説明

安定性が増大した組換え型第VIII因子

本発明は、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の向上した安定性をもたらす1つ以上の突然変異を含む組換え型第VIII因子に関する。組換え型第VIII因子の作製法および使用法、ならびにこれを含む薬学的組成物も開示する。本発明はさらに、組換え型第VIII因子をコードする単離された核酸分子、ならびにこの単離された核酸分子を含むDNA発現システムおよび宿主細胞に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2007年11月1日に出願された米国特許仮出願第60/984,518号、および2007年11月30日に出願された米国特許仮出願第60/991,304号(各出願の内容の全ては、参照することにより本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
本発明は、国立衛生研究所によって付与された認可番号HL76213およびHL38199のもとで、政府支援を受けてなされた。政府は本発明において一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
血友病Aは、重篤な遺伝性の出血性疾患の最も一般的なものであり、血漿タンパク質第VIII因子の欠乏または欠陥が原因である。血友病Aは不治であり、治療は、(精製)血漿または組換えタンパク質製剤を使用した補充療法からなる。
【0004】
第VIII因子は、非共有結合性金属イオン依存性ヘテロ二量体として循環する。このタンパク質のプロ補因子(procofactor)形態は、A1(a1)A2(a2)Bドメインから構成される重鎖(HC)と、(a3)A3C1C2ドメインから構成される軽鎖(LC)とを含有し、小文字aは、酸性残基を豊富に含む短い(約30〜40残基)断片を表す(Fay, “Activation of Factor VIII and Mechanisms of Cofactor Action,” Blood Rev. 18:1-15 (2004)を参照)。第VIII因子は、トロンビンまたは第Xa因子によって触媒される、A1A2、A2BおよびA3A3接合部でのタンパク分解による切断によって活性化される。この反応の生成物である第VIIIa因子は、チモーゲン第X因子のセリンプロテアーゼ、すなわち第Xa因子への膜依存性変換においてセリンプロテアーゼ第IXa因子の補因子として機能するA1、A2、およびA3C1C2と呼ばれるサブユニットで構成されるヘテロ三量体である(Fay, “Activation of Factor VIII and Mechanisms of Cofactor Action,” Blood Rev. 18:1-15 (2004)を参照)。
【0005】
再構成研究によって、第VIII因子ヘテロ二量体構造は、静電相互作用および疎水性相互作用の両方によって支持され(Fay, “Reconstitution of Human Factor VIII from Isolated Subunits,” Arch Biochem Biophys. 262:525-531 (1988); Ansongら, “Factor VIII A1 Domain Residues 97-105 Represent a Light Chain-interactive Site,” Biochemistry. 45:13140-13149 (2006))、鎖間親和性は第VIII因子結合フォンヴィレブランド因子によってさらに増強される(Fay, “Reconstitution of Human Factor VIII from Isolated Subunits,” Arch Biochem Biophys. 262:525-531 (1988); Kaufmanら, “Regulation of Factor VIII Expression and Activity by von Willebrand Factor,” Thromb Haemost. 82:201-208 (1999))ことが示されている。金属イオンも、鎖間親和性および活性パラメータに貢献する(Wakabayashiら, “Metal Ion-independent Association of Factor VIII Subunits and the Roles of Calcium and Copper Ions for Cofactor Activity and Inter-subunit Affinity,” Biochemistry 40:10293-10300 (2001))。カルシウムは、活性な第VIII因子立体構造を得るために必要とされる。突然変異誘発研究では、A1ドメイン(残基110〜126)内で酸性残基を豊富に含む断片に対するカルシウム結合部位をマップし、イオンの配位において顕著なこの領域内の特異的残基を同定した(Wakabayashiら, “Residues 110-126 in the A1 Domain of Factor VIII Contain a Ca2+ Binding Site Required for Cofactor Activity,” J Biol Chem. 279:12677-12684 (2004))。最近の中間分解能X線構造(Shenら, “The Tertiary Structure and Domain Organization of Coagulation Factor VIII,” Blood 111:1240-1247 (2008))は、このカルシウム結合部位を確認し、またA2ドメイン内の第2の可能性のある部位を示唆した。この構造には、A1およびA3ドメイン内の2つの1型銅イオン部位の占有も示された。以前の機能研究では、銅イオンが重鎖と軽鎖との結合を促進して、ヘテロ二量体を形成し、鎖間親和性を生理的pHで数倍増加させることが明らかになった(Fayら, “Human Factor VIIIa Subunit Structure: Reconstruction of Factor VIIIa from the Isolated A1/A3-C1-C2 Dimer and A2 Subunit,” J Biol Chem. 266:8957-8962 (1991); Wakabayashiら, “pH-dependent Association of Factor VIII Chains: Enhancement of Affinity at Physiological pH by Cu2+,” Biochim Biophys Acta. 1764:1094-1101 (2006); Ansongら, “Factor VIII A3 Domain Residues 1954-1961 Represent an A1 Domain-Interactive Site,” Biochemistry 44:8850-8857 (2005))。
【0006】
第VIIIa因子の不安定性は、A2サブユニットとA1/A3C1C2二量体との間の弱い静電相互作用に起因し(Fayら, “Human Factor VIIIa Subunit Structure: Reconstruction of Factor VIIIa from the Isolated A1/A3-C1-C2 Dimer and A2 Subunit,” J Biol Chem. 266:8957-8962 (1991); Lollarら, “pH-dependent Denaturation of Thrombin-activated Porcine Factor VIII,” J Biol Chem. 265:1688-1692 (1990))、Xase因子活性の抑制がもたらされる(Lollarら, “Coagulant Properties of Hybrid Human/Porcine Factor VIII Molecules,” J Biol Chem. 267:23652-23657 (1992); Fayら, “Model for the Factor VIIIa-dependent Decay of the Intrinsic Factor Xase: Role of Subunit Dissociation and Factor IXa-catalyzed Proteolysis,” J Biol Chem. 271:6027-6032 (1996))。第VIIIa因子におけるA2サブユニットの結合に関しては限られた情報しか得られず、A1ドメインとA3ドメインとの両方における残基は、このサブユニットの維持に貢献すると思われる。いくつかの第VIII因子点突然変異は、WTに対してA2の解離を促進し、これらの残基はA1−A2ドメイン境界面(Pipeら, “Mild Hemophilia A Caused by Increased Rate of Factor VIII A2 Subunit Dissociation: Evidence for Nonproteolytic Inactivation of Factor VIIIa in vivo,” Blood 93:176-183 (1999); Pipeら, “Hemophilia A Mutations Associated with 1-stage/2-stage Activity Discrepancy Disrupt Protein-protein Interactions within the Triplicated A Domains of Thrombin-activated Factor VIIIa,” Blood 97:685-691 (2001))またはA2−A3ドメイン境界面(Hakeosら, “Hemophilia A Mutations within the Factor VIII A2-A3 Subunit Interface Destabilize Factor VIIIa and Cause One-stage/Two-stage Activity Discrepancy,” Thromb Haemost. 88:781-787 (2002))のいずれかに局在化することが明らかにされている。これらの第VIII因子変異体は、特徴的な一段階法/二段階法(One-stage/Two-stage assay)相違を示し(Duncanら, “Familial Discrepancy Between the One-stage and Two-stage Factor VIII Methods in a Subgroup of Patients with Haemophilia A,” Br J Haematol. 87:846-848 (1994); Rudzkiら, “Mutations in a Subgroup of Patients with Mild Haemophilia A and a Familial Discrepancy Between the One-stage and Two-stage Factor VIII:C Methods,” Br J Haematol. 94:400-406 (1996))、A2サブユニット解離速度の増加の結果として、後者の分析によって有意に減少した活性値が測定される。
【0007】
第VIII因子のAドメインのセルロプラスミンに基づく相同性モデルの実験(Pembertonら, “A Molecular Model for the Triplicated A Domains of Human Factor VIII Based on the Crystal Structure of Human Ceruloplasmin,” Blood 89:2413-2421 (1997))は、A2ドメインと、A1ドメインおよびA3ドメインのそれぞれとの間での境界面の拡張を示唆し、複数の接触の可能性は、結合相互作用に寄与する。
【0008】
第VIIIa因子の安定化は非常に興味深い。その理由は、より安定なタンパク質の形態は血友病Aの優れた治療薬であり、患者を治療するために潜在的に必要とする物質が少ないと考えられるからである(Fayら, “Mutating Factor VIII: Lessons from Structure to Function,” Blood Reviews 19:15-27 (2005))。この目的のために、A2ドメインと他の第VIII因子ドメインとの間に新規共有結合を導入することによって、A2サブユニットの解離を防止するために、組換えタンパク質において突然変異を生じさせる第VIII因子の調製物が記載されている(Pipeら, “Characterization of a Genetically Engineered Inactivation-resistant Coagulation Factor VIIIa,” Proc Natl Acad Sci USA 94:11851-11856 (1997); Galeら, “An Engineered Interdomain Disulfide Bond Stabilizes Human Blood Coagulation Factor VIIIa,” J. Thromb. Haemostasis 1:1966-1971 (2003))。しかし、これらの種類の突然変異は、下方調節のための手段を実質的に排除するので、治療用第VIII因子において望ましくない可能性があることが示唆されている。この状況は、血栓形成促進性の状態をもたらし、これは有害である可能性がある。したがって、血栓形成促進性の状態を促進する可能性を最小限にする方法で、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の安定性を高めることが望ましい。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、当該技術分野におけるこれらおよび他の欠陥を克服することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の第1の態様は、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の安定性の向上をもたらす1つ以上の突然変異を含む組換え型第VIII因子に関する。
【0011】
好ましくは、1つ以上の突然変異は、A1A2もしくはA2A3ドメイン境界面のいずれかまたは両方で、疎水性アミノ酸残基で1つ以上の荷電アミノ酸残基の置換を構成する。本発明の特に好ましい組換え型第VIII因子は、野生型第VIII因子のGlu287残基の置換、野生型第VIII因子のAsp302残基の置換、野生型第VIII因子のAsp519残基の置換、野生型第VIII因子のGlu665残基の置換、野生型第VIII因子のGlu1984残基の置換、またはこれらの組み合わせを含む。
【0012】
本発明の第2の態様は、本発明の第1の態様の組換え型第VIII因子を含む薬学的組成物に関する。
【0013】
本発明の第3の態様は、本発明の第1の態様の組換え型第VIII因子をコードする単離された核酸分子に関する。本発明の組換え型第VIII因子をコードするDNA分子を含有する組換えDNA発現システム、ならびにDNA分子および/または組換え発現システムを含有する組換え宿主細胞も、本発明のこの態様に含まれる。
【0014】
本発明の第4の態様は、宿主細胞が組換え型第VIII因子を発現する条件下で、本発明の第3の態様の宿主細胞を増殖させる段階、および組換え型第VIII因子を単離する段階を含む、組換え型第VIII因子を作製する方法に関する。
【0015】
本発明の第5の態様は、血友病Aについて動物を治療する方法に関する。この治療法は、血友病Aを示す動物が血管損傷後に有効な血液凝固を示す、有効量の本発明の第1の態様の組換え型第VIII因子をこの動物に投与する段階を含む。
【発明の効果】
【0016】
本発明は、A1A2およびA2A3ドメイン境界面での多くの荷電残基は、水素結合に関与しないが、その代わりに第VIII因子構造を不安定化させる可能性および/または第VIII因子プロ補因子の活性化後にA2サブユニットの解離を促進する可能性があることを示す。埋没した疎水性部分を増大させ、埋没した親水性部分を減少させることを目的として、これらの荷電残基を疎水性残基と置換することによって、ドメイン間結合親和性が向上することを添付の実施例で明らかにした。安定性パラメータを、第VIII因子変異体の高温での活性およびA2サブユニット解離により起こる第VIIIa因子活性の減衰の時間経過にしたがって評価した。これらの研究から得られる結果は、多くの突然変異の結果、A2ドメイン境界面での埋没電荷による可能性が高い不安定化力の消失と一致して、安定性パラメータが増大することを証明した。第VIII因子のこれらの安定化変異体および活性化第VIIIa補因子は、血友病Aを治療するための改善された治療法を提供するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、凝固一段階法(黒棒)および発色性第Xa因子生成二段階法(灰色棒)によって測定される、WT第VIII因子に対する第VIII因子突然変異体の活性を示すグラフである。WTおよび突然変異型第VIII因子形態の活性を、実施例に記載するのと同様にして測定した。エラーバーは、3回の独立した測定から平均した標準偏差の値を示す。
【図2】図2A〜Bは、それぞれ、WTならびに突然変異第VIII因子および第VIIIa因子の活性減衰を示す。図2Aにおいて、第VIII因子(4nM)を55℃でインキュベートし、指定の時間でアリコートを取り出し、実施例で記載するようにして、第Xa因子生成法によって活性について分析した。結果を、WT(破線、白丸)、R282A(白三角)、S524A(白四角)、N684A(白菱形)、R531A(黒丸)、S650A(黒三角)、E287A(黒四角)、およびD302A(黒菱形)について示す。図2Bにおいて、40nMの第IXa因子の存在下でのトロンビン活性化第VIIIa因子(4nM)を23℃でインキュベートし、表示された時点でアリコートを取り出し、実施例に記載されるような第Xa因子生成法によって、活性を測定した。結果を、WT(破線、白丸)、R282A(白三角)、S524A(白四角)、Y1792F(白菱形)、N684A(黒丸)、Y1786F(黒三角)、R531A(黒四角)、E287A(黒菱形)、およびD302A(灰色円)について示す。選択された高速減衰変異体についての結果を、図2Bの挿入図において拡大目盛りで示す。
【図3】図3A〜Bは、第VIII因子突然変異体およびWT第VIII因子のSDS−PAGEおよびウェスタンブロット分析を示す。図3Aは、8%ポリアクリルアミドゲル上SDS−PAGEによる精製WTおよび突然変異型第VIII因子タンパク質(0.77μg)であり、GelCodeによって可視化したものを示す。図3Bは、8%ポリアクリルアミドゲル上で電気泳動させ、PVDF膜に移し、ビオチニルR8B12抗体によってプローブした、精製WTおよび突然変異型第VIII因子タンパク質(0.34μg)を示す。バンドを添付の実施例に記載するような化学蛍光によって可視化した。WT(レーン1)、Glu272Ala(レーン2)、Glu272Val(レーン3)、Asp519Ala(レーン4)、Asp519Val(レーン5)、Glu665Ala(レーン6)、Glu665Val(レーン7)、Glu1984Ala(レーン8)、およびGlu1984Val(レーン9)。MW、分子量マーカー:sFVIII、単鎖形態第VIII因子:HC、重鎖:LC、軽鎖。単鎖形態の、WTおよび突然変異型第VIII因子形態のヘテロ二量体に対する見かけの化学量論比は、0.96(WT)、0.64(Glu272Ala)、0.92(Glu272Val)、0.74(Asp519Ala)、0.8(Asp519Val)、0.64(Glu665Ala)、0.63(Glu665Val)、0.91(Glue1984Ala)、および0.5(Glu1984Val)であった。
【図4】図4A〜Dは、WT第VIII因子に対する第VIII因子突然変異体の比活性およびトロンビン生成法を示す。図4Aは、添付の実施例に記載するような凝固一段階法(灰色棒)および発色性第Xa因子生成二段階法(黒棒)を用いて測定した活性値を示す。図4B〜Cは、第VIII因子タンパク質のトロンボグラム(thrombogram)を示す。WT(破線)、Glu272Ala(白四角)、Glu272Val(黒四角)、Asp519Ala(白丸)、Asp519Val(黒丸)、Glu665Ala(白三角)、Glu665Val(黒三角)、Glu1984Ala(白菱形)、およびGlu1984Val(黒菱形)。図4Dは、トロンビン生成法から得られたパラメータ値を示す。トロンビン生成法を、添付の実施例に記載するようにして実施した。トロンボグラムは、3通りの試料の平均値を示す。パラメータ値をWTに対する値(%)で表した。WTの実際の値は、7.5±0.5分(遅延時間)、13.7±0.3分(ピーク時間)、157.3±14.7nM(ピーク値)、979.8±37.9nM/分(ETP)であった。遅延時間(白色棒)、ピーク時間(灰色棒)、ピーク値(黒棒)、およびETP(縞模様棒)を示す。エラーバーは、3回の別個の測定から平均した標準偏差値を示す。
【図5】図5A〜Bは、WTおよび突然変異型第VIII因子の活性減衰を示す。第VIII因子(4nM)を様々な温度(52〜60℃)でインキュベートし、表示された時間でアリコートを取り出し、添付の実施例に記載するような第Xa因子生成法によって活性について分析した。データを非線形最小二乗回帰により適合させ、減衰速度を得た。各点は、3回の独立した測定から平均した値を表す。結果を、WT(破線、×印)、Glu272Ala(白四角)、Glu272Val(黒四角)、Asp519Ala(白丸)、Asp519Val(黒丸)、Glu665Ala(白三角)、Glu665Val(黒三角)、Glu1984Ala(白菱形)、Glu1984Val(黒菱形)、および完全長Kogenate第VIII因子(灰色円)について示す。図5Aは、55℃でインキュベーション後の代表的な第VIII因子減衰曲線を示す。図5Bは、様々な温度での第VIII因子減衰速度のプロットを示す。図5B中の挿入図は、52〜55℃の温度範囲にわたる減衰結果の拡大図である。
【図6】図6は、37℃の血漿中の第VIII因子の活性減衰を示すグラフである。第VIII因子(1nM)を37℃、第VIII因子欠乏血漿中でインキュベートし、表示された時間にアリコートを取り出し、添付の実施例に記載するような凝固一段階法について分析した。結果をWT(破線、×印)、Asp519Ala(白丸)、Asp519Val(黒丸)、Glu665Ala(白三角)、Glu665Val(黒三角)、Glu1984Ala(白菱形)、およびGlu1984Val(黒菱形)について示した。非線形最小二乗回帰に適合させ、各点は、3回の独立した測定からの平均値を表す。
【図7】図7A〜Bは、第IXa因子の非存在下または存在下でのWTおよび突然変異型第VIIIa因子の活性減衰を表すグラフである。図7Aは、23℃でインキュベートした、トロンビン活性化第VIIIa因子(4nM)を示す。アリコートを表示された時点で取り出し、活性を添付の実施例に記載するような第Xa因子生成法によって測定した。図7Bは、第IXa因子の存在下でのWTおよび突然変異型第VIIIa因子の活性減衰を示す。第VIII因子(4nM)を、40nMの第IXa因子の存在下、トロンビンで活性化した。アリコートを表示された時点で取り出し、活性を添付の実施例に記載するような第Xa因子生成法によって測定した。結果を、WT(破線、×印)、Glu272Ala(白四角)、Glu272Val(黒四角)、Asp519Ala(白丸)、Asp519Val(黒丸)、Glu665Ala(白三角)、Glu665Val(黒三角)、Glu1984Ala(白菱形)、およびGlu1984Val(黒菱形)について示す。データを非線形最小二乗回帰に適合させ、各点は、3回の独立した測定から平均した値を表す。
【図8】図8は、Asp519、Glu665、および/またはGlu1984残基がAlaまたはValに変化した、第VIII因子二重または三重複合突然変異体の比活性を示すグラフである。実施例に記載するような凝固一段階法(灰色棒)および発色性第Xa因子生成二段階法(黒棒)を用いて、活性値を測定した。エラーバーは、3回の独立した測定から平均した標準偏差を示す。
【図9】図9は、WTならびに、Asp519、Glu665、および/またはGlu1984残基がAlaまたはValに変化した第VIII因子二重または三重複合突然変異体についての第VIII因子活性減衰速度を示すグラフである。第VIII因子活性減衰実験を行い、減衰速度を実施例に記載するような非線形最小二乗回帰によって推定した。灰色棒は、最良の単一突然変異体(実施例5、図5A参照)に対する速度を示し、最良(最低)値の速度で割った後に計算した。例えば、D519AE665A対合の最良の単一突然変異体に対する速度相対値は、D519AE665Aの減衰速度をD519Aの減衰速度で割ったものに等しい。黒棒は、実際の減衰速度パラメータ値を10倍で表したもの示す。
【図10】図10は、WTならびに、Asp519、Glu665、およびGlu1984残基がAlaまたはValに変化した第VIII因子二重または三重複合突然変異体の第VIIIa因子活性減衰速度を示すグラフである。第IXa因子の非存在下で1.5nMの第VIIIa因子をインキュベーションした後の第VIIIa因子活性減衰測定を行い、減衰速度を実施例に記載するような非線形最小二乗回帰によって推定した。灰色棒は、最良の単一突然変異体に対する速度を示し(実施例7、図7A参照)、図9の説明文に記載するようにして計算した。黒棒は、実際の減衰速度を10倍で表したものを示す。
【図11】図11A〜Bは、複合突然変異体を用いたトロンビン生成法の結果を示す。図11Aは、第VIII因子タンパク質のトロンボグラムを示す。トロンビン生成法を実施例に記載するようにしておこなった。試薬の最終濃度は、0.2nM(第VIII因子)、0.5pM(rTF)、4μM(PSPCPEベシクル)、433μM(蛍光発生基質)、13.3mMのCalCl、および105nM(トロンビンキャリブレーター)であった。結果を、WT(破線)、D519AE665V(白丸)、D519VE665V(黒丸)、D519VE1984A(白三角)、およびD519VE665VE1984A(黒三角)について示した。図11Bは、トロンビン生成法から得られたパラメータ値を示す。トロンボグラムは、3通りの試料の平均値を示す。パラメータ値を、WTに対する値(%)で表した。WTについての実際の値は、8.5±0.4分(遅延時間)、21.3±0.6分(ピーク時間)、58.5±15.6nM(ピーク値)、883.6±199.8nM/分(ETP)であった。遅延時間(白色棒)、ピーク時間(灰色棒)、ピーク値(黒棒)、およびETP(縞模様棒)。エラーバーは、3回の独立した測定から平均した標準偏差を示す。
【図12】図12A〜Cは、Glu113Ala突然変異と組み合わせた残基Asp519、Glu665、および/またはGlu1984でのAlaまたはVal突然変異体についてのWTに対する第VIII因子および第VIIIa因子の比活性および活性減衰速度を示す。図12Aは、実施例に記載するような凝固一段階法(灰色棒)および発色性第Xa因子生成二段階法(黒棒)を用いて測定した、WTに対する複合突然変異体の比活性を示す。エラーバーは、3回の独立した測定から平均した標準偏差を示す。図12Bは、55℃での第VIII因子活性減衰分析結果を示し;減衰速度を実施例に記載するような非線形最小二乗回帰によって推定した。図12Cは、第IXa因子の非存在下で1.5nMの第VIIIa因子をインキュベーションした後の第VIIIa因子活性減衰測定結果を示し;減衰速度を、実施例に記載するようにして非線形最小二乗回帰によって推定した。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発明の詳細な説明
本発明は、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の安定性の向上をもたらす、1つ以上の突然変異を有する組換え型第VIII因子に関する。
【0019】
野生型第VIII因子または第VIII因子の他の特性、たとえば抗原性、循環半減期、タンパク質分泌、第IXa因子および/または第X因子に対する親和性、変更された第VIII因子不活化切断部位、免疫原性、保存寿命などに影響を与えるように他の方法で修飾された突然変異型第VIII因子のアミノ酸配列を修飾することによって、本発明の組換え型第VIII因子を調製することができる。
【0020】
本発明にしたがって修飾できる適した野生型第VIII因子は、限定はされないが、哺乳動物、たとえばヒト(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、GenBank受入番号AAA52484(アミノ酸)およびK01740(ヌクレオチド);ならびにGenBank受入番号CAD97566(アミノ酸)およびAX746360(ヌクレオチド)を参照)、ラット(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、GenBank受入番号AAQ21580(アミノ酸)およびAY362193(ヌクレオチド)を参照)、マウス(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、GenBank受入番号AAA37385(アミノ酸)およびL05573(ヌクレオチド)を参照)、モルモット、イヌ(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、GenBank受入番号AAB87412(アミノ酸)およびAF016234(ヌクレオチド);ならびにGenBank受入番号AAC05384(アミノ酸)およびAF049489(ヌクレオチド)を参照)、ネコ、サル、チンパンジー(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、GenBank受入番号XP_529212(アミノ酸)およびXM_529212(ヌクレオチド)を参照)、オランウータン、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、GenBank受入番号NP_999332(アミノ酸)およびNM_214167(ヌクレオチド)を参照)、ヤギ、ウサギ、ならびにニワトリを含む様々な動物由来であり得る。これらおよび他の配列はHaemophilia A Mutation, Structure, Test and Resource Site(またはHAMSTeRS)からも電子的に利用可能であり、このサイトはさらに、ヒト、ブタ、ネズミ、およびイヌ第VIII因子タンパク質の整列化を提供する。このように、哺乳動物の第VIII因子タンパク質間の保存および相同性は周知である。
【0021】
一例として、ヒト第VIII因子cDNAヌクレオチドおよび予想されるアミノ酸配列をそれぞれ下記配列番号1および2に示す。ヒト第VIII因子を、「ドメイン」配列NH−A1−A2−B−A3−C1−C2−COOHを規定する内部配列相同性を有する約300kDaの単鎖タンパク質として合成する。第VIII因子分子中で、本明細書において用いられる「ドメイン」は、内部アミノ酸配列同一性およびトロンビンによるタンパク分解的切断部位によって規定されるアミノ酸の連続配列である。特に断りのない限り、配列をヒトアミノ酸配列(配列番号2)と整列化させる場合、第VIII因子ドメインは以下のアミノ酸残基を含む:
A1、残基Ala〜Arg372
A2、残基Ser373〜Arg740
B、残基Ser741〜Arg1648
A3、残基Ser1690〜Ile2032
C1、残基Arg2033〜Asn2172;および
C2、残基Ser2173〜Tyr2332
【0022】
A3−C1−C2配列は、残基Ser1690〜Tyr2332を含む。残りの配列、つまり残基Glu1649〜Arg1689は、通常、第VIII因子軽鎖活性化ペプチドと呼ばれる。第VIII因子は、トロンビンまたは第Xa因子によってタンパク質分解的に活性化され、これは第VIII因子をフォンヴィレブランド因子から解離させ、第VIIIa因子を形成し、この第VIIIa因子は、凝結促進機能を有する。第VIIIa因子の生物学的機能は、第IXa因子の第X因子活性化に対する触媒効率を数桁増大させることである。トロンビン活性化第VIIIa因子は、血小板または単球の表面上で第IXa因子および第X因子と複合体を形成する160kDaのA1/A2/A3−C1−C2ヘテロ三量体である。本明細書において用いられる「部分ドメイン」は、ドメインの一部を形成するアミノ酸の連続配列である。
【0023】
野生型ヒト第VIII因子をコードする遺伝子は、次のような配列番号1のヌクレオチド配列を有する。



