説明

安定化された酸化タングステン剤を含む中間層

本発明は、多層窓ガラスパネルに使用されるポリマー中間層を包含する。本発明の中間層は、熱可塑性ポリマー、可塑剤、酸化タングステン剤、および酸化タングステン剤の分解を防ぐ安定剤を含む。かかる成分を組み込んだ中間層は、紫外線ブロッキング特性を向上させており、そしてまた、光学的品質を長期にわたって維持する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多層窓ガラスパネル中間層の分野に存在し、より具体的には、本発明は、安定化された酸化タングステン剤を含む多層窓ガラスパネル中間層の分野に存在する。
【背景技術】
【0002】
ポリ(ビニルブチラール)(PVB)は普通、安全ガラスまたはポリマー積層体などの光透過性積層体中の中間層として使用することができるポリマー層の製造に使用される。安全ガラスは多くの場合、2枚のガラスのシート間に配置された可塑化ポリ(ビニルブチラール)中間層を含む透明な積層体を意味する。安全ガラスは多くの場合、建築および自動車開口部において透明な障壁を提供するために使用される。その主要な機能は、開口物を通しての貫通またはガラス破片の分散を許すことなく、物体の衝撃によって引き起こされるものなどの、エネルギーを吸収し、こうして、囲まれた区域内の物体または人への損傷または損害を最小限にすることである。安全ガラスはまた、音響騒音を弱める、UVおよび/またはIR線透過を減らす、および/または窓開口部の外観および美的魅力を高めることなどの、他の有益な効果を提供するためにも使用することができる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
中間層は多くの場合、それらのポリマー成分に加えて、完成窓ガラス製品を透過する放射線のスペクトルを変えるように機能する様々な試剤を含む。しかしながら、それらの試剤は、多くの場合不安定であるかまたは完成積層体において望ましくない影響をもたらす。
【0004】
当該技術分野で必要とされるものは、望ましい試剤がポリマー中間層の他の特性に影響を及ぼすことなく安定して維持されるように考案されている中間層である。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、多層窓ガラスパネルに使用されるポリマー中間層を包含する。本発明の中間層は、熱可塑性ポリマー、可塑剤、酸化タングステン剤、および酸化タングステン剤の分解を防ぐ安定剤を含む。かかる成分を組み込んだ中間層は、紫外線ブロッキング特性を向上させており、そしてまた、光学的品質を長期にわたって維持する。
【発明を実施するための形態】
【0006】
本発明は、多層窓ガラス中間層として、単独でかまたはポリマー多層の積み重ねでかのどちらかで、使用することができるポリマー層中の酸化タングステン剤の安定した使用に関する。
【0007】
本明細書で用いるところでは、「多層窓ガラス中間層」は、2つ以上の層、例えば、それらの間に中間層を持った2枚のガラスを有する窓ガラスに使用することができる中間層を意味する。中間層は、単一ポリマー層または組み合わせられた多層からなることができる。窓ガラスパネルは、例えば、自動車フロントガラスおよび建築用途に使用することができる。
【0008】
本明細書に開示されるように、酸化タングステン剤および安定剤は、多層窓ガラスパネル用途での使用のための中間層として−または中間層内の層として−有用であるポリマー層中に組み込まれる。以下に詳細に記載されるように、本発明のポリマー層は、任意の好適な熱可塑性ポリマーを含むことができ、好ましい実施形態では、ポリマー層はポリ(ビニルブチラール)を含む。
【0009】
本発明のポリマー層は、赤外吸収剤として酸化タングステン剤を組み込む。酸化タングステン剤は、中間増の任意の1つ以上のポリマー層中にまたは層上に分散させることができる。酸化タングステン剤は、当該技術分野で公知であるような任意の好適な方法、例えば、個々の層の製造中の添加、または製造後の浸漬、吹き付け塗りもしくは他の局所的処理によって、しかしそれらに限定されない方法によってポリマー層に直接混ぜ込むかまたはポリマー層上に直接配置することができる。
【0010】
様々な実施形態では、酸化タングステン剤は、ポリマー層の形成前にポリマーの本体中に直接組み込まれる。これらの実施形態では、酸化タングステン剤は、1.0%、0.8%、0.6%、もしくは0.4%未満、または0.01%〜1.0%、0.05%〜0.5%、もしくは0.1%〜0.3%の重量百分率量の酸化タングステン剤を有するポリマー層を提供するようにポリマー中に組み込むことができる。好ましい実施形態では、酸化タングステン剤顔料はポリマー層の本体中に組み込まれる。様々な実施形態では、2つ以上のタイプの太陽光吸収顔料が単一ポリマー層にまたは多重ポリマー層に含まれる。
