説明

宇宙飛翔体用ターゲット

【課題】地球の夜間領域の日陰時でも、照明を行うことなく、ドッキング作業が可能となる宇宙飛翔体用ターゲットを提供する。
【解決手段】ターゲット板11と、所定数の発光素子(発光ダイオード12)とを有し、各発光素子は、ターゲット板11の略中心を交点として互いに直交する第1の直線及び第2の直線上に等間隔で配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、宇宙飛翔体用ターゲット係り、たとえば、飛行している宇宙船などの宇宙飛翔体に他の宇宙飛翔体がドッキングする場合に用いて好適な宇宙飛翔体用ターゲットに関する。
【背景技術】
【0002】
宇宙空間において、飛行している宇宙船などの宇宙飛翔体に他の宇宙飛翔体がドッキングする場合、飛行している宇宙飛翔体に設けられている位置検出用のターゲット(target、標的)に対して、他の宇宙飛翔体に設けられているターゲット確認用カメラにより撮像して位置の検出をしながらドッキング作業が行われる。しかしながら、ターゲットは発光しないので、地球の夜間領域の日陰時では、カメラによる撮像が不可能になるため、作業を進められなくなるか、又は、作業を進める場合には、同ターゲットに対する照明が必要となるという問題点がある。このため、地球の夜間領域の日陰時でも、照明を行うことなく、ドッキング作業が可能となるターゲットが要求されている。
【0003】
この種の関連技術としては、たとえば、特許文献1に記載された宇宙構造体の相対位置・姿勢検出装置がある。
この検出装置では、被検出部は、光源を4個以上有し、同光源は、被検出用の第1の宇宙構造体の外周面に設けられ、交点を中心として略直角に延出される第1及び第2の直線上に異なった間隔で配列されている。撮像手段は、この被検出部に対応して検出用の第2の宇宙構造体に設けられ、上記光源を撮像する。演算手段により、この撮像手段で撮像された光源像の間隔比が検出されて直交する2直線の単位方向ベクトルが求められ、上記第1の宇宙構造体との相対位置及び相対姿勢が算出される。また、被検出部では、第1及び第2の直線上に配列された複数の光源と共に、同第1及び第2の直線の交点から延出される第3の直線上に所定の間隔を有して複数の光源が配列されている。また、被検出部では、上記第2の宇宙構造体の撮像手段に対向される四角錐形状の稜線上に、それぞれ複数の光源が異なった間隔で立体的に配列されている。
【0004】
また、特許文献2に記載されたドッキングシステムは、自走式ロボットと、同自走式ロボットとドッキングするステーションとを備えている。ステーションでは、発光部が、円弧状に配置された発光素子から発生される光の軸が円弧の曲率中心を通るように構成され、また、ドッキングするための第1の接続端子が設けられている。自走式ロボットでは、本体部が、円弧と同じ曲率半径の円弧部を有し、移動機構が、この本体部を移動させる。第1制御部により、上記ステーションの位置と地図情報とに基づいて移動経路が生成されて同ステーションの近傍領域まで自走するように制御される。受光部により、発光部からの光信号が受光され、方向検出部により、光信号の方向が検出される。第2制御部により、方向検出部によって検出された方向に本体部を移動させるように制御され、第2接続端子により、ステーションの第1の接続端子とドッキングする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平02−098624号公報
【特許文献2】特開2007−272301号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記関連技術では、次のような課題があった。
すなわち、特許文献1に記載された検出装置では、高精度で迅速に宇宙構造体の相対位置及び姿勢が検出されるが、たとえば光源が異なった間隔で配列されているなど、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0007】
特許文献2に記載されたドッキングシステムでは、あらかじめ軌道やステーション以外の構造物を利用せずに、自走式ロボットとステーションとがドッキングされるが、発光素子が円弧状に配置されているなど、この発明とは構成や処理方法が異なる。