【0024】
配列番号1によってコードされる野生型ヒト第VIII因子は、次のような配列番号2のアミノ酸配列を有する。

前記配列において、Glu287、Asp302、Asp519、Glu665、およびGlu1984などのいくつかの荷電残基は太字体と下線によって識別される。
【0025】
本発明の組換え型第VIII因子は、A1A2またはA2A3ドメイン境界面のいずれか、または両方で、1つ以上の荷電アミノ酸残基が疎水性アミノ酸残基と置換されていることを特徴とする。好ましくは、置換される荷電残基は、A1A2またはA2A3ドメイン間の水素結合に関与しない、GluまたはAsp残基のいずれかである。荷電残基を置換する疎水性アミノ酸残基は、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、またはTrpのいずれかであり得る。特に適した本発明の組換え型第VIII因子は、野生型第VIII因子のGlu287残基の置換、野生型第VIII因子のAsp302残基の置換、野生型第VIII因子のAsp519残基の置換、野生型第VIII因子のGlu665残基の置換、野生型第VIII因子のGlu1984残基の置換、またはこれらの組み合わせを包含する。D302A、E287A、E665A、E665V、D519A、D519V、E1984A、およびE1984V置換は、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の向上した安定性を有する組換え型第VIII因子を得るために好ましい。これらの置換の好ましい組み合わせとしては、D519AE665V、D519VE665V、およびD519VE1984A二重変異体、ならびにD519AE665VE1984AおよびD519VE665VE1984A三重変異体が挙げられるが、限定されない。これらの突然変異体の向上した安定性は、第VIII因子におけるドメイン間境界面の安定化、ならびに野生型第VIIIa因子と比較して、A1/A3C1C2からのA2サブユニット解離を減少させることによって得ることができると考えられる。
【0026】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子配列は、従来既知であるか、または後に同定される任意の突然変異型第VIII因子配列も含むことができ、これらは、たとえば限定はされないが、抗原性、循環半減期、タンパク質分泌、第IXa因子および/または第X因子に対する親和性、変更された第VIII因子不活化切断部位、第VIIIa因子の向上された比活性、免疫原性、および保存寿命などの様々な特質に関して修飾された特性を有する。
【0027】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の一例は、好ましくは配列番号2の残基113で修飾されたカルシウム結合部位を有する第VIII因子である。これによって、向上した比活性を有する第VIIIa因子が得られる。この種類の突然変異体の例は、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるFayらに対する米国特許出願公開第10/581,471号に記載されている。好ましくは、残基113突然変異体も、前記の突然変異の1つ以上によって(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)修飾され、高安定性/高比活性第VIII因子タンパク質を得る。高安定性/高比活性第VIII因子タンパク質の例としては:複合E113AD519A、E113AD519V、E113AE665A、E113AE665V、またはE113AE1984V置換を有するものが挙げられるが、限定されない。
【0028】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第2の例は、配列番号2のアミノ酸残基1〜740および1690〜2332を含有するBドメインのない第VIII因子である(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるLollarに対する米国特許第6,458,563号を参照)。
【0029】
本発明のBドメインのない組換え型第VIII因子の一実施形態において、BドメインをDNAリンカー断片によって置換し、少なくとも1つのコドンを、ブタ第VIII因子の対応する残基と同じ電荷を有するアミノ酸残基をコードするコドンと置換する(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるHauserらに対する米国特許出願公開第2004/0197875号を参照)。
【0030】
本発明のBドメインのない組換え型第VIII因子の別の実施形態において、修飾された突然変異型第VIII因子は、1つ以上の位置で挿入された切断型第IX因子イントロン1を有するヌクレオチド配列によってコードされる(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Negrierに対する米国特許第6,800,461号およびNegrierに対する米国特許第6,780,614号を参照)。この組換え型第VIII因子を、組換え型第VIII因子をインビトロでさらに高い生産性で得るため、ならびに遺伝子治療用のトランスファーベクターにおいて使用できる(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるNegrierに対する米国特許第6,800,461号を参照)。この実施形態の特定例では、2つの位置で挿入された切断型第IX因子イントロン1を有し、造血細胞株、および特に血小板において発現を行うために適したプロモーターを有するヌクレオチド配列によって、組換え型第VIII因子をコードできる(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるNegrierに対する米国特許第6,780,614号を参照)。
【0031】
実施形態に関係なく、Bドメインのない第VIII因子は、好ましくは、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記の突然変異の1つ以上を含有する。本明細書の実施例にしたがって調製される組換え型第VIII因子タンパク質は、Bドメインがない。
【0032】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第3の例は、ヒト第VIII因子の抗原性の原因となるヒトアミノ酸残基の置換として1つ以上の動物アミノ酸残基を含有するキメラヒト/動物第VIII因子である。特に、動物(たとえば、ブタ)残基置換としては、次の1つ以上を挙げることができるが限定されない:R484A、R488G、P485A、L486S、Y487L、Y487A、S488A、S488L、R489A、R489S、R490G、L491S、P492L、P492A、K493A、G494S、V495A、K496M、H497L、L498S、K499M、D500A、F501A、P502L、I503M、L504M、P505A、G506A、E507G、I508M、I508A、M2199I、F2200L、L2252F、V2223A、K2227E、および/またはL2251(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lollarに対する米国特許第5,859,204号、Lollarに対する米国特許第6,770,744号、およびLollarに対する米国特許出願公開第2003/0166536号)。好ましくは、組換え型キメラ第VIII因子は、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記の突然変異の1つ以上を含有する。
【0033】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第4の例は、第IXa因子に対して向上した親和性を有する第VIII因子(たとえば、それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Fayら, “Factor VIIIa A2 Subunit Residues 558-565 Represent a Factor IXa Interactive Site,” J. Biol. Chem. 269(32):20522-7 (1994); Bajajら, “Factor IXa: Factor VIIIa Interaction. Helix 330-338 of Factor IXa Interacts with Residues 558-565 and Spatially Adjacent Regions of the A2 Subunit of Factor VIIIa,” J. Biol. Chem. 276(19):16302-9 (2001);およびLentingら, “The Sequence Glu1811-Lys1818 of Human Blood Coagulation Factor VIII Comprises a Binding Site for Activated Factor IX,” J. Biol. Chem. 271(4):1935-40 (1996)を参照)および/または第X因子(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lapanら, “Localization of a Factor X Interactive Site in the A1 Subunit of Factor VIIIa,” J. Biol. Chem. 272:2082-88 (1997)を参照)である。好ましくは、向上した親和性の第VIII因子は、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記の突然変異の1つ以上を含有する。
【0034】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第5の例は、第VIII因子の分泌を向上するために修飾された第VIII因子である(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Swaroopら, “Mutagenesis of a Potential Immunoglobulin-Binding Protein-Binding Site Enhances Secretion of Coagulation Factor VIII,” J. Biol. Chem. 272(39):24121-4 (1997)を参照)。好ましくは、分泌が向上された突然変異型第VIII因子は、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記で同定された突然変異の1つ以上を含有する。
【0035】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第6の例は、増大した循環半減期を有する第VIII因子である。この修飾は、たとえば限定はされないが、ヘパラン硫酸(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Sarafanovら, “Cell Surface Heparan Sulfate Proteoglycans Participate in Factor VIII Catabolism Mediated by Low Density Lipoprotein Receptor-Related Protein,” J. Biol. Chem. 276(15):11970-9 (2001))および/または低比重リポタンパク質受容体関連タンパク質(「LRP」)(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Saenkoら, “Role of the Low Density Lipoprotein-Related Protein Receptor in Mediation of Factor VIII Catabolism,” J. Biol. Chem. 274(53):37685-92 (1999);およびLentingら, “The Light Chain of Factor VIII Comprises a Binding Site for Low Density Lipoprotein Receptor-Related Protein,” J. Biol. Chem. 274(34):23734-9 (1999)を参照)との相互作用を低下させることによるなど、様々な方法を用いて行うことができる。好ましくは、半減期が向上した突然変異型第VIII因子は、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記の突然変異の1つ以上を含有する。
【0036】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第7の例は、アスパラギン残基でグリコシル化の認識配列を産生するために、既知既存のエピトープ内のアミノ酸をコードするように修飾されたヌクレオチド配列によってコードされる修飾された第VIII因子である(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lollarに対する米国特許第6,759,216号を参照)。この例の突然変異型第VIII因子は、既存の抑制抗体による検出を免れる修飾された第VIII因子(低抗原性第VIII因子)であって、抑制抗体(低免疫原性第VIII因子)発生の可能性を減少させるものを提供するのに有用であり得る。この例の特定の一実施形態において、修飾された第VIII因子は、N結合型グリコシル化のコンセンサスアミノ酸配列を有するように突然変異している。このようなコンセンサス配列の一例は、N−X−S/Tであり、ここで、Nはアスパラギンであり、Xは、任意のアミノ酸であり、S/Tは、セリンまたはトレオニンを表す(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lollarに対する米国特許第6,759,216号を参照)。好ましくは、グリコシル化部位修飾第VIII因子は、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記で同定された突然変異の1つ以上を含有する。
【0037】
本発明にしたがって修飾できる適した突然変異型第VIII因子の第8の例は、様々な突然変異を有する凝結促進活性な第VIII因子である、修飾された第VIII因子である(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるKaufmanらに対する米国特許出願公開第2004/0092442号を参照)。この実施形態の一例は、(i)フォンヴィレブランド因子結合部位を消失させ、(ii)Arg740で突然変異を付加し、(iii)A2ドメインとA3ドメインとの間にアミノ酸配列スペーサーを付加するように修飾された修飾第VIII因子に関し、ここで、アミノ酸スペーサーは、活性化に際して、凝結促進活性な第VIII因子タンパク質がヘテロ二量体になるために十分な長さを有するものである(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれるKaufmanらに対する米国特許出願公開第2004/0092442号を参照)。好ましくは、凝結促進活性な第VIII因子はまた、(たとえば、位置287、302、519、665、および/または1984において)前記のような突然変異の1つ以上を含有するようにも修飾される。
【0038】
さらに、凝固因子一般に関する様々な進歩を利用するために、突然変異型第VIII因子を修飾することができる(たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Saenkoら, “The Future of Recombinant Coagulation Factors,” J. Thrombosis and Haemostasis 1:922-930 (2003)を参照)。
【0039】
本発明の組換え型第VIII因子は、A1A2またはA2A3ドメイン境界面(位置287、302、519、665、または1984を含む)を不安定化する任意の荷電残基で修飾することができ、また、Bドメインがないようになるか、キメラになるか、第VIIIa因子活性を向上させる修飾されたカルシウム結合部位を(たとえば、位置113において)有するか、変更された不活化切断部位を有するか、向上した第IXa因子および/または第X因子親和性を有するか、分泌が向上するか、循環半減期が増加するか、もしくは突然変異型グリコシル化部位を有するように、または荷電残基に対する1つ以上の修飾に加えて、組換え型第VIII因子の活性を改善する修飾されたカルシウム結合部位を含むこのような修飾のいずれか1つ以上を有するように、修飾することができる。Bドメインがなく、比活性が向上された、高安定性組換え型第VIII因子タンパク質の多くの例を実施例に記載する。
【0040】
組換え型第VIII因子は、好ましくは実質的に純粋な形態で産生される。特定の実施形態において、実質的に純粋な組換え型第VIII因子は、少なくとも約80%の純度であり、さらに好ましくは少なくとも90%の純度であり、最も好ましくは少なくとも95%の純度である。実質的に純粋な組換え型第VIII因子を、当該技術分野で周知の従来技術によって得ることができる。典型的には、実質的に純粋な組換え型第VIII因子が組換え宿主細胞の増殖培地中に分泌される。あるいは、実質的に純粋な組換え型第VIII因子が生成するが、増殖培地中に分泌されない。このような場合、実質的に純粋な組換え型第VIII因子を単離するために、組換えプラスミドを保有する宿主細胞を増やし、超音波、熱、または化学的処理によって溶解させ、ホモジネートを遠心分離にかけて、細胞片を除去する。上清を次に連続硫酸アンモニウム沈殿に供する。実質的に純粋な組換え型第VIII因子を含有する画分を適切なサイズのデキストランまたはポリアクリルアミドカラム中でゲル濾過にかけて、組換え型第VIII因子を分離する。必要ならば、タンパク質画分(実質的に純粋な組換え型第VIII因子を含有する)を高性能液体クロマトグラフィー(「HPLC」)によってさらに精製することができる。
【0041】
本発明の別の態様は、本発明の組換え型第VIII因子をコードする単離された核酸分子に関する。組換え型第VIII因子をコードする単離された核酸分子は、RNAまたはDNAのいずれかであり得る。
【0042】
一実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、1984、および/または332〜340において)荷電残基の1つ以上の置換で修飾されるような、第VIII因子比活性を向上させる位置113での突然変異をコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0043】
その他の実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)荷電残基の1つ以上の置換で修飾されるような、前記種類のBドメインのない第VIII因子をコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0044】
その他の実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)荷電残基の1つ以上の置換で修飾されるような、前記タイプのキメラヒト/ブタをコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0045】
その他の実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)荷電残基の1つ以上の置換でさらに修飾されるような、その不活化部位が、前記のように修飾され、前記のように修飾された第VIII因子をコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0046】
さらに別の実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)荷電残基の1つ以上の置換でさらに修飾されるような、その第IXa因子および/または第X因子に対する親和性が向上された、第VIII因子をコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0047】
なおさらなる実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)荷電残基の1つ以上の置換でさらに修飾されるような、様々な血清結合タンパク質がその循環半減期を増大させるように変更されている、第VIII因子をコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0048】
さらなる実施形態において、単離された核酸分子は、(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)荷電残基の1つ以上の置換でさらに修飾されるような、培養物中での分泌が増大した第VIII因子をコードするヌクレオチド配列を有し得る。
【0049】
さらなる実施形態において、単離された核酸分子は、荷電残基の1つ以上の置換でさらに修飾されるような、1つ以上の天然に存在しないグリコシル化部位を有する第VIII因子をコードするヌクレオチド配列を(たとえば、配列番号2の位置287、302、519、665、および/または1984において)有し得る。
【0050】
さらに別の実施形態において、単離された核酸分子は、前記のような任意の1つ以上の荷電残基で修飾された組換え形第VIII因子をコードし、次の2つ以上を有するようにも修飾される。Bドメインがないように修飾されること、キメラであるように修飾されること、変更された不活化切断部位を有するように修飾されること、向上した第IXa因子および/または第X因子親和性を有するように修飾されること、分泌が向上するように修飾されること、増大した循環半減期を有するように修飾されること、1つ以上の天然に存在しないグリコシル化部位を有するように修飾されること、ならびにカルシウム結合部位内(たとえば、位置113)で修飾され、組換え型第VIII因子の比活性が改善されること。
