説明

定着器

【課題】
定着器のヒートローラの回転に伴い発生する異音を防止する手段を提供する。
【解決手段】
本定着器100は、ローラ本体10の切欠溝14付近の外径R1とギア13の内径R2との寸法差Rを0.05乃至0.25ミリメートルとし、且つ、ギア13の真円度Cを0.00乃至0.05としたものである。これにより、ローラ本体10とギア13とのガタツキ等による異音の発生を防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録用紙に文字や図形等の画像を形成するプリンタ、ファクシミリ、複写機等において、トナー画像を記録用紙に定着させるために用いられる定着器に関する。
【背景技術】
【0002】
記録用紙に文字や図形等を記録するための画像形成装置として、従来より、プリンタ、ファクシミリ、複写機等がある。従来の画像形成装置は、所定のバイアス電圧が印加された帯電デバイスにより感光体ドラムの表面が帯電され、露光デバイスが画像情報に応じて該感光体ドラムを選択的に露光することにより感光体ドラムの表面に静電潜像が形成され、該静電潜像に対して現像デバイスが帯電されたトナーを供給してトナー画像を形成し、該トナー画像が所定のバイアス電圧が印加された転写ローラにより記録用紙に転写され、該記録用紙に、定着デバイスにより熱及び圧力が付与されて、転写されたトナー画像が定着されるようになっている。一方、トナーが転写された感光体ドラムは、除電デバイスにより表面電荷が除かれた後、清掃デバイスにより表面に残留したトナーが取り除かれ、再び帯電デバイスにより帯電されるようになっている。
【0003】
前述した定着デバイスは、内部に熱源を有するヒートローラと、該ヒートローラに対向して密着されたプレスローラとからなり、トナー画像が転写された記録用紙が、ヒートローラとプレスローラとでニップされ、これらの回転により搬送される過程で、トナーがヒートローラの熱で溶融されて記録用紙に定着するようになっている。
【0004】
ヒートローラのローラ本体には、アルミニウムやステンレス等の金属からなる薄肉円筒状のものが用いられ、該ローラ本体の中空部に熱源を挿入してローラ本体を加熱するようになっている。また、ローラ本体の一端側には駆動伝達を行うギアが外嵌され、軸受けによって回転自在に支持されたローラ本体にギアを介して駆動力が伝達されるようになっている。このようなギアは、例えば外周にギア歯が形成され、内周にキーが形成された円環状のものであり、該ギアのキーがローラ本体の一端に切欠された切欠溝と係合して、ギアからローラ本体へ駆動力が伝達されるようになっている(例えば特許文献1参照)。
【0005】
【特許文献1】特開平8−248798号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図6は、ヒートローラのローラ本体90とギア91の構成を示すものであるが、図に示すように、ローラ本体90は、薄肉円筒状のものであって、その一端から軸方向へ所定幅で切欠されてなる切欠溝92が形成されている。一方、ギア91は、円環状のものであって、その外周面にギア歯が形成されており、その内周面にはキー93が突設されている。このようなギア91が、前記ローラ本体90の一端側に、キー93を切欠溝92に係合して外嵌され、これにより、駆動力がギア91を介してローラ本体90に伝達されて、不図示の軸受けにより回転自在に支持されたローラ本体90が回転するようになっている。
【0007】
一般に、ローラのような回転体は、種々の公差や誤差等が原因となって回転に伴い異音を発生することがある。前述した構成のヒートローラにおいても、何らかの原因により異音が発生することがあり、該異音がローラ本体90の内空や定着デバイスのフレーム、画像形成装置のフレーム等に共鳴して大きくなり、プリンタ、ファクシミリ、複写機等のようなオフィス機器に用いる場合には、不快な異音となるおそれがある。
【0008】
本発明は、かかる課題を解決すべくなされたものであり、定着器のヒートローラの回転に伴い発生する異音を防止する手段を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記課題を解決するために、本発明者は鋭意研究した結果、ヒートローラを構成するローラ本体と該ローラ本体に外嵌されるギアの寸法差及びギアの真円度が異音の発生に主として関与し、該寸法差及び真円度を所定の範囲内とすることにより飛躍的に異音の発生が抑制されることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、一端から軸方向へ切欠溝が形成された薄肉円筒状のローラ本体と、該ローラ本体の切欠溝にキーが係合されてローラ本体に外嵌された円環状のギアと、前記ローラ本体を回転自在に軸支する軸受けと、を