説明

安定な濾過滅菌性リポソームに被包化されたタキサン及び他の抗腫瘍剤

本発明は、抗腫瘍剤の他に少なくとも1つの脂質分画を含むリポソームに被包化されている1種以上の抗腫瘍剤の製剤であって、組成物が、室温で、水溶液中で安定である製剤、を提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2003年2月3日出願の同時係属中の米国仮特許出願60/444,958(その内容の全部が引用により本明細書に含まれるものとする)への優先権を主張する。
【0002】
(発明の技術分野)
本発明は、リポソームに被包化されたタキサン及び他の抗腫瘍剤に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
卵巣癌や乳癌などの疾患の患者用に、抗腫瘍剤として、パクリタキセルなどのタキサンの使用は公知である。更に、放射線療法と共に用いるとき、パクリタキセルは、相乗剤として臨床的に強力であることが示されてきた。パクリタキセルは、微小管の脱集合よりも微小管の安定化を示すので、パクリタキセルは、独特の作用機構を有し、広域スペクトルの抗癌活性を有する。
【0004】
しかし、パクリタキセルは、非常に小さい水溶解性しか有しないので、適切な投与形態を提供するのが難しい。現在、パクリタキセルは、パクリタキセル6 mg/mL 、精製クレモフォアEL(ポリエトキシル化ヒマシ油)527 mg/mL、及び49.7%の脱水アルコール(USP)を含むビヒクル中で製造され、投与される。この溶液は、ヒトへの投与前に生理食塩水で1:10に希釈される。生理食塩水溶液に希釈されたパクリタキセルの安定性は非常に小さい。該薬剤は24時間以内に分解し、タキソールは、通常のPVC静脈バッグや点滴セットと不適合であり、患者用の投与の取扱いは非常に難しくなることが示された。該薬剤は希釈から沈殿するので、患者への該薬剤の点滴のためにオンラインフィルターが利用される。製剤中での溶解性の減少及びクレモフォアELの存在は、アナフィラキシー反応や心臓毒性などの危険性を患者に負わせる。タキソールの長期間使用はまた、癌細胞での多剤耐性の発展に寄与しえ、それは、タキソール治療が求められている正にその疾患の病因を複雑にしうるのみである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
タキソールの現在利用できる製剤を改良する試みがなされた。この目的のために、米国特許5,648,090 (Rahmanら)及び米国特許5,424, 073 (Rahmanら)は、リポソーム被包化パクリタキセル又はその抗腫瘍性誘導体を用いる哺乳動物での癌の治療法のための、リポソーム被包化パクリタキセルを提供する。'090及び'073特許は、治療有効数のリポソームの医薬組成物を宿主に投与することによる、哺乳動物宿主での癌細胞の多剤耐性の調節方法であって、医薬組成物は、リポソーム形成材料であるカルジオリピン、及びパクリタキセル、もしくはパクリタキセルの抗腫瘍性誘導体、もしくはそれらの混合物などの薬剤、及び医薬として許容できる賦形剤を含む、上記方法を開示する。しかし、長時間安定であるタキサンのリポソーム製剤の必要性がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(発明の概要)
本発明は、安定性の改良や毒性の減少を示す臨床関連濃度で、タキサン、その誘導体、及び関連化合物などの抗腫瘍性薬剤の製剤を提供する。本発明の製剤は好ましくは、1種以上の安定化剤、抗酸化剤、及び凍結防止剤を含む。多くの製造で、本発明の製剤は、注射用流体中での再構成後と希釈の後でさえ、室温で数日、安定である。本発明の製剤は、治療効果を増加しえ、現在のタキサン製剤で観察された多剤耐性に対し多剤耐性を最小化しうる。本発明のこれらの、そして他の利点、並びに更なる本発明の特徴は、本明細書に記載の発明の説明と付随の図面から明白となろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(発明の詳細な説明)
本発明は、抗腫瘍剤の他に少なくとも1つの脂質画分を含むリポソームに被包化されている1種以上の抗腫瘍剤の製剤であって、組成物が、室温で典型的には少なくとも3日、水溶液中で安定である製剤、を提供することが、少なくとも部分的には、予想される。好ましくは、該製剤は、抗腫瘍剤の結晶又は沈殿物を含まず、又は実質的に含まず、最も好ましくは、該製剤中に、抗腫瘍剤の結晶及び沈殿物形態が無い。
【0008】
任意の適切な抗腫瘍剤が本発明の文脈で使用できる。本発明の製剤で使用される好適な化合物として、タキサン又は誘導体(例えば、ドセタキセル、パクリタキセル及び関連化合物など(例えば、エポチロンA及びB、エポチロン誘導体など))が挙げられる。好ましくは、化合物はパクリタキセルである。パクリタキセルの適切な誘導体はタキサンである。他の適切な化合物は、7−エピパクリタキセル、t−アセチル パクリタキセル、10−デスアセチル−パクリタキセル、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル、7−キシロシルパクリタキセル、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル、7−L−アラニルパクリタキセル、タキソテレ、及びそれらの混合物である。
【0009】
本発明は、抗腫瘍剤のリポソーム製剤を提供するので、製剤はまた、リポソームを形成できる1種以上の化合物を含む。従って、例えば、製剤は、コレステロールもしくはその誘導体、脂質又はリン脂質、及び他の同様の化合物を含み得る。好ましくは、本発明のリポソーム製剤の脂質画分は、合成もしくは天然のカルジオリピンもしくはカルジオリピンアナログなどの1種以上のカルジオリピンを含む。
【0010】
典型的には、脂質画分は、本発明の組成物の少なくとも約3.5% (w/v)、より好ましくは少なくとも約4. 0% (w/v)(例えば、組成物の少なくとも約5.0%又は少なくとも約5.5% (w/v)でさえ)を含む。一般的には、脂質画分は、約8.5% (w/v)を超えるとは期待されず、より好ましくは、最大脂質画分は、組成物の約8.0% (w/v)である(例えば、最大脂質濃度約7.0% (w/v)又は最大脂質濃度約6.0% (w/v)さえ)。好ましくは、本発明製剤のリポソームは、約4.0% (w/v)〜約8.0% (w/v)脂質を有する(例えば、5.0% (w/v)〜約6.0% (w/v)脂質)。
【0011】