【0011】
一般に、酸化タングステン剤は、所望の赤外吸収効果を達成するのに十分な量でポリマー層に組み込まれるおよび/またはポリマー層上に配置される。当業者によって認められるように、この量は、他の成分および顔料に依存して変わる。様々な実施形態では、単一ポリマー層は、800ナノメートル〜2500ナノメートル範囲の赤外線の少なくとも40%、60%、80%、95%、もしくは99%、または当該範囲の近赤外線の70%〜95%の層を通しての透過を防ぐのに十分な酸化タングステン剤を有する。
【0012】
可視光散乱(ヘーズ)を最小限にするために、酸化タングステン剤は、150ナノメートル未満、100ナノメートル未満、または50ナノメートル未満であることができる。
【0013】
酸化タングステン剤に加えて、本発明のポリマー層は、酸化タングステン剤の老化効果によるポリマー層での青色シフトを防ぐために安定剤を組み込む。本発明の様々な実施形態では、ベンゾトリアゾール基を有する分子、ビス(2−エチル酪酸)マグネシウムなどの多価金属塩、または両方が酸化タングステン剤と一緒にポリマー層に組み込まれる。
【0014】
ベンゾトリアゾール基を有する分子は、任意の好適な量で組み込むことができ、様々な実施形態では、ベンゾトリアゾール基を有する分子は、0.05〜1.0phrまたは0.2〜0.8phrで組み込まれる。ベンゾトリアゾール基を有する分子は、任意の好適な方法で、例えば、ポリマー溶融体との直接混合によって組み込むことができる。ベンゾトリアゾール基を有する分子は、例えば、Tinuvin 326(登録商標)およびTinuvin 328(登録商標)(Ciba Specialty Chemicals,Basel,Switzerland)として、商業的に入手可能である。
【0015】
本明細書で用いるところでは、「ベンゾトリアゾール基を有する分子」は、その構造内に次の基:
式I−ベンゾトリアゾール:
【化1】

を有する分子を意味する。
【0016】
本発明で有用であるベンゾトリアゾール基を有する分子の例には、限定されることなく:
式II、Tinuvin 328(登録商標):
【化2】

および
式III、Tinuvin 326(登録商標):
【化3】

が挙げられる。
【0017】
ビス(2−エチル酪酸)マグネシウムなどの多価金属塩は、同様に任意の好適な量で組み込むことができ、様々な実施形態では、0.009%〜0.1%、または0.05%〜0.075%で組み込まれる。多価金属塩は、任意の好適な方法で、例えば、ポリマー溶融体との直接混合によって組み込むことができる。他のマグネシウム塩を使用することができ、様々な実施形態では、任意の好適な多価金属塩を使用することができる。
【0018】
他の実施形態では、ベンゾトリアゾール基を有する分子およびビス(2−エチル酪酸)マグネシウムなどの多価金属塩の両方が酸化タングステン剤を含むポリマー層中に組み込まれる。
【0019】
本発明の様々な実施形態では、酸化タングステン剤は、中間層に組み込まれるポリマー層中に配置される。これらの実施形態では、中間層は、単一ポリマー層のみを含むことができるか、またはポリマー層を含む多層中間層であることができる。多層中間層が使用される実施形態には、当該技術分野で公知であるものが含まれ、限定されない例として、以下に詳細に記載される、単一中間層を形成するために2つ以上のポリマー層が一緒に積層された中間層、および1つ以上のポリマー層が1つ以上のポリマーフィルムと一緒に積層された中間層が含まれる。これらの実施形態のいずれにおいても、酸化タングステン剤は、ポリマー層の任意の1つ以上に配置することができ、様々な層は同じものかまたは異なるものであることができる。
【0020】
例示的な多層中間層構成体には、以下の:
(ポリマー層)
(ポリマー層/ポリマーフィルム/ポリマー層)
(ここで、nは1〜10であり、様々な実施形態では、5未満であり、pは1〜5であり、様々な実施形態では、3未満である)
が含まれる。
【0021】
本発明の中間層は、多層窓ガラスパネルに組み込むことができ、様々な実施形態では、ガラスの2層間に組み込まれる。かかる構成体の用途には、とりわけ、自動車フロントガラスおよび建築用ガラスが含まれる。
【0022】
本発明の様々な実施形態では、酸化タングステン剤を含む中間層は、二重層に使用される。本明細書で用いるところでは、二重層は、中間層がその上に配置された状態で、ガラスまたはアクリルなどの、剛性基材を有する多層構成体である。典型的な二重層構成体は、(ガラス)//(ポリマー層)//(ポリマーフィルム)である。二重層構成体には、限定されない例として:
