説明

宇宙機器の同期化システム及びこれに用いる宇宙機器

【課題】Timecodeパケットの伝送に障害が発生した場合でも、主系機器と従系機器の同期を確保し、システムの動作を継続する。
【解決手段】従系機器3は、主系機器2から定期的に出力されるTimecodeパケットをデコードし、第1の同期信号パルスSP及び第1の同期信号データSDを生成するSpaceWireデコーダ5と、Timecodeパケットと同一周期で立ち上がるダミーパルスを生成する基準タイミング信号生成部6と、第1の同期信号パルスSP及びダミーパルスを入力し、第2の同期信号パルスSP’を出力する同期信号パルス補完部12と、第1の同期信号データSD及び同期信号パルス補完部12からの指示信号を入力し、第2の同期信号データSD’を出力する同期信号データ補完部11とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、SpaceWire規格により接続された複数の宇宙機器を同期させる同期化システム及びこれに用いる宇宙機器に関し、特に、主系機器から従系機器へTimecodeパケットを伝送できなかったときに、同期信号を補完するシステム等に関する。
【背景技術】
【0002】
人工衛星等に搭載される複数の宇宙機器を接続する通信規格として、SpaceWire(IEEE-1355ベース)が知られている。このSpaceWireを用いたシステムにおいては、図8に示すように、SpaceWireネットワークを介して、主系機器(例えば、コントローラや中央の演算装置)31と、それ以外の従系機器(例えば、センサや主系機器の指示に従って動作する機器)32−1〜32−n(nは、2以上の整数)とが接続され、主系機器31の制御の下で従系機器32−1〜32−nを動作させる。この際、主系機器31は、時刻を管理する機器としても機能し、常時、主系機器31と従系機器32−1〜32−nを同期させるようにしている。
【0003】
主系機器31と従系機器32−1〜32−nの同期は、同期情報を含むTimecodeパケットを用いて実施される。Timecodeパケットは、主系機器31から定期的に送信されるとともに、複数の従系機器32−1〜32−nに対して同時に配置される。この際、一部又は複数の伝送路に問題が発生し、従系機器32−1〜32−nにTimecodeパケットが届かなくなると、主系機器31との同期がとれなくなり、主従システムの動作が乱れる。
【0004】
このため、上記のシステムでは、何らかの要因でTimecodeパケットの伝送に失敗した場合に、Timecodeパケットの欠損を補って同期を維持するための対策が必要となる。尚、SpaceWireを用いたものではないが、同期信号の欠損を補う技術として、例えば、特許文献1〜5には、時刻情報(同期情報)が欠損したときに、欠損した同期情報を再要求したり、従系機器側にPLLを搭載することで、主系機器との同期を確保する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2003−298630号公報
【特許文献2】特開2009−198245号公報
【特許文献3】特開平9−46325号公報
【特許文献4】特開平9−198158号公報
【特許文献5】特開2009−182659号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前述のように、SpaceWire規格により宇宙機器を接続したシステムでは、常時、主系機器31と従系機器32−1〜32−nとを同期させる必要がある。このため、従系機器32−1〜32−nに対しては、主系機器31からのTimecodeパケットを一時的に受け取れなくなっても主系機器31との同期を維持できることが求められ、具体的には、Timecodeパケットが欠損した際に、その欠損を即座に補完し得ることが必要とされる。
【0007】
その一方で、特許文献1〜5に記載の技術は、何れも、同期情報の欠損によって一旦同期が外れた後、同期情報の再要求やPLLの自走により徐々に同期を回復させるものである。このため、これらの技術をSpaceWireによるシステムに適用すると、Timecodeパケットが欠損した際に、外れた同期を回復することはできても、同期を外さないで維持することまではできず、主従システムの動作の乱れを回避できなくなる。
【0008】
