説明

安定剤または結合剤を含むハイ・ロフト不織布

本発明は不織布構造物に可撓性および圧縮回復性を賦与するポリウレタン尿素組成物を含んだ結合剤または安定剤を含有するハイ・ロフト不織布に関する。ポリウレタン尿素分散物はハイ・ロフト不織布構造物をつくっている短い長さの繊維に対する安定剤または結合剤として含まれている。本発明は、ブラジャーのカップのような用途におけるポリウレタン発泡体製品の代替品として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布構造物に可撓性および圧縮回復性を賦与するポリウレタン尿素組成物を含む結合剤または安定剤を含有したハイ・ロフト(high−loft、大きな厚みをもった)不織布に関する。ハイ・ロフト不織布構造物をつくる短繊維に対する安定剤としてはポリウレタン尿素分散物が含まれている。本発明は例えばブラジャーのカップのような用途に用いられるポリウレタン発泡体の改善された代替品として有用である。
【背景技術】
【0002】
大部分のブラジャーはカップの中に詰物を詰めたような形につくられている。詰物は形および大きさの補強、並びに上品さを与えるために使用される。従来ブラジャーのカップの詰物を作るために繊維の詰物が用いられてきたが、繊維は、特に洗濯の際、カップの内部を移動することができるために、カップは形を崩すか凸凹が生じるであろう。
【0003】
詰物をもったブラジャーの数が増えて一般的になるにつれて、ブラジャーの製造業者は合成繊維の詰物の代替品としてポリウレタン(PU)の発泡体を使用し始めた。従来PUは繊維の主要な代替品として使用されてきた。PUの発泡体は柔らかく軽量であり、成形型によって成形することができるが、酸化および/または光化学反応によって黄変するという大きな欠点をもっている。製造業者はかなりの経費をかけて(例えば多層の繊維布を使用するなどして)PUの発泡体を覆い隠し黄変を見えなくするようにブラジャーの設計をしている。これに加えて、PUの発泡体は通気性、浸透性、および蒸気透過性が悪い。
【0004】
特許文献1では、繰り返し洗濯した後もその形状を保持する詰物をもったブラジャーのカップの製造に関連した挑戦であることを認めている。繊維の詰物(fiberfill)は樹脂の結合剤を含んでいるが、これは伸長して成形し所望の形にする前に殆ど完全に硬化する。これを補償するためにさらに他の樹脂を被覆する。その欠点は、ポリウレタンがブラジャーの詰物を堅くし、そのため着用者が不快感を感じることである。この代替法は工業的に受け入れらなかったが、その一つの理由は、代わりに何故PU発泡体を使用しなければならないかということである。
【0005】
特許文献2にも繊維の詰物を含む詰物を用いたブラジャーのカップが記載されている。樹脂の結合剤、例えばアクリル、ポリエステル、アセテートまたはこれらの組合せを詰物に加え、洗濯中の形状保持性を増加させる。詰物の堅さに伴う問題があることが認識されており、樹脂を導入した後穿孔を行うことによりこの問題を補償する。この方法で可撓性が賦与されるが、これは費用のかかる工程であり、付け心地の良いという点に対して適切な解決にはなっていない。
【0006】
特許文献3には、融点の低い結合剤の繊維を含む不織ウエッブをもった結合剤繊維が記載されている。しかしこのような組成物は堅い型成形製品を生じるために、型成形の用途には適していない。
【0007】
従って、洗濯の後でも形状を保持し、しかも着用者の心地よさに対して極めて重要である可撓性および圧縮回復性の利点が賦与されているような代替となるハイ・ロフト不織布材料が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】Magidson等に対する米国特許第3,947,207号明細書。
【特許文献2】Huber等に対する米国特許第4,091,819号明細書。
【特許文献3】Pittman等に対する米国特許第6,670,035号明細書。
【発明の概要】
【0009】
本発明の或る具体化例においては、ハイ・ロフト不織布組成物、および安定剤または結合剤組成物の欠点が克服された安定剤を含む製品が提供される。このハイ・ロフト不織布はポリウレタン尿素組成物、例えばポリウレタン尿素分散物と組み合わされた繊維の詰物を含んでいることができる。この組み合わせにより、長時間に亙り、また洗濯機による操作を含む洗濯を数回行った後でも保持される可撓性、伸長回復性、圧縮回復性、通気性、および色安定性が与えられる。
【0010】
