説明

子宮頸がんワクチン

本発明は、(a)(i)ヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)及びHPVタイプ18のL1 VLPの少なくともいずれかと、(ii)脱アシル化された非毒性リポオリゴ糖(LOS)と、(b)薬剤学的に許容される担体とを含むヒト子宮頸がんワクチン薬剤学的組成物、及びヒトパピローマウイルス(HPV)L1ウイルス様粒子(VLP)の製造方法に関する。本発明の子宮頸がんワクチン組成物は、HPVに対する免疫において、Th1タイプ免疫反応(細胞性免疫)とTh2タイプ免疫反応(体液性免疫)の両方ともにおいてCervarixTMとGardasilTMより優れており、子宮頸がんワクチンとして優れた効能を奏する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒト子宮頸がんワクチン薬剤学的組成物、ヒト子宮頸がんの予防方法及びヒトパピローマウイルス(HPV)L1ウイルス様粒子(VLP)の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒトパピローマウイルス(Human Papillomavirus:HPV)は、現在80種以上が知られており、ほぼ30種が性的な接触により子宮頸部に感染を起こし、その約半数が子宮頸がんと関連があることが知られている(非特許文献1参照)。また、HPVのうち、特にHPVタイプ16と18に感染された女性の癌発生率が非感染者の500倍も高く、これらは、生殖器の上皮細胞を通じて感染された後、子宮頸がん(cervical cancer)に悪性転換(malignant transformation)されることが知られている(非特許文献1及び2参照)。
【0003】
現在開発された子宮頸がんの予防ワクチンは、高危険タイプのHPVウイルス様粒子(VLPs)を利用して開発された。VLPは、HPVの主カプシド蛋白質(L1蛋白質、約55kDa)で、他のウイルス遺伝子産物がなくてもVLPに自己整列される性質を有しており、これは、天然HPVビリオンとほぼ類似している。また、免疫能は長く持続されて、遺伝子型に特異(Type−specific)であって、ワクチン候補として高い効率が期待できる長所がある。
【0004】
このようなVLPを利用したメルク社の‘ガーダシル’は、最もよく発生する四つのHPVタイプ6、11、16及び18のそれぞれの抗原に一般に利用される免疫補助剤である‘Alum’を使用して開発されたワクチンである。グラクソ・スミスクライン社の‘サーバリックス’は、最も代表的な子宮頸がんの誘発因子であるHPVタイプ16及び18に、独自的に開発した免疫補助剤である‘AS04’を使用して開発されたワクチンである。
【0005】
‘ガーダシル’で使用された免疫補助剤であるAlumは、ジフテリア、破傷風及びB型肝炎ワクチンなどに使用されており、これは、抗原の安定性を増加させて、サイトカインの放出を誘導するという報告があった。しかし、ワクチンの凍結乾燥や凍結を不可能にし、全ての抗原に対して効果的なわけではなく、体液性免疫反応のみを促進させることから、用途が制限されるという大きな短所がある。
【0006】
GSKのサーバリックスに含まれるAS04は、強力で且つ持続的な免疫反応を誘導するための目標で開発されて、アルミニウムヒドロキシド及びモノホスホリルリピッドA(MPL)で構成されている。MPLとは、核心的な免疫メカニズムを直接活性化できる免疫促進物質であって、究極的にワクチンに含まれた抗原に対する免疫反応を強化する役割をする。
【0007】
最近、免疫補助剤が新たに注目を浴びており、子宮頸がんワクチンと共にインフルエンザワクチンなど、多様に使用されている。このような免疫補助剤のうち、バクテリアDNAは、1960年代から抗がん剤として注目を浴びてきて、現在も研究が続いているが、その効能が微弱であって、単独では抗がん剤として使用できない(非特許文献3参照)。しかし、バクテリアDNAは、大きい副作用なしに多様な免疫細胞を活性化させることが知られており、特にアジュバントとしてたくさんの長所があることが確認された(非特許文献4参照)。
【0008】
バクテリアDNAのこのような効果に対し、日本のYamamotoらは、CGを含む配列が重要な役割をすると主張し、米国のKriegらの研究により広く知られた(非特許文献5及び6参照)。特に、1990年代中盤以後は、CPG社の関連研究の結果で、メチル化されていないCGを含んだ合成DNA(CpG−ODN)の可能性が確認されて、特に短い合成DNAの分解を抑制するためのジエステル結合におけるS置換などが研究された。このような努力を通じて、CpG−ODN関連製品は、アジュバントだけではなく、抗がん剤としても臨床試験が可能になった(http://www.coleypharma.com参照)。
【0009】
しかしながら、CpG−ODNのジエステル結合のS置換に対する免疫原性問題及び今でも物足りない抗癌効果などは、解決すべき問題として残っている。現在臨床に使用中であるCPG 7909は、anti−DNA Abを誘発するホスホロチオエートオリゴヌクレオチドであって(非特許文献7参照)、これは、SLE(systemic lupus erythematosus)など、自己免疫疾患と密接な関係がある(非特許文献8参照)。なお、ホスホロチオエート構造は、TI抗原(Ag)に作用して、感染に対する免疫防御機能に混乱を与えることが知られている(非特許文献9参照)。
【0010】
1950年代から抗癌効果が知られたLPSの場合、ナノグラム水準の汚染によっても敗血症による死亡を招来する毒性により使用が難しかった。特に、LPSとDNAの結合は、深刻な毒性を示すということが一般的な意見であって、DNA関連医薬品においてLPSの除去は、非常に重要な過程とされた(非特許文献10参照)。効能面において、LPSによる免疫増加は、DNAによるものよりずっと強力であるが、抗癌に重要なTh1タイプではくTh2タイプであるため、抗がん剤として適していないと考えられた(非特許文献11参照)。特に、Th2タイプ免疫活性は、Th1タイプ免疫活性を抑制するため、LPSのこのような特性は、LPSを抗がん剤として利用することを更に難しくした(非特許文献12参照)。
【0011】
LPSに対する弱毒化の試みは絶えず研究されて、特にポリサッカライドチェーンの除去又はリピドAの脱アシル基化を通じて毒性を減少させることに成功した(非特許文献13参照)。特に、LPSのポリサッカライドチェーンを除去して得たリピドAのリン酸化によって得られたモノホスホリルリピッドA(MPL)の場合、LPSの毒性を除去した免疫抗がん剤として開発されたが、その効果が微弱であることが知られている(http://www.corixa.com参照)。
【0012】
このため、本出願人は、上述の免疫補助剤の短所を補完した新規な免疫補助剤を既に開発した(特許文献1参照)。
【0013】
本明細書全体にかけて多数の論文及び特許文献が参照され、その引用が表示されている。引用された論文及び特許文献の開示内容は、その全体が本明細書に参照として取り込まれ、本発明の属する技術分野の水準及び本発明の内容がより明確に説明される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】韓国登録特許第0740237号公報
【非特許文献】
【0015】
【非特許文献1】Zur Hausen H, (1988) Mol. Carcinogenesis 8: 147−150
【非特許文献2】Hausen, Biochemica. Biophysica. Acta. 1288: 55−78, 1996
【非特許文献3】Glick, J. L. The specificity of inhibition of tumor cell viability by DNA. CancerRes.27:2338,1967
【非特許文献4】McCluskie MJ, et al. CpG DNA is a potent enhancer of systemic and mucosal immune responses against hepatitis B surface antigen with intranasal administration to mice. JImmunol.Nov1;161(9):4463−6.1998
【非特許文献5】Yamamoto S. et al. Unique palindromic sequences in synthetic oligonucleotides are required to induce IFN and augment IFN−mediated natural killer activity. J.Immunol.148:4072,1992
【非特許文献6】Krieg AM, Antitumor applications of stimulating toll−like receptor 9 with CpG oligodeoxynucleotides. Curr. Oncol. Rep. Mar; 6(2):88−95.2004
【非特許文献7】Clin Immunol. 2001 Aug;100(2):157−63
【非特許文献8】J Clin Immunol. 1986 July;6(4):292−8
【非特許文献9】Mol Immunol. 1998 Dec;35(18):1161−70
【非特許文献10】Gao JJ. et. al, Bacterial DNA and lipopolysaccharide induce synergistic production of TNF−alpha through a post−transcriptional mechanism.JImmunol166(11):6855−60,2001
【非特許文献11】Lebman DA et al Interleukin 4 causes isotype switching to IgE in T cell−stimulated clonal B cell cultures. J Exp Med. Sep 1;168(3):853−62. 1988
【非特許文献12】Rengarajan J et al. Transcriptional regulation of Th1/Th2 polarization. Immunol Today Oct;21(10):479−83. 2000
【非特許文献13】Katz SS et al Deacylation of lipopolysaccharide in whole Escherichia coli during destruction by cellular and extracellular components of a rabbit peritoneal inflammatory exudate. J Biol Chem. Dec 17;274(51):36579−84 1999
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明者らは、上述の従来の子宮頸がんワクチンの問題点を解決できる新規なワクチンを開発するために鋭意研究した。その結果、本発明者らは、HPV 16又は18のL1 VLPを利用する免疫化過程において、リピドAから一部脂肪酸を除去した非毒性LOS(Lipooligosaccharide)を免疫補助剤として利用する場合、従来のVLPに基づいたワクチンより大きく改善されたHPV免疫反応を誘導して、子宮頸がんの予防のための優れたワクチンができることを確認し、本発明を完成した。
【0017】
したがって、本発明の目的は、ヒト子宮頸がんワクチン薬剤学的組成物を提供することにある。
【0018】
本発明の他の目的は、ヒト子宮頸がんの予防方法を提供することにある。
【0019】
本発明のまた他の目的は、HPV L1 VLPの製造方法を提供することにある。
【0020】