【0051】
本発明の別の態様は、本発明の単離されたDNA分子を含む組換えDNA発現システムに関し、この発現システムは、組換え型第VIII因子をコードする。一実施形態において、DNA分子は、プロモーターに対してセンス配向にある。
【0052】
本発明のさらなる態様は、本発明の組換え型第VIII因子をコードする単離された核酸分子を含む宿主細胞に関する。特定の実施形態において、宿主細胞は、安定なプラスミドとして、または宿主細胞ゲノム中への安定な挿入物もしくは組み込みのいずれかとしてDNA分子形態で単離された核酸分子を含有することができる。別の実施形態において、宿主細胞は、発現システム中にDNA分子を含有することができる。適した宿主細胞は、動物細胞(たとえば、ベビーハムスター腎臓(「BHK」)細胞)、細菌細胞(たとえば、大腸菌(E.coli))、昆虫細胞(たとえば、Sf9細胞)、真菌細胞、酵母細胞(たとえば、サッカロミセス属(Saccharomyces)もしくはシゾサッカロミセス属(Schizosaccharomyces))、植物細胞(たとえば、シロイヌナズナ(Arabidopsis)もしくはタバコ細胞)、または藻類細胞であり得るが、限定されない。
【0053】
組換えDNA発現システムおよび宿主細胞を、以下にさらに詳細に議論するような、当該技術分野で周知の様々な組換え技術を用いて産生することができる。
【0054】
本発明の組換え型第VIII因子をコードするDNA分子を、従来型の組換えDNA技術を用いて、細胞中に組み入れることができる。一般的に、これは、DNA分子を、このDNA分子が異種性である(すなわち、通常、存在しない)発現システム中に挿入することを含む。異種性DNA分子を発現システムまたはベクター中にセンス配向および正しいリーディングフレームで挿入する。ベクターは、挿入されたタンパク質コーディング配列の転写および翻訳に必要な要素を含有する。したがって、本発明の一実施形態は、本発明の単離された核酸を含有するDNA構築物を提供し、これは、宿主細胞または宿主生物において本発明のコードされた組換え型第VIII因子の転写および発現をすることができる5’プロモーターと3’調節領域(すなわち、転写ターミネーター)とに機能し得るように結合させる。
【0055】
本発明の組換え発現システムに関して、当該技術分野で一般的な技術を用いて、本発明の組換え型第VIII因子をコードするDNA分子を含有する発現ベクターを作製することができる。本発明の核酸分子を、当該技術分野で周知の試薬を使用して、多くの入手可能な発現ベクターのいずれかの中に挿入することができる。発現用のDNAベクターの調製において、様々なDNA配列を通常、細菌プラスミド中に挿入するか、または置換することができる。任意の都合のよいプラスミドを用いることができ、このプラスミドは、細菌複製システム、細菌における選択を可能にするマーカー、および一般的に1つ以上の独自で都合のよい位置にある制限部位を有することを特徴とする。ベクターの選択は、好ましい形質転換技術および形質転換の標的宿主に依存する。
【0056】
様々な宿主ベクターシステムを利用して、組換え型第VIII因子をコードする配列を発現することができる。第1に、ベクターシステムは、使用する宿主細胞と適合性でなければならない。宿主−ベクターシステムとしては、これらに限定されないが、次のものが挙げられる:バクテリオファージDNA、プラスミドDNA、またはコスミッドDNAで形質転換された細菌;酵母ベクターを含有する酵母などの微生物;ウイルス(たとえば、ワクシニアウイルス、アデノウイルス、アデノ関連性ウイルスなど)に感染した哺乳動細胞システム;ウイルス(たとえば、バキュロウイルス)に感染した昆虫細胞システム;および細菌(たとえば、アグロバクテリウム(Agrobacterium))に感染した植物細胞。これらのベクターの発現エレメントは、その強度および特異性が異なる。用いられる宿主−ベクターシステムに応じて、多くの適した転写および翻訳エレメントのうちのいずれか1つを使用することができる。
【0057】
組換えによって産生される場合、第VIII因子タンパク質またはポリペプチド(またはそのフラグメントもしくは変異体)は、組換え宿主細胞、これに限定されないが、典型的には真核生物において発現される。
【0058】
本発明の実施に適したベクターとしては、これらに限定されないが、次のウイルスベクター、たとえばラムダベクターシステムgt11、gtWES.tB、Charon4、およびプラスミドベクター、たとえばpCMV、pBR322、pBR325、pACYC177、pACYC184、pUC8、pUC9、pUC18、pUC19、pLG339、pR290、pKC37、pKC101、SV40、pBluescript II SK+/−またはKS+/−(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、“Stratagene Cloning Systems” Catalog (1993)を参照)、pQE、pIH821、pGEX、pETシリーズ(Studier et al, “Use of T7 RNA Polymerase to Direct Expression of Cloned Genes,” Methods in Enzymology 185:60-89 (1990))、およびこれらの任意の誘導体が挙げられる。現在既知であるか、または遺伝子形質転換について後に記載される任意の適切なベクターが本発明に関する使用に適している。
【0059】
組換え分子を形質転換、特に形質導入、結合、モビライゼーション(mobilization)、またはエレクトロポレーションによって細胞中に導入することができる。内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Maniatisら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Cold Springs Harbor, N.Y.: Cold Springs Laboratory, (1982)に記載されているような、当該技術分野で標準的なクローニング手順を用いて、DNA配列をベクター中にクローニングする。
【0060】
内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、CohenおよびBoyerに発行された米国特許第4,237,224号は、制限酵素切断およびDNAリガーゼを用いたライゲーションを使用した、組換えプラスミドの形態での発現システムの産生を記載している。これらの組換えプラスミドを次いで、形質転換を用いて導入し、組織培養中で増殖させた原核生物および真核細胞を含む単細胞培養物中で複製させる。
【0061】
異なる遺伝子シグナルおよびプロセッシング事象は、多くのレベルの遺伝子発現(たとえば、DNA転写およびメッセンジャーRNA(mRNA)翻訳)を制御する。
【0062】
DNAの転写は、RNAポリメラーゼを結合させ、これによってmRNA合成を促進するDNA配列であるプロモーターの存在に依存する。真核性プロモーターのDNA配列は、原核性プロモーターのDNA配列とは異なる。さらに、真核性プロモーターおよび付随する遺伝子シグナルは、原核システムにおいては認識されないか、または機能せず、さらに、原核性プロモーターは、真核細胞においては認識されないか、または機能しない。
【0063】
同様に、原核生物におけるmRNAの翻訳は、真核生物のものとは異なる、適切な原核性シグナルの存在に依存する。原核生物におけるmRNAの有効な翻訳には、mRNA上のShine−Dalgarno(「SD」)配列と呼ばれるリボソーム結合部位を必要とする。この配列は、開始コドン、通常、タンパク質のアミノ末端メチオニンをコードするAUGの前に位置するmRNAの短いヌクレオチド配列である。SD配列は16SrRNA(リボソームRNA)の3’末端に対して相補性であり、おそらくはrRNAで複製して、リボソームの正しい位置決めを可能にすることによって、mRNAのリボソームに対する結合を促進する。遺伝子発現の最大化に関する論評については、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Roberts and Lauer, Methods in Enzymology 68:473 (1979)を参照。
【0064】
プロモーターは、その「強度」(すなわち、その転写を促進する能力)が異なる。クローニングされた遺伝子を発現する目的で、高レベルの転写、したがって遺伝子の発現を得るためには、強力なプロモーターを使用することが一般的に望ましい。用いられる宿主細胞型に応じて、多くの適したプロモーターのいずれか1つを用いることができる。たとえば、大腸菌(Escherichia coli)においてクローニングする場合、そのバクテリオファージ、またはプラスミド、プロモーター、たとえばT7ファージプロモーター、lacプロモーター、trpプロモーター、recAプロモーター、リボソームRNAプロモーター、大腸菌ファージラムダなどのPおよびPプロモーター、たとえばこれらに限定されないが、lacUV5、ompF、bla、lppなどを使用して、隣接するDNA断片の高レベルの転写を行うことができる。さらに、ハイブリッドtrp−lacUV5(tac)プロモーターまたは組換えDNAもしくは他の合成DNA技術によって産生される他の大腸菌プロモーターを用いて、挿入された遺伝子の転写を提供することができる。
【0065】
特異的に誘発されない限り、プロモーターの作用を阻害するために、細菌宿主細胞株および発現ベクターを選択することができる。ある操作において、特異的なインデューサーの添加が、挿入されたDNAの有効な転写には必要である。例えば、lacオペロンは、ラクトースまたはIPTG(イソプロピルチオ−ベータ−D−ガラクトシド)の添加によって誘導される。様々な他のオペロン、たとえばtrp、proなどは異なる制御下にある。
【0066】
特異的な開始シグナルも、原核性細胞における有効な遺伝子転写および翻訳に必要とされる。これらの転写および翻訳開始シグナルは、それぞれ、遺伝子特異的メッセンジャーRNAおよび合成されたタンパク質の量によって測定される「強度」が異なり得る。プロモーターを含有するDNA発現ベクターは、様々な「強力な」転写および/または翻訳開始シグナルの組み合わせも含み得る。たとえば、大腸菌における有効な翻訳は、リボソーム結合部位を提供するために、開始コドン(「ATG」)に対して5’の約7〜9塩基のSD配列を必要とする。したがって、宿主細胞リボソームが利用できる任意のSD−ATG組み合わせを用いることができる。このような組み合わせは、これらに限定されないが、大腸菌ファージラムダのcro遺伝子もしくはN遺伝子由来、または,大腸菌トリプトファンE、D、C、BまたはA遺伝子由来のSD−ATG組み合わせを含む。さらに、組換えDNAまたは合成ヌクレオチドの組み入れを含む他の技術によって産生される任意のSD−ATG組み合わせを用いることができる。
【0067】
一実施形態において、オープンリーディングフレームが、最適のプロモーターの制御下で、コードされたタンパク質の発現に関して適切に配向するように、本発明の核酸分子を適切なベクター中に、センス方向で組み入れる。これには、適切な調節エレメントがDNA−ベクター構築物中に含まれることが関与する。これらは、ベクターの非翻訳領域、有用なプロモーター、ならびに宿主細胞タンパク質と相互作用して転写および翻訳を行う5’および3’未翻訳領域を包含する。このようなエレメントは、その強度および特異性が異なり得る。使用されるベクターシステムおよび宿主に応じて、任意の数の適した転写および翻訳エレメント、たとえば構成的および誘導性プロモーターを用いることができる。
【0068】
構成的プロモーターは、生物の発生および生涯の全体にわたる遺伝子の発現を行うプロモーターである。
【0069】
誘導性プロモーターは、1つ以上のDNA配列または遺伝子の転写をインデューサーに反応して直接的または間接的に活性化することができるプロモーターである。インデューサーの非存在下では、DNA配列または遺伝子は転写されない。
【0070】
本発明のDNA構築物は、最適のタンパク質をコードするDNA分子と機能し得るように結合した、最適の宿主細胞における発現のためにmRNAの正しい転写終結およびポリアデニル化を提供できるものから選択される、機能可能な3’調節領域も含むことができる。
【0071】
それぞれ、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Sambrookら, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition, Cold Spring Harbor Press, NY (1989)、およびAusubel, F. M.ら Current Protocols in Molecular Biology, New York, N.Y: John Wiley & Sons (1989) に記載されているような周知の分子クローニング技術を用いて、最適のベクター、プロモーター、および適切な3’調節領域を連結して、本発明のDNA構築物を産生することができる。
【0072】
記載したように、原核宿主細胞の使用の1つの代替案は、真核宿主細胞、たとえば哺乳動物細胞の使用であり、これも、本発明の組換え型第VIII因子を組換えによって産生するために使用できる。本発明の実施に適した哺乳動物細胞としては、とりわけ:COS(たとえば、ATCC No.CRL1650または1651)、BHK(たとえば、ATCC No.CRL6281)、CHO(たとえば、ATCC No.CCL61)、HeLa(たとえば、ATCC No.CCL2)、293(ATCC No.1573)、CHOP、およびNS−1細胞が挙げられる。
【0073】
哺乳動物細胞における発現を行うために適した発現ベクターとしては、一般的に、プロモーター、ならびに当該技術分野で公知の他の転写および翻訳制御配列が挙げられる。一般的なプロモーターとしては、SV40、MMTV、メタロチオネイン−1、アデノウイルスEla、CMV、前初期、免疫グロブリン重鎖プロモーターおよびエンハンサー、ならびにRSV−LTRが挙げられる。
【0074】
本発明のDNA構築物はいったん調製されると、いつでも宿主細胞中に組み入れられる状態にある。したがって、本発明の別の態様は、組換え細胞を作製する方法に関する。基本的に、この方法は、宿主細胞におけるDNA分子の転写を行うために有効な条件下で、宿主細胞を本発明のDNA構築物で形質転換することによって行われる。組換え分子を、形質転換、特に形質導入、結合、モビライゼーション、またはエレクトロポレーションによって細胞中に導入することができる。
【0075】
本明細書において議論する組換え技術を考慮して、本発明の別の態様は、本発明の組換え型第VIII因子を作製する方法に関する。この方法は、本発明の宿主細胞を、この宿主細胞が組換え型第VIII因子を発現する条件下で増殖させる段階を含む。組換え型第VIII因子を次に単離する。一実施形態において、宿主細胞を増殖培地中、インビトロで増殖させる。特定の実施形態において、適した増殖培地としては、制限無く、フォンヴィレブランド因子(本明細書においては「VWF」と称する)を含有する増殖培地を挙げることができる。この実施形態において、宿主細胞は、VWFをコードする導入遺伝子を含有することができるか、またはVWFを増殖培地に補給物として導入することができる。増殖培地中のVWFは、組換え型第VIII因子のさらに高い発現レベルを可能にするであろう。一旦、組換え型第VIII因子が増殖培地中に分泌されると、関連する組換えDNAおよびタンパク質分野の通常の技術者に周知の技術(本明細書において記載するものを包含する)を用いて、増殖培地から単離することができる。その他の実施形態において、本発明の組換え型第VIII因子を作製する方法は、組換え型第VIII因子を単離する前に、宿主細胞を破砕する段階をさらに含む。この実施形態において、組換え型第VIII因子を細胞片から単離する。
【0076】
位置287、302、519、665、および/または1984での修飾が特に好ましい。その理由は、修飾の結果、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の向上した安定性が得られるからである。この増大した安定性は、血液凝固中の第VIII因子の循環半減期および第VIIIa因子の活性に関して重要である。さらに、この特性は、治療用に用いられるタンパク質の精製および調製中に使用可能な第VIII因子の回収を向上させる点で重要である。
【0077】
標的細胞において第VIII因子発現を誘導するためのインビボ形質転換の目的で発現ベクターを使用する場合、様々な強度のプロモーターを、所望の向上の程度に応じて用いることができる。当業者は、適切な哺乳動物プロモーターを、これらのプロモーターとしての強度に基づいて容易に選択することができる。あるいは、第VIII因子の発現もしくは抑制が望ましい場合、制御の目的で、誘導性プロモーターを用いることができる。当業者は、当該技術分野で公知のものから、適切な誘導哺乳動物プロモーターを容易に選択することができる。最後に、組織特異的哺乳動物プロモーターを、任意の遺伝子形質転換システムの有効性を特定の組織に限定するために選択することができる。組織特異的プロモーターは当該技術分野で公知であり、処理される組織もしくは細胞型に基づいて選択することができる。
【0078】
本発明の別の態様は、動物の血液障害、たとえば血友病、特に、血友病Aを治療する方法に関する。この方法は、血友病Aを示す動物が血管損傷後に有効な血液凝固を示す、有効量の本発明の組換え型第VIII因子をこの動物に投与する段階を含む。組換え型第VIII因子の適した有効量としては、制限無く、動物の体重1kgあたり約10〜約50単位までの間を挙げることができる。動物は、任意の哺乳動物であり得るが、好ましくは、ヒト、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、オランウータン、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、またはウサギである。
【0079】
本発明の組換え型第VIII因子を用いて、抑制抗体を有する血友病患者および抑制抗体を有さない血友病患者、ならびに抑制抗体の発生による後天的第VIII因子欠乏の患者における、第VIII因子欠乏による制御できない出血(たとえば、関節内、頭蓋内、または消化管出血)を治療することができる。特定の実施形態において、組換え型第VIII因子は、単独または薬学的組成物(すなわち、安定剤、送達ビヒクル、および/または担体との組み合わせ)の形態で、ヒトまたは動物第VIII因子の注入のために使用される同じ手順に従って患者に静脈内注入される。
【0080】
その代わりに、またはそれに加えて、組換え型第VIII因子を、アデノ関連性ウイルスなどのウイルスベクターの投与(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Gnatenkoら, “Human Factor VIII Can Be Packaged and Functionally Expressed in an Adeno-associated Virus Background: Applicability to Hemophilia A Gene Therapy”Br. J. Haematol. 104:27-36 (1999))によって、または組換え型第VIII因子を産生するために遺伝子操作された細胞の移植(典型的には、このような細胞を含有するデバイスの移植による)によって、投与することができる。このような移植は、典型的には、組換え皮膚線維芽細胞、非ウイルス法(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Rothら, “Nonviral Transfer of the Gene Encoding Coagulation Factor VIII in Patients with Sever Hemophilia”New Engl. J. Med. 344:1735-1742 (2001))の使用を含む。
【0081】
このような治療を必要とする患者へ投与すべき組換え型第VIII因子の治療用量は、第VIII因子欠乏の重症度に応じて変わる。一般的に、投与量レベルを、それぞれの患者の出血症状の重症度および期間に合った頻度、期間、および単位で調節する。このように、薬学的に許容される担体、送達ビヒクル、または安定剤中に、標準的凝固分析によって測定されるような、出血を停止させるための治療有効量のタンパク質を患者に送達するために十分な量で組換え型第VIII因子が含まれる。
【0082】
第VIII因子は、伝統的に、血友病Aの個体由来の血漿中の凝固欠陥を補正する、正常な血漿中に存在する物質として定義される。第VIII因子の精製および部分精製形態のインビトロ凝集活性を用いて、ヒト患者中へ注入するための組換え型第VIII因子用量を計算し、患者血漿から回収される活性およびインビボの出血欠陥補正の信頼できるインジケーターである。それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lusherら, “Recombinant Factor VIlI for the Treatment of Previously Untreated Patients with Hemophilia A - Safety, Efficacy, and Development of Inhibitors”, New Engl. J. Med. 328:453-459 (1993); Pittmanら, “A2 Domain of Human Recombinant-derived Factor VIII is Required for Procoagulant Activity but not for Thrombin Cleavage”, Blood 79:389-397 (1992); およびBrinkhousら, “Purified Human Factor VIlI Procoagulant Protein: Comparative Hemostatic Response After Infusions into Hemophilic and von Willebrand Disease Dogs”, Proc. Natl. Acad. Sci. 82:8752-8755 (1985)によると、インビトロの新規第VIII因子分子の標準的分析と、イヌ注入モデルもしくはヒト患者におけるそれらの挙動との間の相違は報告されていない。
