説明

官能化ポリオレフィン、湿分硬化型(moisturecurable)ポリオレフィン樹脂およびそれらを製造する方法

官能化ポリオレフィンを調製する方法を記載する。本発明の方法は、(i)ポリオレフィン、(ii)官能基を含有する化合物、ならびに(iii)式(I)Xn-Y-Zm:式中、Yはコア部分であり;Zは炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含有する部分であり;XはZと異なる部分であり、かつXとYとの間の結合は単結合であってもまたは二重結合であってもよく;nは0より大きいまたは0と等しい整数であり;mは2より大きいまたは2と等しい整数であり;およびm+nはYの原子価までの数に等しい、を有する補助試薬(coagent)化合物を反応させる段階を含み、ここで(a)mが2でありかつnが0である場合には、該方法は、ポリオレフィンと補助試薬を最初に反応させて生成物を形成し、その後生成物を官能基を含有する化合物と反応させる段階を含み、および(b)官能基を含有する化合物は、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である。本発明はまた、このような方法によって製造される官能化ポリオレフィンに関する。官能化ポリオレフィンは、改善された化学的特性および物理的特性を有し、例えば、包装産業および自動車産業に適用されるコンポジットおよびブレンドを調製する際に使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明の局面の1つにおいて、本発明は、好ましくは、フリーラジカル化学によって官能化ポリオレフィンを調製する方法に関する。本発明の別の局面において、本発明は官能化ポリオレフィンに関する。本発明のさらに別の局面において、本発明は、特にケイ酸含有粒状物質(例えば、繊維)に共有結合する樹脂などの湿分硬化型(moisture curable)ポリオレフィン樹脂に関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本願は、35 U.S.C. §119(e)に準拠して、その内容が参照により本明細書に組み入れられる、2004年11月8日提出の仮特許出願S.N. 60/625,594号の恩典を主張する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
従来技術の説明
ポリオレフィンコンポジットおよびブレンドは多数の適応を有する。ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマーおよびポリイソブチレンの、コンポジットおよびブレンドは商業上特に興味深い。例えば、ポリプロピレンは多数の包装および自動車適用において優れた材料である。
【0004】
近年、目的の用途に関してベースポリマーの化学的特性および/または物理的特性を改善および/または最適化する目的として官能化ポリマーに関心が寄せられている。
【0005】
ポリオレフィンに反応性および/または極性の官能基を導入すること(本明細書において「修飾する」と呼ばれる反応)は、得られるポリマーおよび化合物の化学的特性および物理的特性を大幅に強化することができる。従って、従来のポリオレフィンに無水物、エステル、アミド、ウレタン、ヒドロキシル、アミノ、エーテル、シリル-エーテル、エポキシドおよびアルコキシシラン基などの部分を導入するための費用効率が良い方法を手に入れることは有利である。
【0006】
無水マレイン酸、ビニルシランおよびアクリラートモノマーを使用するラジカル媒介性ポリマー修飾は、官能化商品材料を調製するための従来の方法である。しかし、これらのラジカル媒介性修飾は、典型的には、特に高分子量ポリオレフィンに関してはいくつかの不都合な結果を招く。
【0007】
具体的には、ポリオレフィンがポリプロピレン、ポリイソブチレン等である場合には、この種の官能基をグラフトするために使用されるフリーラジカル化学により、ポリオレフィンの分子量が大幅に低下することがある。得られる修飾ポリオレフィン生成物は粘度が低く、機械的特性が比較的不良であり、多数の産業用適用に不適当となることがある。
【0008】
例えば、フリーラジカルグラフト修飾ポリプロピレンおよび/またはポリイソブチレン樹脂は粘度が低く、多数の産業用適用に不適当である。市販のグラフト修飾ポリプロピレン樹脂はポリマーブレンドおよびコンポジットの相溶化剤として使用されるが、これらの材料は分子量が小さいので(崩壊過程の結果)、多数の消費材における使用が不可能になっている。さらに、樹脂の機械的特性もグラフト過程によって大幅に低下されることがある。
【0009】
従って、ポリオレフィンの従来のラジカル媒介性修飾方法は、ポリマーの分子量を変化させる(すなわち、ポリオレフィンの分子量を低下する)。これに対応してポリマー生成物の粘度が変化し、その有用な適用範囲が大幅に削減される。
【0010】
崩壊およびラジカル結合(combination)の影響または程度を最小にする公知の方法は、出発樹脂の慎重な選択および試薬濃度の慎重な制御である。しかし、これらの方法は、単独であっても、併用であっても、崩壊程度を満足なレベルに制限しない。
【0011】
末端二重結合を含有するポリブテンを有機チオールで修飾することが公知である。例えば、欧州特許第0,342,792B号(特許文献1)は、炭素-炭素二重結合を含有するポリブテンと有機チオールを反応させて、チオエーテル官能基を有するポリブテンを形成することを教示している。この特許は、フリーラジカル条件下においてこの反応を実施することおよび溶媒の非存在下で実施することができることを教示している。しかし、教示されている反応は、200〜10,000、好ましくは、400〜2500の範囲の分子量を有するポリブテンに制限されている。その説明は、分子量が非常に小さいポリブテンを使用すると揮発性が比較的大きい付加生成物が生じるが、分子量が非常に大きいポリブテンは付加反応の収率が悪いことを教示している。
【0012】
「官能化ポリプロピレンブレンド相溶化剤(Functional Polypropylene Blend Compatibilizers)」、Markomol. Chem, Macromol. Symp. 48/49, 317-332 (1991)[Mulhaupt et al. (Mulhaupt)](非特許文献1)は、モノオレフィン末端ポリプロピレンから誘導される、硫化物を含む末端官能基を含有する種々の単官能基ポリプロピレンを教示している。Mulhauptは、平均分子量約900の硫化物末端ポリプロピレンを形成する方法を教示している。しかし、Mulhauptは、フリーラジカル誘導性の付加反応はチオール化合物を使用して実施には成功しているが、二重結合変換は不完全であることが多いことを注意している。従って、Mulhauptによって教示される方法は、100%ゲル化およびケイ酸含有粒状物質への修飾ポリマーの定量的な結合を達成していない。
【0013】
欧州特許第0,342,792B号(特許文献1)およびMulhauptは、低分子量のポリブテンまたはポリプロピレンとチオールを反応させることを教示しているが、この方法はポリエチレンなどの高分子量ポリオレフィンに適用されていない。さらに、これらの参照文献はどちらも、湿分硬化(moisture cured)されうる官能化ポリオレフィンを教示していない、または示唆していない。
【0014】
高分子量ポリマー樹脂は、有利なことに、湿分硬化することができる。実際には、好適なグラフト量を達成するためには、得られるポリマー樹脂が湿分硬化できるように約10,000の最小分子量が必要とされる。種々の適用目的のために、これらの湿分硬化型樹脂は、有利なことに、ケイ酸含有フィラーに結合される。ケイ酸含有フィラーを含有するこれらのポリマー樹脂のゲル化は、同様に、約10,000の最小分子量を必要とする。しかし、ポリプロピレンの公知のラジカル修飾に関連する分子量崩壊の結果として(上記に考察)、このような樹脂に基づいた実用的な分子量を有する湿分硬化型ポリプロピレンの製造は知られていない。
【0015】
従って、当技術分野においてなされた進歩にもかかわらず、官能化ポリオレフィン誘導体の分子量が製造中に(分解または増加によって)大幅に変化しないように、ラジカル化学によって製造することができる高分子量ポリマーの官能化ポリオレフィン誘導体の必要性が存在している。さらに特に、得られるポリマーの分子量が結果として大幅に変更されないで、ポリオレフィンを修飾または官能化できることが極めて望ましいと思われる。具体的には、得られるポリマーの分子量が結果として大幅に低下されないで、ポリオレフィンを修飾または官能化することが極めて望ましいと思われる。
【0016】
【特許文献1】欧州特許第0,342,792B号
【非特許文献1】Markomol. Chem, Macromol. Symp. 48/49, 317-332 (1991)[Mulhaupt et al. (Mulhaupt)]
【発明の開示】
【0017】
発明の概要
本発明の一目的は、上記の従来技術の欠点の少なくとも1つを未然に防ぐまたは軽減することである。
【0018】
本発明のさらに別の目的は、新規湿分硬化型ポリオレフィン樹脂を提供することである。
【0019】
本発明の一目的は、官能化ポリオレフィンを調製する新規方法を提供することである。
【0020】
従って、本発明の局面の1つにおいて、本発明は、官能化ポリオレフィンを調製する方法であって、(i)ポリオレフィン、(ii)官能基を含有する化合物、ならびに(iii)式I:
Xn-Y-Zm (I)
式中、
Yはコア部分であり;
Zは少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する部分であり;
XはZと異なる部分であり、かつXとYとの間の結合は単結合であってもまたは二重結合であってもよく;
nは0より大きいまたは0と等しい整数であり;
mは2より大きいまたは2と等しい整数であり;および
m+nはYの原子価までの数に等しい;
を有する補助試薬(coagent)化合物を反応させる段階を含み:
ここで、(a)mが2でありかつnが0である場合には、ポリオレフィンと補助試薬を最初に反応させて生成物を形成し、その後生成物を官能基を含有する化合物と反応させる段階を含み、および(b)官能基を含有する化合物は、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である方法に関する。
【0021】
別の局面において、本発明は、Zが少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する部分である上記の方法に関する。別の局面において、本発明は、Zが少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含有する部分である上記の方法に関する。
【0022】
本発明の別の局面において、本発明は、このような方法によって製造される官能化ポリマーに関する。
【0023】
本発明の別の局面において、本発明は、付加物を製造する方法であって、
