説明

官能化ポリ(アリーレンエーテル)とエチレン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む組成物、その製造方法並びにその製品

熱可塑性組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)、及び(a)エチレン又はα−オレフィンと(b)アルキル(メタ)アクリレートのコポリマーを含む。組成物中の任意成分には、耐衝撃性改良剤及び難燃剤が挙げられる。組成物は、ワイヤ及びケーブル絶縁を製造するのに有用である。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
ポリ(アリーレンエーテル)樹脂とエチレン−アルキルアクリレートコポリマーを含む熱可塑性組成物は当技術分野で公知である。例えば、Haaf他の米国特許第4442251号には、一般に、ポリフェニレンエーテル樹脂、適宜耐衝撃性改良剤及び少量のエチレンとメチルアクリレートとのコポリマーを含む組成物が記載されている。Yates他の米国特許第5008333号には、一般に、ポリフェニレンエーテル、ポリ(アルキレンジカルボキシレート)のような線状ポリエステル、芳香族ポリカーボネート単位をかなりの割合で含むポリマー、及び特性改善量のアルキレンアクリレートコポリマーから製造された熱可塑性ブレンドが記載されている。Shibuya他の米国特許第5162435号には、一般に、ポリオレフィン20〜77重量%、ポリフェニレンエーテル樹脂20〜77重量%、アルケニル芳香族重合鎖と脂肪族炭化水素鎖とを含むポリマー2〜50重量%、及びエステル基含有エチレンコポリマー1〜25重量を含む樹脂組成物が記載されている。ポリ(アリーレンエーテル)樹脂とエチレン−アルキルアクリレートコポリマーを含む組成物で、樹脂相溶性及び引張特性の向上した組成物に対するニーズが依然として存在する。
【特許文献1】米国特許第4442251号明細書
【特許文献2】米国特許第5008333号明細書
【特許文献3】米国特許第5162435号明細書
【特許文献4】米国特許第3306875号明細書
【特許文献5】米国特許第3375228号明細書
【特許文献6】米国特許第4148843号明細書
【特許文献7】米国特許第4562243号明細書
【特許文献8】米国特許第4663402号明細書
【特許文献9】米国特許第4665137号明細書
【特許文献10】米国特許第5091480号明細書
【特許文献11】米国特許第5071922号明細書
【特許文献12】米国特許第5079268号明細書
【特許文献13】米国特許第5304600号明細書
【特許文献14】米国特許第5310820号明細書
【特許文献15】米国特許第5338796号明細書
【特許文献16】欧州特許第261574号明細書
【特許文献17】米国特許第4923932号明細書
【特許文献18】米国特許第4081587号明細書
【特許文献19】米国特許第5543233号明細書
【特許文献20】米国特許第5571878号明細書
【特許文献21】米国特許第5576396号明細書
【特許文献22】米国特許第5986027号明細書
【特許文献23】米国特許第6057013号明細書
【特許文献24】米国特許第6541585号明細書
【特許文献25】米国特許出願公開第2002−120160号明細書
【特許文献26】米国特許第2933480号明細書
【特許文献27】米国特許第3093621号明細書
【特許文献28】米国特許第3211709号明細書
【特許文献29】米国特許第3646168号明細書
【特許文献30】米国特許第3790519号明細書
【特許文献31】米国特許第3884993号明細書
【特許文献32】米国特許第3894999号明細書
【特許文献33】米国特許第4059654号明細書
【特許文献34】米国特許第4166055号明細書
【特許文献35】米国特許第4584334号明細書
【特許文献36】米国特許第5258455号明細書
【特許文献37】米国特許第4097550号明細書
【特許文献38】米国特許第5461096号明細書
【特許文献39】米国特許第6255371号明細書
【特許文献40】米国特許第6547992号明細書
【特許文献41】米国特許第6355832号明細書
【特許文献42】米国特許第6534673号明細書
【特許文献43】米国特許第6251308号明細書
【特許文献44】米国特許出願公開第2002−169256号明細書
【特許文献45】米国特許出願公開第2002−173597号明細書
【特許文献46】米国特許出願公開第2002−177027号明細書
【特許文献47】米国特許出願公開第2003−096123号明細書
【特許文献48】米国特許出願公開第2003−215588号明細書
【特許文献49】米国特許第4634742号明細書
【特許文献50】ドイツ特許出願公開第3117514号明細書
【特許文献51】ドイツ特許出願公開第4103140号明細書
【特許文献52】米国特許第4677185号明細書
【特許文献53】米国特許第4701514号明細書
【特許文献54】米国特許第4760118号明細書
【特許文献55】米国特許第4806601号明細書
【特許文献56】米国特許第5171761号明細書
【特許文献57】米国特許第5219951号明細書
【特許文献58】米国特許第5352745号明細書
【特許文献59】米国特許第5834565号明細書
【特許文献60】米国特許第5965663号明細書
【特許文献61】米国特許第6051662号明細書
【特許文献62】米国特許第6352782号明細書
【特許文献63】米国特許第6384176号明細書
【特許文献64】米国特許第6469124号明細書
【特許文献65】米国特許第6521703号明細書
【特許文献66】米国特許第6569982号明細書
【特許文献67】米国特許第6617398号明細書
【特許文献68】米国特許第6627704号明細書
【特許文献69】米国特許第6627708号明細書
【特許文献70】米国防衛出願第521号明細書
【特許文献71】米国特許第6388046号明細書
【特許文献72】欧州特許出願公開第413972号明細書
【特許文献73】特開平3−185059号明細書
【特許文献74】ドイツ特許出願公開第19602139号明細書
【特許文献75】米国特許第4782108号明細書
【特許文献76】米国特許第4814393号明細書
【特許文献77】米国特許第4892904号明細書
【特許文献78】米国特許第5061753号明細書
【特許文献79】米国特許第5376724号明細書
【特許文献80】米国特許第6414084号明細書
【特許文献81】米国特許第6420459号明細書
【非特許文献1】D. W. Van Krevelen, “Properties of Polymers,” Elsevier Scientific Publishing, New York, 1976, pp.129−143
【非特許文献2】C. Pugh and V. Percec, Polym. Prepr. (Am. Chem. Soc., Div. Polym. Chem.)(1985), 26(2), 303−5
【非特許文献3】https://search.ip.com/viewPub.isp?pubID=IPCOM000007658D Hua Guo, “PPE−grafted−EVA for Use in the Cable and Wire Industry” Printed 4/30/2002; 2 pages
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0002】
本発明の一実施形態は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキルアクリレートコポリマーを含む組成物である。本組成物の製造方法並びに該組成物を含む物品を始めとする他の実施形態については、以下で詳しく説明する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0003】
本発明者らは、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキルアクリレートコポリマーとを含む組成物によって、従来達成し得なかった望ましい組合せの特性、特に、高い引張強さと引張弾性率と引張伸びが得られることを見いだした。官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)でも、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)でも、或いは無水マレイン酸官能化ポリ(アリーレンエーテル)でもよい。
【0004】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)は封鎖ポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。本明細書では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)とは、封鎖剤との反応によって対応非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)に存在する遊離ヒドロキシル基の50%以上、好ましくは75%以上、さらに好ましくは90%以上、さらに一段と好ましくは95%以上、なお一段と好ましくは99%以上が官能化されたポリ(アリーレンエーテル)と定義される。
【0005】
封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造で表される。
【0006】
Q(J−K)
式中、Qは一価、二価又は多価フェノールの残基、好ましくは一価又は二価フェノールの残基、さらに好ましくは一価フェノールの残基であり、yは1〜100であり、Jは次式の繰返し構造単位からなる。
【0007】
【化1】

