説明

安全装置用パラメータの自動調節

コンベア(10、10a)の安全制御パラメータを自動的に調節する装置(100)および方法300)が開示される。安全装置(100)は、さまざまなセンサ(102、102a、104、104a、106、106a、108、108a)と安全制御モジュール(200、200a)とを備える。安全制御モジュール(200、200a)は、コンベア(10、10a)の作動および機械特性を学習し、予め規定された公称仕様に基づいてコンベア(10、10a)の作動特性を確認し、較正された安全制御パラメータを有する制御関数をコンベア作動の監視に使用するために決定するように構成された学習作業方法(300)で予めプログラムされ得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般に安全制御システムに関し、より詳細にはコンベア用の安全制御システムのパラメータを自動的に調節および較正する装置および方法に関する。
【背景技術】
【0002】
エスカレータ、動く歩道、その他などのコンベアは、乗客を1つの位置から別の位置へと迅速かつ適切に運搬する動く通路を提供する。より詳細には、コンベアの動くパレットまたは踏段が、予め決められた速度で2つの乗降場間で通路の長さ方向に沿って乗客を移動させる。視界から隠されてコンベアの下に配置された踏段チェーンが、閉ループ状に各踏段を互いに接続するように機能する。主駆動源、駆動シャフト、および付随するスプロケットによって駆動されて、踏段チェーンは、乗降場間で乗客を運搬するようにコンベアの露出した上面に沿って踏段を移動させる。2つの乗降場のそれぞれの内部に配置されたスプロケットは、踏段の移動方向を反転させるとともに環状の戻り経路を生成するように円弧に沿って踏段チェーンを案内する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
コンベアは絶え間なく動いているためさまざまな内部故障を受け易く、さらにこの故障によって、コンベア上またはコンベア近くの乗客がけがをする可能性がある。そのような故障の1つは、コンベアの速度、すなわちコンベアの踏段が乗降場間を移動する速度に関連する。コンベアの速度が、予め規定された公称速度から外れたり、上下して、コンベアの踏段が、速過ぎたり、遅過ぎたり、急停止したり、あまりに急に加速したりなどすることがある。コンベアの速度の不安定さは、いくつかの要因によって生じ得る。しかしながら、最も頻繁に起こることとしては、コンベアの速度の不安定さは、コンベアの主駆動源に供給される電力の変動によって生じ得る。例えば、コンベアに供給される電力の過電圧、電圧不足、電力サージ、スパイク、その他の不安定さによって、コンベアに変動が生じ、時間が経つにつれこれらの変動が蓄積し、最終的にはコンベアの予め規定された公称速度を片寄らせることになる。電力の変動によって、安全プロトコルで必要とされる予め規定された時間内または距離内でコンベアを停止させる能力が妨げられることもある。
【0004】
他の故障は、パレットまたは踏段のずれや欠損に関係する。時間が経つにつれ、コンベアの1つまたは複数の踏段が、付随する踏段チェーンから外れて、踏段がコンベアシステムの下へと落ちたり、落下して検出されなくなることがある。踏段の欠損は、不適切な保守によっても生じることがある。コンベアは定期保守を必要とし、その際、1つまたは複数の踏段の取り外し、交換などが行なわれることがある。しかしながら、踏段が踏段チェーンと適切に固定、再位置合わせされないと、外れたり、落下したりする可能性がある。いずれにしろ、コンベアの制御システムが踏段の欠損により生じた空隙部分を検出しないと、コンベアは、作動し続け、空隙部分をコンベアの上面に持ち上げて、乗客に露出させることがある。これを知らない乗客は、空隙部分に落下しあるいは踏み込み、けがをする可能性がある。
【0005】
従って、エスカレータおよび動く歩道には、このような故障状態で生じる危険を最小限に抑えるように機能するさまざまな安全手段が設けられている。例えば、コンベアの適切な作動を確保するために保守技術者によって現場で定期保守が実施され得る。しかしながら、このような保守は、適時でかつ費用がかかり、また、人為ミスのリスクを伴う。他の安全手段としては、安全監視装置を使用することがある。具体的には、コンベアには、コンベアの作動の故障状態を監視する安全監視装置を設けることができる。故障が検出された場合、安全監視装置は、コンベアの制御ユニットに補正命令を送るように、あるいは保守技術者が故障を手動で解決するまで単にコンベアの作動を停止させるように構成可能である。しかしながら、コンベアは、コンベアの種類、位置、用途、その他に関連する安全法規および規定に従って作動する必要もあり得る。各コンベアの種類、位置、および用途はさまざまなので、各コンベアに付随する安全監視装置もまたさまざまなものが必要となる。
【0006】
特に、各コンベアの安全監視装置は、特定のコンベア専用に設計、構成、および前もってプログラムされる必要があり、そのため、各コンベアシステムを構築するのにかなりの量の時間と費用がかかる。これはまた、既存の安全装置が、他のコンベアの種類または用途に適用可能でないこと、さらに、新たなコンベア安全法規および規定などの条件の変更に合わせてアップグレードできないことを意味する。安全法規および規定の変更に合わせるために、既存の安全装置またはコンベアシステム全体を交換する必要があり得る。このような保守には、かなりの量の費用と、最終使用者の中断時間とが必要になる。
【0007】
従って、より適時でかつ費用対効果の高い仕方でコンベアシステムの安全パラメータを監視する強固かつ汎用の制御システムが必要とされている。より具体的には、広範囲のさまざまなコンベアの種類や特定地域の安全規定に適合可能であり、さらに、コンベアの踏段の存在、踏段の速度、停止距離、および他の安全制御パラメータを監視する、安全制御システムが必要とされている。また、付随するコンベアの作動および機械特性を自動的に決定し、必要な安全パラメータを自己較正し、コンベアに特有の安全法規に従ってパラメータを監視する制御システムが必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の態様によれば、第1の乗降場と第2の乗降場の間に延在する複数の踏段であって、踏段チェーンによって互いに接続され、主駆動部材によって駆動される複数の踏段を有するコンベアの安全制御パラメータを自動的に調節する装置が提供される。装置は、少なくとも踏段速度信号と踏段検出信号とを出力するように構成された複数のセンサと; センサと通信しかつコンベア制御ユニットと通信する安全制御モジュールであって、センサの出力に基づいてコンベアの作動および機械特性を自動的に決定し、予め規定された公称仕様に基づいてコンベアの作動特性を確認し、確認されたコンベアの作動特性に対応する安全制御パラメータをコンベア作動の監視に使用するために決定するように構成された安全制御モジュールと、を備える。
【0009】
本開示の別の態様によれば、第1の乗降場と第2の乗降場の間に延在する複数の踏段であって、踏段チェーンによって互いに接続され、主駆動部材によって駆動される複数の踏段を有するコンベアの安全制御パラメータを自動的に調節する方法が提供される。方法は、踏段速度センサと踏段検出センサの出力に基づいてコンベアの作動および機械特性を決定し; 予め規定された公称仕様に基づいてコンベアの作動特性を確認し; 確認されたコンベアの作動特性に対応する安全制御パラメータをコンベア作動の監視に使用するために決定する、ことを含む。
【0010】
本開示のさらに別の態様によれば、第1の乗降場と第2の乗降場の間に延在する複数の踏段であって、踏段チェーンによって互いに接続され、主駆動部材によって駆動される複数の踏段を有するコンベアの安全制御パラメータを自動的に調節する方法が提供される。方法は、予め規定された長さの時間で踏段速度センサと踏段検出センサの出力信号をサンプリングし; 踏段速度出力信号に基づいて測定された踏段速度を決定し; 踏段速度出力信号の周波数に基づいて踏段速度センサの種類を決定し; 踏段速度出力信号と踏段検出出力信号の間の相関に基づいてコンベアの踏段の大きさを決定し; 測定された踏段速度を予め規定された踏段速度と比較し; センサ出力信号間の相互相関を予め規定された公差と比較し; 測定された踏段速度およびセンサ出力信号間の相互相関の両方ともが予め規定された公差内にある場合にのみ安全制御パラメータを決定する、ことを含む。
【0011】
本開示のこれらと他の態様は、添付の図面と共に考慮して以下の詳細な説明を読むことでより容易に明らかとなるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本開示の教示に従って構成された安全制御パラメータを自動的に調節する例示的な安全装置を組み込んだコンベアの斜視図。
【図2】自動安全制御装置を組み込んだ例示的なコンベアシステムの概略図。