官能基を含有する化合物と式I:
Xn-Y-Zm (I)
式中、
Yはコア部分であり;
Zは炭素-炭素二重結合を含有する部分であり;
XはZと異なる部分であり、かつXとYとの間の結合は単結合であってもまたは二重結合であってもよく;
nは0より大きいまたは0と等しい整数であり;
mは少なくとも3の値を有する整数であり;および
m+nはYの原子価までの数に等しい;
を有する補助試薬化合物を反応させる段階を含み、
ここで、官能基を含有する化合物は、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である方法に関する。
【0024】
別の局面において、本発明は、Zが、少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する部分である上記の方法に関する。別の局面において、本発明は、Zが、少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含有する部分である上記の方法に関する。
【0025】
本発明のさらに別の局面において、本発明は、このような方法によって製造される付加物に関する。
【0026】
従って、本発明者らは、驚くべきことでありおよび予期しなかったことに、本明細書において記載する1つまたは複数の補助試薬化合物の補助によりポリマーの不飽和化反応によって、分子量(Mn)を実質的に変更しないで、ポリオレフィン、特に高分子量ポリオレフィン(Mn>10,000)に、官能基(例えば、チオール、エポキシド、無水物、カルボン酸、アミン、アミド、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、シアノ含有化合物、スルファート、スルホナート、スルフィット、エステル、チオエステル、ジチオエステル、エーテル、ハロゲン化物、ホスファート、ホスホナート、ホスフィン、ホスフィットおよび極性部分を含有する他の化合物)で広範に修飾することができることを発見した。これは、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である、官能基を含有する化合物を使用して実施することができる。従って、当業者は、このような化合物は、無水マレイン酸、アクリラートなどの重合性オレフィン(例えば、DBBA)等除外することを認識している。
【0027】
本明細書全体を通して、出発ポリオレフィンの分子量(Mn)を実質的に変更せず、官能化ポリオレフィンを製造することに言及している。分子量(Mn)が実質的に変更されないことは、出発ポリオレフィンと比較して官能化ポリオレフィンの溶融粘度が、実質的に安定であるまたは変更されないことによって特徴付けられることを理解するべきである。
【0028】
官能基およびこのような官能基を提供する化合物の選択は、修飾ポリマーの特定の適用に応じて当業者が選択することができる。官能基をオレフィン誘導体化反応に導入することができる。オレフィン誘導体化反応は、一般に、2つの広いカテゴリーに分類される:(i)付加反応および(ii)置換反応。本発明を使用して改善することができる付加反応の例には:水和、水素化、ハロヒドリン形成、二量化、アルキル化、重合、水酸化、ハロゲン化、フリーラジカルの付加、カルベンの付加および硫酸の付加が挙げられるが、これに限定されない。本発明を使用して改善することができる置換反応の例には:アリル置換、オゾン分解およびハロゲン化が挙げられるが、これに限定されない。これらの反応に典型的に使用される試薬は当業者に公知である。
【0029】
従って、本発明は、ポリプロピレンなどのポリオレフィンで普通に実施される反応を改善することができる。ポリプロピレンの一般的な反応はMulhaupt, R et al., 「Functional Polypropylene Blend Compatibilizers」、Makromol. Chem., Macromol. Symp. 48/49, 317-332(1991)に考察されており、例えば、エポキシ化、アルダー(Alder)-エン付加、ヒドロシリル化およびチオール-エン付加によるポリプロピレンの反応である。
【0030】
本発明を使用して改善することができる好ましいオレフィン誘導体化反応には以下が挙げられる:チオール-エン付加、アルダー-エン付加、付加環化、ヒドロシリル化、エポキシ化およびヒドロホウ素化。
【0031】
よりさらに、本発明者らは、驚くべきことでありおよび予期しなかったことに、ポリオレフィンと本明細書に記載する補助試薬化合物および官能基(例えば、チオール、エポキシド、無水物、カルボン酸、アミン、アミド、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、シアノ含有化合物、スルファート、スルホナート、スルフィット、エステル、チオエステル、ジチオエステル、エーテル、ハロゲン化物、ホスファート、ホスホナート、ホスフィン、ホスフィット、オレフィンおよび極性部分を含有する他の化合物)を含有し、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である化合物を反応させることに関係する方法によって、ポリオレフィンを官能化できることを発見した。本発明の方法は、ポリオレフィンと補助試薬化合物を最初に接触させ、次いでその生成物と官能基を含有する化合物を接触させることによって実施することができる。または、補助試薬化合物と官能基を含有する化合物の付加物を最初に形成し、その後付加物とポリオレフィンを接触させることが可能である。補助試薬化合物および官能基を含有する化合物の一方または両方は、必要に応じて、官能基と補助試薬化合物(すなわち、その反応性部分)との間、および/または補助試薬化合物(すなわち、その反応性部分)とポリオレフィンとの間の物理的分離を相対的に増加する作用を有するスペーサー部分を含んでもよい。
【0032】
本発明のポリオレフィン樹脂の多数の適用は当業者に明らかである。例えば、本発明を使用して、比較的高分子量を有する(例えば、M.W.>10,000)湿分硬化型ポリオレフィン樹脂を製造することができる。湿分硬化型ポリプロピレンは、例えば、輻射床暖房システム、パイプライン被覆、熱収縮製品、繊維強化材料等のようなさまざまな適用に使用することができると思われる。
【0033】
好ましい態様の詳細な説明
本発明は、官能化ポリオレフィン、湿分硬化型ポリオレフィン樹脂およびこれらの生成物の両方を製造する方法を含む。
【0034】
本発明の方法は、出発ポリマーの分子量(Mn)を最小限しか変化させないで、または大きな変化なしに、高分子量ポリオレフィンに望ましい官能基を導入することができる。
【0035】
一態様において、本発明は、官能化ポリオレフィンを調製する方法であって、(i)ポリオレフィン、(ii)官能基を含有する化合物、ならびに(iii)式I:
Xn-Y-Zm (I)
式中、
Yはコア部分であり;
Zは炭素-炭素二重結合を含有する部分であり;
XはZと異なる部分であり、かつXとYとの間の結合は単結合であってもまたは二重結合であってもよく;
nは0より大きいまたは0と等しい整数であり;
mは2より大きいまたは2と等しい整数であり;および
m+nはYの原子価までの数に等しい;
を有する補助試薬化合物を反応させる段階を含み、
ここで、(a)mが2でありかつnが0である場合には、ポリオレフィンと補助試薬を最初に反応させて生成物を形成し、その後生成物を官能基を含有する化合物と反応させる段階を含み、および(b)官能基を含有する化合物は、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である方法に関係する。
【0036】
好ましくは、ポリオレフィンおよび補助試薬は、互いに混和性であるおよび/または共通の溶媒と混和性である。さらに好ましくは、単相または均一系として本発明の方法を実施することができるように、ポリオレフィンおよび補助試薬は互いに混和性であり、溶媒を除去するのに必要な追加のその後の段階がないという利点を提供する。
【0037】
別の態様において、本発明は、Zが少なくとも1つの炭素-炭素三重結合を含有する部分である上記の方法に関係する。別の態様において、本発明は、Zが少なくとも1つの二重結合および少なくとも1つの三重結合を含有する部分である上記の方法に関係する。
【0038】
式Iの化合物は2つまたはそれ以上のZ部分を含有する。これらのZ部分は同じであってもまたは異なってもよいことが容易に理解されるはずである。さらに、式Iの化合物が2つまたはそれ以上のX部分を含有する場合には、X部分は同じであっても、または異なってもよい。
【0039】
本明細書全体を通じて、「置換されていてもよいまたは置換されていなくてもよい」炭化水素部分に言及される。この用語は、任意に1つもしくは複数の置換基で置換されているまたは1つもしくは複数の置換基を含むように修飾されていてもよく、置換基は、脂肪族、ハロゲン、ヒドロキシル、アルキルカルボニルオキシ、アリールカルボニルオキシ、アルコキシカルボニルオキシ、アリールオキシカルボニルオキシ、カルボキシレート、アルキルカルボニル、アルコキシカルボニル、アミノカルボニル、アルキルチオカルボニル、アルコキシル、ホスファート、リン酸エステル、ホスホナート、ホスフィナート、シアノ、アミノ、アシルアミノ、アミド、イミノ、スルフヒドリル、アルキルチオ、アリールチオ、チオカルボキシレート、ジチオカルボキシレート、スルファート、スルホナート、スルファモイル、スルホンアミド、ニトロ、ニトリル、トリフルオロメチル、アジド、ヘテロシクリル、芳香族および複素環式芳香族部分、エーテル、エポキシド、エステル、無水物、ホウ素含有部分、ケイ素含有部分ならびにこれらのいずれかの組み合わせからなる群より選択される炭化水素部分を含むことが意図されている。
【0040】
さらに、本明細書全体を通じて、「脂肪族」部分に言及される。この用語は、直鎖状、分岐状または環状である炭化水素部分を含むことが意図されており、さらに脂肪族部分は置換されていても置換されていなくてもよい。
【0041】
従って、補助試薬化合物は、置換されていてもよい少なくとも2つの炭素-炭素二重結合、または2つの炭素-炭素三重結合、または1つの炭素-炭素二重結合および1つの炭素-炭素三重結合を有する。しかし、炭素-炭素二重結合および/または三重結合(2つより多い)の数は特に制限されていない。好ましくは、補助試薬化合物は、炭素-炭素二重結合を含有する2〜4つの間の部分を有する。
【0042】
Yはコア部分であり、無機および/または有機であってもよい(例えば、有機金属部分は、無機および有機の両方の部分の例である)。好ましくは、フラグメント化によって本発明の方法において製造されるグラフト化中間体を安定させるために、コア部分は反応性ではない。
【0043】
従って、一態様において、Yは無機部分であってもよい。例えば、Yは、周期表から選択される多価主族元素であってもよい。好ましくは、Yは、周期表のIIIa族、IVa族およびVa族のいずれか1つから選択される元素である。好適なこのような元素の例には、ケイ素およびリンが挙げられるが、これに限定されない。
