説明

安定な水性G‐CSF製剤

【課題】 本発明は、医薬用途に適した水性G‐CSF製剤であって、機械的ストレスがかかる条件下や高温下であっても、大量の各種安定化剤を必要とせずに長期に亘り安定な水性G‐CSF製剤の提供。
【解決手段】 本発明は、pHが3.5〜4.8である安定なグルタメート緩衝化G‐CSF製剤に関する。更に本発明は、該製剤から得られる凍結乾燥物及び粉末、及び該凍結乾燥物及び粉末を含む医薬キットに関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、安定な水性G‐CSF製剤、特に、G‐CSF凍結乾燥物及びG‐CSF粉末のいずれか、並びにこれらの凍結乾燥物及びG‐CSF粉末のいずれかを含有する医薬キットに関する。
【背景技術】
【0002】
顆粒球コロニー刺激因子(G‐CSF)は、サイトカインファミリーに属する天然の増殖因子である。G‐CSFは、造血において重要な役割を果たすと共に、好中球及び好中球の子孫細胞(neutrophilic successor cells)の成熟、増殖、分化、生存率を向上させる。臨床的には、G‐CSFは、主に腫瘍の抑制、特に、化学療法後の好中球減少症の治療に使用され、また、骨髄移植、及び感染症の治療にも用いられる。
【0003】
天然型ヒトG‐CSFは、5つのシステイン残基を有する約20kDa糖タンパク質である。これらシステイン残基のうちの4つが、タンパク質の活性に対して重要である2つの分子内ジスルフィド架橋を形成している。G‐CSFは天然源からは少量しか得られないので、主に、組換型G‐CSFが薬剤の調製に使用される。組換型G‐CSFは、例えば、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞等の哺乳動物細胞内、又は大腸菌等の原核細胞内で当該タンパク質を発現させることで得ることができる。哺乳動物細胞内で発現する組換体タンパク質は、天然G‐CSFとは異なる糖鎖付加パターンを有する。大腸菌内で発現するタンパク質はグリコシル化されていないが、これらのタンパク質は、更に、N末端メチオニン残基を有してもよい。
【0004】
該タンパク質は疎水性が高いため、G‐CSF製剤、特に、該タンパク質が非グリコシル化組換体である場合には、比較的不安定である。当該分子は、バイアル、シリンジ等の壁面に容易に吸着して二量体やより高次の凝集体を形成する。更には、アミド分解、酸化、ジスルフィド架橋の分解、又はタンパク質分解等の化学修飾を受け易い。これにより、多くの場合、特に該タンパク質の保存が長期に及んだ場合に活性が失われる。これは、例えば、G‐CSFを長期間に亘って一定用量投与しようとする場合には、コスト高となるだけでなく、治療上の理由からも望ましくない。更に、例えば、二量体化、酸化、分解等で形成された産物は、望ましくない免疫応答を惹起し得る。更に、従来のG‐CSF製剤は、例えば、輸送中に液体製剤が振動した結果として起こり得るような機械的ストレスに敏感であると共に、単回の又は繰り返し行われる凍結融解に対しても敏感である。これにより、高次凝集体の形成や失活に至ることもある。
【0005】
特許文献1は、有効成分としてG‐CSFを含み、該有効成分を安定化させる医薬的に許容される界面活性剤、サッカライド、タンパク質、及び高分子量化合物のいずれかを少なくとも1つ含む薬剤を開示している。脂肪族脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル等の界面活性剤が、ヒト血清アルブミン及びマンニトールと組み合わせて使用される。使用される界面活性剤の量は、好ましくは、G‐CSF 1重量部に対して1重量部〜10,000重量部である。pH値が7.4に規定される水性リン酸緩衝化製剤は、4℃で長期に亘り安定である。しかしながら、抗原性のため、ヒト及び動物由来のタンパク質及びペプチドが望ましくない免疫学的反応を惹起し得る。
【0006】
特許文献2は、pH値が2.75〜4.0であり、且つ伝導率が低いG‐CSFであって、長期に亘り保存することができるG‐CSFを開示している。好ましくは、G‐CSFの凝集を避けるために、これらの製剤には緩衝剤が使用されない。もし使用する場合は、緩衝物質として2mM未満の少量でカルボン酸、クエン酸、乳酸、又は酒石酸を使用することができる。しかしながら、これらの条件では、pH値が4.0を超える製剤を長期間安定化させることができない。
【0007】
非特許文献1は、酢酸ナトリウム(pH4.0)10mM、マンニトール5%、及びポリソルベート80 0.004%を含む非グリコシル化組換型G‐CSFの安定化組成物を開示している。そのような組成物は2℃〜8℃で24ヶ月間よりも長期に亘り安定である。
【0008】
特許文献3は、酢酸、乳酸、クエン酸、マレイン酸、リン酸、アルギニン及びそれらの塩を緩衝剤として含む水性G‐CSF医薬製剤を開示している。これらの製剤は、pH値の範囲が2.5〜5.0及び7〜8である。これらの製剤においては、例えば、溶液の振動中に起こり得る機械的ストレスによる、G‐CSFの多量体及び凝集体の形成が低減される。
【0009】
特許文献4は、ヒトタンパク質、特に、エリスロポエチンの安定化リン酸緩衝化製剤について記載しており、尿素、アミノ酸、及び洗浄剤を加えることで安定化される。
【0010】
