説明

定着装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】ギアの噛み合い不良による歯飛びが発生してもローラーの回転を正確に検知できる回転検知機構を有する定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】回転検知機構60は、定着ローラー131に固定される大径ギア35と、大径ギア35に噛み合う第1アイドルギア37と、第1アイドルギア37に噛み合う第2アイドルギア39と、第2アイドルギア39に噛み合うアクチュエーターギア40と、アクチュエーターギア40に対向して配置される第1センサー41a、第2センサー41bとで構成される。第1センサー41a、第2センサー41bの検知部の光路をアクチュエーターギア40の遮光板42が遮断若しくは開放することにより所定の検知パターンが一定順序で検知された場合に定着ローラー131が正常に回転していると判断する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンター等の画像形成装置に搭載される、未定着のトナー像を定着する定着装置に関し、特に定着ローラーの回転を検知する機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置においては、ニップを形成するローラー対の少なくとも一方のローラー(定着ローラー)を加熱し、ローラー対のニップに未定着トナー画像を担持した用紙を挿通することによって記録媒体にトナーを定着する熱ローラー定着方式が広く用いられている。
【0003】
また、熱ローラー定着方式としては、定着ローラーと加熱ローラーとに無端状の定着ベルトを架け渡し、加熱ローラーの熱源により定着ベルトを発熱させ、定着ベルトを介して定着ローラーと加圧ローラーのニップで未定着トナー画像を記録媒体に定着させるベルト加熱方式も用いられている。
【0004】
このような定着ローラーや加熱ローラー等(熱ローラー)の加熱方式としては、ローラーに内蔵されたハロゲンランプ等のランプで加熱するランプ方式が知られているが、ウォームアップタイムの短縮や、省エネルギーの要請から、交番磁界を磁性導体に鎖交させ、渦電流を発生させることによって加熱する誘導加熱(IH:Induction Heating)方式が提案されている。
【0005】
IH方式においては励磁コイルとコアとを備える誘導加熱部が大型になるため、誘導加熱部を定着ローラーや加熱ローラーの外部に配置し、ローラーを外側から加熱することが多い。この場合、ローラーが回転していない状態で加熱を開始すると、ローラー表面の一部のみが加熱されてしまう。また、ローラーの表面温度を検知する温度検知センサーが配置されているが、誘導加熱部と温度検知センサーの配置位置がローラーの周方向で異なる場合は異常昇温を検知できず、ローラーの熱変形や発煙、発火が生じるおそれがある。そのため、ローラーが回転している状態で誘導加熱部に電流を流すのが一般的である。
【0006】
例えば特許文献1、2には、光学式センサー(フォトセンサー)とアクチュエーターとを備えた回転検知手段を用いて加熱ローラーの回転の有無を検知し、検知結果に基づいて誘導加熱部に流れる電流を制御するようにしたIH方式の定着装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−82549号公報
【特許文献2】特開2005−70321号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1、2の方法では、定着ローラーや加熱ローラーの回転駆動に連動してアクチュエーターが回転し、光学式センサーの検知部の光路を開放若しくは遮断することで加熱ローラーの回転の有無を検知している。具体的には、検知部の受光信号レベルの切り換わり部分(エッジ)を所定時間内に複数回(例えば300msec間に2回以上)検知したとき定着ローラーの回転を認識するようになっている。
【0009】
しかしながら、定着ローラーや加熱ローラーの駆動機構においてギアの噛み合い不良がある場合、一方のギア歯が他方のギア歯の上を滑って越える、いわゆる歯飛びが発生し易くなる。その結果、ギアの噛み合い時にはギアが僅かに回転し、歯飛びが発生すると回転負荷によりギアが僅かに逆回転するため、ギアに連結されたアクチュエーターも小刻みに揺動して光学式センサーの検知部の光路を開放若しくは遮断することがある。そのため、定着ローラーや加熱ローラーが回転していないにも係わらず回転していると誤検知してしまうという問題点があった。
【0010】
