説明

定常領域の中に改変を有する抗体変種

本発明は、CH3-CH3相互作用の強度に影響を与える、抗体の定常領域、具体的にはIgG4のCH3領域における位置に関する。この相互作用を安定化するかまたは不安定化する変異が開示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、治療用途において使用され得る改変抗体に関する。本発明はまた、抗体を産生するための方法、抗体を含む薬学的組成物、および種々の治療用途のためのその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
ネイティブの抗体および免疫グロブリンは通常、二つの同一の軽(L)鎖および二つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各々の軽鎖は、一つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド結合の数は様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖によって異なる。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLと省略する)から構成される。各々の重鎖は、重鎖可変領域(VH)ならびにCH1、CH2、およびCH3の三つのドメインからなる重鎖定常領域(CH)から構成される。重鎖のCH1およびCH2は、いわゆるヒンジ領域によって相互に隔てられている。ヒンジ領域は通常、一つまたは複数のシステイン残基を含み、これが抗体分子におけるもう一方の重鎖のヒンジ領域のシステイン残基とジスルフィド結合を形成し得る。
【0003】
近年、抗体は治療適用に関して大いに注目される領域となり、多くの抗体医薬が承認されているかまたは治療薬としての使用に関して承認を受けるプロセスにある。治療用抗体の所望の特徴は、処置される個別の状態に従い変化し得る。いくつかの適応、例えば、抗体の治療効果が、抗原と、そうでなければ抗原に結合できる一つまたは複数の特定分子との間の相互作用を遮断することである場合においては、抗原結合性のみが必要とされる。このような適応においては、その唯一の機能が抗原に結合することであるFab断片の使用が好ましい場合がある。他の適応においては、さらなる効果、例えば補体活性化を誘導する能力および/またはFc受容体に結合する能力、異化から保護する能力、免疫細胞を動員する能力等もまた必要とされ得る。このような用途においては、抗体分子の他の部分、例えばFc領域が必要とされ得る。いくつかの全長抗体は、Fab断片として使用された場合はアンタゴニストとして作用するにもかかわらず、標的抗原への結合に対してアゴニスト効果(これは望ましくないものとされる場合がある)を示し得る。いくつかの例において、この効果は、二価抗体の「架橋」の原因となり得、この架橋はその後標的の二量体化を促進し、標的の二量体化は、特に標的が受容体である場合に活性化をもたらし得る。可溶性抗原の場合、二量体化は望ましくない免疫複合体を形成し得る。
【0004】
このように、いくつかの適応においては、一価抗体が好ましい場合がある。現在入手可能なFab断片は、それらのサイズが小さく腎臓に侵入できることおよびそれらがブランベル受容体(Brambell receptor) FcRnと相互作用できないことに起因して不十分な薬物動態を示し(Junghans RP et al., Proc Natl Acad Sci USA 93(11), 5512-6(1996))、従ってインビボで不安定でありかつ投与後非常に迅速にクリアランスされる。
【0005】
このように、治療用物質として使用できる安定な一価抗体に対する要望がある。
【0006】
Fc領域が二つのFcポリペプチドを含む、二量体の一価抗体(Fab/c)が記述されている(GenentechによるWO200563816およびParham P, J Immunol. 131(6), 2895-902(1983))。
【0007】
一つのみの軽鎖および一つのみの重鎖からなる二量体構造を有するIg半分子(half-molecules)は、ヒトおよびマウスのプラスマ細胞腫における稀な欠失の結果物として記述されている。これらの半分子の生化学的性質の研究は、これらが、重鎖CH1、ヒンジ、およびCH2領域は正常のようであるが、CH3領域に欠失が見られるIgG1分子からなることを示した。変異はCH3に存在するようであり、ヒンジペプチドは正常のようであった(Hobbs, JR et al., Clin Exp Immunol 5, 199(1969); Hobbs, JR, Br Med J 2, 67(1971); Spiegelberg, HL et al., Blood 45, 305(1975); Spiegelberg, HL et al., Biochemistry 14, 2157(1975); Seligmann ME et al., Ann Immunol (Paris) 129C, 855-870(1978); Gallango, ML et al., Blut 48, 91(1983))。このヒトIgG1半分子は迅速に異化され(男性における半減期は4.3日であった)、かつ単量体形態においてはC1qまたはヒトリンパ球、単球、もしくは好中球のFc受容体に結合できないことも示された(Spiegelberg, HL. J Clin Invest 56, 588(1975))。
【0008】
体細胞変異によって作製されたマウスIgA半分子もまた記述されている(Mushinski, JF, J Immunol 106, 41(1971); Mushinski, JF et al., J Immunol 117, 1668(1976); Potter, M et al., J Mol Biol 93, 537(1964); Robinson, EA et al., J Biol Chem 249, 6605(1974); Zack, DJ et al., J Exp Med 154, 1554(1981))。これらの分子は全て、CH3ドメインの欠失またはCH2〜CH3間の境界に変異を含むことが示された。
【0009】
WO2007059782 (Genmab)は、軽鎖および重鎖を含むヒト一価抗体について記述しており、そのなかで
a) 該軽鎖は選択した抗原特異的抗体の可変(VL)領域のアミノ酸配列およびIgの定常(CL)領域のアミノ酸配列を含み、ここで、IgG1サブタイプの場合、定常(CL)領域のアミノ酸配列は、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物もしくはヒトへの投与時に、Igの定常(CL)領域の同一アミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合または共有結合の形成に関与し得るいずれのアミノ酸も含まないように改変されており、ならびに
b) 該重鎖は選択した該抗原特異的抗体の可変(VH)領域のアミノ酸配列およびヒトIgの定常(CH)領域のアミノ酸配列を含み、ここで、定常(CH)領域のアミノ酸配列は、ヒンジ領域および、Igサブタイプによって必要とされるように、CH3領域のような、CH領域の他の領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下でまたは動物もしくはヒトへの投与時に、ヒトIgの定常(CN)領域の同一アミノ酸配列を含む他のペプチドとのジスルフィド結合または共有結合性もしくは安定な非共有結合性の重鎖間結合の形成に関与するいずれのアミノ酸残基も含まないように改変されている。
【0010】
WO2007059782に示されるように、これらの一価抗体は、Fab断片よりも好ましいインビボ半減期を有する。WO2008145140には、分子間CH3-CH3相互作用が不安定化されているこれらの一価抗体の変種が記述されている。本出願では、WO2007059782およびWO2008145140に開示されている一価抗体の代替的なかつ改善された変種について記述する。これらの変種は、分子間CH3-CH3相互作用に有利に働く条件下でさえも一価のままである。
【0011】
ヒトIgG4分子は様々な分子形態で存在し、これはヒンジ領域における重鎖間ジスルフィド結合の非存在または存在によって異なる。このように、二つ、一つ、またはゼロの重鎖間ジスルフィド結合が形成されたIgG4分子が存在する(Schuurman, J. et al., Mol Immunol 38, 1(2001))。生理学的条件下では、これらのIgG4の分子形態は、相互と平衡状態となり得る。ヒトIgG4は、溶液中では、これらの鎖間ジスルフィド結合の非存在または存在に関係なく、免疫グロブリンG分子において一般的な二つのIg重鎖および二つの軽鎖からなる四量体として存在する(Schuurman 2001 前記; Gregory, L. et al., Mol Immunol 24, 821(1987))。SDS-PAGE等のサイズ決定分析により実証されるように、二つの非共有結合的に結合した半分子は、非還元条件下で変性させた場合のみ解離する(Schuurman, J. et al., Mol Immunol 38, 1(2001); Deng, L. et al. Biotechnol Appl Biochem 40, 261(2004))。鎖間ジスルフィド結合の形成に関与するヒンジ領域の残基の変異またはヒンジ領域の欠失は、溶液中で、二つの軽鎖および二つの重鎖からなる四量体分子からなるIgG4分子の均質なプールを形成させた(Schuurman, J. et al. Mol Immunol 38, 1(2001); Horgan, C. et al. J Immunol 150, 5400(1993))。IgG4ヒンジ欠失および変異抗体もまた、ネイティブIgG4分子と比較して改善された抗原架橋能力を実証した(Horgan, C. (1993) 前記)。
【0012】
マウスに対して異なる抗原結合特異性を有する二つの組み換えモノクローナルIgG4抗体の投与は、インビボでの二重特異性抗体の形成をもたらすことが示されている。この現象はインビトロにおいて、IgG4抗体を細胞とともにインキュベートすることによってまたは還元条件の下で再現することができる。異なる抗原結合特異性を有するIgG4抗体は、確率論的な、かつ全てのIgG4分子が関わるように思えるような、Fab腕部交換に関与することが示されている。このように、IgG4抗体は、凝集体の同時形成なくして二重特異性抗体を形成する。
【0013】
IgG4抗体はそれゆえ、インビボで望ましくない特異な性質を有する: IgG4抗体は、Fab腕部交換に関与する不安定で、動的な分子である。投与された治療用IgG4抗体は、望ましくない特異性を有する内因性IgG4抗体と置き換わることがある。このプロセスのランダム性により、ヒト免疫療法にとって極めて望ましくない予測不能さが導入されてしまう。
【0014】
一つの局面において、本発明は、Fab腕部交換を起こす能力が低下している可溶化型のIgG4抗体に関する。可溶化型のIgG4はWO2008145142 (Genmab)に既述されている。今回、驚くべきことに、ヒトIgG4における特異的な代替置換がFab腕部交換を阻止し、かくして、IgG4を安定化し得ることが分かった。
【0015】
要約すれば、本発明は、CH3-CH3相互作用の強度に影響を与える、抗体の定常領域、具体的にはIgG4のCH3領域における位置に関する。この相互作用を安定化するまたは不安定化する変異が本明細書において開示される。
【0016】
WO2007059782に記述されている一価抗体の関連において導入される場合、不安定化変異は、分子間CH3-CH3相互作用に有利に働く条件下でさえも抗体を一価に保つことに寄与する。IgG4の関連において導入される場合、安定化変異は、望ましくないFab腕部交換を阻止することに寄与する。
【発明の概要】
【0017】
第一の主な局面において、本発明は、
(i) 選択された抗原特異的抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、ならびに
(ii) 免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその断片であって、ヒンジ領域に対応する領域、および免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合にはCH領域の他の領域、例えばCH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合性もしくは安定な非共有結合性の重鎖間結合を形成する能力のあるアミノ酸残基を全く含まないように改変されている、CH領域またはその断片
を含み、
ここでこの抗体はIgG4タイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、以下のアミノ酸置換の一つもしくは複数がSEQ ID NO:4に記載の配列に対してなされているように改変されている: 217位のTyr (Y)がArg (R)に置き換えられている、219位のLeu (L)がAsn (N)もしくはGln (Q)に置き換えられている、225位のGlu (E)がThr (T)、Val (V)もしくはIle (I)に置き換えられている、232位のSer (S)がArg (R)もしくはLys (K)に置き換えられている、234位のThr (T)がArg (R)、Lys (K)もしくはAsn (N)に置き換えられている、236位のLeu (L)がSer (S)もしくはThr (T)に置き換えられている、238位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている、267位のAsp (D)がThr (T)もしくはSer (S)に置き換えられている、273位のPhe (F)がArg (R)、Gln (Q)、Lys (K)もしくはTyr (Y)に置き換えられている、275位のTyr (Y)がGln (Q)、Lys (K)もしくはPhe (F)に置き換えられている、277位のArg (R)がGlu (E)に置き換えられている、279位のThr (T)がAsp (D)、Val (V)およびAsn (N)に置き換えられている、
またはこの抗体は別のIgGタイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、IgG4について前述した位置に対応する位置で同じアミノ酸置換の一つもしくは複数がなされている、
一価抗体に関する。
【0018】
以上の通り、上記の特定位置での変異は分子間CH3-CH3相互作用に不利に働く。従って、これらの変異を保有する一価抗体は、非共有結合性相互作用によって二量体化する可能性が低い。これは、そのような二量体化が極めて望ましくない治療用途にとって有利であり得る。さらに、一価抗体のCH3領域を通じて非共有結合的に結び付く傾向の低下によって、このような抗体を含む薬学的組成物は、上記に特定の変異を含まない一価抗体の薬学的組成物よりも安定かつ均質になり得る。
【0019】
従って、別の局面において、本発明は、本明細書に定義の本発明による一価抗体を含む薬学的組成物に関する。
【0020】
さらなる局面において、本発明は、本明細書に記述の疾患または障害を処置する方法であって、このような処置を必要とする被験体に、本発明による一価抗体の治療的有効量を投与する段階を含む、該方法に関する。
【0021】
さらなる局面において、本発明は、重鎖がSEQ ID NO:2に記載の配列を有するヒトIgG4定常領域を含み、250位のLys (K)がGln (Q)またはGlu (E)に置き換えられ、かつ抗体がSEQ ID NO:2に記載の定常領域の中に任意で一つまたは複数のさらなる置換、欠失および/または挿入を含んでもよい、重鎖および軽鎖を含む、医薬として使用するための安定化IgG4抗体に関する。
【0022】
以上の通り、および以下本明細書の実施例に示した通り、250位の変異はIgG4分子を安定化し、望ましくないFab腕部交換を阻止する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】非共有結合性ナノエレクトロスプレイ質量分析を用いて試験された各HG変異体に対する単量体として存在する分子の割合を示す。HG変異体サンプルは1 μMの濃度にて50 mM酢酸アンモニウム水溶液中で調製された。
【図2】2F8-HG (WT)およびR277K HG変異体対照と比べてのCH3変異体のNativePAGE(商標) Novex(登録商標) Bis-Trisゲル電気泳動を示す。
【図3】2F8-HGならびにCH3変種2F8-HG-T234Aおよび2F8-HG-L236Vの結合をポリクローナルヒトIgGの存在下および非存在下においてEGFR ELISAで試験した。
【図4】2F8-HGならびにCH3変種2F8-HG-L236Aおよび2F8-HG-Y275Aの結合をポリクローナルヒトIgGの存在下および非存在下においてEGFR ELISAで試験した。
【図5】抗EGFr 2F8-HG (WT)およびそのCH3変異体によるA431細胞でのEGF誘導性のEGFrリン酸化の阻害を示す用量反応曲線を示す。
【図6】2F8-HG (WT)およびR277Kと比べてのCH3変異体の異なるモル濃度で単量体として存在する分子の割合を示す。
【図7】2F8-HG (WT)と比べてのCH3変異体の相対的な相互作用強度(KD)を示す。
【図8】2F8-HGならびに脱グリコシル化変種2F8-HG-GSTおよび2F8-HG-NSEの結合をポリクローナルヒトIgGの存在下および非存在下においてEGFR ELISAで試験した。
【図9】非共有結合性ナノエレクトロスプレイ質量分析を用いて測定された各HG変異体に対する単量体として存在する分子の割合を示す。HG変異体サンプルは1 μMの濃度にて50 mM酢酸アンモニウム水溶液中で調製された。
【図10】抗EGFr 2F8-HG (WT)およびその非グリコシル化変種の抗体によるA431細胞でのEGF誘導性のEGFrリン酸化の阻害を示す用量反応曲線を示す。
【図11】2F8-HG (WT)および2F8-IgG4と比べての非グリコシル化変異体2F8-HG-GSTおよび2F8-HG-NSEのクリアランスを示す(D/AUCとして表現)。
【図12】コアヒンジおよび/またはCH3ドメインの中に変異を含むIgG1およびIgG4構築物の略図を示す(残基はEUの付番によって付番されており、実施例16の表を参照されたい)。
【図13】IgG1およびIgG4ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFab腕部交換を示す(残基はEUの付番によって付番されており、実施例16の表を参照されたい)。
【図14】EGFrに対するヒンジレスIgG4抗体2F8-HGならびにCH3変種2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409Aおよび2F8-HG-R409Kの結合を示す(残基はEUの付番によって付番されており、実施例16の表を参照されたい)。結合をポリクローナルヒトIgG (IVIG)の存在下および非存在下においてEGFR ELISAで試験した。
【図15】IgG1、IgG4および(部分的) IgG3骨格における抗EGFr抗体2F8の配列アライメントを示す。Kabatによるアミノ酸付番号およびEUインデックスによるアミノ酸付番号を描く(どちらもKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に記述されている)。
【図16】ヒトIgG4抗体のCH3ドメイン変異体のFab腕部交換を示す。二つの組み換えヒトIgG4抗体(IgG4-CD20およびIgG4-EGFr)ならびにそのCH3ドメイン変異体の混合物を37℃で0.5 mM GSHとともにインキュベートした。Fab腕部交換による二重特異性抗体の形成を経時的に追跡し、サンドイッチELISAで測定した。24時間の時点でのIgG4の二重特異性活性を100%として設定した。
【図17】his-CH2-CH3 (G4) (WT)と比べてのCH3変異体の相対的な相互作用強度(KD)を示す。
【図18】CH3-CH3相互作用強度(KD)と二重特異性活性との間の相互作用を示す。24時間の時点でのIgG4の二重特異性活性を100% (白丸)として設定した。
【配列表フリーテキスト】
【0024】
配列表の詳細な説明
SEQ ID No:1: ヒトIgG4の野生型CH領域の核酸配列。
SEQ ID No:2: ヒトIgG4の野生型CH領域のアミノ酸配列。斜体の配列はCH1領域を表し、強調表示された配列はヒンジ領域を表し、通常の配列はCH2領域を表し、下線の引かれた配列はCH3領域を表す。
SEQ ID No:3: 714位および722位を変異させたヒトIgG4のCH領域(SEQ ID No:1)の核酸配列。
SEQ ID No:4: ヒトIgG4のヒンジなしCH領域のアミノ酸配列。下線の引かれた配列はCH3領域を表す。
SEQ ID No:5: ヒト定常ラムダ鎖のアミノ酸配列(アクセッション番号S25751)。
SEQ ID No:6: ヒト定常カッパ鎖のアミノ酸配列(アクセッション番号P01834)。
SEQ ID No:7: IgG1定常領域のアミノ酸配列(アクセッション番号P01857)。斜体の配列はCH1領域を表し、強調表示された配列はヒンジ領域を表し、通常の配列はCH2領域を表し、下線の引かれた配列はCH3領域を表す。
SEQ ID No:8: IgG2定常領域のアミノ酸配列(アクセッション番号P01859)。斜体の配列はCH1領域を表し、強調表示された配列はヒンジ領域を表し、通常の配列はCH2領域を表し、下線の引かれた配列はCH3領域を表す。
SEQ ID No:9: IgG3定常領域のアミノ酸配列(アクセッション番号A23511)。斜体の配列はCH1領域を表し、強調表示された配列はヒンジ領域を表し、通常の配列はCH2領域を表し、下線の引かれた配列はCH3領域を表す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
発明の詳細な説明
定義
本明細書において言及される「抗体」という用語には、抗体分子全体、抗原結合断片、一価抗体、およびそれらの単鎖が含まれる。抗体分子は、免疫グロブリンと呼ばれる血漿タンパク質のファミリーに属し、その基本的な構成単位、免疫グロブリンフォールドまたはドメインは、多くの免疫系およびその他の生物学的認識系の分子において様々な形で使用されている。ネイティブの抗体および免疫グロブリンは通常、二つの同一の軽(L)鎖および二つの同一の重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各々の軽鎖は、一つの共有結合性ジスルフィド結合によって重鎖に連結されているが、ジスルフィド結合の数は様々な免疫グロブリンアイソタイプの重鎖によって異なる。各々の重鎖および軽鎖はまた、一定間隔の鎖間ジスルフィド架橋を有し得る。各々の軽鎖は、軽鎖可変領域(本明細書ではVLと省略する)および軽鎖定常領域(本明細書ではCLと省略する)から構成される。各々の重鎖は、重鎖可変領域(VH)ならびにCH1、CH2、およびCH3の三つのドメインからなる重鎖定常領域(CH)、ならびにヒンジ領域から構成される。三つのCHドメインおよびヒンジ領域はIgG1、IgG2、IgG3およびIgG4について、それぞれSEQ ID NO:7、8、9および2に示されている(下記参照)。軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第一定常ドメイン(CH1)と整列し、軽鎖の可変ドメインは重鎖の可変ドメインと整列して、「Fab断片」として公知の構造を形成する。重鎖のCH1およびCH2は、いわゆるヒンジ領域によって相互に隔てられており、これによって、抗体分子の「腕部」であるFabが一定範囲でスイングできる。ヒンジ領域は通常、一つまたは複数のシステイン残基を含み、これが抗体分子におけるもう一方の重鎖のヒンジ領域のシステイン残基とジスルフィド結合を形成し得る。
【0026】
重鎖および軽鎖の可変領域は、抗原と相互作用する結合ドメインを含む。抗体の定常領域は、免疫グロブリンと、免疫系の様々な細胞(例えばエフェクタ細胞)および古典的補体系の第一成分(C1q)を含む宿主の組織または因子の結合を媒介し得る。
【0027】
免疫グロブリンは、それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に基づき、異なるクラスに割り当てることができる。免疫グロブリンには少なくとも5つの大クラス:IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMがあり、これらのうちのいくつかはさらにサブクラス(アイソタイプ)、例えばIgG1、IgG2、IgG3、およびIgG4;IgA1およびIgA2に分類され得る。異なる免疫グロブリンクラスに対応する重鎖定常ドメインの遺伝子は、それぞれ、アルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ばれる。免疫グロブリンのサブクラスは、異なる遺伝子、例えばγ1、γ2、γ3、およびγ4によってコードされる。抗体軽鎖の遺伝子は、それらの定常ドメインのアミノ配列に基づき、カッパ(κ)およびラムダ(λ)と呼ばれる二つの明確に異なるタイプのうちの一方に割り当てられる。異なる免疫グロブリンクラスのサブユニット構造および三次元配座は周知である。ヒト集団には、異なる免疫グロブリンのアロタイプ、例えばIgG1重鎖についてはG1m(a)、G1m(x)、G1m(f)、およびG1m(z)、ならびにカッパ軽鎖についてはKm1、Km1,2、およびKm3が存在する。これらのアロタイプは、定常領域をコードする領域のアミノ酸が相違する。
【0028】
抗体という用語はまた、アミノ酸残基の一つまたは複数が、そのアミノ酸配列を含む抗体の結合特性に有意な影響を及ぼさずまたは変化させずに、例えばアシル化またはグリコシル化によって誘導体化された、抗体の「誘導体」を包含する。
【0029】
さらに、抗体という用語は変種、例えば、Ig定常ドメインまたはIg様定常ドメインのサルベージ受容体エピトープを改変し、その分子がインタクトなCH2ドメインまたはインタクトなIg Fc領域を含まないようにすることによって抗体のインビボ半減期が改良された変種を網羅する。US 6121022およびUS 6194551を参照されたい。インビボ半減期はさらに、例えばインタクトな抗体分子の252位に対応する位置のロイシンをスレオニンで、インタクトな抗体分子の254位に対応する位置のセリンをスレオニンで、またはインタクトな抗体分子の256位に対応する位置のフェニルアラニンをスレオニンで置換することによってFc領域に変異を導入することにより増加され得る。US 6277375を参照されたい。
【0030】
さらに、抗体、特にFabまたは他の断片は、半減期を増加させるためにペグ化され得る。これは、例えばFocus on Growth Factors 3, 4-10(1992)、EP 154 316、およびEP 401 384に記述されるような、当技術分野において公知のペグ化反応によって行われ得る。
【0031】
「抗体半分子」という用語は、一つのみの軽鎖および一つのみの重鎖を含み、水溶液中で一つの軽鎖および一つの重鎖のヘテロ二量体として存在することを除いて上記の通りの抗体分子を意味するものとして本明細書で用いられる。このような抗体は、抗原結合部分が一つのみしか存在しないため、本来的に一価である。
【0032】
本明細書において用いられる場合、「ヒト抗体」という用語は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する抗体を含むことが意図される。本発明のヒト抗体は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列によってはコードされないアミノ酸残基(例えば、インビトロでの無作為変異誘発もしくは部位特異的変異誘発またはインビボでの体細胞変異によって導入された変異)を含み得る。しかし、本明細書において用いられる場合、「ヒト抗体」という用語は、別の哺乳動物種、例えばマウスの生殖細胞由来のCDR1もしくはCDR2配列、または別の種、例えばマウス由来の抗体由来のCDR3領域がヒトフレームワーク配列に移植された抗体を含むことを意図しない。作製ヒトモノクローナル抗体は、マウス免疫系ではなくヒト免疫系の部分を保有する遺伝子導入マウスまたは導入染色体マウスを用いて作出され得る。このような遺伝子導入マウスおよび導入染色体マウスは、それぞれ、本明細書においてHuMAbマウスおよびKMマウスと呼ばれるマウスを含み、本明細書においてまとめて「遺伝子導入マウス」と呼ばれる。
【0033】
HuMAbマウスは、内因性のμおよびκ鎖座を不活化する標的化変異とともに、非再配列ヒト重鎖(μおよびγ)およびκ軽鎖免疫グロブリン配列をコードするヒト免疫グロブリン遺伝子ミニ座を含有する(Lonberg, N. et al., Nature 368, 856-859 (1994))。従って、マウスはマウスIgMまたはκの発現の低減を示し、免疫に応答して、導入されたヒト重鎖および軽鎖導入遺伝子は、クラススイッチおよび体細胞変異を受けて、高親和性のヒトIgG,κモノクローナル抗体を生成する(Lonberg, N. et al. (1994)、前記:Lonberg, N. Handbook of Experimental Pharmacology 113, 49-101 (1994)において論評、Lonberg, N. and Huszar, D., Intern. Rev. Immunol. Vol. 13 65-93 (1995)、およびHarding, F. and Lonberg, N. Ann. N. Y. Acad. Sci 764 536-546 (1995))。HuMabマウスの調製は、Taylor, L. et al., Nucleic Acids Research 20, 6287-6295 (1992)、Chen, J. et al., International Immunology 5, 647-656 (1993)、Tuaillon et al., J. Immunol. 152, 2912-2920 (1994)、Taylor, L. et al., International Immunology 6, 579-591 (1994)、Fishwild, D. et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において詳細に記述されている。同様にUS 5,545,806、US 5,569,825、US 5,625,126、US 5,633,425、US 5,789,650、US 5,877,397、US 5,661,016、US 5,814,318、US 5,874,299、US 5,770,429、US 5,545,807、WO 98/24884、WO 94/25585、WO 93/1227、WO 92/22645、WO 92/03918、およびWO 01/09187を参照されたい。
【0034】
HCo7マウスは、その内因性の軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830 (1993)において記述されるように)、その内因性の重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO 01/14424の実施例1において記述されるように)、KCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において記述されるように)、およびHCo7ヒト重鎖導入遺伝子(US 5,770,429において記述されるように)を有する。
【0035】
HCo12マウスは、その内因性の軽鎖(κ)遺伝子におけるJKD破壊(Chen et al., EMBO J. 12, 821-830 (1993)において記述されるように)、その内因性の重鎖遺伝子におけるCMD破壊(WO 01/14424の実施例1において記述されるように)、KCo5ヒトκ軽鎖導入遺伝子(Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において記述されるように)、およびHCo12ヒト重鎖導入遺伝子(WO 01/14424の実施例2において記述されるように)を有する。
【0036】
KMマウス系統において、内因性のマウスκ軽鎖遺伝子は、Chen et al., EMBO J. 12, 811-820 (1993)において記述されるようにホモ接合的に破壊されており、内因性のマウス重鎖遺伝子はWO 01/09187の実施例1において記述されるようにホモ接合的に破壊されている。このマウス系統は、Fishwild et al., Nature Biotechnology 14, 845-851 (1996)において記述されるように、ヒトκ軽鎖導入遺伝子、KCo5を持つ。このマウス系統はまた、WO 02/43478において記述されるように、第14染色体断片hCF (SC20)で構成されるヒト重鎖導入染色体を持つ。
【0037】
これらの遺伝子導入マウスの脾細胞を用い、周知の技術に従ってヒトモノクローナル安定化IgG4抗体を分泌するハイブリドーマを作出してもよい。そのような遺伝子導入非ヒト動物、本発明において用いられる抗体の発現をコードする操作可能な核酸配列を含む非ヒト動物、一つまたは複数の標的コード核酸配列を安定的にトランスフェクトした非ヒト動物等は、本発明のさらなる特徴である。本明細書において用いられる場合、「KD」(M)という用語は、特定の抗体-抗原相互作用の解離平衡定数をいう。
【0038】
本明細書において用いられる場合、「モノクローナル抗体」または「モノクローナル抗体組成物」という用語は、単一の分子組成の抗体分子の調製物をいう。モノクローナル抗体組成物は、特定のエピトープに対する単一の結合特異性および親和性を示す。従って、「ヒトモノクローナル抗体」という用語は、ヒト生殖細胞免疫グロブリン配列由来の可変領域および定常領域を有する、単一の結合特異性を示す抗体をいう。
【0039】
「一価抗体」という用語は、本発明の文脈においては、抗体分子が単一の抗原分子と結合できる、従って抗原の架橋ができないことを意味する。
【0040】
本明細書において用いられる場合、「特異的な結合」は、所定の抗原に対する抗体またはその抗原結合断片の結合を意味する。典型的には、抗体は、例えばBIAcoreにおいてスルホンプラズモン共鳴を用いてまたはFACSもしくはELISAにおけるIC50値に基づく見かけ上の親和性として測定した場合、約10-7Mもしくはそれ以下、例えば約10-8Mもしくはそれ以下、例えば約10-9Mもしくはそれ以下、約10-10Mもしくはそれ以下、または約10-11Mもしくはそれ以下のKDに対応する親和性で結合し、かつ非特異的抗原(例えばBSA、カゼイン)または所定の抗原もしくは関係の近い抗原以外の抗原に対する結合の親和性よりも、少なくとも10倍低い、例えば少なくとも100倍低い、例えば少なくとも1000倍低い、例えば少なくとも10,000倍低い、例えば少なくとも100,000倍低いKDに対応する親和性で所定の抗原に結合する。親和性が低くなる量は、抗原結合ペプチドのKDに依存し、従って抗原結合ペプチドのKDが非常に低い(すなわち、その抗原結合ペプチドが極めて特異的である)場合、その抗原に対する親和性が非特異的抗原に対する親和性よりも低い量は、少なくとも10,000倍であり得る。
【0041】
「遺伝子導入非ヒト動物」という用語は、一つまたは複数のヒト重鎖および/または軽鎖の導入遺伝子または導入染色体を含むゲノムを有し(その動物の生来のゲノムDNAに組み込まれているかまたは組み込まれていないかのいずれか)、かつヒト抗体を発現できる非ヒト動物を意味する。例えば、遺伝子導入マウスは、ヒト軽鎖導入遺伝子およびヒト重鎖導入遺伝子またはヒト重鎖導入染色体のいずれかを有するため、抗原および/または抗原を発現する細胞で免疫した場合にヒト抗体を産生し得る。ヒト重鎖導入遺伝子は、遺伝子導入マウス、例えばHuMAbマウス、例えばHCo7またはHCo12マウスの場合のように、そのマウスの染色体DNAに組み込まれているか、またはヒト重鎖導入遺伝子は、WO 02/43478に記述されるような導入染色体KMマウスの場合のように、染色体外で維持され得る。このような遺伝子導入マウスおよび導入染色体マウスは、V-D-J組み換えおよびアイソタイプスイッチを起こすことによって、所与の抗原に対して複数のクラスおよびアイソタイプの一価抗体(例えばIgM、IgG、IgA、および/またはIgE)を産生することができる。
【0042】
「N-結合型グリコシル化のアクセプタ部位」という用語は、Asn残基上でグリコシル化されるようになりやすいポリペプチド上の部位をいう。この種のグリコシル化に典型的なコンセンサス部位はAsn-X-Ser/Thrであり、式中でXはProを除く、任意のアミノ酸であることができる。
【0043】
以上の通り、二つの重鎖-軽鎖ヘテロ二量体が連結される特徴的なIgG構造は、ヒンジ領域の重鎖間ジスルフィド架橋およびCH3ドメインの非共有結合性相互作用によって維持される。
【0044】
IgG4におけるヒンジ領域の除去は、二つの重鎖-軽鎖ヘテロ二量体間の結合が失われまたは減弱された一価抗体の形成をもたらすことがWO2007059782に示されている。その結果、単独でのまたはCH3ドメイン相互作用における変異との組み合わせでの他のIgGサブクラスのヒンジ領域ジスルフィド架橋の変化は、これらの他のサブクラスに対する一価抗体の形成も同様にもたらし得る。Igサブクラスの構造に関する深い知識、および本明細書において提供される知識を用いて、アミノ酸を選択し、選択されたアミノ酸を改変し、軽鎖相互作用を阻止することは十分に当業者の能力の範囲内である。
【0045】
第一の主な局面において、本発明は、
(i) 選択された抗原特異的抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、ならびに
(ii) 免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその断片であって、ヒンジ領域に対応する領域、および免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合にはCH領域の他の領域、例えばCH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合性もしくは安定な非共有結合性の重鎖間結合を形成する能力のあるアミノ酸残基を全く含まないように改変されている、CH領域またはその断片
を含み、
ここでこの抗体はIgG4タイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、以下のアミノ酸置換の一つもしくは複数がSEQ ID NO:4に記載の配列に対してなされているように改変されている: 217位のTyr (Y)がArg (R)に置き換えられている、219位のLeu (L)がAsn (N)もしくはGln (Q)に置き換えられている、225位のGlu (E)がThr (T)、Val (V)もしくはIle (I)に置き換えられている、232位のSer (S)がArg (R)もしくはLys (K)に置き換えられている、234位のThr (T)がArg (R)、Lys (K)もしくはAsn (N)に置き換えられている、236位のLeu (L)がSer (S)もしくはThr (T)に置き換えられている、238位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている、267位のAsp (D)がThr (T)もしくはSer (S)に置き換えられている、273位のPhe (F)がArg (R)、Gln (Q)、Lys (K)もしくはTyr (Y)に置き換えられている、275位のTyr (Y)がGln (Q)、Lys (K)もしくはPhe (F)に置き換えられている、277位のArg (R)がGlu (E)に置き換えられている、279位のThr (T)がAsp (D)、Val (V)およびAsn (N)に置き換えられている、
またはこの抗体は別のIgGタイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、IgG4について前述した位置に対応する位置で同じアミノ酸置換の一つもしくは複数がなされている、
一価抗体に関する。例えば、他のアイソタイプにおいて対応する位置はSEQ ID NO:7、8および9を参照されたい。
【0046】
一つの態様において、一価抗体は、
(i) 選択された抗原特異的抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、ならびに
(ii) 免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその断片であって、ヒンジ領域に対応する領域、および免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合にはCH領域の他の領域、例えばCH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合性もしくは安定な非共有結合性の重鎖間結合を形成する能力のあるアミノ酸残基を全く含まないように改変されている、CH領域またはその断片
を含み、
ここでこの抗体はIgG4タイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がSEQ ID NO:4に記載の配列に対してなされているように改変されている: 225位のGlu (E)がVal (V)に置き換えられている、232位のSer (S)がArg (R)に置き換えられている、236位のLeu (L)がSer (S)またはThr (T)に置き換えられている、267位のAsp (D)がThr (T)またはSer (S)に置き換えられている、273位のPhe (F)がArg (R)、Gln (Q)またはTyr (Y)に置き換えられている、275位のTyr (Y)がGln (Q)またはLys (K)に置き換えられている。
【0047】
別の態様において、抗体はIgG4タイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、以下の組み合わせのアミノ酸置換の一つもしくは複数がSEQ ID NO:4に記載の配列に対してなされているように改変されている:
- 267位のAsp (D)がSer (S)に置き換えられ、かつ275位のTyr (Y)がGln (Q)もしくはLys (K)、Arg (R)に置き換えられている、
- 267位のAsp (D)がThr (T)に置き換えられ、かつ275位のTyr (Y)がGln (Q)もしくはLys (K)、Arg (R)に置き換えられている、
またはこの抗体は別のIgGタイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、IgG4について前述した位置に対応する位置で同じ組み合わせのアミノ酸置換がなされているように改変されている。
【0048】
典型的には、 一価抗体の可変領域およびCH領域は、ペプチド結合により互いに連結しており、単一の読み取り枠から産生される。理論に縛られることはないが、本発明による一価抗体は、FcRnに結合する能力があると考えられる。そのような結合は、当技術分野において公知であるように結合を判定するための方法の使用によって、例えばELISAアッセイ法の使用によって判定することができる。FcRnに対する本発明の一価抗体の結合は、例えば、同一のアッセイにおいて本発明の一価抗体のVH領域およびVL領域と同一のVH領域およびVL領域を有するF(ab')2断片のFcRnに対する結合と比較することができる。一つの態様において、FcRnに対する本発明の一価抗体の結合は、FcRnに対するF(ab')2断片の結合より10倍超強い。
【0049】
一つの態様において、抗体はCH1領域を(さらに)含む。
【0050】
別の態様において、一価抗体は該可変領域および該CH領域からなる。
【0051】
別の態様において、可変領域はVH領域である。さらなる態様において、可変領域はVL領域である。またさらなる態様において、抗体はCL領域を含まない。
【0052】
重要な態様において、本発明の一価抗体は重鎖および軽鎖を含み、重鎖は
(i) 選択された抗原特異的抗体のVH領域、または該領域の抗原結合部、および
(ii) 上記に定義されるCH領域
を含み、かつ軽鎖は
(i) 選択された抗原特異的抗体のVL領域、または該領域の抗原結合部、および
(ii) IgG1サブタイプの場合には、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCL領域とのジスルフィド結合、または同一のCL領域との他の共有結合を形成する能力のあるアミノ酸を全く含まないように改変されている、CL領域
を含む。
【0053】
典型的には、上記に定義される一価抗体の軽鎖および重鎖は、一つまたは複数のジスルフィド結合を介して互いに連結している。そのようなジスルフィド結合では、ジスルフィド結合の結合パートナーのいずれも、ヒンジ領域に対応する領域中には存在しないことは明らかである。しかし一つの態様において、一価抗体の軽鎖および重鎖は、一つまたは複数のアミド結合を介して互いに連結している。
【0054】
さらに、典型的には、軽鎖のVL領域およびCL領域は、ペプチド結合を介して互いに連結しており、単一の読み取り枠から産生される。
【0055】
一つの態様において、本発明の抗体分子のVHおよびVL領域は、同じ抗原特異的抗体に由来する。
【0056】
本発明によれば、抗体分子の軽鎖のCL領域の配列は、免疫グロブリンのCL領域の配列由来であり得る。一つの態様において、CL領域は、ヒトIgGのカッパ軽鎖の定常領域である。一つの態様において、CL領域は、SEQ ID No:2のアミノ酸配列を含む。一つの態様において、CL領域は、ヒトIgGのラムダ軽鎖の定常領域である。一つの態様において、CL領域は、SEQ ID No:4のアミノ酸配列を含む。
【0057】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、例えばIgG1、IgG2、またはIgG4のようなIgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA、またはIgD抗体である。さらなる態様において、一価抗体はヒト抗体である。
【0058】