(ガラス)//((ポリマー層)//(ポリマーフィルム))
(ガラス)//(ポリマー層)//(ポリマーフィルム)
(ここで、hは1〜10であり、様々な実施形態では、3未満であり、gは1〜5であり、様々な実施形態では、3未満である)
が含まれる。
【0023】
さらなる実施形態では、記載されたばかりの中間層は、破片遮蔽体としての機能を果たすために多層窓ガラスパネルの片側に加えることができ、限定されない例としては:
(多層窓ガラスパネル)//((ポリマー層)//(ポリマーフィルム))
(多層窓ガラスパネル)//(ポリマー層)//(ポリマーフィルム)
(ここで、hは1〜10であり、様々な実施形態では、3未満であり、gは1〜5であり、様々な実施形態では、3未満である)
である。
【0024】
酸化タングステン剤
本発明の酸化タングステン剤には、一般式W(式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、2.0<z/y<3.0、2.2≦z/y≦2.99、または2.45≦z/y≦2.99を満たす)で表されるもの、および/または一般式M(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reから選択される元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1.0または0.01≦x/y≦0.5、および2.0<z/y≦3.0、2.2≦z/y≦2.99、または2.45≦z/y≦2.99を満たす)で表される複合酸化タングステンの粒子が含まれる。タングステン/酸素比の例には、限定されないが、WO2.92、WO2.90、W2058、W2468、W1747、W1849などが挙げられる。好ましい実施形態では、酸化タングステン剤は、上記の特性のいずれかを有する酸化セシウムタングステン(CsWO)であり、様々な実施形態では、モル比Cs0.33WOを有する酸化セシウムタングステンが使用される。
【0025】
ポリマーフィルム
本明細書で用いるところでは、「ポリマーフィルム」は、性能向上層として機能する比較的薄い、剛性ポリマー層を意味する。ポリマーフィルムは、ポリマーフィルムそれ自体が必要な貫入抵抗およびガラス保持特性を多層窓ガラス構造に提供せずに、むしろ、赤外吸収特性などの、性能向上を提供するという点において、本明細書で使用されるような、ポリマー層とは異なる。ポリ(エチレンテレフタレート)がポリマーフィルムとして最も普通に使用される。
【0026】
様々な実施形態では、ポリマーフィルム層は、0.013mm〜0.20mm、好ましくは0.025mm〜0.1mm、または0.04〜0.06mmの厚さを有する。ポリマーフィルム層は、接着性または赤外線反射などの、1つ以上の特性を向上させるために任意選択的に表面処理またはコーティングすることができる。これらの機能性能層には、例えば、日光に露光されたときに赤外太陽放射を反射する、および可視光を透過するための多層積み重ねが含まれる。この多層積み重ねは当該技術分野で公知であり(例えば、国際公開第88/01230号パンフレットおよび米国特許第4,799,745号明細書を参照されたい)、例えば、1つ以上のオングストローム厚さの金属層と1つ以上(例えば2つ)の逐次沈着された、光学的に協調する誘電体層とを含むことができる。同様に公知であるように(例えば、米国特許第4,017,661号明細書および同第4,786,783号明細書を参照されたい)、金属層は任意選択的に、任意の関連ガラス層の霜取りまたは曇り除去のために電気抵抗加熱されてもよい。
【0027】
米国特許第6,797,396号明細書に記載されている、本発明で使用することができるポリマーフィルムの追加のタイプは、金属層によってもたらされ得る干渉を引き起こすことなく赤外線を反射する働きをする多数の非金属層を含む。
【0028】
ポリマーフィルム層は、幾つかの実施形態では、光学的に透明であり(すなわち、層に一面に隣接する物体を、他の面から層越しに見ても、特定の観察者の目で楽に見ることができ)、かつ、通常は、組成にかかわらず任意の隣接ポリマー層の引張弾性率より大きい、幾つかの実施形態では、著しく大きい引張弾性率を有する。様々な実施形態では、ポリマーフィルム層は熱可塑性材料を含む。好適な特性を有する熱可塑性材料の中には、ナイロン、ポリウレタン、アクリル、ポリカーボネート、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、酢酸および三酢酸セルロース、塩化ビニルポリマーおよびコポリマーなどがある。様々な実施形態では、ポリマーフィルム層は、顕著な特性を有する再延伸熱可塑性樹脂フィルムなどの材料を含み、それには、ポリエステル、例えば、ポリ(エチレンテレフタレート)およびポリ(エチレンテレフタレート)グリコール(PETG)が含まれる。様々な実施形態では、ポリ(エチレンテレフタレート)が使用され、様々な実施形態では、ポリ(エチレンテレフタレート)は、強度を向上させるために二軸延伸されており、高温にさらされたときに低い収縮特性(例えば、150℃で30分後に両方向に2%未満の収縮)を提供するために熱安定化されている。