【0083】
通常、組換え型第VIII因子の投与によって患者で達成される望ましい血漿第VIII因子活性レベルは、正常の30〜100%の範囲である。一実施形態において、治療的組換え型第VIII因子の投与は、約5〜50単位/体重kgの範囲、特に10〜50単位/体重kg、さらに詳細には20〜40単位/体重kgの範囲の好ましい投与量で静脈内投与され;投与間隔は約8〜24時間(重度の血友病患者において)の範囲であり;治療期間の日数は、1〜10日の範囲であるか、または出血症状が消散するまでである。たとえば、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Roberts and Jones, “Hemophilia and Related Conditions--Congenital Deficiencies of Prothrombin (Factor II, Factor V, and Factors VII to XII),” Ch. 153, 1453-1474, 1460, Hematology, Williams, W. J.,ら, ed. (1990)を参照。阻害物質を有する患者は、第VIII因子の先の形態とは異なる量の組換え型第VIII因子を必要とし得る。例えば、患者が必要とする組換え型第VIII因子は少ない。その理由は、比活性が野生型VIIIよりも高く、その抗体反応性が減少しているからである。ヒトまたは血漿由来の第VIII因子を用いた治療においてと同様、注入される治療的組換え型第VIII因子の量は、一段階第VIII因子凝固分析によって定義され、選択された例では、インビボ回収率(in vivo recovery)は、注入後の患者の血漿中の第VIII因子を測定することによって決定される。特定の患者について、特定の投与レジメンを長時間にわたって、個々の要求ならびに、組成物を投与するかまたは投与を監督する人物の専門的な判断にしたがって調節すべきであり、本明細書で前述した濃度範囲は単なる例示であり、特許請求される組換え型第VIII因子の範囲または実施を制限することを意図するものではないと理解すべきである。
【0084】
治療は、必要に応じて、組換え型第VIII因子の1回の静脈内投与、または長時間にわたる周期的もしくは連続投与の形態をとることができる。あるいは、治療用組換え型第VIII因子を、リポソームとともに1回もしくは複数回、様々な時間間隔で皮下または経口投与することができる。
【0085】
組換え型第VIII因子を用いて、ヒト第VIII因子に対する抗体が生じた血友病患者における、第VIII因子欠乏が原因の制御できない出血を治療することができる。
【0086】
本発明の組換え型第VIII因子は、野生型第VIII因子とは比活性が異なり得ることを本明細書において示した。野生型第VIII因子由来の高い凝固促進活性を有する第VIII因子タンパク質は、血友病の治療において有用である。その理由は、患者の第VIII因子欠損を補正するために必要な投与量が少ないからである。このことによって、患者と保険会社との双方の医療費が軽減されるだけでなく、第VIII因子に対する免疫反応発生の可能性も軽減される(投与される抗原が少ないため)。
【0087】
実施例
以下の実施例は、本発明の実施形態を説明するためのものであり、その範囲を制限するものではない。
【0088】
材料および方法
試薬
組換え型第VIII因子(Kogenate(商標))はBayer Corporation(カリフォルニア州バークレー)のLisa Regan博士より贈与された。20%のホスファチジルコリン(PC)、40%のホスファチジルエタノールアミン(PE)、および40%のホスファチジルセリン(PS)を含有するリン脂質ベシクルを、すでに記載されたようにオクチルグルコシドを用いて調製した(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Mimmsら, “Phospholipid Vesicle Formation and Transmembrane Protein Incorporation Using Octyl Glucoside,” Biochemistry 20:833-840 (1981))。試薬α−トロンビン、第VIIa因子、第IXaβ因子、第X因子、および第Xa因子(インディアナ州サウスベンドのEnzyme Research Laboratories)、ヒルジンおよびリン脂質(オハイオ州ウェストチェスターのDiaPharma)、発色Xa基質、Pefachrome Xa(Pefa−5523、CHOCO−D−CHA−Gly−Arg−pNA・AcOH;コネチカット州ノーウォークのCenterchem Inc.)、組換えヒト組織因子(rTF)、Innovin(デラウェア州ニューアークのDade Behring)、蛍光発生基質、Z−Gly−Gly−Arg−AMC(カリフォルニア州サンディエゴのCalbiochem)、ならびにトロンビンキャリブレーター(ニュージャージー州パーシッパニーのDiagnostica Stago)を、指定の供給元から購入した。
【0089】
WTおよび変異型第VIII因子の構築、発現および精製:
Ala突然変異体(D27、H281、R282、E287、D302、S313、H317、T522、S524、R531、N538、E540、S650、S654、D666、E683、N684、S695、D696、S1791、D1795、Q1820、E1829、S1949、N1950、およびR1966);Phe突然変異体(Y476、Y664、Y1786、およびY1792);AlaおよびVal突然変異体(荷電残基E272、D519、E665、およびE1984);ならびにWT第VIII因子形態を、Bドメインで残基Gln744〜Ser1637が欠損したBドメインのない第VIII因子として個々に構築した(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Doeringら, “Expression and Characterization of Recombinant Murine Factor VIII,” Thromb Haemost. 88:450-458 (2002))。クローニングおよび発現構築物は、Pete Lollar博士およびJohn Healey博士から贈与された。組換えWTおよび変異型第VIII因子形態は、BHK細胞において安定して発現され、すでに記載されているようにして精製した(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Wakabayashiら, “Residues 110-126 in the A1 Domain of Factor VIII Contain a Ca2+ Binding Site Required for Cofactor Activity,” J Biol Chem. 279:12677-12684 (2004))。トランスフェクション後、変異体間で第VIII因子分泌の量には有意な差はなかった。変異体のタンパク質収量は、2つの750cm培養フラスコからは10超〜約100μgの範囲であり、SDS−PAGEによって判定すると、純度は約85%〜95%超であった。第VIII因子調製物中の主な汚染物質はアルブミンであり、第VIII因子中に存在する濃度では、活性パラメータの安定性に対して影響をおよぼさなかった。第VIII因子濃度を、酵素結合免疫吸着検定法(ELISA)を用いて測定し、第VIII因子活性を以下に記載するような凝固一段階法および発色性第Xa因子生成二段階法によって決定した。
【0090】
SDS−PAGEおよびウェスタンブロッティング
第VIII因子タンパク質(ゲル染色については0.77μg、ウェスタンブロットについては0.34μg)を8%ポリアクリルアミドゲル上、一定電圧(100V)で電気泳動させた。ゲルをGelcode Blue(イリノイ州ロックフォードのThermo Scientific)で染色するか、またはポリフッ化ビニリデン膜に移し、ビオチニル抗A2抗体(R8B12、バーモント州バーリントンのGreen Mountain Antibodies)でプローブし、続いてペルオキシダーゼ複合ストレプトアビジン(カリフォルニア州サンディエゴのCalbiochem)とともにインキュベートした。化学蛍光基質(ECF基質、ニュージャージー州ピスカタウェイのGE Healthcare)を反応させ、ホスホイメージャー(phosphoimager)(Storm860、GE Healthcare)を用いて蛍光シグナルをスキャンした。単鎖第VIII因子形態(170kDa)および重鎖(HC、90kDa)の密度を、ImageQuantソフトウェア(GE Healthcare)を用いて定量化し、量の比を計算した。
【0091】
ELISA
サンドウィッチELISAを実施して、すでに記載されているようにして(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Wakabayashiら, “A Glu113Ala Mutation within a Factor VIII Ca2+-Binding Site Enhances Cofactor Interactions in Factor Xase,” Biochemistry 44:10298-10304 (2005))、精製された市販の組換え型第VIII因子(Kogenate、Bayer Corporation)を標準として使用して、第VIII因子タンパク質の濃度を測定した。抗C2抗体(ESH−8、コネチカット州スタムフォードのAmerican Diagnostica Inc.)およびビオチニルR8B12抗体を使用した第VIII因子捕捉を、第VIII因子検出のために使用した。
【0092】
凝固一段階法
凝固一段階法を、第VIII因子を化学的に消耗させた基質血漿(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Over, “Methodology of the One-stage Assay of Factor VIII (VIII:C),” Scand J Haematol Suppl. 41:13-24 (1984))を用いて実施し、Diagnostica Stago凝固装置を用いて分析した。血漿をAPTT試薬(General Diagnostics)とともに6分間、37℃でインキュベートし、その後、第VIII因子の希釈液をキュベットに添加した。1分後、混合物を再石灰化させ、凝固時間を測定し、プールされた正常血漿標準と比較した。
【0093】
発色性第Xa因子生成二段階法
第X因子の第Xa因子への変換速度を、精製システム(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lollarら, “Factor VIII and Factor VIIIa,” Methods Enzymol. 222:128-143 (1993))において、すでに記載されている方法(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Wakabayashiら, “Metal Ion-independent Association of Factor VIII Subunits and the Roles of Calcium and Copper Ions for Cofactor Activity and Inter-subunit Affinity,” Biochemistry 40:10293-10300 (2001); Wakabayashiら, “Ca2+ Binding to Both the Heavy and Light Chains of Factor VIII Is Required for Cofactor Activity,” Biochemistry 41:8485-8492 (2002))に従ってモニターした。20mMのN−[2−ヒドロキシエチル]ピペラジン−N’−[2−エタンスルホン酸](HEPES)(pH7.2)、0.1MのNaCl、0.01%のTween20、0.01%のBSA、5mMのCaCl、および10μMのPSPCPEベシクル(緩衝液A)を含有する緩衝液中第VIII因子(1nM)を、20nMのα−トロンビンで1分間活性化した。ヒルジン(10U/ml)を添加することによって反応を停止させ、結果として得られた第VIIIa因子を第IXa因子(40nM)と1分間反応させた。第X因子(300nM)を添加して、反応を開始させ、50mMのEDTAを添加することによって、1分後に停止させた。生成した第Xa因子を、発色基質Pefachrome Xa(最終濃度0.46mM)との反応後に決定した。すべての反応を23℃で実施した。
【0094】
トロンビン生成法
血漿中の生成したトロンビンの量を、Calibrated Automated Thrombography(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Hemkerら, “Calibrated Automated Thrombin Generation Measurement in Clotting Plasma,” Pathophysiol Haemost Thromb. 33:4-15 (2003); Hemkerら, “Thrombin Generation in Plasma: Its Assessment via the Endogenous Thrombin Potential,” Thromb Haemost. 74:134-138 (1995))によって測定した。96穴プレート中、第VIII因子阻害物質が欠損した重度血友病A患者由来の第VIII因子欠乏血漿、80μl(1%未満の残留活性、血小板不足)(カンザス州オーバーランド・パークのGeorge King Bio−Medical)を第VIII因子試料(20μl;6nM)と3pMのrTF(rTFストックの濃度は、第Xa因子生成法により、既知濃度の第VIIa因子を用いて決定した)、PSPCPEベシクル(24μM)または20μlのトロンビンキャリブレーター(630nM)を含有するHEPES−BSA緩衝液(20mMのHEPES、pH7.35、0.15MのNaCl、6%のBSA)中で混合し、0.1MのCaClを含むHEPES−BSA緩衝液中で20μlの蛍光発生基質(2.5mM、Z−Gly−Gly−Arg−AMC)と混合することにより、反応を直ちに開始させた。全ての試薬を37℃で予熱した。試薬の最終濃度は、1nMの第VIII因子(他の表示がある場合を除く)、0.5pMのrTF、4μMのPSPCPEベシクル、433μMの蛍光発生基質、13.3mMのCalCl、および105nMのトロンビンキャリブレーターであった。37℃での蛍光シグナルの発生を、8秒間隔で、Microplate Spectrofluorometer(Spetramax Gemini、カリフォルニア州サニーベールのMolecular Devices)(355nm(励起)/460nm(発光)フィルターセット)を用いてモニターした。蛍光シグナルをトロンビンキャリブレーター試料からの参考シグナルによって補正し(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Hemkerら, “Calibrated Automated Thrombin Generation Measurement in Clotting Plasma,” Pathophysiol Haemost Thromb. 33:4-15 (2003))、実際のトロンビン生成(nM)をすでに記載されているようにして計算した(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Hemkerら, “Thrombin Generation in Plasma: Its Assessment via the Endogenous Thrombin Potential,” Thromb Haemost. 74:134-138 (1995))。
【0095】
高温での第VIII因子活性
緩衝液A中のWT第VIII因子または第VIII因子変異体(4nM)を52〜60℃でインキュベートした。アリコートを表示された時間で取り出し、残存する第VIII因子活性を、発色性第Xa因子生成二段階法を用いて測定した。
【0096】
第VIIIa因子活性時間経過
10μMのPSPCPEベシクルを含有する緩衝液A中のWTおよび突然変異型第VIII因子(4nM)を、20nMのトロンビンによって1分間23℃で活性化した。反応をヒルジン(10U/ml)によって直ちに停止させ、アリコートを表示された時間で取り出し、第Xa因子生成法を用い、続いて第IXa因子(40nM)および第X因子(300nM)を添加して、活性を決定した。第IXa因子の存在下で減衰測定を実施するために、第IXa因子(40nM)をトロンビン添加の前に反応に添加した。
【0097】
血漿中の第VIII因子安定性
WTまたは変異型第VIII因子(1nM)を第VIII因子阻害物質が欠損した重度の血友病A患者(George King Bio−Medical)由来の第VIII因子欠乏血漿(1%未満の残留活性)に添加した。血漿に0.02%のNaNを添加して、微生物の増殖を防止し、試料を37℃でインキュベートした。アリコートを表示された時間で取り出し、凝固一段階法によって残留活性を決定した。
【0098】
データ分析
時間の関数としての第VIIIa因子活性値を、式
A=A×e−k・t
(式中、Aは残留第VIIIa因子活性(nM/分/nM第VIII因子)であり、Aは初期活性であり、kは見かけの速度定数であり、tは高温での第VIII因子(第VIII因子減衰実験について)またはトロンビン活性化を失活させた後(第VIIIa因子減衰測定について)のいずれかの反応時間(分)である)を用いて、非線形最小二乗回帰によって単一指数関数減衰曲線に適合させた。非線形最小二乗回帰分析をKaleidagraph(ペンシルベニア州レディングのSynergy)によって実施した。平均値の比較をスチューデントのt検定によって実施した。第VIIIA因子ドメインモデル化構造(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Pembertonら, “A Molecular Model for the Triplicated A Domains of Human Factor VIII Based on the Crystal Structure of Human Ceruloplasmin,” Blood 89:2413-2421 (1997))を、Swiss PDB Viewerを用いて分析して、A2ドメイン境界面に位置し、相補性ドメインの極性原子を隔てる2.8Å超の閾値に基づいて、水素結合相互作用の可能性をほとんど示さない荷電残基を同定した(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Weinerら, “A New Force Field for Molecular Mechanical Simulation of Nucleic Acids Proteins,” J Am Chem Soc. 106:765-784 (1984))。
【0099】
実施例1:水素結合相互作用を標的とする第VIII因子突然変異体の活性値
第VIII因子中のA2ドメインに関与する結合相互作用は、まだ十分理解されていないが、補因子活性調節の主なメカニズムである。第VIII因子相同性モデル(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Pembertonら, “A Molecular Model for the Triplicated A Domains of Human Factor VIII Based on the Crystal Structure of Human Ceruloplasmin,” Blood 89:2413-2421 (1997))は、A2ドメイン中の残基と、A1もしくはA3ドメイン中の残基とを結合させる多くの水素結合の可能性を特定する。水素ドナーとアクセプター原子との間の2.8Å未満の空間的距離の基準を用いて(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Weinerら, “A New Force Field for Molecular Mechanical Simulation of Nucleic Acids Proteins,” J Am Chem Soc. 106:765-784 (1984))、30残基が相補性Aドメインからの原子との水素結合に関与し得る側鎖原子を有すると確認された(下表1を参照)。同定された残基の約半分で、側鎖原子は骨格カルボニル酸素またはアミド水素原子のいずれかに隣接し、一方、残りは、隣接する側鎖間の可能な相互作用に相当していた。Tyr残基がPheと置換される以外は、第VIII因子Aドメイン中の標的残基は、個々にAlaに変異され、点突然変異は、Bドメインのない第VIII因子として安定して発現された。
【0100】
第VIII因子活性を、凝固一段階法および(二段階)第Xa因子生成法を用いて、精製タンパク質について測定した。一段階分析からの結果(図1)から、30の点突然変異体のうちの9が、活性WT第VIII因子に対して50%未満の活性を示すことがわかった。これらの変異体のうちの5つは、一段階/二段階分析の相違(1.5倍超の相違)を示し、3つの突然変異体(S524A、H281A、およびE287A)は二段階分析においてのみ減少を示した。いくつかの標的残基における突然変異についての減少した活性値は、第VIII因子および/または第VIIIa因子の構造安定性に対する側鎖の寄与と一致した。
【0101】
(表1)水素結合できるアミノ酸残基