更に、本発明製剤で使用する脂質と抗腫瘍剤の比は典型的には、モル比で少なくとも約 5: 1、より好ましくはモル比で少なくとも約10: 1である(少なくとも、抗腫瘍剤がタキサン(又は関連化合物又はそれらの誘導体)である場合)。典型的には、本発明製剤で使用する脂質と抗腫瘍剤の比は、モル比で少なくとも約20: 1である(例えば、比で少なくとも約30: 1又は40: 1でさえ)。しかし、一般的には、本発明製剤で使用する脂質と抗腫瘍剤の比は、モル比で約75: 1を超えず、より典型的には、モル比で多くとも約70: 1である。典型的には、本発明製剤で使用する脂質と抗腫瘍剤、特にタキサン(又は関連化合物又は誘導体)の比は、モル比で多くとも約60: 1である(例えば、モル比で多くとも約50: 1又は多くとも約40: 1でさえ)。好ましくは、本発明製剤での脂質と薬剤の比は、モル比で約10: 1〜約70: 1である(例えば、モル比で約25: 1 〜約55: 1など)。
【0012】
望ましくは、製剤中の抗腫瘍剤の大部分は、リポソーム中に捕捉されている。より好ましくは、製剤中の抗腫瘍剤の少なくとも約2/3(例えば、少なくとも約75%)がリポソーム中に捕捉され、抗腫瘍剤の少なくとも約85%(又は90%超でさえ)が、本発明製剤中のリポソーム中に捕捉されるのがより一層好ましい。
【0013】
好ましくは、製剤の脂質画分は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイル カルジオリピン(CL)、及びコレステロール(CH)からなる群から選択される1種以上の脂質を含む。これらの成分は、製剤に安定性を与え、安定化剤として機能できる。他の飽和リン脂質(例えば、ジミリストールホスファチジルコリン(DMPC)、ジパルミトイルホスファチジルコリン(DPPC)、ジステアロイルホスファチジルコリン(DSPC))、及び不飽和リン脂質(例えば、水素化精製ダイズホスファチジルコリン、水素化精製卵黄ホスファチジルコリン、ジリノーレオイルホスファチジルコリン(DLPC)、ホスファチジルコリン(DOPC)、パルミトイルオレオイル ジオレオイルホスファチジルコリン(POPC)、スフィンゴミエリン)が使用できる。適切な陰性荷電脂質(例えば、ジオレオイルホスファチジルグリセロール(DOPG)、ジオレオイル ホスファチジルセリン(DOPS)、ジミリストールホスファチジルグリセロール(DMPG))も使用できる。
【0014】
本発明組成物の脂質画分に含まれる最も好ましい成分として、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイル カルジオリピン(CL)、及びコレステロール(CH)が挙げられる。これらの脂質成分の2種以上が脂質画分に存在するのが望ましく、最も好ましくは、これらの脂質成分(DOPC、CL、CH)の3種全部が存在する。実際、DOPCは好ましくは、脂質成分の約85% 〜約95%含み、より一層好ましくは、脂質成分の約90% 〜約92%含む。適切な製剤は、DOPC : CH: CLの比約92: 0: 8 〜約90: 5: 5含むが、CHとCLの量は等しくある必要はない。この点に関し、CHの濃度は典型的には、約0.3 mg/ml〜約3.5 mg/mlである(例えば、約0.5 mg/ml〜約3.0 mg/ml、又は約1 mg/ml〜約2 mg/mlでさえ);一方、CLの量は典型的には、約1 mg/ml〜約10 mg/mlである(より典型的には約2 mg/ml〜約8 mg/ml)(例えば、約5 mg/ml)。しかし、本発明製剤の脂質画分中のDOPCの量は一般的には、CH又はCLのそれを超え、典型的には、本発明製剤中のDOPCの量は、CHとCLを合わせた量を超える。この点に関し、本発明製剤の脂質画分中のDOPCの量は典型的には、約60 mg/mlであり、一般的には、少なくとも約40 mg/mlである(例えば、少なくとも約45 mg/ml又は少なくとも約50 mg/mlでさえ)。典型的には、DOPCは約75 mg/ml超ではない(例えば、多くとも約65 mg/ml又は70 mg/ml)。DOPCの理想的範囲は約44 mg/ml〜約74 mg/mlである。
【0015】
安定性を増加するのを更に助けるために、本発明製剤は、典型的には、活性薬剤(即ち、タキサン又は関連化合物)及び脂質画分に加えて、1種以上の抗酸化剤を含み得る。任意の通常使用される脂質可溶性抗酸化剤が使用できるが、幾つかの実施態様では、ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピルなどの抗酸化剤も使用できる。安定性増加性故に、D−アルファトコフェリル酸サクシネートも好ましい。存在する場合、抗酸化剤は典型的には、濃度約0.1〜約0.6 mg/ml(例えば、約0.2 mg/ml〜約0.5 mg/ml又は約0.3 mg/ml〜約0.4 mg/mlでさえ)で製剤中に含まれる。
【0016】
リポソームは、任意の適切な方法で製剤化できる。好適方法として、薄フィルム水和、溶媒注入、凍結融解及び脱水−再水和、界面活性剤の除去、逆相蒸発及びエタノール注入が挙げられる。例えば、抗腫瘍剤と脂質画分を適切な溶媒(塩化メチレン、エタノール、酢酸メチル、ギ酸エチルなど)に溶解しうる。抗酸化剤を使用する場合、それもまた、脂質画分と共に溶媒に溶解しうる。本発明組成物を製剤化する目的で、溶媒の任意の適切な量が使用できるが、典型的には約1000〜1100mg/mlである(塩化メチレンを溶媒として使用する場合)。しかし、典型的には、方法は、少なくとも約500 mg/ml 塩化メチレン(例えば、少なくとも約750 mg/ml 塩化メチレン)を必要とし、そして、脂質画分を溶解するのに、約2000 mg/ml 塩化メチレンという多さの塩化メチレン(例えば、約1500 mg/ml 塩化メチレン)が使用できる。
【0017】
抗腫瘍剤、脂質画分、抗酸化剤を溶媒に溶解した後、次いで、溶媒を乾燥する。任意の適切な乾燥方法と装置が使用でき、好適な乾燥工程は、減圧下回転式エバポレーター、ついで、デシケーター中での更なる乾燥を含む。
【0018】