具備してなるヒートローラに、プレスローラが圧接して回転自在に配設され、該ヒートローラ及びプレスローラでトナー画像が転写された記録用紙を加熱及び加圧することにより、トナーを記録用紙に融着する定着器であって、前記ローラ本体の切欠溝付近の外径と前記ギアの内径との寸法差を0.05乃至0.25ミリメートルとし、且つ、該ギアの真円度を0.00乃至0.05としたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る定着器によれば、ローラ本体の切欠溝付近の外径とギアの内径との寸法差を0.05乃至0.25ミリメートルとし、且つ、該ギアの真円度を0.00乃至0.05としたので、ローラ本体とギアとのガタツキ等による異音の発生を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
図1は、本発明の実施の形態に係る定着デバイス(定着器)100を具備する画像形成装置1の概略構成を示す図であるが、図に示すように、装置底部に記録用紙を順次供給する給紙カセット2が配設されており、該給紙カセット2の上方に画像形成部3が配設され、更にその上方に排紙トレイ4が配設されている。給紙カセット2から排紙トレイ4へ記録用紙を搬送するための搬送路5は、給紙カセット2の一端側から上方へ向かって延設されて画像形成部3に至り、更に上方へ延設された後、水平方向へ湾曲して排紙トレイ4へ通じるように形成されている。なお、図には示していないが、例えば、本画像形成装置1がコピー・ファクシミリ複合機として用いられる場合には、排紙トレイ4の上方に、フラットベッドスキャナとして機能する画像読取部、及び画像読取りや記録の開始等を入力するための操作パネルが配設される。
【0013】
画像形成部3は、図1及び図2に示すように、感光体ドラム30の周囲に配設された帯電デバイス31、LEDヘッド32、現像デバイス33、転写ローラ34、及びクリーニングデバイス35と、感光体ドラム30の下流側の搬送路5に配設された定着デバイス100とから構成されている。これらのうち、感光体ドラム30、帯電デバイス31、現像デバイス33、及びクリーニングデバイス35は、プロセスユニットとしてカートリッジに収容されて一体となっており、トナー切れやメンテナンスの際に画像形成装置1から容易に着脱できるようになっている。
【0014】
感光体ドラム30は、表面に有機感光体による光導電膜が形成され、モータにより所定速度で回転するものであり、帯電デバイス31により一定電圧に帯電される。帯電デバイス31は、所謂スコロトロン帯電器と呼ばれる非接触のコロナ帯電方式のものであり、図には詳細に示していないが、半空間を形成するケーシング電極の略中心に放電ワイヤが配設されるとともに、感光体ドラム30側にグリッド電極が配設されてなり、該放電ワイヤに所定の電圧が印加されることによりコロナ放電が生じ、該コロナ放電によるイオン量をグリッド電極で制御するものである。なお、帯電デバイス31には、非接触のコロナ帯電方式に代えて接触型のローラ帯電方式等、他の帯電デバイスを採用してもよい。
【0015】
LEDヘッド32は、LEDアレイを記録画素数だけ並設し、該LEDアレイが発した光をセルフォックレンズアレイで感光体ドラム30の表面に結像する所謂自己発光型のプリンタヘッドであり、前記感光体ドラム30に対して画像情報に基づいて感光体ドラム30の表面を選択的に露光して、該表面に静電潜像を形成するものである。帯電デバイス31により帯電された感光体ドラム30の表面は、LEDヘッド32により露光されることにより表面電位が減衰し、露光されていない部分との電位差により静電潜像が形成される。また、画像情報は、例えばフラットベッドスキャナとして機能する読取載置台(不図示)が読み取った原稿の画像が電気信号としてLEDヘッド32に送信されるようになっている。なお、露光デバイスとしては、LEDヘッド32の他に半導体レーザを用いた走査光学系のものを採用してもよい。
【0016】
現像デバイス33は、供給ローラ36と、現像ローラ37と、トナー容器38とを具備してなり、不図示の電気回路から供給ローラ36及び現像ローラ37の各々に印加されるバイアス電圧の差によりトナー容器38のトナーが供給ローラ36を経て現像ローラ37へ供給され、現像ローラ37の表面にトナー層が形成される。トナー層が形成された現像ローラ37が前記感光体ドラム30に近接した位置で回転され、感光体ドラム30の静電潜像との電位差により現像ローラ37上のトナーが感光体ドラム30へ移動し、該静電潜像に基づいてトナー画像が感光体ドラム30の表面に形成される。なお、このような現像デバイス33は一例であり、磁性トナー又は非磁性トナーの選択や、接触現像法又は非接触現像法の選択等は任意である。
【0017】
