説明

安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置

【課題】保守点検後に医用診断装置が安全正常に稼働するように、遠隔操作による保守点検作業中に医用診断装置が誤って操作されて医用診断装置が搭載するデータに不備が生じることを防止することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供する。
【解決手段】遠隔操作によって医用診断装置3の保守点検を行う保守端末4からの保守点検に関する保守情報を受信する要求処理手段2aと、要求処理手段2aが受信した保守情報に基づいて保守点検対象となる医用診断装置3の現状を確認し記憶する使用状況確認手段2bと、使用状況確認手段2bからの使用状況情報に基づいて医用診断装置3の現状に合わせて操作者の誤操作防止の処理を行う誤操作防止処理手段2cとを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、遠隔操作によって医用診断装置の保守点検を行うにあたって、保守点検作業が正常に行われ医用診断装置の使用が安全に行われるようその安全の確保支援を行う安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、医療機関にある医用診断装置に対して、インターネット等ネットワークを介して遠隔からその医用装置の操作指導を行ったり、或いは、医用装置の保守点検を行うシステムとして、例えば、以下の特許文献1に開示されるような発明が知られている。
【0003】
この特許文献1においては、医用装置から離れている場所から、その医用装置の操作者に操作方法を指導する場合に、操作者が選択した複数の指導モードに基づいて指導を行うことで操作方法をより正確に、かつ、効率よく伝えることができるとされる。
【0004】
また、医用診断装置の保守センタが医療機関から例えば、医療情報システム内の情報(データ)の修正や回復等の保守点検の依頼を受ける場合がある。このような保守点検を遠隔操作により行う際には、原則として保守点検の対象となる医用診断装置を止めた状態で行う。そのため、通常は保守点検を行う前に保守センタ内の端末から医療機関に保守点検を行う旨の連絡を入れて作業予定を調整するとともに、保守点検中に医用診断装置を操作しないで欲しい旨、医療機関に依頼を行い、その後に保守点検を開始するという運用を行っている。
【特許文献1】特開2002−306451号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1においては、指導する操作内容が指導者からその指導を受ける操作者に正確に伝わらないことに起因する操作上のトラブルをなくすことを主眼に置いている。そのため、指導者と操作者が互いに遠隔にいてやり取りを行うが、例えば、指導する操作内容が正しくても誤って伝わり、その誤った内容に基づいて医用診断装置が操作された場合の医用診断装置及び、その医用診断装置を使用して診断を受ける患者等の安全確保については考慮されていない。
【0006】
また、遠隔操作により医療情報システム内のデータの修正や回復等の保守点検を行う場合には、上述のように保守点検予定を予め医療機関に報知してはいるが、例えば、保守点検予定が連絡を受けた者から他の者に連絡がされていなかった等、何らかの理由により操作者が医用診断装置を動かしてしまう、或いは、医用診断装置をシャットダウンしてしまう等の操作が行われてしまうことが考えられる。
【0007】
特にネットワークによるデータ送受信時にこれらの行為が行われデータの改変や喪失等の不備が生じると、正しいデータが医用診断装置に与えられず、ひいては患者の取り違いや診療情報の損失等、医療事故の原因となり得る。例えば、CT(computed tomography:コンピュータ断層撮影)装置における放射線の曝射量の点検を行っている際にCT装置が操作されてしまうと、実際に保守センタから送信された曝射量に関するデータに規定された曝射量に設定されているか否かがわからなくなってしまうことも考えられる。これでは、保守点検の作業を行ったとしても医用診断装置を安全に使用することはできない。
【0008】
本発明は上記課題を解決するためになされたものであり、本発明の目的は、保守点検後に医用診断装置が安全正常に稼働するように、遠隔操作による保守点検作業中に医用診断装置が誤って操作されて医用診断装置が搭載するデータに不備が生じることを防止することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の実施の形態に係る特徴は、安全確保支援システムにおいて、遠隔操作によって医用診断装置の保守点検を行う保守端末からの保守点検に関する保守情報を受信する要求処理手段と、要求処理手段が受信した保守情報に基づいて保守点検対象となる医用診断装置の現状を確認し記憶する使用状況確認手段と、使用状況確認手段からの使用状況情報に基づいて医用診断装置の現状に合わせて操作者の誤操作防止の処理を行う誤操作防止処理手段とを備える。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、保守点検後に医用診断装置が安全正常に稼働するように、遠隔操作による保守点検作業中に医用診断装置が誤って操作されて医用診断装置が搭載するデータに不備が生じることを防止することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(第1の実施の形態)