乾燥後、脂質(及び抗酸化剤)残渣を水などの水系で水和しうる(溶液又は懸濁液でありうる)。好ましくは、溶液は、次なる凍結乾燥の間、製剤の安定性を高める助けのために1種以上の凍結防止剤を含み、それは、凍結乾燥形態で存在している。糖やマンニトールなどの任意の適切な凍結防止剤が使用できるが、このような化合物は典型的には糖である。シュークロースは、非常に好適な凍結防止剤であるが、他の適切な凍結防止剤として、例えば、トレハロース、マルトース、ラクトース、グルコース、デキストラン、アミノグリコシド、及びストレプトマイシン及びこれらの組合せが、所望のように適切に使用できる。典型的には、凍結防止剤は、使用するならば、製剤の約50% (w/v)未満である。より典型的には、凍結防止剤は、製剤の多くとも約40% (w/v)である(例えば、製剤の多くとも約3% 0 (w/v))。凍結防止剤が約1% (w/v)と少ない場合、それは、本発明製剤の安定性を増大しうる;しかし、より典型的には、凍結防止剤は、製剤の少なくとも約5% (w/v)である(例えば、製剤の少なくとも約10% (w/v)又は少なくとも約20% (w/v))。水和溶液はまた、張性調節剤を含みえ、それは、好ましくは、塩化ナトリウム(NaCl)であるが、他の適切な塩又は二糖類であってもよい。水和は、任意の適切な体積の水和溶液中で行える。
【0019】
水和溶液中での再水和により、多重膜ベシクル(MLV)の形成が起こる。ある方法では、適切な製剤は、多重膜ベシクルと単膜ベシクルの混合物でありうる。溶液を加えると、リポソームは、混合によって(例えば、ボルテックスによって、又は任意の適切な混合デバイスを使用することによって)形成できる。小ベシクルが望ましい場合、溶液は超音波処理できる。所望ならば、これらのMLVのサイズは、例えば、シーブ(典型的にはポリカーボネートファイバーから形成される)を通しての押出し、又は高圧ホモゲナイザーを用いてのホモゲナイゼーションによって操作できる。従って、組成物中のMLVのサイズは、予め選択したサイズのシーブを用いて(例えば、所望のサイズ(例えば、0.8μm、0.4μm、0.2μm、0.1μmなど)のシーブを通しての押出しによって)制御できる。本発明では、サイズ処理は好ましくは、薬剤被包化リポソームの粒子サイズをより均一にするために適用される。凍結乾燥前に、本発明製剤は、0.22ミクロンフィルターを通し濾過滅菌しうる。製剤の平均粒子サイズは、約50〜200 nm、好ましくは100-180 nm、より好ましくは120-160 nmである。
【0020】
再水和後、そして(所望ならば)規定の粒子サイズを達成するために押出し後、組成物は好ましくは、任意の適切なデバイス又は方法を用いて、凍結乾燥される。好適なデバイスは、ベンチトップ(benchtop)かつ任意の適切なサイズの凍結乾燥機である(例えば、VerTis製造のものなど)。SUV製剤は、長期間(例えば、少なくとも約数ヶ月又は数年)、凍結乾燥形態で(例えば、約-5〜8℃での低温保存)維持できる。好ましくは、凍結乾燥製剤は、少なくとも9ヶ月間安定である。
【0021】
使用するために、凍結乾燥SUVリポソーム製剤は、適切な体積の再構成溶液(好ましくは、極性溶媒、最も好ましくは水系(脱イオン水又は適切な生理食塩水溶液でありうる))で再構成できる。任意の適切な体積の再構成溶液が使用できる(例えば、約1 ml〜約50 ml、より典型的には、約3 ml〜約25 ml)。使用するために、リポソーム製剤は、所望される場合、例えば、適切な生理適合性緩衝液又は生理食塩溶液中に希釈できる。再構成を助けるために、製剤は、所望される場合、温和に、又は激しく(例えば、ボルテックス)混合でき、又は超音波処理さえできる。
【0022】
どのように製造されようと、生じるリポソーム被包化タキサンは、再構成後、少なくとも約1日、より典型的には、少なくとも3又は4日安定である。実際、本発明製剤は、少なくとも約4日(例えば、1又は2週間、又はより長い時間さえ)、室温で安定でありうる。実施例部分で下記するように、本発明の製剤は、少なくとも約17日間、このような条件で安定でありうる。例えば、Nicomp Submicron Particle Sizerなどの粒子サイズ分析器を用いて、時間経過でリポソームの粒子サイズを評価することによって、安定性はモニターできる(この文脈での安定性は、1日で約20%未満の平均粒子サイズの変化、より好ましくは、1日で約5%未満の粒子サイズの変化、又は3もしくは4日時間経過で約10%未満もしくは5%未満でさえもの変化によって示され得る)。あるいは、安定性は、結晶性タキサンの存在を評価することによって(例えば、光学顕微鏡を用いて)評価できる。微量を超えるこのような結晶の非存在は、安定な製剤の指標であり、本発明製剤は、望ましくは、室温でさえ、生理食塩水中での再構成もしくは希釈の3もしくは4日後、タキサン結晶を、実質的に、又は比較的完全にさえ、含まない。
【0023】
本リポソーム製剤は、安定形態でタキサン又は他の抗腫瘍剤の高濃度の点滴を可能とする薬剤送達システムを提供し、標的部位での持続治療利点を提供するが、低濃度の不溶性遊離タキサンを維持し、以前に知られているよりも最小の有害毒性効果を維持する。
【0024】
本医薬組成物は、実質的毒性反応を引き起こさずに、約3時間未満の時間内に、好ましくは約2時間未満で、最も好ましくは90分で、哺乳動物宿主表面領域の1m当たり、活性化合物少なくとも50〜400mgの量を投与できる。例えば、70 kgヒトで、体重1kg当たり活性化合物約0.5〜7mgを、約90分で安全に投与できる。好ましくは、体重1kg当たり活性化合物約1.0〜5.0mgを投与する。あるいは、好適量として、75、135、175、250、300、325、及び375mg/m2が挙げられる。
【0025】
本リポソーム組成物は、哺乳動物の身体(特に、ヒト身体)の孤立部分(例えば、腕もしくは脚、又はヒトの場合、手)に、静脈内投与、腹腔内投与、又は腫瘍に直接注射できる。好ましくは、本発明の製剤は注射用形態でありうる。
【0026】
リポソーム被包化タキサンは、化学療法を受ける癌細胞での多剤耐性を克服するかなりの利点のある効果を有する。本発明のリポソーム製剤を用いることによって、アントラサイクリングリコシドなどの化学療法に使用される化学療法剤への耐性を生じる、化学療法を受ける癌細胞の傾向を減少させることが可能である。この方法は、宿主に、投与プロトコルに従って、本発明のリポソーム被包化タキサンの医薬組成物を投与することを含む。
【0027】
タキサン及びその抗腫瘍性誘導体を用いて、任意の形態の哺乳動物癌を治療できる。このような化合物は、微小管の集合を促進することによって、又はチューブリン脱集合過程を阻害することによって、機能すると考えられている。タキサン及びその抗腫瘍性誘導体は、哺乳動物のリンパ腫、卵巣癌、乳癌、肺癌、結腸癌、及び特にヒトでのその状態の治療に特に有利に使用される。
【0028】
以下の実施例で更に、本発明を説明するが、勿論、本発明の範囲を限定するものとして解釈されるべきでは決してない。
【実施例1】
【0029】
実施例1
本実施例は、本発明のリポソーム被包化タキサン製剤の構築を示す。以下の成分を、表1に示した量で用いた。
【0030】
【表1】