本発明は、上記問題点に鑑み、ギアの噛み合い不良による歯飛びが発生してもローラーの回転を正確に検知できる回転検知機構を有する定着装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的を達成するために本発明は、加熱手段により加熱される被加熱回転体と、該被加熱回転体に駆動力を入力する駆動入力ギアと、前記被加熱回転体に固定された出力側ギアと、該出力側ギアの駆動力によって回転する外周面に複数枚の遮光板が等間隔に形成されたアクチュエーターギアと、該アクチュエーターギアの遮光板による光路の開放若しくは遮断を検知する光学式センサーと、一端が前記出力側ギアに連結され他端が前記アクチュエーターギアに連結される複数のアイドルギアで構成されるギア列と、を含み、前記被加熱回転体が回転しているか否かを検知する回転検知機構と、を有する定着装置において、前記光学式センサーは、前記遮光板の間隔と異なる間隔で配置された第1センサーと第2センサーとで構成されており、前記第1センサー及び前記第2センサーは、前記遮光板による光路の開放若しくは遮断を所定の順序で検知したとき前記被加熱回転体の回転を検知することを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記第2センサーは、前記アクチュエーターギアの回転方向に対し前記第1センサーの上流側に、前記第1センサーとの間隔が前記遮光板の間隔よりも狭くなるように配置されており、前記第1センサー及び前記第2センサーは、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に遮断された第1パターンと、前記第1センサーの光路のみが開放された第2パターンと、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に開放された第3パターンと、前記第2センサーの光路のみが開放された第4パターンとが、当該順序で繰り返される検知パターンのうち、2つ以上を所定時間内に検知したとき前記被加熱回転体の回転を検知することを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記第2センサーは、前記アクチュエーターギアの回転方向に対し前記第1センサーの上流側に、前記第1センサーとの間隔が前記遮光板の間隔よりも広くなるように配置されており、前記第1センサー及び前記第2センサーは、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に遮断された第1パターンと、前記第2センサーの光路のみが開放された第2パターンと、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に開放された第3パターンと、前記第1センサーの光路のみが開放された第4パターンとが、当該順序で繰り返される検知パターンのうち、2つ以上を所定時間内に検知したとき前記被加熱回転体の回転を検知することを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の定着装置において、前記加熱手段は、電磁誘導により被加熱回転体を外部から加熱する誘導加熱部であることを特徴としている。
【0015】
また本発明は、上記構成の定着装置を備えた画像形成装置である。
【発明の効果】
【0016】
本発明の第1の構成によれば、遮光板の間隔と異なる間隔で配置された第1センサーと第2センサーとが、遮光板による光路の開放若しくは遮断を所定の順序で検知したとき被加熱回転体の回転を検知することにより、駆動入力ギアの歯飛びが発生したときの被加熱回転体の回転の誤検知を確実に防止することができる。
【0017】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の定着装置において、第2センサーを、アクチュエーターギアの回転方向に対し第1センサーの上流側に、第1センサーとの間隔が遮光板の間隔よりも狭くなるように配置した場合、第1パターン〜第4パターンが当該順序で繰り返される検知パターンのうち、2つ以上を所定時間内に検知したとき被加熱回転体の回転を検知するようにしたので、駆動入力ギアの歯飛びによってアクチュエーターギアが正逆回転を小刻みに繰り返して遮光板による光路の開放若しくは遮断が検知されたとしても、被加熱回転体が回転したと誤検知されることはない。従って、被加熱回転体の回転の誤検知をより確実に防止することができる。
【0018】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第1の構成の定着装置において、第2センサーを、アクチュエーターギアの回転方向に対し第1センサーの上流側に、第1センサーとの間隔が遮光板の間隔よりも広くなるように配置した場合、第1パターン〜第4パターンが当該順序で繰り返される検知パターンのうち、2つ以上を所定時間内に検知したとき被加熱回転体の回転を検知するようにしたので、駆動入力ギアの歯飛びによってアクチュエーターギアが正逆回転を小刻みに繰り返して遮光板による光路の開放若しくは遮断が検知されたとしても、被加熱回転体が回転したと誤検知されることはない。従って、被加熱回転体の回転の誤検知をより確実に防止することができる。