本発明の一価抗体は、上記のアイソタイプの変種でもよい。例えば、変種IgG4抗体は、例えば一つの変種抗体の定常ドメインおよび/または可変領域(またはそれらの任意の一つもしくは複数のCDR)における置換、欠失、挿入、または末端への配列付加である、一つまたは複数の適当なアミノ酸残基の変更によりIgG4抗体と相違する抗体でよい。典型的には、アミノ酸の変更は、望ましくは、その親の配列の構造上の特徴を実質的に変化させない(例えば、アミノ酸の置換がその親の配列の機能を特徴付ける二次構造を破壊しない傾向を有する)が、有利な特性、例えばその抗体の機能的特性または薬物動態特性の変化、例えば半減期の増加、免疫原性の変更、別の分子に対する共有結合性または非共有結合性の結合部位の提供、タンパク質分解に対する感受性の減少、または酸化に対する感受性の減少に関連するものであり得る。変種の例には、CH3領域に改変、例えば、SEQ ID NO:4の225、234、236、238、273、もしくは275位、または非IgG4アイソタイプにおける対応する残基の任意の一つまたは複数の置換または欠失を有する変種が含まれる。これらの位置における改変は、例えば、本発明のヒンジ改変抗体間の分子間相互作用をさらに低下させる可能性がある。他の例には、定常領域の改変、例えば、SEQ ID NO:4の118、120、122、124、175、248、296、302位または非IgG4アイソタイプにおける対応する残基の任意の一つまたは複数の置換または欠失を有する変種が含まれる。これらの位置における改変は、例えば、本発明のヒンジ改変抗体の半減期を増加させる可能性がある。
【0059】
一つの態様において、本発明の一価抗体はSEQ ID NO:7に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 238位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 239位のAsp (D)がGlu (E)に置き換えられている; 249位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 251位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 251位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 288位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 288位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 290位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 292位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 292位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている; 302位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; および328位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている。
【0060】
そのさらなる態様において、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされている: 238位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 239位のAsp (D)がGlu (E)に置き換えられている; 292位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 302位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; および328位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている。またさらなる態様において:
(i) 238位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられているか、
(ii) 238位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられ、かつ328位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられているか、または
(iii) 上記に定義される5個の置換の全てがなされている。
【0061】
本明細書のさらに別の態様において、一価抗体はSEQ ID NO:7に記載のCH1および/またはCH2領域をさらに含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている。
【0062】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、SEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有するカッパCL領域を含むが、配列は106位の末端システイン残基が別のアミノ酸残基で置き換えられまたは欠失されているように改変されている。
【0063】
別の態様において、本発明の一価抗体は、SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を有するラムダCL領域を含むが、配列は104位のシステイン残基が別のアミノ酸残基で置き換えられまたは欠失されているように改変されている。
【0064】
さらなる態様において、本発明の一価抗体は、SEQ ID NO:7に記載のCH1領域を含むが、CH1領域は、14位のSer (S)がシステイン残基に置き換えられているように改変されている。
【0065】
異なる態様において、本発明の一価抗体はSEQ ID NO:8に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 234位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 245位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 247位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 247位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 276位のMet (M)がVal (V)に置き換えられている; 284位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 284位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 286位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 288位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 288位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている; 298位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; および324位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている。
【0066】
本明細書のさらなる態様において、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされている: 234位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 276位のMet (M)がVal (V)に置き換えられている; 288位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 298位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; および324位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている。またさらなる態様において:
(i) 234位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられているか;
(ii) 234位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられ、かつ324位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられているか; または
(iii) 上記に定義される5個の置換の全てがなされている。
【0067】
本明細書の別のさらなる態様において、一価抗体はSEQ ID NO:8に記載のCH1および/またはCH2領域をさらに含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている。
【0068】
さらに異なる態様において、本発明の一価抗体はSEQ ID NO:9に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 285位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 296位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 298位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 298位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 314位のSer (S)がAsn (N)に置き換えられている; 322位のAsn (N)がLys (K)に置き換えられている; 327位のMet (M)がVal (V)に置き換えられている; 335位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 335位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 337位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 339位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 339位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている; 349位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; 352位のIle (I)がVal (V)に置き換えられている; 365位のArg (R)がHis (H)に置き換えられている; 366位のPhe (F)がTyr (Y)に置き換えられている; および375位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている、ただしCH3領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている。
【0069】
本明細書のさらなる態様において、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされている: 285位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 314位のSer (S)がAsn (N)に置き換えられている; 322位のAsn (N)がLys (K)に置き換えられている; 327位のMet (M)がVal (V)に置き換えられている; 339位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 349位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; 352位のIle (I)がVal (V)に置き換えられている; 365位のArg (R)がHis (H)に置き換えられている; 366位のPhe (F)がTyr (Y)に置き換えられている; および375位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている。またさらなる態様において:
(i) 285位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられているか、
(ii) 285位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられ、かつ375位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられているか、または
(iii) 上記に定義される10個の置換の全てがなされている。
【0070】
本明細書の別のさらなる態様において、一価抗体はSEQ ID NO:9に記載のCH1および/またはCH2領域をさらに含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている。
【0071】
さらなる態様において、本発明による一価抗体は、例えば、一価抗体が二量体化する能力を低下させるため、または、例えば、FcRnに対する結合の改善により、薬物動態プロファイルを改善するために、例えば、CH2および/またはCH3領域においてさらに改変されている。
【0072】
そのような改変の例には、以下の置換が含まれる(ここではSEQ ID NO:4で与えられるIgG4残基を参照するが、同一の置換は、IgG1のような他のアイソタイプ中の対応する残基でも行なうことができる。これらの対応する残基は、配列を単に整列させることによって見つけることができる): CH3領域中で、T234A、L236A、L236V、F273A、F273L、Y275A、E225A、D267A、L236E、L236G、F273D、F273T、Y275E、およびCH2領域中: T118Q、M296L、M120Y、S122T、T124E、N302A、T175A、E248A、N302A。複合効果を得るために上述の置換のうちの二つまたはそれ以上が組み合わされる。
【0073】
従って、一つの態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含む。
【0074】
しかしながら、別の態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含むが、
- 225位のGlu (E)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 234位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 236位のLeu (L)がAla (A)、Val (V)、Glu (E)、もしくはGly (G)に置き換えられている、および/または
- 267位のAsp (D)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 273位のPhe (F)がAla (A)もしくはLeu (L)に置き換えられている、
- 275位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている。
【0075】
別の態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含むが、
- 225位のGlu (E)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 234位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 236位のLeu (L)がAla (A)、Val (V)、Glu (E)、もしくはGly (G)に置き換えられている、および/または
- 267位のAsp (D)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 273位のPhe (F)がAsp (D)に置き換えられ、かつ275位のTyr (Y)がGlu (E)に置き換えられている。
【0076】
別の態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含むが、
- 225位のGlu (E)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 234位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 236位のLeu (L)がAla (A)、Val (V)、Glu (E)、もしくはGly (G)に置き換えられている、および/または
- 267位のAsp (D)がAla (A)に置き換えられている、および/または
- 273位のPhe (F)がThr (T)に置き換えられ、かつ275位のTyr (Y)がGlu (E)に置き換えられている。
【0077】
一つの態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH2領域を含むが、118位のThr (T)がGln (Q)に置き換えられ、かつ/または296位のMet (M)がLeu (L)に置き換えられている。
【0078】
一つの態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH2領域を含むが、以下の置換のうちの一つ、二つまたは三つ全てがなされている: 120位のMet (M)がTyr (Y)に置き換えられている; 122位のSer (S)がThr (T)に置き換えられている; および124位のThr (T)がGlu (E)に置き換えられている。
【0079】
別の態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH2領域を含むが、302位のAsn (N)がAla (A)に置き換えられている。
【0080】
さらに他の態様において、一価抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH2領域を含むが、302位のAsn (N)がAla (A)に置き換えられ、かつ175位のThr (T)がAla (A)に置き換えられ、かつ248位のGlu (E)がAla (A)に置き換えられている。
【0081】
さらに異なる態様において、本発明の抗体はSEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 234位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 236位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 236位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 273位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 273位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 275位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 277位のArg (R)がAla (A)に置き換えられている。
【0082】
好ましい置換には以下が含まれる: 236位のLeu (L)のVal (V)による置換、273位のPhe (F)のAla (A)による置換、および275位のTyr (Y)のAla (A)による置換。
【0083】
本発明の一つの態様において、一価抗体は合成抗原(Tyr、Glu)-Ala-Lysに結合しない。
【0084】
ヒンジ領域は、重鎖の定常ドメインのCH1領域とCH2領域の間に位置する抗体の領域である。ヒンジ領域の規模は、ヒンジ領域をコードする別個のエクソンによって決定される。ヒンジ領域は通常、一方の重鎖のヒンジ領域の一つまたは複数のシステイン残基ともう一方の重鎖のヒンジ領域の一つまたは複数のシステイン残基の間のジスルフィド結合または架橋の形成を通じて、抗体の4本のペプチド鎖を伝統的な四量体形態に正確に配置するのに関与する。従って、ヒンジ領域のあらゆるアミノ酸残基がジスルフィド結合の形成に関与できないようにするヒンジ領域の改変は、例えば、非改変型ヒンジ領域に存在するシステイン残基の欠失および/または置換を含み得る。本明細書の目的上、ヒンジ領域に対応する領域は、抗体の重鎖のCH1領域とCH2領域の間の領域を意味するものと解釈されるべきである。本発明の文脈において、このような領域はアミノ酸残基を全く含まず(ヒンジ領域の欠失に相当)、結果的にCH1領域とCH2領域がいかなるアミノ酸残基も介在させずに相互に接続される場合もある。このような領域はまた、一つのみまたは数個のアミノ酸残基しか含まない場合もあり、これらの残基は、本来のヒンジ領域のN末端またはC末端に存在するアミノ酸残基であるとは限らない。
【0085】
従って、本発明の抗体の一つの態様において、CH領域は、CH領域のヒンジ領域に対応する領域がシステイン残基を全く含まないように改変されている。別の態様において、CH領域は、少なくとも全てのシステイン残基が欠失されおよび/または他のアミノ酸残基で置換されるように改変されている。さらなる態様において、CH領域は、ヒンジ領域のシステイン残基が、非荷電極性側鎖または非極性側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるように改変されている。好ましくは、非荷電極性側鎖を有するアミノ酸は、アスパラギン、グルタミン、セリン、スレオニン、チロシン、およびトリプトファンから独立して選択され、非極性側鎖を有するアミノ酸は、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、プロリン、フェニルアラニン、およびメチオニンから独立して選択される。
【0086】
またさらなる態様において、一価抗体は、SEQ ID No:2のCH配列のアミノ酸番号106および109に対応するアミノ酸が欠失されているヒトIgG4である。
【0087】
またさらなる態様において、一価抗体は、SEQ ID No:2の配列のアミノ酸残基番号106および109に対応するアミノ酸残基のうちの一つがシステイン以外のアミノ酸残基によって置換され、かつSEQ ID No:2の配列のアミノ酸残基番号106および109に対応するアミノ酸残基のもう一方が欠失されているヒトIgG4である。
【0088】
またさらなる態様において、アミノ酸残基番号106に対応するアミノ酸残基はシステイン以外のアミノ酸残基によって置換され、かつアミノ酸残基番号109に対応するアミノ酸残基は欠失されている。
【0089】
またさらなる態様において、アミノ酸残基番号106に対応するアミノ酸残基は欠失され、かつアミノ酸残基番号109に対応するアミノ酸残基はシステイン以外のアミノ酸残基によって置換されている。
【0090】
またさらなる態様において、一価抗体は、少なくともSEQ ID No:2のCH配列のアミノ酸残基番号106〜109に対応するアミノ酸残基が欠失されているヒトIgG4である。
【0091】
またさらなる態様において、一価抗体は、少なくともSEQ ID No:2の配列のアミノ酸残基番号99〜110に対応するアミノ酸残基が欠失されているヒトIgG4である。
【0092】
またさらなる態様において、CH領域はSEQ ID No:4のアミノ酸配列を含む。
【0093】
またさらなる態様において、一価抗体は、CH領域が改変されてヒンジ領域全体が欠失されているヒトIgG4である。
【0094】
さらなる態様において、抗体の配列はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている。そのさらなる態様において、CH2領域中のN-結合型グリコシル化のNSTアクセプタ部位は、GST、MST、CSE、DSE、DSP、ESP、GSP、HSE、NSE、PSP、およびSSEからなる群より選択される配列に改変されている。
【0095】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、生理学的濃度のポリクローナルヒトIgGの存在下で一価である。
【0096】
本発明の抗体は、インビボにおいて長い半減期を持つことから、例えばインビボで相当短い半減期を持つ同じ抗体のFAB断片と比較して、より長い治療域を持つという利点がある。
【0097】
さらに、長い半減期と小さいサイズのために、本発明の一価抗体は、例えば固形腫瘍に浸透できることにより、インビボにおいてより良い分布をする可能性を持つ。これにより、本発明の一価抗体の、例えばがんの処置のための、卓越した使用可能性が生じる。というのは、本発明の抗体は標的分子の阻害、または疾患を処置する他の薬剤の標的特異的送達機構のいずれかとして使用できるためである。
【0098】
従って、一つの態様において、本発明の一価抗体は、SCIDマウスにおける薬物動態研究(例えばWO2007059782に示されるような)において測定した場合、4 mg/kgの用量でのインビボ投与時に、7日間を超えて10 μg/mlを上回る血漿濃度を有する。本発明の一価抗体のクリアランス速度は当技術分野において公知の薬物動態学的方法を使用することによって測定され得る。抗体は、例えば、ヒトまたは動物に静脈内注射され得(他の経路、例えばi.p.またはi.m.も使用され得る)、その後にいくつかの時点、例えば最初の注射後1時間、4時間、24時間、3日、7日、14日、21日、および28日の時点で血液サンプルが静脈穿刺により抜き取られる。抗体の血清濃度は、適当なアッセイ法、例えばELISAによって決定される。薬物動態分析は、当技術分野において知られ、WO2007059782に記述されているように行うことができる。本発明の一価抗体は、例えば一価抗体として頻繁に使用されているFab断片の血漿滞留時間よりも100倍長い血漿滞留時間を有し得る。
【0099】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、分子サイズが近いF(ab')2断片の血漿クリアランスよりも10倍超遅い血漿クリアランスを有する。これは、FcRnに結合する本発明の抗体の能力を示すものであり得る。FcRnは、主要組織適合複合体クラスI関連受容体であり、母から子への免疫グロブリン(Ig) Gの受動輸送およびIgGを細胞内分解から保護することによって血清IgGレベルの調節に関与する(Ghetie V et al., Annu Rev Immunol. 18, 739-66 (2000))。一つの態様において、F(ab')2断片は、本発明の一価抗体と同じ抗原に対するものである。一つの態様において、F(ab')2断片は本発明の一価抗体と同じエピトープに対するものである。一つの態様において、F(ab')2断片のVH領域およびVL領域は、本発明の一価抗体のVH領域およびVL領域と同一である。
【0100】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、インビボ投与された場合に少なくとも5日間の半減期を有する。本発明の一価抗体の半減期は、当技術分野において公知の任意の方法、例えば上記の方法によって測定され得る。
【0101】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、インビボ投与された場合に少なくとも5日間から14日間までの半減期を有する。
【0102】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、インビボ投与された場合に少なくとも5日間から21日間までの半減期を有する。
【0103】
またさらなる態様において、一価抗体はインビボでヒトまたはSCIDマウスに投与された場合に、少なくとも5日間、例えば少なくとも14日間、例えば5日間から21日間までの血清中半減期を有する。
【0104】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)で腫瘍抗原に結合する。
【0105】
別の態様において、本発明の一価抗体は、受容体の二量体化によって活性化される細胞表面受容体に、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)で結合する。
【0106】
さらなる態様において、一価抗体は、以下から選択される標的に、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)で結合する: エリスロポエチン、βアミロイド、トロンボポエチン、インターフェロン-α(2aおよび2b)、インターフェロン-β(1b)、インターフェロン-γ、TNFR I (CD120a)、TNFR II (CD120b)、IL-1Rタイプ1 (CD121a)、IL-1Rタイプ2 (CD121b)、IL-2、IL2R (CD25)、IL-2R-β(CD123)、IL-3、IL-4、IL-3R (CD123)、IL-4R (CD124)、IL-5R (CD125)、IL-6R-α(CD126)、IL-6R-β (CD130)、IL-10、IL-11、IL-15BP、IL-15R、IL-20、IL-21、TCR可変鎖、RANK、RANK-L、CTLA4、CXCR4R、CCR5R、TGF-β1,TGF-β2、TGF-β3、G-CSF、GM-CSF、MIF-R (CD74)、M-CSF-R (CD115)、GM-CSFR (CD116)、可溶性FcRI、sFcRII、sFcRIII、FcRn、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、VEGF、VEGFxxxb、抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、抗発作薬、神経筋遮断薬、抗てんかん薬、副腎皮質ステロイド、インスリン、インスリンの調節に関与しているタンパク質または酵素、インクレチン(GIPおよびGLP-1)またはエクセナチドおよびシタグリプチンのようなインクレチン作用模倣薬、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、ACTH、エストロゲン、テストステロン、抗利尿ホルモン、利尿剤、ヘパリンおよびEPOのような血液製剤、β遮断薬、細胞毒性薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗凝固薬、抗炎症薬、抗喘息薬、抗COPD薬、バイアグラ、アヘン製剤、モルヒネ、ビタミン(保存のためのビタミンCのような)、LHおよびFSHのような妊娠に関与するホルモン、性転換に関与するホルモン、避妊薬、ならびに抗体。
【0107】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、受容体の二量体化によって活性化される細胞表面受容体に特異的に結合する。本発明の一価抗体のような一価抗体は、多くの場合、本発明の抗体分子がその一価性により、そのような二量体化、従ってそのような活性化を誘導できないので、受容体の活性化が望ましくない疾患または障害の処置において有用であり得る。具体的な受容体に限定するわけではないが、このような受容体の例は、erb-B1、erb-B2、erb-B3、erb-B4、ならびにエフリンおよびエフリン受容体の成員、例えばエフリンA1〜A6、ephA1〜A8、エフリンB1〜B3、およびeph-B1〜eph-B6であり得る。
【0108】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、標的分子に結合された場合、標的分子の多量体化(例えば二量体化)を阻害する。繰り返すが、本発明の一価抗体のような一価抗体は、多くの場合、本発明の抗体分子がその一価性により、そのような多量体化を誘導できないので、標的抗原の多量体化が望ましくない疾患または障害の処置において有用であり得る。可溶性抗原の場合、多量体化は、望ましくない免疫複合体を形成し得る。具体的な標的に限定するわけではないが、このような標的の例は、Toll様受容体、例えばTLR-3およびTLR-9、またはアンジオポエチン-1、もしくはアンジオポエチン-2、またはTNF受容体ファミリーの成員、例えばCD30、CD40、およびCD95であり得る。
【0109】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、TNF-アルファの阻害剤である。本発明の一つの態様において、本発明の一価抗体は、一価型のアダリムマブ、エタネルセプト、またはインフリキシマブである。
【0110】
さらなる態様において、一価抗体は、VEGF、c-Met、CD20、CD38、IL-8、CD25、CD74、FcαRI、FcεRI、アセチルコリン受容体、fas、fasL、TRAIL、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのエンベロープE2、組織因子、組織因子および第VII因子の複合体、EGFr、CD4、ならびにCD28から選択される標的に、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)で結合する。
【0111】
一つの態様において、抗VEGF一価抗体はAMD (acute macular degeneration)および他の疾患の処置のために使用される。
【0112】
一つの態様において、使用される抗VEGF一価抗体はベバシズマブ(アバスチン)の一価型である。
【0113】
またさらなる態様において、一価抗体はヒトIgG4抗体であって、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)でc-Metに結合する。
【0114】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、エフェクタ結合ができない。本発明の文脈で「エフェクタ結合ができない」または「エフェクタ結合の不可能性」という表現は、本発明の一価抗体が補体の第一成分(C1)のC1q成分に結合できないこと、従って補体の古典経路を介する細胞傷害性を活性化できないことを意味する。さらに、本発明の一価抗体は、Fc受容体と相互作用できないので、Fc受容体を介するエフェクタ機能、例えば貪食作用、細胞の活性化、サイトカイン放出の誘導を誘発し得ない。
【0115】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、組み換えDNA技術の使用によって産生される。抗体は、組み換え真核生物宿主細胞、例えばチャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞、NS/0細胞、HEK293細胞、昆虫細胞、植物細胞、または酵母細胞を含む真菌を用いて産生され得る。この目的には、安定かつ一過的な系が使用され得る。トランスフェクションは、いくつかの確立された方法、例えば電気穿孔、リポフェクチン、またはヌクレオフェクチンにより、プラスミド発現ベクターを用いて行われ得る。あるいは、組み換えウイルス、例えばアデノウイルス、ワクシニアウイルス、またはバキュロウイルスによりコードされるタンパク質を発現させるために感染が使用され得る。別の方法は、抗体の産生のために遺伝子導入動物を使用するものであり得る。
【0116】
従って、さらなる主な局面において、本発明は本明細書に記述される本発明の一価抗体をコードする核酸構築物に関する。一つの態様において、核酸構築物は発現ベクターである。
【0117】
さらに、本発明は、一価抗体が産生されるように本発明による核酸構築物を含む宿主細胞を培養する段階、および細胞培養物から該一価抗体を回収する段階を含む、本発明による一価抗体を調製する方法に関する。
【0118】
抗体をコードするDNA配列は、確立された標準的方法によって合成的に調製することができる。このDNA配列を次いで、組み換え発現ベクターに挿入することができるが、このベクターは、組み換えDNA手順に好都合に供され得る任意のベクターであってよい。ベクターの選択は、ベクターを導入する宿主細胞に依ることが多いであろう。従って、ベクターは、自己複製ベクター、すなわち染色体外の実体として存在し、その複製が染色体の複製に非依存的であるベクター、例えばプラスミドであり得る。あるいは、ベクターは、宿主細胞に導入された場合に、宿主細胞のゲノムに組み込まれ、組み込まれた染色体とともに複製されるベクターであってもよい。ベクターにおいて、抗体をコードするDNA配列は、適当なプロモーター配列に機能的につながれるべきである。コードDNA配列を適当なターミネーターに機能的につなげることもでき、ベクターはさらに、ポリアデニル化シグナル(例えばSV40またはアデノウイルス5 Elb領域由来)、転写エンハンサー配列(例えばSV40エンハンサー)、および翻訳エンハンサー配列(例えば、アデノウイルスVA RNAをコードする配列)のような要素を含むことができる。他のこのようなシグナルおよびエンハンサーは当技術分野において公知である。
【0119】
本発明の組み換え一価抗体を得るために、この抗体のポリペプチド鎖の異なる部分をコードするDNA配列は宿主細胞において個別に発現されてもよく、融合により融合ポリペプチド、例えば軽鎖および重鎖の両方を含むポリペプチドをコードするDNA構築物とし、組み換え発現ベクターに挿入し、宿主細胞において発現されてもよい。
【0120】
従って、さらなる局面において、本発明は、本発明による核酸を含む宿主細胞に関する。
【0121】
本発明はまた、本発明による核酸構築物を含む非ヒト遺伝子導入動物にも関する。
【0122】
発現ベクターが導入され得る宿主細胞は、全長タンパク質を発現できる任意の細胞であってよく、例えば原核細胞または真核細胞、例えば酵母、昆虫および哺乳動物の細胞であり得る。適当な哺乳動物細胞株の例はHEK293 (ATCC CRL-1573)、COS (ATCC CRL-1650)、BHK (ATCC CRL-1632、ATCC CCL-10)、NS/0 (ECACC 85110503)、またはCHO (ATCC CCL-61)細胞株である。他の適当な細胞株は当技術分野において公知である。一つの態様において、発現系は、哺乳動物発現系、例えばHEK293細胞の様々なクローン性のバリエーションを含む哺乳動物細胞発現系である。
【0123】
哺乳動物細胞をトランスフェクトし、細胞に導入されたDNA配列を発現する方法は、当技術分野において周知である。本発明の一価抗体を得るため、発現系の宿主細胞は、一つの態様において、二つの発現ベクターの一方が抗体の重鎖をコードするDNA配列を含み、二つの発現ベクターのもう一方が抗体の軽鎖をコードするDNA配列を含む、二つの発現ベクターで同時に共トランスフェクトされ得る。二つの配列はまた、同じ発現ベクター上に存在し得るし、融合により融合ポリペプチド、例えば軽鎖および重鎖の両方を含むポリペプチドをコードするDNA構築物とされる場合もある。
【0124】
組み換えにより産生された一価抗体は、その後、遠心分離もしくはろ過による宿主細胞と培地の分離、塩、例えば硫酸アンモニウムによる上清またはろ液のタンパク質成分の沈降、様々なクロマトグラフィ手順、例えばHPLC、イオン交換クロマトグラフィ、アフィニティクロマトグラフィ、プロテインAクロマトグラフィ、プロテインGクロマトグラフィ等による精製を含む従来的手順により培地から回収され得る。
【0125】
本発明はまた、本発明の一価抗体の調製方法に関し、該方法は、以下の段階を含む:
(a) 一価抗体をコードする核酸を含む宿主細胞を培養する段階; および
(b) 宿主細胞培養物から一価抗体を回収する段階。
【0126】
一つの態様において、宿主細胞は原核生物宿主細胞である。一つの態様において、宿主細胞は大腸菌(E. coli)細胞である。一つの態様において、大腸菌細胞は内因性プロテアーゼ活性欠損株のものである。
【0127】
一つの態様において、宿主細胞は真核細胞である。一つの態様において、宿主細胞はHEK-293F細胞である。別の態様において、宿主細胞はCHO細胞である。
【0128】
一つの態様において、一価抗体は培地から回収される。別の態様において、一価抗体は細胞溶解物から回収される。
【0129】
さらなる主な局面において、本発明は、本発明による一価抗体を含む薬学的組成物に関する。一つの態様において、組成物は本明細書に記述された一つまたは複数のさらなる治療剤をさらに含む。
【0130】
薬学的組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されるものなどの従来技術に従い、薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤とともに製剤化され得る。本明細書において用いられる場合、「薬学的に許容される担体」には、生理学的に適合する任意のおよび全ての溶媒、分散媒、コーティング、抗菌剤および抗真菌剤、等張剤、抗酸化剤、ならびに吸収遅延剤等が含まれる。
【0131】
薬学的組成物は、任意の適当な経路および様式により投与され得る。当業者に理解されていることであるが、投与経路および/または様式は、求める結果によって異なる。
【0132】
一つの態様において、薬学的組成物は、非経口投与に適したものである。「非経口投与」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、これには、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、硬膜外、および胸骨内への注射および注入が含まれるがこれらに限定されない。一つの態様において、薬学的組成物は、静脈内または皮下注射または注入によって投与される。
【0133】
選択される投与経路に関わらず、薬学的に許容される塩の形態でもしくは適当な水和形態で使用され得る本発明の一価抗体および/または本発明の薬学的組成物は、当業者に公知の従来的方法により薬学的に許容される剤形に製剤化される。
【0134】
投薬レジメンは、最適な所望の反応(例えば治療反応)を提供するよう調整される。例えば、単一のボーラスが投与される場合もあり、数個に分割された用量が経時的に投与される場合もあり、その治療状況の緊急性に比例してその用量が加減される場合もある。投与の簡便さおよび用量の均一性の点から単位剤形の非経口組成物を製剤化するのが特に有利である。本明細書において用いられる場合、単位剤形は、処置する被験体への単位投薬に適した物理的に隔てられた単位を意味し; 各々の単位は、所望の治療効果を生ずるよう計算された所定量の一価抗体を必要な薬学的担体とともに含む。本発明の単位剤形の仕様は、(a) 一価抗体の固有の特性および達成すべき特定の治療効果、ならびに(b) 個体における処置感度に関する、このような一価抗体を配合する技術における固有の制限による影響を受けかつそれらに直接的に依存する。
【0135】
本発明の薬学的組成物における実際の一価抗体の用量レベルは、特定の患者、組成物、および投与様式において所望の治療反応を達成するのに有効な活性成分の量を得るために変更され得る。選択される用量レベルは、使用される本発明の特定の一価抗体の活性、投与経路、投与時間、使用される特定の一価抗体の排出速度、処置期間、使用される特定の組成物とともに使用される他の薬物、化合物、および/または物質、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全般的な健康、および過去の病歴、ならびに医療分野で周知の同様の要因を含む様々な薬物動態学的要因に依存すると考えられる。
【0136】
当技術分野の通常の技術を有する医師または獣医は、必要とされる薬学的組成物の有効量を容易に決定および処方することができる。例えば、医師または獣医は、薬学的組成物において使用される本発明の化合物の用量を、所望の治療効果を達成するために必要とされるのよりも低いレベルから開始し、所望の治療効果が達成されるまで用量を段階的に増やしていくことができる。一般的に、本発明の薬学的組成物の適当な用量は、治療効果を生ずるのに有効な最低の用量である一価抗体の量と考えられる。このような有効用量は一般的に、上記の要因に依存する。別の例として、医師または獣医は、治療的有効用量を迅速に達成しそれを長期間にわたって維持するために、高負荷用量を用いて開始した後、それよりも低い用量を反復的に投与することができる。
【0137】
本発明の薬学的組成物は、一つまたは複数の異なる本発明の一価抗体を含み得る。従って、さらなる態様において、薬学的組成物は、異なる機構により作用する複数の(例えば二つまたはそれ以上の)本発明の一価抗体の組み合わせを含む。一価抗体はまた、このようにして二価抗体と組み合わされ得る。
【0138】
本発明の一価抗体は、この抗体が認識および結合できる抗原を発現する細胞に関連する障害の診断および処置に関連する、多くのインビトロおよびインビボ診断および治療用途を有する。特定の病的状態においては、一価抗体を使用することが必要および/または望ましい。同様に、いくつかの例においては、治療用抗体が、免疫系媒介性の活性、例えばエフェクタ機能、ADCC、貪食作用、およびCDCを伴わずにその治療的作用を発揮することが好ましい。このような状況においては、そのような活性が実質的に減弱されたまたは排除された形態の抗体を作製することが望ましい。その抗体が効率的にかつ高収率で作出できる形態のものであればなお有利である。本発明は、このような、様々な目的、例えば治療、予防、および診断に使用され得る抗体を提供する。
【0139】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、CD74に対するものであり、MIF誘導性のシグナル伝達を阻害するが、Fc媒介性のエフェクタ機能は欠失している。
【0140】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、ウイルスまたは他の病原体とその受容体との結合を妨げ得る、例えばHIVとCD4または補助受容体、例えばCCR5もしくはCXCR4との結合を阻害し得る。
【0141】
標的または標的の特異的エピトープに対する抗体の結合が治療効果を有することが示されているかまたは有することが推定される、標的の例を示す科学文献は豊富に存在する。本明細書の教示によればおよび本明細書中の他の箇所に記述されるように、そのような標的に対する一価抗体、例えば本発明の一価抗体の使用が治療効果を生じることを期待できるかどうかを決定することは当業者の技術の内である。
【0142】
従って、さらなる局面において、本発明は医薬として使用するための、本明細書に記述の本発明による一価抗体に関する。
【0143】
別の局面において、本発明は、がんの処置において使用するための、本発明による一価抗体に関する。
【0144】
別の局面において、本発明は、炎症状態の処置において使用するための、本発明による一価抗体に関する。
【0145】
別の局面において、本発明は、自己(免疫)障害の処置において使用するための、本発明による一価抗体に関する。
【0146】