【図3】コンベアの安全制御パラメータを自動的に調節する例示的な学習作業方法の流れ図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示は、さまざまな修正および代替の構成が可能であるとはいえ、その特定の例示的な実施例を図面に示し、以下に詳細に説明する。しかしながら、発明は、開示された特定の形態に限定される意図はなく、それとは逆に、本開示の趣旨および範囲に含まれる全ての修正、代替の構成、および均等物を含むことを意図していることを理解されたい。
【0014】
図面を参照して、特に図1を参照すると、コンベア用の例示的な安全装置が提供され、参照符号100で参照される。理解されるように、本開示の教示は、以下に具体的に開示されるものを越えて、安全制御パラメータを自動的に調節する装置を構成するのに使用可能である。当業者は、以下の説明が例示的な実施例に過ぎないことを容易に理解するであろう。
【0015】
図1に示すように、例示的なコンベア10は、エスカレータの形態で提供されており、第1の乗降場12と、第2の乗降場14と、第1、第2の乗降場12、14間に延在する複数の移動パレットまたは踏段16と、複数の踏段16のそばに配置された移動手すり18とを備える。コンベア10の踏段16は、モータまたは同様のものなどの主駆動源17によって駆動され、乗降場12、14間を移動する。主駆動源17は、駆動シャフトおよび付随するギアを回転させて、コンベア10内から踏段16の内部表面を機械的に互いに接続する閉ループ踏段バンドまたはチェーンを回転させる。2つの乗降場12、14のそれぞれの内部でスプロケット19が、踏段の移動方向を反転させるとともに環状の仕方で戻り経路を生成するように円弧に沿って踏段チェーンおよび取り付けられた踏段16を案内する。手すり18は、踏段16の速度と同様の速度で踏段16のそばを同様の手段で回転可能に移動する。
【0016】
さらに図1を参照すると、コンベア10には、図示のようにコンベア制御ユニット90および安全装置100を設けることができる。一般にコンベア制御ユニット90は、コンベアシステムの全体の作動および制御を管理するように機能することができる。安全装置100は、コンベア10が関連する安全法規および規定に従って確実に作動するように機能することができる。安全装置100はまた、コンベアが設置されている設備によって規定されている指針、契約合意書、使用者の定義する仕様その他などの他の指針に従って使用可能である。安全装置100は、コンベア10のさまざまなパラメータを観察する複数のセンサ102、104、106、108と、安全制御モジュール200とを備えることができる。特に安全装置100は、コンベア10の駆動または踏段速度、手すり18の速度、乗降場12、14それぞれに関連する踏段16の有無、同様のものなどを観察することができる。踏段速度を決定するために安全装置100は、踏段16を互いに接続する踏段チェーンを駆動するスプロケット19の歯20にきわめて接近して配置された、光電センサなどの踏段速度センサ102を提供することができる。代替として踏段速度センサ102は、スプロケット19の軸上に配置され、スプロケット19の回転速度を検出するように構成されたエンコーダを備えることができる。踏段16の有無を検出するために安全装置100は、コンベア10の乗降場12、14に踏段検出センサ104、106を備えることができる。特に踏段検出センサ104、106は、パレットまたは踏段16の踏段ローラまたは踏段ローラ軸の金属を検出するように構成された近接センサを含むことができる。安全装置100はまた、踏段16の速度に対する手すり18の相対速度を観察するように手すりセンサ108を備えることができる。安全制御モジュール200は、最初にコンベア10の作動および機械特性を学習するようにセンサ出力をサンプリングし、測定されたデータを確認し、学習された特性および安全規定に従って安全制御パラメータを自動的に調節し、さらに、コンベアの作動の故障または偏りの有意の徴候を監視することができる。そのような故障が検出されると、安全制御モジュール200は、コンベア制御ユニット90に、コンベアの作動をそれに応じて調節するのに必要な命令を提供することができる。
【0017】