【0031】
* 蒸発及び凍結乾燥過程で除去される。
【0032】
脂質(DOPC、1,2−ジミリストイル カルジオリピン、コレステロール、D−アルファトコフェリル酸サクシネート)及びパクリタキセルもしくはドセタキセルを、塩化メチレンもしくは脱水アルコールに溶解した。次いで、脂質溶液を、真空下回転式エバポレーターを用いて蒸発乾固した。蒸発後、脂質残渣を、更にデシケーター中で一晩乾燥した。シュークロースとNaClを脱イオン水に溶解し、必要なバッチ濃度を得た。次いで、乾燥脂質残渣を、シュークロース/NaCl溶液中で水和し、多重膜ベシクル(MLV)を形成させた。0.8μm、0.4μm、0.2μm、0.1μmのサイズのポリカーボネートフィルターを通す押出しによって、MLVのサイズを更に減少させた。最終製剤5mmをガラスバイアルに充填し、ベンチトップVIRTIS凍結乾燥機を用いて凍結乾燥した。
【実施例2】
【0033】
実施例2
本実施例は、本発明のリポソーム被包化タキサン製剤の構築を示す。以下の成分を、表2に示した量で用いた。
【0034】
【表2】

【0035】
* 蒸発及び凍結乾燥過程で除去される。
【0036】
本製剤は、実施例1に記載したように製造した。
【実施例3】
【0037】
実施例3
本実施例は、本発明のリポソーム被包化タキサン製剤の構築を示す。以下の成分を、表3に示した量で用いた。
【0038】
【表3】

【0039】
* 蒸発及び凍結乾燥過程で除去される。
【0040】
本製剤は、実施例1に記載したように製造した。
【実施例4】
【0041】
実施例4
本実施例は、実施例1に従って製造した製剤の性質を示す。
【0042】
凍結乾燥バイアルを、脱イオン水4.5mLで再構成した。再構成完了後、リポソームを、正常生理食塩水又は脱イオン水で1:8に更に希釈した。再構成及び希釈の製剤のリポソームベシクルサイズは、17−37日期間にわたって、動的光散乱技術(Nicomp Submicron Particle Sizer)によって測定され、再構成製剤は室温で維持された。再構成及び希釈の製剤はまた、光学顕微鏡(DMIL Microscope)を用いて、パクリタキセルとドセタキセルの結晶の存在について試験された。
【0043】
凍結乾燥前に、パクリタキセルとドセタキセル製剤で行ったこれらの測定の結果を表4と表5に示す。
【0044】
【表4】

【0045】
【表5】

【0046】
凍結乾燥及び再構成後、実施例1のパクリタキセルとドセタキセル製剤で行ったこれらの測定の結果を表6と表7に示す。
【0047】
【表6】

【0048】
希釈後(正常生理食塩水中で1:8)、実施例1のパクリタキセル製剤で行った測定を表7に示す。
【0049】
【表7】

【0050】
希釈後(正常生理食塩水中で1:8)、実施例1のドセタキセル製剤で行った測定を表8に示す。
【0051】
【表8】

【0052】
実施例4
本実施例は、実施例2に従って製造した製剤の性質を示す。方法は、実施例3で記載したものと同一であり、パクリタキセルとドセタキセルの製剤で行った測定を表9と表10に示す。
【0053】
【表9】

【0054】
凍結乾燥前のリポソーム性ドセタキセル製剤の物理的安定性
【0055】
【表10】

【0056】
凍結乾燥と再構成後、実施例2の製剤で行った測定の結果を表11と表12で示す。
【0057】
【表11】

【0058】
【表12】

【0059】
希釈後(正常生理食塩水中で1:8)、実施例2の製剤で行った測定を表13に示す。
【0060】
【表13】

【実施例5】
【0061】
実施例5
本実施例は、実施例3に従って製造した製剤の捕捉効率を示す。薬剤捕捉効率は、SEPHADAX G−50カラムを用いるサイズ排除クロマトグラフィーによって測定した。薬剤及び脂質の含量はHPLC方法によって測定した。
【0062】
【表14】

【0063】
【表15】

【実施例6】
【0064】
実施例6
本実施例は、タキソールとリポソーム被包化パクリタキセル(LEP)の複数回IV用量毒性比較研究を示す。
【0065】
材料及び方法
試験系
本研究で用いたCD2F1マウス(4-6週齢、オス及びメス)は、Harlan Sprague Dawley Laboratoriesから得た。個々の動物を耳タグによって識別した。到着後、動物を7日間隔離した。温度64-84 °Fと相対湿度30%-70%に維持された、環境的に監視され、良い換気の部屋に、動物を保った。蛍光照明は、1日につき約12時間の照明を提供した。隔離及び研究期間中、マウスに、随意に8656 HTげっ歯類食餌 (Harlan Teklad, Madison, WI)を与えた。研究1日目でのマウスの平均重量は16-22 g(メス)及び20- 27(オス)であった。研究1日目でのマウスの齢は6−7週であった。
試験物品と対照物品
試験物品:
1.本発明に従って製造された凍結乾燥リポソーム性パクリタキセル(LEP−ETU)バイアルは、2−8℃で保存した。
2.タキソールバイアル(30mg/バイアル;濃度6mg/mL)は、Mead Johnson, Inc.から受け取った。
対照物品:
1.プラセボリポソームは2-8 ℃で保存した。
【0066】
投与製剤製造
ベヒクル製剤(LEP及びプラセボリポソーム)は、投与の各日に新たに製造した。再構成及び希釈製剤(0.9%生理食塩水で8倍まで)の安定性は、20−25℃で12時間である。全ての投与溶液は、再構成及び希釈後12時間以内に使用した。
【0067】
実験計画
無作為化及び群帰属
無作為化は、週-1の間に行った。無作為化前に動物を秤量し、その重量が16−23g(メス)と17−26g(オス)である動物のみ、無作為化に使用し、以下の群に割り当てた(7匹動物/性別/群)。無作為化を表16に示す。
【0068】
【表16】

【0069】
(対照及び試験)物品の投与
投与前に各動物を秤量した。マウスに、5連続日、1日1回、尾静脈を介し静脈で対照又は試験物品を与えた。注射体積は、個々のマウス体重に基いた。群1の対照動物に、LEPの50mg/kg投与量とほぼ同量の脂質を与えた。群4と群5の対照動物に、それぞれ、群6と7と同量のクレモフォアEL/エタノールを、パクリタキセル無しで、与えた。
【0070】
観察
動物を、投与期間(1−5日)の間毎日、そしてその後22日までの間、1週間に3回秤量した。動物は、病的状態/死亡に関し研究期間の間1日1回観察された。動物は、臨床的徴候に関し投与後約1〜2時間、そしてその後毎日観察された。毒性に関する詳細な肉体的検査は、1日目とその後1週間に1度、行われた。
【0071】
結果
体重
プラセボリポソームを与えた動物で体重減少は無かった。LEPのIV投与(25 mg/kg/用量)を与えられたメスマウスは、8日目に5.2%体重を減少し、10日目に完全に回復した。8日目までにLEP (25 mg/kg/用量)を受けたオスマウスに12. 5%の体重減少があり、15日目までに完全回復が達成された。群3(50 mg/kg/用量、LEP)でのオスとメスのマウスでの体重減少は、8日目までに20.6及び 28.7%であった。クレモフォアEL/エタノールを注射された対照動物には体重減少は無かった。群5(12.5 mg/kg/用量、タキソール)でのメスの体重減少は無視できた。群5でのオス動物は、5日目までに4.7%の体重減少があり、回復は12日目までに完了した。群7(25 mg/kg/用量、タキソール)でのメス動物は、8日目までに6.3%の体重減少を有し、12日目までに体重減少から完全に回復した。群7でのオス動物の体重減少は、8日目で10.4%であり、回復は15日目までに完了した。生存率(合計/生存数)は、表17と18に示す。4日目に、群7(25 mg/kg/用量,タキソール)の1匹のオス動物は、物品投与後1時間で死亡した。群4の1匹の動物は、尾の傷に起因して、17日目に殺した。
【0072】
【表17】

【0073】
群1:50 mg/kgのLEP用量に存在する脂質量と等しいプラセボリポソーム。
群2:LEP 25 mg/kg。
群3:LEP 50 mg/kg。
群4:12.5 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群5:25 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群6:タキソール12.5 mg/kg。
群7:タキソール25 mg/kg。
【0074】
【表18】

【0075】
群1:50 mg/kgのLEP用量に存在する脂質量と等しいプラセボリポソーム。
群2:LEP 25 mg/kg。
群3:LEP 50 mg/kg。
群4:12.5 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群5:25 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群6:タキソール12.5 mg/kg。
群7:タキソール25 mg/kg。
【0076】
毒性の臨床的徴候
種々の日での各群の動物の毒性の臨床的徴候を、表19に示す。弓なりポーズと荒れた毛によって表される毒性の臨床的徴候は、4日目から始まって群7(25 mg/kg/用量、タキソール)の動物で観察された。9日目から15日目までに始まって、群7の動物は、歩行と腹の方への後脚の引きずりの問題によって表される毒性の神経徴候を示した。6日目に、群6(12.5 mg/kg/用量、タキソール)の4匹のオス動物は荒れた毛を有し、3匹は脱水症状を有したが、7日目までに、正常に戻ったようであった。群3(50 mg/kg/用量、LEP)の動物は、6日目−9日目の間で、弓なりポーズ、脱水症状、荒れた毛によって表される毒性の重い徴候を有し、この群の動物は、9日目までに死んだか、瀕死のため殺した。
【0077】
臨床観察
毒性の詳細な肉体検査は、1日目、10日目、17日目、22日目に行い、表20に示す。
【0078】
予定外の観察
タキソール25 mg/kg/用量に存在するのと等しいクレモフォアEL/エタノールの用量を受けた群5の動物及び群7(25 mg/kg/用量、タキソール)の動物の全ては、投与後、活動が減少した。投与後の予定外の観察の全ては、表形式で示す(表21)。
【0079】
結論
LEPの許容用量は、25 mg/kg/日(1日1回×5日)であり、タキソールに関し、12.5 mg/kg/日(1日1回×5日)の用量がCD2F1マウスに安全に投与できた。
【0080】
【表19−1】