特許文献5は、pHが5〜7であるリン酸緩衝化G‐CSF含有製剤を開示しており、G‐CSFの1重量部に対して1重量部以下の量で界面活性剤が含まれる。
【0011】
特許文献6は、凍結乾燥G‐CSF医薬製剤、及び該凍結乾燥G‐CSF医薬製剤から得られる水性製剤を開示する。これらの製剤は、マルトース、ショ糖、ラフィノース、トレハロース、又はアミノ糖を安定剤として含む。好ましくは、アルギニン緩衝剤を用いてpHを安定化させる。抗酸化剤、還元剤、及びグルタミン酸等のアミノ酸を更に添加しても、凍結乾燥物の安定性が大きく影響されることはなかった。
【0012】
特許文献7は、pHが5〜7で長期間安定するG‐CSF製剤を開示しており、該製剤は、リジン、ヒスチジン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、トレオニン、アスパラギンからなる群の1つ以上のアミノ酸と1つ以上の疎水性アミノ酸とを含む。G‐CSF分子におけるメチオニン残基の酸化を防ぐために、アミノ酸メチオニンが製剤に添加される。
【0013】
特許文献8は、抗菌剤の不安定化効果を緩和するために、抗菌剤と共にグリセロール、ソルビトール、サルコシン、又はスクロース等の浸透圧調整剤を含む水性G‐CSF含有製剤を開示している。緩衝剤の例としては、アセテート、スクシネート、グルコナート、シトレート、及びヒスチジン等が挙げられる。
【0014】
特許文献9は、広いpH範囲で安定なスクシネート及びタータレート緩衝化組成物を開示している。
【0015】
特許文献10は、医薬タンパク質含有組成物を開示しており、該組成物は、タンパク質それ自体によって緩衝化される。多数の医薬タンパク質が記載されているが、そのうちの1つのタンパク質はフィルグラスチムである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】独国特許出願公開第3723781A号明細書
【特許文献2】欧州特許出願公開第0373679A号明細書
【特許文献3】国際公開第94/14466号
【特許文献4】欧州特許出願公開第0306824A号明細書
【特許文献5】欧州特許出願公開第1060746A号明細書
【特許文献6】国際公開第94/14465号
【特許文献7】欧州特許出願公開第1197221A号明細書
【特許文献8】米国特許出願公開第2007/0053871A号明細書
【特許文献9】国際公開第2005/039620号
【特許文献10】国際公開第2006/138181号
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Herman,A.C.等(“Characterisation, Formulation, and Stability of Neupogen(登録商標)(Filgrastim), a Recombinant Human Granulocyte−Colony Stimulating Factor.” In: Formulation Characterisation and Stability of Protein Drugs, pp.303−328, R. Pearlman and Y.J. Wang, Eds., Plenum Press, New York, 1996)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、医薬用途に適した水性G‐CSF製剤であって、機械的ストレスがかかる条件下や高温下であっても、大量の各種安定化剤を必要とせずに長期に亘り安定な水性G‐CSF製剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の目的は、pHが3.5〜4.8である液状水性グルタメート緩衝化G‐CSF製剤によって達成されている。
【0020】
更に、本発明は、前記製剤から得られる凍結乾燥物、及び粉末に関する。
【0021】
驚くべきことに、pH値が3.5〜4.8であるグルタメート緩衝化水性G‐CSF製剤が、アルギニン等のグルタミン酸/グルタメート以外の糖類、アミノ糖類、アミノ酸類を実質的に含まない場合でも、高温で長期に亘り安定であることを見出した。凝集体(G‐CSFの二量体及びより高次の多量体)の形成は、低レベルでしか生じず、長期間保存されても活性が維持される。例えば、G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末を戻す時、G‐CSF製剤を濾過する時、バイアルに充填する時、シリンジに装填する時、輸送中、並びに繰り返し凍結融解する時などに生じ得る機械的ストレスのかかる条件下であっても、G‐CSFタンパク質凝集体の好ましくない形成又はG‐CSFタンパク質の他の副反応が十分に防止される。
【0022】
本発明は、更に、本発明の製剤の調製方法に関し、pH値が3.5〜4.8であるグルタメート緩衝水溶液とG‐CSFとを組み合わせる工程を含む。
【0023】
本発明は、更に、本発明の製剤の調製用の医薬キットに関し、該医薬キットは、物理的に分離された次のa)及びb)を含む。
a)G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末。
b)G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末を戻すためのpH値が3.5〜4.8であるグルタメート緩衝水溶液。
【図面の簡単な説明】
