説明

定着用加圧ロール、定着装置、及び画像形成装置

【課題】弾性層の端部変位による破損や亀裂などが発生せず、寿命の長い定着用加圧ロールを提供すること。また、当該定着用加圧ロールを備えた定着装置、及び当該定着装置を備えた画像形成装置を提供すること。
【解決手段】 例えば、電子写真用感光体10と、帯電手段12と、露光手段14と、現像手段16と、転写手段18と、クリーニング装置20と、定着装置22と、を備えた画像形成装置において、定着装置22の加圧ロール28に、弾性層変位抑制部材28Cを弾性層28B端部に設ける。これにより、加熱ロール28と圧接させたとき、加圧ロール28の弾性層28B端部が芯金28A軸方向外側へ変位しようとするところを、弾性層変位抑制部材28Cにより支持し、当該弾性層28Bの端部変位を抑制する。このため、弾性層の端部変位による破損や亀裂などを防止し、長寿命化が図れる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート表面に現像されたトナー画像を加熱、加圧して定着する複写機、プリンタ、ファクシミリ等の電子写真方式を用いた画像形成装置、及びその定着装置に関し、また、定着装置に利用される定着用ロールに関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置には、複写機、プリンタ、ファクシミリ装置等には未定着トナーを用紙に定着させる定着装置が設けられている。この定着装置には、加熱部材(例えば、加熱ロール、加熱ベルト)と、これに圧接させる加圧ロールと、が配設してある。
【0003】
通常、加圧ロールは芯金の表面に弾性層が設けられた構成であり、加圧ロールを加熱部材へ圧接するための重荷は、0.8kg/cmから1.5kg/cmであり、例えば、定着用ロールのゴム硬度は、JIS(A)で30度あたりから50度あたりである。
【0004】
所が、近年プリントの生産性をあげるため、加熱部材と加圧ロールの接触幅(ニップ)を広くし、加熱時間を増加させる工夫がされている。そこで、荷重はこれ以上あげられないが、その代わり弾性層のゴム硬度を低くして、ニップ幅を広くしている(例えば、特許文献1)。しかし、ゴム硬度が低くなると、上記のような荷重では、弾性層端部が芯金軸方向に大きく変位し、破損や亀裂が生じてしまう。
【特許文献1】特開平11−143276号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明の目的は、弾性層の端部変位による破損や亀裂などが発生せず、寿命の長い定着用加圧ロールを提供することである。また、本発明の他の目的は、当該定着用加圧ロールを備えた定着装置、及び当該定着装置を備えた画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題は、以下の手段により解決される。
即ち、本発明の定着用加圧ロールは、
芯金と、
前記芯金の表面に形成された弾性層と、
前記芯金の軸方向外側への前記弾性層の端部変位を抑制する弾性層変位抑制手段と、
を有することを特徴としている。
【0007】
本発明の定着用加圧ロールでは、加熱部材と圧接させたとき、加圧ロールの弾性層端部が芯金軸方向外側へ変位しようとするところを、弾性層変位抑制手段により支持し、当該弾性層の端部変位を抑制する。これにより、弾性層の端部変位による破損や亀裂などを防止し、長寿命化が図れる。
【0008】
本発明の定着用加圧ロールにおいて、前記弾性層変位抑制手段は前記芯金と別体で設けられていてもよいし、前記芯金と一体的に設けられていてもよい。
【0009】
本発明の定着用加圧ロールにおいて、前記弾性層変位手段は、板状体であり、その中央部が前記弾性層の端面中央部を当接する共に、その縁部が前記弾性層の端面と離間して設けられることがよい。弾性層端部が変位した際、亀裂や破損が生じる箇所は弾性層の端面中央部(芯金周囲の弾性層)であることが多い。また、弾性層端部が変位した際、その端面が板状の弾性層変位抑制手段の縁部に圧接されて、そこを基点に弾性層の破壊や亀裂が生じてしまうことがある。そこで、板状の弾性層変位抑制手段を縁部が前記弾性層端面と離間するように設けて、弾性層端面が板状の弾性層変位抑制手段の縁部に必要以上に圧接されることを防止しつつ、弾性層の端面中央部の変位を抑制し、破損や亀裂などを防止する。
【0010】
