説明

嫌気硬化性組成物

硬化性ポリマー・マトリックスおよび前記ポリマ・マトリックス中に存在する嫌気硬化性組成物を含有する、ドライな触感組成物が開示される。特に好ましい形態では、この組成物は、湿気硬化型である。この組成物は、高い温度で非流動性であり、硬化された後は、改善された耐溶剤性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(発明の分野)
本発明は、ドライな触感タイプの硬化性接着剤およびシーラント組成物に関する。より具体的には、本発明は、特にネジ山固定およびシーリング用途に有用で、ドライな触感のテープおよびガスケットを含めて様々な製品形態の組成物を挙げることができる、ドライな触感タイプの接着剤およびシーラント組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
(関連技術の簡単な説明)
ナット/ボルト組立て品のような機械的ネジ山留め具の使用では、最終連結状態にかみ合わせるとき、前記留め具の構成部材を固定化および/またはシーリングする目的で、通常、留め具のネジ山を形成してかみ合う表面の1つ以上にネジ山固定組成物と呼ばれる接着剤/シーラント組成物を塗布する。
【0003】
このようなネジ山固定組成物は、かみ合わせるネジ山部材を裂くまたは回転するのに必要なトルクを著しく増加させる。従来のネジ山固定組成物としては、共反応性接着剤システムが挙げられることが多い。このタイプのネジ山固定では、2種以上の成分が混合され、その後、得られた組成物を留め具のネジ山かみ合わせ表面に塗布し、この表面上ではネジ山固定組成物中の成分が反応して硬化する。前記共反応性システムとしては、エポキシ樹脂接着剤組成物が挙げられる。
【0004】
液体接着剤組成物は、これまで長くシーリングおよびネジ山固定の用途で使用され、組立品製造の標準的部材となり、さらには、機械、道具、および類似物のメンテナンスで使用されてきた。これらの用途で通常使用されてきた液体接着剤組成物の内に、嫌気性組成物がある。これらの組成物は、硬化時の優れたネジ山固定およびシーリング特性を提供し、部品の間に配置され空気が存在しない状態で硬化するまでは安定して液体形態を維持する。さらに、これらの組成物は、瓶の中での長期間の保存でも安定している。
【0005】
多くの場合、前記液体接着剤組成物は部品間を移動でき、これは隣接部一般における汚染、さらには環境汚染が生じて問題である。簡便なレディ−トゥ−ユースのネジ山固定製品を創ろうとする1つの試みは、微細カプセル化形態の組成物のような事前塗布接着剤組成物であった。そのような場合、接着剤組成物は、ボルトまたはナットのようなネジ山部分に適用され、かみ合わせるまでは未硬化の状態のままである。この場合、一般に、かみ合わせていない部分での早まった硬化を起こすと考えられる成分は、カプセル封入によって他の成分と分離される。各部品をかみ合わせるとカプセル封入が崩壊し、それによって硬化させる成分が放出される。
【0006】
かみ合わせの直前に各部品に塗布される組成物は、嫌気硬化性樹脂が包含されるワックスまたはワックス様のマトリックスを利用する。一方、そのような組成物は、塗布が容易で、レオロジー特性に起因する非流動性のような利点を有するが、それらはドライな触感ではない。さらに、そのような組成物は、一般に、180°F(82.2℃)のような温度を超えると非流動性を失い、またはポリアミド・マトリックスを含む場合には、非流動性を失う前に260℃(500°F)の温度に達するかもしれない。従って、こうした温度では移動が生じ始めるので、事前塗布または従来の液体ネジ山固定材料に対する利点を失ってしまう。さらに、前記ワックスまたはワックス様のマトリックスは、前記嫌気性成分よりも著しく少ない量、例えば、最高、全組成物の約20重量%までの量で使用することが記載されている。
【0007】
一方、事前塗布被覆は多くの利点を有するが、前もって接着剤被覆を調製および塗布するために、ときには特別の方法が必要である。そのような組成物は、必要ベースの場合に常に有用であるというわけではなく、例えば、硬化性組成物の塗布が直ちに必要となる場合がある。例えば、前もって異なったサイズの事前塗布被覆された部品を蓄え、目録を作ることが必要かもしれない。すなわち、事前塗布被覆は、多くの用途に対して問題を解決しないので、レディ−トゥ−ユースの組成物が要求されている。
【0008】
通常の嫌気性ネジ山固定材料は、これまで市場で受け入れられて評価が高いが、商業用途によっては、通常の液体嫌気性ネジ山固定材料、さらには、非流動性チクソ嫌気系のネジ山固定材料の使用で見られる欠点がある。例えば、そのような組成物は、大きな間隔を介しては十分に硬化しないことが多い。また、嫌気性硬化の性質上、接着剤部分が一度部品に塗布され、それが空気に暴露されたままであると、接着剤部分の硬化は難しくなると考えられる(誘発される二次的な硬化機構がない)。従って、ナット/ボルト組立品に関して空気に暴露されたままである外側接着ラインは、硬化を確実にするために追加の添加物および硬化方策がないと、液体のままであることが多い。その結果、外側接着ラインでの液体組成物は移動する傾向がある。通常の非流動性組成物の場合、非流動性に関して組成物のチクソおよび/またはレオロジー特性に起因し、これらの組成物は、十分に高い温度にさらされると流動すると考えられる。さらに、硬化製品(上記のように、未硬化のままの部分を有する)の耐溶剤性は悪く、環境との相互作用が起きたとき、品質に問題が生じることを示している。
このことは、周囲に汚染問題および有害状態をもたらすかもしれない。
【0009】
ネジ山固定用途で有用な、公知の組成物の欠点を克服する反応性配合物を提供することは、反応性ネジ山固定材料およびシーラントの分野で非常に有用で、顕著な進歩になる。また、公知のネジ山固定組成物の代替として、コスト効率の良いドライな触感で塗布が簡単な組成物を提供することは、著しく有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明は、ネジ山固定またはナット/ボルト組立品のような、かみ合わせて一体化が可能な構造素子を接着固定化するのに有用な組成物に関し、それによって、最終連結状態にかみ合わせられた構造素子が接着結合およびシールされる。本発明は、ネジ山を有する機械的留め具のかみ合わせ一体化が可能な表面をネジ山固定する用途または他のかみ合わせ一体化が可能な構造素子の接着結合のための用途を有する、共反応性接着剤/シーラント組成物に広く関する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明は、ポリマー・マトリックスおよびこのポリマー・マトリックス内に分散された嫌気硬化性成分を含む、ドライな触感組成物に関し、ここで、前記ポリマー・マトリックスは、前記組成物の約30重量%から約80重量%の量で存在しなければならず、前記組成物はそれ自体、260℃より高く、約300℃までの温度で非流動性である。このポリマー・マトリックスとしては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルホンアミド、ポリチオウレタンおよびこれらの組合せから選択される物質を挙げることができる。