以下、本発明の第1の実施の形態について図面を参照して詳細に説明する。
【0012】
図1は、本発明の実施の形態における遠隔保守システム1の全体構成を示す構成図である。この遠隔保守システム1は、安全確保支援システム2を組み込んだ医用診断装置3Aないし3Cと、保守端末4とがネットワーク5を介して接続されている。この遠隔保守システム1にいう「遠隔」は、保守点検の対象となる医用診断装置3Aないし3Cと保守端末4とが物理的に離れていることを示している。従って、保守端末4は医用診断装置3がある医療機関から距離的に遠く(遠隔)にある場合、同じ医療機関内にあるが別の部屋に設けられている場合、のいずれの場合も含む。そのため、ネットワーク5の例としては、LAN(Local Area Network)やインターネット等のネットワークを挙げることができる。
【0013】
図1では、ネットワーク5に接続される医用診断装置として3つ(医用診断装置3Aないし3C。以下、まとめて「医用診断装置3」と表わす)記載し、保守端末は1つ記載しているが、ネットワーク5に接続される医用診断装置3、保守端末4は単数或いは複数のいずれでも良い。
【0014】
医用診断装置3は、医療機関内に設置されており、例えば、X線診断装置やCT装置、超音波診断装置、磁気共鳴診断装置、ガンマカメラやPET(positron-emission tomography:ポジトロン放出断層撮影)、及び診断用ワークステーション等が該当する。また、医療機関に据え置き型の医用診断装置だけではなく、移動可能な医用診断装置も含まれる。本発明の実施の形態においては、安全確保支援システム2をこれら医用診断装置3に組み込んだ場合を例に挙げて以下、説明を行う。
【0015】
図2は医用診断装置3の内部構成を示すブロック図である。医用診断装置3は、CPU(Central Processing Unit)3aと、ROM(Read Only Memory)3bと、RAM(Random Access Memory)3c及び入出力インターフェイス3dがバス3eを介して接続されている。入出力インターフェイス3dには、入力手段3fと、表示手段3gと、通信制御手段3hと、記憶手段3iと、リムーバブルディスク3jと、駆動部制御手段3kとが接続されており、駆動部制御手段3kによって医用診断装置3の各駆動部3lが制御される。
【0016】
CPU3aは、入力手段3fからの入力信号に基づいてROM3bから医用診断装置3を起動するためのブートプログラムを読み出して実行し、記憶手段3iに格納されている各種オペレーティングシステムを読み出す。またCPU3aは、入力手段3fや入出力インターフェイス3dを介して、図1に示す保守端末4からの入力信号や図2おいて図示していないその他の外部機器からの入力信号に基づいて各種装置の制御を行う。さらにCPU3aは、RAM3cや記憶手段3i等に記憶されたプログラム及びデータを読み出してRAM3cにロードするとともに、RAM3cから読み出されたプログラムのコマンドに基づいて、データの計算または加工等、一連の処理を実現する処理装置である。
【0017】
入力手段3fは、医用診断装置3の操作者が各種の操作を入力するキーボード、ダイヤル等の入力デバイスにより構成されており、操作者の操作に基づいて入力信号を作成しバス3eを介してCPU3aに送信される。また、医用診断装置3には、キーボード等だけでなく専用の操作パネルが設けられており、その操作パネル上の入力デバイスを介して操作画面に対する操作を行うこともできる。表示手段3gは、例えば液晶ディスプレイであり、例えばCPU3aからバス3eを介して出力信号を受信し、CPU3aの処理結果等を表示する手段である。
【0018】
通信制御手段3hは、LANカードやモデム等の手段であり、医用診断装置3をインターネットやLAN等の通信ネットワーク5に接続することを可能とする手段である。通信制御手段3hを介して通信ネットワーク5と送受信したデータは入力信号または出力信号として、入出力インターフェイス3d及びバス3eを介してCPU3aに送受信される。
【0019】
記憶手段3iは、半導体や磁気ディスクで構成されており、CPU3aで実行されるプログラムやデータが記憶されている。
【0020】
リムーバブルディスク3jは、光ディスクやフレキシブルディスクのことであり、ディスクドライブによって読み書きされた信号は、入出力インターフェイス3d及びバス3eを介してCPU3aに送受信される。
