説明

定着装置および画像形成装置

【課題】加熱部材を迅速に加熱することができるとともに、加熱部材の温度を定着温度に維持することが容易となる定着装置を提供することを目的とする。
【解決手段】定着装置100は、熱を発する発熱体(ハロゲンランプ120)と、記録シート(用紙P)上の現像剤像を熱定着するための定着温度になるように、発熱体によって加熱される加熱部材(ニップ板130)と、加熱部材との間で記録シートを挟み込んで搬送するバックアップ部材(加圧ローラ150)とを備える。加熱部材には、定着温度付近の転移温度で相転移することで、転移温度よりも低い温度のときよりも定着温度のときの方が比熱が大きくなる比熱変化部材170が接触して配置されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、記録シートに転写された現像剤像を熱定着する定着装置と、定着装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に用いられる定着装置として、円筒状の定着フィルムと、定着フィルム内に配置されるヒータと、定着フィルムを介して加圧ローラとの間にニップ部を形成するニップ板(加熱部材)とを備えたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。この定着装置では、ニップ板で支持された定着フィルムと加圧ローラとの間(ニップ部)で、用紙(記録シート)を搬送しつつ、用紙上の現像剤像を熱定着している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−233886号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、前述した定着装置では、ニップ板を迅速に加熱すべく、ニップ板の熱容量(比熱×質量)を小さくすることが望ましいとされている。しかしながら、単にニップ板として比熱の小さい部材を採用すると、ニップ板の温度を定着温度に維持したいときに温度変化が過敏になるので、制御し難くなるといった問題があった。
【0005】
そこで、本発明は、加熱部材を迅速に加熱することができるとともに、加熱部材の温度を定着温度に維持することが容易となる定着装置および画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決する本発明は、熱を発する発熱体と、記録シート上の現像剤像を熱定着するための定着温度になるように、前記発熱体によって加熱される加熱部材と、前記加熱部材との間で前記記録シートを挟み込んで搬送するバックアップ部材とを備えた定着装置であって、前記加熱部材には、前記定着温度付近の転移温度で相転移することで、前記転移温度よりも低い温度のときよりも前記定着温度のときの方が比熱が大きくなる比熱変化部材が接触して配置されていることを特徴とする。
【0007】
ここで、「加熱部材と(バックアップ部材)の間で記録シートを挟み込んで搬送する」とは、加熱部材とバックアップ部材の間に記録シートのみを挟み込んで記録シートを搬送する形態を含む他、例えば加熱部材とバックアップ部材の間に記録シートと定着フィルムを挟み込んで定着フィルムとともに記録シートを搬送する形態も含む。
【0008】
本発明によれば、発熱体によって加熱部材を定着温度付近まで加熱するまでの間、加熱部材に設けられた比熱変化部材の比熱が小さいので、加熱部材の温度は比熱変化部材の温度とともに迅速に定着温度付近まで上昇する。そして、加熱部材および比熱変化部材の温度が定着温度付近まで上昇すると、比熱変化部材の比熱が変化して大きくなるので、加熱部材および比熱変化部材の温度が変化し難くなり、加熱部材および比熱変化部材の温度を定着温度付近の温度に簡単に維持することができる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、加熱部材を迅速に加熱することができるとともに、加熱部材の温度を定着温度に維持することが容易となる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の実施形態に係る定着装置を備えたレーザプリンタの概略構成を示す図である。
【図2】本発明の実施形態に係る定着装置の概略構成を示す図である。
【図3】ハロゲンランプ、ニップ板、反射板、ステイおよび比熱変化部材の斜視図である。
【図4】ニップ板、反射板およびステイを搬送方向から見た図である。
【図5】比熱変化部材の特性を示すグラフである。