【0012】
本発明のある態様では、前記ポリウレタンウレアを、前記の1種以上のポリマー・マトリックスの組合せで使用することができる。本発明の他の態様では、ポリウレタンウレア・ポリマー・マトリックスを、単独でまたはマトリックス中の主要なポリマーとして使用することができる。本発明では、ポリウレタンウレアは、全組成物の約30重量%から約80重量%の量で存在することができる。また、ポリマー・マトリックス中で、ポリウレタンウレアを単独またはマトリックス中の他のポリマーとの組合せのいずれかで採用する組成物は、260℃より高く、約300℃までの温度で非流動性である。
【0013】
本発明の組成物は、ドライな触感であり、1より多い硬化機構、例えば、二重硬化システムを含むことができる。前記ポリマー・マトリックスは、嫌気硬化性組成物のためのキャリアとして働くことができ、または本発明の組成物が形成されて最終使用までに存在するような別のキャリアがあってもよい。例えば、ある場合には、フィルム基体を別のキャリアとして使用することができ、本発明の組成物をこのフィルム基体上のテープ形態として堆積することができる。
【0014】
本発明のある態様では、前記硬化性ポリマー・マトリックスは、第2の硬化段階を受けてもよい。例えば、ポリマー・マトリックス上に存在する残留または潜在反応性基がさらなる硬化を可能にし、場合によっては、嫌気性成分との反応を可能にしている。
【0015】
前記嫌気硬化性組成物は、(メタ)アクリレート、およびペルオキシドまたはペルエステルのようなラジカル重合開始剤を含む。この嫌気硬化性成分は、前記組成物に対して、シーラントおよびネジ山固定特性を与えることに役立つ。本発明との関連で、嫌気硬化性組成物は、ポリマー・マトリックス内に分散される。次いで、得られた組成物は、フィルムまたはストリップのような不活性なキャリア基体に塗布することができる。硬化するのに十分な条件で照射すると、組成物のポリマー・マトリックス部分は硬化してドライな触感膜または被覆になる。嫌気性硬化につながる条件に一旦到達すると、その後、ポリマー・マトリックス内の嫌気硬化性組成物が硬化される。
【0016】
本発明の組成物は、扱い難いことがなく、滴が垂れることもなく、各部品に塗布および使用する前に保存しておくことができ、大きな間隔を充填する性能を有し、そして主にドライな触感という性質によって、嫌気性硬化の前でさえも、道具箱のような携帯型形態で簡単に運搬することができる。
【0017】
また、本発明を使って、例えば、テープ、フィルム、ストリップ、ガスケット、パッド、ストリング、および様々な他の形状品の製品を作製することができ、それは、ナットまたはボルトのようなネジ山部分、もしくは他の基体に適用できるが、嫌気性硬化のために適した条件、例えば各部品のかみ合わせによって空気を排除、に曝されるまでは、嫌気性部分は未硬化のままである。また、前記組成物は、様々なシーリングおよびポティング用途で役立つことができる。
【0018】
上記のように、本発明の組成物の別の利点としては、大きな間隔用途で使用できる性能が挙げられ、この用途で好結果を得るには、公知の嫌気硬化性組成物は向いていない。通常の嫌気硬化性組成物は、酸素
または空気の存在下で安定化され、そのようなものであるから、かみ合わせ部品の端では有効に硬化しない。なぜなら、その位置はほとんどの場合、空気に暴露されているからである。このことは、かみ合わせる各部品が接着固定化された後でも、未硬化物質がそのままである可能性をもたらす。未硬化組成物は、自由に移動し、周辺を汚染し、および製品の質を低下する問題を生じ、かつ製造経費を増加し得る。従来、この欠点は、光硬化のような第2の硬化システムの利用によって救済され、暴露部分がシールされた。しかしながら、これらの欠点は、本発明の組成物によって克服される。なぜなら、上部に本発明の組成物が塗布されたネジ山部品などの本組成物から形成される製品は、すべてドライな触感であり、高い温度に暴露されなければ溶融または軟化しない。前記硬化ポリマー・マトリックスは、効果的に嫌気性成分をマトリックス内にトラップすることで、この成分が移動するのを防ぐ働きをする。
【0019】
本発明のある態様では、(a)(1)ジイソシアネートおよび(2)任意に、ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む硬化性組成物、を含む第1パート、および(b)(1)(メタ)アクリレート成分、(2)嫌気性硬化システム、および(3)ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む嫌気硬化性物質、を含む硬化性組成物、を含む第2パート、を含む組成物が提供される。前記嫌気性硬化システムとしては、ペルオキシドを挙げることができる。好ましくは、前記組成物は、嫌気性硬化前には260℃を超え、約300℃までの温度で非流動性である。ある態様では、前記ジイソシアネートはポリマーのジイソシアネートであってもよい。好ましくは、前記第1パートは、全組成物の約30重量%から約80重量%の量で存在することができる。
【0020】
本発明のある態様では、(a)(1)ジイソシアネートと(2)ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールの1種以上との硬化反応生成物、を含む第1パート、および(b)嫌気硬化性成分、を含む第2パート、を含む組成物が提供され、ここで、前記第1パートは、全組成物の約30重量%から約80重量%含み、そして前記組成物は、260℃を超え、約300℃までの温度で非流動性である。
【0021】
本発明のある態様では、(a)ジイソシアネートを含む第1パートおよび(b)(1)嫌気硬化性成分および(2)次のポリオール、ポリアミンおよびポリチオールの少なくとも1種を含む第2パート、を含む組成物が提供され、ここで、前記組成物は、260℃を超え、約300℃までの温度で非流動性である。
【0022】
本発明の別の態様では、ネジ山部材を含む製造品が提供され、この製造品のネジ山は、少なくとも部分的に、(a)(1)ジイソシアネートおよび(2)任意に、ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む硬化性組成物、を含む第1パート、および(b)(1)(メタ)アクリレート成分、(2)嫌気性硬化システム、および(3)ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む嫌気硬化性物質、を含む硬化性組成物、を含む第2パート、で被覆されている。
【0023】