【0024】
本発明の更なる実施形態は、特許請求の範囲、以下の記載及び図面から明らかである。
【図1】図1は、180apmで16時間、及び230apmで24時間振とうし、120秒間ボルテックスした後の、pH値の異なるグルタメート、アセテート、及びシトレート緩衝化G‐CSF製剤における、SEC(ピーク面積%として示す)によって測定される単量体G‐CSFの含量を示す図である。
【図2】図2は、120秒間ボルテックス、及び180apmで16時間振とうした後の、等張化剤及び界面活性剤を含まないpHが4.4であるアセテート、及びグルタメート緩衝化G‐CSF製剤における、SEC(ピーク面積%として示す)によって測定される単量体G‐CSF、及びG‐CSF凝集体の含量を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の製剤におけるG‐CSFタンパク質は、如何なる哺乳動物G‐CSFでもよく(特にヒトG‐CSF)、造血における生物活性が哺乳動物G‐CSFタンパク質、特にヒトG‐CSFタンパク質と実質的に同一である限り、それらの変異体若しくは断片でもよい。本明細書中で使用される、用語「G‐CSF」は、天然源由来のG‐CSF、合成又は組換型G‐CSF、並びにそれらの変異体及び断片を含み、これらの変異体及び断片としては、例えば、原核生物中でG‐CSF遺伝子を発現させる際に得られるN末端メチオニン残基を有するヒト組換体タンパク質、G‐CSFの融合タンパク質、天然のG‐CSFのアミノ酸を1つ以上置換、欠失、又は挿入することにより得られるG‐CSFタンパク質を挙げることができる。G‐CSFは、グリコシル化されていてもされていなくてもよい。非グリコシル化G‐CSFは、例えば、大腸菌等の原核細胞中で発現させることにより得られる。一方、グリコシル化G‐CSFは、天然源から単離するか、CHO細胞等の真核細胞中で発現させるか、又は人工的にグリコシル化することにより得ることができる。人工的に改変されたG‐CSFは、例えば、酵素的グリコシル化、又は化学的PEG化により得ることができる。本発明の製剤に有用なG‐CSF変異体が、例えば、欧州特許出願公開第0456200A号明細書に開示されている。好ましくは、組換型非グリコシル化G‐CSFが、本発明の製剤に使用される。より好ましい実施形態においては、G‐CSFは、独国特許出願公開第3723781A号明細書に示されるヒトG‐CSFのアミノ酸配列、又は該アミノ酸配列に由来する配列を含む。
【0026】
本発明の製剤の緩衝システムは、本質的にグルタミン酸/グルタメートシステムからなり、即ち、本発明の製剤は、本質的に他の緩衝剤を含まない。本発明で使用するグルタミン酸/グルタメートシステムは、例えば、まずグルタミン酸及び/又はその塩を使用し、次いで適切な無機酸又は塩基(例えば、塩酸、アルカリ水酸化物、若しくはアルカリ土類水酸化物)を使用して、pHを所望の値に調整することで調製できる。生理学的に許容されるグルタミン酸塩が好ましく、例えば、アルカリ塩、アルカリ土類塩、又はアンモニウム塩等が挙げられる。アルカリ塩又はアンモニウム塩が好ましく、特に、モノナトリウム塩が好ましい。好ましくは、緩衝剤は、水酸化ナトリウム等の適切な無機塩基をグルタミン酸に添加してそのpH値を調整することにより調製される。
【0027】
本発明の製剤のpH値は、3.5〜4.8であり、好ましくは、3.7〜4.7である。より好ましくは、pHは3.9〜4.6、例えば、4.2〜4.6、より詳細には、4.3〜4.5である。
【0028】
グルタメート緩衝剤の濃度は、所望のpH値でのpH安定化効果と、十分な緩衝能とが得られるように有利に調整される。通常、グルタメート緩衝剤の濃度は、少なくとも0.5mM、好ましくは、1mM〜100mM、より好ましくは、2mM〜80mMである。緩衝剤の濃度が2mM〜40mM、特に2mM〜25mM、例えば、5mM〜15mMである場合には、十分な安定性が提供されると共に、注入部位での組織における望ましくない反応を避けるのに十分に低い濃度となろう。しかしながら、緩衝剤の濃度が40mM以上、例えば、40mM〜60mMである場合には、特定のストレス条件下での安定性を更に増加させることができる。
【0029】
本発明の製剤のG‐CSFの濃度は、使用目的に依存する。上限濃度は、緩衝剤中でのG‐CSFの溶解度によって決まる。医薬製剤中には、G‐CSFが医薬的に有効な量で存在し、その濃度は、通常、5mg/mL以下である。通常、濃度は、0.0001mg/mL〜5mg/mL、好ましくは、0.0005mg/mL〜4mg/mL、より好ましくは、0.001mg/mL〜2.5mg/mL、最も好ましくは、0.01mg/mL〜2.0mg/mL、例えば、0.1mg/mL〜1.5mg/mLである。しかしながら、バルク溶液(より高濃度の開始溶液)において、濃度は、10mg/mL以上であってもよい。
【0030】