そこで、本発明は、上記従来の技術における問題点に鑑みてなされたものであって、Timecodeパケットの伝送に障害が発生した場合でも、主系機器と従系機器が同期した状態を維持し、主従システムの動作を継続することが可能な宇宙機器の同期化システム等を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、主系機器と複数の従系機器とをSpaceWire規格により接続し、該主系機器に同期して該複数の従系機器を動作させる宇宙機器の同期化システムであって、前記従系機器は、前記主系機器から定期的に出力されるTimecodeパケットをデコードし、第1の同期信号パルス及び第1の同期信号データを生成するSpaceWireデコーダと、前記Timecodeパケットと同一周期で立ち上がるダミーパルスを生成する基準タイミング信号生成部と、前記第1の同期信号パルス及び前記ダミーパルスを入力し、第2の同期信号パルスを出力する同期信号パルス補完部と、前記第1の同期信号データ及び前記同期信号パルス補完部からの指示信号を入力し、第2の同期信号データを出力する同期信号データ補完部とを備え、前記同期信号パルス補完部は、前記第1の同期信号パルスを受信する前に前記ダミーパルスが立ち上がったときに、該ダミーパルスを用いて同期信号パルスを補完し、該補完した同期信号パルスを前記第2の同期信号パルスとして出力するとともに、前記同期信号データ補完部に対し、直前に受信した前記第1の同期信号データの値をインクリメントするように指示し、該インクリメント後の同期信号データを前記第2の同期信号データとして出力させることを特徴とする。
【0010】
そして、本発明によれば、Timecodeパケットの送信周期と同一の周期で立ち上がるダミーパルスを従系機器の内部で生成するとともに、同期信号パルス補完部において、第1の同期信号パルスの受信に先行してダミーパルスが立ち上がったときに、ダミーパルスを用いて第2の同期信号パルスを生成するように構成したため、Timecoedパケットの伝送障害時に即座に同期信号パルスを補完することができ、主系機器と従系機器が同期した状態を維持しながら補完処理を行うことが可能になる。また、ダミーパルスを用いて第2の同期信号パルスを生成する場合には、同期信号データ補完部が直前に受信した第1の同期信号データをインクリメントさせ、従系機器が自発的に同期信号データの値を進めるように構成したため、同期信号パルスの補完と同時に同期信号データを補完することもできる。
【0011】
上記宇宙機器の同期化システムにおいて、前記同期信号パルス補完部が、前記補完した同期信号パルスを前記第2の同期信号パルスとして出力した後に、前記SpaceWireデコーダから前記第1の同期信号パルスを受信したときに、前記SpaceWireデコーダから出力される前記第1の同期信号データの値と、前記同期信号データ補完部から出力される前記第2の同期信号データの値とを比較し、両者が一致する場合には、前記SpaceWireデコーダからの前記第1の同期信号パルスを無視することができる。これによれば、第2の同期信号パルスが短期間で2回立ち上がり、システムが誤作動するのを防止することが可能になる。
【0012】
上記宇宙機器の同期化システムにおいて、前記ダミーパルスの立ち上がり周期を設定する周期設定レジスタを備え、該ダミーパルスの立ち上がり周期を伸縮自在に構成することができる。これによれば、主系機器側でTimecodeパケットの送信周期を変更した場合でも柔軟に対応することが可能になる。
【0013】
また、本発明は、SpaceWire規格により主系機器と接続され、該主系機器に同期して動作する宇宙機器であって、前記主系機器から定期的に出力されるTimecodeパケットをデコードし、第1の同期信号パルス及び第1の同期信号データを生成するSpaceWireデコーダと、前記Timecodeパケットと同一周期で立ち上がるダミーパルスを生成する基準タイミング信号生成部と、前記第1の同期信号パルス及び前記ダミーパルスを入力し、第2の同期信号パルスを出力する同期信号パルス補完部と、前記第1の同期信号データ及び前記同期信号パルス補完部からの指示信号を入力し、第2の同期信号データを出力する同期信号データ補完部とを備え、前記同期信号パルス補完部は、前記第1の同期信号パルスを受信する前に前記ダミーパルスが立ち上がったときに、該ダミーパルスを用いて同期信号パルスを補完し、該補完した同期信号パルスを前記第2の同期信号パルスとして出力するとともに、前記同期信号データ補完部に対し、直前に受信した前記第1の同期信号データの値をインクリメントするように指示し、該インクリメント後の同期信号データを前記第2の同期信号データとして出力させることを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
以上のように、本発明によれば、Timecodeパケットの伝送に障害が発生した場合でも、主系機器と従系機器が同期した状態を維持し、主従システムの動作を継続することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明にかかる宇宙機器の同期化システムの第1の実施形態を示す構成図である。