【0044】
別の態様において、Yは有機部分であってもよい。好ましい態様において、有機部分は、置換されたまたは置換されていないC1〜C10アルキル部分、さらに好ましくは、置換されたまたは置換されていないC1〜C4アルキル部分、最も好ましくは、C1アルキル部分を含む。別の好ましい態様において、有機部分は置換されたまたは置換されていないC5〜C20アリール部分、さらに好ましくは、置換されたまたは置換されていないC6〜C10アリール部分、よりさらに好ましくは、置換されたまたは置換されていないフェニル部分、最も好ましくは、(置換されていない)フェニルを含む。
【0045】
上記のように、m+nはYの原子価までの数に等しい。Yは有機部分および/または無機部分であってもよいことを考慮すると、「原子価」という用語の使用は、広義の意味を有することが意図される。例えば、Yがベンゼン環である場合には、当業者は、本発明に関連して、ベンゼンは「原子価」6であることを認識している。
【0046】
式Iにおいて、Zは、炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含有する部分である。好ましくは、炭素-炭素二重結合は末端炭素-炭素二重結合である。さらに好ましくは、炭素-炭素二重結合(末端または内部)は、酸素または硫黄などのヘテロ原子、最も好ましくは、酸素によって活性化される。従って、このような活性化は、エーテル部分、アクリラート部分、エステル部分、カルボニル部分等によって活性化されうる。好ましくは、Zは、上記特徴を有するC2〜C20部分である。
【0047】
式Iの化合物におけるXの選択は特に制限されない。例えば、Xは、置換されたあるいは置換されていないC1〜C20脂肪族部分、または置換されたあるいは置換されていないC5〜C20アリール部分などの炭化水素部分であってもよい。
【0048】
好ましい態様において、Xは、酸素などのsp2-混成部分を含む。
【0049】
別の好ましい態様において、Xは、置換されたまたは置換されていないC1〜C15脂肪族部分、さらに好ましくは、置換されたまたは置換されていないC1〜C6脂肪族部分を含む。脂肪族部分は1つまたは複数のヘテロ原子を含有してもよい。脂肪族部分の例は、ヒドロキシ基を含有するものであるが、これに限定されない。
【0050】
本発明の方法のさらに好ましい態様において、補助試薬は、ポリアリル化合物、ポリアクリラート化合物、ポリビニル化合物、およびそれらの混合物を含む群より選択される。
【0051】
好ましくは、ポリアリル化合物は、トリアリルトリメリタート(TATM)、トリアリルホスフェート(TAP)、ペンタエリスリトールジアリルエーテル(PE(Di)AE)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(PE(Tri)AE)、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル(PE(Tetra)AE)、1,3,5-トリアリルメサート(mesate)、トリアリルシアヌレート、およびそれらの混合物を含む群より選択される。さらに好ましくは、ポリアリル化合物は、トリアリルトリメリタート(TATM)、1,3,5-トリアリルメサート、およびそれらの混合物を含む群より選択される。
【0052】
好ましくは、ポリアクリラート化合物は、ペンタエリスリトールジアクリラート(PE(Di)A)、ペンタエリスリトールトリアクリラート(PE(Tri)A)、ペンタエリスリトールテトラアクリラート(PE(Tetra)A) 、およびそれらの混合物を含む群より選択される。さらに好ましくは、ポリアクリラート化合物はペンタエリスリトールテトラアクリラート(PE(Tetra)A)を含む。
【0053】
好ましくは、ポリビニル化合物は、天然多価不飽和油、ジビニルベンゼン、およびそれらの混合物を含む群より選択される。さらに好ましくは、ポリビニル化合物はジビニルベンゼンを含む。
【0054】
本発明に好適なポリオレフィンは特に制限されず、好適なポリオレフィンの選択は当業者の範囲内である。
【0055】
本明細書を通じて「ポリオレフィン」という用語は、広義の意味を有することが意図されており、少なくとも1つのオレフィンモノマーの重合から誘導されるホモポリマー、コポリマー、ターポリマー等を含む。
【0056】
本明細書全体を通じて「オレフィンモノマー」という用語は、広義の意味を有することが意図されており、α-オレフィンモノマー、ジオレフィンモノマー、および少なくとも1つの内部オレフィン結合を含有する重合性モノマーを含む。
【0057】
好ましい態様において、オレフィンモノマーはα-オレフィンモノマーである。α-オレフィンモノマーは当技術分野において周知であり、本発明の方法において使用するためのその選択は当業者の範囲内である。好ましくは、α-オレフィンモノマーは、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、その分岐異性体、スチレン、α-メチルスチレン、およびそれらの混合物を含む群より選択される。最も好ましいα-オレフィンモノマーはプロピレンである。
【0058】
さらに別の好ましい態様において、オレフィンモノマーはジオレフィンモノマーを含む。ジオレフィンモノマーは当技術分野において周知であり、本発明の方法において使用するためのその選択は当業者の範囲内である。好ましい一態様において、ジオレフィンモノマーは脂肪族化合物である。好適な脂肪族化合物の例は、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、ミルセン、アレン、1,2-ブタジエン、1,4,9-デカトリエン、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、フェニルブタジエン、ペンタジエン、およびそれらの混合物を含む群より選択することができるが、これに限定されない。別の好ましい態様において、ジオレフィンモノマーは脂環式化合物である。好適な脂環式化合物の例は、ノルボルナジエン、そのアルキル誘導体、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネンおよびそれらの混合物、例えば5-アルキリデン-2-ノルボルネン化合物、5-アルケニル-2-ノルボルネン化合物およびそれらの混合物を含む群より選択することができるが、これに限定されない。好適な脂環式化合物のさらに別の例は、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,5-シクロドデカジエン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-ジエン、およびそれらの混合物を含む群より選択することができるが、これに限定されない。
【0059】
当然のことながら、本明細書において上記の様々な種類のオレフィンモノマーの混合物を使用することが可能である。
【0060】
好ましい一態様において、オレフィンモノマーは、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィン(本明細書に上記)の混合物であり、これからコポリマーが製造される。好ましいこのようなモノマー混合物はエチレンおよびプロピレンを含む。この態様において、約30〜約75重量パーセント、さらに好ましくは、約35〜約65重量パーセントのエチレン、および約25〜約70重量パーセント、さらに好ましくは、約35〜約65重量パーセントのα-オレフィンを含む混合物を使用することが好ましい。
【0061】
別の好ましい態様において、オレフィンは、エチレン、少なくとも1つのα-オレフィン(本明細書に上記)および少なくとも1つのジオレフィンモノマー(本明細書に上記)の混合物であり、これからターポリマーが製造される。好ましいこのようなモノマー混合物は、エチレン、プロピレンならびに5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび1,5-ヘキサジエンの一方または両方を含む。この態様において、エチレンとα-オレフィンの好ましい混合物に、約0.5〜約15重量パーセント、さらに好ましくは、約1〜約10重量パーセントのジオレフィンモノマーを導入することが好ましい。
【0062】
さらに好ましいポリオレフィンは、ポリプロピレン、ポリエチレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリイソブチレンおよびこれらのポリオレフィンの2つまたはそれ以上のブレンドからなる群より選択することができる。最も好ましいポリオレフィンはポリプロピレンである。
【0063】
本発明の方法に使用されるポリオレフィン材料は市販されており、フリーラジカル、チーグラー・ナッタ(Ziegler-Natta)および/またはメタロセン重合技法等を使用して容易に製造され得る。
【0064】
好ましくは、本発明の方法に使用されるポリオレフィンは、約10,000〜約500,000ダルトン、さらに好ましくは約10,000〜約100,000ダルトン、よりさらに好ましくは約20,000〜約80,000ダルトン、最も好ましくは約40,000〜約60,000ダルトンの範囲の分子量(Mn)を有する。分子量への言及はポリマー分子の集団を言い、必ずしも1つまたは特定のポリマー分子を言うわけではないことが当業者によって理解されている。
【0065】
本明細書に記載する1つまたは複数の補助試薬化合物を使用すると、高収率で、分子量に大きく影響しないオレフィン誘導体化を容易にすることを本発明者らは発見した。例えば、高分子量ポリオレフィンへの従来のチオール-エン付加は効率が悪いが、例えば、本明細書に記載する補助試薬化合物でポリオレフィンを処理し、続いてチオール付加を実施すると収率が劇的に改善され、安定な溶融粘度の官能化ポリオレフィンが製造される。
【0066】
本発明の一局面はまた、結合型補助試薬のさらなる反応に関する。特に、エステルおよびリン酸エステルは広範囲の求核試薬による置換反応を受ける。従って、ポリオレフィンに補助試薬化合物をグラフト化することによって、結合型補助試薬部分にイオン反応を実施して、安定な溶融粘度の官能化誘導体を作製することができる。これの態様を本明細書の以下の実施例に例示する。
【0067】
従って、本発明の方法の一局面は、ポリアリル化合物などの補助試薬化合物を使用して、好ましくは、ラジカル化学を使用して官能基を導入することに関係する。驚くべきことに、本発明の発明者らは、例えば、官能化ポリアリル含有化合物、官能化ポリアクリラート含有化合物および官能化ポリビニル含有化合物(「官能化」は補助試薬化合物の付加物および上記に考察する官能基を含有する化合物を意味する)は、溶融粘度を有害に変更せずに、ポリプロピレンなどのポリオレフィンにグラフト化することができることを見出した。本発明の方法を同様に使用して、制御されたやり方で任意の数の官能基を導入することができる。官能基を導入するのに好適な化合物を以下に考察する。
【0068】
好適なポリアリル付加物の例は、ビスアリルスルフィド、以下の式:

を有する構造異性体であるが、これに限定されない。別の好適なポリアリル付加物は、ビスアリルエポキシド、以下の式:

を有する構造異性体である。
【0069】
さらに、従来の湿分硬化技法を使用して、このグラフト化方法によって導入されるアルコキシシラン官能基をその後活性化することができる。ポリオレフィンがポリプロピレンである場合には、生成物は、ケイ酸含有フィラーに結合することができる湿分硬化型ポリプロピレン樹脂である。
【0070】
上記に例示するビスアリルスルフィドおよびビスアリルエポキシドは、ポリアリル部分および官能基の両方を含有する付加物であることを当業者は認識している。当然のことながら、他の官能基をポリアリル化合物に付加して、異なる付加物を製造することができる。同様に、ポリアリル化合物とは別の補助試薬化合物を使用して、好適な付加物を製造することができる。
【0071】
官能基を含有する化合物の例は、チオール、エポキシド、無水物、カルボン酸、アミン、アミド、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、シアノ含有化合物、スルファート、スルホナート、スルフィット、エステル、チオエステル、ジチオエステル、エーテル、ハロゲン化物、ホスファート、ホスホナート、ホスフィン、ホスフィット、極性部分を含有する他の化合物およびそれらの混合物を含む群より選択されてもよいが、これに限定されない。好ましくは、官能基を含有する化合物は、シラン、エポキシド、無水物、およびそれの混合物からなる群より選択される。
【0072】
本発明の方法はシングルバッチ方法または連続バッチ方法において実施することができる。従って、1つの反応容器において、ポリオレフィン、官能基を含有する化合物および補助試薬化合物(すなわち、式Iの化合物において、mが2で、nが0である場合を除く)を混ぜ合わせて、本発明の官能化ポリオレフィンを製造することが可能である。または、1つの反応容器において、官能基を含有する化合物と補助試薬化合物を反応させて付加物を製造し、その後(同じ反応容器または異なる反応容器において)付加物とポリオレフィンを反応させて本発明の官能化ポリオレフィンを製造することが可能である。式Iの化合物において、mが2で、nが0である場合には、1つの反応容器において最初に補助試薬化合物とポリオレフィンを反応させて、中間体生成物を形成し、その後(同じ反応容器または異なる反応容器において)官能基を含有する化合物を反応させて、本発明の官能化ポリオレフィンを製造することができる。
【0073】
本発明の方法の柔軟さの一例として、上記に示すビスアリルスルフィドを付加して、湿分硬化型ポリプロピレンを作製する代わりに、アルコキシシラン官能基を導入する前に、処理後のポリマーと官能化チオールまたは上記に例示する官能基を含有する他の化合物の1つを反応させることによって、式:

を有するトリアリル化合物をポリオレフィン(例えば、ポリプロピレン)に付加することができる。上記に考察するように、上記のトリアリル化合物以外の補助試薬をポリオレフィンに付加することができる。本発明の反応段階はシングルバッチ方法において実施することができるが、アミンなどの一部の官能基では、連続方法が好ましい。
【0074】
本発明の方法は、少なくとも1つの官能基を有する化合物を使用するが、導入される官能基の数は制限されず、当業者の範囲内である。好ましくは、少なくとも1つの官能基を有する化合物は約5,000未満の分子量を有し、有機溶媒に可溶性である。
【0075】
本発明は、さらに、湿分硬化型オレフィン樹脂を含む。好ましい湿分硬化型オレフィン樹脂は、商用のイソタクチックポリプロピレンである。この湿分硬化型樹脂は、ケイ酸含有粒状物質またはフィラー(例えば、グラスファイバー、シリカ粉末、クレー等などのケイ素および酸素を含有するケイ酸塩)に共有結合することができる。この樹脂はまた、湿分硬化によって架橋されて、熱硬化材料を作製することもできる。
【0076】
エチレンリッチポリマーの従来のグラフト修飾は、ポリプロピレンの場合のように、分子量を減少させない。むしろ、ラジカル結合はこの基質の主要な分子量変更事象であり、チオール-エン方法は、架橋を受けないで、湿分硬化型樹脂を生じる。この方法を使用して、メルトフローインデックス(MFI)が安定な湿分硬化型HDPE-g-MPTMS[すなわち、高密度ポリエチレン-グラフト-メルカプトプロピルトリメトキシシラン]誘導体を調製することができる。
【0077】
任意の特定の理論または作用様式に結び付けたいわけではないが、本発明は、本発明の方法を開始するために、反応混合物にフリーラジカルを作製することに関係すると考えられる。フリーラジカルは、例えば、紫外線、(過酸化物などの)化学的イニシエーター、熱機械的手段、放射線、電子衝撃等によって作製することができる。ラジカル作製技法の一般的な考察は以下の参照文献のいずれか:Moad, G. Prog. Polym. Sci. 1999, 24, 81-142;Russell, K. E. Prog. Polym. Sci. 2002, 27, 1007-1038;およびLazar, M., Adv. Polym. Sci. 1989, 5, 149-223. を参照。
【0078】
本発明の態様は、例示目的のためだけに提供されており、本発明の範囲を限定または解釈するために使用されるべきではない以下の実施例を参照して記載されている。
【0079】
実施例 1
この実施例において、イソタクチックポリプロピレンペレット(i-ポリプロピレン、Mn=50,000、多分散性=3.8、Sigma-Aldrich)(45g)および表1に示す量のトリアリルトリメリタート(TATM)を、180℃においてHaake Polylab R600内部バッチミキサー内で60 rpmで1分間混合した。次いで、表1に示す量のジクミルペルオキシド(DCP)を添加し、さらに15分混合を継続して、i-ポリプロピレン-g-TATMを得た。
【0080】
TATM付加の程度はFT-IR方法によって求めた。i-ポリプロピレン-g-TATM(1 g)を沸騰キシレン(15 mL)に溶解し、アセトン(80 mL)を使用して溶液から沈殿させることによって精製した。精製した樹脂を真空下で乾燥させ、薄層状の材料を、Nicolet Avatar 360 FT-IR ESP分光器を使用して分析した。TATMの結合量は、樹脂から得られる420〜500 cm-1内部領域と比較した、補助試薬の1305〜1704 cm-1共鳴から誘導される領域から求めた。検量線混合物に対するこれらの領域の比の比較により、表1に掲載するTATMグラフト値が提供される。
【0081】
さらに、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン(MPTMS、95%、Sigma-Aldrich)と反応させることによって、i-ポリプロピレン-TATMをさらに修飾した。、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシル)ヘキサン(L-101、Elf Atochem)(0.1 wt%)およびMPTMS(3.9 wt%)を含有するクロロホルム溶液で、細かくしたi-ポリプロピレン-g-TATM(0.75 g)をコーティングした。クロロホルムを試料から留去し、得られた混合物をAtlas Laboratory Mixing Molderの空洞に170℃において15分間入れて、i-ポリプロピレン-g-TATM/MPTMSを得た。
【0082】
i-ポリプロピレン-g-TATMへのMPTMS付加の程度は、官能化樹脂を湿分硬化し、沈降シリカに修飾ポリマーをカップリングすることによって求めた。シラン官能基を含有するようなポリマー鎖だけがこれらの反応に携わることができるので、湿分硬化およびシリカ結合収率は、i-ポリプロピレン基質へのMPMTSグラフト程度の有効な尺度である。これらの反応は以下の方法で実施される。
【0083】
i-ポリプロピレン-g-TATM/MPTMS(1.0 g)およびキシレン(20 mL)を加熱還流してから、ジブチルチンジラウレート(10 μL、20.2μmol)および水(0.5 mL)を添加した。混合物を還流条件下で20分間維持し、その後アセトン(150 mL)で沈殿させることによってポリマーを溶液から回収し、減圧下で乾燥した。120メッシュシーブクロスから還流キシレンで粗生成物を抽出することによってゲル含量を求めた。抽出溶液を100 ppmの2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノール(BHT)で安定化し、最低2時間この手法を実施した。これより長い時間は結果に影響しなかった。抽出されなかった材料を真空下で一定重量になるまで乾燥し、ゲル含量を不溶性ポリマーの重量パーセントとして算出した - 結果を表1に報告する。
【0084】
i-ポリプロピレン-g-TATM/MPTMS(1.0 g)、キシレン(20 mL)および沈降シリカ(0.4 g)を30分間加熱還流し、その後アセトン(150 mL)で沈殿させることによってポリマーおよびシリカを溶液から回収し、減圧下で乾燥した。上記のようにゲル含量を求め、試料のシリカ含量について補正後のデータを不溶性ポリマーの重量パーセントとして示す - 結果を表1に報告する。
【0085】
溶融流速(MFR)値は、2.16 kgの負荷を用いて230℃においてTinius Olsen装置を使用して測定するとき、10分間に押し出される樹脂のグラムとして報告する - 結果を表1に報告する。
【0086】
この方法は、従来の過酸化物媒介性i-ポリプロピレン崩壊中の分子量損失程度を埋め合わせるための添加剤を使用している。一般に、ポリアリル化合物を少量の過酸化物と併用すると、溶融粘度を大幅に変化しないで材料の不飽和度を増加することができる。
【0087】
表1に示すデータは、この方法が有効であることを示している。崩壊過程中に加えられると、少量のTATMは樹脂のMFRを安定化する。許容されうる湿分硬化ゲル含量および結合ポリマー収率を提供するために必要とされる比較的少量のMPTMSも、同様に重要である。湿分硬化して91%ゲル含量を生ずる安定なMFRのi-ポリプロピレン-g-TATM/MPTMSを製造するためには、3.9wt%のMPTMSが必要であった。高ゲル含量、安定な溶融粘度および低チオール要求量のこの組み合わせは、従来の崩壊全処理(以下の実施例2参照)または標準的なチオール-エン付加(以下の実施例3参照)では匹敵しえない。
【0088】
実施例 2
これは比較例であり、実施例1において使用されているTATMを省いた。表2に掲載する製剤および反応条件を使用して、ラジカル媒介性i-ポリプロピレン崩壊およびその後のMPTMS付加を、実施例1に上記するように実施した。
【0089】
2つの方法から誘導されるi-ポリプロピレン崩壊生成物のMFRを比較した。220 g/10 minのMFR値によって明らかにされるように、0.05 wt% DCPを使用した場合、TATM非存在下でのi-ポリプロピレンの崩壊により溶融粘度がかなり低下し、0.10 wt%を使用した場合、300 g/10 minより大きかった(表2)。一方、1.0 wt% TATMを含むi-ポリプロピレン崩壊は、等しい反応条件下において、42 g/10 minおよび37 g/minのMFR値の生成物を生じた。
【0090】
実施例 3
これは比較例であり、MPTMSのチオール-エン付加の前にi-ポリプロピレンのラジカル媒介性補助試薬処理を実施しない。表3は、MFR、湿分硬化収率ならびに実施例1に記載する材料および方法を使用して記録される結合ポリマー収率を提供する。チオール-エン付加は、37 g/10 minのMFRによって示されるように、溶融粘度が安定したi-ポリプロピレン-g-MPTMSを作製した。しかし、湿分硬化反応およびシリカ結合の収率は、i-ポリプロピレン-g-TATM/MPTMSについて記録されているものより小さかった(表1)。
【0091】
実施例 4
ポリプロピレン系ポリマーのチオール-エン誘導体化は、ポリアリル修飾剤の使用によって改善されることが実証された。第1の段階にTATMおよび第2の段階にMPTMSを使用する逐次的なポリプロピレン崩壊/チオール付加過程は、安定な粘度の硬化型誘導体を作製する際に成功することが証明されている。これらの崩壊反応において記録された高レベルのTATM導入は、官能化ポリアリル化合物をワン-ステップ修飾方法に使用することができると思われることを示唆している。
【0092】
以下に示すビスアリルスルフィド(BAS)を使用してこの概念を例示した。この試薬を調製するために、TATM(1 g)、MPTMS(0.60 g)および2,2’-アゾビスイソブチロニトリル(0.001 g)を窒素雰囲気下において丸底フラスコ内で混ぜ合わせた。得られた溶液を90℃まで1時間加熱した。残渣の反応物質を真空蒸留によって除去し、残渣を1H-NMR分光法によって分析して、TATMの3つのアリル基の1つが望ましいスルフィド官能基に変換されたことを確認した。