或る具体化例の不織布と共にポリウレタン尿素組成物を用いる他の利点は、ポリウレタン尿素が伸長回復性を賦与することである。従来の結合剤組成物、例えばアクリルおよびポリウレタンを使用する場合には伸長回復性は得られない。
【0011】
また本発明には安定化された繊維の詰物を用いてつくられたブラジャーのカップが含まれる。安定剤はポリウレタン組成物、例えばポリウレタン尿素分散物によって与えられる。ハイ・ロフトの不織布構造物に対する結合剤としてポリウレタン尿素水性分散物を用いることにより、発泡体の劣化および繊維の詰物の移動の問題に対処することができる。安定化された繊維の詰物を用いてつくられたブラジャーのカップは、PU発泡体のカップに比べて通気性が大きく、軽量であり、安定化された色をもつことができる。
【0012】
他の具体化例においては、製品の製造法が提供される。この方法には繊維の詰物を含むハイ・ロフト不織布構造物を提供することが含まれる。この不織布をポリウレタン尿素組成物に接触させる。ポリウレタン尿素組成物は水性分散物の形をしていることができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書においては「水性ポリウレタン分散物」という言葉は少なくとも1種のポリウレタンまたはポリウレタン尿素重合体または予備重合体(例えば本明細書に記載されたようなポリウレタン予備重合体)を含み、さらに水性媒質、例えば脱イオン水のような水の中に分散した溶媒を随時含む組成物を意味する。
【0014】
本明細書においては、「溶媒」という言葉は特記しない限り非水性媒質であって、該非水性媒質には揮発性有機溶媒(例えばアセトン)、および若干揮発し難い有機溶媒(例えばN−メチルピロリドン(NMP))を含む有機溶媒が含まれる非水性媒質を意味する。
【0015】
本明細書においては「溶媒を含まない」または「溶媒を含まない系」と云う言葉は、組成物または分散した成分の大部分が溶媒に溶解または分散していない組成物または分散物を意味する。
【0016】
本明細書においては「型成形した」製品という言葉は、製品または成形された製品が例えば製品を成形型の中で乾燥させるか、または熱および/または圧力をかけることに応答して乾燥することにより変化した結果であることを意味する。
【0017】
本明細書においては「繊維の詰物」と云う言葉は、種々の用途に適した密度が得られるように不規則に充填された比較的短い繊維を含むことを意味する。
【0018】
或る具体化例に有用な繊維の詰物の組成物は種々の天然および人工繊維を含んでいるこ
とができる。ハイ・ロフト不織布の特定の例はNewkirkの米国特許第4,883,707号明細書に記載されている。この特許は引用により本明細書に包含される。天然繊維は動物、植物、または鉱物由来のものを含んでいる。
【0019】
人工繊維は例えば再生繊維、または溶媒で紡糸した繊維であるか、或いは例えば無機性の繊維および石油化学的に誘導された繊維のような合成繊維であることができる。特定の例には綿、羊毛、アクリル、ポリアミド(ナイロン)、ポリエステル、スパンデックス、再生セルロース、ゴム(天然または合成品)、竹、絹、大豆、およびこれらの組み合わせ、例えばポリエステル/綿配合物が含まれる。ポリエステル繊維の詰物は枕およびブラジャーの詰物に使用される普通の材料である。
【0020】
繊維詰物組成物の中には二成分繊維も含まれていることができる。二成分繊維はそのクリンプ特性のためにハイ・ロフトの不織布をつくるのに特に有用である。有用な二成分繊維の例には、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステル、ポリプロピレン、/ポリエステル、ポリエステル共重合体/ポリエステル、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれる重合体の組み合わせが含まれる。
【0021】
ポリウレタン尿素組成物は溶液、水性分散物、または溶媒を含まない分散物の形をしていることができる。この組成物を、噴霧、パッディング、ディッピング(dipping)および浸漬(immersing)、被覆(例えばキスロール塗装またはグラビア印刷法)、およびこれらの組合せを含む当業界に公知の方法により適用することができる。
【0022】
繊維詰物組成物を供給し、ポリウレタン尿素組成物と接触させた後、得られた製品をさらに処理することができる。製品を乾燥させるかまたは室温で放置して乾燥させることができる。乾燥時間を減少させる方法には熱をかける方法が含まれ、その中で当業界においては特に強制的に高温の空気を通す方法、炉の中で加熱する方法、マイクロ波をかける方法がある。
【0023】