また、本発明の定着装置は、加熱部材及び前記加熱部材に圧接させる加圧ロールを有し、トナー像が形成されたシートを加熱定着するための定着装置であり、前記加圧ロールとして、上記本発明の定着用加圧ロールを適用することを特徴としている。
【0011】
また、本発明の画像形成装置は、上記本発明の定着装置を備えることを特徴としている。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、弾性層の端部変位による破損や亀裂などが発生せず、寿命の長い定着用加圧ロールを提供することができる。また、当該定着用加圧ロールを備えた定着装置、及び当該定着装置を備えた画像形成装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。なお、実施的に同一の機能を有する部材には、全図面通して同じ符号を付与し、重複する説明は省略する場合がある。
【0014】
図1は、実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。図2は、実施形態に係る加圧ロールを示す部分断面図である。図3〜図5は、実施形態に係る加圧ロールの他の形態を示す部分断面図である。
【0015】
本実施形態に係る画像形成装置は、電子写真方式の画像形成装置であり、図1に示すように、電子写真用感光体10と、電子写真用感光体10を接触方式により帯電させる帯電手段12と、帯電手段12により帯電された電子写真用感光体10を露光して静電潜像を形成する露光手段14と、露光手段14により形成された静電潜像をトナー(トナーを含む現像剤)により現像してトナー像を形成する現像手段16と、現像手段16により形成されたトナー像を記録媒体P(シート)に転写する転写手段18と、感光体10の残留トナーを除去するためのクリーニング装置20と、トナー像が形成された記録媒体P(シート)を加熱定着するための定着装置22と、を備えている。また、定着装置22の搬送出口には搬送ガイド24が設けられている。
【0016】
そして、定着装置22は、加熱ロール26と加圧ロール28とで構成されている。加熱ロール26は、ロール長さ(軸方向)が230〜390mm(本実施形態では390mm)、ロール外径(直径)が例えば、20〜100mm(本実施形態では50mm)であり、そのJIS A硬度が例えば、5〜40°(本実施形態では18°)で、熱源26Aを有する弾性ロールから構成されている。
【0017】
そして、加圧ロール28は、図2に示すように、芯金28Aと、芯金の表面を被覆して形成された弾性層28Bと、芯金28Aの両端部周辺に弾性層端面に当接するように設けられた弾性層変位抑制部材28Cと、で構成されている。また、図示しないが、弾性層28B表面には、フッ素樹脂などから構成される離型層が設けられていてもよい。
【0018】
芯金28Aとしては、例えば、金属としてアルミニウム、鉄、銅等のロール、ガラス製ロールが用いられる。これら芯金28Aの大きさ(外径等)等は、定着部品として必要な寸法を適宜選択すればよい。本実施形態では、例えば、外径20mmの鉄製ロール(STKM11(鉄)、或いはHT590(鉄))で構成した。
【0019】
弾性層28Bとしては、例えば、シリコーンゴム、フッ素ゴムは、汎用のゴム弾性体で構成することができる。また、このほか、弾性層28Bとしては、フッ素樹脂としてPTFE、PFAで構成することもできる。例えば、シリコーンゴムとしては、ビニルメチルシリコーンゴム、メチルシリコーンゴム、フェニルメチルシリコーンゴム、フロロシリコーンゴム等が利用できる。またフッ素ゴムとしては、フッ化ビニリデン系ゴム、四フッ化エチレン/プロピレン系ゴム、四フッ化エチレン/パーフロロメチルビニルエーテルゴム、フォスファゼン系ゴム、フロロポリエーテル、及びその他のフッ素ゴムが利用できる。これらは、それぞれ単独でも又は2種以上組み合せてもよい。
【0020】
また、弾性層28Bには、無機あるいは有機の各種充填剤を添加することもできる。無機充填剤としては、カーボンブラック、酸化チタン、シリカ、炭化ケイ素、タルク、マイカ、カオリン、酸化鉄、炭酸カルシウム、ケイ酸カルシウム、酸化マグネシウム、黒鉛、窒化ケイ素、窒化ホウ素、酸化鉄、酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム等が挙げられる。また有機充填剤としては、ポリイミド、ポリアミドイミド、ポリエーテルサルフォン、ポリフェニレンスルフィド等が利用できる。
【0021】
