説明

安定な組換えアデノシン・デアミナーゼ

酸化されうるシステイン残基を、酸化されないアミノ酸残基によって置換した、変異型の組換えアデノシン・デアミナーゼについて開示する。安定化させた組換えアデノシン・デアミナーゼ、ポリマー複合体、およびそれらを用いた治療方法についても開示する。

【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
本願は、参照することによりその内容が本明細書に援用される、2007年4月20日出願の米国仮特許出願第60/913,009号の優先権の利益を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本発明は、安定性を高めるために変異させた組換えアデノシン・デアミナーゼを提供する。
【背景技術】
【0003】
アデノシン・デアミナーゼ(ADA)は、かなりの期間、重症複合型免疫不全症(SCID)または「バブルボーイ(Bubble boy)」病と呼ばれる酵素欠損症の治療に使用されている。15年以上にわたり、Enzon Pharmaceuticals社は、ウシ起源のADA酵素を用いて調製されるPEG化ADAの形態で患者に使用できる治療用のADAを製造している。
【0004】
近年、ウシ起源の酵素を組換えによって得られる酵素(以後「rADA」)に置き換える取り組みがなされている。組換えヒトADA(「rhADA」)および組換えウシADA(「rbADA」)の双方が、精製天然ウシADAの代替と考えられている。rbADAおよびrhADA酵素は、現在使用されている精製天然ウシ酵素よりも幾分安定性に劣る。rhADAおよびrbADAの両方が、システインの分解と一致する方法、すなわち、酸素の添加;ジチオールの形成;pHの上昇に伴う分解の増大;沈殿、特にpHの上昇および試料の濃縮に伴う沈殿などで分解すると考えられている。還元状態では、システインは分解に関与する形態である、反応性の−SH基(スルフヒドリル基)を含む。
【0005】
証拠は、たった1つの曝露されたシステインが、rbADAおよびrhADAの両方に認められる分解に関与しうることを示唆している。ウシADA(すなわち、ウシ起源から精製される天然ウシADA)は、rhADAと非常によく似た構造を有する。すなわち、ウシADAおよびrADAの両方が、一次配列の同一の複数位置に同数のシステインを有する。現在得られる組換えヒトADAおよび組換えウシADAは、システインの反応性と一致する、分解生成物(degradants)/不純物(ジチオール)を含む。天然ウシADAは、ADA各モルと結合した、単一モルのシステインを有する点で、ウシA組換えDAとは構造的に異なる。天然ウシADAはまた、高pHに対して安定であり、このことは、ADAに結合したシステインが保護基としての機能を果たすことを示唆している。
【0006】
組換えヒトおよび/またはウシADAを安定化させる方法の1つは、活性Cys残基(成熟rbADAおよび成熟rhADAの両方のCys74)を、酸化型グルタチオン、ヨードアセトアミド、シスチン、他のジチオール、およびそれらの混合物のいずれか1つでキャップ化することである。この方法は、参照することによりその内容全体を本明細書に援用する、本願と同一の出願人に譲渡された、「安定化タンパク質(Stabilized Proteins)」という発明の名称の特許文献1に説明されている。
【0007】
前述の説明にもかかわらず、発現の際、すぐに先天的な安定性を提供するため、タンパク質構造を修飾することによるさらなる追加のキャップ化のステップの必要性を回避することが有利であろう。特許文献2は、突然変異によって、不安定なCys残基をSerおよび他のアミノ酸残基で置換することによる、スブチリシンなどの原核生物のプロテアーゼ、および中性プロテアーゼの安定化について記載している。しかしながら、ADAにおける活性部位の変異解析は、Cys残基 (Cys262)の置換が結果的に酵素における顕著な活性の低下を生じることを示した(Bhaumikらの非特許文献1)。したがって、本発明以前には、最適かつ有用な酵素活性を保持しつつ、活性な、曝露されたCys残基を別のアミノ酸残基によって置換することによる、アデノシン・デアミナーゼ酵素を安定化することは知られていなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許出願第11/738,012号明細書
【特許文献2】米国特許第5,346,823号明細書
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Bhaumik et al. 1993, The J. of Biol Chem, 268. (8):5464-5470
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
よって、酵素の最適なPEG化に有用なpHレベルで、安定な、すなわち保管および処理の間に顕著に分解することのない、rbADAおよびrhADAの両方を提供することは有益であろう。
【課題を解決するための手段】
【0011】
したがって、本発明は、野生型の形態のADA酵素について、任意の酸化されうるシステイン残基が酸化されないアミノ酸残基で置換された、組換えADAを提供する。変異型ADAには、天然L−アミノ酸の1つである酸化されないアミノ酸残基が含まれ、例えば、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファン、チロシン および/または当技術分野で既知の天然L−アミノ酸のバリエーションおよび誘導体、すなわち、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、n−エチルグリシン、n−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4-ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、n−メチルグリシン、サルコシン、n−メチルイソロイシン、6−n−メチルリジン、n−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシンおよび/またはニチン(nithine)などが挙げられる。メチオニンまたはトリプトファンは、潜在的に酸化されうることから、 これらは随意的に避けられる。
【0012】
酸化されないアミノ酸残基は、セリン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、チロシン、およびバリンの中の1つであることがさらに好ましい。セリンが最も好ましい。特定の好ましい実施の形態では、酸化されうるシステインは、成熟ADAタンパク質の74位に位置している。組換えADAは、例えば、配列番号:2または配列番号:4に従ったDNA分子から翻訳された組換えウシADAまたは組換えヒトADAであることが好ましく、配列番号:1または配列番号:3を含むことが好ましい。組換えADAが、配列番号:1に従った組換えウシADAである場合、ADAは、随意的に、Lys198に代わるGln;Thr245に代わるAla;およびGly351に代わるArgのうちの1つ以上から選択される多型で表される。
【0013】
本発明は、ポリアルキレンオキサイド−ADA複合体も提供し、ここでポリアルキレンオキサイドはポリエチレングリコールであることが好ましい。随意的に、炭酸スクシンイミジル、チアゾリジンチオン、コハク酸スクシンイミジル、およびアミド系リンカーからなる群より選択されるリンカー化学を介して、ポリエチレングリコールを組換えアデノシン・デアミナーゼと結合させる。炭酸スクシンイミジルが好ましい。ポリエチレングリコールは、組換えアデノシン・デアミナーゼのLysのε−アミノ基に共有結合していることが好ましい。
【0014】
ポリエチレングリコール−ADA複合体は、ε−アミノ基に結合している少なくとも1つ(すなわち1つ以上) のポリエチレングリコール鎖を含み、ε−アミノ基に結合している少なくとも5(すなわち5つ以上)ポリエチレングリコール鎖が好ましく、あるいは、組換えADAのLys残基のε−アミノ基に結合している、約11〜約18本のポリエチレングリコール鎖がさらに好ましい。
【0015】
本発明の複合体のポリエチレングリコールは、約2,000〜約100,000の分子量を有し、約4,000〜約45,000であることがさらに好ましい。
【0016】
本発明はさらに、本発明の組換えアデノシン・デアミナーゼを精製する方法を提供する。例えば、組換えアデノシン・デアミナーゼは、イオン交換クロマトグラフィー(例えばCapto Q、DEAEおよびSPクロマトグラフィー)によって精製することが好ましく、配列番号:1の組換えアデノシン・デアミナーゼは疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製することが好ましい。
【0017】
本発明はさらに、本発明の組換えADAを有効量で投与する、哺乳動物におけるADA介在性の病状を治療する方法をも提供する。ADA介在性の病状には、例えば、SCID、癌などが挙げられる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本明細書では、安定な組換えアデノシン・デアミナーゼ酵素を提供する。本発明のアデノシン・デアミナーゼ酵素は、酵素が溶液内に存在する場合に、分解不安定性(breakdown instability)の原因を取り除きつつ、酸化プロセスに曝露されたシステイン残基を、酵素の活性、電荷、および三次構造を保護する、許容可能な別のアミノ酸残基と置換することによって提供される。
【0019】
A.定義
本発明についての明確な説明を提供することを目的として、いくつかの用語を下記のように定義する。
【0020】
「組換え」という用語は、天然状態において、タンパク質を発現することのできるDNAの内因性コピーを有していない細胞を使用して産生したタンパク質のことをいう。細胞は、適切に単離された核酸配列の導入によって遺伝子を変化させることにより、組換えタンパク質を産生する。この用語はまた、異種(外因性または異質な)核酸を導入すること、あるいは、天然の核酸をその細胞、またはそのように修飾された細胞から生じる細胞にとって天然ではない形態に変化させることによって修飾されている細胞、または核酸、またはベクターへの言及も含む。したがって、例えば、組換え細胞は、細胞の天然の(非組換え)形態では認められない遺伝子を発現し、天然の形態では認められない遺伝子の突然変異体を発現し、あるいは、別の方法では異常に発現する、発現が不足している、または全く発現しない、天然の遺伝子を発現する。
【0021】
本明細書では、「核酸」または「核酸配列」には、一本鎖または二本鎖のいずれの形態であるかにかかわらず、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのポリマーについての言及が含まれ、他に限定しない限り、天然のヌクレオチドと同様の方法で核酸にハイブリッドする、天然の既知の類似体も包含される。他に示唆しない限り、特定の核酸配列には、その相補配列が含まれる。
【0022】
特定の核酸に関する「コードする」という用語には、特定のタンパク質へと翻訳するための情報を含む核酸についての言及も含まれる。情報は、コドンを利用することによって特定される。
【0023】
「宿主細胞」とは、発現ベクターの複製または発現を支える細胞である。宿主細胞は、E.coliのような原核細胞であって差し支えなく、あるいは、酵母、昆虫、両生類、または哺乳動物の細胞などの真核細胞であってもよい。
【0024】
本明細書では、「ポリペプチド」、「ペプチド」および「タンパク質」は、同義的に用いられ、アミノ酸残基のポリマーについての言及も含む。
【0025】
「残基」または「アミノ酸残基」または「アミノ酸」は、タンパク質、ポリペプチド、またはペプチド(まとめて「ペプチド」)に取り込まれるアミノ酸についての言及を含む。アミノ酸は、天然アミノ酸であって差し支えなく、他に限定しない限り、天然アミノ酸と同様の機能をすることができる、天然アミノ酸の既知の類似体も含む。
【0026】
「トランスフェクション」は、任意のコードする配列が実際に発現されるか否かに関わらず、宿主による発現ベクターの取り込みのことをいう。当業者には、さまざまなトランスフェクションの方法が知られている。例えば、トランスフェクションは、発現ベクターおよび高濃度のCaPO4存在下、エレクトロポレーションによって、宿主細胞への挿入にファージまたはウイルスの発現ベクターを使用して、拡散の機械的挿入によって、および、パッケージされていない核酸断片の存在下で宿主細胞を培養することによっても、達成される。トランスフェクションの成功は、一般に、対象とするベクターの作用の兆候が
宿主細胞内に生じる際に認識される。
【0027】
「形質転換」は、染色体外要素として、または宿主の染色体内に融合することによって、核酸が複製可能になるように、有機体に核酸を導入することを表す。用いられる宿主細胞に応じて、形質転換は、特定の宿主細胞に好適な当技術分野で既知の方法を使用して達成される。Cohen, S. N. Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 69: 2110 (1972)およびMandel et al., J. Mol. Biol. 53:154 (1970)に記載されるように、塩化カルシウムを用いたカルシウム処理は、一般に、細胞壁(例えば、多くの細菌細胞および/または植物細胞)内に封入された原核生物または他の細胞に使用される。このような細胞壁を有しない哺乳動物細胞では、Graham, F. and van der Eb, A., Virology, 52: 456-457 (1978)に記載されるリン酸カルシウム沈殿法が好ましい。哺乳動物細胞の宿主システムの形質転換の一般的な態様は、1983年8月16日に発行された米国特許出願第4,399,216号明細書に記載されている。酵母への形質転換は、一般に、Van Solingen, P., et al., J. Bact., 130: 946 (1977)、およびHsiao, C. L., et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA) 76: 3829 (1979)の方法にしたがって行われる。しかしながら、例えばDNAなどの核酸を、例えば核注入、リポフェクション、または原形質融合などによって、細胞内に導入するための他の当技術分野で既知の方法もまた使用して差し支えない。
【0028】
本明細書では、核酸に関する「相補」という用語は、第1の核酸分子を鋳型として利用して、その核酸分子が複製され、新しい第2の核酸の鎖を形成する場合に産生される対向する鎖(ワトソン−クリックの塩基対を使用する)のことをいう。本発明の1つの態様では、2つの核酸分子は、ストリンジェントな条件下で互いにハイブリッドまたは結合する場合に、それぞれ相補的であるとみなされる。
【0029】
「機能的に結合した(operably linked)」とは、例えば調節領域およびオープン・リーディング・フレームなどの構成要素が、構成要素が正常に機能しうるように並置されることをいう。よって、制御配列に「機能的に結合した」オープン・リーディング・フレームとは、コード配列がこれらの配列の制御下で発現可能な配置のことをいう。
【0030】
「制御配列」とは、特定の生物において、機能的に結合したコード配列の発現に必要な核酸配列のことをいう。原核生物に好適な制御配列には、例えば、プロモーターが含まれ、随意的に、オペレーター配列、リボソーム結合部位、および、可能性として、まだよく分かっていない配列などの他のものも挙げられる。真核細胞は、例えば、ほんの数例を挙げれば、プロモーター、ポリアデニル化信号およびエンハンサーなどとして、このような制御配列を利用することが知られている。
【0031】
「発現系」または「発現ベクター」とは、所望のコード配列を有するように形質転換された宿主が、コードされるタンパク質を産生可能なように機能的に結合した状態で、所望のコード配列および制御配列を含む、核酸配列のことをいう。形質転換をもたらすため、発現系をベクターに含めてもよいが、しかしながら、その後に、関連する核酸分子を宿主染色体に組み込んでもよい。
【0032】
本明細書では、「細胞」、「細胞系」、および「細胞培養」は同義的に用いられ、このような意味のすべてが、子孫を含む。よって、「形質転換された個体(transformants)」、または「形質転換細胞」は、転換の数にはこだわらず、主要な対象細胞、およびそれに由来する培養物を含む。すべての子孫は、意図的な、または無作為の突然変異に起因して、ゲノム内容において正確に同一ではない場合があるものと解されたい。最初に形質転換された細胞について検査されたものと同一の機能を有する突然変異の子孫も含まれる。はっきりと識別可能な指示が意図されている箇所は、その文脈から明らかであろう。
【0033】
本発明の目的では、「残基」という用語は、別の化合物との置換反応に供した後に残る、例えばPEG、ADA、アミノ酸などのことを称する、化合物の部分を意味すると解されるべきものとする。
【0034】