【図2】Timecodeパケットの構成を示す図である。
【図3】同期信号データ及びパルスの補完処理の手順を示すフローチャートである。
【図4】補完処理の実行後に自走モードからSyncモードに復帰する際の手順を示すフローチャートである。
【図5】図1の補完回路の動作を時系列的に示すタイミング図である。
【図6】図1の補完回路の動作遷移を示す図である
【図7】本発明にかかる宇宙機器の同期化システムの第2の実施形態を示す構成図である。
【図8】SpaceWireネットワークを用いた従来の宇宙機器システムを示す構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、発明を実施するための形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0017】
図1は、本発明にかかる宇宙機器の同期化システムの第1の実施形態を示し、この同期化システム1は、大別して、主系機器(例えば、コントローラや中央の演算装置)2と、SpaceWireネットワーク4を介して、主系機器2と接続された従系機器(例えば、主系機器2に検出値を送信するセンサや、主系機器2の指示に従って動作する機器)3とから構成される。尚、図1においては、従系機器3を1つのみ図示しているが、実際には、複数の従系機器3が設置される。
【0018】
主系機器2は、同期化システム1内で時刻を管理する機器として機能し、高精度の発振器(不図示)を搭載する。この主系機器2は、従系機器3を主系機器2に同期させるための信号としてTimecodeパケットを配信する。
【0019】
図2に示すように、Timecodeパケットは、6ビットの同期信号データを含む14ビットの符号列から構成される。同期信号データには、「0」〜「63」の数値が順に設定され、同期信号データの値は、Timecodeパケットが送信される都度、1ずつインクリメントされる。このため、例えば、値「0」の同期信号データを含むTimecodeパケットの次には、値「1」の同期信号データを含むTimecodeパケットが送信される。Timecodeパケットは、1/64s周期(周波数:64Hz)で定期的に送信される。
【0020】
図1に戻り、従系機器3は、主系機器2によって制御される機器であり、主系機器2に同期して動作する。従系機器3には、Timecodeパケットから同期信号データSDを取り出すとともに、Timecodeパケットの受信に応じて立ち上がる同期信号パルスSPを生成するSpaceWireデコーダ5と、ダミーパルス(Dummy pulse)を出力する基準タイミング信号生成部6と、Timecodeパケットが伝送されなかったときに、同期信号データ及び同期信号パルスを補完する補完回路7と、補完回路7から出力される同期信号データSD’及び同期信号パルスSP’を受けて所定の処理を実行する処理回路8等が設けられる。
【0021】
尚、本明細書においては、SpaceWireデコーダ5から出力される同期信号データSDと、補完回路7から出力される同期信号データSD’とを区別するため、前者を「第1の同期信号データSD」と称し、後者を「第2の同期信号データSD’」と称する。同様に、SpaceWireデコーダ5から出力される同期信号パルスSPを「第1の同期信号パルスSP」と称し、補完回路7から出力される同期信号パルスSP’を「第2の同期信号パルスSP’」と称する。
【0022】
基準タイミング信号生成部6は、発振器6aと、発振器6aからのクロックをカウントし、経過時間を計測するカウンタ6bとを含む。カウンタ6bのカウント最大値(タイムアップ時間)は、Timecodeパケットの送信周期(1/64s)に合わせて予め設定され、基準タイミング信号生成部6では、カウンタ6bのカウント値が最大値(タイムアップ値)に達するのに応じてダミーパルスを立ち上げる。このため、ダミーパルスは、Timecodeパケットの送信周期と同一の周期で立ち上がる信号となる。尚、発振器6aは、必ずしも主系機器2に搭載の発振器と同一のものである必要はなく、カウンタ6bで1/64sを計時するのに必要なクロックを生成し得るものであれば足りる。
【0023】
補完回路7は、同期信号データを補完する同期信号データ補完部11と、同期信号パルスを補完する同期信号パルス補完部12とを備える。
【0024】
同期信号データ補完部11は、SpaceWireデコーダ5からの第1の同期信号データSDをData1端子に入力するとともに、受信した第1の同期信号データSD又は自身が補完した補完同期信号データの何れかを、第2の同期信号データSD’としてData2端子から出力する。
【0025】
同期信号パルス補完部12は、SpaceWireデコーダ5からの第1の同期信号パルスSP及び基準タイミング信号生成部6からのダミーパルスを入力し、これらの何れかを第2の同期信号パルスSP’として出力する。
【0026】
同期信号パルス補完部12では、ダミーパルスよりも先に第1の同期信号パルスSPを受信したときに、第1の同期信号パルスSPを第2の同期信号パルスSP’として出力する。また、同期信号データ補完部11に対し、第1の同期信号データSDを保持して第2の同期信号データSD’として用いるように指示する(Load)。さらに、基準タイミング信号生成部6にリセット信号を出力し、カウンタ6bをリセットする(CNT Rst)。
【0027】
一方、第1の同期信号パルスSPよりも先にダミーパルスを受信した場合には、ダミーパルスを第2の同期信号パルスSP’として出力する。また、同期信号データ補完部11に対し、同期信号データ補完部11に保持された同期信号データの値を1だけインクリメントし、それを第2の同期信号データSD’として用いるように指示する(Inc)。
【0028】
次に、上記同期化システム1における従系機器3の動作について、図1〜図6を参照しながら説明する。
【0029】
ここで、図3は、同期信号データ及びパルスの補完処理の手順を示すフローチャートであり、図4は、補完処理の実行後に自走モード(補完あり)からSyncモード(補完なし)に復帰する際の手順を示すフローチャートである。また、図5は、補完回路7の動作を時系列的に示すタイミング図であり、図6は、補完回路7の動作遷移を示す図である。尚、図5の「N0」〜「N5」は、同期信号データの値を示すものである。
【0030】
先ず、同期信号データ及びパルスの補完処理について、図3及び図5を中心に参照しながら説明する。
【0031】
同期信号データ等の補完にあたっては、先ず、同期信号パルス補完部12から基準タイミング信号生成部6にリセット信号を出力し、カウンタ6bをリセットする(図3のステップS1)。この処理は、基準タイミング信号生成部6で生成されるダミーパルスの立ち上がりタイミングを、SpaceWireデコーダ5で生成される第1の同期信号パルスSPの立ち上がりタイミングに揃えるためのものであり、第1の同期信号パルスSPが同期信号パルス補完部12に入力されるのに応じて行われる。
【0032】
その後、主系機器2から従系機器3にTimecodeパケットが正しく伝送され、同期信号パルス補完部12において、ダミーパルスが立ち上がる前(カウンタ6bがタイムアップする前)に第1の同期信号パルスSPを受信した場合(図3のステップ2のYES:図5(a)、(b)のタイミングt1、t2)には、カウンタ6bをリセットし(図3のステップ3:図5(a)、(b)の「CNT Rst」)、ダミーパルスが立ち上がらないようにする。
【0033】
また、同期信号パルス補完部12から同期信号データ補完部11に対し、第1の同期信号データSDを第2の同期信号データSD’として使用するように指示し(図3のステップS4:図5(a)、(b)の「Load」、「第1の同期信号データ」及び「第2の同期信号データ」)、SpaceWireデコーダ5から受信した同期信号データを処理回路8へ出力させる。同時に、同期信号パルス補完部12において、第1の同期信号パルスSPを第2の同期信号パルスSP’として使用し(図3のステップS5:図5の「第1の同期信号パルス」及び「第2の同期信号パルス」)、これを処理回路8に出力する。
【0034】
これに対し、主系機器2から従系機器3にTimecodeパケットが正しく伝送されず、同期信号パルス補完部12において、第1の同期信号パルスSPを受信する前にダミーパルスが立ち上がった(カウンタ6bがタイムアップした)場合(図3のステップS2のNO:図5(a)、(b)のタイミングt3)には、同期信号データ補完部11に対し、同期信号データ補完部11が保持する同期信号データの値をインクリメントするように指示し、同期信号データを補完させる(図3のステップS6:図5(a)、(b)の「Inc」、「第1の同期信号データ」及び「第2の同期信号データ」)。同期信号データ補完部11では、インクリメントした同期信号データを第2の同期信号データSD’として処理回路8へ出力する。
【0035】
また、同期信号パルス補完部12において、ダミーパルスを第2の同期信号パルスSP’として使用し、同期信号パルスを補完する(図3のステップS7:図5(a)、(b)の「Dummy pulse」及び「第2の同期信号パルス」)。
【0036】
次に、自走モードからSyncモードへの復帰処理について、図4及び図5を中心に参照しながら説明する。
【0037】
自走モードからSyncモードへの復帰にあたっては、同期信号パルス補完部12において、ダミーパルスが立ち上がった後の第1の同期信号パルスSPを受信するのに応じ、カウンタ6bをリセットする(図4のステップS11、S12:図5(a)のタイミングt4、図5(b)のタイミングt4”)。
