説明

孔内に締結可能な保持要素

【課題】キャリア部の孔内に締結するための保持要素を提供すること。
【解決手段】キャリア部の孔内に締結するための保持要素(3)が、長手方向軸に沿って延びる中心シャフト(7)と、シャフト(7)の遠端部に締結され、横方向に突出する支持部(9)と、その締結端部がシャフトに移動可能に締結された少なくとも1つのアーム(16)とを有する。アーム(16)は、長手方向軸に対して横断方向に、シャフト(7)から或る距離をおいて延び、長手方向軸と平行な方向においては、支持部(9)上に支持可能であり、反対の方向においては、シャフト(7)の前端部に締結された案内部(12)上に支持可能である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長手方向軸に沿って延びる中央シャフトと、横方向に突出し、シャフトの遠端部に締結された支持部と、その締結端部がシャフトに弾力的に締結された少なくとも1つのアームとを有する、キャリア部の孔内に締結するための保持要素に関する。
【背景技術】
【0002】
示される種類の保持要素は、種々のタイプの構造部品を、孔が形成されたキャリア部に簡単な方法で締結するために、特に自動車産業において用いられている。ここでは、僅かな力による単一の挿入操作によって、取り付けが可能でなければならず、組み立てられた保持要素は、可能な限り大きい保持力をキャリア部に伝達できなければならない。キャリア部の厚さ、よって、締結孔の長さは、多くの場合、一様ではないので、種々の孔の長さに等しく適合するように保持要素を設計するための要件も存在する。さらに、種々の孔の直径に対して保持要素が使用可能であることも必要とされる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】米国特許第5,316,245号
【特許文献2】米国特許第4,566,660号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1及び特許文献2は、構造部品をキャリアのアパーチャに締結するための保持要素の2つの変形を開示する。1つの変形は、2つの両側においてスロットにより中断された、交互に離間配置された複数のテーパ状保持用リップが取り付けられた、円錐形の前端部を備えたピンを有する。保持用リップは、弾性的に変形可能であり、保持要素がキャリアの孔内に圧入されると、内側に曲げられる。キャリアの孔の後部上では、保持用リップがその開始位置に跳ね返り、よって、保持要素をキャリアの孔内にしっかりと保持する。この周知の設計においては、小さい挿入力と大きい保持力の競合要件をうまく調整することができない。
【0005】
第2の周知の実施形態において、保持要素は、一端がシャフトの挿入端部に締結され、シャフトの他方の端部の方向に末広がりに延びる、弾力のあるアームをシャフトの両側上に有する。孔に挿入されると、アームは、最初は互いに押し付けられ、その自由端が孔から現われると、それらの開始位置に再び跳ね返る。キャリア部の後部上に支持されることによって、アームは、保持要素を孔内にしっかりと保持する。この実施形態においては、種々の孔の長さへの適合は、限られた範囲内でしか可能でない。さらに、締結位置にある保持要素を孔に対して心出しするために、特別の心出し手段を必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の目的は、小さい挿入力、大きい保持力、優れた心出し性(centerability)、種々の孔の長さ及び孔の直径への適合性といった種々の要件を満たすことができ、製造が簡単で費用がかからない、最初に述べた種類の保持要素を生成することである。
【0007】
この目的は、請求項1に示される特徴を有する保持要素によって達成される。保持要素の有利な改善点が、付加的な請求項に示される。
【0008】
本発明による保持要素は、長手方向軸に沿って延びる中央シャフトと、シャフトの遠端部に締結され、シャフトから横方向に突出する支持部と、その第1の端部がシャフトに弾力的に締結された少なくとも1つのアームとを有する。アームは、シャフトから或る距離にわたって長手方向に対して横断方向に延び、長手方向軸と平行な方向においては、支持部上に支持可能であり、反対の方向においては、シャフトの前端部に締結された案内部上に支持可能である。
【0009】
本発明による保持要素において、周知の設計とは対照的に、アームは、シャフトの長手方向軸と直角に交差する面内で移動可能であり、シャフトの長手方向にしっかりと支持される。このように、小さい挿入力を得ることができるので、非常に容易に半径方向に動かすことができるように、アームを設計することが可能である。挿入の方向に対抗する力がかけられると、アームは案内部上にしっかりと支持されるので、大きい保持力を適合させることができる。
【0010】
