説明

安頭具

【課題】患者が車椅子に乗ったままの状態で、或いは、往診先で、患者が自宅の椅子に座ったままの状態で、頭部を安定に保持して、該治療を受けることができるようにした安頭具を提供する。
【解決手段】安頭台30と、安頭台30が着脱自在に装着される安頭台固定板40とから成り、安頭台固定板40は椅子の背凭れに立掛け可能である。患者が椅子に座ったままの状態で、背中を少し前方に動かすだけで、安頭台固定板40を患者の背中と椅子の背凭れの間に上方より挿入することにより、安頭台30を設定することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車椅子の患者や訪問介護を受ける患者に対して、車椅子又は椅子に座ったままの状態で、患者の頭部を安定して支持固定するための持ち運び可能な安頭具に関する。
【背景技術】
【0002】
図3は、車椅子の患者の歯科治療を行うのに用いて好適な安頭台の一例を示す図で(特許文献1)、図中、1は車椅子、10は安頭台で、該安頭台10は、車椅子1の把持部2,2間に着脱可能に装着されるアーム11を有し、該アーム11に安頭台10が装着されている。車椅子1の把持部2,2にアーム11の両端12,12を固定することで、車椅子1に安頭台10を固定することができ、患者は車椅子1に乗ったままの状態で、歯科治療を受けることができる。
【0003】
上記安頭台は、車椅子の患者に対して、患者が車椅子に乗ったままの状態で、患者の姿勢を安定して固定し、所望の治療を行うことができるものであるが、最近、高齢化の時代を迎え、車椅子の患者ばかりでなく、医師が患者の家庭に赴いて診療を行う往診治療が多くなってきている。
【0004】
図4は、往診用に開発された安頭台で(特許文献2)、図中、20は安頭台で、該安頭台20は、両側が患者の頭部を押え込むように形成されたクッション部材21と、該クッション部材21の両側を支持する一対のクッション支持支柱22R,22Lとから成り、これらクッション支持支柱22R,22Lの頂部にはクッション部材21の軸21aが挿通される縦長のスリット孔23a(23b)が設けられ、このスリット孔23a(23b)に沿って軸21aを上下して、クッション部材21の高さを調整可能にしている。なお、軸21aの両端にはねじ穴が設けられており、このねじ穴にねじ24R(24L)を螺合して、クッション部材21を支持支柱22R,22Lに固定できるようにしている。
【0005】
上述のように、歯科治療において、車椅子の患者に対しては、車椅子に着脱自在に設置可能な安頭台を提供し、患者が車椅子に乗ったままの状態で、歯科治療をうけることができるようにし、往診診療に対しては、往診先まで持参し、患者の頭部を安定して保持可能な安頭台を提供し、患者を寝状態にしたままの状態で診療できるようにした安頭台が提案されている。
【0006】
而して、車椅子の患者や訪問介護を受ける患者に対し、頭部を後傾させる処置(歯科治療、接触嚥下指導など)を行う際、現在では通常、患者の頭を固定するため、衛生士、看護士ら(アシスタント)が患者の後ろに回って患者の頭を支える等して、診療を行っている。しかし、患者の頭部を簡単に支えることができれば、アシスタントの負担と、患者側の不快感が減り、アシスタントは他の仕事をすることができ、作業効率が向上する。
【0007】
また、最近では、高齢化が進み、往診先において、寝起きの動作が不自由な老人が多く、そのため、自宅の椅子に座ったままの状態での診療を希望する患者が多く、一方、術者もその方(立位での診療の方)が診療しやすく、往診先での立位の診療が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】実開平7−7626号公報
【特許文献2】特開2002−345906号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述のごとき実情に鑑みてなされたもので、患者が車椅子に乗ったままの状態で、或いは、往診先で、患者が自宅の椅子に座った状態で該治療を受けることができるようにした安頭具を提供することを目的としてなされたものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、請求項1の発明は、安頭台と、該安頭台が着脱自在に装着される安頭台固定板とから成り、前記安頭台固定板は椅子の背凭れに立掛け可能であることを特徴としたものである。
【0011】
請求項2の発明は、請求項1の発明において、前記安頭台は、該安頭台を上端に支持する安頭台支持杆を有し、前記安頭台固定板は、裏面に前記安頭台支持杆が挿通固定される安頭台支持杆挿入固定部を有し、該安頭台支持杆挿入固定部に前記安頭台支持杆を挿通し、固定するようにしたことを特徴としたものである。
【0012】
請求項3の発明は、請求項1の発明において、前記安頭台固定板は、表面上方に磁石又は面ファスナーを有し、前記安頭台は、裏面に前記磁石又は面ファスナーと共働して該安頭台を前記安頭台固定板に接合する磁石又は面ファスナーを有することを特徴としたものである。
【0013】