本発明の目的では、「ポリマー残基」、例えば「PEG残基」という用語は、それぞれ、他の化合物、部分などとの反応に供した後に残るポリマーまたはPEGの部分を意味すると解されるべきものとする。
【0035】
本発明の目的では、本明細書で用いられる「アルキル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環状のアルキル基を含む、飽和脂肪族炭化水素のことをいう。「アルキル」という用語は、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、およびC1-6アルキルカルボニルアルキル基も含む。アルキル基は、1〜12個の炭素を有することが好ましい。炭素数約1〜7の低級アルキルであることがさらに好ましく、炭素数約1〜4であることがさらになお好ましい。アルキル基は、飽和または不飽和でありうる。置換されている場合、その置換基としては、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が挙げられる。
【0036】
本発明の目的では、本明細書で用いられる「置換された」という用語は、官能基または化合物に含まれる1つ以上の原子を、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、ヘテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6アルキル、アリール、およびアミノ基からなる群に由来する部分の1つを加えるか、これらの部分の1つで置換することをいう。
【0037】
本明細書では「アルケニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む基のことをいう。アルケニル基は約2〜12の炭素を有することが好ましい。アルケニル基は炭素数約2〜7の低級アルケニルであることがさらに好ましく、炭素数約2〜4であることがさらになお好ましい。アルケニル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6アルキルカルボニルアルキル、アリール、およびアミノ基が含まれる。
【0038】
本明細書では「アルキニル」という用語は、直鎖、分岐鎖、および環式基を含む、少なくとも1つの炭素−炭素三重結合を含む基のことをいう。アルキニル基は約2〜12の炭素を有することが好ましい。アルキニル基は炭素数約2〜7の低級アルキニルであることがさらに好ましく、炭素数約2〜4であることがさらになお好ましい。アルキニル基は、置換または非置換でありうる。置換される場合は、置換基には、好ましくは、ハロ、オキシ、アジド、ニトロ、シアノ、アルキル、アルコキシ、アルキル−チオ、アルキル−チオ−アルキル、アルコキシアルキル、アルキルアミノ、トリハロメチル、ヒドロキシル、メルカプト、ヒドロキシ、アルキルシリル、シクロアルキル、シクロアルキルアルキル、へテロシクロアルキル、ヘテロアリール、アルケニル、アルキニル、C1-6ヒドロカルボニル、アリール、およびアミノ基が含まれる。「アルキニル」の例としては、プロパギル、プロピン、および3−ヘキシンが挙げられる。
【0039】
本発明の目的では、「アリール」という用語は、少なくとも1つの芳香族環を含む芳香族炭化水素環系のことをいう。芳香族環は、随意的に、他の芳香族炭化水素環または非芳香族炭化水素環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。アリール基の例としては、例えば、フェニル、ナフチル、1,2,3,4−テトラヒドロナフタレン、およびビフェニルが挙げられる。アリール基の好ましい例として、フェニルおよびナフチルが挙げられる。
【0040】
本発明の目的では、「シクロアルキル」という用語は、C3-8環状炭化水素のことをいう。シクロアルキルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、およびシクロオクチルが挙げられる。
【0041】
本発明の目的では、「シクロアルケニル」という用語は、少なくとも1つの炭素−炭素二重結合を含む、C3-8環状炭化水素のことをいう。シクロアルケニルの例としては、シクロペンテニル、シクロペンタジエニル、シクロヘキセニル、1,3−シクロヘキサジエニル、シクロヘプテニル、シクロヘプタトリエニル、およびシクロオクテニルが挙げられる。
【0042】
本発明の目的では、「シクロアルキルアルキル」という用語は、C3-8シクロアルキル基で置換されたアルキル基のことをいう。シクロアルキルアルキル基の例としては、シクロプロピルメチルおよびシクロペンチルエチルが挙げられる。
本発明の目的では、「アルコキシ」という用語は、酸素橋を通じて親分子部分に結合している、所望の炭素原子数のアルキル基のことをいう。アルコキシ基の例としては、例えば、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、およびイソプロポキシが挙げられる。
【0043】
本発明の目的では、「アルキルアリール」基とは、アルキル基で置換されたアリール基のことをいう。
【0044】
本発明の目的では、「アラルキル」基とは、アリール基で置換されたアルキル基のことをいう。
【0045】
本発明の目的では、「アルコキシアルキル」基という用語は、アルコキシ基で置換されたアルキル基のことをいう。
【0046】
本発明の目的では、「アルキル−チオ−アルキル」という用語は、例えばメチルチオメチルまたはメチルチオエチルなどのアルキル−S−アルキルチオエーテルのことをいう。
【0047】
本発明の目的では、「アミノ」という用語は、有機ラジカルによって1つ以上の水素ラジカルが置換されることにより、アンモニアから誘導される、当技術分野で既知の窒素含有基のことをいう。例えば、「アシルアミノ」および「アルキルアミノ」という用語は、それぞれ、アシルおよびアルキル置換基を有する特定のN−置換有機ラジカルのことをいう。
【0048】
本発明の目的では、「アルキルカルボニル」という用語は、アルキル基で置換されたカルボニル基のことをいう。
【0049】
本発明の目的では、「ハロゲン」または「ハロ」という用語は、フッ素、塩素、臭素、およびヨウ素のことをいう。
【0050】
本発明の目的では、「ヘテロシクロアルキル」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、非芳香族環系のことをいう。ヘテロシクロアルキル環は、随意的に、他のヘテロシクロアルキル環および/または非芳香族炭化水素環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。ヘテロシクロアルキル基は、3〜7員環であることが好ましい。ヘテロシクロアルキル基の例として、例えば、ピペラジン、モルホリン、ピペリジン、テトラヒドロフラン、ピロリジン、およびピラゾールが挙げられる。好ましいヘテロシクロアルキル基として、ピペリジニル、ピペラジニル、モルホリニル、およびピロリジニルが挙げられる。
【0051】
本発明の目的では、「ヘテロアリール」という用語は、窒素、酸素、および硫黄から選択される少なくとも1つのへテロ原子を含む、芳香族環系のことをいう。ヘテロアリール環は、1つ以上のヘテロアリール環、芳香族または非芳香族炭化水素環、またはヘテロシクロアルキル環と縮合するか、他の方法で結合していてもよい。ヘテロアリール基の例として、例えば、ピリジン、フラン、チオフェン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、およびピリミジンが挙げられる。ヘテロアリール基の好ましい例として、チエニル、ベンゾチエニル、ピリジル、キノリル、ピラジニル、ピリミジル、イミダゾリル、ベンズイミダゾリル、フラニル、ベンゾフラニル、チアゾリル、ベンゾチアゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、イソチアゾリル、ベンズイソチアゾリル、トリアゾリル、テトラゾリル、ピロリル、インドリル、ピラゾリル、およびベンゾピラゾリルが挙げられる。
【0052】
本発明の目的では、「ヘテロ原子」という用語は、窒素、酸素、および硫黄のことをいう。
【0053】
一部の実施の形態では、置換アルキルは、カルボキシアルキル、アミノアルキル、ジアルキルアミノ、ヒドロキシアルキル、およびメルカプトアルキルを含み、置換アルケニルは、カルボキシアルケニル、アミノアルケニル、ジアルケニルアミノ、ヒドロキシアルケニル、およびメルカプトアルケニルを含み、置換アルキニルは、カルボキシアルキニル、アミノアルキニル、ジアルキニルアミノ、ヒドロキシアルキニル、およびメルカプトアルキニルを含み、置換シクロアルキルは、4−クロロシクロヘキシルなどの部分を含み、アリールは、ナフチルなどの部分を含み、置換アリールは、3−ブロモフェニルなどの部分を含み、アラルキルは、トリルなどの部分を含み、へテロアルキルはエチルチオフェンなどの部分を含み、置換へテロアルキルは、3−メトキシ−チオフェンなどの部分を含み、アルコキシは、メトキシなどの部分を含み、フェノキシは、3−ニトロフェノキシなどの部分を含む。ハロは、フッ素、塩素、ヨウ素、および臭素を含むものと解されるべきものとする。
【0054】
本発明の目的では、「正の整数」は、1以上の整数を含み、当業者には当然のことながら、当業者における合理的範囲内であると解されるべきものとする。
【0055】
本発明の目的では、「結合した(linked)」という用語は、1つの基が別の基に共有的に付加すること(好ましい)または非共有的に付加することを含むと解されるべきものとする。
【0056】
「有効量」および「十分量」という用語は、本発明の目的では、当業者に理解されるような効果として、所望の効果または治療効果を達成する量を意味するものとする。
【0057】
本発明の目的では、「アデノシン」という用語は、ヌクレオシドである、アデノシンおよびデオキシアデノシンを含むと解されるべきものとする。アデノシンには、AMP、ADP、ATP、dAMP、dADPまたはdATPの形態で存在するアデノシンおよびデオキシアデノシンも含まれる。
【0058】
本発明の目的では、「アデノシン介在性の病状」または「アデノシン・デアミナーゼ感受性の病状」とは、投与経路に関わらず、ADAまたはその活性画分などの投与が有効である、任意の疾患、病状、または障害を幅広く含むものと解されるべきものとする。
【0059】
本発明の目的では、SCIDのような、「アデノシン介在性の病状の治療」または「アデノシン・デアミナーゼ感受性の病状の治療」とは、症状または病状が、ADA治療をしない場合に観察される状態と比較した場合に、回避するか、最小限に抑えられるか、あるいは弱小化されることを意味すると解されるべきものとする。病状の治療は、例えば、アデノシンの減少によって確認することができる。
【0060】
大まかに言えば、アデノシン介在性の病状の治療は、所望の臨床反応が得られた場合に、成功とみなされるべきものとする。あるいは、治療の成功は、ADA治療をせずに観察されるものと比較した場合に、当分野における技術者によって意図される他の臨床的指標を含む、少なくとも20%、または好ましくは30%、さらに好ましくは40%またはそれ以上(すなわち、50%または80%)のアデノシンの減少を得られることによって定義されうる。
【0061】
さらには、記載の便宜上の単数形の語句の使用は、そのように限定されることを全く意図していない。よって、例えば、1つの酵素を含む1つの化合物についての言及は、その酵素の1つまたはそれ以上の分子のことをいう。本発明はまた、本明細書に開示される特定の構造、工程段階、および材料に限定されるのではなく、そのような構造、工程段階、および材料は幾分変化しうるものと解されるものとする。
【0062】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその等価物によって限定されるであろうことから、本明細書で用いられる技術用語についても、特定の実施形態を説明する目的でのみ用いられるのであって、限定されることは意図していないと解されるものとする。
【0063】
B.組換え産生させたADA酵素
ヒトまたはウシに由来する遺伝子から発現させた酵素を含む、組換えADA酵素を得るための最初の取り組みでは、ウシの腸に由来する天然ADAでは以前には見られなかった、保存不安定性が明らかとなった。rhADAおよびrbADAの分解生成物の研究が行われ、システインの分解と一致する方法で両方のADA酵素が分解することが確認された。例えば、rhADAに対する酸素の付加は、rhADAの質量よりも16および32大きい質量を有する、rhADAよりもさらに疎水性の化合物を形成する結果となった。加えて、これは、結果的に、ジチオールの形成、pHの上昇の際の分解の増大、沈殿(特にpH上昇時)を生じ(ジチオスレイトール(「DTT」)の添加によって、分解物の小集団の反転によって示される)、サンプルが濃縮され、分子間のジスルフィド結合の形成が不溶性の凝集体を生成することが示唆される。
【0064】
我々は、単一の曝露されたシステインが、rhADAに認められる分解に関与していることを究明した。ウシADA(分解していない)は、 rhADAの構造と非常によく似た構造を有しており、ウシADAおよびrhADAの両方が、一次配列の同一位置に同数のシステインを有している。rbADAはまた、システインの反応性と一致する分解物/不純物(ジチオール)も含んでいる。天然ウシADAは、ADAの各モルに結合する単一モルのシステインを有するという点でrbADAとは構造的に異なり、また、天然ウシADAは高いpHに対して安定であり、これらのことから、ADAに結合したシステインが保護基として機能していることが示唆される。天然ウシADAに結合したシステインは、メルカプトエタノールまたはDTTなどの還元剤で処理することにより除去することができる。理論または仮説に拘束されるものではないが、これは、システイン基が下記のようにジスルフィド基を介してADAに結合していることを示唆している:
ADA−S−S−システイン
ここで、ADAの一次配列における1つのシステインは、1分子のシステインに結合している。このようなジスルフィド結合に関与しているシステインは、最初の段落で言及した酸化的分解の経路に対して安定である。システイン残基は、ヒトおよびウシの成熟ADAの74、152、153、168、および261の位置に存在する。X線結晶学(Kinoshita et al., 2005, Biochemistry, 44:10562-10569)から得られるウシADAの3次元構造の検討は、74、152、153、168、および261に位置するシステインが、分子内のジスルフィド結合に関与する機会がないことを示唆している。構造上の幾何学的制約が、一般的に、ジスルフィド結合に関与する、ADAの152および153の位置に生じるようなシステイン残基の隣接を抑制することが知られている。したがって、すべてのシステイン残基が還元状態である可能性があり、必然的に、酸化的分解反応のための潜在的候補部位である。しかしながら、上記引用したウシADAの3次元の外観検査は、システイン74が、明らかに他の4つのシステインよりも溶媒に著しく曝露されていることを示唆しており、さらには、他の4つのシステインが、溶媒和された反応物質との顕著な相互作用を妨げるであろう酵素構造内に、ある程度、埋め込まれているように思われる。唯一反応性のシステイン残基の存在によって、翻訳後修飾の結果であると推定される、天然ウシ・アデノシン・デアミナーゼのモノ誘導体化(monoderivatization)が説明できよう。
【0065】
上記事実は、74位の反応性システインがrhADAおよびrbADAに認められる分解に関与する可能性があること、および、システインの反応性−S−H基のキャップ化が、組換え酵素に見られるような明らかな酸化的分解の経路からrhADAまたはrbADAを保護していることを示唆した。以下の実験は、これがその事例であるか否かを決定するために行ったものである。約0.6mg/mlの濃度の組換えhADAを、pH7.4、37℃で16時間、リン酸ナトリウム緩衝液中の125mMのヨードアセトアミド(IAA)と反応させた。反応を開始して数分間以内の、UVを用いたRP−HPLCおよび質量分析検出法によるサンプルの分析は、約70.9%のrhADAがIAAでモノ誘導体化され、17.2%が2つの部位で誘導体化された。2時間および16時間のインキュベーションの後、クロマトグラフィープロファイルには顕著な変化はなく、誘導体がrhADAに特有の酸化的分解の経路に対して安定であることを示唆した。rhADAの同様のサンプルを、IAAの不存在下で調製し、同様に分析した。pH7.4、37℃で16時間のインキュベーションの後、rhADAタンパク質は30%程度分解した(サンプルが最初に有していた分解を上回った)。この結果は、単一の顕著に曝露されたシステインを、ヨードアセトアミドでキャップ化することによって保護できることと一致している。これらの実験は、上記引用したように、参照することにより本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、「安定化タンパク質(Stabilized Proteins)」という発明の名称の米国特許出願第11/738,012号明細書にさらに詳細に記載されている。
【0066】
キャップ化がADAにおける反応性のシステインの酸化的分解の排除に有効であると同時に、このようなキャップ化された酵素は追加の製造工程を必要とする。よって、異なるアミノ酸で置換することによる、コードする遺伝子から得られる不安定なCys残基の直接的な排除が検討された。適切な置換アミノ酸は、同タイプの酸化の影響を受けるものではなく、折り畳まれたADAタンパク質の三次構造を妨げず、また、本発明の典型的な実施の形態においては、複合体形成の間に活性化ポリアルキレンオキサイドに対して無作為に結合しないようなものが選択される。この基準を満たす、任意の当技術分野で既知の天然アミノ酸および/または非天然アミノ酸および/またはそれらの誘導体が、本発明にしたがった酸化されうるシステインと置換するのに適していることが意図されている。このようなアミノ酸の典型的なリストとして、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、トリプトファンおよびチロシンなどの天然L−アミノ酸が挙げられる。トリプトファンおよびメチオニンは比較的容易に酸化されうることから、特定の随意的な実施の形態では、あまり好ましくない。
【0067】
宿主細胞における、非天然のL−アミノ酸を部位特異的に取り込んだ組換えタンパク質の産生方法は、例えば、Liu et al., 2007, Nat. Methods 4(3):239-44, Xie et al., 2006 Nat. Rev. Mol. Cell. Biol. 7(10):775-82, Ryu et al., 2006, Nat. Methods 3(4):263-65, Deiters et al., 2004, Bioorg. Med. Chem Lett. 14(23):5743-5, Bogosian et al., 1989, J. Biol. Chem. 264(1):531-9, Tang et al., 2002, Biochemistry 41(34):10635-45, Budisa et al., 1995, Eur. J. Biochem. 230(2): 788-96, and Randhawa et al., 1994, Biochemistry, 33(14):4352-62などの文献に記載されている。よって、置換アミノ酸は、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2'−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、n−エチルグリシン、n−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、n−メチルグリシン、サルコシン、n−メチルイソロイシン、6−n−メチルリジン、n−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシンおよび/またはニチン(nithine)などの、修飾された、あまり典型的ではないアミノ酸をも含みうる。
【0068】
組換えADAにおいて、随意的にシステインが置換された、さらに好ましい天然アミノ酸としては、例えば、アラニン、セリン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、チロシン、およびバリンが挙げられる。セリンが最も好ましく、下記に例証する。
【0069】
結果的に、野生型のヒトおよびウシのアデノシン・デアミナーゼを発現するDNA分子が得られ、コドンをE.coliにおける発現に最適化し、各成熟タンパク質の74位に天然のCys残基に代わってそれぞれSer残基を含む、変異型rbADAおよび変異型rhADAを発現するように突然変異させた。これらは、それぞれSer74−rbADA(配列番号:1)およびSer74−rhADA(配列番号:3)である。加えて、ウシの腸から単離された天然ウシADAは、翻訳後にC末端から除去される6残基も有していることは注目すべきである。本発明によるSer74−rbADAは、6つのC末端残基なしで発現される(突然変異として)、あるいは、精製した天然ウシADAにおいて欠如している残基と同一のC末端残基を除去するために翻訳後に修飾されることは、本発明の随意的な特徴である。さらに注目すべきは、ウシの腸から単離された天然のウシADAが多型を有していることであり、配列番号:5に関しては、ウシADAの多型には、例えば、198位のリジンに代わるグルタミン、245位のトレオニンに代わるアラニン、351位のグリシンに代わるアルギニンが含まれる。 したがって、本発明による74位の組換え変異型ウシADAは、1つまたはそれ以上の指摘された位置についてのさらなる置換体、またはそれらの位置類似体、すなわちLys198に代わるGln;Thr245に代わるAla;Gly351に代わるArgを有することが意図されている。
【0070】
本発明のさらなる態様では、本発明は、本明細書に記載される配列番号:1または配列番号:3のアミノ酸配列を有する変異型ADAをコードする、単離されたDNAを提供する。1つまたはそれ以上の置換、すなわちLys198に代わるGln、Thr245に代わるAla、Gly351に代わるArgを有する変異型ADAをコードする他のDNAもまた、本発明の範囲にあることが意図されている。
【0071】
適切な発現ベクターは、それぞれ、rhADAまたはrbADAをコードするゲノムまたはcDNAから、言い換えれば、随意的に、適切な機能的に接続した誘導プロモーターの制御下で、調製することができる。DNAは、適当な宿主細胞用に最適化されたコドンであって、例えば、高効率のオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発(Olsen DB and Eckstein F, Proc Natl Acad Sci USA 87: 1451-5; 1990)、重複する長鎖オリゴヌクレオチドを用いた全遺伝子合成(Vasantha N and Filpula D, Gene 76: 53-60; 1989)、PCR法による遺伝子合成(Jayaraman K et al., Proc Natl Acad Sci USA 88: 4084-88; 1991)、または重複伸長PCR法(overlap extension PCR)(Pogulis RJ et al., Methods Mol Biol 57: 167-76; 1996)など、任意の便利な当技術分野で既知の方法によって突然変異させることが好ましい。
【0072】
一般に、DNA配列の最初のクローニング、および本発明に有用なベクターの構築には、原核生物が好ましい。例えば、E.coli K12株MM294(ATCC No.31,446)が特に有用である。単なる例として、利用しうる他の微生物菌株には、E.coli BおよびE.coli X1776(ATCC No.31,537)などのE.coli株が含まれうる。前述の菌株、ならびに、例えば、E.coli株W3110(F−、λ−、原栄養菌株、ATCC No.27,325)、K5772(ATCC No.53,635)、およびSR101、枯草菌(Bacillus subtilis)などのバシラス属、およびネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)またはセラチア・マルセセンス(Serratia marcesans)、およびさまざまなシュードモナス種(pseudomonas species)などの他の腸内細菌科も使用して差し支えない。
【0073】
一般には、レプリコンを含むプラスミドベクターおよび宿主細胞に適合する種に由来する制御配列が、これらの宿主と共に用いられる。従来のプラスミドベクターは、外因性のDNA配列を挿入するのに適した酵素認識部位で改変された二本鎖の環状DNA分子、抗生物質選択遺伝子、宿主細胞における自律的複製のための複製起点、および組換えインサートDNAを含むクローンの識別または選択のための遺伝子である。E.coliでの使用に好適なプラスミドベクターとしては、例えば、pET3、pET9、pET11および拡大pETシリーズ(Novagen Corporationのカタログに記載)のpBAD、trc、phoA、trp、およびOL/R/PL/Rプラスミドが挙げられる。
【0074】
単なる例であるが、E.coliは、典型的には、E.coli種に由来するプラスミドであるpBR322を用いて形質転換される(例えば、Bolivar et al., 1977, Gene, 2: 95を参照)。pBR322は、アンピシリンおよびテトラサイクリン耐性の遺伝子を含み、したがって、形質転換させた細胞を識別するための簡便な手段を提供する。同様に、pUCプラスミドは、選択および複製のためのDNA分子を用いて、便利なクローニング・ベクターを提供する(参照することによりその開示全体を本明細書に援用する、Yanisch-Perron, et al., 1985, Gene 33:103-119)。pBR322プラスミドまたは他の微生物プラスミドまたはファージは、それ自体がコードされたタンパク質を発現させるため、微生物によって利用可能なプロモーターを含むか、または含むように修飾される必要がある。
【0075】
組換えDNAの構築に最も一般に用いられるそれらのプロモーターには、β−ラクタマーゼ(ペニシリナーゼ)およびラクトースのプロモーター系(Chang et al., 1978 Nature, 375: 615; Itakura et al., 1977, Science, 198: 1056; Goeddel et al., 1979, Nature, 281: 544)およびトリプトファン(trp)プロモーター系(Goeddel et al., 1980, Nucleic Acids Res., 8: 4057; EPO Appl. Publ. No. 0036,776)が挙げられる。これらが最も一般に利用されると同時に、他の微生物プロモーターが見出され、活用されており、それらのヌクレオチド配列に関する詳細が公開されて、技能者がそれらを、例えばプラスミドベクターなどの当技術分野で既知のベクターを用いて機能的に結合できるようになっている。
【0076】
単なる例であるが、E.coliにおける転写制御は、任意の次の誘導プロモーターを用いて達成して差し支えない:lac、trp、phoA、araBAD、T7、trc、 およびλPLおよびPRプロモーターの誘導体、ならびに当技術分野で周知の他のもの(例えば、参照することによりその開示を本明細書に援用する、Makrides, 1996, Microbiol. Rev. 60:512-538)。
随意的にベクターと適合する、適切な誘発因子の状態は、例えば、アラビノース、乳糖、または熱誘導、リン酸欠乏、トリプトファン欠乏などが挙げられる。誘発剤成分は、イソプロピルチオガラクトシド(「IPTG」)によって誘発可能な乳糖オペロンであることが好ましい。
【0077】
適切なシグナル配列(シグナルペプチド)は、pelB、fd pIII、またはompAに由来しうる。
【0078】
適切な抗生剤選択マーカーは、当技術分野で周知であり、例えば、数ある中でも、アンピシリン、カナマイシン、クロラムフェニコール、リファンピシン、またはテトラサイクリン耐性などが挙げられる。
【0079】
複製配列の適切な起源には、次のプラスミドに見られるものが挙げられる:pUC19、pACYC177、pUB110、pE194、pAMB1、pIJ702、pBR322、pBR327、およびpSC101。
【0080】
適切な終止配列としては、例えば、ファージfdの主要なターミネーターTΦおよびrrnBが挙げられる。
【0081】
原核生物に加えて、酵母培養液などの真核微生物もまた使用して差し支えない。真核微生物の中でも、代表的なパン酵母であるサッカロミセス・セレヴィシエ(Saccharomyces cerevisiae)が最も一般的に用いられるが、多くの他の菌株も一般に入手可能である。サッカロミセス属(Saccharomyces)における発現では、例えばプラスミドYRp7(Stinchcomb et al., 1979, Nature, 282: 39; Kingsman et al., 1979, Gene, 7: 141; Tschemper et al., 1980, Gene, 10: 157)などが一般に用いられる。このプラスミドは、トリプトファンで増殖する能力が欠如した酵母の突然変異株、例えば、ATCC No.44,076またはPEP4−1(Jones, 1977, Genetics, 85: 12)のための選択的マーカーを提供するtrp1遺伝子をすでに含んでいる。酵母の宿主細胞ゲノムの特性としての trp1の損傷の存在は、次に、トリプトファンの不存在下で増殖することにより、形質転換を検出するための効果的な環境を提供する。
【0082】
メタノール資化酵母(Pichia pastoris)系は、幾つかのタンパク質の高レベルでの産生を達成することが明らかになっており(参照することによりその開示の全体を援用する、Cregg, J.M. et al., 1993, Bio/Technology 11: 905-910)、メタノール資化酵母の細胞質に可溶性タンパクとしてADAを発現させてるために用いてもよい。
【0083】
酵母ベクターにける適切なプロモーター配列には、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ(Hitzeman et al., J. 1980, Biol. Chem., 255: 2073)または他の糖分解酵素(Hess et al., 1968, J. Adv. Enzyme Reg., 7: 149 ; Holland et al., 1978, Biochemistry, 17: 4900)、例えば、エノラーゼ、グリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、ヘキソキナーゼ、ピルビン酸デカルボキシラーゼ、ホスホフルクトキナーゼ、グルコース−6−リン酸イソメラーゼ、ホスホグリセリン酸ムターゼ、ピルビン酸キナーゼ、トリオースリン酸イソメラーゼ、グルコースリン酸イソメラーゼ、およびグルコキナーゼなどのためのプロモーターが挙げられる。適切な発現プラスミドの構築では、これらの遺伝子に関連した終止配列もまた、mRNAのポリアデニル化および転写終結をもたらすために発現されることが所望される配列の発現ベクター3'内に結合される。増殖条件によって制御される翻訳のさらなる利点を有する他のプロモーターは、アルコール脱水素酵素2型、イソチトクロムC、酸性ホスファターゼ、窒素代謝に関連する分解酵素、および前述のグリセロアルデヒド−3−リン酸デヒドロゲナーゼ、およびマルトースおよびガラクトースの利用に関与している酵素のためのプロモーター領域である。酵母適合性のプロモーター、複製起点、および終止配列を含む任意のプラスミドベクターが適している。
【0084】
複製起点は、SV40または他のウイルス(例えばポリオーマ、腺、VSV、BPV)起源に由来しうる、または宿主細胞の染色体の複製メカニズムによってもたらされうる、外因性の起点を含むことを目的としたベクターの構築によって提供されて差し支えない。ベクターが宿主細胞の染色体内に組み込まれる場合は、後者が採用される場合が多い。他の有用なプラスミド要素には、シャペロンタンパク質、プロリン異性化酵素タンパク質、またはジスルフィド・シャッフリング・タンパク質をコードした発現遺伝子が含まれうる。
【0085】
C.ポリマー複合体
本発明の別の態様では、Ser74−rbADA(配列番号:1)およびSer74−rhADA(配列番号:3)タンパク質などの変異型ADAは、ポリマー複合体を調製するために、適切なポリマーと結合する。
【0086】
好ましい態様では、変異型ADAポリペプチドは、実質的に非抗原性のポリマー、好ましくはポリアルキレンオキサイド(「PAO」)と結合する。
【0087】
ADAポリマー複合体は、一般に式(I):
(I) [R−NH]z−(ADA)
に対応し、ここで、
(ADA)は組換え変異型アデノシン・デアミナーゼまたはそれらの活性断片を表し、
NH−は、ポリマーに結合するための変異型ADAに見られるアミノ酸のアミノ基であり、
(z)は正の整数であり、約1〜約80であることが好ましく、約5〜約80であることがさらに好ましく、約11〜約18であることがさらになお好ましく、
Rは、放出可能な形態または放出できない形態でADAに結合する、実質的に非抗原性のポリマー残基を含む。
【0088】
さらに好ましい態様では、ポリマーは、ポリエチレングリコール(PEG)を含み、ここでPEGは、直鎖、分岐鎖、またはマルチアームでありうる。一般に、ポリエチレングリコールは、式:
−O−(CH2CH2O)n
を有し、ここで、(n)は正の整数であり、約10〜約2300であることが好ましく、約40〜約2,300であることがさらに好ましい。ポリマーの平均分子量は、約2,000〜約100,000の範囲である。さらに好ましくは、ポリマーは、約4,000〜約45,000の平均分子量を有し、さらになお好ましくは4,000〜20,000である。最も好ましくは、PEGの分子量は約5,000である。技術者のニーズに適合するように、他の分子量もまた予定されている。
【0089】
あるいは、本発明のポリエチレングリコール(PEG)残基部分は、次の構造式によって表すことができ:
【化1】

【0090】
ここで:
11およびY13は、独立して、O、S、SO、SO2、NR13または結合であり、
12は、O、S、またはNR14であり、
11-14は、独立して、水素、C1-6アルキル、C2-6アルケニル、C2-6アルキニル、C3-19分岐鎖アルキル、C3-8 シクロアルキル、C1-6置換アルキル、C2-6 置換アルケニル、C2-6置換アルキニル、C3-8置換シクロアルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアリール、置換ヘテロアリール、C1-6ヘテロアルキル、置換C1-6ヘテロアルキル、C1-6アルコキシ、アリールオキシ、C1-6ヘテロアルコキシ、ヘテロアリールオキシ、C2-6アルカノイル、アリールカルボニル、C2-6アルコキシカルボニル、アリールオキシカルボニル、C2-6アルカノイルオキシ、アリールカルボニルオキシ、C2-6置換アルカノイル、置換アリールカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、置換アリールオキシカルボニル、C2-6置換アルカノイルオキシ、および置換アリールカルボニルオキシの中から選択され、
(a11)、(a12)、および(b11)は、独立して、0または正の整数であり、好ましくは0〜6、さらに好ましくは0、1、または2であり、
(n)は約10〜約2,300の整数である。
【0091】
一例として、PEGは、以下の限定されない方法で官能化することができ:
【化2】