【0029】
本発明で使用することができるポリ(エチレンテレフタレート)フィルム用の様々なコーティングおよび表面処理技術は、欧州特許出願公開第0157030号明細書に開示されている。本発明のポリマーフィルムはまた、当該技術分野で公知であるような、ハードコートおよび/または防曇層を含むことができる。
【0030】
ポリマー層
以下の章は、本明細書で他の場所に記載される酸化タングステン剤を含む本発明のポリマー層を形成するために使用することができる、ポリ(ビニルブチラール)などの、様々な材料を記載する。
【0031】
本明細書で用いるところでは、「ポリマー層」は、十分な貫入抵抗およびガラス保持特性を積層窓ガラスパネルに提供する中間層として使用するための、単独でか、または2つ以上の層の積み重ねで好適である薄層へ任意の好適な方法によって成形された任意の熱可塑性ポリマー組成物を意味する。可塑化ポリ(ビニルブチラール)がポリマー層を形成するために最も普通に使用される。
【0032】
本明細書で用いるところでは、「樹脂」は、酸触媒作用およびその後のポリマー前駆体の中和によって生じる混合物から取り出されるポリマー(例えば、ポリ(ビニルブチラール))成分を意味する。樹脂は一般に、ポリマーに加えて、酢酸塩、塩、およびアルコールなどの他の成分を有する。本明細書で用いるところでは、「溶融体」は、可塑剤および、任意選択的に、他の添加剤との樹脂の溶融混合物を意味する。成分は、樹脂100部当たりの部、または「phr」単位で測定することができる。本明細書で用いるところでは、樹脂100部当たりの部は、重量/重量基準である。例えば、30グラムの可塑剤が100グラムのポリマー樹脂に添加される場合、生じた可塑化ポリマーの可塑剤含有率は30phrである。
【0033】
本発明のポリマー層は、任意の好適なポリマーを含むことができ、上に例示されたような、好ましい実施形態では、ポリマー層はポリ(ビニルブチラール)を含む。ポリマー層のポリマー成分としてポリ(ビニルブチラール)を含む、本明細書に与えられる本発明の実施形態のいずれにも、ポリマー成分がポリ(ビニルブチラール)からなるかまたは本質的になる別の実施形態が含まれる。これらの実施形態では、本明細書に開示される、可塑剤をはじめとする、添加剤の変動のいずれも、ポリ(ビニルブチラール)からなるかまたは本質的になるポリマーを有するポリマー層で使用することができる。
【0034】
一実施態様では、ポリマー層は、部分アセタール化ポリ(ビニルアルコール)をベースとするポリマーを含む。別の実施形態では、ポリマー層は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン−コ−酢酸ビニル)、ポリ(エチレン−コ−アクリル酸エチル)、部分中和エチレン/(メタ)アクリル酸コポリマーマーのアイオノマー(DuPont製のSurlyn(登録商標)など)、ポリエチレン、ポリエチレンコポリマー、ポリウレタン、またはポリ(シクロヘキサノンジメチレンテレフタレート−コ−エチレンテレフタレート)コポリエステルからなる群から選択されるポリマーを含む。様々な実施形態では、ポリマー層は、ポリ(ビニルブチラール)、ポリウレタン、ポリ(塩化ビニル)、ポリ(エチレン酢酸ビニル)、またはそれらの組み合わせを含む。さらなる実施形態では、ポリマー層は、ポリ(ビニルブチラール)および1つ以上の他のポリマーを含む。好適なガラス転移温度を有する他のポリマーもまた使用することができる。好ましい範囲、値、および/または方法がポリ(ビニルブチラール)について(限定されない例として、可塑剤、成分百分率、厚さ、および特性向上添加剤について)特に与えられている、本明細書での章のいずれにおいても、それらの範囲はまた、適用できる場合、ポリマー層中の有用な成分として本明細書に開示される他のポリマーおよびポリマーブレンドにも適用される。
【0035】