本発明の別の態様では、(a)(1)ジイソシアネートおよび(2)任意に、ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む硬化性組成物、を含む第1パート、および(b)(1)(メタ)アクリレート成分、(2)嫌気性硬化システム、ならびに(3)ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む嫌気硬化性物質、を含む硬化性組成物、を含む第2パート、を含む組成物、を含む事前形成ガスケット、を含む製造品が提供される。
【0024】
本発明の別の態様では、(a)(1)ジイソシアネートおよび(2)任意に、ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む硬化性組成物、を含む第1パート、および(b)(1)(メタ)アクリレート成分、(2)嫌気性硬化システム、および(3)ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む嫌気硬化性物質、を含む硬化性組成物、を含む第2パート、を含む組成物、を含むディスペンサー、を含む製造品が提供される。ある態様では、前記ディスペンサーは、前記第1パートおよび前記第2パートのための分離された室ならびに前記分離された室の内容物を前進させるための1つ以上のプランジャーを含んでいてもよい。別の態様では、前記ディスペンサーは、前記第1および第2パートを混合するために、スタティックミキシングノズルを含んでいてもよい。
【0025】
本発明のある態様では、(A)第1ネジ山部材を提供すること、(B)前記第1ネジ山部材とかみ合わせることができる第2ネジ山部材を提供すること、ここで前記第1および第2部材の少なくとも1つは、少なくとも部分的に、(a)(1)ジイソシアネートおよび(2)任意に、ポリオール、ポリアミンまたはポリチオールを含む硬化性組成物、を含む第1パート、および(b)(1)(メタ)アクリレート成分、(2)嫌気性硬化システム、および(3)ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールから選択される少なくとも1種の物質を含む嫌気硬化性物質、を含む硬化性組成物、を含む第2パート、を含む組成物で被覆されており、および(C)前記第1および第2ネジ山部材をかみ合わせて一体化し、前記組成物を前記第1および第2ネジ山部材の間で嫌気性硬化させること、を含むネジ山部品をシーリングする方法が提供される。
【0026】
本発明の別の態様では、(a)(1)ジイソシアネートおよび(2)任意に、ポリオールまたはポリアミンを含む硬化性組成物、を含む第1パート、および(b)(1)(メタ)アクリレート成分、(2)嫌気性硬化システム、および(3)ポリオールまたはポリアミンを含む嫌気硬化性物質、を含む硬化性組成物、を含む第2パート、を含む組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0027】
(発明の詳細な説明)
【0028】
本発明は、ネジ山機械的留め具のかみ合わせ一体化する表面をネジ山固定するための用途、または他のかみ合わせ一体化する構造素子の接着結合のための用途を有する反応性接着剤/シーラント組成物に広く関する。本発明の組成物は、一般に、ポリマー・マトリックスおよびこのポリマー・マトリックス内の嫌気硬化性成分を含む。
【0029】
本明細書で用いる場合、用語「硬化」、または「硬化する」は、さらには部分的および完全な硬化を含めて、物質における状態、条件、および/または構造の変化を意味する。
【0030】
本明細書で用いる場合、用語「(メタ)アクリレート」は、メタクリレートおよびアクリレートを含むことを意図する。
【0031】
用語「部分的に硬化される」は、反応性基のある部分が未反応のままであるということを示す。用語「実質的に硬化される」は、未反応のままである反応性基が、存在するとしても無視できる量であることを示す。この未反応基は、その後の重合中に存在する嫌気性組成物または他の成分との反応に関与することができる。
【0032】
用語「ドライな触感(dry−to−the−touch)」は、組成物が十分に固体化または硬化されて、その結果、ポリマー・マトリックスの表面に綿棒を優しく接触した場合、綿棒の接着が起きないことを示す。用語「ドライな触感時間(dry−to−the−touch time)」は、ドライな触感状態を達成するのに必要な時間を示す。
【0033】
用語「タックフリー(tack−free:粘着性のない)」は、組成物の表面に高密度ポリエチレンの使い捨てピペットを優しく接触したとき、この物質の表面がピペットにつかないことを示す。用語「タックフリー時間(tack-free time)」は、タックフリー状態に到達するのに必要な時間を示す。
ポリマー・マトリックス
【0034】
前記ポリマー・マトリックスとしては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルホンアミド、ポリチオウレタンまたはこれらの任意の組合せから選択されるポリマーを挙げることができる。また、ポリマー・マトリックスとしては、ポリウレタンウレア単独、または他のポリマーとの組合せを挙げることができる。前記ポリマーを乾燥または硬化し、嫌気硬化性成分をポリマー中に分散してトラップすることができる。このことは、結果として、嫌気性硬化をもたらす条件に暴露したとき、なおも嫌気硬化する性能を有するドライな触感組成物が得られる。前記のように、ポリマー・マトリックスは、50mmから500mmまたはこれ以上のような大きな間隔の充填を許容する。これは、未反応成分が周辺環境に失われることがなく、硬化マトリックスが未反応液状嫌気性樹脂および嫌気性硬化システムを保持できる性能のおかげである。すなわち、非常に大きな間隔用途でさえもドライな触感のままである。さらに、独立型ガスケットのような部品は、部品の間に配置でき、そしてさらに、嫌気的な硬化が可能な組成物から製造することができる。本発明の組成物のポリマー・マトリックスが一旦、硬化されると、この組成物は非流動性状態に達する。ある態様では、ポリマー・マトリックスの選択によって決まるが、このマトリックスは最高、400℃(752°F)までの温度でドライな触感のままである。一般的に前記組成物は、260℃(500°F)より高い温度、好ましくは、300℃(572°F)より高い温度でドライな触感および非流動性のままである。
【0035】
前記ポリマー・マトリックスはそれ自体、260℃より高い融点または軟化点を有する。好ましくは、ポリマー・マトリックスは、300℃より高い融点または軟化点を有する。ある実施形態では、融点または軟化点は、約300℃と約400℃の間である。すなわち、本発明の組成物は、キャリアまたはマトリックス中に嫌気硬化性成分を有する公知の嫌気性ネジ山固定材料よりも、相当高い温度で非流動性である。
【0036】
本発明の組成物のドライな触感特性に関与している前記ポリマー・マトリックスは、全組成物の少なくとも約30重量%、好ましくは少なくとも約50重量%量で存在することが望ましく、約80重量%の量で存在することができる。
【0037】
有用なポリウレタンの具体例としては、以下のような反復単位:
【0038】
【化1】