【0092】
ここで
11、R15およびR16は、独立して、H、C1-6アルキル、アリール、置換アリール、ヘテロアルキル、置換へテロアルキル、および置換C1-6アルキルの中から選択され、
(m)は、0であるか、または正の整数であり、1または2であることが好ましく、
14はOまたはSであり、
(n)は、重合度を表す。
【0093】
これらの態様では、ポリマー(R基)は、キャッピング基、すなわち、ポリマーの末端に見られる基を含む。キャッピング基は、NH2、OH、SH、CO2H、C1-6 アルキルのいずれかから選択することができ、好ましくはメチルであり、そのような基は当業者に理解されている。
【0094】
さらなる態様では、複合体のポリマー部分は、ADAに結合する複数の点を与えるものでありうる。あるいは、複数のPEGはADAに結合することが可能である。
【0095】
PEG化ADAの薬物動態学および他の特性は、PEG分子量、リンカー化学、およびPEG鎖の酵素に対する比率を操作することにより、所望の臨床適用における必要に応じて、調整することができる。
【0096】
これらの態様では、ADAは、当技術分野で既知のさまざまなリンカーを介して、放出可能な形態または放出できない形態で、非抗原性のポリマーに結合させることができる。
【0097】
放出可能なポリマー系は、ベンジル基の脱離またはトリメチルロックのラクトン化に基づくことができる。放出可能なポリマー系の活性化ポリマーリンカーは、参照することによりその内容を本明細書に援用する、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第6,180,095号、同第6,720,306号、同第5,965,119号、同第6,624,142号、および同第6,303,569号の各明細書にしたがって調製されうる。あるいは、ADAポリマー複合体は、参照することにより本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第7,122,189号および同第7,087,229号の各明細書、ならびに米国特許出願第10/557,522号、同第11/502,108号および同第11/011,818の各明細書に記載されるものなど、特定のビシンポリマー残基を用いて調製される。これら特許出願のそれぞれの開示は、参照することにより本願に援用される。意図されている他の放出可能なポリマー系もまた、参照することによりその内容が本明細書に援用される、国際出願第PCT/US07/78600号パンフレットに記載されている。
【0098】
本明細書で意図されている放出可能な、または放出できないADAポリマー複合体の説明のための例は、参照することによりその内容が本明細書に援用される、米国仮特許出願第60/913,039号明細書に記載されている。
【0099】
ポリマー複合体は、当業者に既知の反応など、PEG化反応であることが好ましい。簡潔に述べると、変異型rbADAまたはrhADAは、活性化ポリマーと反応してADAポリマー複合体を形成する。これに関連して、幅広い種類の活性化または官能化されたポリエチレングリコールを使用することができ、例えば、本願と同一の出願人に譲渡された、米国特許第5,122,614号、同第5,324,844号、同第5,612,460号、および同第5,808,096号の各明細書(炭酸スクシンイミジル−活性化ポリエチレングリコール(SC−PEG) および関連する活性化PEG)、米国特許第5,349,001号明細書(環状イミドチオン活性化PEG)、米国特許第5,650,234号明細書および当業者に既知の他のものに記載されるものなどが挙げられる。上記の開示のそれぞれは、参照することにより本明細書に援用される。Nektar社/Shearwater Polymers社から市販される活性化ポリマーも参照のこと。当業者は、過度の実験をすることなく、結合のためのポリマーのさまざまな活性化の形態を使用することができる。
【0100】
当業者には認識されるように、このような結合反応は、典型的には、数倍モル過剰の活性化PEGを使用して、適切な緩衝液中で行われる。上述のSC−PEGのような直鎖PEGを用いて調製した一部の好ましい複合体は、ADA酵素あたり平均して約10〜約80PEG鎖を含むことができる。その結果として、これらのために、数百倍、例えば、200〜1000倍のモル過剰を用いることができる。分岐鎖PEGおよび酵素に結合したPEG用に用いられるモル過剰はもっと小さいと考えられ、本明細書で言及するものと同一のものについて記載する、特許および特許出願に記載される技術を使用して決定することができる。
【0101】
これらの態様では、ポリアルキレンオキサイドは、例えば、炭酸スクシンイミジル、チアゾリジンチオン、ウレタン、およびアミド系リンカーなどを含む、リンカー化学を介してタンパク質と結合する。
【0102】
ポリアルキレンオキサイドは、共有結合のための他の部位は当技術分野で周知であり、ADA上のLysのε−アミノ基に共有結合することが好ましい。ADAポリマー複合体は、酵素上のLysのε−アミノ基に結合する、少なくとも5つのポリエチレングリコール鎖を含むことができ、あるいは、酵素上のLysのε−アミノ基に結合する約11〜18本のPEG鎖を含みうる。
【0103】
ADAがリジンの結合を介して、酵素分子あたり約11〜約18のPEG分子と結合し、PEGのADAに対する比率を変化させて、任意の特定の臨床的症状に適合する、結合した複合体の物理的および力学的特性を改質することができる。
【0104】
本発明のさらなる態様が、本明細書に記載される治療方法に有用な複合体を提供することを目的として、市販の、または報告された活性化PEGまたは同様のポリマーを使用して、ADA酵素またはそれらの断片を結合する工程を含むことは、前述より明らかであろう。例えば、参照することによりその全体が本明細書に援用される、Nektar Advanced Pegylation catalog of 2004(Nektar社(米国カリフォルニア州サンカルロス所在)を参照。
【0105】
活性化PEGは、米国特許第5,681,567号、同第5,756,593号、同第5,643,575号、同第5,919,455号、同第6,113,906号、同第6,566,506号、同第6,153,655号、同第6,395,266号、同第6,638,499号、同第6,251,382号および同第6,824,766号の各明細書(参照することにより本明細書に援用される)に記載されるような直鎖、分岐鎖、またはU−PEG誘導体を含みうる。
【0106】
このようなポリマーの限定されないリストは、下記構造を有するポリマー系(i)〜(vii)に相当し:
【化3−1】