本発明の好適な実施形態において、製剤は、1つ以上の界面活性剤を含み、特に、1つ以上の非イオン性界面活性剤を含む。好ましくは、非イオン性界面活性剤は、脂肪アルコールエトキシレート類、アルキルポリグリコシド類、ポリオキシアルキレン類、ポリソルベート類、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される。ポリオキシアルキレン類であるポリオキシアルキレンブロック共重合体等(例えば、ポロキサマー188(商品名プルロニック(Pluronic)(登録商標)F68))やポリソルベート類(即ち、脂肪族脂肪酸のポリオキシエチレンソルビタンエステル)が好ましい。ポリソルベート類、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート(商品名ツイーン(Tween)(登録商標)20)、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート(商品名ツイーン(登録商標)40)、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート(商品名ツイーン(登録商標)60)、ポリオキシエチレンソルビタントリステアレート(商品名ツイーン(登録商標)65)、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(商品名ツイーン(登録商標)80)、及びポリオキシエチレンソルビタントリオレエート(商品名ツイーン(登録商標)85)がより好ましい。ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート及びポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートが最も好ましい。界面活性剤は、好ましくは、5mg/mL未満、例えば、1mg/mL以下の量で製剤に添加される。界面活性剤、特にポリソルベート類を、0.001mg/mL〜0.4mg/mLの量で使用することが好ましく、より好ましくは、0.005mg/mL〜0.3mg/mL、最も好ましくは、0.01mg/mL〜0.2mg/mLの量で使用する。
【0031】
有利なことに、本発明の製剤は患者の血液と等張である。これは特に、注射又は注入等の医療目的に使用される場合に有利である。グルタメート緩衝剤の濃度を適切に調整することで、所望の張度を提供しながら、更に等張化剤、特に糖アルコール類を添加することが好ましい。適切な糖アルコール類は、例えば、マンニトール及びソルビトールが挙げられ、ソルビトールが特に好ましい。等張化剤の量は、通常、製剤の200mg/mLまで添加される。等張化剤の使用量は、好ましくは、100mg/mLまでであり、より好ましくは、5mg/mL〜80mg/mL、例えば、10mg/mL〜70mg/mL、最も好ましくは、20mg/mL〜60mg/mLである。好ましくは、本発明の製剤は、本質的に糖類及びアミノ糖類を含まない。本明細書中で、特定の分子に関して使用される用語「本質的に含まない」とは、仮に該分子が存在したとしても、該分子の量が微量を超えず、好ましくは、製剤の0.01μg/mL未満であることを意味する。
【0032】
好ましくは、本発明の製剤は、グルタミン酸/グルタメート以外のアミノ酸又はアミノ酸塩を本質的に含まない。特に、本発明の製剤は、アルギニン及び/又はその塩を本質的に含まない。
【0033】
必要に応じて、本発明の製剤は、1つ以上の還元剤、特に、硫黄含有還元剤を含んでもよい。好適な還元剤としては、チオグリセロール、グルタチオン、ジチオグリコール、チオジグリコール、N‐アセチルシステイン、チオソルビトール、チオエタノールアミン、チオ硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、ピロ亜硫酸ナトリウム、ジチオトレイトール等が挙げられる。還元剤の適切な使用濃度は、0.1mM〜100mM、好ましくは、1mM〜50mMである。しかしながら、還元剤を使用する必要はなく、従って、本発明の製剤は、好ましくは還元剤を含まない。
【0034】
必要に応じて、本発明の製剤は、1つ以上の抗酸化剤を含んでもよい。好適な抗酸化剤としては、例えば、アスコルビン酸、又はその塩、アスコルビン酸パルミテート、アスコルビン酸ステアレート、没食子酸トリアミル、α‐トコフェロール、トコフェロールアセテート、ブチルヒドロキシアニソール等が挙げられる。抗酸化剤の適切な使用濃度は、0.1mM〜100mM、好ましくは、1mM〜50mMである。しかしながら、抗酸化剤を使用する必要はなく、従って、本発明の製剤は、好ましくは抗酸化剤を含まない。
【0035】
必要に応じて、本発明の製剤は、1つ以上のカオトロピック剤を含んでもよい。好適なカオトロピック剤としては、例えば、尿素、グアニジン塩酸塩、及びグアニジンイソシアネート等が挙げられる。カオトロピック剤の適切な使用濃度は、0.1mM〜50mM、好ましくは、1mM〜30mMである。しかしながら、本発明の製剤はカオトロピック剤の使用を必要としないので、本発明の製剤は、好ましくはカオトロピック剤を含まない。
【0036】
本発明の製剤は、カルボン酸(例えばシトレート)等の錯化剤を含んでもよいが、その様な物質の添加は好ましくない。本発明の製剤は、好ましくは、グルタミン酸/グルタメート以外のカルボン酸、又はカルボン酸塩を本質的に含まない。
【0037】
必要に応じて、本発明のG‐CSF製剤は、また、ヒト血清タンパク質等の更なるタンパク質及びタンパク質様分子を含んでもよい。しかしながら、異種タンパク質に起因するリスクのため、本発明の製剤は、安定剤としてのタンパク質を本質的に含まない。
【0038】