本発明の他の目的は、HPV 16のL1 VLPをコードする新規な核酸を提供することにある。
【0021】
本発明の他の目的は、HPV 18のL1 VLPをコードする新規な核酸を提供することにある。
【0022】
本発明のまた他の目的は、上記の新規な核酸で形質転換されたSaccharomyces cerevisiaeを提供することにある。
【0023】
本発明の他の目的及び利点は、発明の詳細な説明、請求の範囲及び図面により、更に明確にされる。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明の一様態によると、本発明は、(a)(i)ヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)、HPVタイプ18のL1 VLP又はこれらの組み合わせ、及び(ii)脱アシル化非毒性LOS(Lipooligosaccharide)と、(b)薬剤学的に許容される担体とを含むヒト子宮頸がんワクチン薬剤学的組成物を提供する。
【0025】
本発明の他の様態によると、本発明は、前記本発明の薬剤学的組成物をヒトに投与する工程を含むヒト子宮頸がんの予防方法を提供する。
【0026】
本発明者らは、上述の従来の子宮頸がんワクチンの問題点を解決できる新規なワクチンを開発するために鋭意研究した。その結果、本発明者らは、HPV 16又は18のL1 VLPを利用する免疫化過程において、リピドAから一部脂肪酸を除去した非毒性LOS(Lipooligosaccharide)を免疫補助剤として利用する場合、従来のVLPに基づいたワクチンより大きく改善されたHPV免疫反応を誘導して、子宮頸がんの予防のための優れたワクチンができることを確認した。
【0027】
本発明の薬剤学的組成物に利用されるVLPは、HPVタイプ16 L1又はHPVタイプ18 L1由来である。HPVタイプ16又はHPVタイプ18は、高危険性HPVと知られており、子宮頸がんを誘発する代表的なHPVである。
【0028】
本発明の明細書において用語‘HVP L1蛋白質’は、HPVのL1遺伝子から発現されるもので、HPVのカプシド(capsid)を構成する主要(major)蛋白質を意味する。L1蛋白質は、カプシドを構成する他のマイナー(minor)蛋白質であるL2蛋白質と共に、あるいはL1蛋白質単独で、適した条件下でウイルス様粒子(VLP)に自己組織化(self−assemble)される特性を有する。
【0029】
本発明で利用されるVLPは、HPVタイプ16又はHPVタイプ18のL1蛋白質の天然由来(Natural occurring)総配列及びこれの機能的L1蛋白質誘導体を含む。用語‘HPV L1機能的誘導体’は、天然由来HPV L1総配列と同一ではないが、VLPを形成することができて、且つ免疫反応を誘導することができる天然由来HPV L1蛋白質の誘導体を意味する。例えば、前記HPV L1機能的誘導体は、核局在化シグナル(Nuclear localization signal)の除去された切断型(truncated)L1蛋白質である。例えば、HPVタイプ16 L1の場合、C末端の34個アミノ酸が除去された形態、HPVタイプ18 L1の場合、C末端の35個アミノ酸が除去された形態が、本発明で利用できるHPV L1機能的誘導体である。本発明で利用されるHPV 16及び18のL1 VLPの例示的なアミノ酸配列は、それぞれ配列番号2及び4に示されている。
【0030】
本発明の子宮頸がんワクチン薬剤学的組成物で免疫反応を誘発する抗原として、HPV 16 L1 VLP又はHPV 18 L1 VLPが利用されて、好ましくは、HPV 16 L1 VLP及びHPV 18 L1 VLPの両方とも利用される。
【0031】
選択的に、抗原として、HPV 16 L1 VLP及びHPV 18 L1 VLPの他に、HPVタイプ31、HPVタイプ45、HPVタイプ6a、HPVタイプ6b、HPVタイプ11、HPVタイプ33、HPVタイプ35、HPVタイプ39、HPVタイプ51、HPVタイプ52、HPVタイプ56、HPVタイプ58及びHPVタイプ68のL1 VLPsからなる群から選択される少なくとも一つのL1 VLPを更に含むことができる。
【0032】
選択的に、本発明で利用されるL1 VLPは、他の蛋白質、例えば、L2蛋白質と融合されることもできる。
【0033】
本発明のワクチン組成物において最も大きい特徴は、免疫補助剤として脱アシル化非毒性LOS(Lipooligosaccharide)を利用することである。本明細書で最初に採択される用語‘LOS(リポオリゴ糖:Lipooligosaccharide)’は、LPS(リポ多糖:lipopolysaccharide)の変形体であって、天然(Natural occurring)LPSより短い糖鎖を有しており、分子量が小さいものを意味する。脱アシル化前のLOSは、好ましくは、分子量が5,000Da〜10,000Daである。用語‘脱アシル化LOS’は、このようなLOSから、リピドAのグルコサミンに−C(O)O−結合で結合された脂肪酸が除去されて、LPOと比較し、毒性が大きく減少されたものを意味する。リピドAのグルコサミンに、脂肪酸は−C(O)O−結合及び−C(O)NH−結合を通じて結合されている。本発明の脱アシル化LOSは、リピドAの脱アシル化により、−C(O)O−結合で結合された脂肪酸が除去されたものを示す。
【0034】
脱アシル化非毒性LOSは、多様な方法を通じて製造できるが、本発明者らの先行特許である韓国登録特許第0456681号公報;WO2004/039413;韓国登録特許第0740237号公報;及びWO2006/121232に開示された方法によって製造できる。例えば、LPSに強塩基(例えば、2N NaOH)を処理して脱アシル化して、リピドAから一部脂肪酸を除去して脱毒素化する。
【0035】
本発明の好ましい具現例によると、本発明で免疫補助剤として利用される脱アシル化非毒性LOSは、LPSにアルカリ処理して脱アシル化して非毒性化されたものである。前記アルカリの好ましい例としては、NaOH、KOH、Ba(OH)、CsOH、Sr(OH)、Ca(OH)、LiOH、RbOH、Mg(OH)が挙げられ、より好ましくは、NaOH、KOH、Ba(OH)、Ca(OH)、LiOH及びMg(OH)であり、更に好ましくは、NaOH、KOH及びMg(OH)であって、最も好ましくは、NaOHである。
【0036】
LPSの毒性の程度は、当業界に公知された多様な方法を通じて分析できる。例えば、LPSが処理されたTHP−1(Acute monocytic leukemia)に分泌されるTNF−α(Tumor necrosis factor−α)の量を測定して毒性を分析することができる。本発明の脱アシル化非毒性LOSは、従来のLPSと比較し、相対的に少ない量のTNF−α分泌を誘導する。
【0037】
本発明で利用される免疫補助剤である脱アシル化非毒性LOSの他の特徴としては、分子量が、一般に従来に利用されるLPSと比較して小さいということである。本発明で利用される脱アシル化非毒性LOSは、好ましくは、1,500Da〜10,000Da、より好ましくは、2,000Da〜5,000Da、更に好ましくは、2,000Da〜4,000Da、より更に好ましくは、3,000Da〜4,000Da、最も好ましくは、3,200Da〜3,700Daの分子量を有するものである。このような分子量は、当業界の通常的な方法、例えば、MALDI−MASSを利用して測定することができる。
【0038】
本発明の好ましい具現例によると、本発明の免疫補助剤である脱アシル化非毒性LOSは、大腸菌(coli)由来であり、最も好ましくは、本発明者らの独自的な菌であるcoli EG0021(KCCM 10374)由来のものである。
【0039】
本発明で利用される脱アシル化非毒性LOSは、免疫促進(immunostimulatory)効能が従来の免疫補助剤と比較して優れているだけではなく、毒性も著しく減少されており、本発明のワクチン組成物に非常に適している。下記の実施例で立証したように、LPSの毒性を除去するために、LPSのポリサッカライドチェーンを除去して得たリピドAのリン酸化を通じて得たモノホスホリルリピッドA(MPL)より、本発明の脱アシル化非毒性LOSは、毒性が遥かに少ない。
【0040】
また、下記実施例(図12a及び12b参照)に示されたように、本発明の脱アシル化非毒性LOSをHPV L1 VLPと共に投与した場合、Th1タイプ免疫反応(細胞性免疫)に係わるIgG2aだけではなく、Th2タイプ免疫反応(体液性免疫)に係わるIgG1レベルも増加し、脱アシル化非毒性LOSがHPV L1 VLPと共に上昇的な免疫反応を誘導していることが分かる。
【0041】
本発明のワクチン組成物は、その基本的な組成、即ち、HPV 16 L1 VLP、HPV 18 L1 VLP又はその組み合わせと脱アシル化非毒性LOSのみでも十分な免疫反応を誘導して、子宮頸がん予防効能を発揮することができる。選択的に、本発明のワクチン組成物は、他の免疫補助剤を更に含むことができ、例えば、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される第2族元素、Ti、Zr、Hf及びRfからなる群から選択される第4族元素又はアルミニウムの塩又はその水和物を含むことができる。前記塩は、好ましくは、オキシド、ペルオキシド、ヒドロキシド、カーボネート、ホスフェート、パイロホスフェート、ヒドロゲンホスフェート、ジヒドロゲンホスフェート、サルフェート又はシリケートと共に形成される。例えば、本発明のワクチン組成物において追加的に利用できる免疫補助剤は、マグネシウムヒドロキシド、マグネシウムカーボネートヒドロキシドペンタヒドレート、チタニウムジオキシド、カルシウムカーボネート、バリウムオキシド、バリウムヒドロキシド、バリウムペルオキシド、バリウムサルフェート、カルシウムサルフェート、カルシウムパイロホスフェート、マグネシウムカーボネート、マグネシウムオキシド、アルミニウムヒドロキシド、アルミニウムホスフェート及び水和されたアルミニウムカリウムサルフェート(Alum)を含む。最も好ましくは、本発明のワクチン組成物において追加的に利用できる免疫補助剤は、アルミニウムヒドロキシドである。
【0042】
本発明の好ましい具現例によると、HPVタイプ16又は18のL1 VLPは、(i)HPVタイプ16又は18のL1をコードするヌクレオチド配列を含む酵母(yeast)を培養する工程と、(ii)前記培養された酵母を溶解(lysis)する工程と、(iii)前記酵母溶解物(lysate)に対してアンモニウムサルフェート沈殿を施して、不純物を除去する工程と、(iv)前記不純物の除去された結果物に対してヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーを行う工程と、を含む精製工程を通じて得たものである。
【0043】
以下、上記の精製工程について詳細に説明する。
【0044】
本発明のワクチン薬剤学的組成物に含まれる薬剤学的に許容される担体は、製剤時に通常的に利用されるものであって、例えば、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、デンプン、アカシアゴム、リン酸カルシウム、アルギネート、ゼラチン、ケイ酸カルシウム、微細結晶性セルロース、ポリビニルピロリドン、セルロース、水、シロップ、メチルセルロース、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、滑石、ステアリン酸マグネシウム、ミネラルオイルなどが挙げられるが、これらに限定されるものではない。本発明の薬剤学的組成物は、前記成分の他に、潤滑剤、湿潤剤、甘味剤、香味剤、乳化剤、懸濁剤、保存剤などを更に含むことができる。適合した薬剤学的に許容される担体及び製剤は、Remington’s Pharmaceutical Sciences (19th ed., 1995)に詳細に記載されている。