【化3−2】

【0107】
ここで、
61-62は、独立して、O、S、またはNR61であり、
63は、O、NR62、S、SOまたはSO2であり、
(w62)、(w63)および(w64)は、独立して、0または正の整数であり、約0〜約10が好ましく、約1〜約6がさらに好ましく、
(w61)は0または1であり、
mPEGはメトキシPEGであり、
ここでPEGは先に定義され、ポリマー部分の総分子量は約2,000〜約100,000であり、
61およびR62は、独立して、R11に用いることができる部分と同一の部分である。
【0108】
PEG系のポリマーに加えて、多くの他のポリアルキレンオキサイドを用いることができることもさらに理解されよう。例えば、本発明の複合体は、Shearwater Corporationの2001年のカタログ「生物医学的応用のためのポリエチレングリコールおよび誘導体(Polyethylene Glycol and Derivatives for Biomedical Application)」に記載されるものなど、マルチアームPEG−OHおよび「スター型PEG」製品を転換することを含む方法によって調製することができる。日油株式会社の薬物送達システムカタログ第8版(2006年4月)も参照のこと。これらの各開示は、参照することにより本明細書に援用される。マルチアームポリマーは4つまたはそれ以上のポリマーアームを含み、4つまたは8つのポリマーアームが好ましい。説明を目的とするのであって限定はしないが、マルチアームのポリエチレングリコール(PEG)残基は次式でありうる:
【化4】

【0109】
ここで、
(x)は、0または正の整数、すなわち約0〜約28であり、
(n)は重合度である。
【0110】
本発明の1つの好ましい実施の形態では、マルチアームPEGが書き構造を有し:
【化5】

【0111】
ここで(n)は正の整数である。本発明の1つの好ましい実施の形態では、ポリマーは約2,000〜約100,000の総分子量を有し、4,000〜45,000であることが好ましい。
【0112】
別の特定の実施の形態では、マルチアームPEGは下記構造を有し:
【化6】

【0113】
ここでnは正の整数である。本発明の1つの好ましい実施の形態では、ポリマーは約2,000〜約100,000の総分子量を有し、4,000〜45,000であることが好ましい。
【0114】
ポリマーは、米国特許第5,122,614号または同第5,808,096号の各明細書に記載される活性化技術を使用して、適切な活性化ポリマーに転換することができる。具体的には、このようなPEGは次式でありうる:
【化7】

【0115】
ここで、
(u')は約10〜約570の整数であり、約2,000〜約100,000の総分子量を有するポリマーを提供することが好ましく、約4,000〜約45,000であることが好ましく、残基の最大3つの末端部分がメチルまたは他の低級アルキルでキャップ化される。
【0116】
一部の好ましい実施の形態では、組換えタンパク質への付加を促進するため、PEGの4つのアームのすべてが、適切な官能基、すなわちSCなどに転換される。転換前のこの
ような化合物としては、下記のものが挙げられる:
【化8−1】

【化8−2】

【0117】
本発明のほとんどの好ましい態様では、活性化ポリエチレングリコールは、タンパク質とのウレタン結合またはアミド結合を提供するものである。
【0118】
さらに別の態様では、活性化ポリマーは、ヒンダードエステル系のリンカーを用いることができる。参照することによりその内容が本明細書に援用される、「ヒンダードエステル系の生体分解性リンカーを有するポリアルキレンオキサイド(Polyalkylene Oxides Having Hindered Ester-Based Biodegradable Linkers)」という発明の名称の国際出願第PCT/US07/78593号パンフレットを参照のこと。例えば、このような化合物の限定されないリストとして、下記のものが挙げられる:
【化9】

【0119】
ここで、(u)は、好ましくは約2,000〜約100,000の総分子量を有するポリマーを提供する、整数である。
【0120】
1つの好ましい実施の形態では、PEG複合体として下記のものが挙げられ:
【化10】