別の局面において、本発明は、望ましくない血管新生を含む障害の処置において使用するための、本発明による一価抗体に関する。
【0147】
さらなる局面において、本発明は、特定の標的に対する抗体の投与により処置可能な疾患または障害の処置において使用するための、本発明による一価抗体であって、抗体の投与の効果を達成するためには免疫系媒介性の活性が必要ないかまたは望ましくなく、かつ該抗体が抗原に特異的に結合する、一価抗体に関する。
【0148】
さらなる局面において、本発明は、可溶性抗原を遮断するかまたは阻害することによって処置可能な疾患または障害の処置において使用するための、本発明による一価抗体であって、該抗原の多量体化が望ましくない免疫複合体を形成し得る、かつ該抗体が該抗原に特異的に結合する、一価抗体に関する。
【0149】
さらなる局面において、本発明は、細胞膜結合型受容体を遮断するかまたは阻害することによって処置可能な疾患または障害の処置において使用するための、本発明による一価抗体であって、該受容体が該受容体の二量体化によって活性化され得る、かつ該抗体が該受容体に特異的に結合する、一価抗体に関する。
【0150】
上記の処置のいずれか一つの態様において、処置は一つまたは複数のさらなる治療剤を投与することを含む。
【0151】
同様に、本発明は本明細書に記述の本発明による一価抗体の医薬としての使用に関する。
【0152】
本発明は同様に、本明細書に定義の疾患または障害を処置する方法であって、このような処置を必要とする被験体に、本発明による一価抗体、本発明による薬学的組成物または本発明による核酸構築物の治療的有効量を投与する段階を含む、該方法に関する。一つの態様において、処置は一つまたは複数のさらなる治療剤を投与することを含む。
【0153】
さらに、本発明は、本明細書に定義の疾患または障害の処置のための医薬の調製における、本発明による一価抗体の使用に関する。
【0154】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、FcαRIを通じた細胞の活性化に干渉することにより、FcαRIの機能に干渉することにより、その後のFcαRIにより活性化されるIgE媒介性の反応の阻害により、または可溶型FcαRIとの結合により処置可能である。本発明の一つの態様において、一価抗体はFcαRIに対する抗体であり、FcαRI発現細胞のアポトーシスを誘導する。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えばアレルギー性喘息または他のアレルギー性疾患、例えばアレルギー性鼻炎、季節性/通年性アレルギー、枯草熱、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹、蕁麻疹、接触アレルギー、アレルギー性結膜炎、眼アレルギー、食物および薬物アレルギー、ラテックスアレルギー、もしくは昆虫アレルギー、またはIgA腎症、例えばIgA天疱瘡であり得る。一つのこのような態様において、本発明の一価抗体はFcαRIに向けられる。このような一価抗体はまた、サンプルもしくは患者におけるFcαRIのインビトロもしくはインビボスクリーニングのためにまたはこれらの疾患および障害を処置するための免疫毒素もしくは放射標識法において使用され得る。
【0155】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、FcεR1またはFcγ受容体を通じたFc受容体γ鎖媒介性のシグナル伝達を下方制御することによって処置可能である。FcαRIに対する抗体の単量体結合はこのような阻害をもたらすことが公知である。従って、一価抗体は、Fcγ、Fcα、およびFcε受容体を含むFc受容体群を通じた免疫の活性化を阻害するために使用され得る。このように、一つの態様において、本発明の一価抗体は、Fcα、Fcε、またはFcγ受容体、例えばCD32bに結合し得る。
【0156】
一つのこのような態様において、本発明の一価抗体はCD25に向けられる。このような一価抗体はまた、サンプルもしくは患者におけるCD25のインビトロもしくはインビボスクリーニングのためにまたはこれらの疾患および障害を処置するための免疫毒素もしくは放射標識法において使用され得る。
【0157】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、IL-15またはIL15受容体の機能をアンタゴナイズおよび/または阻害することによって処置可能である。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えば、関節炎障害、痛風障害、結合障害、神経障害、胃腸障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、脈管障害、感染障害、腎障害、心臓障害、循環器障害、代謝性、骨障害、および筋肉障害であり得る。一つのこのような態様において、本発明の一価抗体はIL-15に向けられる。このような一価抗体はまた、サンプルもしくは患者におけるIL-15のインビトロもしくはインビボスクリーニングのためにまたはこれらの疾患および障害を処置するための免疫毒素もしくは放射標識法において使用され得る。
【0158】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、例えば免疫毒素または放射標識法を通じて、CD20活性に干渉することにより、B細胞を枯渇させることにより、B細胞の成長および/または増殖に干渉することにより処置可能である。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えば、関節リウマチ、(自己)免疫障害および炎症障害(IL-8関連疾患および障害について上述されるような)、非ホジキンリンパ腫、B-CLL、リンパ系新生物、悪性腫瘍および血液障害、感染疾患、ならびに結合障害、神経障害、胃腸障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、脈管障害、感染障害、腎障害、心臓障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、および筋肉障害、ならびに免疫媒介性の血球減少症であり得る。
【0159】
一つのこのような態様において、本発明の一価抗体はCD20に向けられる。このような一価抗体はまた、サンプルまたは患者におけるCD20のインビトロまたはインビボスクリーニングのために使用され得る。
【0160】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、例えば免疫毒素または放射標識法を通じて、CD38活性に干渉することにより、CD38発現細胞を枯渇させることにより、CD38+細胞の成長および/または増殖に干渉することにより処置可能である。
【0161】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、例えば免疫毒素または放射標識法を通じて、リガンド-EGFrの相互作用を遮断することにより、EGFrの機能を遮断することにより、EGFr発現細胞の枯渇/EGFr+細胞の成長および/または増殖に干渉することにより処置可能である。
【0162】
一つのこのような態様において、本発明の一価抗体はEGFrに向けられる。このような一価抗体はまた、サンプルまたは患者のEGFrのインビトロまたはインビボスクリーニングのために使用され得る。
【0163】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、例えば免疫毒素または放射標識法を通じて、CD4の機能に干渉することにより、CD4発現細胞の枯渇/CD4+細胞の成長および/または増殖に干渉することにより処置可能である。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えば、関節リウマチ、(自己)免疫障害および炎症障害(IL-8関連疾患および障害について上述されるような障害)、皮膚T細胞リンパ腫、非皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、悪性腫瘍および血液障害、感染疾患、ならびに結合障害、神経障害、胃腸障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、脈管障害、感染障害、腎障害、心臓障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、および筋肉障害、ならびに免疫媒介性の血球減少症であり得る。
【0164】
一つのこのような態様において、本発明の一価抗体はCD4に向けられる。このような一価抗体はまた、サンプルまたは患者におけるCD4のインビトロまたはインビボスクリーニングのために使用され得る。
【0165】
本発明の一つの態様において、CD4に対する一価抗体は、HIV感染の処置またはAIDSの処置のために使用される。
【0166】
本発明の一つの態様において、本発明の一価抗体は、WO97/13852に開示されるCD4抗体の一価抗体である。
【0167】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、CD28機能をアンタゴナイズおよび/または阻害することにより、例えばT細胞の活性化に必要とされる共刺激性のシグナルを妨げることにより処置可能である。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えば、上記のような炎症障害、自己免疫障害、および免疫障害であり得る。一つのこのような態様において、本発明の一価抗体は、CD28に向けられる。
【0168】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、組織因子の機能を変化させることにより、例えば凝固を変化させることによりまたは組織因子のシグナル伝達の阻害により処置可能である。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えば、脈管疾患、例えば心筋脈管疾患、脳脈管疾患、網膜症、および黄斑変性、ならびに上記のような炎症障害であり得る。
【0169】
本発明の一つの態様において、一価抗体は組織因子、または第VII因子と組織因子の複合体に向けられる。
【0170】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、C型肝炎ウイルス(HCV)感染に干渉することにより処置可能である。一つのこのような態様において、本発明の一価抗体は、HCVまたはHCV受容体、例えばCD81に向けられる。
【0171】
本発明の一つの態様において、一価抗体は、WO2000/05266に開示されるような抗体の本発明による一価抗体である。
【0172】
本発明の一つの態様において、処置される疾患または障害は、アレルゲンとマスト細胞上の感作されたIgEとの結合を妨げることにより処置可能である。一つの態様において、このような疾患または障害は、例えば、アレルギー疾患、例えば喘息、アレルギー性鼻炎、季節性/通年性アレルギー、枯草熱、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹、蕁麻疹、接触アレルギー、アレルギー性結膜炎、眼アレルギー、食物および薬物アレルギー、ラテックスアレルギー、または昆虫アレルギーのアレルゲン免疫療法であり得る。
【0173】
一つのこのような態様において、本発明の一価抗体は、アレルゲンに対するIgG4ヒンジレス抗体である。
【0174】
特定の態様において、細胞毒性薬にコンジュゲートされた一価抗体を含むイムノコンジュゲートが患者に投与される。いくつかの態様において、イムノコンジュゲートおよび/またはそれに結合する抗原は、細胞によって内部に取り入れられ、それによってそれに結合する標的細胞を死滅させる上でのイムノコンジュゲートの治療効果が亢進される。一つの態様において、細胞毒性薬は、標的細胞内の核酸を標的とするかまたはそれに干渉する。
【0175】
このような細胞毒性薬の例には、本明細書に示される化学療法剤(例えばメイタンシノイドまたはカリケアマイシン)、放射性同位元素、またはリボヌクレアーゼもしくはDNAエンドヌクレアーゼが含まれる。
【0176】
本発明の一価抗体は、治療において単独でまたは他の組成物と組み合わせて使用され得る。例えば、本発明の一価抗体は、処置される疾患または状態に依存して、一つもしくは複数の他の抗体、例えば本発明の一価抗体、一つもしくは複数の化学療法剤(化学療法剤のカクテルを含む)、一つもしくは複数の他の細胞毒性薬、一つもしくは複数の抗血管新生剤、一つもしくは複数のサイトカイン、一つもしくは複数の成長阻害剤、一つもしくは複数の抗炎症剤、一つもしくは複数の疾患改変性抗リウマチ薬(DMARD)、または一つもしくは複数の免疫抑制剤と同時投与され得る。本発明の一価抗体が腫瘍の成長を阻害する場合は、腫瘍の成長も阻害する一つまたは複数の他の治療剤と併用するのが特に望ましい場合がある。例えば、VEGF活性を遮断する抗VEGF抗体は、転移性乳がんの処置において、抗ErbB抗体(例えば抗HER2抗体であるトラスツズマブ(ハーセプチン))と併用され得る。あるいはまたはさらに、患者は、複合放射療法(例えば外部からのビーム照射または放射標識した薬剤、例えば抗体を用いる療法)を行われ得る。上記のような併用療法には、複合投与(二つまたはそれ以上の薬剤が同じまたは別個の製剤に含まれる)、および個別投与が含まれ、個別投与の場合、本発明の抗体の投与は、補助的療法の実施前および/または実施後に行われ得る。
【0177】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、Her2陽性がんの処置のための、一価型のトラスツズマブである。
【0178】
疾患の予防または処置については、本発明の一価抗体の適当な用量は(単独でまたは他の薬剤、例えば化学療法剤と組み合わせて使用される場合)、処置される疾患のタイプ、抗体のタイプ、疾患の重症度および経過、一価抗体が予防目的で投与されるのか治療目的で投与されるのかまたは診断目的で投与されるのか、過去の治療、患者の病歴および抗体に対する反応、ならびに主治医の裁量に依存する。一価抗体は、患者に対して一回でまたは複数回の処置として適当に投与され得る。
【0179】
このような用量は、断続的に、例えば毎週または三週ごとに(例えば、患者が約2〜約20回分、例えば約6回分の一価抗体を投与されるように)投与され得る。最初に高い負荷用量、その後に一つまたは複数の低用量が投与され得る。投薬レジメンの例は、約4 mg/kgの一価抗体の初期負荷用量の投与、その後の約2 mg/kgの一価抗体の週ごとの維持用量の投与を含む。しかし、他の投薬レジメンも有用であり得る。一つの態様において、本発明の一価抗体は、50 mg〜4000 mg、例えば250 mg〜2000 mg、例えば300 mg、500 mg、700 mg、1000 mg、1500 mg、または2000 mgの週ごとの用量を、最大8回、例えば4〜6回投与される。週ごとの用量は、二つまたは三つの部分用量に分けられ、一日より多い日に分けて投与され得る。例えば、300 mgの用量は、第一(1)日に100 mg、第二(2)日に200 mgというように2日に分けて投与され得る。500 mgの用量は、第一(1)日に100 mg、第二(2)日に200 mg、第三(3)日に200 mgというように3日に分けて投与され得、700 mgの用量は、第1(一)日に100 mg、第2(二)日に300 mg、第3(三)日に300 mgというように3日に分けて投与され得る。レジメンは、必要に応じて、例えば6ヶ月または12ヶ月後に、一回または複数回繰り返され得る。
【0180】
用量は、生物学的サンプル中の本発明の一価抗体の投与後の循環量を、例えば該一価抗体を標的化する抗イディオタイプ抗体を使用することによって測定することにより決定または調整され得る。
【0181】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、維持療法によって、例えば6ヶ月またはそれ以上の期間の間一週間に一度投与され得る。
【0182】
一つの態様において、本発明の一価抗体は、本発明の一価抗体の一回の注入およびその後の放射性同位元素にコンジュゲートされた同じ一価抗体の注入を含むレジメンによって投与され得る。このレジメンは、例えば7〜9日後に繰り返され得る。
【0183】
別の主な局面において、本発明は、本発明による一価抗体の診断薬としての使用に関する。
【0184】
先述のように、さらなる局面において、本発明は、重鎖がSEQ ID NO:2に記載の配列を有するヒトIgG4定常領域を含み、250位のLys (K)がGln (Q)またはGlu (E)に置き換えられ、かつ抗体がSEQ ID NO:2に記載の定常領域の中に任意で一つまたは複数のさらなる置換、欠失および/または挿入を含んでもよい、重鎖および軽鎖を含む、医薬として使用するための安定化IgG4抗体に関する。
【0185】
その一つの態様において、ヒトIgG4定常領域はSEQ ID NO:2に記載の配列を有し、189位のX1はLeuであり、かつ289位のX2はArgである。その別の態様において、ヒトIgG4定常領域はSEQ ID NO:2に記載の配列を有し、189位のX1はLeuであり、かつ289位のX2はLysである。そのさらに別の態様において、ヒトIgG4定常領域はSEQ ID NO:2に記載の配列を有し、189位のX1はValであり、かつ289位のX2はArgである。
【0186】
一つのさらなる局面において、本発明は、重鎖がSEQ ID NO:2に記載の配列を有するヒトIgG4定常領域を含み、250位のLys (K)がGln (Q)またはGlu (E)に置き換えられ、かつ抗体がSEQ ID NO:2に記載の定常領域の中に任意で一つまたは複数のさらなる置換、欠失および/または挿入を含んでもよい、重鎖および軽鎖を含む、医薬として使用するための単離された安定化IgG4抗体に関する。
【0187】
その一つの態様において、ヒトIgG4定常領域はSEQ ID NO:2に記載の配列を有し、189位のX1はLeuであり、かつ289位のX2はArgである。その別の態様において、ヒトIgG4定常領域はSEQ ID NO:2に記載の配列を有し、189位のX1はLeuであり、かつ289位のX2はLysである。そのさらに別の態様において、ヒトIgG4定常領域はSEQ ID NO:2に記載の配列を有し、189位のX1はValであり、かつ289位のX2はArgである。
【0188】
本発明による安定化されたIgG4抗体は、天然のIgG4と比べて定常領域の配列変化が最小数であるという利点を有する。これによって、抗体をヒトの治療に用いる場合の免疫原性のリスクが減る。
【0189】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、Cys-Pro-Pro-Cys配列をヒンジ領域の中に含まない。
【0190】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体のCH3領域はヒトIgG1の、ヒトIgG2のまたはヒトIgG3のCH3領域に置き換えられている。
【0191】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体はGlu (E)による、115位に対応する位置でのLeu (L)残基の置換を含まない。
【0192】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体はGlu (E)による、115位に対応する位置でのLeu (L)残基の置換を含む。
【0193】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は以下の置換、114位のAla (A)、116位のAla (A)、117位のAla (A)、177位のAla (A)、198位のAla (A)またはVal (V)、200位のAla (A)、202位のAla (A)またはGln (Q)の一つまたは複数を含む。
【0194】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、XがPro (P)を除く任意のアミノ酸であり得るCXPCまたはCPXC配列をヒンジ領域の中に含む。
【0195】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、図14に記載の伸長されたヒンジ領域などの、伸長されたIgG3様ヒンジ領域を含まない。
【0196】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、CPSC配列をヒンジ領域の中に含む。
【0197】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、SEQ ID NO:2に記載の定常領域の中に10個未満、例えば9、8、7、6、5、4、3、または2個未満などの、25個未満の置換、欠失および/または挿入を有する。
【0198】
典型的には、本発明の安定化IgG4抗体は、IgG1およびIgG3と比べてエフェクタ機能の活性化能がより低い。その一つの態様において、抗体は、同じ可変領域を持った対応するIgG1またはIgG3抗体よりもCDCおよび/またはADCCの媒介効率が低い。CDCまたはADCC活性を測定するためのアッセイ法は、当技術分野において周知である。
【0199】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体およびキメラモノクローナル抗体からなる群より選択される。
【0200】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、ヒトカッパ軽鎖を含む。
【0201】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、ヒトラムダ軽鎖を含む。
【0202】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、二価の抗体であり、例えば本明細書の実施例において説明されるように、過剰の無関係な抗体の存在下であっても二価である抗体である。
【0203】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、完全長の抗体である。
【0204】
安定化IgG4抗体の産生方法は、当技術分野において周知である。好ましい態様において、本発明の抗体はモノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、例えば、Kohler et al., Nature 256, 495 (1975)によって最初に記述されたハイブリドーマ法によって産生されてもよく、または組み換えDNA法によって産生されてもよい。モノクローナル抗体はまた、例えばClackson et al., Nature 352, 624-628 (1991)およびMarks et al., J. Mol. Biol. 222, 581-597 (1991)において記述される技術を用いてファージ抗体ライブラリから単離されてもよい。モノクローナル抗体は、任意の適した起源から得てもよい。このように、例えば、モノクローナル抗体は、関心対象の抗原によって免疫したマウスから得られたネズミ脾臓B細胞から調製されたハイブリドーマから、例として表面上に抗原を発現する細胞の形で、または関心対象の抗原をコードする核酸の形で得てもよい。モノクローナル抗体はまた、免疫したヒト、またはラット、イヌ、霊長類等のような非ヒト哺乳動物の抗体発現細胞に由来するハイブリドーマから得てもよい。
【0205】
当技術分野において周知の標準的な組み換えDNA技術を用いて、先に記述したようなアミノ酸置換、欠失または挿入などの、さらなる改変を行ってもよい。
【0206】
一つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体はヒト抗体である。
【0207】
さらなる主な局面において、本発明は、本発明の安定化IgG4抗体を産生するための方法であって、該抗体をコードする核酸構築物を宿主細胞において発現させる段階、および任意で該抗体を精製する段階を含む、該方法に関する。
【0208】
一つの態様において、本発明の安定化IgG4抗体は、細胞毒性薬; 放射性同位元素; プロドラッグまたはタキサンなどの薬物; サイトカイン; およびケモカインからなる群より選択される化合物に連結される。そのような化合物を抗体に連結(結合)させるための方法は当技術分野において周知である。適当な方法への言及は、WO 2004/056847 (Genmab)において与えられている。
【0209】
その一つの態様において、安定化IgG4抗体は、細胞毒性薬; 放射性同位元素; プロドラッグまたはタキサンなどの薬物; サイトカイン; およびケモカインからなる群より選択される化合物に連結される。
【0210】
さらなる主な局面において、本発明は、本明細書に上述の安定化IgG4抗体を含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、Remington: The Science and Practice of Pharmacy, 19th Edition, Gennaro, Ed., Mack Publishing Co., Easton, PA, 1995に開示されるものなどの従来技術に従い、薬学的に許容される担体または希釈剤ならびに任意の他の公知のアジュバントおよび賦形剤とともに製剤化され得る。
【0211】
一つの態様において、本発明の薬学的組成物は非経口的に投与される。本明細書において用いられる「非経口投与」および「非経口的に投与される」という語句は、通常は注射による、経腸および局所投与以外の投与様式を意味し、これには、表皮、静脈内、筋内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、腱内、経気管、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、頭蓋内、胸腔内、硬膜外および胸骨内への注射および注入が含まれる。
【0212】
本発明の安定化IgG4抗体は、いくつかの疾患の処置および/または予防において用いることができ、幅広い適当な標的分子から選択される抗原に向けることができる。
【0213】
その一つの態様において、上記の態様のいずれか一つによる安定化IgG4抗体は、エリスロポエチン、β-アミロイド、トロンボポエチン、インターフェロン-α(2aおよび2b)、インターフェロン-β(1b)、インターフェロン-γ、TNFR I (CD120a)、TNFR II (CD120b)、IL-1R 1型(CD121a)、IL-1R 2型(CD121b)、IL- 2、IL2R (CD25)、IL-2R-β(CD123)、IL-3、IL-4、IL-3R (CD123)、IL-4R (CD124)、IL-5R (CD125)、IL-6R-α(CD126)、-β(CD130)、IL-8、IL-10、IL-11、IL-15、IL-15BP、IL-15R、IL-20、IL-21、TCR可変鎖、RANK、RANK-L、CTLA4、CXCR4R、CCR5R、TGF-β1、-β2、-β3、G-CSF、GM-CSF、MIF-R (CD74)、M-CSF-R (CD115)、GM-CSFR (CD116)、可溶性FcRI、sFcRII、sFcRIII、FcRn、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、VEGF、VEGFxxxb、α-4インテグリン、Cd11a、CD18、CD20、CD38、CD25、CD74、FcαRI、FcεRI、アセチルコリン受容体、fas、fasL、TRAIL、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのエンベロープE2、組織因子、組織因子と第VII因子の複合体、EGFr、CD4、CD28、VLA-1、2、3、または4、LFA-1、MAC-1、I-セレクチン、PSGL-1、ICAM-I、P-セレクチン、ペリオスチン、CD33 (Siglec 3)、Siglec 8、TNF、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27、CX3CL1、LIGHT、EGF、VEGF、TGFα、HGF、PDGF、NGF、C1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBL、B因子などの補体または補体関連成分、MMP1からMMP28のいずれかなどのマトリクスメタロプロテアーゼ、CD32b、CD200、CD200R、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、NKG2Dおよび関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIR)、ly49、PD-L2、CD26、BST-2、ML-IAP (アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)、カテプシンD、CD40、CD40R、CD86、B細胞受容体、CD79、PD-1、ならびにT細胞受容体からなる群より選択される抗原に結合する。
【0214】
その一つの態様において
(i) 抗体はアルファ-4インテグリンに結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息および敗血症の処置において使用するためであり;
(ii) 抗体はVLA-1、2、3、もしくは4に結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、COPDおよび敗血症の処置において使用するためであり;
(iii) 抗体は、LFA-1、MAC-1、I-セレクチンおよびPSGL-1からなる群より選択される分子に結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎およびCOPDの処置において使用するためであり;
(iv) 抗体は、LFA-1、MAC-1、I-セレクチンおよびPSGL-1からなる群より選択される分子に結合し、かつ虚血再かん流傷害、嚢胞性線維症、骨髄炎、糸球体腎炎、痛風および敗血症からなる群より選択される疾患の処置において使用するためであり;
(v) 抗体はCD18に結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎およびCOPDの処置において使用するためであり;
(vi) 抗体はCd11aに結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎およびCOPDの処置において使用するためであり;
(vii) 抗体はICAM-1に結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎およびCOPDの処置において使用するためであり;
(viii) 抗体はP-セレクチンに結合し、かつ心血管疾患、血栓後静脈壁線維症、虚血再かん流傷害、炎症性疾患もしくは敗血症の処置において使用するためであり;
(ix) 抗体はペリオスチンに結合し、かつ悪性疾患および/もしくは転移性疾患、例えば卵巣がん、子宮内膜がん、NSCLC、グリア芽腫、脳に関連する腫瘍、乳がん、OSCC、結腸がん、膵臓がん、HNSCC、腎臓がん、胸腺腫、肺がん、皮膚がん、喉頭がん、肝臓がん、耳下腺腫瘍、胃がん、食道がん、前立腺がん、膀胱がんおよび精巣のがんの処置において使用するためであり;
(x) 抗体はCD33 (Siglec 3)に結合し、かつ任意で毒素、細胞毒性薬もしくは細胞増殖抑制薬にカップリングされてもよく、かつCD33を発現する腫瘍もしくは急性骨髄性白血病の処置において使用するためであり;
(xi) 抗体はSiglec 8に結合し、かつ喘息、炎症性疾患もしくは自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎およびCOPDの処置において使用するためであり;
(xii) 抗体はTNFに結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、アトピー性皮膚炎、COPDおよび敗血症の処置において使用するためであり;
(xiii) 抗体はCCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27もしくはCX3CL1に結合し、かつアトピー性皮膚炎、炎症性疾患および自己免疫疾患、例えば関節リウマチ、多発性硬化症、炎症性腸疾患、喘息、1型糖尿病、SLE、乾癬、COPDおよび敗血症の処置において使用するためであり;
(xiv) 抗体はLIGHTに結合し、かつ肝炎、炎症性腸疾患、GVHDおよび炎症からなる群より選択される疾患の処置において使用するためであり;
(xv) 抗体はEGF、VEGF、TGFアルファまたはHGFに結合し、かつ悪性疾患、例えば固形がんの処置において使用するためであり;
(xvi) 抗体はPDGFに結合し、かつ異常な細胞増殖、細胞移動および/もしくは血管新生が起こる疾患、例えばアテローム性動脈硬化症、線維症および悪性疾患の処置において使用するためであり;
(xvii) 抗体はNGFに結合し、かつ神経疾患、神経変性疾患、例えばアルツハイマー病およびパーキンソン病、もしくはがん、例えば前立腺がんの処置において使用するためであり;
(xviii) 抗体は補体もしくは関連成分、例えばC1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBLもしくはB因子に結合し、かつ補体および関連成分が有害な役割を果たす疾患、例えば臓器移植拒否反応、多発性硬化症、ギラン・バレー症候群、溶血性貧血、発作性夜間ヘモグロビン尿症、脳卒中、心臓発作、熱傷、加齢黄斑変性症、喘息、狼瘡、関節炎、重症筋無力症、抗リン脂質症候群、敗血症および虚血再かん流傷害において使用するためであり;
(xix) 抗体はMMP1〜MMP28のいずれかのようなマトリックスメタロプロテアーゼに結合し、かつ炎症性疾患および自己免疫疾患、転移がんを含むがん、関節炎、炎症、心血管疾患、脳血管疾患、例えば脳卒中もしくは脳動脈瘤、肺疾患、例えば喘息、眼疾患、例えば角膜創傷治癒もしくは変性遺伝性眼疾患、消化器疾患、例えば炎症性腸疾患もしくは潰瘍、口腔疾患、例えば虫歯、口腔がんもしくは歯周炎、虚血再かん流傷害または敗血症の処置において使用するためであり;
(xx) 抗体はCD32bに結合し、かつ別の治療用抗体との組み合わせでの、腫瘍抗原に対するT細胞応答およびマクロファージによるADCC/食作用の増強、ワクチン接種、B細胞リンパ腫、喘息もしくはアレルギーの免疫療法において使用するためであり;
(xxi) 抗体はCD200もしくはCD200Rに結合し、かつ喘息、関節リウマチ、GVHD、他の自己免疫疾患、またはがん、例えば固形腫瘍もしくはリンパ腫の処置において使用するためであり;
(xxii) 抗体はキラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、NKG2Dもしくは関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIR)、またはly49に結合し、かつがん、例えば固形腫瘍もしくはリンパ腫、喘息、関節リウマチ、GVHDまたは他の自己免疫疾患の処置において使用するためであり;
(xxiii) 抗体はPD-L2に結合し、かつがん、喘息の処置において使用するためであり、もしくはワクチン増強において使用するためであり;
(xxiv) 抗体はCD26に結合し、かつアテローム性動脈硬化症、GVHDもしくは自己免疫疾患の処置において使用するためであり;
(xxv) 抗体はBST-2に結合し、かつ喘息、アテローム性動脈硬化症、関節リウマチ、乾癬、クローン病、潰瘍性大腸炎、アトピー性皮膚炎、敗血症もしくは炎症の処置において使用するためであり;
(xxvi) 抗体はML-IAP (アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)に結合し、かつ黒色腫の処置において使用するためであり;
(xxvii) 抗体はカテプシンDに結合し、かつ悪性疾患、例えば乳がん、卵巣がん、神経膠腫、NSCLC、膀胱がん、子宮内膜がん、肝臓がん、肉腫、胃がん、SCCHN、前立腺がんもしくは結腸直腸がんの処置において使用するためであり;
(xxviii) 抗体はCD40もしくはCD40Rに結合し、かつがん、特にB細胞リンパ腫、B細胞関連疾患もしくはB細胞媒介疾患、自己免疫疾患、例えば乾癬性関節炎、関節リウマチ、多発性硬化症、乾癬、クローン病または潰瘍性大腸炎の処置において使用するためであり;
(xxix) 抗体はCD86に結合し、かつ臓器移植とともに使用するためであり;
(xxx) 抗体はB細胞受容体に結合し、かつB細胞関連疾患もしくはB細胞媒介疾患、例えばB細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症またはアレルギーの処置において使用するためであり;
(xxxi) 抗体はCD79に結合し、かつB細胞関連疾患もしくはB細胞媒介疾患、例えばB細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症またはアレルギーの処置において使用するためであり;
(xxxii) 抗体はT細胞受容体に結合し、かつT細胞関連疾患もしくはT細胞媒介疾患、例えばT細胞リンパ腫、白血病、自己免疫疾患、炎症またはアレルギーの処置において使用するためであり;
(xxxiii) 抗体はFcαRIに結合し、かつアレルギー性喘息または他のアレルギー性疾患、例えばアレルギー性鼻炎、季節性/通年性アレルギー、枯草熱、鼻アレルギー、アトピー性皮膚炎、湿疹、じんま疹、蕁麻疹、接触アレルギー、アレルギー性結膜炎、眼アレルギー、食物および薬物アレルギー、ラテックスアレルギー、もしくは昆虫アレルギー、またはIgA腎症、例えばIgA天疱瘡から選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxiv) 抗体はCD25に結合し、かつ移植拒絶反応、移植片対宿主病、炎症、免疫もしくは自己免疫疾患、炎症性もしくは過剰増殖性皮膚障害、リンパ系腫瘍、悪性腫瘍、血液学的障害、皮膚障害、肝臓-胃腸障害、心臓障害、脈管障害、腎障害、肺障害、神経障害、結合組織障害、内分泌障害、およびウイルス感染からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxv) 抗体はIL-15もしくはIL15受容体に結合し、かつ関節炎、痛風、結合障害、神経障害、胃腸障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、脈管障害、感染障害、腎障害、心臓障害、循環器障害、代謝性障害、骨障害、および筋肉障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxvi) 抗体はIL-8に結合し、かつ掌蹠膿疱症(PPP)、乾癬、もしくは他の皮膚疾患、炎症障害、自己免疫障害および免疫障害、アルコール性肝炎および急性膵炎、IL-8を介した血管新生を伴う疾患からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxvii) 抗体はCD20に結合し、かつ関節リウマチ、(自己)免疫障害および炎症障害、非ホジキンリンパ腫、B-CLL、リンパ系新生物、悪性腫瘍および血液障害、感染疾患、ならびに結合障害、神経障害、胃腸障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、脈管障害、感染障害、腎障害、心臓障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、および筋肉障害、ならびに免疫媒介性の血球減少症からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxviii) 抗体はCD38に結合し、かつ腫瘍形成障害、CD38発現性のB細胞、血漿細胞、単球およびT細胞が関与する免疫障害、急性呼吸促迫症候群ならびに脈絡網膜炎、関節リウマチ、自己抗体ならびに/または過剰なBおよびTリンパ球活性が顕著な炎症障害、免疫障害および/または自己免疫障害、皮膚障害、免疫媒介性の血球減少症、結合組織障害、関節炎、血液障害、内分泌障害、肝臓-胃腸障害、腎症、神経障害、心臓障害および肺障害、アレルギー障害、眼科的障害、感染性疾患、婦人科-産科障害、男性生殖器障害、移植由来の障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxix) 抗体はEGFrに結合し、かつEGFrを(過剰)発現するがんおよび他のEGFr関連疾患、例えば自己免疫疾患、乾癬および炎症性関節炎からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxx) 抗体はCD4に結合し、かつ関節リウマチ、(自己)免疫障害および炎症障害、皮膚T細胞リンパ腫、非皮膚T細胞リンパ腫、リンパ系新生物、悪性腫瘍および血液障害、感染疾患、ならびに結合障害、神経障害、胃腸障害、肝障害、アレルギー障害、血液障害、皮膚障害、肺障害、悪性障害、内分泌障害、脈管障害、感染障害、腎障害、心臓障害、循環器障害、代謝障害、骨障害、筋肉障害、免疫媒介性の血球減少症、ならびにHIV感染/AIDSからなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxxi) 抗体はCD28に結合し、かつ炎症性疾患、自己免疫疾患および免疫障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり;
(xxxxii) 抗体は組織因子、もしくは第VII因子および組織因子の複合体に結合し、かつ脈管疾患、例えば心筋脈管疾患、脳脈管疾患、網膜症および黄斑変性、ならびに炎症障害からなる群より選択される疾患または障害の処置において使用するためであり; あるいは
(xxxxiii) 抗体はPD-1に結合し、かつHIV-1/AIDSの処置において使用するためである。
【0215】
さらなる態様において、本発明は、上記の態様のいずれか一つに定義の安定化IgG4抗体および薬学的に許容される担体または賦形剤を含むことを特徴とする、薬学的組成物に関する。
【0216】
さらなる態様において、本発明は、上記の関連態様(i)〜(xxxxiii)のいずれか一つに規定の疾患の処置用の医薬の調製のための、上記の態様(i)〜(xxxxiii)のいずれか一つに記載の安定化IgG4抗体の使用に関する。
【0217】
さらなる態様において、本発明は、上記の態様(i)〜(xxxxiii)のいずれか一つに規定の疾患に罹患している被験体の処置のための方法であって、それを必要とする被験体に、上記の関連態様(i)〜(xxxxiii)のいずれか一つに規定の通りの安定化IgG4抗体を投与する段階を含む該方法に関する。
【0218】
本発明は、以下の実施例によってさらに例証されるが、これらの例はさらなる限定であると解釈されるべきではない。
【実施例】
【0219】
実施例1
CH3-CH3接触面の構造分析
ヒトIgG1では、CH3ドメイン間の非共有結合性相互作用には、分子間接触を作り出すかつ各表面から1090 Å2埋もれた四つの逆平行β鎖上に位置する16残基が必要になる(Deisenhofer, J.; Biochemistry, 1981. 20(9): p. 2361-70)。アラニン走査変異誘発から、IgG1 CH3-CH3相互作用の安定化がK409を含めて、これらの残基のうちの6つによって主に媒介されることが示された(Dall'Acqua, W., et al.; Biochemistry, 1998. 37(26): p. 9266-73)。IgG1 CH3-CH3相互作用におけるK409の役割をもっとよく理解するために、1.65 Å 1L6X結晶構造(Idusogie, E.E., et al.; J Immunol, 2000. 164(8): p. 4178-84)をBrugelモデルパッケージによってさらに詳細に研究した(Delhaise, P., et al., J. Mol. Graph., 1984. 2(4): p. 103-106)。
【0220】
IgG4の所望の安定化(または不安定化)をもたらすはずの変異を提案するために、定量的な構造に基づく採点法を利用した(Desmet, J., et al.,; Proteins, 2005. 58(1): p. 53-69)。手短に言えば、CH3-CH3二量体接触面における各位置をシステインおよびプロリンを除く、全ての天然アミノ酸に対する変異誘発に供した。変異誘発の後、FASTERアルゴリズム(Desmet, J., et al.,; Proteins, 2002. 48(1): p. 31-43)を用い、調査中の側鎖の全巨視的な回転異性状態に関して行った、変異残基12 Åの球内に位置する全残基の側鎖の相互依存的な最適化により立体配座空間を探索した。その後、このようにして得られた各巨視的な回転異性状態に関し、調査中の側鎖の採点関数を記述(Desmet, J., et al.,; Proteins, 2005. 58(1): p. 53-69)のように評価した。最後に、CH3-CH3二量体接触面における位置ごとに、各変異の最高得点を比較し、得られた立体配座の視覚的検査を選択の事例で行った。
【0221】
実施例2
水仮説
IgG1構造において、K409は反対側のCH3ドメイン上のD399'と水素結合を形成する。さらに、K409は同じCH3ドメイン中のS364およびT411ならびに反対側のCH3ドメイン上のK370'とともに水結合性ポケットの一部である。水分子の存在によって、K409とK370'との間の静電気的な衝突が阻止される。
【0222】
FASTERアルゴリズム(Desmet, J., et al.,; Proteins, 2002. 48(1): p. 31-43)を用いて、アルギニン残基およびその周辺残基の側鎖立体配座を最適化することにより1L6X構造においてK409R置換(IgG4と同様に)をモデル化した。このモデルにおいて、R409のグアニジニウム基は、水分子の位置につき、K370'との静電気的な衝突を引き起こす。T411およびK370'の側鎖は(IgG1と同様に)水の存在する場合と比べてその相互作用を緩めるが、D399はR409位の側鎖とのその相互作用を保持する。
【0223】
実施例3
IgG4の不安定化
IgG4のCH3-CH3相互作用を不安定化するために下記表中の変異を作出した。
【0224】
KABATは、Kabatによるアミノ酸の付番を示す(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。EUインデックスはKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に概説されているようにEUインデックスによるアミノ酸の付番を示す。