ポリプロピレン修飾に使用されるTATM+MPTMS付加物(BAS)の構造(3つの構造異性体の1つ)
【0093】
2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシル)ヘキサン(L-101、Elf Atochem)(0.1wt%)および必要量のBASを含有するクロロホルム溶液で、細かくしたi-ポリプロピレン(0.75 g)をコーティングした。クロロホルムを試料から留去し、得られた混合物をAtlas Laboratory Mixing Molderの空洞に170℃において15分間入れて、i-ポリプロピレン-g-BASを得た。表4に示すデータはこの方法の利用性の証拠を提供している。修飾ポリマーは安定なMFRを有し、高いゲル含量まで硬化した。
【0094】
この方法は、ポリプロピレングラフト過程の前にラジカル媒介性チオール-エン付加によって製造される官能基付加物を使用した。しかし、反応性配合過程に対してポリプロピレンにTATM、MPTMSおよび過酸化物を直接付加することが可能である。この反応は、i-ポリプロピレンへのBASグラフト化について上記に提供する方法を使用して実施した。ビスアリル付加物はこの方法によってその場で調製され、表4に要約する最後の反応によって明らかにされるように、ポリマーへの付加により許容されるゲル含量を生ずる。
【0095】
実施例 5
この実施例において、3つの他のポリ不飽和化合物は、ラジカル媒介性崩壊中にポリプロピレンのMFRを安定させて、ポリマーをチオール-エン付加などのオレフィン誘導体化過程をさらに受けやすくすることが示される。ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(PE(Tri)AE)およびトリアリルホスフェート(TAP)は共にアリル炭素-炭素二重結合を含有するが、それらはアリルエーテルであるという点においてTATMと異なる。後者の補助試薬化合物、TAPはまた、ホスフェートコアに基づいているという点においてもTATMと異なる。ペンタエリスリトールトリアクリラート(PE(Tri)A)の構造は、PE(Tri)Aの反応性オレフィン基がアクリラート官能基であるので、TATM、PE(Tri)AEおよびTAPを含むポリアリルエーテルと大幅に異なる。
【0096】
表5は、トリアリルホスフェート(TAP)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(PE(Tri)AE)またはペンタエリスリトールトリアクリラート(PE(Tri)A)を、MTPMSの付加前に、i-PP崩壊製剤に含ませた実験を要約する。この実施例において使用したポリマー修飾手法および生成物分析は実施例1に提供されるものである。データは、これら3つの補助試薬の構造的な差にもかかわらず、樹脂が活性な過酸化水素に暴露されるとき、それらはi-PPのMFRを安定化させたことを示した。さらに、逐次的なチオール-エン付加により、TATMシステムについて記録されているものに近い湿分硬化収率およびシリカ結合収率を生じた。
【0097】
実施例 6
この実施例では、高密度ポリエチレンホモポリマー(HDPE、Sclair 2907、Nova Chemicals)へのMPTMSのチオール-エン付加を例示する。HDPE-g-MPTMSを調製するために使用する方法は、表6に掲載する製剤を使用して、実施例1に記載されている。
【0098】
エチレンリッチポリマーの従来のグラフト修飾は、ポリプロピレンの場合と同様に、分子量を低下しない。むしろ、ラジカル結合は、この基質の優勢な分子量変更事象であり、チオール-エン方法は、架橋を受けないで湿分硬化型樹脂を生ずるように設計されている。表6に示すように、安定なメルトフローインデックス(MFI)の湿分硬化HDPE-g-MPTMS誘導体が調製された。
【0099】
実施例 7
この実施例では、i-ポリプロピレンへのビスアリルエポキシド(BAE、以下に示す)のワン-ステップ付加を例示する。この試薬は、m-クロロ過安息香酸(0.34 g)およびクロロホルム(7 mL)の溶液に、トリアリルトリメリタート(0.67 g)およびクロロホルム(5 mL)を滴加することによって調製した。混合物を室温において12時間撹拌し、次いでNaHCO3の10%水溶液で洗浄し、無水CaSO4で乾燥した。次いで、回転式留去によってクロロホルムを除去し、生成物を1H-NMR分析によって特徴づけ、BAEは1分子あたり平均して、2つのアリルエステル基および1つのエポキシド基を含有することを確認した。

ポリプロピレン修飾に使用するエポキシ化TATM付加物(BAE)の構造(3つの構造異性体の1つ)
【0100】
i-ポリプロピレンへのBAEのラジカル媒介性付加を、実施例1に記載する方法を使用して実施した。i-ポリプロピレン(1.4 g)、DCP(0.001 g)およびBAE(0.09 g)をグラフト化製剤に含み、Atlas Laboratoryミニミキサーで170℃において7分処理して、i-ポリプロピレン-g-BAEを生じた。i-ポリプロピレン-g-TATMについて、記載する方法で材料を精製し、結合型BAEの約2.2 wt%の存在をFT-IR分析によって確認した。
【0101】
実施例 8
この実施例では、実施例3に記載するビスアリルスルフィド試薬によるポリイソブチレン(PIB、Mn=400,000)のワン-ステップ修飾を例示する。60 rpmで作動するHaake Polylabバッチミキサー内で160℃において5分間PIB(1.0 g)およびビスアリルスルフィド(0.05 g)を混合した。次いで、3,3,5-トリメチル-1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)シクロヘキサン(L-231、Elf Atochem)(0.01 g)を添加し、さらに5分間混合を継続して、PIB-g-BASを得た。
【0102】
PIB-g-BAS(1.0 g)試料をトルエン(20 mL)に溶解し、アセトン(120 mL)で溶液から沈殿させ、真空下で乾燥した。この精製材料の1H-NMR分析は、3.5 ppmのメトキシ基の特徴的な一重線の形態の結合型BASの証拠を明らかにした。PIB骨格由来のメチレン共鳴の積分と結合型メトキシ共鳴の積分を比較することにより、結合型BAS含量は5.4 μモル/グラムと推定された。
【0103】
Alpha Technologies社製のAdvanced Polymer Analyzer 2000を使用する動的機械分析によって、BASの存在下および非存在下において過酸化物処理によって生じるポリマーの粘弾性の変化を評価した。未修飾PIB、BASの非存在下においてラジカル活性に暴露されたPIBおよびPIB-g-BASについて測定した貯蔵弾性率(G’)、損失弾性率(G’’)およびtanδを表7に要約する。分子量の低下はG’の低下およびtanδの対応する増加より明白である。データは、PIB-g-BASはG’がわずかに低下して調製されたことを示している。しかし、分子量の損失は、PIBを官能化補助試薬の非存在下において過酸化物で処理する場合に経験したものよりずっと少なかった。従って、BASの使用はラジカル媒介性グラフト化に関連する分子量損失を軽減すると同時に、望ましいトリアルコキシシラン官能基を導入した。
【0104】
実施例 9
この実施例では、i-ポリプロピレンへのTATMの付加の次に、N(CH2CH2NH2)3またはトリス(2-アミノエチル)アミン(TAEA)と反応させて、アミノ残基を含有するアミド誘導体を生じる。実施例1の方法を使用してPP-g-TATMを調製し、薄層状の精製ポリマーのFT-IR分析によって結合型エステル官能基の存在を確認した - 図1参照。その後、精製PP-g-TATM(1.5 g)とキシレン(17 mL)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール(BHT、抗酸化剤、200 ppm)およびTAEA(1.25 g)を混ぜ合わせて、混合物を3時間加熱還流した。アセトンで沈殿させてポリマー生成物を回収し、減圧下で乾燥した。PP-g-TATM-TAEAのFT-IRスペクトルを図1に例示する。これは、1600 cm-1のアミド官能基および3300 cm-1のアミン残基の存在を明らかに示している。
【0105】
実施例 10
実施例5において調製したものなどのポリオレフィンのホスフェートエステル誘導体を使用して、実施例9の方法を反復した。精製PP-g-TAPとTAEAなどの求核試薬の反応はアリルアルコールを示し、アミン残基を含有するポリオレフィンを作製する。
【0106】
実施例 11
以下に例示するように、TATMのアルキンアナログを使用して実施例1の方法を反復する。

この多価不飽和補助試薬とポリプロピレンの反応は、溶融粘度が親材料から大幅に異ならないポリマーを生ずる。この材料は、実施例5に実証するように、PP-g-TATM、PP-g-TAP、PP-g-PETAEおよびPP-g-PETAと一致する方法でMPTMS付加に応答する。
【0107】
実施例 12
この実施例では、トリアリルトリメサート(TAM)などの不飽和補助試薬のヒドロホウ素化および酸化によって、選択的ポリオレフィン官能化に有用な付加物を調製する。
【0108】
TAMを、テトラヒドロフラン(THF)中で1モル当量のBH3と50℃において8時間反応させ、次にNaOHのエタノール溶液およびH2O2の溶液を室温において徐々に添加して、以下の化学構造を有するビスアリルアルコールを製造する。