式中、mは1〜約200、好ましくは2〜約200であり、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどである。Kはポリ(アリーレンエーテル)のフェノール性ヒドロキシル基と封鎖剤との反応で生成した封鎖基である。得られる封鎖基には、以下のものがある。
【0008】
【化2】

式中、RはC〜C12アルキルなどであり、R〜Rは各々独立に水素、C〜C18ヒドロカルビル、アルキル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボキシレート、イミデート、チオカルボキシレートなどであり、R〜R13は各々独立に水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、ヒドロキシ、アミノなどであり、Yは以下に挙げるような二価基である。
【0009】
【化3】

式中、R14及びR15は各々独立に水素、C〜C12アルキルなどである。本明細書で用いる「ヒドロカルビル」とは、炭素と水素のみからなる残基をいう。この残基は、脂肪族又は芳香族でも、直鎖又は環式又は枝分れでも、飽和又は不飽和でもよい。ただし、ヒドロカルビル残基は、その旨明記したときは、置換基の炭素と水素に加えてヘテロ原子を含んでいてもよい。例えば、かかるヘテロ原子を含むと特記されている場合、ヒドロカルビル基は、カルボニル基、アミノ基、ヒドロキシル基などを含んでいもよいし、或いは、ヒドロカルビル基の主鎖中にヘテロ原子を含んでいてもよい。本明細書で用いる「ハロアルキル」という用語には、部分的又は完全にハロゲン化されたアルキル基を始めとして、1以上のハロゲン原子で置換されたアルキル基が包含される。
【0010】
一実施形態では、Qは多官能性フェノールを含めたフェノール類の残基であり、次式の構造の基を包含する。
【0011】
【化4】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどであり、Xは水素、C〜C12アルキル、C〜C18アリール、C〜C18アルキル置換アリール、C〜C18アリール置換アルキル、或いはこれらいずれかのヒドロカルビル基であってカルボン酸、アルデヒド、アルコール、アミノ基などの1以上の置換基を有するものでもよいし、Xは硫黄、スルホニル、スルフリル、酸素その他の2以上の原子価を有していて各種のビス−又はそれ以上のポリフェノールを生成する橋かけ基でもよく、y及びnは各々独立に1〜約100、好ましくは1〜3、さらに好ましくは約1〜2であり、好ましい実施形態ではy=nである。Qは2,2′,6,6′−テトラメチル−4,4′−ジフェノールのようなジフェノールの残基であってもよい。
【0012】
一実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、以下の構造の1種以上の一価フェノールの重合生成物から基本的になるポリ(アリーレンエーテル)を封鎖することによって製造される。
【0013】
【化5】

式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどであり、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどである。適当な一価フェノールとしては、Hayの米国特許第3306875号に記載されているものが挙げられ、非常に好ましい一価フェノールとしては、2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールが挙げられる。ポリ(アリーレンエーテル)は、2,6−ジメチルフェノール及び2,3,6−トリメチルフェノールのような2種以上の一価フェノールのコポリマーであってもよい。
【0014】
一実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0015】
【化6】

式中、R〜Rは各々独立に水素、C〜C18ヒドロカルビル、アルキル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボキシレート、イミデート、チオカルボキシレートなどである。非常に好ましい封鎖基として、アクリレート(R=R=R=水素)及びメタクリレート(R=メチル、R=R=水素)が挙げられる。
【0016】
別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0017】
【化7】

式中、Rは、C〜C12アルキル、好ましくはC〜Cアルキル、さらに好ましくはメチル、エチル又はイソプロピルである。本発明者らは、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)に炭素−炭素二重結合のような重合性官能基がない場合であっても本発明の有益な特性が達成できるという予想外の知見を得た。
【0018】
さらに別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0019】
【化8】

式中、R〜R13は各々独立に水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、ヒドロキシ、アミノなどである。この種の好ましい封鎖基としては、サリチレート(R=ヒドロキシ、R10〜R13=水素)が挙げられる。
【0020】
さらに別の実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は次の構造の1種以上の封鎖基を含む。
【0021】
【化9】

式中、Aは、例えばエチレン、1,2−プロピレン、1,3−プロピレン、2−メチル−1,3−プロピレン、2,2−ジメチル−1,3−プロピレン、1,2−ブチレン、1,3−ブチレン、1,4−ブチレン、2−メチル−1,4−ブチレン、2,2−ジメチル−1,4−ブチレン、2,3−ジメチル−1,4−ブチレン、ビニレン(−CH=CH−)、1,2−フェニレンなどの飽和又は不飽和C〜C12二価炭化水素基である。これらの封鎖ポリ(アリーレンエーテル)樹脂は、例えば非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と環状無水物封鎖剤との反応によって簡便に製造できる。かかる環状無水物封鎖剤としては、例えば、無水マレイン酸、無水コハク酸、無水グルタル酸、無水アジピン酸、無水フタル酸などが挙げられる。
【0022】
封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の製造方法に特段の制限はない。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と封鎖剤との反応によって形成することができる。封鎖剤には、文献でフェノール基と反応することが知られている化合物が挙げられる。かかる化合物には、例えば無水物、酸塩化物、エポキシ、カーボネート、エステル、イソシアネート、シアン酸エステル又はハロゲン化アルキル基を有するモノマー及びポリマーがいずれも包含される。封鎖剤は有機化合物に限定されず、例えばリン系及び硫黄系封鎖剤も挙げられる。封鎖剤の具体例としては、例えば無水酢酸、無水コハク酸、無水マレイン酸、無水サリチル酸、サリチレート単位を有するポリエステル、サリチル酸のホモポリエステル、無水アクリル酸、無水メタクリル酸、アクリル酸グリシジル、メタクリル酸グリシジル、塩化アセチル、塩化ベンゾイル、炭酸ジ(4−ニトロフェニル)のような炭酸ジフェニル、アクリロイルエステル、メタクリロイルエステル、アセチルエステル、フェニルイソシアネート、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルフェニルイソシアネート、シアナトベンゼン、2,2−ビス(4−シアナトフェニル)プロパン、3−(α−クロロメチル)スチレン、4−(α−クロロメチル)スチレン、臭化アリルなど、カーボネート及びその置換誘導体、並びにこれらの混合物が挙げられる。封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の上記その他の製造方法は、例えばHoloch他の米国特許第3375228号、Goossensの米国特許第4148843号、Percec他の米国特許第4562243号、同第4663402号、同第4665137号及び同第5091480号、Nelissen他の米国特許第5071922号、同第5079268号、同第5304600号及び同第5310820号、Vianello他の米国特許第5338796号、並びにPeters他の欧州特許第261574号に記載されている。
【0023】
好ましい実施形態では、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は、溶媒としてのアルケニル芳香族モノマー中での非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と無水物との反応によって製造できる。この方法は、他の諸成分と直接ブレンドして硬化性組成物を形成することができる封鎖ポリ(アリーレンエーテル)が得られるという利点があり、この方法を用いると、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の単離或いは不要な溶媒又は試薬の除去は必要なくなる。
【0024】
未封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と無水物との反応に封鎖触媒を使用してもよい。かかる化合物の例としては、フェノールと上記封鎖剤との縮合を触媒することができる当技術分野で公知のものがある。有用な物質は、例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化テトラアルキルアンモニウムなどの塩基性化合物水酸化物塩、トリブチルアミン、トリエチルアミン、ジメチルベンジルアミン、ジメチルブチルアミンなどの第三アルキルアミン、N,N−ジメチルアニリンなどアルキル−アリール混成第三アミン及びその置換誘導体、イミダゾール、ピリジンなどの複素環式アミン及びそれらの置換誘導体、例えば2−メチルイミダゾール、2−ビニルイミダゾール、4−(ジメチルアミノ)ピリジン、4−(1−ピロリノ)ピリジン、4−(1−ピペリジノ)ピリジン、2−ビニルピリジン、3−ビニルピリジン、4−ビニルピリジンなどを始めとする塩基性化合物である。例えばイソシアネートやシアン酸エステルとフェノールとの縮合触媒として公知のスズや亜鉛の塩などの有機金属塩も有用である。これに関して有用な有機金属塩は、当業者に周知の多数の刊行物及び特許で当技術分野で公知である。
【0025】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)は環官能化ポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。一実施形態では、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)は次の繰返し構造単位を含むポリ(アリーレンエーテル)である。
【0026】
【化10】