【0225】
実施例4
様々な技術的手順
以下の技術はWO2007059782に記述のように行った: オリゴヌクレオチドプライマーおよびPCR増幅、アガロースゲル電気泳動、PCR産物および酵素消化産物の分析および精製、UV分光法によるDNAの定量化、制限酵素消化、DNA断片の核酸連結、大腸菌の形質転換、PCRによる細菌コロニーのスクリーニング、大腸菌培養物からのプラスミドDNA単離、部位特異的変異誘発、DNA配列決定、ならびにHEK-293F細胞における一過性発現。
【0226】
実施例5
2F8-HGのCH3変種の構築および生化学的分析
上記の変異をWO2007059782に記述の、ヒンジレス抗EGFR抗体2F8-HGのCH3領域に導入した。CH3変異体の発現用の構築物を作出するため、部位特異的変異誘発を用いてpTomG42F8HG (WO2007059782に記述)に変異を導入した。この構築物をWO2007059782に記述されているように一過的に発現させ、精製した。
【0227】
CH3変種HG分子が単量体または二量体として存在するかどうか調べるために、WO2007059782に記述されているように質量分析法を利用した。
【0228】
図1は非共有結合性ナノエレクトロスプレイ質量分析を用い各HG変異体に対して得られた単量体/二量体比のまとめを示す。CH3変異体は2F8-HG (WT)に比べて単量体/二量体比の実質的な増加を示した。単量体として存在する分子の割合は、2F8-HG (WT)での15%から、変異R277Aを除く大部分のCH3変異体での>80%へと増加した。IgG4骨格の中にIgG1配列を導入するHG変異R277Kを、陰性対照として用いた。予想通り、この変異体は二量体として挙動した。
【0229】
CH3変異体の単量体または二量体構成を、図2に示されるように製造業者の指示に従ってNativePAGE(商標) Novex(登録商標) Bis-Trisゲル電気泳動(Invitrogen, Carlsbad, California)を用いて検証した。この未変性ゲル電気泳動技術では、SDSの代わりに電荷シフト分子としてクマシーG-250を使用し、未変性のタンパク質立体配座およびタンパク質複合体の四次構造を維持することができる(Schagger H and von Jagow G 1991 Blue native gel electrophoresis for isolation of membrane complexes in enzymatically active form. Anal. Biochem. 199:223-244)。
【0230】
これらの実験条件下では、2F8-HG (WT)ならびにR277KおよびR277Aは完全な四量体(二本の重鎖および二本の軽鎖)のサイズに対応するタンパク質バンドを示した。CH3変異体T234A、L236A、L236V、F273A、F273L、およびY275Aは半分子(一本の重鎖および一本の軽鎖のみ)であることが示された。
【0231】
実施例6
2F8-HGのCH3変異体の機能分析
2F8-HG (WT)および変種の結合は、(WO2007059782の実施例57に記述のように) 200 μg/mlのポリクローナルヒトIgG (静脈内免疫グロブリン, IVIG, Sanquin Netherlands)の非存在下および存在下で決定された。
【0232】
図3および4はIVIG存在下での2F8-HGの結合曲線が、IVIGのない場合の2F8-HGの結合曲線に対して明らかに右側にシフトすることを示す。EGFrコートに対するこの結合活性の差は、IVIGの存在下では2F8-HGが一価で結合するという考えと一致する(WO2007059782の実施例57を参照のこと)。試験されたいくつかの変異、2F8-HG-T234A、2F8-HG-L236V、2F8-HG-L236A、および2F8-HG-Y275Aの結合曲線は、IVIGの添加に対して非感受性になり、IVIGの存在下での2F8-HGの一価結合曲線に重ね合わせることができた。EGFrコートに対する結合活性のこれらの差は、2F8-HG-T234A、2F8-HG-L236V、2F8-HG-L236A、および2F8-HG-Y275A変異がHG分子の二量体化を防ぐという考えと一致する。
【0233】
実施例7
2F8-HGのCH3変異体の機能分析
2F8-HGのCH3変異体は、EGFrタンパク質でコートした結合ELISAにおいて、2F8-HGよりも見かけ上低い親和性でEGFrに結合することが示された(上記参照)。インビトロ下の細胞内でのリガンド誘導性EGFrリン酸化を阻害する2F8-HG CH3変異体の能力を、WO2007059782の実施例54に記述されるように、リン酸化阻害アッセイ法(PIA)において2F8-HG (WT)および2F8-Fab断片のそれと比較した。
【0234】
CH3 HG変異体は、2F8-HG (WT)ならびに対照変異体R277KおよびR277AよりもEGFrのリン酸化を阻害する能力が低く、これはこれらの変異体の単量体/二量体比の増加と合致していた(図5)。
【0235】
実施例8
HGのCH3変異体の濃度依存性の構成
CH3変異体F273A、L236V、およびY275Aの単量体/二量体構成を、WO2007059782に記述のように非共有結合性ナノエレクトロスプレイ質量分析を用いて、0.01〜10 μMの範囲の異なる濃度でさらに調べた。これらのCH3変異体の単量体/二量体構成を、2F8-HG (WT)およびR277Kの構成と比較した。
【0236】
図6は、全てのHG変異体が低濃度で100%単量体であったことを示す(二量体として挙動したR277Kを除く)。HG変異体の濃度が増加するにつれて、単量体性の減少が認められた。しかしながら、この図から、CH3変異体が単量体性のそのような減少を2F8-HG (WT)よりもずっと高い温度で示したことが明らかである。ゆえに、CH3変異体にはより高いモル濃度でより高い割合の単量体分子が含まれた。
【0237】
2F8-HG (WT)ならびに変異体E225A、E225V、S232R、T234A、L236A、L236T、L236V、L236E、L236S、L236G、K238A、K238T、D267S、D267A、F273A、F273L、F273Y、F273D、F273T、F273R、F273Q、Y275A、Y275Q、Y275K、Y275E、R277A、R277K、D267S+Y275E、D267S+Y275K、D267S+Y275Q、F273D+Y275EおよびF273T+Y275Eに対し、単量体の構成に対応するシグナル(Ms)および二量体の構成に対応するシグナル(Ds)を統合し、各濃度での各構成の相対的比率([M]0)を、以下の方程式を用いて決定した:
[M]eq = Ms/ (Ms + Ds).[M]0; 平衡にある単量体の濃度
[D]eq = ([M]0 - [M]eq) / 2; 平衡にある二量体の濃度
【0238】
引き続き、解離定数(KD)値を全ての変異体について、各濃度の[M]eq2値に対する[D]eqをプロットし、Excellソフトウェア(Microsoft)を用いて最小二乗線形回帰により勾配を決定することによって計算した。2F8-HG (WT)について測定されたKDは5.0×10-8 Mであった。2F8-HG (WT)のKDと比べて各変異体の相対的KDを計算し、プロットした。
【0239】
図7は、全てのHG変異体(R277K、K238AおよびK238Tを除く)が2F8-HG (WT)と比べて、単量体の挙動の増加につながる、いっそう高い相対的KDを有していたことを示す。R277K、K238AおよびK238T変異体はいっそう低い相対的KDを示し、それらがCH3-CH3相互作用を安定化することを意味していた。
【0240】
実施例9
グリコシル化部位の除去
一価抗体からN-結合型グリコシル化(「グリコシル化部位」)の(潜在的)アクセプタ部位を除去するために、配列の変更を施した。最小限のT細胞エピトープを導入するだけで、かつ分子の天然の構造を乱すことなく、これをどのように達成できるかを調べるために、インシリコの分析を行った。標的配列に由来する可能な全ての10-merペプチドのHLA結合特異性を分析した(Desmet et al., 1992, 1997, 2002, 2005; Van Walle et al. 2007 Expert Opinion on Biological Therapy 7:405-418)。20 のDRB1、7のDRB3/4/5、14のDQ、および7のDP、すなわち合計48のHLAクラスII受容体に関して、アロタイプレベルでプロファイリングを行った。48のHLAクラスII受容体の各々に関して、ペプチドの結合の自由エネルギーΔGbindの定量的概算値を計算した。これらのデータを次いで、ペプチドを強い、中程度の、弱い、および非結合剤として分類することによってさらに処理した。
【0241】
下記表は、3つ以下のDRB1アロタイプに特異的な、中程度のエピトープのみを含む27の配列変種を示す。