ポリ(ビニルブチラール)を含む実施形態については、ポリ(ビニルブチラール)は、当業者に知られているような(例えば、米国特許第2,282,057号明細書および同第2,282,026号明細書を参照されたい)、公知のアセタール化法によって製造することができる。一実施態様では、B.E.Wadeによって、Encyclopedia of Polymer Science & Technology、第3版、第8巻、381−399ページ(2003年)において、ビニルアセタールポリマー(Vinyl Acetal Polymers)に記載されている溶媒法を用いることができる。別の実施形態では、そこに記載されている水性法を用いることができる。ポリ(ビニルブチラール)は、ButvarTM樹脂として、例えば、Solutia Inc.,St.Louis,Missouriから様々な形態で商業的に入手可能である。
【0036】
様々な実施形態では、ポリ(ビニルブチラール)を含むポリマー層樹脂は、ポリ(ビニルアルコール)として計算される10〜35重量パーセント(重量%)のヒドロキシル基、ポリ(ビニルアルコール)として計算される13〜30重量%のヒドロキシル基、またはポリ(ビニルアルコール)として計算される15〜22重量%のヒドロキシル基を含む。ポリマー層樹脂はまた、残りがアセタール、好ましくはブチルアルデヒドアセタールであるが、任意選択的に他のアセタール基、例えば、2−エチルヘキサナール基を少量含む状態で、ポリ酢酸ビニルとして計算される15重量%未満の残存エステル基、13重量%、11重量%、9重量%、7重量%、5重量%、または3重量%未満の残存エステル基を含むことができる(例えば、米国特許第5,137,954号明細書を参照されたい)。
【0037】
様々な実施形態では、ポリマー層は、少なくとも30,000、40,000、50,000、55,000、60,000、65,000、70,000、120,000、250,000、または少なくとも350,000グラム/モル(g/モルまたはダルトン(Dalton))の分子量を有するポリ(ビニルブチラール)を含む。少量のジアルデヒドまたはトリアルデヒドをまた、分子量を少なくとも350,000g/モルに上げるためにアセタール化工程中に添加することができる(例えば、米国特許第4,902,464号明細書、同第4,874,814号明細書、同第4,814,529号明細書、および同第4,654,179号明細書を参照されたい)。本明細書で用いるところでは、用語「分子量」は、重量平均分子量を意味する。
【0038】
酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、およびマグネシウム塩をはじめとする、様々な接着調節剤を、本発明のポリマー層に使用することができる。本発明のこれらの実施形態で使用することができるマグネシウム塩には、サリチル酸マグネシウム、ニコチン酸マグネシウム、ジ−(2−アミノ安息香酸)マグネシウム、ジ−(3−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸)マグネシウム、およびビス(2−エチル酪酸)マグネシウム(ケミカル・アブストラクト番号79992−76−0)などの、米国特許第5,728,472号明細書に開示されているものが含まれるが、それらに限定されない。本発明の様々な実施形態では、マグネシウム塩はビス(2−エチル酪酸)マグネシウムである。
【0039】
他の添加剤が最終製品でのその性能を向上させるためにポリマーに組み込まれてもよい。かかる添加剤には、当該技術分野で公知であるような、染料、顔料、安定剤(例えば、紫外線安定剤)、酸化防止剤、ブロック防止剤、追加のIR吸収剤、難燃剤、前述の添加剤の組み合わせなどが含まれるが、それらに限定されない。
【0040】
本発明のポリマー層の様々な実施形態では、ポリマー層は、20〜60、25〜60、20〜80、10〜70、または10〜100部の可塑剤phrを含むことができる。勿論、特定の用途向けに適切であるような、他の量を使用することができる。幾つかの実施形態では、可塑剤は、20個より少ない、15個より少ない、12個より少ない、または10個より少ない炭素原子の炭化水素セグメントを有する。可塑剤の量は、ポリ(ビニルブチラール)層のガラス転移温度(T)に影響を及ぼすように調節することができる。一般に、より高い量の可塑剤はTを低下させるために添加される。
【0041】