【0021】
なお、本発明の実施の形態における医用診断装置3では、安全確保支援プログラムが記憶手段3i、或いはリムーバブルディスク3jに格納されており、CPU3aに読み込まれ実行されることにより、安全確保支援システム2が医用診断装置3に実装されることになる。
【0022】
図3は、安全確保支援システム2が医用診断装置3に実装された場合の構成を示すブロック図である。安全確保支援システム2は、要求処理手段2aと、使用状況確認手段2bと、誤操作防止処理手段2cとから構成される。
【0023】
要求処理手段2aは、保守端末4からネットワーク5を介して送信された保守点検に関する保守情報を受信する。保守端末4は、遠隔で医用診断装置3について保守点検を行うにあたり、その開始の情報を医用診断装置3に送信する。この保守情報は、保守点検の対象となる医用診断装置3に送られ、この保守情報を受信した医用診断装置3側ではこの保守情報に基づいて保守点検の態勢に入る。
【0024】
要求処理手段2aにおいて受け付けた保守情報は、使用状況確認手段2bに送信される。この使用状況確認手段2bはこの保守情報を受信し、この受信時の医用診断装置3の現在の状態を確認し記憶する。例えば、保守点検開始の保守情報を受けた場合は、使用状況確認手段2bは医用診断装置3の状態を「保守点検作業中」として記憶手段3iに記憶する。一方、保守点検終了時には、医用診断装置3の状態を「保守点検作業中」から「通常状態」に変更して記憶手段3iに記憶する。
【0025】
さらに使用状況確認手段2bは医用診断装置3の現状を確認し、その結果を使用状況情報として記憶手段3iに送信するとともに、誤操作防止処理手段2cにもその情報を送信する。誤操作防止処理手段2cは、使用状況確認手段2bから送信されてきた使用状況情報に基づいて、医用診断装置3において保守点検中に操作者によって何らかの操作が行われることを防止するために操作者に報知する。
【0026】
次に、医用診断装置3の保守点検作業の開始から終了までの手順を図4に示すフローチャート等を使用しつつ説明する。
【0027】
上述したように、遠隔からの保守点検中に医用診断装置3が操作されると、例えば、データ送受信時にデータの改変や喪失等の不備が生ずることもあり、このようなデータに基づいて医用診断装置3が操作されると事故を引き起こす可能性もある。そのため保守点検中に操作者によって医用診断装置3が操作されることを防止する必要がある。医用診断装置3では、要求処理手段2aが保守端末4からの保守点検の開始を医用診断装置3に報知する保守情報を受信することをきっかけとして誤操作防止の処理を行う。
【0028】
保守端末4から送信される保守情報には、医用診断装置3の現状を変更する変更要求が含まれている。この変更要求は、保守点検の対象となる医用診断装置3の状態を患者の撮影や撮影画像の読影等、医用診断装置3がその本来の状態(以下、「通常状態」という。)から、保守点検を受ける状態(以下、「保守点検状態」という。)へとの変更を要求するものである(ST1)。
【0029】
この変更要求を受けて要求処理手段2aは、まず使用状況確認手段2bに医用診断装置3の現在の状態を確認させる。一般的に保守点検が開始される前は医用診断装置3は通常状態にある。そのため、要求処理手段2aは使用状況確認手段2bに、通常状態から保守点検状態へと医用診断装置3の状態を変更するように要求する(ST2)。この要求に基づいて使用状況確認手段2bは医用診断装置3の状態を保守点検状態へと変更する(ST3)。
【0030】
さらに誤操作防止処理手段2cは、この変更結果を示す使用状況情報を使用状況確認手段2bから受信する(ST4)。この変更結果を受けて誤操作防止処理手段2cは医用診断装置3が保守点検状態であることを表示手段3gに表示して、操作者が医用診断装置3を操作することを防止する(ST5)。
【0031】
表示手段3gに表示する項目はどのような項目でも良いが、例えば、図5に示すように、保守点検作業中であること、及び作業終了時間を表示させることができる。そしてこのように操作者に報知した上で保守作業を開始する(ST6)。
【0032】
保守作業中は、例えば一定時間ごとに保守端末4から保守作業の終了を知らせる保守情報を要求処理手段2aが受信したか否かを判断する(ST7)。この保守情報を受信すると(ST7のY)、再度ステップ2に示すように要求処理手段2aが使用状況確認手段2bに医用診断装置3の状態を保守点検状態から通常状態への変更を要求する。そしてこの要求に従って記憶手段3i内の医用診断装置3の現状を示す使用状況情報が変更され、表示手段3gに表示される画面が通常状態に表示される画面へと変更される(ST2ないしST5)。これによって保守作業は終了する(ST6のN)。
【0033】