【0038】
次いで、同期信号パルス補完部12において、SpaceWireデコーダ5から出力される第1の同期信号データSD(Data1)の値と、同期信号データ補完部11から出力される第2の同期信号データSD’(Data2)の値とを比較し、両者が一致するか否かを判定する(図4のステップS13)。
【0039】
この際、図5(a)に示すように、第1及び第2の同期信号データSD、SD’の値が一致しない場合(図4のステップS13のNO:図5(a)のタイミングt4における「第1の同期信号データ」及び「第2の同期信号データ」)には、同期信号データ補完部11に対し、第1の同期信号データSDを第2の同期信号データSD’として使用するように指示する(図4のステップS14:図5(a)のタイミングt4における「Load」)。また、同期信号パルス補完部12において、SpaceWireデコーダ5から受信した第1の同期信号パルスSPを第2の同期信号パルスSP’として使用する(図4のステップS15:図5(a)のタイミングt4における「第1の同期信号パルス」及び「第2の同期信号パルス」)。
【0040】
これに対し、図5(b)に示すように、第1及び第2の同期信号データSD、SD’の値が一致する場合(図4のステップS13のYES:図5(b)のタイミングt4”における「第1の同期信号データ」及び「第2の同期信号データ」)には、SpaceWireデコーダ5から受信した第1の同期信号パルスSPを無視する(図4のステップS16:図5(b)のタイミングt4”における「第1の同期信号パルス」及び「第2の同期信号パルス」)。その後、次の第1の同期信号データSDが入力された時点(図5(b)のタイミングt5)で、第2の同期信号データSD’及び同期信号パルスSP’を出力する(図3のステップS2〜S5)。
【0041】
尚、第1の同期信号パルスSPの入力に同期して第1及び第2の同期信号データSD、SD’の値を比較し、両者が一致した場合に、受信した第1の同期信号パルスSPを無視するように動作させるのは、第2の同期信号パルスSP’が短期間で2回立ち上がり、処理回路8の誤作動を招くのを回避するためである。
【0042】
すなわち、従系機器3の発振器6aの個体差や、発振器6aと主系機器2の発振器との精度差等が要因で、ダミーパルスの周期(図5(b)のT)がTimecodeパケットの送信周期よりも短くなることがあり、この場合、Timecodeパケットが正しく伝送されているにも拘わらず、第1の同期信号パルスSPよりも先にダミーパルスが立ち上がり、ダミーパルスによって第2の同期信号パルスSP’が補完されることになる(図5(b)のタイミングt4’)。この際、ダミーパルスから僅かに遅れて受信した第1の同期信号パルスSP(図5(b)のタイミングt”4)に応答して第2の同期信号パルスSP’を出力してしまうと、結果的に、第2の同期信号パルスSP’が2回立ち上がることになるため、これを避けるべく、先に受信した側のパルスを優先使用し、遅れた側のパルスを無視するようにしている。
【0043】
以上のように、本実施の形態によれば、Timecodeパケットの送信周期と同一の周期で立ち上がるダミーパルスを従系機器3の内部で生成するとともに、第1の同期信号パルスSPの受信に先行してダミーパルスが立ち上がったときに、ダミーパルスを用いて第2の同期信号パルスSP’を生成するように構成したため、Timecoedパケットの伝送障害時に即座に同期信号パルスを補完することができ、主系機器2と従系機器3が同期した状態を維持しながら補完処理を行うことが可能になる。
【0044】
また、ダミーパルスを用いて第2の同期信号パルスSP’を生成する場合には、同期信号データ補完部11が保持する第1の同期信号データSDをインクリメントさせ、従系機器3が自発的に同期信号データの値を進めるように構成したため、同期信号パルスの補完と同時に同期信号データを補完することもできる。
【0045】
次に、本発明にかかる宇宙機器の同期化システムの第2の実施形態について、図7を参照しながら説明する。尚、図7において、図1と同一の構成要素については、同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0046】
本実施形態にかかる同期化システム20においては、基準タイミング信号生成部6の前段に、ダミーパルスの立ち上がり周期を設定する周期設定レジスタ21を備える。この周期設定レジスタ21は、カウンタ6bのカウント最大値(タイムアップ時間)を設定するためのものであり、周期設定データの値を変更することで、ダミーパルスの立ち上がり周期を伸縮することができる。