弾性層28Bの厚みとしては、例えば、2mm以上であり、好ましく8mm〜15mmである。
【0022】
なお、本実施形態では、弾性層28Bを、厚さ30mm(3,000μm)のシリコーンゴム(例えば、信越化学工業製 KE1340AB(18Hs)、信越化学工業製 KE1950−10AB(10Hs))で構成した。また、芯金28Aへの弾性層28Bの形成は、例えば、特開平9−272160号、特開2003−156960、特開2003−223072などに準じて行うことができる。
【0023】
弾性層変位抑制部材28Cは、円盤状部材(板状体)で構成され、その外径は加圧ロール28の外径よりも小さくしている。具体的には、弾性層変位抑制部材28Cの外径は、加圧ロール28外径の1/3〜2/3程度であることがよい。弾性層変位抑制部材28Cは、例えば、その中心に設けられた穴に芯金28Aを通しつつ、当該芯金に設けられた凹部に嵌合させて設けられている。
【0024】
そして、弾性層変位抑制部材28Cは、その端縁部が断面曲面状に形成されており、その中央部が弾性層28Bの端面中央部を当接すると共に、その縁部が弾性層28Bの端面と離間して設けられている。弾性層変位抑制部材28Cの縁部の形状は、曲面状に限られず、例えば、面取りされていればよく、Cカットされたテーパー状であってもよい。
【0025】
また、図3に示すように、弾性層28Bの端縁部をCカットしたテーパー状として、弾性層変位抑制部材28Cの中央部が弾性層28Bの端面中央部を当接すると共に、弾性層変位抑制部材28Cの縁部が弾性層28Bの端面と離間するようにして、弾性層変位抑制部材28Cを設けてもよい。
【0026】
弾性層変位抑制部材28Cの構成材料としては、定着の際、加熱されることから、耐熱性樹脂(例えば、66ナイロン、ポリアセタール、ポリカーボネート、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン、ポリエチレンサルファイドなど)が挙げられる。弾性層変位抑制部材28Cは、これら材料を用い、例えば、射出成型や、掘削成型などにより成型することができる。本実施形態では、弾性層変位抑制部材28Cを、例えば、ポリカーボネートからなる、厚さ5mm、外径30mmの円盤状体で構成した。
【0027】
なお、本実施形態では、弾性層変位抑制部材28Cを芯金28Aと別体で構成した形態を説明したが、弾性層変位抑制部材28Cを芯金28Aと一体的に構成した形態、即ち、図4〜図5に示すように、芯金28Aにその芯金28Aと連続して形成された弾性層変位抑制部28Dを設けた形態でもよい。この形態では、弾性層変位抑制部28Dの形状などは、上記同様なので説明を省略する。
【0028】
以上のような構成の本実施形態では、まず、公知の電子写真プロセスにて、記録媒体P上にトナー像が形成された記録媒体Pを、定着装置22において加熱ロール26及び加圧ロール28間に挟持させて熱と圧力が加えて加熱定着し、画像を形成する。そして、加熱された記録媒体Pは搬送ガイド24により案内搬送される。
【0029】
この電子写真プロセスを、例えば、プロセススピード160〜450mm/sec(本実施形態では360mm/sec)で行なおうとすると、より多くの加熱時間を確保するために、ニップ幅を広げる必要がある。このようなニップ幅を確保するためには、加圧ロール28の構成を、例えば、ロール長さ(弾性層軸方向長さ)230〜390mm(本実施形態では390mm)、ロール外径(直径)が例えば、20〜100mm(本実施形態では50mm)、JIS A硬度が例えば、5〜40°(本実施形態では18°)、加熱ロール26へ圧接するための重荷は、例えば、2kg/cmから12kg/cm(本実施形態では7.7kg/cm)とすることが必要である。なお、JIS A硬度は、JIS K6301の硬さ試験に基づいてJIS A 硬度計(高分子計器社製)の押針を厚さ12mm、直径24mmの被測定物表面に当接させ、25℃55%RHの雰囲気下で測定される。
【0030】
しかし、例えば、上記条件で加圧ロール28を加熱ロール26へと圧接させると、加圧ロール28の弾性層端部が芯金軸方向外側へ変位してしまい、弾性層の端部変位による破損や亀裂などが生じてしまう。
【0031】
そこで、本実施形態では、加圧ロール28に弾性層変位抑制部材28Cを設け、加圧ロール28の弾性層28B端部が芯金28A軸方向外側へ変位しようとするところを、弾性層変位抑制部材28Cにより支持し、当該弾性層28Bの端部変位を抑制している。これにより、弾性層の端部変位による破損や亀裂などを防止し、長寿命化が図れる。
【0032】
また、加圧ロール28に荷重がかかると、弾性層28B端部の弾性体のうち、ロール径方向外側(端縁部)の弾性体は大きく変位するのに対し、中央部(端面中央部)の弾性体(芯金周囲の弾性体)の近くの弾性体は芯金28Aとの接着面に近いため、小さく変位し、繰り返しズレ応力を受ける。このため、弾性層28Bと芯金28A(プライマー層(図示せず)との接着面の剥がれではなく、弾性層28B端部の中央部の弾性体(弾性層)に破壊や亀裂などが生じやすくなる。また、弾性層28B端部が変位した際、その端面が弾性層変位抑制部材28Cの縁部に圧接されすぎると、そこを基点に弾性層の破壊や亀裂が生じ易くなる。
【0033】
そこで、本実施形態では、弾性層変位抑制部材28Cを、その中央部が弾性層28Bの端面中央部を当接する共に、その縁部が弾性層28Bの端面と離間するように設けて、弾性層28B端面が弾性層変位抑制部材28Cの縁部に必要以上に圧接されることを防止しつつ、弾性層28Bの端面中央部の変位を抑制し、破損や亀裂などを良好に防止している。
【0034】
このように、本実施形態では、プリントやコピーの生産性をあげるため、プロセススピードを上げ、加熱ロール26と加圧ロール28の接触幅(ニップ)を広くし、加熱時間を増加させるための加圧ロール28は、低硬度にする必要があるが、耐久性が満足できなかった。しかし、本実施形態では、加圧ロール28に弾性層変位抑制部材28Cを設けることで、弾性層の亀裂や破壊発生を改善して、満足する耐久性を得ることができる。
【0035】
なお、本実施形態において、その他、各構成部材は、公知の電子写真方式と同様に構成することができる。また、画像形成装置の方式は、これに限定されず、例えば、中間転写体を利用した方式やタンデム型など、適宜適用することができる。また、定着装置22の加熱部材は、加熱ロール26に限られず、加熱ベルトであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】実施形態に係る加圧ロールを示す部分断面図である。
【図3】実施形態に係る加圧ロールの他の形態を示す部分断面図である。
【図4】実施形態に係る加圧ロールの他の形態を示す部分断面図である。
【図5】実施形態に係る加圧ロールの他の形態を示す部分断面図である。
【符号の説明】
【0037】
10 電子写真用感光体
12 帯電手段
14 露光手段
16 現像手段
18 転写手段
20 クリーニング装置
22 定着装置
24 搬送ガイド
26 加熱ロール
28 加圧ロール
28A 芯金
28B 弾性層
28C 弾性層変位抑制部材(弾性層変位抑制手段)
28D 弾性層変位抑制部(弾性層変位抑制手段)
P 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯金と、
前記芯金の表面に形成された弾性層と、
前記芯金の軸方向外側への前記弾性層の端部変位を抑制する弾性層変位抑制手段と、
を有することを特徴とする定着用加圧ロール。
【請求項2】
前記弾性層変位抑制手段は、前記芯金と別体で設けられていることを特徴とする請求項1に記載の定着用加圧ロール。
【請求項3】
前記弾性層変位抑制手段は、前記芯金と一体的に形成されていることを特徴する請求項1に記載の定着用加圧ロール。
【請求項4】
前記弾性層変位手段は、板状体であり、その中央部が前記弾性層の端面中央部を当接する共に、その縁部が前記弾性層の端面と離間して設けられることを特徴とする請求項1に記載の定着用加圧ロール。
【請求項5】
加熱部材及び前記加熱部材に圧接させる加圧ロールを有し、トナー像が形成されたシートを加熱定着するための定着装置であって、
前記加圧ロールは、請求項1〜4のいずれか1項に記載の定着用加圧ロールであることを特徴とする定着装置。
【請求項6】
請求項5に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−330064(P2006−330064A)
【公開日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−149460(P2005−149460)
【出願日】平成17年5月23日(2005.5.23)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】