピンチローラ
35 ローラ
37 ゲート
37a 軸
37b 矢印
38 押圧部
38a 短歯
38c 長歯
38b 切り欠き
39 遮蔽部
41 センサ
43 回収部
50 媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
媒体を回収する回収部と、
前記媒体との接触面に設けられた凸部と、前記凸部の前記接触面の回転方向に設けられた切り欠き部と、を有し、前記媒体と接触して回転することにより前記媒体を搬送するローラと、
前記媒体が所定位置を通過したか否かを検出する媒体検出部と、
前記媒体が、前記所定位置を通過したことが検出されると、前記媒体を前記ローラに押し付ける押圧部と、
を有し、
前記押圧部により前記媒体が前記ローラに押し付けられることにより、前記媒体の後端が前記凸部により押されて、前記媒体が前記回収部内部に回収されることを特徴とする媒体回収装置。
【請求項2】
前記媒体を一時退避させるための一時退避路、
をさらに有し、
前記押圧部は、前記媒体の搬送経路を、前記一時退避路と前記回収部との間で切り換える経路切換部であることを特徴とする請求項1に記載の媒体回収装置。
【請求項3】
前記ローラと対向して設けられ、前記媒体を前記ローラに圧接するための対向ローラと、
前記押圧部が前記搬送経路を前記一時退避路に切り換えている場合に、前記ローラは、第1の方向に回転することにより、前記媒体を前記搬送路側に搬送して前記対向ローラとの間に挟持した状態で保持し、前記第1の方向とは逆の第2の方向に回転することにより前記媒体の前記一時退避を解除することを特徴とする請求項2に記載の媒体回収装置。
【請求項4】
前記押圧部は、櫛歯形状であり、前記ローラと対向する部分が、前記ローラと対向しない部分よりも短く形成されることを特徴とする請求項2または請求項3に記載の媒体回収装置。
【請求項5】
前記ローラと前記押圧部との間に前記媒体が存在しなくなると、前記経路切換部が前記搬送経路を前記回収部に切り換えたと検知する回収検知部、
をさらに有することを特徴とする請求項4に記載の媒体回収装置。
【請求項6】
前記凸部は、前記ローラの前記接触面の回転方向に、間隔を空けて複数形成されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載の媒体回収装置。
【請求項7】
前記ローラは、前記搬送方向に直交する方向に2個備えられることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれかに記載の媒体回収装置。
【請求項8】
前記ローラの少なくとも前記媒体との接触面は樹脂により形成されていることを特徴とする請求項1から請求項7のいずれかに記載の媒体回収装置。
【請求項9】
媒体の回収方法であって、
前記媒体が所定位置を通過したか否かを検出する処理と、
前記媒体との接触面に設けられた凸部と、前記凸部の前記接触面の回転方向に設けられた切り欠き部と、を有し、前記媒体と接触して回転することにより前記媒体を搬送するローラにより前記媒体を移動させる処理と、
前記媒体が、前記所定位置を通過したことが検出されると、前記媒体を押圧部により前記ローラに押し付ける処理と、
前記押圧部により前記媒体が前記ローラに押し付けられることにより、前記後端が前記凸部により押されて、前記媒体が前記回収部内部に回収されることを特徴とする媒体回収方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図21】
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【図2】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【公開番号】特開2013−71805(P2013−71805A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−211525(P2011−211525)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(000237639)富士通フロンテック株式会社 (667)
【Fターム(参考)】