【0019】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の定着装置において、加熱手段として電磁誘導により被加熱回転体を外部から加熱する誘導加熱部を用いることにより、ウォームアップタイムの短縮や省エネルギー化を図りつつ、被加熱回転体の回転の検知精度を向上させることができる。
【0020】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の定着装置を搭載することにより、被加熱回転体が停止した状態で加熱されることによる回転体の熱変形や発煙、発火のおそれがなく安全性に優れた画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の内部構成を示す概略断面図
【図2】図1における定着装置13付近の拡大図
【図3】本発明の一実施形態に係る定着装置13の斜視図
【図4】定着装置13を図3の右側から見た側面図
【図5】本発明の定着装置13における定着ローラー131の回転検知及び加熱制御手順を示すフローチャート
【図6】回転検知機構60により定着ローラー131の回転が検知される様子を示す概略側面図
【図7】第1センサー41aの検知部50a、及び第2センサー41bの検知部50bの光路が、それぞれ遮光板42a、42bで遮断されている状態を示す部分拡大図
【図8】第1センサー41aの検知部50aの光路が開放され、第2センサー41bの検知部50bの光路が遮断されている状態を示す部分拡大図
【図9】第1センサー41aの検知部50a、及び第2センサー41bの検知部50bの光路が共に開放されている状態を示す部分拡大図
【図10】第1センサー41aの検知部50aの光路が遮断され、第2センサー41bの検知部50bの光路が開放されている状態を示す部分拡大図
【図11】定着ローラー131の駆動入力ギア30とローラー駆動ギア31との間で歯飛びが発生した場合の回転検知機構60の動作を示す概略側面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の定着装置が搭載された画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラー画像形成装置について示している。カラープリンター100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、搬送方向上流側(図1では左側)から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0023】
これらの画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において反時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次一次転写されて重畳された後、二次転写ローラー9の作用によって記録媒体の一例としての用紙P上に二次転写され、さらに、定着装置13において用紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0024】
トナー像が転写される用紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラー12a及びレジストローラー対12bを介して二次転写ローラー9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラー11とのニップ部へと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが主に用いられる。また、二次転写ローラー9の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナー等を除去するためのブレード状のベルトクリーナー19が配置されている。
【0025】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電器2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光装置5と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)等を除去するクリーニング部7a、7b、7c及び7dが設けられている。