【0047】
本実施の形態によれば、ダミーパルスの立ち上がり周期を自由に変えることができ、主系機器2側でTimecodeパケットの送信周期を変更した場合でも柔軟に対応することが可能になる。
【符号の説明】
【0048】
1 宇宙機器の同期化システム
2 主系機器
3 従系機器
4 SpaceWireネットワーク
5 SpaceWireデコーダ
6 基準タイミング信号生成部
6a 発振器
6b カウンタ
7 補完回路
8 処理回路
11 同期信号データ補完部
12 同期信号パルス補完部
20 宇宙機器の同期化システム
21 周期設定レジスタ
SD 第1の同期信号データ
SD’ 第2の同期信号データ
SP 第1の同期信号パルス
SP’ 第2の同期信号パルス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主系機器と複数の従系機器とをSpaceWire規格により接続し、該主系機器に同期して該複数の従系機器を動作させる宇宙機器の同期化システムであって、
前記従系機器は、
前記主系機器から定期的に出力されるTimecodeパケットをデコードし、第1の同期信号パルス及び第1の同期信号データを生成するSpaceWireデコーダと、
前記Timecodeパケットと同一周期で立ち上がるダミーパルスを生成する基準タイミング信号生成部と、
前記第1の同期信号パルス及び前記ダミーパルスを入力し、第2の同期信号パルスを出力する同期信号パルス補完部と、
前記第1の同期信号データ及び前記同期信号パルス補完部からの指示信号を入力し、第2の同期信号データを出力する同期信号データ補完部とを備え、
前記同期信号パルス補完部は、前記第1の同期信号パルスを受信する前に前記ダミーパルスが立ち上がったときに、該ダミーパルスを用いて同期信号パルスを補完し、該補完した同期信号パルスを前記第2の同期信号パルスとして出力するとともに、前記同期信号データ補完部に対し、直前に受信した前記第1の同期信号データの値をインクリメントするように指示し、該インクリメント後の同期信号データを前記第2の同期信号データとして出力させることを特徴とする宇宙機器の同期化システム。
【請求項2】
前記同期信号パルス補完部は、前記補完した同期信号パルスを前記第2の同期信号パルスとして出力した後に、前記SpaceWireデコーダから前記第1の同期信号パルスを受信したときに、前記SpaceWireデコーダから出力される前記第1の同期信号データの値と、前記同期信号データ補完部から出力される前記第2の同期信号データの値とを比較し、両者が一致する場合には、前記SpaceWireデコーダからの前記第1の同期信号パルスを無視することを特徴とする請求項1に記載の宇宙機器の同期化システム。
【請求項3】
前記ダミーパルスの立ち上がり周期を設定する周期設定レジスタを備え、該ダミーパルスの立ち上がり周期を伸縮自在に構成したことを特徴とする請求項1又は2に記載の宇宙機器の同期化システム。
【請求項4】
SpaceWire規格により主系機器と接続され、該主系機器に同期して動作する宇宙機器であって、
前記主系機器から定期的に出力されるTimecodeパケットをデコードし、第1の同期信号パルス及び第1の同期信号データを生成するSpaceWireデコーダと、
前記Timecodeパケットと同一周期で立ち上がるダミーパルスを生成する基準タイミング信号生成部と、
前記第1の同期信号パルス及び前記ダミーパルスを入力し、第2の同期信号パルスを出力する同期信号パルス補完部と、
前記第1の同期信号データ及び前記同期信号パルス補完部からの指示信号を入力し、第2の同期信号データを出力する同期信号データ補完部とを備え、
前記同期信号パルス補完部は、前記第1の同期信号パルスを受信する前に前記ダミーパルスが立ち上がったときに、該ダミーパルスを用いて同期信号パルスを補完し、該補完した同期信号パルスを前記第2の同期信号パルスとして出力するとともに、前記同期信号データ補完部に対し、直前に受信した前記第1の同期信号データの値をインクリメントするように指示し、該インクリメント後の同期信号データを前記第2の同期信号データとして出力させることを特徴とする宇宙機器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−39349(P2012−39349A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−177112(P2010−177112)
【出願日】平成22年8月6日(2010.8.6)
【出願人】(303013763)NECエンジニアリング株式会社 (651)
【出願人】(301072650)NEC東芝スペースシステム株式会社 (62)
【Fターム(参考)】