表: 一つの中程度のDRB1エピトープ、または三つまたはそれ以下のMHCアロタイプに影響する複数の中程度のエピトープのいずれかを含む配列変種のまとめ。第一列は特異的配列、第二列は配列断片中に存在する中程度のDRB1結合エピトープの数、およびその後の列はこれらのエピトープの特異性を表す。これらの配列断片のいずれにもエピトープが見つからないアロタイプは表中に含まれていない。
【0242】
この研究において、最低のエピトープ含量は、二つの異なるDRB1アロタイプに中程度の強度で結合する配列変種内に見られた(GST、MST、CSE、DSE、DSP、ESP、GSP、HSE、NSE、PSPおよびSSE)。
- 任意の位置をシステインに置換する、
- 最後のスレオニンをプロリンに変換する、または
- 最初のアスパラギン残基を脂肪族側鎖によって置き換える
という変異に関する陰性選択によって、以下の好ましい候補が選択された: GST、NSE、DSE、HSEおよびSSE。
【0243】
脱グリコシル化2F8-HGの発現用の構築物を作出するために、部位特異的変異誘発を用いて、上述の分析により同定されたGSTおよびNSE変異をpTomG42F8HG (WO 2007059782に記述)に導入した。この構築物を一過的に発現させ、ポリクローナルヒトIgG (静脈内免疫グロブリン, IVIG, Sanquin, Netherlands)の非存在下および存在下で結合を決定した(WO 2007059782の実施例57に記述されている)。
【0244】
図8は、IVIGの非存在下および存在下における2F8-HG-GSTおよび2F8-HG-NSEの結合曲線が、それぞれIVIGの非存在下および存在下における2F8-HGの結合曲線と同一だったことを示す。これは、脱グリコシル化がHG分子の結合親和性にもIVIGへの感受性にも影響を与えないという仮説と一致する。
【0245】
実施例10
2F8-HGの非グリコシル化変異体の生化学的分析
2F8-HGのグリコシル化部位変異体におけるグリコシル化の欠如を、高pH陰イオン交換クロマトグラフィー-パルスアンペロメトリック検出法(HPAEC-PAD)を用いて確認した。
【0246】
変異HG分子の単量体または二量体の構成を調べるため、特殊な質量分析法を利用して分子間の非共有結合性相互作用を保存した。
【0247】
HG変異体サンプルを50 mM酢酸アンモニウム水溶液中で調製し、陽イオンモードで動作するLC-Tナノエレクトロスプレイイオン化直交型飛行時間型質量分析計(Micromass, Manchester, UK)に導入した。LC-T質量分析計の圧力源条件およびナノエレクトロスプレイ電圧を最適伝送用に最適化し、バルブを閉じることによりロータリーポンプのポンプ容量を低下させることでインターフェース領域の圧力を調節した(Pirani Pressure 6.67e0 mbar)。
【0248】
スプレイ条件は以下の通りであった: ニードル電圧1275 V、コーン電圧200 V、およびソース温度80℃。ナノエレクトロスプレイニードルを調製するために、P-97プラー(Sutter Instrument Co., Novato, CA)上でホウケイ酸ガラスキャピラリー(Kwik-FiITM、World Precision Instruments Inc., Sarasota, FL)を用いた。これらをその後、Edwards Scancoat six Pirani 501スパッターコーター(Edwards High Vacuum International, Crawley, UK)を用いて、薄い金層でコートした。
【0249】
図9はタンパク質濃度1 μMで非共有結合性ナノエレクトロスプレイ質量分析を用い各HG変異体に対して得た単量体/二量体比のまとめを示す。このデータから、WO2007059782の実施例54に記述の所見と一致して、ポリクローナルヒトIgGの非存在下では2F8-HGが二価抗体として挙動する可能性が示唆される。
【0250】
これらの実験条件下では、非グリコシル化変異体は、2F8-HG (WT)と同じ単量体/二量体比を示した。
【0251】
実施例11
2F8-HGの非グリコシル化変異体の機能分析
非グリコシル化HG変異体2F8-HG-GST、2F8-HG-NSE、2F8-HG-DSE、2F8-HG-HSE、および2F8-HG-SSEは、EGFrタンパク質をコートとして用いた結合ELISAにおいて(上記参照)、2F8-HG (WT)と類似した見かけ上の親和性でEGFrに結合することが示された。非グリコシル化2F8-HG変異体がインビトロ下の細胞内でリガンド誘導性のEGFrリン酸化を阻害する能力を、WO2007059782の実施例54に記述されるように、リン酸化阻害アッセイ法(PIA)において2F8-HG (WT)および2F8-Fab断片のそれと比較した。図10は、インビトロ下でEGFrのEGF誘導性リン酸化を阻害する非グリコシル化HG変異体の能力が、2F8-HG (WT)のそれと類似していたことを示す。
【0252】
実施例12
非グリコシル化変異体の薬物動態評価
非グリコシル化変異体2F8-HG-GSTおよび2F8-HG-NSEの薬物動態特性を、内部対照として7D8-IgG1 0.1 mgを添加したSCIDマウスにおいて分析した。薬物動態分析は、WO2007059782の実施例50に詳細に説明されている。内部対照7D8-IgG1は、調べた全てのマウスにおいて同等のクリアランス率を示し、2F8-IgG4のクリアランス率に匹敵するものだった。
【0253】
図11は2F8-HGのグリコシル化の欠如が血漿クリアランスに影響を与えなかったことを示す。
【0254】
実施例13
ヒンジ領域および/またはCH3ドメインの変異を有するIgG1およびIgG4抗体の作製
Fab腕部交換の構造要件を調べるために、5つのIgG1変異体を作出した: (SEQ ID NO:7中の111に対応する) IgG4コアヒンジを有するIgG1 (IgG1-P228S)、2つのCH3ドメイン交換変異体(IgG1-CH3 (γ4)およびIgG1-P228S-CH3 (γ4))、(SEQ ID NO:7中の292に対応する) (CH3ドメイン内の) IgG1の409位に存在するリジンがアルギニンに置き換わった1つのCH3点突然変異体(IgG1-K409R)、ならびにIgG4コアヒンジおよびK409R変異を有する1つのIgG1 (IgG1-P228S-K409R) (図12)。これらの変異体をBet v 1またはFel d 1特異性のどちらかで作出した。抗体変異体の産生ならびにBet v 1およびFel d 1特異性に関するさらなる記述は、WO 2008/119353 (Genmab A(S))、特にその実施例を参照されたい。
【0255】
2つのIgG4変異体を作出した: (SEQ ID NO:2中の289に対応する) (CH3ドメイン内の) IgG4の409位に存在するアルギニンがリジンに置き換わった1つのCH3点突然変異体(IgG4-R409K)、および1つのCH3交換変異体(IgG4-CH3 (γ1)) (図12)。これらの変異体もBet v 1またはFel d 1特異性のどちらかで作出した。
【0256】
鋳型としてpEE-G1-wt a Bet v 1を用いてIgG1のヒンジの中にP228S変異を導入するために部位特異的変異誘発を用いた。pEE-G1-CPSC変異体を作出するためにQuickchange部位特異的変異誘発キット(Stratagene)を用いた。ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)ミックスはpEE-G1 a Betv1 DNA鋳型5 μl (および35 ng)、変異フォワードプライマー1.5 μl (およそ150 ng)、変異リバースプライマー1.5 μl (およそ150 ng)、dNTPミックス1 μl、反応緩衝液(10×) 5 μl、H2O 36 μlおよび最後にPfu Turbo DNAポリメラーゼ1 μlからなった。次いで、このミックスをPCR: 30秒95℃、30秒95℃(変性段階)、1分55℃ (アニール段階)および17分68℃ (伸長段階)にかけた。このサイクルを20回繰り返した。
【0257】
DNA消化および核酸連結を用いて、CH3ドメイン交換変異体構築物IgG1-CH3 (γ4)およびIgG1-P228S-CH3 (γ4)を作出した。CH3ドメインおよびCH3ドメインのないベクターを得るための消化反応は、次の通りであった: DNA (pEE-G1-betv1、pEE-G1-CPSCおよびpEE-G4-betv1)およそ1500 ng、BSA 2 μl、Neb3緩衝液2 μl、SalI 1 μlおよびH2Oを20 μlの容量まで添加。37℃で30分間インキュベーション。DNAをH2O 30 μlで精製および溶出した後に、SanDI 1 μlおよび汎用緩衝液3 μlを添加し、37℃で30分間インキュベートした。断片を、臭化エチジウムを含む1%アガロースゲル上でのゲル電気泳動に供した。断片を紫外線下でゲルから切り出し、DNA精製キット(Amersham)を用いて溶解した。以下の手順を用いてpEE-G4-wt SalI/SanDI (これにはIgG4 CH3ドメインが含まれた)断片をpEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSCに核酸連結した: 20 μlの総量中に鋳型DNA (SalI/SanDI消化したpEE-G1-wtおよびpEE-G1-CPSC) 1 μl、SalI/SanDI挿入断片5 μl、Ligate-it緩衝液4 μl、H2O 9 μlおよびリガーゼ1 μl。5分後に核酸連結を止めた。
【0258】
上記と同様の手順に従い、DNA消化(ApaIおよびHindIIIによる)ならびに核酸連結を用いて、bet v 1変異体抗体のVHドメインをpEE-G4-a-feld1 wtのものに置き換えた。
【0259】
部位特異的変異誘発を用いて、点突然変異(K409RまたはR409K)をpEE-γ4 wt、pEE-γ1およびPEE-γ1-P228S構築物に導入した。変異効率を高めるため以下のように変更を加えながらも、製造業者の指示に従いQuickChange II XL部位特異的変異誘発キット(Site-Directed Mutagenesis Kit; Stratagene, Amsterdam, The Netherlands)を用いて部位特異的変異誘発を行った。この方法には、成功裏の変異誘発をスクリーニングするためにサイレントなAccI余剰部位の導入を含めた。最初に、10×pfu反応緩衝液3 μl、dNTPミックス(10 mM) 1 μl、フォワードまたはリバースプライマー275 ng、鋳型DNA 50 ngおよびPfu turboホットスタートポリメラーゼ0.75 μlを含有するプレPCRミックスを用いた。GeneAmp PCRシステム9700 (Applied Biosystems)を用いてプレPCRを実行した: 94℃で5分間の初期変性; 94℃で30秒間、50℃で1分間および68℃で14分間を4サイクル。フォワードプライマーを含有するプレPCRミックス25 μlを、リバースプライマーを含有するプレPCRミックス25 μlに加えた。Pfu turboホットスタート0.5 μlを加え、増幅を行った: 94℃で1分間の変性段階; 94℃で1分間、50℃で1分間および68℃で8分間を14サイクル; 94℃で30秒間、55℃で1分間および68℃で8分間を12サイクル。
【0260】
PCR混合液は、さらに処理するまで4℃に貯蔵した。次に、PCR混合液をDpnI 1 μlとともに37℃で60分間インキュベートし、さらに処理するまで4℃に貯蔵した。消化済みのPCR産物2 μlを製造業者の指示(Invitrogen)に従ってOne Shot DNH5α T1Rコンピテント大腸菌細胞(Invitrogen, Breda, The Netherlands)に形質転換した。次に、50 μg/mlのアンピシリンを含有するLuria-Bertani (LB)寒天プレート上に細胞をプレーティングした。細菌コロニーが明らかになるまでプレートを37℃で16〜18時間インキュベートした。コロニーPCRおよびAccI消化によりスクリーニングして変異誘発の成功を確認した後に、プラスミドを細菌から単離し、変異をDNA配列決定によって確認した。無用の余分な変異が導入されていないかどうか確認するために、HCコード領域全体を配列決定したところ、さらなる変異は含まれていなかった。
【0261】
これらの構築物由来の組み換え抗体を、トランスフェクション試薬として293 Fectin (Invitrogen)を用い3 mlの、6ウェルプレート(NUNC)中または125もしくは250エルレンマイヤー(Corning)中、HEK 293細胞にて一過的に発現させた。
【0262】
実施例14
IgG1およびIgG4ヒンジ領域またはCH3ドメイン変異体のFab腕部交換
抗体を混合し、その後、還元グルタチオン(GSH)とともにインキュベートして、半分子の交換について調べた。GSH (Sigma-Aldrich, St. Louis, MO)を使用の前に水に溶解した。
【0263】
GSH (1または10 mM)を含有するPBS/アジド中37℃でBet v 1特異抗体(200 ng)およびFel d 1特異抗体(200 ng)からなる抗体混合液をインキュベートすることによって半分子の交換を評価した。インキュベーション総量は50 μlであった。24時間後にPBS-AT (0.3%ウシ血清アルブミン、0.1% Tween-20および0.05% (w/v) NaN3を補充したPBS)インキュベーション混合液からサンプルを取り出した。10 mM GSHを含有するサンプルの場合、GSH活性を阻害する強力なアルキル化剤であるヨウ素-アセトアミドを等モル量、加えた。抗原結合および二重特異性活性の測定のためサンプルを4℃に貯蔵した。
【0264】
Bet v 1結合抗体のレベルを抗原結合試験において測定した。サンプルを24時間125I-標識Bet v 1の存在下でPBS-IAT (1 μg/ml IVIgを補充したPBS-AT) 750 μl中プロテインGセファロース(Amersham Biosciences, Uppsala, Sweden) 0.75 mgとともにインキュベートした。次に、セファロースをPBS-T (0.1% Tween-20および0.05% (w/v) NaN3を補充したPBS)で洗浄し、加えた放射能量と比べて結合した放射能量を測定した。精製したBet v 1特異抗体を標準物質(比濁計によって決定した場合に試験あたり0〜200 ngの範囲)として用いBet v 1特異的IgGの濃度を計算した。
【0265】
二重特異性IgGの濃度(すなわちFel d 1-Bet v 1架橋結合活性)を異種の架橋結合アッセイ法において測定した。このアッセイ法では、サンプルをPBS-IAT中300 μlの総量にて、Fel d 1抗原が存在する、セファロースに結合されたネコ抽出物0.5 mgとともに24時間インキュベートした。引き続いて、セファロースをPBS-Tで洗浄し、125I-標識Bet v 1とともに24時間インキュベートし、その後、セファロースをPBS-Tで洗浄し、加えた放射能量と比べて結合した放射能量を測定した。二重特異性IgG (Fel d 1-Bet v 1)の濃度を、精製Bet v 1結合IgGから得た、Bet v 1結合試験において用いたのと同じ較正曲線を用いて計算した。試験は、FreeStyle 293発現培地、GIBCO/Invitrogen Corporation中にて抗体を含有する上清を用いて行った。
【0266】
以下の抗体混合物を用いた。
- Betv1-IgG1 wtとFeld1-IgG1 wt (図13中ではIgG1 wtとして表示)
- Betv1-IgG1 P228SとFeld1-IgG1-P228S (図13中ではIgG1-P228S)
- Betv1-IgG4-CH3 (y1)とFeld1-IgG4-CH3 (γ1) (図13中ではIgG4-CH3 (γ1))
- Betv1-IgG4-R409KとFeld1-IgG4-R409K (図13中ではIgG4-R409K)
- Betv1-IgG1-CH3 (y4)とFeld1-IgG1-CH3 (γ4) (図13中ではIgG1-CH3 (γ4))
- Betv1-IgG1-K409RとFeld1-IgG1-K409R (図13中ではIgG1-K409R)
- Betv1-IgG4 wtとFeld1-IgG4 wt (図13中ではIgG4 wt)
- Betv1-IgG1-P228S-CH3 (y4)とFeld1-IgG1-P228S-CH3 (γ4) (図13中ではIgG1-P228S-CH3 (γ4))
- Betv1-IgG1-P228S-K409RとFeld1-IgG1-P228S-K409R (図13中ではIgG1-P228S-K409R)
【0267】
これらの結果(図13)から1 mM GSHで、半分子交換がIgG4 wt、IgG1-P228S-K409RまたはIgG1-P228S-CH3 (γ4)の抗体の間で起こることが示された。これらの条件の下で、IgG1 wt、IgG1-P228S、IgG4-CH3 (γ1)、IgG4-R409K、IgG1-CH3 (γ4)またはIgG1-K409Rの抗体は半分子の交換を全くまたはほとんど示さなかった。10 mM GSHで、IgG1-CH3 (γ4)またはIgG1-K409R抗体を含有する反応液でも半分子交換が見られた。
【0268】
実施例15
IVIGの非存在下でのヒンジレスIgG4抗体分子の二量体化を安定化するためのさらなるCH3変異
ヒンジレスIgG4抗体(HG)分子は低親和性の非共有結合性相互作用によって二量体を形成する。WO/2007/059782には、過剰の無関係な抗体の存在下でHG IgG4分子を用いることによりこの二量体化のプロセスを阻害できることが記述されている。WO/2007/059782には、ヒンジレスIgG4抗EGFR抗体2F8-HGが記述されている。
【0269】
pHG-2F8: 2F8-HGの重鎖の発現用ベクターの構築:
2F8-HGの重鎖cDNAコード領域をコドン最適化し、pEE6.4ベクター(Lonza Biologies, Slough, UK)にクローニングした。得られたベクターをpHG-2F8と名付けた。
【0270】
pKappa2F8: 2F8抗体の軽鎖の産生用ベクターの構築:
VL領域をコードする抗体2F8をコドン最適化し、pKappa2F2ベクター(ベクターpEE12.4 (Lonza)の中に抗体2F2 (WO2004035607に記述されている)のコドン最適化cDNA領域をコードしているベクター)にクローニングし、2F2 VL領域を2F8 VL領域に置き換えた。得られたベクターをpKappa-2F8と名付けた。
【0271】
ヒンジレスIgG4抗EGFR抗体2F8-HGはWO/2007/059782に記述されている。下記表に示したさらなる変異を部位特異的変異誘発によってヒンジレスIgG4抗体2F8-HGのCH3領域に導入した。
【0272】
KABATは、Kabatによるアミノ酸の付番を示す(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。
【0273】
EUインデックスはKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に概説されているようにEUインデックスによるアミノ酸の付番を示す。
付番方法の比較については図14も参照されたい。