ここで図2を参照すると、自動調節安全装置100aと一体化された例示的なコンベアシステムの全体の概略図が提供される。より具体的には、全体システムの主要構成要素は、少なくともコンベア10aと、コンベア制御ユニット90aと、安全装置100aとを含むことができる。図1の実施例にあるように、さまざまなセンサ102aが、コンベア10aの通常作動中に予め規定された長さの時間、コンベア10aに特有のデータを測定またはサンプリングするようにコンベア10a上またはコンベア10a内に配置可能である。起動すると、安全制御モジュール200aは、コンベア10aの作動および機械特性を学習するようにセンサ102aによって提供されたサンプリングされたデータを使用することができる。提供されるセンサ102aの種類に応じて、安全制御モジュール102aは、コンベアの踏段の速度、踏段の大きさ、踏段のピッチ、手すりの速度、関連するギア比、使用されるセンサの種類などの特性を決定するように、サンプリングされたデータを使用することができる。
【0018】
必要なコンベア10aのデータ全てが得られると、安全制御モジュール200aは、サンプリングされたデータを確認するか、あるいはサンプリングされたデータを予め規定された公称値または閾値と比較することができる。予め規定された値は、地域の安全法規および規定で規定されるような、公称のコンベアの踏段の速度、踏段の大きさ、および同様のものなどを含むことができる。予め規定された値は、契約に特有の条件、使用者が定義した基本設定その他などの他の指針によって導入された制約または制限を組み込むこともできる。サンプリングされたデータが、予め規定された公称値の許容可能な閾値内にある場合、安全制御モジュール200aは、適切な安全関数と、コンベア10aに特有の対応する安全制御パラメータとを決定することを進めることができる。しかしながら、サンプリングされたデータが、予め規定された公称値の許容可能な閾値内にない場合、安全制御モジュール200aは、サンプリングされたデータを棄却して、確認が成功するまでコンベアデータの次のサンプルを得ることを進めることができる。サンプリングされたデータが妥当で、各安全法規および規定に適合している場合、安全制御モジュール200aは、コンベアに特有の新たな安全関数を自動的に生成するか、あるいは、安全装置100a内に予め記憶された既存の安全関数を自動的に調節することができる。より具体的には、安全制御モジュール200aは、予め規定された値に安全制御パラメータを較正し、参照用に安全制御パラメータを安全装置100a内に記憶することができる。
【0019】
基準として安全関数を使用することで、安全制御モジュール200aは、コンベア10aの作動の公称仕様からの有意の偏りをさらに監視することができる。そのような偏りが検出された場合、安全制御モジュール200aは、誤差を補正するために必要な信号をコンベア制御ユニット90aに通信することができる。例えば、安全装置100aがコンベアの踏段の速度の有意の増加を検出した場合、安全制御装置200aは、制御ユニット90aに減速するように命令することができる。これに応じて、制御ユニット90aは、コンベアの踏段の速度を低減するためにコンベア10aを駆動するモータや同様のものなどへの電力を低減することができる。コンベアの踏段の速度が、記憶された安全関数によって規定される許容可能な範囲内の速度に戻ると、安全制御モジュール200aは、制御ユニット90aに減速を停止し、現在の踏段の速度を維持するように命令することができる。従って、コンベア制御ユニット90aは次いで、モータへ供給される電力を維持することができる。
【0020】
図1の実施例に戻って参照すると、安全制御モジュール200は、保守技術者が容易に接近できるようにコンベア10の制御盤内に設けられたマイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、または同様のものなどを用いて実現することができる。安全装置100は、保守技術者がコンベアデータを視認または修正可能な表示装置またはユーザインターフェースをさらに備えることができる。このようなインターフェースを使用することで、保守技術者は、安全法規または規定の変更に合わせて安全制御モジュール200を更新することもできる。新たな安全条件に合わせてコンベア10の安全制御パラメータを調節または較正するために、保守技術者は、学習作業300を開始するように安全制御モジュール200に命令する必要があるだけである。
【0021】