【0045】
本発明の薬剤学的組成物は、経口又は非経口で投与でき、好ましくは、非経口投与であって、非経口投与の場合は、静脈内注入、皮下注入、筋肉注入、腹腔注入、経皮投与などにより投与できる。
【0046】
本発明の薬剤学的組成物の適合した投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性、病的状態、飲食、投与時間、投与経路、排泄速度、及び反応感応性のような要因によって様々である。一方、本発明の薬剤学的組成物の経口投与量は、好ましくは、1日当たり、0.0001mg/kg(体重)〜1,000mg/kg(体重)である。
【0047】
本発明の薬剤学的組成物は、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者が容易に実施できる方法により、薬剤学的に許容される担体及び/又は賦形剤を利用して製剤化することにより、単位容量形態に製造されるか、又は多用量容器内に入れて製造できる。この際、剤形は、オイル又は水性媒質中の溶液、懸濁液又は乳化液の形態であるか、エキス剤、粉末剤、顆粒剤、錠剤又はカプセル剤の形態であってもよく、分散剤又は安定化剤を更に含むことができる。
【0048】
本発明の子宮頸がんワクチン組成物は、従来の子宮頸がんワクチンであるCervarixTMとGardasilTMよりHPVに対する免疫反応を大きく誘導し、子宮頸がん予防効能に更に優れているだけではなく、免疫補助剤として利用される脱アシル化非毒性LOSの毒性がほとんどなく、安全性側面でも非常に優れている。
【0049】
特に、本発明の子宮頸がんワクチン組成物は、下記の実施例で立証したように、本発明のワクチン組成物を投与した場合、Th1タイプ免疫反応(細胞性免疫)に係わるインターフェロン−γ、IgG2a及びIgG2bのレベルがCervarixTMとGardasilTMより高く、なお、Th2タイプ免疫反応(体液性免疫)に係わるIgG1レベルもCervarixTMとGardasilTMより高い。即ち、本発明の子宮頸がんワクチン組成物は、HPVに対する免疫において、Th1タイプ免疫反応(細胞性免疫)とTh2タイプ免疫反応(体液性免疫)とにおいて、CervarixTMとGardasilTMより優れている。
【0050】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、以下の工程を含むヒトパピローマウイルス(HPV)L1ウイルス様粒子(VLP)の製造方法を提供する:
(i)HPV L1−コーディングヌクレオチド配列を含む酵母(yeast)を培養する工程と、
(ii)前記培養された酵母を溶解(lysis)する工程と、
(iii)前記酵母溶解物(lysate)に対してアンモニウムサルフェート沈殿を施して、不純物を除去する工程と、
(iv)前記不純物の除去された結果物に対してヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーを行う工程。
【0051】
本発明者らは、HPVに対するワクチン製造用途のHPV VLPsの酵母発現システムを利用した生産工程において、HPV VLPsの生産工程を単純化して収率を増加させることのできる精製方法を開発するために鋭意研究した。その結果、酵母細胞破砕液をアンモニウムサルフェートにより沈殿させて、ヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーを行うと、精製効率(収率及び精製度)を大きく向上させることができることを確認した。
【0052】
以下、各工程にしたがって本発明を詳細に説明する。
【0053】
(i)HPV L1蛋白質を発現する形質転換酵母培養
本発明の方法において、L1蛋白質が由来するHPVのタイプは特に限定されず、HPVタイプ6a、HPVタイプ6b、HPVタイプ11、HPVタイプ16、HPVタイプ18、HPVタイプ31、HPVタイプ33、HPVタイプ35、HPVタイプ39、HPVタイプ45、HPVタイプ51、HPVタイプ52、HPVタイプ56、HPVタイプ58及びHPVタイプ68を含むが、これらに限定されない。好ましくは、本発明のL1蛋白質は、HPVタイプ6a、HPVタイプ6b、HPVタイプ11、HPVタイプ16、HPVタイプ18、HPVタイプ31、HPVタイプ33及びHPVタイプ45からなる群から選択されるHPV由来のものであり、より好ましくは、HPVタイプ16及びタイプ18由来のものである。
【0054】
本発明において、宿主細胞(Host cell)として利用される細胞は、酵母であり、例えば、パン酵母(baker’s yeast)、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)、サッカロミセスパストリアヌス(Saccharomyces pastorianus)、サッカロミセスエスピー(Saccharomyces sp.)、シゾサッカロミセス・ポンベ(Schizosaccharomyces pombe)などを使用することができるが、これらに限定されない。最も好ましくは、本発明の宿主酵母は、サッカロミセスセレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)である。
【0055】
HPV L1蛋白質を発現する形質転換酵母は、HPV L1蛋白質を成功的に発現させる発現ベクターで形質転換された酵母細胞を意味する。前記発現ベクターで発現しようとするHPV L1遺伝子のアップストリームに当業界に公知された多様なプロモーター、例えば、GAL1プロモーター、GAL10プロモーター(Johnson, M., and Davies, R. W., Mol. and Cell. Biol., 4: 1440−1448 (1984))、ADH2プロモーター(Russell, D., et al., J. Biol. Chem., 258: 2674−2682, (1983))、PH05プロモーター(EMBO J. 6: 675−680, (1982))、又はMFalプロモーターが結合されていてもよく、ポリアデニル化配列、例えば、ADHI、MFal又はTPI由来ポリA配列(Alber, T. and Kawasaki, G., J. Mol. & Appl. Genet. 1: 419−434 (1982))が含まれてもよい。酵母発現ベクターとしてYEp6、YEp13YEp4、及びYEGα(S.N. Kim, et al., J. Virol. Methods 139 (2007) 24−30; R. Kirnbauer, et al., J Virol 67 (1993) 6929−6936)が公知である。HPV L1蛋白質発現形質転換された酵母は、当業界に公知された方法を使用して容易に製造することができ、このような方法は、米国特許Pat. Nos. US 7250170、US 6613557、US 5888516、US 5871998、US 5618536、US 5437951などに開示されており、これらの特許文献の内容は、本明細書に参照として取り込まれる。
【0056】
本発明の好ましい具現例によると、前記形質転換酵母は、炭素源としてグルコース及びガラクトースの一つ以上の炭素源が添加された培地で培養する。本発明のまた他の好ましい具現例によると、前記グルコースとガラクトースの比率は、質量基準でグルコース:ガラクトース=0〜1:3〜4であり、より好ましくは、質量基準でグルコース:ガラクトース=0.5〜1:3.5〜4であって、最も好ましくは、グルコース:ガラクトース=1:3である。本発明の方法において培地に含有されたグルコースとガラクトースの質量比率が上記のような範囲にある場合、HPV L1蛋白質の発現が最大になる。
【0057】
形質転換酵母の培養時に利用される例示的な培地は、YPDG培地(酵母抽出液、ペプトン、グルコース及びガラクトースを含む)である。
【0058】
(ii)培養された酵母の溶解
本発明で培養された酵母細胞の溶解方法は、酵母細胞の全体溶解物(lysate)が得られる方法であればよく、特定な方法に限定されない。本発明に使用できる溶解方法は、例えば、ソニケーション、ガラスビーズによる破砕を利用する方法があるが、これに限定されない。
【0059】
(iii)酵母溶解物の不純物を除去するためのアンモニウムサルフェート沈殿
酵母の溶解物(lysate)にアンモニウムサルフェートを添加して発現された蛋白質を沈殿させて、不純物(impurities)を除去した。
【0060】
本発明の好ましい具現例によると、添加されるアンモニウムサルフェートの濃度は、20質量%〜60質量%であり、より好ましくは、40質量%〜50質量%であって、最も好ましくは、42質量%〜48質量%である。アンモニウムサルフェートの濃度が40質量%未満であると、本発明で発現されたHPV L1蛋白質の沈殿効率が落ちて、50質量%を超えると、アンモニウムサルフェートの増加分だけのL1蛋白質沈殿増加効果が得られない。
【0061】
選択的に、アンモニウムサルフェート沈殿により形成された蛋白質ペレットを溶解した後、0.5M以上のNaClを添加して、少なくとも12時間以上4℃でインキュベーションする。
【0062】
(iii−2)低濃度塩(例えば、NaCl)における不純物除去
前記工程(iii)で得た溶液を低濃度塩(例えば、NaCl)の含まれた緩衝液(例えば、ホスフェート緩衝液)に透析して交換させた後、常温でインキュベーションし、不純物を不溶性状態にして除去する。
【0063】
本発明の一具体例において、前記低濃度塩の濃度は、0.001M〜0.3M、より好ましくは、0.01M〜0.2M、最も好ましくは、0.1M〜0.8Mであって、使用される塩は、NaCl、KCl、MgCl、CaCl、NaSO及び(NHSOからなる群から選択されて、最も好ましくは、NaClである。
【0064】
本発明の好ましい具現例において、低濃度の塩の処理過程は、非イオン性界面活性剤の存在下で行われて、前記非イオン性界面活性剤は、例えば、ポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、アルキレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、脂肪酸エステル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エーテル、C16−24脂肪酸、脂肪酸モノ−、ジ−又はポリ−グリセリド、ポリオキシアルキレンアルキルフェノール、アルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロック共重合体、脂肪アミンオキシド、脂肪酸アルカノールアミド、アルキルセルロース、カルボキシアルキルセルロース又はポリオキシアルキレン蓖麻子油誘導体を含み、好ましくは、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノラウレート(ツイン20)、ポリオキシエチレン(4)ソルビタンモノラウレート(ツイン21)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノパルミテート(ツイン40)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノステアレート(ツイン60)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタントリステアレート(ツイン65)、ポリオキシエチレン(20)ソルビタンモノオレエート(ツイン80)又はポリソルベート80)又はポリオキシエチレン(20)ソルビタントリオレエート(ツイン85)のようなポリオキシエチレンソルビタンモノ−又はトリ−ラウリル、パルミチル、ステアリル又はオレイルエステルである。また、前記非イオン性界面活性剤は、0.001%〜0.01%の濃度であることが好ましい。
【0065】