【0121】
ここで、(u)は、好ましくは約2,000〜約100,000、好ましくは約4,000〜約45,000、さらに好ましくは約5,000の分子量を有するポリマー部分を提供する、整数である。
【0122】
適切なポリマーは、重量によって実質的に変化するであろう。本発明の目的では、通常は、約2,000〜約100,000の数平均分子量を有するポリマーが、選択される。約4,000〜約45,000の分子量が好ましく、約5,000〜約12,000が特に好ましい。含まれるポリマー物質は、室温で水溶性であることが好ましい。このようなポリマーの限定されないリストとしては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールなどのポリアルキレンオキサイド・ホモポリマー、それらの共重合体および、水溶性が保持されることを条件としたブロック共重合体が挙げられる。mPEGに加えて、C1-4アルキル末端化ポリマーも有用である。
【0123】
高純度の末端カルボン酸を有するポリマーの調製方法は、参照することによりその内容が本明細書に援用される、米国特許出願第11/328,662号明細書に記載されている。その方法は、最初に、ポリアルキレンオキサイドの第3級アルキルエステルを調製し、続いてそのカルボン酸誘導体へと転換する。その方法のPAOカルボン酸の調製の最初の工程は、ポリアルキレンオキサイド・カルボン酸のt−ブチルエステルなどの中間体を形成する工程を有してなる。この中間体は、カリウムt−ブトキシドなどの塩基の存在下で、PAOをt−ブチルハロ酢酸と反応させることにより形成される。t−ブチルエステル中間体が形成されると、92%を超える純度で、好ましくは97%、さらに好ましくは99%、最も好ましくは99.5%を超える純度で、ポリアルキレンオキサイドのカルボン酸誘導体を容易に得ることができる。
【0124】
さらに別の態様では、第3級アミン基を有するポリマーを用いてADA複合体を調製することができる。高純度の、第3級アミンを含むポリマーの調製方法は、参照することによりそれぞれの内容が本明細書に援用される、米国特許出願第11/508,507号および同第11/537,172号の各明細書に記載されている。例えば、アジドを有するポリマーは、トリフェニルホスフィンなどのホスフィン系の還元剤、またはNaBH4などのアルカリ金属ホウ化水素還元剤と反応する。あるいは、脱離基を含むポリマーを、メチル−t−ブチルイミドジカルボナートのカリウム塩(KNMeBoc)またはジ−t−ブチルイミドジカルボナートのカリウム塩(KNBoc2)などの保護化されたアミン塩と反応させて、その後、保護化アミン基を脱保護する。これらの方法で形成される第3級アミンを含むポリマーの純度は、約95%よりも高く、99%よりも高いことが好ましい。
【0125】
上述の米国特許第6,153,655号明細書のポリマーによってもたらされる分岐は、単一の結合点に由来する生物活性分子に結合(loading)するポリマーを増加させる手段として、第2または第3の分岐を可能にする。過度の実験をすることなく、必要に応じて、二官能性のリンカー基に結合するように、水溶性のポリマーを官能化できることは、理解されよう。
【0126】
本明細書に含まれるポリマー物質は、室温で水溶性であることが好ましい。このようなポリマーの限定されないリストとしては、ポリエチレングリコール(PEG)またはポリプロピレングリコール、ポリオキシエチレン化ポリオールなどのポリアルキレンオキサイド・ホモポリマー、それらの共重合体および、水溶性が保持されることを条件とした、それらのブロック共重合体が挙げられる。
【0127】
PAO系ポリマーの代用として、効果的に、デキストラン、ポリビニル・ピロリドン、HPMA(ヒドロキシプロピルメタクリルアミド)などのポリアクリルアミド、ポリビニル・アルコール、炭化水素系ポリマー、前述の共重合体などの非抗原性の材料を使用することができる。当業者は、前述のリストが単に説明のためであって、本明細書に記載される品質を有するすべてのポリマー材料が意図されていることを理解するであろう。
【0128】
D.実用性
技術者は、本発明の変異型ADAが、ADA酵素に感受性の任意の疾患または障害を治療するための臨床症状に容易に用いられることを認識するであろう。このような疾患または障害は、影響を受けて、アデノシンまたはデオキシアデノシンの組織または血中濃度を低減させるものである。このような疾患または障害の例としては、SCID、例えば喘息などの呼吸器疾患、および、影響を受けて、局所または全身のアデノシンまたはデオキシアデノシンの濃度が低減する癌などが挙げられる。腫瘍または癌の治療におけるADAの使用についての更なる詳細は、参照することによりその内容全体が本明細書に援用される、本願と同一の出願人に譲渡された、本願と同日出願の、「酵素による抗癌治療(Enzymatic Anticancer Therapy)」という発明の名称の米国特許出願第12/105,682号明細書(米国仮特許出願第60/913,039号の優先権の利益を主張)によって提供されている。治療薬は、例えば、変異型rhADAまたは変異型rbADA酵素である。治療用の変異型rADAは、上述のように、例えばPEG化など、ポリマー結合されていることが好ましい。ADAまたはポリマー結合ADAの用量は、動物であるかヒトであるかに関わらず、腫瘍の臨床反応および個々の患者の副作用プロフィールに応じて個別に行われる。本明細書で以下に提供する研究例では、最大用量は、許容される投与可能な最大用量である。
【0129】
例えば、アダジェン(Adagen(登録商標))は、250UのウシADA/mLで市販されている。これは、0.2mlの「Adagen」を注射されたおよそ25gのマウスにとって2000U/kgと表すことができる。当然ながら、技術者は、ポリマー結合ADAの用量が、具体的ポリマーの大きさ、リンカー化学、および価数によって調整されうることを認識するであろう。例えば、ポリマーあたり2つまたはそれ以上のADA酵素を含むポリマー複合体の投与計画は、ADAの任意の具体的ポリマー複合体の溶液のmlあたりのADA単位にしたがって調整されるであろう。
【0130】
注入によるADAまたはADAのPEG複合体の提供では、至適用量の範囲は血漿のモニターによって設定されることが好ましい。一般には、約10〜100μmol/時間/ml、好ましくは約15〜約35μmol/時間/mlの範囲で血漿ADA活性(トラフレベル)が維持されるであろう投与量(37℃でアッセイ)を服用者に提供し、赤血球アデノシンの減少、すなわち、パック内の赤血球におけるdATPが約0.001〜0.057μmol/ml以下、好ましくは約0.005〜約0.015μmol/mlであるか、または、注入前サンプルで測定して、正常アデノシンレベルでのdATPが、総赤血球アデノシン(すなわち、ATP+dATP含量)の約1%以下であることを実証することが望ましい。dATPの正常値は約0.001μmol/ml未満である。
【0131】
酵素の量に基づいた用量は、例えば、約0.10U/kg〜約30U/kgまたはそれ以上の範囲であり、約0.5U/kg〜約20U/kgが好ましく、約0.5U/kg〜約5U/kgなど、約0.5U/kg〜約12U/kg(患者の体重のkgあたり)の範囲であることがさらに好ましい。1週間の総投与量は、服用者が許容できるように、最大40U/kgまたはそれ以上でありうる。服用者が許容できるように、最大単回投与量の30U/kgまたはそれ以上に至るまで、5U/kg/週のさらなる増加が認められる。一般に、15U/kgの「Adagen」を毎週注射した後の血漿におけるADA活性の平均トラフレベルは20〜25μmol/時間/mlの範囲である。
【0132】
100U/kgの用量は、子供における約12U/kgの臨床用量と等しい、マウスの投与量であることに注意すべきである。
【0133】
ADAの投薬情報の詳細は、参照することによりその内容が援用される、「Adagen」(Enzon,Inc.製)に挿入される処方箋に記載されるように、当技術分野で知られている。
【実施例】
【0134】
以下の実施例は、本発明のさらなる認識を提供する役割をすることであり、本発明の効力範囲を多少なりとも制限することを意味するものではない。
【0135】
実施例1
成熟タンパク質の74位のCysがSerに変化した、組換えヒトADAを発現する、E.coli発現株の構築
ヒトのアデノシン・デアミナーゼの報告されているアミノ酸配列(参照することにより本明細書に援用される、GenBank NP_000013)を、システインのコドンの存在について分析した。成熟(N−末端Metが開裂している)ポリペプチドの5つの位置が、システインをコードしている(C74、C152、C153、C168、C261)。ヒトADAを発現する設計され、修飾された遺伝子では、これら5箇所のシステインのコドン(システイン74、TGC)の1つだけが、セリンのコドン(TCC)に変化していた(これは、翻訳されたタンパク質における75位である)。重複するオリゴヌクレオチド部分の標準的化学合成を使用して、E.coliにおける発現に最適化されたコドンを有する新しい遺伝子の全合成のため、確定したポリペプチド配列(配列番号:3参照)をBlue Heron Corporation(米国ワシントン州ボセル所在)に提供した。簡潔に言えば、配列を細菌の発現用に最適化し、続いて、Grantham R., et al.; 1981; "Codon catalogue usage in genome strategy modulated for gene expressivity," Nucleic Acid Res. 9:r43-r47、およびLathe, R.; 1985; "Synthetic oligonucleotide probes deduced from amino acid sequence data, Theoretical and practical considerations." J. Mol Biol; 183:1-12に記載されるコドンデータを利用して、標準的な細菌コドンを大腸菌K12に用いた。
【0136】
報告されているヒトのアデノシン・デアミナーゼの363アミノ酸配列(参照することにより本明細書に援用される、GenBank NP_000013)を、システイン・コドンの存在について解析した。成熟(N−末端のMetが開裂している)ポリペプチドにおける5つの位置でシステインがコードされていた(C74、C152、C153、C168、C261)。ヒトADAを発現する、設計および修飾された遺伝子では、これら5箇所のシステインのコドンのうちの1つ(システイン74、TGC)だけがセリンのコドン(TCC)に変化していた(これは、翻訳されたタンパク質における75位である)。確定されたポリペプチド配列(配列番号:3を参照)は、重複オリゴヌクレオチド部分の標準的な化学合成を使用して、E.coliでの発現に最適化されたコドンを有する新しい遺伝子を全合成するため、Blue Heron Corporation(米国ワシントン州ボセル所在)に提供された。簡潔に述べると、配列は、Grantham R. et al.; 1981, "Codon catalogue usage in genome strategy modulated for gene expressivity," Nucleic Acid Res. 9:r43-r47、および、Lathe, R. 1985, "Synthetic oligonucleotide probes deduced from amino acid sequence data, Theoretical and practical considerations." J. Mol Biol; 183:1-12に記載されるコドンデータを使用し、Escherichia coli K12用の標準的な細菌コドン使用にしたがって、細菌内での発現に最適化された。
【0137】
次に、対応するRNA配列をヘアピン構造の形成またはループ形成について分析し、自由エネルギーの計算を最小限に抑えるようにした。フランキングする制限酵素認識部位、NdeIおよびBamHIは、遺伝子の末端に含まれていた。制限酵素NdeIおよびBamHIを用いた合成DNAの切断の後、1.1キロベースの遺伝子を、T4DNAリガーゼを介して、同じくこれら2種類の酵素で切断されたプラスミドベクターpET−28a(Novagen Corporation社製)内に結合させた。メーカーの使用説明書に従い、BTX Electro Cell Manipulator 600を使用するエレクトロポレーションによって、組換えプラスミドをE.coli株BLR(DE3)またはHMS174(DE3)内に導入した。プラスミドpET−28a/ADAcysSer(ADAc75s/pET28a:BLR(DE3)またはADAc75s/pET28a:HMS174(DE3)を指定)を含むコロニーの選択を可能にするため、形質転換混合物を、カナマイシン(15μg/ml)を含むLB寒天プレート上に塗沫した。ADA変異体遺伝子ヌクレオチド配列は、Big Dye Terminatorsを使用したABI Prism 310 Genetic AnalyzerでDNA配列分析することによって確認した。Ser74−rhADAのオープン・リーディング・フレーム(コード領域と疑われる)をコードするDNA配列は、配列番号:4によるものである。
【0138】
単離したコロニーを塗沫し、参照することにより本明細書に援用されるNovagen社のpETシステムマニュアル第9版に記載されるような標準的方法によって、LB培地においてイソプロピル-β−D−チオガラクトピラノシド(「IPTG」)を誘発可能な遺伝子の発現について分析することによって、さらに精製した。
【0139】
時間、温度、および誘発因子の濃度を含めた幾つかの誘発パラメータについて試験した。宿主細菌の細胞質内に、総細胞タンパク質の約20%という高濃度でのADAの産生を可能にする好ましい条件は、25℃で12時間、50μMのIPTGを用いた誘発であった。発現させたADAタンパク質は、およそ40,000という正確な分子量を示すことが、SDS PAGE分析で確認された(データ示さず)。
【0140】
実施例2
成熟タンパク質の74位のCysがSerに変化した、組換えウシADAを発現する、E.coli発現株の構築
ウシの腸の処置から得られる精製された成熟ADAタンパク質は、N−末端のメチオニンが欠如し、cDNA配列から予想された最後の6つのC−末端の残基も欠如している、356アミノ酸タンパク質である(参照することにより本明細書に援用される、GenBank NP_776312)。ウシADAアミノ酸配列を、システインのコドンの存在について分析した。成熟ポリペプチドの5つの位置がシステインをコードしている(C74、C152、C153、C168、C261)。設計および修飾されたウシADA合成遺伝子では、これら5箇所のシステイン位置の1つ(システイン74)だけが、セリン残基に変化していた。これは、成熟タンパク質の74位(または翻訳生成物の75位)における通常のシステインのコドンの代わりにセリンのコドン(TCC)を挿入することによって実現した。遺伝子はまた、E.coliでの発現に最適化されたコドンであった。
【0141】
簡潔に述べると、重複するオリゴヌクレオチド部分の化学合成を含む方法を用いて、E.coliにおける発現に最適化されたコドンを有する新しい遺伝子の全合成を目的として、確定したポリペプチド配列(配列番号:1参照)をBioCatalytics Inc.に提供した。BioCatalytics社の方法は、参照することによりその内容全体を本明細書に援用する、米国特許第6,366,860号明細書に詳細に記載されている。
【0142】
幾つかの発現系において、ウシADAの発現を研究した。フランキングする制限酵素認識部位、NdeIおよびBamHIは、遺伝子の末端に含まれていた。制限酵素NdeIおよびBamHIを用いた合成DNAの切断の後、1.1キロベースの遺伝子を、T4DNAリガーゼを介して、同じくこれら2種類の酵素で切断されたプラスミドベクターpET−9d(Novagen Corporation社製)内に結合させた。メーカーの使用説明書に従い、BTX Electro Cell Manipulator 600を使用するエレクトロポレーションによって、組換えプラスミドを、E.coli株BLR(DE3)またはHMS174(DE3)内に導入した。プラスミドpET−9d/bADA(bADA/pET9d:BLR(DE3)またはbADA/pET9d:HMS174(DE3)を指定)を含むコロニーの選択を可能にするため、形質転換混合物を、カナマイシン(15μg/ml)を含むLB寒天プレート上に塗沫した。ADA変異体遺伝子のヌクレオチド配列は、Big Dye Terminatorsを使用したABI Prism 310 Genetic AnalyzerでDNA配列分析することによって確認した。変異型ADAをコードするDNA分子は、配列番号:2によって示されている。
【0143】
単離したコロニーを塗沫し、Novagen社のpETシステムマニュアル第9版に記載されるような標準的方法により、LB培地においてIPTGの誘発が可能な遺伝子の発現について分析することによってさらに精製した。時間、温度、および誘発因子の濃度を含めた幾つかの誘発パラメータについて研究した。宿主細菌の細胞質内に、総細胞タンパク質の約20%という高濃度でADAを産生させる好ましい条件は、37℃で12時間、0.3%の乳糖を用いた誘発であった。ADA生成物は、およそ40,000という正確な分子量を示すことが、SDS PAGE分析で確認された。
【0144】
実施例3
変異型rhADAタンパク質の精製
変異型rhADAの精製は、Enzon社によって確立された3クロマトグラフィー・プロトコルで行った。宿主細胞HMS174(DE3)におけるプラスミドpET28a(Novagen社製)上の合成遺伝子からrhADAを発現するE.coliについて、細菌発酵を行った。リファンピシン(200μg/ml)およびカナマイシン(30μg/ml)を、酵母エキス(30g/l)を補充したグリセロールの最少培地に含めて、細胞を28℃で11OD600まで増殖させ、5mMの最終濃度に至るまで、誘発因子IPTGを加えた。40時間後(OD600〜110)、遠心分離によって細胞を回収し、−20℃で冷凍した。簡潔に言えば、解凍した細胞ペースト(50g)を10mMのトリス緩衝液[トリス−ヒドロキシメチルアミノメタン]、1mMのDTT、pH8.0の1800ml緩衝液に再懸濁し、Tempest Virtis(Sentry(商標)社(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製のマイクロプロセッサ)を用いて1200RPMで10秒間、均質化した。この懸濁液をステンレス鋼のメッシュ(開口部のマイクロメーター250μ、No.60、W.S Tyler社製)に通し、大きな粒子を除去した。3サイクルの間、103,400kPa(15,000psi)で、均質な細胞懸濁液を微小流動化した(装置を氷浴した)(Micro Fluidizer、Microfluidics Corp.(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製、110Yモデル)。微小流動化の終わりに、上記と同一の緩衝液200mlを使用して装置一式をすすぎ、この溶液を上記懸濁液と合わせた。細胞溶解物から得られた可溶性タンパクを、4℃で40分間、16,000rpmで遠心分離することによって抽出した(Sorvall(登録商標)社製のRC 5C plus、ローターSLA−1000)。無用の混合を避けるため、上清を注意深く回収した。pHを8.0に調整し、1mMのMgCl2および20mg/mlのデオキシリボヌクレアーゼ(DNase)を加え、室温で2時間インキュベートした。次に1NのHClを用いてpHを6.5に合わせた。2回目の遠心分離を上記のようにして行い、上清を回収し、2mMのEDTAに応じて調整し、その後、ナルゲン(Nalgene(登録商標))の90mmのフィルター・ユニットでろ過した。ろ過した上清の体積は500mlであり、BCA法による総タンパク質濃度は8.5mg/mlであった。
【0145】
細胞抽出液(100ml)をpH7.2および4.5mS/cmに調整し、20mMのBis−Tris、20mMのNaCl、pH6.5でHiTrap DEAE ff上に負荷し、20mMのBis−Tris、500mMのNaCl、pH6.5で溶出させた。ピーク画分を酵素アッセイおよびSDS−PAGEによって同定し、20mMのNaHPO4中の1.5Mの硫酸アンモニウム、pH6.5に調整し、HiTrap Phenyl ffカラムに負荷した。負荷する緩衝液の勾配、および20mMのNaHPO4、pH6.5を用いてタンパク質を溶出させた。ピーク画分(55ml;0.4mg/ml)を、20mMのNaHPO4、1mMのEDTA、1mMのDTT、pH6.5に対し、ダイアフィルターを行ない(diafiltered)、HiTrap SP−Sepharose ff上に負荷し、20mMのNaHPO4、500mMのNaCl、1mMのEDTA、1mMのDTT、pH6.5で溶出させた。回収画分は、精製ADAタンパク質を含んでいた(77ml;0.1mg.ml)。
【0146】
実施例4
組換えウシADAタンパク質の精製
実施例2のクローンによって発現させた変異型rbADAの精製は、Enzon社によって確立された3クロマトグラフィー・プロトコルで行った。簡潔に言えば、−80℃で保管された、200gの解凍した細胞ペースト(それぞれ、Blue Hereon社またはBiocatalytics社から入手)を、20mMのBis−Tris、1mMのEDTA、pH7.4の緩衝液1800mlに再懸濁し、Tempest Virtis(Sentry(商標)社(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製のマイクロプロセッサ)を用いて1200RPMで5分間、均質化した。この懸濁液をステンレス鋼のメッシュ(開口部マイクロメーター250μ、No.60、W.S Tyler社製)に通し、大きな粒子を除去した。3サイクルの間、103,400kPa(15,000psi)で、均質な細胞懸濁液を微小流動化した(装置一式を氷浴した)(Micro Fluidizer、Microfluidics Corp.(米国マサチューセッツ州ボストン所在)製、110Yモデル)。微小流動化の終わりに、上記と同一の緩衝液200mlを使用して装置一式をすすぎ、この溶液を上記懸濁液と合わせた。細胞溶解物から得られた可溶性タンパク質を、4℃で60分間、7100rpm(12000×g)で遠心分離することによって抽出した(Avanti J−201、Beckman Coulter社製;ローター番号JLA8.1000)。無用の混合を避けるため、上清を注意深く回収した。
【0147】
この細胞抽出液中のヌクレオチドを除去するため、トリエチレンイミン(PEI)を上記上清に加え(最終的には0.15%、wt/v)、10分間攪拌することにより完全に混合させた。次に、この細胞抽出液を4℃で一晩放置した。この一晩放置したサンプルから得られた沈殿を、4℃で60分間、7100rpm(12000×g)で遠心分離することによって除去した(Avanti J−201、Beckman Coulter社製;ローター番号JLA8.1000)。同様に、無用の混合を避けるため、上清を注意深く回収した。第1のカラムにADAが結合するのを補助するため、10%のPEG4600をこの細胞抽出液にゆっくりと加え、この細胞抽出液のpHを1NのNaOHおよび1NのHClを用いてゆっくりと6.5に調整した。次のカラムに負荷する前に、この上清を再度、4℃で60分間、7100rpm(12000×g)で遠心分離にかけた(Avanti J−201、Beckman Coulter社製;ローター番号JLA8.1000)。
【0148】
細胞抽出液を、予め平衡化したCapto Qカラム(カタログ番号17−5316−01、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製、総容積350ml、XK−50に予め充填済み)に、20mMのBis−Tris、1mMのEDTA、pH6.5の緩衝液を用いて負荷した。ADAを、80mMのNaClを用いてカラムから平衡化した緩衝液中に溶出させる前に、まず、60mMおよび70mMのNaClでの溶出を行い、不純物を除去した。溶出液の特性を、ADA活性、SDS−PAGE分析、ウェスタンブロット、およびRP−HPLCを用いて解析した。
【0149】
Capto Qカラムにかけた後、2つの疎水性相互作用によるクロマトグラフィー(「HIC」)精製を1つずつ行い、タンパク質の純度をさらに高めた。最初のHICはオクチルセファロース(Octyl Sepharose)4FF(カタログ番号17−0946−02、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製)であった。Capto Qカラムから得られたADA画分の貯留液を、硫酸アンモニウム粉末を用いて直接、1.5Mの(NH42SO4に応じて調整し、pHを6.5に調整した。ろ過したサンプル(Nalgene Nunc社(米国ニューヨーク州ロチェスター所在)製、カタログ番号540887、MEMB0.2PES)を、1.5Mの(NH42SO4、20mMのリン酸カリウム、1mMのEDTA、pH6.5を用いて予め平衡化した第1のHICカラムに負荷した(総容積150ml、XK−50、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製)。ADAタンパク質を硫酸アンモニウムの勾配を用いて溶出させ、この溶出液の純度特性をSDS−PAGEおよびRP−HPLCを用いて決定した。第1のHICカラムの画分のADAタンパク質を貯留し、1Mの(NH42SO4に応じて調整し、1Mの(NH42SO4、20mMのKH2PO4−K2HPO4、1mMのEDTA、pH6.5を用いて予め平衡化した第2のHICカラム(総容積150ml、XK−50、HIC Phenyl HP、カタログ番号17−1082−01、GE Healthcare社(米国ニュージャージ−州ピスカタウェイ所在)製)に直接負荷した。これらの画分のADA純度をSDS−PAGEおよびRP−HPLCを用いて分析した。精製rbADAまたはrhADAをさらに脱塩し、保存緩衝液(例えば、100mMのリン酸緩衝液、1mMのEDTA、pH6.5)に対しLabScale(商標)TFFシステム(Membrane BioMax5(米国マサチューセッツ州ベッドフォード所在))で濃縮した。
【0150】
実施例5
rbADAおよびSer74−rbADAにおける安定性の研究
次の研究は、酸化的分解反応に対するrbADAの安定性が、実際に、cys74をSerに突然変異させることによって改善されることを実証するために行なわれた。組換えウシADA(rbADA)および、cys74からser74に突然変異させた組換えウシADA(Ser74−rbADA)のサンプルを、リン酸ナトリウム緩衝液(pH7.8)中、約0.5mg/mlの濃度で、安定性の研究に使用した。安定性は、220nmのUV検出および質量分析検出法(Micromass Q−TOF電気スプレイ質量分析計)の両方を使用して、逆相HPLC(RP−HPLC)によってモニターした。HPLCの条件は下記の通りである:
カラム: Zorbax 300 SB−C8 (Agilent社製、250×4.6mm、細孔径300Å、粒径5μm)
移動相A: 水中、0.1%のトリフルオロ酢酸
移動相B: アセトニトリル/水中、0.1%のトリフルオロ酢酸(80/20;v/v)
勾配: 時間 移動相B(%)
0 20
5 20
45 80
46 20
60 20
カラム温度: 40℃
流量: 1.0ml/分
注入量: 50μl
化合物の純度は、安定性の研究を開始した時点、および、研究の開始後4、8、および17日を含むさまざまな時点において、RP−HPLCによって決定した。rbADA(非変異型)のサンプルは、本研究の開始時において、およそ生後2ヶ月であり、すでに 一部が分解されていたことに注意すべきである。Ser74−rbADAのサンプルは新たに調製され、比較的純粋であった。しかしながら、本研究の目的では、開始の時点と25℃で17日間インキュベート後の純度の差異は、検査のための関連パラメータである。
【0151】
表1に示すように、開始時のrbADAの純度は83.7%であったが、 17日後には66.1%に減少しており、この期間に17.6%のrbADAが分解されたことを示唆した。クロマトグラフィーで分離されたピークの質量分光分析法は、クロマトグラフィーの面積の30.5%を占める、31.851分に溶出する主要な分解物が、rbADAの質量よりも32Da大きい質量を有していることを示唆した。この質量変化は、rbADAに2つの酸素が付加して、rbADAの74位の遊離のシステインのスルフェン酸分解物を形成することと一致している。32.538分に溶出する、より小さい分解物ピークは、rbADAに1つの酸素が付加して、rbADAの74位の遊離のシステインのスルフェン酸分解物を形成することと一致している。反応性システイン74残基が置換されたセリン残基を有するSer74−rbADAでは、開始時点(97.2%)と17日後(97.9%)で実質的に同一の純度を有し、17日間にわたり、ほとんど分解されないことを示している。これは、システイン74が、実際に、rbADAに生じる酸化的分解反応の原因であり、この残基を、酸化の影響を受けないセリンに突然変異させることで分解を排除することを証明している。
【表1】