【0026】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電器2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光装置5によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合にはトナーコンテナ4a〜4dから各現像装置3a〜3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光装置5からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0027】
そして、一次転写ローラー6a〜6dに所定の転写電圧を付与することにより、感光体ドラム1a〜1d上のシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナー等がクリーニング部7a〜7dにより除去される。
【0028】
中間転写ベルト8は、上流側のテンションローラー10と、下流側の駆動ローラー11とに掛け渡されており、駆動モーター(図示せず)による駆動ローラー11の回転に伴い中間転写ベルト8が反時計回りに回転を開始すると、用紙Pがレジストローラー12bから所定のタイミングで駆動ローラー11とこれに隣接して設けられた二次転写ローラー9とのニップ部(二次転写ニップ部)へ搬送され、中間転写ベルト8上のフルカラー画像が用紙P上に転写される。トナー像が転写された用紙Pは用紙搬送路18を通過して定着装置13へと搬送される。
【0029】
定着装置13に搬送された用紙Pは、定着ローラー対13aにより加熱及び加圧されてトナー像が用紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された用紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。用紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラー15によって排出トレイ17に排出される。
【0030】
一方、用紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着装置13を通過した用紙Pは一旦排出ローラー15方向に搬送され、用紙Pの後端が分岐部14を通過した後に排出ローラー15を逆回転させるとともに分岐部14の搬送方向を切り換えることで、用紙Pの後端から反転搬送路20に振り分けられ、画像面を反転させた状態で二次転写ニップ部に再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラー9により用紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着装置13に搬送されてトナー像が定着された後、排出トレイ17に排出される。
【0031】
図2は、図1における定着装置13付近の拡大図である。図1と共通する部分には同一の符号を付して説明を省略する。図2に示すように、定着装置13は、電磁誘導加熱方式の熱源を用いたIH方式であり、定着ローラー131及び加圧ローラー132から成る定着ローラー対13aと、定着ローラー131に隣接して配設される誘導加熱部133と、定着ローラー131表面の温度を検知するサーミスター等からなる温度センサー134とを備えている。誘導加熱部133と温度センサー134は画像形成装置100本体に固定され、定着ローラー131と加圧ローラー132は画像形成装置100本体に回転可能に保持されている。
【0032】
定着ローラー131は、円筒型ステンレスからなる基材と、加圧ローラー132に圧接するニップ部Nへ弾性と離型性の向上のためにシリコンゴムスポンジからなる弾性層とを備え、基材と弾性層との間に、基材側から順に断熱層と誘導発熱層とを備える。
【0033】
加圧ローラー132は、円筒型ステンレスからなる基材と、ニップ部Nへ弾性を付与するために基材上に形成されるシリコンゴムからなる弾性層と、ニップ部Nで未定着トナー像を溶融定着する際の離型性を向上させるために弾性層の表面を覆うフッ素樹脂チューブからなる離型層とを備える。
【0034】
また、加圧ローラー132は、モーター等の駆動源(図略)によって回転駆動させられ、さらに定着ローラー131に対してその中心方向に加圧する。これにより、加圧ローラー132が定着ローラー131に圧接し、加圧ローラー132が回転すると、定着ローラー131が加圧ローラー132に対して逆方向に従動回転する。
【0035】