このようにすることで、遠隔操作による保守点検作業中に対象となる医用診断装置が操作されることがなくなり、誤操作されて医用診断装置が搭載するデータに不備が生じることを防止することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。従って、このシステムによって医療機関が医用診断装置、それを使用する操作者、患者の安全を確保することを支援することができる。
【0034】
(第2の実施の形態)
次に本発明における第2の実施の形態について説明する。なお、第2の実施の形態において、上述の第1の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0035】
第2の実施の形態においては、保守点検作業中は操作者による医用診断装置3の操作そのものを不可能とするように医用診断装置3をロックしてしまう方法を採用する。すなわち、第1の実施の形態においては表示手段3g等を利用して操作者に報知しているが、これは報知するにすぎず、操作者が医用診断装置3を操作しようと思えば操作することは可能な状態にある。そのため操作者が保守点検作業中であることを認識した上で、或いは不注意等によって医用診断装置3を操作することが可能である。
【0036】
操作者が医用診断装置3を操作しようと思えば操作できる状態では、保守端末4からデータが適切に送信されない可能性が残ってしまい、操作者の誤操作を完全には防止することができない。そこで、第2の実施の形態においては、次に示すような流れで医用診断装置3をロックして操作者が操作することができないようにする。
【0037】
図6のフローチャートに示すように、ステップ1ないしステップ4までの流れは第1の実施の形態と同様である。すなわち、保守端末4から送信される医用診断装置3の使用状態を変更する内容の変更要求を含む保守情報を要求処理手段2aが受信する。その後要求処理手段2aが使用状況確認手段2bに医用診断装置3の状態を通常状態から保守点検状態への変更を要求する。そしてこの要求に従って記憶手段3i内の医用診断装置3の現状を示す使用状況情報が変更される(ST1ないしST4)。
【0038】
誤操作防止処理手段2cは、受信した使用状況情報を基に医用診断装置3が操作者によって操作されないようにロックをする(ST11)。このロックは、安全確保支援システム2から医用診断装置3のCPU3aに医用診断装置3が操作できないようにロックを行うよう制御指令が出され、医用診断装置3に搭載されるOSが医用診断装置3を操作できないように制御することで行われる。なおロックは、例えば、Windows(登録商標)のスクリーンロック機能のようなOSの機能を設定したり、セキュルティソフトウェアの起動を設定したりすることにより行われる。
【0039】
その後保守点検作業が開始され(ST12)、保守点検作業が終了すると(ST13)要求処理手段2aが使用状況確認手段2bに医用診断装置3の状態を保守点検状態から通常状態へと変更することを要求する(ST14)。使用状況確認手段2bは医用診断装置3の使用状況情報を変更し、誤操作防止処理手段2cに送信する(ST15、ST16)。誤操作防止処理手段2cは、使用状況確認手段2bからの使用状況情報に基づいてこれまで医用診断装置3にかけていたロックを解除する(ST17)。すなわち、安全確保支援システム2からCPU3aにロック解除の制御指令を出し、OSが医用診断装置3を改めて操作できるように制御する。
【0040】
このように保守点検作業を行っている最中は医用診断装置3を操作できないようにロックしてしまうことで、操作者の誤操作を完全に防止して医用診断装置が搭載するデータに不備が生じることを防止することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。
【0041】
(第3の実施の形態)
次に本発明における第3の実施の形態について説明する。なお、第3の実施の形態において、上述の第1または第2の実施の形態において説明した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付し、同一の構成要素の説明は重複するので省略する。
【0042】
第3の実施の形態では、医用診断装置3の操作者が、例えば、入力手段3fのキーを触る等の簡単な操作ではなく、医用診断装置3をシャットダウンする操作を行った場合を想定した誤操作防止処理を定めたものである。
【0043】
すなわち、保守点検作業中に医用診断装置3を操作されるだけで保守端末4から送信されたデータに不備が生じる可能性が考えられるため、操作者の操作を防止する必要があることからすれば、医用診断装置3がシャットダウンされてしまうとそもそも保守端末4からデータを送信することができなくなり、医用診断装置3を安全正常に使用することが困難となる。そのため、第3の実施の形態ではこのような重大な不備を防止するために、保守点検作業中にシャットダウン操作が行われることを防止する。
【0044】
図7は、保守点検作業中にシャットダウン操作が行われることを防止するために安全確保支援システム2において行われる誤操作防止処理の流れを示すフローチャートである。