【0081】
【表19−2】

【0082】
【表19−3】

【0083】
群1:50 mg/kgのLEP用量に存在する脂質量と等しいプラセボリポソーム。
群2:LEP 25 mg/kg。
群3:LEP 50 mg/kg。
群4:12.5 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群5:25 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群6:タキソール12.5 mg/kg。
群7:タキソール25 mg/kg。
【0084】
【表20−1】

【0085】
【表20−2】

【0086】
群1:50 mg/kgのLEP用量に存在する脂質量と等しいプラセボリポソーム。
群2:LEP 25 mg/kg。
群3:LEP 50 mg/kg。
群4:12.5 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群5:25 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群6:タキソール12.5 mg/kg。
群7:タキソール25 mg/kg。
【0087】
【表21】

【0088】
群1:50 mg/kgのLEP用量に存在する脂質量と等しいプラセボリポソーム。
群2:LEP 25 mg/kg。
群3:LEP 50 mg/kg。
群4:12.5 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群5:25 mg/kgのタキソール用量に存在するクレモフォアEL/エタノールと等しいクレモフォアEL/エタノール。
群6:タキソール12.5 mg/kg。
群7:タキソール25 mg/kg。
【実施例7】
【0089】
実施例7
本実施例は、ヒト肺腫瘍(A549)を有するSCIDマウスでのリポソームベース製剤のタキソール(LEP)の治療効果評価の結果を示す。
【0090】
材料及び方法
細胞株及び培養条件:
肺腺癌細胞株A-549を、American Type Culture Collection (Rockville, MD)から得て、10%熱不活化ウシ胎児血清(Life Technologies Inc. , Grand island, NY)を補充した RPMI-1640培地 (Life Technologies Inc. , Grand island, NY)で維持した。細胞株は、加湿した5% C02インキュベーター内で、37℃にて増殖させた。
【0091】
マウス:
C. B. -17 SCIDメスマウス(3−4週齢)を、Harlan Sprague Dawley (Indianapolis, IN)から入手した。マウスは、NeoPharm Research and Developmentの標準的操作法(SOPs)に従って、無菌的に扱い、ミクロアイソレーター内に収容し、マウスは、随意に滅菌食と滅菌水を摂取した。本研究を開始する少なくとも5日前に、マウスを順応させた。
【0092】
薬剤及び製剤:
タキソールは、MeadJohonson (Lot #IL5302)から得た。リポソーム被包化タキソールとブランクリポソームは上記のように得た。
【0093】
腫瘍移植:
対数増殖A549細胞懸濁液50 x106/mLを調製し、マウスの左脇腹(6)の皮下に5x106細胞(0. lmL)を移植した。腫瘍増殖は、デジタルカリパス(Mitutoyo Corporation,日本)で測定し、腫瘍体積は、式[長さ×(幅/2)2×p]を用いて求めた。
【0094】
実験計画:
腫瘍の適当な増殖後(23日)、動物を、異なる処置群(5−7動物/群)に無作為に分け、1日目、4日目、8日目にLEP(12.5又は25、50 mg/kg x 3)、又はタキソール(12.5又は 25.0 mg/kg x 3)、又はブランクリポソーム、又はクレモフォア−ELで処置した。腫瘍増殖阻害は、処置後、28日目まで監視した。
【0095】
結果及び考察:
抗腫瘍効能は、SCIDマウスに皮下移植した樹立されたヒト肺腫瘍異種移植片モデルで評価した。LEPとタキソールの効能は、1日目、4日目、8日目に複数回用量の静脈注射で測定した。12.5及び 25.0 mg/kgのタキソールで処置した動物群は、ブランクリポソーム処置群と比較してそれぞれ37 %及び 57 %であった(図1)。しかし、腫瘍増殖の阻害は、LEP処置動物群でかなり大きかった。12.5、25.0及び50 mg/kgでのLEP処置は、対照群と比較して44%、85%及び95%であった。
【0096】
LEPとタキソールの両方は、体重減少によって判定して、試験した全ての用量で十分に許容された(図2)。ほんの5%未満の体重減少が、LEP50mg/kg処置動物群の場合に認められた。
【0097】
LEP処置動物のより大きい腫瘍増殖阻害は、より長期間の、標的部位でのタキソールの最適なアベイラビリティに起因し得る。タキソールのリポソームベース製剤は2つの利点を有する:1)界面活性剤を使用せずに、薬剤の送達を助ける、及び2)より長期間の、持続したレベルの薬剤を提供し、その抗腫瘍効果を発揮する。
【0098】
本明細書で引用した特許、特許出願、及び刊行物を含む全ての参考文献は、その内容の全部が引用により本明細書に含まれるものである。
【0099】
本発明を、好適実施態様を強調して説明したが、好適な実施態様のバリエーションを行なうことができ、本明細書に具体的に記載されたものとは異なるように実施されることが意図されることは、当業者に明白であろう。従って、本発明は、以下のクレームによって規定される本発明の思想と範囲に包含される全ての改変を包含するものである。
【図面の簡単な説明】
【0100】
【図1】図1は、SCIDマウスでの異所性ヒト肺腫瘍(A549)の増殖に対するリポソーム捕捉パクリタキセル(LEP)とタキソールの効果の研究結果をグラフとして示す。
【図2】図2は、ヒト肺腫瘍保有SCIDマウスの体重に対するリポソーム捕捉パクリタキセル(LEP)とタキソールの効果の研究結果をグラフとして示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抗腫瘍剤の他に少なくとも1つの脂質画分を含むリポソームに被包化されている1種以上の抗腫瘍剤の製剤であって、組成物は、室温で少なくとも3日、水溶液中で安定である、製剤。
【請求項2】
抗腫瘍剤の結晶と沈殿物を実質的に含まない、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
抗腫瘍剤の結晶と沈殿物を含まない、請求項1に記載の製剤。
【請求項4】
抗腫瘍剤は、タキサン又は関連化合物である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
抗腫瘍剤は、エポチロンA、エポチロンB、又はそれらの誘導体である、請求項4に記載の製剤。
【請求項6】
抗腫瘍剤はパクリタキセルである、請求項4に記載の製剤。
【請求項7】
抗腫瘍剤の少なくとも約85%がリポソーム中に捕捉されている、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
脂質と抗腫瘍剤の比は、組成物のモル比で約10:1〜約70:1である、請求項1〜7のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
脂質画分は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイル カルジオリピン(CL)、及びコレステロール(CH)からなる群から選択される1種以上の脂質を含む、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
脂質画分は、DOPC、CL及びCHからなる群から選択される2種以上の脂質を含む、請求項9に記載の製剤。
【請求項11】
DOPC:CH:CLのモルパーセント比は、約92:0:8〜約90:5:5である、請求項9又は10に記載の製剤。
【請求項12】
脂質画分は、DOPC、CL及びCHを含む、請求項9〜11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
1種以上の抗酸化剤を更に含む、請求項1〜12のいずれかに記載の製剤。
【請求項14】
抗酸化剤は、D−アルファトコフェリル酸サクシネートである、請求項13に記載の製剤。
【請求項15】
凍結防止剤を更に含む、請求項1〜14のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項16】
凍結防止剤は、トレハロース、マルトース、シュークロース、グルコース、ラクトース及びデキストランからなる群から選択される1種以上の保護糖を含む、請求項15に記載の製剤。
【請求項17】
凍結防止剤は、シュークロースである、請求項15又は16に記載の製剤。
【請求項18】
0.22ミクロンフィルターで濾過滅菌されている、請求項1〜17のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