【0274】
CH3変異体の発現用の構築物を作出するために、部位特異的変異誘発を用いてpHG2F8に変異を導入した。
【0275】
これらの構築物を、重鎖をコードするプラスミドおよび軽鎖をコードするプラスミドを共トランスフェクトすることによりHEK-293F細胞において一過的に発現させ、精製EGFrへの結合を200 μg/mlのポリクローナルヒトIgG (静脈内免疫グロブリン, IVIG, Sanquin Netherlands)の非存在下および存在下で決定した。
【0276】
精製EGFr (Sigma, St Louis, MO)を50 ng/ウェルで96ウェルMicrolon ELISAプレート(Greiner, Germany)にコーティングしたELISAを用いて結合親和性を決定した。0.05% Tween 20および2%ニワトリ血清を補充したPBSでプレートをブロッキングした。その後、100 μg/mlのポリクローナルヒトIgG (静脈内免疫グロブリン, IVIG, Sanquin Netherlands)を含有する緩衝液に連続希釈したサンプルを加え、室温(RT)で1時間インキュベートした。その後、プレートを、検出用抗体としてのペルオキシダーゼコンジュゲートウサギ抗ヒトカッパ軽鎖(DAKO, Glostrup, Denmark)とともにインキュベートし、2,2'-アジノ-ビス(3-エチルベンゾチアゾリン-6-スルホン酸) (ABTS; Roche, Mannheim, Germany)で発色させた。マイクロプレートリーダー(Biotek, Winooski, VT)にて405 nmの吸光度を測定した。
【0277】
図14は、IVIG存在下での2F8-HGの結合曲線(黒四角の付いた太点線)がIVIGのない場合の2F8-HGの結合曲線(白四角の付いた太実線)に対して明らかに右側にシフトすることを示す。EGFrコートに対するこの結合活性の差は、IVIGの存在下では2F8-HGが一価で結合するという考えと一致する。試験された変異、2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409Aおよび2F8-HG-R409KAの結合曲線は、IVIGの添加に対して非感受性になり、IVIGの非存在下での2F8-HGの二価結合曲線に重ね合わせることができた。EGFrコートに対する結合活性のこれらの差は、2F8-HG-F405L、2F8-HG-F405A、2F8-HG-R409Aおよび2F8-HG-R409K変異がHG分子の二量体化を安定化するという考えと一致する。
【0278】
実施例16
ヒトIgG4抗体の二量体化を安定化するためのさらなるCH3ドメイン変異
実施例1および2に記述した分析の後、ヒトIgG4では、(下記表中に#で示した) R409とK370との間の静電的緊張を解放する変異を用いて、IgG4を安定化し、Fab腕部交換を阻止し得るものと仮定された。部位特異的変異誘発によってIgG4-CD20およびIgG4-EGFrのCH3ドメインに変異を導入した。
【0279】
部位特異的変異誘発によってIgG4-CD20およびIgG4-EGFrのCH3ドメインに下記表に示した変異を導入した。
【0280】
KABATは、Kabatによるアミノ酸の付番を示す(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。EUインデックスはKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に概説されているようにEUインデックスによるアミノ酸の付番を示す。付番方法の比較については図15も参照されたい。