を有する化合物が挙げられ、式中、Xは、脂肪族または芳香族ヒドロカルビルもしくはヘテロヒドロカルビル二価の基または鎖であり、nは、1−4である。Rは、アルケニルまたはアリーレニル基である。
【0039】
他の有用なポリイソシアネートとしては、例えば、一般構造:
【0040】
【化2】

に従うポリマーのポリイソシアネートが挙げられ、構造中、Rは出現ごとに、同じであってもまたは異なっていてもよく、ヒドロカルビル基またはヘテロヒドロカルビル二価の基であってもよく、ならびにnは1−20である。
【0041】
前記ポリマー・マトリックスとして有用なポリウレタンは、イソシアネートとアルコールとの反応生成物から形成することができる。有用なポリイソシアネートの具体例としては、下記の式:
【0042】
【化3】

に対応するものが挙げられ、式中、Xは出現ごとに、同じであってもまたは異なっていてもよく、C1−20の炭化水素またはヘテロ炭化水素二価の基である。好ましくは、Xは、アルキレンまたはアリーレン二価の基である。
【0043】
例えば、前記反応生成物を形成するのに有用なイソシアネートとしては、単量体の4,4’−メチレンジフェニルジイソシアネート(「MDI」)、フェニルジイソシアネート、トルエンジイソシアネート(「TDI」)、4,4’−ジフェニルジイソシアネート、4,4’−ジフェニレンメタンジイソシアネート、ジアニシジンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルエーテルジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)シクロヘキサン、シクロヘキシレンジイソシアネート、テトラクロロフェニレンジイソシアネート、2,6−ジエチル−p−フェニレンジイソシアネート、および3,5−ジエチル−4,4’−ジイソシアナトジフェニルメタンなどのポリイソシアネートが挙げられる。さらに別の使用可能なポリイソシアネートとしては、末端第1級および第2級アミン基を含有するポリアミンと、または多価アルコール、例えば、グリセロール、エチレングリコール、ビスフェノール−A、4,4’−ジヒドロキシ−フェニルジメチルメタン−置換ビスフェノール−Aなどのアルカン、シクロアルカン、アルケンおよびシクロアルカンポリオールと、上記任意のイソシアネートの過剰量とを反応させることによって得られるポリイソシアネートである。
【0044】
前記ポリイソシアネートと反応させてポリウレタンを形成するのに有用なアルコールとしては、限定されることなしに、ポリエチルグリコールエーテルで3−7個のエチレンオキシド反復単位を有し、かつ片末端がエーテルまたはエステルで停止されたポリエーテルアルコール、ポリエステルアルコール、さらには、ポリブタジエン系アルコールが挙げられる。1つの特に有用なアルコールは、1,4−ブタンジオールである。さらに有用なアルコールとしては、限定されることなしに、ひまし油、グリセリ、ポリエチレングリコール、エーテルジオール、エチレングリコール、カプロラクトンポリオールおよびこれらの組合せが挙げられる。
【0045】
選択されるアルコールの具体的なタイプおよび分子量の範囲は、所望の効果を得るために多様に変えることができる。一般に、ポリヒドロキシ化合物で、C5−25を含有する直鎖または分岐鎖の脂肪族または環式の第1級または第2級アルコールが使用できる。
【0046】
本発明の有用なポリウレアの具体例としては、限定されることなしに、反復単位:
【0047】
【化4】

を含む化合物が挙げられ、ここで、YおよびRは、炭化水素またはヘテロ炭化水素の二価の基であり、およびnは、1−20である。
【0048】
前記ポリマー・マトリックスとして有用なポリウレアは、イソシアネートとアミンとの反応生成物から形成することができる。有用なポリイソシアネートの具体例としては、上にリストした任意のものを挙げることができる。
【0049】
有用なアミンとしては、脂肪族または芳香族アミンが挙げられる。ポリアミンが特に好ましい。好ましい脂肪族アミンとしては、ポリエチレングリコールエーテルアミンが挙げられる。好ましい芳香族アミンとしては、芳香族環にポリエチレングリコールエーテル置換基を有するものが挙げられる。
【0050】
例えば、市販のアミンとしては、Huntsuman社(Houston、Texas)から販売されている商標名JEFFAMINEを採用することができる。具体例として、JEFFAMINE D−230、JEFFAMINE D−400、JEFFAMINE D−2000、JEFFAMINE T−403、JEFFAMINE ED−600、JEFFAMINE ED−900、JEFFAMINE ED−2001、JEFFAMINE EDR−148、JEFFAMINE XTJ−509、JEFFAMINE T−3000、JEFFAMINE T−5000、およびこれらの組合せが挙げられる。
【0051】
JEFFAMINE Dシリーズは、ジアミン系の製品であり:
【0052】
【化5】

によって表すことができ、ここで、xは、それぞれ、約2.6(JEFFAMINE D−230)、5.6(JEFFAMINE D−400)および33.1(JEFFAMINE D−2000)である。
【0053】
JEFFAMINE Tシリーズは、プロピレンオキシド系の3官能アミン製品であり:
【0054】
【化6】