本発明の好適な実施形態においては、本発明の水性製剤は、水性グルタメート緩衝剤、好ましくは、Na‐グルタメート緩衝剤からなり、単独成分として(as the sole components)、有効成分としてのG‐CSF分子、界面活性剤、好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート(商品名ツイーン(登録商標)80)、及び等張化剤、好ましくは、糖アルコール、例えばソルビトール等を含む。
【0039】
本発明のG‐CSF製剤は、保存寿命、即ち保存安定性が高く、長期間保存した後であっても、G‐CSFタンパク質の吸着、分解又は凝集による損失は極く僅かである。好ましくは、5℃で24ヶ月間長期保存後における本発明の製剤のG‐CSFタンパク質含量(以下、「G‐CSF含量」ともいう)は、例えば、以下に示すRP‐HPLCによって測定される、該製剤の初期G‐CSF含量の少なくとも95%である。25℃で6ヶ月間長期保存後における本発明の製剤のG‐CSF含量は通常、例えば、RP‐HPLCによって測定される、該製剤の初期G‐CSF含量の少なくとも90%である。
【0040】
本発明の製剤は、それ自体公知の方法で調製することができる。通常、緩衝物質(例えば、グルタミン酸又はその塩)及び、任意で、界面活性剤及び等張化剤等の他の添加剤を、通常、水等の適量の水性溶媒に溶解させる。必要に応じて、そのpH値は、前述の適切な酸又は塩基を用いて調整される。無菌フィルタで濾過を行う等の滅菌工程を経て、G‐CSFが所望の濃度で添加される。しかしながら、始めにG‐CSF水溶液を準備して、グルタメート緩衝剤システムを使用してそのpHを所望の値に調整することも可能である。
【0041】
本発明の製剤は、任意の全ての成分が生理学的に許容される必要がある医薬調製物として特に有用である。これらの医薬調製物は、多様な適用形態で使用することができるが、注射又は注入、特に、静脈内、筋肉内、皮下投与用の調製物であることが好ましい。しかしながら、本発明の製剤はまた、ヒドロゲル又はリポソーム等の適用形態の調製物に使用してもよい。本発明の医薬品は、G‐CSFを用いることができる如何なる適応症に対しても使用することができ、例えば、好中球減少症の治療、骨髄移植、感染症の治療、及び腫瘍性疾患の治療等に対して使用することができる。
【0042】
G‐CSF含有凍結乾燥物及び粉末は、それ自体公知の方法、例えば、凍結乾燥、又は噴霧乾燥によって本発明の水性製剤から得ることができる。凍結乾燥物及び粉末等を戻すことで、高温でも長期に亘り安定なG‐CSF製剤が得られる。
【0043】
本発明の水性製剤を簡単に調製するために、該製剤の成分は医薬キットの形態で提供されていてもよい。その様なキットは、物理的に分離された次のa)及びb)を含む。
a)G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末。
b)G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末を戻すためのpH値が3.5〜4.8であるグルタメート緩衝水溶液。
本発明の製剤に望ましい、界面活性剤及び等張化剤等の任意の成分が、凍結乾燥物/粉末部分及び/又は水溶液に含まれていてもよい。この様に、本発明の製剤は、例えば、医療関係者によって所望の時間に調製することができる。
【実施例】
【0044】
次に、以下の実施例及び図面を挙げて本発明をより具体的に示すが、本発明は以下の実施例及び図面に限定されるものではない。
【0045】
材料及び方法
1.緩衝化G‐CSF製剤の調製
2mg/mLまでの濃度のG‐CSF水溶液を、各緩衝溶液を用いて常温で希釈し、G‐CSF含量を0.6mg/mL又は0.96mg/mLとした。まず各酸(グルタミン酸、酢酸、コハク酸)又は塩基性塩(クエン酸ナトリウム、Tris)成分を所望のモル濃度で加え、水酸化ナトリウム溶液、又は塩酸溶液をそれぞれ使用してpHを所望の値に調整することにより緩衝溶液を調製した。必要に応じて、各緩衝溶液に、所望の量の界面活性剤及び等張化剤を更に含有させた。これら混合溶液を無菌フィルタ(ポアサイズ0.2μmミリポア(登録商標))で濾過し、アリコートを、4mL2Rガラスバイアル又は第1級加水分解性クラスのガラスからなる1mLシリンジに満たし、ゴム栓で閉じた。
【0046】
2.機械的ストレス条件
2.1振動ストレス
振動ストレスは、空気‐水界面で運動と再生(motion and renewal)を生じる振動板の水平運動により生じさせた。G‐CSF製剤を1mLずつ含む2Rバイアルを、シェーカーの台上に水平に載置し、周囲温度を制御して、180apm又は230apm(毎分振幅)で攪拌した。16時間及び24時間後、各時点毎に3つのバイアルを取り除き、タンパク質凝集体(二量体及びより高次の多量体G‐CSF分子)を分析した。対照として、ストレスを受けていない3つのバイアルを露光し、バイアルは2℃〜8℃で分析した。更に、マトリックス効果を排除するためにG‐CSFを含まない各溶液を含むバイアルを、全てのストレス実験に用いた。
【0047】
2.2ボルテックスストレス
G‐CSF製剤1mLを含む2Rバイアルをボルテックスした。各サンプルを120秒間ボルテックスした。
【0048】
2.3凍結/融解サイクル
凍結/融解サイクルとして、サンプルを繰り返し凍結融解した。G‐CSF製剤1mLを含む2Rバイアルを5サイクル及び10サイクルで評価した。全てのサンプルを、凝集体が形成されるように測定前に30分間保持した。
【0049】
3.凝集体分析