温度センサー134は、定着ローラー131表面において軸方向(幅方向)の中央部の通紙領域と、B5やA4縦等の幅の狭い用紙が通紙された時に非通紙領域となる軸方向の両端部とに対向するように配置され、夫々の領域の温度を検知する。温度センサー134により検知された温度に基づいて、誘導加熱部133の電源が制御され、定着ローラー131表面が所定の温度に保持される。
【0036】
誘導加熱部133は、励磁コイル133aとコア133bとを備え、電磁誘導により定着ローラー131を加熱するものである。銅線からなる励磁コイル133aは、ホビン(図示せず)に巻回され、コア133bの中央部の周りを軸方向に周回するように、定着ローラー131の外周面の一部に対向配置されている。また励磁コイル133aは、図示しない高圧電源に接続されていて、高圧電源から供給される高周波電流により磁束を発生させる。誘導加熱部133から発せられる磁束は、図2の紙面に平行な方向に発せられ、定着ローラー131の誘導発熱層を貫通する。誘導発熱層の磁束の周りには渦電流が生じ、渦電流が流れると、誘導発熱層内の電気抵抗によってジュール熱が発生して、誘導発熱層が発熱することになる。
【0037】
定着ローラー131が誘導加熱部133によって所定の温度となるように、温度センサー134の検知する温度に基づいて電源の電力を制御している。そして、定着ローラー131が加熱され所定の温度に昇温すると、ニップ部Nで挟持された用紙Pが加熱されるとともに、加圧ローラー132にて加圧されることにより、用紙P上の粉体状態のトナーが溶融定着される。
【0038】
図3は、定着装置13の斜視図であり、図4は、定着装置13を図3の右方向から見た側面図である。なお、説明の便宜のため、図3及び図4では定着ローラー131、加圧ローラー132、各ローラーの駆動機構及び回転検知機構を重点的に示しており、誘導加熱部133や温度センサー134等は記載を省略している。
【0039】
図3に示すように、駆動モーター(図示せず)の駆動力が入力される駆動入力ギア30が回転すると、駆動入力ギア30に噛み合うローラー駆動ギア31が回転して加圧ローラー132が回転する。そして、加圧ローラー132が圧接される定着ローラー131が加圧ローラー132に従動して回転する。
【0040】
駆動入力ギア30及びローラー駆動ギア31が設けられていない側(図3の右側)には、定着ローラー131の回転軸の一端に固定される大径ギア35と、大径ギア35に噛み合う第1アイドルギア37と、第1アイドルギア37に噛み合う第2アイドルギア39と、第2アイドルギア39に噛み合うアクチュエーターギア40が配置されている。また、アクチュエーターギア40に対向して第1センサー41a、第2センサー41bが配置されている。第1アイドルギア37、第2アイドルギア39、アクチュエーターギア40、及び第1センサー41a、第2センサー41bは、定着ローラー131の回転検知機構60(図6参照)を構成する。
【0041】
アクチュエーターギア40の外周面には第1センサー41a、第2センサー41bのON及びOFFの切り換えを行う複数枚(ここでは8枚)の遮光板42が等間隔で固定されている。
【0042】
また、加圧ローラー132は支点43aを中心として回動するアーム部材43に支持されており、アーム部材43は押圧バネ45の付勢力によって定着ローラー131側に付勢されている。これにより、加圧ローラー132は所定の圧力で定着ローラー131に圧接される。
【0043】
第1センサー41a及び第2センサー41bは、平面視コ字型の対向する内面に発光部及び受光部から成る検知部が設けられたPI(フォトインタラプター)センサーであり、アクチュエーターギア40の外周面に形成された遮光板42の間隔(ピッチ)よりも所定距離だけ短い間隔で配置されている。
【0044】
遮光板42が第1センサー41a、第2センサー41bの検知部の光路を遮断することにより、検知部の受光信号レベルがHIGHからLOWに切り換わる。この第1センサー41a、第2センサー41bの検知タイミングに基づいて定着ローラー131の回転を検知可能となっている。定着ローラー131の回転が検知された場合は、検知信号が制御部(図示せず)に送信され、制御部から誘導加熱部133(図2参照)に制御信号が送信されて定着ローラー131の加熱が開始される。
【0045】
図5は、本発明の定着装置13における定着ローラー131の回転検知手順を示すフローチャートである。図5のステップに沿って、本発明の定着装置13に用いられる回転検知機構60の動作について詳述する。先ず、ユーザーにより印字命令が入力されると(ステップS1)、制御部からの駆動信号に基づいて加圧ローラー132が回転駆動され、加圧ローラー132に圧接された定着ローラー131も回転を開始する(ステップS2)。そして、回転検知機構60により定着ローラー131が正常に回転しているか否かが検知される(ステップS3)。
【0046】
図6は、回転検知機構60により定着ローラー131の回転が検知される様子を示す概略側面図である。駆動入力ギア30からの駆動力により加圧ローラー132が回転駆動し、加圧ローラー132に従動して定着ローラー131が回転を開始すると、定着ローラー131の回転軸に固定された大径ギア35も定着ローラー131と同方向(図6の反時計方向)に回転する。
【0047】
次いで、大径ギア35に噛み合う第1アイドルギア37が時計方向に回転し、第1アイドルギア37に噛み合う第2アイドルギア39が図6の反時計方向に回転することにより、第2アイドルギア39に噛み合うアクチュエーターギア40が図6の時計方向に回転する。
【0048】
そして、アクチュエーターギア40の回転によって遮光板42が第1センサー41a、第2センサー41bの検知部を順次通過するため、第1センサー41a、第2センサー41bから検知信号が制御部に送信されて定着ローラー131の回転が検知される。このとき、第1センサー41a、第2センサー41bによる検知パターンは表1のようになる。
【0049】
【表1】

【0050】
表1において、フラグ「0」はセンサーの検知部の光路が開放された状態を示し、フラグ「1」はセンサーの検知部の光路が遮光された状態を示す。例えばパターンAの場合、図7に示すように、第1センサー41aの検知部50aの光路、及び第2センサー41bの検知部50bの光路が、それぞれ遮光板42a、42bで遮断されている状態を示す。
【0051】
図7の状態からアクチュエーターギア40が所定量だけ回転すると、図8に示すように、第1センサー41aの検知部50aは遮光板42aと42bの間に入り光路が開放され、第2センサー41bの検知部50bの光路は遮光板42bで遮断されているパターンBの状態となる。
【0052】
図8の状態からアクチュエーターギア40が所定量だけ回転すると、図9に示すように、第1センサー41aの検知部50aが遮光板42aと42bの間に入り、第2センサー41bの検知部50bが遮光板42bと42cの間に入ることにより、検知部50a及び検知部50bの光路が共に開放されているパターンCの状態となる。
【0053】
図9の状態からアクチュエーターギア40が所定量だけ回転すると、図10に示すように、第1センサー41aの検知部50aの光路が遮光板42bで遮断され、第2センサー41bの検知部50bは遮光板42bと42cの間に入り光路が開放されているパターンDの状態となる。そして、パターンDからアクチュエーターギア40が所定量だけ回転すると、第1センサー41aの検知部50aの光路、及び第2センサー41bの検知部50bの光路が、それぞれ遮光板42b、42cで遮光されているパターンAに戻る。
【0054】
即ち、定着ローラー131が正常に回転している状態では、第1センサー41a及び第2センサー41bは、パターンA〜Dを表1に示したA→B→C→Dの順に繰り返し検知する。そこで、パターンA〜Dのうち2つ以上の検知パターンを前記の順序で所定時間内(例えば300msec)に検知したとき定着ローラー131が正常に回転していると判断する。
【0055】
図5に戻って、制御部において上述したパターンA〜Dのうち2つ以上が第1センサー41a及び第2センサー41bで所定の順序で検知されているか否かが判断され(ステップS4)、正常に回転していると判断された場合は誘導加熱部133に電力を供給して定着ローラー131の加熱を開始する(ステップS5)。
【0056】
そして、定着ローラー131表面が所定の定着温度に到達するまで電力の供給が継続して行われ、温度センサー134により定着温度に到達したと判断されると(ステップS6でYES)、所定のタイミングで画像形成部Pa〜Pdにおけるトナー像の形成、及び用紙カセット16からの用紙の供給が開始され、印字が実行される(ステップS7)。
【0057】
一方、ステップS4で定着ローラー131が正常に回転していないと判断された場合は(ステップS4でNO)、定着ローラー131の加熱を開始せずに操作パネルの液晶表示部(図示せず)に警告メッセージを表示し(ステップS8)、印字動作を中止する。
【0058】
図11は、駆動入力ギア30とローラー駆動ギア31(いずれも図3参照)との間で歯飛びが発生した場合の回転検知機構60の動作を示す概略側面図である。この場合、ローラー駆動ギア31は駆動入力ギア30に噛み合うときの僅かな回転(正回転)と、歯飛びが発生したときの回転負荷による僅かな逆回転とを繰り返すため、加圧ローラー132及び加圧ローラー132に従動して回転する定着ローラー131も正逆回転を小刻みに繰り返す。
【0059】
これにより、定着ローラー131に固定された大径ギア35、及び大径ギア35に噛み合う第1アイドルギア37の第1ギア部材37aも時計方向及び反時計方向の回転を小刻みに繰り返す。このとき、アクチュエーターギア40の回転位置によっては、遮光板42が第1センサー41aの検知部50aの光路、或いは第2センサー41bの検知部50bの光路を遮断または開放するため、第1センサー41a、或いは第2センサー41bによりエッジが検知される。
【0060】
このとき、例えばアクチュエーターギア40が図7の状態と図8の状態を往復する場合は、パターンAとパターンBのみが繰り返し検知されることになる。同様に、図8の状態と図9の状態を往復する場合はパターンBとパターンCのみが繰り返し検知される。また、図9の状態と図10の状態を往復する場合はパターンCとパターンDのみが繰り返し検知され、図10の状態と図7の状態を往復する場合はパターンDとパターンAのみが繰り返し検知される。従って、第1センサー41a、第2センサー41bによる検知パターンは表1に示したA→B→C→Dの順に繰り返すことはなく、定着ローラー131が正常に回転していると誤検知されることはない。
【0061】
また、上記実施形態では、第1センサー41a及び第2センサー41bを、遮光板42の間隔(ピッチ)よりも所定距離だけ短い間隔で配置した場合について説明したが、第1センサー41a及び第2センサー41bを、遮光板42の間隔(ピッチ)よりも所定距離だけ長い間隔で配置することもできる。この場合、第1センサー41a、第2センサー41bによる検知パターンは表2のようになる。
【0062】
【表2】

【0063】
第1センサー41aの検知部50aの光路、及び第2センサー41bの検知部50bの光路が共に遮光板42a、42bで遮断されているパターンAが検知されてからアクチュエーターギア40が所定量だけ回転すると、回転方向上流側に配置された第2センサー41bの光路が先に開放されるため、第1センサー41aが「1」、第2センサー41bが「0」となるパターンDが検知される。
【0064】
パターンDが検知されてからアクチュエーターギア40が所定量だけ回転すると、回転方向下流側に配置された第1センサー41aの光路も開放されるため、第1センサー41a、第2センサー41bが共に「0」となるパターンCが検知され、アクチュエーターギア40がさらに所定量だけ回転すると、回転方向上流側に配置された第2センサー41bの光路が先に遮断されるため、第1センサー41aが「0」、第2センサー41bが「1」となるパターンBが検知される。
【0065】
即ち、定着ローラー131が正常に回転している状態では、第1センサー41a及び第2センサー41bは、パターンA〜Dを表2に示したA→D→C→Bの順に繰り返し検知する。そこで、パターンA〜Dのうち2つ以上の検知パターンを前記の順序で所定時間内(例えば300msec)に検知したとき定着ローラー131が正常に回転していると判断する。
【0066】
以上説明したように、本発明の構成によれば、第1センサー41a、第2センサー41bにより所定の検知パターンが一定順序で検知された場合に定着ローラー131が正常に回転していると判断することにより、駆動入力ギア30の歯飛び発生時における定着ローラー131の回転の誤検知を確実に防止することができる。従って、定着ローラー131が停止した状態で加熱されることによるローラーの熱変形や発煙、発火のおそれがなく安全性に優れた定着装置13、及び画像形成装置100となる。
【0067】
なお、ここでは第1アイドルギア37と第2アイドルギアの2つのギアを用いて定着ローラー131に固定された大径ギア35とアクチュエーターギア40とを連結したが、3つ以上のアイドルギアを用いて連結しても良い。
【0068】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば上記実施形態においては、誘導加熱部133を有するIH方式の定着装置13を例に挙げて説明したが、定着ローラーが他の加熱方式で加熱される定着装置にも全く同様に適用できるのはもちろんである。
【0069】
例えば、定着ローラーと加熱ローラーとに無端状の定着ベルトを架け渡し、加熱ローラーを外部から加熱して定着ベルトを発熱させ、定着ベルトを介して定着ローラーと加圧ローラーのニップで未定着トナー画像を記録媒体に定着させるベルト加熱方式の場合、加熱ローラーの回転検知機構として用いることができる。
【0070】
また、本発明は図1に示したようなタンデム型のカラープリンター100に限らず、モノクロ複写機やデジタル複合機、ファクシミリやレーザープリンター等、定着装置を備えた種々の画像形成装置に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0071】