【0281】
IgG1-CD20およびIgG1-EGFr、IgG4-CD20およびIgG4-EGFr、またはIgG4-CH3変異体-CD20およびIgG4-CH3変異体-EGFrを混合し、上記のように0.5 mM GSHとともにインキュベートした。二重特異性活性をPCT出願WO 2008/119353 (Genmab A/S)の実施例33に記述のように決定した。
【0282】
図16は、二重特異性抗EGFr/CD20抗体がIgG4抗体の混合物において、ならびにCH3ドメイン変異体Q235R、E299Q、L325P、R289AおよびS244Dの混合物において形成されたことを示す。CH3ドメイン変異体R289K、R289M、R289L、K250EおよびK250Qの混合物では二重特異性活性が測定されず、これらの変異がヒトIgG4抗体の二量体化を安定化させたことを示している。CH3ドメイン変異体L231K、Y229D、F285A、F285L、R289WおよびE237Tの場合、二重特異性活性の低下が測定された。CH3ドメイン変異体T291Vは、交換反応を減速したが、24時間後に野生型IgG4と同レベルの交換に達したという点で独特であった。
【0283】
実施例17
IgG4およびIgG4 CH3変異体に基づくCH2-CH3構築物でのKD測定
IgG4のCH3-CH3相互作用強度を調べるために、hisタグ付き構築物を、ヒンジ領域を欠いたFc-ドメインヒトIgG4に基づきデザインして、共有結合性の重鎖間ジスルフィド結合his-CH2-CH3 (G4)を阻止した。その後、以下に挙げたCH3-CH3接触面に変異を含むこれらの構築物の変種を部位特異的変異誘発によって作製した。
【0284】
KABATは、Kabatによるアミノ酸の付番を示す(Kabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991))。EUインデックスはKabat et al., Sequences of Proteins of Immunological Interest, 5th Ed. Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)に概説されているようにEUインデックスによるアミノ酸の付番を示す。付番方法の比較については図15も参照されたい。

【0285】
his-CH2-CH3 (G4)およびCH3変異体の単量体/二量体の構成をWO2007059782に記述されているように非共有結合性ナノエレクトロスプレイ質量分析を用い0.01〜10 μMに及ぶ、異なる濃度で調べた。his-CH2-CH3 (G4)およびCH3変異体に対し、単量体(MS)および二量体(DS)の構成に対応するシグナルを調べ、各濃度での各構成の相対的比率([M]0)を実施例8に記述されているように決定した。
【0286】
his-CH2-CH3 (G4) (WT)に対して測定されたKDは4.8×10-8 Mであった。his-CH2-CH3 (G4) (WT)のKDと比べて各変異体の相対的KDを計算しプロットした。
【0287】
図17は、CH3変異体K250E、K250Q、R289L、R289MおよびR289Kがhis-CH2-CH3 (G4) (WT)と比べて、CH3-CH3相互作用の安定化につながる、いっそう低い相対的KDを有していたことを示す。S244D変異体は、his-CH2-CH3 (G4) (WT)と同程度のKD値を有していた。CH3変異体Y229D、L231K、E237T、F285A、F285L、R289AおよびR289Wはいっそう高い相対的KDを示し、his-CH2-CH3 (G4) (WT)と比べて単量体の挙動の増大を意味するものであった。
【0288】
図18は、(WT IgG4と比べて24時間後の)二重特異性活性%との関連でのCH3変異体のKD値の間の相関関係を示す。安定化されている変異体は二重特異性活性を示さず、Fab腕部交換がこれらの変異体では起こらないことを示している。WT IgG4と同程度のKD値を有する変異体は、二重特異性抗体の作製において同じように挙動する。図16および図18はともに、弱いCH3-CH3相互作用を有する変異体が二重特異性抗体を形成するものの、二重特異性抗体の量はずっと少なく、長期にわたって安定ではないことを示している。
【0289】
配列表
SEQ ID No:1: ヒトIgG4の野生型CH領域の核酸配列

SEQ ID No:2: ヒトIgG4の野生型CH領域のアミノ酸配列

ここで189位のX1はLeuでありかつ289位のX2はArgであり、または
ここで189位のX1はLeuでありかつ289位のX2はLysであり、または
ここで189位のX1はValでありかつ289位のX2はArgである。
SEQ ID No:3: 714位および722位を変異させたヒトIgG4のCH領域(SEQ ID No:1)をコードする核酸配列

SEQ ID No:4: ヒトIgG4のヒンジレスCH領域のアミノ酸配列

SEQ ID NO:5: ヒト定常ラムダ鎖のアミノ酸配列(アクセッション番号S25751)

SEQ ID NO:6: ヒト定常カッパ鎖のアミノ酸配列(アクセッション番号P01834)

SEQ ID NO:7: IgG1定常領域のアミノ酸配列(アクセッション番号P01857)

SEQ ID NO:8: IgG2定常領域のアミノ酸配列(アクセッション番号P01859)

SEQ ID NO:9: IgG3定常領域のアミノ酸配列(アクセッション番号A23511)