凍結乾燥形態の、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
凍結乾燥前に0.22ミクロンフィルターで濾過滅菌されている、請求項19に記載の製剤。
【請求項21】
少なくとも9ヶ月間安定である、請求項19又は20に記載の凍結乾燥製剤。
【請求項22】
水系で溶液又は懸濁液として製剤化されている、請求項1〜18のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項23】
水系は水である、請求項22に記載の製剤。
【請求項24】
再構成及び希釈後3日間の時間経過で約5%未満の平均リポソーム粒子サイズの変化しか示さない、請求項22又は23に記載の製剤。
【請求項25】
注射形態の、請求項22〜24のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項26】
少なくとも約3日間、結晶性抗腫瘍剤を実質的に含まないままである、請求項1〜25のいずれか1項に記載の製剤。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームに被包化されたタキサン又はその誘導体の製剤であって、該リポソームは、脂質画分を含み、そして該脂質画分は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン(CL)、及びコレステロール(CH)を含み、そして該DOPCは、約85%〜約95%の脂質画分を含む、製剤。
【請求項2】
前記DOPCが、約90%〜約92%の脂質画分を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
DOPC:CH:CLのモル比が、約92:0:8〜約90:5:5である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
タキサンが、ドセタキセルまたはその誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
タキサンが、パクリタキセルまたはその誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
パクリタキセルが、7−エピパクリタキセル、t−アセチルパクリタキセル、10−デスアセチル−パクリタキセル、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル、7−キシロシルパクリタキセル、1−=デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル、7−L−アラニルパクリタキセル、タキソテレ、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
製剤が、タキサン薬の結晶及び沈殿物を実質的に含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
製剤が、タキサン薬の結晶及び沈殿物を含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
少なくとも75%のタキサンが、リポソーム中に被包化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
少なくとも85%のタキサンが、リポソーム中に被包化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
少なくとも90%のタキサンが、リポソーム中に被包化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
タキサンに対する脂質画分の比が、モル比で約10:1〜約70:1である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、及びD−アルファトコフェリル酸サクシネートからなる群より選択される1種以上の抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
凍結防止剤を更に含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
凍結防止剤が、シュークロース、マンニトール、トレハロース、マルトース、ラクトース、グルコース、デキストラン、アミノグリコシド、ストレプトマイシン、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の糖を含む、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記リポソームが、濾過滅菌されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
リポソームが、0.22ミクロンフィルターを通して濾過滅菌されている、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
リポソームが、約50〜200nmである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
リポソームが、約100〜180nmである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
リポソームが、約120〜160nmである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
リポソームが、凍結乾燥形態である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
生理学的に許容可能なキャリアをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項23】
2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン(CL)、コレステロール(CH)、及び抗腫瘍剤を、有機溶媒に溶解させる工程を包含する、請求項1〜22のいずれかの製剤を製造する方法であって、ここで、該DOPCは、約85%〜約95%の脂質画分を含む、方法。
【請求項24】
DOPCが、約90%〜約92%の脂質画分を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
DOPC:CH:CLのモル比が、約92:0:8〜約90:5:5である、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
有機溶媒が、塩化メチレン、エタノール、酢酸メチル、ギ酸エチルなどからなる群より選択される、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗酸化剤を加える工程をさらに含む、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
有機溶媒を実質的に除去して、乾燥した脂質残渣を形成する工程を更に含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
脂質残渣を水性溶液で水和して、リポソームを形成する工程を更に含む、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
脂質残渣を水性溶液と混合して、リポソームを形成する工程を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
凍結防止剤を加える工程をさらに含む、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
凍結防止剤が、シュークロース、マンニトール、トレハロース、マルトース、ラクトース、グルコース、デキストラン、アミノグリコシド、ストレプトマイシン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
張性調節剤を加える工程を更に含む、請求項23〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
リポソームを濾過する工程をさらに含む、請求項23〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
濾過する工程が、0.22ミクロンフィルターを通すことである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
リポソームを凍結乾燥する工程を更に含む、請求項23〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
生理学的に許容可能なキャリア中でリポソームを再構成する工程を更に含む、請求項23〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
有効量の請求項1〜22のいずれかの製剤を、癌患者に投与する工程を含む、癌患者を処置する方法。
【請求項39】
前記有効量が、約3時間未満の点滴時間内に、少なくとも約40〜約400mg/mの製剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