【0045】
ステップ1ないしステップ5までの流れは第1の実施の形態と同様である。すなわち、保守端末4から送信される医用診断装置3の使用状態を変更する内容の使用状況情報を含む保守情報を要求処理手段2aが受信する。その後要求処理手段2aが使用状況確認手段2bに医用診断装置3の状態を通常状態から保守点検状態への変更を要求する。そしてこの要求に従って記憶手段3i内の医用診断装置3の現状を示す使用状況情報が変更されるとともに、表示手段3gに例えば、図5に示すような画面を出して操作者に保守点検作業中であることを報知する(ST1ないしST5)。
【0046】
次に、誤操作防止処理手段2cは、保守点検作業が終了したか否かの判断を行い(ST21)、保守点検作業が終了しない場合(作業開始の場合)は、操作者によってシャットダウン操作が行われた場合に誤操作防止処理手段2cに通知を発するように設定する(ST22)。つまり、誤操作防止処理手段2cからCPU3aに制御指令が出され、医用診断装置3に搭載されるOSが操作者によるシャットダウン操作を検知して誤操作防止処理手段2cに通知する。この設定は、例えば、Windows(登録商標)やUnix(登録商標)のシャットダウンルーチンの登録機能を用いたり、ベンダーが予めOSに組み込んだ管理機能を用いることで行うことができる。
【0047】
この設定が終了すると、保守点検作業が開始される(ST23)。保守点検作業が行われている最中は、適宜シャットダウン操作が行われたか否かが判断される(ST24)。シャットダウン操作が行われた場合は(ST24のY)、OSがその操作を検知して誤操作防止処理手段2cに通知する(ST25)。この通知を受けた誤操作防止処理手段2cは、操作者に対して、例えば、表示手段3gにこのままシャットダウン操作を継続して行うか否かの表示させ(ST26)、操作者の注意を喚起する。操作者がこの表示を見てもあくまでもシャットダウン操作を行う、との意思の下シャットダウン操作を継続した場合には(ST27のY)は、医用診断装置3はシャットダウンされる。一方、表示手段3gに表示された報知を見て操作者がシャットダウン操作を中断した場合は(ST27のN)、そのまま保守点検作業が継続される。
【0048】
この保守点検作業が終了したか否かの判断も適宜行われ(ST28)、保守点検作業が終了したと判断された場合には(ST28のY)、ステップ2に戻り、要求処理手段2aが使用状況確認手段2bに医用診断装置3の状態を保守点検状態から通常状態への変更を要求する。そしてこの要求に従って記憶手段3i内の医用診断装置3の現状を示す使用状況情報が変更されるとともに操作者に保守点検が終了し、通常通り操作できることを報知する(ST1ないしST5)。ここでは保守点検作業が終了しているので、その判断がなされる(ST21のY)。
【0049】
このように操作者がシャットダウン操作を行う際に、操作者がその操作の継続を行うか否かを改めて判断をする機会を付与することで、遠隔操作による保守点検作業中に医用診断装置が誤って操作されて医用診断装置が搭載するデータに不備が生じることを防止することのできる安全確保支援システムおよび該システムを組み込んだ医用診断装置を提供することができる。
【0050】
なお、第3の実施の形態においては、シャットダウン操作が行われた場合に、操作者にその操作の可否を問い合わせることとしているが、このような問い合わせを行うことなく、保守点検作業が終了するまではシャットダウン操作が全くできないように設定することも可能である。この設定は、シャットダウンボタンのクリックやキーの入力を受け付けなくなる設定である。例えば、Windows(登録商標)のレジストリやUnix(登録商標)のシステム設定の変更を行ったり、入力手段3fからの入力に割り込み処理を登録する、或いは、ベンダーが予めOSに組み込んだ管理機能を用いることでこの設定を行うことができる。
【0051】
このように構成することで、より確実に操作者によるシャットダウン操作がなくなり、保守端末4から送信されたデータに不備が生じる可能性をより低くすることができる。
【0052】
なお、上述した実施の形態においては、特に保守端末4から医用診断装置3への遠隔保守の方法については特定していないが、例えば、保守端末4が、例えばWindows(登録商標)のリモートデスクトップ機能、VNC(Virtual Network Computing)やPCAnyware等の画面共有ソフトを利用して医用診断装置3の表示手段3gの画面を保守端末4上に表示させ、或いは、Windows(登録商標)のターミナルサービスのような通信ソフトウエアを使用して保守点検作業を行うことができる。
【0053】
また、医用診断装置3が保守点検状態にあることを操作者に報知する方法は、表示手段3gに保守点検作業中であること等を示すことの他に、例えば、音声で報知する等、操作者の注意を喚起する方法であれば特に問わない。