3.1散乱光(濁度)測定による分析
濁度測定による凝集体分析のため、希釈していないG‐CSF製剤を、それ自体公知の方法で、G‐CSF標準溶液を参照としてHACH比濁計2100ANのガラスキュベットにおける散乱光測定により試験した。液体によって拡散偏向された散乱光を90度の角度で測定し、標準懸濁と比較した。測定値は、比濁計濁度単位(NTU)で与えられる。
【0050】
3.2非還元型SDS‐PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動法)
SDS‐PAGEによる凝集体分析は、非還元モードで、4%〜12%BIS‐TRISゲル上で行った。電気泳動は、例えば、欧州薬局方5.0に記載されている標準的な手順に従って行った。通常のプロトコルに従って銀染色法を行い可視化させた。単量体G‐CSFよりも高い分子量のバンドを数えた。
【0051】
3.3サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)
SECによる凝集体分析は、固定相として親水性シリカゲルを30℃で使用し、標準的な手順(PHARMEUROPA,Vol.19,No.1(2007)89頁,右コラム“Impurities with molecular masses higher than that of filgrastim”)に従って行った。溶出は、移動相としてリン酸緩衝炭酸水素アンモニウム溶液を流速0.5mL/分間で使用して行った。分光光度検出は、215nmで行った。クロマトグラムの定量から、G‐CSF単量体とより高次の凝集体が区別された。結果は、ピーク面積パーセント(ピーク面積%)で表される。
【0052】
3.4逆相高速液体クロマトグラフィー(RP‐HPLC)
RP‐HPLCによる長期保存後のサンプル中のG‐CSF含量の分析は、標準的な手順に従って行った(PHARMEUROPA,Vol.19,No.1(2007)91頁“Related proteins.”参照)。簡潔に記載すると、クロマトグラフィーは、固定相としてポアサイズ20nmのクロマトグラフィー用オクタデシルシリルシリカゲルと、長さ0.15m、直径4.6mmのカラムを使用して65℃の温度で行った。移動相は、水500mL、アセトニトリル499mL、トリフルオロ酢酸1mLからなる混合物とした。流速は1.0mL/minとし、分光光度検出は215nmで行った。タンパク質含量は、G‐CSF参照標準に対して測定した。
【0053】
実施例1
温度安定性に対する緩衝剤システムの効果
本発明のG‐CSF製剤の温度安定性及び保存寿命について調べるために、次に記載の各製剤を調製し、アセテート、スクシネート、及びTris等の一般的な緩衝剤と比較した。これらの実験で使用した各製剤を次の表1に示す。
【0054】
【表1】

【0055】
各製剤(それぞれ1mL)を、2℃〜8℃、25℃、37℃及び−15℃未満で7日間保存し、前述の非還元型SDS‐PAGEで安定性を測定した。具体的には、単量体G‐CSFよりも高い分子量のバンドの数を数え、このバンド数をT0(時間0)での標準G‐CSF調製物と比較することにより行った。単量体G‐CSFの他にゲル中に見られるバンドの数を表2に示す。
【0056】
【表2】

測定せず:目視検査で溶液が透明でなく、これは不溶解性凝集体が存在することを示す。
―:単量体G‐CSFの他にバンドが見られなかった。
【0057】
目視検査(データは示さず)で、アセテート又はグルタメート及び0.1%又は1.0%のポロキサマー188を含む全てのバイアルは、いずれの保存条件においても透明な溶液であった。これは、非還元型SDS‐PAGEの結果と十分に相関しており、単量体G‐CSF以外のバンドは検出できなかった。ポロキサマー188を0.1%含むスクシネート製剤は、目視検査で透明であるか又は小さな粒子が観察されただけであった。しかしながら、非還元型SDS‐PAGEでは別のバンドが検出でき、これは、全保存条件、T0においてさえも可溶性凝集体が存在することを示す。この効果は、−15℃未満で融解した後には特に顕著となる。界面活性剤がより高濃度であると(即ち、10mg/mLのポロキサマー188)安定化が可能となった。Tris含有製剤はいずれも繊維状粒子を示し、目視検査で混濁溶液であった。従って、SDS‐PAGEは行わなかった。
【0058】
結果は、グルタメート緩衝化製剤が、様々な温度においても、凍結融解後においてもG‐CSFを良好に安定化できることを示す。界面活性剤の濃度が低い場合でも、安定性はアセテート緩衝化製剤と同程度である。対照的に、スクシネート緩衝化製剤は、可溶性で視認できる凝集体を直ぐに形成し、高濃度の界面活性剤を含有する場合のみに安定化可能である。Tris緩衝化製剤は、試験したポロキサマー濃度がいずれの場合であっても、可溶性で視認できる凝集体を示す。
【0059】
実施例2
機械的ストレス条件下でのG‐CSF製剤の安定性
機械的ストレス条件下での本発明のG‐CSF製剤の安定性を調べるために、緩衝剤の濃度が5mM、10mM及び50mMで、且つpH値が4.0、4.4及び5.0であるG‐CSF製剤を調製した。アセテート緩衝剤及びシトレート緩衝剤との比較は、緩衝剤の濃度を10mMとして行った。これらの実験で使用された製剤を次の表3に示す。
【0060】
【表3】

【0061】