【0109】
このヒドロキシル官能化TAM誘導体は、例えば、実施例1および4〜9に用いる方法を使用して、ポリオレフィンを選択的に官能化するために使用することができる。
【0110】
実施例 13
この実施例では、トリアリルトリメサート(TAM)などの不飽和補助試薬のヒドロシリル化によって、選択的なポリオレフィン官能化に有用な付加物を調製する。
【0111】
TAMを、トリn-プロピルシラン(HSi(n-Pr)3)などの1モル当量のトリアルキルシランと反応させて、以下の化学構造を有するビスアリルシランを製造する。

【0112】
このシラン官能化TAM誘導体は、例えば、実施例1および4〜9に用いる方法を使用して、ポリオレフィンを選択的に官能化するために使用することができる。
【0113】
(表1)i-ポリプロピレンへのTATMおよびMPTMSの逐次的なグラフト化

a. TATMグラフト化条件:T=180℃;15分。
b. チオール付加条件:[MPTMS]=3.9 wt%;[L-101]=0.1 wt%;T=170℃;15分。
【0114】
(表2)逐次的なi-ポリプロピレン崩壊およびMPTMS付加

a. 崩壊条件:T=180℃;15分。
b. チオール付加条件:[MPTMS]=3.9 wt%;[L-101]=0.1 wt%;T=170℃;15分。
【0115】
(表3)非崩壊型i-ポリプロピレンへのMPTMS付加

a. チオール付加条件:[MPTMS]=3.9 wt%;[L-101]=0.1 wt%;T=170℃;15分。
【0116】
(表4)i-PPaへのTATM-MPTMS付加物(BAS)付加

a.[L-101]=0.1 wt%;T=170℃;15分。
【0117】
(表5)i-ポリプロピレンへの不飽和補助試薬およびMPTMSの逐次的なグラフト化

a. TAP=トリアリルホスフェート;PETAE=ペンタエリスリトールトリアリルエーテル;PETA=ペンタエリスリトールトリアクリラート。
b. 崩壊条件:[補助試薬]=1.0 wt%;[DCP]=0.1 wt%;T=180℃;7分。
c. チオール-エン条件:[MPTMS]=3.9 wt%;[L-101]=0.1 wt%;T=170℃;15分。
【0118】
(表6)HDPEaへのMPTMS付加

a. [DCP]=0.5 wt%;T=170℃;15分。
b. 5kg負荷を使用して190℃において測定したMFI。
【0119】
(表7)PIBaへのBAS負荷