で表すことができ、ここで、x、y、およびzは、下の表Aに説明されている。
【0055】
【表1】

【0056】
より具体的には、JEFFAMINE T−403製品は、3官能アミンであり:
【0057】
【化7】

で表すことができ、ここで、x+y+zは、5.3である。
【0058】
JEFFAMINE ED系は、ポリエーテルジアミン系の製品であり:
【0059】
【化8】


で表すことができ、ここで、a、bおよびcは、下の表Bに説明されている。
【0060】
【表2】

【0061】
本明細書で用いる場合、用語「ポリウレタンウレア」および「ポリウレアウレタン」は、どちらを使っても変わりはない。有用なポリウレタンウレアの具体例としては、ジオールおよびジアミンと、ジイソシアネートとの反応からの生成物が挙げられる。これらの反応体は、反応体それぞれの部類でこれまでに記載されたものを含めて、様々な物質から選択することができる。
【0062】
有用なポリスルホンアミドの具体例としては、イソシアネートと一般構造:
【0063】
【化9】

を有する化合物との反応生成物から形成されるものが挙げられ、上記構造中、R’およびR’’は、ヒドロカルビルまたはヘテロヒドロカルビル基である。スルホンアミドの具体例は、サッカリンとイソシアネートとの反応によって形成された合成物である。
【0064】
前記ポリマー・マトリックスとして有用なポリチオウレタンは、ポリイソシアネートとポリチオールとの反応生成物から形成することができる。有用なポリイソシアネートの具体例としては、本明細書にリストされている任意のものを挙げることができる。有用なポリチオールの具体例としては、利用できる−SH基を有するものが挙げられる。例えば、前記反応生成物を形成するために有用なポリチオールとしては、とりわけ、ペンタエリスリトールテトラキス[3−メルカプトプロピオネート]が挙げられる。
【0065】
前記ポリマー・マトリックスは、第1鉄含有の表面、ステンレススチールのような非第1鉄金属、亜鉛リンで被覆された表面、他の不動態化金属の表面、木材およびプラスチックなど様々な表面に、本発明の組成物を使用できるようにしている。通常の嫌気硬化ネジ山固定材料は、硬化のためには一般に、第1鉄含有の表面の存在を必要としているが、本発明の組成物は、ポリマー・マトリックスのおかげで表面の影響を受けず、実質的にあらゆる表面上で、かつ空気の存在下で硬化する。
【0066】
嫌気組成物
前記ポリマー・マトリックス内に分散される嫌気硬化性組成物は、任意の数の嫌気性組成物から選ぶことができる。有用な組成物は、(メタ)アクリレートモノマーまたはオリゴマーのような嫌気硬化性成分およびペルオキシドのようなラジカル重合開始剤を含む。
【0067】
有用な(メタ)アクリレートの具体例としては、モノメタクリレート、ジメタクリレート、トリメタクリレートおよびテトラメタクリレートのようなモノマーが挙げられる。本発明で使用するのに適した(メタ)アクリレートのモノマーとしては、ヒドロキシプロピル・(メタ)アクリレート(「HPMA」)、ヒドロキシエチル・(メタ)アクリレート(「HEMA」)、シクロへキシル・(メタ)アクリレート、テトラヒドロフラン・(メタ)アクリレート、グリシジル・(メタ)アクリレート、シアノエチル・(メタ)アクリレート、ヘキサンジオール・ジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート(「TRIEGMA」)、テトラエチレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコール・ジ(メタ)アクリレート、ジ(ペンタメチレングリコール)・ジ(メタ)アクリレート、テトラエチレンジグリコール・ジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール・ジアクリレート、テトラメチレン・ジ(メタ)アクリレート、エチレン・ジメタクリレート、エトキシル化ビスフェノール−A・(メタ)アクリレート(「EPIBMA」)のようなビスフェノール−A・ジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパン・トリアクリレートおよびジグリセロール・テトラ(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0068】
当然ながら、これらの(メタ)アクリレートのモノマーの組合せも使用することができる。
【0069】
1つの実施形態では、(メタ)アクリレートは、一般構造式II:
【0070】
【化10】

を有し、式中、Gは、水素、ハロゲンまたは炭素原子が1から約4個のアルキルであってもよく、およびRは、炭素原子が6から約16個のアルキル、シクロアルキル、アルケニル、シクロアルケニル、アルケニル、アラルキルまたはアリール基から選択され、これらのあらゆるものが場合によっては、酸素、ハロゲン、カルボニル、ヒドロキシル、エステル、カルボン酸、ウレア、ウレタン、炭酸塩アミン、アミド、硫黄、スルホンなどで任意に置換されて、または割り込まれていてもよい。
【0071】
別の、特に望ましい態様では、(メタ)アクリレートは、一般構造式III:
【0072】
【化11】

を有し、式中、Rは、水素、炭素原子が1から約4個のアルキル、炭素原子が1から約4個のヒドロキシアルキル、または
【0073】
【化12】

から選択することができ、Rは、水素、ハロゲン、および炭素原子が1から約4個のアルキルから選択することができ、Rは、水素、ヒドロキシ、および
【0074】
【化13】

から選択することができ、mは、少なくとも1、例えば、1から約8またはそれ以上、例えば、1から約4に等しい整数であり、nは、少なくとも1、例えば、1から約20またはそれ以上に相当する整数であり、vは、0または1である。
【0075】
(メタ)アクリレートは、全組成物を基準にして、組成物中に約1重量%から約60重量%、好ましくは、約5重量%から約50重量%、例えば、約10重量%から約40重量%の範囲内で存在しなければならない。
【0076】
本発明に包含することができる有用なペルオキシドの具体例としては、限定されることなしに、クメンヒドロペルオキシド(「CHP」)、t−ブチルヒドロペルオキシド(「TBH」)、p−メンタンヒドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンヒドロペルオキシド、ピネンヒドロペルオキシド、メチルエチルケトンヒドロペルオキシド、および第3級ブチルパーベンゾエートなどのヒドロペルオキシドが挙げられる。
【0077】
本発明の1つの好ましい態様では、前記ポリマー・マトリックスは、湿気によって硬化することができ、すなわち、湿気硬化触媒を含ませて硬化を促進および/または強化することができる。有用な湿気硬化触媒の具体例としては、テトライソプロピルオルトチタネートおよびテトラブトキシオルトチタネートのようなチタン酸塩、さらには、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジオクトエートなどの金属カルボン酸塩を含めた有機金属触媒が挙げられる。
【0078】
有用な湿気硬化触媒としては、典型的には、チタン、スズ、ジルコニウムおよびこれらの組合せから選択される金属塩が挙げられる。湿気硬化触媒の非限定的な具体例としては、例えば、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、ジブチルスズ
ジオクトエート、ジブチルスズマレエート、ジアルキルスズヘキソエート、ジオクチルスズジラウレート、鉄オクタノエート、亜鉛オクタノエート、鉛オクタノエート、コバルトナフテネート、テトラプロピルチタネートおよびテトラブチルチタネートが挙げられる。他の有用な湿気硬化触媒として、例えば、米国特許第4,111,890号公報に開示されているものを採用することができ、参照により本明細書に組み込まれる。
【0079】
また、他の通常の触媒も本発明に包含することができる。例えば、本発明の組成物は、付加硬化触媒も包含する。本発明の組成物と共に使用できる適した付加硬化触媒としては、ヒドロシリル化反応を容易にする白金−シロキサン錯体のような白金系のものが挙げられる。湿気硬化触媒は、湿気硬化を達成するのに十分な量で使用されなければならず、好ましくは、約0.1から約10重量%の範囲である。また、高い温度も本発明の組成物の硬化に使用することができる。可視およびUV重合開始剤のような光重合開始剤も使用することができる。
【0080】
本発明の別の態様では、硬化されたポリマー・マトリックスおよび未硬化の嫌気硬化性組成物を含むことができる。この硬化されたポリマー・マトリックスとしては、ポリウレタン、ポリウレア、ポリスルホンアミドおよびこれらの組合せから選択される物質を挙げることができ、これらの具体例としては上で議論されたものがある。また、硬化されたポリマー・マトリックスは、ポリウレタンウレアから作製しても、またはポリウレタンウレアを含んでいてもよい。硬化されたポリマー・マトリックスとしては、ポリイソシアネートと少なくとも以下の、ポリアルコール、ポリアミンまたはポリチオールの1種との反応生成物を含むことができ、これらの具体例は本明細書で議論されている。硬化されたポリマー・マトリックスは、湿気硬化型組成物であってもよく、これらの具体例は上で議論されている。前記ポリマー・マトリックス内に分散されている未硬化の嫌気硬化性組成物は、任意の数の嫌気性組成物から選ぶことができる。例えば、未硬化の嫌気硬化性組成物は、(メタ)アクリレートおよびペルオキシドを含み、これらの具体例は本明細書で議論されている。
【0081】
本発明の組成物から作製される事前形成品としては、本発明の組成物を含む、膜のような基体キャリアを有するテープ、および被覆膜が挙げられる。有用なテープ基体キャリアとしては、プラスチック、セルロース、綿またはポリウレタンの膜が挙げられる。このテープ基体は、テープ、ストリング、シートまたはフィルムの形態であってもよい。有用なポリマー・マトリックスおよび嫌気硬化性成分は、上に記載されている。事前被覆品としては、ネジ山部品のようなかみ合わせる基体が挙げられる。本発明の組成物を、これらの部品に塗布し、好ましくは湿気によってドライな触感被覆または膜へと硬化することができ、これらの硬化された部品は、かみ合わせことができる部品と共に一旦組み立ててから、さらに嫌気性硬化が可能である。あるいは、事前形成されたドライな触感膜を形成して、次いでこれを基体に適用してもよい。被覆基体は、次いで、適切な嫌気性状態に暴露された場合、嫌気性硬化を起こす。さらに嫌気性硬化を起こす別の事前形成品も形成することができる。例えば、ガスケットは、あわせ面の間に本発明の組成物を配置し、嫌気硬化させて形成することができる。
【実施例】
【0082】
実施例I
Henkel社からThreadlocker2760として販売されている、1パート嫌気性接着剤を使って、2パート接着剤組成物を作製した。これらのパートは、表Iに記載されている。次いで、両パートを共に混合して最終組成物を形成した。それから、この最終組成物を使って、セロファンテープ、テフロン(登録商標)テープ、および綿ストリングのような基体に被覆し、室温で24時間、湿気硬化させ、ドライな触感組成物を製造した。また、最終組成物を、薄膜被覆としてポリエチレン基体に塗布し、同様に硬化した。次いで、この硬化膜を、それぞれの基体から剥がして、そしてボルトのネジ山に適用した。それからボルトをナットと一体化し、この組立品に40インチ/ポンドのトルクを予備的に与え、その後、室温で24時間、嫌気硬化させた。
【0083】
【表3】

【0084】
表Iに説明する組成物を、2つの等しい量で、脱グリースのスチールおよび油性亜鉛リン酸塩留め具(ナットおよびボルト)から成るナットおよびボルトに塗布した。
【0085】
初期の解除トルク(breakloose torque)を記録し、これを表Iに示す。解除トルクは、留め具に嫌気性接着剤を適用した後、40インチ/ポンドの力で予備トルクを与えることによって共に組み立てられたネジ山部品を解除するのに必要とするトルク強度である。一般に、このような力によってすべてのネジ山表面のかみ合わせが生じ、前記解除トルク試験は、組み立て製品のネジ山固定材料に対して役立つ試験である。解除トルクは、最初にナットを動かすために必要な力であるので、比較的高いことが好ましい。優勢(prevail)強度は、解体を容易にするために比較的より低いことが望ましい。前記試験の結果を、表Iに示す。
【0086】
【表4】

【0087】
表IIに示すように、本発明の組成物の高い解除トルク値は、この組成物が部品のかみ合わせに続いて、嫌気硬化されたことを示す。
【0088】
また、本発明の組成物Aを、亜鉛リン酸塩で被覆され、油でも被覆されたスチールナットおよびボルトについて試験した。比較する目的で、同じタイプのナットおよびボルトを、接着剤製品を全く使わないで、および市販のThreadlocker2760を使って試験した。下に示す結果は、接着剤製品を使わないナットおよびボルトにおける解除強度よりも著しく大きいが、標準的液体嫌気性製品を使うよりは低い解除強度を示す。
【0089】
【表5】

