説明

定着装置、画像形成装置及び定着制御方法

【課題】環境温度検知手段を必要としない簡易な構成で、用紙が低温であった場合にも1枚目から定着性を確保可能な定着装置、これを備える画像形成装置及び定着制御方法を提供すること。
【解決手段】記録媒体上に形成された未定着画像を加熱して定着させる定着手段と、前記定着手段を加熱する加熱手段と、前記定着手段の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段を制御し、前記定着手段の温度制御を行う温度制御手段と、を有する定着装置であって、前記温度制御手段が、前記記録媒体への定着開始時に前記定着手段を前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる上限温度に制御し、定着開始後は、前記加熱手段による前記定着手段の加熱を停止し、前記記録媒体への定着開始後の前記定着手段の温度変化に基づいて前記記録媒体の温度を推定し、推定した前記記録媒体の温度に応じて前記定着手段の温度を制御することで、1枚目の印刷時から定着性を確保することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
記録媒体に画像を定着させる定着装置、これを備える画像形成装置及び定着制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いる画像形成装置では、記録媒体である用紙上に転写されたトナー像を定着するために、加熱手段であるヒータを内蔵する定着ローラ等を有する定着装置を備えるのが一般的である。
【0003】
定着装置では、定着ローラの表面温度(以下、「定着温度」という)を検知する例えばサーミスタ等の温度検知手段が配設され、制御手段が温度検知結果に基づいてヒータのON/OFFを制御することで、定着温度が所定の温度になる様に制御している。
【0004】
画像形成部においてトナー像が転写された用紙は、搬送されて定着装置内の定着ローラと定着ローラに対向して配置される加圧ローラとの間を通過する際に加熱及び加圧され、表面にトナー像が溶融して定着される。
【0005】
ここで、例えば温度が低く冷たい用紙にトナー像を定着させる場合には、定着ローラの熱が用紙に奪われて定着温度が著しく低下するため、定着温度が定着可能温度範囲から逸脱してしまい、定着性の確保が困難な場合がある。
【0006】
そこで、例えば特許文献1には、転写紙先端が定着ローラ対のニップ部に到達した時と、転写紙後端がニップ部を抜けた時の定着ローラ表面温度を計測し、その温度差を標準制御温度に加算した値に制御温度を修正することで、環境温度等に左右されることなく、常に転写紙の先端から後端迄安定した定着性を得ることができる定着温度制御方法が開示されている。
【0007】
また、特許文献2には、定着部に設けられて用紙を加熱する加熱手段と、前記定着部の温度を検出する温度検出手段と、用紙が前記定着部を通過する前後の定着部の温度差に基づいて前記加熱手段を制御することで、トナー像の定着を安定的に行う定着部温度制御装置が開示されている。
【0008】
さらに、環境温度(雰囲気温度)検知手段を設け、検知した環境温度から用紙温度を推定し、推定した用紙温度に基づいて定着温度の制御することで、用紙の温度に応じて安定した定着を行う方法が知られている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1及び特許文献2に開示されている技術では、例えば1枚目の印刷時における定着部の温度変化に基づいて、2枚目以降の定着温度の制御を行うため、例えば1枚目の用紙温度が低いと定着性を確保することが出来ない場合がある。
【0010】
また、環境温度を検知するための手段として環境温度検知手段を設置する場合においては、環境温度と用紙温度とが必ずしも一致しないため定着性を安定して確保することが困難であり、さらにコストが上昇してしまうという問題がある。
【0011】
そこで本発明では、環境温度検知手段を必要としない簡易な構成で、用紙温度が低い場合にも1枚目の印刷時から定着性を確保することが可能な定着装置、これを備える画像形成装置及び定着制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上記課題に鑑み、記録媒体上に形成された未定着画像を加熱して定着させる定着手段と、前記定着手段を加熱する加熱手段と、前記定着手段の温度を検知する温度検知手段と、前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段を制御し、前記定着手段の温度制御を行う温度制御手段と、を有する定着装置であって、前記温度制御手段が、前記記録媒体への定着開始時に前記定着手段を前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる上限温度に制御し、定着開始後は、前記加熱手段による前記定着手段の加熱を停止し、前記記録媒体への定着開始後の前記定着手段の温度変化に基づいて前記記録媒体の温度を推定し、推定した前記記録媒体の温度に応じて前記定着手段の温度を制御することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明の実施形態によれば、環境温度検知手段を設けることなく簡易な構成で、1枚目の印刷時における定着性を確保すると共に、2枚目以降の印刷時においても用紙の温度に応じて定着手段の温度制御を行うことで、安定した定着を行うことが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係る画像形成装置の概略構成例を示す図
【図2】実施形態に係る画像形成装置のハードウェア構成例を示す図
【図3】実施形態に係る定着装置における定着許容温度範囲の例を示す図
【図4】第1の実施形態に係る定着装置における定着温度の制御例を示す図
【図5】第1の実施形態に係る定着装置における定着温度の温度変化に基づく用紙温度推定テーブルの例を示す図
【図6】第1の実施形態に係る定着装置における定着温度の温度変化に基づく紙厚ごとの用紙温度推定テーブルの例を示す図
【図7】第1の実施形態に係る定着装置における定着温度の他の制御例を示す図
【図8】第1の実施形態に係る定着装置における用紙温度推定の要否判断処理に基づく印刷制御のフローチャート
【図9】第1の実施形態に係る定着装置における用紙温度推定の要否判断処理のフローチャート
【図10】第2の実施形態に係る定着装置における定着温度の制御例を示す図
【図11】第2の実施形態に係る定着装置における定着温度変化時間に基づく用紙温度推定テーブルの例を示す図
【図12】第2の実施形態に係る定着装置における定着温度変化時間に基づく紙厚ごとの用紙温度推定テーブルの例を示す図
【図13】第3の実施形態に係る定着装置における定着温度の制御例を示す図
【図14】第3の実施形態に係る定着装置における定着温度の温度変化に基づく用紙温度推定テーブルの例を示す図
【図15】第3の実施形態に係る定着装置における定着温度の他の制御例を示す図
【図16】第4の実施形態に係る定着装置における定着温度の制御例を示す図
【図17】第4の実施形態に係る定着装置における定着温度変化に基づく用紙温度推定テーブルの例を示す図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施の形態(以下「実施形態」という)について、図面を用いて詳細に説明する。
【0016】
<画像形成装置の構成>
図1に、本実施形態に係る画像形成装置100の概略構成例を示す。
【0017】
画像形成装置100はカラー画像形成装置であり、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色のトナー像を形成するために、感光体ドラム10、現像装置11、現像装置11にトナーを補給するトナー補給ユニット1を色ごとに備えて構成されている。なお、図1ではブラックの現像装置11のみを示し、他色の現像装置11は省略している。
【0018】
また、画像形成装置100は、帯電装置により表面が一様に帯電された感光体ドラム10を照射して露光することで入力画像に対応する静電潜像を形成するための露光装置15、現像装置11により感光体ドラム10上に形成されたトナー像が転写される中間転写ベルト5、中間転写ベルト5から記録媒体である用紙上に転写されたトナー像を用紙に定着させるための定着装置6、画像形成装置100全体に電源を供給するPSU(Power Supply Unit)13等を備えている。
【0019】
この様な構成を有する画像形成装置100が印刷要求を受信すると、まず帯電装置により回転駆動する感光体ドラム10の表面が一様に帯電され、続いて露光装置15によって感光体ドラム10の表面に画像データに対応する静電潜像が形成される。
【0020】
感光体ドラム10の表面に形成された静電潜像は、現像装置11によりトナー像として顕像化され、トナー像が中間転写ベルト5に転写される。中間転写ベルト5には各色のトナー像が重ねて転写されてフルカラートナー像が形成され、給紙トレイ12から搬送される用紙との接触部においてフルカラートナー像が用紙に転写される。
【0021】
トナー像が転写された用紙は、次に定着装置6へと搬送される。定着装置6は、加熱手段としてのヒータ等を内蔵する定着手段である定着ローラ2と、定着ローラ2に対向して配設され、搬送される用紙を定着ローラ2に押圧する加圧ローラ3によって構成されている。定着ローラ2には、表面の温度を検知するための温度検知手段としてのサーミスタが設けられており、検知された定着ローラ2の温度に基づいて内部のヒータのON/OFFが制御されることで、トナー像を定着するための所定温度に加熱制御されている。
【0022】
未定着トナー像を載せた用紙は、定着ローラ2と加圧ローラ3との間を搬送されて通過する際に加熱及び加圧されることにより、トナー像が定着された状態でさらに搬送され、機外へと排出される。
【0023】
トナー像が転写された後の感光体ドラム10及び中間転写ベルト5は、クリーニング装置により転写残トナーが除去されて次回の画像形成まで待機する。
【0024】
なお、本実施形態の一態様である画像形成装置100はプリンタとして構成しているが、複写機又は複合機としても構成することも可能であり、給紙トレイ12を複数設けて異なる用紙サイズに対応出来る様に構成することもできる。
【0025】
図2に、画像形成装置100のハードウェア構成例を示す。
【0026】
画像形成装置100の制御は、CPU31、FROM32及びNVRAM33を有するエンジンメインボード(EGB)30と、モータ22、センサ27、クラッチ28等の負荷を制御するためのエンジンサブボード(IOB)29、電源や電力に関する制御を行うボード(PSU)13によって行われる。
【0027】
また、外部とのインターフェイス制御や、外部から入力されたデータの画像処理等はコントローラボード(Controller)40によって行われる。
【0028】
定着装置6における定着ローラ2の温度制御は、EGB30のCPU31によって、FROM32に記録されたプログラムや、FROM32及びNVRAM33に記録された各種データに基づいて行われる。
【0029】
具体的には、定着ローラ2の表面温度を検知する温度検知手段としてのサーミスタ(Thermistors)25から入力される信号から算出する表面温度、画像形成装置100の動作状態、FROM32やNVRAM33に記録されたデータ(目標温度等)に基づいて、定着ヒータ(Fusing Lamp)4へ制御信号を出力して定着ヒータ4のON/OFFを行うことで、定着ローラ2の温度を制御する。
【0030】
後述する定着許容温度範囲の上限温度及び下限温度、用紙温度を推定するためのテーブル等は、記憶手段であるFROM32及びNVRAM33に記憶されている。また、用紙の搬送位置(用紙先端が定着装置6の定着ローラ2と加圧ローラ3との間のニップ部に到達したか否かの判断)は、CPU31が用紙搬送経路の定着装置6よりも上流側に設置される用紙搬送位置検出センサ(Sensors)27からの信号と、FROM32に記憶されたレイアウト情報及び線速情報から算出される時間に基づいて判断する。
【0031】
<定着許容温度範囲について>
図3は、本実施形態に係る定着装置6における定着許容温度範囲の例を示す図である。
【0032】
定着装置6では、印刷要求を受信すると定着ローラ2の定着温度を、定着性を確保できる上限温度と下限温度とで規定される定着許容温度範囲内に制御する。定着温度が上限温度を上回ったり(オーバーフロー)、下限温度を下回ったり(アンダーフロー)すると、オフセットが発生してトナー像の用紙への定着性を確保することができなくなる。また、定着許容温度範囲は用紙の温度によって異なるため、用紙温度に応じて定着温度を制御する必要がある。
【0033】
図3(a)は、横軸を用紙温度Tp、縦軸を定着温度Trとし、用紙温度Tpに対して定着性を満足することができる定着温度Trの領域を斜線で示している。
【0034】
図に示した様に、用紙温度Tpが低い場合には、用紙が定着ローラ2と加圧ローラ3との間のニップ部を通過する際に定着ローラ2の熱を奪って定着温度Trが低下するため、定着性を満足するためには定着温度Trの下限温度及び上限温度を上げる必要がある。
【0035】
また、用紙温度Tpが高い場合には、用紙が定着ローラ2から奪う熱量が減少するため、下限温度を低く制御しても定着性を確保することができる。しかし、定着温度Trが高い場合に定着不良が発生し易くなるため、上限温度については下げる必要がある。
【0036】
この様に、用紙温度Tpによって定着性を確保できる定着温度Trの範囲が異なる。
【0037】
そこで、例えば用紙温度Tp1からTp2を「低温」、Tp2からTp3を「常温」、Tp3からTp4を「高温」と3段階に分割すると、用紙温度Tpが「低温」の場合における定着許容温度範囲はTr1からTr2であり、「常温」の場合にはTr3からTr4,「高温」の場合にはTr5からTr6が定着許容温度範囲となる。したがって、用紙温度Tpを検知することで、定着許容温度範囲を把握して定着温度Trを制御して定着性を確保することができる。
【0038】
また、図3(b)に示す様に、用紙温度Tp1の時の定着許容温度範囲の下限温度Tr1から、用紙温度Tp4の時の定着許容温度範囲の上限温度Tr6の範囲が、記録媒体である用紙の温度に依存せずに定着性を確保できる定着許容温度範囲となる。
【0039】
なお、本実施形態では用紙温度Tpを3段階に分けているが、分割する数をさらに増やしてそれぞれの定着許容温度範囲を求め、用紙温度Tpに応じて各定着許容温度範囲内に定着温度Trを制御して定着を行うことも可能である。
【0040】
[第1の実施形態]
図4に、第1の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの制御例を示す。図中上段のグラフは、横軸が時間t、縦軸が定着温度Trであり、用紙温度Tpの推定を行う場合の定着温度制御の例を示している。
【0041】
図中に示す上限温度及び下限温度は、用紙温度Tpに依存せずに定着性を確保できる定着許容温度範囲の上限温度及び下限温度を表している。また、図中下段には時間tにおける定着ヒータ4のON/OFF制御状態を示している。
【0042】
なお、以下の第1乃至第4の実施形態の説明における「上限温度」又は「下限温度」は、特に説明が無い限り、用紙温度に依存せずに定着性を確保できる定着許容温度範囲の「上限温度」又は「下限温度」を指す。
【0043】
図4に示す様に、時間t1にて画像形成装置100が印刷要求を受信すると、用紙への定着開始時までに定着装置6が備える定着ローラ2の定着温度が上限温度に達する様に定着ヒータ4をON状態に制御する。
【0044】
定着温度Trが時間t2にて上限温度に達した後は、定着ヒータ4のON/OFFを繰り返すことにより定着温度Trを上限温度に維持し、時間t3にてトナー像が転写された用紙の先端が定着装置6のニップ部に到達した時点から用紙温度の計測を開始する。
【0045】
時間t3にて用紙への定着を開始した後は、定着ヒータ4をOFFに制御して定着ローラ2の加熱を停止する。
【0046】
用紙への定着を実行している間は、定着ヒータ4をOFFに制御しているため、定着ローラ2の温度が用紙に奪われて定着温度Trが低下していく。この状態において、定着を開始してから所定の時間taが経過するまでの温度変化ΔTrに基づいて、用紙温度Tpの推定を行う。
【0047】
定着開始後に時間taが経過した時間t4からは、推定した用紙温度Tpに適した定着温度Trの制御を実施する。用紙温度Tpに適した制御としては、定着温度Trの変更、定着ヒータ4の点灯Duty変更、線速の変更等、様々な制御を行うことができる。
【0048】
第1の実施形態に係る定着装置6の定着許容温度範囲の上限温度と下限温度は、定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等に格納しておくことが可能である。定着温度Trの制御は、FROM32やNVRAM33等に格納された用紙温度Tpに応じた定着許容温度範囲のデータを参照して実行する。
【0049】
以上の様に定着温度Trを制御することで、定着開始後の所定時間taの間の温度変化ΔTrから用紙温度Tpを推定することが可能である。
【0050】
図5に、第1の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの温度変化ΔTrに基づく用紙温度推定テーブルの例を示す。
【0051】
温度変化ΔTrは定着ローラ2の熱が用紙にどの程度奪われたかを表しており、ΔTrが小さい程用紙温度Tpが高く、ΔTrが大きい程用紙温度Tpが低いといえる。
【0052】
そこで、図5に示す様に、例えば温度変化ΔTrが−5℃未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、温度変化ΔTrが−5℃以上−2℃未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、温度変化ΔTrが−2℃以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定することができる。
【0053】
これらの値は定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等のメモリ内にテーブルを格納しておくことで、用紙温度Tpの推定は格納されたテーブルを参照して実行することができる。
【0054】
用紙温度Tpの推定を行った後は、図3(a)に示した様に、それぞれの用紙温度Tpにおける定着許容温度範囲に従って定着温度Trの制御を行うことで、定着性を確保することが可能である。
【0055】
また、図6には、第1の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの温度変化ΔTrに基づく紙厚ごとの用紙温度推定テーブルの例を示す。
【0056】
紙厚が厚い(坪量が大きい)程、定着ローラ2の熱が用紙に奪われ易いため、用紙温度Tpが同じであっても紙厚によって温度変化ΔTrが異なる。そこで、図6に示す様に、紙厚ごとに異なる用紙温度推定テーブルに基づいて用紙温度Tpの推定を行うことで、幅広い種類の用紙に対応することが可能になる。
【0057】
図6(a)は薄紙、(b)は普通紙、(c)は厚紙の場合の推定テーブルの例である。
【0058】
用紙が薄紙であって、例えば温度変化ΔTrが−4℃未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、温度変化ΔTrが−4℃以上−1℃未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、温度変化ΔTrが−1℃以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定する。
【0059】
また、用紙が普通紙の場合には図5に示した例と同様のテーブルに基づいて推定し、用紙が厚紙であって、例えば温度変化ΔTrが−6℃未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、温度変化ΔTrが−6℃以上−3℃未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、温度変化ΔTrが−3℃以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定する。
【0060】
この様に、紙厚ごとに異なる用紙温度推定テーブルを用意することで、異なる厚さの用紙を用いて印刷を行う場合においても定着性を確保することが可能になる。
【0061】
これらの推定テーブルは定着装置6の特性に応じて決定するものであり、予めFROM32やNVRAM33等に推定テーブルを格納しておき、用紙温度Tpの推定は格納されたテーブルを参照して実行する。
【0062】
なお、紙厚ごとに用紙温度推定テーブルを変更する例について説明したが、紙厚以外にも、用紙の搬送速度、用紙上の未定着トナー画像の濃度、あるいはカラーモード(白黒かフルカラーか)等に応じて推定テーブルを設けることもできる。多様な定着条件に基づいて用紙温度Tpを推定することが可能になり、温度変化ΔTrに与える外部要因の影響を排除して、より正確に用紙温度Tpを推定して定着温度Trを制御することが可能になる。
【0063】
図7に、第1の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの他の制御例を示す。
【0064】
用紙温度Tpの推定を行う場合において、まず時間t1にて印刷要求を受信すると、定着ヒータ4をONに制御して定着開始時には定着温度Trが上限温度に達する様に定着ローラ2を加熱する。時間t2にて定着温度Trが上限温度に到達し、時間t3にて定着が開始された時点で定着ヒータ4をOFFに制御すると、定着ローラ2の熱が用紙に奪われることにより定着温度Trが低下する。
【0065】
ここで、定着を開始してから所定の時間taが経過するまでの定着温度変化ΔTrに基づいて用紙温度Tpの推定を行うが、時間taが経過する前に定着温度Trが下限温度まで低下してしまう場合がある。この場合には、そのまま定着ヒータ4をOFFに制御すると、定着温度Trがさらに低下して下限温度を下回って定着不良が発生してしまうため、用紙温度Tpの推定を中断して定着ヒータ4をONに制御する。
【0066】
定着温度Trが下限温度に達した時点(時間t4)から定着ヒータ4をONに制御し続け、時間t5にて定着温度Trが再び上限温度に達した時点で定着ヒータ4を再びOFFに制御して用紙温度Tpの推定を再開する。
【0067】
同様の制御を繰り返し行い、定着温度Trが上限温度に達した時点からの用紙温度Tpの推定時間の合計(ta1+ta2+・・・)が所定の時間taに達した時点で、その間の定着温度変化ΔTrに基づいて用紙温度Tpの推定を行う。用紙温度Tpの推定は、図5及び図6に示した推定テーブルを用いて行うことが可能である。
【0068】
用紙の長さ等によって定着温度Trの低下が著しく大きい場合には、用紙温度の推定中であっても定着不良の発生を防ぐために定着ヒータ4の制御状態を変更する必要があるが、上記制御により定着性を確保しつつ確実に用紙温度を推定することが可能になる。
【0069】
図8に、第1の実施形態に係る定着装置6における用紙温度推定の要否判断処理に基づく印刷制御のフローチャートの例を示す。
【0070】
用紙温度Tpの推定は印刷時に毎回行う必要は無く、用紙温度Tpが不明な場合にのみ行えば足りる。そこで、まず画像形成装置100が印刷要求を受信した時に、ステップS1にて用紙温度推定の要否判断処理を行う。
【0071】
図9に、第1の実施形態に係る定着装置6における用紙温度推定の要否判断処理のフローチャートの例を示す。
【0072】
用紙温度推定の要否判断処理は、まずステップS11にて画像形成装置100の電源が投入された後の最初の印刷であるか、ステップS12にて省エネモードから復帰後の最初の印刷であるか、ステップS13では給紙トレイ12が開閉した後の最初の印刷であるかを判断する。
【0073】
続いて、画像形成装置100が異なるサイズの用紙を収納する複数の給紙トレイ12を備える場合にはステップS14にて給紙トレイ変更後の最初の印刷であるかを判断する。
【0074】
ステップS15では、印刷枚数が予め設定された所定数の印刷時であるかを判断し、ステップS16では、画像形成装置100に電源が投入されてから一定時間が経過した後の最初の印刷であるかが判断される。
【0075】
ステップS11からステップS16において、何れかに該当する場合には用紙温度推定:要のフラグを立てて処理を終了し、何れにも該当しない場合には用紙温度推定:否のフラグを立てて処理を終了する。
【0076】
なお、ステップS11からステップS16の何れか1つに該当する場合に用紙温度推定を行う例について説明したが、ステップS11からステップS16に示した項目のうち複数に該当する場合に用紙温度推定を行う様に設定しても良い。
【0077】
用紙温度推定の要否判断処理が終了すると、図8に示すフローチャートに戻り、ステップS2にて用紙温度推定:要である場合には、ステップS3にて上記した様に定着温度Trを制御して用紙温度Tpの推定を行う。ステップS2にて用紙温度推定:否である場合には、ステップS4にて既に推定された用紙温度Tpに基づいて定着温度Trを制御する通常制御印刷を実行する。印刷を実行した後は、ステップS5にて印刷終了であると判断された場合に処理を終了する。
【0078】
以上の処理により、長時間放置後や使用する用紙を変更した後の印刷時、環境温度が経時で変化した場合等、用紙温度Tpが未知である場合に用紙温度Tpの推定を適切に行うことができると共に、定着ヒータ4を狭い温度範囲内で制御することによる負荷を低減し、用紙への定着性を確保することが可能になる。
【0079】
本発明の第1の実施形態によれば、環境温度検知センサを設けることなく、簡易な構成で用紙温度Tpを推定することが可能である。また、用紙温度Tpに依存せずに定着性を確保できる定着許容温度範囲内で定着温度Trを制御することにより、1枚目の印刷時から定着性を確保し、2枚目以降の印刷においても定着不良等を起こすことなく印刷を実行することが可能になる。
【0080】
[第2の実施形態]
図10に、第2の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの制御例を示す。
【0081】
まず、画像形成装置100が時間t1にて印刷要求を受信すると、定着ヒータ4をONに制御して定着を開始するまでに定着ローラ2を上限温度に加熱し、時間t3にて用紙先端が定着装置6のニップ部に到達した時に定着ヒータ4をOFFに制御する。
【0082】
定着ヒータ4をOFFに制御した状態で定着を行うと、定着ローラ2の熱が用紙に奪われるため、定着温度Trが低下して下限温度に達する。ここで、定着を開始してから、定着温度Trが下限温度に達するまでの時間tbに基づいて用紙温度Tpを推定することができる。
【0083】
定着温度Trが下限温度に達し、時間tbに基づいて用紙温度Tpを推定した後は、用紙温度Tpに応じた定着温度Trの制御を行う。
【0084】
図11に、第2の実施形態に係る定着装置6における定着温度変化時間tbに基づいて用紙温度Tpを推定する推定テーブルの例を示す。
【0085】
定着温度変化時間tbは、定着ローラ2から用紙が一定量の熱を奪う速度であり、時間tbが短い程用紙温度Tpが低く、時間tbが長い程用紙温度Tpが高いといえる。
【0086】
そこで、図11に示す様に、例えば定着温度変化時間tbが3秒未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、時間tbが3秒以上5秒未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、時間tbが5秒以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定することができる。
【0087】
これらの値は定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等に推定テーブルを格納しておくことで、用紙温度Tpの推定を格納されたテーブルを参照して実行することができる。
【0088】
また、図12には、第2の実施形態に係る定着装置6における定着温度変化時間tbに基づく紙厚ごとの用紙温度推定テーブルの例を示す。
【0089】
紙厚が厚い(坪量が大きい)程、定着ローラ2の熱が用紙に奪われ易いため、用紙温度Tpが同じであっても紙厚によって定着温度変化時間tbが異なる。そこで、図12に示す様に、紙厚ごとに異なる用紙温度推定テーブルに基づいて用紙温度Tpの推定を行うことで、幅広い種類の用紙に対応することが可能になる。
【0090】
図12(a)は薄紙、(b)は普通紙、(c)は厚紙の場合の推定テーブルの例である。
【0091】
用紙が薄紙であって、例えば定着温度変化時間tbが4秒未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、時間tbが4秒以上6秒未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、時間tbが6秒以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定する。
【0092】
また、用紙が普通紙の場合には図11に示した例と同様のテーブルに基づいて推定し、用紙が厚紙であって、例えば時間tbが2秒未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、時間tbが2秒以上4秒未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、時間tbが4秒以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定する。
【0093】
この様に、紙厚ごとに異なる用紙温度推定テーブルを用意することで、異なる厚さの用紙を用いて印刷を行う場合にも定着性を確保することが可能になる。
【0094】
これらのテーブルは定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等にテーブルを格納しておくことで、用紙温度Tpの推定を格納された推定テーブルを参照して実行することができる。
【0095】
なお、紙厚ごとに用紙温度Tpの推定テーブルを変更する例について説明したが、紙厚以外にも、用紙の搬送速度、用紙上の未定着トナー画像の濃度、あるいはカラーモード(白黒かフルカラーか)等の定着条件に応じて推定テーブルを設けることもできる。
【0096】
様々な定着条件において用紙温度Tpを推定することが可能になり、温度変化ΔTrに与える外部要因の影響を排除して、より正確に用紙温度Tpを推定した上で定着温度Trを制御することが可能になる。
【0097】
また、定着温度変化時間tbは、定着温度Trが上限温度である印刷開始時から、定着温度Trが下限温度に達するまでの時間としたが、下限温度に限るものではなく、任意の温度に変化するまでの時間として用紙温度Tpの推定に用いることも可能である。
【0098】
なお、用紙温度Tpの推定は印刷時に毎回行う必要は無く、用紙温度Tpが不明な場合にのみ行えば足りるため、第1の実施形態と同様に例えば図8,9に示したフローチャートに基づいて用紙温度の推定を行う。
【0099】
以上の様に定着温度Trを制御することで、印刷開始後において用紙温度Tpが上限温度から下限温度に低下するまでの時間に基づいて用紙温度Tpを推定することができ、推定した用紙温度Tpに基づいて定着温度Trを制御することで、安定して定着を行うことが可能になる。
【0100】
[第3の実施形態]
図13に、第3の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの制御例を示す。
【0101】
用紙温度Tpの推定を行う場合には、まず時間t1にて画像形成装置100が印刷要求を受信すると、用紙への定着開始時に定着装置6が備える定着ローラ2の定着温度が下限温度に達する様に定着ヒータ4をON状態に制御する。
【0102】
定着温度Trが時間t2にて下限温度に達した後は、定着ヒータ4のON/OFFを繰り返すことにより定着温度Trを下限温度に維持し、時間t3にてトナー像が転写された用紙の先端が定着装置6のニップ部に到達した時点から用紙温度の計測を開始する。
【0103】
時間t3にて用紙への定着を開始した後は、定着ヒータ4をONに制御して定着ローラ2の加熱を開始する。
【0104】
用紙への定着を実行している間は、定着ヒータ4をONに制御しているため、定着ローラ2が加熱され続けることにより定着温度Trが上昇する。この状態において、定着を開始した時間t3から所定の時間taが経過するまでの温度変化ΔTrに基づいて、用紙温度Tpの推定を行う。
【0105】
定着開始後に時間taが経過した時間t4からは、用紙温度Tpに適した定着温度Trの制御を実施する。用紙温度Tpに適した制御としては、定着温度Trの変更、定着ヒータ4の点灯Duty変更、線速の変更等、様々な制御を行うことができる。
【0106】
本実施形態における定着許容温度範囲の上限温度と下限温度は、定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等に格納しておくことが可能である。そこで、定着温度Trの制御をFROM32やNVRAM33等に格納されたデータを参照して実行することができる。
【0107】
以上の様に定着温度Trを制御し、定着開始後の所定時間taの間の温度変化ΔTrから用紙温度Tpを推定することができる。
【0108】
図14に、第3の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの温度変化ΔTrに基づく用紙温度推定テーブルの例を示す。
【0109】
温度変化ΔTrは定着を行う用紙温度Tpによって変化し、ΔTrが小さい程用紙温度Tpが低く、ΔTrが大きい程用紙温度Tpが高いといえる。
【0110】
そこで、図14に示す様に、例えば温度変化ΔTrが2℃未満の場合には用紙温度Tpが「低温」、温度変化ΔTrが2℃以上5℃未満の場合には用紙温度Tpが「常温」、温度変化ΔTrが5℃以上の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定することができる。
【0111】
これらの値は定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等に推定テーブルを格納しておくことで、用紙温度Tpの推定を格納された推定テーブルを参照して実行することができる。
【0112】
用紙温度Tpの推定を行った後は、図3(a)に示した様に、それぞれの用紙温度Tpにおける定着許容温度範囲に従って定着温度Trの制御を行うことで、定着性を確保することが可能である。
【0113】
また、用紙温度推定テーブルは、図6又は図12に示す様に用紙の紙厚ごとに作成することも可能である。さらに、紙厚以外にも、用紙の搬送速度、用紙上の未定着トナー画像の濃度、あるいはカラーモード(白黒かフルカラーか)等に応じて推定テーブルを設けることもできる。
【0114】
図15に、第3の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの他の制御例を示す。
【0115】
用紙温度Tpの推定を行う場合に、まず時間t1にて印刷要求を受信すると、定着ヒータ4をONに制御して定着開始時に定着温度Trが下限温度に達する様に定着ローラ2を加熱する。時間t2にて定着温度Trが下限温度に到達し、時間t3にて定着を開始して定着ヒータ4をONに制御すると、定着ローラ2が加熱されて定着温度Trが上昇する。
【0116】
ここで、定着を開始してから所定の時間taが経過するまでの定着温度変化ΔTrに基づいて用紙温度Tpの推定を行うが、時間taが経過する前の時間t4にて定着温度Trが上限温度に達する場合がある。この場合には、そのまま定着ヒータ4をONに制御すると定着温度Trが上限温度を超えて定着不良が発生してしまうため、用紙温度Tpの推定を中断して定着ヒータ4をOFFに制御する。
【0117】
定着温度Trが上限温度に達した時間t4から定着ヒータ4をOFFに制御し、時間t5にて定着温度Trが再び下限温度まで低下した時点で定着ヒータ4を再びONに制御して用紙温度Tpの推定を再開する。
【0118】
同様の制御を繰り返し行い、定着温度Trが下限温度に達した時点からの用紙温度Tpの推定時間の合計(ta1+ta2+・・・)が所定の時間taに達した時点で、その間の定着温度変化ΔTrに基づいて用紙温度Tpの推定を行う。用紙温度Tpの推定は、図14に示す推定テーブルを用いて行うことが可能である。
【0119】
また、第1及び第2の実施形態と同様に、紙厚ごとの用紙温度推定テーブルや、用紙の搬送速度、用紙上の未定着トナー画像の濃度、あるいはカラーモード(白黒かフルカラーか)等の定着条件に応じた推定テーブルを設けることもできる。
【0120】
様々な定着条件において用紙温度Tpを推定することが可能になり、温度変化ΔTrに与える外部要因の影響を排除して、より正確に用紙温度Tpを推定した上で定着温度Trを制御することが可能になる。
【0121】
なお、用紙温度Tpの推定は印刷時に毎回行う必要は無く、用紙温度Tpが不明な場合にのみ行えば足りるため、第1の実施形態と同様に例えば図8,9に示したフローチャートに基づき、必要に応じて用紙温度の推定を行う。
【0122】
この様に、本発明の第3の実施形態によれば、環境温度検知センサを設けることなく、簡易な構成で用紙温度Tpを推定することが可能である。また、用紙温度Tpに依存せずに定着性を確保できる定着許容温度範囲内で定着温度Trを制御することにより、1枚目の印刷時から定着性を確保し、2枚目以降の印刷時においても定着不良等を起こすことなく印刷を実行することが可能である。さらに、用紙への定着を下限温度から開始するため、ファーストプリントまでの時間を短縮することができる。
【0123】
[第4の実施形態]
図16に、第4の実施形態に係る定着装置6における定着温度Trの制御例を示す。
【0124】
用紙温度Tpの推定を行う場合に、まず画像形成装置100が時間t1にて印刷要求を受信すると、定着ヒータ4をONに制御して定着を開始するまでに定着ローラ2を下限温度に加熱し、時間t3にて用紙先端が定着装置6のニップ部に到達した時に定着ヒータ4をONに制御する。
【0125】
定着ヒータ4をONに制御し続けて定着を行うと、定着ローラ2が加熱されて定着温度Trが上昇して上限温度に到達する。ここで、定着を開始してから、定着温度Trが上限温度に達するまでの時間tbに基づいて用紙温度Tpを推定することができる。
【0126】
定着温度Trが上限温度に達し、時間tbに基づいて用紙温度Tpを推定した後は、用紙温度Tpに応じた定着温度Trの制御を行う。
【0127】
図17に、第4の実施形態に係る定着装置6における定着温度変化時間tbに基づいて用紙温度Tpを推定する推定テーブルの例を示す。
【0128】
定着温度変化時間tbは、用紙への定着時に定着ローラ2が加熱されて下限温度から上限温度に達するまでの時間であり、時間tbが長い程用紙温度Tpが低く、時間tbが短い程用紙温度Tpが高いといえる。
【0129】
そこで、図17に示す様に、例えば定着温度変化時間tbが5秒より長い場合には用紙温度Tpが「低温」、時間tbが3秒より長く5秒以下の場合には用紙温度Tpが「常温」、時間tbが3秒以下の場合には用紙温度Tpが「高温」であると推定することができる。
【0130】
これらの値は定着装置6の特性に応じて決定されるものであり、予めFROM32やNVRAM33等に推定テーブルを格納しておき、用紙温度Tpの推定を格納された推定テーブルを参照して実行することができる。
【0131】
また、紙厚ごとに定着温度変化時間に基づく用紙温度推定テーブルを設けることも可能であり、用紙の搬送速度、用紙上の未定着トナー画像の濃度、あるいはカラーモード(白黒かフルカラーか)等に応じて推定テーブルを設けることもできる。
【0132】
様々な定着条件において用紙温度Tpを推定することが可能になり、温度変化ΔTrに与える外部要因の影響を排除して、より正確に用紙温度Tpを推定した上で定着温度Trを制御することが可能になる。
【0133】
また、定着温度変化時間tbは、定着温度Trが下限温度である印刷開始時から、定着温度Trが上限温度に達するまでの時間としたが、上限温度に限るものではなく、任意の温度に変化するまでの時間を計測して、用紙温度Tpの推定に用いることも可能である。
【0134】
なお、用紙温度Tpの推定は印刷時に毎回行う必要は無く、用紙温度Tpが不明な場合にのみ行えば足りるため、第1の実施形態と同様に例えば図8,9に示したフローチャートに基づき、必要に応じて用紙温度の推定を行う。
【0135】
この様に定着温度Trを制御することで、印刷開始後において用紙温度Tpが下限温度から上限温度に上昇するまでの時間に基づいて用紙温度Tpを推定することができ、推定した用紙温度Tpに基づいて定着温度Trを制御することで、安定して定着を行うことが可能になる。
【0136】
<まとめ>
以上説明した様に、本発明の実施形態によれば、環境温度センサ等を用いることなく簡易な構成で用紙温度を推定することが可能である。また、用紙温度に依存せずに定着性を確保できる定着許容温度範囲において1枚目の印刷を行うことで、1枚目の印刷時の定着性を確保した上で、2枚目以降の印刷を用紙温度に応じた定着許容温度範囲で安定した定着を行うことが可能である。
【0137】
なお、上記実施形態に挙げた構成等に、その他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更することが可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。
【符号の説明】
【0138】
2 定着ローラ(定着手段)
4 定着ヒータ(加熱手段)
6 定着装置
12 給紙トレイ
25 サーミスタ(温度検知手段)
31 CPU(温度制御手段)
100 画像形成装置
【先行技術文献】
【特許文献】
【0139】
【特許文献1】特開平05−281875号公報
【特許文献2】特開平07−234606号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録媒体上に形成された未定着画像を加熱して定着させる定着手段と、
前記定着手段を加熱する加熱手段と、
前記定着手段の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段を制御し、前記定着手段の温度制御を行う温度制御手段と、
を有する定着装置であって、
前記温度制御手段が、前記記録媒体への定着開始時に前記定着手段を前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる上限温度に制御し、
定着開始後は、前記加熱手段による前記定着手段の加熱を停止し、
前記記録媒体への定着開始後の前記定着手段の温度変化に基づいて前記記録媒体の温度を推定し、推定した前記記録媒体の温度に応じて前記定着手段の温度を制御する
ことを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記定着手段の温度が、前記上限温度から前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる下限温度に変化するまでの時間に基づいて前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
記録媒体上に形成された未定着画像を加熱して定着させる定着手段と、
前記定着手段を加熱する加熱手段と、
前記定着手段の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段を制御し、前記定着手段の温度制御を行う温度制御手段と、
を有する定着装置であって、
前記温度制御手段が、前記記録媒体への定着開始時に前記定着手段を前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる下限温度に制御し、
定着開始後は、前記加熱手段による前記定着手段の加熱を開始し、
前記記録媒体への定着開始後の前記定着手段の温度変化に基づいて前記記録媒体の温度を推定し、推定した前記記録媒体の温度に応じて前記定着手段の温度を制御する
ことを特徴とする定着装置。
【請求項4】
前記定着手段の温度が、前記下限温度から前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる上限温度に変化するまでの時間に基づいて前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項3に記載の定着装置。
【請求項5】
前記記録媒体の厚さに基づいて前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の定着装置。
【請求項6】
請求項1から5の何れか一項に記載の定着装置を備えることを特徴とする画像形成装置。
【請求項7】
電源が投入された後の最初の印刷時に、前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項6に記載の画像形成装置。
【請求項8】
省エネモードからの復帰後の最初の印刷時に、前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項6又は7に記載の画像形成装置。
【請求項9】
前記記録媒体を格納する給紙トレイを有し、
前記給紙トレイの開閉が行われた後の最初の印刷時に、前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項6から8の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項10】
前記給紙トレイを複数有し、
前記記録媒体が給紙される前記給紙トレイが変更された後の最初の印刷時に、前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項9に記載の画像形成装置。
【請求項11】
前記記録媒体への印刷枚数が予め設定された所定数の印刷時に、前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項6から10の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項12】
電源が投入されてからの時間が予め設定された所定の時間を経過した後の最初の印刷時に、前記記録媒体の温度を推定する
ことを特徴とする請求項6から11の何れか一項に記載の画像形成装置。
【請求項13】
記録媒体上に形成された未定着画像を加熱して定着させる定着手段と、
前記定着手段を加熱する加熱手段と、
前記定着手段の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段を制御し、前記定着手段の温度制御を行う温度制御手段と、
を備える定着装置における定着制御方法であって、
前記温度制御手段が、温度前記記録媒体への定着開始時に前記定着手段を前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる上限温度に制御するステップと、
定着開始後は、前記加熱手段による前記定着手段の加熱を停止するステップと、
前記記録媒体への定着開始後の前記定着手段の温度変化に基づいて前記記録媒体の温度を推定するステップと、
推定した前記記録媒体の温度に応じて前記定着手段の温度を制御するステップと、
を有することを特徴とする定着制御方法。
【請求項14】
記録媒体上に形成された未定着画像を加熱して定着させる定着手段と、
前記定着手段を加熱する加熱手段と、
前記定着手段の温度を検知する温度検知手段と、
前記温度検知手段の検知結果に基づいて前記加熱手段を制御し、前記定着手段の温度制御を行う温度制御手段と、
を備える定着装置における定着制御方法であって、
前記温度制御手段が、前記記録媒体への定着開始時に前記定着手段を前記記録媒体の温度に依存せずに定着性を確保できる下限温度に制御するステップと、
定着開始後は、前記加熱手段による前記定着手段の加熱を開始するステップと、
前記記録媒体への定着開始後の前記定着手段の温度変化に基づいて前記記録媒体の温度を推定するステップと、
推定した前記記録媒体の温度に応じて前記定着手段の温度を制御するステップと、
を有することを特徴とする定着制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2013−83847(P2013−83847A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−224576(P2011−224576)
【出願日】平成23年10月12日(2011.10.12)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】