式中、L〜Lは各々独立に水素、アルケニル又はアルキニル基であり、アルケニル基は次式で表され、
【0027】
【化11】

(式中、L〜Lは独立に水素又はメチルであり、aは0〜4の整数である。)、アルキニル基は次式で表され、
【0028】
【化12】

(式中、Lは水素、メチル又はエチルであり、bは0〜4の整数である。)、環官能化ポリ(アリーレンエーテル)中の全L〜L置換基の約0.02〜約25モル%はアルケニル及び/又はアルキニル基である。この範囲内で、アルケニル及び/又はアルキニル基は好ましくは約0.1モル%以上、さらに好ましくは約0.5モル%以上である。同じくこの範囲内で、アルケニル及び/又はアルキニル基は好ましくは約15モル%以下、さらに好ましくは約10モル%以下である。
【0029】
環官能化ポリ(アリーレンエーテル)は公知の方法で製造し得る。例えば、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレンエーテル)のような非官能化ポリ(アリーレンエーテル)をn−ブチルリチウムのような試薬で金属化した後、臭化アリルのようなハロゲン化アルケニル及び/又は臭化プロパルギルのようなハロゲン化アルキニルと反応させればよい。環官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂の上記その他の製造方法は、例えばKatayose他の米国特許第4923932号に記載されている。
【0030】
別の実施形態では、官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、ポリ(アリーレンエーテル)とα,β−不飽和カルボニル化合物又はβ−ヒドロキシカルボニル化合物との溶融反応の生成物である。α,β−不飽和カルボニル化合物の具体例としては、例えば、無水マレイン酸、無水シトラコン酸などが挙げられる。β−ヒドロキシカルボニル化合物の具体例としては、例えばクエン酸などが挙げられる。かかる官能化は、通常は約190〜約290℃の温度でのポリ(アリーレンエーテル)と所望のカルボニル化合物との溶融混合によって実施される。
【0031】
なお、本明細書で「非封鎖」又は「非官能化」と記載したポリ(アリーレンエーテル)は次式の繰返し構造単位を含むものである。
【0032】
【化13】