ここで開示するように、学習作業300は、図3の流れ図に概略図示されているステップに従って作動するように、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、または同様のものなどの中に予めプログラムされたアルゴリズムとすることができる。学習作業300を実行する前に、学習作業300は、1つまたは複数の前提条件を必要とし得る。例えば、学習作業300は、予め決められた長さの時間、一定の速度でコンベア10が作動することを必要とし得る。コンベア10がエスカレータの場合、学習作業300は、処理の前に、エスカレータが特定の方向、上または下へと一定の速度で作動することを必要とし得る。学習作業300はまた、製造の時点でまたは保守技術者によって現場で提供され得る予め規定された入力を必要とし得る。予め規定された入力は、コンベア10が望ましくは従う必要のある1つまたは複数の制約を特定する離散的な値とすることができる。例えば、学習作業300は、安全規定によって許容可能な、1つまたは複数の離散的な公称のコンベアの踏段速度、踏段またはパレットの大きさ、または同様のものなどを必要とし得る。
【0022】
全ての前提条件が満たされるとともに、予め規定された必要な入力が安全制御モジュール200によって受け取られると、学習作業300は、学習作業300を開始するための使用者による手動での入力または命令を待つことができる。開始の命令を受け取ると、学習作業300は、最初に学習手順302を実行することができる。学習手順302の間に学習作業300は、予め規定された長さの時間、さまざまなセンサ102、104、106、108を用いてコンベア10の通常の作動条件を観察することができる。例えば、学習手順302は、40秒ほどの間に亘って、踏段速度センサ102、踏段検出センサ104、106、手すりセンサ108、および同様のものなどによって測定されたデータをサンプリングすることができる。サンプリングされたデータに基づいて、学習手順302は次いで、コンベア10の基本的な特性を導出するように平均化および付加的な計算を実行することができる。特に学習手順302は、コンベア10の測定された踏段速度、各踏段検出信号の平均時間、踏段速度信号の平均時間、踏段検出信号の時間当たりの踏段速度信号パルスの平均数、踏段速度信号の平均周波数、手すり信号の平均時間、および同様のものなどを計算するように構成され得る。このような導出物を用いて、学習作業300は、特定のコンベア10のさまざまな機械的特徴を決定することができる。具体的には、学習手順302は、踏段速度センサ102によって提供された踏段速度信号の周波数に基づいて、使用されている踏段速度センサ102の種類すなわち近接かまたはエンコーダかを決定することができる。学習手順302はまた、踏段検出信号の時間当たりの踏段速度信号パルスの数に基づいて、コンベア踏段の大きさ、深さおよび/またはピッチを決定することができる。
【0023】
学習手順302の間にコンベア10の作動および機械特性を学習した後で、学習作業300は次いで、図3の確認手順304に進む。確認手順304では、コンベア10の測定された踏段速度を予め規定された踏段速度と比較することができる。先に論じたように、安全制御モジュール200は、予めプログラムされ、一連の許容可能な公称踏段速度を提供されることができる。確認手順304は、測定された踏段速度を、利用できる予め規定された踏段速度それぞれ、例えば、0.50m/s、0.65m/s、0.75m/s、0.90m/sと比較して、最適な合致、または測定された踏段速度に最も近い予め規定された踏段速度を決定する。確認手順304はさらに、測定された踏段速度が、予め規定された公差、例えば、選択された予め規定された踏段速度の5%または10%内にあるかを決定することができる。付加的な手段として、確認手順304はさらに、学習手順302の間にサンプリングされた測定値が、予め規定された公差内で互いに相互相関するかを決定することができる。結果次第で、確認手順304は、学習作業300を拒否するか、あるいは継続することができる。例えば、確認手順304は、測定された踏段速度と、個々の測定値間の相互相関との両方ともそれぞれの予め規定された公差内にない場合にのみ学習作業300を拒否するように構成され得る。代替として、確認手順304は、測定された踏段速度と、個々の測定値間の相互相関とのいずれか一方がそれぞれの予め規定された公差内にない場合に学習作業300を拒否するように構成され得る。学習作業300が拒否または阻止された場合、学習作業300は、自動的に、または手動による使用者の入力により再び開始され得る。
【0024】
確認手順304が成功すると、学習作業300は、図3に示すように、較正手順306に進むことができる。学習されたコンベア10の作動および機械特性に基づいて、較正手順306は、特定のコンベア10のための新たな安全関数を自動的に生成し、参照用に安全関数を記憶することができる。代替として、較正手順306は、既存の安全関数の制御パラメータを自動的に調節することができる。特に安全関数は、コンベア10の監視に使用する一連の安全制御パラメータまたは閾値を含むことができる。安全パラメータは、コンベア踏段速度、踏段の前進および後退の動き、踏段の欠損の検出、停止距離、手すりの速度、および同様のものなどに関係する閾値を含むことができる。より重要なことは、生成された安全関数およびそのパラメータが、安全法規および規定の遵守を確保するために予め規定された公称踏段速度に従って自動的に較正されることである。
【0025】
上述に基づいて、本開示によって、従来技術の不備を克服する安全装置を、エスカレータ、動く歩道、および同様のものなどのコンベアに設け得ることが理解できる。より具体的には、本開示によって、広範囲のコンベアの種類のいずれか1つに自動的に適合可能であるとともに同時にコンベアに特有の安全法規および規定の遵守を確保可能な安全制御装置が提供される。適合可能であるので、安全制御モジュールによって、任意の環境のコンベアの製造、設置、および保守が容易になる。自動的であるので、安全制御モジュールによって、コンベアの保守のための中断時間と費用が最小限に抑えられる。さらに、保守技術者による保守の必要性が低減されるので、安全制御モジュールによって、人為ミスにより持ち込まれる故障が付加的に最小限に抑えられる。
【0026】
特定の実施例についてのみ説明したが、当業者には、上述の説明から代替物および変形物が明らかとなるであろう。これらと他の代替物は、均等物でありかつ本開示の趣旨および範囲に含まれるとみなされる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の乗降場(12)と第2の乗降場(14)の間に延在する複数の踏段(16)であって、踏段チェーンによって互いに接続され、主駆動部材(17)によって駆動される複数の踏段(16)を有するコンベア(10、10a)の安全制御パラメータを自動的に調節する装置(100、100a)であって、
少なくとも踏段速度信号と踏段検出信号とを出力するように構成された複数のセンサ(102、102a、104、104a、106、106a)と、
センサ(102、102a、104、104a、106、106a)と通信しかつコンベア制御ユニット(90、90a)と通信する安全制御モジュール(200、200a)であって、センサ(102、102a、104、104a、106、106a)の出力に基づいてコンベア(10、10a)の作動および機械特性を自動的に決定し、予め規定された公称仕様に基づいてコンベア(10、10a)の作動特性を確認し、確認されたコンベア(10、10a)の作動特性に対応する安全制御パラメータをコンベア作動の監視に使用するために決定するように構成された安全制御モジュール(200、200a)と、
を備えることを特徴とする装置(100、100a)。
【請求項2】
安全制御モジュール(200、200a)はさらに、コンベア(10、10a)の作動特性を監視し、有意の偏りを補正する命令をコンベア制御ユニット(90、90a)に通信することを特徴とする請求項1記載の装置(100、100a)。
【請求項3】
安全制御モジュール(200、200a)は、踏段の速度、後退の動き、踏段の検出、および停止距離を監視することを特徴とする請求項2記載の装置(100、100a)。
【請求項4】
複数のセンサ(102、102a、104、104a、106、106a、108、108a)は、手すり速度信号をさらに出力するように構成されることを特徴とする請求項1記載の装置(100、100a)。
【請求項5】
作動特性は少なくとも、踏段速度信号の平均時間および踏段検出信号の平均時間を計算することによって決定されることを特徴とする請求項1記載の装置(100、100a)。
【請求項6】
機械特性は、コンベアの踏段の大きさおよび踏段の速度センサの種類を含むことを特徴とする請求項1記載の装置(100、100a)。
【請求項7】
安全制御モジュール(200、200a)は、測定された踏段速度を予め規定された踏段速度と比較することによってコンベア(10、10a)の作動特性を確認することを特徴とする請求項1記載の装置(100、100a)。
【請求項8】
安全制御モジュール(200、200a)はさらに、センサ出力信号間の相互相関を予め規定された公差と比較することを特徴とする請求項7記載の装置(100、100a)。
【請求項9】
コンベア(10、10a)の作動特性に関係する情報を安全制御モジュール(200、200a)が表示するのに使用されるユーザインターフェースをさらに備えることを特徴とする請求項1記載の装置(100、100a)。
【請求項10】
第1の乗降場(12)と第2の乗降場(14)の間に延在する複数の踏段(16)であって、踏段チェーンによって互いに接続され、主駆動部材(17)によって駆動される複数の踏段(16)を有するコンベア(10、10a)の安全制御パラメータを自動的に調節する方法(300)であって、
踏段速度センサ(102、102a)と踏段検出センサ(104、104a、106、106a)の出力に基づいてコンベア(10、10a)の作動および機械特性を決定し、
予め規定された公称仕様に基づいてコンベア(10、10a)の作動特性を確認し、
確認されたコンベア(10、10a)の作動特性に対応する安全制御パラメータをコンベア作動の監視に使用するために決定する、
ことを含むことを特徴とする方法(300)。
【請求項11】
コンベア(10、10a)の作動特性を監視し、有意の偏りを補正する命令をコンベア制御ユニット(90、90a)に通信することをさらに含むことを特徴とする請求項10記載の方法(300)。
【請求項12】
コンベア(10、10a)の作動および機械特性を決定することはさらに、手すりセンサ(108、108a)の出力に基づくことを特徴とする請求項10記載の方法(300)。
【請求項13】
コンベア(10、10a)の作動特性は、少なくとも踏段速度信号の平均時間および踏段検出信号の平均時間を含むことを特徴とする請求項10記載の方法(300)。
【請求項14】
機械特性は、コンベア(10、10a)の踏段の大きさおよび踏段の速度センサの種類を含むことを特徴とする請求項10記載の方法(300)。
【請求項15】
前記の確認することは、測定された踏段速度を予め規定された踏段速度と比較することを含むことを特徴とする請求項10記載の方法(300)。
【請求項16】
第1の乗降場(12)と第2の乗降場(14)の間に延在する複数の踏段(16)であって、踏段チェーンによって互いに接続され、主駆動部材(17)によって駆動される複数の踏段(16)を有するコンベア(10、10a)の安全制御パラメータを自動的に調節する方法(300)であって、
予め規定された長さの時間で踏段速度センサ(102、102a)と踏段検出センサ(104、104a、106、106a)の出力信号をサンプリングし、
踏段速度出力信号に基づいて測定された踏段速度を決定し、
踏段速度出力信号の周波数に基づいて踏段速度センサの種類を決定し、
踏段速度出力信号と踏段検出出力信号の間の相関に基づいてコンベアの踏段の大きさを決定し、
測定された踏段速度を予め規定された踏段速度と比較し、
センサ出力信号間の相互相関を予め規定された公差と比較し、
測定された踏段速度およびセンサ出力信号間の相互相関の両方ともが予め規定された公差内にある場合にのみ安全制御パラメータを決定する、
ことを含むことを特徴とする方法(300)。
【請求項17】
出力信号をサンプリングすることはさらに、予め規定された長さの時間で手すりセンサ(108、108a)の出力信号をサンプリングすることを含むことを特徴とする請求項16記載の方法(300)。
【請求項18】
出力信号をサンプリングすることは、通常のコンベアの作動中にのみ使用者の入力に応じて開始されることを特徴とする請求項16記載の方法(300)。
【請求項19】
踏段速度出力信号と踏段検出出力信号の間の相関は、踏段検出出力信号の時間当たりの踏段速度信号パルスの数を用いて決定されることを特徴とする請求項16記載の方法(300)。
【請求項20】
安全制御パラメータは、踏段の速度、後退の動き、踏段の検出、および停止距離の閾値を含むことを特徴とする請求項16記載の方法(300)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2012−524008(P2012−524008A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−507184(P2012−507184)
【出願日】平成21年4月20日(2009.4.20)
【国際出願番号】PCT/US2009/041116
【国際公開番号】WO2010/123489
【国際公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【出願人】(591020353)オーチス エレベータ カンパニー (402)
【氏名又は名称原語表記】OTIS ELEVATOR COMPANY
【Fターム(参考)】