【0008】
この発明は、上述の事情に鑑みてなされたもので、地球の夜間領域の日陰時でも、照明を行うことなく、ドッキング作業が可能となる宇宙飛翔体用ターゲットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、この発明の第1の構成は、撮像手段を有する第1の宇宙飛翔体が第2の宇宙飛翔体にドッキングする場合のターゲットとして用いられ、該第2の宇宙飛翔体に設けられて前記撮像手段により撮像される宇宙飛翔体用ターゲットに係り、所定形状のターゲット板と、所定数の発光素子とを有し、前記発光素子は、前記ターゲット板の略中心を交点として互いに直交する第1の直線及び第2の直線上に等間隔で配置されていることを特徴としている。
【発明の効果】
【0010】
この発明の構成によれば、地球の夜間領域の日陰時でも、照明を行うことなく、ドッキング作業が可能となり、日陰時の運用が可能となる宇宙飛翔体用ターゲットを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】この発明の一実施形態である宇宙飛翔体用ターゲットの要部の構成を示す図である。
【図2】図1の宇宙飛翔体用ターゲット10の内部の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
上記発光素子は、上記第1の直線と第2の直線との交点、及び同交点に隣接して囲む円周上に配置され、かつ、上記交点の発光素子(発光ダイオード)は、上記円周上の発光素子(発光ダイオード)よりも所定距離低い位置に配置されている宇宙飛翔体用ターゲットを実現する。
【0013】
上記交点の発光素子(発光ダイオード)は、上記第1の宇宙飛翔体の上記撮像手段が当該宇宙飛翔体用ターゲットに正対する場合に撮像可能な位置に配置されている。また、上記円周上の発光素子(発光ダイオード)は、上記交点の発光素子(発光ダイオード)を囲むように上記円周上に配置される筒状の支持台上に配置されている。
【実施形態】
【0014】
図1は、この発明の一実施形態である宇宙飛翔体用ターゲットの要部の構成を示す図であり、同図(a)は正面図、及び同図(b)が図(a)のA方向矢視図である。
この形態の宇宙飛翔体用ターゲット10は、撮像手段(たとえば、ターゲット確認用カメラ)を有する第1の宇宙飛翔体が宇宙空間で第2の宇宙飛翔体にドッキングする場合のターゲットとして用いられ、同第2の宇宙飛翔体に設けられて上記撮像手段により撮像されるものであり、同図(a)に示すように、所定形状のターゲット板11と、所定数の発光ダイオード12(12,12r,12c)とを有している。発光ダイオード12は、ターゲット板11の略中心を交点として互いに直交する第1の直線及び第2の直線上に等間隔で配置されている。
【0015】
特に、この実施形態では、発光ダイオード12(12,12r,12c)のうち、発光ダイオード12rが上記第1の直線と第2の直線との交点、及び、発光ダイオード12cが同交点に隣接して囲む円周上に配置され、かつ、同発光ダイオード12rが、同発光ダイオード12cよりも所定距離低い位置に配置されている。この場合、円周上の発光ダイオード12cは、図1(b)に示すように、上記交点の発光ダイオード12rを囲むように同円周上に配置される筒状の支持台13上に配置されている。交点の発光ダイオード12rは、第1の宇宙飛翔体の撮像手段が宇宙飛翔体用ターゲット10に正対する場合にのみ撮像可能な位置、たとえば支持台13の底部に配置されている。
【0016】
図2は、図1の宇宙飛翔体用ターゲット10の内部の電気的構成を示すブロック図である。
この宇宙飛翔体用ターゲット10は、図2に示すように、発光ダイオード用電源14と、ハーネス15と、発光ダイオード12(12,12r,12c)とを備えている。発光ダイオード用電源14は、ハーネス15を経て、発光ダイオード12(12,12r,12c)に電力を供給して点灯させる。
【0017】
この宇宙飛翔体用ターゲット10では、ターゲット板11上に配置された発光ダイオード12(12,12r,12c)が、発光ダイオード用電源14からハーネス15を介して電力が供給されて発光する。そして、ターゲット確認用カメラ(撮像手段)を有する第1の宇宙飛翔体が宇宙空間で第2の宇宙飛翔体にドッキングする場合、宇宙飛翔体用ターゲット10が同第2の宇宙飛翔体に設けられてターゲット確認用カメラにより撮像され、位置の検出をしながらドッキング作業が行われる。