本発明は、定着ローラー等の被加熱回転体を外部から加熱する加熱手段を備え、被加熱回転体が回転している状態で加熱を行う必要のある定着装置に利用可能である。本発明の利用により、ギアの噛み合い不良による歯飛びが発生した場合に、被加熱回転体の回転の誤検知を防止して被加熱回転体の過熱による熱変形や発煙、発火を確実に防止できる安全性の高い定着装置となる。
【符号の説明】
【0072】
Pa〜Pd 画像形成部
13 定着装置
13a 定着ローラー対
131 定着ローラー(被加熱回転体)
132 加圧ローラー
133 誘導加熱部(加熱手段)
30 駆動入力ギア
31 ローラー駆動ギア
35 大径ギア(出力側ギア)
37 第1アイドルギア
39 第2アイドルギア
40 アクチュエーターギア
41a 第1センサー(光学式センサー)
41b 第2センサー(光学式センサー)
42、42a〜42c 遮光板
50a、50b 検知部
60 回転検知機構
100 カラープリンター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱手段により加熱される被加熱回転体と、
該被加熱回転体に駆動力を入力する駆動入力ギアと、
前記被加熱回転体に固定された出力側ギアと、該出力側ギアの駆動力によって回転する外周面に複数枚の遮光板が等間隔に形成されたアクチュエーターギアと、該アクチュエーターギアの遮光板による光路の開放若しくは遮断を検知する光学式センサーと、一端が前記出力側ギアに連結され他端が前記アクチュエーターギアに連結される複数のアイドルギアで構成されるギア列と、を含み、前記被加熱回転体が回転しているか否かを検知する回転検知機構と、
を有する定着装置において、
前記光学式センサーは、前記遮光板の間隔と異なる間隔で配置された第1センサーと第2センサーとで構成されており、
前記第1センサー及び前記第2センサーは、前記遮光板による光路の開放若しくは遮断を所定の順序で検知したとき前記被加熱回転体の回転を検知することを特徴とする定着装置。
【請求項2】
前記第2センサーは、前記アクチュエーターギアの回転方向に対し前記第1センサーの上流側に、前記第1センサーとの間隔が前記遮光板の間隔よりも狭くなるように配置されており、
前記第1センサー及び前記第2センサーは、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に遮断された第1パターンと、前記第1センサーの光路のみが開放された第2パターンと、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に開放された第3パターンと、前記第2センサーの光路のみが開放された第4パターンとが、当該順序で繰り返される検知パターンのうち、2つ以上を所定時間内に検知したとき前記被加熱回転体の回転を検知することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項3】
前記第2センサーは、前記アクチュエーターギアの回転方向に対し前記第1センサーの上流側に、前記第1センサーとの間隔が前記遮光板の間隔よりも広くなるように配置されており、
前記第1センサー及び前記第2センサーは、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に遮断された第1パターンと、前記第2センサーの光路のみが開放された第2パターンと、前記第1センサー及び前記第2センサーの光路が共に開放された第3パターンと、前記第1センサーの光路のみが開放された第4パターンとが、当該順序で繰り返される検知パターンのうち、2つ以上を所定時間内に検知したとき前記被加熱回転体の回転を検知することを特徴とする請求項1に記載の定着装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、電磁誘導により被加熱回転体を外部から加熱する誘導加熱部であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の定着装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の定着装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−113959(P2013−113959A)
【公開日】平成25年6月10日(2013.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−258680(P2011−258680)
【出願日】平成23年11月28日(2011.11.28)
【出願人】(000006150)京セラドキュメントソリューションズ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】