この低濃度NaClの処理過程は、不純物を除去するに非常に効率的であり、本発明の方法において、工程の短縮化及び精製効率の改善に大きく寄与する工程である。
【0066】
この工程で生成された不溶性蛋白質を遠心分離して除去する場合、次の工程であるヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーで溶出されるVLPの純度を大きく増加させることができる。したがって、本工程は、簡便な方法で不純物を除去し、精製効率を大きく増加させる効果を有する。
【0067】
(iv)ヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィー
不純物が除去された溶液に対して、ヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーを行う。
【0068】
上記の方法を通じて不純物が除去された溶液を、ヘパリンクロマトグラフィー又は陽イオン交換クロマトグラフィーを通じて精製する場合、残余不純物を非常に効果的に除去することができる。
【0069】
ヘパリンクロマトグラフィーを行う場合、まず、前記工程(iii)又は(iii−2)の結果物をヘパリンレジンカラムに適用する前に、ヘパリンレジンを適した結合バッファーで平衡化させる。結合バッファーは、好ましくは、NaCl及び非イオン性界面活性剤(例えば、ツイン80)を含み、NaClは、低濃度(0.1M〜0.2M)が好ましい。次いで、ヘパリンクロマトグラフィーに試料を適用した後、レジンに結合された蛋白質を溶出する。溶出方法は、NaCl線形濃度勾配が好ましく、より好ましくは、0.33M〜0.66MのNaCl線形濃度勾配で不純物を溶出させた後、0.66M〜2MのNaCl線形濃度勾配で所望のL1蛋白質を溶出させる。
【0070】
陽イオン交換クロマトグラフィーは、多様なレジンを利用して行うことができ、好ましくは、スルホ、スルホアルキル(例えば、スルホメチル、スルホエチル及びスルホプロピル)、ホスフェート又はホスフェートアルキル作用基が結合された陽イオン交換剤を利用して行って、最も好ましくは、ホスフェート作用基が結合された陽イオン交換剤を利用して行う。陽イオン交換クロマトグラフィーを行う場合、まず、前記工程(iii)又は(iii−2)の結果物をヘパリンレジンカラムに適用する前に、ヘパリンレジンを適した結合バッファーで平衡化させる。結合バッファーは、好ましくは、NaCl及び非イオン性界面活性剤(例えば、ツイン80)を含み、NaClは、低濃度(0.3M〜0.4M)が好ましい。次いで、陽イオン交換クロマトグラフィーに試料を適用した後、レジンに結合された蛋白質を溶出する。溶出方法は、NaCl段階濃度勾配が好ましく、より好ましくは、0.6M、0.7M、0.8M及び1MのNaClが含まれた溶出バッファーを利用して所望のL1蛋白質を溶出させる。
【0071】
(濃縮)
本発明の好ましい具現例によると、前記クロマトグラフィー過程を通じて得たL1蛋白質分画物をメンブレンフィルターで濃縮させる。好ましくは、クロマトグラフィー分画物を、50kDa〜100kDaの分子量を切り出し(cut−off)できるメンブレンを使用して濃縮する。平均50nm程度の大きさを有するVLPの場合、他の蛋白質に比べて大きい大きさを有するため、メンブレンを通過できず濃縮される反面、大部分の残余不純物は、メンブレンを通過して除去される効果を有する。したがって、この工程は、HPV 16 L1の純度を更に高めると同時に濃度を高める効果を有する。
【0072】
本発明の製造方法は、クロマトグラフィー工程の前に、細胞破砕液を特定条件で処理して不純物を除去する方法を使用することにより、L1蛋白質の精製効率を極大化した。細胞破砕液は、アンモニウムサルフェートを添加して沈殿することにより、不純物を1次的に除去して、2次的に低濃度塩条件でインキュベーションして不純物を除去する方法を使用する。上記の場合のように、アンモニウムサルフェートの沈殿後、低濃度塩の条件でインキュベーションして不純物を除去する場合、不純物の80%を除去することができて、L1蛋白質は、80%以上を回収することができて、簡便な方法で純度を高めることができる。したがって、数回のクロマトグラフィー工程を経なくても高い純度のL1蛋白質を精製することができて、これをパイロット及び産業的規模で生産及び精製に適用すると、蛋白質生産に要求される時間、製造費用及び労働力を大きく節減できる効果がある。
【0073】
本発明の他の様態によると、本発明は、配列番号1のヌクレオチド配列を含むヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸を提供する。また、本発明は、配列番号3のヌクレオチド配列を含むヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ18のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸を提供する。
【0074】
本発明のまた他の様態によると、本発明は、上記のヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸で形質転換されたSaccharomyces cerevisiae(寄託番号:KCCM11036P)を提供する。また、本発明は、上記のヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ18のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸で形質転換されたSaccharomyces cerevisiae(寄託番号:KCCM11037P)を提供する。
【0075】
配列番号1及び配列番号3のヌクレオチド配列は、HPVのL1蛋白質をコードする核酸が酵母で高効率で発現されるように最適化したものである。
【発明の効果】
【0076】
本発明の特徴及び利点を要約すると、以下のようである:
(a)本発明の子宮頸がんワクチン組成物は、抗原としてHPV 16 L1 VLP、HPV 18 L1 VLP又はHPV 16 L1 VLP及びHPV 18 L1 VLPを利用して、免疫補助剤として脱アシル化非毒性LOSを利用する。
(b)免疫補助剤である脱アシル化非毒性LOSは、HPVに対する免疫反応において非常に優れた免疫促進効能を発揮するだけではなく、毒性がほとんどなくて安全性に非常に優れている。
(c)また、脱アシル化非毒性LOSは、HPV L1 VLPにより誘導される免疫反応において、Th1タイプ免疫反応(細胞性免疫)とTh2タイプ免疫反応の両方ともを増加させて、HPVに対する上昇的な免疫反応を誘導する。
(d)本発明の子宮頸がんワクチン組成物は、HPVに対する免疫において、Th1タイプ免疫反応(細胞性免疫)とTh2タイプ免疫反応(体液性免疫)の両方ともにおいてCervarixTMとGardasilTMより優れており、子宮頸がんワクチンとして優れた効能を奏する。
(e)本発明のHPV L1 VLPの製造方法は、ただ一回のクロマトグラフィー工程を経ることで高い純度のL1蛋白質を得ることができ、これをパイロット及び産業的規模で生産及び精製に適用すると、蛋白質生産に要求される時間、製造費用及び労働力を大きく節減できる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】HPVタイプ16 L1 VLP蛋白質を発現するYEG(yeast expression vector)に対する遺伝子地図である。AmpRは、アンピシリン耐性遺伝子、Ura3は、orotidine 5−phosphate decarboxylase合成遺伝子であり、2−micronは、複製原点であって、他の記号は、制限酵素位置を示す。
【図2】HPVタイプ18 L1 VLP蛋白質を発現するYEG(yeast expression vector)に対する遺伝子地図である。AmpRは、アンピシリン耐性遺伝子、Ura3は、orotidine 5−phosphate decarboxylase合成遺伝子であり、2−micronは、複製原点であって、他の記号は、制限酵素位置を示す。
【図3】HPV 16 L1とHPV 18 L1の精製過程の模式図である。アンモニウムサルフェートの沈殿後、低い濃度のNaCl条件で不溶性に変化された蛋白質を除去した試料は、二種類の方法を通じて精製された。本発明のクロマトグラフィー法ではヘパリンクロマトグラフィー(方法1)又は陽イオン交換クロマトグラフィー(方法2)を使用した。
【図4】HPV 16 L1の精製結果である。図4は、不溶性不純物を除去する過程を経ずに、ヘパリンクロマトグラフィーを進行した後のSDS−PAGE結果である。レーン1と2は、ローディング試料と非結合試料であり、レーン3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、及び16は、それぞれ分画9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、及び48を示す。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図5】図5は、図1cの方法1におけるヘパリンクロマトグラフィーのSDS−PAGE結果である。レーン1と2は、ローディング試料と非結合試料であり、レーン3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、及び16は、それぞれ分画9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、及び48を示す。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図6】図6は、1次ヘパリンクロマトグラフィーのウェスタンブロット結果である。レーン1と2は、ローディング試料と非結合試料であり、レーン3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、及び16は、それぞれ分画9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45、及び48を示す。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図7】HPV 16 L1の精製結果である。図7は、図1cの方法2における陽イオン交換クロマトグラフィーのSDS−PAGE結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3は、washを示す。レーン4、5、6、7、8、及び9は、分画1、2、3、4、5、及び6を示す。分画1、2及び3は、それぞれ0.6M、0.7M、及び0.8MのNaClが含まれたバッファーで溶出されて、分画4、5及び6は、1MのNaClが含まれたバッファーで溶出された。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図8】図8は、陽イオン交換クロマトグラフィーのウェスタンブロット結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3は、washを示す。レーン4、5、6、7、8、及び9は、分画1、2、3、4、5、及び6を示す。分画1、2及び3は、それぞれ0.6M、0.7M、及び0.8MのNaClが含まれたバッファーで溶出されて、分画4、5及び6は、1MのNaClが含まれたバッファーで溶出された。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図9】HPV 16 L1の精製結果であって、ヘパリンクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーのL1分画を集めた後、50kDa〜100kDaを切り出し(cut−off)できるメンブレンフィルターを使用して濃縮した結果である。パネルAは、SDS−PAGE結果であり、Bは、ウェスタンブロット結果である。レーン1、2、3は、それぞれBSA、方法1で精製されたHPV 16 L1、方法2で精製されたHPV 16 L1を示す。それぞれのサンプルは、bradford assayで定量されて、200ngずつ同一量がローディングされた。