【0090】
また、ナットおよびボルト組立品について、外側接着ラインで未硬化物質を観察したが、何も存在するものが認められなかった。外側接着ラインは、ドライな触感であった。
【0091】
実施例II
下の表IVは、本発明のさらに嫌気硬化することが可能な、2パートのドライな触感組成物の他の例である。第1パート中にPEGMAが存在するために、混合が容易になり、この物理的な存在は、単量体MDI中のフリーなイソシアネート基の反応速度を制御するのに役立つ。
【0092】
【表6】

【0093】
組成物Bのパート1と2を、1:2の比(パート1:パート2)で混合した。得られた混合物を、次いで、
薄膜被覆として基体上に塗布し、室温で24時間、硬化してドライな触感組成物を製造した。また、前記組合せを、ポリエチレン基体に薄膜被覆として塗布し、ポリエチレン基体から剥がして室温での24時間の硬化によってドライな触感薄膜を形成した。非被覆テープ基体および本発明の組成物で被覆されたテープを、ネジ山ボルト(亜鉛リン酸塩、油性スチール3/8×16)に適用した。次いでボルトをナット(亜鉛リン酸塩、油性スチール3/8×16)とかみ合わせ、室温で24時間、硬化させた。様々な異なった基体キャリア上に配置された場合の前記組成物の性能結果を、表VおよびVIに示す。
【0094】
初期の解除トルク(breakloose−torque)を記録し、表Vに示す。解除トルクは、留め具に組成物を適用した後、40インチ・ポンドの力で予備トルクを与えることによって共に組み立てられたネジ山部品を解除するのに必要とするトルク強度である。初期の分離トルク(breakaway−torque)をインチ・ポンドで記録し、これを表Vに示す。分離トルクは、嫌気性接着剤を使って、予備トルクを与えることなしで手で共に組み立てられたネジ山部品を、分離するのに必要とするトルク強度である。
【0095】
【表7】

【0096】
【表8】

【0097】
表VおよびVIの結果が示すように、本発明の組成物は、解除強度と優勢(prevail)強度との違いに関して顕著な改善を示し、基体テープ単独の場合と比較して、有利に解除強度が優勢強度よりも大きい。
【0098】
また、ナットおよびボルトの組立品について、外側接着ラインで、未硬化物質を観察したが、何も存在が認められなかった。外側結合線はドライな触感であった。
【0099】
実施例III
本発明の組成物Aを、1パート系として配合した。この態様では、使用時にすべての成分を共に混合した。1パート系のある態様では、ジイソシアネート、ポリアミン、ポリチオールまたはポリオールのような1種以上の反応性の高い成分をカプセル化するか、もしくは、そうでなければ物理的または化学的に処理して、必要な時まで非反応性のままにしておく。例えば、保護基を化学的に導入して、反応性が高い部分構造を拘束することができる。このような基は、後に硬化が必要になったとき、熱または他の化学手段などによって除去することができる。早まった反応を防ぐ他の手段としては、被覆することによる物理的な分離、または破壊されたときに反応成分を放出する別のマトリックスを挙げることができる。
【0100】
本発明の組成物C−Fを、下の表VII−Xに示すような配合物を使って作製した。
【0101】
実施例IV
実施例IVを、下の表VIIに説明する配合に従って調製した。
【0102】
【表9】

【0103】
組成物Cを調製するための方法:
パート1の最初の3つの成分を、洗浄、乾燥した混合容器に添加し、約15分間、窒素雰囲気下で混合した。この混合物に残りの成分を添加した。すべての成分を混合してから、窒素雰囲気下で30分間、混合を続けた。減圧によって混合物から脱気を行った。
【0104】
パート2の最初の6成分を、洗浄、乾燥した混合器に添加し、約65℃−70℃で約1時間、最高の減圧下で加熱した。次いで、この混合物を45℃に冷却した。残りの成分を混合物に添加し、減圧脱気した。
【0105】
実施例V
実施例Vを、下の表VIIIに説明する配合に従って調製した。
【0106】
【表10】

【0107】
組成物Dを調製する方法:
パート1の成分1および2を、洗浄、乾燥、窒素置換した反応器に添加した。 混合を開始して成分3−5を添加した。この混合物を約15分間、混合した。
混合物を約55℃−65℃の温度に加熱し、約1時間、窒素雰囲気下で保持した。混合物のイソシアネート含量を調べた。混合物を冷却しながら、次いで成分6を添加した。成分7および8を添加して、この混合物を約5分間、混合した。混合物を、減圧にして完全に脱気した。
【0108】
パート2の成分1−7を、洗浄、乾燥した反応器に添加し、約10−15分間、混合した。混合物を加熱して、約70℃−75℃の温度にて、約1時間、最大の減圧下で保持した。この混合物の湿気含量を調べた。次いで、混合物を約40℃−45℃に冷却した。残りの成分8および9を前記混合物に添加し、約5分間、混合した。混合物を、減圧にして完全に脱気した。
【0109】
実施例VI
実施例VIを、下の表IXに説明する配合に従って調製した。
【0110】
【表11】

【0111】
組成物Eの調製方法:
パート1の成分1−3を、洗浄、乾燥、窒素置換した反応器に添加した。混合物を約30分間、窒素雰囲気下で混合した。
完全に混合された混合物を窒素下で排出した。
【0112】
パート2の成分1−4を、洗浄、乾燥した反応器に添加し、約10−15分間、混合した。成分5−9を、それぞれの順で混合物に添加した。得られた混合物を約65℃−70℃の温度に加熱し、約1時間、最大の減圧下で保持した。次いで、この混合物を約45℃に冷却した。残りの成分10−12を混合物に添加し、約5分間、混合した。混合物を減圧にして脱気した。
【0113】
実施例VII
実施例VIIを、下の表Xに説明する配合に従って調製した。
【0114】
【表12】