式中、各構造単位では、Zは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどであり、Zは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ、ハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシなどである。好ましくは、各ZはCアルキルであり、各Zは水素又はメチルである。
【0033】
封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の分子量又は固有粘度に特段の制限はない。一実施形態では、本組成物は、数平均分子量約3000〜約25000原子質量単位(AMU)の封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、数平均分子量約10000AMU以上、さらに好ましくは約15000AMU以上の封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を使用するのが好ましい。
【0034】
別の実施形態では、本組成物は、クロロホルム中25℃で測定して約0.1〜約0.6dL/gの固有粘度を有する封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は、好ましくは約0.2dL/g以上、さらに好ましくは約0.25dL/g以上である。同じくこの範囲内で、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は好ましくは約0.5dL/g以下、さらに一段と好ましくは約0.4dL/g以下である。一般に、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度と対応非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度との差はわずかである。具体的には、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度は概して非封鎖ポリ(アリーレンエーテル)の固有粘度の10%以内である。分子量及び固有粘度の異なる2種以上の封鎖ポリ(アリーレンエーテル)のブレンドの使用も当然に考えられる。
【0035】
組成物は、2種以上の官能化ポリ(アリーレンエーテル)のブレンドを含んでいてもよい。かかるブレンドは、別個に製造・単離された官能化ポリ(アリーレンエーテル)から製造し得る。別法として、かかるブレンドは、1種類のポリ(アリーレンエーテル)と2種以上の官能化剤との反応で製造することもできる。例えば、ポリ(アリーレンエーテル)を2種類の封鎖剤と反応させてもよいし、或いはポリ(アリーレンエーテル)を金属化して2種類の不飽和アルキル化剤と反応させてもい。別法では、モノマー組成及び/又は分子量の異なる2種以上のポリ(アリーレンエーテル)樹脂の混合物を、1種類の官能化剤と反応させてもよい。
【0036】
組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの合計100重量部当たり約25〜約95重量部の官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む。この範囲内で、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の使用量は好ましくは約30重量部以上、さらに好ましくは約35重量部以上である。同じくこの範囲内で、官能化ポリ(アリーレンエーテル)の使用量は好ましくは約75重量部以下、さらに好ましくは約65重量部以下、さらに一段と好ましくは約55重量部以下である。
【0037】
本組成物は、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む。オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくは(a)エチレン又はC〜Cα−オレフィンと(b)アルキル(メタ)アクリレート(ただし、アルキルはC〜Cアルキルであり、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを表す)の重合生成物である。コポリマーは、好ましくは上記2種類のモノマーを、全モノマー100重量部当たりオレフィン約60〜約95重量%及びアルキル(メタ)アクリレート約5〜約40重量%の比で重合させることによって合成される。このモノマー比の範囲内で、アルキル(メタ)アクリレートの使用量は好ましくは約15重量%以上、さらに好ましくは約20重量%以上、さらに好ましくは約25重量%以上である。
【0038】
オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの製造に用いられるオレフィンは、好ましくはエチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテンなどである。オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの製造に用いられるアルキル(メタ)アクリレートモノマーの場合、アルキル基は、好ましくはメチル、エチル、プロピル、n−ブチル、n−ペンチル、n−ヘキシル、n−ヘプチル、n−オクチルなどである。非常に好ましいアルキル基としては、メチルが挙げられる。オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくはエチレン−メチルアクリレートコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、エチレン−エチルメタクリレートコポリマーなどである。非常に好ましいオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーとしては、エチレン−メチルアクリレートコポリマーが挙げられる。
【0039】
一実施形態では、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、上述のオレフィンモノマーとアルキル(メタ)アクリレートモノマーの重合生成物である。別の実施形態では、モノマーは、無水マレイン酸、マレイン酸、アクリル酸、メタクリル酸、一酸化炭素、フェニルビニルケトン、マレイミド、グリシジル(メタ)アクリレート、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートのような極性コモノマーをさらに含んでいてもよい。この実施形態では、コポリマー生成物はターポリマーである。適当なターポリマーとしては、エチレン−メチルアクリレート−グリシジルメタクリレートターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−無水マレイン酸ターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−一酸化炭素ターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−メタクリル酸ターポリマー、エチレン−メチルアクリレート−トリエトキシシリルエチレンターポリマーなどが挙げられる。これらの1種以上の極性コモノマーを使用すると、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーと官能化ポリ(アリーレンエーテル)の混和性を調節することができる。また、無機塩、アジリジン、エポキシド、アルコールなどとの反応のための反応部位をエチレンエラストマーに生じさせることもできる。かかる化学反応は、系を架橋して、強度や耐溶剤性のような性質を改良するのに使用できる。極性モノマーが存在する場合、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの製造に用いられる全モノマーの約1〜約25重量%をなす。
【0040】
別の実施形態では、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、上述のオレフィンとアルキル(メタ)アクリレートの重合生成物であって、さらにα,β−不飽和カルボニル化合物又はβ−ヒドロキシカルボニル化合物をグラフトしたものを含む。α,β−不飽和カルボニル化合物の代表例としては、無水マレイン酸、マロン酸などが挙げられる。β−ヒドロキシカルボニル化合物の代表例としては、クエン酸、イソクエン酸、リンゴ酸などが挙げられる。この実施形態のグラフトコポリマーとしては、例えばポリエチレン−メチルアクリレート−グラフト−無水マレイン酸が挙げられる。
【0041】
オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーは、好ましくは17.5J1/2/cm3/2超、好ましくは18J1/2/cm3/2超、さらに好ましくは18.2J1/2/cm3/2超の溶解度パラメータを有する。溶解度パラメータの値は、D.W.Van Krevelen, “Properties of Polymers,” Elsevier Scientific Publishing, New York, 1976, pp.129−143に記載の原子団寄与法に準拠して算出することができる。
【0042】
オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの製造方法は、当該技術分野で公知である。適当な方法は、例えばClampitt他の米国特許第4081587号、Latiolais他の米国特許第5543233号及び第5571878号、Wang他の米国特許第5576396号、Lippert他の米国特許第5986027号、Ching他の米国特許第6057013号、Johnson他の米国特許第6541585号、及びWatanabe他の米国特許出願公開第2002−120160号に記載されている。有用なオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの市販品の具体例としては、Chevron Chemical社からPE 2205(メチルアクリレート含有量20重量%、メルトインデックス2.4g/min)として市販されているエチレン−メチルアクリレートコポリマー、並びにAtofina社からアクリル酸エステル含有量6〜8重量%、メルトフローインデックス1〜1.5g/minのLOTRYL(登録商標)7BA01並びにLOTRYL(登録商標)15MA05、18MA05、24MA005、24MA07、28MA07、29MA03、35MA05として市販されているエチレン−メチルアクリレートコポリマーが挙げられる。その他の材料としては、AtochemからLOTRYL(登録商標)17BA04(アクリル酸エステル含有16〜19重量%、メルトフローインデックス190℃で3.5〜4.5g/min、230℃で9.8g/min)及びアクリル酸エステル含有量16〜19重量%、メルトフローインデックス6.5〜約8g/minのLOTRYL(登録商標)17BA07のようなLOTRYL(登録商標)という商品名で市販されているエチレン−n−ブチルアクリレートが挙げられる。
【0043】
本組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの合計100重量部当たり約5〜約75重量部のオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む。この範囲内で、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの量は、好ましくは約15重量部以上、さらに好ましくは約30重量部以上、さらに一段と好ましくは約45重量部以上である。同じくこの範囲内で、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの量は、好ましくは約65重量部以下、さらに好ましくは約55重量部以下である。
【0044】
本組成物は、耐衝撃性改良剤を適宜含んでいてもよい。適当な耐衝撃性改良剤としては、天然ゴム、合成ゴム、熱可塑性エラストマーのような天然及び合成エラストマーポリマーが挙げられる。これらは、通例、オレフィン(例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、4−メチル−1−ペンテン)、アルケニル芳香族モノマー(例えば、スチレン及びα−メチルスチレン)、共役ジエン(例えば、ブタジエン、イソプレン及びクロロプレン)、及びビニルカルボン酸及びその誘導体(例えば、酢酸ビニル、アクリル酸及びアクリロニトリル)などのモノマーから誘導される。これらは、上述の適当な各種モノマーから誘導されるホモポリマーであっても、ランダム、ブロック、グラフト及びコアシェルコポリマーを始めとするコポリマーであってもよく、これらについては以下でさらに具体的に説明する。耐衝撃性改良剤としての使用に適したポリオレフィンとしては、ポリエチレン、ポリプロピレン及びポリイソブチレンが挙げられ、好ましいホモポリマーはポリエチレン、LLDPE(線状低密度ポリエチレン)、HDPE(高密度ポリエチレン)及びMDPE(中密度ポリエチレン)並びにアイソタクチックポリプロピレンである。この一般構造のポリオレフィン樹脂並びにそれらの製造方法は当技術分野で周知であり、例えばGresham他の米国特許第2933480号、Gladding他の米国特許第3093621号、Adamek他の米国特許第3211709号、Barrett他の米国特許第3646168号、Wahlborg他の米国特許第3790519号、Gros他の米国特許第3884993号、Boozer他の米国特許第3894999号、Van Bodungen他の米国特許第4059654号、Lee、Jr.の米国特許第4166055号並びにLee、Jr.他の米国特許第4584334号に記載されている。
【0045】
エチレンとプロピレンや4−メチルペンテン−1などのαオレフィンとのコポリマーのようなポリオレフィンコポリマーを使用することもできる。エチレンとC〜C10モノオレフィンと非共役ジエンのコポリマー(本明細書ではEPDMコポリマーともいう。)も適している。EPDMコポリマー用の適当なC〜C10モノオレフィンの具体例としては、プロピレン、プロペン、1−ブテン、2−ブテン、1−ペンテン、2−ペンテン、1−ヘキセン、2−ヘキセン及び3−ヘキセンが挙げられる。適当なジエンとしては、1,4−ヘキサジエン、並びに単環式及び多環式ジエンが挙げられる。エチレンと他のC〜C10モノオレフィンモノマーの比は95:5〜5:95であり、ジエン単位は0.1〜10モル%の量で存在する。Laughner他の米国特許第5258455号に開示されている通り、EPDMコポリマーをアシル基又は求電子性基で官能化してポリフェニレンエーテルにグラフトすることもできる。
【0046】
その他の適当な耐衝撃性改良剤としては、共役ジエンホモポリマー及びランダムコポリマーが挙げられる。具体例としては、ポリブタジエン、ブタジエン−スチレンコポリマー、ブタジエン−アクリレートコポリマー、イソプレン−イソブテンコポリマー、クロロブタジエンポリマー、ブタジエンアクリロニトリルポリマー及びポリイソプレンが挙げられる。好ましい実施形態では、耐衝撃性改良剤はアルケニル芳香族化合物と共役ジエンのブロックコポリマーである。ブロックコポリマーは(A)アルケニル芳香族化合物から誘導された1以上のブロックと(B)共役ジエンから誘導された1以上のブロックとを含むコポリマーで、ブロック(B)中の脂肪族不飽和基の含有量を水素添加によって低減したコポリマーである。ブロック(A)及び(B)の配列には、線状構造のものと、ラジアルテレブロック構造(枝分れ鎖をもつものと、もたないものがある。)のものがある。これらの構造のうち、好ましいのは、ジブロック(A−Bブロック)、トリブロック(A−B−Aブロック又はB−A−Bブロック)、テトラブロック(A−B−A−Bブロック)及びペンタブロック(A−B−A−B−Aブロック又はB−A−B−A−Bブロック)構造を含めた線状構造並びにAとBを合計6ブロック以上含有する線状構造のものである。さらに好ましいのはジブロック、トリブロック及びテトラブロック構造であり、A−B−Aトリブロック構造が特に好ましい。
【0047】
ブロック(A)を与えるアルケニル芳香族化合物は次式で表される。
【0048】
【化14】