【図10】図1cの方法1で精製されたHPV 16 L1蛋白質の電子顕微鏡写真である。精製されたHPV 16 L1蛋白質は、カーボンコーティングされた銅グリッド(grid)に吸着させて、ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)で染色した後、透過電子顕微鏡で検査した。拡大倍率は、41,000倍であり、バー(bar)は、100nmを示す。
【図11】図1cの方法2で精製されたHPV 16 L1蛋白質の電子顕微鏡写真である。精製されたHPV 16 L1蛋白質は、カーボンコーティングされた銅グリッド(grid)に吸着させて、ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)で染色した後、透過電子顕微鏡で検査した。拡大倍率は、41,000倍であり、バー(bar)は、100nmを示す。
【図12】HPV 18 L1の精製結果である。図12は、不溶性不純物を除去する過程を経ずにヘパリンクロマトグラフィーを進行した後のSDS−PAGE結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16は、それぞれ分画9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45及び48を示す。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図13】図13は、図3の方法1(Method 1)におけるヘパリンクロマトグラフィーのSDS−PAGE結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16は、それぞれ分画9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45及び48を示す。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図14】図14は、ヘパリンクロマトグラフィーのウェスタンブロット結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15及び16は、それぞれ分画9、12、15、18、21、24、27、30、33、36、39、42、45及び48を示す。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図15】HPV 18 L1の精製結果である。図15は、図1cの方法2(Method 2)における陽イオン交換クロマトグラフィーのSDS−PAGEの結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3は、washを示す。レーン4、5、6、7、8、及び9は、分画1、2、3、4、5、及び6を示す。分画1、2及び3は、それぞれ0.6M、0.7M、及び0.8MのNaClが含まれたバッファーで溶出されて、分画4、5及び6は、1MのNaClが含まれたバッファーで溶出された。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図16】図16は、陽イオン交換クロマトグラフィーのウェスタンブロットの結果である。レーン1及び2は、それぞれローディング試料及び非結合試料であり、レーン3は、washを示す。レーン4、5、6、7、8、及び9は、分画1、2、3、4、5、及び6を示す。分画1、2及び3は、それぞれ0.6M、0.7M、及び0.8MのNaClが含まれたバッファーで溶出されて、分画4、5及び6は、1MのNaClが含まれたバッファーで溶出された。矢印は、L1蛋白質の分子量を示す。
【図17】HPV 18 L1の精製結果であって、ヘパリンクロマトグラフィーと陽イオン交換クロマトグラフィーのL1分画を集めた後、50kDaから100kDaを切り出し(cut−off)できるメンブレンフィルターを使用して濃縮した結果である。パネルAは、SDS−PAGEの結果であり、Bは、ウェスタンブロットの結果である。レーン1、2及び3は、それぞれBSA、方法1で精製されたHPV 18 L1、及び方法2で精製されたHPV 18 L1を示す。それぞれのサンプルは、bradford assayで定量されて、200ngずつ同一量がローディングされた。
【図18】図1cの方法1で精製されたHPV 18 L1蛋白質の電子顕微鏡写真である。精製されたHPV 18 L1蛋白質は、カーボンコーティングされた銅グリッド(grid)に吸着させて、ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)で染色した後、透過電子顕微鏡で検査した。拡大倍率は、41,000倍であり、バー(bar)は、100nmを示す。
【図19】図1cの方法2で精製されたHPV 18 L1蛋白質の電子顕微鏡写真である。精製されたHPV 18 L1蛋白質は、カーボンコーティングされた銅グリッド(grid)に吸着させて、ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)で染色した後、透過電子顕微鏡で検査した。拡大倍率は、41,000倍であり、バー(bar)は、100nmを示す。
【図20】ヘパリンクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーで精製されたHPV 18 L1の中和活性測定結果である。精製されたそれぞれのL1蛋白質をマウスに3週間隔で3回免疫して、血清内中和抗体価は、SEAPに基づいた中和抗体活性測定法で測定した。X軸の対照群、ヘパリン及び陽イオン交換は、それぞれ免疫補助剤のみで免疫したグループ、ヘパリンクロマトグラフィーで精製されたL1と免疫補助剤で免疫したグループ、及び陽イオン交換クロマトグラフィーで精製されたL1と免疫補助剤で免疫したグループを示す。Y軸の数字は、血清の希釈倍率を示す。
【図21】ヘパリンクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーで精製されたHPV 16 L1の中和活性測定結果である。精製されたそれぞれのL1蛋白質をマウスに3週間隔で3回免疫して、血清内中和抗体価は、SEAPに基づいた中和抗体活性測定法で測定した。X軸の対照群、ヘパリン及び陽イオン交換は、それぞれ免疫補助剤のみで免疫したグループ、ヘパリンクロマトグラフィーで精製されたL1と免疫補助剤で免疫したグループ、及び陽イオン交換クロマトグラフィーで精製されたL1と免疫補助剤で免疫したグループを示す。Y軸の数字は、血清の希釈倍率を示す。
【図22】新規免疫補助剤(CIA05)がMPLより細胞毒性(TNF−α分泌)が低いことを示すグラフである。
【図23】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合による抗体価(図23)を示すグラフである。白のバーは、総IgG、斜線のバーは、IgG1、及び黒のバーは、IgG2aに対するものである。
【図24】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合による抗体価の増加倍数(図24)を示すグラフである。白のバーは、総IgG、斜線のバーは、IgG1、及び黒のバーは、IgG2aに対するものである。
【図25】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合による脾臓細胞からのインターフェロン−γ分泌程度を分析した結果である。斜線のバーは、HPV 16 L1 VLP処理期間が2日間、黒のバーは、3日間に該当するものである。
【図26】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16/18 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合による血清総IgG力価を分析した結果であり、図13aは、HPV 16 L1 VLPに対する総IgG力価を分析した結果である。
【図27】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16/18 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合による血清総IgG力価を分析した結果であり、図13bは、HPV 18 L1 VLPに対する総IgG力価を分析した結果である。
【図28】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16/18 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合によるHPV 16 L1 VLPに対する血清内IgG1力価(図14a)を分析した結果である。
【図29】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16/18 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合によるHPV 16 L1 VLPに対する血清内IgG2a力価(図14b)を分析した結果である。
【図30】新規免疫補助剤CIA05、HPV 16/18 L1 VLP及びアルミニウムヒドロキシド(Alum)の濃度別混合による脾臓細胞からのインターフェロン−γ分泌程度を分析した結果である。
【発明を実施するための形態】
【0078】
以下、実施例を通じて本発明を更に詳細に説明するが、これら実施例は、本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の範囲がこれら実施例に限定されないことは、本発明の属する技術分野で通常の知識を有する者にとっては自明なことであろう。
【実施例】
【0079】
実施例1:ヒトパピローマウイルスタイプ16及び18 VLP L1蛋白質の生産及び精製
HPVタイプ16及び18のL1蛋白質を生産する組み換え酵母発現システムの構築
HPVタイプ16及び18のL1 DNA配列の酵母(Saccharomyces cerevisiae)におけるコドン/発現最適化を行って、配列番号1のHPVタイプ16 L1 DNA配列及び配列番号3のHPVタイプ18 L1 DNA配列を得て、“Synthesis in BHB Standard Vectors”サービス(www.blueheronbio.com参照)を利用してDNAをそれぞれ合成した(参照:配列番号1及び3)。この際、最適化されたDNA配列の前と後ろにHindIII(AAGCTT)とClaI(ATCGAT)制限酵素位置を連結した。その後、クローニング過程を経て、本発明に使用される組み換えHPV 16 L1及びHPV 18 L1蛋白質を発現できる組み換えプラスミドDNAを、酵母発現ベクター(YEG)を使用して構築し、YEGα−HPV16L1−ORS及びYEGα−HPV18L1−ORSを得た(図1)。クローニング過程は、以下のようである:配列番号1のHPVタイプ16 L1 DNA配列又は配列番号3のHPVタイプ18 L1 DNA配列が挿入されたpUCminusMCSベクター(Invitrogen)及び酵母発現ベクターであるYEG−MCSベクターをHindIIIとClaIで切断した。切断されたDNAをそれぞれ電気泳動した後、ゲル抽出キット(HiYieldTM Gel/PCR DNA Extraction Kit(#YDF100、RBC))を使用して抽出した。HPVタイプ16及び18のDNAと、ベクターとして使用されるYEG−MCSベクターを、リガーゼ(DAKARA、2011a)を利用して接合させた後、dam(−) coli competent細胞(TAKARA、9129)に形質転換させた。形質転換後に形成されたコロニーを計数して、それぞれ培養した後、プラスミドを抽出して、酵素で切断して大きさを確認した。大きさが確認されたプラスミドを酵母(Saccharomyces cerevisiae)に形質転換させて、SD(−ura)プレートにスプレードした。コロニーが生成されたら、25個ずつピッキングして接種した(280rpm、30℃、振とう、2日間)。SD(−ura)培地からよく育ったもののみを選別して、YPDG培地に接種した。培養が完了すると、培養時のO.D値、細胞破砕時の総蛋白質量、精製(下記の方法で精製)後のELISA及びWestern blot分析をおこなって、最も優れた菌株を選定した。