本発明の別の提案によると、実質的に弧状に湾曲した外面形状を有する、シャフトから離れる方向に向いた外側上に、少なくとも1つのアームが設けられる。さらに、アームは、案内部の方向に向いた前部上に、湾曲した外面形状に沿って延びる傾斜したランプ面を有する。シャフトの方向に向いた内側上では、シャフトの方向へのアームのばね運動を制限するように、アームに、シャフトに適用できる支持面をさらに設けることができる。支持部の方向に向いた後部上に、アームは、シャフトの長手方向軸に対して垂直に位置合わせされた平坦な裏面を有する。平坦な裏面のために、キャリア部上でアームによって支持される保持力は、アームの移動方向に対してほぼ垂直に働き、その結果、アームを保持位置から押し出すことがある、取り立てて言うほどの力の成分は生じない。
【0011】
本発明の別の提案によると、シャフトは、実質的に矩形プレートの形態を有し、そこでは、少なくとも1つのアームは、どの場合にも、プレートの両側上に配置され、アームの締結端部は、プレートの両縁部に弾力的に締結される。長手方向軸と称される、保持要素のこの回転対称設計は、傾斜に対する支持を確保し、シャフトの両側への二重支持のために、より大きな保持力を得る助けとなる。
【0012】
本発明の付加的な提案によると、複数のアームを、ある距離だけ離してシャフト上に並んで平行配置し、それらが互いに支持可能であるようにすることができる。このように、孔の長さによって、1つのアーム又は他のアームをキャリア部上に支持することができるので、常に保持要素の適切な固定が達成可能である。シャフトが、両側上に並んで平行配置された複数のアームを有する場合、様々な孔の長さに対するさらに正確な適合性を得るために、両側のアームを互いに対称的に配置することができ、或いは、シャフトの長手方向において一方の側のアームを他方の側のアームに対して互い違いに配置することができる。しかしながら、この場合、キャリア部上には、常に1つのアームしか載っていない。
【0013】
シャフトの長手方向へのアームの移動性をできる限り小さく保持するために、本発明の更に別の提案によると、アームは、前部及び/又は後部上に、案内部、支持部、又は第2のアームの隣接面上に支持可能な隆起した停止用カムを有することができる。成形技術の観点から、隆起した停止用カムにより、反対側の面からの距離が特に僅かであることが可能になる。
【0014】
シャフトの前端部に締結された案内部は、その直径がシャフトの方向に増大する切頭円錐形の形態を有することが好ましく、案内部に隣接したアームのランプ面は、アームの弛緩状態において、その内縁部が案内部の最大直径の縁部に隣接するように設計される。挿入時、案内部により、キャリア部の孔内において保持要素が心出しされるので、孔の縁部は、アームのランプ面上に正しく案内される。
【0015】
本発明による保持要素は、シャフトの遠端部において、例えば、ケーブル・ハンガ、ケーブル・ストラップ、配管用ストラップ、保持プレートなどのいずれかの所望の締結要素を用いて結合することができる。さらに、キャリア部の前部と協働する、弾力のある当接要素(abutting element)又は封止要素をシャフトの遠端部上に取り付けることができる。本発明による保持要素は、射出成形プロセスを用いて熱可塑性合成材料から成形するのに特に適している。
【0016】
本発明は、図面に表される例示的な実施形態によって下記に詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明による、保持要素を有するケーブル・ハンガのための締結要素の斜視図を示す。
【図2】図1の締結要素の側面図である。
【図3】図1の締結要素の挿入側の図である。
【図4】図1の締結要素の前面図である。
【図5】図2の線V−Vに沿った保持要素の断面である。
【図6】本発明による、保持要素を有するカバー部のための締結要素である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1乃至図5に示される締結要素1は、ケーブル・ハンガの締結を目的とし、一体の合成材料で作製された細長い支持バー2及び保持要素2を含む。支持バー2は、キャリア部上に支持するための脚部5を両端に有する、長手方向のスロットで分割された端区域4を有する。保持要素3から離れる方向に向いた支持バー2の後部は、ケーブル・ハンガを支持する働きをし、次に、ケーブル・ハンガは、端部分4及びケーブル・ハンガをストラップで巻くことによって支持バー2に締結される。
【0019】
保持要素3は、支持バー2に対して垂直に位置合わせされたプレート状のシャフト7を有し、その遠端部8で支持バー2に締結される。シャフト7の中心面は、実質的に支持バーの長手方向に通っている。
【0020】