式中、R16及びR17は各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表し、R18及びR22は各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、塩素原子、臭素原子、カルボン酸基(−COH)、ヒドロキシ基などを表し、R19〜R21は各々独立に水素原子、C〜Cアルキル基、C〜Cアルケニル基などを表し、或いはR18とR19が中央の芳香環と共にナフチル基を形成してもよいし、R18とR19が中央の芳香環と共にナフチル基を形成してもよい。
【0049】
アルケニル芳香族化合物の具体例としては、スチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルキシレン、ビニルトルエン、ビニルナフタレン、ジビニルベンゼン、ブロモスチレン、クロロスチレンなど、さらにこれらのアルケニル芳香族化合物の1種以上を含む組合せがある。これらのうち、スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエン及びビニルキシレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。
【0050】
共役ジエンの具体例としては、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエンなどが挙げられる。これらのうち、1,3−ブタジエン及び2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましく、1,3−ブタジエンがさらに好ましい。共役ジエンに加えて、水素添加ブロックコポリマーは、少量の低級オレフィン系炭化水素、例えばエチレン、プロピレン、1−ブテン、ジシクロペンタジエン、非共役ジエンなどを含んでいてもよい。
【0051】
ブロックコポリマーは適宜水素添加してもよい。水素添加する場合、共役ジエン由来の脂肪族鎖部分の不飽和結合の50%未満、具体的には20%未満、特に10%未満が還元されずに残る程度に水素添加するのが好ましい。アルケニル芳香族化合物由来の芳香族不飽和結合は最大約25%程度水素添加し得る。ブロックコポリマーは、適宜グラフト無水マレイン酸官能基又は末端ヒドロキシル基を含んでいてもよい。
【0052】
特に好ましいブロックコポリマーは、トリブロックコポリマー及びラジアルブロックコポリマーである。トリブロックコポリマーの具体例は、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、水素添加ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SEBS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SIS)、水素添加ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン(SEPS)、及びポリ(α−メチルスチレン)−ポリイソプレン−ポリ(α−メチルスチレン)である。市販のトリブロックコポリマーの例は、Kraton Polymers社から市販のCARIFLEX(登録商標)、KRATON(登録商標)D及びKRATON(登録商標)Gポリマー、クラレ(株)から市販のSEPTON(登録商標)及びHYBRAR(登録商標)ポリマー、並びに旭化成(株)から市販のTUFTEC(登録商標)ポリマーである。ラジアルブロックコポリマーは概して約60〜95重量%の重合アルケニル芳香族モノマーと約40〜5重量%の重合共役ジエンモノマーを含む。ラジアルブロックコポリマーは、放射状構造をなす3本以上のポリマー鎖を有する。各鎖の末端は実質的に非弾性セグメントであり、これに弾性ポリマーセグメントが結合している。これらのブロックコポリマーは、「枝分れ」ポリマーとも呼ばれ、Haaf他の米国特許第4097550号に記載されている。
【0053】
ブロックコポリマーには、架橋し、又はブレンドの他の成分で共有結合を形成することができるグラフトさせた官能基をさらに含むかかる材料も含まれる。かかる基には、無水マレイン酸、トリアルコキシシロキサンなどが挙げられる。
【0054】
耐衝撃性改良剤が存在する場合、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの合計100重量部当たり約0.1〜約30重量部の量で使用し得る。この範囲内で、耐衝撃性改良剤の量は、好ましくは約1重量部以上、さらに好ましくは約2重量部以上、さらに一段と好ましくは5重量部以上である。同じくこの範囲内で、耐衝撃性改良剤量は、好ましくは約25重量部以下、さらに好ましくは約20重量部以下、さらに一段と好ましくは約15重量部以下、なお一段と好ましくは約10重量部以下である。
【0055】
本組成物は、適宜難燃剤を含んでいてもよい。適当な難燃剤としては、2,2−ビス−(3,5−ジクロロフェニル)プロパンのようなハロ置換ジ芳香族化合物、及びBopp他の米国特許第5461096号に記載の含リン化合物が挙げられる。ハロ置換ジ芳香族系難燃剤のその他の具体例としては、臭素化ベンゼン、塩素化ビフェニル、臭素化ポリスチレン、含塩素芳香族ポリカーボネート、或いは2つのフェニル基の間に二価アルキレン基が介在し、核当たり2以上の塩素又は2以上の臭素原子を有する化合物、並びにこれらの混合物が挙げられる。
【0056】
本発明の組成物で用いる好ましい難燃性化合物はハロゲンフリーである。かかる好ましい化合物としては、元素態リン、有機ホスホン酸、ホスホネート、ホスフィネート、ホスフィナイト、トリフェニルホスフィンオキシドのようなホスフィンオキシド、ホスフィン、ホスファイト及びホスフェートのような含リン化合物が挙げられる。適当なホスフェートの具体例としては、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、フェニルエチレンハイドロジェンホスフェート、フェニル−ビス−3,5,5′−トリメチルヘキシルホスフェート、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)、ホスフェート、ジフェニルハイドロジェンホスフェート、ビス(2−エチル−ヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、フェニル−メチルハイドロジェンホスフェート、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリフェニルホスフェート、イソプロピル化トリフェニルホスフェート、ハロゲン化トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5′−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェートなどが挙げられる。
【0057】
好ましいホスフェートとしては、トリフェニルホスフェート、イソプロピル化及びブチル化トリフェニルホスフェートを始めとするアルキル化トリフェニルホスフェート、ビス−ネオペンチルピペリジニルジホスフェート、テトラフェニルビスフェノール−Aジホスフェート、テトラフェニルレゾルシノールジホスフェート、テトラフェニルヒドロキノンジホスフェート、ビスフェノール−Aポリ(フェニルホスフェート)、これらの混合物及び誘導体が挙げられる。ホスフェート、ホスフィネート及びホスホネートのアルミニウム塩も挙げられる。代表例としては、アルミニウムトリス(O−メチルメチルホスホネート)、アルミニウムトリス(O−エチルメチルホスホネート)、アルミニウムトリス(O−エチルエチルホスホネート)がある。他の適当な難燃剤としては、水酸化マグネシウム、ホウ酸亜鉛などが挙げられる。
【0058】
好ましい実施形態では、難燃剤は次式のメタロリン系難燃剤を含む。
【0059】
【化15】