【0054】
この発明は、上記実施の形態そのままに限定されるものではなく、実施段階ではその要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。例えば、上述した実施の形態においては安全確保支援システムを医用診断装置に搭載した場合を例に挙げて説明したが、その他に、例えば、病院情報管理システム(HIS:Hospital Information System)、放射線部門情報管理システム(RIS:Radiological Information System)、医用画像管理システム(PACS:Picture Archiving Communication System)といった医療機関内に構築された各種管理システムと組み合わせて用いても良い。上記実施の形態に開示されている複数の構成要素を適宜組み合わせることにより種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素から幾つかの構成要素を削除してもよい。更に、異なる実施の形態に亘る構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の実施の形態における遠隔保守システム1の全体構成を示す構成図である。
【図2】医用診断装置の内部構成を示すブロック図である。
【図3】安全確保支援システムの内部構成を示すブロック図である。
【図4】本発明の第1の実施の形態における安全確保支援システムにおいて行われる誤操作防止処理の流れを示すフローチャートである。
【図5】表示手段に示される誤操作防止の表示例を表わす画面例である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における安全確保支援システムにおいて行われる誤操作防止処理の流れを示すフローチャートである。
【図7】本発明の第3の実施の形態における安全確保支援システムにおいて行われる誤操作防止処理の流れを示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0056】
1 遠隔保守システム
2 安全確保支援システム
2a 要求処理手段
2b 使用状況確認手段
2c 誤操作防止処理手段
3 医用診断装置
4 保守端末
5 ネットワーク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
遠隔操作によって医用診断装置の保守点検を行う保守端末からの保守点検に関する保守情報を受信する要求処理手段と、
前記要求処理手段が受信した保守情報に基づいて保守点検対象となる医用診断装置の現状を確認し記憶する使用状況確認手段と、
前記使用状況確認手段からの使用状況情報に基づいて前記医用診断装置の現状に合わせて操作者の誤操作防止の処理を行う誤操作防止処理手段と、
を備えることを特徴とする安全確保支援システム。
【請求項2】
前記誤操作防止処理手段は、操作者による医用診断装置の操作を不可能とすることで保守点検の最中に操作者によって医用診断装置が操作されることを防止する誤操作防止処理を行うことを特徴とする請求項1に記載の安全確保支援システム。
【請求項3】
前記誤操作防止処理手段は、保守点検の最中に操作者による医用診断装置のシャットダウン操作が行われると、操作者に警告を報知する誤操作防止処理を行うことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の安全確保支援システム。
【請求項4】
前記誤操作防止処理手段は、保守点検の最中に操作者によって医用診断装置のシャットダウン操作が行われても医用診断装置のシャットダウンを拒否する誤操作防止処理を行うことを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれかに記載の安全確保支援システム。
【請求項5】
前記誤操作防止処理手段は、医用診断装置が保守点検の最中であることを表示手段に表示することで誤操作の防止を図る処理であることを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれかに記載の安全確保支援システム。
【請求項6】
請求項1ないし請求項5のいずれかに記載の安全確保支援システムを備えることを特徴とする医用診断装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−212539(P2008−212539A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−57286(P2007−57286)
【出願日】平成19年3月7日(2007.3.7)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【出願人】(594164542)東芝メディカルシステムズ株式会社 (4,066)
【Fターム(参考)】