【0080】
組み換えHPV16L1及びHPV18L1が導入されたYEGα−HPV16L1−ORS及びYEGα−HPV18L1−ORSベクターでそれぞれ形質転換された菌株を寄託機関の韓国微生物保存センターに2009年10月8日付にて寄託し、それぞれ寄託番号KCCM11036P及びKCCM11037Pをもらった(KCCM11036P − Saccharomyces cerevisiae EG0216; KCCM11037P − Saccharomyces cerevisiae EG0218)。
【0081】
細胞の培養
バッフル板(baffle)が付着されたフラスコに、ウラシル(uracil)のない合成完全培地SD−ura(Clontech)に前記製造した酵母菌株細胞を接種して、30℃で振とう培養した。GAL10プロモーターからHPV16 L1及びHPV18 L1蛋白質を発現させるために、YPDG培地を使用した。全ての培地に1%酵母抽出液(DIFCO Laboratories、USA)及び2%ペプトン(DIFCO Laboratories、USA)を添加して、1%のグルコースと3%ガラクトースが含まれるようにした。YPDG培地3Lにプラスミド前記形質転換された酵母菌株を接種した後、30℃で48時間振とう培養した。
【0082】
細胞溶解物(Cell Lysate)の製造
培養した細胞をペレットで収得し、得られた細胞ペレットを70℃で冷凍した。全ての後続過程は、4℃で行った。細胞ペレットを溶かして、氷冷させた100mLブレークバッファー(break buffer)(20mM sodium phosphate、pH7.2、100mM NaCl、1.7mM EDTA、0.01% Tween 80)に再懸濁させて、プロテアーゼ阻害剤カクテル錠(Roche、USA)を添加した。細胞をガラスビーズ(Sigma、USA)と共にビード−ビーター(Bead−Beater)(Biospec Products、USA)のチャンバーに移して、5分間vortexした後、溶解物(lysate)を4℃で10分間10,000gで数回遠心分離してきれいに除去した。
【0083】
アンモニウムサルフェート沈殿
きれいに除去された細胞溶解物にアンモニウムサルフェート(Sigma、USA)を添加して、HPV L1蛋白質を回収した。回収効率(recovery efficiency)を評価するために、アンモニウムサルフェートを43%又は45%濃度で添加した後、それぞれ4℃で30分間攪拌して、12,000gで10分間遠心分離し、蛋白質ペレットを得た。アンモニウムサルフェートで沈殿されたペレットをPBS+0.01% Tween 80 緩衝液で再懸濁した後、NaClを更に添加して、最終NaCl濃度が0.5M以上になるようにした。その後、4℃で少なくとも12時間以上インキュベーションした。
【0084】
低濃度NaClインキュベーションによる不純物の除去
上記の高濃度NaClでインキュベーションされた溶液をPBS+0.01% Tween 80緩衝液で透析した後、リン酸ナトリウムpH7.2緩衝液に0.15M NaClと0.01% Tween 80が含まれた溶液で希釈して、最終蛋白質の濃度が2〜5mg/mLになるようにした。この溶液を常温で2時間以上放置して、非溶解性状態の蛋白質が生成されるようにした。生成された非溶解性蛋白質は、10,000gで10分間遠心分離して除去した。
【0085】
ヘパリンクロマトグラフィー(heparin chromatography)
上記の低濃度NaClでインキュベーションされたサンプルを遠心分離した後、上澄み液を結合バッファー(binding buffer;PBS+0.2M NaCl、pH7.0、0.01% Tween 80)で透析した。ヘパリンレジン(5mL又は20mL)で充填されたカラム(GE healthcare、USA)も、結合バッファーをレジン容量の5倍量として流して、平衡を維持した。透析が完了した溶液は、ヘパリンカラムを通過させて結合させた後、結合バッファーをレジン容量の5倍量として流して洗浄した。溶出法は、NaCl濃度が0.33Mから0.66Mまで35分間上昇するように線形濃度勾配を与えて、不純物を溶出させた後、NaCl濃度が0.66Mから2Mまで線形濃度勾配を与え、L1蛋白質を溶出させた。
【0086】
陽イオン交換クロマトグラフィー(cation−exchange chromatography)
上記の低濃度NaClでインキュベーションされたサンプルを遠心分離した後、上澄み液を結合バッファー(binding buffer;PBS+0.37M NaCl、pH7.2、0.01% Tween 80)で透析した。P−11セルロースホスフェートレジン(Whatman、UK)で充填された8cm×4cm Poly−Prepカラム(Bio−Rad Lab.、USA)は、上記の結合バッファーをレジン容量の5倍量として流して、平衡状態を維持した。透析が完了した溶液は、P−11カラムを通過させて結合させた後、結合バッファーをレジン容量の5倍量として流して洗浄した。洗浄後、結合バッファーに0.6M、0.7M、0.8M又は1M NaClが含まれた溶出バッファーをそれぞれ4mL〜5mLずつ流して、L1蛋白質を溶出させた。
【0087】
メンブレンフィルターを利用したVLP濃縮
前記ヘパリンクロマトグラフィー(heparin chromatography)又は陽イオン交換クロマトグラフィー(cation−exchange chromatography)過程により得たHPV 16 L1又はHPV 18 L1の分画を集めた後、0.1M〜0.325MのNaClを含むPBS+0.01% Tween 80に透析した。透析が完了したサンプルは、amicon ultra YM−50又はYM−100(Millipore、USA)を使用して、製造者が提供する方法によって濃縮した。
【0088】
SDS−PAGE及びウェスタンブロット
Laemmliの方法に従って、ドデシル硫酸ナトリウムの存在下で12.5% PAGEによって全てのサンプルを分析した(M.P. McCarthy, W.I. White, F. Palmer−Hill, S. Koenig, J.A. Suzich, J Virol 72 (1998) 32−41)。HPV 16 L1又はHPV 18 L1を含むサンプルを、200mAで120分間PVDF膜(Q−Biogene、USA)に伝達させて、L1蛋白質を、1次抗体としてラビット抗−HPV 16 L1又は抗−HPV 18 L1抗体(PIERCE、USA)を、2次抗体としてヤギ(goat)抗−ラビットIgG−HRPコンジュゲート(PIERCE、USA)を使用して検出した。蛋白質は、ウェスタンブロットルミノール試薬(Santa Cruz Biotechnology、USA)を使用して視覚化した。
【0089】
電子顕微鏡観察
精製したHPV L1蛋白質を、カーボン−コーティングされたグリッドに吸着させた後、2%ホスホタングステン酸(phosphotungstic acid)でネガティブ染色した。透過電子顕微鏡写真は、41,000倍の最終倍率でTEM200CXを使用して撮影した(S.N. Kim, et al., J. Virol. Methods 139 (2007) 24−30)。
【0090】
シュードウイルスの製作
HPVタイプ16及び18のL1蛋白質とL2蛋白質を発現するプラスミドであるp16SheLL(National Cancer Institute分譲)とp18SheLL(National Cancer Institute分譲)を、レポーター遺伝子を含むプラスミドであるpYSEAP(National Cancer Institute分譲)と共に、293TT細胞(National Cancer Institute分譲)にLipofectamine 2000(Invitrogen、USA)を使用してそれぞれ共同−形質転換させた。形質転換された293TT細胞を72時間培養後、破砕バッファー(PBS+0.5% Brij58、0.2% Benzonase、0.2% plasmid−safe ATP−dependent Dnase)を使用して破砕した。破砕された細胞の細胞デブリスは、12,000gで10分間遠心分離して除去し、上澄み液は、中和抗体価の測定に使用した。
【0091】
マウス免疫
ヘパリンクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーでそれぞれ精製された2μgのL1蛋白質で、6週齢の雄性Balb/cマウスを3週間隔で3回皮下に免疫した。第1の免疫は、フロイント完全アジュバント(Freund’s complete adjuvant、Sigma)を使用して、第1、2のブースティングは、フロイント不完全アジュバント(Freund’s incomplete adjuvant、Sigma)を使用して行った。対照群は、フロイント完全アジュバントとフロイント不完全アジュバントにPBSを同一比率で希釈して投与した。各グループのマウスに対して、第2のブースティングの十日後、尻尾静脈を通じて血清を採取し、得られた血清は、中和抗体価の測定に使用した。
【0092】
SEAP−based中和抗体価の測定
293TT細胞を96ウェルプレートに3×10cells/wellで播種した後、37℃、5% COインキュベーションで4時間培養した。HPVタイプ16及び18のL1蛋白質で免疫されたマウス血清を1/100から1/10,000,000まで連続希釈した後、上記のように用意されたHPVタイプ16及び18のシュードウイルスと1:4比率で希釈した。希釈された混合液を4℃で1時間反応した後、96ウェルプレートに用意された293TT細胞に添加した後、72時間37℃、5% CO条件で培養した。72時間培養後、培養培地内のSEAP発現程度は、p−nitrophyl phosphate disodium salt hexahydrate(Sigma、USA)を基質として確認した。マウス血清内中和抗体価は、シュードウイルスだけが適用されたウェルのOD値の半分値で決定した。
【0093】
実験結果
1. HPV 16 L1精製結果
ヘパリンクロマトグラフィー(heparin chromatography)
ヘパリンクロマトグラフィーによるHPV 16 L1蛋白質の分離能を調べた。本結果は、図3の方法1のヘパリンクロマトグラフィーの結果である。図4から分かるように、低濃度NaCl条件でインキュベーションして不溶性不純物を除去する工程を経なかったサンプルの場合、ヘパリンクロマトグラフィー時、多量の不純物を含んでいた。その反面、低濃度のNaCl条件で不溶性不純物を除去したサンプルは、ヘパリンクロマトグラフィー時、L1蛋白質の純度が大きく向上した(図5)。ヘパリンカラムに結合された蛋白質を0.325Mから0.66MまでNaClの傾斜勾配で1次溶出させた後、0.66Mから2MまでNaClの濃度勾配で2次溶出させた結果、不純物は、0.325M〜0.5MのNaCl濃度で大部分溶出されて(図5)、HPV 16 L1は、0.5Mから1.3MのNaCl濃度で溶出された(図6)。この結果は、低濃度NaCl条件で不溶性不純物を除去することが、ヘパリンクロマトグラフィーでL1蛋白質の純度を大きく増加させるということを意味し、不溶性不純物が除去されたサンプルをヘパリンクロマトグラフィーに適用時、効果的にL1蛋白質を精製できることを示す。