式中、MはAl又はZnであり、dはAlでは3又はZnでは2であり、R23及びR24は各々独立にC〜C18ヒドロカルビルであり、m及びnは各々0又は1である。一実施形態では、R23及びR24は各々独立にC〜Cアルキルである。別の実施形態では、R23及びR24は各々メチル又はエチルである。一実施形態では、m及びnは各々0である。適当なメタロリン系難燃剤としては、例えばジメチルホスフィネート、ジエチルホスフィネート、ジ−n−プロピルホスフィネート、ジ−n−ブチルホスフィネート、ジ−n−ヘキシルホスフィネート、ジシクロヘキシルホスフィネート、ジ−2−エチルヘキシルホスフィネート、ジフェニルホスフィネート、ジ−o−トリルホスフィネート、ジメチルホスフェート、ジエチルホスフェート、ジ−n−プロピルホスフェート、ジ−n−ブチルホスフェート、ジ−n−ヘキシルホスフェート、ジシクロヘキシルホスフェート、ジ−2−エチルヘキシルホスフェート、ジフェニルホスフェート、ジ−o−トリルホスフェートなどの亜鉛及びアルミニウム塩、並びにこれらの混合物が挙げられる。好ましいメタロリン系難燃剤は、アルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)である。メタロリン系難燃剤の製造は、例えばSchlosserらの米国特許第6255371号及び同第6547992号、並びにWeferlingらの米国特許第6355832号及び同第6534673号に記載されている。
【0060】
組成物がメタロリン系難燃剤を含む場合、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とアクリロイルモノマーの合計100重量部当たり約0.1〜約50重量部で存在し得る。この範囲内で、メタロリン系難燃剤の量は、好ましくは約1重量部以上、さらに好ましくは約4重量部以上、さらに好ましくは約8重量部以上である。同じくこの範囲内で、メタロリン系難燃剤の量は、好ましくは約40重量部以下、さらに好ましくは約30重量部以下、さらに好ましくは約20重量部以下である。
【0061】
適当な難燃剤としては、さらに、ホスホニトリルクロリド、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド及びホスフィン酸アミドを始めとするリン−窒素結合を有する化合物が挙げられる。ピペラジン及びヒドロキシ芳香族化合物から誘導されたビス−ホスホルアミド材料が特に有用である。
【0062】
上述の難燃剤の組合せを使用してもよい。
【0063】
適当な含リン難燃剤添加剤は市販されており、ホスフェート難燃剤の製造方法は概して当該技術分野で公知である。一例として、これらの化合物は、ハロゲン化ホスフェート化合物を各種二価又は三価フェノール化合物と所望の数のホスフェート官能基が得られるまで反応させることによって製造することができる。フェノール化合物の例は、レゾルシノールやヒドロキノンのようなジヒドロキシ芳香族化合物である。
【0064】
難燃剤が存在する場合、組成物全体の重量を基準にして約0.5〜約30重量%の量で使用できる。含リン難燃剤の好ましいレベルは約9〜約17重量%である。実施形態によっては、トリフェニルホスフェートのような含リン難燃剤をヘキサブロモベンゼン及び適宜酸化アンチモンのような他の難燃剤と併用するのが好ましい。
【0065】
本組成物は、適宜、その特性を改質するための他の添加剤をさらに含んでいてもよい。例えば、二酸化チタン、炭酸カルシウム、タルク、シリカ、マイカのような染料、顔料、着色剤及び無機充填剤を組成物に配合してもよい。無機充填剤は、組成物全体の重量を基準にして約1〜約40重量%、好ましくは約5〜約35重量%の量で配合し得る。組成物に配合することができるその他の添加剤としは、金属粒子、補強剤(例えば、ガラス繊維)、導電性繊維(例えば、導電性カーボンブラック、炭素繊維、ステンレス鋼繊維、金属フレーク及び金属粉末)、酸化防止剤、熱安定剤、光安定剤、粘着防止剤、帯電防止剤、可塑剤、加工助剤、滑剤、ドリップ防止剤、流動性調整剤などが挙げられる。以上の添加剤は当技術分野で公知であり、その適量は過度の実験を伴わずに決定できる。一実施形態では、組成物は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの合計100重量部当たり約1〜約50重量部の非官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含んでいてもよい。
【0066】
本組成物は優れた特性バランスを示す。例えば、本組成物は成形後にUL−94に準拠して測定してV−1、さらに好ましくはV−0の難燃性評価を有し得る。成形後の組成物は、25℃でASTM D638に準拠して測定して、1MPa以上、好ましくは3MPa以上、さらに好ましくは7MPa以上の最大荷重時の引張強さを有し得る。本組成物は、25℃でASTM D638に準拠して測定して、約100%以上、好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上、さらに一段と好ましくは100%以上、なお一段と好ましくは150%以上、さらに好ましくは200%以上の破断点引張伸びを有し得る。
【0067】
一実施形態では、本組成物は、封鎖ポリ(アリーレンエーテル)、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマー、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンのコポリマー、及びハロゲンフリーの難燃剤を含む。
【0068】
別の実施形態では、本組成物は、メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)約25〜約95重量部、エチレン−メチルアクリレートコポリマー約5〜約75重量部、アルケニル芳香族化合物と共役ジエンのコポリマー約5〜約20重量部、及びハロゲンフリーの難燃剤約0.5〜約30重量部を含む。ただし、上記の重量部はすべてメタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)とエチレン−メチルアクリレートコポリマーの合計100重量部を基準にしたものである。
【0069】
別の実施形態は、ポリ(アリーレンエーテル)、オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマー及び次式のメタロリン系難燃剤を含む組成物である。
【0070】
【化16】