【0152】
実施例6
ADA欠損SCID患者の治療における変異型ADAタンパク質の利用
説明した変異型ADA酵素は、現在ADAGENを採用している治療環境に用いられる。Ser74−rbまたはrhADAは、例えば、ADAタンパク質あたり11〜17本のPEG、分子量5,000のポリマーを用いて、ポリエチレングリコール(PEG)と結合させることによって修飾して差し支えない。変異型ADAのPEG化調製物は、pH7.2〜7.4、約250単位/mlの濃度で、滅菌生理食塩水中で調剤される。PEG化変異型ADAは、筋内投与などの非経口的投与によって、患者に投与される。このような治療の恩恵を受ける患者としては、不十分なADA活性に起因する重症複合型免疫不全症を有する者が挙げられる。変異型PEG−ADAの投与は、典型的には、10U/kgの初回投与量、および毎週20U/kgの維持投与量の投薬スケジュールを用いて、7日間ごとに行われる。Ser74−rbまたはrhADAは、1.5mlのバイアルあたり1回用量だけを含む水溶液中に、2〜8℃で保存される。投薬スケジュールは、15〜35μmol/時間/mlの血漿ADA活性レベルを維持し(37℃でアッセイした)、パックされた赤血球1mlあたり0.005〜0.015μmol以下にまで、赤血球dATPを低減させるように設計される。
【0153】
実施例7
ウレタン結合を介した、PEG化Ser74−rbADAの調製
SC−PEG(炭酸N−スクシンイミジル−活性化ポリエチレングリコール、0.084mmol)を穏やかに攪拌しながら、3mlのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.8)中Ser74−rbADA(0.00027mmol)の溶液に加えた。溶液を30℃で30分間攪拌した。GPCカラム(Zorbax GF−450)を用いてPEG複合体をモニターした。 反応の終了時に(天然酵素の不存在によって分かる)、混合物を12mlの調製用緩衝液(0.05Mのリン酸ナトリウム、0.85%の塩化ナトリウム、pH7.3)を用いて希釈し、セントリプレップ(Centriprep)濃縮器(Amicon社製)を用いてダイアフィルトレーションを行ない、未反応のPEGを除去した。ダイアフィルトレーションは、等量の濾液と0.1%のPMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)を混合しても遊離のPEGが検出されなくなるまで、4℃にて、必要に応じて引き続き行なった。
【0154】
実施例8
ウレタン結合を介した、PEG化Ser74−rhADAの調製
実施例7に記載される条件と同一の条件を用いて、SC−PEG(0.084mmol)をSer74−rhADA(0.00027mmol)と反応させた。
【0155】
実施例9
アミド結合を介した、PEG化Ser74−rbADAの調製
SS−PEG(コハク酸N−スクシンイミジル−活性化ポリエチレングリコール、0.084mmol)を穏やかに攪拌しながら、3mlのリン酸ナトリウム緩衝液(0.1M、pH7.8)中Ser74−rbADA(0.00027mmol)の溶液に加えた。溶液を30℃で30分間攪拌した。GPCカラム(Zorbax GF−450)を用いてPEG複合体をモニターした。 反応の終了時に(天然酵素の不存在によって分かる)、混合物を12mlの調製用緩衝液(0.05Mのリン酸ナトリウム、0.85%の塩化ナトリウム、pH7.3)を用いて希釈し、セントリプレップ濃縮器(Amicon社製)を用いてダイアフィルトレーションを行ない、未反応のPEGを除去した。ダイアフィルトレーションは、等量の濾液と0.1%のPMA(0.1M HCl中のポリメタクリル酸)を混合しても遊離のPEGが検出されなくなるまで、4℃にて必要に応じて引き続き行なった。
【0156】
実施例10
アミド結合を介した、PEG化突然変異タンパク質rhADAの調製
実施例9に記載された条件と同一条件を用いて、SS−PEG(0.084mmol)を、変異型タンパク質rhADA(0.00027mmol)と反応させた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
野生型のアデノシン・デアミナーゼにおいて発現された、酸化されうるアミノ酸残基が、酸化されないアミノ酸残基で置換された、組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項2】
前記酸化されうるアミノ酸残基が、システイン、メチオニンまたはトリプトファンであり、前記酸化されないアミノ酸残基が、アラニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、フェニルアラニン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、リジン、ロイシン、アスパラギン、プロリン、グルタミン、アルギニン、セリン、トレオニン、バリン、チロシン、2−アミノアジピン酸、3−アミノアジピン酸、β−アラニン、β−アミノプロピオン酸、2−アミノ酪酸、4−アミノ酪酸、ピペリジン酸、6−アミノカプロン酸、2−アミノヘプタン酸、2−アミノイソ酪酸、3−アミノイソ酪酸、2−アミノピメリン酸、2,4−ジアミノ酪酸、デスモシン、2,2’−ジアミノピメリン酸、2,3−ジアミノプロピオン酸、n−エチルグリシン、n−エチルアスパラギン、ヒドロキシリジン、アロ−ヒドロキシリジン、3−ヒドロキシプロリン、4−ヒドロキシプロリン、イソデスモシン、アロ−イソロイシン、n−メチルグリシン、サルコシン、n−メチルイソロイシン、6−n−メチルリジン、n−メチルバリン、ノルバリン、ノルロイシンおよび/またはニチン(nithine)からなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項3】
前記酸化されないアミノ酸残基が、セリン、アラニン、アスパラギン、グルタミン、グリシン、イソロイシン、ロイシン、フェニルアラニン、トレオニン、チロシン、およびバリンからなる群より選択されることを特徴とする請求項1記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項4】
前記酸化されないアミノ酸残基がセリンであることを特徴とする請求項1記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項5】
前記酸化されうるシステインが、成熟タンパク質の約74位に位置することを特徴とする請求項2記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項6】
組換えヒト・アデノシン・デアミナーゼ、または組換えウシ・アデノシン・デアミナーゼであることを特徴とする請求項5記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項7】
配列番号:2または配列番号:4に従ったDNA分子から翻訳されることを特徴とする請求項6記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項8】
配列番号:1または配列番号:3を含むことを特徴とする請求項6記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項9】
Lys198に代わるGln、Thr245に代わるAla、Gly351に代わるArg、およびそれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸置換を有する配列番号:1を含む、請求項8記載の組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項10】
アデノシン・デアミナーゼが、請求項1記載の組換えアデノシン・デアミナーゼであることを特徴とする、ポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項11】
前記ポリアルキレンオキサイドがポリエチレングリコールであることを特徴とする、請求項10記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項12】
前記ポリエチレングリコールが、炭酸スクシンイミジル、チアゾリジンチオン、ウレタン、およびアミド系リンカーからなる群より選択されるリンカーを介して、前記組換えアデノシン・デアミナーゼに結合することを特徴とする、請求項11記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項13】
前記ポリエチレングリコールが、前記組換えアデノシン・デアミナーゼのLysのε−アミノ基に共有結合することを特徴とする、請求項11記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項14】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼが、前記組換えアデノシン・デアミナーゼの1つ以上のLys残基のε−アミノ基に付加する、1つ以上のポリエチレングリコール鎖を含むことを特徴とする、請求項11記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項15】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼが、前記組換えアデノシン・デアミナーゼの1つ以上のLys残基のε−アミノ基に付加する、約11〜約18本のポリエチレングリコール鎖を含むことを特徴とする、請求項11記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項16】
前記ポリエチレングリコールが、炭酸スクシンイミジル・リンカーを介して前記組換えアデノシン・デアミナーゼに結合することを特徴とする、請求項11記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項17】
前記ポリエチレングリコールが、約2,000〜約100,000の分子量を有することを特徴とする、請求項10記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項18】
前記ポリエチレングリコールが、約4,000〜約45,000の分子量を有することを特徴とする、請求項10記載のポリアルキレンオキサイド−アデノシン・デアミナーゼ複合体。
【請求項19】
請求項1記載の組換えアデノシン・デアミナーゼを有効量で投与することを含む、哺乳動物におけるアデノシン・デアミナーゼ介在性の病状を治療する方法。
【請求項20】
前記アデノシン・デアミナーゼ介在性の病状が、重症複合免疫不全症であることを特徴とする、請求項19記載の方法。
【請求項21】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼを疎水性相互作用クロマトグラフィーによって精製する工程を有してなる、配列番号:1を含む請求項10記載の組換えアデノシン・デアミナーゼの精製方法。
【請求項22】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼをイオン交換クロマトグラフィーによって精製する工程を有してなる、請求項10記載の組換えアデノシン・デアミナーゼの精製方法。
【請求項23】
請求項21の方法によって生産された組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項24】
請求項22の方法によって生産された組換えアデノシン・デアミナーゼ。
【請求項25】
配列番号:1または配列番号:3のアミノ酸配列を有する組換えアデノシン・デアミナーゼをコードする、単離DNA。
【請求項26】
前記組換えアデノシン・デアミナーゼが、Lys198に代わるGln、Thr245に代わるAla、Gly351に代わるArg、およびそれらの組合せからなる群より選択されるアミノ酸置換を有することを特徴とする、請求項25記載の単離DNA。

【公表番号】特表2010−524472(P2010−524472A)
【公表日】平成22年7月22日(2010.7.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504270(P2010−504270)
【出願日】平成20年4月18日(2008.4.18)
【国際出願番号】PCT/US2008/060805
【国際公開番号】WO2008/131208
【国際公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【出願人】(505354899)エンゾン ファーマスーティカルズ インコーポレイテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】ENZON PHARMACEUTICALS, INC.
【Fターム(参考)】