【0094】
陽イオン交換クロマトグラフィー(cation−exchange chromatography)
陽イオン交換クロマトグラフィーによるHPV 16 L1蛋白質の分離能を調べた。本結果は、図3の方法2の陽イオン交換クロマトグラフィーの結果である。図7及び図8から分かるように、大部分の不純物は、カラムに付着されて除去され(図7)、NaClを使用した溶出時、HPV 16 L1は、0.7Mから1MのNaCl濃度で溶出された(図8)。この結果は、低濃度のNaCl条件で不溶性蛋白質を除去する場合、陽イオン交換クロマトグラフィーを通じて純度の高いL1を得ることができることを示す。
【0095】
精製されたHPV 16 L1の純度
上記で精製されたL1蛋白質の分画を集めて、50kDa〜100kDaを切り出し(cut−off)できるメンブレン(YM−50又はYM−100)で濃縮した。図9から分かるように、L1蛋白質の純度は、商業的に販売されるBSA標準物質(96%以上の純度)とほぼ等しい純度を示すことを確認した(図9のパネルA)。ウェスタンブロットの結果、SDS−PAGE上で観察される55kDaのモノマーが検出されて、BSAのバンドは現れなかった(図9のパネルB)。この結果は、上記の精製工程を通じて高い純度のHPV 16 L1が精製されたことを示す。
【0096】
精製されたHPV 16 L1蛋白質の自己組織化(self−assembly)
図10と図11から分かるように、上記の二つの工程により精製されたHPV 16 L1蛋白質は、HPV VLPsの大きさと同等の大きさである35nm乃至64nmの直径(平均直径49nm)を有するVLPsに自己組織化された(K.A. Aires, et al., Appl. Environ. 368 Microbiol. 72 (2006) 745−752)。したがって、上記の二つの精製方法は、L1蛋白質の自己組織化に何の影響も及ぼさず、これは、上記の二つの方法ともHPV 16 L1蛋白質の精製に適していることを意味する。
【0097】
サンドイッチELISAを通じて工程別回収率を測定した結果、細胞破砕後、アンモニウムサルフェート沈殿、低濃度NaCl条件で不溶性蛋白質を除去する工程まで、不純物は平均80%が除去されて、この工程までL1蛋白質の平均回収率は、81%であった(表1及び表2)。L1蛋白質の純度は、細胞破砕工程で0.2%であったが、アンモニウムサルフェート沈殿と不溶性不純物を除去する工程後、0.8%〜1%に向上し、4倍〜5倍程度に純度が向上した(表1及び表2)。
【0098】
【表1】

【0099】
【表2】

【0100】
一方、ヘパリンクロマトグラフィーを経て精製されたL1蛋白質の回収率(recovery)は、64%であって(表1)、陽イオン交換クロマトグラフィーを経て精製されたL1蛋白質の全体回収率は、62%であった(表2)。上記の64%と62%の回収率は、今まで報告された回収率のうち、最も高い値である。
【0101】
2.HPV 18 L1精製結果
ヘパリンクロマトグラフィー(heparin chromatography)
ヘパリンクロマトグラフィーによるHPV 18 L1蛋白質の分離能を調べた。本結果は、図3の方法1のヘパリンクロマトグラフィーの結果である。図12から分かるように、低濃度NaCl条件でインキュベーションして不溶性不純物を除去する工程を経なかったサンプルの場合、ヘパリンクロマトグラフィー時、多量の不純物を含んでいた。その反面、低濃度のNaCl条件で不溶性状態に変わった不純物を除去したサンプルは、ヘパリンクロマトグラフィー時、L1蛋白質の純度が大きく向上したことを確認することができる(図13)。ヘパリンカラムに付着された蛋白質を0.325Mから0.66MまでのNaCl傾斜勾配で1次溶出させた後、0.66Mから2MまでのNaCl濃度勾配で2次溶出させた結果、大部分の不純物は、0.325Mから0.5MのNaCl濃度で溶出されて(図13)、HPV 18 L1は、1.2Mから1.3M NaCl濃度で溶出された(図14)。この結果は、HPV 16 L1と同様に、ヘパリンクロマトグラフィーを通じてHPV 18 L1を効果的に精製することができることを示す。
【0102】
陽イオン交換クロマトグラフィー(cation−exchange chromatography)
陽イオン交換クロマトグラフィーによるHPV 18 L1蛋白質の分離能を調べた。本結果は、図1cの方法2の陽イオン交換クロマトグラフィーの結果である。図15から分かるように、大部分の不純物は、カラムに結合されて除去され、NaClを使用した溶出時、HPV 18 L1は、0.8Mから1MのNaCl濃度で溶出された(図16)。この結果は、低濃度のNaCl条件で不溶性蛋白質を除去する場合、陽イオン交換クロマトグラフィーを通じて純度の高いL1を得ることができることを示す。
【0103】
精製されたHPV 18 L1の純度
上記で精製されたL1蛋白質の分画を集めて、50kDa〜100kDaを切り出し(cut−off)できるメンブレン(YM−50又はYM−100)で濃縮した。図17から分かるように、濃縮完了後、分子量の小さい不純物が除去されたことを確認し、L1蛋白質の純度は、商業的に販売されるBSA標準物質(96%以上の純度)とほぼ等しい純度を示すことを確認した(図17のパネルA)。SDS−PAGE上で観察される55kDaのL1蛋白質は、ウェスタンブロットの結果で同一に検出されて、対照群であるBSAでは、バンドが検出されなかった(図17のパネルB)。この結果は、上記の二つの精製工程を通じて高い純度のHPV L1蛋白質を得ることができることを示す。
【0104】
精製されたHPV 18 L1蛋白質の自己組織化(self−assembly)
図18と図19から分かるように、上記の二つの工程により精製されたHPV 18 L1蛋白質は、HPV VLPsの大きさと同等の大きさである35nm乃至64nmの直径(平均直径49nm)を有するVLPsに自己組織化された(K.A. Aires, et al., Appl. Environ. 368 Microbiol. 72 (2006) 745−752)。したがって、上記の二つの方法により精製されたL1蛋白質は、VLP形成に何の影響も受けず、これは、上記の二つの方法ともHPV 18 L1蛋白質の精製に適していることを意味する。
【0105】
結論的に、複雑な工程と時間が要求されるスクロースクッションや分子ふるいクロマトグラフィーなどの方法を経なくても、高い純度と高い回収率でHPV 16 L1とHPV 18 L1蛋白質の精製が可能であることを実験的に確認した。
【0106】
3.精製されたHPVタイプ16及び18のL1蛋白質の中和活性能
上記の方法で精製されたHPVタイプ16とタイプ18のL1蛋白質をマウスに免疫し、中和抗体価を測定した。その結果、ヘパリンクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーで精製されたHPVタイプ16のL1は、平均1/18,000希釈倍率まで中和抗体価を示した(図20)。HPVタイプ18のL1の場合、ヘパリンクロマトグラフィーで精製されたL1は、平均1/5,000、陽イオン交換クロマトグラフィーで精製されたL1は、平均1/170,000希釈倍率まで中和抗体価を示した(図21)。この結果は、上記の方法で精製されたHPVタイプ16及び18のL1蛋白質が高い水準で中和抗体を誘導することができることを示す。
【0107】
実施例2:新規免疫補助剤としての非常に短いリポポリサッカライド(LPS)CIA05の生産
本発明者らは、健康なヒトの腸に住んでいる大腸菌から、リポポリサッカライド糖鎖の長さが非常に短いLPSを有する菌株(coli EG0021)を既に発掘して、この菌株を寄託機関の韓国微生物保存センターに2002年5月2日付にて寄託し、寄託番号KCCM 10374をもらった(参照:韓国登録特許第0456681号公報;WO2004/039413;韓国登録特許第0740237号公報;WO2006/121232)。前記菌株からのLPS精製は、韓国登録特許第0456681号公報;WO2004/039413;韓国登録特許第0740237号公報;及びWO2006/121232に開示された方法によって行った。精製されたLPSの分子量をMALDI−MASS(Shimadz社,Axima−LNR V 2.3.5(Mode Liner、Power:106))で測定し、測定結果、約3千5百Daの分子量を有することを確認した。精製されたLPSを韓国登録特許第0456681号公報; WO 2004/039413;韓国登録特許第0740237号公報;及びWO2006/121232に開示された方法によって、開示されたプロトコールに従って脱毒素化した。簡単に、3mg/mLの前記精製されたLPSに2N NaOHを1:1のボリュームで混ぜた後、60℃で10分毎に一回ずつ振って、140分間脱アシル化させて、初期0.2N NaOHのボリュームの約1/5程度の1N酢酸を入れてpH7.0に適正した。pH適正後、エタノール沈殿して、非毒性リポポリサッカライド(CIA05)を得た。
【0108】
実施例3:新規免疫補助剤であるCIA05と従来の免疫補助剤MPLとの毒性比較実験
本発明の子宮頸がんワクチンにおいて免疫補助剤として利用される前記実施例で製造したCIA05と、既存の子宮頸がんワクチンに使用しているMPL(Monophosphoryl lipid A)の毒性を比較分析した。健康なヒトの血液を提供してもらってPBMC(Peripheral Blood Mononuclear Cell)を分離し、これを24ウェル培養ディッシュに5×10cell/mLの濃度で播種した。この際、培養液は、RPMI 1640(Gibco)に10% FBS(Gibco)を混合したものを使用して、一つのウェル当たりの容量は、1mLに均等にした。用意されたディッシュに、下記のような条件でそれぞれ処理した:1)陰性対照群:BSS(Balanced salt solution)100μL;2)脱アシル化非毒性LOS(CIA05) 10μg/100μL;3)MPL(coli F583 MPL)10μg/100μL。
【0109】
12時間後、処理された培養液を集めて遠心分離し、酵素免疫測定法(ELISA)を利用して、THP−1(Acute monocytic leukemia)から分泌される炎症性蛋白質であるTNF−αの量を、ELISA kit(R&D system、DY210)を使用してそれぞれ測定した。実験結果、図22から分かるように、既存の子宮頸がんワクチン補助剤として使用しているMPLより約1/3程度毒性が小さいことを確認した。
【0110】
実施例4:本発明の子宮頸がんワクチンの効能探索
マウスを利用した免疫化
前記実験を通じて精製した蛋白質抗原と新規免疫補助剤CIA05を利用して、マウスにおいて免疫反応を誘導した。6週齢の雄性Balb/cマウス(SLC、Japan)を利用して、実験群当たりマウスをランダムに5匹ずつ割り当てた。前記マウスに、CIA05単独、Alum(アルミニウムヒドロキシド;Brenntag、Germany)単独、又はこの二つの混合物と共に、HPV16 L1 VLP 2μg(図12a〜12c)、HPV16/18 L1 VLP 1μg又は4μg(各タイプ0.5μg又は2μg)(図13a〜図15)を2週間隔で3回筋肉内注射して免疫化させた。対照群マウスには、PBSを投与した。比較実験のために、既存の市販製品であるCervarixTMとGardasilTMを、ヒト基準1/10容量でマウスに投与した。マウスの血清は、3次接種後、5週目に採取して、anti−L1 VLP IgG力価をエンドポイントELISA方法で測定した。
【0111】
エンドポイントELISAを利用した免疫効能の分析(IgG力価分析)