これら製剤は、未処理(T0)か、又は180apmで16時間、及び230apmで24時間振とうさせ、120秒間ボルテックスした。前記「材料及び方法」に記載されているように散乱光測定及びSECを行い、凝集体の形成を試験した。結果を表4及び図1に示す。
【0062】
【表4】

NTU:比濁計濁度単位
SEC純度[%]:SEC後の単量体G‐CSF(G‐CSF)及び凝集体のピーク面積パーセント
【0063】
表4及び図1の結果から、緩衝剤濃度がいずれの場合であっても、ストレス条件下におけるグルタメート緩衝化G-CSF製剤の安定性は、pH4.0及びpH4.4で最良であり、pH5.0で急速に低下することが分かる。安定性は、また、緩衝剤濃度が高くなることでも増加する。
【0064】
振とう
緩衝剤濃度が10mM、pH値が4.0であるグルタメート及びアセテート緩衝化製剤は、180apmで16時間振とう後、G‐CSF単量体レベルが極く僅かに減少しただけであったが(それぞれ99.1%及び99.4%)、pH値4.0のシトレート緩衝化製剤においてはG‐CSF単量体レベルが大幅に減少する(29.8%)。pH値4.4で16時間振とうすると、グルタメート緩衝化製剤のG‐CSF単量体レベルは90%に減少する。しかしながら、G‐CSF単量体レベルの減少は、アセテート緩衝化製剤(73.3%)及びシトレート緩衝化製剤(72.4%)でより顕著である。この現象はまた、グルタメート緩衝化製剤及びアセテート緩衝化製剤に関し、サンプルを230apmで24時間振とうした場合にも観察される。シトレート緩衝化製剤と比較して、グルタメート緩衝化製剤が僅かに劣っている。pH値が5.0でシトレート緩衝化製剤は最も高いG‐CSF単量体含量を有する。
【0065】
ボルテックス
pH及び緩衝剤濃度に関し、ボルテックス時のG‐CSF製剤の安定性は、前記振とう実験で観察されたパターンと同様のパターンに従う。緩衝剤濃度が10mMでは、試験した全てのpH値でグルタメート緩衝化製剤の安定性が、アセテート緩衝化製剤及びシトレート緩衝化製剤よりも優れるか、又は少なくとも同等である。
【0066】
実施例3
界面活性剤が存在しない場合の機械的ストレス条件下でのグルタメート緩衝化G‐CSF製剤の安定性
界面活性剤及び等張化剤等の他の成分を含まないグルタメート緩衝化G‐CSF製剤のストレス抵抗性を試験するために、次の水性製剤を調製した(表5)。
【0067】
【表5】

【0068】
各製剤は、180apmで16時間だけ振とうを続けた以外は、実施例2の記載と同様の振とう及びボルテックス条件下での安定性について試験した。結果を表6に示す。図2は、これらの製剤のSEC純度を示す。
【0069】
【表6】

【0070】
表6に示す結果から、グルタメート緩衝化製剤は、アセテート緩衝化製剤よりも振とう及びボルテックスに抵抗性があることが分かる。これは、前記の結果を裏付けるものであり、この好ましい作用が緩衝剤に起因し、界面活性剤とは独立したものであることを示す。
【0071】
実施例4
繰り返し凍結融解後のG‐CSF製剤の安定性
表4に示す製剤13及び19に対して、「材料及び方法」に記載の繰り返し凍結融解サイクルを行った。対照としてG‐CSFを含まない10mM水性グルタメート緩衝剤を使用した。サンプルは前記のSECで分析した。結果を次の表7に示す。
【0072】
【表7】

【0073】
表から分かるように、pH4.4のグルタメート緩衝化製剤は繰り返し凍結融解した場合でも安定しており、単量体G‐CSFの損失は見られない。その結果はアセテート緩衝化製剤と同等である。
【0074】
実施例5
G‐CSF製剤の長期安定性
種々のpH値でのグルタメート緩衝化G‐CSF製剤の長期安定性について、表8に記載の調製物を用いて試験した。
【0075】
【表8】

【0076】
前記調製物のサンプル0.5mLを、振とうせずに1mLシリンジ中に24ヶ月(5℃)又は6ヶ月(25℃)保存し、各サンプルを各時点で採取し、単量体G‐CSF及び凝集体を上述のSECで試験した。単量体G‐CSFの結果は、ピーク面積パーセントで次の表9に示す。
【0077】
同時に、サンプルを採取して、前記「材料及び方法」の3.4に記載されているようにG‐CSFのタンパク質含量[μg/mL]をRP‐HPLCで測定した。開始時点であるT0のG‐CSF含量を100%とし、開始時点のタンパク質含量に基づいて、各測定時間におけるG‐CSF含量を算出した。結果を次の表10に示す。
【0078】
【表9】

【0079】
表9に示す結果は、試験したpH値のいずれにおいても経時における単量体G‐CSFの損失が非常に少なく、且つグルタメート緩衝化G‐CSF製剤が、5℃で少なくとも24ヶ月間、25℃で少なくとも6ヶ月間十分に安定であることを示す。
【0080】
【表10】

【0081】
表10に示す結果は、試験したpH値いずれにおいても長期保存したG‐CSFタンパク質の損失が極く僅かであることを示す。試験した全てのサンプルにおいて、G‐CSF含量は、5℃で24ヶ月間保存した後では、初期G‐CSF含量の少なくとも95%であり、25℃で6ヶ月間保存した後では、初期G‐CSF含量の少なくとも90%である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
pHが3.5〜4.8であることを特徴とする安定な液状水性グルタメート緩衝化G‐CSF製剤。
【請求項2】