骨格カルボニル酸素原子
骨格アミド水素原子
【0102】
実施例2:第VIII因子変異体の熱安定性
WTプロ補因子および変異体の熱安定性を評価するために、以前の研究で記載されている第VIII因子不活化結果(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Ansongら, “Factor VIII A3 Domain Residues 1954-1961 Represent an A1 Domain-Interactive Site,” Biochemistry 44:8850-8857 (2005))に基づいて、55℃の温度を採用した。これらの反応に関して、第VIII因子を表示された時間、高温でインキュベートし、その後、反応混合物を直ちに室温まで冷却し、第VIII因子をトロンビンと反応させ、第Xa因子生成法を用いて補因子活性について分析した。残留補因子機能によって判定されるような、第VIII因子活性の熱処理に対する損失率を、方法に記載されるようにして決定した。図2Aは、WTと比較した、熱処理に対して最大および最低感受性を示す変異体についての結果を示す。
【0103】
表2(下記)に、30の変異体についての第VIII因子熱安定性分析から得られた結果をまとめる。全体的に、これらの活性データは、ほとんどの場合、0.98を超える相関関数で単一指数関数減衰関数によく適合する。多くの突然変異はアミノ酸置換に対して良性であるが(21が減衰速度において2倍未満の差を示す)、Arg282(A1ドメイン)、ならびにA2ドメイン残基Ser524、Asn684およびSer650などのいくつかの残基は、第VIII因子減衰において約5〜約20倍増加した速度を示し、このことは、第VIII因子安定性の維持におけるこれらの残基の重要な役割を示唆する。さらに、R282AおよびN684A変異体は、著しく減少した比活性値を示し、このことは、活性パラメータと安定性パラメータとの両方が、点突然変異によって影響を受けたことを示唆する。他方、E287およびD302のAlaとの置換によって、高温での第VIII因子減衰に関して速度が減少した。このような、突然変異後のタンパク質安定性の見かけの増加は、WT補因子におけるドメイン間相互作用を不安定化するこれらの酸性側鎖と一致する。
【0104】
(表2)第VIII因子および第VIIIa因子減衰速度ならびに活性値