100μLのコーティングバッファー(50mMカーボネート、pH9.6、4℃)に、前記実施例で製造されたHPVタイプ16又は18 VLP L1抗原を0.5μg/mLの濃度で希釈して、96ウェルELISAマイクロプレート(Nalge Nunc International、USA)にコーティングした後、一晩中4℃でコーティングした。翌日、ウォッシングバッファー(0.05% Tween20が溶解されているPBS)を利用して、各ウェルを3回洗浄して、ブロッキングバッファー(1%のBSAが溶解されているPBS)を各ウェル当たり300μLずつ添加した後、37℃で1時間ブロッキングした。その後、ウォッシングバッファー(0.05% Tween 20が溶解されているPBS)を利用して各ウェルを3回洗浄して、採取したマウス試料を、1/2段階希釈法を利用して希釈した後、コーティングされたマイクロプレートに100μLずつ入れて、37℃で2時間反応した。反応が終わった後、マイクロプレートをウォッシングバッファーを利用して2回洗浄して、HRP(horseradish peroxidase)が結合されているヤギ抗−マウスIgG(Zymed、81−6520)又はヤギ抗−マウスIgG1(Serotec、STAR81P)又はヤギ抗−マウスIgG2a(Serotec、STAR82P)を、実験によって100μLずつマイクロプレートに入れて、37℃で2時間反応した。その後、ウォッシングバッファーを利用して2回洗浄し、HRPと反応して発色する試薬であるTMB(tetramethylbenzidine、BD Bio science、55555214)を100μLずつマイクロプレートに入れて発色させた。常温、暗所で約10分間発色させた後、発色反応終了のために1N HSO 100μLをすぐに添加し、このように反応の終わった96ウェルマイクロプレートをマイクロプレートリーダー(BioTek、USA)に入れて、450nmの波長で各ウェルの発色程度(濃度)を測定した。エンドポイントタイターは、0.1のカット−オフ値を有する非免疫血清の2倍吸収光度を引き起こす最も高い血清希釈で定義されて、平均±SDで示した。
【0112】
図23及び図24で確認できるように、HPV16 L1 VLP抗原にCIA05を追加した場合、総IgG、IgG1及びIgG2a力価のいずれも大きく増加して、特に、力価の増加倍数(fold increase)で示した図12bからみると、このような増加パターンが明確である。また、Alumよりは、CIA05の免疫促進効果が更に優れていた。したがって、本発明のワクチンの基本的な組成であるHPV L1 VLP抗原とCIA05とによりHPVに対する免疫化が非常に優秀に達成できることが分かる。
【0113】
また、図25及び図26から分かるように、HPV16/18 L1 VLP特異総IgG力価は、CIA05免疫補助剤とAlumを複合投与した場合、Alum単独投与より非常に高く表れて、従来のCervarixTMとGardasilTMで免疫化したグループよりも著しい数値を示した。
【0114】
一方、IgGの亜型で分析した図27及び図28から分かるように、HPV16 L1 VLP特異IgG1は、CIA05免疫補助剤とAlumを複合投与した場合、Alum単独投与より高く表れて、従来のCervarixTMとGardasilTMで免疫化したグループより少し高く表れた(図27)。IgG2aの場合は、CIA05免疫補助剤とAlumを複合投与した場合、Alum単独投与より非常に高く表れて、従来のCervarixTMとGardasilTMで免疫化したグループよりも著しい数値を示した(図28)。
【0115】
マウス脾臓細胞を利用したインターフェロン−γ濃度分析
上記の方法で免疫化したマウスから最大限無菌的に脾臓を抽出して、PBSで洗浄した。培養液(50μM β−メルカプトエタノール、1M HEPES buffer、10% FBS、1×抗生剤が添加されたRPMI1640)の中で5mL注射器を利用し、脾臓に10個の孔を開けた。注射器に培養液を吸い込んだ後、強く吹き出すことを数回繰り返して脾臓細胞を分離し、このように分離された脾臓細胞を集めて、培養液と共に1,500rpm、4℃で10分間遠心分離した。培養液を除去し、10% FBS 100μg/mLストレプトマイシンと50mM β−メルカプトエタノールが含まれたRPMI1640培地を利用して再懸濁した。次いで、脾臓細胞を96ウェルプレートの各ウェルに分株して、15μg/mLの濃度でHPV16 L1 VLPを添加した後、37℃で48時間又は72時間培養した。マウス脾臓細胞から分泌されたインターフェロン−γの濃度をELISA(BD OptEIA mouse ELISA kit)で測定した。
【0116】
図25から分かるように、HPV16 L1 VLP抗原にCIA05を追加した場合、インターフェロン−γの濃度が大きく増加して、AlumよりはCIA05の免疫促進効果が更に優れていた。したがって、本発明のワクチンの基本的な組成であるHPV L1 VLP抗原とCIA05により、HPVに対する免疫化が非常に優秀に達成できることが分かる。
【0117】
また、図30から分かるように、脾臓細胞により分泌されるインターフェロン−γの濃度は、CIA05免疫補助剤とAlumとを複合投与した場合、Alum単独投与より非常に高く表れて、従来のCervarixTMとGardasilTMで処理されたグループよりも著しい数値を示した。
【0118】
一方、図26、27、28及び29において、本発明のワクチン組成物は、HPVタイプ16及び18のL1 VLPs、アルミニウムヒドロキシド及びCIA05を含むが、これは、GSKのCervarixにおいて、MPLの代わりにCIA05が代替されたと考えられる。即ち、本発明で利用するCIA05は、MPLと比較し、毒性側面だけではなく、HPVに対する免疫促進能においても著しく優れていることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0119】
結論的に、前記実験結果から、HPV16 L1 VLP及びHPV18 L1 VLPの両方とも、本発明者らが開発した免疫補助剤のCIA05を混合した実験群が、既存の子宮頸がんワクチンで免疫化した実験群より著しい免疫効果を示すことが分かる。これは、現在開発された子宮頸がんワクチンが、持続効果に対する難点があることに鑑みると、本発明の免疫補助剤の添加による免疫力強化は、この問題を解決できる独創的で且つ進歩した発明であるといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)(i)ヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)及びHPVタイプ18のL1 VLPの少なくともいずれかと、(ii)脱アシル化された非毒性リポオリゴ糖(LOS)と、
(b)薬剤学的に許容される担体と、を含むことを特徴とするヒト子宮頸がんワクチン薬剤学的組成物。
【請求項2】
HPVタイプ16又は18のL1 VLPが、(i)HPVタイプ16又は18のL1をコードするヌクレオチド配列を含む酵母を培養する工程と、(ii)培養された前記酵母を溶解する工程と、(iii)前記酵母の溶解物に対してアンモニウムサルフェート沈殿を施して、不純物を除去する工程と、(iv)前記不純物の除去された結果物に対してヘパリンクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーのいずれかを行う工程と、を含む精製工程を通じて得られた請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
非毒性LOSが、リポ多糖(LPS)にアルカリ処理し、リピドAを脱アシル化させて非毒性化された請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
非毒性LOSが、1,500Da〜10,000Daの分子量を有する請求項1に記載の組成物。
【請求項5】
非毒性LOSが、2,000Da〜4,000Daの分子量を有する請求項4に記載の組成物。
【請求項6】
非毒性LOSが、coli由来のものである請求項1に記載の組成物。
【請求項7】
免疫補助剤を更に含み、前記免疫補助剤が、Mg、Ca、Sr、Ba及びRaからなる群から選択される第2族元素、Ti、Zr、Hf及びRfからなる群から選択される第4族元素、若しくはアルミニウムの塩又はその水和物である、請求項1に記載の組成物。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の薬剤学的組成物をヒトに投与する工程を含む、ヒト子宮頸がんの予防方法。
【請求項9】
(i)HPV L1−コーディングヌクレオチド配列を含む酵母を培養する工程と、
(ii)培養された前記酵母を溶解する工程と、
(iii)前記酵母の溶解物に対してアンモニウムサルフェート沈殿を施して、不純物を除去する工程と、
(iv)前記不純物の除去された結果物に対してヘパリンクロマトグラフィー及び陽イオン交換クロマトグラフィーのいずれかを行う工程と、を含むことを特徴とするヒトパピローマウイルス(HPV)L1ウイルス様粒子(VLP)の製造方法。
【請求項10】
HPVが、HPVタイプ16又はHPVタイプ18である請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記工程(iii)と(iv)との間に、工程(iii−2)として、アンモニウムサルフェート沈殿を施して不純物の除去された結果物を、0.001M〜0.3MのNaClで処理し、追加的に不純物を除去する工程を更に含む請求項9に記載の方法。
【請求項12】
陽イオン交換クロマトグラフィーが、ホスフェート基を有する陽イオン交換剤を利用して行う請求項9に記載の方法。
【請求項13】
配列番号1のヌクレオチド配列を含むことを特徴とするヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸。
【請求項14】
配列番号3のヌクレオチド配列を含むことを特徴とするヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ18のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸。
【請求項15】
請求項13に記載のヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ16のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸で形質転換され、寄託番号KCCM11036Pであることを特徴とするSaccharomyces cerevisiae
【請求項16】
請求項14に記載のヒトパピローマウイルス(HPV)タイプ18のL1ウイルス様粒子(VLP)の核酸で形質転換され、寄託番号KCCM11037Pであることを特徴とするSaccharomyces cerevisiae


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【図29】
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【図30】
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【公表番号】特表2012−530488(P2012−530488A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−515957(P2012−515957)
【出願日】平成21年10月20日(2009.10.20)
【国際出願番号】PCT/KR2009/006062
【国際公開番号】WO2010/147268
【国際公開日】平成22年12月23日(2010.12.23)
【出願人】(511300972)アイジェン インコーポレーテッド (1)
【Fターム(参考)】