任意の好適な可塑剤を、ポリマー層を形成するために本発明のポリマー樹脂に添加することができる。本発明のポリマー層に使用される可塑剤には、とりわけ、多塩基酸または多価アルコールのエステルが含まれ得る。好適な可塑剤には、例えば、トリエチレングリコールジ−(2−エチルブチレート)、トリエチレングリコールジ−(2−エチルヘキサノエート)、トリエチレングリコールジヘプタノエート、テトラエチレングリコールジヘプタノエート、ジヘキシルアジペート、ジオクチルアジペート、ヘキシルシクロヘキシルアジペート、ヘプチルおよびノニルアジペートの混合物、ジイソノニルアジペート、ヘプチルノニルアジペート、ジブチルセバケート、油変性セバシン酸アルキドなどの高分子可塑剤、米国特許第3,841,890号明細書に開示されているなどのホスフェートとアジペートとの混合物、米国特許第4,144,217号明細書に開示されているなどのアジペート、ならびに前述のものの混合物および組み合わせが含まれる。使用することができる他の可塑剤は、米国特許第5,013,779号明細書に開示されているような、C〜CアルキルアルコールおよびシクロC〜C10アルコールから製造された混合アジペートならびに、ヘキシルアジペートなどの、C〜Cアジペートエステルである。様々な実施形態では、使用される可塑剤は、ジヘキシルアジペートおよび/またはテトラエチレングリコールジ−2−エチルヘキサノエートである。
【0042】
ポリ(ビニルブチラール)ポリマー、可塑剤、および任意の添加剤は、当業者に公知の方法に従って熱処理し、シート形態へ配置構成することができる。ポリ(ビニルブチラール)層の例示的な一形成方法は、樹脂、可塑剤、および添加剤を含む溶融ポリ(ビニルブチラール)を、ダイ(例えば、垂直寸法でより一寸法で実質的に大きい開口部を有するダイ)に溶融体を押し通すことによって押し出す工程を含む。ポリ(ビニルブチラール)層の別の例示的な形成方法は、溶融体をダイからローラー上へキャストし、樹脂を凝固させ、その後凝固した樹脂をシートとして取り外す工程を含む。様々な実施形態では、ポリマー層は、例えば、0.1〜2.5ミリメートル、0.2〜2.0ミリメートル、0.25〜1.75ミリメートル、および0.3〜1.5ミリメートルの厚さを有することができる。
【0043】
ガラス層を含む上記の各実施形態については、好適な場合、非ガラス窓ガラス型材料がガラスの代わりに使用される、別の実施形態が存在する。かかる窓ガラス層の例には、例えば、60℃または70℃より上の、高いガラス転移温度を有する剛性プラスチック、例えば、ポリカーボネートおよびポリアルキルメタアクリレート、および特に1〜3個の炭素原子をアルキル部分に有するものが挙げられる。
【0044】
任意の組み合わせで本明細書に開示される、本発明のポリマー層および中間層のいずれかの積み重ねまたはロールもまた、本発明に含まれる。
【0045】
本発明にはまた、本発明の中間層のいずれかを含む、フロントガラス、窓、および他の完成窓ガラス製品も含まれる。
【0046】
本発明には、本明細書に記載される本発明のポリマー層のいずれかを使用する本発明の中間層または窓ガラスパネルを形成する工程を含む中間層および窓ガラスパネルの製造方法が含まれる。
【0047】
様々なポリマー層および/または積層ガラス特性および測定技法が、本発明での使用についてここで記載される。
【0048】
ポリマー層を含む積層ガラスの透明度は、入射光に対比してサンプルによる散乱光の数量化である、ヘーズ値を測定することによって決定することができる。パーセント・ヘーズは、次の技法に従って測定することができる。ヘーズの量を測定するための装置、Hunter Associates(Reston,VA)から入手可能である、Hazemeter、Model D25を、2度の観測者角度で、光源Cを用いて、ASTM D1003−61(再認可1977年)−手順Aに従って使用することができる。本発明の様々な実施形態では、パーセント・ヘーズは5%未満、3%未満、および1%未満である。
【0049】
連打(pummel)接着性は、次の技法に従って測定することができ、ここで「連打」は、本明細書では、ガラスへのポリマー層の接着性を数量化することに関係し、次の技法が連打を測定するために用いられる。2層ガラス積層体サンプルが標準オートクレーブ積層条件で調製される。積層体は約−17℃(0°F)に冷却され、ガラスを破壊するためにハンマーで手動により連打される。ポリ(ビニルブチラール)層に付着していない全ての破壊されたガラスが次に除去され、ポリ(ビニルブチラール)層に付着して残るガラスの量が標準一式と目視で比較される。これらの標準は、様々な程度のガラスがポリ(ビニルブチラール)層に付着したままである目盛りに相当する。具体的には、ゼロの連打標準では、ガラスはポリ(ビニルブチラール)層に付着して全く残らない。10の連打標準では、100%のガラスがポリ(ビニルブチラール)層に付着したままである。本発明の積層ガラスパネルについて、様々な実施形態は、少なくとも3、少なくとも5、少なくとも8、少なくとも9、または10の連打を有する。他の実施形態は、含めて、8〜10の連打を有する。
【0050】