【0018】
以上のように、この実施形態では、発光ダイオード12(12,12r,12c)が発光するので、地球の夜間領域の日陰時でも、照明を行うことなく、ドッキング作業が可能となり、日陰時の運用が可能になる。また、交点の発光ダイオード12rは、ターゲット確認用カメラが宇宙飛翔体用ターゲット10に正対する場合に確認されるため、正対の状態になったときの確認が容易に行われる。また、直交する第1の直線及び第2の直線上に等間隔で配置されている発光ダイオード12は、ターゲット確認用カメラが正対位置から外れた場合のずれの確認の補助となる。たとえば、同カメラが宇宙飛翔体用ターゲット10の斜め左方向にある場合、着目点が同ターゲットの右端方向に進むにつれて、各発光ダイオード12の間隔が狭く見える。
【0019】
以上、この発明の実施形態を図面により詳述してきたが、具体的な構成は同実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更などがあっても、この発明に含まれる。
たとえば、ターゲット板11の形状は、図1に限定されない。また、発光ダイオード12(12,12r,12c)に電力を供給する電源は、発光ダイオード用電源14の他、第2の宇宙飛翔体にヒータ用電源などが設けられていれば、それを用いても良い。また、撮像手段は、ターゲット確認用カメラに限定されず、たとえば、光センサでも、上記実施形態に準じた作用、効果が得られる。この場合、交点の発光ダイオード12rの色を他の発光ダイオード12の色と異なるもので構成しても良い。
【産業上の利用可能性】
【0020】
この発明は、宇宙飛翔体が宇宙空間で他の宇宙飛翔体にドッキングする場合のターゲットとして用いる場合に有効であるが、たとえばロボットのドッキングなど、他のドッキングにも適用でき、この発明に準じた効果が得られる。
【符号の説明】
【0021】
10 宇宙飛翔体用ターゲット
11 ターゲット板
12 発光ダイオード(発光素子)
12r 発光ダイオード(交点の発光素子)
12c 発光ダイオード(円周上の発光素子)
13 支持台

【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像手段を有する第1の宇宙飛翔体が第2の宇宙飛翔体にドッキングする場合のターゲットとして用いられ、該第2の宇宙飛翔体に設けられて前記撮像手段により撮像される宇宙飛翔体用ターゲットであって、
所定形状のターゲット板と、
所定数の発光素子とを有し、
前記発光素子は、
前記ターゲット板の略中心を交点として互いに直交する第1の直線及び第2の直線上に等間隔で配置されていることを特徴とする宇宙飛翔体用ターゲット。
【請求項2】
前記発光素子は、
前記第1の直線と第2の直線との交点、及び該交点に隣接して囲む円周上に配置され、かつ、前記交点の発光素子は、前記円周上の発光素子よりも所定距離低い位置に配置されていることを特徴とする請求項1記載の宇宙飛翔体用ターゲット。
【請求項3】
前記交点の発光素子は、
前記第1の宇宙飛翔体の前記撮像手段が当該宇宙飛翔体用ターゲットに正対する場合に撮像可能な位置に配置されていることを特徴とする請求項2記載の宇宙飛翔体用ターゲット。
【請求項4】
前記円周上の発光素子は、
前記交点の発光素子を囲むように前記円周上に配置される筒状の支持台上に配置されていることを特徴とする請求項2又は3記載の宇宙飛翔体用ターゲット。
【請求項5】
前記発光素子は、
発光ダイオードで構成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の宇宙飛翔体用ターゲット。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−183907(P2011−183907A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49925(P2010−49925)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】