癌が、リンパ腫、乳癌、肺癌、及び結腸癌からなる群より選択される、請求項38〜39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
癌細胞における多剤耐性を克服するための請求項1〜22のいずれかの製剤の使用であって、ここで、該癌細胞は、化学療法に供される、使用。
【請求項42】
癌が、リンパ腫、乳癌、肺癌、及び結腸癌からなる群より選択される、請求項41に記載の使用。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リポソームに被包化されたタキサン又はその誘導体の製剤であって、該リポソームは、脂質画分を含み、そして該脂質画分は、1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン(CL)、及びコレステロール(CH)を含み、そして該DOPCは、約85%〜約95%の脂質画分を含む、製剤。
【請求項2】
前記DOPCが、約90%〜約92%の脂質画分を含む、請求項1に記載の製剤。
【請求項3】
DOPC:CH:CLのモル比が、約92:0:8〜約90:5:5である、請求項2に記載の製剤。
【請求項4】
タキサンが、ドセタキセルまたはその誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項5】
タキサンが、パクリタキセルまたはその誘導体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項6】
パクリタキセルが、7−エピパクリタキセル、t−アセチルパクリタキセル、10−デスアセチル−パクリタキセル、10−デスアセチル−7−エピパクリタキセル、7−キシロシルパクリタキセル、10−デスアセチル−7−グルタリルパクリタキセル、7−N,N−ジメチルグリシルパクリタキセル、7−L−アラニルパクリタキセル、及びそれらの混合物からなる群より選択される、請求項5に記載の製剤。
【請求項7】
製剤が、タキサン薬の結晶及び沈殿物を実質的に含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項8】
製剤が、タキサン薬の結晶及び沈殿物を含まない、請求項1〜6のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項9】
少なくとも75%のタキサンが、リポソーム中に被包化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項10】
少なくとも85%のタキサンが、リポソーム中に被包化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項11】
少なくとも90%のタキサンが、リポソーム中に被包化される、請求項1〜8のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項12】
タキサンに対する脂質画分の比が、モル比で約10:1〜約70:1である、請求項1〜11のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項13】
ブチル化ヒドロキシアニソール、ブチル化ヒドロキシトルエン、没食子酸プロピル、及びD−アルファトコフェリル酸サクシネートからなる群より選択される1種以上の抗酸化剤をさらに含む、請求項1〜12のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項14】
凍結防止剤を更に含む、請求項1〜13のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項15】
凍結防止剤が、シュークロース、マンニトール、トレハロース、マルトース、ラクトース、グルコース、デキストラン、アミノグリコシド、ストレプトマイシン、及びこれらの組合せからなる群から選択される1種以上の糖を含む、請求項14に記載の製剤。
【請求項16】
前記リポソームが、濾過滅菌されている、請求項1〜15のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項17】
リポソームが、0.22ミクロンフィルターを通して濾過滅菌されている、請求項16に記載の製剤。
【請求項18】
リポソームが、約50〜200nmである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項19】
リポソームが、約100〜180nmである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項20】
リポソームが、約120〜160nmである、請求項1〜16のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項21】
リポソームが、凍結乾燥形態である、請求項1〜20のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項22】
生理学的に許容可能なキャリアをさらに含む、請求項1〜21のいずれか1項に記載の製剤。
【請求項23】
1,2−ジオレオイル−sn−グリセロ−3−ホスホコリン(DOPC)、テトラミリストイルカルジオリピン(CL)、コレステロール(CH)、及びタキサン又はその誘導体を、有機溶媒に溶解させる工程を包含する、請求項1〜22のいずれかの製剤を製造する方法であって、ここで、該DOPCは、約85%〜約95%の脂質画分を含む、方法。
【請求項24】
DOPCが、約90%〜約92%の脂質画分を含む、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
DOPC、CH及びCLが、約92:0:8〜約90:5:5のDOPC:CH:CLのモル比を有する、請求項23に記載の方法。
【請求項26】
有機溶媒が、塩化メチレン、エタノール、酢酸メチル、ギ酸エチルなどからなる群より選択される、請求項23〜25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
抗酸化剤を加える工程をさらに含む、請求項23〜26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
有機溶媒を実質的に除去して、乾燥した脂質残渣を形成する工程を更に含む、請求項23〜27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
脂質残渣を水性溶液で水和して、リポソームを形成する工程を更に含む、請求項23〜28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
脂質残渣を水性溶液と混合して、リポソームを形成する工程を更に含む、請求項29に記載の方法。
【請求項31】
凍結防止剤を加える工程をさらに含む、請求項23〜30のいずれか1項に記載の方法。
【請求項32】
凍結防止剤が、シュークロース、マンニトール、トレハロース、マルトース、ラクトース、グルコース、デキストラン、アミノグリコシド、ストレプトマイシン、及びこれらの組合せからなる群から選択される、請求項31に記載の方法。
【請求項33】
張性調節剤を加える工程を更に含む、請求項23〜32のいずれか1項に記載の方法。
【請求項34】
リポソームを濾過滅菌する工程をさらに含む、請求項29〜33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
濾過滅菌する工程が、0.22ミクロンフィルターを通すことである、請求項34に記載の方法。
【請求項36】
リポソームを凍結乾燥する工程を更に含む、請求項29〜35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
生理学的に許容可能なキャリア中でリポソームを再構成する工程を更に含む、請求項29〜36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
癌を処置するための請求項1〜22のいずれかの製剤の使用。
【請求項39】
癌が、リンパ腫、卵巣癌、乳癌、肺癌、及び結腸癌からなる群より選択される、請求項38に記載の使用。
【請求項40】
癌細胞における多剤耐性を克服するための請求項1〜22のいずれかの製剤の使用であって、ここで、該癌細胞は、化学療法に供される、使用。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−516650(P2006−516650A)
【公表日】平成18年7月6日(2006.7.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−503308(P2006−503308)
【出願日】平成16年2月3日(2004.2.3)
【国際出願番号】PCT/US2004/003157
【国際公開番号】WO2004/069224
【国際公開日】平成16年8月19日(2004.8.19)
【出願人】(503140078)ネオファーム、インコーポレイティッド (6)
【Fターム(参考)】