【図6】印字制御時におけるニップ板の温度変化を示すグラフである。
【図7】加熱部材の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明の実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。なお、以下の説明では、まず、本発明の実施形態に係る定着装置100を備えたレーザプリンタ1(画像形成装置)の概略構成について説明した後、定着装置100の詳細な構成について説明する。
【0012】
<レーザプリンタの概略構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体筐体2内に、記録シートの一例としての用紙Pを供給する給紙部3と、露光装置4と、用紙P上にトナー像(現像剤像)を転写するプロセスカートリッジ5と、用紙P上のトナー像を熱定着する定着装置100とを主に備えている。
【0013】
なお、以下の説明において、方向は、レーザプリンタを使用するユーザを基準にした方向で説明する。すなわち、図1における右側を「前」、左側を「後」とし、手前側を「左」、奥側を「右」とする。また、図1における上下方向を「上下」とする。
【0014】
給紙部3は、本体筐体2内の下部に設けられ、用紙Pを収容する給紙トレイ31と、用紙Pの前側を持ち上げる用紙押圧板32と、給紙ローラ33と、給紙パット34と、紙粉取りローラ35,36と、レジストローラ37とを主に備えている。給紙トレイ31内の用紙Pは、用紙押圧板32によって給紙ローラ33に寄せられ、給紙ローラ33と給紙パット34によって1枚ずつ分離され、紙粉取りローラ35,36およびレジストローラ37を通ってプロセスカートリッジ5に向けて搬送される。
【0015】
露光装置4は、本体筐体2内の上部に配置され、レーザ発光部(図示せず)と、回転駆動するポリゴンミラー41と、レンズ42,43と、反射鏡44,45,46とを主に備えている。露光装置4では、レーザ発光部から出射される画像データに基づくレーザ光(鎖線参照)が、ポリゴンミラー41、レンズ42、反射鏡44,45、レンズ43、反射鏡46の順に反射または通過して、感光体ドラム61の表面で高速走査される。
【0016】
プロセスカートリッジ5は、露光装置4の下方に配置され、本体筐体2に設けられたフロントカバー21を開いたときにできる開口から本体筐体2に対して着脱可能に装着される構成となっている。このプロセスカートリッジ5は、ドラムユニット6と、現像ユニット7とから構成されている。
【0017】
ドラムユニット6は、感光体ドラム61と、帯電器62と、転写ローラ63とを主に備えている。また、現像ユニット7は、ドラムユニット6に対して着脱可能に装着される構成となっており、現像ローラ71と、供給ローラ72と、層厚規制ブレード73と、トナー(現像剤)を収容するトナー収容部74とを主に備えている。
【0018】
プロセスカートリッジ5では、感光体ドラム61の表面が、帯電器62により一様に帯電された後、露光装置4からのレーザ光の高速走査によって露光されることで、感光体ドラム61上に画像データに基づく静電潜像が形成される。また、トナー収容部74内のトナーは、供給ローラ72を介して現像ローラ71に供給され、現像ローラ71と層厚規制ブレード73の間に進入して一定厚さの薄層として現像ローラ71上に担持される。
【0019】
現像ローラ71上に担持されたトナーは、現像ローラ71から感光体ドラム61上に形成された静電潜像に供給される。これにより、静電潜像が可視像化され、感光体ドラム61上にトナー像が形成される。その後、感光体ドラム61と転写ローラ63の間を用紙Pが搬送されることで感光体ドラム61上のトナー像が用紙P上に転写される。
【0020】
定着装置100は、プロセスカートリッジ5の後方に設けられている。用紙P上に転写されたトナー像(トナー)は、定着装置100を通過することで用紙P上に熱定着される。トナー像が熱定着された用紙Pは、搬送ローラ23,24によって排紙トレイ22上に排出される。
【0021】
<定着装置の詳細構成>
図2に示すように、定着装置100は、定着フィルム110と、発熱体の一例としてのハロゲンランプ120と、ニップ部材(加熱部材)の一例としてのニップ板130と、反射板140と、バックアップ部材の一例としての加圧ローラ150と、支持部材の一例としてのステイ160と、比熱変化部材170とを備えている。
【0022】
定着フィルム110は、耐熱性と可撓性を有する無端状(筒状)のフィルムであり、その両端部が図示しないガイド部材により回転が案内されている。