ポリマー層の「黄色度指数」は、下記に従って測定することができる:本質的に平らであり、かつ、平行である滑らかなポリマー表面を有する、1cm厚さのポリマー層の透明な成形ディスクが形成される。この指数は、可視スペクトルにおける分光光度光透過率からASTM方法D 1925、「プラスチックの黄色度指数についての標準試験方法(Standard Test Method for Yellowness Index of Plastics)」に従って測定される。値は、測定された検体厚さを用いて1cm厚さに補正される。本発明の様々な実施形態では、ポリマー層は、12以下、10以下、または8以下の黄色度指数を有することができる。
【実施例】
【0051】
実施例1
0.76ミリメートル(30ミル)の厚さ、38phrのトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)可塑剤と、表1に示される量のCsWO、Tinuvin 328(登録商標)、Tinuvin 622(登録商標)(ヒンダードアミン光安定剤)、およびビス(2−エチル酪酸)マグネシウムとを有する、7つのポリマー層を調製し、透明なガラスの2枚のシート間に積層する。
【0052】
表1は、500時間のウェザロメーターでの紫外線への露光後の可視光透過率の変化(デルタTv=最終Tv−初期Tv)を示す。ウェザロメーターは、次の設定:放射照度、0.55W/m;ブラックパネル温度70℃;水スプレー、なし;フィルター−内部、石英;およびフィルター−外部、ホウケイ酸塩(タイプS)で動作するモデルXenon Arc Atlas Ci65(Atlas Material Testing Technology LLC,Chicago,Illinois)である。
【0053】
【表1】

【0054】
実施例2
0.76ミリメートル(30ミル)の厚さ、38phrのトリエチレングリコールビス(2−エチルヘキサノエート)可塑剤、0.05重量パーセントのCsWO、0.046重量パーセントのビス(2−エチル酪酸)マグネシウム、および表2に示されるような様々な量のTinuvin 326(登録商標)を有するポリマー層を形成し、透明なガラスの2枚のシート間に積層する。デルタTvは、実施例1におけるように測定する。
【0055】
【表2】

【0056】
本発明のおかげで、酸化タングステン剤が長期にわたって光学的品質を受け入れられないほど低下させることなく光学特性を向上させた状態で、ポリ(ビニルブチラール)中間層などの、中間層を提供することがここで可能である。
【0057】
本発明は例示的な実施形態に関連して記載されてきたが、本発明の範囲から逸脱することなく、様々な変更が行われてもよく、かつ、等価物がその要素の代わりに使用されてもよいことは当業者によって理解されるであろう。加えて、本発明の本質的な範囲から逸脱することなく特定の状況または材料を本発明の教示に適応させるために多くの修正が行われてもよい。それ故、本発明は、本発明を実施するために考えられる最良の態様として開示された特定の実施形態に限定されないこと、および本発明は、添付のクレームの範囲内に入る全ての実施形態を含むことが意図される。
【0058】
本発明の任意の単一成分について与えられた範囲、値または特性のいずれかを、本明細書の全体にわたって与えられるような、成分のそれぞれについて明確な値を有する実施形態を形成するために、矛盾しない場合には、本発明の他の成分のいずれかについて与えられた任意の範囲、値、または特性と同じ意味で使用できることがさらに理解されるであろう。例えば、本発明の範囲内にあるが、リストアップすることが面倒であろう多くの置換物を形成するために、適切な場合には、与えられた範囲のいずれかで可塑剤を含むことに加えて、与えられた範囲のいずれかで酸化タングステン剤を含むポリマー層を形成することができる。
【0059】
要約書または任意のクレーム内に与えられる任意の数字参照番号は、例示目的のためにすぎず、特許請求される発明を、任意の数字で示されるいずれか1つの特定の実施形態に限定すると解釈されるべきではない。
【0060】
数字は、特に示されない限り、原寸に比例して出されていない。
【0061】
本明細書に言及された、雑誌論文、特許、特許出願、および本をはじめとする、各参考文献は、その全体を参照により本明細書に援用される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリマー層を含む、多層窓ガラスでの使用のための中間層であって、前記ポリマー層が酸化タングステン剤と、ベンゾトリアゾール基を有する分子、多価金属塩のどちらか、またはベンゾトリアゾール基を有する分子および多価金属塩の両方とを含む中間層。
【請求項2】