【0115】
組成物Fの調製方法:
パート2の成分1−9を、洗浄、乾燥した反応器に添加し、約65℃−70℃の温度で約1時間、最大の減圧下で加熱した。次いで、この混合物を45℃に冷却した。残りの成分10−13を混合物に混合しながら添加した。混合物を減圧にして脱気した。
【0116】
実施例VIII
本発明の組成物CおよびDを、全組成物を硬化した後、この硬化組成物が、様々な条件下、様々な溶媒に曝して耐えるかどうか、およびどの程度耐えるのかを決定するために評価した。
【0117】
下の表XIおよびXIIにおいて、本発明の組成物CおよびDを、アルミニウム基体上に広げ、室温、約7日間で厚さが約20ミルから約60ミルの膜に硬化した。この膜を1インチ正方形に切った。7日後に、組立品を下の表で特定される条件に暴露した。暴露の後、それぞれの溶媒について残留物質を評価した。示されているように、残留物質の量は、採用した溶媒および温度に関係なく、10gm/in未満であった。
次いで、表XIに示すように、残留物質の全量を高温のクロロホルムに溶解し、ろ過した。さらに、表XIIに示すように、この試験の結果物を、クロロホルムを蒸発した後に、残留物質について評価した。表XIおよびXIIの両方に示す結果は、未硬化または未反応物質がほとんど残っておらず、すなわち、周辺要素の移動または汚染の可能性が無視できることを示している。
【0118】
【表13】

【0119】
【表14】

【0120】
実施例IX
また、組成物CおよびDを、これらの非第1鉄(不動態)基体上のネジ山固定強度について、市販のHenkel242ネジ山固定材料との比較で試験した。下の表XIIIに示す結果は、市販の液体ネジ山固定材料と比較して、著しく大きな分離強度値および優勢(prevail)強度値を示している。このことは、通常の嫌気性物では高い強度曲線を達成するのは困難である基体において、強度が優れていることを立証している。従って、これらの試験は、本発明の組成物が基体の影響を受けないことを明確に示している。
【0121】
【表15】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)(1)ジイソシアネートおよび
(2)任意に、ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールからなる
群より選択される少なくとも1種の物質、
を含む硬化性組成物、
を含む第1パート、および
(b)(i)(1)(メタ)アクリレート成分を含む嫌気硬化性物質、
(2)嫌気性硬化システム、および
(3)ポリオール、ポリアミン、およびポリチオールからなる群より選
択される少なくとも1種の物質、
を含む硬化性組成物、
を含む第2パート、
を含む組成物。
【請求項2】
前記嫌気性硬化システムが、ペルオキシドを含む、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記組成物が、嫌気硬化する前に、260℃を超え、約300℃までの温度で非流動性である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
前記ジイソシアネートが、ポリマーのジイソシアネートである、請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
前記第1パートが、全組成物の約30重量%から約80重量%の量で存在する、請求項1に記載の組成物。
【請求項6】
(a)ジイソシアネートと
(i)ポリオール、
(ii)ポリアミン、および
(iii)ポリチオール、
の1種以上との硬化反応生成物を含む第1パート、および
(b)嫌気硬化性成分を含む第2パート、
を含む組成物であって、ここで前記第1パートは、全組成物の約30重量%から約80重量%の量で存在し、前記組成物は、260℃を超え、約300℃までの温度で非流動性である、組成物。
【請求項7】
(a)(i)ジイソシアネート
を含む第1パート、および
(b)(i)嫌気硬化性成分および
(ii)以下の(1)ポリオール、
(2)ポリアミン、および
(3)ポリチオール、
の少なくとも1種、
を含む第2パート、
を含む組成物であって、ここで前記組成物は、260℃を超え、約300℃までの温度で非流動性である、組成物。
【請求項8】
(a)ネジ山部材を含む製造品であって、ここで前記ネジ山部材のネジ山は、少なくとも部分的に請求項1に記載の組成物で被覆されている、製造品。
【請求項9】
請求項1に記載の組成物を含む事前成形ガスケットを含む、製造品。
【請求項10】
請求項1に記載の組成物を含有するディスペンサー(a)を含む、製造品。
【請求項11】
前記ディスペンサーが、前記第1パートおよび第2パートのための分離室(複数)、ならびに前記分離室(複数)の内容物を前進させるためのプランジャーを含む、請求項10に記載の製造品。
【請求項12】
前記ディスペンサーが、前記第1パートおよび第2パートを混合するためのスタティックミキシングノズルを含む、請求項11に記載の製造品。
【請求項13】
(A)第1ネジ山部材を提供すること、
(B)前記第1ネジ山部材とかみ合わせて一体化することができる第2ネジ山部材を提供すること、
ここで前記第1および第2部材の少なくとも1つは、少なくとも部分的に、
(a)(1)ジイソシアネートおよび
(2)任意に、ポリオール、ポリアミンおよびポリチオール、
を含む硬化性組成物、
を含む第1パート、および
(b)(1)(メタ)アクリレート成分、
(2)嫌気性硬化システム、および
(3)ポリオール、ポリアミンおよびポリチオールからなる群
より選択される少なくとも1種の物質、
を含む嫌気硬化性物質、
を含む硬化性組成物、
を含む第2パート、
を含む組成物で被覆されており、および
(C)前記第1および第2ネジ山部材をかみ合わせて一体化し、前記組成物を前記第1および第2ネジ山部材の間で嫌気硬化させること、
を含むネジ山部分をシーリングする方法。
【請求項14】
(a)(i)(1)ジイソシアネートおよび
(2)任意に、ポリオールおよびポリアミン、
を含む硬化性組成物、
を含む第1パート、および
(b)(i)(1)(メタ)アクリレート成分を含む嫌気硬化性物質、
(2)嫌気性硬化システム、および
(3)ポリオールおよびポリアミン、
を含む硬化性組成物、
を含む第2パート、
を含む組成物。

【公表番号】特表2010−529218(P2010−529218A)
【公表日】平成22年8月26日(2010.8.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−509351(P2010−509351)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/US2008/006343
【国際公開番号】WO2008/153673
【国際公開日】平成20年12月18日(2008.12.18)
【出願人】(500538520)ヘンケル コーポレイション (99)
【氏名又は名称原語表記】HENKEL CORPORATION
【Fターム(参考)】