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(i) 選択された抗原特異的抗体の可変領域または該領域の抗原結合部分、ならびに
(ii) 免疫グロブリンのCH領域またはCH2およびCH3領域を含むその断片であって、ヒンジ領域に対応する領域、および免疫グロブリンがIgG4サブタイプでない場合にはCH領域の他の領域、例えばCH3領域が、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCH領域とのジスルフィド結合または同一のCH領域との他の共有結合性もしくは安定な非共有結合性の重鎖間結合を形成する能力のあるアミノ酸残基を全く含まないように改変されている、CH領域またはその断片
を含む、一価抗体であって、
ここで該抗体はIgG4タイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、以下のアミノ酸置換の一つもしくは複数がSEQ ID NO:4に記載の配列に対してなされているように改変されている: 217位のTyr (Y)がArg (R)に置き換えられている、219位のLeu (L)がAsn (N)もしくはGln (Q)に置き換えられている、225位のGlu (E)がThr (T)、Val (V)もしくはIle (I)に置き換えられている、232位のSer (S)がArg (R)もしくはLys (K)に置き換えられている、234位のThr (T)がArg (R)、Lys (K)もしくはAsn (N)に置き換えられている、236位のLeu (L)がSer (S)もしくはThr (T)に置き換えられている、238位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている、267位のAsp (D)がThr (T)もしくはSer (S)に置き換えられている、273位のPhe (F)がArg (R)、Gln (Q)、Lys (K)もしくはTyr (Y)に置き換えられている、275位のTyr (Y)がGln (Q)、Lys (K)もしくはPhe (F)に置き換えられている、277位のArg (R)がGlu (E)に置き換えられている、279位のThr (T)がAsp (D)、Val (V)およびAsn (N)に置き換えられている、
または該抗体は別のIgGタイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、IgG4について前述した位置に対応する位置で同じアミノ酸置換の一つもしくは複数がなされているよう改変されている、
一価抗体。
【請求項2】
前記可変領域および前記CH領域からなる、請求項1記載の一価抗体。
【請求項3】
前記可変領域がVH領域である、請求項1または2記載の一価抗体。
【請求項4】
前記可変領域がVL領域である、請求項1または2記載の一価抗体。
【請求項5】
CL領域を含まない、請求項1、3または4のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項6】
重鎖および軽鎖を含み、重鎖は
(i) 選択された抗原特異的抗体のVH領域、または該領域の抗原結合部、および
(ii) CH領域がN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されているという条件で、請求項1に定義されるCH領域
を含み、かつ軽鎖は
(i) 選択された抗原特異的抗体のVL領域、または該領域の抗原結合部、および
(ii) IgG1サブタイプの場合には、ポリクローナルヒトIgGの存在下で、同一のCL領域とのジスルフィド結合、または同一のCL領域との他の共有結合を形成する能力のあるアミノ酸を全く含まないように改変されている、CL領域
を含む、
請求項1記載の一価抗体。
【請求項7】
CH1領域を含む、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項8】
IgG1、IgG2またはIgG4抗体のような、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgAまたはIgD抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項9】
ヒト抗体である、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項10】
SEQ ID NO:7に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 238位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 239位のAsp (D)がGlu (E)に置き換えられている; 249位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 251位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 251位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 288位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 288位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 290位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 292位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 292位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている; 302位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; および328位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている、
前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項11】
292位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている、請求項10記載の一価抗体。
【請求項12】
SEQ ID NO:7に記載のCH1および/またはCH2領域をさらに含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている、請求項10〜11のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項13】
SEQ ID NO:6に記載のアミノ酸配列を有するカッパCL領域を含むが、該配列は106位の末端システイン残基が別のアミノ酸残基で置き換えられているかまたは欠失されているように改変されている、請求項1、3、4または6〜12のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項14】
SEQ ID NO:5に記載のアミノ酸配列を有するラムダCL領域を含むが、該配列は104位のシステイン残基が別のアミノ酸残基で置き換えられているかまたは欠失されているように改変されている、請求項1、3、4または6〜12のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項15】
SEQ ID NO:7に記載のCH1領域を含むが、CH1領域は、14位のSer (S)がシステイン残基に置き換えられているように改変されている、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項16】
SEQ ID NO:8に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 234位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 245位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 247位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 247位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 276位のMet (M)がVal (V)に置き換えられている; 284位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 284位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 286位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 288位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 288位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている; 298位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; および324位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている、
請求項1〜9のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項17】
288位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている、請求項16記載の一価抗体。
【請求項18】
SEQ ID NO:8に記載のCH1および/またはCH2領域をさらに含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている、請求項16〜17のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項19】
SEQ ID NO:9に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 285位のArg (R)がGln (Q)に置き換えられている; 296位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 298位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 298位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 314位のSer (S)がAsn (N)に置き換えられている; 322位のAsn (N)がLys (K)に置き換えられている; 327位のMet (M)がVal (V)に置き換えられている; 335位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 335位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 337位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている; 339位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている; 339位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている; 349位のGln (Q)がGlu (E)に置き換えられている; 352位のIle (I)がVal (V)に置き換えられている; 365位のArg (R)がHis (H)に置き換えられている; 366位のPhe (F)がTyr (Y)に置き換えられている; および375位のPro (P)がLeu (L)に置き換えられている、
ただしCH3領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている、
請求項1〜9のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項20】
339位のLys (K)がArg (R)に置き換えられている、請求項19記載の一価抗体。
【請求項21】
SEQ ID NO:9に記載のCH1および/またはCH2領域をさらに含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている、請求項19〜20のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項22】
SEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含むが、CH3領域は、以下のアミノ酸置換の一つまたは複数がなされているように改変されている: 234位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている; 236位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている; 236位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている; 273位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている; 273位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている; 275位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている、
請求項1〜8のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項23】
請求項1に定義の一つまたは複数のアミノ酸置換以外はSEQ ID NO:4に記載のCH3領域を含む、請求項1〜9のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項24】
225位のGlu (E)がAla (A)に置き換えられている、請求項23記載の一価抗体。
【請求項25】
234位のThr (T)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜24のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項26】
236位のLeu (L)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜25のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項27】
236位のLeu (L)がVal (V)に置き換えられている、請求項23〜25のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項28】
236位のLeu (L)がGlu (E)に置き換えられている、請求項23〜25のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項29】
236位のLeu (L)がGly (G)に置き換えられている、請求項23〜25のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項30】
238位のLys (K)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜29のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項31】
267位のAsp (D)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜30のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項32】
273位のPhe (F)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜31のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項33】
273位のPhe (F)がLeu (L)に置き換えられている、請求項23〜31のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項34】
273位のPhe (F)がAsp (D)に置き換えられ、かつ/または275位のTyr (Y)がGlu (E)に置き換えられている、請求項23〜31のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項35】
273位のPhe (F)がThr (T)に置き換えられ、かつ/または275位のTyr (Y)がGlu (E)に置き換えられている、請求項23〜31のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項36】
275位のTyr (Y)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜33のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項37】
SEQ ID NO:4に記載のCH2領域をさらに含むが、118位のThr (T)がGln (Q)に置き換えられ、かつ/または296位のMet (M)がLeu (L)に置き換えられている、請求項23〜36のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項38】
SEQ ID NO:4に記載のCH2領域をさらに含むが、以下の置換のうちの一つ、二つまたは三つ全てがなされている: 120位のMet (M)がTyr (Y)に置き換えられている; 122位のSer (S)がThr (T)に置き換えられている; および124位のThr (T)がGlu (E)に置き換えられている、
請求項23〜37のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項39】
SEQ ID NO:4に記載のCH2領域をさらに含むが、302位のAsn (N)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜38のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項40】
SEQ ID NO:4に記載のCH2領域をさらに含むが、302位のAsn (N)がAla (A)に置き換えられ、かつ175位のThr (T)がAla (A)に置き換えられ、かつ248位のGlu (E)がAla (A)に置き換えられている、請求項23〜39のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項41】
CH領域は、全てのシステイン残基が欠失されまたは他のアミノ酸残基で置換されるように改変されている、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項42】
CH領域は、ヒンジ領域のシステイン残基が、非荷電極性側鎖または非極性側鎖を有するアミノ酸残基で置換されるように改変されている、請求項41記載の一価抗体。
【請求項43】
SEQ ID No:2のCH配列のアミノ酸106および109に対応するアミノ酸が欠失されているヒトIgG4である、請求項1〜9または22〜41のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項44】
SEQ ID No:2の配列のアミノ酸残基106および109に対応するアミノ酸残基のうちの一つがシステイン以外のアミノ酸残基によって置換され、かつSEQ ID No:2の配列のアミノ酸残基106および109に対応するアミノ酸残基のもう一方が欠失されているヒトIgG4である、請求項1〜9または22〜41のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項45】
少なくともSEQ ID No:2のCH配列のアミノ酸残基106〜109に対応するアミノ酸残基が欠失されているヒトIgG4である、請求項1〜9または22〜41のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項46】
少なくともSEQ ID No:2の配列のアミノ酸残基99〜110に対応するアミノ酸残基が欠失されているヒトIgG4である、請求項1〜9または22〜41のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項47】
CH領域が、請求項1〜9または22〜41のいずれかに指定の任意の変異以外はSEQ ID No:4のアミノ酸配列を含むが、ただしCH2領域はN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている、請求項1〜9または22〜41のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項48】
CH領域は、ヒンジ領域全体が欠失されるように改変されているヒトIgG4である、請求項1〜9または22〜41のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項49】
IgG4タイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、以下の組み合わせのアミノ酸置換の一つもしくは複数がSEQ ID NO:4に記載の配列に対してなされているように改変されているか:
- 267位のAsp (D)がSer (S)に置き換えられ、かつ275位のTyr (Y)がGln (Q)もしくはLys (K)、Arg (R)に置き換えられている、
- 267位のAsp (D)がThr (T)に置き換えられ、かつ275位のTyr (Y)がGln (Q)もしくはLys (K)、Arg (R)に置き換えられている、
または別のIgGタイプのものであり、かつ重鎖の定常領域は、IgG4について前述した位置に対応する位置で同じ組み合わせのアミノ酸置換がなされているように改変されている、
前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項50】
抗体の配列がN-結合型グリコシル化のアクセプタ部位を全く含まないように改変されている、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項51】
CH2領域中のN-結合型グリコシル化のNSTアクセプタ部位が、GST、MST、CSE、DSE、DSP、ESP、GSP、HSE、NSE、PSP、およびSSEからなる群より選択される配列に改変されている、請求項50記載の一価抗体。
【請求項52】
インビボで4 mg/kgの用量でヒトまたはSCIDマウスに投与された場合に、7日間を超えて10 μg/mlを上回る血漿濃度を有する、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項53】
実施例52に開示される方法によって決定される血漿クリアランスであって、一価抗体と同一の可変領域を有するF(ab')2断片の血漿クリアランスより10倍超遅い血漿クリアランスを有する、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項54】
インビボでヒトまたはSCIDマウスに投与された場合に、少なくとも5日間、例えば少なくとも14日間、例えば5日間から21日間までの血清中半減期を有する、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項55】
以下から選択される標的に、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)で結合する、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体: エリスロポエチン、βアミロイド、トロンボポエチン、インターフェロン-α(2aおよび2b)、インターフェロン-β(1b)、インターフェロン-γ、TNFR I (CD120a)、TNFR II (CD120b)、IL-1Rタイプ1 (CD121a)、IL-1Rタイプ2 (CD121b)、IL-2、IL2R (CD25)、IL-2R-β(CD123)、IL-3、IL-4、IL-3R (CD123)、IL-4R (CD124)、IL-5R (CD125)、IL-6R-α(CD126)、IL-6R-β (CD130)、IL-10、IL-11、IL-15BP、IL-15R、IL-20、IL-21、TCR可変鎖、RANK、RANK-L、CTLA4、CXCR4R、CCR5R、TGF-β1,TGF-β2、TGF-β3、G-CSF、GM-CSF、MIF-R (CD74)、M-CSF-R (CD115)、GM-CSFR (CD116)、可溶性FcRI、sFcRII、sFcRIII、FcRn、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、VEGF、VEGFxxxb、抗精神病薬、抗うつ薬、抗パーキンソン病薬、抗発作薬、神経筋遮断薬、抗てんかん薬、副腎皮質ステロイド、インスリン、インスリンの調節に関与しているタンパク質または酵素、インクレチン(GIPおよびGLP-1)またはエクセナチドおよびシタグリプチンのようなインクレチン作用模倣薬、甲状腺ホルモン、成長ホルモン、ACTH、エストロゲン、テストステロン、抗利尿ホルモン、利尿剤、ヘパリンおよびEPOのような血液製剤、β遮断薬、細胞毒性薬、抗ウイルス薬、抗菌薬、抗真菌薬、抗寄生虫薬、抗凝固薬、抗炎症薬、抗喘息薬、抗COPD薬、バイアグラ、アヘン製剤、モルヒネ、ビタミン(保存のためのビタミンCのような)、LHおよびFSHのような妊娠に関与するホルモン、性転換に関与するホルモン、避妊薬、ならびに抗体。
【請求項56】
VEGF、c-Met、CD20、CD38、IL-8、CD25、CD74、FcαRI、FcεRI、アセチルコリン受容体、fas、fasL、TRAIL、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのエンベロープE2、組織因子、組織因子および第VII因子の複合体、EGFr、CD4、ならびにCD28から選択される標的に、10-7 Mまたはそれ以下、例えば10-8 Mまたはそれ以下の解離定数(kd)で結合する、請求項1〜54のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項57】
細胞毒、化学療法薬、免疫抑制剤、または放射性同位元素のような治療的部分にコンジュゲートされた、前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項58】
前記請求項のいずれか一項記載の一価抗体および一つまたは複数の薬学的に許容される賦形剤、希釈剤、または担体を含む薬学的組成物。
【請求項59】
一つまたは複数のさらなる治療剤をさらに含む、請求項58記載の薬学的組成物。
【請求項60】
医薬として使用するための請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項61】
がん、炎症状態、または自己免疫障害の処置において使用するための、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項62】
望ましくない血管新生を含む障害の処置において使用するための、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項63】
抗体の投与の効果を達成するためには免疫系媒介性の活性の関与が必要ないかまたは望ましくなく、かつ該抗体が抗原に特異的に結合する、特定の標的に対する抗体の投与により処置可能である疾患または障害の処置において使用するための、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項64】
可溶性抗原を遮断するかまたは阻害することによって処置可能である疾患または障害の処置において使用するための一価抗体であって、抗原の多量体化が望ましくない免疫複合体を形成し得、かつ抗体が該抗原に特異的に結合する、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項65】
細胞膜結合型受容体を遮断するかまたは阻害することによって処置可能である疾患または障害の処置において使用するための一価抗体であって、受容体が該受容体の二量体化によって活性化され得、かつ抗体が該受容体に特異的に結合する、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項66】
処置が一つまたは複数のさらなる治療剤を投与することを含む、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体。
【請求項67】
請求項61〜66のいずれかに定義の疾患または障害の処置のための医薬の調製における、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体の使用。
【請求項68】
診断薬としての、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体の使用。
【請求項69】
請求項1〜56のいずれか一項記載の一価抗体をコードする核酸構築物。
【請求項70】
請求項61〜66のいずれか一項に定義の疾患または障害を処置する方法であって、このような処置を必要とする被験体に、請求項1〜57のいずれか一項記載の一価抗体、請求項58記載の薬学的組成物または請求項69記載の核酸構築物の治療的有効量を投与する段階を含む、方法。
【請求項71】
処置が一つまたは複数のさらなる治療剤を投与することを含む、請求項70記載の方法。
【請求項72】
一価抗体が産生されるように、請求項69記載の核酸構築物を含む宿主細胞を培養する段階、および細胞培養物から該一価抗体を回収する段階を含む、請求項1〜56のいずれか一項記載の一価抗体を調製する方法。
【請求項73】
原核細胞、例えば大腸菌(E. coli)細胞、または真核細胞、例えば哺乳動物細胞、真菌細胞もしくは植物細胞である、請求項69記載の核酸を含む宿主細胞。
【請求項74】
重鎖および軽鎖を含み、該重鎖がSEQ ID NO:2に記載の配列を有するヒトIgG4定常領域を含み、250位のLys (K)がGln (Q)またはGlu (E)に置き換えられ、かつ抗体がSEQ ID NO:2に記載の定常領域の中に一つまたは複数のさらなる置換、欠失および/または挿入を任意で含む、医薬として使用するための安定化IgG4抗体。
【請求項75】
Cys-Pro-Pro-Cys配列をヒンジ領域の中に含まない、請求項74記載の安定化IgG4抗体。
【請求項76】
抗体のCH3領域がヒトIgG1の、ヒトIgG2のまたはヒトIgG3のCH3領域に置き換えられている、請求項74または75記載の安定化IgG4抗体。
【請求項77】
115位に対応する位置でのLeu (L)残基のGlu (E)による置換を含まない、請求項74〜76のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項78】
115位に対応する位置でのLeu (L)残基のGlu (E)による置換を含む、請求項74〜76のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項79】
114位のAla (A)、116位のAla (A)、117位のAla (A)、177位のAla (A)、198位のAla (A)またはVal (V)、200位のAla (A)、202位のAla (A)またはGln (Q)の置換の一つまたは複数を含む、請求項74〜78のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項80】
XがPro (P)を除く任意のアミノ酸であり得るCXPCまたはCPXC配列をヒンジ領域の中に含む、請求項74〜79のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項81】
伸長されたIgG3様ヒンジ領域を含まない、請求項74〜80のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項82】
CPSC配列をヒンジ領域の中に含む、請求項74〜81のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項83】
SEQ ID NO:2に記載の定常領域の中に25個未満、例えば10個未満、例えば9、8、7、6、5、4、3、または2個未満の、置換、欠失および/または挿入を有する、請求項74〜82のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項84】
同じ可変領域を持った対応するIgG1またはIgG3抗体よりもCDCおよび/またはADCCの媒介効率が低い、請求項74〜83のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項85】
ヒトモノクローナル抗体、ヒト化モノクローナル抗体およびキメラモノクローナル抗体からなる群より選択される、請求項74〜84のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項86】
ヒトカッパ軽鎖を含む、請求項74〜85のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項87】
ヒトラムダ軽鎖を含む、請求項74〜86のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項88】
二価抗体である、請求項74〜87のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項89】
完全長の抗体である、請求項74〜88のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項90】
細胞毒性薬; 放射性同位元素; プロドラッグまたは薬物、例えばタキサン; サイトカイン; およびケモカインからなる群より選択される化合物に連結される、請求項74〜89のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。
【請求項91】
エリスロポエチン、β-アミロイド、トロンボポエチン、インターフェロン-α(2aおよび2b)、インターフェロン-β(1b)、インターフェロン-γ、TNFR I (CD120a)、TNFR II (CD120b)、IL-1R 1型(CD121a)、IL-1R 2型(CD121b)、IL- 2、IL2R (CD25)、IL-2R-β(CD123)、IL-3、IL-4、IL-3R (CD123)、IL-4R (CD124)、IL-5R (CD125)、IL-6R-α(CD126)、-β(CD130)、IL-8、IL-10、IL-11、IL-15、IL-15BP、IL-15R、IL-20、IL-21、TCR可変鎖、RANK、RANK-L、CTLA4、CXCR4R、CCR5R、TGF-β1、-β2、-β3、G-CSF、GM-CSF、MIF-R (CD74)、M-CSF-R (CD115)、GM-CSFR (CD116)、可溶性FcRI、sFcRII、sFcRIII、FcRn、第VII因子、第VIII因子、第IX因子、VEGF、VEGFxxxb、α-4インテグリン、Cd11a、CD18、CD20、CD38、CD25、CD74、FcαRI、FcεRI、アセチルコリン受容体、fas、fasL、TRAIL、肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルス、C型肝炎ウイルスのエンベロープE2、組織因子、組織因子と第VII因子の複合体、EGFr、CD4、CD28、VLA-1、2、3、または4、LFA-1、MAC-1、I-セレクチン、PSGL-1、ICAM-I、P-セレクチン、ペリオスチン、CD33 (Siglec 3)、Siglec 8、TNF、CCL1、CCL2、CCL3、CCL4、CCL5、CCL11、CCL13、CCL17、CCL18、CCL20、CCL22、CCL26、CCL27、CX3CL1、LIGHT、EGF、VEGF、TGFα、HGF、PDGF、NGF、以下の補体または補体関連成分:C1q、C4、C2、C3、C5、C6、C7、C8、C9、MBL、B因子など、MMP1からMMP28のいずれかなどのマトリクスメタロプロテアーゼ、CD32b、CD200、CD200R、キラー免疫グロブリン様受容体(KIR)、NKG2Dおよび関連分子、白血球関連免疫グロブリン様受容体(LAIR)、ly49、PD-L2、CD26、BST-2、ML-IAP (アポトーシスタンパク質の黒色腫阻害剤)、カテプシンD、CD40、CD40R、CD86、B細胞受容体、CD79、PD-1、ならびにT細胞受容体からなる群より選択される抗原に結合する、請求項74〜90のいずれか一項記載の安定化IgG4抗体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【公表番号】特表2012−510282(P2012−510282A)
【公表日】平成24年5月10日(2012.5.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−539023(P2011−539023)
【出願日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際出願番号】PCT/EP2009/066290
【国際公開番号】WO2010/063785
【国際公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【出願人】(507316398)ゲンマブ エー/エス (18)
【Fターム(参考)】