転写ローラ34は、EPDM発泡体からなるローラであり、搬送路5の対向位置において感光体ドラム30に圧接されてなり、不図示の電気回路からバイアス電圧が印加されるようになっている。給紙カセット2から搬送路5を経て供給された記録用紙を感光体ドラム30及び転写ローラ34がニップしてバイアス電圧が印加されることにより、該感光体ドラム30の表面に形成されたトナー画像が記録用紙へ転写される。
【0018】
クリーニングデバイス35は、転写後の感光体ドラム30に圧接されたクリーニングブレードであり、不図示の電気回路から定電圧が印加されることにより、感光体ドラム30の表面に残留したトナーや紙粉を除去するとともに静電潜像を消去するものである。これにより、感光体ドラム30の表面が清掃されて連続使用が可能となる。なお、クリーニングデバイスとしては、クリーニングローラ等による他の接触型の方式や非接触方式も採用でき、また、クリーニングデバイス35を用いないクリーニングレス方式とすることもできる。
【0019】
定着デバイス100は、搬送路5の対向位置に夫々配置されたヒートローラ101及びプレスローラ102からなり、搬送路5を搬送された記録用紙上のトナー画像を加熱及び加圧して融着するものである。ヒートローラ101の表面は電熱ヒータにより所定の温度に維持されており、該ヒートローラ101にEPDM発泡体等からなるプレスローラ102が所定の圧力で圧接されて、双方が回転自在に配設されている。トナー画像が転写された記録用紙が該ヒートローラ101とプレスローラ102とにニップされることにより、記録用紙上のトナーが溶融されて定着される。このように構成された画像形成部3により、フラットベッドスキャナで読み取られた原稿の画像等が記録用紙上に形成されるようになっている。
【0020】
以下、前記ヒートローラ101の構造について詳細に説明する。
図3に示すように、ヒートローラ101は、薄肉円筒状のローラ本体10と、ローラ本体10の両端部に外嵌された軸受け11と、ローラ本体10の中空部に挿入された電熱ヒータ12と、ローラ本体10の一端側に設けられたギア13とからなるものである。このように構成されたヒートローラ101は、ローラ本体10が軸受け11により回転自在に軸支されて、ギア13を介して伝達される駆動力により所定速度で回転し、また、電熱ヒータ12により加熱されて、ローラ本体10の外周面がトナーの融着に適した所定温度範囲に制御される。
【0021】
ローラ本体10は、アルミニウムやステンレス等の金属からなる管体を所望の径に引き抜き、所定の長さに切断することにより薄肉円筒状に加工されたものであり、ローラ本体10の内周面には耐熱性の黒色塗料が塗装されており、また、外周面のうち軸受け11やギア13と嵌合する両端部分を除いて記録用紙と接触する部分にテトラ・フルオロ・エチレン等のフッ素樹脂がコーティングされて、トナーとの離型性が高められている。また、ローラ本体10は、その中央部分の外径を両端部分の外径より約100μm程度ほど径小とした所謂逆クラウン形状に切削加工されており、記録用紙の両端部分の搬送速度を若干速めることにより、定着時に記録用紙にしわが生じることを防止している。
【0022】
また、ローラ本体10の端部のうちギア13が設けられる側には、ローラ本体10の一端から軸方向へU字状の切欠溝14が形成されている。該切欠溝14は、ローラ本体10に取り付けられるギア13のキー13aと係合するためのものであり、例えばローラ本体10をパンチ及びダイでプレス加工することにより形成できる。
【0023】
ギア13は外周にギア歯が形成され、内周にキー13aが形成された円環状のものであり、ローラ本体10の切欠溝14とキー13aとを係合させてローラ本体10に外嵌することにより、ローラ本体10の一端側に取り付けられる。なお、切欠溝14の形状はギア13のキー13aに合わせて適宜変更することが可能であり、例えばキー13aが円柱状であれば切欠溝14はU字状とすることが好ましいが、キー13aが角柱状であれば切欠溝14はコの字状が好ましい。また、本実施の形態では、切欠溝14は一箇所にのみ形成されているが、例えばキー13aが複数ある場合には、切欠溝14を複数箇所に形成してもよい。
【0024】
軸受け11は、図3に示すように、円盤部11aと該円盤部11aから立ち上がった円周壁部11bとからなる合成樹脂製のものであり、円盤部11aには、電熱ヒータ12の挿入のためや接地のための切欠きが適宜形成されている。該軸受け11は、所謂すべり軸受けであり、ローラ本体10の両端部を封止するようにして夫々外嵌され、円盤部11aがローラ本体10の端面と接触し、且つ円周壁部11bがローラ本体10の外周面と接触して、ローラ本体10をラジアル方向に軸支して回転自在とする。このように、ローラ本体10両端部に外嵌される軸受け11を採用して、ローラ本体10の開口端を軸受け11で塞ぐことにより、電熱ヒータ12によるローラ本体10の加熱効率を高めることができる。