【0023】
ハロゲンランプ120は、ニップ板130および定着フィルム110を加熱することで用紙P上のトナーを加熱する公知の発熱体であり、定着フィルム110の内側において定着フィルム110およびニップ板130の内面から所定の間隔をあけて配置されている。
【0024】
ニップ板130は、ハロゲンランプ120から発せられる輻射熱を受ける板状の部材であり、ハロゲンランプ120によって所定の定着温度(用紙P上のトナー像を熱定着するための温度)に加熱されるようになっている。なお、本実施形態では、ニップ板130の温度は、制御装置200(図1参照)が印字条件に応じてハロゲンランプ120を制御することで、印字条件に応じて2種類の定着温度(図6に示す第1定着温度T1および第2定着温度T2)で切り替え可能となっている。
【0025】
ここで、「印字条件に応じた切り替え(制御)」とは、例えば用紙Pの種類(用紙サイズや厚さなど)、画質の種類、カラープリンタの場合における印字する色の種類などに応じた制御が挙げられる。すなわち、一例を挙げるとすると、用紙PがA4サイズの場合には第1定着温度T1にし、はがきサイズである場合には第2定着温度T2にするといった制御が挙げられる。
【0026】
そして、このニップ板130は、筒状の定着フィルム110の内面に摺接するように配置されており、ハロゲンランプ120から受けた輻射熱を定着フィルム110を介して用紙P上のトナーに伝達する。
【0027】
このニップ板130は、後述するスチール製のステイ160より熱伝導率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。より詳細に、ニップ板130は、断面視において、前後方向(用紙Pの搬送方向)に沿うように延びるベース部131と、上方(加圧ローラ150からニップ板130に向かう方向)に向けて折り曲げられた折曲部132とを主に有している。
【0028】
図3に示すように、ニップ板130は、ベース部131の右端部から平板状に延びる挿入部133と、ベース部131の左端部に形成された係合部134とをさらに有している。係合部134は、側面視U形状に形成されており、上に向けて折り曲げて形成された側壁部134Aには係合孔134Bが設けられている。
【0029】
そして、このニップ板130(ベース部131)の内面131A(ハロゲンランプ120側の面)には、比熱変化部材170が接触するように配置されている。なお、比熱変化部材170については、後で詳述することとする。
【0030】
図2に示すように、反射板140は、ハロゲンランプ120からの輻射熱(主に前後方向や上方向に向けて放射された輻射熱)をニップ板130(ベース部131の内面131A)に向けて反射する部材であり、定着フィルム110の内側においてハロゲンランプ120を取り囲むように、ハロゲンランプ120から所定の間隔をあけて配置されている。
【0031】
このような反射板140によってハロゲンランプ120からの輻射熱をニップ板130に集めることで、ハロゲンランプ120からの輻射熱を効率良く利用することができ、ニップ板130や比熱変化部材170を速やかに加熱することが可能となっている。
【0032】
反射板140は、赤外線および遠赤外線の反射率が大きい、例えば、アルミニウム板などを断面視略U形状に湾曲させて形成されている。より詳細に、反射板140は、湾曲形状(断面視略U形状)をなす反射部141と、反射部141の両端部から前後方向外側に沿って延びるフランジ部142とを主に有している。なお、熱反射率を高めるため、反射板140は、鏡面仕上げを施したアルミニウム板などを用いて形成してもよい。
【0033】
図3に示すように、反射板140の左右方向(用紙Pの幅方向)の両端部にはフランジ状の係止部143が合計4つ形成されている(3つのみ図示)。係止部143は、フランジ部142より上方に位置し、図4に示すように、ニップ板130、反射板140およびステイ160が組み立てられたときに、後述するステイ160の複数の接触部163を挟む(左右方向において最も外側の接触部163Aと隣接する)ように配置される。
【0034】
これにより、定着装置100が駆動したときの振動などで反射板140が左右に動こうとしても、係止部143が接触部163Aに当接することで、反射板140の左右方向の位置が規制される。その結果、反射板140の左右方向における位置ずれを抑制することができる。
【0035】
図2に示すように、加圧ローラ150は、弾性変形可能な部材であり、ニップ板130の下方に配置されている。そして、加圧ローラ150は、弾性変形した状態でニップ板130との間で定着フィルム110を挟むことで定着フィルム110との間にニップ部を形成している。
【0036】
また、加圧ローラ150は、本体筐体2内に設けられた図示しないモータから駆動力が伝達されて回転駆動するように構成されている。そのため、加圧ローラ150は、ニップ板130との間で定着フィルム110および用紙Pを挟み込んで後方に向けてこれらを送るようになっており、これにより、定着フィルム110が加圧ローラ150の回転に伴って従動回転するとともに用紙Pが後方に搬送されるようになっている。
【0037】
そして、このように加圧ローラ150と加熱されたニップ板130(詳しくは定着フィルム110)との間で用紙Pが搬送されることで、用紙Pに転写されたトナー像が熱定着されるようになっている。
【0038】
ステイ160は、前後方向におけるニップ板130(ベース部131)の両端部131Bを反射板140のフランジ部142を介して支持することでニップ板130の剛性を確保する部材である。ステイ160は、反射板140(反射部141)の外面形状に沿った形状(断面視略U形状)を有して反射板140を覆うように配置されている。このようなステイ160は、比較的剛性が大きい、例えば、鋼板などを断面視略U形状に折り曲げることで形成されている。
【0039】
ステイ160の前壁161および後壁162の下端には、図3に示すように、略櫛歯状をなすように形成された複数の接触部163が設けられている。
【0040】
また、ステイ160の前壁161および後壁162の右端部には、下方に向けて延び、さらに左方へ向けて延びる略L形状の係止部165が設けられている。さらに、ステイ160の左端には、上壁166から左方に向けて延び、側面視略U形状に折り曲げられた保持部167が設けられている。保持部167の各側壁部167Aの内面には、内側に向けて突出する係合ボス167B(一方のみ図示)が設けられている。
【0041】
図2および図3に示すように、ステイ160の前壁161および後壁162の内面の左右方向両端部には、内側に向けて突出する当接ボス168が合計4つ設けられている。この当接ボス168は、前後方向において反射板140(反射部141)に当接する。これにより、定着装置100が駆動したときの振動などで反射板140が前後に動こうとしても、当接ボス168に当接することで、反射板140の前後方向の位置が規制される。その結果、反射板140の前後方向における位置ずれを抑制することができる。
【0042】
以上説明したステイ160に、反射板140とニップ板130を組み付ける場合、まず、ステイ160に反射板140を嵌め込むようにして取り付ける。ステイ160の前壁161および後壁162の内面には当接ボス168が設けられているので、この当接ボス168が反射板140に当接することで、反射板140はステイ160に仮保持される。
【0043】
その後、図4に示すように、ニップ板130の挿入部133をステイ160の係止部165の間に挿入してベース部131(両端部131B)を各係止部165に係合させ、次いで、ニップ板130の係合部134(係合孔134B)とステイ160の保持部167(係合ボス167B)とを係合させる。
【0044】
これにより、ニップ板130は、ベース部131の両端部131Bが係止部165に支持され、係合部134が保持部167に保持されることで、ステイ160に保持される。また、反射板140は、フランジ部142がニップ板130とステイ160に挟まれた状態で、ステイ160に保持される。
【0045】
これにより、定着装置100が駆動したときの振動などで反射板140が上下に動こうとしても、フランジ部142がニップ板130とステイ160とに挟まれていることで、反射板140の上下方向の位置が規制される。その結果、反射板140の上下方向における位置ずれを抑制することができ、ニップ板130に対する反射板140の位置を固定することができる。
【0046】
図3に示すように、比熱変化部材170は、前述した2種類の定着温度T1,T2のうち高い方(最高)の第1定着温度T1付近の転移温度Tt、詳しくは図5に示すように第1定着温度T1と第2定着温度T2の間の転移温度Ttで相転移する材料で形成されている。ここで、「第1定着温度T1付近の温度」とは、例えば第1定着温度T1から±20℃の範囲内の温度が好ましく、±15℃の範囲がより好ましく、±10℃の範囲がさらに好ましい。
【0047】
そして、比熱変化部材170は、相転移することで、転移温度Ttよりも低い温度のときよりも第1定着温度T1のときの方が比熱が大きくなっている。すなわち、比熱変化部材170は、室温領域(常温時)に比熱が小さく、常温時よりも遥かに高い第1定着温度T1のときには常温時の比熱よりも遥かに大きな比熱になっている。言い換えると、比熱変化部材170は、比熱の変化率(傾き)が転移温度Tt付近で急激になるような材料で形成されている。
【0048】
これにより、図6に示すように、転移温度Ttよりも低い温度のときにはニップ板130が比熱変化部材170とともに迅速に温度上昇していき、転移温度Ttを超えて比熱変化部材170の比熱が急激に大きくなると、比熱変化部材170およびこの比熱変化部材170が接触するニップ板130の温度上昇が緩やかになる。すなわち、ニップ板130の温度変化が鈍くなるので、ニップ板130を第1定着温度T1に維持させることが容易になる。
【0049】
また、転移温度Ttが第2定着温度T2よりも高い温度であるため、第2定着温度T2までニップ板130の温度を迅速に加熱することが可能となっている。
【0050】
なお、本実施形態では、第1定着温度T1を145℃に設定し、第2定着温度T2を130℃に設定することとする。また、比熱変化部材170としては、140℃近傍でガラス転移し、ガラス転移により比熱が変化するポリカーボネートを採用することとする。
【0051】
また、比熱変化部材170は、図3に示すように、ステイ160とは別個に設けられており、ニップ板130のうちステイ160で支持されていない部位(左右方向中央部)に配置されている。そのため、比熱変化部材170が相転移して柔らかくなっても、ステイ160によるニップ板130の支持を維持することが可能となっている。
【0052】
さらに、比熱変化部材170は、加圧ローラ150に非接触となる部位(内面131A)に設けられている。そのため、比熱変化部材170が相転移して柔らかくなった場合でも、ニップ板130と加圧ローラ150との間で比熱変化部材170が潰されてしまうのを防止することが可能となっている。
【0053】
また、比熱変化部材170は、ハロゲンランプ120から発せられる光(電磁波)を透過可能な材料(透明なポリカーボネート)で形成されている。これにより、ハロゲンランプ120によってニップ板130を効率良く加熱することが可能となっている。
【0054】
さらに、比熱変化部材170は、ニップ板130の内面131Aが露出するように、当該内面131Aの一部に設けられている。これにより、ニップ板130のうち比熱変化部材170が設けられていない部位を、ハロゲンランプ120によって直接加熱することが可能となっている。
【0055】
特に、本実施形態では、比熱変化部材170は、ニップ板130の内面131Aを露出させる複数の開口部171を有する格子形状に形成されている。これにより、開口部171からニップ板130をハロゲンランプ120によって直接加熱できるとともに、比熱変化部材170をニップ板130の内面131Aの全域に亘って大きく形成して比熱変化部材170による効果を十分発揮させることが可能となっている。
【0056】
なお、比熱変化部材170のニップ板130への固定方法は、どのような方法でもよく、例えば比熱変化部材170に近い性質(比熱が略同じように変化する性質)を有する接着剤で固定してもよいし、比熱変化部材170を溶融させて直接ニップ板130へ固定させてもよい。さらには、ニップ板に形成した孔に比熱変化部材の一部を嵌合させて固定してもよい。
【0057】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
第1定着温度T1付近で比熱が大きく変化する比熱変化部材170をニップ板130に接触するように設けたので、ニップ板130を第1定着温度T1まで迅速に加熱することができるとともに、ニップ板130の温度を第1定着温度T1に維持することが容易となる。
【0058】
比熱変化部材170が、ステイ160とは別個に設けられ、ニップ板130のうちステイ160で支持されていない部位に配置されるので、比熱変化部材170が相転移して柔らかくなっても、ステイ160によるニップ板130の支持を維持することができる。
【0059】
比熱変化部材170が、加圧ローラ150に非接触となる部位に設けられるので、比熱変化部材170が相転移して柔らかくなった場合でも、ニップ板130と加圧ローラ150との間で比熱変化部材170が潰されてしまうのを防止することができる。
【0060】
比熱変化部材170が、ニップ板130の内面131Aに設けられ、ハロゲンランプ120から発せられる光を透過可能な材料で形成されているので、ハロゲンランプ120によってニップ板130を効率良く加熱することができる。
【0061】
ニップ板130の内面131Aが露出するように、当該内面131Aの一部に比熱変化部材170が設けられるので、ニップ板130のうち比熱変化部材170が設けられていない部位を、ハロゲンランプ120によって直接加熱でき、ニップ板130の温度を迅速に上げることができる。
【0062】
比熱変化部材170が、ニップ板130の内面131Aを露出させる複数の開口部171を有する格子形状に形成されるので、開口部171からニップ板130をハロゲンランプ120によって直接加熱できるとともに、比熱変化部材170をニップ板130の内面131Aの全域に亘って大きく形成して比熱変化部材170による効果を十分発揮させることができる。
【0063】
比熱変化部材170の転移温度Ttが、第2定着温度T2よりも高い第1定着温度T1(すなわち2種類の定着温度のうち最高の定着温度)付近の温度であるため、ニップ板130を最高の第1定着温度T1まで迅速に加熱することができる。
【0064】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、比熱変化部材170をニップ板130に設けたが、本発明はこれに限定されず、発熱体によって加熱される加熱部材であればどのようなものに比熱変化部材を設けてもよい。例えば、図7に示すように、比熱変化部材270を、筒状の加熱ローラ230の内周面231に設けてもよい。ここで、加熱ローラ230は、中空の円柱状に形成される部品であり、例えばアルミニウムなどで形成される。
【0065】
そして、加熱ローラ230は、その内部に前記実施形態のようなハロゲンランプ120が配置され、当該ハロゲンランプ120によって加熱されるようになっている。なお、比熱変化部材270としては、前記実施形態のような格子形状に形成され、加熱ローラ230の内周面全域に亘って設けられるものを採用できる。この形態であっても、前記実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0066】
なお、この加熱ローラ230を採用する形態では、支持部材として、例えば加熱ローラ230の両端を支持する軸受が挙げられる。
【0067】
また、この加熱ローラ230の内周面231や前記実施形態のニップ板130の内面131A等の加熱部材には、黒色の塗装を施したり、比熱変化部材170,270とは別の熱吸収部材を設けたりしてもよい。これによれば、ハロゲンランプ120からの輻射熱を加熱部材に効率良く吸収することができる。
【0068】
前記実施形態では、比熱変化部材としてポリカーボネートを採用したが、本発明はこれに限定されず、定着温度に対応した転移温度を有する材料であれば、その他の樹脂や金属など、どのようなものでもよい。また、比熱が変化する限り、相転移の種類は問わない。
【0069】
前記実施形態では、ニップ板130の内面131Aに比熱変化部材170を設けたが、本発明はこれに限定されず、例えばニップ板の外面(下面)のうちニップ部よりも外側の部位に比熱変化部材を設けてもよい。また、比熱変化部材が、最高の定着温度に維持されている間において柔らかくならない材料で形成されている場合には、支持部材(ステイ160)とニップ板の間や、ニップ板と加圧ローラとの間に比熱変化部材を設けてもよい。
【0070】
前記実施形態では、反射板140やステイ160を設けたが、本発明はこれに限定されず、反射板やステイを設けない構成としてもよい。
前記実施形態では、発熱体としてハロゲンランプ120(ハロゲンヒータ)を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、赤外線ヒータやカーボンヒータなどであってもよい。
【0071】
前記実施形態では、ニップ部材として板状のニップ板130を例示したが、本発明はこれに限定されず、板状でない厚めの部材を採用してもよい。
前記実施形態では、バックアップ部材として加圧ローラ150を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、ベルト状の加圧部材などであってもよい。
【0072】
前記実施形態では、記録シートとして、普通紙やはがきなどの用紙Pを例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、OHPシートなどであってもよい。
前記実施形態では、比熱変化部材170を格子形状としたが、本発明はこれに限定されず、その形状や数は任意に設定できる。なお、例えば比熱変化部材を、ニップ板の略全面を覆うような板形状にするなど、比熱変化部材の形状によっては、比熱変化部材に黒色の塗装を施してもよい。
【0073】
前記実施形態では、本発明の定着装置を備えた画像形成装置として、レーザプリンタ1を例示したが、本発明はこれに限定されず、例えば、LEDによって露光を行うLEDプリンタであってもよいし、プリンタ以外の複写機や複合機などであってもよい。また、前記実施形態では、モノクロ画像を形成する画像形成装置を例示したが、本発明はこれに限定されず、カラー画像を形成する画像形成装置であってもよい。
【符号の説明】
【0074】
100 定着装置
120 ハロゲンランプ
130 ニップ板
131A 内面
150 加圧ローラ
160 ステイ
170 比熱変化部材
171 開口部
T1 第1定着温度
T2 第2定着温度
Tt 転移温度


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱を発する発熱体と、
記録シート上の現像剤像を熱定着するための定着温度になるように、前記発熱体によって加熱される加熱部材と、
前記加熱部材との間で前記記録シートを挟み込んで搬送するバックアップ部材とを備えた定着装置であって、
前記加熱部材には、
前記定着温度付近の転移温度で相転移することで、前記転移温度よりも低い温度のときよりも前記定着温度のときの方が比熱が大きくなる比熱変化部材が接触して配置されていることを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記加熱部材を支持する支持部材を備え、
前記比熱変化部材は、前記支持部材とは別個に設けられ、前記加熱部材のうち前記支持部材で支持されていない部位に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記比熱変化部材は、前記バックアップ部材に非接触となる部位に設けられていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の定着装置。
【請求項4】
前記比熱変化部材は、前記加熱部材の前記発熱体側の面に設けられ、前記発熱体から発せられる電磁波を透過可能な材料で形成されていることを特徴とする請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項5】
前記加熱部材は、内部に前記発熱体が配置された筒状の加熱ローラであり、
前記比熱変化部材は、前記加熱ローラの内周面に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項6】
前記加熱部材は、前記バックアップ部材との間で筒状の定着フィルムを挟み込むニップ部材であり、
前記比熱変化部材は、前記ニップ部材の前記発熱体側の面に設けられていることを特徴とする請求項1〜請求項4のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項7】
前記比熱変化部材は、前記加熱部材の前記発熱体側の面が露出するように、当該面の一部に設けられていることを特徴とする請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の定着装置。
【請求項8】
前記比熱変化部材は、前記加熱部材の前記発熱体側の面を露出させる開口部を有する格子形状に形成されていることを特徴とする請求項7に記載の定着装置。
【請求項9】
請求項1〜請求項8のいずれか1項に記載の定着装置と、
前記加熱部材の温度を、印字条件に応じて少なくとも2種類の定着温度で切り替える制御を実行する制御装置と、を備えた画像形成装置であって、
前記比熱変化部材の転移温度が、少なくとも2種類の定着温度のうち最高の定着温度付近の温度であることを特徴とする画像形成装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−191399(P2011−191399A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−56012(P2010−56012)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】