式中、MはAl又はZnであり、dはAlでは3又はZnでは2であり、R23及びR24は各々独立にC〜C18ヒドロカルビルであり、m及びnは各々0又は1である。この実施形態では、ポリ(アリーレンエーテル)は、上述の官能化ポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。或いは、ポリ(アリーレンエーテル)は上述の非官能化ポリ(アリーレンエーテル)であってもよい。非官能化ポリ(アリーレンエーテル)樹脂は約0.1〜約0.6dL/gの固有粘度を有する。
【0071】
別の実施形態は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキルアクリレートコポリマーをブレンドして均質ブレンドを形成することを含む組成物の製造方法である。当該方法の実施には公知のあらゆる装置を使用し得る。当該方法を実験室規模で利用するには、例えば(株)東洋精機製作所から市販のラボプラストミルのような実験室規模のミキサーを使用すればよい。当該方法を大規模で実施するのに好ましい装置としては、単軸及び二軸押出機が挙げられるが、二軸押出機がさらに好ましい。熱可塑性樹脂の溶融ブレンディング用の押出機は、例えばCoperion社(米国ニュージャージー州ラムゼイ)から市販されている。
【0072】
なお、本発明は上記成分が反応して反応生成物を形成した組成物も包含する。そこで、別の実施形態は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの反応生成物を含む組成物である。
【0073】
本発明は、上記の組成物及びその反応生成物を含む物品を包含する。そこで、一実施形態は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーを含む組成物を含む物品である。別の実施形態は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーとの反応生成物を含む組成物である。本組成物はケーブル及び電線の絶縁体の製造に特に有用である。本明細書に記載した諸性質の向上だけでなく、かかる用途で現在使用されているポリ塩化ビニル樹脂に付随する環境面での懸念が回避されるからである。物品は、射出成形、ブロー成形、ワイヤ押出などを始めとする熱可塑性樹脂製品の周知の成形技術によって製造できる。
【0074】
硬化組成物を絶縁体として含む絶縁線及びケーブルの具体例としては、硬化組成物を含む絶縁層で少なくとも導体を被覆した電気ケーブルが挙げられる。導体部を集合ワイヤに変更し、導体と絶縁層の間に半導電層を設け、或いは所望に応じて難燃性樹脂層を絶縁層の外面に形成することも可能である。電線及び電気ケーブルの具体例としては、銅線の集合体からなるワイヤと、ワイヤを被覆する半導電層で導電性炭素又は金属粉末を添加した樹脂組成物からなる半導電層と、半導電層を被覆する絶縁層で本硬化組成物からなる絶縁層と、絶縁層を被覆する被覆又は半導電層で金属シートからなる被覆又は半導電層と、最外面に設けられた難燃性硬化組成物とを含むケーブル、並びに被覆銅線の集合体と集合体の最外面に設けられた難燃性硬化組成物とを含むケーブルであって、被覆銅線が、銅単線と、単線を被覆する半導体層と、半導電層を被覆する絶縁層で本硬化組成物からなる絶縁層と、絶縁層上にさらに設けられた金属皮膜層とを含むケーブルなどが挙げられる。
【0075】
別の実施形態は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリオレフィンを含む組成物である。ポリ(アリーレンエーテル)とポリオレフィンは、ポリオレフィン主鎖と1以上のポリ(アリーレンエーテル)グラフトからなるグラフトコポリマーの存在によって相溶化できる。このコポリマーは、多孔質ポリオレフィンを照射してポリオレフィンにラジカル部位を生じさせ、次いで照射した多孔質ポリオレフィンを反応性封鎖ポリ(アリーレンエーテル)と溶融ブレンディングすることによって形成することができる。コポリマーは、ポリオレフィンのラジカル部位で2,6−ジメチルフェノールのようなフェノールの重合を開始することによっても形成できる。組成物は、ポリ(アリーレンエーテル)とポリオレフィンとコポリマー相溶化剤に加えて、さらにポリスチレン、ゴム改質ポリスチレン、ガラスビーズ、ガラス繊維、ポリ(メチルメタクリレート)、変性ポリプロピレン、スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SB)、スチレン−イソプレンブロックコポリマー(SI)、水素添加スチレン−ブタジエンブロックコポリマー(SEB)、水素添加スチレン−イソプレンブロックコポリマー(SEP)、スチレン−ブタジエン−スチレントリブロックコポリマー(SBS)及びその水素添加物(SEBS)、スチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマー(SIS)及びその水素添加物(SEPS)、スチレン−メチルメタクリレートブロックコポリマーなどを含んでいてもよい。組成物の製造方法の一例では、メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンとラジカル開始剤を、押出機の加工方向の同一又は異なる位置で押出機に供給する。相溶化プロセスによる別の製造方法の例では、押出機での溶融反応を行う前に、メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)及び多孔質ポリプロピレンを照射してポリマー鎖に「捕捉ラジカル部位」を生じさせてもよい。メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を供給スロートから供給して溶融させる。照射ポリプロピレンを下流で導入して、メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)へのグラフトを達成する。メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)は溶融が遅れることがある。低固有粘度(例えば、0.12dL/g)のメタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)では、メタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)とポリプロピレンを押出機に同時に供給してもよい。この方法では、反応プロセスを調整し、最終生成物の品質を制御するため、適宜ラジカル開始剤を押出機に供給してもよい。
【0076】
本発明を、以下の非限定的な実施例によってさらに説明する。
【実施例】
【0077】
製造例A
5L三口丸底フラスコ中のトルエン溶液3Lに、ポリ(2,6−ジメチルフェニルエーテル)樹脂(固有粘度=0.30dL/g)1500g、無水メタクリル酸153g(1.0モル)及びジメチルアミノピリジン121g(1.0モル)を加えた。溶液を一晩加熱還流した。所望の生成物をメタノール中で沈殿させ、濾過によって単離した。得られた生成物(MAA−PPE)を80℃で一晩真空乾燥した。生成物の収量は1333gであった。生成物をリン官能化剤に曝露した後31P−NMR(CDCl、2,3−ジオキサホスホラン)で分析したところ、検出可能な芳香族ヒドロキシ基は認められなかった(すなわち、ポリ(アリーレンエーテル)1g当たりヒドロキシル基5マイクロモル未満)。H−NMR (CDCl、TMS):2.07(s、6H、PPE CH)、2.18(s、3H、メタクリレートCH)、5.74(s、2H、メタクリレートCH)、6.46(s、2H PPE Ar−H)、7.08(m、3H、PPE末端基)。
【0078】
実施例1〜7、比較例1〜7
実施例1では、製造例Aで製造したメタクリレート封鎖ポリ(フェニレンエーテル)500gとAtofina社製のメチルアクリレート含有量6.5%のポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート)(6.5%メチルアクリレート)500gとを含むブレンドを製造した。ブレンドを、Prism二軸押出機を用いて以下の設定(バレル温度140/170/240/270/270℃、ゾーン1/2/3/4/ノズル)で溶融コンパウンディングし、試験片をBoy Injection Molder(金型温度=40℃、バレル温度=ゾーン1/2/ノズルで160/210/200)で射出成形した。得られた試験片を用いて、最大荷重時引張強さ(MPa単位)及び破断点引張伸び(%)をASTM D638に準拠して測定した。表1に結果を示す。他の実施例及び比較例も同様に製造した。非官能化ポリ(アリーレンエーテル)は、製造例Aで使用した固有粘度0.30dL/gのポリ(2,6−ジメチルフェニルエーテル)樹脂であった。ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート)樹脂はすべてAtofina社から入手したもので、表1に記載のメチルアクリレート含有量を有するものであった。実施例7で使用した耐衝撃性改良剤KRATON(登録商標)G1701は、スチレン含有量約37重量%の水素添加スチレン−イソプレンコポリマーである。表1に組成及び特性をまとめた。結果は、官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む実施例1及び実施例2では、層間剥離を起こした非官能化ポリ(アリーレンエーテル)を含む比較例1及び比較例2に比べて、相溶性が向上していることを示している。結果は、メチルアクリレート含有量6.5%のポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート)を含む実施例2の組成物は、比較例7の純PPE組成物に比べて、引張強さ及び伸びが向上していることも示している。結果は、さらに、耐衝撃性改良剤を含む実施例7では、高い衝撃強さを保持しつつ、顕著な引張伸びを呈することも示している。
【0079】
【表1】