突然変異型第VIII因子形態は、第VIII因子減衰の減少速度に基づいて並べられている。速度減衰値についての標準偏差は、最小二乗曲線適合に基づいて推定され、平均値の約10%以内である。
第IXa因子の存在下で実施した減衰実験
第IXa因子の非存在下で実施した減衰実験
括弧内の値は、野生型に対する値である。
単位/μg
生成した第Xa因子(nM)/分/第VIII因子(nM)
【0105】
実施例3:第VIIIa因子減衰速度
第VIIIa因子活性は、A2サブユニット解離のために不安定である(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Fayら, “Human Factor VIIIa Subunit Structure: Reconstruction of Factor VIIIa from the Isolated A1/A3-C1-C2 Dimer and A2 Subunit,” J Biol Chem. 266:8957-8962 (1991); Lollarら, “pH-dependent Denaturation of Thrombin-activated Porcine Factor VIII,” J Biol Chem. 265:1688-1692 (1990))。従来の研究から得られた結果は、第IXa因子およびリン脂質ベシクルに第VIIIa因子を含めて、Xase複合体を形成することにより、Xase因子内のA2サブユニットが部分的に安定化されることによって(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Fayら, “Model for the Factor VIIIa-dependent Decay of the Intrinsic Factor Xase: Role of Subunit Dissociation and Factor IXa-catalyzed Proteolysis,” J Biol Chem. 271:6027-6032 (1996))、補因子の不安定性が軽減されたことがわかる(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Lollarら, “Stabilization of Thrombin-activated Porcine Factor VIII:C by Factor IXa Phospholipid,” Blood 63:1303-1308 (1984); Lamphearら, “Factor IXa Enhances Reconstitution of Factor VIIIa from Isolated A2 Subunit and A1/A3-C1-C2 Dimer,” J. Biol. Chem. 267:3725-3730 (1992))。この方法は、近年、E1829A第VIIIa因子突然変異体の減衰速度を調べるために用いられた(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Wakabayashiら, “A3 Domain Residue Glu1829 Contributes to A2 Subunit Retention in Factor VIIIa,” J. Thromb. Haemost. 5:996-1001(2007))。その理由は、第IXa因子および膜の非存在下で、この変異型第VIIIa因子の活性減衰は速すぎて、正確に測定できなかったからである。この方法は、この実施例に記載する変異体のパネルの第VIIIa因子減衰の速度を評価するためにも同様に用いられた。第VIII因子(4nM)を1モル過剰の第IXa因子(40nM)およびリン脂質ベシクルとともにインキュベートし、トロンビンで迅速に活性化し、その後のXase因子活性を23℃で長時間にわたって測定した。Xase因子活性の減衰速度は、A2サブユニット解離に起因し、単一指数関数減衰を用いてデータを適合させた。第VIIIa因子(144nM)内のA2サブユニットの親和性について高いK値、および反応において使用される低い第VIIIa因子濃度(4nM)を考慮に入れると、解離したA2サブユニットの再会合の影響は無視でき、この回帰分析に適用した単純な単一指数関数の使用を支持する。
【0106】
結果を図2Bに示す。この図は、最も大きく影響を受けた変異体ならびに突然変異に対して正の応答を示す変異体についてのデータを示す。7つの変異体で、WTと比較して、第VIIIa因子減衰速度において有意に(5倍超)増加した(表2)。これらの突然変異には、R282A、S524A、N684A、E1829A、Y1786F、D666A、およびY1792Fが含まれる。二段階分析によって測定されるこれらの変異体の第VIII因子活性値は、一段階分析によって測定されるものよりも有意に低く(図1)、かなりの速度のA2サブユニット解離をもたらす突然変異と一致する。さらに、これらの突然変異のいくつか(R282A、N684AおよびY1792Fを包含する)は、一段階分析において全体的に低い比活性を示した。この分析相違を有する第VIII因子突然変異体の場合と同様、一段階分析から決定される活性も減少し(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Pipeら, “Mild Hemophilia A Caused by Increased Rate of Factor VIII A2 Subunit Dissociation: Evidence for Nonproteolytic Inactivation of Factor VIIIa in vivo,” Blood 93:176-183 (1999); Pipeら, “Hemophilia A Mutations Associated with 1-stage/2-stage Activity Discrepancy Disrupt Protein-protein Interactions within the Triplicated A Domains of Thrombin-activated Factor VIIIa,” Blood 97:685-691 (2001); Hakeosら, “Hemophilia A Mutations within the Factor VIII A2-A3 Subunit Interface Destabilize Factor VIIIa and Cause One-stage/Two-stage Activity Discrepancy,” Thromb Haemost. 88:781-787 (2002))、おそらくは、第VIII因子活性の決定に対するA2解離速度の直接的影響を反映するものであろう。
【0107】
反対に、WT第VIII因子よりも高い熱安定性を有する変異型E287AおよびD302Aによっても、トロンビンによる活性化後の補因子減衰の速度の減少によって判断される、第VIIIa因子の安定性が向上した。D302A変異体に関する結果はさらに顕著であり、WT第VIIIa因子に対して補因子減衰の速度を約2倍減少させ、40分後にその本来の活性の約90%を保持していた。この観察結果は、プロ補因子におけるドメイン間境界面で立体構造を主に変更する突然変異と一致していた。
【0108】
あわせると、実施例1〜3におけるこれらの結果は、第VIII因子のプロ補因子および補因子形態におけるA2(ドメイン)サブユニット間相互作用に対する複数の残基の寄与を特定し、選択された残基はタンパク質安定性に対して本質的に異なる寄与をする。標的残基での突然変異の観察される効果は、ほとんどの部分について良性であるか、または有害であるかのいずれかであるが、2つのA1ドメイン酸性残基であるD302およびE287での突然変異によって、プロ補因子形態と活性補因子形態との両方において、安定性が適度に向上した。E287の相対的活性は、WTと比較して若干減少したが、D302変異体の活性値は、WTタンパク質と区別できず、このことは、後者が機能獲得型突然変異であることを示唆する。これらの結果から、一部の不安定化は、(負の)電荷を境界面で埋没させること、および/または残基側鎖が疎水性である場合の安定性の増大に起因することがわかる。
【0109】
実施例4:さらなる標的残基の同定ならびにGlu272、Asp519、Glu665、およびGlu1984での点突然変異体の生成
前記実施例の結果に基づき、他の荷電残基の置換を調査した。セルロプラスミンベースの相同性モデル(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Pembertonら, “A Molecular Model for the Triplicated A Domains of Human Factor VIII Based on the Crystal Structure of Human Ceruloplasmin,” Blood 89:2413-2421 (1997))を第VIII因子のAドメインについて用いて、4つの荷電残基を同定した(Glu272、Asp519、Glu665、およびGlu1984)。これらの4つの残基は、A2ドメインと、A1ドメイン(Glu272およびAsp519)またはA3ドメイン(Glu665、およびGlu1984)との境界面で埋没しているようであるが、隣接基の結合可能性を有する2.8Åより大きい空間隔離に基づいて、H結合相互作用には寄与しなかったと思われる。これらの残基は、AlaまたはValのいずれかに変異されて、電荷を除去し、また他の埋没残基由来の類似の側鎖との潜在的な疎水性相互作用を提供した。第VIII因子変異体を安定に発現するBHK細胞株におけるBドメインのない第VIII因子として調製した。
【0110】
第VIII因子を、単鎖およびヘテロ二量体形態の混合物として発現させた。精製タンパク質は、SDS−PAGEによって判定すると、約85%〜約95%超の範囲であった(図3A)。抗A2ドメイン抗体を用いたウェスタンブロッティングを使用して、単鎖およびヘテロ二量体形態の化学量論を定量化した(図3B)。この値は、WTについてはほぼ1つであり、第VIII因子変異体については若干低く、可変的であった。
【0111】
精製タンパク質を、一段階分析と二段階分析との両方(図4A)およびトロンビン生成パラメータ(図4B〜D)を使用して、比活性について評価した。Glu272Ala変異体を除いた全て、WTの少なくとも80%である比活性値をもたらし、このことは、残存する突然変異がたとえあったとしても少ししか第VIII因子補因子機能に影響を及ぼさないことを示唆する。低いrTF濃度(0.5pM)および生理学的濃度(1nM)の第VIII因子で実施したトロンビン生成によって、比活性値と類似した結果が得られた。図4Dに示されるパラメータ値から、Glu272Alaのピーク値およびETPはWTと比較して減少し、一方、残りの変異体の他の全てのパラメータ値は、WT値の80超〜110%の範囲であったことがわかった。
【0112】
実施例5:Glu272、Asp519、Glu665およびGlu1984第VIII因子変異体の熱安定性
精製第VIII因子突然変異体タンパク質を、活性損失速度によって判断される、高温での安定性について評価した。第VIII因子(4nM)を52〜60℃でインキュベートし、指定の時間でアリコートを取り出し、室温に冷却し、トロンビンと反応させ、材料および方法に記載されているような第Xa因子生成法を使用して、残留補因子活性を測定した。図5Aに示す結果は、第VIII因子WTおよび変異体の55℃での活性減衰の時間経過を示す。この温度は、以前の研究(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Ansongら, “Factor VIII A1 Domain Residues 97-105 Represent a Light Chain-interactive Site,” Biochemistry 45:13140-13149 (2006))に基づいて選択され、WT第VIII因子について1時間以内でほぼ完全な活性損失を示した。WTタンパク質は約15分で50%の活性を失った。Glu272AlaおよびGlu272Val変異体は、若干速い活性減衰によって判断されるように、安定性の低下を示すことが観察され、この特性は、この部位での突然変異について観察される低下した比活性と関連する。他方、Asp519、Glu665、およびGlu1984についてのAlaおよびVal置換はすべて、高温で改善された安定性を示し、2つの前者の部位での突然変異を有する変異体は約20〜25分にわたって50%活性を保持し、一方、後者の部位での突然変異は、30分超にわたってこの活性レベルを維持する変異体をもたらした。適合させた曲線から得られた減衰速度値の比較(下記表1)は、第VIII因子熱安定性は、WTと比較して、Glu1984変異体について約2倍改善されたことを示し、Valへの突然変異は、Alaより若干好ましいように見える。
【0113】
温度範囲を評価する結果(図5B)から、Asp519、Glu665、およびGlu1984のAlaおよびValの両変異体は、試験した全ての温度で、WTと比較して2倍までの減衰速度の減少を一貫して示したことがわかった。しかし、単鎖形態とヘテロ二量体形態との両方が様々な比で存在することによって、1つの形態がより高い安定性を示す場合、これらの減衰速度結果に影響を及ぼし得る。本質的に全てヘテロ二量体形態であるKogenate第VIII因子を用いた対照実験(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Wakabayashiら, “Metal Ion-independent Association of Factor VIII Subunits and the Roles of Calcium and Copper Ions for Cofactor Activity and Inter-subunit Affinity,” Biochemistry 40:10293-10300 (2001))によって、WTの約2倍である減衰速度が得られ(図5B)、単鎖第VIII因子よりも高温に対して低い安定性を示すヘテロ二量体形態と一致した。したがって、測定された減衰速度は、明らかに、様々な第VIII因子形態中の単鎖および2本鎖含有量の不均一性に起因する。しかし、すべての変異体がWTと比較して関連性の低い単鎖第VIII因子を有する場合(図5Bを参照)、これらのデータは、これらの変異体の減衰速度値によって、突然変異体とWTとの間の安定性における増加が過小評価されることを示す。
【0114】
(表3)第VIII因子および第VIIIa因子減衰速度