a. [DCP]=0.5 wt%;T=160℃;25分。
b. 1Hzにおいて3°アークを使用して40℃において測定。
【0120】
本発明は例示的な態様および実施例を参照して記載されているが、明細書は限定する意味で解釈されることを意図していない。従って、本明細書を参照すると、本発明の例示的な態様および他の態様の種々の変更が当業者に明らかである。従って、添付の特許請求の範囲は任意のこのような変更または態様を含むと考慮される。
【0121】
本明細書において言及されている全ての刊行物、特許および特許出願は、個々の刊行物、特許または特許出願各々の全体が参照により組み入れられることが具体的且つ個別に示されているかのように同じ程度で、全体が参照により組み入れられる。
【図面の簡単な説明】
【0122】
本発明の態様は添付の図面を参照して記載される。
【図1】実施例9に使用され、調製される種々の材料のFT-IRスペクトルを例示する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ポリオレフィンを調製する方法であって、(i)ポリオレフィン、(ii)官能基を含有する化合物、ならびに(iii)式I:
Xn-Y-Zm (I)
式中、
Yはコア部分であり;
Zは炭素-炭素二重結合または炭素-炭素三重結合を含有する部分であり;
XはZと異なる部分であり、かつXとYとの間の結合は単結合であってもまたは二重結合であってもよく;
nは0より大きいまたは0と等しい整数であり;
mは2より大きいまたは2と等しい整数であり;および
m+nはYの原子価までの数に等しい
を有する補助試薬(coagent)化合物を反応させる段階を含み、
ここで、(a)mが2でありかつnが0である場合には、ポリオレフィンと補助試薬を最初に反応させて生成物を形成し、その後生成物を官能基を含有する化合物と反応させる段階を含み、および(b)官能基を含有する化合物は、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である、方法。
【請求項2】
Yが無機部分(例えば、ケイ素またはリン)である、請求項1規定の方法。
【請求項3】
Yが有機部分である、請求項1規定の方法。
【請求項4】
有機部分がC1〜C10アルキル部分を含む、請求項3規定の方法。
【請求項5】
有機部分がC1〜C4アルキル部分を含む、請求項3規定の方法。
【請求項6】
有機部分がC1アルキル部分を含む、請求項3規定の方法。
【請求項7】
有機部分が、1つまたは複数のC1〜C10アルキル部分で置換されてもよいC5〜C20アリール部分を含む、請求項3規定の方法。
【請求項8】
有機部分が、1つまたは複数のC1〜C10アルキル部分で置換されてもよいC6〜C10アリール部分を含む、請求項3規定の方法。
【請求項9】
有機部分が、1つまたは複数のC1〜C10アルキル部分で置換されてもよいフェニル部分を含む、請求項3規定の方法。
【請求項10】
有機部分がフェニルである、請求項3規定の方法。
【請求項11】
Yがビニル部分を含む、請求項1〜10のいずれか1項規定の方法。
【請求項12】
Yがアクリラート部分を含む、請求項1〜10のいずれか1項規定の方法。
【請求項13】
Yがアリル部分を含む、請求項1〜10のいずれか1項規定の方法。
【請求項14】
Xがsp2-混成部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項規定の方法。
【請求項15】
sp2-混成部分が酸素を含む、請求項14規定の方法。
【請求項16】
XがC1〜C15脂肪族部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項規定の方法。
【請求項17】
XがC1〜C6脂肪族部分を含む、請求項1〜13のいずれか1項規定の方法。
【請求項18】
脂肪族部分が1つまたは複数のヘテロ原子を含有する、請求項16〜17のいずれか1項規定の方法。
【請求項19】
脂肪族部分がヒドロキシ基を含有する、請求項16〜17のいずれか1項規定の方法。
【請求項20】
補助試薬が、ポリアリル化合物、ポリアクリラート化合物、ポリビニル化合物、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項1〜19のいずれか1項規定の方法。
【請求項21】
ポリアリル化合物が、トリアリルトリメリタート(TATM)、トリアリルホスフェート(TAP)、ペンタエリスリトールジアリルエーテル(PE(Di)AE)、ペンタエリスリトールトリアリルエーテル(PE(Tri)AE)、ペンタエリスリトールテトラアリルエーテル(PE(Tetra)AE)、1,3,5-トリアリルメサート(mesate)、トリアリルシアヌラート、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項20規定の方法。
【請求項22】
ポリアリル化合物が、トリアリルトリメリタート(TATM)、1,3,5-トリアリルメサート、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項20規定の方法。
【請求項23】
ポリアクリラート化合物が、ペンタエリスリトールジアクリラート(PE(Di)A)、ペンタエリスリトールトリアクリラート(PE(Tri)A)、ペンタエリスリトールテトラアクリラート(PE(Tetra)A) 、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項20規定の方法。
【請求項24】
ポリアクリラート化合物がペンタエリスリトールテトラアクリラート(PE(Tetra)A)を含む、請求項20規定の方法。
【請求項25】
ポリビニル化合物が、天然油、ジビニルベンゼン、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項20規定の方法。
【請求項26】
ポリビニル化合物がジビニルベンゼンを含む、請求項20規定の方法。
【請求項27】
官能基を含有する化合物と補助試薬化合物を最初に反応させて付加物を形成し、該付加物をポリオレフィンと接触させる、請求項1〜26のいずれか1項規定の方法。
【請求項28】
ポリオレフィンを最初に補助試薬化合物と接触させ、その後、官能基を含有する化合物と接触させる、請求項1〜26のいずれか1項規定の方法。
【請求項29】
ポリオレフィン、官能基を含有する化合物および補助試薬化合物を同時に接触させる、請求項1〜26のいずれか1項規定の方法。
【請求項30】
ポリオレフィンが、少なくとも1つのオレフィンモノマーの重合から誘導される、ホモポリマー、コポリマーまたはターポリマーを含む、請求項1〜29規定の方法。
【請求項31】
少なくとも1つのオレフィンモノマーが、α-オレフィンモノマー、ジオレフィンモノマー、および少なくとも1つの内部オレフィン結合を含有する重合性モノマーを含む群より選択される、請求項30規定の方法。
【請求項32】
オレフィンモノマーがα-オレフィンモノマーを含む、請求項30規定の方法。
【請求項33】
α-オレフィンモノマーが、プロピレン、1-ブテン、イソブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテン、それらの分岐異性体、スチレン、α-メチルスチレン、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項32規定の方法。
【請求項34】
α-オレフィンモノマーがプロピレンを含む、請求項32規定の方法。
【請求項35】
オレフィンモノマーがジオレフィンモノマーを含む、請求項30規定の方法。
【請求項36】
ジオレフィンモノマーが脂肪族化合物を含む、請求項35規定の方法。
【請求項37】
ジオレフィンモノマーが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-エチル-1,3-ブタジエン、ピペリレン、ミルセン、アレン、1,2-ブタジエン、1,4,9-デカトリエン、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、1,5-ヘキサジエン、4-メチル-1,4-ヘキサジエン、5-メチル-1,4-ヘキサジエン、7-メチル-1,6-オクタジエン、フェニルブタジエン、ペンタジエン、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項35規定の方法。
【請求項38】
ジオレフィンモノマーが二環式化合物を含む、請求項35規定の方法。
【請求項39】
ジオレフィンモノマーが、ノルボルナジエン、そのアルキル誘導体、5-アルキリデン-2-ノルボルネン化合物、5-アルケニル-2-ノルボルネン化合物、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項35規定の方法。
【請求項40】
ジオレフィンモノマーが、5-メチレン-2-ノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項35規定の方法。
【請求項41】
ジオレフィンモノマーが、1,4-シクロヘキサジエン、1,5-シクロオクタジエン、1,5-シクロドデカジエン、メチルテトラヒドロインデン、ジシクロペンタジエン、ビシクロ[2.2.1]ヘプタ-2,5-2,5-ジエン、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項35規定の方法。
【請求項42】
ポリオレフィンが、エチレンと少なくとも1つのα-オレフィンの混合物の重合から誘導されるコポリマーである、請求項1〜41規定の方法。
【請求項43】
ポリオレフィンが、エチレンとプロピレンの混合物の重合から誘導されるコポリマーである、請求項1〜41規定の方法。
【請求項44】
混合物が、約30〜約75重量パーセントのエチレンおよび約25〜約70重量パーセントのα-オレフィンを含む、請求項42〜43規定の方法。
【請求項45】
混合物が、約35〜約65重量パーセントのエチレンおよび約35重量パーセント〜約65重量パーセントのα-オレフィンを含む、請求項42〜43規定の方法。
【請求項46】
ポリオレフィンが、エチレン、少なくとも1つのα-オレフィンおよび少なくとも1つのジオレフィンモノマーの混合物の重合から誘導されるコポリマーである、請求項1〜41規定の方法。
【請求項47】
ポリオレフィンが、エチレン、プロピレン、ならびに5-エチリデン-2-ノルボルネンおよび1,5-ヘキサジエンの一方または両方、の混合物の重合から誘導されるコポリマーである、請求項1〜41規定の方法。
【請求項48】
混合物が、約0.5〜約15重量パーセントのジオレフィンモノマーを含む、請求項46〜47規定の方法。
【請求項49】
混合物が、約1〜約10重量パーセントのジオレフィンモノマーを含む、請求項46〜47規定の方法。
【請求項50】
ポリオレフィンが、ポリプロピレン、エチレン-プロピレンコポリマー、ポリイソブチレン、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項1〜49規定の方法。
【請求項51】
ポリオレフィンがポリプロピレンを含む、請求項1〜49規定の方法。
【請求項52】
ポリオレフィンが、約10,000〜約100,000の範囲の分子量(Mn)を有する、請求項1〜51規定の方法。
【請求項53】
ポリオレフィンが、約20,000〜約80,000の範囲の分子量(Mn)を有する、請求項1〜51規定の方法。
【請求項54】
ポリオレフィンが、約40,000〜約60,000の範囲の分子量(Mn)を有する、請求項1〜51規定の方法。
【請求項55】
官能基を含有する化合物が、チオール、エポキシド、無水物、カルボン酸、アミン、アミド、ホウ素含有化合物、ケイ素含有化合物、シアノ含有化合物、スルファート、スルホナート、スルフィット、エステル、チオエステル、ジチオエステル、エーテル、ハロゲン化物、ホスファート、ホスホナート、ホスフィン、ホスフィット、オレフィン、極性部分を含有する他の化合物、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項1〜54規定の方法。
【請求項56】
官能基を含有する化合物が、チオール、シラン、エポキシド、無水物、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項1〜54規定の方法。
【請求項57】
官能基を含有する化合物が、(3-メルカプトプロピル)-トリメトキシシラン、メルカプトウンデカン酸、無水メルカプトコハク酸、メルカプトエタノールアミン、メルカプトエポキシド、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項1〜54規定の方法。
【請求項58】
付加物が、ビスアリルスルフィド、ビスアリルエポキシド、およびそれらの混合物を含む群より選択される、請求項27規定の方法。
【請求項59】
ビスアリルスルフィドが、以下の式


その構造異性体またはその構造異性体の混合物を有する、請求項58規定の方法。
【請求項60】
ビスアリルエポキシドが、以下の式


その構造異性体またはその構造異性体の混合物を有する、請求項58規定の方法。
【請求項61】
溶媒の非存在下で実施される、請求項1〜60のいずれか1項規定の方法。
【請求項62】
溶媒の存在下で実施される、請求項1〜60のいずれか1項規定の方法。
【請求項63】
反応物質が溶媒に可溶性である、請求項62規定の方法。
【請求項64】
方法の少なくとも1つの段階が、ポリオレフィンの融点より上の温度において行われる、請求項1〜63のいずれか1項規定の方法。
【請求項65】
方法の少なくとも1つの段階が、約250℃より低い温度において行われる、請求項1〜63のいずれか1項規定の方法。
【請求項66】
請求項1〜65のいずれか1項規定の方法によって調製される官能化ポリオレフィン。
【請求項67】
官能化ポリオレフィンとケイ酸含有粒状物質を接触させるさらなる段階を含む、請求項1〜65のいずれか1項規定の方法。
【請求項68】
請求項67規定の方法によって製造される生成物。
【請求項69】
トリアリルトリメリタート、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、およびポリプロピレンを接触させる段階を含む、官能化ポリオレフィンを調製する方法。
【請求項70】
トリアリルトリメリタートと3-メルカプトプロピルトリメトキシシランを最初に反応させて付加物を形成し、およびその後、該付加物をポリプロピレンと接触させる、請求項69規定の方法。
【請求項71】
付加物を製造する方法であって、
官能基を含有する化合物と式I:
Xn-Y-Zm (I)
式中、
Yはコア部分であり;
Zは炭素-炭素二重結合を含有する部分であり;
XはZと異なる部分であり、かつXとYとの間の結合は単結合であってもまたは二重結合であってもよく;
nは0より大きいまたは0と等しい整数であり;
mは少なくとも3の値を有する整数であり;および
m+nはYの原子価までの数に等しい;
を有する補助試薬化合物を反応させる段階を含み、
ここで、官能基を含有する化合物は、フリーラジカル媒介性重合反応およびフリーラジカル媒介性グラフト反応において実質的に不活性である、方法。
【請求項72】
請求項71規定の方法に従って製造される付加物。
【請求項73】
トリアリルトリメリタートおよび3-メルカプトプロピルトリメトキシシランの付加物。

【図1】
image rotate


【公表番号】特表2008−519110(P2008−519110A)
【公表日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−539435(P2007−539435)
【出願日】平成17年11月4日(2005.11.4)
【国際出願番号】PCT/CA2005/001683
【国際公開番号】WO2006/047875
【国際公開日】平成18年5月11日(2006.5.11)
【出願人】(505458245)クィーンズ ユニバーシティー アット キングストン (11)
【Fターム(参考)】