製品は型成形することもできる。型成形はポリウレタン尿素組成物をハイ・ロフト不織布に被覆する前、またはその後で行うことができる。例えばハイ・ロフトの不織布を成形型の中に入れ、その後でポリウレタン尿素組成物を被覆することができる。次にこの製品を乾燥または加熱することができる。別法としてハイ・ロフトの不織布をつくった後、これを乾燥する前または乾燥した後に成形型の中に入れて随時加熱することができる。型成形工程中圧力をかけることもできる。
【0024】
或る具体化例においては、ハイ・ロフトの不織布を繊維布の二つの層の間に挟み、随時圧力をかけて加熱乾燥させることができる。この繊維布−不織布−繊維布の組み合わせは多重層製品を与え、これを型成形することができる。この方法で型成形された製品は身体の形を整えるための衣服、例えばブラジャーのカップを含む種々の最終用途に有用であるが、また室内装飾用または他の家具材用、および自動車用の製品の製造にも有用である。
【0025】
上記のように、ポリウレタン尿素組成物と組み合わせたハイ・ロフトの不織布を含む或る具体化例の製品は、種々の最終用途に有用である。この中には特に繊維布、衣類、内装材、枕、および窓処理材が含まれる。
【0026】
或る具体化例に有用なポリウレタン尿素分散物は、特定のウレタン予備重合体からつくることができる。この予備重合体はポリオールとイソシアネートとの反応生成物を含み、これを連鎖伸長させてセグメント・ポリウレタン尿素(segmented polyurethaneurea)組成物をつくる。特定の例は米国特許第7,240,371号明細書、および2007年、7月20日出願の米国特許出願第ll/780,819号に
記載されている。これらの特許は引用によりその全文が本明細書に包含される。別法としてポリウレタン尿素溶液を使用することができる。このような溶液は当業界の専門家には公知であり、その中にはスパンデックス繊維製造用のものが含まれる。
【0027】
或る具体化例においては、ポリウレタン尿素の溶液または分散物をつくるためのセグメント・ポリウレタン尿素は、(a)数平均分子量が500〜5000(例えば約600〜4000および600〜3500)のポリオールまたはポリオール共重合体或いはポリオール混合物、例えばこれだけには限定されないがポリエーテルグリコール、ポリエステルグリコール、ポリカーボネートグリコール、ポリブタジエングリコール、またはこれらの水素化された誘導体;(b)ジイソシアネート、例えば脂肪族ジイソシアネート、芳香族ジイソシアネートおよび脂環式ジイソシアネートを含むポリイソシアネートを含み、また分散物に対しては(c)(i)ポリイソシアネートと反応し得るヒドロキシ基、および(ii)中和すると塩を生じることができる少なくとも1種のカルボン酸基、ただし該少なくとも1種のカルボン酸基はポリイソシアネートと反応することができない、を含むジオール化合物;(d)中和剤;(e)水、ジオール、またはジアミン連鎖伸長剤または炭素数2〜13の脂肪族ジアミンおよび脂環式ジアミンから選ばれる1種またはそれ以上のジアミンを有する脂肪族ジアミン連鎖伸長剤の組み合わせ、またはアミノ末端重合体を含むジアミン連鎖伸長剤を含み;さらに随時(f)ブロッキング剤または連鎖終結剤としての1級または2級のモノアルコールまたはモノアミン、並びに随時少なくとも3個の1級または2級アミン基を有する有機化合物または重合体を含んでいる。
【0028】
キャッピングされたグリコールとしても知られている或る具体化例のウレタン予備重合体は、予備重合体を水に分散して連鎖伸長させる前においては、一般にポリオール、ポリイソシアネート、および中和すると塩を生じ得る化合物の反応生成物と考えることができる。このような予備重合体は典型的には溶媒を用いまたは用いないで一段階または多段階でつくることができる。溶媒は予備重合体組成物の粘度を減少させるために有用に使用することができる。
【0029】
予備重合体が分散物中に残留した揮発性の低い溶媒(例えばNMP)に溶解しているか;或いは後で除去し得るアセトンまたはメチルエチルケトン(MEK)のような揮発性の溶媒に溶解しているか;或いは溶媒を含まずに水の中に分散しているかに従い、分散過程は実際にはそれぞれ溶媒過程、アセトン過程、または予備重合体混合過程に分類することができる。予備重合体混合過程は環境的に、また経済的に有利であり、実質的に全く溶媒が加えられていない水性分散物をつくるのに用いることができる。
【0030】