速度減衰値の標準偏差は最小二乗曲線適合に基づいて推定され、熱安定性および第VIIIa因子減衰測定値については平均値の約10%以内であり、血漿安定性測定値については平均値の約15%以内である。括弧内の値は、WT値に対する値である。一文字コードを用いてアミノ酸残基を表示する、E(Glu)、D(Asp)、A(Ala)、およびV(Val)。
†測定せず。
‡WTの速度と比較してp<0.001(スチューデントのt検定)。
§WTの速度と比較してp<0.05(スチューデントのt検定)。
【0115】
実施例6:37℃での血漿中の第VIII因子安定性
より自然な条件下での第VIII因子安定性に対する突然変異の影響を試験するために、生理学的濃度付近のタンパク質(1nM)を、第VIII因子阻害物質欠損血友病A患者由来の(抗凝固)第VIII因子欠乏血漿中、37℃で4日間までインキュベートした。残留第VIII因子を、凝固一段階法を用いて毎日分析した。WT第VIII因子の活性は、Asp519Val変異体と同様に、2日後に約50%まで減少し、一方、Glu665Ala変異体は、活性減衰の速度において適度(約15%)の減少を示した(図6および表3)。しかし、Asp519Ala、Glu665Valおよび両Glu1984変異体についての活性値は、4日で初期値の≧50%であった。血漿インキュベーションから得られた結果は、主に高温で実施したインキュベーションと類似し、Glu665Val変異体および2つのGlu1984変異体は、機能の保持によって判定されるように、2つの反応条件下で安定性において有意な増加を示した。両Asp519変異体は高温で改善された安定性を示し、一方、Ala変異体だけが、血漿分析において改善を示した。
【0116】
実施例7:Glu272、Asp519、Glu665およびGlu1984変異体の第VIIIa因子減衰速度
前記結果は、埋没荷電残基の疎水性残基との置換と一致した突然変異は、一般的に向上した安定性を示す第VIII因子タンパク質を産生することを示す。これらの突然変異は、A2ドメインとA1もしくはA3との境界面または境界面付近であるので、A2サブユニットの解離速度を減少させることによって、第VIIIa因子の不安定性に正の影響を及ぼすことができると予想された。このメカニズムに起因する第VIIIa因子活性の損失率を、2つの条件下で評価した。第一の条件において、WTおよび第VIII因子変異体をトロンビンで活性化し、第IXa因子および第X因子を添加し、第Xa因子生成速度をモニターした後に、指定の時間で残りの補因子活性を測定した。第二の方法では、前記分析を、第VIII因子活性化前に第IXa因子の添加を加えて、Xase因子を直ちに形成できるように変更した。第VIIIa因子をXase因子複合体中に組み入れると、A2およびA3C1C2サブユニットをXaseと結合させる第IXa因子に適合したメカニズムによって、その減衰速度を10倍も減少させることにより、補因子活性が部分的に安定化されることが示されている(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Fayら, “Model for the Factor VIIIa-dependent Decay of the Intrinsic Factor Xase: Role of Subunit Dissociation and Factor IXa-catalyzed Proteolysis,” J Biol Chem. 271:6027-6032 (1996))。
【0117】
添加された第IXa因子の非存在下または存在下で得られた結果を図7Aおよび7Bにそれぞれ示す。第IXa因子の非存在下で、WT第VIIIa因子はその活性の50%を約8分で失い(図7A)、一方、この活性レベルは、第IXa因子が第VIII因子活性化中に含められている場合、約40分間持続した(図7B)。減衰速度値は、表3に示し、Xase因子の形成によって補因子活性の5倍を超える安定化を示した。変異体の評価によって、Glu272AlaおよびVal形態はどちらも、WT対照と比べて、第IXa因子の非存在下で、それぞれ2倍および3倍の減衰速度増加を有していることが明らかになった。これらの結果は、いずれかの突然変異とのサブユニット間親和性が弱くなったこと、おそらくは酸性側鎖が関与する、比較的弱い親和性結合相互作用の損失の結果を意味する。第IXa因子の存在下で、2つの変異体の減衰速度は、WTの減衰速度と本質的に区別できず、このことは、第IXa因子が含まれることによって、この残基での突然変異によって生成した有害な相互作用が排除されたことを示す。
【0118】
他の3つの部位(Asp519、Glu665およびGlu1984)での突然変異はすべて、第VIIIa因子減衰速度を減少させ、減少の程度は、変化した特定の残基および、一例においては置換残基に応じて変化する。Asp519での突然変異によって、減衰速度が約30%減少し、これは、第IXa因子が存在しない場合のAlaおよびVal変異体の両方と類似していた。これらの変異体の活性減衰速度は、第IXa因子の存在下で2倍を超えて減少し、このことは、突然変異と、酵素を結合する安定化効果との相乗効果を示唆する。Glu665Ala変異体は、2つのAsp519変異体と類似した値を示したが、Glu665Val変異体は、第IXa因子の非存在下および存在下で、それぞれ減衰速度の5倍および3倍の減少を示し、このことは、さらに大きな疎水性残基の置換によって、隣接する残基とのA2サブユニット保持のために、より有利な相互作用が得られたことを示唆する。最後に、両Glu1984変異体は、第IXa因子の非存在下で、WTと比較して、第VIIIa因子減衰において約4倍の減少を示し、第IXa因子が存在する場合には5〜8倍の減少を示した。向上した安定性の有意性が図7Bで見られ、この図は、いずれかのGlu1984変異体から構成されるXase因子において40分後に90%超の第VIIIa因子活性が残存することを示す。Glu1984でのAlaまたはValのいずれかとの反応の類似性は、両残基が十分耐性であることを示唆し、おそらくは、Valの存在下で若干強いサブユニット間親和性が達成される。全体的に、これらの結果は、荷電残基の疎水性残基での選択的置換後の改善されたA2サブユニット保持に起因する。第VIIIa因子安定性の有意な向上を示す。
【0119】
実施例1〜7の考察
前記実施例は、選択された荷電残基の、疎水性置換基との、A2ドメインを結合させることが予想される部位での置換の結果、可変的であるが、第VIII因子の安定性において、可変的であるが、一般的な増加が得られたことを示す。この安定性を、高温での活性保持ならびに補因子におけるA2サブユニット解離速度の減少にしたがって評価した。
【0120】
実施例1〜3の初期分析において、第VIII因子A2ドメイン境界面に局在化する30残基を、潜在的に水素結合パートナーを形成し得る2.8Å未満の空間的隔離に基づいた突然変異分析に関して選択した。30の荷電/極性残基はAla(またはTyr残基についてはPhe)に変異され、組換えタンパク質が安定に発現され、活性の損失率を測定した。調べた30残基のうちの14は、55℃で第VIII因子減衰速度および/またはWTに対して第VIIIa因子減衰の速度において2倍超の増加を示し、このことは、A1A2およびA2A3ドメイン境界面での複数の残基が第VIII因子の安定化に寄与することを示唆している。興味深いことに、調べた2つの酸性残基、Asp302およびGlu287では、プロ補因子および活性補因子形態の両方で、Alaに変異された場合、安定性が適度に向上した(2倍未満)。これらの酸性残基はどちらも、ヒト、イヌ、ブタ、マウス、ウサギ、ラット、およびコウモリ第VIII因子において保存されている。これらの初期結果は、これらの酸性側鎖が水素結合相互作用の安定化に寄与せず、むしろ、機能的安定性によって評価されるように、第VIII因子構造に対して若干有害であったことを示唆していた。
【0121】
これらの初期研究に基づいて、さらなる疎水性相互作用の形成を、機能獲得について評価した。実施例4〜7で調べた4つの酸性残基は、ヒト、イヌ、ブタ、マウス、ウサギ、およびコウモリ第VIII因子で保存され、一方、ラット因子においては、Glu665はAlaであり、Glu1984はThrである(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Swiss Institute of Bioinformatics, online analysis UniProtKB/Swiss-Prot Release 55.5 and UniProtKB/TrEMBL Release 38.5 (2008)を参照)。実施例4〜7の結果は、これらの残基のうちの3つ、Asp519、Glu665およびGlu1984は、Alaおよび/またはValと置換される場合、タンパク質安定性が向上したことを示す。実施例4〜7で評価した1つの酸性残基のみが、変異された場合に、活性に有害である結果をもたらした。Glu272でのAlaへの突然変異は、トロンビン生成パラメータ値が減少した低比活性第VIII因子形態をもたらし;AlaおよびVal置換の両方は、中程度に減少した熱安定性および、WTと比較して補因子において2〜3倍高いA2サブユニット解離速度を有していた。これらの観察結果から、Glu272は実際に隣接残基との結合相互作用に関与し、この部位でのその後の突然変異がこれらの相互作用を分断すると考えられる。この結論は、血友病Aデータベース(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Kemball-Cookら, “The Factor VIII Structure and Mutation Resource Site: HAMSTeRS version 4,” Nucleic Acids Res. 26:216-219 (1998); Kemball-Cook (MRC Clinical Sciences Centre), Haemophilia A Mutation Database (accessed July 2, 2008))の調査と一致し、これは、第VIII因子が減少した中/軽度表現型として位置272でのLys(電荷反転)またはGly(小さな側鎖)を記載している。後者の観察は、増加した血漿不安定性をもたらす突然変異と一致する。しかし、この部位でのAlaまたはValへの突然変異後の細胞培養物中の発現レベルに対してこれらの突然変異の有意な影響はなかった。反対に、Asp519、Glu665およびGlu1984での突然変異はデータベースに記載されていない。
【0122】
タンパク質は折り重なって、荷電もしくは極性部分が溶媒にさらされた状態にあり、一方、疎水性基は埋没された状態にある傾向がある(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Paceら, “Forces Contributing to the Conformational Stability of Proteins,” FASEB J. 10:75-83 (1996))。したがって、これらの残基が疎水性残基と置換される場合、Glu287、Asp302、Asp519、Glu665およびGlu1984で観察される機能獲得型突然変異に基づいて、これらの荷電残基は、A2ドメイン境界面で埋没していると考えられる。さらに、これらの結果は、これらの酸性残基が静電結合相互作用に寄与せず、WTタンパク質構造および/またはサブユニット相互作用を不安定化する可能性が高いことを示唆している。
【0123】
AlaまたはValのいずれかを用いた突然変異誘発の結果、疎水性残基が得られる(荷電酸性残基を置換する)ので、AlaまたはVal置換は、境界面での他の疎水性接触を安定化させる傾向がある。さらに、Val側鎖はAlaよりも大きく、したがって所与の部位での置換後の活性に対する影響を比較すると、この部位での残基充填および体積に対する洞察が得られる。例えば、Glu1984のいずれかの残基との置換によって、類似した結果が得られ、このことは、両者がこの部位で十分耐性があることを示唆し;一方、Glu665ValはGlu665Alaと比較して3倍減少した第VIIIa因子減衰速度を示し、このことは、Valの側鎖の体積が大きいほど、推定疎水性結合ポケットにおいてより良好に許容されることを示唆する。
【0124】
全体的に、実施例1〜7の結果は、以前はセルロプラスミンの高分解能構造との相同性に由来するモデルに限定され(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Pembertonら, “A Molecular Model for the Triplicated A Domains of Human Factor VIII Based on the Crystal Structure of Human Ceruloplasmin,” Blood 89:2413-2421 (1997))、近年は、ヒトの第VIII因子の中間分解能構造(3.75Å)に限定される(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Shenら, “The Tertiary Structure and Domain Organization of Coagulation Factor VIII,” Blood 111:1240-1247 (2008))、第VIII因子Aドメイン構造の理解に著しく寄与する。後者の構造によって水素結合相互作用(2.8Å未満)の帰属が可能にはならないが、この論文の著者は、第VIII因子のAドメインを、セルロプラスミンのドメイン上に高度の正確性で重ね合わせることができることを示している。
【0125】
セルロプラスミンモデルは、Asp302およびGlu287が水素結合相互作用に寄与できることを示唆するが、実施例1〜3の安定性研究は、これが起こる可能性が低いことを示している。その代わりに、これらの酸性側鎖は、疎水性環境中に埋没されていると考えられている。反対に、実施例4〜7から得られる結果は、Glu272が、A2ドメイン境界面での水素結合相互作用に寄与する可能性が高いという考えを裏付ける。その理由は、この電荷の損失が、第VIII(VIIIa)因子安定性を減少させるからである。実施例4〜7で評価した残りの3つの酸性残基は、相補性ドメイン上の隣接する残基由来の極性原子が、これらの残基のカルボキシル基付近に局在化していないように見える点で、モデルによって予想されるように、境界面で埋没していると思われる。むしろ、これらの基は、疎水性基に近いようであることが知られている。例えば、このモデルは、Asp519のカルボキシル酸素とThr275のメチル炭素は約4.2Å離れ、Glu665のカルボキシル酸素とVal1982のメチル炭素は約8.1Å離れ、Glu1984のカルボキシル酸素とVal663のメチル炭素は約6.2Å離れていると予想する。
【0126】
安定性の向上と補因子活性減衰速度の減少を示す第VIII因子変異体は、治療製剤の正の特質を示す。前者の特性は、その精製および形成中に活性タンパク質産生の増大を可能にし、その結果、全体的に高い比活性値が得られる。これらの試薬はまた、様々な細胞クリアランスメカニズムを除いて、WTに対してより長い循環半減期を有する可能性もある(図6を参照)。2つのグループが第VIII因子変異体に関してすでに報告しており、この報告では、補因子活性は、A2サブユニット解離速度を減少/消去することによって安定化された。どちらの場合においても、突然変異を用いて、A2ドメインを分子の他の領域と共有結合させた。一例において、A3C1C2ドメインと接触し、プロ補因子活性化後のA2ドメインまたはBドメインフラグメントのいずれかを放出するトロンビン切断部位が欠失したBドメインの断片を、A2ドメインと結合させることによって、不活化耐性第VIII因子を調製した(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Pipeら, “Characterization of a Genetically Engineered Inactivation-resistant Coagulation Factor VIIIa,” Proc Natl Acad Sci U S A 94:11851-11856 (1997),)。第二の場合において、近接近しているA3およびA2ドメイン中の選択された残基をCys残基と置換して、2つのドメイン間でジスルフィド架橋を形成し、したがって、トロンビン活性化後にA2がA3と共有結合性のままであるようにした(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Galeら, “An Engineered Interdomain Disulfide Bond Stabilizes Human Blood Coagulation Factor VIIIa,” J Thromb Haemost. 1:1966-1971 (2003); Radtkeら, “Disulfide Bond-stabilized Factor VIII has Prolonged Factor VIIIa Activity and Improved Potency in Whole Blood Clotting Assays,” J Thromb Haemost. 5:102-108 (2007))。後者の突然変異体も、トロンビン生成法において活性化の増大を示すが、これらの研究で用いられた反応条件は、生理学的条件以下(0.5nM未満)の濃度の第VIII因子を使用した。
【0127】
生理学的第VIII因子レベル(1nM)を用いた実施例1〜7の結果は、WTとさらに高い安定性を示す変異体との間でほとんど差を示さなかったが、Glu272Alaでは、その低い比活性と一致して減少したトロンビン生成パラメータが得られた。高安定性変異体に関して有意な差が観察されなかったことは、反応条件における差および/またはこれらの突然変異がA2ドメインを共有結合しないこと、ならびに第VIIIa因子減衰速度が十分に減少しないことを反映する。
【0128】
実施例1〜7に示した結果は、酸性残基を疎水性残基に変換する1つの点突然変異後に達成できる補因子不活性の速度が数倍減少することを示す。これらの場合のそれぞれで、これらの突然変異は境界面で起こり、この場合、変更された残基が、埋没して、表面に露出しない可能性が高く、タンパク質内の相互作用を変更しない。事前の結果に基づいて、Glu1984ValおよびGlu1984Ala変異体の補因子形態ならびにWT補因子は、Arg336およびArg562での活性化タンパク質C触媒切断によって測定されるような類似した不活性化速度を示す(内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Varfajら, “Residues Surrounding Arg336 and Arg562 Contribute to the Disparate Rates of Proteolysis of Factor VIIIa Catalyzed by Activated Protein C,” J. Biol. Chem. 282(28):20264-72 (2007))。このことは、これらの高い安定性変異体の下方調節は、WT補因子とほぼ同じ方法で、タンパク質C経路によって進行するはずであるという考えを裏付ける。したがって、本発明の安定化した変異体は、前記の不活性化耐性突然変異体に関連する問題はないはずである。
【0129】
実施例8:二置換および三置換第VIII因子変異体の安定性分析
付加的効果もしくは相乗的効果のいずれが第VIII(VIIIa)因子安定性のさらなる向上をもたらすかを決定するために、前記実施例で記載した点突然変異の組み合わせを、材料および方法で記載したのと同じ手順を用いて調製した。特に、残基Asp519、Glu665、およびGlu1984のAlaまたはVal置換を有する二重または三重複合突然変異体を調製した。これらの複合突然変異体(アミノ酸は一文字コードを用いて識別される)としては:D519AE665A、D519AE665V、D519AE1984A、D519AE1984V、D519VE665V、D519VE1984A、D519VE1984V、E665AE1984A、E665AE1984V、E665VE1984A、E665VE1984V、D519AE665VE1984A、D519VE665VE1984A、D519VE665VE1984Vが挙げられる。D519VE665A第VIII因子はこの分析から除外した。その理由は、この突然変異体がELISAおよびウェスタンブロット結果において非定型の特性を示したからである。
【0130】
三重変異体を生成させるために、D519AまたはD519Vを、E665VE1984AまたはE665VE1984Vのいずれかと組み合わせた。他の組み合わせは除外した。その理由は、E665AE1984AおよびE665AE1984V二重変異体は、各単一突然変異体と比較して、第VIII因子と第VIIIa因子との両方の安定性を向上させなかったからである。D519AE665VE1984Vを用いた結果は、D519VE665Aについて観察される同じ理由から除外した。
【0131】
Asp519での突然変異(AlaもしくはVal)をGlu665またはGlu1984いずれかでの突然変異と結合させた新規突然変異体の第一群(グループA)は、比活性については正常値のままであった(80%超野生型(WT)値、図8)。興味深いことに、D519AE665A、D519VE665V、D519VE1984A、およびD519VE1984Vは、凝固一段階法によって測定されるWT第VIII因子と比較して約1.8倍までの有意に増加した比活性値を示した(図8)。Glu665およびGlu1984での突然変異の組み合わせである突然変異体の第二群(グループB)の比活性は、意外にも、若干WT値よりも高かったE665VE1984Aを除いては、WT第VIII因と比較して約2倍までの比活性の減少を示した(図8)。第3群(グループC)は三重突然変異であり、一段階分析によって通常から中程度に増加した活性を示した(D519VE665VE1984V)。しかし、二段階分析によって測定されるD519VE665VE1984Vの活性は、有意に減少した。Asp519はA1およびA2境界面に位置し、一方、Glu665およびGlu1984はA2およびA3境界面に位置するので、グループBと比較して上昇したグループA突然変異の比活性の傾向は、立体構造に影響を及ぼし、活性な補因子形態を保持するA1−A2連結でのさらに有利な相互作用に起因すると考えられる。
【0132】
図9は、55℃で実施された第VIII因子熱安定性実験から得られた結果をまとめたものである、複合突然変異について得られた速度を、実施例5から得られた単一突然変異についてのデータを用いて、特定の組み合わせにおける最良の単一突然変異体の速度値と比較した(図5A)。図9はまた、第VIII因子減衰速度についての実際の値も示す(表4も参照)。相対的減衰速の減少の程度は、突然変異の組み合わせについて観察される向上に関連するようである。グループAにおいて、突然変異体D519AE665A、D519AD665V、およびD519VE665Vは、安定性において有意な向上(減衰速度の減少)を示し、突然変異体のほとんどはまた、WT値の約50%である絶対的減衰速度を維持した。他方、グループB突然変異体の2つについての相対的速度は、より良好な単一突然変異と比較して、若干増加した(E665AE1984AおよびE665AE1984V)。グループCにおいて、突然変異体D519AE665VE1984AおよびD519VE665VE1984Aは、速度において有意な変化を示さず、一方、D519VE665VE1984Vについての速度値は若干増加した。
【0133】
興味深いことに、突然変異の組み合わせについて観察される安定性の向上は、第VIIIa因子形態についてより容易に観察された(図10)。安定性が高い突然変異体についての第VIIIa因子減衰分析の感度を増大させるために、前記実施例におけるよりもインキュベーションにはより低濃度の第VIIIa因子(1.5nM)を使用した。単一突然変異体と比べて約4倍までの大きな安定性向上が、すべてのグループA突然変異体について観察された。D519VE665VおよびD519VE1984Aの第VIIIa因子減衰速度についての実際の値は、それぞれWT第VIII因子の14%および12%であった(図10および表4)。グループB突然変異体は一般に、E665AE1984AおよびE665AE1984Vとの対合でのより良好な個々の突然変異と比べた場合に、不十分な結果をもたらし、相対的減衰速度値において、それぞれ約2.2倍および約2.7倍の増加を示した。三重突然変異(グループC)は、最大の第VIIIa因子安定性向上を示し、D519VE665VE1984Aについて最大の安定性が観察され、これは、WTの約10%の減衰速度を示した(図10および表4)。
【0134】
(表4)複合突然変異体の第VIII因子および第VIIIa因子の減衰速度ならびに活性値