【0025】
図4(a)及び図4(b)に示すように、ローラ本体10の切欠溝14付近の外径R1と、ギア13の内径R2との寸法差Rは、0.05〜0.25mmとされている。ギア13はローラ本体10に外嵌されるものなので、前記寸法差Rが0.05mmより小さければローラ本体10にギア13を外嵌する作業が困難となるので不適である。一方、前記寸法差Rが0.25mmより大きくなれば、ローラ本体10に外嵌された状態のギア13にガタツキが生じ、このガタツキが、ヒートローラ101が回転した際の異音の原因となる。したがって、ローラ本体10の外径R1及びギア13の内径R2の公差を考慮した上で、前記寸法差Rが0.05〜0.25mmとなるように、ローラ本体10及びギア13を設計・製造することが好適である。
【0026】
また、図4(b)に示すように、ギア13の内径を2方向から測定した値A,B(mm)の差(A−B)の絶対値(|A−B|)である真円度Cは、0.00〜0.05とされている。なお、ギア13の真円度Cは、ギア13の内径又は外径のいずれで測定してもよく、内径又は外径を測定する2方向は、略直交する方向が好適である。前記真円度Cは0.00が最も好ましく、真円度Cが大きくなるに伴いギア13の円形が歪むので、駆動伝達においてギア13が他のギアと噛合して回転する際に、ギア13の軸にズレが生じる。このズレはローラ本体10の軸のズレとなり、ヒートローラ101が回転した際の異音の原因となる。前記真円度Cを0.05以下とすることにより、このような軸ズレを防いで、異音の発生を防止できる。
【実施例】
【0027】
前記ローラ本体10とギア13との寸法差R及びギア13の真円度Cを、n=263のギア13で測定して、定着デバイス100として組み付けてヒートローラ101を回転させた場合の異音の有無を確認した。その結果を図5に示す。図は、X軸を真円度C、Y軸を寸法差Rとして、異音が聴取できなかったものを「OK」として「●」でプロットし、異音が聴取されるものを「NG」として「×」でプロットしたものである。図から明らかなように、ギア13の真円度Cが0.05より大きくなれば異音が確認され、0.05以下では異音が聴取されたなかった。また、真円度Cが0.05以下では、寸法差Rが0.05〜0.25の範囲で異音は聴取されなかった。
【0028】
なお、本実施の形態では、主にコピー機として機能する画像形成装置1に定着器100を装備した態様を説明したが、本発明に係る定着器は、このような画像形成装置1としての実施に限定されず、プリンタやファクシミリ等においても利用できることは勿論である。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の実施の形態に係る定着器100を具備する画像形成装置1の構成を示す概略図である。
【図2】画像形成部3の概略構成を示す図である。
【図3】ヒートローラ101の構成を示す分解斜視図である。
【図4】(a)はローラ本体10の側面図、(b)はギア13の側面図である。
【図5】寸法差R及び真円度Cによる異音の発生を示す図である。
【図6】従来のヒートローラのローラ本体90及びギア91の構成を示す拡大斜視図である。
【符号の説明】
【0030】
10 ローラ本体
11 軸受け
13 ギア
13a キー
14 切欠溝
100 定着デバイス(定着器)
101 ヒートローラ
102 プレスローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一端から軸方向へ切欠溝が形成された薄肉円筒状のローラ本体と、該ローラ本体の切欠溝にキーが係合されてローラ本体に外嵌された円環状のギアと、前記ローラ本体を回転自在に軸支する軸受けと、を具備してなるヒートローラに、プレスローラが圧接して回転自在に配設され、該ヒートローラ及びプレスローラでトナー画像が転写された記録用紙を加熱及び加圧することにより、トナーを記録用紙に融着する定着器であって、
前記ローラ本体の切欠溝付近の外径と前記ギアの内径との寸法差を0.05乃至0.25ミリメートルとし、且つ、該ギアの真円度を0.00乃至0.05としたことを特徴とする定着器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−133468(P2006−133468A)
【公開日】平成18年5月25日(2006.5.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−321819(P2004−321819)
【出願日】平成16年11月5日(2004.11.5)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】