予備重合体混合過程においては、溶媒で希釈してもしなくても予備重合体の粘度は、これを水の中に入れて分散させることができるほど十分低いことが重要である。粘度に対するこの要求を満たし、且つ予備重合体または分散物の中に有機溶媒を含んでいないこのような予備重合体から誘導されたポリウレタン尿素の分散物を使用することができる。
【0031】
ポリウレタン分散物の所望の効果に依存して、分散物中の重合体の重量平均分子量は約
40,000〜約250,000、例えば約40,000〜約150,000;約70,000〜約150,000;約100,000〜 約150,000;および約120,000〜約140,000の範囲で変化することができる。
【0032】
本発明の或る具体化例のポリウレタン尿素組成物の成分について下記に詳細に説明する。
【0033】
ポリオール
本発明によるウレタン予備重合体の製造原料として適したポリオール成分は数平均分子
量が約600〜約3,500または約4,000のポリエーテルグリコール、ポリカーボネートグリコール、およびポリエステルグリコールである。
【0034】
使用できるポリエーテルポリオールの例には、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、トリメチレンオキシド、テトラヒドロフラン、および3−メチルテトラヒドロフランの開環重合および/または共重合により得られる2個またはそれ以上のヒドロキシ基をもったグリコール;多価アルコール、例えば各分子の炭素数が12より小さいジオールまたはジオール混合物、例えばエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、および1,12−ドデカンジオールの縮重合によって得られる2個またはそれ以上のヒドロキシ基をもったグリコールが含まれる。ポリオールの特定の例には直鎖の二官能性のポリエーテルポリオール、および分子量が約1,700〜約2,100のポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、例えば二官能性のTerathane(R)1800(Invista)が含まれる。
【0035】
使用可能なポリエステルポリオールの例には、各分子の炭素数が12より小さい脂肪族ポリカルボン酸およびポリオール、またはそれらの混合物の縮重合によって得られる2個またはそれ以上のヒドロキシ基をもったエステルグリコールが含まれる。適当なポリカルボン酸の例にはマロン酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデカンジカルボン酸、およびドデカンジカルボン酸が含まれる。ポリエステルポリオールをつくるのに適したポリオールの例にはエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、および1,12−ドデカンジオールが含まれる。直鎖の二官能性ポリエステルポリオールは約5〜約50℃の融点をもっていることができる。
【0036】
使用できるポリカーボネートポリオールの例には、各分子の炭素数が12より小さいフォスゲン、クロロ蟻酸エステル、ジアルキルカーボネートまたはジアリルカーボネートと脂肪族ポリオールとの縮重合によってつくられる2個またはそれ以上のヒドロキシ基をもったカーボネートグリコール、またはそれらの混合物が含まれる。ポリカーボネートポリオールをつくるのに適したポリオールの例にはジエチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、および1,12−ドデカンジオールが含まれる。直鎖の二官能性ポリカーボネートポリオールは約5〜約50℃の融点をもっていることができる。
【0037】
ポリイソシアネート
適当なポリイソシアネート成分の例にはジイソシアネート、例えば1,6−ジイソシアナートヘキサン、1,12−ジイソシアナートドデカン、イソフォロンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,5−ジイソシアナート−2−メチルペンタン、ジイソシアナートシクロヘキサン、メチレン−ビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、テトラメチルキシレンジイソシアネート、ビス(イソシアナートメチル)シクロヘキサン、トルエンジイソシアネート、メチレンビス(4−フェニルイソシアネート)、フェニレンジイソシアネート、キシレンジイソシアネート、およびこのようなジイソシアネートの混合物が含まれる。例えばジイソシアネートは芳香族ジイソシアネート、例えばフェニレンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート(TDI)、キシリレン
ジイソシアネート、ビフェニレンジイソシアネート、ナフチレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)およびこれらの組み合わせであることができる。
【0038】
本発明によるウレタン予備重合体をつくる他の原料として適したポリイソシアネート成分は、4,4’−メチレン−ビス(フェニルイソシアネート)および2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)を含み、4,4’−MDI対2,4’−MDIの異性体の比が約65:35〜約35:65、例えば約55:45〜約45:55、および約50:50のジフェニルメタンジイソシアネート(MDI)異性体混合物である。適当なポリイソシアネート成分の例にはMondur(R)ML(Bayer)、Lupranate(R)Ml(BASF)およびIsonate(R)50 O,P’(Dow Chemical)が含まれる。
【0039】
ジオール
本発明によりウレタン重合体を製造するためのさらに他の原料として適したジオール化合物には、(i)ポリイソシアネートと反応し得る二つのヒドロキシ基、および(ii)中和すると塩を生じ得ることができ、且つポリイソシアネート(b)と反応し得ない少なくとも一つのカルボン酸基を有する少なくとも1種のジオール化合物が含まれる。カルボン酸基を有するジオール化合物の典型的な例には2,2−ジメチロプロピオン酸(DMPA)、2,2−ジメチロブタン酸、2,2−ジメチロ吉草酸、およびカプロラクトンを用いて得られるDMPA、例えばCAPA(R)HC 1060(Solvay)が含まれる。
【0040】
中和剤
酸基を塩に変える適当な中和剤の例には、第3級アミン(例えばトリエチルアミン、N,N−ジエチルメチルアミン、N−メチルモルフォリン、N,N−ジイソプロピルエチルアミン、およびトリエタノールアミン)およびアルカリ金属水酸化物(例えばリチウム、ナトリウム、およびカリウムの水酸化物)が含まれる。第1級および第2級アミンも酸基に対する中和剤として使用することができる。中和の程度は一般に酸基に関して約60〜約140%、例えば約80〜約120%である。
【0041】
連鎖伸長剤
本発明に有用な連鎖伸長剤にはジアミン連鎖伸長剤および水が含まれる。有用な連鎖伸長剤の多くの例は当業界の通常の専門家には公知である。適当なジアミン連鎖伸長剤の例には次のものが含まれる:1,2−エチレンジアミン、1,4−ブタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1,2−プロパンジアミン、2−メチル―1,5―ペンタンジアミン、ジアミンネオペンチルグリコール、3−メチル−1,5−ペンタンジアミン、1,2−シクロヘキサンジアミン、1,4−シクロヘキサンジアミン、4,4’−メチレン−ビス(シクロへキシルアミン)、イソフォロンジアミン、2,2−ジメチル−1,3−プロパンジアミン、m−テトラメチルキシレンジアミン、および分子量が500より小さいJeffamine(R)(Texaco)。
【0042】
表面活性剤
適当な表面活性剤(サーファクタント)の例は次の通りである:陰イオン性、陽イオン性、または非イオン性分散剤または表面活性剤、例えばナトリウムドデシルサルフェート、ナトリウムジオクチルスルフォスクシネート、ナトリウムドデシルベンゼンスルフォネート、エトキシル化されたアルキルフェノール、例えばエトキシル化されたノニルフェノール、およびエトキシル化された脂肪アルコール、臭化ラウリルピリジニウム、ポリエーテルフォスフェートおよびフォスフェートエステル、変性されたアルコールエトキシレート、およびこれらの組み合わせ。
【0043】
ブロッキング剤
イソシアネート基に対するブロッキング剤は一官能性のアルコールまたは一官能性のアミンである。ブロッキング剤は予備重合体の生成前、生成中、または生成後において、脱イオン水のような水性媒質に予備重合体を分散させる前およびさせた後を含む任意の時点において加えることができる。或る具体化例においてはブロッキング剤は随時加えるかまたは加えないことができる。他の具体化例においては、ブロッキング剤は予備重合体の重量に関し約0.05〜約10.0%、例えば約0.1〜約6.0%、および約1.0〜約4.0%の量で含まれていることができる。ブロッキング剤は最終的な分散物の重量に関し約0.01〜約6.0%、例えば約0.05〜約3%、および約0.1〜約1.0%の量で含まれていることができる。
【0044】
ブロッキング剤を含ませると、分散物の中の重合体の重量平均分子量を制御することができ、また重合体の分子量分布を制御することができる。ブロッキング剤がこの制御を行う効果はブロッキング剤の種類に依存し、また分散物の製造の際何時ブロッキング剤が加えられたかに依存する。例えば、一官能性のアルコールは予備重合体の生成前、生成中および生成後に加えることができる。また一官能性アルコール・ブロッキング剤は予備重合体が分散している水性媒質に加えることができ、或いは予備重合体を水性媒質に分散させた直後に加えることができる。しかし、最終的な分散物の重合体の分子量および分子量分布を制御することが望ましい時には、一官能性アルコールは分散させる前に予備重合体の一部として加えて反応させた場合、最も効果的である。予備重合体を分散させる際またはその後で一官能性アルコールを加えると、競合する連鎖伸長反応のために重合体の分子量を制御する効果は減少するであろう。
【0045】
本発明に用いるのに有用な一官能性アルコールの例には、分子量が約750以下、例えば分子量が500以下で、炭素数1〜18の脂肪族および脂環式の1級および2級のアルコール、フェノール、置換フェノール、エトキシル化されたアルキルフェノール、およびエトキシル化された脂肪アルコール;ヒドロキシラミン、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチルで置換された第3級アミン、ヒドロキシメチルおよびヒドロキシエチルで置換された複素環化合物、およびこれらの組み合わせ、例えばフルフリルアルコール、テトラヒドロフルフリルアルコール、N−(2−ヒドロキシエチル)スクシンイミド、4−(2−ヒドロキシエチル)モルフォリン;メタノール、エタノール、ブタノール、ネオペンチルアルコール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、シクロヘキサンメタノール、ベンジルアルコール、オクタノール、オクタデカノール、N,N−ジエチルヒドロキシラミン、2−(ジエチルアミノ)エタノール、2−ジメチルアミノエタノール、および4−ピペリジンエタノール、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれる少なくとも1種が含まれる。
【0046】
一官能性アミン化合物、例えば一官能性ジアルキルアミンをイソシアネート基に対するブロッキング剤として用いる場合、これは分散物の製造中に加えることができ、好ましくは予備重合体を分散させる際またはその後に一官能性アミンブロッキング剤を水性媒質に加える。例えば予備重合体を分散させた直後に一官能性アミンブロッキング剤を水の混合物に加えることができる。
【0047】
適当な一官能性ジアルキルアミンブロッキング剤の例には次のものが含まれる:N,N−ジエチルアミン、N−エチル−N−プロピルアミン、N,N−ジイソプロピルアミン、N−t−ブチル−N−メチルアミン、N−t−ブチル−N−ベンジルアミン、N,N−ジシクロヘキシルアミン、N−エチル−N−イソプロピルアミン、N−t−ブチル−N−イソプロピルアミン、N−イソプロピル−N−シクロヘキシルアミン、N−エチル−N−シクロヘキシルアミン、N,N−ジエタノールアミン、および2,2,6,6−テトラメチ
ルピペリジン。水に分散させる前のアミンブロッキング剤対予備重合体のイソシアネート基のモル比は一般に約0.05〜約0.50、例えば約0.20〜約0.40の範囲でなければならない。脱ブロッキング剤反応には触媒を使用することができる。
【0048】
予備重合体を分散させ、ブロッキング剤を加えた後に、随時1モル当たり少なくとも3個またはそれ以上の1級および/または2級アミノ基をもった少なくとも1種の重合体成分(MW>約500)を水性媒質に加えることができる。適当な重合体成分の例にはポリ(ビニルアミン)、ポリ(アリルアミン)、およびポリ(アミドアミン)デンドリマー(dendrimer)、およびこれらの組合せが含まれる。
【0049】
他の添加物
適当な発泡防止剤、または脱泡剤、或いは発泡抑制剤の例には次のものが含まれる:Additive65およびAdditive62(Dow Corning製のシリコーンをベースにした添加物)、FoamStar(R) 300(鉱油をベースにした、シリコーンを含まない脱泡剤、Cognis社製)およびSurfynolTM DF 110L(高分子量のアセチレングリコール非イオン性表面活性剤、Air Products & Chemicals製)。
【0050】
適当な塑性変性剤には次のものが含まれる:変性して疎水性にしたエトキシル化されたウレタン(HEUR)、変性して疎水性にしたアルカリで膨潤し得る乳化物(HASE)、および変性して疎水性にしたヒドロキシエチルセルロース(HMHEC)。