実施例8〜10
実施例1の手順を用いて、さらに難燃剤を含む組成物を製造した。ポリ(エチレン−コ−メチルアクリレート)は、Atofina社から入手したメチルアクリレート含有量27重量%のものであった。ポリ(アリーレンエーテル)は、製造例Aで製造した固有粘度0.40dL/gの非官能化ポリ(2,6−ジメチルフェニルエーテル)樹脂であった。耐衝撃性改良剤は、Kraton Polymers社からKRATON(登録商標)G1701として市販の水素添加スチレン−イソプレン−スチレントリブロックコポリマーであった。ハロゲンフリーの難燃剤は、Clariant社からOP930として市販のアルミニウムトリス(ジエチルホスフィネート)であった。成分量はすべて重量%(wt%)で表す。オフセットでの引張強さ(MPa単位)、最大荷重時の引張強さ(MPa単位)、引張弾性率(MPa単位)及び破断点引張伸び(%)は、ASTM D638に準拠して測定した。ショアーA硬度はISO 868に準拠して測定した。燃焼性はUL−94試験に準拠して測定し、複数の試料を10秒間接炎し、燃焼が30秒以内に止まれば再度10秒間接炎した。望ましいUL−94 V−0評価には、試験片がいずれの接炎によっても10秒以上有炎燃焼しないこと、及び試験片の下300mmに配置された乾燥脱脂綿を着火させる有炎粒子を試験片が滴下しないことが求められる。標準偏差は、1回の試験で3枚の試料の測定値を反映したものである。表2に、組成及び特性をまとめた。結果は、難燃剤を17.5重量%含有する実施例10の組成物が、UL−94燃焼性試験で望ましいV−0評価を達成したことを示している。
【0080】
【表2】

本発明を好ましい実施形態を参照して説明したが、様々な変更を行うことができ、等価形態を、本発明の範囲から逸脱することなくその要素と置換できることを当業者は理解されよう。さらに、特定の状況又は材料を本発明の教示に適合させるように、多くの修正をその本質的な範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本発明は、本発明を実施するために考えられた最良の形態として開示された特定の実施形態に限定されるものではないこと、本発明は、添付の特許請求の範囲内に入るすべての実施形態を包含するものであることを意図する。
【0081】
引用された特許、特許出願、及び他の参考文献はすべて、その全体を参照により本明細書に組み込まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
官能化ポリ(アリーレンエーテル)、及び
オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマー
を含んでなる組成物。
【請求項2】
前記官能化ポリ(アリーレンエーテル)が次の構造の封鎖ポリ(アリーレンエーテル)である、請求項1記載の組成物。
Q(J−K)
式中、Qは一価、二価又は多価フェノールの残基であり、yは1〜100であり、Jは次式の繰返し構造単位からなり、
【化1】

(式中、R及びRは各々独立に水素、ハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシからなる群から選択され、R及びRは各々独立にハロゲン、第一もしくは第二C〜C12アルキル、C〜C12アルケニル、C〜C12アルキニル、C〜C12アミノアルキル、C〜C12ヒドロキシアルキル、フェニル、C〜C12ハロアルキル、C〜C12ヒドロカルボノキシ及びハロゲン原子と酸素原子との間に2以上の炭素原子が介在するC〜C12ハロヒドロカルボノキシからなる群から選択され、mは1〜約200である。)、Kは以下の式からなる群から選択される封鎖基である。
【化2】

(式中、RはC〜C12アルキルであり、R〜Rは各々独立に水素、C〜C18ヒドロカルビル、C〜C18ヒドロカルビルオキシカルボニル、ニトリル、ホルミル、カルボキシレート、イミデート及びチオカルボキシレートからなる群から選択され、R〜R13は各々独立に水素、ハロゲン、C〜C12アルキル、ヒドロキシ及びアミノからなる群から選択され、Yは以下の式からなる群から選択される二価基である。
【化3】

(式中、R14及びR15は各々独立に水素及びC〜C12アルキルからなる群から選択される。))
【請求項3】
前記オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、(a)エチレン及びC〜Cα−オレフィンから選択されるオレフィンと、(b)アルキル(メタ)アクリレート(ただし、アルキルはC〜Cアルキルであり、(メタ)アクリレートはアクリレート又はメタクリレートを意味する。)との重合生成物である、請求項1記載の組成物。
【請求項4】
前記オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、約60〜約95重量%のオレフィンと約5〜約40重量%のアルキル(メタ)アクリレートとの重合生成物である、請求項3記載の組成物。
【請求項5】
前記オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーが、エチレン−メチルアクリレートコポリマー、エチレン−エチルアクリレートコポリマー、エチレン−メチルメタクリレートコポリマー、及びエチレン−エチルメタクリレートコポリマーからなる群から選択される、請求項1記載の組成物。
【請求項6】
さらに耐衝撃性改良剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項7】
さらに難燃剤を含む、請求項1記載の組成物。
【請求項8】
難燃剤が次式のメタロリン系難燃剤である、請求項7記載の組成物。
【化4】

式中、MはAl又はZnであり、dはAlでは3又はZnでは2であり、R23及びR24は各々独立にC〜C18ヒドロカルビルであり、m及びnは各々0又は1である。
【請求項9】
前記官能化ポリ(アリーレンエーテル)がメタクリレート封鎖ポリ(アリーレンエーテル)を含んでいて約25〜約95重量部で存在し、
前記オレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーがエチレン−メチルアクリレートコポリマーを含んでいて約5〜約75重量部で存在し、
当該組成物が、約5〜約20重量部のアルケニル芳香族化合物と共役ジエンのコポリマーをさらに含んでおり、
当該組成物が、ハロゲンフリーの難燃剤約0.5〜約30重量部をさらに含んでおり、
上記重量部はすべて官能化ポリ(アリーレンエーテル)とオレフィン−アルキル(メタ)アクリレートコポリマーの合計100重量部を基準にしたものである、請求項1記載の組成物。
【請求項10】
請求項1記載の組成物を含んでなる物品。

【公表番号】特表2007−507586(P2007−507586A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−533864(P2006−533864)
【出願日】平成16年8月31日(2004.8.31)
【国際出願番号】PCT/US2004/028275
【国際公開番号】WO2005/040279
【国際公開日】平成17年5月6日(2005.5.6)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】