シャフト7の遠端部8は、さらに、シャフト7の両側の中心に配置され、シャフト7の中心面に対して横断方向に延びる支持部9により、支持バー2と結合される。支持部9は、支持バー2から離れる方に向いた面上に、シャフト7の中心面に対して実質的に垂直に位置合わせされた支持面10を有する。
【0021】
シャフト7からの距離と共に直径が減少する切頭円錐体の形態を有する案内部12が、シャフト7の前方自由端に締結される。案内部12の最大直径は、シャフト7の幅に対応する。シャフト7の幅は、案内部12の表面に直接隣接し、該案内部12の隣接する端部と同じ曲率を有する、細長い前側部13により制限される。シャフト7の方向に向いた案内部12の前面14は、位置合わせした面であり、シャフト7の中心面に対して垂直である。
【0022】
支持部9と案内部12との間に、同様の設計の3つのアーム16が、どの場合にも、シャフト7の両側上に並んで平行配置されている。アーム16は、シャフト7の長手方向軸に対して横断方向にシャフト7からある距離をおいて延び、どの場合にも、弾性的に撓むことができる横材17によって一端がシャフトに締結されている。横材17は、シャフト7の両側上に配置され、どの場合にも、シャフト7の横縁部において長手方向の前側部13に隣接し、一方の側の横材17は、他方の側の横材17ではなく、別の長手方向の前側部13に隣接する。
【0023】
各々のアーム16は、その前部上に、平坦な前面18と、傾斜し、湾曲したランプ面19とを有し、その後部上に、前面18と平行な平坦な裏面20を有する。保持要素3の中心軸に対して半径方向外方へは、アームは、横材17の外面内に滑らかに変換される凸状に湾曲した縁部面21によって制限される。ランプ面19は、前面18の半径方向外側に配置され、2つ面の間の境界線は、その半径が案内部12の最大半径に対応する円弧を形成する。シャフト7の方向に向いた内側では、シャフト7の方向にアームが動くのを制限するために、アーム16は、シャフト7に適用され得る支持面22を有する。
【0024】
個々のアーム16間、及び案内部12とこれに隣接したアーム16との間、支持部9とこれに隣接したアーム16との間に、どの場合にも、かなり大きい間隙が設けられ、その幅は、成形技術の要件に最適に適合される。しかしながら、間隙のサイズは、シャフト7の長手方向へのアーム16の望ましくない大きな動きをもたらす。これらを回避するために、アーム16の裏面20上に、さらに案内部12に隣接したアーム16の前面18上に、各自の反対側の前面18、又は支持面10、又は前面14から極めて僅かな距離しか有していない隆起した停止用カム23が配置される。このカム23は、成形によって容易に作製することができ、よって、安価な製造が可能である。
【0025】
保持要素3は、円形の孔内に締結するように設計され、孔の直径は、案内部12を孔に容易に挿入できるように、少なくとも十分に大きいものでなければならない。しかしながら、アーム16は、比較的広い半径方向の係合区域を有し、よって、比較的大きい直径の許容差に適合させることができるので、保持要素3の直径への孔の直径の極めて正確な適合は必要とされない。孔の長さに関するばらつきの最大範囲は、横に並んでいるアーム16の数によって決定される。最小限の孔の長さの場合、全てのアーム16が孔を貫通して押し付けられるので、支持部9に隣接したアーム16を、その裏面20によりキャリア部上に支持することができる。最大限の孔の長さの場合、保持要素をロックするために、取り付けの際にキャリア部の後部において、案内部12に隣接したアーム16だけが孔から現われる。他のアームは、孔内にとどまり、保持要素3を半径方向に支持し、心出しするのを助ける。
【0026】
保持要素3の取り付けにおいて、案内部12をキャリア部の孔に挿入した後、最初は孔の縁部が、案内部12に隣接したアーム16のランプ面19と接触する。ランプ面19の傾斜のために、軸方向の挿入力が、半径方向内側に向けられる力の成分を生成し、これにより、横材17の曲げ抵抗が克服され、アーム16がシャフト7の方向に移動される。その結果、アーム16が孔内に摺動し、孔の縁部が次の2つのアームのランプ面19と接触する。この動作は、アーム16が孔内に押し付けられ、支持バー2の脚部5とキャリア部の前部との接触のために、挿入運動が停止するまで続く。キャリア部の後部では、孔の長さに応じて、1列、2列、又は3列のアームが孔を通過し、それらの開始位置に跳ね返る。キャリア部の最も近くにあるアーム16は、今や、それらの裏面20により、保持要素3を孔内にしっかりと保持する。このように、案内部12上に、直接又は間にあるアーム16によって、保持要素3を軸方向に支持することができる。この設計のために、保持要素3は、比較的大きい保持力をキャリア部に伝えることができる。
【0027】