前記ポリマー層が0.01〜1.0重量パーセントの前記酸化タングステン剤を含む、請求項1に記載の中間層。
【請求項3】
前記酸化タングステン剤が、一般式W(式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、2.0<z/y<3.0を満たす)で表され、一般式M(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reから選択される元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1.0および2.0<z/y≦3.0を満たす)で表されるものである、請求項1に記載の中間層。
【請求項4】
前記酸化タングステンが近赤外線の70%〜95%をブロックするのに十分な量で存在する、請求項1に記載の中間層。
【請求項5】
前記ポリマー層がベンゾトリアゾール基を有する分子を含む、請求項1に記載の中間層。
【請求項6】
前記多価金属塩がビス(2−エチル酪酸)マグネシウムである、請求項1に記載の中間層。
【請求項7】
前記ポリマー層がベンゾトリアゾール基を有する分子およびビス(2−エチル酪酸)マグネシウムの両方を含む、請求項1に記載の中間層。
【請求項8】
ベンゾトリアゾール基を有する前記分子が構造式:
【化1】

を有する、請求項1に記載の中間層。
【請求項9】
ベンゾトリアゾール基を有する前記分子が構造式:
【化2】

を有する、請求項1に記載の中間層。
【請求項10】
前記ポリマー層がポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項1に記載の中間層。
【請求項11】
ガラスのシートと、
前記ガラスのシートに接触した中間層と
を含む多層窓ガラスパネルであって、前記中間層がポリマー層を含み、前記ポリマー層が酸化タングステン剤とベンゾトリアゾール基を有する分子、多価金属塩のどちらか、またはベンゾトリアゾールおよび多価金属塩の両方とを含むパネル。
【請求項12】
前記ポリマー層が0.01〜1.0重量パーセントの前記酸化タングステン剤を含む、請求項1に記載のパネル。
【請求項13】
前記酸化タングステン剤が、一般式W(式中、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、2.0<z/y<3.0を満たす)で表され、そして一般式M(式中、Mは、H、He、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、Mg、Zr、Cr、Mn、Fe、Ru、Co、Rh、Ir、Ni、Pd、Pt、Cu、Ag、Au、Zn、Cd、Al、Ga、In、Tl、Si、Ge、Sn、Pb、Sb、B、F、P、S、Se、Br、Te、Ti、Nb、V、Mo、Ta、Reから選択される元素であり、Wはタングステンであり、Oは酸素であり、0.001≦x/y≦1.0および2.0<z/y≦3.0を満たす)で表されるものである、請求項11に記載のパネル。
【請求項14】
前記酸化タングステンが近赤外線の70%〜95%をブロックするのに十分な量で存在する、請求項11に記載のパネル。
【請求項15】
前記ポリマー層がベンゾトリアゾール基を有する分子を含む、請求項11に記載のパネル。
【請求項16】
前記多価金属塩がビス(2−エチル酪酸)マグネシウムを含む、請求項11に記載のパネル。
【請求項17】
前記ポリマー層がベンゾトリアゾール基を有する分子およびビス(2−エチル酪酸)マグネシウムの両方を含む、請求項11に記載のパネル。
【請求項18】
ベンゾトリアゾール基を有する前記分子が構造式:
【化3】

を有する、請求項11に記載のパネル。
【請求項19】
ベンゾトリアゾール基を有する前記分子が構造式:
【化4】

を有する、請求項11に記載のパネル。
【請求項20】
前記ポリマー層がポリ(ビニルブチラール)を含む、請求項11に記載のパネル。

【公表番号】特表2010−535695(P2010−535695A)
【公表日】平成22年11月25日(2010.11.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−520142(P2010−520142)
【出願日】平成20年7月30日(2008.7.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/071527
【国際公開番号】WO2009/020806
【国際公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【出願人】(500276390)ソリユテイア・インコーポレイテツド (43)
【Fターム(参考)】