【0051】
水性分散物または予備重合体中に随時含まれる他の添加物には次のものがある:酸化防止剤、紫外線安定剤、着色剤、顔料、交叉結合剤、相変化材料(例えば、米国コロラド州、BoulderのOutlast Technologiesから市販されているOutlast(R))、抗菌物質、鉱物質(例えば銅)、マイクロカプセル化された健康食品添加物(例えばアロエ・ヴェラ(aloe vera)、ビタミンEゲル、アロエ・ヴェラ、海草、ニコチン、カフェイン、香気またはアロマ)、ナノ粒子(例えばシリカまたは炭素)、炭酸カルシウム、燃焼遅延剤、抗粘着性添加物、塩素による劣化に対する抵抗性をもった添加物、ビタミン、医薬品、芳香剤、電気伝導性添加物、および/または染色助剤。予備重合体または水性分散物に加えることができる他の添加物は、接着促進剤、静電防止剤、凹み形成防止剤、クローリング(crawling)防止剤、光学的艶だし剤、癒着剤、電気伝導用添加剤、リュミネッセンス添加剤、流動平滑化剤、凍結融解安定剤、潤滑剤、有機性および無機性充填剤、防腐剤、テクスチャー加工剤、熱変色性添加物、防虫剤、および湿潤剤。
【0052】
随時添加される添加物は予備重合体を分散させる前、分散させる際、分散させた後に加えることができる。
【0053】
皮膜または分散物、フィルムまたは成形製品は不織布にする前にまたはした後に顔料を加えるか着色することができる。
【0054】
下記の実施例により本発明の特徴および利点を詳細に説明する。これらの実施例は本発明を例示するものであり、本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0055】
数種のブラジャーのカップをつくった。これは重量平均分子量が約120,000のポリウレタン尿素水性分散物を含んでいた。ポリエステルの繊維の詰物の芯(batting)(枕の詰物に典型的なもの)を広げて矩形の平鍋の中に入れ、水性分散物を噴霧する。「薄い」被覆物、「中程度」の被覆物、および「厚い」被覆物の例を示す試料つくった
。これらの試料を一晩乾燥させた後、「薄い」被覆物は殆ど力をかけずに引き離され、繊維を十分結合させるためには分散物の量が不十分であることを示唆した。「厚い」被覆物はゴム状に見え、触ると堅い感じがした。「中程度」の被覆物はポリウレタン尿素の充填量が最適であり、これは最小限度の実験で達成することができる。
【0056】
「中程度」に被覆した詰物の芯の試料を繊維布の二つの層の間に挟み、通常の発泡体のカップの型成形装置(成形して加熱)に入れた。型成形されたカップを型成形機から取り出した。これは型成形されたブラジャーのカップに望ましい成形された外観および圧縮回復性を示すことが見出だされた。
【0057】
比較のため、従来の結合剤で安定化された数種の通常の繊維の詰物の芯を発泡体のカップの型成形装置で成形した。これらの試料は、米国ノースカロライナ州、10530 Westlake Drive、Charlotteのハイ・ロフト不織布の製造業者であるKem−Wove,Inc.から得た。成形を行った場合、得られたカップは堅い特性を示し、型成形されたブラジャーのカップには適していなかった。
【0058】
以上、現在本発明の好適具体化例と思われるものを説明したが、当業界の専門家は本発明の精神および範囲を逸脱することなく変形および修正を行うことができ、このようなすべての変形および修正は本発明の範囲に入るものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ハイ・ロフトの不織布、および
(b)ポリウレタン尿素組成物を含んで成ることを特徴とする製品。
【請求項2】
該ハイ・ロフトの不織布はポリエステルの繊維性詰物を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項3】
該ハイ・ロフトの不織布は、ポリエチレン/ポリプロピレン、ポリエチレン/ポリエステル、ポリプロピレン/ポリエステル、ポリエステル共重合体/ポリエステル、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれる重合体の組み合わせを含んで成る二成分繊維を含んで成っていることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項4】
該ポリウレタン尿素組成物は水性分散物を含んで成ることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項5】