図6は、上述した保持要素3と、カバー部を締結するために設計されたヘッド31とからなる締結要素30を示す。保持要素3の遠端部上に配置されたヘッド31は、弾性的に撓む支持プレート32と、離間配置され、かつ、横材35、36によって互いに結合された2つの保持プレート33、34とを有する。弾性的に撓む支持プレート32は、シャフト7の遠端部8及び支持部9と結合され、キャリア部の前部上に締結要素30を支持するように働く。軸方向に弾性的に撓む支持プレート32が保持要素3と協働するために、キャリア部の厚さの許容差を調整することができるので、キャリア部の後部上に保持要素をロックする、遊びのないアーム16の支持が常に提供される。
【符号の説明】
【0028】
2:支持バー
3:保持要素
7:シャフト
9:支持部
10:支持面
12:案内部
16:アーム
17、35、36:横材
18:アームの前面
19:アームのランプ面
20:アームの裏面
21:アームの縁部面
22:アームの支持面
23:停止用カム
30:締結要素
31:ヘッド
32:支持プレート
33、34:保持プレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
孔内に締結するための保持要素であって、長手方向軸に沿って延びる中心シャフトと、前記シャフトの遠端部に締結され、横方向に突出する支持部と、その第1の端部が該シャフトに弾力的に締結された少なくとも1つのアームとを有し、前記アームは、該シャフトから或る距離にわたって前記長手方向軸に対して横断方向に延び、該長手方向軸と平行な方向においては、前記支持部上に支持可能であり、反対方向においては、該シャフトの前端部に締結された案内部上に支持可能であることを特徴とする保持要素。
【請求項2】
前記少なくとも1つのアームは、前記シャフトから離れる方向に向いた外側上に、実質的に弧状に湾曲した外面形状を有することを特徴とする、請求項1に記載の保持要素。
【請求項3】
前記アームは、前記案内部の方向に向いた前部上に、前記湾曲した外面形状に沿って延びる傾斜したランプ面を有することを特徴とする、請求項1又は請求項2に記載の保持要素。
【請求項4】
前記シャフトの方向に向いた内側上では、前記アームに、該シャフトに適用できる支持面が設けられることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項5】
前記支持部の方向に向いた後部上に、前記アームは、前記シャフトの長手方向軸に対してほぼ垂直に位置合わせされた平坦な裏面を有することを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項6】
前記シャフトは、実質的に矩形のプレートの形態を有し、少なくとも1つのアームは、どの場合にも、前記プレートの両側上に配置されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項7】
前記アームの締結端部は、前記プレートの両縁部に弾力的に締結されることを特徴とする、請求項6に記載の保持要素。
【請求項8】
複数のアームは、前記シャフト上に並んで平行配置され、互いに支持可能であることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項9】
前記アームは、前記前部及び/又は後部上に、前記案内部、前記支持部、又は第2のアームの隣接面上に支持可能な隆起した停止用カムを有することを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項10】
前記案内部は、その直径が前記シャフトの方向に増大する切頭円錐形の形態を有し、前記案内部に隣接した前記アームの前記傾斜したランプ面は、該アームの弛緩状態において、その内縁部が、該案内部の最大直径の縁部に隣接することを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項11】
前記保持要素は、前記シャフトの前記遠端部において、カバー部を締結するための締結要素、特にケーブル・ハンガ、ケーブル・ストラップ、配管用ストラップ、保持プレートを用いて結合されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。
【請求項12】
弾力のある当接要素又は封止要素が、前記シャフトの前記遠端部に配置されることを特徴とする、前記請求項のいずれかに記載の保持要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2009−299894(P2009−299894A)
【公開日】平成21年12月24日(2009.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−135103(P2009−135103)
【出願日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【出願人】(504075577)ニューフレイ リミテッド ライアビリティ カンパニー (117)
【Fターム(参考)】