製剤のpHが、3.7〜4.7、好ましくは、3.9〜4.6、及びより好ましくは、4.2〜4.6である請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
グルタメートが、グルタミン酸及びその塩の少なくともいずれかの形態として、少なくとも0.5mM、好ましくは2mM〜100mMの濃度で存在する請求項1から2のいずれかに記載の製剤。
【請求項4】
G‐CSFが、0.0001mg/mL〜5mg/mL、好ましくは、0.0005mg/mL〜4mg/mL、より好ましくは、0.01mg/mL〜2.0mg/mL、最も好ましくは、0.1mg/mL〜1.5mg/mLの濃度で存在する請求項1から3のいずれかに記載の製剤。
【請求項5】
非イオン性界面活性剤を更に含む請求項1から4のいずれかに記載の製剤。
【請求項6】
非イオン性界面活性剤が、脂肪アルコールエトキシレート類、アルキルポリグリコシド類、ポリオキシアルキレン類、ポリソルベート類、及びこれらの2つ以上の混合物からなる群から選択される請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
界面活性剤が、ポリソルベート若しくはポリソルベート類の混合物であり、好ましくは、ポリオキシエチレンソルビタンモノラウレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエート、ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノパルミテート、ポリオキシエチレンソルビタントリオレエート、及びポリオキシエチレンソルビタントリステアレートからなる群から選択されるポリソルベート若しくはポリソルベート類の混合物である請求項5から6のいずれかに記載の製剤。
【請求項8】
等張化剤を更に含む請求項1から7のいずれかに記載の製剤。
【請求項9】
等張化剤が、ソルビトールである請求項8に記載の製剤。
【請求項10】
製剤が、アルギニン及びその塩のいずれかを本質的に含まない請求項1から9のいずれかに記載の製剤。
【請求項11】
製剤が、グルタミン酸/グルタメート以外のアミノ酸及びアミノ酸塩のいずれかを本質的に含まない請求項1から10のいずれかに記載の製剤。
【請求項12】
製剤が、糖類及びアミノ糖類を本質的に含まない請求項1から11のいずれかに記載の製剤。
【請求項13】
5℃で24ヶ月間長期保存後の製剤のG‐CSF含量が、RP‐HPLCで測定され、初期G‐CSF含量の少なくとも95%である請求項1から12のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
25℃で6ヶ月間長期保存後の製剤のG‐CSF含量が、RP‐HPLCで測定され、初期G‐CSF含量の少なくとも90%である請求項1から13のいずれかに記載の製剤。
【請求項15】
医薬的に許容される製剤である請求項1から14のいずれかに記載の製剤。
【請求項16】
医薬製剤が、注射又は注入用溶液である請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
請求項1から16のいずれかに記載の水性製剤を凍結乾燥又は噴霧乾燥することによりそれぞれ得られることを特徴とするG‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末。
【請求項18】
請求項15及び16のいずれかに記載の水性製剤を調製するための医薬キットであって、
a)G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末;及び
b)前記G‐CSF含有凍結乾燥物又は粉末を戻す(reconstituting)ためのpH値が3.5〜4.8であるグルタメート緩衝水溶液
が物理的に分離されて含むことを特徴とする医薬キット。
【請求項19】
G‐CSFと、pH値3.5〜4.8であるグルタメート緩衝水溶液とを組み合わせる工程を含むことを特徴とする請求項1から16のいずれかに記載の製剤の調製方法。
【請求項20】
請求項1から16のいずれかに記載の製剤を凍結乾燥又は噴霧乾燥する工程を含むことを特徴とする請求項17に記載の凍結乾燥物又は粉末の調製方法。
【請求項21】
請求項1から16のいずれかに記載の製剤を含むことを特徴とするヒドロゲル又はリポソーム調製物。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2010−523510(P2010−523510A)
【公表日】平成22年7月15日(2010.7.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−501436(P2010−501436)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【国際出願番号】PCT/EP2008/002700
【国際公開番号】WO2008/122415
【国際公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【出願人】(509283812)サンド アクチエンゲゼルシャフト (2)
【氏名又は名称原語表記】Sandoz AG
【住所又は居所原語表記】Lichtstrasse 35, CH−4056 Basel, Switzerland
【Fターム(参考)】