減衰値の標準偏差は、最小二乗曲線適合に基づいて推定され、平均値の約10%以内である。
括弧内の値は野生型に対する値である。
単位/μg.
生成した第Xa因子(nM)/分/第VIII因子(nM)。
前記表3から再現されたデータ。
【0135】
選択された突然変異体に関してトロンビン生成法を実施し、結果を図11A〜Bに示す。最終濃度1nMの第VIII因子を用いて単一突然変異体を試験した場合、トロンビン生成特性に著しい改善はなかった(前述の材料および方法、ならびに実施例4を参照)。より安定な第VIII因子突然変異体をより良好に比較するために、低い第VIII因子濃度(0.2nM)を使用した。この分析から得られた結果は、WT第VIII因子と比較して、D519VE665Vが遅延時間およびピーク時間において約20%の減少を有し、またピーク高さが約2.3倍増加し、内因性トロンビンポテンシャル(ETP)が約1.5倍増加することを示した(図11A〜B)。D519AE665V、D519VE1984A、およびD519VE665VE1984Aの遅延時間およびピーク時間値は、WTに対して有意に変化しなかったが、ピーク高さおよびETP値は、WTよりも有意に大きかった(約20%〜70%)。全体的に、これらの結果から、選択された4つの複合突然変異体(すべて向上した第VIIIa因子安定性を有する)は、改善されたトロンビン生成特性を示したことがわかる。この観察から、これらの突然変異体は、生理学的状況で、単位濃度の第VIII因子あたり増大したトロンビン生成の能力が高いことがわかる。
【0136】
実施例9:高比活性Glu113Ala(E113A)突然変異と組み合わせた、Asp519、Glu665、およびGlu1984でのAlaまたはVal突然変異体
E113A突然変異は、凝固一段階法によって判断されるように、第VIII因子比活性を増大させることが知られている(それぞれの内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Fayらに対する米国特許出願公開第10/581,471号;Wakabayashiら, “A Glu113Ala Mutation within a Factor VIII Ca(2+)-Binding Site Enhances Cofactor Interactions in Factor Xase,” Biochemistry 44:10298-10304 (2005))。高安定性と高比活性との両方を有する第VIII因子の生成は、血友病の治療において有効な治療への応用のための唯一種の試薬であり、E113Aと、先の実施例に記載した高安定性突然変異体との複合突然変異の効果を分析した。
【0137】
Asp519、Glu665、およびGlu1984でのAlaまたはVal突然変異体を、E113A突然変異と組み合わせて、材料および方法に記載した同じ手順を用いて調製した。これらの二重変異体(アミノ酸は、一文字コードを用いて識別する)としては:E113AD519A、E113AD519V、E113AE665A、E113AE665V、およびE113AE1984Vが挙げられる。
【0138】
複合突然変異体の一段階分析を用いて決定された比活性値は、二段階分析による活性の正常レベルを維持しつつ、WT第VIII因子よりも約2〜約3.3倍高かった。これらの結果から、Asp519、Glu665、またはGlu1984での突然変異が、E113A突然変異について観察される活性向上に悪影響を及ぼさなかったことがわかった(図12A)。加えて、高安定性突然変異体と組み合わせたE113Aの第VIII因子および第VIIIa因子減衰速度は、本来の単一高安定性突然変異体のそれぞれの値と有意に異ならず(図5B〜C;表5を参照)、このことは、E113A突然変異が、これらの突然変異体についての向上した安定性パラメータに影響を及ぼさなかったことを示唆している。
【0139】
(表5)第VIII因子および第VIIIa因子減衰速度ならびに活性値

減衰値の標準偏差は、最小二乗曲線適合に基づいて推定され、平均値の約10%以内である。
括弧内の値は、野生型に対する値である。
単位/μg。
生成した第Xa因子(nM)/分/第VIII因子(nM)。
前記表3から再現されたデータ。
【0140】
前記結果から、増大した比活性と、向上した第VIII因子/第VIIIa因子安定性との両方によって特徴づけられる組換え型第VIII因子を生成させる目的で、E113Aの突然変異を、これまで記載した安定性が増大した突然変異のいずれかと組み合わせることができる。これは、E113A(または、内容の全てが、参照することにより本明細書に組み込まれる、Fayらに対する米国特許出願公開第10/581,471号に記載されるような他の適したE113置換)と、本明細書に記載する種類の単一または複数の安定性が向上した突然変異体との組み合わせを包含する。
【0141】
好ましい実施形態を本明細書において表示し、詳細に記載したが、本発明の趣旨から逸脱しないで、様々な修正、付加、置換などが可能であり、これらはしたがって、以下の特許請求の範囲において定義される本発明の範囲内に含まれると見なされることが、当業者には明らかであろう。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第VIII因子と第VIIIa因子との両方の安定性の向上をもたらす1つ以上の突然変異を含む、組換え型第VIII因子であって、
1つ以上の突然変異が、A1A2もしくはA2A3ドメイン境界面のいずれかまたは両方で、1つ以上の荷電アミノ酸残基の疎水性アミノ酸残基との置換を含む、組換え型第VIII因子。
【請求項2】
前記荷電アミノ酸残基が、GluまたはAspのいずれかであり、
前記疎水性アミノ酸置換が、Ala、Val、Ile、Leu、Met、Phe、またはTrpのうちの1つである、
請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項3】
前記1つ以上の突然変異が、野生型第VIII因子のGlu287残基の置換、野生型第VIII因子のAsp302残基の置換、野生型第VIII因子のAsp519残基の置換、野生型第VIII因子のGlu665残基の置換、野生型第VIII因子のGlu1984残基の置換、またはこれらの組み合わせを含む、請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項4】
前記Asp302残基の置換がD302Aである、請求項3に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項5】
前記Glu287残基の置換がE287Aである、請求項3に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項6】
前記Glu665残基の置換がE665AまたはE665Vである、請求項3に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項7】
前記Asp519残基の置換がD519AまたはD519Vである、請求項3に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項8】
前記Glu1984残基の置換がE1984AまたはE1984Vである、請求項3に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項9】
前記1つ以上の突然変異が、Glu665残基、Asp519残基、およびGlu1984残基から選択される2つ以上の置換を含む、請求項3に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項10】
前記2つ以上の置換が、D519VE665V、D519AE665V、D519VE1984A、E665VE1984A、E665AE1984V、D519AE665VE1984A、D519VE665VE1984A、またはD519VE665VE1984Vを含む、請求項9に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項11】
ドメインA1、A2、A3、C1、およびC2、またはこれらの部分からなる、請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項12】
ドメインA1およびA2が重鎖上に存在し、
ドメインA3、C1、およびC2が軽鎖上に存在する、
請求項11に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項13】
ヒト第VIII因子由来の1つ以上のドメイン、またはその部分、および非ヒト哺乳動物第VIII因子由来の1つ以上のドメイン、またはその部分を含む、請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項14】
実質的に純粋である、請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項15】
(i)第IXa因子および第X因子の一方もしくは両方に対する組換え型第VIII因子の親和性を向上させるように修飾された第IXa因子および/または第X因子結合ドメイン;
(ii)培養物中の分泌を向上させる修飾された部位;
(iii)その循環半減期を向上させる、修飾された血清タンパク質結合部位;
(iv)その抗原性および/または免疫原性を減少させるのに有効な少なくとも1つのグリコシル化認識配列;および
(v)組換え型第VIIIa因子の比活性を改善する、修飾されたカルシウム結合部位
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項16】
Glu113残基の置換が、活性化された第VIIIa因子の活性を向上させる、野生型第VIII因子の前記Glu113残基の置換
をさらに含む、請求項1に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項17】
前記1つ以上の突然変異が、野生型第VIII因子のGlu287残基の置換、野生型第VIII因子のAsp302残基の置換、野生型第VIII因子のAsp519残基の置換、野生型第VIII因子のGlu665残基の置換、野生型第VIII因子のGlu1984残基の置換、またはこれらの組み合わせを含む、請求項16に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項18】
前記置換が、E113AD519A、E113AD519V、E113AE665A、E113AE665V、またはE113AE1984Vを含む、請求項17に記載の組換え型第VIII因子。
【請求項19】
請求項1に記載の組換え型第VIII因子を含む、薬学的組成物。
【請求項20】
安定剤をさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項21】
送達ビヒクルをさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項22】
薬学的に許容される担体をさらに含む、請求項19に記載の薬学的組成物。
【請求項23】
請求項1に記載の組換え型第VIII因子をコードする、単離された核酸分子。
【請求項24】
前記1つ以上の突然変異が、野生型第VIII因子のGlu287残基の置換、野生型第VIII因子のAsp302残基の置換、野生型第VIII因子のAsp519残基の置換、野生型第VIII因子のGlu665残基の置換、野生型第VIII因子のGlu1984残基の置換、またはこれらの組み合わせを含む、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項25】
前記Asp302残基の置換がD302Aである、請求項24に記載の単離された核酸分子。
【請求項26】
前記Glu287残基の置換がE287Aである、請求項24に記載の単離された核酸分子。
【請求項27】
前記Glu665残基の置換が、E665AまたはE665Vである、請求項24に記載の単離された核酸分子。
【請求項28】
前記Asp519残基の置換が、D519AまたはD519Vである、請求項24に記載の単離された核酸分子。
【請求項29】
前記Glu1984残基の置換が、E1984AまたはE1984Vである、請求項24に記載の単離された核酸分子。
【請求項30】
前記1つ以上の突然変異が、Glu665残基、Asp519残基、およびGlu1984残基から選択される2つ以上の置換を含む、請求項24に記載の単離された核酸分子。
【請求項31】
前記2つ以上の置換が、D519VE665V、D519AE665V、D519VE1984A、E665VE1984A、E665AE1984V、D519AE665VE1984A、D519VE665VE1984A、またはD519VE665VE1984Vを含む、請求項30に記載の単離された核酸分子。
【請求項32】
前記組換え型第VIII因子が、
(i)第IXa因子および第X因子の一方もしくは両方についての組換え型第VIII因子の親和性を向上させるように修飾された第IXa因子および/または第X因子結合ドメイン;
(ii)培養物中の分泌を向上させる修飾された部位;
(iii)その循環半減期を向上させる、修飾された血清タンパク質結合部位;
(iv)その抗原性および/または免疫原性を減少させるのに有効な少なくとも1つのグリコシル化認識配列;ならびに
(v)組換え型第VIIIa因子の活性を改善する、修飾されたカルシウム結合部位
のうちの1つ以上をさらに含む、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項33】
前記核酸がRNAである、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項34】
前記核酸がDNAである、請求項23に記載の単離された核酸分子。
【請求項35】
請求項34に記載のDNA分子を含む、組換えDNA発現システム。
【請求項36】
前記DNA分子が、プロモーターに対してセンス配向である、請求項35に記載の組換えDNA発現システム。
【請求項37】
請求項23に記載の核酸分子を含む、宿主細胞。
【請求項38】
請求項34に記載のDNA分子を含む、宿主細胞。
【請求項39】
前記DNA分子が発現システム中にある、請求項38に記載の宿主細胞。
【請求項40】
前記宿主細胞が、動物細胞、細菌細胞、昆虫細胞、真菌細胞、酵母細胞、植物細胞、または藻類細胞である、請求項38に記載の宿主細胞。
【請求項41】
組換え型第VIII因子を作製する方法であって:
請求項38に記載の宿主細胞を、宿主細胞が組換え型第VIII因子を発現する条件下で増殖させる段階;および
組換え型第VIII因子を単離する段階
を含む方法。
【請求項42】
前記増殖させる段階が、増殖培地中、インビトロで行われる、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記増殖培地がフォンヴィレブランド因子を含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記宿主細胞が、フォンヴィレブランド因子をコードする導入遺伝子を含む、請求項43に記載の方法。
【請求項45】
前記組換え型第VIII因子が増殖培地中に分泌され、
前記単離する段階が、組換え型第VIII因子を増殖培地から単離する段階を含む、
請求項44に記載の方法。
【請求項46】
組換え型第VIII因子を細胞片から単離する段階を含む前記単離する段階の前に、宿主細胞を破砕する段階
をさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項47】
血友病Aについて動物を治療する方法であって:
血友病Aを示す動物が血管損傷後に有効な血液凝固を示す、有効量の請求項1に記載の組換え型第VIII因子をこの動物に投与する段階
を含む、方法。
【請求項48】
前記有効量が、動物の体重1kgあたり約10単位から約50単位までの間を含む、請求項47に記載の方法。
【請求項49】
前記動物が哺乳動物である、請求項47に記載の方法。
【請求項50】
前記動物が、ヒト、ラット、マウス、モルモット、イヌ、ネコ、サル、チンパンジー、オランウータン、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタ、ヤギ、ウサギ、およびニワトリからなる群から選択される、請求項47に記載の方法。
【請求項51】
前記投与する段階を周期的に繰り返す段階をさらに含む、請求項47に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2A】
image rotate

【図2B】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4A】
image rotate

【図4B】
image rotate

【図4C】
image rotate

【図4D】
image rotate

【図5A】
image rotate

【図5B】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7A】
image rotate

【図7B】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11A】
image rotate

【図11B】
image rotate

【図12A】
image rotate

【図12B】
image rotate

【図12C】
image rotate


【公表番号】特表2011−502478(P2011−502478A)
【公表日】平成23年1月27日(2011.1.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−532092(P2010−532092)
【出願日】平成20年7月25日(2008.7.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/071170
【国際公開番号】WO2009/058446
【国際公開日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【出願人】(507245021)ユニバーシティー オブ ロチェスター (9)
【Fターム(参考)】