該水性分散物は
(a)ポリエーテル、ポリエステル、ポリカーボネート、およびそれらの組み合わせから選ばれ、600〜4000の数平均分子量を有する少なくとも1種のポリオール、
(b)芳香族ジイソシアネート、脂肪族ジイソシアネート、脂環式ジイソシアネート、およびこれらの組み合わせから成る群から選ばれるポリイソシアネート、
(c)(i)ポリイソシアネートと反応し得るヒドロキシ基、および(ii)中和すると塩を生じ得るがポリイソシアネートと反応することはできない少なくとも1種のカルボン酸基を含む少なくとも1種のジオール化合物、
(d)中和剤、;
(e)連鎖伸長剤;
(f)少なくとも1種の一官能性アミンまたは一官能性アルコールを含んで成るイソシアネート基に対するブロッキング剤;および
少なくとも1種の表面活性剤の反応生成物である重合体を含んでいることを特徴とする請求項4記載の製品。
【請求項6】
該分散物は加えられた溶媒を実質的に含んでいないことを特徴とする請求項4記載の製品。
【請求項7】
該ポリイソシアネートは4,4’−および2,4’−メチレンビス(フェニルイソシアネート)(MDI)異性体の混合物を含んで成り、4,4’−MDI異性体対2,4’−MDI異性体の比は65:35〜35:65であることを特徴とする請求項5記載の製品。
【請求項8】
ジオールは2,2’−ジメチロプロピオン酸(DMPA)、2,2’−ジメチロブタン酸、2,2’−ジメチロ吉草酸、およびそれらの組み合わせから成る群から選ばれることを特徴とする請求項5記載の製品。
【請求項9】
該分散物は重量平均分子量が約40,000〜約250,000のポリウレタン尿素重合体を含んで成ることを特徴とする請求項4記載の製品。
【請求項10】
該分散物は重量平均分子量が約40,000〜約150,000のポリウレタン尿素重合体を含んで成ることを特徴とする請求項4記載の製品。
【請求項11】
該製品は型成形されていることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項12】
該製品はブラジャーのカップの形に型成形されていることを特徴とする請求項1記載の製品。
【請求項13】
(a)ハイ・ロフトの不織布を提供し、
(b)該不織布をポリウレタン尿素組成物に接触させることを特徴とする製品の製造方法。
【請求項14】
該ハイ・ロフトの不織布はポリエステル繊維の詰物を含んで成っていることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項15】
該接触は噴霧、パッディング、ディッピング、浸漬、被覆、およびこれらの組み合わせによって行われることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項16】
該ポリウレタン尿素組成物は水性分散物を含んで成ることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項17】
さらに(c)該製品を乾燥する工程を含んで成ることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項18】
該乾燥は室温における乾燥、加熱による乾燥、およびこれらの組み合わせから選ばれることを特徴とする請求項17記載の方法。
【請求項19】
さらに(d)該製品を型成形する工程を含んで成ることを特徴とする請求項13記載の方法。
【請求項20】
該製品は繊維布の二つの層の間で型成形されることを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項21】
該型成形は加熱を含むことを特徴とする請求項19記載の方法。
【請求項22】
該型成形は加圧を含むことを特徴とする請求項19記載の方法。

【公表番号】特表2011−505504(P2011−505504A)
【公表日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−536048(P2010−536048)
【出願日】平成20年11月12日(2008.11.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/083207
【国際公開番号】WO2009/073324
【国際公開日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【出願人】(309028329)インビスタ テクノロジーズ エス エイ アール エル (80)
【Fターム(参考)】