請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれかの発明において、前記安頭台は、前記安頭台固定板に対して高さ位置を調節して取り付け可能であることを特徴としたものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明によると、車椅子の患者は勿論、往診先においても、患者は椅子に座ったままの状態で、頭部を安定に保持されて診療を受けることができるので、診療に当って、患者は寝起き等の移動をすることなく診療を受けることができ、患者の負担を減らし、患者に不快感を与えることなく診療を行うことができる。
【0015】
診療中、アシスタントは、患者の頭部を押えている必要がないので、他の作業をすることができ、作業効率が向上する。また、術者は、往診先において、立位での診療が可能となり、楽な体勢で診療を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明による安頭具の一実施例を説明するための要部構成図である。
【図2】本発明による安頭具の他の実施例を説明するための要部構成図である。
【図3】従来の車椅子の患者に適合した安頭台の例を説明するための図である。
【図4】従来の往診診療に用いるのに適した安頭台の例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1は、本発明による安頭具の一実施例を説明するための要部構成図で、図中、30は安頭台、40は該安頭台30を着脱自在に固定するための安頭台固定板で、該安頭台固定板40の裏面には、安頭台の支持杆31を挿脱、固定するための安頭台支持杆挿入固定部41を有する。安頭台30と安頭台固定板40は、往診時、取り外して別体として持ち運び、往診先にて図示のように組み立て、安頭台固定板40を椅子の背凭れに立て掛けて使用する。患者は、背凭れから少し前方に動かすのみで、安頭台40を上方から患者の背中と背凭れの間に挿入することができる。
【0018】
安頭台30は、安頭台固定板40に対して、上下方向(矢印方向)に高さ調整可能となっており、患者の体形、椅子の高さ等に応じて、治療しやすい高さに調整可能になっている。また、安頭台固定板40は、例えば、図示のように、両側に運搬用の穴42a,4bが設けられている。また、持ち運びが楽になるように、軽量素材(例えば、カーボン、木材、アルミ合金等)で形成されている。なお、安頭台30は、医院内において治療椅子に取り付けられて使用されている安頭台を取り外して使用することができ、経済的である。
【0019】
図2は、本発明の他の実施例を説明するための要部構成図で、この実施例は、安頭台固定板40の表面上部側に磁石、面ファスナー等の接着剤を有し、同時に、これに対して、安頭台30の裏面側に磁石、面ファスナー等を有し、これらによって、安頭台30を安頭台固定具40に対して着脱自在に、かつ、高さ位置を調整して取り付け可能にしたものである。
【0020】
上述のように、本発明によると、車椅子の患者に対しても、往診先での患者に対しても、椅子に座ったままの状態で頭部を安定に保持して診療を行うことができ、診療に当って、患者は、身体を移動させる必要がないので、移動に伴う苦痛を伴うことなく、診療を受けることができる。
【0021】
術者は、診療しやすい立位で診療を行うことができ、アシスタントは、患者の頭部を押えている必要がないので、その分、他の作業をすることができ、診療を効率よく行うことができる。
【符号の説明】
【0022】
1…車椅子、2…車椅子の把持部、10…安頭台、11…安頭台支持アーム、20…安頭台、30…安頭台、31…安頭台支持杆、40…安頭台固定板、41…安頭台支持杆挿入固定部、42a,42b…持ち運び用の孔、43…磁石又は面ファスナー。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
安頭台と、該安頭台が着脱自在に装着される安頭台固定板とから成り、前記安頭台固定板は椅子の背凭れに立掛け可能であることを特徴とする安頭具。
【請求項2】
前記安頭台は、該安頭台を上端に支持する安頭台支持杆を有し、前記安頭台固定板は、裏面に前記安頭台支持杆が挿通固定される安頭台支持杆挿入固定部を有し、該安頭台支持杆挿入固定部に前記安頭台支持杆を挿通し、固定するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の安頭具。
【請求項3】
前記安頭台固定板は、表面上方に磁石又は面ファスナーを有し、前記安頭台は、裏面に前記磁石又は面ファスナーと共働して該安頭台を前記安頭台固定板に接合する磁石又は面ファスナーを有することを特徴とする請求項1に記載の安頭具。
【請求項4】
前記安頭台は、前記安頭台固定板に対して高さ位置を調節して取り付け可能であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の安頭具。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate